【実施例】
【0033】
<実施例1>
酸化チタン(TiO
2)粉末100.0g、酸化ニオブ(Nb
2O
5)粉末355.3g、炭酸カリウム(K
2CO
3)粉末0.6g、及びアルミナ(Al
2O
3)粉末2.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0034】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0035】
<実施例2>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末349.2g、炭酸カリウム粉末0.9g、及びアルミナ粉末1.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0036】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0037】
<実施例3>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末359.7g、炭酸カリウム粉末1.4g、及びアルミナ粉末2.4gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0038】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0039】
<実施例4>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末348.2g、炭酸カリウム粉末1.4gに、塩化アルミ(AlCl
3)粉末7.6gを溶解させたエタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0040】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0041】
<実施例5>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末352.6g、炭酸カリウム粉末1.6g、及びアルミナ粉末2.7gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0042】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0043】
<実施例6>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末353.9g、炭酸カリウム粉末2.4g、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)粉末0.2g、及びアルミナ粉末2.8gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0044】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0045】
<実施例7>
不純物としてカリウム(K)を含有している酸化チタン粉末100.3g、酸化ニオブ粉末340.3g、及びイットリア(Y
2O
3)粉末1.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0046】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0047】
<実施例8>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末341.7g、炭酸カリウム粉末0.8g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末1.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0048】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0049】
<実施例9>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末338.1g、炭酸カリウム粉末1.3g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末1.2gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0050】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0051】
<実施例10>
酸化チタン粉末100.0g、不純物としてカリウム及びナトリウム(Na)を含有している酸化ニオブ粉末343.8g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末0.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0052】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0053】
<実施例11>
酸化チタン粉末100.0g、不純物としてカリウム及びナトリウムを含有している酸化ニオブ粉末367.7g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末5.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0054】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0055】
<実施例12>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末341.4g、炭酸カリウム粉末0.5g、及びアルミナ粉末0.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0056】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0057】
<実施例13>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末350.5g、炭酸カリウム粉末1.5g、及びアルミナ粉末4.8gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0058】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0059】
<実施例14>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末346.9g、炭酸カリウム粉末0.8g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化ランタン(La
2O
3)粉末1.2gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0060】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0061】
<実施例15>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末344.4g、炭酸カリウム粉末1.4g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化ランタン粉末3.6gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0062】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0063】
<実施例16>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末348.3g、炭酸カリウム粉末1.8g、及び酸化ランタン粉末7.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0064】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0065】
<実施例17>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末347.8g、炭酸カリウム粉末2.1g、及び酸化ランタン粉末8.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0066】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0067】
