(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年4月2日
【発行日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】自動車用遮音材
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20210813BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20210813BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
G10K11/168
G10K11/16 120
B60R13/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2020-547628(P2020-547628)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年9月25日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518106168
【氏名又は名称】MT−Tec合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福井 一貴
【テーマコード(参考)】
3D023
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BB12
3D023BD04
3D023BD18
3D023BE03
3D023BE06
5D061AA02
5D061AA25
5D061BB13
(57)【要約】
軽量化を図るとともに、自動車で発生する500Hz〜6400Hzの騒音に対して十分な遮音性能を発揮できる自動車用遮音材を提供する。本発明の自動車用遮音材は、筒状のセル20が複数の列をなして配置されているコア層10と、コア層の一方の面に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40と、その外側に設けられたデカップリング層30とを備え、コア層の一方の面のセル端部は、一列おきに、閉鎖面21と解放端22とを有し、コア層の他方の面のセル端部は、前記一方の面のセル端部に閉鎖面を有する列に、解放端と、前記一方の面のセル端部に解放端を有する列に、閉鎖面とを有し、解放端によってセルの内部空間が外部と連通しており、コア層に設けられた非通気性の樹脂フィルム層のコア層とは反対面における音圧P、粒子速度vと、デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される(P/v)/Zaの平均は500〜6400Hz間で2.8〜10である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz〜6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である自動車用遮音材。
【請求項2】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の厚さが50〜200μmである請求項1に記載の自動車用遮音材。
【請求項3】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用遮音材。
【請求項4】
前記コア層の前記セルが隣接して列をなす方向の前記セル間のピッチPcyが、10mm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
【請求項5】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が、複数の異なる材料で積層された構造を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
【請求項6】
前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記解放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記解放端が、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用遮音材に関し、さらに詳しくは、吸音性能を有する自動車用遮音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の構造として、前方にエンジン室があり、後方にはトランク室があり、その中間に客室を設ける構造が一般的である。客室には、運転席、助手席および後部座席といった座席を設けている。また、客室には、自動車内装の外側を覆うようにダッシュインシュレータ、フロアーカーペット、フロアースペーサ、トランクトリム、及びトランクフロアーが設置されており、これら部品は、車体の形状や部品のデザインに合わせた凹凸状の形状に成形されている。更に、車体下の外装には、フロントフェンダーライナー、リアフェンダーライナー、及び空気の流れを制御する凹凸形状に成形されたアンダーカバーが設置されている。これら部品の多くは、材料として熱可塑性樹脂が使用され、この材料を加熱して当該部品の形状の型によりプレス成形し、厚みが異なる複数の部分を有する凹凸形状の部品に仕上げられる。
【0003】
自動車開発の最近の動向として車内の静寂性が重要視されている。自動車の車内に伝わる騒音としては、ウインドウからの騒音、タイヤからの騒音、車体下からの騒音、エンジン音からの騒音、モータ音からの騒音などがある。騒音中の特に500Hzから4000Hzの周波数が、運転者や同乗者に耳障りとなると言われている。また、電気自動車では、従来、耳障りと感じていなかった4000Hz〜8000Hzの周波数についても、エンジンがないことから、運転者や同乗者に耳障りとなるだろうと言われている。よって、この周波数の帯域の騒音を吸音する機能が、自動車の内外装部品に求められている。一方で、燃費削減も重要であり、自動車の内外装部品の軽量化も求められている。
