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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年3月19日
【発行日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】自動車用吸音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20210802BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210802BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   G10K11/168
   B32B27/00 B
   B32B3/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2020-546649(P2020-546649)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年9月14日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518106168
【氏名又は名称】MT−Tec合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福井 一貴
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK04
4F100AK42
4F100AK46
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21B
4F100DC01
4F100DC01C
4F100DC11E
4F100DG15
4F100GB32
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JA13D
4F100JD02
4F100JD02A
4F100JD02B
4F100JD02D
4F100JH01
4F100JH01A
4F100JH01B
4F100JH01C
4F100JH01D
4F100JH01E
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK07D
5D061AA06
5D061BB02
5D061BB13
(57)【要約】
自動車用吸音材の軽量化を図りつつ、望ましい吸音性能を安定して得ることができる自動車用吸音材を提供する。本発明の自動車用吸音材は、筒状のセル20が複数の列をなして配置されているコア層10と、コア層の一方の面に接着された非通気性の樹脂フィルム層40とを備える複層構造を有し、コア層の一方の面のセル端部は、一列おきに、閉鎖面21と解放端22とを有し、コア層の他方の面のセル端部は、前記一方の面のセル端部に閉鎖面を有する列に、解放端22と、前記一方の面のセル端部に解放端を有する列に、閉鎖面21とを有し、解放端22によってセル20の内部空間が外部と連通しており、非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率E(MPa)と、コア層10よりも第1の非通気性の樹脂フィルム層40側の層構造の面密度M(g/m)との関係は、0.5<E/M<21である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の一方の面に接着された第1の非通気性の樹脂フィルム層とを備える複層構造の自動車用吸音材であって、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率E(MPa)と、前記コア層よりも前記第1の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度M(g/m)との関係が、0.5<E/M<21である自動車用吸音材。
【請求項2】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が、複数の異なるヤング率を有する材料で積層された構造を有する請求項1に記載の自動車用吸音材。
【請求項3】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された第2の非通気性の樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用吸音材。
【請求項4】
前記第2の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率E(MPa)と、前記コア層よりも前記第2の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度M(g/m)との関係が、0.5<E/M<21であり、且つ、E/MとE/Mとの差の絶対値が0.8以上である請求項3に記載の自動車用吸音材。
【請求項5】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用吸音材。
【請求項6】
前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記解放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記解放端が、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の構造として、前方にエンジン室があり、後方にはトランク室があり、その中間に客室を設ける構造が一般的である。客室には、運転席、助手席および後部座席といった座席を設けている。また、客室には、自動車内装の外側を覆うようにダッシュインシュレータ、フロアーカーペット、フロアースペーサ、トランクトリム、及びトランクフロアーが設置されており、これら部品は、車体の形状や部品のデザインに合わせた凹凸状の形状に成形されている。更に、車体下の外装には、フロントフェンダーライナー、リアフェンダーライナー、及び空気の流れを制御する凹凸形状に成形されたアンダーカバーが設置されている。これら部品の多くは、材料として熱可塑性樹脂が使用され、この材料を加熱して当該部品の形状の型によりプレス成形し、厚みが異なる複数の部分を有する凹凸形状の部品に仕上げられる。