<実施例18>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末339.5g、炭酸カリウム粉末1.1g、アルミナ粉末0.1g、炭酸ナトリウム粉末0.1g、及び酸化ランタン粉末12.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0068】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0069】
<実施例19>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末347.0g、炭酸カリウム粉末1.1g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化ランタン粉末15.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0070】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0071】
<実施例20>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末345.6g、炭酸カリウム粉末0.8g、炭酸ナトリウム粉末0.2g、イットリア粉末1.9g、及び酸化ランタン粉末2.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0072】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0073】
<実施例21>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末349.6g、炭酸カリウム粉末2.7g、アルミナ粉末0.5g、イットリア粉末1.6g、及び酸化ランタン粉末2.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0074】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0075】
<実施例22>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末339.3g、炭酸カリウム粉末1.6g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化セリウム(CeO
2)粉末2.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0076】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0077】
<実施例23>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末349.7g、炭酸カリウム粉末2.0g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化セリウム粉末3.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0078】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0079】
<実施例24>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末344.1g、炭酸カリウム粉末1.0g、アルミナ粉末0.1g、炭酸ナトリウム粉末0.2g、及び酸化セリウム粉末0.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0080】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0081】
<実施例25>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末343.7g、炭酸カリウム粉末2.1g、及び酸化プラセオジム(Pr
2O
3)粉末0.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0082】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0083】
<実施例26>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末343.3g、炭酸カリウム粉末1.1g、炭酸ナトリウム粉末0.3g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化プラセオジム粉末1.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0084】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0085】
<実施例27>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末342.6g、炭酸カリウム粉末0.9g、炭酸ナトリウム粉末0.3g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化プラセオジム粉末0.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0086】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0087】
<実施例28>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末347.0g、炭酸カリウム粉末1.0g、及び酸化サマリウム(Sm
2O
3)粉末2.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0088】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0089】
<実施例29>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末352.0g、炭酸カリウム粉末1.2g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化サマリウム粉末4.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0090】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0091】
<実施例30>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末346.8g、炭酸カリウム粉末2.0g、及び酸化サマリウム粉末10.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0092】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0093】
<比較例1>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末344.4g、炭酸カリウム粉末1.5g、及びアルミナ粉末0.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0094】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0095】
<比較例2>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末342.4g、炭酸カリウム粉末2.9g、及びアルミナ粉末5.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0096】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0097】
<比較例3>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末332.4g、炭酸カリウム粉末2.7g、アルミナ粉末0.4g、及びイットリア粉末4.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0098】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0099】
<分析装置>
