特表-20096050IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大鵬薬品工業株式会社の特許一覧

再表2020-96050ジメトキシベンゼン化合物の類縁物質、該化合物の分析方法及び標準品
<>
  • 再表WO2020096050-ジメトキシベンゼン化合物の類縁物質、該化合物の分析方法及び標準品 図000047
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年5月14日
【発行日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】ジメトキシベンゼン化合物の類縁物質、該化合物の分析方法及び標準品
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20210910BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20210910BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20210910BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210910BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210910BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20210910BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   C07D487/04 143
   C07D519/00 311
   A61K31/519
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   G01N30/88 C
   G01N30/26 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】80
【出願番号】特願2020-555638(P2020-555638)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/041744
(32)【優先日】2018年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-44236(P2019-44236)
(32)【優先日】2019年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金本 雄次
(72)【発明者】
【氏名】太田 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅也
(72)【発明者】
【氏名】神田 康平
【テーマコード(参考)】
4C050
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF02
4C050GG04
4C050HH04
4C072MM02
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA10
4C086CB06
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC42
(57)【要約】
下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表される化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。(1)1,3−ビス((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オン、(2)1−((S)−3−(4−((3−((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−オキソプロピル)アミノ)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン、(3)(S)−3−((1−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−6−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)プロパン酸、(4)(S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−カルバルデヒド、(5)(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表される化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【化1】
【請求項2】
前記式(1)又は(2)で表される、請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【請求項3】
(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの品質を管理するための標準品として使用される化合物であって、下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表される化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【化2】
【請求項4】
前記式(1)又は(2)で表される、請求項3に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【請求項5】
高速液体クロマトグラフィーによる測定において、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンからなる群の化合物の相互の分離度が1.5以上である、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの高速液体クロマトグラフィーによる分析方法。
【化3】
【請求項6】
高速液体クロマトグラフィーによる測定において、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンからなる群の化合物の相互の分離度が1.5以上である、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの高速液体クロマトグラフィーによる分析方法。
【化4】
【請求項7】
リン酸塩を用いてpHを6.4以上6.8以下に調整した緩衝溶液を移動相に含む、請求項5又は6に記載の分析方法。
【請求項8】
移動相が有機相と水相との混液であり、移動相中の有機相の割合を一定の増加割合で経時的に上昇させる第1のグラジエント、第2のグラジエント及び第3のグラジエントを含む、請求項5から7のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項9】
第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜2.0容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜5分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から5〜15分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜15質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の5〜15質量%であり、 第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜2.0容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の15〜45質量%であり、 第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜6.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜75質量%である、請求項5から8のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項10】
オクタデシル基で置換されたシリカゲルカラムを用いる、請求項5から9のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項11】
水相総量に対して15〜40容量%のアセトニトリルを含む水相を用いる、請求項5から10のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項12】
移動相クリーナーを用いる、請求項5から11のいずれか1項に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年11月9日に国際出願された、国際出願番号PCT/JP2018/041744明細書及び2019年3月11日に出願された、日本国特許出願第2019−044236号 明細書(これらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。本発明は、ジメトキシベンゼン化合物の類縁物質、該化合物の分析方法及び標準品に関する。
【背景技術】
【0002】
恒常的に品質が適切に担保された医薬品を供給するためには、有効成分が医薬品中に適切に含まれているか、また含まれている不純物が一定量以下に管理さているかどうかを確認する必要がある。なかでも、医薬品中の不純物の管理は、医薬品の品質担保だけではなく、患者の安全性確保の観点からも非常に重要である。そのため,医薬品に含まれる類縁物質(不純物)の量を適切に評価できる分析法は、品質管理において他の分析法の設定よりも優先して設定されるものの一つである。
【0003】
優れた線維芽細胞増殖因子受容体(Fibroblast Growth Factor Receptor:以下「FGFR」とも言う)の阻害作用を有し、抗腫瘍活性を示す化合物として(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オン(以下、本明細書において「化合物A」とも言う)が報告されている(特許文献1〜5)。化合物Aの合成方法として、(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(以下、本明細書において「化合物B」とも言う)及び塩化アクリロイルを使用した方法、及びWaters社製「ACQUITY SQD」を使用して化合物A等を分析した方法が開示されている(特許文献4)。また、種々の溶媒を用いることで化合物Aを結晶として取得できること、及びこれらの結晶を溶解させてアジレントテクノロジー社「1200シリーズ バイナリLCシステム」及び、Waters社製「ACQUITY SQD」を使用して分析した方法も報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2013/108809パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2015/008844パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2015/008839パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2016/159327パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2017/150725パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題の一つは、大量合成が可能であり、簡便で優れた操作性を有し、かつ、医薬品として要求される品質を満たす化合物A又はその薬学的に許容される塩の製造方法を提供することにある。
【0006】
また、当該製造方法によっても、生成回避が困難な類縁物質が存在し、医薬品として要求される品質を保持するための品質管理は必要である。よって、本発明の課題の一つは、医薬品として要求される品質を満たすかどうか判断するための品質管理に用いるこれらの類縁物質の標準品を提供することにある。
【0007】
さらに、本発明の課題の一つは、当該品質管理に用いるために、原薬及び製剤におけるこれらの類縁物質の含有量を適切に検出できる分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、さらに発明者は鋭意検討した結果、医薬品としての品質に適した大量製造可能な化合物A又はその薬学的に許容される塩の製造方法を見いだした。また、化合物Aの品質を確認するための標準品として使用できる化合物Aの類縁物質を見いだした。さらに、化合物Aの品質を管理することができる高速液体クロマトグラフィーによる分析方法を見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[12]を包含する。
【0010】
[1]下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表される化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【0011】
【化1】
【0012】
[2]前記式(1)又は(2)で表される、[1]に記載の化合物若しくはその塩、又
はそれらの組み合わせ。
【0013】
[3](S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの品質を管理するための標準品として使用される化合物であって、下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表される化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【0014】
【化2】
【0015】
[4](S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの品質を管理するための標準品として使用される化合物であって、下記式(1)又は(2)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの組み合わせ。
【0016】
【化3】
【0017】
[5]高速液体クロマトグラフィーによる測定において、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンからなる群の化合物の相互の分離度が1.5以上である、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの高速液体クロマトグラフィーによる分析方法。
【0018】
【化4】
【0019】
[6]高速液体クロマトグラフィーによる測定において、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンからなる群の化合物の相互の分離度が1.5以上である、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの高速液体クロマトグラフィーによる分析方法。
【0020】
【化5】
【0021】
[7]リン酸塩を用いてpHを6.4以上6.8以下に調整した緩衝溶液を移動相に含む、[5]又は[6]に記載の分析方法。
【0022】
[8]移動相が有機相と水相との混液であり、移動相中の有機相の割合を一定の増加割合で経時的に上昇させる第1のグラジエント、第2のグラジエント及び第3のグラジエントを含む、[5]から[7]のいずれか1項に記載の分析方法。
【0023】
[9]第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜2.0容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜5分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から5〜15分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜15質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の5〜15質量%であり、
第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜2.0容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の15〜45質量%であり、
第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜6.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜75質量%である、[5]から[8]のいずれか1項に記載の分析方法。
【0024】
[10]オクタデシル基で置換されたシリカゲルカラムを用いる、[5]から[9]のいずれか1項に記載の分析方法。
【0025】
[11]水相総量に対して15〜40容量%のアセトニトリルを含む水相を用いる、[5]から[10]のいずれか1項に記載の分析方法。
【0026】
[12]移動相クリーナーを用いる、[5]から[11]のいずれか1項に記載の分析方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、化合物Aの類縁物質を標準品として用いることで、化合物Aの品質の管理を確実に行うことができる。また、化合物A又はその薬学的に許容される塩について、医薬品として要求される品質管理を効率よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1におけるクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明において、化合物Aは(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンであり、その構造を以下に示す。
【0030】
【化6】
【0031】
化合物A又はその薬学的に許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、本発明においては、いずれも「化合物A又はその薬学的に許容される塩」に包含される。化合物Aの薬学的に許容される塩としては、特に限定するものではなく、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸との付加塩、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、エチルアミン塩、アルギニン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。本明細書において、「化合物A」との記載は、化合物Aの薬学的に許容される「塩」及び「溶媒和物」を含めることを意図し得る。
