再表2020-213485IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年10月22日
【発行日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】構造体、構造体の製造方法、熱交換機用部材及び熱交換器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20211022BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20211022BHJP
【FI】
   B32B27/00 A
   C09K3/18 104
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】58
【出願番号】特願2021-514900(P2021-514900)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2019-79288(P2019-79288)
(32)【優先日】2019年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】植野 純平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀也
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】都 ▲ヒョンジョン▼
【テーマコード(参考)】
4F100
4H020
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AB00A
4F100AB10A
4F100AK01A
4F100AK17B
4F100AK31B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100GB51
4F100JB06B
4F100YY00B
4H020AA06
4H020BA31
(57)【要約】
撥水性と滑水性の両方に優れる構造体を提供する。具体的には、基材上に滑落撥水層を有する構造体であって、前記滑落撥水層が、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと、含フッ素化合物と、シリカとを含む構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に滑落撥水層を有する構造体であって、
前記滑落撥水層が、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと、含フッ素化合物と、シリカとを含む構造体。
【請求項2】
前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが前記シリカで被覆されており、前記シリカに前記含フッ素化合物が結合している請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記含フッ素化合物がパーフルオロアルキル基及び/又はパーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物である請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
前記含フッ素化合物が、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基(nは1以上の整数である)、F(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル基(nは1以上の整数であり、mは繰り返し数を示す整数である)、及びCF3O(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル基(nは1以上の整数であり、mは繰り返し数を示す整数である)からなる群から選択される1種以上と、Si(A)3で表されるシリル基(3つのAは、それぞれ独立に加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である)を有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
【請求項5】
前記含フッ素化合物が、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
【化1】
(前記式(1−1)及び(1−2)において、
Rfは、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基(nは1以上の整数である。)である。Rfが複数ある場合、複数のRfは互いに同じでも異なってもよい。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。
Xは、下記式(X−1)〜(X−11)で表される連結基のいずれかである。)
【化2】
(前記式(X−1)〜(X−11)において、
Rfは、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基(nは1以上の整数である。)である。
R11は、直接結合、又は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。R11が複数ある場合、複数のR11は互いに同じでも異なってもよい。
R12は、炭素原子数1〜6のアルキル基である。)
【請求項6】
前記含フッ素化合物が、下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
【化3】
(前記式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R21は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R23は、2価の連結基である。
Zは、3価の連結基である。
Bは、それぞれ独立に、有機基又はSi(A)3で表されるシリル基であり、2つのBのうち少なくとも1つはSi(A)3で表されるシリル基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【請求項7】
前記含フッ素化合物が、下記式(3)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
【化4】
(前記式(3)中、
PFPEは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
Y1及びY2は、それぞれ独立に、直接結合又は2価の連結基である。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、2価の連結基である。
Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【請求項8】
前記含フッ素化合物が、下記式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
(前記式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R41は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R42は、アルキレンアミノアルキレン基又はアルキレンチオアルキレン基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【請求項9】
前記加水分解性基が、アルコキシ基である請求項4〜8のいずれかに記載の構造体。
【請求項10】
前記シリカが、アルコキシシラン化合物である請求項1〜9いずれかに記載の構造体。
【請求項11】
前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、太さが10〜200nmの範囲にあり、且つ、長さが50nm〜2μmの範囲にある直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーである請求項1〜10のいずれかに記載の構造体。
【請求項12】
前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーの長軸が前記基材の表面に対して略垂直方向に向いている請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーが網目構造を形成している請求項11に記載の構造物。
【請求項14】
前記基材が、樹脂基材又は金属基材である請求項1〜13のいずれかに記載の構造体。
【請求項15】
前記基材が、アルミニウム基材である請求項1〜14のいずれかに記載の構造体。
【請求項16】
前記滑落撥水層表面の水の滑落角が5°以下である請求項1〜15のいずれかに記載の構造体。
【請求項17】
前記滑落撥水層表面の水の接触角が160°以上である請求項1〜16のいずれかに記載の構造体。
【請求項18】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させて、前記基材の表面に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を形成する工程と、
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液とを接触させて、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層中にシリカを形成する工程と、
前記シリカを形成させた前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を、含フッ素化合物で処理する工程と、
を含む構造体の製造方法。
【請求項19】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させて、前記基材の表面に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を形成する工程と、
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液とを接触させて、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層中にシリカを形成する工程と、
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー及び前記シリカを含む層からなる積層体を焼成して、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去する工程と、
前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去したシリカを含む層を、含フッ素化合物で処理する工程と、
を含む構造体の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の製造方法で得られる構造体であって、
基材上に滑落撥水層を有し、
前記滑落撥水層が、含フッ素化合物と、シリカとを含む構造体。
【請求項21】
請求項1〜17及び20のいずれかに記載の構造体である熱交換機用部材。
【請求項22】
間隙を設けて並設された複数のフィンを有する熱交換器であって、前記フィンが、その表面にポリエチレンイミン骨格を有するポリマーとパーフルオロアルキル基及び/又はパーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物を有するシラン化合物とシリカとを含む滑落撥水層を有する熱交換器。
【請求項23】
前記フィンがアルミニウムフィンである請求項22に記載の熱交換器。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の熱交換器を備える空調機又は冷却機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、構造体の製造方法、熱交換機用部材及び熱交換器
【背景技術】
【0002】
空調機、冷却機(冷蔵機、冷凍機)、電気自動車等には、熱交換器が用いられている。当該熱交換器では、小さなスペースで効率的に熱交換を行うために、熱伝導率の高い部材を用いて、単位容積あたりの表面積をできる限り大きくする構造が採用される。そのため、熱交換器では一般的に、熱伝導率が高く、軽量で加工性に優れるアルミニウム製の板を狭い間隔で並列に設置したフィンが用いられている。
【0003】
