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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年5月7日
【発行日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】放電加工機の電源装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 1/02 20060101AFI20210806BHJP
【FI】
   B23H1/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
【出願番号】特願2020-554696(P2020-554696)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月31日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 直人
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB01
3C059BA03
3C059BA06
3C059BA09
(57)【要約】
放電加工機の電源装置(1)は、極間(4)にパルス状の電流を供給する電流供給部と(11)、当該電流を回生させる電流回生部(12)と、を備える。電流供給部(11)は、直流電源(21)と、第1のスイッチング素子(22)と、第2のスイッチング素子(23)と、を有する。電流回生部(11)は、電極(3)と第1のスイッチング素子(22)の間の第1の接続点(42)とワーク(2)と第2のスイッチング素子(23)の間の第2の接続点(41)の間に配置されたコンデンサ(31)と、第1の接続点(42)と直流電源(21)の間の第3の接続点(43)と第2の接続点(41)とコンデンサ(31)の間の第4の接続点(44)の間に配置され、電流の回生の開始時から電流の値が零になるまでの間にオンにされる第3のスイッチング素子(32)と、を有し、回生電流の立下げ時間を短縮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを放電加工するために、予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク及び電極から構成される極間にパルス状の電流を供給する電流供給部と、
当該電流を回生させる電流回生部と、
を備える放電加工機の電源装置であって、
前記電流供給部は、
前記電流を生成するための第1の電圧を極間に印加するために極間に並列に接続した第1の直流電源と、
電極と前記第1の直流電源の第1の極の側の間に配置され、前記第1の電圧を極間に印加する間にオンにされる第1のスイッチング素子と、
ワークと前記第1の直流電源の第2の極の側に配置され、前記第1の電圧を極間に印加する間にオンにされる第2のスイッチング素子と、
を有し、
前記電流回生部は、
電極と前記第1のスイッチング素子の間の第1の接続点とワークと前記第2のスイッチング素子の間の第2の接続点の間に配置された容量性素子と、
前記第1の接続点と前記第1の直流電源の第1の側の間の第3の接続点と前記第2の接続点と前記容量性素子の一方の側の間の第4の接続点の間に配置され、前記容量性素子の電圧を前記第1の電圧より高い予め設定された第2の電圧に維持するために、前記電流の回生中に前記容量性素子の電圧が前記第2の電圧を超えたときにオンにされる第3のスイッチング素子と、
を有する放電加工機の電源装置。
【請求項2】
前記第1の電圧と前記第2の電圧の間の大きさの第3の電圧を前記容量性素子に印加するために前記容量性素子に並列に接続した第2の直流電源を更に備える請求項1に記載の放電加工機の電源装置。
【請求項3】
前記電流回生部は、前記容量性素子の一方の側に接続した前記第1の極及び前記第2の接続点に接続した前記第2の極を有する第1の整流素子と前記第1の接続点に接続した前記第1の極及び前記容量性素子の他方の側に接続した前記第2の極を有する第2の整流素子のうちの少なくとも一方を更に有する請求項1又は2に記載の放電加工機の電源装置。
【請求項4】