【0003】
自動車開発の最近の動向として車内の静寂性が重要視されている。自動車の車内に伝わる騒音としては、ウインドウからの騒音、タイヤからの騒音、車体下からの騒音、エンジン音からの騒音、モータ音からの騒音などがある。騒音中の特に500Hzから4000Hzの周波数が、運転者や同乗者に耳障りとなると言われている。また、電気自動車では、従来、耳障りと感じていなかった4000〜8000Hzの周波数についても、エンジンがないことから、運転者や同乗者に耳障りとなるだろうと言われている。よって、この周波数の帯域の騒音を吸音する機能が、自動車の内外装部品に求められている。一方で、燃費削減も重要であり、自動車の内外装部品の軽量化も求められている。
【0004】
また、特許第4539294号公報には、非金属からなるハニカムコアとその両端に接着剤を介して軽金属製の開孔を有する周波数選択板が接着され、その外側に繊維補強基材を接着させ、この周波数選択板は特定の周波数を透過又は遮断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4539294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許第4539294号公報の周波数選択板は軽金属製であるので、周波数選択板の開孔を通過する空気の摩擦による音の減衰効果が期待されるがそれ以上の効果はない。また、開孔を有する部材を用いると、開孔に汚れが溜まって透過又は遮断する周波数が変わってしまい望ましい吸音性能を安定して得ることができないという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、自動車用吸音材の軽量化を図りつつ、望ましい吸音性能を安定して得ることができる自動車用吸音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の一方の面に接着された第1の非通気性の樹脂フィルム層とを備える複層構造の自動車用吸音材であって、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率E(MPa)と、前記コア層よりも前記第1の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度M(g/m)との関係は、0.5<E/M<21である。
【0009】
前記筒状のセルは、略四角筒状や略六角筒状などの多角筒状であってもよいし、略円筒状や略楕円筒状などの曲線筒状であってもよい。前記コア層の前記セルの各々は、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記解放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記解放端は、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されていることが好ましい。前記解放端、前記一方側閉鎖面、および前記他方側閉鎖面は、前記セルの形状に従い、略四角形状や略六角形状などの多角形状であっても、略円形状や略楕円形状などの曲線形状であってもよい。
【0010】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層は、複数の異なるヤング率を有する材料で積層された構造を有してもよい。この場合のヤング率Eは、第1の非通気性の樹脂フィルム層全体のヤング率である。また、本発明の自動車用吸音材は、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に、内表面層を更に備えてもよい。この場合の面密度Mは、第1の非通気性の樹脂フィルム層と内表面層の合計の面密度(単位面積当たりの質量)である。前記内表面層は、自動車の車内側に向かう表面の層であり、例えば、不織布や、プレーンニードル、ベロア等の繊維で構成された層、発泡ウレタンや、発泡ポリエチレン、発泡ナイロン等の発泡樹脂で構成された層、又はこれらを組み合わせた層であってよい。
【0011】
本発明の自動車用吸音材は、前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された第2の非通気性の樹脂フィルム層を更に備えてもよい。この場合、前記第2の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率E(MPa)と、前記コア層よりも前記第2の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度M(g/m)との関係は、0.5<E/M<21を満たしてもよいし、又は満たさなくてもよい。また、E/MとE/Mとの差の絶対値は、0.8以上としてもよい。また、本発明の自動車用吸音材は、前記第2の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に、外表面層を更に備えてもよい。この場合の面密度Mは、第2の非通気性の樹脂フィルム層と外表面層の合計の面密度である。前記外表面層は、自動車の車外側に向かう表面の層であり、例えば、不織布や、プレーンニードル、ベロア等の繊維で構成された層、発泡ウレタンや、発泡ポリエチレン、発泡ナイロン等の発泡樹脂で構成された層、又はこれらを組み合わせた層であってよい。
【0012】
または、本発明の自動車用吸音材は、前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明に係る自動車用吸音材は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の一方の面に接着された第1の非通気性の樹脂フィルム層とを備え、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率Eと、前記コア層よりも前記第1の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度Mとの関係が0.5<E/M<21である構成によって、通常、吸音に寄与しないと考えられる非通気性の樹脂フィルム層を用いても、面密度Mに対して通常よりも顕著に小さいヤング率Eを有する場合、上記コア層の所定の構造との関係から吸音に寄与するようになり、自動車で耳障りな騒音となる周波数500Hzから8000Hzの帯域に吸音率のピークを有する望ましい吸音性能を得ることができる。このように、コア層と第1の非通気性の樹脂フィルム層の所定の構造により、自動車用部品の軽量化を図っても高い剛性を確保することができるとともに、複数の開孔を有する部材を用いずに望ましい吸音性能を発揮することができるので、開孔に汚れが溜まることなく、望ましい吸音性能を安定して得ることができる。