【0004】
また、特開2005−99402号公報には、空気の音響インピーダンスと略同一若しくは僅かに大きい音響インピーダンスを有する材料から形成されている第1の吸音部と、第1の吸音部より大きい音響インピーダンスを有する材料から形成されている第2の吸音部とを備える吸音構造体が記載されている。この公報には、吸音層の音響インピーダンスが、空気の音響インピーダンスと大きく異なる場合は、入射する音波の大部分が、吸音層と空気層の境界面、即ち吸音層の表面で反射することになるが、空気層と境界面を構成する第1の吸音層を上記の音響インピーダンスとすることで、入射する音波の大部分は、第1の吸音層の表面で反射することなく、第2の吸音層に達するとともに、第1の吸音層と第2の吸音層の間の音響インピーダンスの不連続性を比較的小さくしたため、第1の吸音層と第2の吸音層の境界面で、入射する音波の一部が、音響インピーダンス差に起因して反射するのを最小限に抑えることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−99402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用遮音材は、上述したように、空気と層との間や層間の音響インピーダンスの差を大きくすることで、入射する音波を反射して遮音している。音響インピーダンスは、層の構成によって大きく異なり、例えば、繊維層は比較的に小さく、ゴム層は比較的に大きい。よって、ゴム層を遮音材に用いることで、遮音性を高くすることができるが、遮音材が高重量化してしまい、自動車用としては問題がある。
【0007】
そこで本発明は、高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する特に500Hz〜6400Hzの周波数の騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる自動車用遮音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均は、500Hz〜6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である。
【0009】
前記筒状のセルは、略四角筒状や略六角筒状などの多角筒状であってもよいし、略円筒状や略楕円筒状などの曲線筒状であってもよい。前記コア層の前記セルの各々は、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記解放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記解放端は、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されていることが好ましい。前記解放端、前記一方側閉鎖面、および前記他方側閉鎖面は、前記セルの形状に従い、略四角形状や略六角形状などの多角形状であっても、略円形状や略楕円形状などの曲線形状であってもよい。
【0010】
本発明の自動車用遮音材は、前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の厚さが50〜200μmとなるものが好ましい。
【0011】
または、本発明の自動車用遮音材は、前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備えてもよい。
【0012】
前記コア層の前記セルが隣接して列をなす方向の前記セル間のピッチPcyは、10mm以下とすることが好ましい。
【0013】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層は、複数の異なる材料で積層された構造を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明に係る自動車用遮音材は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備え、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均を、500Hz〜6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10とする構成によって、高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する500Hz〜6400Hzの周波数の音波は、デカップリング層に入射した後、第1の非通気性の樹脂フィルム層との境界面でその大部分が反射することから、自動車で発生する騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる。
【0015】
第1の非通気性の樹脂フィルム層の厚さが50〜200μmとすることで、軽量化をしつつ、上述した遮音性能を維持することができる。
【0016】
コア層の第1の非通気性の樹脂フィルム層とは反対側の面に複数の開孔を有する樹脂フィルム層を設けることで、複数の開孔を有する樹脂フィルム層に予め形成された開孔パターンによって、コア層の少なくとも一方の面の解放端の閉塞度を容易に調整し且つ安定的に維持することができ、そのため、自動車用遮音材の吸音率のピークのコントロールが可能となり、よって、上述した遮音性能とともに、優れた吸音性能を発揮することができる。
