(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年5月7日
【発行日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】工具搬送装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20210806BHJP
【FI】
B23Q3/157 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2020-554681(P2020-554681)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月31日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕児
(72)【発明者】
【氏名】勝又 健次
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002AA01
3C002AA03
3C002AA04
3C002FF03
3C002FF07
3C002LL01
(57)【要約】
工具搬送装置(80)は、入力軸(82a)と、第1の出力軸(82b)と、第1の出力軸(82b)に対して隣接して平行に位置する第2の出力軸(82c)と、を有するインデックス装置(82)であって、入力軸(82a)は、サーボモータ(81)に連結され、第1の出力軸(82b)は、入力軸(82a)が回転する間、回転し、第2の出力軸(82c)は、入力軸(82a)が回転する間のある期間、所定の角度位置に停留し、残りの期間、回転する、インデックス装置(82)と、グリッパ(84)と、インデックス装置(82)の第2の出力軸(82c)によって駆動され且つグリッパ(84)を支持する旋回部(83)と、インデックス装置(82)の第1の出力軸(82b)によって駆動されるグリッパ開閉部材(82i)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を収容する工具ポットを、工具マガジンと次工具待機位置との間で搬送するための工具搬送装置であって、前記工具マガジンにおける前記工具の回転軸線が主軸の回転軸線に対して所定の非平行な角度になるように、且つ、前記次工具待機位置における前記工具の前記回転軸線が前記主軸の回転軸線に対して平行になるように、前記工具ポットを旋回させる、工具搬送装置において、
入力軸と、第1の出力軸と、第2の出力軸と、を有するインデックス装置であって、前記入力軸は、サーボモータに連結され、前記第1の出力軸は、前記入力軸が回転する間、回転し、前記第2の出力軸は、前記入力軸が回転する間のある期間、所定の角度位置に停留し、残りの期間、回転する、インデックス装置と、
前記工具ポットをクランプ及びアンクランプするように開閉可能であるグリッパと、
前記インデックス装置の前記第2の出力軸によって駆動され且つ前記グリッパを支持する旋回部であって、前記インデックス装置の前記第2の出力軸の回転によって、前記グリッパを前記工具マガジン及び前記次工具待機位置の間で旋回させる、旋回部と、
前記インデックス装置の前記第1の出力軸によって駆動されるグリッパ開閉部材であって、前記インデックス装置の前記第2の出力軸が停留する間に前記グリッパを開くように、且つ、前記インデックス装置の前記第2の出力軸が回転する間に前記グリッパを閉じるように構成された、グリッパ開閉部材と、
を備えることを特徴とした工具搬送装置。
【請求項2】
前記インデックス装置の前記第2の出力軸は、前記第1の出力軸に対して隣接して平行に位置し、
当該工具搬送装置は、
前記インデックス装置の前記第1の出力軸に設けられた第1の歯車と、
前記インデックス装置の前記第2の出力軸と同心に且つ前記第2の出力軸とは独立して回転するように配置された第2の歯車であって、前記第1の歯車によって駆動され、且つ、前記インデックス装置の前記第1の出力軸の回転を前記グリッパ開閉部材に伝達する、第2の歯車と、
を備え、
前記グリッパ開閉部材は、前記インデックス装置の前記第2の出力軸が停留する間に前記グリッパを開くように、且つ、前記インデックス装置の前記第2の出力軸が回転する間に前記グリッパを閉じるように形成されたカム溝を有し、
前記グリッパは、前記グリッパ開閉部材の前記カム溝と係合するカムフォロアを有する、
