(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年2月13日
【発行日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】雄ねじ
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20210806BHJP
【FI】
F16B35/00 A
F16B35/00 R
F16B35/00 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
【出願番号】特願2020-535783(P2020-535783)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-151073(P2018-151073)
(32)【優先日】2018年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518287294
【氏名又は名称】中村 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】中村 和浩
(57)【要約】
【課題】 被締結物に螺合されたまま残存した折れた雄ねじの軸部をできるだけ少ない工程で除去可能な雄ねじを提供する。
【解決手段】 頂面(14a)および底面(14b)を有する頭部(14)と、一方の端部面(12b)が円形であり当該端部面(12b)は頭部の底面(14b)と連結された略円柱形または略円錐形の軸部(12)とを有する雄ねじ(10)には、頭部(14)から軸部(12)にかけて直進方向に開けられた孔部(20)が設けられ、孔部(20)は軸部の一方の端部面(12b)の径中心部から軸部の中心軸に沿って延びている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面および底面を有する頭部と、
少なくとも一方の端部面が円形の表面である略円柱形または略円錐形の形状を採り、前記一方の端部面は前記頭部の底面と連結された軸部とを有する雄ねじにおいて、
該雄ねじには、前記頭部から前記軸部にかけて直進方向に開けられた孔部が設けられ、該孔部は前記軸部の一方の端部面の径中心部から前記軸部の中心軸に沿って延びていることを特徴とする雄ねじ。
【請求項2】
請求項1に記載の雄ねじであって、前記孔部のうち前記軸部に設けられた部分の長さは、前記軸部の全長の97%以内であることを特徴とする雄ねじ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の雄ねじであって、前記孔部の直径R1と前記軸部における頂面の直径R2との比(R1/R2)が、0.15〜0.35であることを特徴とする雄ねじ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の雄ねじであって、前記孔部には可塑性物質が充填されていることを特徴とする雄ねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄ねじに関する。
【背景技術】
【0002】
別個の部材同士を締結する固着具として、雄ねじが広く用いられている。雄ねじは、円筒形または円錐形の軸部を有し、軸部の外表面にねじ山が設けられている。雄ねじはさらに、軸体と連結され、外部から回転力を受け取る頭部を有する。
【0003】
雄ねじは、ボルトと呼ばれる場合があり、例えばナットのような雌ねじとの組合せで使用される。または、一の部材との締結対象となる部材自体に予め雌ねじとして働くねじ跡をつけた後、部材のねじ跡に雄ねじのねじ山を係合、言い換えれば螺合させることによって使用される。あるいは、木ねじのように、締結対象物となる部材に雄ねじを直接ねじ込んで、雄ねじを当該部材に直に締結するようにして使用されるものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、様々な局面で使用される雄ねじであるが、締結作業時に、または部材同士を締結している状態での経年劣化のために、例えば頭部と軸部の連結部分付近から折れてしまう場合がある。この場合、頭部を介して雄ねじと雌ねじの螺合を解く方向の回転力を軸部にかけることができないので、折れた軸部をその被締結物から取り外すことは困難である。特に、部材の裏側まではねじ跡が貫通していない、いわゆる止まり穴に雄ねじの軸部が残存している場合、この軸部を止まり穴から除去する作業は極めて困難なものとなる。
【0005】
しかしながら、折れた雄ねじの軸部を除去する作業は、雄ねじを固着具として使用している設備の保守管理者にとっては非常に困難な作業である。例えば、保守管理者が軸部の除去作業を行うためには多種の工具を必要とする。さらに、設備の配置位置や雄ねじの使用箇所によっては、保守管理者が多種の器具を用いて除去作業を実行するための十分なスペースがとれないことも多い。
【0006】