電極と前記第1のスイッチング素子の間に配置した誘導性素子を更に備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の放電加工機の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを放電加工(例えば、形彫放電加工)する放電加工機において、予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク及び電極から構成される極間にパルス状の電流を供給する電源装置が用いられる。放電加工機によって加工されるワークの加工時間は、電流を立ち上げてから電流の立下げを開始するまでの電流供給時間、電流の立下げの開始時から電流の値が零になるまでの電流立下げ時間及び電流を立ち下げて電流の値が零になった時点から電流を再び立ち上げる時点までの電流休止時間によって決定される。従来、ワークの加工時間を短縮するために、電流立下げ時間をできるだけ短くするように電流を回生させる放電加工機の電源装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
放電加工機の電源装置において電流を回生させる場合、極間、極間に並列に接続した直流電源、直流電源と極間の間に配置したスイッチ及びスイッチと極間の間に配置したケーブルによって電流供給経路を形成し、極間、エネルギーを消費するために極間に並列に接続した回生抵抗及び回生抵抗と極間の間に配置したケーブルによって電流回生経路を形成することができる。
【0004】
この場合、スイッチは、ワークの加工条件設定に従ってオンオフ制御され、スイッチがオンされている間に極間に絶縁破壊が生じると電流が電流供給経路を流れ、スイッチがオフに切り替わった瞬時に電流が立下げを開始し、電流立下げ時間中に電流が電流回生経路に回生される。
【0005】
電流回生経路に回生される電流(以下、「回生電流」)の値をIrとし、電流供給経路を流れる電流のピーク電流値をIPとし、回生抵抗の値をRrとし、ケーブルのインダクタンス値をLcとし、電流が立下げを開始してからの経過時間をtとした場合、回生電流Irは、
【0006】
【数1】
【0007】
で表されるように指数関数的に減少する。これによって、電流立下げ時間は、抵抗、電極間等の状態に応じて変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−116923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
放電加工機の電源装置において電流を回生させるために回生抵抗を有する電流回生経路を形成する場合、上述したように電流立下げ時間中に電流が指数関数的に減少するので、電流立下げ時間の短縮が困難になり、その結果、ワークの加工時間の短縮が困難になる。
【0010】
また、上述したように電流立下げ時間中に電流が指数関数的に減少する場合、回生抵抗の抵抗値が大きくなるに従って電流立下げ時間が短くなる。しかしながら、電流立下げ時間を短くするために回生抵抗の抵抗値を大きくした場合、回生電流が電流回生経路を流れる間に生じる発熱量が抵抗回路の抵抗値に比例して増大するという不都合を有する。
【0011】
電流休止時間をできるだけ短くすることによってワークの加工時間を短縮することができるが、電流休止時間を十分に確保しない場合、電流の立下げを開始してから電流の値が零になる前に電流が再び立ち上がることによってワークの加工精度が低下するおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、発熱量の増大及びワークの加工精度の低下が生じることなく電流の立下げを迅速に行うことによってワークの加工時間を短縮することができる放電加工機の電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による放電加工機の電源装置は、ワークを放電加工するために、予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク及び電極から構成される極間にパルス状の電流を供給する電流供給部と、当該電流を回生させる電流回生部と、を備える放電加工機の電源装置であって、電流供給部は、電流を生成するための第1の電圧を極間に印加するために極間に並列に接続した第1の直流電源と、電極と第1の直流電源の第1の極の側の間に配置され、第1の電圧を極間に印加する間にオンにされる第1のスイッチング素子と、ワークと第1の直流電源の第2の極の側に配置され、第1の電圧を極間に印加する間にオンにされる第2のスイッチング素子と、を有し、電流回生部は、電極と第1のスイッチング素子の間の第1の接続点とワークと第2のスイッチング素子の間の第2の接続点の間に配置された容量性素子と、第1の接続点と第1の直流電源の第1の側の間の第3の接続点と第2の接続点と容量性素子の一方の側の間の第4の接続点の間に配置され、容量性素子の電圧を第1の電圧より高い予め設定された第2の電圧に維持するために、電流の回生中に容量性素子の電圧が第2の電圧を超えたときにオンにされる第3のスイッチング素子と、を有する。