請求項1に記載の工具搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、工具搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、主軸に取り付けられる工具を交換するために、複数の工具を収容する工具交換装置を有する場合がある。例えば、特許文献1は、工具交換装置を備える立形マシニングセンタを開示している。立形マシニングセンタでは、主軸の回転軸線は、鉛直方向に沿っている。特許文献1の工具交換装置は、複数の工具を収容するための工具マガジンと、工具転送装置と、を備えている。工具マガジンは、工具ポットを保持するための複数のホルダを有している。各ホルダでは、工具は、その回転軸線が主軸の回転軸線に対して90°であるように、工具ポットに収容されている。工具マガジンに収容された工具は、主軸に取り付けられる前に、その回転軸線が主軸の回転軸線に対して平行になるように、工具転送装置によって工具ポットと一緒に90°回転される。この目的のために、工具転回装置は、カム溝が形成された板カムと、板カム上の回転軸線を中心にして回転するブラケットと、ブラケットと共に回転するポットグリッパと、ブラケット及びポットグリッパを回転させるためのシリンダと、を有している。ポットグリッパには、板カムのカム溝と係合するカムフォロアが取り付けられている。シリンダの直線運動は、板カムのカム溝及びポットグリッパのカムフォロアによって回転運動に変換される。このような工具転回装置によって、工具マガジンに収容された工具は、主軸に取り付けられる前に90°回転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−300157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械の分野においては、設置面積を小さくするために、各構成要素をコンパクトにすることが望まれている。したがって、本発明は、コンパクトな工具搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、工具を収容する工具ポットを、工具マガジンと次工具待機位置との間で搬送するための工具搬送装置であって、工具マガジンにおける工具の回転軸線が主軸の回転軸線に対して所定の角度になるように、且つ、次工具待機位置における工具の回転軸線が主軸の回転軸線に対して平行になるように、工具ポットを旋回させる、工具搬送装置において、入力軸と、第1の出力軸と、第2の出力軸と、を有するインデックス装置であって、入力軸は、サーボモータに連結され、第1の出力軸は、入力軸が回転する間、回転し、第2の出力軸は、入力軸が回転する間のある期間、所定の角度位置に停留し、残りの期間、回転する、インデックス装置と、工具ポットをクランプ及びアンクランプするように開閉可能であるグリッパと、インデックス装置の第2の出力軸によって駆動され且つグリッパを支持する旋回部であって、インデックス装置の第2の出力軸の回転によって、グリッパを工具マガジン及び次工具待機位置の間で旋回させる、旋回部と、インデックス装置の第1の出力軸によって駆動されるグリッパ開閉部材であって、インデックス装置の第2の出力軸が停留する間にグリッパを開くように、且つ、インデックス装置の第2の出力軸が回転する間にグリッパを閉じるように構成された、グリッパ開閉部材と、を備える工具搬送装置である。
【0006】
本開示の一態様に係る工具搬送装置では、工具ポットの旋回操作及びクランプ操作が、第1の出力軸及び第2の出力軸を有するインデックス装置を用いて、1つのサーボモータによって連続的に実現可能である。したがって、コンパクトな工具搬送装置を提供することができる。
【0007】
インデックス装置の第2の出力軸は、第1の出力軸に対して隣接して平行に位置してもよく、工具搬送装置は、インデックス装置の第1の出力軸に設けられた第1の歯車と、インデックス装置の第2の出力軸と同心に且つ第2の出力軸とは独立して回転するように配置された第2の歯車であって、第1の歯車によって駆動され、且つ、インデックス装置の第1の出力軸の回転をグリッパ開閉部材に伝達する、第2の歯車と、を備えてもよく、グリッパ開閉部材は、インデックス装置の第2の出力軸が停留する間にグリッパを開くように、且つ、インデックス装置の第2の出力軸が回転する間にグリッパを閉じるように形成されたカム溝を有してもよく、グリッパは、グリッパ開閉部材のカム溝と係合するカムフォロアを有してもよい。この場合、インデックス装置の第1の出力軸及び第2の出力軸は互いに隣接して配置されているため、インデックス装置の設置面積は小さくて済む。