【0032】
また、本発明において、化合物Bは(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンである。化合物Bの構造を以下に示す。
【0033】
【化7】
【0034】
化合物B又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、本発明においては、いずれも「化合物B又はその塩」に包含される。化合物Bの塩としては、特に限定するものではないが、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、又は硫酸等の無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はベンゼンスルホン酸等のアルキル硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸との付加塩、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、エチルアミン塩、アルギニン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。本明細書において、「化合物B」との記載は、化合物Bの「塩」及び「溶媒和物」を含めることを意図し得る。
【0035】
本発明において、化合物Aへ誘導する際に用いられる化合物Bは、フリー体でも塩でもよく、好ましくは、無機酸、アルキル硫酸又は有機酸の付加塩であり、より好ましくは、アルキル硫酸の付加塩であり、さらに好ましくは、メタンスルホン酸の付加塩である。
【0036】
【化8】
【0037】
本発明において、化合物B又はその塩は、一般式(C)で表される化合物のP1(P1はアミノ基の保護基を示す)を脱保護することによって得られる。一般式(C)で表される化合物は、国際公開WO2013/108809パンフレットに記載の方法により得ることができる。
【0038】
なお、化合物Bのフリー体は、水、水溶性の高い有機溶媒、及び脂溶性の高い有機溶媒のいずれにも溶解しやすい性質がある。一方、化合物Bの酸付加塩又は塩基付加塩は、有機溶媒への溶解性が低く、単離及び精製がしやすい傾向がある。
【0039】
P1が示すアミノ基の保護基としては、tert−ブトキシカルボニル基(Boc基)等の酸性条件下で脱保護できる保護基が例示される。保護基であるP1の脱保護の方法は、当業者が適宜選択できる。P1がtert−ブトキシカルボニル基等の酸性条件下で脱保護できる保護基である場合、酸性条件下での脱保護が好ましく、塩酸、メタンスルホン酸、ヨウ化水素,トリフルオロ酢酸等の酸を選択することができる。反応条件、操作性、及び製造機器への負担等の観点から、メタンスルホン酸が好ましい。酸の使用量としては、一般式(C)で表される化合物1モルに対して、好ましくは1〜100モルが挙げられる。
【0040】
例えば、P1がtert−ブトキシカルボニル基等の酸性条件下で脱保護できる保護基の場合、化合物Bを酸付加塩として得ることができ、化合物A又はその薬学的に許容される塩へ誘導することができる。
【0041】
本発明において、アクリロイル化試薬を用いて化合物B又はその塩から化合物A又はその塩を製造する。本発明のアクリロイル化試薬の1つの態様として、下記一般式(I−1−A)又は下記一般式(I−2−A)で表される化合物を使用することができる。
【0042】
【化9】
【0043】
(式中、L1及びL2は、同一又は異なって、脱離基を示す。)
【0044】
一般式(I−1−A)で表される化合物では、脱離基L2がカルボニルのβ位に結合している。一般式(I−2−A)で表される化合物では、脱離基L2がカルボニルのα位に結合している。いずれも塩基性条件化でアクリロイル基へと誘導でき、ひいては、化合物Aにおけるアクリルアミド構造を構築できる。
【0045】
脱離基であるL1としては、ハロゲン原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0046】
脱離基であるL2としては、ハロゲン原子、−OSO2CnFn+2(nは1〜4の整数を示す)、メシレート基(−OMs;Msはメシル基を示す)、トシレート基(−OTs;Tsはp−トシル基を示す)、ノシレート基(−ONs;Nsはp−ノシル基を示す)、−OSO2Ph基(Phはフェニル基を示す)、フェノキシ基(−OPh)等が挙げられ、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは、塩素原子である。
【0047】
なお、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0048】
一般式(I−1−A)で表される化合物としては、3−クロロプロピオニルクロリド、3−ブロモプロピオニルクロリドが挙げられる。
【0049】
一般式(I−2−A)としては、2−クロロプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルクロリドが挙げられる。
【0050】
本発明のアクリロイル化試薬の別の態様として、下記一般式(I−1−B)、下記一般式(I−1−C)、下記一般式(I−2−B)、又は下記一般式(I−2−C)で表される化合物を使用することができる。下記一般式(I−1−B)、下記一般式(I−1−C)、下記一般式(I−2−B)、又は下記一般式(I−2−C)で表される化合物は、酸無水物である。
【0051】
【化10】
【0052】
(式中、L2は同一又は異なって脱離基を示す。)
【0053】
L2としては、上記の脱離基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0054】
一般式(I−1−B)で表される化合物としては、3−クロロプロピオン酸無水物、3−ブロモプロピオン酸無水物、3−クロロプロピオン酸3−ブロモプロピオン酸無水物等が挙げられ、好ましくは3−クロロプロピオン酸無水物である。
【0055】
一般式(I−1−C)で表される化合物としては、アクリル酸3−クロロプロピオン酸無水物、アクリル酸3−ブロモプロピオン酸無水物等が挙げられ、好ましくはアクリル酸3−クロロプロピオン酸無水物である。
【0056】
一般式(I−2−B)で表される化合物としては、2−クロロプロピオン酸無水物、2−ブロモプロピオン酸無水物、2−クロロプロピオン酸2−ブロモプロピオン酸無水物等が挙げられ、好ましくは2−クロロプロピオン酸無水物である。
【0057】
一般式(I−2−C)で表される化合物としては、アクリル酸2−クロロプロピオン酸無水物、アクリル酸2−ブロモプロピオン酸無水物等が挙げられ、好ましくはアクリル酸2−クロロプロピオン酸無水物である。
【0058】
本発明において、アクリロイル化試薬としては、上記一般式(I−1−A)又は一般式(I−2−A)で表される化合物が好ましく、より好ましくは一般式(I−1−A)で表される化合物であり、さらに好ましくは、3−クロロプロピオニルクロリドである。
【0059】
本発明において、上記一般式(I−1−A)、一般式(I−1−B)、一般式(I−1−C)、一般式(I−2−A)、一般式(I−2−B)、又は一般式(I−2−C)で表される化合物であるアクリロイル化試薬は、化合物B又はその塩1モル当量に対して、1.0〜1.3モル当量であり、より好ましくは1.05〜1.3モル当量であり、さらに好ましくは、1.1〜1.2モル当量であり、特に好ましくは、1.1当量である。また、水酸化物イオンを含む塩基を使用した際には、当該アクリロイル化試薬は、化合物B又はその塩1モル当量に対して、1.0モル当量以上用いることができる。好ましくは1.0〜3.0モル当量であり、より好ましくは1.1〜2.0モル当量であり、特に好ましくは1.1当量又は1.8当量である。本発明の方法においては、化合物B又はその塩1分子あたり、1個の基 −C(=O)−CH−CH−Lを付加させることを意図している。従って、本明細書において、例えば、化合物B又はその塩1モル当量に対して一般式(I−1−A)で表される化合物、一般式(I−1−C)で表される化合物又は一般式(I−2−C)で表される化合物1.0モル当量使用するとは、化合物B又はその塩1モルに対し、これらのアクリロイル化試薬(1分子あたり基 −C(=O)−CH−CH−Lを1個有するアクリロイル化試薬)を1.0モル用いることを意味する。また、例えば、化合物B又はその塩1モル当量に対して一般式(I−1−B)で表される化合物又は一般式(I−2−B)で表される化合物1.0モル当量使用するとは、化合物B又はその塩1モルに対し、これらのアクリロイル化試薬(1分子あたり基 −C(=O)−CH−CH−Lを2個有するアクリロイル化試薬)を0.5モル用いることを意味する。また、これらのアクリロイル化試薬を組み合わせて用いる場合は、上記計算の組合せとなる。
【0060】
また、本明細書において、そうでないことが明らかでない限り、当量とは、モル当量を意味する。
【0061】
本発明において、アクリロイル化試薬として、上記一般式(I−1−A)、一般式(I−1−B)、一般式(I−1−C)、一般式(I−2−A)、一般式(I−2−B)、又は一般式(I−2−C)で表される化合物を使用することができる。そのため、一般式(I−1−A)又は一般式(I−2−A)で表される化合物を用いた場合、以下の2段階によって反応が進行し、化合物A又はその薬学的に許容できる塩を製造することができる。
【0062】
【化11】
【0063】
(式中、L1、L2は前記に同じ。)
【0064】
化合物B又はその塩から化合物A又はその薬学的に許容される塩へと誘導される際に、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩が中間体として得られる。本発明においては、これらの中間体を単離せずに、中間体からL2を脱離させて化合物Aに誘導することもできる。
【0065】
例えば、一般式(I−1−A)で表される化合物として3−クロロプロピオニルクロリドを用いた場合、一般式(A−1)で表される化合物は、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−クロロプロパン−1−オン(以下、「A−1−3CP化合物」とも言う)となる。
【0066】
【化12】
【0067】
また、一般式(I−2−A)で表される化合物として2−クロロプロピオニルクロリドを用いた場合、中間体としての一般式(A−2)で表される化合物は、1−((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−クロロプロパン−1−オン(以下、「A−1−2CP化合物」とも言う)となる。
【0068】
【化13】
【0069】
化合物B又はその塩、及び一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩は、化合物Bから化合物Aを誘導する際に、反応が進行したかどうかを確認するために用いることができる。さらに、これらの化合物又はその塩は、不純物として化合物Aの原薬及び/又は製剤に含まれうるため、不純物の存在を確認するために用いることもできる。
【0070】
化合物Aを医薬品として用いる場合、不純物として医薬品の原薬及び/又は製剤に含まれうる化合物の量は、医薬品規制調和国際会議におけるガイドライン(ICH−Q3)に指針が示されている。
【0071】
化合物B又はその塩から化合物A又はその薬学的に許容される塩を誘導する際に、塩化アクリロイルを用いた場合、(S)−N−(1―(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4―d]ピリミジン−4−イル)アクリルアミド(以下、「ジアミド化合物」ともいう)が、製造した化合物A(化合物Aの原薬)に含まれる場合がある。
【0072】
【化14】
【0073】
本発明者は、当該ジアミド化合物を除去又は生成を抑制するために、塩化アクリロイルの使用量を抑える方法を試みたところ、化合物Bが残存し収率の低下を伴うことが明らかとなった。また、pHを調整してジアミドを分解させる方法を試みたところ、工程数が増加し、効率よく化合物Aを大量製造することはできず、さらに化合物Aも分解されて収率の低下を伴うことが明らかとなった。さらに、晶析条件を検討したが、ジアミド化合物を効率よく除去することは困難であった。そのため、塩化アクリロイルを使用する化合物Aの製造方法は、上記の観点から医薬品としての品質を保持しつつ、大量製造することが困難であると考えられる。
【0074】
アクリロイル化試薬として上記一般式(I−1−A)、一般式(I−1−B)、一般式(I−1−C)、一般式(I−2−A)、一般式(I−2−B)、又は一般式(I−2−C)で表される化合物を使用して、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩へ誘導する際も、副生成物として以下のように、一般式(A−1−diamide)又は一般式(A−2−diamide)で表される化合物を経由してジアミド化合物へ誘導される可能性がある。
【0075】
【化15】
【0076】
(式中、L1、L2は前記に同じ。)
【0077】
ジアミド、一般式(A−1−diamide)、又は一般式(A−2−diamide)で表される化合物は、化合物Aもしくは薬学的に許容される塩、一般式(A−1)もしくはその塩、又は一般式(A−1)もしくはその塩に含まれる不純物の存在を確認するために用いることができる。
【0078】
例えば、一般式(I−1−A)、一般式(I−1−B)、一般式(I−1−C)、一般式(I−2−A)、一般式(I−2−B)、又は一般式(I−2−C)で表される化合物おけるL1及びL2が塩素原子の場合、一般式(A−1−diamide)は、(S)―3−クロロ−N−(1−(1−(3−クロロプロパノイル)ピロリジン−3−イル)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)プロパンアミド(以下、「3CPジアミド」とも言う)である。
【0079】
【化16】
【0080】
また、一般式(I−1−A)、一般式(I−1−B)、一般式(I−1−C)、一般式(I−2−A)、一般式(I−2−B)、又は一般式(I−2−C)で表される化合物おけるL1及びL2が塩素原子の場合、一般式(A−2−diamide)は、2−クロロ−N−(1−((3S)−1−(2−クロロプロパノイル)ピロリジン−3−イル)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)プロパンアミド(以下、「2CPジアミド」とも言う)である。
【0081】
【化17】
【0082】
本発明において、化合物Bから一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩を中間体として誘導する際に、塩基(例えば、少なくとも化合物Bと等量の塩基)の存在下で行うこともできる。さらに、これらの中間体から化合物Aに誘導する際に、塩基(例えば、少なくとも中間体と等量の塩基)の存在下で行うことができる。また、両工程を塩基の存在下で行う場合、各工程の塩基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0083】
化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩へ誘導する際に用いられる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の有機アミン塩基;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸セシウム等の無機塩基等が挙げられ、好ましくは有機アミン塩基又は無機塩基であり、より好ましくは水酸化物イオンを含む塩基であり、さらに好ましくはアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び水酸化物イオンを含む塩基であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。塩基は1種又は2以上を使用することができる。
【0084】
また、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物からL2を脱離させて化合物Aに誘導する際の塩基としては、同じく上記の塩基が挙げられ、好ましくは無機塩基であり、より好ましくは水酸化物イオンを含む塩基であり、さらに好ましくはアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び水酸化物イオンを含む塩基であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0085】
上記で示される塩基は、1価の塩基、2価の塩基、又は3価の塩基に大別される。1価の塩基とは、1分子でプロトンを1個受け入れることができる塩基であり、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。2価の塩基とは、1分子でプロトンを2個受け入れることができる塩基であり、炭酸ナトリウム等が挙げられる。3価の塩基としては、1分子でプロトンを3個受け入れることができる塩基であり、リン酸カリウム等が挙げられる。
【0086】
本発明において、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩へ誘導する際に1価の塩基を用いた場合、塩基の量としては、化合物B又はその塩1当量に対して、化合物Bの酸付加塩と中和される当量を差し引いて、化合物Bのフリー体の0.5〜10当量が好ましく、1〜10当量がより好ましく、1〜5当量がより好ましく、1〜3当量がより好ましく、1〜2当量がより好ましく、1.1当量又は1.9当量が特に好ましい。また、1価の塩基を用いた場合、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩からL2を脱離させて化合物A又はその薬学的に許容される塩に誘導する際の塩基の量としては、化合物B又はその塩1当量に対して、化合物Bのフリー体の1〜10当量が好ましく、1〜5当量がより好ましく、3〜4当量がより好ましく、3.4当量又は3.6当量が特に好ましい。同様に、2価の塩基及び3価の塩基についても、価数を考慮して上記に従った至適当量が計算できる。
【0087】