の熱交換器を備える機器の運転中において、フィン表面の温度が露点以下になると、フィン表面に結露した水滴(結露水)が付着する場合がある。特に熱交換器を備える機器が空調機の室外機であって、暖房運転時である場合、大気温度が低いために、フィン表面の結露水が凍結し、凍結した氷が核となって霜が発生する。フィン表面の霜によって通風抵抗が増大し、熱交換器の熱交換効率が著しく低下する問題があった。
【0004】
フィン表面の結露水及び霜の抑制方法としては、フィン表面に親水性塗膜を形成する方法がある。フィンを親水性とすることでフィンに付着した結露水がフィン表面に均一に広がり、フィンの潤滑性によって結露水を落下させることができる。しかしながら、フィンを親水性にした場合であっても結露水の付着そのものを防ぐことはできない。
【0005】
他のフィン表面の結露水及び霜の抑制方法としては、フィン表面に撥水性塗膜を形成する方法がある。フィンを撥水性とすることでフィン表面の結露水を弾き落とすことができる。しかしながら、フィン表面の撥水性とフィン表面の滑水性は必ずしも相関のあるものでは無く、撥水性のフィンであってもフィンの滑水性が不足しているため、結露水を十分に除去できない場合があった。
【0006】
フィン表面そのものに凹凸形状を形成したり、フィン表面に撥水性微粒子を付着させて凹凸形状とする方法も検討されているが(特許文献1−3)、結露水及び霜の除去には不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−147573号公報
【特許文献2】特開2013−36733号公報
【特許文献3】特開2013−103414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、撥水性と滑水性の両方に優れる構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、課題を解決するため鋭意検討を行った結果、基材上のポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと含フッ素化合物とシリカとを含む層が、撥水性と滑水性の両方を示すことができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らは、課題を解決するため鋭意検討を行った結果、基材上の含フッ素化合物とシリカとを含む層であって、ナノメートルオーダーの繊維状のシリカが基材表面を芝状に覆った層又はナノメートルオーダーの網目構造のシリカが基材表面を覆った層が、撥水性と滑水性の両方を示すことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、基材上に滑落撥水層を有する構造体であって、前記滑落撥水層が、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと、含フッ素化合物と、シリカとを含む構造体に関するものである。
すなわち、本発明は、基材上に滑落撥水層を有する構造体であって、前記滑落撥水層が、含フッ素化合物と、シリカとを含み、ナノメートルオーダーの繊維状のシリカが基材表面を芝状に覆った層又はナノメートルオーダーの網目構造のシリカが基材表面を覆った層である構造体に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、撥水性と滑水性の両方に優れる構造体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で製造したシリカで被覆されたポリエチレンイミンポリマーの層を備えるアルミ平板のSEM写真である。
【図2】実施例1で製造したシリカで被覆されたポリエチレンイミンポリマーの層を備えるアルミ平板のSEM写真である。
【図3】本発明の構造体を用いた熱交換器の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
<構造体>
本発明の構造体は、基材と滑落撥水層を含む積層体であって、基材上に滑落撥水層を有し、滑落撥水層は、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと、含フッ素化合物と、シリカとを含む。
本発明の構造体では、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと含フッ素化合物とシリカとを含む層が、水に対して高い撥水性と高い滑水性の両方を同時に示すことができる。
以下、本発明の構造体の各要素について説明する。
【0015】
[基材]
本発明の構造体の基材は、特に限定されず、例えば金属からなる基材(金属基材)、樹脂からなる基材(樹脂基材)等が使用できる。
前記金属基材を構成する金属としては、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銀、金、白金、又はこれらの合金等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム、銅、又はこれらの合金が好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金がより好ましい。
前記樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。
【0016】
基材には、エッチング処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施してもよい。
【0017】
基材の形状は特に限定されず、例えば平板状、曲面状等が挙げられ、用途に応じて任意の形状にするとよい。
基材の形状が平板状である場合、その厚みは特に限定されないが、例えば10μm〜1000μmであり、好ましくは50μm〜500μmである。
【0018】
[滑落撥水層]
本発明の構造体の滑落撥水層は、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと含フッ素化合物とシリカとを含む。
【0019】
(ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー)
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーのポリエチレンイミン骨格部分は、直鎖状のポリエチレンイミン、分岐状のポリエチレンイミンのいずれでもよく、直鎖状のポリエチレンイミンであると好ましい。
【0020】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーであればよく、ポリエチレンイミンの単独重合体であってもよく、ポリエチレンイミン骨格とポリエチレンイミン以外の他の繰り返し単位とを有する共重合体であってもよい。
【0021】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、ポリエチレンイミンの単独重合体である場合、前記ポリエチレンイミンの単独重合体の構造は、特に限定されず、例えば線状構造、星状構造、櫛状構造のいずれでもよい。
【0022】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、ポリエチレンイミン骨格とポリエチレンイミン以外の他の繰り返し単位とを有する共重合体である場合、前記共重合体におけるポリエチレンイミン骨格の割合は20モル%以上であると好ましい。
前記ポリエチレンイミン骨格とポリエチレンイミン以外の他の繰り返し単位とを有する共重合体は、ポリエチレンイミン骨格の繰り返し単位数が10以上であるブロック共重合体であると好ましい。
【0023】
前記ポリエチレンイミン骨格とポリエチレンイミン以外の他の繰り返し単位とを有する共重合体について、前記ポリエチレンイミン以外の他の繰り返し単位となるポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリプロピレンイミン等を挙げることができる。
これら他のポリマーを用いることにより、滑落撥水層の厚みを容易に調整することができる。
【0024】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、ポリエチレンイミン骨格に相当する部分の数平均分子量が500〜1,000,000の範囲であると好ましい。ポリエチレンイミン骨格に相当する部分の分子量がこの範囲にあることで安定した滑落撥水層とすることができる。
【0025】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、太さが10〜200nmの範囲にあり、且つ、長さが50nm〜2μmの範囲にある直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーであると好ましい。
【0026】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、塩基性のポリマーであるので極めて高い極性を有する。従って、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む滑落撥水層は、金属基材、樹脂基材等の各種基材に対して強い相互作用(吸着力)を示すことができる。
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーである場合には、その長軸が基材の表面に対して略垂直方向に向いている、又は基材上で網目構造を形成していると好ましい。
【0027】
滑落撥水層が含むポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(シリカ)
本発明の滑落撥水層が含むシリカとしては、例えば、アルコキシシラン化合物、水ガラス、ヘキサフルオロシリコンアンモニウム等を挙げることができ、これらのなかでもアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0029】
前記アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン縮合体のオリゴマー、テトラエトキシシラン、エトキシシラン縮合体のオリゴマー、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、テトラメトキシシラン縮合体のオリゴマー(メチルシリケート)が好ましい。
尚、滑落撥水層が含むシリカは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(含フッ素化合物)
含フッ素化合物は、フッ素原子を含む化合物であればよく、パーフルオロアルキル基及び/又はパーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物であると好ましく、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基(nは1以上の整数である)、F(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル基(nは1以上の整数であり、mは繰り返し数を示す整数である)、及びCF3O(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル基(nは1以上の整数であり、mは繰り返し数を示す整数である)からなる群から選択される1種以上と、Si(A)3で表されるシリル基(3つのAは、それぞれ独立に加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である)を有する化合物であるとより好ましい。
含フッ素化合物が、Si(A)3で表されるシリル基を有することで、滑落撥水層中のシリカ表面の水酸基と前記加水分解性基が反応して結合を形成することができると推測される。
【0031】
前記CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基において、nは1〜10であると好ましく、1〜6であるとより好ましい。
【0032】
前記F(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル基において、nは1〜6であると好ましく、2〜6であるとより好ましく、1〜3であるとさらに好ましく、mは、例えば平均5〜100であり、平均8〜80であると好ましく、平均10〜60であるとより好ましい。
【0033】
前記CF3O(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル基において、nは1〜6であると好ましく、2〜6であるとより好ましく、1〜3であるとさらに好ましく、mは、例えば平均5〜100であり、平均8〜80であると好ましく、平均10〜60であるとより好ましい。