また、インデックス装置の第1の出力軸の回転をグリッパ開閉部材に伝達する第2の歯車が、第2の出力軸と同心に配置されるため、第2の歯車を配置するための追加のスペースが必要とされない。したがって、よりコンパクトな工具搬送装置を提供することができる。また、グリッパの開閉は、カム溝及びカムフォロアによって達成される。したがって、グリッパの開閉をシンプルな構成によって実現可能である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、コンパクトな工具搬送装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る工具搬送装置を具備する工作機械を示す概略側面図である。
【
図4】工具搬送装置の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略底面図である。
【
図5】工具搬送装置の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略平面図である。
【
図6】工具搬送装置の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略平面図である。
【
図7】工具搬送装置の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略平面図である。
【
図8】工具搬送装置の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略平面図である。
【
図9】工具搬送装置の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る工具搬送装置を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合があり、さらに、ある図に示されている構成要素は、他の図面においては省略されている場合がある。
【0011】
図1は、実施形態に係る工具搬送装置を具備する工作機械100を示す概略側面図である。工作機械100は、例えば、横形のマシニングセンタであることができ、主軸5の回転軸線Ospが水平方向に設定されている。工作機械100は、立形であってもよく、また、マシニングセンタ以外の工作機械であってもよい。工作機械100は、例えば、ベッド(基台)1と、テーブル2と、コラム3と、主軸頭4と、主軸5と、工具交換装置50と、機械制御装置(制御装置)60と、NC装置70と、を備えることができる。工作機械100は、他の構成要素を更に有してもよい。
【0012】
工作機械100の機械座標系に関して、回転軸線Ospに平行な方向がZ軸方向(前後方向とも称される)である。コラム3に対してテーブル2が在る側が前であり、反対側が後である。鉛直方向がY軸方向(上下方向とも称される)であり、Z軸及びY軸の双方に垂直な方向がX軸方向(左右方向とも称される)である。
【0013】
ベッド1は、例えば工場の床に設置される。テーブル2は、ワークを支持する。ワークは、冶具によって直接的にテーブル2に取り付けられることができ、又は、他の実施形態では、ワークは、パレットを介して間接的にテーブル2に取り付けられてもよい。テーブル2は、ベッド1上に移動可能に配置されている。
【0014】
図2は、工作機械100を示す概略平面図である。工作機械100は、テーブル2をベッド1に対してZ軸に沿って移動させるZ軸駆動装置11を備えている。Z軸駆動装置11は、Z軸に沿ってベッド1上に配置された一対のリニアガイドL1を有しており、テーブル2がリニアガイドL1のレール上を移動する。Z軸駆動装置11は、テーブル2に連結されたボールねじB1と、ボールねじB1を回転させるためのモータM1と、を更に有している。Z軸駆動装置11によるテーブル2のZ軸方向の送りは、NC装置70によって制御される。
【0015】
コラム3は、Z軸方向においてテーブル2と対向するように、ベッド1上に移動可能に配置されている。工作機械100は、コラム3をX軸に沿って移動させるX軸駆動装置12を備えている。X軸駆動装置12は、X軸に沿ってベッド1上に配置された一対のリニアガイドL2を有しており、コラム3がリニアガイドL2のレール上を移動する。X軸駆動装置12は、コラム3に連結されたボールねじB2と、ボールねじB2を回転させるためのモータM2と、を更に有している。X軸駆動装置12によるコラム3のX軸方向の送りは、NC装置70によって制御される。