【0017】
第1の非通気性の樹脂フィルム層を、複数の異なる材料で積層された構造とする構成によって、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaを所定の範囲内とするための設計を容易にすることができる。
【0018】
コア層のセルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、セルの解放端によってセルの内部空間が外部と連通しており、セルの解放端は、コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている構成にすることで、コア層のセルの閉鎖面が、第1の非通気性の樹脂フィルム層とコア層とを接着する面として確保され、セルの閉鎖面が一列おきに配置されているので、第1の非通気性の樹脂フィルム層とコア層との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る自動車用遮音材におけるコア層に用いるコア材料の製造過程を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る自動車用遮音材におけるコア層を示す概略平面図である。
【
図3】III-III線に沿って
図2のコア層を示す概略断面図である。
【
図4】本発明に係る自動車用遮音材の一実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図4に示す自動車用遮音材の実施の形態の概略断面図である。
【
図6】本発明に係る自動車用遮音材の別の実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図7】本発明に係る自動車用遮音材のまた別の実施の形態を示す概略断面図である。
【
図8】本発明に係る自動車用遮音材の更に別の実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明に係る自動車用遮音材の実施例および比較例における面密度と比音響インピーダンス比の関係を示すグラフである。
【
図10】本発明に係る自動車用遮音材の実施例および比較例における周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る自動車用遮音材の一実施の形態について説明する。なお、図面は、別段の定めがない限り、縮尺通りに描くことを意図してはいない。
【0021】
先ず、本発明に係る自動車用遮音材の各実施の形態において共通するコア層について説明する。
図1は、このコア層となるコア材料の製造過程を示す斜視図である。なお、このコア材料は、ここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする国際公開第2006/053407号にその製造方法が詳細に記載されている。
【0022】
図1に示すように、このコア材料1は、平坦な材料シートを所定の型を有するローラ(図示省略)によって熱成形され、実質的にシートを切ることなく塑性変形により形成されたものである。コア材料1の素材は、これらに限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの熱可塑性樹脂や、繊維との複合材料、紙、金属等を用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。本実施の形態では、熱可塑性樹脂を用いた場合について説明する。材料シートの厚みは、これに限定されないが、例えば、0.05mmから0.50mmの範囲が好ましく、熱成形後のコア材料1の厚みもほぼ同様である。
【0023】
コア材料1は、製造方向Yに対して直交する幅方向Xに向かって、山部11と谷部12が交互に配置される三次元構造を有している。山部11は、2つの側面13とその間の頂面17とで構成され、谷部12は、隣接する山部11と共有する2つの側面13とその間の底面14とで構成される。なお、本実施の形態では、
図1に示すように山部11の形状が台形の場合について説明するが、本発明はこれに限定されず、三角形や長方形などの多角形の他、正弦曲線や弓形などの曲線形にしてもよい。
【0024】
コア材料1は、上記の三次元構造を、製造方向Yに向かって連続するように備える。すなわち、
図1に示すように、製造方向Yに向かって複数の山部11a、11b、11c、11dが連続して形成される。谷部12も同様に連続して形成される。そして、山部11間の接続および谷部12間の接続は、2種類の接続方法を交互に繰り返すことでなされている。
【0025】
第1の接続方法は、
図1に示すように、幅方向の第1の折り畳み線X1において、隣接する2つの山部11b、11cの頂面17b、17cが、それぞれ台形状の山部接続面15b、15cを介して接続するというものである。山部接続面15は頂面17に対して直角の角度で形成されている。この幅方向の第1の折り畳み線X1において、隣接する2つの谷部の底面14b、14cは、直接に接続している。第2の接続方法は、
図1に示すように、幅方向の第2の折り畳み線X2において、隣接する2つの谷部の底面14a、14b(又は14c、14d)が、それぞれ台形状の谷部接続面16a、16b(又は16c、16d)を介して接続するというものである。谷部接続面16は底面14に対して直角の角度で形成されている。この幅方向の第2の折り畳み線X2において、隣接する2つの山部の頂面12a、12b(又は12c、12d)は、直接に接続している。
【0026】