本発明において、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩から、L2を脱離させて化合物A又はその薬学的に許容される塩へ誘導する際に1価の塩基を用いた場合、塩基の量としては、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩1当量に対して、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物の酸付加塩と中和される当量を差し引いて、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物のフリー体の1〜5当量とすることができる。また、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物を単離せずに行う場合、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物のフリー体の理論収量(即ち、化合物Bのフリー体の量)の1〜10当量とすることができる。同様に、2価の塩基及び3価の塩基についても、価数を考慮して上記に従った至適当量が計算できる。
【0088】
本発明において、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩へ誘導する際に採用される溶媒としては、化合物Bとアクリロイル化試薬の結合の妨げとなるものでなければ特に制限はなく、アセトニトリル、水、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4−ジオキサン又はこれらの混合溶媒があげられ、好ましくはアセトニトリル、水又はこれらの混合溶媒である。溶媒の容量としては、特に制限はなく、好ましくは化合物B又はその塩の1重量に対して1〜50倍容量(v/w)であり、より好ましくは2〜30倍容量(v/w)であり、さらに好ましくは10〜20倍容量(v/w)であり、特に好ましくは12倍容量(v/w)又は14倍容量(v/w)である。混合溶媒を用いる際の各溶媒の比率は、特に制限されない。例えばアセトニトリル及び水の混合溶媒を用いる場合、各溶媒の比率は特に制限はないが、好ましくはアセトニトリルの1容量に対して水が0.1〜2倍容量(v/v)であり、より好ましくは0.1〜1倍容量(v/v)であり、さらに好ましくは0.5〜1倍容量(v/v)であり、特に好ましくは0.5倍容量(v/v)又は1倍容量(v/v)である。
【0089】
一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩から、L2を脱離させて化合物A又はその薬学的に許容される塩へ誘導する際に採用される溶媒としては、上記と同様の溶媒が挙げられる。さらに、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩を単離せずに行う場合にも、上記と同様の溶媒が挙げられる。
【0090】
本発明において、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩へ誘導する際に採用される溶媒の温度としては、溶媒の融点から沸点の間であり、化合物Bが安定に存在できる範囲であれば、特に制限はないが、好ましくは0〜50℃であり、より好ましくは25〜35℃である。
【0091】
一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩から、L2を脱離させて化合物A又はその薬学的に許容される塩へ誘導する際に採用される温度としては、上記と同様の温度が挙げられる。
【0092】
本発明において、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩への誘導できる方法として、下記一般式(I−1−D)又は下記一般式(I−2−D)で表されるカルボン酸を用いることができる。
【0093】
【化18】
【0094】
(式中、L1、L2は前記に同じ。)
【0095】
この場合、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩への誘導できる工程は以下の通り示される。
【0096】
【化19】
【0097】
(式中、L1、L2は前記に同じ。)
【0098】
当該工程は化合物Bと一般式(I−1−D)又は一般式(I−2−D)のカルボン酸との縮合であるため、縮合剤を使用することができる。縮合剤としては、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC(WSCI、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)、HATU((2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3,−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)、HBTU(O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N‘,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)、CDI(カルボニルジイミダゾール)、DMT−MM(4−(4,6−ジメトキシ−(1,3,5)トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム クロリド)等が挙げられる。
【0099】
また、当該工程においては、カルボン酸を活性化エステルに誘導するため、p−ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOAt(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール)、HOSu(N−ヒドロキシスクシンイミド)等を添加することができる。
【0100】
さらに、当該工程においては、上記で挙げられた塩基を適宜使用することができる。
【0101】
本発明において、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩への誘導、及び一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩からL2を脱離させて化合物A又はその薬学的に許容される塩への誘導の際に採用される反応の確認方法としては、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCとも言う。)、薄層クロマトグラフィー(TLC)等の各クロマトグラフィーが挙げられる。HPLCを用いた場合、化合物Bのピーク面積が、全ピーク面積の1%以下となれば、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩への誘導の工程が完了したものと判断できる。また、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物のピーク面積が、全ピーク面積の1%以下となれば、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩からL2を脱離させて化合物Aへの誘導は完了したものと判断できる。HPLCの測定条件は、化合物A、化合物B及び一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物が検出できれば、特に制限されるものではない。
【0102】
また、化合物B又はその塩から一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩への誘導の際に反応の確認でHPLCを用いた場合、一般式(A−1−diamide)で表される不純物及び3CPジアミド、又は一般式(A−2−diamide)で表される不純物及び2CPジアミドのピーク面積が、全ピーク面積の2%以下であれば、化合物A又はその薬学的に許容される塩にジアミド化合物が含まれる可能性が小さい。
【0103】
本発明において、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩を単離する場合、これらの化合物を再結晶等の方法により精製してもよく、精製せずに次工程に用いてもよい。また、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩から、L2を脱離させて化合物A又はその薬学的に許容される塩への誘導が完了された後に、化合物A又はその薬学的に許容される塩は精製することができる。精製方法としては、本発明は大量製造に用いるとの観点から、カラムクロマトグラフィーによる精製は行わず、晶析によるものを採用することが好ましい。
【0104】
本発明において、反応溶媒に溶解した化合物A又はその薬学的に許容される塩を晶析する際には、化合物A又はその薬学的に許容される塩の溶解度が低い溶媒を添加する方法が挙げられる。当該添加する溶媒としては、水等が挙げられる。また、当該添加する溶媒の量としては、化合物A又はその薬学的に許容される塩が析出されれば特に制限はなく、好ましくは反応溶媒の0.5〜5倍容量(v/v)であり、より好ましくは1〜3倍容量(v/v)であり、さらに好ましくは1〜2倍容量(v/v)であり、特に好ましくは1.1倍容量(v/v)又は1.8倍容量(v/v)である。また、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩を単離せずに化合物B又はその塩から化合物A又はその薬学的に許容される塩へと誘導する場合、当該添加する溶媒の量としては、化合物B又はその塩の重量の5〜50倍容量(v/w)であり、好ましくは10〜40倍容量(v/w)であり、より好ましくは15〜30倍容量(v/w)であり、特に好ましくは15倍容量(v/w)又は22倍容量(v/w)である。
【0105】
また、本発明において、晶析を実施する際の温度としては、上記の溶媒添加後に化合物A又はその薬学的に許容される塩が析出されれば特に制限はなく、好ましくは0〜40℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0106】
さらに、本発明において、晶析に要する時間としては、1時間以上が挙げられ、好ましくは2〜72時間である。
【0107】
本発明において、化合物A又はその薬学的に許容できる塩は、晶析及び濾取により固体として単離することができる。化合物A又はその薬学的に許容できる塩は医薬品として使用されるため、効率よく大量製造するためには、濾取にかかる時間が短い方がよい。濾過性の良不良は、濾過時間、濾過速度等の絶対値では判断できないため、工程条件を比較することによって相対的に決定される。そのため、濾過面積、濾取に用いる濾紙、吸引時の圧は揃えて比較が行われる。析出した粒子が大きく濾紙の目詰まりが起きないこと、濾過される溶媒量が少ないこと等は、濾過性が優れていると判断できる要因となる。
【0108】
本発明において、一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩を単離せずに、化合物B又はその塩から化合物A又はその薬学的に許容される塩へと誘導する場合、塩化アクリロイルよりも一般式(I−1−A)又は一般式(I−2−A)を用いる方が、化合物A又はその薬学的に許容される塩の濾取における濾過性がよい。これは、化合物A又はその塩を製造する際には予想しえなかったことである。本発明において、濾過性の観点から用いることができる一般式(I−1−A)又は一般式(I−2−A)で表される化合物は、塩化アクリロイルを用いた場合に比べて濾過性が改善されていれば特に限定されないが、好ましくは一般式(I−1−A)で表される化合物であり、より好ましくは3−クロロプロピオニルクロリドである。
【0109】
このようにして得られた一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される化合物又はその塩、及び化合物A又はその薬学的に許容される塩は、各種の定量分析、定性分析によって分析することができる。
【0110】
本発明において、1つの実施形態として、化合物B又はその塩1当量を、1.0〜1.3当量の一般式(I−1−A)で表される化合物と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法を採用することができる。
【0111】
好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、L1及びL2が、同一又は異なって、ハロゲン原子からなる群から選ばれる一般式(I−1−A)で表される化合物1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0112】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、3−クロロプロピオニルクロリド1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0113】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、有機アミン塩基及び無機塩基からなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0114】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、有機アミン塩基及び水酸化物イオンを含む塩基からなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0115】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて1.0〜10当量の、有機アミン塩基及び水酸化物イオンを含む塩基からなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0116】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて0.5〜10当量の、有機アミン塩基及びアルカリ金属イオンと水酸化物イオンとを含む塩基からなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0117】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて0.5〜10当量の、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.0〜1.3当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0118】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて0.5〜10当量の、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.05〜1.2当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0119】
特に好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて1.1当量の、水酸化ナトリウムの存在下で、3−クロロプロピオニルクロリド1.1当量と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0120】
本発明において、別の1つの実施形態として、化合物B又はその塩を、水酸化物イオンを含む塩基の存在下で、一般式(I−1−A)で表される化合物と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法を採用することができる。
【0121】
好ましくは、化合物B又はその塩を、水酸化物イオンを含む塩基の存在下で、L1及びL2が、同一又は異なって、ハロゲン原子である、一般式(I−1−A)で表される化合物と反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0122】
より好ましくは、化合物B又はその塩を、水酸化物イオンを含む塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリドと反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0123】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて0.5〜10当量の、水酸化物イオンを含む塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリドと反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0124】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて0.5〜10当量の、アルカリ金属イオンと水酸化物イオンとを含む塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリドと反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0125】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて0.5〜10当量の、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリドと反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0126】
より好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて1.0〜5当量の、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、3−クロロプロピオニルクロリドと反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0127】
特に好ましくは、化合物B又はその塩1当量を、化合物B又はその塩の酸付加塩と中和される当量を差し引いて3.5当量の、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1以上の塩基の存在下で、1.8当量の3−クロロプロピオニルクロリドと反応させる工程を含む、一般式(A−1)で表される化合物又はその塩の製造方法である。
【0128】
上記の製造方法に従い製造した化合物Aには、様々な不純物が含まれる可能性がある。特に、化合物Bから3−クロロプロピオニルクロリドを使って化合物Aを製造した際に、以下の類縁物質が含まれうる。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
類縁物質1は、上記のジアミド化合物である。
【0133】
類縁物質2は、上記のA−1−3CP化合物である。
【0134】
類縁物質3は、上記の化合物Bである。
【0135】
類縁物質4は、(S)−3−((1−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−6−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)プロパン酸(以下、「CE化合物」とも言う)である。