実施例1〜30及び比較例1〜3のチタンニオブ複合酸化物の分析に使用した分析装置は、下記の通りである。
X線回折装置:株式会社リガク、Ultima4、Cu−Kα線による測定
蛍光X線分析装置:株式会社リガク、ZSX PrimusIII+
走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社、JSM−6510
【0100】
<分析結果>
実施例1〜13及び比較例1〜3のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Aに示す。実施例14〜19のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Bに示す。実施例20〜21のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Cに示す。実施例22〜24のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Dに示す。実施例25〜27のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Eに示す。実施例28〜30のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Fに示す。なお、
図1A〜
図1F中の「0.000」は、小数第4位を四捨五入にして得られた数値であるため、完全な零を意味しているのではない。また、実施例7、実施例11、及び実施例14〜実施例30では100個の測定中にLが3μm以上の一次粒子は零であったが、母集団で長軸長(L)が3μm以上の一次粒子は完全に零と断言することはできず、正規分布から長軸長(L)が3μm以上の一次粒子は確率的に零に近いと言えるに過ぎない。すなわち、
図1A〜
図1F中の「0.0%」は、完全な零を意味しているのではない。
【0101】
各チタンニオブ複合酸化物のTi、Nb、K、Na、総アルカリ金属、Al、Y、La、Ce、Pr、Smの原子%は、蛍光X線分析装置の分析結果から求めた。各チタンニオブ複合酸化物の各原子量比であるAl/(Ti+Nb)、Y/(Ti+Nb)、La/(Ti+Nb)、Ce/(Ti+Nb)、Pr/(Ti+Nb)、Sm/(Ti+Nb)、(Al+Y+La+Ce+Pr+Sm)/(Ti+Nb)は、上述した原子%から求めた。
【0102】
各チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の形状は、走査型電子顕微鏡による観察結果から求めた。チタンニオブ複合酸化物のSEM画像の例を
図2及び
図3に示す。
図2は実施例3のチタンニオブ複合酸化物のSEM画像であり、
図3は比較例1のチタンニオブ複合酸化物のSEM画像である。
【0103】
各チタンニオブ複合酸化物のSEM画像(倍率2万倍)を横方向にスキャンさせ、横方向に平行な1本の線上に位置する一次粒子の長軸長(L)と短軸長(D)を各チタンニオブ複合酸化物について順次100個測定した。なお、測定の際には、一次粒子の大きさに応じて倍率を最大4万倍まで変更し、一次粒子の向きに応じて試料台の角度を変更した。
【0104】
一次粒子の形状を円柱状とみなして、長軸長(L)及び短軸長(D)を測定した各一次粒子の体積を求めた。すなわち、長軸長(L)を円柱の高さとみなし、短軸長(D)を円柱の直径とみなした。
【0105】
そして、一次粒子の個数ではなく一次粒子の体積を基準として、100個の一次粒子の測定値から母集団(チタンニオブ複合酸化物全体)の長軸長(L)の分布を推定した。チタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布の推定結果の例を
図4及び
図5に示す。
図4は実施例3のチタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布であり、
図5は比較例1のチタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布である。
図1A〜
図1Fでは、長軸長(L)が3μm以上である一次粒子の体積基準での割合を記載している。
【0106】
また、一次粒子の個数ではなく一次粒子の体積を基準として、100個の一次粒子の測定値から母集団(チタンニオブ複合酸化物全体)のアスペクト比(L/D)の分布を推定した。チタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布の例を
図6及び
図7に示す。
図6は実施例3のチタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布であり、
図7は比較例1のチタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布である。
図1A〜
図1Fでは、アスペクト比(L/D)が3以上である一次粒子の体積基準での割合を記載している。
【0107】
上述した分析方法では、一次粒子の形状を円柱状とみなしたが、一次粒子の形状を底面が正方形である四角柱状とみなしても同じ推定結果が得られる。
【0108】
図1A〜
図1Fでは、実施例1〜30及び比較例1〜3の各チタンニオブ複合酸化物のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲、24.8°〜25.1°の範囲、27.2°〜27.6°の範囲それぞれでピークが有れば、それらのピークの強度(相対値)を記載している。回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークは、目的とする生成物であるTiNb
2O
7の結晶に起因するピークである。回折角2θが24.8°〜25.1°の範囲のピークは、Ti
2Nb
10O
29の結晶に起因するピークである。回折角2θが27.2°〜27.6°の範囲のピークは、ルチル型のTiO
2の結晶に起因するピークである。
【0109】
また、
図1A〜
図1Fでは、回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが24.8°〜25.1°の範囲のピークの強度の比、及び、回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°〜27.6°の範囲のピークの強度の比を百分率で記載している。
【0110】
また、
図1A〜
図1Fでは、回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークの半値幅も記載している。回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークの半値幅が小さいほど、目的とする生成物であるTiNb
2O
7の結晶が良質である。
【0111】
実施例1〜30の各チタンニオブ複合酸化物では、アスペクト比(L/D)が3以上である一次粒子の体積基準での割合が11体積%以下、より厳密には10.8体積%以下である。一方、比較例1〜3の各チタンニオブ複合酸化物では、アスペクト比(L/D)が3以上である一次粒子の体積基準での割合が16体積%以上、より厳密には16.7%以上である。つまり、実施例1〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、比較例1〜3の各チタンニオブ複合酸化物と比較して、一次粒子の繊維状粒成長が抑制されている。
【0112】
実施例1〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素を0.30原子%より少なく含み、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比が0.001以上であるという構成であるのに対し、比較例1〜3の各チタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。なお、アルカリ金属元素は0.05原子%以上0.28原子%以下であることが好ましい。
【0113】
比較例1のチタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比が小さ過ぎるため、一次粒子の繊維状粒成長を十分に抑制できておらず、その結果として実施例1〜30の各チタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子のアスペクト比(L/D)が大きくなる傾向を特性として有すると考えられる。比較例2及び比較例3の各チタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素の含有量が多過ぎるため、一次粒子の繊維状粒成長を十分に抑制できておらず、その結果として実施例1〜30の各チタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子のアスペクト比(L/D)が大きくなる傾向を特性として有すると考えられる。