【0034】
含フッ素化合物は、(CnF2nO)mで表されるパーフルオロポリエーテル鎖(nは1以上の整数であり、mは繰り返し数を示す整数である)を含んでもよい。
【0035】
前記加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基等のアルコキシ基置換アルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトキシム基、メチルエチルケトキシム基、ジエチルケトキシム基、シクロヘキサンオキシム基等のイミンオキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の置換アミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアミド基等のアミド基;ジメチルアミノオキシ基、ジエチルアミノオキシ基等の置換アミノオキシ基;塩素等のハロゲン等が挙げられる。
これら加水分解性基の中でも、加水分解の速度が早く、耐久性に優れる被膜を迅速に形成することができることからアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましく、メトキシ基が最も好ましい。
【0036】
前記非加水分解性基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。
これら非加水分解性基の中でも、立体障害を避けて加水分解速度を早くでき、その結果、耐久性に優れる被膜を迅速に形成することができることから炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0037】
Si(A)3で表されるシリル基中の加水分解性基の数は少なくとも1つであり、より耐久性に優れる被膜が形成できることから2つ以上が好ましく、3つ全てが加水分解性基であるとより好ましい。
尚、Si(A)3で表されるシリル基中の加水分解性基が2以上ある場合、2以上の加水分解性基は互いに同じでも異なってもよい。また、Si(A)3で表されるシリル基が2以上ある場合、少なくとも1つのSi(A)3で表されるシリル基が加水分解性基を有すればよい。同様に、Si(A)3で表されるシリル基中の非加水分解性基が2以上ある場合、2以上の非加水分解性基は互いに同じでも異なってもよい。
【0038】
前記含フッ素化合物は、好ましくは下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物である。
【0039】
【化1】
(前記式(1−1)及び(1−2)において、
Rfは、それぞれ独立に、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基(nは1以上の整数である。)である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。
Xは、下記式(X−1)〜(X−11)で表される連結基のいずれかである。)
【0040】
【化2】
(前記式(X−1)〜(X−11)において、
Rfは、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基(nは1以上の整数である。)である。
R11は、直接結合、又は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。R11が複数ある場合、複数のR11は互いに同じでも異なってもよい。
R12は、炭素原子数1〜6のアルキル基である。)
【0041】
式(1−1)及び(1−2)において、CnF2n+1で表されるパーフルオロアルキル基及びSi(A)3で表されるシリル基の好ましい形態については、それぞれ上述した通りである。
【0042】
式(1−1)又は(1−2)で表される化合物の具体例としては、例えば下記が挙げられる。
【0043】
【化3】
【0044】
式(1−1)又は(1−2)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができ、例えば国際公開番号WO2015/152265に開示の方法により製造できる。
【0045】
前記含フッ素化合物は、好ましくは下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物である。
【0046】
【化4】
(前記式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R21は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R23は、2価の連結基である。
Zは、3価の連結基である。
Bは、それぞれ独立に、有機基又は−Si(A)3で表されるシリル基であり、2つのBのうち少なくとも1つはSi(A)3で表されるシリル基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0047】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、rの繰り返し数は、平均5〜100であると好ましく、平均で8〜80がより好ましく、平均で10〜60がさらに好ましい。
【0048】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、R21の炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、炭素原子数3のアルキレン基が好ましい。
【0049】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、Si(A)3で表されるシリル基の好ましい形態については、上述した通りである。
【0050】
式(2−1)及び(2−2)において、Bが有機基である場合、当該有機基としては、例えば、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、フェニル基等が挙げられる。
Bの有機基が置換アルキル基である場合、当該置換アルキル基としては、例えば、炭素原子数1〜6の部分フッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0051】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、R23の2価の連結基としては、下記式(R−1)で表される連結基、又は下記式(R−2)で表される連結基が好ましい。
【0052】
【化5】
(前記式(R−1)及び(R−2)中、
R24は炭素原子数1〜3のアルキレン基である。
R25は直接結合又は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R26は炭素原子数1〜5のアルキレン基である)
【0053】
式(R−1)で表される連結基の具体例としては、下記が挙げられる。
【0054】
【化6】
【0055】
式(R−2)で表される連結基の具体例としては、下記が挙げられる。
【0056】
【化7】
【0057】
式(R−1)及び(R−2)表される連結基としては、式(R−1−1)、(R−1−3)、(R−1−4)、(R−2−5)、(R−2−6)、(R−2−8)で表される連結基が好ましく、式(R−1−3)及び(R−1−4)で表される連結基がより好ましい。
【0058】
式(2−2)及び(2−4)におけるZの3価の連結基としては、好ましくは炭素原子数4〜8の3価の環状脂肪族基であり、より好ましくは3価のシクロヘキシル基である。
【0059】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物の具体例としては、例えば下記が挙げられる。
【0060】
【化8】
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
(前記式(2−1−11)及び(2−1−12)中、aは1〜6の整数である。)
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】
【化15】
【0068】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
以下、式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物の製造方法の一実施形態について説明する。
【0069】
式(2−1)及び(2−2)で表される化合物の製造方法は、例えば下記式(β−1)で表されるカルボン酸と、下記式(β−2)又は下記式(β−3)で表されるエポキシシラン化合物とを反応させて、エポキシ基由来の2級水酸基を有する反応物を調製する第1工程と、前記第1工程で得られた反応物と下記式(βー4)で表されるイソシアネート化合物とを反応させる第2工程を含む。
【0070】
【化16】
(前記式(β−1)中、rは繰り返し数である。)
【0071】
【化17】
(前記式(β−2)及び式(β−3)中、
R23は、2価の連結基である。
Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0072】
【化18】
(前記式(β−4)中、
R21は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0073】
式(β−2)で表される化合物の代わりに、下記式(β−5)で表される化合物を用いてもよい。
【0074】
【化19】
(前記式(β−5)中、
R23は、2価の連結基である。
Gは、有機基である。)
【0075】
式(2−3)及び(2−4)で表される化合物を製造する場合は、前記第1工程を含めばよく、前記第2工程を省略することができる。
【0076】
式(β−2)で表される化合物の具体例としては、下記が挙げられる。
【0077】
【化20】
【0078】
式(β−3)で表される化合物の具体例としては、下記が挙げられる。
【0079】
【化21】
【0080】
式(β−4)で表される化合物の具体例としては、下記が挙げられる。
【0081】
【化22】
(式中、R21は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、炭素原子数1〜3のアルキレン基が好ましく、n−プロピレン基がより好ましい)
【0082】
式(β−5)で表される化合物の具体例としては、下記が挙げられる。
【0083】
【化23】
(aは1〜6の整数である。)
【0084】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物の製造方法では、必要に応じて有機溶剤存在下で行ってもよい。
前記有機溶剤としては、原料である化合物群を溶解するできるものであれば特に制限されず、例えば、イソシアネート基との反応性を有さないアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の溶剤やフッ素系有機溶剤を用いることができる。
【0085】
前記フッ素系の溶剤としては、例えば、1、3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロトルエン等の含フッ素芳香族炭化水素系溶剤;パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン等の炭素数3〜12のパーフルオロカーボン系溶剤;1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン等のハイドロフルオロカーボン系溶剤;C3F7OCH3,C4F9OCH3,C4F9OC2H5,C2F5CF(OCH3)C3F7等のハイドロフルオロエーテル系溶剤;フォンブリン、ガルデン(ソルベイ製)、デムナム(ダイキン工業製)、クライトックス(ケマーズ製)等のパーフルオロポリエーテル系化合物等を好ましく例示することができる。
【0086】
前記第1工程において、化合物(β−1)と化合物(β−2)又は化合物(β−3)との反応割合は、化合物(β−1)が有するカルボキシル基と化合物(β−2)又は化合物(β−3)が有するエポキシ基との当量比(カルボキシル基/エポキシ基)が、0.5〜1.5となる割合が好ましく、0.9〜1.1となる割合がより好ましく、0.98〜1.02となる割合がさらに好ましい。
【0087】
前記第1工程の反応温度は特に限定されず、通常50〜150℃である。また、反応時間についても特に限定されず、通常1〜10時間である。
【0088】