【0136】
類縁物質5は、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(以下、「OH化合物」とも言う)である。これは、A−1−3CP化合物の塩素基が水酸基に置換されたものである。
【0137】
類縁物質6は、(S)−8−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−10−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−3,4−ジヒドロピラゾロ[4,3−e]ピリミド[1,2−c]ピリミジン−2(8H)−オン(以下、「CDA1化合物」とも言う)である。これは、類縁物質1に記載されたピラゾロ[3,4−d]ピリミジンの4位のアクリルアミドと5位の窒素が環を形成した化合物である。
【0138】
類縁物質7は、(S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−カルバルデヒド(以下、「CHO化合物」とも言う)である。これは、化合物Aのアクリロイル基がホルミル基に置換されたものである。
【0139】
類縁物質8は、1,3−ビス((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オン(以下、「MA化合物」とも言う)である。これは、化合物Aのアクリロイル基に化合物Bのピロリジン部分が結合したものである。
【0140】
類縁物質9は、1−((S)−3−(4−((3−((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−オキソプロピル)アミノ)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(以下、「Dimer化合物」とも言う)である。これは、化合物Aのアクリロイル基に化合物Bのアミノ基の窒素が結合したものである。
【0141】
類縁物質10は、(S)−1−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−5−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(以下、「UK化合物」とも言う)である。これは、化合物Aのピリミジン部分が開環したものである。
【0142】
上記類縁物質の塩等も本発明に包含される。類縁物質又はその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、本発明においては、いずれも「化合物又はその塩」に包含される。化合物の塩としては、特に限定するものではないが、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、又は硫酸等の無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はベンゼンスルホン酸等のアルキル硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸との付加塩、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、エチルアミン塩、アルギニン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。本明細書において、「類縁物質1」、「類縁物質2」、・・・「類縁物質10」との記載は、当該類縁物質の「塩」及び「溶媒和物」を含めることを意図し得る。
【0143】
上記類縁物質若しくはその塩の組み合わせも本発明に包含される。組み合わせは、2以上の上記類縁物質又はその塩が含まれている。組み合わせ中のすべてが上記類縁物質のいずれか2つ以上である場合、一部が上記類縁物質のいずれか1つ以上であり残りが上記類縁物質のいずれか1つ以上の塩である場合、すべてが上記類縁物質のいずれか2つ以上の塩である場合のいずれもが包含される。組み合わせ中に、上記類縁物質のいずれか1つ及び当該類縁物質の塩を含んでもよい。
【0144】
本発明において、標準品とは医薬品の製剤及び/又は原薬を定量的又は定性的に評価する際に基準となるものを言う。本発明におけるこれらの類縁物質又はその塩は、化合物Aを含む製剤及び/又は原薬の安定性試験、その製造工程の工程検査(工検)等において、HPLCの測定で各類縁物質の保持時間等を確認して品質を管理するための標準品として用いることができる。
【0145】
なお、品質を管理するために用いることができる類縁物質は、原料及び/又は中間体である化合物、原薬の製造の際の副生成物となる化合物、及び原薬から製剤を製造する際に生じる化合物等が挙げられるが、実際に製造される原薬及び/又は製剤に含まれうる化合物であれば特に制限はない。原薬の製造面では、このような類縁物質は、実際に原薬に含まれる化合物だけでなく、原薬の精製過程で除去された化合物も含まれる。
【0146】
従って、本発明においては、前記類縁物質を化合物Aの原薬、化合物A又はその塩を含む医薬組成物(例えば、製剤)の品質管理(例えば、類縁物質の含有量の管理(調整))に用いることができる。さらに、本発明によれば、前記類縁物質を、化合物Aを含む試料の不純物検出の際に標準品として用いることもできる。また、本発明によれば、化合物Aを含む試料から当該類縁物質を単離することを特徴とする、前記類縁物質の製造方法を提供することもできる。また、本発明は、化合物Aの分析方法を提供することもできる。本発明において、化合物Aの分析とは、化合物Aを含む試料中に、化合物Aだけでなく、その類縁物質が含まれているか否かを分析し、類縁物質が検出された場合、その含有量を測定することを意味する。
【0147】
本発明において用いられるHPLCは、通常市販されているものを用いることができる。HPLCは、少なくとも分離用カラム及び検出器を備える。
【0148】
本発明において、HPLCの測定によるピークの分離度Rsは、クロマトグラム上のピーク相互の保持時間とそれぞれのピーク幅との関係を示すものであり、次式を用いて計算される。
【0149】
Rs=1.18×(tR2―tR1)/(W0.5h1+W0.5h2)
tR1、tR2:分離度測定に用いる二つの物質の保持時間。ただし,tR1<tR2
W0.5h1、W0.5h2:それぞれのピークの高さの中点におけるピーク幅
ただし,tR1、tR2,W0.5h1、W0.5h2は同じ単位を用いる。
【0150】
日本薬局方において、分離度が1.5以上であれば完全にピークが分離した状態であるとされている。本発明においても分離度1.5以上を指標とすることができる。
【0151】
本発明において、HPLCに用いられる測定条件は、類縁物質1〜10からなる群より選択される1の類縁物質と化合物Aの分離度が1.5以上であれば特に制限はないが、好ましくは、類縁物質8(MA化合物)、類縁物質9(Dimer化合物)、及び化合物Aの相互の分離度が1.5以上である。より好ましくは、類縁物質8(MA化合物)、類縁物質9(Dimer化合物)、類縁物質4(CE化合物)、類縁物質5(OH化合物)、類縁物質7(CHO化合物)、及び化合物Aの相互の分離度が1.5以上である。さらに好ましくは、類縁物質3(化合物B)、類縁物質4(CE化合物)、類縁物質5(OH化合物)、類縁物質6(CDA1化合物)、類縁物質7(CHO化合物)、類縁物質2(A−1−3CP化合物)、類縁物質8(MA化合物)、類縁物質9(Dimer化合物)、及び化合物Aの相互の分離度が1.5以上である。
【0152】
本発明において、HPLCに用いられる測定条件は、移動相のグラジエント、シリカゲルカラム、測定サンプルの注入量、移動相クリーナーの有無、測定波長、カラム温度、移動相の流速、HPLC装置のミキサー容量等を適宜設定することができる。
【0153】
HPLCには、有機相を移動相にして化合物の極性に応じて分離させる順相カラムと、水相を移動相にして化合物を分離させる逆相カラムが知られている。化合物Aの物性の観点から、本発明においては逆相カラムを用いた逆相クロマトグラフィーが好ましい。
【0154】
一般に、HPLC測定において、測定サンプルを移動相へ注入(導入)し、かつ、検出器における検出を開始する時点を測定開始の時点とする。以下、本発明において、測定開始の時点を基準にHPLC測定中の時点を定義する場合がある。
【0155】
本発明において使用できるHPLCの分離用カラムは、シリカゲルカラム、表面をオクタデシルシリル基で修飾されたシリカゲルカラム(ODSカラム又はC18カラム)、表面をオクチル基で修飾されたシリカゲルカラム(C8カラム)、表面をシアノプロピル基で修飾されたシリカゲルカラム(CNカラム)、表面をフェネチル基で修飾されたシリカゲルカラム(Phカラム)、表面をアミノプロピル基で修飾されたシリカゲルカラム(NHカラム)、表面をジヒドロキシプロピル基で修飾されたシリカゲルカラム(Diolカラム)、各種ポリマーで充填されたカラム(ポリマーカラム)、イオン交換樹脂で充填されたカラム(イオン交換カラム)等から選択されるが、本発明においてはODSカラムが好ましい。
【0156】
ODSカラムとしては、シリカゲルの粒径、細孔径、オクタデシルシリル基の結合方法、オクタデシルシリル基の置換度等が異なる種々のものを使用することができる。本発明においては、高純度シリカゲルが使用され、オクタデシル化後に残存したシラノールを低分子のシリル化剤で処理したODSカラム(エンドキャッピングされたODSカラム)が好ましい。
【0157】
ODSカラムとしては、シリカゲルの粒径、細孔径、オクタデシルシリル基の結合方法、オクタデシルシリル基の置換度等が異なる種々のものを使用することができる。シリカゲルの平均粒径は、例えば、3μmがより好ましい。シリカゲルの平均粒径は、レーザー回折法等により測定することができる。
【0158】
シリカゲルの平均細孔径は、例えば、10〜12nmがより好ましい。シリカゲルの平均細孔径は、ガス吸着法等により測定することができる。
【0159】
シリカゲルにおけるオクタデシルシリル基の結合様式としては、例えば、モノメリック様式、ポリメリック様式等が好ましい。
【0160】
オクタデシルシリル基の置換度は、種々の方法により測定することができる。シリカゲルの炭素量は、例えば、14%以上が好ましい。
【0161】
シリカゲルの炭素量は、例えば、20%以下が好ましい。シリカゲルの炭素量は、種々の方法により測定することができる。
【0162】
本発明におけるHPLCの移動相は、有機相及び水相の混液が用いられる。
【0163】
HPLCの移動相において用いられる有機相は有機溶媒を主体とする液体媒体である。前記有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン等の非極性溶媒、アセトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル等を用いることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて(例えば、混合溶媒として)用いることができる。本発明における有機相に含まれる有機溶媒としては、メタノール、又はアセトニトリルが好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
【0164】
また、有機相には20容量%以下の水が含まれていてもよい。好ましくは、水は有機相全体の10容量%以下であり、より好ましくは5容量%以下であり、特に好ましくは1%容量以下である。
【0165】
HPLCの移動相において用いられる水相は水を主体とする液体媒体である。水相に含まれる液体の全量を水とすることができる。また、水相には、50容量%以下の有機溶媒が含まれていてもよい。この場合に用いられる有機溶媒は、水と均一に混合できれば特に制限はなく、アセトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ギ酸、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、好ましくは、アセトニトリル、又はメタノールであり、より好ましくは、アセトニトリルである。そして、水相に含まれる有機溶媒は、水相全体の50容量%以下であり、好ましくは、有機溶媒は水相全体の30容量%以下であり、より好ましくは5〜30容量%である。
【0166】
HPLCの移動相におけるpHは、前記の類縁物質が検出可能であり、その含有量が算出できれば特に制限はないが、好ましくは6.9〜7.1を除くpHであり、より好ましくは6.1〜6.8、及び7.2〜7.5であり、より好ましくは6.4〜6.8であり、特に好ましくは6.6である。HPLCの移動相におけるpHは、下記の緩衝剤の添加により調整することができる。
【0167】
HPLCの移動相には、測定の際にpHの影響を小さくし再現性を向上させるとの観点から、緩衝剤を添加することができる。例えば、酢酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酒石酸又はその塩、リン酸又はその塩を緩衝剤として添加することができる。酢酸又はその塩としては、酢酸、酢酸ナトリウムが挙げられる。クエン酸又はその塩としては、クエン酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが挙げられる。酒石酸又はその塩には、酒石酸、酒石酸ナトリウム、リン酸又はその塩としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが挙げられる。本発明における緩衝剤としては、測定物質の持つ性質、測定の際に得られるピークの形状、及び測定の再現性の観点から、リン酸、及びリン酸塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムがより好ましく、リン酸二水素カリウムが特に好ましい。これらの緩衝剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0168】
緩衝剤は水相及び有機相のいずれにも添加することができる。好ましくは、緩衝剤は水相に添加される。
【0169】
本発明に用いることができる緩衝剤の濃度は、HPLCの測定中に緩衝剤が析出しない濃度であれば適宜調整することができる。好ましくは、緩衝剤の濃度は5〜10mMである。
【0170】
一般に、HPLCの測定においては、移動相における有機相と水相との混液組成を変動させることにより、対象とする類縁物質を適切に分離させることができる。その際に、移動相混液の割合を一定にするか(イソクラティック:isocratic)、又は組成を連続的に変化させて(グラジエント:gradient)、前記の類縁物質を測定することができる。
【0171】
通常、逆相クロマトグラフィーにおいて、移動相における有機相と水相との混液組成の変動は、縦軸を移動相全体における有機相の割合(%)、横軸を測定時間(分)とした二次元のグラフが用いられる。すなわち、イソクラティックであれば、傾きは0の一次関数で表され、グラジエントグラジエント有機相の割合を一定の増加割合で経時的に上昇させるグラジエントであれば、傾きが正の一次関数で表され、有機相の割合を一定の減少割合で経時的に低下させるグラジエントであれば、傾きが負の一次関数で表される。これらを組み合わせることにより、各ピークの分離度を維持しつつ、極性の低い類縁物質も効率的に溶出されて短い保持時間にて測定することができる。上記一次関数の「傾き」である移動相中の有機相の増加割合は、例えば単位時間あたりの有機相の増加割合により表すことができ、以下のように計算できる。
【0172】
単位時間あたりの有機相の増加割合=((グラジエントの終了時点の移動相中の有機相の割合)―(グラジエントの開始時点の移動相中の有機相の割合))÷(グラジエントの開始時点と終了時点との間の時間の長さ)
【0173】
例えば、測定開始の時点(0分)で有機相の割合が移動相の10容量%であったものを、連続的に有機相の割合を増加させて測定開始から10分後の時点で有機相の割合が移動相の30容量%となったとき、単位時間あたりの有機相の増加割合は2容量%/分と表される。
【0174】
本発明において、移動相の組成及びその変化の有無は、前記の類縁物質を測定することができれば特に制限はない。本発明の好ましい態様においては、移動相中の有機相の割合を経時的に上昇させるグラジエントを、3つ含む。以下、3つのグラジエントを、測定開始時点に近い順に、第1のグラジエント、第2のグラジエント及び第3のグラジエントと呼ぶ場合がある。
【0175】
以下、本発明の好ましい態様の1つにおける第1のグラジエント、第2のグラジエント及び第3のグラジエントについて説明する。
【0176】
第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜2.0容量%/分である。好ましくは0.7〜1.5容量%/分であり、より好ましくは、0.7〜1.3容量%/分であり、さらに好ましくは1.0容量%/分である。
【0177】
第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜5分後であり、好ましくは0〜2分後であり、より好ましくは0〜1分後であり、さらに好ましくは測定開始時点(測定開始時点から0分後)である。
【0178】
第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントグラジエントの開始時点から5〜15分後であり、好ましくは7〜12分後であり、より好ましくは10分後である。
【0179】
第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜15質量%であり、より好ましくは0〜10質量%であり、さらに好ましくは0〜5質量%であり、特に好ましくは0質量%である。
【0180】
第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の5〜15質量%であり、さらに好ましくは7〜12質量%であり、特に好ましくは10質量%である。
【0181】
第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜2.0容量%/分である。好ましくは0.3〜1.8容量%/分であり、より好ましくは、0.7〜1.8容量%/分であり、さらに好ましくは1.3〜1.4容量%/分である。別の実施形態において、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、好ましくは0.5容量%/分である。
【0182】
第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、好ましくは0〜5分後であり、より好ましくは第1のグラジエントの終了時点(第1のグラジエントの終了時点から0分後)である。
【0183】
第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、好ましくは12〜18分後であり、より好ましくは15分後である。別の実施形態において、第2のグラジエントの終了時点は、好ましくは20分後である。