このようにコア材料1は、複数の三次元構造(山部11、谷部12)が接続領域(山部接続面15、谷部接続面16)を介して接続されており、接続領域を折り畳むことで、本発明の自動車用遮音材のコア層が形成される。具体的には、第1の折り畳み線X1では山折りで、隣接する2つの谷部の底面14b、14c同士が、その裏面を介して重なり合い、隣接する2つの山部の山部接続面15b、15cのなす角度が180度まで開くように折り畳む。また、第2の折り畳み線X2では谷折りで、隣接する2つの山部の頂面17a、17b(又は17c、17d)同士が重なり合い、隣接する2つの谷部の谷部接続面16a、16b(又は16c、16d)のなす角度が180度まで閉じるように折り畳む。このようにコア材料1を折り畳むことで得られた本発明の自動車用遮音材のコア層10を、
図2及び
図3に示す。
【0027】
図2及び
図3に示すように、コア層10は、複数の列をなして配置されている略六角筒状のセル20を備え、一列おきに、隣接する2つの山部から形成されたセル20A、20C、20Eと、隣接する2つの谷部から形成されたセル20B、20Dが配置される。
図3中の破線18は、コア材料の裏面であった面であり、略六角筒状のセル20の内壁を概ね示すものである。
【0028】
山部から形成されたセル20A、20C、20Eは、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ頂面17と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の一方の面10a(
図2での表側の面)のセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21A、21C、21Eを備え、これら一方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の山部接続面15によって形成されたものである。更に、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、略六角形状に開口された解放端22A、22C、22Eを備える。この解放端22A、22C、22Eによって、セル20A、20C、20Eのそれぞれの内部空間が外部と連通している。
【0029】
谷部から形成されたセル20B、20Dも、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ底面14と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20B、20Dは、コア層10の前記一方の面10aのセル端部において、略六角形状に開口された解放端22B、22Dを備える。この解放端22B、22Dによって、セル20B、20Dのそれぞれの内部空間が外部と連通している。更に、これらセル20B、20Dは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21B、21Dを備え、これら他方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の谷部接続面16によって形成されたものである。
【0030】
このようにコア層10は、一方の面10aのセル端部には、一列おきに、セル材料における山部から形成された一方側閉鎖面21A、21C、21Eを有し、他方の面10bのセル端部には、上記とは異なるセルの列に、セル材料における谷部から形成された他方側閉鎖面21B、21Dを有しているが、別段の記載がない限り、一方側閉鎖面、他方側閉鎖面のどちらの閉鎖面21も実質的に同一の機能を発揮するものである。
【0031】
コア層10全体の厚みは、複層構造体を自動車のどこの部品に用いるかで変わるため、以下に限定されないが、後述する非通気性の樹脂フィルム層とデカップリング層とによる比音響インピーダンス比をコントロールする点や、コア層10自体の吸音性能、コア層10の強度、重量の観点から、3mmから50mmの範囲が好ましく、5mmから30mmの範囲がより好ましい。
【0032】
コア層10の目付け(単位面積当たりの重さ)は、複層構造体を自動車のどこの部品に用いるかで変わるため、これらに限定されないが、400g/m
2から4000g/m
2の範囲が好ましく、500g/m
2から3000g/m
2の範囲がより好ましい。コア層10の厚みが大きく、目付けが大きい程、概ね、コア層10の強度が高くなる。
【0033】
コア層10の目付けは、コア層10の素材の種類や、コア層10全体の厚み、セル20の壁厚(材料シートの厚み)の他に、コア層10のセル20間のピッチPcx、Pcy(セルの中心軸間の距離)によっても調整することができる。コア層10の目付けを上記の範囲とするためには、例えば、コアの製造方向Yであるセル20が隣接して列をなす方向のセル20間のピッチPcyを、3mmから20mmの範囲とすることが好ましく、4mmから15mmの範囲とすることがより好ましい。特に、後述する非通気性の樹脂フィルム層とデカップリング層とによる比音響インピーダンス比を所定の範囲内にコントロールするためには、セル20間のピッチPcyは10mm以下にすることが更に好ましい。
【0034】
次に、上述したコア層10を用いて本発明に係る自動車用遮音材の各実施形態について説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の自動車用遮音材は、
図4及び
図5に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40と、更にその外側に設けられたデカップリング層30とを備える。なお、本発明の自動車用遮音材は、騒音の発生源の側に、デカップリング層30側が位置するように用いられる。
【0036】
非通気性の樹脂フィルム層40の素材は、これらに限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(PA)などの樹脂フィルムを用いることができる。