【0014】
第1の非通気性の樹脂フィルム層を、複数の異なるヤング率を有する材料で積層された構造とする構成によって、前記ヤング率E及び前記面密度Mの設計が容易になり、吸音率のピークの制御を容易に行うことができる。
【0015】
第1の非通気性の樹脂フィルム層のコア層とは反対側の面に、内表面層を更に設ける構成とすることで、通常よりも小さいヤング率を有する第1の非通気性の樹脂フィルム層を保護することができ、望ましい吸音性能を安定して得ることができる。
【0016】
コア層の第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に、第2の非通気性の樹脂フィルム層を接着し、第2の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率Eと、コア層よりも第2の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度Mとの比であるE/Mと前記E/Mとの差の絶対値を0.8以上とする構成にすることで、自動車で耳障りな騒音となる周波数500Hzから8000Hzの帯域に吸音率のピークを2つ有し、吸音する周波数の帯域の広い吸音性能に優れた自動車用吸音材を得ることができる。
【0017】
コア層の第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備えることで、複数の開孔を有する樹脂フィルム層に予め形成された開孔パターンによって、コア層の少なくとも一方の面の解放端の閉塞度を容易に調整し且つ安定的に維持することができ、そのため、自動車用吸音材の吸音率のピークのコントロールが可能であり、よって、上述したE/Mの値とともに、自動車用吸音材の吸音率のピークを望ましい周波数の帯域により容易にコントロールすることができる。
【0018】
コア層のセルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、セルの解放端によってセルの内部空間が外部と連通しており、セルの解放端は、コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている構成にすることで、コア層のセルの閉鎖面が、第1の非通気性の樹脂フィルム層とコア層とを接着する面として確保され、セルの閉鎖面が一列おきに配置されているので、第1の非通気性の樹脂フィルム層とコア層との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る自動車用吸音材におけるコア層に用いるコア材料の製造過程を示す斜視図である。
図2】本発明に係る自動車用吸音材におけるコア層を示す概略平面図である。
図3】III-III線に沿って図2のコア層を示す概略断面図である。
図4】本発明に係る自動車用吸音材の一実施の形態を示す分解斜視図である。
図5図4に示す自動車用吸音材の実施の形態の概略断面図である。
図6】本発明に係る自動車用吸音材の別の実施の形態を示す分解斜視図である。
図7】本発明に係る自動車用吸音材の別の実施の形態を示す概略断面図である。
図8】本発明に係る自動車用吸音材の実施例におけるE/Mと吸音ピーク周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る自動車用吸音材の一実施の形態について説明する。なお、図面は、別段の定めがない限り、縮尺通りに描くことを意図してはいない。
【0021】
先ず、本発明に係る自動車用吸音材の各実施の形態において共通するコア層について説明する。図1は、このコア層となるコア材料の製造過程を示す斜視図である。なお、このコア材料は、ここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする国際公開第2006/053407号にその製造方法が詳細に記載されている。
【0022】
図1に示すように、このコア材料1は、平坦な材料シートを所定の型を有するローラ(図示省略)によって熱成形され、実質的にシートを切ることなく塑性変形により形成されたものである。コア材料1の素材は、これらに限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの熱可塑性樹脂や、繊維との複合材料、紙、金属等を用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。本実施の形態では、熱可塑性樹脂を用いた場合について説明する。材料シートの厚みは、これに限定されないが、例えば、0.05mmから0.50mmの範囲が好ましく、熱成形後のコア材料1の厚みもほぼ同様である。
【0023】
コア材料1は、製造方向Yに対して直交する幅方向Xに向かって、山部11と谷部12が交互に配置される三次元構造を有している。山部11は、2つの側面13とその間の頂面17とで構成され、谷部12は、隣接する山部11と共有する2つの側面13とその間の底面14とで構成される。なお、本実施の形態では、図1に示すように山部11の形状が台形の場合について説明するが、本発明はこれに限定されず、三角形や長方形などの多角形の他、正弦曲線や弓形などの曲線形にしてもよい。
【0024】
コア材料1は、上記の三次元構造を、製造方向Yに向かって連続するように備える。すなわち、図1に示すように、製造方向Yに向かって複数の山部11a、11b、11c、11dが連続して形成される。谷部12も同様に連続して形成される。そして、山部11間の接続および谷部12間の接続は、2種類の接続方法を交互に繰り返すことでなされている。
【0025】