【0184】
第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一である。
【0185】
第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の15〜45質量%であり、より好ましくは20〜40質量%であり、さらに好ましくは28〜38質量%であり、特に好ましくは30質量%である。別の実施形態において、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、好ましくは20質量%である。
【0186】
第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜6.0容量%/分である。好ましくは1.0〜2.0容量%/分であり、より好ましくは、1.0〜1.5容量%/分であり、さらに好ましくは1.3〜1.4容量%/分である。別の実施形態において、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、好ましくは5.0容量%/分である。
【0187】
第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、好ましくは0〜5分後であり、より好ましくは第2のグラジエントの終了時点(第2のグラジエントの終了時点から0分後)である。
【0188】
第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、好ましくは13〜18分後であり、より好ましくは15分後である。別の実施形態において、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から好ましくは10分後である。
【0189】
第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一である。
【0190】
第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の45〜75質量%であり、より好ましくは45〜70質量%であり、さらに好ましくは45〜55質量%であり、特に好ましくは50質量%である。別の実施形態において、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、好ましくは70質量%である。
【0191】
測定開始の時点と第1のグラジエントの開始時点は、一致しても一致しなくてもよい。測定開始の時点と第1のグラジエントの開始時点が一致しない場合、その間はイソクラティックとすることができる。
【0192】
第1のグラジエントの終了時点と第2のグラジエントの開始時点との間に移動相がイソクラティックである期間を設ける場合、その長さは0分より大きく5分以下、好ましくは0分より大きく2分以下、より好ましくは0分より大きく1分以下である。
【0193】
第1のグラジエントの終了時点と第2のグラジエントの開始時点は、一致しても一致しなくてもよい。第1のグラジエントの終了時点と第2のグラジエントの開始時点が一致しない場合、その間はイソクラティックとすることができる。
【0194】
第1のグラジエントの終了時点と第2のグラジエントの開始時点との間に移動相がイソクラティックである期間を設ける場合、その長さは0分より大きく10分以下、好ましくは0分より大きく5分以下である。
【0195】
第2のグラジエントの終了時点と第3のグラジエントの開始時点は、一致しても一致しなくてもよい。第2のグラジエントの終了時点と第3のグラジエントの開始時点が一致しない場合、その間はイソクラティックとすることができる。
【0196】
第2のグラジエントの終了時点と第3のグラジエントの開始時点との間に移動相がイソクラティックである期間を設ける場合、その長さは0分より大きく10分以下、好ましくは0分より大きく5分以下である。
【0197】
測定開始の時点と第1のグラジエントの開始時点、第1のグラジエントの終了時点と第2のグラジエントの開始時点、及び第2のグラジエントの終了時点と第3のグラジエントの開始時点が一致してもよい。
【0198】
このような態様において、第1のグラジエント、第2のグラジエント及び第3のグラジエントは以下のようにすることができる。
【0199】
第1のグラジエントの終了時点は、測定開始の時点から5〜15分後であり、好ましくは7〜12分後であり、より好ましくは10分後である。
【0200】
第2のグラジエントの終了時点は、測定開始の時点から20〜35分後であり、好ましくは22〜28分後であり、より好ましくは25分後である。別の実施形態において、第2のグラジエントの終了時点は、好ましくは30分後である。
【0201】
第のグラジエントの終了時点は、測定開始の時点から35〜50分後であり、好ましくは38〜48分後であり、より好ましくは40分後である。
【0202】
このような場合においても、測定開始の時点と第1のグラジエントの開始時点との間、第1のグラジエントの終了時点と第2のグラジエントの開始時点との間、及び第2のグラジエントの終了時点と第3のグラジエントの開始時点との間からなる群から選択される1以上に、移動相がイソクラティックである期間を設けることは妨げられない。
【0203】
本発明における、第1のグラジエント、第2のグラジエント、及び第3のグラジエントは、有機相の増加割合が全て同一であっても、一部が同一であっても、相互に異なっていてもよい。本発明の好ましい態様の1つでは、は第2のグラジエントと第3のグラジエントとの有機相の増加割合が同一である。有機相の増加割合が同一のグラジエントは、間に移動相がイソクラティックである期間を設けない場合、2つ(又は3つ)のグラジエントが合わせて1つのグラジエントを形成すると換言することができる。
【0204】
本発明において、HPLC測定の好ましい態様グラジエントは、上記の通り第1から第3のグラジエントを含む。好ましくは第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜2.0容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜5分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から5〜15分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜15質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の5〜15質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜2.0容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の15〜45質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜6.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜75質量%である。
【0205】
より好ましくは、第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜1.5容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜2分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から7〜12分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜10質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の7〜12質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜2.0容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の15〜45質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜6.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜75質量%である。
【0206】
より好ましくは、第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜1.3容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜1分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から10分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜5質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の10質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜2.0容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の15〜45質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜6.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜10分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10〜20分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜75質量%である。
【0207】
より好ましくは、第1のグラジエントの有機相の増加割合は1.0容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は測定開始の時点(測定開始の時点から0分後)であり、第1のグラジエントの終了時点は測定開始の時点から10分後であり、第1のグラジエントの開始時点の有機相の割合は0質量%であり、第1のグラジエントの終了時点の有機相の割合は10質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜1.8容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜5分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から12〜18分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の20〜40質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜2.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜5分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から13〜18分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の45〜70質量%である。
【0208】
別の実施形態において、より好ましくは、第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜1.5容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜2分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から7〜12分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜10質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の7〜12質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.3〜1.8容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0〜5分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から12〜18分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の20〜40質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜2.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0〜5分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から13〜18分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜70質量%である。
【0209】
別の実施形態において、より好ましくは、第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜1.3容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0〜1分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から10分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0〜5質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の10質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.7〜1.8容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から15分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の28〜38質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0〜1.5容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から15分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の45〜55質量%である。
【0210】
特に好ましくは、第1のグラジエントの有機相の増加割合は1.0容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は測定開始の時点(測定開始の時点から0分後)であり、第1のグラジエントの終了時点は測定開始の時点から10分後であり、第1のグラジエントの開始時点の有機相の割合は0質量%であり、第1のグラジエントの終了時点の有機相の割合は10質量%であり、第2のグラジエントの有機相の増加割合は1.3〜1.4容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は第1のグラジエントの終了時点から0分後であり、第2のグラジエントの終了時点は第2のグラジエントの開始時点から15分後であり、第2のグラジエントの開始時点の有機相の割合は第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点の有機相の割合は30質量%であり、第3のグラジエントの有機相の増加割合は1.3〜1.4容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は第2のグラジエントの終了時点から0分後であり、第3のグラジエントの終了時点は第3のグラジエントの開始時点から15後であり、第3のグラジエントの開始時点の有機相の割合は第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点の有機相の割合は50質量%である。
【0211】
別の実施形態において、本発明におけるHPLC測定の好ましい態様グラジエントは、上記の通り第1から第3のグラジエントを含む。好ましくは第1のグラジエントにおける有機相の増加割合は、1.0容量%/分であり、第1のグラジエントの開始時点は、測定開始時点から0分後であり、第1のグラジエントの終了時点は、第1のグラジエントの開始時点から10分後であり、第1のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、移動相全体の0質量%であり、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の10質量%であり、第2のグラジエントにおける有機相の増加割合は、0.5容量%/分であり、第2のグラジエントの開始時点は、第1のグラジエントの終了時点から0分後であり、第2のグラジエントの終了時点は、第2のグラジエントの開始時点から20分後であり、第2のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第1のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、移動相全体の20質量%であり、第3のグラジエントにおける有機相の増加割合は、5.0容量%/分であり、第3のグラジエントの開始時点は、第2のグラジエントの終了時点から0分後であり、第3のグラジエントの終了時点は、第3のグラジエントの開始時点から10分後であり、第3のグラジエントの開始時点における有機相の割合は、第2のグラジエントの終了時点における有機相の割合と同一であり、第3のグラジエントの終了時点における有機相の割合は、有機相の割合は、移動相全体の70質量%である。
【0212】
第3のグラジエントの終了後、必要に応じて移動相がイソクラティックである期間を設けた後、移動相中の有機相の割合を経時的に減少させるグラジエントを設けることができる。
【0213】
移動相中の有機相の割合を経時的に減少させるグラジエントは、1分以下、好ましくは0.5分以下、より好ましくは0.1分以下で行うことができる。
【0214】
移動相中の有機相の割合を経時的に減少させるグラジエントにより、有機相の割合を、移動相全体の0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜5質量%であり、さらに好ましくは0質量%へと低下させることができる。
【0215】
また、本発明におけるHPLCには、適宜移動相クリーナーを用いることもできる。当該クリーナーは、カートリッジに活性炭が用いられており,移動相中の不純物及びゴミを除去することができる。それに伴い、クロマトグラムのベースラインノイズが軽減されるため、化合物A由来の少量の類縁物質であっても適切に検出及び定量することができる.