【0037】
非通気性の樹脂フィルム層40の厚みは、後述する非通気性の樹脂フィルム層とデカップリング層とによる比音響インピーダンス比によるが、例えば、その下限は、0.02mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更に好ましい。また、厚みの上限は、0.6mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましく、0.3mm以下が更に好ましい。
【0038】
非通気性の樹脂フィルム層40は、コア層10に対して、熱溶着させて接着させてもよいし、接着剤(図示省略)を介して接着させてもよい。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系やアクリル系等の接着剤を用いることができる。また、非通気性の樹脂フィルム層40をコア層10及びデカップリング層30と熱溶着させるために、例えば、非通気性の樹脂フィルム層40を三層構造にして、中央の層と、その両側の面に位置する2つの接着層とを備えるようにしてもよい。この場合、接着層の素材は、中央の層に用いる素材の融点よりも低い融点を有する素材を用いる。例えば、中央の層に190℃から220℃の融点を有するポリアミドを用い、接着層に90℃から130℃の融点を有するポリエチレンを用いることで、非通気性の樹脂フィルム層40をコア層10やデカップリング層30に貼り合わせる際の加熱時の温度や自動車用遮音材の所定の形状に熱成形する温度を150℃から160℃程とすれば、中央の層は溶融せずに、接着層のみを溶融してコア層10やデカップリング層30と強固に接着することができる。接着層のポリエチレンよりも融点の高い樹脂としては、ポリアミドの他に、ポリプロピレンがある。
【0039】
デカップリング層30は、自動車用遮音材において振動伝達をデカップリング(分断)するための層として通常用いられている層である。デカップリング層30の素材は、自動車用遮音材のデカップリング層に用いられる素材であれば、特に限定されないが、自動車用遮音材の軽量化の観点から、ポリエステル繊維や、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、グラスウールやロックウール等の無機質繊維、アルミニウム繊維等の金属繊維などの繊維が好ましく、また、発泡ウレタンや、発泡ポリエチレン、発泡ナイロンなどの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの発泡体も好ましい。また、繊維と発泡体を組み合わせてもよい。特に、デカップリング層30として、フェルトが好ましく、低融点ポリエステル繊維などのポリエステル繊維や、グラスウール等の素材で形成することが好ましい。また、フェルトの製法としては、ニードルパンチングや、サーマルボンド、スパンレース等の製法で作製されているものが好ましい。
【0040】
デカップリング層30の目付けとしては、後述する非通気性の樹脂フィルム層とデカップリング層とによる比音響インピーダンス比によるため、以下に限定されないが、例えば、その下限は、10g/m
2以上が好ましく、50g/m
2以上がより好ましく、100g/m
2以上が更に好ましい。また、目付けの上限は、これらに限定されないが、1000g/m
2以下が好ましく、800g/m
2以下がより好ましく、600g/m
2以下が更に好ましい。
【0041】
本実施の形態において、コア層10に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40のコア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、デカップリング層30の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比(P/v)/Za(単位:無次元)の平均は、500Hz〜6400Hzの間で、2.8から10までの範囲とする。比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を2.8以上にすることで、デカップリング層30に入射した周波数500Hz〜6400Hzの音波を、デカップリング層30と非通気性の樹脂フィルム層40との境界面で十分に反射することができる。また、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均を10以下に抑えることで、自動車用遮音材の軽量化を維持しつつ、上述した遮音性能を十分に発揮することができる。比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均の下限は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均の上限は、9以下が好ましく、8以下がより好ましい。
【0042】
比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均は、以下の方法によって求めることがきる。コア層10の一方の面に設けられた非通気性の樹脂フィルム40のコア層とは反対側の表面における空気との比音響インピーダンス比(P/v)/Z
0を、周波数500Hz〜6400Hzの範囲にわたって測定する。なお、空気の音響インピーダンスをZ
0で表す。P/vは、比音響インピーダンスとも呼ばれている。一方で、コア層10および非通気性の樹脂フィルム40の無い状態のデカップリング層30の表面における空気との比音響インピーダンス比Za/Z
0を、周波数500Hz〜6400Hzの範囲にわたって測定する。そして、各周波数において(P/v)/Z
0およびZa/Z
0の測定値から、以下の式により、(P/v)/Zaを求めることができる。