第1の接続方法は、図1に示すように、幅方向の第1の折り畳み線X1において、隣接する2つの山部11b、11cの頂面17b、17cが、それぞれ台形状の山部接続面15b、15cを介して接続するというものである。山部接続面15は頂面17に対して直角の角度で形成されている。この幅方向の第1の折り畳み線X1において、隣接する2つの谷部の底面14b、14cは、直接に接続している。第2の接続方法は、図2に示すように、幅方向の第2の折り畳み線X2において、隣接する2つの谷部の底面14a、14b(又は14c、14d)が、それぞれ台形状の谷部接続面16a、16b(又は16c、16d)を介して接続するというものである。谷部接続面16は底面14に対して直角の角度で形成されている。この幅方向の第2の折り畳み線X2において、隣接する2つの山部の頂面12a、12b(又は12c、12d)は、直接に接続している。
【0026】
このようにコア材料1は、複数の三次元構造(山部11、谷部12)が接続領域(山部接続面15、谷部接続面16)を介して接続されており、接続領域を折り畳むことで、本発明の自動車用吸音材のコア層が形成される。具体的には、第1の折り畳み線X1では山折りで、隣接する2つの谷部の底面14b、14c同士が、その裏面を介して重なり合い、隣接する2つの山部の山部接続面15b、15cのなす角度が180度まで開くように折り畳む。また、第2の折り畳み線X2では谷折りで、隣接する2つの山部の頂面17a、17b(又は17c、17d)同士が重なり合い、隣接する2つの谷部の谷部接続面16a、16b(又は16c、16d)のなす角度が180度まで閉じるように折り畳む。このようにコア材料1を折り畳むことで得られた本発明の自動車用吸音材のコア層10を、図2及び図3に示す。
【0027】
図2及び図3に示すように、コア層10は、複数の列をなして配置されている略六角筒状のセル20を備え、一列おきに、隣接する2つの山部から形成されたセル20A、20C、20Eと、隣接する2つの谷部から形成されたセル20B、20Dが配置される。図3中の破線18は、コア材料の裏面であった面であり、略六角筒状のセル20の内壁を概ね示すものである。
【0028】
山部から形成されたセル20A、20C、20Eは、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ頂面17と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の一方の面10a(図2での表側の面)のセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21A、21C、21Eを備え、これら一方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の山部接続面15によって形成されたものである。更に、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、略六角形状に開口された解放端22A、22C、22Eを備える。この解放端22A、22C、22Eによって、セル20A、20C、20Eのそれぞれの内部空間が外部と連通している。
【0029】
谷部から形成されたセル20B、20Dも、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ底面14と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20B、20Dは、コア層10の前記一方の面10aのセル端部において、略六角形状に開口された解放端22B、22Dを備える。この解放端22B、22Dによって、セル20B、20Dのそれぞれの内部空間が外部と連通している。更に、これらセル20B、20Dは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21B、21Dを備え、これら他方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の谷部接続面16によって形成されたものである。
【0030】
このようにコア層10は、一方の面10aのセル端部には、一列おきに、セル材料における山部から形成された一方側閉鎖面21A、21C、21Eを有し、他方の面10bのセル端部には、上記とは異なるセルの列に、セル材料における谷部から形成された他方側閉鎖面21B、21Dを有しているが、別段の記載がない限り、一方側閉鎖面、他方側閉鎖面のどちらの閉鎖面21も実質的に同一の機能を発揮するものである。
【0031】
コア層10全体の厚みは、複層構造体を自動車のどこの部品に用いるかで変わるため、以下に限定されないが、後述する非通気性の樹脂フィルム層による吸音率のピークをコントロールする点や、コア層10自体の吸音性能、コア層10の強度、重量の観点から、3mmから25mmの範囲が好ましく、5mmから20mmの範囲がより好ましい。
【0032】
コア層10の目付け(単位面積当たりの質量)は、複層構造体を自動車のどこの部品に用いるかで変わるため、これらに限定されないが、400g/mから4000g/mの範囲が好ましく、500g/mから3000g/mの範囲がより好ましい。コア層10の厚みが大きく、目付けが大きい程、概ね、コア層10の強度が高くなり、また、吸音率がピークとなる周波数を低周波数側へとコントロールできる傾向がある。
【0033】
コア層10の目付けは、コア層10の素材の種類や、コア層10全体の厚み、セル20の壁厚(材料シートの厚み)の他に、コア層10のセル20間のピッチPcx、Pcy(セルの中心軸間の距離)によっても調整することができる。コア層10の目付けを上記の範囲とするためには、例えば、コアの製造方向Yであるセル20が隣接して列をなす方向のセル20間のピッチPcyを、3mmから15mmの範囲とすることが好ましく、4mmから10mmの範囲とすることがより好ましい。
【0034】
次に、上述したコア層10を用いて本発明に係る自動車用吸音材の各実施形態について説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の自動車用吸音材は、図4及び図5に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40と、更にその外側に設けられた内表面層となる不織布層30とを備える。
【0036】