【0216】
本発明において、HPLCによる測定開始の時点に移動相に注入される溶液量は、測定可能な量であれば特に制限はないが、好ましくは2μL以上であり、より好ましくは4〜22μLであり、特に好ましくは、8μL〜22μLである。
【実施例】
【0217】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。本発明は実施例により十分に説明されているが、当業者により種々の変更及び修飾が可能であろうことは理解される。したがって、そのような変更及び修飾が本発明の範囲を逸脱するものでない限り、それらは本発明に包含される。
【0218】
実施例で用いた各種試薬は、特に記載の無い限り市販品を使用した。
【0219】
なお、製造例における収率は、以下のように算出した。
収率(%)=((目的物の収量)/(目的物の理論収量))×100
【0220】
製造例におけるLCMSスペクトルはWaters製ACQUITY SQD(四重極型)を用いて下記条件にて測定した。
カラム:Waters製ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18、2.1×50mm,1.7μm
MS検出:ESI positive
UV検出:254及び280nm
カラム流速:0.5mL/分
移動相:水/アセトニトリル(0.1%ギ酸)
インジェクション量:1μL
【0221】
また、製造例における各工程におけるHPLCの条件は以下の通りである。
【0222】
[条件1]
カラム:InertSustain C18(4.6mmI.D.×150mm、3μm)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長287nm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
流速:1.0mL/分
注入量:10μL
分析時間:25分(面積測定範囲 15分)
移動相:A液 10mmol/L リン酸水溶液
B液 アセトニトリル
グラジエントプログラム
【0223】
【表4】
【0224】
[条件2]
カラム:InertSustain C18(4.6mmI.D.×150mm、3μm)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長287nm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
流速:1.0mL/分
注入量:10μL
分析時間:30 分(面積測定範囲 15分)
移動相:A液 10mmol/L リン酸水溶液
B液 アセトニトリル
グラジエントプログラム
【0225】
【表5】
【0226】
[条件3]
カラム:InertSustain C18 (4.6mmI.D.×150mm,3μm)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長220nm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
流速:1.0mL/分
注入量:10μL
分析時間:78分(面積測定範囲 58分)
移動相:A液 10mmol/L リン酸水溶液
B液 アセトニトリル
グラジエントプログラム
【0227】
【表6】
【0228】
[製造例1](S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩の合成
トルエン(2165g)、tert−ブチル(S)−3−(4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−カルボキシレート(500g)、1−エチニル−3,5−ジメトキシベンゼン(207.5g;特許文献1)、及びトリエチルアミン(176.35g)を溶解し、反応系内を窒素置換した。溶解した混合物にヨウ化銅(885mg)、ビス(トリフェニルホスフィンパラジウム ジクロリド(3.264g)、及びトリフェニルホスフィン(1.2195g)を投入し、窒素置換下で、内温75℃で18時間撹拌した。その後、反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件1)し、tert−ブチル(S)−3−(4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−カルボキシレートのピーク面積が、全ピーク面積の1.0%以下であることを確認した。
【0229】
内温を50℃まで冷却し、混合物に酢酸エチル(2255g)、SCAVENGER SH SILCA(250g)、及び精製白鷺活性炭(50g)を投入し、21時間撹拌した。混合物からヌッチェによる吸引ろ過により、SCAVENGER SH SILCA及び精製白鷺活性炭を除去した。残渣を酢酸エチル4Lで洗浄し、ろ液と混合した。得られたろ液を減圧下で溶媒留去し、6L留去時、アセトニトリル2.5L投入した。さらに減圧下で溶媒留去し、2.4L留去後、アセトニトリル2.5Lを投入した。さらに減圧下で溶媒留去し、2.6L留去後、全量をtert−ブチル(S)−3−(4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−カルボキシレートに対して5倍容量(v/w)となるようアセトニトリルを投入した。
【0230】
得られた混合物に精製水(500g)、メタンスルホン酸(234.5g)を投入し、内温60℃以上で2時間撹拌した。混合物にアセトニトリル8Lを5分間掛け投入し、(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩を晶析させた。混合物を内温52℃から3時間かけ、25℃へ冷却しその後11時間撹拌した。混合物からヌッチェによる吸引ろ過により(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩湿結晶を得た。湿結晶をアセトニトリル2Lで洗浄後、60℃下減圧乾燥により、淡黄白結晶として標題化合物(571.56g、収率88.4%)得た。
【0231】
1H−NMR(400MHz,D2O)δ8.358(s,1H),6.741(d,2.4Hz,2H),6.539(t,2.2Hz,1H),5.715−5.662(m,1H),3.955−3.860(m,2H),3.828(s,6H),3.799−3.645(m,2H),2.838(s,6H),2.766−2.666(m,1H),2.536−2.471(m,1H)
【0232】
[製造例2](S)−N−(1―(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4―d]ピリミジン−4−イル)アクリルアミドの合成
化合物A(348mg、特許文献1)、DMF(6mL)を反応容器に入れ、60%鉱油含有水素化ナトリウム(49mg)を投入した。その後、3−クロロプロピオニルクロリド(120μL)を滴下し、室温で30分間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層の溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP Ultra HP−Sphere;クロロホルム/メタノール)にて精製し、標題化合物(49mg)を得た。
【0233】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ8.84(1H,s),8.71(1H,d,J=1.2Hz,NH),7.37(1H,ddd,J=17.0,10.2,5.1Hz),6.86(2H,dd,J=2.2,0.7Hz),6.74−6.48(1H,m),6.60−6.42(1H,m),6.56(1H,dd,J=4.4,2.2Hz),6.46−6.39(1H,m),5.96(1H,ddd,J=10.4,4.2,1.2Hz),5.77−5.69(1H,m),5.68−5.56(1H,m),4.20−4.01(2H,m),4.15−3.70(2H,m),3.84(6H,s),2.75−2.43(2H,m);m/z 473[M+H]+
【0234】
[製造例3](S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−クロロプロパン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(1.0g)、ジメチルスルホキシド(25mL)を反応容器に入れ、1Mの水酸化ナトリウム水溶液(3.6mL)を加えた。そこに、3−クロロプロパンカルボン酸(297mg)、DMT−MM水和物(694mg)を加え、室温で2時間撹拌した。さらに、3−クロロプロパンカルボン酸(67mg)、DMT−MM水和物(272mg)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層の溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP Ultra HP−Sphere;クロロホルム/メタノール)にて精製し、標題化合物(713mg)を得た。
【0235】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ8.26(1H,s),7.98(1H,brs),6.90(2H,m),6.78(1H,brs),6.60(1H,m),5.55−5.38(1H,m),4.05−3.76(2H,m),3.85−3.74(2H,m),3.80−3.49(2H,m),3.77(6H,s),2.79(2H,dt,J=25.8,6.8Hz),2.49−2.28(2H,m);m/z 455,457[M+H]+
【0236】
[製造例4](S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(10g)、水(56mL)、及びアセトニトリル(50mL)を反応容器に入れ、5規定の水酸化ナトリウム水溶液(14mL)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(2.51g)をアセトニトリル(20mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で2時間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であることを確認した。このとき、HPLCでは、ジアミド化合物及び3CPジアミド化合物は検出されなかった。その後、さらに5規定の水酸化ナトリウム水溶液(4mL)を加え、20〜30℃の間で2時間撹拌した。その後、さらに5規定の水酸化ナトリウム水溶液(2mL)を加え、20〜30℃の間で2時間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、A−1−3CP化合物のピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であることを確認した。反応終了後、水(150mL)を加え、不溶物を濾取し、水(50mL)、及びアセトニトリル(50mL)で洗浄し、濾取したものを60℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(5.60g、収率74.5%)を得た。
【0237】
得られた標題化合物をHPLCにて分析したところ、ジアミド化合物は検出されなかった。
【0238】
[製造例5](S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(25.0g)、水(69mL)、及びアセトニトリル(158mL)を反応容器に入れ、5規定の水酸化ナトリウム水溶液(35mL)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(6.27g)をアセトニトリル(50mL)で希釈した溶液を10分間掛けて加え、滴下後30℃で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件3)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であることを確認した。このとき、HPLCでは、ジアミド化合物及び3CPジアミド化合物は検出されなかった。その後、さらに5規定の水酸化ナトリウム水溶液(25mL)を加え、30℃で4時間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件3)し、A−1−3CP化合物のピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であることを確認した。反応終了後、水(550mL)を2時間掛けて加えた。滴下後、内温25℃とし、1.5時間撹拌した。不溶物を濾取し、水(125mL)で洗浄し、濾取したものを60℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(16.02g、収率85.3%)を得た。
【0239】
得られた標題化合物をHPLCにて分析したところ、ジアミド化合物は検出されなかった。
【0240】
[製造例6]水酸化ナトリウム3.1当量を用いた(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(3.0g)、水(9.15mL)、及びアセトニトリル(18.96mL)を反応容器に入れ、5規定の水酸化ナトリウム水溶液(3.34mL)を加え、内温30℃とした。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(0.753g)をアセトニトリル(6mL)で希釈した溶液を10分間掛けて加えた。滴下後、30℃で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定し(条件3)、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であることを確認した。このとき、HPLCでは、ジアミド化合物及び3CPジアミド化合物は検出されなかった。その後、さらに5規定の水酸化ナトリウム水溶液(3.56mL)を加え、30℃で4時間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件3)し、A−1−3CP化合物のピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であることを確認した。反応終了後、水(66mL)を30分間掛けて加え、内温25℃とし、1時間撹拌した。不溶物を濾取し、水(15mL)で洗浄し、濾取したものを60℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(1.874g、収率83.1%)を得た。
【0241】
得られた標題化合物をHPLCにて分析したところ、ジアミド化合物は検出されなかった。
【0242】
[製造例7]N,N−ジイソプロピルエチルアミンを用いた(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(3.0g)、水(12.48mL)、及びアセトニトリル(18.96mL)を反応容器に入れ、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.26g)を加え、内温30℃とした。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(0.753g)をアセトニトリル(6mL)で希釈した溶液を10分間掛けて加え、滴下後30℃で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件3)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であることを確認した。このとき、HPLCでは、ジアミド化合物及び3CPジアミド化合物は検出されなかった。その後、さらに5規定の水酸化ナトリウム水溶液(6.47mL)を加え、30℃で4時間30分撹拌した。反応終了後、水(66mL)を30分間掛けて加え、内温25℃とし、1時間30分撹拌した。不溶物を濾取し、水(15mL)で洗浄し、濾取したものを60℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(1.897g、収率84.2%)を得た。
【0243】
得られた標題化合物をHPLCにて分析したところ、ジアミド化合物は検出されなかった。
【0244】
[製造例8]水酸化カリウムを用いた(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、5規定水酸化カリウム(280.7mg相当)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(205.2mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であることを確認した。このとき、HPLCでは、ジアミド化合物及び3CPジアミド化合物は検出されなかった。
【0245】
これにより、製造例8の方法は、ジアミド化合物等の類縁物質の生成が抑制できることから、化合物Aの高い品質を維持する観点で優れ、医薬品の大量製造に適していることが示唆された。
【0246】
[製造例9]水酸化ナトリウムを用いた(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、5規定水酸化ナトリウム(1.0mL)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(205.2mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であることを確認した。このとき、3CPジアミド化合物は0.31%あった。
【0247】
これにより、製造例9の方法は、3CPジアミド化合物から誘導されるジアミド化合物の生成が抑制されうることから、化合物Aの品質を維持する観点で優れ、医薬品の大量製造に適していることが示唆された。
【0248】
[製造例10]塩化アクリロイルを用いた(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−2−プロペン−1−オンの合成
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(5.0g)、N−メチル−2−ピロリドン(50mL)、及びリン酸カリウム(3.43g)を反応容器へ入れ、内温10℃以下とした。そこに塩化アクリロイル(1.219g)を加え、3時間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であり、ジアミド化合物のピーク面積は2%以上であることを確認した。
【0249】
その後、水(25g)、リン酸(880mg)を加え、20〜30℃で3時間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、ジアミド化合物のピーク面積は全ピーク面積の2%未満であることを確認した。
【0250】
その後20%水酸化カリウム水溶液を用い、反応液pHを7〜8へ調整した。その後エタノール(40mL)を投入し、内温50〜60へ加熱し、溶解させた。内温50℃で化合物Aの結晶II(25.2mg;特許文献8)を加え、3時間撹拌した。その後、水(176.3mL)を3時間掛け、滴下した。内温を50℃から25℃へ15時間掛け、冷却した。このとき、溶液と不溶物を含む溶液全体は375mLであり、このうち不溶物を濾取し、水(30mL)で洗浄し、濾取したものを60℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(2.936g、収率78.2%)を得た。