【0044】
比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均は、周波数500Hz〜6400Hzの範囲で、少なくとも周波数の間隔を2Hz以下として測定したものの単純平均でよい。上記の(P/v)/Z
0およびZa/Z
0は、いずれもISO 10534−2(2マイクロホン伝達関数法)に準拠した方法により測定することができる。例えば、市販されているインピーダンス管(B&K社製の型番4206)で測定することができる。
【0045】
音圧Pと粒子速度vは、非通気性の樹脂フィルム層40の構成(例えば、素材や、厚み等)によって異なる他、非通気性の樹脂フィルム層40が設けられているコア層10の構成(例えば、素材や、コアの配置、コア層全体の厚み、コアのピッチ、コア壁面の厚み等)や、非通気性の樹脂フィルム層40とコア層10との接着強度などによっても影響を受ける。コア層10に設けた非通気性の樹脂フィルム層40と空気との比音響インピーダンス比(P/v)/Z
0は、特に限定されないが、例えば、周波数500Hz〜6400Hzの範囲で、その平均の上限は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。また、比音響インピーダンス比(P/v)/Z
0の平均の下限は、特に限定されないが、3以上が好ましく、5以上がより好ましい。
【0046】
デカップリング層30と空気との比音響インピーダンス比Za/Z
0は、デカップリング層30の構成(例えば、素材の種類や、目付け等)によって異なるものである。この比音響インピーダンス比Za/Z
0は、特に限定されないが、例えば、周波数500Hz〜6400Hzの範囲で、その平均の上限は、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.1以下が更に好ましい。また、比音響インピーダンス比Za/Z
0の平均の下限は、特に限定されないが、1.0以上が好ましい。
【0047】
第1の実施形態によれば、一列おきに解放端と閉鎖面が配置されるコア層10の少なくとも一方の面に非通気性の樹脂フィルム層40と、更にその外側にデカップリング層30を設け、上述した比音響インピーダンス比(P/v)/Zaを上記の数値範囲内にすることによって、高い剛性を確保しつつ自動車用遮音材の軽量化を図ることができるとともに、自動車で発生する500Hz〜6400Hzの周波数の騒音に対して十分な遮音性能を発揮することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の自動車用遮音材は、
図6に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層40aと、その外側に設けられたデカップリング層30と、コア層10の他方の面に設けられた第2の非通気性の樹脂フィルム層40bとを備える。なお、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
第1の非通気性の樹脂フィルム層40aは、第1の非通気性の樹脂フィルム層40で説明した同様の構成(樹脂フィルムの素材や、厚み等)を有するものである。また、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bも、更にその外側にデカップリング層が設けられていないものの、第1の非通気性の樹脂フィルム層40aと同等の性能を有するものが好ましい。すなわち、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bのコア層10とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、コア層10内部に吸音材が充填されている場合はその吸音材の表面における音響インピーダンスZ2aとで表される比音響インピーダンス比の平均は、500Hz〜6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Z2a<10となるものが好ましい。
【0050】
なお、このようにコア層10の両面に第1および第2の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bを設けた場合、第1の非通気性の樹脂フィルム層40aと空気との比音響インピーダンス比(P/v)/Z
0の測定は、デカップリング層30がない状態で、第1の樹脂フィルム層40aのコア層10とは反対側の表面を計測し、また、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bと空気との比音響インピーダンス比(P
2/v
2)/Z
0の測定は、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bのコア層10とは反対側の表面を計測する。デカップリング層30の表面における空気との比音響インピーダンス比Za/Z
0の測定は、第1の実施の形態と同様に、コア層10及び第1の非通気性の樹脂フィルム層40aの無い状態で行う。コア層10内部の吸音材の表面における空気との比音響インピーダンス比Z2a/Z
0の測定は、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bの無い状態で行う。
【0051】