【0016】
主軸頭4は、コラム3に移動可能に配置されている。主軸頭4は、コラム3の前面から後面まで貫通している。工作機械100は、主軸頭4をY軸に沿って移動させるY軸駆動装置13を備えている。Y軸駆動装置13は、Y軸に沿ってコラム3に配置されたリニアガイド(不図示)を有しており、主軸頭4がリニアガイドのレール上を移動する。Y軸駆動装置13は、主軸頭4に連結されたボールねじ(不図示)と、当該ボールねじを回転させるためのモータM3と、を更に有している。Y軸駆動装置13による主軸頭4のY軸方向の送りは、NC装置70によって制御される。
【0017】
主軸5は、主軸頭4の内部に回転可能に配置されている。主軸5は、工具Tを保持する。主軸5の回転は、NC装置70によって制御される。
【0018】
工作機械100は、ワークを加工するための加工室R1と、複数の工具Tを収容するための工具保管室R2と、を有している。加工室R1及び工具保管室R2は、スプラッシュガード6によって仕切られている。スプラッシュガード6は、クーラント及び切りくずが加工室R1の外へ飛散することを防止する。スプラッシュガード6には、工具交換の際に工具Tを通すための開口6aが画定されている。開口6aには、シャッタ7が設けられている。なお、
図1では、理解を容易にするために、スプラッシュガード6及びシャッタ7は省略されていることに留意されたい。
【0019】
図2を参照して、工具交換装置50は、複数の工具Tを収容し、主軸5に取り付けられる工具Tを交換するように構成されている。工具交換装置50は、工具保管室R2に設けられている。工具交換装置50は、工具マガジン51と、シフタ(工具搬送装置)80と、アーム53と、を有している。
【0020】
工具マガジン51は、複数の工具Tを収容する。工具マガジン51は、工具Tの回転軸線が主軸5の回転軸線Ospに対して所定の角度(例えば、90°)になるように、工具Tを収容する。他の実施形態では、工具Tは、主軸5の回転軸線Ospに対して、90°以外の所定の非平行な角度で収容されてもよい。
【0021】
工具マガジン51は、例えば、マガジン本体51aと、複数の工具ポット保持部51bと、を有している。
図1を参照して、マガジン本体51aは、リングタイプであり、概ね、円環形状、又は、円形の無端形状(若しくは、閉じた線形状)を有している。マガジン本体51aは、主軸5の側方において、その無端形状がYZ平面に沿うように配置されている。マガジン本体51aの配置の方向は、これに限られない。
【0022】
マガジン本体51aは、例えば、フレーム51cに設けられた複数のローラ51dによって、回転可能に支持されることができる。マガジン本体51aは、ベルト、チェーン及び/又は歯車等を介して、モータ等の駆動装置に接続されている(不図示)。
図2を参照して、マガジン本体51aは、X軸方向に平行な回転軸線Omの周りに回転するように構成されている。マガジン本体51aの回転は、機械制御装置60によって制御される。
【0023】
複数の工具ポット保持部51bは、マガジン本体51aの無端形状に沿って配置されている。したがって、マガジン本体51aが回転するにつれて、複数の工具ポット保持部51bは、YZ平面に沿った円形の循環経路(又は、無端経路)を移動する。工具マガジン51は、選択された工具ポット保持部51bを、選択位置S1に配置するように構成されている。
【0024】
工具ポット保持部51bの各々は、工具ポットPを取外し可能に保持する。工具ポット保持部51bは、例えば、工具ポットPを保持するための板バネ等の弾性手段を含むことができる。工具ポットPは、図示しない周知の手段を用いて、工具Tを取外し可能に収容する。
【0025】
上記のように、本実施形態の工具マガジン51は、リングタイプである。しかしながら、他の実施形態では、工具マガジンは、チェーンに複数の工具ポット保持部が取り付けられたチェーンタイプであってもよい。また、さらに他の実施形態では、工具マガジンは、マトリクス状に工具ポットを収容するマトリクスタイプであってもよい。工具マガジンは、他のタイプであってもよい。
【0026】
シフタ80は、工具マガジン51の選択位置S1にある工具ポット保持部51bと、次工具待機位置S2と、の間で、工具ポットPを搬送するように構成されている。シフタ80は、主軸5と工具マガジン51との間に配置されている。シフタ80は、工具マガジン51における工具Tの回転軸線が主軸5の回転軸線Ospに対して所定の角度(例えば、90°)になるように、且つ、次工具待機位置S2における工具Tの回転軸線が主軸5の回転軸線Ospに対して平行になるように、工具ポットPを回転軸線Oshの周りに旋回させる。シフタ80は、工具ポットPをクランプ及びアンクランプすることが可能な、爪状のグリッパ84を有している。