前記第2工程において、前記第1工程で得られるエポキシ基由来の2級水酸基を有する反応物と化合物(β−4)との反応割合は、前記反応物が有する水酸基と化合物(β−4)が有するイソシアネート基との当量比(水酸基基/イソシアネート基)が、0.5〜1.5となる割合が好ましく、0.9〜1.1となる割合がより好ましく、0.98〜1.02となる割合がさらに好ましい。
【0089】
前記第2工程の反応温度は特に限定されず、通常30〜120℃である。また、反応時間についても特に限定されず、通常1〜10時間である。
【0090】
前記含フッ素化合物は、好ましくは下記式(3)で表される化合物である。
【0091】
【化24】
(前記式(3)中、
PFPEは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
Y1及びY2は、それぞれ独立に、直接結合又は2価の連結基である。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、2価の連結基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0092】
式(3)で表される化合物は骨格中にウレタン結合を有する。このウレタン結合を有することにより、両末端にある加水分解性基の近傍の極性を向上させ、シリカとの反応性が良好となる。
【0093】
式(3)において、Si(A)3で表されるシリル基の好ましい形態については、上述した通りである。
【0094】
式(3)において、Y1、Y2、Z1及びZ2の2価の連結基としては、例えば、炭素原子数1〜22のアルキレン基等が挙げられる。前記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−メチルブチレン基、2−メチル−2−ブチレン基、3−メチルブチレン基、3−メチル−2−ブチレン基、ペンチレン基、2−ペンチレン基、3−ペンチレン基、3−ジメチル−2−ブチレン基、3,3−ジメチルブチレン基、3,3−ジメチル−2−ブチレン基、2−エチルブチレン基、ヘキシレン基、2−ヘキシレン基、3−ヘキシレン基、2−メチルペンチレン基、2−メチル−2−ペンチレン基、2−メチル−3−ペンチレン基、3−メチルペンチレン基、3−メチル−2−ペンチレン基、3−メチル−3−ペンチレン基、4−メチルペンチレン基、4−メチル−2−ペンチレン基、2,2−ジメチル−3−ペンチレン基、2,3−ジメチル−3−ペンチレン基、2,4−ジメチル−3−ペンチレン基、4,4−ジメチル−2−ペンチレン基、3−エチル−3−ペンチレン基、ヘプチレン基、2−ヘプチレン基、3−ヘプチレン基、2−メチル−2−ヘキシレン基、2−メチル−3−ヘキシレン基、5−メチルヘキシレン基、5−メチル−2−ヘキシレン基、2−エチルヘキシレン基、6−メチル−2−ヘプチレン基、4−メチル−3−ヘプチレン基、オクチレン基、2−オクチレン基、3−オクチレン基、2−プロピルペンチレン基、2,4,4−トリメチルペンチレン基、デカオクチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。
【0095】
式(3)のZ1及びZ2の2価の連結基は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキレン基であると好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、1〜3のアルキレン基がさらに好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
【0096】
式(3)のY1及びY2の2価の連結基は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0097】
式(3)のPFPE(ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖)としては、例えば、炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有する連結基が挙げられる。
前記炭素原子数1〜3のパーフルオロアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有する連結基としては、下記式(P−1)で表される連結基が挙げられる。
【0098】
【化25】
(前記式(P−1)中、
*は結合手である。
Xはパーフルオロアルキレン基である。
複数のXのパーフルオロアルキレン基は、互いに同じでも異なってもよい。複数のXにおいて、2種以上のパーフルオロアルキレン基がランダムに又はブロック状に存在していてもよい。
nは繰り返し数である。nは例えば6〜300であり、12〜200が好ましく、20〜150がより好ましく、30〜100がさらに好ましく、35〜70が最も好ましい。)
【0099】
Xのパーフルオロアルキレン基としては、下記構造が例示できる。
【0100】
【化26】
【0101】
これらのなかでも、Xはパーフルオロメチレン基(a)とパーフルオロエチレン基(b)が好ましく、工業的に得られやすい点も含めると、パーフルオロメチレン基(a)とパーフルオロエチレン基(b)とが共存するものより好ましい。
前記パーフルオロメチレン基(a)とパーフルオロエチレン基(b)とが共存する場合、その存在比(a/b)(個数の比)は1/10〜10/1が好ましく、3/10〜10/3がより好ましい。
【0102】
式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば下記が挙げられる。
【0103】
【化27】
【0104】
【化28】
【0105】
式(3)で表される化合物において、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖1本に含まれるフッ素原子の合計が30〜600個の範囲であることが好ましく、60〜450個の範囲であることがより好ましく、90〜300個の範囲がさらに好ましく、100〜200個の範囲であることが最も好ましい。
【0106】
式(3)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。以下、式(3)で表される化合物の製造方法の一実施形態について説明する。
【0107】
式(3)で表される化合物は、下記式(α−1)で表されるジオールと、下記式(α−2)で表されるイソシアネートとを反応させることにより製造することができる。
【0108】
【化29】
(前記式(α−1)及び(α−2)中、
PFPEは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
Y1及びY2は、それぞれ独立に、直接結合又は2価の連結基である。
Zは、2価の連結基である。
Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0109】
式(α−1)及び(α−2)中のPFPE、Y1、Y2、Z及びSi(A)3は、式(3)のPFPE、Y1、Y2、Z1とZ2及びSi(A)3にそれぞれ対応する。
【0110】
式(α−1)で表されるジオールとしては、例えば下記式(α−1−1)で表されるジオール、下記式(α−1−2)で表されるジオール等が挙げられる。
【0111】
【化30】
【0112】
式(α−2)で表されるイソシアネートとしては、下記式(α−2−1)〜(α−2−12)で表されるイソシアネート等が挙げられる。
【0113】
【化31】
【0114】
式(α−2−1)〜(α−2−12)で表されるイソシアネート化合物中のZは、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、1〜3のアルキレン基がさらに好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
【0115】
式(α−1)で表されるジオールと式(α−2)で表されるイソシアネートとの反応(ウレタン化)の際には、式(α−1)で表されるジオールに含まれるOH基1モルに対して、式(α−2)で表されるイソシアネートを、0.5〜1.5モルになるように仕込むのが好ましく、0.9〜1.1モルとなるように仕込むのがより好ましく、0.98〜1.02モルとなるように仕込むのが最も好ましい。
【0116】
ウレタン化反応を促進させるために、式(α−1)であらわされるジオールと式(α−2)で表されるイソシアネートとを反応させる際に、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート、2−エチルヘキサン酸錫等の錫化合物を触媒として添加してもよい。
前記触媒の添加量は、反応混合物全体に対して0.001〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0質量%で、さらに好ましくは0.02〜0.2質量%である。反応時間は1〜10時間が好ましい。
【0117】
式(α−1)であらわされるジオールと式(α−2)で表されるイソシアネートとの反応において、反応系は無溶剤系であってもよいし、イソシアネート基との反応性を有さないアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶剤;C4F9C2H5、(CF3)2CFCHFCHFCF3、C6F13H、C6F13C2H5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C2F5CF(OCH3)C3F7、HCF2CF2OCH2CF3等のフッ素系溶剤を反応溶剤とした溶剤系であってもよい。
反応温度は30〜120℃が好ましく、より好ましくは40〜90℃がより好ましい。
【0118】
前記含フッ素化合物は、好ましくは下記式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される化合物である。
【0119】
【化32】
(前記式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R41は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R42は、アルキレンアミノアルキレン基又はアルキレンチオアルキレン基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0120】
式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、rの繰り返し数、及びSi(A)3で表されるシリル基の好ましい形態については、それぞれ上述した通りである。
【0121】
式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、R41の炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、炭素原子数3のアルキレン基が好ましい。
【0122】
式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、R42のアルキレンアミノアルキレン基は、2つアルキレン基がアミノ結合(−NH−)で連結した基であり、アルキレンチオアルキレン基は2つアルキレン基がチオ結合(−S−)で連結した基である。ここで、アルキレンアミノアルキレン基及びアルキレンチオアルキレン基のアルキレン基は、それぞれ独立に炭素原子数1〜6のアルキレン基であると好ましい。
【0123】
式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される化合物の具体例としては、例えば下記が挙げられる。
【0124】
【化33】
【0125】
式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される化合物の製造方法は、式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物の製造方法と同様の方法が採用できる。
例えば、下記式(γ−1)で表されるアルコールと、上述の式(β−4)で表されるイソシアネート化合物とを反応させることにより式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される化合物を製造することができる。
反応条件やその他原料等については、式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される化合物の製造方法と同じ反応条件やその他原料を採用するとよい。
【0126】
【化34】
(前記式(γ−1)中、rは繰り返し数である。)
【0127】
前記含フッ素化合物は、好ましくは下記式(5−1)、(5−2)又は(5−3)で表される化合物である。
【0128】
【化35】
