(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
本発明の課題は、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する水性リキッドインキ、及び該水性リキッドインキを用いた積層体を提供することにある。
1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は1種又は2種以上のビニル系モノマーから形成され、ガラス転移温度が0℃〜55℃である酸価を有するコポリマーと、
アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤をインキ全量に対し0.1〜1質量%と、ワックスをインキ全量に対し0.5〜5質量%を含有することを特徴とする水性リキッドインキ。
1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は1種又は2種以上のビニル系モノマーから形成され、ガラス転移温度が0℃〜55℃である酸価を有するコポリマーと、
アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤をインキ全量に対し0.1〜1質量%と、ワックスをインキ全量に対し0.5〜5質量%を含有することを特徴とする水性リキッドインキ。
前記酸価を有するコポリマーが、酸価を有する(メタ)アクリルコポリマー又は酸価を有するスチレン(メタ)アクリルコポリマーである請求項1に記載の水性リキッドインキ。
基材上に1層または複数層の印刷層を有する積層体であって、前記印刷層の少なくとも1つが、請求項1〜5のいずれかに記載の水性リキッドインキの印刷層であることを特徴とする積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について詳細に説明する。なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「水性リキッドインキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を、「%」とは全て「質量%」を示す。
【0012】
本発明の水性リキッドインキは、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は1種又は2種以上のビニル系モノマーから形成され、ガラス転移温度が0℃〜55℃である酸価を有するコポリマー(以後コポリマー(A)と称する場合がある)と、アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤をインキ全量に対し0.1〜1質量%と、ワックスをインキ全量に対し0.5〜5質量%を含有することを必須とする。
【0013】
コポリマー(A)は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートモノマーの重合体または共重合体、1種又は2種以上のビニル系モノマーの重合体または共重合体、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートモノマーとビニル系モノマーとの共重合体である。
尚、前記「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方または両方を指し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれか一方または両方を指す。
【0014】
前記(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されず、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマーを使用することができる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0015】
前記ビニル系モノマーは、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。中でもスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルスチレン等のスチレン系モノマーを使用することが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0016】
また、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基を導入することを目的として(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで得ることができる。
酸性基を導入する場合は、後述で詳細に述べるが酸価が所望の範囲となるようにモノマー量を適宜調整することが好ましい。
【0017】
中でもコポリマー(A)としては、2種以上の(メタ)アクリレートモノマーの共重合体、または1種又は2種以上の(メタ)アクリレートモノマーとビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。例えば
(1)2種以上のカルボキシル基を有さない(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体である、酸価を有する(メタ)アクリルコポリマー
(2)2種以上のカルボキシル基を有さない(メタ)アクリレートモノマーとスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体である、酸価を有するスチレン(メタ)アクリルコポリマー
が好ましい。
(1)や(2)で使用されるカルボキシル基を有さない(メタ)アクリルモノマーとしてより好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族鎖状の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
前記コポリマー(A)は、例えば、重合開始剤の存在下、50℃〜180℃の温度領域で各種モノマーを重合させることにより製造することができ、80℃〜150℃の温度領域であればより好ましい。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
【0019】
本発明で使用するコポリマー(A)はコアシェル型を形成するエマルジョンであってもよい。本発明においてコアシェル型エマルジョンは、重合体(a2)が重合体(a1)によって水性媒体中に分散された状態を指し、通常、重合体(a1)が樹脂粒子の最外部に存在することでシェル部を形成し、重合体(a2)の一部または全部がコア部を形成したものであることが多い。以後本発明において、シェル部を形成する樹脂を重合体(a1)とし、コア部を形成する樹脂を重合体(a2)と称す。
【0020】
〔シェル部を構成する重合体(a1)〕
本発明で使用するコアシェル型エマルジョンは、シェル部を構成する重合体(a1)について、カルボキシル基及びそれを中和して形成されるカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有するアクリルコポリマーを含むものによって構成されていることが好ましい。その際、シェル部の酸価は40mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、120mgKOH/g以下がなお好ましい。
【0021】
前記、シェル部を構成する重合体(a1)のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されカルボキシレート基を形成することが好ましい。
【0022】
前記中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等を使用することができ、アンモニア、トリエチルアミンを使用することが、塗膜の耐温水性、耐食性及び耐薬品性をより一層向上するうえで好ましい。
【0023】
前記塩基性化合物の使用量は、得られるコアシェル型エマルジョンの水分散安定性をより一層向上するうえで、前記重合体(a1)が有するカルボキシル基の全量に対して[塩基性化合物/カルボキシル基]=0.2〜2(モル比)となる範囲で使用することが好ましい。
【0024】