【0027】
次工具待機位置S2は、工具マガジン51の円周方向において、選択位置S1と同じ角度に位置する。また、次工具待機位置S2は、工具マガジン51の半径方向において、選択位置S1よりも内側に位置する。選択位置S1と次工具待機位置S2との間の回転軸線Oshの周りの回転角度は、例えば90°である。選択位置S1と次工具待機位置S2との間の回転角度は、工具マガジン51における工具Tの収容角度に応じて変わり得る。シフタ80の回転動作は、サーボモータ81(
図3参照)によって駆動される(詳しくは後述)。
図2を参照して、シフタ80の回転動作は、機械制御装置60によって制御される。
【0028】
アーム53は、主軸5と、次工具待機位置S2にある工具ポットPと、の間で工具Tを交換する。アーム53は、主軸5とシフタ80との間に配置されている。アーム53は、主軸5の回転軸線Ospと平行な回転軸線Oa周りの回転動作と、回転軸線Oaに沿った並進動作と、が可能である。
【0029】
アーム53は、シャフト部53aと、アーム部53bと、を有している。シャフト部53aは、回転軸線Oaに沿って延びている。アーム部53bは、シャフト部53aから径方向に両側に延在しており、その両端に工具を把持するための2つのグリッパを含んでいる。
【0030】
機械制御装置60は、制御プログラムに基づいて、工具交換装置50の動作を制御する。また、機械制御装置60は、NC装置70により制御される構成要素(例えば、X軸駆動装置12、Y軸駆動装置13、Z軸駆動装置11及び主軸5等)以外の工作機械100中の他の機械構成要素の動作を制御することもできる。機械制御装置60は、例えば、プロセッサ、メモリ、入力装置、表示装置及びインターフェースを有することができ、これらの構成要素は例えばバス等によって互いに接続されている。
【0031】
NC装置70は、NCプログラムに基づいて、上記のX軸駆動装置12、Y軸駆動装置13、Z軸駆動装置11、及び、主軸5を制御するように構成されている。NC装置70は、機械制御装置60と同様に、例えば、プロセッサ、メモリ、入力装置、表示装置、及び、インターフェース等の構成要素を有することができる。機械制御装置60及びNC装置70は、互いに通信可能であってもよく、必要なときには協働することができる。
【0032】
次に、シフタ80について詳細に説明する。
【0033】
図3は、シフタ80を示す概略側面図である。なお、
図2は平面図であり、且つ、シフタ80に関してグリッパ84のみを示している一方で、
図3は側面図であり、且つ、グリッパ84とグリッパ84以外の他のシフタ80の構成要素も示していることに留意すべきである。シフタ80は、サーボモータ81と、インデックス装置82と、旋回部83と、グリッパ84と、を有している。
【0034】
サーボモータ81は、機械制御装置60によって制御される。サーボモータ81は、エンコーダを含んでおり、エンコーダからの回転位置信号が、機械制御装置60に送られる。シフタ80の駆動装置としてサーボモータ81が使用されているため、シフタ80が非常停止した場合にも、機械制御装置60は、グリッパ84の角度位置を算出することができる(詳しくは後述)。また、シフタ80の駆動装置としてサーボモータ81が使用されているため、機械制御装置60は、例えば、工具Tの重量等の様々な要因に応じて、グリッパ84の旋回速度を変更することができる。
【0035】
インデックス装置82は、入力軸82aと、第1の出力軸82bと、第2の出力軸82cと、これらの軸が回転可能に取り付けられたハウジング82xと、を含んでいる。入力軸82aは、サーボモータ81のシャフトに連結されている。第1の出力軸82bは、入力軸82aに対して平行に配置されている。より詳細には、第1の出力軸82bは、入力軸82aの延長線上に位置している。第2の出力軸82cは、第1の出力軸82bに対して隣接して平行に位置している。また、第2の出力軸82cは、その中心軸が上記の回転軸線Osh上に位置するように、配置されている。
【0036】