非通気性の樹脂フィルム層40の素材は、これらに限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(PA)などの樹脂フィルムを用いることができる。また、非通気性の樹脂フィルム層40は、これら異なる種類の樹脂の層を複数積層させた構造としたり、同じ種類の樹脂であっても異なるヤング率を有する材料の層を複数積層させた構造としてもよい。
【0037】
非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率Eは、詳しくは後述する面密度Eとの比によるため、以下に限定されないが、通常の自動車用部品に用いられるものよりも低く、例えば、その上限は、1700MPa以下が好ましく、1600MPa以下がより好ましく、1500MPa以下が更に好ましい。また、ヤング率の下限は、これらに限定されないが、200MPa以上が好ましく、300MPa以上がより好ましい。なお、樹脂の種類やフィルムの製法によっては、フィルムの溶融樹脂が流れる方向(MD)におけるヤング率と、その直角方向(TD)におけるヤング率は値が異なるが、本発明のE/Mを算出する際は、値が低い方のヤング率を用いることとする。
【0038】
非通気性の樹脂フィルム層40の面密度(目付け)は、詳しくは後述する不織布層30との合計の面密度Eにもよるため、以下に限定されないが、例えば、その下限は、30g/m以上が好ましく、40g/m以上がより好ましく、50g/m以上が更に好ましい。また、面密度の上限は、これらに限定されないが、500g/m以下が好ましく、300g/m以下がより好ましく、250g/m以下が更に好ましい。
【0039】
非通気性の樹脂フィルム層40の厚みは、これに限定されないが、例えば、その下限は、0.02mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましく、0.05mm以上が更に好ましい。また、厚みの上限は、これらに限定されないが、0.8mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましく、0.6mm以下が更に好ましい。
【0040】
非通気性の樹脂フィルム層40は、コア層10に対して、熱溶着させて接着させてもよいし、接着剤(図示省略)を介して接着させてもよい。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系やアクリル系等の接着剤を用いることができる。また、非通気性の樹脂フィルム層40をコア層10及び不織布層30と熱溶着させるために、例えば、非通気性の樹脂フィルム層40を三層構造にして、中央の層と、その両側の面に位置する2つの接着層とを備えるようにしてもよい。この場合、接着層の素材は、中央の層に用いる素材の融点よりも低い融点を有する素材を用いる。例えば、中央の層に190℃から220℃の融点を有するポリアミドを用い、接着層に90℃から130℃の融点を有するポリエチレンを用いることで、非通気性の樹脂フィルム層40をコア層10や不織布層30に貼り合わせる際の加熱時の温度や自動車用吸音材の所定の形状に熱成形する温度を150℃から160℃程とすれば、接着層が溶融してコア層10や不織布層30と強固に接着する一方、中央の層は溶融しないので非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率を大きく変えることなく、自動車用吸音材の望ましい吸音性能を得ることができる。接着層のポリエチレンよりも融点の高い樹脂としては、ポリアミドの他に、ポリプロピレンがある。
【0041】
不織布層30は、これらに限定されないが、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの樹脂を用いたスパンボンド、スパンレース、又はニードルパンチなどの各種不織布を用いることが好ましい。
【0042】
不織布層30の面密度(目付け)は、非通気性の樹脂フィルム層40との合計の面密度Eによるため、以下に限定されないが、例えば、その下限は、10g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましく、30g/m以上が更に好ましい。また、面密度の上限は、これらに限定されないが、500g/m以下が好ましく、300g/m以下がより好ましく、250g/m以下が更に好ましい。
【0043】
本実施の形態において、非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率をEとし、非通気性の樹脂フィルム層40および不織布層30の合計の面密度をMとすると、E/Mの値を0.5から21までの範囲とすることで、自動車用吸音材の吸音率のピークを、自動車で耳障りな騒音となる周波数500Hzから8000Hzの帯域にコントロールすることができる。この周波数の帯域の中でも、500Hzから4000Hzの帯域に吸音率のピークを有するようにする場合、E/Mの値を0.5から8までの範囲とすることが好ましく、更に1000Hzから3000Hzの帯域に吸音率のピークを有するようにする場合、E/Mの値を1.5から5.5までの範囲とすることがより好ましい。また、4000Hzから8000Hzの帯域に吸音率のピークを有するようにする場合、E/Mの値を8から21までの範囲とすることが好ましく、更に5000Hzから6000Hzの帯域に吸音率のピークを有するようにする場合、E/Mの値を11から14までの範囲とすることが好ましい。
【0044】
このように第1の実施形態によれば、一列おきに解放端と閉鎖面が配置されるコア層10の少なくとも一方の面に、非通気性の樹脂フィルム層40と、更にその外側に不織布層30を設けることによって、自動車用吸音材の軽量化を図っても高い剛性を確保することができるとともに、非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率Eと非通気性の樹脂フィルム層40および不織布層30の合計の面密度Mとの比であるE/Mの値を調整することで、自動車用吸音材の吸音率のピークを望ましい周波数の帯域にコントロールすることができる。
【0045】