前記重合性不飽和二重結合を有するモノマーのうち、カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルモノマーを重合して得られるものを使用することが好ましい。特に、前記重合体(a1)としては、前記重合体(a1)のガラス転移温度(Tg1)を20℃〜100℃の範囲に調整するうえで、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を組み合わせ重合して得られるものを使用することが、造膜性に優れ、かつ、耐温水性、耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成するうえでより好ましい。
【0025】
〔コア部を構成する重合体(a2)〕
前記コア部を構成する重合体(a2)は、前述のアクリル樹脂と同様のアクリルモノマー等の共重合体を使用することができる。
この際、コア部の重量平均分子量は200,000〜3,000,000の範囲であることが好ましく、800,000以上がなお好ましい。Tgは−30℃〜30℃の範囲であることが好ましい。
【0026】
前記コア部を構成する重合体(a2)は、前述のアクリル樹脂と同様のアクリルモノマー等の共重合体を使用することができるが、中でも、水性媒体で製造することが好ましい。具体的には、前記、モノマーと重合開始剤等とを、水性媒体を含有する反応容器に一括供給または逐次供給し重合することによって製造することができる。その際、予め前記モノマーと水性媒体と必要に応じて反応性界面活性剤等とを混合することでプレエマルジョンを製造し、それと重合開始剤等とを、水性媒体を含有する反応容器に供給し重合してもよい。
【0027】
前記重合体(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、後述する還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
【0028】
前記過硫酸塩としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等を使用することができる。前記、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
【0029】
また、前記還元剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩(ナトリウム塩等)、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等を使用することができる。
【0030】
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、得られる塗膜の優れた耐食性を維持する観点から、少ない方が好ましく、ビニル重合体(a2)の製造に使用するモノマーの全量に対して、0.01質量%〜0.5質量%とすることが好ましい。また、前記重合開始剤を前記還元剤と併用する場合には、それらの合計量の使用量も前記した範囲内であることが好ましい。
【0031】
また、前記プレエマルジョンを製造する際には、反応性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等を使用してもよい。
【0032】
前記コポリマー(A)の酸価は、酸価20mgKOH/g以上、120mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは酸価25mgKOH以上である。酸価が20mgKOH/g以上であれば、硬化剤添加時、積層体の耐摩擦性、耐水摩擦性、及び耐スクラッチ性を向上する事が出来る。
尚、ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
【0033】
前記コポリマー(A)の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲のものが好ましい。重量平均分子量5,000以上であれば、樹脂皮膜の耐熱性が低下することなく、積層体の耐摩擦性、及び耐水摩擦性を保持できる傾向にある。100,000以下であれば、積層体の基材密着性、耐スクラッチ性が兼備できる傾向にある。
【0034】
前記コポリマー(A)のガラス転移温度(Tgと称する場合がある)は、0℃〜55℃の範囲である事が好ましい。前記コポリマー(A)のTgが0℃以上であれば、皮膜強度が保たれ、積層体の耐水摩擦性が低下することなく、また55℃以下であれば、他の印刷層との相溶性が低下する事なく、積層体の耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性が良好に保たれる傾向にある。
尚、前記ガラス転移温度(Tg)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)−273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition,J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke 編)に記載された値を用いる。
また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が前記Polymer Hand Bookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC Q−100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で−100℃〜+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度とした。
【0035】
前記コポリマー(A)は、本発明の水性リキッドインキに固形分換算で5〜50質量%含有することが好ましい。前記コポリマー(A)の含有量が5質量%以上であれば、インキ塗膜強度が低下することもなく、基材密着性、耐水摩擦性等も良好に保たれる。反対に50質量%を以下であれば、着色力が低下する事が抑制でき、また高粘度となる事が避けられ、作業性が低下することもない。
【0036】
(界面活性剤)
本発明で使用する界面活性剤としては、アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤が好ましい。
本発明で使用するアセチレン系界面活性剤として具体的には、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−ヘキシン−2,5−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール等が挙げられる。又、市販品としては、サーフィノール61、82、104(いずれも、エアープロダクツ社製)等 のアルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤や、
【0037】
サーフィノール420、440、465、485、TG、2502、ダイノール604、607(いずれも、エアープロダクツ社製)、サーフィノールSE、MD−20、オルフィンE1004、E1010、PD−004、EXP4300、PD−501、PD−502、SPC(いずれも、日信化学工業(株)製)、アセチレノールEH、E40、E60、E81、E100、E200(いずれも、川研ファインケミカル(株)製)等のアルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。中でもアルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
また、本発明で使用するアルコールアルコキシレート系界面活性剤として具体的には、アルコールエトキシレート、アルコールポリエトキシレート等が挙げられ、市販品としてはDYNWET800(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