第2の実施形態によれば、一列おきに解放端と閉鎖面が配置されるコア層10の両方の面に第1および第2の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bを設けても、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bが第1の非通気性の樹脂フィルム層40aと同等の性能を有しているので、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、第2の非通気性の樹脂フィルム層40bを設けることによって、コア層10の少なくとも一方の面の解放端22が閉塞され、そのため、自動車用遮音材の音響透過損失を更に向上することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の自動車用遮音材は、
図7に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた非通気性の樹脂フィルム層40と、その外側に設けられたデカップリング層30と、コア層10の第1の非通気性の樹脂フィルム層40とは反対側の面に、複数の開孔を有する樹脂フィルム層50とを備える。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0053】
複数の開孔を有する樹脂フィルム層50(以下、開孔フィルム層50という)は、層を貫通する複数の孔55を有する。この孔55の開孔は、コア層10に貼り合わされる前に予め行われるものであり、例えば、熱針やパンチ加工(オス型とメス型を用いたパンチ加工)で開け、孔が塞がることを防止するため、孔のバリを極力抑えた孔形状とすることが好ましい。
【0054】
孔55の開孔パターンは、特に限定されないが、千鳥配列や格子配列で配置することが好ましい。開孔フィルム層50の開孔率は、特に限定されないが、0.2%から5%の範囲が好ましい。孔55の直径は、0.25mmから2.5mmの範囲が好ましく、0.3mmから2.0mmの範囲がより好ましい。
【0055】
なお、開孔フィルム層50の孔55のピッチは、
図2に示すコア層10のセル20のピッチPcx、Pcyと、必ずしも一致させなくてもよく、また、開孔フィルム層50をコア層10に貼り合わせる際に必ずしも孔55とセル20の位置合わせをしなくてもよい。これは、開孔フィルム層50の孔55とコア層10のセル20の解放端22の位置がランダムに重なることで、適度に内外の連通が確保されるようになるからである。開孔フィルム層50の孔55のピッチは、コア層10のセル20のピッチよりも少なくともX方向あるいはY方向のどちらかを小さくすることが好ましい。
【0056】
第3の実施形態によれば、コア層10の非通気性の樹脂フィルム層40とは反対側の面に開孔フィルム層50を設けても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、開孔フィルム層50に予め形成された開孔パターンによって、コア層10の少なくとも一方の面の解放端22の閉塞度を容易に調整し且つ安定的に維持することができ、そのため、自動車用遮音材の遮音と吸音の割合のコントロールが可能であり、よって、第1の非通気性の樹脂フィルム層40aおよびデカップリング層30に関して上述した比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの値とともに、自動車用遮音材の吸遮音性能をより容易にコントロールすることができる。
【0057】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の自動車用遮音材は、
図8に示すように、上述したコア層10と、その一方の面に設けられた複数の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bと、その外側に設けられたデカップリング層30とを備える。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0058】
複数の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bは、構成(樹脂フィルムの素材や、厚み等)が同一のものを用いてもよいし、構成が異なるものを用いてもよい。このように複数の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bをコア層10とデカップリング層30との間に設けた場合、音圧Pと粒子速度vの測定は、コア層10に複数の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bを設けた際の最も外側の非通気性の樹脂フィルム層40bの表面に対して行う。
【0059】
第4の実施形態によれば、コア層10とデカップリング層30との間に複数の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bを設けても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、複数の非通気性の樹脂フィルム層40a、40bを異なる構成とすることで、上述した比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの値を調整する際の設計の自由度が増し、自動車用遮音材の遮音性能をより容易にコントロールすることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0061】
実施例1として、
図4及び
図5に示す複層構造を有する自動車用遮音材を作製した。先ず、
図1〜
図3の構造を有するコア層(素材:ポリプロピレン樹脂、セル間のピッチPcy:4mm、コア層の厚み:6mm)の一方の面に、厚み50μmの非通気性の樹脂フィルム(素材:ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレンの3層フィルム)を貼り、この非通気性の樹脂フィルムの表面における空気との比音響インピーダンス比(P/v)/Z