(前記式(5−1)、(5−2)及び(5−3)において、
lは繰り返し数を示す整数である。
mは繰り返し数を示す整数である。
R51は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R52は、アルキレンアミノアルキレン基又はアルキレンチオアルキレン基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【0129】
式(5−1)、(5−2)及び(5−3)において、l及びmの繰り返し数、並びにSi(A)3で表されるシリル基の好ましい形態については、それぞれ上述した通りである。
【0130】
式(5−1)、(5−2)及び(5−3)において、R51の炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、炭素原子数3のアルキレン基が好ましい。
【0131】
式(5−1)、(5−2)及び(5−3)において、R52のアルキレンアミノアルキレン基は、2つアルキレン基がアミノ結合(−NH−)で連結した基であり、アルキレンチオアルキレン基は2つアルキレン基がチオ結合(−S−)で連結した基である。ここで、アルキレンアミノアルキレン基及びアルキレンチオアルキレン基のアルキレン基は、それぞれ独立に炭素原子数1〜6のアルキレン基であると好ましい。
【0132】
式(5−1)、(5−2)又は(5−3)で表される化合物の具体例としては、例えば下記が挙げられる。
【0133】
【化36】
【0134】
式(5−1)、(5−2)又は(5−3)で表される化合物の製造方法は、式(4−1)、(4−2)又は(4−3)で表される化合物の製造方法と同様の方法が採用できる。
例えば、上述の式(γ−1)で表されるアルコールの代わりに下記式(δ−1)で表されるアルコールを用いることにより、式(5−1)、(5−2)又は(5−3)で表される化合物を製造することができる。
【0135】
【化37】
(前記式(δ−1)中、
lは繰り返し数である。
mは繰り返し数である。)
【0136】
滑落撥水層中の含フッ素化合物は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
(その他成分)
滑落撥水層は、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと含フッ素化合物とシリカとを含めばよく、本発明の効果を損なわない範囲で、その他成分を含んでもよい。
【0138】
滑落撥水層は、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと含フッ素化合物とシリカのほかにその他の成分を含んでもよく、含まなくてもよい。
滑落撥水層は、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー、含フッ素化合物、及びシリカから実質的になると好ましく、この時、前記滑落撥水層は不可避不純物を含んでもよい。
【0139】
滑落撥水層中の、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと含フッ素化合物とシリカは、好ましくは前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが前記シリカで被覆されており、前記シリカに前記含フッ素化合物が結合しているポリエチレンイミン−シリカ複合体を形成している。
【0140】
ポリエチレンイミン−シリカ複合体中のポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーである場合であって、その長軸が基材の表面に対して略垂直方向に向いている場合には、ナノメートルオーダーの繊維状の複合体が基材表面を芝状に覆った状態となる(この状態を「ナノ芝」という場合がある)。
また、ポリエチレンイミン−シリカ複合体中のポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーである場合であって、基材上で網目構造を形成している場合には、ナノメートルオーダーの網目構造が基材表面を覆った状態となる(この状態を「ナノスポンジ」という場合がある)。
【0141】
基材表面のポリエチレンイミン−シリカ複合体がナノ芝又はナノスポンジとなっているとき、滑落撥水層の表面は微細な凹凸構造となっており、本発明の構造体の撥水効果及び滑水効果を高めていると推測される。
【0142】
本発明の他の構造体は、基材上に含フッ素化合物とシリカとを含む滑落撥水層を有する構造体であって、滑落撥水層中のシリカがナノ芝形状又はナノスポンジ形状を有する。
後述する製造方法により、滑落撥水層に含まれるポリエチレンイミン−シリカ複合体からポリエチレンイミンのみを除去して、ナノ芝形状又はナノスポンジ形状のシリカを形成することができ、本構造体は、滑落撥水層がポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含まなくても、撥水性と滑水性の両方を示すことができる。
本構造体は、滑落撥水層がポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含まない他は上述の構造体と同じであり、基材、含フッ素化合物、シリカ等の好ましい態様は、上述した基材、含フッ素化合物、シリカ等と同じである。
【0143】
<構造体の製造方法>
本発明の構造体の製造方法は、下記工程(1)、(2)及び(3)を含む:
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させて、前記基材の表面に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を形成する工程(工程(1))
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液とを接触させて、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層中にシリカを形成する工程(工程(2))
前記シリカを形成させた前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を、含フッ素化合物で処理する工程(工程(3))
【0144】
工程(1)において、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、本発明の構造体の滑落撥水層が含むポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと同じであり、基材は本発明の構造体の基材と同じである。
【0145】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの溶液の調製に用いる溶媒は、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶解することができる溶媒であれば特に限定されず、メタノール、エタノール等の有機溶剤、水、これらの混合溶媒等を用いることができる。
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液における、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの濃度としては、例えば0.5質量%〜50質量%であり、好ましくは1.0質量%〜20質量%であり、より好ましくは1.0質量%〜10質量%である。
【0146】
ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの溶液は、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー以外のその他のポリマーを含んでもよく、含まなくてもよい。
前記その他のポリマーは、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと相溶可能であると好ましい。
前記その他のポリマーの濃度は適宜設定することができる。
【0147】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液との接触は、特に限定されず、前記基材を前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液に浸漬させる、前記基材に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液を塗布する等により行うことができ、前記基材を前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液に浸漬させるが好ましい。
【0148】
前記基材を前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液に浸漬させる場合、浸漬前に前記基材を洗浄液に浸漬して洗浄すると好ましい。
前記洗浄液としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤、水、エタノール、イソプロパノール、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、これらの混合液等が挙げられる。
基材を洗浄液で洗浄しておくことで、基材表面の油等の汚れを除去し、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー含む層の形成をスムーズに行うことができる。
【0149】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液との接触の際には、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液を室温より高い温度としておくとよく、50〜90℃にすると好ましい。
前記接触させる時間は特に限定されず、前記基材の材質及び大きさに合わせて、数秒〜1時間の範囲で適宜設定するとよい。例えば前記基材が金属基材である場合、接触させる時間は数秒〜数分でよく、例えば前記基材が樹脂基材である場合、接触させる時間は数十分〜1時間でよい。
【0150】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させた後、接触後の基材を室温(25℃前後)に放置することで、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶化が進み、前記基材表面上にポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの集合体(ナノ芝又はナノスポンジ)を形成することができる。
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させた後、4〜30℃の水、又は室温〜氷点下温度のアンモニア水溶液と接触させることによっても、前記基材表面上にポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの集合体(ナノ芝又はナノスポンジ)を形成することができる。
【0151】
工程(2)において、シリカソース液とは、本発明の構造体の滑落撥水層が含むシリカの溶液であり、好ましくはアルコキシシラン化合物の溶液である。
シリカソース液としては、例えば、シリカの水溶液、シリカのアルコール溶液、シリカの水とアルコールの混合溶媒溶液等が挙げられる。ここで前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。シリカソース液における、シリカの濃度としては、例えば0.5質量%〜50質量%であり、好ましくは1.0質量%〜20質量%であり、より好ましくは1.0質量%〜10質量%である。
シリカソース液として、pH値が9〜11の範囲に調整した水ガラス水溶液も用いることができる。また、シリカがアルコキシシラン化合物である場合は、シリカソース液として無溶剤のアルコキシシラン化合物バルク液を用いることができる。
【0152】
基材及びポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液との接触は、特に限定されず、前記積層体をシリカソース液に浸漬させる、前記積層体のポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層にシリカソース液を塗布する等により行うことができ、前記積層体をシリカソース液に浸漬させるが好ましい。
【0153】