インデックス装置82は、第1の出力軸82bを、入力軸82aが回転する間、回転させるように、且つ、第2の出力軸82cを、入力軸82aが回転する間のある期間、所定の角度位置で停留させ、残りの期間、回転させるように構成された、インデックス機構82dを含んでいる(すなわち、第2の出力軸82cは、入力軸82aの回転角度のうちのある範囲において、所定の角度位置で停留する)。なお、本開示において、用語「停留」とは、ある位置に完全に止まること、及び、ある位置から非常に低速に移動し、したがって、略停止しているとみなせること、の双方を含むことに留意すべきである。インデックス機構82dは、ハウジング82x内に収容されている。
【0037】
本開示において、入力軸82aが回転する間のどの期間において第2の出力軸82cが停留するか、は「インデックス特性」と称され得る。このようなインデックス特性は、例えば、機械制御装置60のメモリに記憶されることができる。機械制御装置60は、サーボモータ81のエンコーダからの回転位置信号と、メモリに記憶されたインデックス特性と、に基づいて、第2の出力軸82c(並びに、第2の出力軸82cに固定された旋回部83及びグリッパ84)の角度位置を算出することができる。
【0038】
例えば、インデックス機構82dは、カム機構を含むことができる。より詳細には、インデックス機構82dは、カム82eと、カムフォロア82fと、を含んでいる。
【0039】
カム82eは、入力軸82aと第1の出力軸82bとを結ぶシャフト上に配置されている。カムフォロア82fは、第2の出力軸82c上に配置されており、且つ、カム82eと係合するように配置されている。カム82e及びカムフォロア82fの係合によって、第2の出力軸82cは、入力軸82aと逆向きに回転する。カム82e及びカムフォロア82fは、これらの係合によって、入力軸82aが回転する間のある期間では、第2の出力軸82cを所定の角度位置において停留させ、残りの期間では、第2の出力軸82cを入力軸82aの回転速度と同じ回転速度で(又は、異なる回転速度で)回転させるようなカム形状を有している。
【0040】
本実施形態では、上記のように、インデックス機構82dは、カム機構を含んでいる。しかしながら、他の実施形態では、インデックス機構82dは、他の機構を含んでもよいことに留意すべきである。例えば、インデックス機構82dは、複数の歯車を含むことができ、複数の歯車の組合せによって、入力軸82a、第1の出力軸82b及び第2の出力軸82cを上記と同様な態様で動作させてもよい。
【0041】
第1の出力軸82bには、第1の歯車82gが固定されており、第1の出力軸82bと共に回転する。第2の出力軸82cには、第2の歯車82hが取り付けられている。第2の歯車82hは、例えば、転がり軸受又は滑り軸受等の軸受要素(不図示)を介して第2の出力軸に対して回転可能に取り付けられることができ、これによって、第2の出力軸82cとは独立して回転する。第2の歯車82hは、第2の出力軸82cと同心に配置されている。
【0042】
第1の歯車82gと第2の歯車82hとの間には、第3の歯車82kが配置されている。第3の歯車82kは、例えばハウジング82x等の任意の固定構成要素に対して、回転可能に取り付けられることができる。第3の歯車82kは、第1の歯車82g及び第2の歯車82hの双方と噛み合って、第1の出力軸82bの回転を、第2の歯車82hに伝達する。第1の歯車82gと第3の歯車82kとの間の係合、及び、第3の歯車82kと第2の歯車82hとの間の係合によって、第2の歯車82hは、入力軸82aと同じ方向に回転する。第1の歯車82gと第3の歯車82kとの間のギア比、及び、第2の歯車82hと第3の歯車82kとの間のギア比は、様々な要因に応じて設定されてよい。これらのギア比は、例えば、機械制御装置60のメモリに記憶されることができる。機械制御装置60は、サーボモータ81のエンコーダからの回転位置信号と、ギア比と、に基づいて、第2の歯車82h(及び、第2の歯車82hに固定されたグリッパ開閉部材82i(詳しくは後述))の角度位置を算出することができる。
【0043】
第2の歯車82hには、グリッパ開閉部材82iが固定されており、第2の歯車82hと共に回転する。インデックス装置82の第1の出力軸82bが回転すると、第1の歯車82g及び第3の歯車82kを介して、第2の歯車82h、及び、第2の歯車82hに固定されたグリッパ開閉部材82iが回転する。このように、グリッパ開閉部材82iは、インデックス装置82の第1の出力軸82bによって駆動される。グリッパ開閉部材82iは、略円板状を有しており、第2の出力軸82cと同心に配置されている。グリッパ開閉部材82iは、例えば、転がり軸受若しくは滑り軸受等の軸受要素(不図示)を介して第2の出力軸に対して回転可能に取り付けられることができる、又は、第2の出力軸に対して離間することができ、これによって、第2の出力軸82cとは独立して回転する。グリッパ開閉部材82iは、所定の角度位置においてグリッパ84を開き且つ残りの角度位置においてグリッパ84を閉じるように形成されたカム溝82jを有している(詳しくは後述)。