これらアセチレン系界面活性剤、アルコールアルコキシレート系界面活性剤は各々単独で使用してもよいし、2つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量の総量は、インキ全量の0.1〜1質量%である事が好ましい。これらのアセチレン系界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2つ以上組み合わせて使用しても良く、アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量の総量がインキ全量の0.1質量%以上であれば、基材との塗れ性が向上し基材との密着性を保持する事ができる。アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量の総量がインキ全量の1質量%以下であれば、耐摩耗性、耐水性摩耗性、及び耐スクラッチ性が低下する事もない。
更に必要に応じ、その他アクリルポリマー系界面活性剤(例えばポリフローWS−314共栄社化学(株)社製)や、変性シリコーン系界面活性剤(例えばポリフローKL−401共栄社化学(株)社製)を使用してもよい。
使用する界面活性剤の総量は前記理由からインキ全量の0.1〜1質量%である事が好ましい。
【0039】
(ワックス)
本発明で使用するワックスとしては、炭化水素系ワックスが好ましい。具体的には流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、エチレン−プロピレン共重合体ワックス、4フッ化エチレン樹脂ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。中でもポリエチレンワックスが好ましい。
これらのワックスは、単独で使用してもよいし、2つ以上組み合わせて使用しても良く、これらワックスの添加量の総量がインキ全量の0.5〜5質量%である事が好ましい。ワックスの添加量の総量がインキ全量の0.5質量%以上であれば、耐摩耗性、耐水性摩耗性、及び耐スクラッチ性を保持する事ができる。ワックスの添加量の総量がインキ全量の5質量%以下であれば、基材との密着性、耐摩耗性、耐水性摩耗性、及び耐スクラッチ性を保持する事ができる。
【0040】
(硬化剤)
本発明では、酸と反応しうる硬化剤を併用してもよい。酸と反応しうる硬化剤としては、特に限定されることはなく水性媒体中で使用可能な公知の硬化剤を使用することができる。例えば、エポキシ系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
【0041】
前記エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
前記カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
【0043】
前記オキサゾリン系硬化剤は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン系硬化剤としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
前記エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0044】
本発明で使用する硬化剤の添加量は、インキ全量の固形分換算で0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜9.0質量%の範囲である。
添加量が0.1質量%以上であれば硬化剤としての効果が得られる一方、10.0質量%以下であれば、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性が保持される傾向となる。
【0045】
(溶剤)
本発明の水性リキッドインキに含まれる溶剤としては、水単独または水と混和する有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール類やプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチルカルビトール等のエーテル類等が挙げられる。
【0046】
(顔料)
本発明の水性リキッドインキは、色材を含まなければ印刷後透明皮膜となり無色透明インキ(本技術分野においては、カラー印刷層の最表層にベタ印刷しカラー印刷層を保護する目的で使用することから、通称オーバーコートニス、OPニスとも称される。本発明においては以後OPニスと称する場合がある)として使用することができる。また勿論、色材を含有しいわゆる白、黒、カラー印刷用のインキとしても使用する。
色材として具体的には一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている無機顔料、有機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。以下に有機顔料として好ましいものの具体的な例を挙げる。
【0047】
黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0048】
藍色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80などが挙げられる。
【0049】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0050】
赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279、などが挙げられる。
【0051】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、などが挙げられる。
【0052】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185およびC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0053】
橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74などが挙げられる。
【0054】
茶色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26などが挙げられる。
【0055】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、
藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、
緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、
赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、
紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、
黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、
橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、
等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種または二種以上を使用することが好ましい。
【0056】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0057】
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0058】
前記顔料の平均粒子径は、1〜300nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜150nm程度のものである。
前記顔料は、水性リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ組成物の総重量に対して1〜60重量%、インキ組成物中の固形分重量比では10〜90重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0059】
(その他の成分)
本発明の水性リキッドインキは、その他必要に応じて、前記コポリマー(A)以外の汎用の樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などを含有することができる。中でも、耐摩擦性、滑り性等を付与するためのオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類、印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系や非シリコン系消泡剤、顔料の濡れを向上させる各種顔料分散剤等を含有することが多い。