なお、図4及び図5では、非通気性の樹脂フィルム層40の外側に不織布層30を設ける場合を示したが、本発明はこれに限定されず、不織布層30を設けなくてもよく、非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率Eと非通気性の樹脂フィルム層40のみの面密度Mを調整することで、自動車用吸音材の吸音率のピークを上記と同様にコントロールすることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の自動車用吸音材は、図6に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層40aと、その他方の面に設けられた第2の非通気性の樹脂フィルム層40bと、更にこれらの外側にそれぞれ設けられた内表面層及び外表面層となる第1及び第2の不織布層30a、30bとを備える。なお、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
第1および第2の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bも第1および第2の不織布層30a、30bも、コア層10の両側の面に、構成(樹脂フィルムの素材や、厚み、不織布の製法や、目付け等)が同一のものを貼り合わせてもよいし、構成が異なるものを貼り合わせてもよい。
【0048】
このようにコア層10の両面に非通気性の樹脂フィルム層40を設けた場合は、非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率Eと非通気性の樹脂フィルム層40および不織布層30の合計の面密度Mとの比であるE/Mの値の調整は、第1の非通気性の樹脂フィルム層40a側と、第2の非通気性の樹脂フィルム層40b側とで別々に行う。つまり、第1の非通気性の樹脂フィルム層40aのヤング率をEとし、第1の非通気性の樹脂フィルム層40aおよび第1の不織布層30aの合計の面密度をMとし、E/Mの値を0.5から21までの範囲とする。また、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bのヤング率をEとし、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bおよび第2の不織布層30bの合計の面密度をMとし、E/Mの値を0.5から21までの範囲とする。E/Mの値とE/Mの値とは、異なるようにすることが好ましく、E/MとE/Mとの差の絶対値は、0.8以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。なお、この差の絶対値の上限は、特に限定されてないが、例えば、5以下が好ましい。
【0049】
第2の実施形態によれば、一列おきに解放端と閉鎖面が配置されるコア層10の両方の面に非通気性の樹脂フィルム層40と不織布層30をそれぞれ設け、第1の非通気性の樹脂フィルム層40a側のE/Mの値と第2の非通気性の樹脂フィルム層40b側のE/Mの値の両方を、0.5から21までの範囲内とし、更にこの範囲内で異なるようにすることで、自動車で耳障りな騒音となる周波数500Hzから8000Hzの帯域に吸音率のピークを2つ有する吸音性能に優れた自動車用吸音材を得ることができる。特に、E/MとE/Mとの値の差の絶対値を0.8以上にすることで、吸音する周波数の帯域を広くすることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の自動車用吸音材は、図7に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40と、コア層10の非通気性の樹脂フィルム層40とは反対側の面に、複数の開孔を有する樹脂フィルム層50と、更にこれらの外側にそれぞれ設けられた内表面層及び外表面層となる第1及び第2の不織布層30a、30bとを備える。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0051】
複数の開孔を有する樹脂フィルム層50(以下、開孔フィルム層50という)は、層を貫通する複数の孔55を有する。この孔55の開孔は、コア層10に貼り合わされる前に予め行われるものであり、例えば、熱針やパンチ加工(オス型とメス型を用いたパンチ加工)で開け、孔が塞がることを防止するため、孔のバリを極力抑えた孔形状とすることが好ましい。
【0052】
孔55の開孔パターンは、特に限定されないが、千鳥配列や格子配列で配置することが好ましい。開孔フィルム層50の開孔率は、特に限定されないが、0.2%から5%の範囲が好ましい。孔55の直径は、0.25mmから2.5mmの範囲が好ましく、0.3mmから2.0mmの範囲がより好ましい。
【0053】
なお、開孔フィルム層50の孔55のピッチは、図2に示すコア層10のセル20のピッチPcx、Pcyと、必ずしも一致させなくてもよく、また、開孔フィルム層50をコア層10に貼り合わせる際に必ずしも孔55とセル20の位置合わせをしなくてもよい。これは、開孔フィルム層50の孔55とコア層10のセル20の解放端22の位置がランダムに重なることで、適度に内外の連通が確保されるようになるからである。開孔フィルム層50の孔55のピッチは、コア層10のセル20のピッチよりも少なくともX方向あるいはY方向のどちらかを小さくすることが好ましい。
【0054】
第3の実施形態によれば、コア層10の非通気性の樹脂フィルム層40とは反対側の面に開孔フィルム層50を設けても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、開孔フィルム層50に予め形成された開孔パターンによって、コア層10の少なくとも一方の面の解放端22の閉塞度を容易に調整し且つ安定的に維持することができ、そのため、自動車用吸音材の吸音率のピークのコントロールが可能であり、よって、非通気性の樹脂フィルム層40側のE/Mの値とともに、自動車用吸音材の吸音率のピークを望ましい周波数の帯域により容易にコントロールすることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0056】