【0014】
本発明によれば、電流の回生の開始時から電流の値が零になるまでの間、すなわち、回生電流が電流回生部及び極間を含む電流回生経路を流れる間に、容量性素子の電圧は、電流を生成するための第1の直流電源によって極間に印加される第1の電圧より高い第2の電圧に維持される。これによって、電流立下げ時間中に電流が第2の電圧に比例して直線的に減少する。したがって、電流回生時間に対応する電流立下げ時間を、回生抵抗を用いて電流立下げ時間中に電流を指数関数的に減少させる場合よりも短縮することができ、その結果、ワークの加工時間を短縮することができる。
【0015】
また、本発明によれば、回生抵抗を用いないので、回生電流が電流回生部を流れる間に回生抵抗よる発熱が生じない。したがって、電流立下げ時間中の発熱量を、回生抵抗を用いる場合よりも減少させることができる。そして、回生された電流を加工電源側に戻すので、エネルギー効率が良い。
【0016】
さらに、本発明によれば、電流立下げ時間を、回生抵抗を用いて電流立下げ時間中に電流を指数関数的に減少させる場合よりも短縮することができるので、電流休止時間を十分に確保しながらワークの加工時間を短縮することができる。したがって、電流休止時間を十分に確保できないことによって生じるワークの加工精度の低下がない。
【0017】
好適には、本発明による放電加工機の電源装置は、第1の電圧と第2の電圧の間の大きさの第3の電圧を容量性素子に印加するために容量性素子に並列に接続した第2の直流電源を更に備える。これによって、電流の回生の開始時から電流の値が零になるまでの間、すなわち、回生電流が電流回生部及び極間を含む電流回生経路を流れる間に、容量性素子の電圧は、電流を生成するため第1の直流電源によって極間に印加される第1の電圧より高い第2の電圧に容易に到達することができる。
【0018】
好適には、電流回生部は、容量性素子の一方の側に接続した第1の極及び第2の接続点に接続した第2の極を有する第1の整流素子と第1の接続点に接続した第1の極及び容量性素子の他方の側に接続した第2の極を有する第2の整流素子のうちの少なくとも一方を更に有する。これによって、回生電流の電流回生部から極間への供給と極間から電流回生部への供給の少なくとも一方を良好に行うことができる。
【0019】
好適には、本発明による放電加工機の電源装置は、電極と第1のスイッチング素子の間に配置した誘導性素子を更に備える。これによって、ワークの加工時間を短縮しながら電流のリップルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態による放電加工機の電源装置の回路を示す図である。
図2図1の放電加工機の電源装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による放電加工機の電源装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による放電加工機の電源装置の回路を示す図である。図1において、放電加工機の電源装置1は、加工槽の中の放電加工液(いずれも図示せず)に浸漬されたワーク2を放電加工するために、予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク2及び電極3から構成される極間4にケーブル5を介してパルス状の電流を供給する電流供給部11と、当該電流を回生させる電流回生部12と、を備える。
【0022】
電流供給部11は、直流電源21と、NMOSトランジスタ22と、NMOSトランジスタ23と、を有する。
【0023】
直流電源21は、電流を生成するための電圧Vs1を極間4に印加するために極間4に並列に接続される。直流電源21は、第1の直流電源の一例である。極間4に印加されるパルス状の電圧Vs1は、第1の電圧の一例であり、例えば、75〜160Vであり、1KHz前後から数十KHzの周波数を有する。
【0024】