【0060】
(製造方法)
本発明の水性リキッドインキは、顔料、水単独、あるいは水と水と混和する有機溶剤、顔料分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水、又は水と混和する有機溶剤、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで、本発明の水性リキッドインキが得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0061】
本発明の水性リキッドインキをフレキソインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7〜25秒であればよく、より好ましくは10〜20秒である。また、得られたフレキソインキの25℃における表面張力は、25〜50mN/mが好ましく、33〜43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0062】
一方で本発明の水性リキッドインキをグラビアインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて7〜25秒であればよく、より好ましくは10〜20秒である。また、得られたグラビアインキの25℃における表面張力は、フレキソインキと同様に25〜50mN/mが好ましく、33〜43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0063】
(印刷物)
本発明においては、本発明の水性リキッドインキを基材上に印刷し印刷層を設けることで印刷物を得る。通常は、グラビア方式やフレキソ方式の印刷方式を用いてインキを基材に塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで印刷層が得られる。乾燥温度は通常40〜60℃程度である。
【0064】
本発明においては、リキッド印刷インキをフレキソ印刷方式を用いて印刷することが高速印刷適性、印刷再現性等の面から好ましい。
フレキソ印刷は、凸版印刷の一種であり、主にゴム版を印刷版(凸版)として用い、当該刷版にインキを供給する部分にアニロックスロールと呼ばれる細かいメッシュの彫刻ロールを使用する。アニロックスロールは、チャンバ型ドクタからインキを受け取って、刷版上にインキ付けを行う役割を担っており、アニロックスロールを介することでインキを刷版に均一に転移できる利点がある。
【0065】
具体的には、隔壁及び隔壁で囲まれた開口部を多数有するアニロックスロールの表面にインキを塗布し、アニロックスロールの表面にドクタを押し付けて、アニロックスロールの隔壁天面に存在するインクを掻き落とし、開口部である凹部にインクを充填する。続いて、アニロックスロールにフレキソ版を押し付けて、アニロックスロールの凹部に存在するインクを印刷版の凸部(パターン部)に転移させ、次に版を基材に接触させて版のパターン部に存在するインクを基材に転移させて、印刷物を得る。
【0066】
また、輪転印刷方式を組み合わせてもよい。例えば、熱可塑性樹脂フィルム輪転印刷物の製造方法は、巻取り熱可塑性樹脂フィルムの表面に、水性リキッドインキを用いて輪転印刷を行う。印刷後は、ラミネート、スリット(幅部分の不要部をカット)、製袋(切り取ってヒートシールして袋にする)等の工程を行うことができる。リキッド印刷インキを巻き取り熱可塑性樹脂フィルムへ輪転印刷することにより、高速印刷が可能であり、生産性に優れる。
輪転印刷にはグラビア輪転印刷やフレキソ輪転印刷があり、どちらの方式でも構わないが、本願においては前述の通り水性リキッド印刷インキをフレキソ印刷方式を用いて印刷することが好ましいことから、ここではフレキソ輪転印刷について詳細に説明する。なお、本明細書において輪転印刷とは、グラビア輪転印刷及びフレキソ輪転印刷を意味するものであり、その他の印刷方式であるインキジェット印刷及びシルクスクリーン印刷方式を含まない。
【0067】
フレキソ輪転印刷では、リキッド印刷インキを溜める容器からインキを直接、又はインキ供給用ポンプ等を介して、表面に凹凸形状を有するアニロックスローラに供給し、このアニロックスローラに供給されたインキが、版面の凸部との接触により版面に転移し、さらに版面と熱可塑性樹脂フィルムとの接触により最終的に熱可塑性樹脂フィルムに転移して、絵柄及び/又は文字が形成される。
【0068】
水性フレキソ印刷インキを使用する場合、インキ乾燥性が溶剤型のフレキソ印刷インキよりも若干劣ることから、インキの膜厚はできるだけ薄いことが好ましい。この観点から、アロニックスローラに供給されるインキ量はできるだけ少ないことが好ましい。一方で印字濃度は膜厚が薄くなると薄くなる傾向にあるので、適宜使用する水性フレキソ印刷インキの顔料濃度をコントロールすればよい。具体的には水性フレキソ印刷インキの顔料濃度は、溶剤型のフレキソ印刷インキの濃度よりも、1〜5重量%増量した濃度であると適性な印字濃度が得られる。
【0069】
巻取り熱可塑性樹脂フィルムとは、規定の幅に揃えられたロール状の熱可塑性樹脂フィルムのことであり、1枚1枚が予め切り離されている枚葉紙とは異なる、輪転印刷用のフィルムである。フィルムの幅は、使用する輪転印刷機の版幅、及びグラビア版の画像(絵柄)部分の幅を基準として適宜選択される。
なお、複数の色の輪転印刷インキを用いて色を重ねる場合、それらの印刷の順番は特に限定されない。
【0070】
表刷り印刷を行うときは、必要に応じて先に白インキを印刷し、その後色インキを印刷するのが一般的である。色インキが複数の場合、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの順に印刷することができるが、特に制限されるものではない。表刷り印刷構成の場合、必要に応じて輪転印刷物の印刷面にオーバーコート剤を塗布することにより、耐摩耗性、及び耐水性等を向上させることができる。
基材が白色系の場合、すなわち、例えば紙基材、及び白色系顔料を練り込んだ熱可塑性樹脂フィルムの場合、必要に応じて色インキのみでの印刷も可能である。
【0071】
また裏刷り印刷を行う場合、巻取り熱可塑性樹脂フィルムに、先に色インキを印刷し、次に白インキを印刷するのが一般的である。色インキが複数色の場合、例えばブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの順に印刷することができるが、特に制限されるものではない。なお、大型印刷機では更に、前記基本色に加えて特色等を用いることができる。すなわち、大型印刷機には5〜10色に対応する複数の印刷ユニットがあり、1印刷ユニットには1色のインキが備えられ、5〜10色の重ね印刷を一度に行うことができる。
裏刷り印刷で得た印刷物は、そのままで使用することもあるし、前記方法で得られた輪転印刷物の印刷面にアンカーコート剤及び接着剤等を塗布し、必要に応じて乾燥後に、フィルム等と貼り合せてラミネート体とすることもできる。
【0072】
本発明の水性リキッドインキ(A)の印刷物は、塗膜強度、特に耐摩擦性や耐スクラッチ性に優れるので、印刷層が最表層となる形態に適している。前記表刷り印刷物や、前記裏刷り印刷物において、流通時に最表層となる面に本発明に水性リキッドインキ(A)の印刷層がある印刷物が本発明の効果を最大限に発揮でき好ましい。
【0073】
(積層体)
本発明の積層体は、基材上に版による印刷方法で本発明の水性リキッドインキによる印刷層を有する印刷物を積層構造に含む積層体であればよい。
【0074】
基材としては、例えば、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、鋼板、アルミ箔、木材、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード等が挙げられる。中でも紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム等が好ましい。またこれらの基材を複数種組み合わせた基材、例えば紙と熱可塑性樹脂フィルムとが積層された基材、熱可塑性樹脂フィルムとアルミ箔とが積層された基材であってもよい。積層方法も特に限定はなく、汎用の1液型接着剤、2液型接着剤等を使用して接着させてもよいし、複数の熱可塑性樹脂フィルムであれば押出成形によって貼り合せた積層体であってもよい。