【0114】
実施例1〜11,13〜30の各チタンニオブ複合酸化物では、長軸長(L)が3μm以上である一次粒子の体積基準での割合が5体積%以下、より厳密には4.0体積%以下である。一方、実施例12のチタンニオブ複合酸化物では、長軸長(L)が3μm以上である一次粒子の体積基準での割合が10体積%以上、より厳密には10.8体積%以上である。つまり、実施例1〜11,13〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、実施例12のチタンニオブ複合酸化物と比較して、一次粒子の成長が抑制されている。
【0115】
実施例1〜11,13〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比が0.002以上であるという構成であるのに対し、実施例12のチタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。
【0116】
実施例1〜11,13〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、実施例12のチタンニオブ複合酸化物よりもTi及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比が大きいため、実施例12のチタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子の成長を抑制でき、その結果として実施例12のチタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子の長軸長(L)が小さくなる傾向を特性として有すると考えられる。
【0117】
実施例1〜11、14〜17、20〜30の各チタンニオブ複合酸化物では、回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°〜27.6°の範囲のピークの強度の比が7%以下、より厳密には6.8%以下である。一方、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物では、回折角2θが26.2°〜26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°〜27.6°の範囲のピークの強度の比が8%以上、より厳密には8.5%以上である。つまり、実施例1〜11、14〜17、20〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物と比較して、TiO
2の混在が抑制されている。
【0118】
実施例1〜11、14〜17、20〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比が0.020より小さいという構成であるのに対し、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。なお、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比は0.020より小さい、より厳密には0.018以下であることが好ましい。
【0119】
実施例1〜11、14〜17、20〜30の各チタンニオブ複合酸化物は、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物とは異なり、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比が大き過ぎないため、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物よりもTiO
2の混在を抑制できると考えられる。
【0120】
実施例7〜11の各チタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子量に対するYの総原子量の比が0.001以上0.011以下という構成であるのに対し、実施例13のチタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。
【0121】
実施例7〜11の各チタンニオブ複合酸化物は、Yの含有量が多過ぎず、Ti及びNbの総原子量に対するYの総原子量の比が適切な範囲内であるため、Alの含有量が多過ぎる実施例13のチタンニオブ複合酸化物よりもTiO
2の混在を抑制できると考えられる。
【0122】
<リチウムイオン二次電池への応用>
例えば、活物質として実施例1〜30いずれかのチタンニオブ複合酸化物を用いて電極を作製すればよい。具体例としては、まず、ポリフッ化ビニリデン10重量部をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、次に導電助剤として導電性カーボンを10重量部、実施例1〜13いずれかのチタンニオブ複合酸化物100重量部を加え、自転公転攪拌機にて混錬することにより塗料を作成すればよい。そして、この塗料をアルミ箔上に塗布し、その後120℃で真空乾燥しプレスした後、円形状に打ち抜けばよい。
【0123】
上記で作製した電極を用い、例えば
図8に示す2032型コインセル1を組み立てればよい。
図8に示す2032型コインセル1は、リチウムイオン二次電池の一例である。2032型コインセル1は、上ケース6aと下ケース6bとの間に、電極2、対極3、非水電解質4、及びセパレータ5を挟み込み、上ケース6aと下ケース6bの周囲をガスケット7で封止して作製される。
【0124】
対極3には例えば金属リチウム箔を用いればよい。非水電解質4には例えばエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート1:1v/v%にLiPF
6を1mol/L溶解したものを用いればよい。セパレータ5には例えばポリプロピレン多孔膜を用いればよい。
【0125】
なお、電極活物質の少なくとも一部が本発明に係るチタンニオブ複合酸化物である電極は、リチウムイオン二次電池の正極として用いてもよく、リチウムイオン二次電池の負極として用いてもよい。
【0126】
<その他>
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0127】
例えば、上述した実施例では、チタンニオブ複合酸化物に含まれるアルカリ金属元素は、K、Naであったが、Li等の他のアルカリ金属元素であってもよい。Li等の他のアルカリ金属元素は、K及びNaを含有していないチタンニオブ複合酸化物に含まれていてもよく、Kとともにチタンニオブ複合酸化物に含まれていてもよく、Naとともにチタンニオブ複合酸化物に含まれていてもよい。また、実施例18と実施例19とを比較すると、アルカリ金属元素が1種類である構成とアルカリ金属元素が2種類である構成とにおいて、アルカリ金属元素の含有量に大差がなく、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比に大差がなければ、TiO
2やTi
2Nb
10O
29の混在及び結晶粒の成長を抑制する効果が同程度であると考えられる。このことから、例えば実施例1〜30それぞれに対して、アルカリ金属元素の含有量を略変化させず、Ti及びNbの総原子量に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子量の比を変化させず、アルカリ金属元素の種類数を変化させた場合、実施例1〜30それぞれと比較して、TiO
2やTi
2Nb
10O
29の混在及び結晶粒の成長を抑制する効果が同程度であると考えられる。
【0128】
例えば、上述した実施例では、チタンニオブ複合酸化物の表面の一部が炭素材料で被覆されていなかったが、チタンニオブ複合酸化物の表面の一部が炭素材料で被覆されていてもよい。
【0129】
ここで、表面の一部が炭素材料で被覆されているチタンニオブ複合酸化物の製造方法例について説明する。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)が13重量%となるように、実施例1〜30いずれかのチタンニオブ複合酸化物にPVA水溶液を加えた後、ボールミルを用いて粉砕、混合を行った後、スプレードライヤーにて乾燥させる。その後、得られた乾燥品を窒素雰囲気下で熱処理(処理温度:800℃,処理時間:4時間)する。これにより、表面の一部が炭素材料で被覆されているチタンニオブ複合酸化物を得ることができる。