基材及びポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体とシリカソース液との接触の際には、シリカソース液の温度は室温でもよく、加熱して室温より高い温度としてもよい。シリカソース液を室温より高い温度とする場合、シリカの形成を規則的にするため、70℃以下に設定するとよい。
前記接触させる時間は特に限定されず、積層体の大きさ等に合わせて適宜設定するとよく、例えば5〜60分である。
【0154】
基材及びポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体とシリカソース液とを接触させることで、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー表面においてシリカソースが加水分解的に縮合して、シリカを生成させることができる。これによりポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの表面の一部又は全部を被覆するシリカを形成することができる。
【0155】
基材及びポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体とシリカソース液との接触後、例えば、室温で数分放置し、その後40〜200℃で5〜60分で乾燥させることにより、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの一部又は全部を被覆するシリカを形成することができる。
乾燥温度は40〜150℃であると好ましく、乾燥時間は30〜60分であると好ましい。
【0156】
工程(3)において、含フッ素化合物とは、本発明の構造体の滑落撥水層が含むフッ素化合物と同じである。
含フッ素化合物は、例えば、当該含フッ素化合物を溶剤に溶解した溶液の状態であると好ましい。含フッ素化合物の溶剤としては、1、3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロトルエン等の含フッ素芳香族炭化水素系溶剤;パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン等の炭素数3〜12のパーフルオロカーボン系溶剤;1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン等のハイドロフルオロカーボン系溶剤;C3F7OCH3、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C2F5CF(OCH3)C3F7等のハイドロフルオロエーテル系溶剤;フォンブリン、ガルデン(ソルベイ製)、デムナム(ダイキン工業製)、クライトックス(ケマーズ製)等のパーフルオロポリエーテル系化合物等が挙げられる。
【0157】
前記含フッ素化合物を溶剤に溶解した溶液における、含フッ素化合物の濃度としては、例えば0.01質量%〜10質量%であり、好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
【0158】
シリカを形成させたポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層の、含フッ素化合物による処理は、例えば基材及びシリカとポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、含フッ素化合物との接触である。
基材及びシリカとポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、含フッ素化合物との接触は、特に限定されず、前記積層体を含フッ素化合物溶液に浸漬させる、前記積層体のシリカとポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層に含フッ素化合物溶液を塗布する等により行うことができ、前記積層体を含フッ素化合物溶液に浸漬させるが好ましい。
【0159】
前記積層体と含フッ素化合物との接触後、例えば、室温で数分放置し、その後40〜200℃で5〜60分で乾燥させることにより、より効率良く、生成したシリカに含フッ素化合物を結合させることができる。
乾燥温度は40〜150℃であると好ましく、乾燥時間は30〜60分であると好ましい。
【0160】
本発明の構造体の製造方法の他の実施形態としては、下記工程(1)、(2)、(4)及び(5)を含む:
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させて、前記基材の表面に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を形成する工程(工程(1))
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液とを接触させて、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層中にシリカを形成する工程(工程(2))
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー及び前記シリカを含む層からなる積層体を焼成して、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去する工程(工程(4))
前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去したシリカを含む層を、含フッ素化合物で処理する工程(工程(5))
【0161】
他の本発明の構造体の製造方法では、基材及びポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体とシリカソース液との接触させ、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの一部又は全部を被覆するシリカを形成させた後、焼成をしてポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去する。
焼成によってポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは除去されるが、生成したシリカは、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの形状を維持することができる。例えば、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーがナノ芝を形成していた場合、シリカからなるナノ芝を形成することができ、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーがナノスポンジを形成していた場合、シリカからなるナノスポンジを形成することができる。
【0162】
基材、及びポリエチレンイミン骨格を有するポリマーとシリカとを含む層からなる積層体の焼成の条件は、例えば焼成温度を300〜600℃の範囲に設定し、焼成時間を1〜7時間の範囲に設定するとよい。
【0163】
他の本発明の構造体の製造方法の工程(5)の含フッ素化合物を用いる処理は、工程(3)と同様の処理をするとよい。
【0164】
<熱交換器用部材>
本発明の構造体は、好ましくは滑落撥水層表面の水の滑落角が5°以下である。また、本発明の構造体は、好ましくは滑落撥水層表面の水の接触角が160°以上である。滑落角及び接触角はそれぞれ実施例に記載の方法で評価する。
本発明の構造体は、滑落撥水層がポリエチレンイミン骨格を有するポリマーとシリカと含フッ素化合物とを含む層、又は滑落撥水層がナノ芝形状又はナノスポンジ形状のシリカと含フッ素化合物とを含む層であり、優れた撥水性と優れた滑水性の両方を同時に示すことができる。したがって、本発明の構造体を熱交換器用部材として用いることで、基材表面に結露水及び/又は霜が付着することを抑制することができ、高い熱交換効率を実現することができる。
【0165】
図3は本発明の構造体を用いた熱交換器の一実施形態を示す概略図である。
図3の熱交換器1は、間隙を設けて並設された複数のフィン2と、前記複数のフィン2に組み付けられる伝熱管4とを有する。熱交換器1においてフィン2が本発明の構造体に対応する。
フィン2は、熱交換器1において伝熱面積を増加させるための平板部材であり、複数のフィン2は一定の間隙を持って互いに略並行に配置されている。伝熱管4は、内部に冷媒が流れる円筒状の管であって、一方端6及び他方端7を有する。伝熱管4は、所定の回数折り曲げられており、フィン2を複数回貫通するように配置されている。
【0166】
熱交換器1を備えた装置の稼動時には、冷媒が一方端6から伝熱管4内に流入し、一方で熱交換器1に空気が送られる。そして熱交換器1において空気と冷媒との熱交換が行われ、冷媒は他方端7から流出する。
本発明の構造体を用いた熱交換器1は、運転中にフィン2の表面の温度が露点以下になって結露した水滴が発生したとしても、フィン2表面で撥水し、滑落させることができる。これによりフィン2表面の着霜も抑制することができる。
【0167】
熱交換器1において、複数のフィン2は主表面が互いに対向するように並設される。ここで複数のフィン2の主表面間の間隙の距離は、好ましくは0.5mm以上3.0mm以下であり、より好ましくは1.0mm以上2.0mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以上2.0mm以下である。
【0168】
本発明の熱交換器は、種種のタイプ、例えばクロスフィン式、マイクロチャネル式等、いずれのタイプであってもよい。
また、本発明の熱交換器は、例えば、空調機、冷却機(冷蔵機、冷凍機)、電気自動車等に用いることができる。
【実施例】
【0169】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例のみに限定されない。
【0170】
合成例1
<直鎖状のポリエチレンイミン(L−PEI)の合成>
市販のポリエチルオキサゾリン(数平均分子量50,000,平均重合度5,000,Aldrich社製)3gを、5モル/Lの塩酸15mLに溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加熱し、その温度で10時間攪拌した。反応液にアセトン50mLを加え、ポリマーを完全に沈殿させ、得られた沈殿物を濾過し、メタノールで3回洗浄し、白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。
得られた粉末を1H−NMR(重水、日本電子株式会社製、AL300、300MHz)にて同定したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖エチル基に由来したピーク1.2ppm(CH3)と2.3ppm(CH2)が完全に消失していることが確認された。即ち、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
この粉末を5mLの蒸留水に溶解し、溶液を攪拌しながら、15%のアンモニア水50mLを滴下した。得られた混合液を一晩放置した後、沈殿したポリマー会合体粉末を濾過し、濾過して得られたポリマー会合体粉末を冷水で3回洗浄した。洗浄後の結晶粉末をデシケータ中で室温乾燥し、線状のポリエチレンイミン(L−PEI)を得た。
線状ポリエチレンイミンの収量は2.2g(結晶水含有)であった。ポリオキサゾリンの加水分解により得られるポリエチレンイミンは、側鎖だけが反応し、主鎖には変化がない。従って、L−PEIの重合度は加水分解前の5,000と同じである。
【0171】
合成例2
<パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物の合成>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶剤として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン60.62gと、下記式で表されるカルボン酸(ケマーズ株式会社製Krytox157FS(H))87.6gと、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3.33gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.273gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約5時間反応させた。
【0172】
【化38】
(rは繰り返し数であり、平均で43である。)
【0173】