【0075】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に限定は無く、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
これらのフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。
また、フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていれば更に基材密着性を向上させる事ができ好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、酸素ガスバリア層等のガスバリアコート層が積層されていてもよい。
い。
【0076】
基材として紙を用いる場合、基材紙としては、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙等を挙げることができる。また合成紙を用いてもよい。合成紙の構造は特に限定されず単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層と表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。また、各層は無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。また、微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
【0077】
前記基材に、本発明の水性リキッドインキによる印刷層を設けるが、印刷層は1層であっても複数層であってもよい。通常印刷時には、白、プロセスカラー(墨(ブラックとも表現する、黒系の色である)、紅(マゼンタとも表現する、赤系の色である)、藍(シアンとも表現する、青系の色である)、黄(イエローとも表現する、黄色系の色である)、及びこれらの基本色以外の特色インキを適宜組み合わせて印刷する。本発明においてはこれらの各色のインキに本発明の水性リキッドインキを使用し、または、本発明の水性リキッドインキと本発明の水性リキッドインキ以外の汎用の水性または油性のリキッドインキや、オーバーコートニスを併用することができる。使用するオーバーコートニスとしては、市販のオーバーコートニスを使用することもできるが、前述の通り本発明の水性リキッドインキにおいて色材を含まない形態のオーバーコートニスとして使用することもできる。
【0078】
これらの印刷層のより具体的な構成を次に挙げる。もちろん本発明においては本構成に限定されることはなく所望の意匠に応じた複数の印刷層で表現された印刷物及び積層体を得ることができる。
なお略語として、
本発明の水性リキッドインキによる印刷層を「本印刷層(色)」
汎用の水性リキッドインキによる印刷層を「汎用印刷層(色)」
本発明の水性リキッドインキオーバーコートニスを「本OP」
汎用の水性リキッドインキオーバーコートニスを「汎用OP」
と表現する。なお「/」は、隣接する、という意味であり、例えば「基材/本印刷層(白以外)/本OP」であれば、基材に隣接して本発明の水性リキッドインキによる印刷層(白以外)が設けられ、該印刷層(白以外)に隣接して、本発明の水性リキッドインキオーバーコートニスが設けられている。という意味となる。
【0079】
基材/本OP
基材/本印刷層(白)/本OP
基材/本印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白)/本印刷層(白)/本OP
基材/本印刷層(白以外)/本OP
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)/本OP
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(色)
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(色)/本OP
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)/本印刷層(色)
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)/本印刷層(色)/本OP
基材/汎用印刷層(白以外)/本OP
基材/汎用印刷層(白以外)/本印刷層(白)
基材/汎用印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/汎用印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/汎用印刷層(白以外)/本印刷層(白)/本印刷層(白)/本OP
基材/本印刷層(白以外)/汎用OP
基材/本印刷層(白以外)/汎用印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/汎用印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/汎用印刷層(白)/本印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/汎用印刷層(白)/本印刷層(白)/本OP
基材/本印刷層(白以外)/本印刷層(白)/汎用印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/汎用印刷層(白)/汎用印刷層(白)
基材/本印刷層(白以外)/汎用印刷層(白)/汎用印刷層(白)/本OP
【0080】
前記構成において、基材として好ましくは熱可塑性樹脂フィルムである。熱可塑性フィルムに白以外の印刷層と白印刷層とを有する印刷物とを有することで、好ましい視認性が得られる。
【0081】
(印刷インキB)
汎用の水性リキッドインキとしてより好ましくは、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキである。(以後ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂と顔料を含有する印刷インキを印刷インキ(B)と称する場合がある。)
特に基材として熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合では、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂を含有する印刷インキを熱可塑性樹脂フィルムに接するインキに使用することで、アクリル樹脂と比較して塗膜に柔軟性があり、熱可塑性樹脂フィルムに対する密着性が高くフィルム基材の変形に伴う追従性も高いため好ましい。
また、ポリウレタン樹脂又はアクリルポリウレタン樹脂は顔料分散性、印刷時の再溶解性、顔料を分散した際の発色性の点でも、アクリル樹脂に劣らない同等以上の性能が得られ顔料との相性もよい。
特にアクリルポリウレタン樹脂を含有する印刷インキは、ポリウレタン樹脂を含有する印刷インキと比較して、発色や再溶解性が良好であり、印刷時の糸曳きが発生し難い特徴がありより好ましい。なお該インキにおいて、ポリウレタン樹脂とアクリルポリウレタン樹脂とは、双方混合して使用してもよいし、必要に応じてアクリル樹脂を適宜混合して使用してもよい。
【0082】
前記印刷インキ(B)に使用するポリウレタン樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜2,000,000、酸価は10〜50mgKOH/gが望ましく、より好ましくは、重量平均分子量が、30,000〜1,500,000、20〜50mgKOH/gである。重量平均分子量が20,000以上であれば、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が低下することなく、重量平均分子量が2,000,000以下であれば、基材密着性が低下を抑制する事ができる。また酸価が10mgKOH/g以上であれば、印刷におけるインキ皮膜の水系溶剤への再溶解性が悪くなり、印刷物の調子再現性が低下することなく、リキッド印刷インキ積層体を形成した際の画像再現性が低下する事も抑制できる。一方酸価が50mgKOH/g以下であれば、樹脂の耐水性が低下することがなく、印刷層の基材密着性、耐水摩擦性の低下を抑制する事ができる。尚、ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