【0251】
得られた標題化合物をHPLCにて分析したところ、ジアミド化合物は検出されなかった。
【0252】
しかし、溶液と不溶物を含む溶液全体375mLから、濾過面積12.56cm2のヌッチェを用いて不溶物の濾取を行ったところ、1716秒を要し、濾過速度は0.2mL/秒であった。これは、実施例と同スケールで濾取に要した時間を比較したところ、実施例に比べて約20分の1の濾過速度であった。
【0253】
これにより、製造例10の方法は、化合物Aの濾取に時間がかかることが示唆されたため、当該条件は大量製造のための方法としては不十分である可能性が示された。
【0254】
[製造例11]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(2.5mL)、及びアセトニトリル(2.5mL)を反応容器に入れ、5規定水酸化ナトリウム水溶液(1mL)を加えた。そこに、塩化アクリロイル(162.9mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、氷冷下30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.94%であり、ジアミド化合物は3.02%であった。
【0255】
これにより、製造例11の方法は、産物の品質の観点で医薬品の製造方法としては不十分である可能性が示された。
【0256】
[製造例12]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(2.5mL)を反応容器に入れ、リン酸カリウム(343.8mg)を加えた。そこに、塩化アクリロイル(97.8mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、氷冷下60分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の17.79%であり、ジアミド化合物は20.85%であった。
【0257】
これにより、製造例12の方法は、化合物Aの大量製造のための方法としては不十分である可能性が示唆された。
【0258】
[製造例13]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(2.5mL)を反応容器に入れ、リン酸カリウム(343.8mg)を加えた。そこに、塩化アクリロイル(146.6mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、氷冷下60分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であることを確認したが、ジアミド化合物は44.23%であった。
【0259】
これにより、製造例13の方法は、化合物Aの大量製造のための方法としては不十分である可能性が示唆された。
【0260】
[製造例14]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(2.5mL)を反応容器に入れ、ジイソプロピルエチルアミン(406.2mg)を加えた。そこに、塩化アクリロイル(171mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、氷冷下60分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の0.1%未満であったが、ジアミド化合物は2.04%であった。このとき、様々な再結晶を検討したが、化合物Aに含まれるジアミド化合物の含有量を0.1%未満にすることができなかった。
【0261】
これにより、製造例14の方法は、産物の品質の観点で医薬品の製造方法としては不十分である可能性が示された。
【0262】
[製造例15]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、炭酸カリウム(620.6mg)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(205.2mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であったが、3CPジアミド化合物は3.41%であった。
【0263】
これにより、製造例15の方法は、産物の品質の観点で医薬品の製造方法としては不十分である可能性が示唆された。
【0264】
[製造例16]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、リン酸カリウム(343.1mg)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(205.2mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であったが、3CPジアミド化合物は6.58%であった。
【0265】
これにより、製造例16の方法は、産物の品質の観点で医薬品の製造方法としては不十分である可能性が示唆された。
【0266】
[製造例17]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、トリエチルアミン(318.0mg)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(171.0mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であったが、3CPジアミド化合物は1.68%であり、他の多くの種類の類縁物質も検出された。
【0267】
これにより、製造例17の方法は、産物の品質の観点で医薬品の製造方法としては不十分である可能性が示唆された。
【0268】
[製造例18]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、ピリジン(3551.6mg)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(205.2mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)したところ、化合物Bのピーク面積が43.72%であり、反応が十分に進行しなかった。
【0269】
これにより、製造例18の方法は、化合物Aの大量製造のための方法としては不十分である可能性が示された。
【0270】
[製造例19]
(S)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1−(ピロリジン−3−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン・2メタンスルホン酸塩(500mg)、水(3.5mL)、及びアセトニトリル(3.5mL)を反応容器に入れ、カリウムtert−ブトキシド(503.8mg)を加えた。そこに、3−クロロプロピオニルクロリド(205.2mg)をアセトニトリル(1mL)で希釈した溶液を加え、20〜30℃の間で30分間撹拌した。反応液を一部分取しこれをHPLCにて測定(条件2)し、化合物Bのピーク面積が全ピーク面積の1.0%未満であったが、3CPジアミド化合物は4.66%であった。
【0271】
これにより、製造例19の方法は、産物の品質の観点で医薬品の製造方法としては不十分である可能性が示唆された。
【0272】
以下に、化合物Bの2メタンスルホン酸塩から、L2が塩素原子である一般式(A−1)で表される化合物の製造結果を下記表にまとめた。
【0273】
【表7】
【0274】
なお、塩基当量の(酸付加塩差引後)と記載してあるのは、化合物Bの2メタンスルホン酸塩の酸付加されているメタンスルホン酸の中和に要した塩基の当量数を差し引いた値である。また、「N.D.」は検出限界以下であること、「N.A.」は測定していないことをそれぞれ示す。
【0275】
この結果より、化合物Bを1当量に対して、3−クロロプロピオニルクロリドの当量を1.1当量とすることで、化合物Aにジアミドが混入する可能性が小さいことが分かった。さらに、塩基として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いた場合、化合物Bを1当量に対して、3−クロロプロピオニルクロリドの当量を1.8当量としても、化合物Aにジアミドが混入する可能性が小さいことが分かった。
【0276】
[試験例1]分離度の確認
特許文献4の実施例1に記載の方法により、製造例4、5、及び6で得られた化合物Aを結晶化した。この際に濾取した濾液を質量スペクトル及びHPLCで分析することにより、CE化合物(保持時間18.3分)、OH化合物(保持時間23.1分)、CDA1化合物(保持時間24.7分)、CHO化合物(保持時間27.3分)、ジアミド化合物(保持時間47.9分)、UK化合物(保持時間48.5分)、MA化合物(保持時間55.9分)、Dimer化合物(保持時間58.6分)を検出した。また、CDA1化合物及びジアミド化合物は、別途合成したこれらの化合物とそれぞれHPLC分析における保持時間が一致した。なお、当該HPLCの分析条件は以下の通りである。
【0277】
検出器:紫外吸光光度計(波長:220nm)
カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した(InertSustainC18、GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
注入量:10μL
流速:1.0mL/分
移動相A:水1000mLにリン酸0.685mLを加えた後に45%水酸化カリウム溶液を加えることでpH6.8に調整したリン酸塩緩衝液950mLに、アセトニトリル50mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0278】
【表8】
【0279】
これにより、化合物Aの製造中間体である化合物B、及びA−1−3CP化合物以外にも、CE化合物、OH化合物、CDA1化合物、CHO化合物、ジアミド化合物、UK化合物、MA化合物、Dimer化合物は、化合物Aの原薬及び/又は製剤に含まれうる類縁物質であることが示された。併せて、これらの化合物は、化合物Aの品質を維持するための標準品として使用できる可能性が示された。
【0280】
[製造実施例1](S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(OH化合物)の合成
製造例1で得られた化合物B・2メタンスルホン酸塩(1.004g)をDMSO(25mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(3.610mL)を室温下で加えた。得られた溶液中に3−ヒドロキシプロパン酸(30%水溶液、1.50mL)及びDMT−MM・1水和物(1.067g)を室温で加え、1時間撹拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮を行って得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(バイオタージ SNAP Ultra HP−Sphere、50g及び SNAP Isolute Flash−NH,110g、溶出液:クロロホルム/メタノール)で精製し、表題化合物を得た。
【0281】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6) δ 8.26(1H,d,J= 3.4 Hz),7.97(1H, brs),6.91(2H,d,J= 2.4 Hz),6.76(1H,brs),6.60(1H,t,J= 2.4 Hz),5.45(1H,m),4.52(1H,dt,J= 5.4,17.6 Hz),4.05−3.80(1H,m),3.80−3.62(4H,m),3.78(6H,s),3.62−3.47(1H,m),2.52−2.27(5H,m).m/z 473.3 [M+H]+.
【0282】
[製造実施例2](S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−カルバルデヒド(CHO化合物)の合成
製造例1で得られた化合物B・2メタンスルホン酸塩(520.4mg)をDMSO(10mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(1.870mL)を室温で加えた。得られた溶液にギ酸(42.35μL)及びDMT−MM・1水和物(412.8mg)を室温で加え、20分間撹拌した。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮を行って得られた残渣に酢酸エチルを加えて、表題化合物を溶液から沈殿させた。生じた固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄後、65℃で減圧乾燥して、CHO化合物(239.0mg)を得た。
【0283】
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ 8.37(1H,s),8.30(1H,d,J= 9.5 Hz),6.76−6.72(2H,m),6.56−6.52(1H,m),5.92(2H,brs),5.62−5.45(1H,m),4.09−3.97(2H,m),3.94−3.63(2H,m),3.82(6H,s),2.71−2.41(2H,m).
m/z 393.3 [M+H]+.
【0284】
[製造実施例3]1,3−ビス((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オン(MA化合物)の合成
製造例1で得られた化合物B・2メタンスルホン酸塩(100.4mg)に、50% アセトニトリル水溶液(4mL)を加えて溶解させ、1M水酸化ナトリウム水溶液(360.7mg)を室温で加えた。得られた懸濁液に、特許文献1に記載の化合物A(75.4mg)及びDBU(26.9μL)を加え、80℃で11時間撹拌後、加熱を止めて、室温に戻るまでさらに撹拌した。析出した固体を濾取し、50% アセトニトリル水溶液で洗浄後、65℃で減圧乾燥して、表題化合物の粗精製物を得た。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(バイオタージ SNAP Isolute Flash−NH,25g、溶出液:酢酸エチル/メタノール)で精製し、MA化合物(109.1mg)を得た。1H−NMR(400 MHz,CDCl3) δ 8.42−8.29(2H,m),6.81−6.64(2H,m),6.52(2H,s),6.18−5.90(4H,m),5.61−5.41(1H,m),4.08−3.59(4H,m),3.81(12H,s),3.17(1H,dt,J= 9.0,23.6 Hz),3.08−2.78(5H,m),2.71−2.30(6H,m). m/z 783.5 [M+H]+.
【0285】
[製造実施例4](S)−3−((1−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−6−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)プロパン酸(CE化合物)の合成
特許文献1に記載の化合物A(502.0mg)をDMF(10mL)に溶解し、氷冷下で60%水素化ナトリウム(流動パラフィンに分散させた粉末、60.3mg)加えて10分間撹拌した。3−ブロモプロパン酸tert−ブチルエステル(220.2μL)を氷冷下加えて15分間撹拌後、室温に昇温して20時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(バイオタージ SNAP Ultra HP−Sphere、50 g、溶出液:酢酸エチル/メタノール)で精製し、tert−ブチル(S)−3−((1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)プロパノエート(表題化合物のtert−ブチルエステル保護体、510.0mg)を得た。
【0286】
上記で得られたtert−ブチルエステル保護体(510.0mg)をギ酸(8 mL)に溶解し、室温で20時間、続いて50℃で3時間撹拌を行った。反応液を減圧濃縮して得られた残渣にメタノールを加え表題化合物を溶液から析出させた。析出固体を濾取し、少量のメタノールで洗浄後、65℃で減圧乾燥し、CE化合物(342.3mg)を得た。
【0287】
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ 8.35(1H,d,J= 7.3 Hz),6.84(2H,t,J=2.4 Hz),6.84−6.75(1H,m),6.53−6.36(3H,m),5.74−5.66(1H,m),5.55−5.40(1H,m),4.10−3.85(5H,m),3.82−3.68(1H,m),3.79(6H,s),2.79−2.72(2H,m),2.64−2.32(2H,m). m/z 491.3 [M+H]+.
【0288】
[製造実施例5]1−((S)−3−(4−((3−((S)−3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)−3−オキソプロピル)アミノ)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)ピロリジン−1−イル)プロパ−2−エン−1−オン(Dimer化合物)の合成
製造例1で得られた化合物Bの2メシル酸塩(2.751g)を50%アセトニトリル水溶液に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液に滴下した。得られた懸濁液をクロロホルムで抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮を行い、製造例4で得られた化合物Bの脱塩体(1.753g)を得た。
【0289】
上記で得られた脱塩体(268.2mg)と製造実施例104で得られたCE化合物(301.0mg)をDMSO(15mL)と水(1.5mL)の混合溶媒に溶解させ、DMT−MM・1水和物(274.4mg)を加え、室温で2時間、続いて50℃で1時間撹拌した。DMT−MM・1水和物(38.5 mg)を追加し、50℃でさらに1時間撹拌後、室温に冷却した。反応液に水を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し手得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Biotage,SNAP Ultra HP−Sphere,110g、溶出液:クロロホルム/メタノール)で精製し、Dimer化合物(360.7mg)を得た。
【0290】
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ 8.38−8.27(2H,m),7.30−7.13(1H,m),7.08(1H,dd,J= 2.2,7.8 Hz),7.03(1H,d,J= 2.2 Hz),6.71(1H,d,J= 2.4 Hz),6.70(1H,dd,J= 2.2,5.1 Hz),6.56−6.47(2H,m),6.45−6.36(2H,m),6.00−5.87(2H,m),5.74−5.65(1H,m),5.58−5.43(2H,m),4.17−3.56(10H,m),3.86−3.75(12H,m),2.75−2.31(6H,m). m/z 837.6 [M+H]+.