NMOSトランジスタ22は、電極3と直流電源21のプラス側の間に配置される。NMOSトランジスタ23は、ワーク2と直流電源21のマイナス側の間に配置される。NMOSトランジスタ22は、第1のスイッチング素子の一例である。NMOSトランジスタ23は、第2のスイッチング素子の一例である。直流電源21のプラス側は、第1の直流電源の第1の極の側の一例である。直流電源21のマイナス側は、第1の直流電源の第2の極の側の一例である。
【0025】
NMOSトランジスタ22及びNMOSトランジスタ23は、NMOSトランジスタ22及びNMOSトランジスタ23をオンオフするためのパルス信号S1に基づいて、直流電源21が電圧Vs1を極間4に印加する間にオンにされる。パルス信号S1は、自動的に又はオペレータによりNC装置6で設定されるワーク2の加工条件設定に対応するパルス発生条件に基づいてパルス発生回路7によって発生する。ワーク2の加工条件設定は、ワーク2の材質、電極3の材質、ワーク2の加工形状等に関連して決定される。パルス発生条件は、パルス列のパルスオンオフ時間、パルス列のパルス数、パルス休止時間等を含む。
【0026】
電流回生部12は、コンデンサ31と、NMOSトランジスタ32と、ダイオード33と、ダイオード34と、を有する。
【0027】
コンデンサ31の一方の側は、ダイオード33のアノードに接続され、ダイオード33のカソードは、ワーク2とNMOSトランジスタ23の間の接続点41に接続される。コンデンサ31の他方の側は、ダイオード34のカソードに接続され、ダイオード34のアノードは、電極3とNMOSトランジスタ22の間の接続点42に接続される。コンデンサ31は、容量性素子の一例である。ダイオード33は、第1の整流素子の一例である。ダイオード34は、第2の整流素子の一例である。ダイオード33のアノードは、第1の整流素子の第1の極の一例である。ダイオード33のカソードは、第1の整流素子の第2の極の一例である。ダイオード34のアノードは、第2の整流素子の第1の極の一例である。ダイオード34のカソードは、第2の整流素子の第2の極の一例である。接続点42は、第1の接続点の一例である。接続点41は、第2の接続点の一例である。
【0028】
NMOSトランジスタ32は、接続点42と直流電源21のプラス側の間の接続点43と接続点41とコンデンサ31の一方の側の間の接続点44の間に配置される。NMOSトランジスタ32は、第3のスイッチング素子の一例である。接続点43は、第3の接続点の一例である。接続点44は、第4の接続点の一例である。
【0029】
本実施の形態では、NMOSトランジスタ32は、NMOSトランジスタ32をオンオフするためのパルス信号S2に基づいて、コンデンサ31の電圧Vを電圧Vs1より高い予め設定された電圧Vに維持するために、電流立下げ時間内でコンデンサ31の電圧Vが電圧Vを超えている間の時間にオンにされる。電圧Vは、第2の電圧の一例である。パルス信号S2は、比較演算器9でコンデンサ31の電圧Vと電圧Vとを比較した結果に基づいてパルス発生回路8によって発生する。
【0030】
本実施の形態では、放電加工機の電源装置1は、直流電源13と、ダイオード14と、コイル15と、を更に備える。
【0031】
直流電源13は、電圧Vs1と電圧Vの間の大きさの電圧Vs2をコンデンサ31に印加するためにコンデンサ31に並列に接続され、スイッチ(図示せず)をオンすることによって起動される。直流電源13は、第2の直流電源の一例である。電圧Vs2は、第3の電圧の一例である。直流電源13のプラス側は、コンデンサ31とコンデンサ31の一方の側の間の接続点45に接続され、直流電源13のマイナス側は、コンデンサ31の他方の側とダイオード34のカソードの間の接続点46に接続される。また、接続点46は、直流電源21のマイナス側とNMOSトランジスタ23の間の接続点47に接続される。電圧Vを電圧Vs2より少し高い値に設定する。例えば、電圧Vを電圧Vs2の1.1倍とする。
【0032】
ダイオード14は、逆流防止のために設けられ、ダイオード33のアノード及びコンデンサ31の一方の側に接続されたアノードと、直流電源13のプラス側に接続されたカソードと、を有する。コイル15は、電流のリップルを低減するために接続点42とケーブル5の間に配置される。コイル15は、誘導性素子の一例である。
【0033】
NMOSトランジスタ22及びNMOSトランジスタ23がオンにされている間に極間4に絶縁破壊が生じたことにより発生した電流は、破線Isで示すように、電流供給部11からコイル15、ケーブル5及び極間4を流れた後に再び電流供給部11に戻る。