【0083】
前記印刷インキ(B)に使用するアクリルポリウレタン樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜2,000,000、酸価は10〜60mgKOH/gが望ましく、より好ましくは、重量平均分子量が、30,000〜1,500,000、20〜50mgKOH/gである。重量平均分子量が20,000以上であれば、耐摩擦性、及び耐水摩擦性が低下することなく、重量平均分子量が2,000,000以下であれば、基材密着性が低下を抑制する事ができる。また、酸価が10mgKOH/g以上であれば、印刷物の調子再現性が低下することなく、リキッド印刷インキ積層体としての画像再現性も良好に保持できる。
一方で、酸価が60mgKOH/g以下であれば、樹脂の耐水性が低下することなく、積層体の基材密着性、耐水摩擦性を良好に保つ事ができる。
【0084】
一方、本発明の水性リキッドインキ(A)の印刷層は、塗膜強度、特に耐摩擦性や耐スクラッチ性に優れるので、積層体の最表層即ち基材である熱可塑性樹脂フィルムから最も遠い最上層に水性リキッドインキ(A)の印刷層が設けることで、積層体の強度はより十分なものとなり、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性と言った基本的な塗膜強度がより保持される傾向にある。この時の印刷層は所望される意匠によって適宜色材を含有する色インキとしてもよく色材を含まないオーバーコートニスとして適用してもよい。色材を含有する色インキとして最もよく適用されるのは白色顔料を含有する白インキである。また、水性リキッドインキ(A)を刷り重ねて印刷層を複数層積層させることでより強固な印刷層面が得られることから、同色(例えば白インキ上に再度白インキ)を複数層重ねた印刷層とすることもある。また、色インキ(例えば白インキ)上に色材を含まないオーバーコートニスを複数層重ねた印刷層とすることもある。
【0085】
前記水性リキッドインキ(A)に、前記硬化剤を適量添加して印刷した印刷層を有する積層体では、硬化スピードが増す分、インキの粘度安定性はやや低下するものの、基材密着性、耐摩耗性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性を兼備するより強靭な積層体を得る事ができる。
【0086】
本発明の水性リキッドインキ(A)の印刷層を有する積層体は、該印刷層が、塗膜強度、特に耐摩擦性や耐スクラッチ性に優れるので、印刷層が最表層となる形態に適している。前記表刷り印刷物や、前記裏刷り印刷物において、流通時に最表層となる面に本発明に水性リキッドインキ(A)の印刷層がある印刷物が本発明の効果を最大限に発揮でき好ましい。飲料や食品用ボトルに適用するプラスチックラベル(シュリンクラベルや胴巻きラベルが該当する)や、集積包装体、外装用包装体等、様々な用途に展開可能である。
【実施例】
【0087】
以下実施例により、本発明をより詳しく説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
【0088】
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMH
HR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、アクリル樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示すものであり、各々乾燥させた水溶性樹脂を、JIS K2501に準じた水酸化カリウム・エタノール溶液による電位差滴定から算出した。
また、ガラス転移温度(Tg)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)−273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition,J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke 編)に記載された値を用いる。
また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が前記Polymer Hand Bookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC Q−100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で−100℃〜+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度とした。
【0089】
〔合成例1:シェル部アクリル樹脂(重合体a1)の作製〕
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n−プロピル60.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でメチルメタクリレート36.0部、エチルメタクリレート10.0部、n−ブチルメタクリレート20.0部、イソブチルメタクリレート10.0部、2−エチルヘキシルアクリレート10.0部、アクリル酸14.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.0部を酢酸n−プロピル40.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を8.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分55%のアクリル樹脂の水溶液を得た。酸価は105 mgKOH/g、Tgは65℃、重量平均分子量は16,000であった。
【0090】
〔合成例2:コポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(A1)の作製〕 酸価42
合成例1で調製したアクリル樹脂水溶液121.2部を仕込んだ反応容器に、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、イオン交換水195.5部を加える。窒素雰囲気下で攪拌を行いながら温度75℃まで昇温した。続いて滴下ロートを用いてメチルメタクリレート30.0部、エチルメタクリレート20.0部、n−ブチルアクリレート25.0部、2−エチルヘキシルアクリレート25.0部、30%過硫酸アンモニウム3.3部を4時間かけて滴下した。滴下完了後、更に6時間反応を行い、固形分40%のコアシェル型アクリルエマルジョン(A1)を得た。酸価は42mgKOH/g、Tgは10℃、重量平均分子量は1,200,000であった。
【0091】
〔合成例3:コポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(A2)の作製〕 酸価42
合成例1で調製したアクリル樹脂水溶液121.2部を仕込んだ反応容器に、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、イオン交換水195.5部を加える。窒素雰囲気下で攪拌を行いながら温度75℃まで昇温した。続いて滴下ロートを用いてメチルメタクリレート32.0部、ブチルアクリレート28.0部、エチルメタクリレート10.0部、イソブチルメタクリレート30.0部、30%過硫酸アンモニウム3.5部を4時間かけて滴下した。滴下完了後、更に6時間反応を行い、固形分40%のコアシェル型アクリルエマルジョン(A2)を得た。酸価は42mgKOH/g、Tgは45℃、重量平均分子量は1,200,000であった。
【0092】
〔合成例4:シェル部スチレンアクリル樹脂の作製〕