反応終了後50℃まで降温し、この反応液に溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)33.33gと、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン3.02gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.047gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、70℃で約4時間反応させ、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物である下記化合物(1a)を得た。
【0174】
【化39】
(式中、rは繰り返し数であり、平均で43である。)
【0175】
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(1a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0176】
合成例3
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶剤として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン36.67gと、下記式で表されるカルボン酸(ケマーズ製Krytox157FS(L))50gと、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.01gと、反応触媒としてトリフェニルフォスフィン0.165gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、105℃に加温後、約5時間反応させた。
【0177】
【化40】
(rは平均で13である。)
【0178】
反応終了後50℃まで降温し、この反応液に溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)2.97gと、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.63gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.018gを加え、窒素気流下で攪拌を開始し、70℃で約4時間反応させ、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物である下記化合物(2a)を得た。
【0179】
【化41】
(式中、rは繰り返し数であり、平均で13である。)
【0180】
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(2a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0181】
合成例4
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するアルコール40.0gと溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)43.77gと、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.004gを加え、窒素気流下で攪拌を開始した。攪拌を開始後、50℃に保ちながら3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン3.77gを15分間かけて反応液に滴下した。滴下終了後、50℃で6時間攪拌することにより前記アルコールと3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランとを反応させ、反応物を得た。
【0182】
【化42】
(式中、rは繰り返し数であり、平均で13である。)
【0183】
得られた反応物について、IRスペクトル測定を行い、反応物中にイソシアネート基の消失していることを確認し、下記化合物(3a)が得られたことを確認した。
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(3a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0184】
【化43】
(式中、rは平均で13である。)
【0185】
合成例5
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するアルコール20gと溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)20gとウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.006gを仕込み、窒素気流下で攪拌を開始し、50℃を保ちながら3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン1.31gを15分間かけて滴下した。
滴下終了後、50℃で6時間攪拌することにより前記アルコールと3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランとを反応させ、反応物を得た。
【0186】
【化44】
(式中、lは繰り返し数であり、平均で19である。mは繰り返し数であり、平均で19である。)
【0187】
得られた反応物について、IRスペクトル測定を行い、反応物中にイソシアネート基の消失していることを確認し、下記化合物(4a)が得られたことを確認した。
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(4a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0188】
【化45】
(式中、lは繰り返し数であり、平均で19である。mは繰り返し数であり、平均で19である。)
【0189】
合成例6
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するジオール45.3gとウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.025gを仕込み、窒素気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.7gを15分間かけて滴下した。
滴下終了後、60℃で1時間攪拌した後、更に80℃に昇温して2時間攪拌することにより前記ジオールと3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランとを反応させ、反応物を得た。
【0190】
【化46】
(式中、nは繰り返し数である。
複数のXはそれぞれ独立にパーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、化合物1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均21個、パーフルオロエチレン基が平均21個存在するものであり、フッ素原子の数が平均126個である。)
【0191】
得られた反応物について、IRスペクトル測定を行い、反応物中にイソシアネート基の消失していることを確認し、下記化合物(5a)が得られたことを確認した。
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有シラン化合物(5a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0192】
【化47】
(式中、PFPEは、前記−(X−O−)n−X−に対応する。)
【0193】
合成例7
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコにトリフルオロエタノール50gと溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)157.99gとウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.047gを仕込み、窒素気流下で攪拌を開始し、50℃を保ちながら3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン107.99gを15分間かけて滴下した。
滴下終了後、50℃で6時間攪拌することにより前記アルコールと3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランとを反応させ、反応物を得た。
【0194】
得られた反応物について、IRスペクトル測定を行い、反応物中にイソシアネート基の消失していることを確認し、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(6a)が得られたことを確認した。
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(6a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0195】
合成例8
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに2−(パーフルオロへキシル)エタノール25gと溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)39.98gとウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.01gを仕込み、窒素気流下で攪拌を開始し、50℃を保ちながら3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン14.98gを15分間かけて滴下した。
滴下終了後、50℃で6時間攪拌することにより前記アルコールと3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランとを反応させ、反応物を得た。
【0196】
得られた反応物について、IRスペクトル測定を行い、反応物中にイソシアネート基の消失していることを確認し、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(7a)が得られたことを確認した。
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(7a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0197】
合成例9
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコにヘキサフルオロイソプロピルアルコール25gと溶剤としてハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)54.9gとウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.016gを仕込み、窒素気流下で攪拌を開始し、50℃を保ちながら3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン29.9gを15分間かけて滴下した。
滴下終了後、50℃で6時間攪拌することにより前記アルコールと3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランとを反応させ、反応物を得た。
【0198】
得られた反応物について、IRスペクトル測定を行い、反応物中にイソシアネート基の消失していることを確認し、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(8a)が得られたことを確認した。
溶剤の濃度が80質量%となるようにハイドロフルオロエーテル(C4F9OC2H5)で反応液を希釈した。希釈した反応液を孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターを使用してろ過精製し、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(8a)を含むハイドロフルオロエーテル溶液を得た。
【0199】
<超撥水性表面を有するアルミ平板の作製と評価>
実施例1
縦が2.5cm、横が7.5cm、厚み0.5mmのアルミ平板を0.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬させた後、水及びメタノールのそれぞれで洗浄した。次に、このアルミ平板を5質量%のL−PEIの水溶液(80℃)に浸け、30秒間静置した。アルミ平板を取り出し、室温にて5分間静置させた後、10質量%メチルシリケート水溶液につけた後、室温で30分静置した。