従来の雄ねじにはこのような問題点があるため、仮に雄ねじが折れたとしても、使用する器具を最小限度にとどめて、被締結物に螺合されたまま残存した折れた雄ねじの軸部をできるだけ少ない工程で除去することができる雄ねじが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、頂面および底面を有する頭部と、少なくとも一方の端部面が円形の表面である略円柱形または略円錐形の形状を採り、一方の端部面は頭部の底面と連結された軸部とを有する雄ねじにおいて、頭部から軸部にかけて直進方向に開けられた孔部が設けられ、孔部は軸部の一方の端部面の径中心部から軸部の中心軸に沿って延びている雄ねじを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る雄ねじによれば、例えば、たとえ雄ねじが被締結物に螺合されたまま折れたとしても、残存した部分を被締結物から簡単に除去することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る雄ねじの実施例の正面図である。
【
図3】本発明に係る実施例を
図2で示す破断線III−IIIで破断した雄ねじの断面図である。
【
図5】
図1の実施例の軸部が折れたまま止まり穴に残存している状態の断面図である。
【
図6】
図5の状態で残存している折れた軸部を除去する工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、添付図面を参照して本発明による雄ねじの実施例を詳細に説明する。本発明に係る雄ねじ10の実施例は、
図1に示されている通り、雌ねじと螺合して互いに締結し合う部分となる軸部12と、軸部の一端と連結され、回転力を効率的に受け取り軸部12に伝える頭部14を有する。
【0011】
本実施例の場合、軸部12は略円柱状の形状を採り、軸部12の表面にはらせん状のねじ山16が形成されている。また、本実施例では、雄ねじ10の頂部表面は頭部14の頂面14aであり、雄ねじ10のねじ先は円筒状軸部12の底面12aとなる。
【0012】
さらに、頭部14は頂面の反対側に底面14bを有し、軸部は底面12aのある端部とは反対側の端部に円形の頂面12bを有する。頭部14の底面14bと軸部12の頂面12bが、上述したような軸部12と頭部14の連結部分となる。もちろん、軸部12が略円錐形の形状を採る場合にも、軸部12の頂面12bは円形状になるので、円形状の頂面12aと軸部12の頂面12bが互いの部材の連結面となる。なお、軸部12の形状は、その本体部分が略円柱状または略円錐状であればよく、例えば本体部分は円柱状の形態であるが底面12aが尖っているような形状でも構わない。
【0013】
また、
図2を見ると容易に把握できるが、本実施例に係る雄ねじ10は、頭部14の頂部に六角形状の穴、すなわち凹部18が設けられた六角穴ボルトであり、凹部18の寸法に対応した六角レンチを用いて雄ねじ10に回転力を付与することによって用いられる。しかしながら、本願発明の実施例に係る雄ねじ10の種類は、六角穴ボルトに限定されないことは勿論である。例えば、四角穴や十字穴、すりわり等、任意の形状の穴や溝すなわち凹部18を頭部14の頂部側に設けても構わない。または、頭部14の頂面に凹部18を設けることなく、スパナ等の工具で頭部14の側面を挟んで回転力を付与する種類の雄ねじ10であっても構わない。
【0014】
頭部14に設けられている凹部18の底面には、頭部14と連結している軸部12にまで通じている孔部20が開けられている。孔部20は、凹部18の底面から、軸部12では径中心部を軸方向に沿って延びるように開けられる。すなわち、孔部20が設けられる位置は、軸部12の頂面12bの径中心部から軸部12の中心軸に沿ってまっすぐ延びる位置に一致することとなる。なお、凹部18を設けない種類の雄ねじ10である場合には、孔部20は頭部14の頂面14aの中心部から、軸部12の径中心部を軸方向に沿って延びるように開けられる。
言い換えれば、少なくとも軸部12の内部には、そして好ましくは頭部14の内部にも、孔部20を区画する壁面が形成されていることになる。
【0015】
雄ねじ10に孔部20を設けることによって、例えばエキストラクターのように、孔部20に挿入可能で軸部12に回転力を付加可能な工具以外の一切の工具を必要とせずに、被締結物に螺合されたまま残存した折れた雄ねじ10の軸部12を除去することが可能となる。
このように、最小限の工具のみを用いて折れた軸部12を被締結物から容易に取り外せるように、孔部20の直径は、工具を挿入可能であり、さらに効率的に工具からの回転力を受けるに適した寸法であることが好ましく、更に、ボルトなどのサイズにより孔部20の直径の適切な寸法を選択する必要がある。より具体的には、軸部12の直径や材質等に応じて変わり得るものの、孔部の直径をR1とし、軸部12における頂面の直径をR2とした場合に、R1とR2の比(R1/R2)が、0.15〜0.35であることが好ましい。
【0016】
また、軸部12の全長L1や、軸部12を形成する材質、および雄ねじ10が使用される想定局面等の各種条件を考慮して、雄ねじ10に開けられる、より具体的には雄ねじ10の軸部12に開けられる孔部20の長さL2を最終的に決定する。軸部12の全長L1に対する孔部20の軸部部分長さL2の割合を、少なくとも約90%程度に設定しておくと、雄ねじ10の強度などの観点から好適である。すなわち、この場合には、ねじ先となる軸部の先端部12aから約10%分の長さ(