【0044】
旋回部83は、インデックス装置82の第2の出力軸82cに固定されている。旋回部83は、グリッパ84を支持している。旋回部83は、インデックス装置82の第2の出力軸82cの回転によって、グリッパ84、及び、グリッパ84によってクランプされた工具ポットPを、選択位置S1及び次工具待機位置S2の間で搬送する。
【0045】
グリッパ84は、工具ポットPをクランプ及びアンクランプするように開閉可能である。グリッパ84は、例えば、第1のグリッパ部84aと、第2のグリッパ部84bと、を含むことができる。第1のグリッパ部84aは、回転軸線Oshに対して垂直な方向に突出しており、旋回部83に対して取り付けられている。第2のグリッパ部84bは、第1のグリッパ部84aに対向するように、第1のグリッパ部84aに対して平行に旋回部83に対して取り付けられており、第1のグリッパ部84aから離間している。第1のグリッパ部84a及び第2のグリッパ部84bの少なくとも一方は、第1のグリッパ部84aと第2のグリッパ部84bとが互いに対向する方向において移動可能なように、旋回部83に対して取り付けられている(
図7〜
図9参照)。
図3を参照して、第1のグリッパ部84a及び第2のグリッパ部84bの少なくとも一方は、例えばコイルバネ等の弾性手段84cによって、工具ポットPをクランプする方向に付勢されている。グリッパ84は、グリッパ開閉部材82iのカム溝82jと係合するカムフォロア84dを有している。カムフォロア84dは、カム溝82jと係合するように、第2のグリッパ部84bから突出することができる。
【0046】
次に、工作機械100の工具交換動作について説明する。
図2を参照して、以下の動作では、シフタ80が、工具ポットPを次工具待機位置S2から選択位置S1に移動させて、工具ポットPを工具マガジン51に戻す。
【0047】
図4〜
図9は、シフタ80の動作を説明するために、
図3のX部を示す概略平面図である。なお、
図3は正面図である一方で、
図4〜
図9は平面図である点に留意すべきである。また、
図4を
図3と容易に比較することを可能にするために、
図4の平面図では、
図2の平面図と比較して、グリッパ84が180°回転されていることに留意すべきである。
【0048】
例えば、
図4に示されるように、グリッパ84が次工具待機位置S2に位置するときのインデックス装置82の入力軸82a(
図4において不図示)の回転角度を、原点として設定することができる。本実施形態では、グリッパ84を次工具待機位置S2(
図4)から選択位置S1(
図7)まで時計回りに90°回転させ、続いてグリッパ84をアンクランプさせる(
図9)一連の動作の間に、グリッパ開閉部材82iは、反時計回りに略270°回転している(
図4及び
図9)。すなわち、上記のインデックス機構82dは、入力軸82aが回転する期間のうち、原点(
図4)からある角度(
図7)までの期間において第2の出力軸82c(すなわち、グリッパ84)を90°回転させ、残りの期間(
図8,9)において第2の出力軸82c(グリッパ84)を停留させるような、インデックス特性を有している。
【0049】
まず、
図4〜
図7を参照して、このようなシフタ80では、機械制御装置60は、サーボモータ81に信号を送り、サーボモータ81が、インデックス装置82の入力軸82aを回転させる。この動作によって、インデックス機構82dの上記のインデックス特性にしたがって、インデックス装置82の第1の出力軸82b及び第2の出力軸82cが回転する。第1の出力軸82bは、第1の歯車82g、第2の歯車82h及び第3の歯車82kを介して、グリッパ開閉部材82iを反時計回りに約180°回転させる一方で、第2の出力軸82cは、旋回部83及びグリッパ84を次工具待機位置S2から選択位置S1に時計回りに90°回転させる。この動作によって、グリッパ84にクランプされた工具ポットPが、選択位置S1にある工具ポット保持部51bによって保持される。
【0050】
グリッパ開閉部材82iのカム溝82jは、円周の一部が直線形状であるような、回転軸線Oshを中心とした円形状を有している。
図4〜