実施例1として、図4及び図5に示す複層構造を有する自動車用吸音材を作製した。図1図3の構造を有するコア層の一方の面に、厚み50μmの3層からなる非通気性の樹脂フィルム(素材:ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン、フィルムのヤング率:300MPa)を貼り、更にその外側に、内表面層としてスパンボンド不織布(素材:ポリエチレンテレフタラート、目付け:250g/m)を貼った。非通気性の樹脂フィルムと不織布の合計の面密度は、180g/mであった。そして、この複層構造体を加熱、プレスして層間が接着された自動車用吸音材を得た。
【0057】
この実施例1の自動車用吸音材の吸音性能を評価するため、ISO10534−2(JIS A 1405)に準拠する方法に従って、実施例1の自動車用吸音材から直径29mm程の円筒状の試料を採取して、この試料の周波数500Hzから6300Hzにおける垂直入射吸音率を測定した。その結果、吸音率のピークの周波数は1000Hzであった。
【0058】
実施例1と同様にして、以下の表1に示すように、不織布や非通気性の樹脂フィルムの素材、目付け、厚み等を変えた実施例2〜6の自動車用吸音材を作製し、吸音性能を測定した。その結果を、実施例1を含めて表1及び図8に示した。なお、いずれの実施例においてもコア層は、ポリプロピレン樹脂で、厚みが約20mm以下、セル間のピッチPcyが約10mm以下のものを用いた。
【0059】
【表1】
【0060】
表1及び図8に示すように、非通気性の樹脂フィルム層のヤング率Eとコア層の上の層構造の面密度Mとの比であるE/Mの値が高い程、自動車用吸音材の吸音率のピークの周波数が高くなった。通常、非通気性の樹脂フィルム層では、吸音に寄与しないと考えられていたが、このように面密度Mに対して通常よりも顕著に小さいヤング率Eを有する非通気性の樹脂フィルム層を用いたことによって、上記コア層の所定の構造との関係から吸音に寄与するようになったと推測される。また、図8に示すように、実施例1〜6の結果から、E/Mの値を0.5から21の範囲にすれば、自動車で耳障りな騒音となる周波数500Hzから8000Hzの帯域に吸音率のピークを有する望ましい吸音性能の自動車用吸音材を作製できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の自動車用吸音材によれば、重量を抑え、高い剛性を維持した状態で、非通気性の樹脂フィルム層を貼り合せることにより、吸音率のピークを500Hzから8000Hzの周波数の帯域にコントロールすることが可能となる。本発明の自動車用吸音材は、より具体的には、例えば、フロアーカーペット、フロアースペーサ、トランクトリム、トランクフロアー、ダッシュインシュレータ、アンダーカバーなどの騒音発生源の吸音カバー部品に有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 コア材料
10 コア層
11 山部
12 谷部
13 側面部
14 底面部
15 山部接続面
16 谷部接続面
17 頂面
18 コア材料裏面
19 貫通孔
20 セル
21 閉鎖面
22 解放端
30 不織布層
40 非通気性の樹脂フィルム層
50 複数の開孔を有する樹脂フィルム層
55 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8

【手続補正書】
【提出日】2021年6月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の一方の面に接着された第1の非通気性の樹脂フィルム層とを備える複層構造の自動車用吸音材であって、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率E(MPa)と、前記コア層よりも前記第1の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度M(g/m)との関係が、0.5<E/M<21である自動車用吸音材。
【請求項2】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が、複数の異なるヤング率を有する材料で積層された構造を有する請求項1に記載の自動車用吸音材。
【請求項3】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された第2の非通気性の樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用吸音材。
【請求項4】
前記第2の非通気性の樹脂フィルム層のヤング率E(MPa)と、前記コア層よりも前記第2の非通気性の樹脂フィルム層側の層構造の面密度M(g/m)との関係が、0.5<E/M<21であり、且つ、E/MとE/Mとの差の絶対値が0.8以上である請求項3に記載の自動車用吸音材。
【請求項5】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用吸音材。
【請求項6】
前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用吸音材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記筒状のセルは、略四角筒状や略六角筒状などの多角筒状であってもよいし、略円筒状や略楕円筒状などの曲線筒状であってもよい。前記コア層の前記セルの各々は、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端は、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されていることが好ましい。前記開放端、前記一方側閉鎖面、および前記他方側閉鎖面は、前記セルの形状に従い、略四角形状や略六角形状などの多角形状であっても、略円形状や略楕円形状などの曲線形状であってもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
コア層の第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備えることで、複数の開孔を有する樹脂フィルム層に予め形成された開孔パターンによって、コア層の少なくとも一方の面の開放端の閉塞度を容易に調整し且つ安定的に維持することができ、そのため、自動車用吸音材の吸音率のピークのコントロールが可能であり、よって、上述したE/Mの値とともに、自動車用吸音材の吸音率のピークを望ましい周波数の帯域により容易にコントロールすることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