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n−プロピル65.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でスチレン36.0部、エチルメタクリレート12.0部、2−エチルヘキシルアクリレート20.0部、アクリル酸32.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.6部を酢酸n−プロピル35.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を20.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分30%のアクリル樹脂の水溶液を得た。酸価は250 mgKOH/g、Tgは61℃、重量平均分子量は10,200であった。
【0093】
〔合成例5:コポリマーを有するコアシェル型スチレンアクリルエマルジョン(A3)の作製〕 酸価100
合成例4で調製したスチレンアクリル樹脂水溶液222.2部を仕込んだ反応容器に、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、イオン交換水119.6部を加える。窒素雰囲気下で攪拌を行いながら温度75℃まで昇温した。続いて滴下ロートを用いてメチルメタクリレート32.0部、ブチルアクリレート46.0部、エチルメタクリレート10.0部、イソブチルメタクリレート18.0部、30%過硫酸アンモニウム3.5部を4時間かけて滴下した。滴下完了後、更に6時間反応を行い、固形分38.5%のコアシェル型スチレンアクリルエマルジョン(A3)を得た。酸価は100mgKOH/g、Tgは42℃、重量平均分子量は1,200,000であった。
【0094】
〔合成例6:コポリマー(B)の作製〕 酸価220
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n−プロピル65.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でスチレン45.0部、エチルメタクリレート10.0部、2−エチルヘキシルアクリレート20.0部、アクリル酸25.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.6部を酢酸n−プロピル35.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を20.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分30%のアクリル樹脂の水溶液であるコポリマー(B)を得た。酸価は220 mgKOH/g、Tgは60℃、重量平均分子量は10,000であった。
【0095】
〔合成例7:ポリウレタン樹脂(Pu)の作製〕
PLACCEL 212(ダイセル化学工業(株)製、ポリカプロラクトンジオール、水酸基価90 mgKOH/g)の186.9部およびイソホロジイソシアネート(IPDIと略す)の100.0部を仕込んだ。これを攪拌しながら、110℃に加熱した。1時間後、80℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸(DMPAと略す)の20.1部、ジブチル錫ジラウレートの0.3部および酢酸エチルの76.8部を加え、80℃で2時間反応させた。ここに、バーノック DN−980S(DIC社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20%)の18.1部とメチルエチルケトン(MEKと略す)の408部を加えた。この時のNCO基含有量は固形分換算で4.9%であった。
これを30℃以下まで冷却し、トリエチルアミンの15.2部を加え、次いでイオン交換水の1293部を加えて水中油滴(O/W)型のエマルジョンを得た。続いてジエチレントリアミン5%水溶液の234部を徐々に加え、加え終わった後60℃に昇温して30分攪拌を続けた。次いで減圧下において蒸留を行い、溶剤と水の一部を除去し、ポリウレタン樹脂(Pu)の水溶液を得た。
このものはやや乳白色を呈する半透明液体であり、少量を試験管に取ってテトラヒドロフラン(THFと略す)を加えると濁りを呈し、架橋して不溶解になっていることを示した。不揮発分39.6%で、粘度が160cpsで、pHが7.7で、平均粒子径が28.5nmであった。
【0096】
〔合成例8:アクリルウレタン樹脂(Au)の作製〕
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n−プロピル80.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でスチレン32.0部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20.0部、2−エチルヘキシルアクリレート40.0部、アクリル酸8.0部、アゾビスイソブチロニトリル3.0部を酢酸n−プロピル40.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、バーノック DN−980S(DIC社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20%)1.6部を徐々に加え、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を4.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分25%のアクリルウレタン樹脂(Au)の水溶液を得た。酸価は62 mgKOH/g、Tgは30℃、重量平均分子量は600,000であった。
【0097】
〔実施例1:OPニスの製造〕
合成例2で作製したコポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(A1)を固形分換算で35部、アセチレン系界面活性剤としてアルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール420(Cas番号:9014−85−1 日信化学工業(株)社製)0.1部、ポリエチレンワックス5部、ノルマルプロパノール4部、消泡剤0.1部、アンモニア水1.2部、水54.6部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉しOPニスを作製した。得られた水性ニスの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
【0098】
(実施例2〜24、比較例1〜13:OPニスの製造)
表1〜3、表5,6の通りの配合で、OPニスを得た。
【0099】
(実施例25:水性リキッドインキの製造〕
合成例2で作製したコポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(A1)を固形分換算で20部、酸化チタン(テイカ社製 製品名:JR−800)40部、サーフィノール420を1部、ポリエチレンワックス5部、ノルマルプロパノール3部、消泡剤0.1部、アンモニア水0.6部、水31.3部の計100部を撹拌混合した後、ビーズミルで練肉し白色の水性リキッドインキを作製した。得られた水性リキッドインキの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)である事を確認した。
【0100】
(実施例26〜33:水性リキッドインキの製造)
表4の通りの配合で、水性リキッドインキを得た。
【0101】
表中の略語は次の通りである。
・コポリマー(A1):合成例2で作成したコポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(A1)
・コポリマー(A2):合成例3で作成したコポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(A2)
・コポリマー(A3):合成例5で作成したコポリマーを有するコアシェル型スチレンアクリルエマルジョン(A3)
・コポリマー(B):合成例6で作成したコポリマー(B)
・コポリマーを有するコアシェル型アクリルエマルジョン(C):エマポリーDG−197(ガラス転移温度マイナス30℃、酸価38mgKOH/g、(株)岐阜セラック製造所製)
・アセチレン系界面活性剤:サーフィノール420(アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤 Cas番号:9014−85−1 日信化学工業(株)社製)