図7では、カムフォロア84dは、カム溝82jの直線部分と係合していないため、グリッパ84は工具ポットPをクランプし続けている。
【0051】
続いて、
図7〜
図9を参照して、機械制御装置60は、サーボモータ81に信号を送り続け、サーボモータ81が、インデックス装置82の入力軸82aを引き続き回転させる。入力軸82aが回転する間、インデックス機構82dは、インデックス装置82の第1の出力軸82bを回転させる一方で、第2の出力軸82c(すなわち、グリッパ84)を選択位置S1の角度位置に停留させる。第1の出力軸82bは、第1の歯車82g、第2の歯車82h及び第3の歯車82kを介して、グリッパ開閉部材82iを反時計回りに回転させる。
図8,9では、カムフォロア84dが、カム溝82jの直線部分と係合し、これによって、カムフォロア84dが弾性手段84c(
図8,9において不図示)の付勢力に抗して、回転軸線Oshに近づくように移動する。この動作によって、第2のグリッパ部84bが開き、グリッパ84が工具ポットPをアンクランプする。以上の動作によって、工具ポットPが工具マガジン51に戻される。
【0052】
工具ポットPを選択位置S1から次工具待機位置S2に搬送する場合には、サーボモータ81を上記と逆向きに回転させることによって、工具ポットPを上記と逆の動作によって次工具待機位置S2に搬送することができる。
【0053】
以上のようなシフタ80では、工具ポットPの旋回操作及びクランプ操作が、第1の出力軸82b及び第2の出力軸82cを有するインデックス装置82を用いて、1つのサーボモータ81によって連続的に実現可能である。したがって、コンパクトなシフタ80を提供することができる。
【0054】
また、インデックス装置82の第2の出力軸82cは、第1の出力軸82bに対して隣接して平行に位置し、シフタ80は、インデックス装置82の第1の出力軸82bに設けられた第1の歯車82gと、インデックス装置82の第2の出力軸82cと同心に且つ第2の出力軸82cとは独立して回転するように配置された第2の歯車82hであって、第1の歯車82gによって駆動され、且つ、第1の出力軸82bの回転をグリッパ開閉部材82iに伝達する、第2の歯車82hと、を備え、グリッパ開閉部材82iは、インデックス装置82の第2の出力軸82cが停留する間にグリッパ84を開くように、且つ、第2の出力軸82cが回転する間にグリッパ84を閉じるように形成されたカム溝82jを有し、グリッパ84は、カム溝82jと係合するカムフォロア84dを有する。インデックス装置82の第1の出力軸82b及び第2の出力軸82cは互いに隣接して配置されているため、インデックス装置82の設置面積は小さくて済む。また、インデックス装置82の第1の出力軸82bの回転をグリッパ開閉部材82iに伝達するための第2の歯車82hが、第2の出力軸82cと同心に配置されるため、第2の歯車82hを配置するための追加のスペースが必要とされない。したがって、よりコンパクトなシフタ80を提供することができる。また、グリッパ84の開閉は、カム溝82j及びカムフォロア84dによって達成される。したがって、グリッパ84の開閉をシンプルな構成によって実現可能である。
【0055】
工作機械の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。
【0056】
例えば、上記の実施形態では、第1の歯車82gと第2の歯車82hとの間に第3の歯車82kが配置されている。しかしながら、他の実施形態では、第3の歯車無しに、第1の歯車82gと第2の歯車82hとが直接噛み合ってもよい。第3の歯車を使用する場合は旋回部83とグリッパ開閉部材82iとは逆方向に旋回し、第1の歯車82gと第2の歯車82hとが直接噛み合う場合は同じ方向に旋回するので、旋回中の旋回部83に対するグリッパ開閉部材82iの相対的な角度位置の変化量が異なるため、カム溝82jの形を変える必要はあるが、上記と同じ旋回部83の角度位置においてグリッパ84をクランプ及びアンクランプすることができる。
【符号の説明】
【0057】
5 主軸
51 工具マガジン
80 シフタ(工具搬送装置)
81 サーボモータ
82 インデックス装置
82a 入力軸
82b 第1の出力軸
82c 第2の出力軸
82g 第1の歯車
82h 第2の歯車
82i グリッパ開閉部材
82j カム溝
83 旋回部
84 グリッパ
84d カムフォロア
Osp 主軸の回転軸線
P 工具ポット
S2 次工具待機位置
T 工具
【国際調査報告】