コア層のセルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、セルの開放端によってセルの内部空間が外部と連通しており、セルの開放端は、コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている構成にすることで、コア層のセルの閉鎖面が、第1の非通気性の樹脂フィルム層とコア層とを接着する面として確保され、セルの閉鎖面が一列おきに配置されているので、第1の非通気性の樹脂フィルム層とコア層との接着性を向上させることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
山部から形成されたセル20A、20C、20Eは、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ頂面17と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の一方の面10a(図2での表側の面)のセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21A、21C、21Eを備え、これら一方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の山部接続面15によって形成されたものである。更に、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、略六角形状に開口された開放端22A、22C、22Eを備える。この開放端22A、22C、22Eによって、セル20A、20C、20Eのそれぞれの内部空間が外部と連通している。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
谷部から形成されたセル20B、20Dも、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ底面14と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20B、20Dは、コア層10の前記一方の面10aのセル端部において、略六角形状に開口された開放端22B、22Dを備える。この開放端22B、22Dによって、セル20B、20Dのそれぞれの内部空間が外部と連通している。更に、これらセル20B、20Dは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21B、21Dを備え、これら他方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の谷部接続面16によって形成されたものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
このように第1の実施形態によれば、一列おきに開放端と閉鎖面が配置されるコア層10の少なくとも一方の面に、非通気性の樹脂フィルム層40と、更にその外側に不織布層30を設けることによって、自動車用吸音材の軽量化を図っても高い剛性を確保することができるとともに、非通気性の樹脂フィルム層40のヤング率Eと非通気性の樹脂フィルム層40および不織布層30の合計の面密度Mとの比であるE/Mの値を調整することで、自動車用吸音材の吸音率のピークを望ましい周波数の帯域にコントロールすることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
第2の実施形態によれば、一列おきに開放端と閉鎖面が配置されるコア層10の両方の面に非通気性の樹脂フィルム層40と不織布層30をそれぞれ設け、第1の非通気性の樹脂フィルム層40a側のE/Mの値と第2の非通気性の樹脂フィルム層40b側のE/Mの値の両方を、0.5から21までの範囲内とし、更にこの範囲内で異なるようにすることで、自動車で耳障りな騒音となる周波数500Hzから8000Hzの帯域に吸音率のピークを2つ有する吸音性能に優れた自動車用吸音材を得ることができる。特に、E/MとE/Mとの値の差の絶対値を0.8以上にすることで、吸音する周波数の帯域を広くすることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
なお、開孔フィルム層50の孔55のピッチは、図2に示すコア層10のセル20のピッチPcx、Pcyと、必ずしも一致させなくてもよく、また、開孔フィルム層50をコア層10に貼り合わせる際に必ずしも孔55とセル20の位置合わせをしなくてもよい。これは、開孔フィルム層50の孔55とコア層10のセル20の開放端22の位置がランダムに重なることで、適度に内外の連通が確保されるようになるからである。開孔フィルム層50の孔55のピッチは、コア層10のセル20のピッチよりも少なくともX方向あるいはY方向のどちらかを小さくすることが好ましい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
第3の実施形態によれば、コア層10の非通気性の樹脂フィルム層40とは反対側の面に開孔フィルム層50を設けても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、開孔フィルム層50に予め形成された開孔パターンによって、コア層10の少なくとも一方の面の開放端22の閉塞度を容易に調整し且つ安定的に維持することができ、そのため、自動車用吸音材の吸音率のピークのコントロールが可能であり、よって、非通気性の樹脂フィルム層40側のE/Mの値とともに、自動車用吸音材の吸音率のピークを望ましい周波数の帯域により容易にコントロールすることができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
1 コア材料
10 コア層
11 山部
12 谷部
13 側面部
14 底面部
15 山部接続面
16 谷部接続面
17 頂面
18 コア材料裏面
19 貫通孔
20 セル
21 閉鎖面
22 開放端
30 不織布層
40 非通気性の樹脂フィルム層
50 複数の開孔を有する樹脂フィルム層
55 孔
【国際調査報告】