図3に示すL3)だけは孔部20を開けずに残しておくことになる。
【0017】
もっとも、軸部12がそのねじ先付近で折れる可能性もあることを考えれば、軸部12の全長L1に対する孔部20の軸部部分長さL2の割合をできるだけ大きくすることが好ましい。軸部12の全長L1や、軸部12を形成する材質、および雄ねじ10が使用される想定局面等の各種条件によっても変わってくるが、軸部12の全長L1に対する孔部20の長さL2の割合を、最大で95%から97%までの間に設定することができる。すなわち、この場合には、ねじ先となる軸部の先端部12aから3%〜5%分の長さだけは孔部20を開けずに残しておくことになる。
【0018】
雄ねじ10に孔部20を開けるには、公知の器具を用いて任意に行っても構わない。例えば、ボール盤を用いて幅1.0mm〜1.5mmの孔部20を、L2/L1≦0.97になるように開けてもよい。
なお、雄ねじ10の孔部20を凹部18の底面から軸部の先端部12aまで貫通させる構成にした場合、貫通穴に締結した雄ねじ10が折れたときに、軸部の先端部12aの側から工具を使用して折れた雄ねじ10の残存部分を取り外すことも可能になる。
【0019】
本願発明の別の実施例の構成についても説明する。この実施例は、
図4で示すように、先の実施例で説明した雄ねじ10の構成に加えて、孔部20は樹脂、特に合成樹脂のような可塑性物質22で充填されているものとなっている。可塑性物質22には、折れた軸部12の除去時にエキストラクター等の工具を孔部20に円滑に挿入可能な程度の柔軟性を有する物質を用いる。可塑性物質22は、好ましくは凹部18の底面の高さまで充填される。
【0020】
このように、可塑性物質22を孔部20に充填することによって、孔部20が開けられた雄ねじ10の強度を上げることができるという有利な効果が得られる。さらに、可塑性物質22の充填によれば、孔部20に塵芥や液体などの異物が侵入することを防ぐことができる。そのため、エキストラクター等の工具の孔部20への円滑な挿入が常に確保され、さらに、異物の影響により孔部20の壁面部および底面部が腐食する事態などを防ぐことができる。
【0021】
続いて、本願発明に係る雄ねじ10の実施例を用いた場合において、止まり穴に締結されたまま折れた雄ねじ10の残存部分を取り外す工程の例を説明する。
図5には、止まり穴32に螺合したままの状態で頭部14と分離してしまった、雄ねじ10の軸部12が断面図で示されている。このような折れ方をした場合、回転力を効率的に軸部に伝達する頭部14はもはや雄ねじ10に連結されていないので、従来の雄ねじのように軸部12に孔部20が予め設けられていない場合、折れた軸部12を止まり穴32から取り外す作業は極めて困難なものとなる。
【0022】
本願発明の実施例に係る雄ねじ10が折れてしまった場合、折れた軸部12を止まり穴32から取り外すためにはまず、例えばエキストラクターのような工具34を、止まり穴32に残存している雄ねじ10の軸部12に設けられている孔部20に挿入する。
工具34を軸部12に挿入した後、工具34を操作して軸部12に止まり穴32との螺合を解く方向の回転力を与える。より具体的には、雄ねじ10は右回り方向、すなわち時計回りに回転させることによって止まり穴32と螺合させる方式の雄ねじである場合には、工具34を軸部12の孔部20に挿入して、左回り方向、すなわち反時計回りの回転力Fを折れた軸部12に与える。折れた軸部12は左回り方向の回転力Fを受けると、止まり穴32の入口方向Aに向けての直線的な運動へと変換され、やがて折れた軸部12と止まり穴32の螺合が解かれる。もちろん、左回り方向の回転によって雌ねじと螺合させる方式の雄ねじ10に対しては、工具34を用いて右回り方向の回転力を折れた軸部12に与えればよいことになる。
【0023】
なお、孔部20に可塑性物質22が充填されている実施例の雄ねじ10である場合にも、可塑性物質22を突き破るように工具34をそのまま孔部20に挿入させることができる。この際に用いる工具34は、工具34を孔部20の先端方向へ挿入してゆくにつれて、可塑性物質22が孔部20の入口から排出される種類のものであることが好ましい。
【0024】
このように、本発明に係る雄ねじ10の実施例を締結具として用いると、仮に雄ねじ10の軸部12が止まり穴32に螺合したまま折れたとしても、作業者および工具のための大きな除去作業スペースを必要とせず、エキストラクターのような一種類の工具34を用いるだけで容易に除去作業を完了させることができる。すなわち、本発明に係る雄ねじ10の実施例を用いれば、止まり穴に残存した軸部12の除去に当たって工具34を用いての回転力の付与以外の工程を行う必要がなくなり、作業者がかける手間が大幅に減少することになる。
【0025】
ここまで、本発明の実施例の構成および取扱方法について説明してきたが、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではない。添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0026】
10 雄ねじ
12 軸部
14 頭部
20 孔部
22 可塑性物質
【国際調査報告】