・アルコールアルコキシレート系界面活性剤:DYNWET800アルコールアルコキシレート系界面活性剤 ビックケミー・ジャパン社製)
・水
・ノルマルプロパノール
・ポリエチレンワックス
・消泡剤
・アンモニア水
・エポキシ硬化剤:デナコールEX−612(ソルビトールポリグリシジルエーテル ナガセケムテックス(株)社製)
・ポリウレタン(Pu):合成例7で作成したポリウレタン樹脂(Pu)
・アクリルウレタン(Au):合成例8で作成したアクリルウレタン樹脂(Au)
・顔料分散樹脂:スチレン・マレイン酸系顔料分散樹脂
・酸化チタン(IV):JR−800(テイカ社製)
・藍顔料:FASTPGEN BLUE LA5380(DIC社製)
【0102】
表1〜7に各インキ、ニスの実施例を示す。なお表中空欄は未配合であることを示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
表7に記載の参考例1,2の藍インキは、詳細の説明に記載の汎用印刷層に使用される印刷インキB等を示すものである。
【0111】
<印刷インキ積層体の作製>
[実施例]
コロナ処理ポリプロピレン二軸延伸フィルム(東洋紡績(株)製 パイレンP2161 厚さ20μm)に、縦240mm×横80mmのベタ絵柄を、Flexoproof100テスト印刷機(Testing Machines,Inc.社製、アニロックス200線/inch)を用い、アニロックスロールおよび樹脂版により、実施例または比較例で得たOPニス又は水性リキッドインキを、各々印刷速度100m/分で印刷し、得られた印刷物を40℃にて20時間エージングを行い、印刷インキ積層体を得た。
OPニス又は水性リキッドインキの印刷順序は、表8〜47に従い、第一印刷層→第二印刷層→第三印刷層→第四印刷層の順となるようにした。
【0112】
作製した2層構造の印刷インキ積層体(P1)、3層構造の印刷インキ積層体(P2)を用い、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性の評価を行い、また作成した本発明のアクリル樹脂系のインキ、ニスについて粘度安定性についても評価を行った。
【0113】
<基材密着性>
得られた印刷インキ積層体に対し、インキ塗工面にセロファンテープ(ニチバン製)を貼ったのち、強く引き剥がしてインキの剥離度合いを目視判定した。
尚、実用レベルは○△以上である。
◎ :インキが全く剥離しなかったもの
○ :インキがフィルムから僅かに剥離するもの(20%未満)
○△:インキがフィルムから剥離するもの(20%以上、40%未満)
△ :インキがフィルムから剥離するもの(40%以上、60%未満)
× :インキがフィルムから著しく剥離するもの(60%以上)
【0114】
<耐摩耗性>
得られた印刷インキ積層体を、学振型耐摩擦性試験機を用いて、上質紙にて摩擦し、インキ層の剥離度合いを目視判定した。(荷重 500gにて往復500回)
尚、実用レベルは△以上である。
◎: インキが全く剥離しなかったもの
○: インキがフィルムから僅かに剥離するもの(15%未満)
○△:インキがフィルムから剥離するもの(15%以上、30%未満)
△: インキがフィルムから剥離するもの(30%以上、50%未満)
×: インキがフィルムから著しく剥離するもの(50%以上)
【0115】
<耐水摩擦性>
得られた印刷インキ積層体を、学振型耐摩擦性試験機を用いて、含水黒綿布にて摩擦し、インキ層の剥離度合いを目視判定した。(荷重 200gにて往復500回)
尚、実用レベルは△以上である。
◎: インキが全く剥離しなかったもの
○: インキがフィルムから僅かに剥離するもの(15%未満)
○△:インキがフィルムから剥離するもの(15%以上、30%未満)
△: インキがフィルムから剥離するもの(30%以上、50%未満)
×: インキがフィルムから著しく剥離するもの(50%以上)
【0116】
<耐スクラッチ性>
得られた印刷インキ積層体に対し、爪でインキ塗工面を引掻き、塗膜の傷つき程度から耐スクラッチ性を目視評価した。
尚、実用レベルは○△以上である。
◎ :傷が生じなかったもの
○ :僅かに傷を生ずるもの
○△:○と△の中位の傷を生ずるもの
△: 傷を生ずるもの
×: 著しく傷を生ずるもの(爪を縦にしても剥がれるもの)
【0117】
<粘度安定性>
作成した本発明のアクリル樹脂系のインキ・ニスに関して、25℃にて標準を15秒とした場合の6時間後の粘度をザーンカップ#4(離合社製)を用いて評価した。
◎ :インキが全く増粘しなかったもの(+1秒未満)
○ :インキが僅かに増粘したもの(+3秒未満)
○△:インキが僅かに増粘したもの(+5秒未満)
△ :インキが増粘したもの(+10秒未満)
× :インキが著しく増粘したもの(+10秒以上)
【0118】
得られた印刷インキ積層体の構成と、評価結果を表8〜47に示す。なお表中「第一印刷層、第ニ印刷層、第三印刷層、第四印刷層」における空欄は、印刷層がないことを示す。例えば表8の積層体実施例1は、コロナ処理ポリプロピレン二軸延伸フィルム上に、第一印刷層として藍インキPU−藍を印刷し、次に第二印刷層としてOPニスA1−OP1を印刷した積層体である。また例えば表8の積層体実施例8は、コロナ処理ポリプロピレン二軸延伸フィルム上に、第一印刷層として藍インキPU−藍を印刷し、次に第二印刷層として白インキA1−白1を印刷し、次に第三印刷層としてOPニスA1−OP1を印刷した積層体である。
【0119】
【表8】
【0120】
【表9】
【0121】
【表10】
【0122】
【表11】
【0123】
【表12】
【0124】
【表13】
【0125】
【表14】
【0126】
【表15】
【0127】
【表16】
【0128】
【表17】
【0129】
【表18】
【0130】
【表19】
【0131】
【表20】
【0132】
【表21】
【0133】
【表22】
【0134】
【表23】
【0135】
【表24】
【0136】
【表25】
【0137】
【表26】
【0138】
【表27】
【0139】
【表28】
【0140】
【表29】
【0141】
【表30】
【0142】
【表31】
【0143】
【表32】
【0144】
【表33】
【0145】
【表34】
【0146】
【表35】
【0147】
【表36】
【0148】
【表37】
【0149】
【表38】
【0150】
【表39】
【0151】
【表40】
【0152】
【表41】
【0153】
【表42】
【0154】
【表43】
【0155】
【表44】
【0156】
【表45】
【0157】
【表46】
【0158】
【表47】
【0159】
この結果、次の知見が得られる。
・バインダーとしてコポリマー(A3)を使用すると、耐摩擦性に優れる。これは本発明のOPニスまたは本発明の水性インキが最表層にくる場合に顕著に表れる。
・本発明のOPニスまたは本発明の水性インキの印刷層の効果は、印刷層を複数層有する積層体の場合に特に顕著であり、基材との密着性が弱い汎用インキAU−藍を使用した場合であっても、基材密着性に特に優れる。
・本発明のOPニスまたは本発明の水性インキとして、架橋剤を併用すると、基材密着性、摩擦性、スクラッチ性に特に優れる。
・本発明の顔料が入った白インキは、架橋剤を有していても有さなくても、密着性、摩擦性、スクラッチ性に優れる。
【0160】
以上の結果から、本発明の水性リキッドインキは、粘度安定性に優れ、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度をも兼備する積層体を提供することが出来る。
更に、硬化剤を添加した系でも同様に、粘度安定性に遜色なく、硬化塗膜の基材密着性、各種塗膜強度を更に強靭とする積層体を提供することができる。
1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は1種又は2種以上のビニル系モノマーから形成され、ガラス転移温度が0℃〜55℃である酸価を有するコポリマーと、
アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤をインキ全量に対し0.1〜1質量%と、ワックスをインキ全量に対し0.5〜5質量%を含有し、
前記アセチレン系界面活性剤が、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤であり、
フレキソ印刷またはグラビア印刷に適用することを特徴とする水性ニス用又は水性リキッドインキ用組成物。