【0034】
NMOSトランジスタ22及びNMOSトランジスタ23がオンからオフに切り替えられた直後から電流の値が零になるまでの間に電流回生部12に回生される電流(回生電流)は、破線Irで示すように、電流回生部12からコイル15、ケーブル5及び極間4を流れた後に再び電流回生部12に戻る。
【0035】
図2は、図1の放電加工機の電源装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図2のタイミングチャートにおいて、ワーク2を加工するために、期間D1に亘る直流電源21による極間4への電圧Vs1の印加及びそれに続く期間D2に亘る直流電源21による極間4への電圧の印加の停止をN回繰り返す場合について説明する。
【0036】
コンデンサ31の初期充電を行うためにワーク2の加工を開始する前の時刻t1で直流電源13を起動すると、時刻t2でコンデンサ31の両端間の電圧がVs2に到達する。
【0037】
ワーク2の加工を開始する時刻t3でNMOSトランジスタ22及びNMOSトランジスタ23がパルス信号S1に応答してオフからオンに切り替えられると、直流電源21によって電圧Vs1が極間4に印加され、時刻t4で極間4に絶縁破壊が生じ、絶縁破壊によって生じた電流は、時刻t5で目標電流値であるピーク電流IPに到達する。極間4に絶縁破壊が生じた時刻t4から期間D1の終了時に対応する時刻t6に、電流は、破線Isで示すように、電流供給部11からコイル15、ケーブル5及び極間4を流れた後に再び電流供給部11に戻る。
【0038】
時刻t6においてNMOSトランジスタ22及びNMOSトランジスタ23がパルス信号S1に応答してオンからオフに切り替えられる。これによって、NMOSトランジスタ23の両端間の電圧が上昇し、NMOSトランジスタ23の両端間の電圧がコンデンサ31の電圧Vを超えると、回生電流が、破線Irで示すように、電流回生部12からコイル15、ケーブル5及び極間4を流れた後に再び電流回生部12に戻る。回生電流は、コンデンサ31の電圧Vをケーブル5のインダクタンス値及びコイル15のインダクタンス値の和で除した値に比例して直線的に減少する。
【0039】
回生電流並びにケーブル5のインダクタンス及びコイル15のインダクタンスによりコンデンサ31の両端間の電圧Vが電圧Vより大きくなる。コンデンサ31の両端間の電圧Vを電圧Vに維持するために、時刻t6においてNMOSトランジスタ32がパルス信号S2に応答してオフからオンに切り替わり、コンデンサ31に蓄積された電荷を、NMOSトランジスタ32を介して直流電源21のプラス側に放出する。上述したように、電圧Vを電圧Vs2より少し高い値にしているので、直流電源13の容量を極力小さくすることができる。
【0040】
時刻t7において極間4に生じる電流の値が零に到達するとともにNMOSトランジスタ32がパルス信号S2に応答してオンからオフに切り替えられる。図2において、時刻t4と時刻t6の間の時間が電流供給時間に対応し、時刻t6と時刻t7の間の時間が電流立下げ時間に対応し、時刻t7と期間D2が終了する時刻t8の間の時間が電流休止時間に対応する。
【0041】
時刻t8から時刻t9の間に期間D1に亘る直流電源21による極間4への電圧Vs1の印加及びそれに続く期間D2に亘る直流電源21による極間4への電圧の印加の停止をN−1回繰り返す。
【0042】
本実施の形態によれば、電流の回生の開始時から電流の値が零になるまでの間、すなわち、回生電流が電流回生部12、コイル15、ケーブル5及び極間4を含む電流回生経路を流れる間に、コンデンサ31の電圧は、電流を生成するため直流電源21によって極間4に印加される電圧Vs1より高い電圧Vに維持される。これによって、電流立下げ時間中に電流が電圧Vに比例して直線的に減少する。したがって、電流回生時間に対応する電流立下げ時間を、回生抵抗を用いて電流立下げ時間中に電流を指数関数的に減少させる場合よりも短縮することができ、その結果、ワーク2の加工時間を短縮することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、回生抵抗を用いないので、回生電流が電流回生部12を流れる間に回生抵抗よる発熱が生じない。したがって、電流立下げ時間中の発熱量を、回生抵抗を用いる場合よりも減少させることができる。そして、回生された電流を加工電源側に戻すので、エネルギー効率が良い。