0を、インピーダンス管(B&K社製の型番4206、φ29)で周波数500Hz〜6400Hzの範囲にわたって測定した。次に、非通気性の樹脂フィルムの外側に、デカップリング層としてフェルト(素材:雑綿、製法:ニードルパンチ、目付け:300g/m
2)を貼った。なお、このフェルトの表面における空気との比音響インピーダンス比Za/Z
0を、上記インピーダンス管で周波数500Hz〜6400Hzの範囲にわたって測定した。これらの測定値から比音響インピーダンス比(P/v)/Zaを算出した。実施例1の比音響インピーダンス比(P/v)/Zaの平均は、周波数500Hz〜6400Hzの範囲で、7.7であった。また、実施例1の自動車用遮音材の面密度は、666g/m
2であった。
【0062】
実施例1と同様にして、以下の表1に示すように、非通気性の樹脂フィルムおよびデカップリング層の素材、目付け、厚み等を変えた実施例2〜12の自動車用遮音材を作製し、その比音響インピーダンス比(P/v)/Z
0およびZa/Z
0並びに面密度を測定した。また、比較例として、同様の大きさのゴムシート(素材:エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM))についても比音響インピーダンス比並びに面密度を測定した。その結果を、実施例1を含めて表1及び
図9に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1及び
図9に示すように、1000g/m
2の面密度のゴムシートである比較例に比べて、いずれの実施例も、面密度に対して大きな値の比音響インピーダンス比を得ることができ、自動車用遮音材の軽量化を行っても高い遮音性を発揮することができることが確認された。これがより明確にわかるグラフを
図10に示す。実施例1および比較例について、周波数100Hzから5000Hzの間の音響透過損失(dB)を測定した結果が
図10である。なお、音響透過損失は、残響室と無響室を組み合わせて、音響インテンシティーを測定することで音響透過損失を測定した。音響透過損失と各測定値の関係を次式に示す。計測サンプルのサイズはいずれも500mm×600mmとした。
TL=SPL
0−PWL
i+10log
10S−6
TL:音響透過損失(dB)
SPL
0:残響室内の平均音圧レベル(dB)
PWL
i:透過音のパワーレベル(dB)
S:試料面積(m
2)
【0065】
図10に示すように、実施例1は、比較例の約2/3の質量で、周波数500Hzから5000Hzにわたり音響透過損失が約3dB高く、よって、自動車用遮音材の大幅な軽量化を行っても高い遮音性を維持できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の自動車用遮音材によれば、重量を抑え、高い剛性を維持した状態で、非通気性の樹脂フィルムとデカップリング層により、十分な遮音性能を得ることができる。本発明の自動車用遮音材は、より具体的には、例えば、フロアーカーペット、フロアースペーサ、トランクトリム、トランクフロアー、ダッシュインシュレータ、アンダーカバーなどの騒音発生源と自動車室内との間で騒音を遮蔽する部品に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 コア材料
10 コア層
11 山部
12 谷部
13 側面部
14 底面部
15 山部接続面
16 谷部接続面
17 頂面
18 コア材料裏面
19 貫通孔
20 セル
21 閉鎖面
22 解放端
30 デカップリング層
40 非通気性の樹脂フィルム層
50 複数の開孔を有する樹脂フィルム層
55 孔
【手続補正書】
【提出日】2021年6月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層と、前記コア層の少なくとも一方の面に設けられた第1の非通気性の樹脂フィルム層と、前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の面に設けられたデカップリング層とを備える複層構造の自動車用遮音材であって、前記コア層に設けられた前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の前記コア層とは反対側の表面における音圧P及び粒子速度vと、前記デカップリング層の音響インピーダンスZaとで表される比音響インピーダンス比の平均が、500Hz〜6400Hzの間で、2.8<(P/v)/Za<10である自動車用遮音材。
【請求項2】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層の厚さが50〜200μmである請求項1に記載の自動車用遮音材。
【請求項3】
前記コア層の前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が接着された面とは反対側の面に接着された複数の開孔を有する樹脂フィルム層を更に備える請求項1又は2に記載の自動車用遮音材。
【請求項4】
前記コア層の前記セルが隣接して列をなす方向の前記セル間のピッチPcyが、10mm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
【請求項5】
前記第1の非通気性の樹脂フィルム層が、複数の異なる材料で積層された構造を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
【請求項6】
前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記開放端が、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用遮音材。
【国際調査報告】