【0291】
[製造実施例6](S)−8−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−10−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−3,4−ジヒドロピラゾロ[4,3−e]ピリミド[1,2−c]ピリミジン−2(8H)−オン(CDA1化合物)の合成
特許文献1に記載の化合物A(500.1mg)をクロロホルム(10mL)に溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(358.9mg)とアクリル酸クロリド(234.0μL)を加え、室温で2時間撹拌を行った。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Biotage,SNAP Ultra HP−Sphere,50g、溶出液:クロロホルム/メタノール)で精製し、CDA1化合物(232.8 mg)を得た。
【0292】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6) δ 8.41(1H,d,J= 2.0 Hz),6.82(2H,d,J= 2.4 Hz),6.61(1H,ddd,J= 10.2,17.0,37.1 Hz),6.58(1H,t,J= 2.4 Hz),6.16(1H,ddd,J= 2.4,6.3,17.0 Hz),5.69(1H,ddd,J= 2.4,10.2,16.1 Hz),5.56−5.42(1H,m),4.36(2H,t,J= 7.3 Hz),4.14−3.92(1H,m),3.96−3.73(1H,m),3.86−3.57(1H,m),3.78(6H,s),2.64(2H,t,J= 7.3 Hz),2.56−2.23(2H,m). m/z 473.3 [M+H]+.
【0293】
[製造実施例7](S)−N−(1―(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)アクリルアミド(ジアミド化合物)の合成
特許文献1に記載の化合物A(3.000g)をDMF(50mL)に溶解し、室温で撹拌下、60%水素化ナトリウム(流動パラフィンに分散させた粉末、440.0 mg)加えて5分間撹拌した。3−クロロプロパン酸クロリド(1.40mL)を加え、室温で20分間撹拌した。得られたゲル状の反応液にゲル状態が解消されるまで飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行った。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮を行って得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(Biotage,SNAP Ultra HP−Sphere,100g、溶出液:酢酸エチル/メタノール)で精製し、ジアミド化合物(374.3mg)を得た。
【0294】
1H−NMR(400 MHz,CDCl3) δ 8.84(1H,s),8.72(1H,s),7.43−7.31(1H,m),6.85(2H,d,J= 2.4 Hz),6.75−6.34(3H,m),6.56(1H,q,J= 2.4 Hz),5.96(1H,ddd,J= 1.2,4.1,10.5 Hz),5.77−5.69(1H,m),5.67−5.56(1H,m),4.48−3.74(4H,m),3.84(6H,s),2.75−2.42(2H,m). m/z 473.3 [M+H]+.
【0295】
[製造実施例8](S)−1−(1−アクリロイルピロリジン−3−イル)−5−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(UK化合物)の抽出
特許文献4の実施例1に記載の方法により、製造例4、5、又は6で得られた化合物Aを結晶化して濾取した際の濾液(40mL)にクロロホルム(40mL)を加えて2回抽出を行った。抽出液を合わせて減圧濃縮を行い、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Biotage,SNAP Isolute Flash−NH,11g、溶出液:酢酸エチル/メタノール)及びシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(Merck,Cat.No.1.05744、展開溶媒:クロロホルム/メタノール)で精製を行い、UK化合物(2.5mg)を得た。
【0296】
1H−NMR(400 MHz,CDCl3) δ 6.75−6.71(2H,m),6.53−6.43(2H,m),6.42−6.35(1H,m),5.78−5.70(1H,m),4.80−4.60(1H,m),4.73(2H,s),4.07−3.86(2H,m),3.86−3.60(2H,m),3.80(6H,s),2.78−2.27(2H,m). m/z 392.3 [M+H]+.
【0297】
[実施例1]液体クロマトグラフィーによる化合物Aの分析
【0298】
以下に示した試験条件によりHPLCの測定を行った。なお、HPLCの測定に用いた化合物Aの溶液は、製造例4、5、又は6で得られた化合物A(20mg:製剤を用いてもよい)に水/アセトニトリル混液(1:1)50mLを加えて溶解させた後、CE化合物、OH化合物、MA化合物、Dimer化合物及びCHO化合物をそれぞれ1mgずつ量り,水/アセトニトリル混液(1:1)50mLに溶かした溶液2mLを添加し,水/アセトニトリル混液(1:1)をさらに加えて、正確に100mLとすることにより調製した。
【0299】
[条件(実施例1)]
検出器:紫外吸光光度計(波長:220nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した(InertSustainC18HP、GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
注入量:10μL
流速:1.0mL/分
移動相A:リン酸二水素カリウム2.04gを水1500mLに溶かし,水酸化カリウム試液,8 mol/Lを加えてpH6.6に調整した後、アセトニトリル500mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0300】
【表9】
【0301】
測定結果を図1に示す。本測定方法により、化合物Aの保持時間が約18.9分に確認された。また、CE化合物の保持時間が約8.7分,OH化合物の保持時間が約12.6分、MA化合物の保持時間が約24.1分、Dimer化合物の保持時間が約27.3分、CHO化合物の保持時間が約15.2分に確認された。
【0302】
さらに、これらの類縁物質と化合物Aの各ピーク間の分離度を評価した結果を表10に記載した。
【0303】
【表10】
【0304】
表中の「分離度」には、分離度を比較した保持時間の遅い方の化合物欄に、対象ピーク間の分離度を記載した。例えば、OH化合物の「分離度」の欄には、保持時間の遅いOH化合物と保持時間の早いCE化合物との分離度を記載し、CHO化合物の「分離度」の欄には、保持時間の遅いCHO化合物と保持時間の早いOH化合物との分離度を記載した。
【0305】
これより,いずれのピークにおいても分離度が1.5以上であり、ピーク間が完全分離していることを確認した.そのため、実施例1に記載のHPLCの条件は、化合物Aの品質の管理することができることを確認した。
【0306】
[実施例2]液体クロマトグラフィーによる化合物Aの分析
以下に示した試験条件によりHPLCの測定を行った。なお、HPLCの測定に用いた化合物Aの溶液は、実施例1と同様である。
【0307】
[条件(実施例2)]
検出器:紫外吸光光度計(波長:220nm)
カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する(InertSustainC18HP,GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
流速:1.0mL/分
移動相A:リン酸二水素カリウム2.04gを水1500mLに溶かし,水酸化カリウム試液,8 mol/Lを加えてpH6.6に調整した後、アセトニトリル500mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0308】
【表11】
【0309】
本測定方法により、化合物Aの保持時間が約18.7分に確認された.他の類縁物質は、実施例1と同様の保持時間を示した.これにより,化合物Aを含むいずれの各類縁物質をそれぞれ分離できる測定条件であることを確認した。
【0310】
[実施例3]液体クロマトグラフィーによる化合物Aの分析
以下に示した試験条件によりHPLCの測定を行った。なお、HPLCの測定に用いた化合物Aの溶液は、実施例1と同様である。
【0311】
[条件(実施例3)]
検出器:紫外吸光光度計(波長:220nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した(InertSustainC18HP、GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
流量:1.0mL/分
移動相A:リン酸二水素カリウム2.04gを水1500mLに溶かし、水酸化カリウム試液、8 mol/Lを加えてpH6.6に調整した後。アセトニトリル500mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0312】
【表12】
【0313】
本測定方法により、化合物Aの保持時間が約18.1分に確認された.また,CE化合物の保持時間が約8.5分,OH化合物の保持時間が約12.3分,MA化合物の保持時間が約22.6分,Dimer化合物の保持時間が約25.4分,CHO化合物の保持時間が約14.7分に確認された.これにより,化合物Aを含むいずれの各類縁物質をそれぞれ分離できる測定条件であることを確認した。
【0314】
[実施例4]液体クロマトグラフィーによる化合物Aの分析
以下に示した試験条件によりHPLCの測定を行った。なお、HPLCの測定に用いた化合物Aの溶液は、実施例1と同様である。
【0315】
[条件(実施例4)]
検出器:紫外吸光光度計(波長:220nm)
カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した(InertSustainC18HP,GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
流量:1.0mL/分
移動相A:リン酸二水素カリウム2.04gを水1500mLに溶かし、水酸化カリウム試液,8 mol/Lを加えてpH6.6に調整した後、アセトニトリル500mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0316】
【表13】
【0317】
本測定方法により、化合物Aの保持時間が約18.1分に確認された.また,CE化合物の保持時間が約8.5分,OH化合物の保持時間が約12.3分,MA化合物の保持時間が約22.6分,Dimer化合物の保持時間が約25.4分,CHO化合物の保持時間が約14.7分に確認された。これにより,化合物Aを含むいずれの各類縁物質をそれぞれ分離できる測定条件であることを確認した。
[実施例5]液体クロマトグラフィーによる化合物Aの分析
以下に示した試験条件によりHPLCの測定を行った。なお、以下に記載のHPLCの測定条件以外は、実施例4と同様である。
【0318】
[条件(実施例5)]
移動相A: リン酸二水素カリウム2.72gを水1800mLに溶かし、水酸化ナトリウム試液,0.2 mol/Lを加えてpH6.6に調整した後、この液1500mLにアセトニトリル500mLを加えた。
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0319】
【表14】
【0320】
本測定方法により、化合物Aの保持時間が約19.9分に確認された.また,CE化合物の保持時間が約8.3分,OH化合物の保持時間が約12.2分,MA化合物の保持時間が約30.2分,Dimer化合物の保持時間が約35.1分,CHO化合物の保持時間が約14.9分に確認された。これにより,化合物Aを含むいずれの各類縁物質をそれぞれ分離できる測定条件であることを確認した。
【0321】
[実施例6]液体クロマトグラフィーによる化合物Aの分析
【0322】
以下に示した試験条件によりHPLCの測定を行った。なお、HPLCの測定に用いた化合物Aの溶液は、実施例1と同様である.
【0323】
[条件(実施例6)]
検出器:紫外吸光光度計(波長:220nm)
カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した(InertSustainC18HP,GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
流量:1.0mL/分
移動相A:リン酸二水素カリウム2.04gを水1500mLに溶かし、水酸化カリウム試液、8 mol/Lを加えてpH6.6に調整した後,アセトニトリル500mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0324】
【表15】
【0325】
これにより、化合物Aの保持時間が約19.8分に確認された。また,各種類縁物質同士の分離は良好であった.これにより,化合物Aを含むいずれの各類縁物質をそれぞれ分離できる測定条件であることを確認した。
【0326】
[試験例2]分離度の確認
実施例1のpH6.8の条件下、他の条件は変更せずにpHを6.3、6.6、7.0、7.3に変更して、化合物Bの挙動を確認した。結果を表16に示す。
【0327】
【表16】
【0328】
分離度を比較した保持時間の遅い方の化合物欄に,対象ピーク間の分離度を記載した。なお、「−」で記載した箇所は、CE化合物と化合物Bのピークが重なり,分離度が算出されなかった。これにより、仮に化合物Bが化合物Aの原薬又は製剤に含まれていた際には、pH7.0以外は、化合物Aを測定するHPLC条件として許容されるものであった。
図1
【国際調査報告】