メチルシリケート水溶液から取り出したアルミ平板を、150℃で30分間乾燥させた。乾燥後のアルミ平板(アルミ平板A)の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、アルミ平板Aは、シリカで被覆されたポリエチレンイミンポリマーのナノファイバーを基本ユニットとする層(ナノ芝)で表面全体が被覆されていることが確認された。SEM写真を図1(20000倍拡大図)及び図2(2000倍拡図)に示す。
尚、走査電子顕微鏡によるアルミ平板表面の観察は、乾燥後のアルミ平板を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800により実施した。
【0200】
合成例2で調製した化合物(1a)のハイドロフルオロエーテル溶液にさらにハイドロフルオロエーテルを加え、化合物(1a)0.1質量%溶液とした。この化合物(1a)0.1質量%溶液に、アルミ平板Aを浸漬し、1時間静置した。静置後、アルミ平板を取り出し、150℃で30分間乾燥して、含フッ素化合物で処理したナノ芝アルミ平板(アルミ平板B)を得た。
【0201】
得られたアルミ平板Bについて、下記評価を行った結果を表1に示す。
(滑落角測定)
接触角・滑落角測定装置(協和界面科学社製DM−500)を用い、アルミ平板Bの含フッ素化合物で処理したナノ芝の層上に5μLの超純水の水滴を滴下し、2度/秒のスピードでステージを傾け、水滴が動き出した角度を滑落角の値とした。測定は5回行い、5回の平均値をアルミ平板Bの滑落角とした。
(接触角測定)
接触角・滑落角測定装置(協和界面科学社製DM−500)を用い、アルミ平板Bの含フッ素化合物で処理したナノ芝の層上に5μLの超純水の水滴を滴下し、水滴の接触角を測定した。接触角の測定は5回行い、5回の平均値をアルミ平板Bの接触角とした。
【0202】
実施例2−8
化合物(1a)の代わりに、化合物(2a)〜化合物(8a)それぞれを用いた他は実施例1と同様にしてアルミ平板C〜Iを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0203】
比較例1
アルミ平板Aについて、実施例1と同様にして滑落角及び接触角を評価した。結果を表1に示す。
【0204】
比較例2
アルミ平板Aの代わりにアルミ平板(ナノ芝を形成していないアルミ平板)を用いた他は実施例1と同様にしてアルミ平板Jを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0205】
比較例3
縦が2.5cm、横が7.5cm、厚み0.5mmのアルミ平板を0.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬させた後、水及びメタノールのそれぞれで洗浄した。次に、このアルミ平板を5質量%トリエタノールアミン水溶液に90℃で5分浸漬させた後、水及びメタノールのそれぞれで洗浄した。
合成例2で調製した化合物(1a)のハイドロフルオロエーテル溶液にさらにハイドロフルオロエーテルを加え、化合物(1a)0.1質量%溶液とした。この化合物(1a)0.1質量%溶液に、トリエタノールアミンで処理したアルミ平板を浸漬し、1時間静置した。静置後、アルミ平板を取り出し、150℃で30分間乾燥して、アルミ平板Kを得た。
得られたアルミ平板Kについて、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1に示す。
【0206】
比較例4
ドデシルメトキシシランに酢酸ブチルを加え、0.1質量%ドデシルメトキシシラン溶液を調製した。この0.1質量%ドデシルメトキシシラン溶液に、アルミ平板Aを浸漬し、1時間静置した。静置後、アルミ平板を取り出し、150℃で30分間乾燥して、アルミ平板Lを得た。
得られたアルミ平板Lについて、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1に示す。
【0207】
【表1】
【符号の説明】
【0208】
1.熱交換器
2.フィン
4.伝熱管
6.伝熱管の一方端
7.伝熱管の他方端
【図1】
【図2】
【図3】

【手続補正書】
【提出日】2021年7月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させて、前記基材の表面に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を形成する工程と、
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液とを接触させて、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層中にシリカを形成する工程と、
前記シリカを形成させた前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層と下記式(2−1)〜(2−4)、(3)及び(4−1)〜(4−3)のいずれかで表される含フッ素化合物の溶液とを接触させて滑落撥水層を形成する工程とを含み、
前記滑落撥水層表面の水の接触角を160°以上とし、かつ、前記滑落撥水層表面の水の滑落角を5°以下とする基材の撥水滑水化方法。
【化1】


(前記式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R21は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R23は、2価の連結基である。
Zは、3価の連結基である。
Bは、それぞれ独立に、有機基又はSi(A)3で表されるシリル基であり、2つのBのうち少なくとも1つはSi(A)3で表されるシリル基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。
前記式(3)において、
PFPEは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
Y1及びY2は、それぞれ独立に、直接結合又は2価の連結基である。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、2価の連結基である。
Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。
前記式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R41は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R42は、アルキレンアミノアルキレン基又はアルキレンチオアルキレン基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【請求項2】
基材とポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含有する溶液とを接触させて、前記基材の表面に前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層を形成する工程と、
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層からなる積層体と、シリカソース液とを接触させて、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを含む層中にシリカを形成する工程と、
前記基材及び前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー及び前記シリカを含む層からなる積層体を焼成して、前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去する工程と、
前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを除去したシリカを含む層と下記式(2−1)〜(2−4)、(3)及び(4−1)〜(4−3)のいずれかで表される含フッ素化合物の溶液とを接触させて滑落撥水層を形成する工程とを含み、
前記滑落撥水層表面の水の接触角を160°以上とし、かつ、前記滑落撥水層表面の水の滑落角を5°以下とする基材の撥水滑水化方法。
【化2】


(前記式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R21は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R23は、2価の連結基である。
Zは、3価の連結基である。
Bは、それぞれ独立に、有機基又はSi(A)3で表されるシリル基であり、2つのBのうち少なくとも1つはSi(A)3で表されるシリル基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。
前記式(3)において、
PFPEは、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
Y1及びY2は、それぞれ独立に、直接結合又は2価の連結基である。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、2価の連結基である。
Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。
前記式(4−1)、(4−2)及び(4−3)において、
rは繰り返し数を示す整数である。
R41は、炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
R42は、アルキレンアミノアルキレン基又はアルキレンチオアルキレン基である。
前記Si(A)3で表されるシリル基の3つのAは、それぞれ独立に、加水分解性基又は非加水分解性基であり、3つのAのうち少なくとも1つは加水分解性基である。)
【請求項3】
前記加水分解性基が、アルコキシ基である請求項1又は2に記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項4】
前記シリカが、アルコキシシラン化合物である請求項1〜3いずれかに記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項5】
前記ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、太さが10〜200nmの範囲にあり、且つ、長さが50nm〜2μmの範囲にある直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーである請求項1〜4のいずれかに記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項6】
前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーの長軸が前記基材の表面に対して略垂直方向に向いている請求項5に記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項7】
前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有する繊維状ポリマーが網目構造を形成している請求項5に記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項8】
前記基材が、樹脂基材又は金属基材である請求項1〜7のいずれかに記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項9】
前記基材が、アルミニウム基材である請求項1〜8のいずれかに記載の基材の撥水滑水化方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の基材の撥水滑水化方法を施した構造体。
【請求項11】
請求項10に記載の構造体である熱交換機用部材。
【請求項12】
間隙を設けて並設された複数のフィンを有する熱交換器であって、前記フィンが請求項1〜9のいずれかに記載の基材の撥水滑水化方法を施したフィンである熱交換器。
【請求項13】
前記フィンがアルミニウムフィンである請求項12に記載の熱交換器。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の熱交換器を備える空調機又は冷却機。
【国際調査報告】

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