【0044】
また、本実施の形態によれば、電流立下げ時間を、回生抵抗を用いて電流立下げ時間中に電流を指数関数的に減少させる場合よりも短縮することができるので、電流休止時間を十分に確保しながらワーク2の加工時間を短縮することができる。したがって、電流休止時間を十分に確保できないことによって生じるワーク2の加工精度の低下がない。
【0045】
また、本実施の形態によれば、直流電源13を備えることによって、電流の回生の開始時から電流の値が零になるまでの間、すなわち、回生電流が電流回生部12、コイル15、ケーブル5及び極間4を含む電流回生経路を流れる間に、コンデンサ31の電圧は、電流を生成するため直流電源21によって極間4に印加される電圧Vs1より高い電圧Vに容易に到達することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、電流回生部12がダイオード33及びダイオード34を有することによって、回生電流の電流回生部12から極間4への供給と極間4から電流回生部12への供給を良好に行うことができる。
【0047】
さらに、本実施の形態によれば、コイル15を更に備えることによって、ワーク2の加工時間を短縮しながら電流のリップルを低減することができる。
【0048】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、直流電源13、ダイオード14及びコイル15のうちの少なくとも一つを省略してもよい。また、電流回生部12のダイオード33とダイオード34のうちの少なくとも一方を省略してもよい。さらに、スイッチング素子としてPMOSトランジスタ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 放電加工機の電源装置
2 ワーク
3 電極
4 極間
5 ケーブル
11 電流供給部
12 電流回生部
13,21 直流電源
14,33,34 ダイオード
15 コイル
22,23,32 NMOSトランジスタ
31 コンデンサ
図1
図2

【手続補正書】
【提出日】2021年4月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
コンデンサ31の一方の側は、ダイオード33のカソードに接続され、ダイオード33のアノードは、ワーク2とNMOSトランジスタ23の間の接続点41に接続される。コンデンサ31の他方の側は、ダイオード34のアノードに接続され、ダイオード34のカソードは、電極3とNMOSトランジスタ22の間の接続点42に接続される。コンデンサ31は、容量性素子の一例である。ダイオード33は、第1の整流素子の一例である。ダイオード34は、第2の整流素子の一例である。ダイオード33のカソードは、第1の整流素子の第1の極の一例である。ダイオード33のアノードは、第1の整流素子の第2の極の一例である。ダイオード34のカソードは、第2の整流素子の第1の極の一例である。ダイオード34のアノードは、第2の整流素子の第2の極の一例である。接続点42は、第1の接続点の一例である。接続点41は、第2の接続点の一例である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
直流電源13は、電圧Vs1と電圧Vの間の大きさの電圧Vs2をコンデンサ31に印加するためにコンデンサ31に並列に接続され、スイッチ(図示せず)をオンすることによって起動される。直流電源13は、第2の直流電源の一例である。電圧Vs2は、第3の電圧の一例である。直流電源13のプラス側は、ダイオード14を介して接続点45に接続され、直流電源13のマイナス側は、コンデンサ31の他方の側とダイオード34のアノードの間の接続点46に接続される。また、接続点46は、直流電源21のマイナス側とNMOSトランジスタ23の間の接続点47に接続される。電圧Vを電圧Vs2より少し高い値に設定する。例えば、電圧Vを電圧Vs2の1.1倍とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
ダイオード14は、逆流防止のために設けられ、ダイオード33のカソード及びコンデンサ31の一方の側に接続されたカソードと、直流電源13のプラス側に接続されたアノードと、を有する。コイル15は、電流のリップルを低減するために接続点42とケーブル5の間に配置される。コイル15は、誘導性素子の一例である。
【国際調査報告】