特表2015-501263(P2015-501263A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-501263カートリッジ及びその製造方法並びに多成分カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-501263(P2015-501263A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】カートリッジ及びその製造方法並びに多成分カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20141212BHJP
   B05C 17/01 20060101ALI20141212BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20141212BHJP
   B05C 5/00 20060101ALN20141212BHJP
【FI】
   B65D83/00 D
   B05C17/01
   B65D81/32 U
   B05C5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-536154(P2014-536154)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(85)【翻訳文提出日】2014年4月16日
(86)【国際出願番号】EP2012066190
(87)【国際公開番号】WO2013056872
(87)【国際公開日】20130425
(31)【優先権主張番号】11185380.0
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】508105773
【氏名又は名称】スルザー ミックスパック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エトリン、ヨゼフ
【テーマコード(参考)】
3E014
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3E014KA05
3E014KA08
4F041AA08
4F041AB01
4F041CB05
4F041CB54
4F042AA16
4F042FA30
4F042FA36
(57)【要約】
本発明は、カートリッジに関し、カートリッジは、少なくとも1つの受容チャンバ2と、端面4と、カートリッジ壁部3とを備え、受容チャンバ2は、長手方向に延在し、分配されるべき媒体のためのものであり、端面4及びカートリッジ壁部3は、受容チャンバ2の境界を定め、一体に射出成形される。端面4は、媒体のための出口部を備える。カートリッジ壁部3は、受容チャンバ2の境界を定める内側面に、第1の薄膜6を有する。第1の薄膜6は、カートリッジ壁部3全体にわたって延在し、カートリッジ壁部3に剥離不能に結合される。本発明は、さらに、そのようなカートリッジの作製方法、及び多成分カートリッジに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの受容チャンバ(2)を備えるカートリッジであって、前記少なくとも1つの受容チャンバ(2)は、長手方向に延在し、分配されるべき媒体のためのものであり、端面(4)とカートリッジ壁部(3)とを備えており、前記端面(4)及び前記カートリッジ壁部(3)は、前記受容チャンバ(2)の境界を定め、一体に射出成形され、前記端面(4)が、前記媒体のための出口部を有する、カートリッジにおいて、前記カートリッジ壁部(3)が、前記受容チャンバ(2)の境界を定める内側面に第1の薄膜(6)を有し、前記第1の薄膜(6)は、前記カートリッジ壁部(3)全体にわたって延在し、前記カートリッジ壁部(3)に剥離不能に結合されることを特徴とする、カートリッジ。
【請求項2】
前記端面(4)が、前記受容チャンバ(2)に面した表面に第2の薄膜(7)を有し、前記第2の薄膜(7)は、前記端面(4)全体にわたって延在し、前記端面(4)に剥離不能に結合される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記カートリッジにピストン(8)がさらに設けられており、前記ピストン(8)は、前記端面(4)から離れた端部から前記受容チャンバ(2)に挿入され、前記カートリッジ壁部(3)に沿って密閉するように長手方向に変位可能である、請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記ピストン(8)が、前記受容チャンバ(2)に面した表面に第3の薄膜(9)を有する、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記カートリッジ壁部(3)の壁の厚さ(D)が、最大でも2mm、好ましくは最大でも1.5mm、特に最大でも0.8mmである、請求項1から4までのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記第1の薄膜(6)、前記第2の薄膜(7)又は前記第3の薄膜(9)の厚さ(d)が、最大でも0.2mm、好ましくは約0.1mmである、請求項1から5までのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記カートリッジに結合手段(10)が設けられており、前記結合手段(10)によって前記カートリッジを第2のカートリッジに結合することができる、請求項1から6までのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記第1の薄膜(6)、前記第2の薄膜(7)又は前記第3の薄膜(9)が、多層組織として設計される、請求項1から7までのいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項によるカートリッジを製造する方法であって、コア(31)が、前記カートリッジの前記受容チャンバ(2)を形成する射出成形装置の器具(30)内に設けられ、薄膜(6)が、前記コア(31)のジャケット表面に付けられ、その後で液体プラスチックで外側被覆されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記液体プラスチックが前記器具(30)に導入される前に、第2の薄膜(7)が前記コア(31)の端面に付けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つのカートリッジを備える多成分カートリッジであって、各カートリッジ(1)が請求項1から8までのいずれか一項に従って設計され、前記2つのカートリッジ(1)が、長手方向に関して互いに隣り合うように並んで配置されるか、又は、前記2つのカートリッジ(1)が、1つのカートリッジが他のカートリッジを取り囲むように、好ましくは互いに同軸に配置されることを特徴とする、多成分カートリッジ。
【請求項12】
前記2つのカートリッジ(1)が、前記結合手段(10)によって互いに固定的に結合される、請求項11に記載の多成分カートリッジ。
【請求項13】
前記カートリッジ(1)の前記出口部(5)が、共通の結合部分(50)を形成し、前記結合部分(50)は、具体的にはクロージャ部分(60)又はミキサ(70)である、付属部品と協働するように設計される、請求項11又は12に記載の多成分カートリッジ。
【請求項14】
前記多成分カートリッジが、クロージャ部分(60)を備え、前記クロージャ部分(60)は、前記結合部分(50)と協働するように設計され、2つのプラグ(61)を有し、2つの前記プラグ(61)は、出口部(5)を閉じるように前記出口部(5)内にそれぞれ係合し得る、請求項13に記載の多成分カートリッジ。
【請求項15】
前記2つのカートリッジ(1)の前記受容チャンバ(2)の容積が異なる、請求項11から14までのいずれか一項に記載の多成分カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各独立請求項のプリアンブルにしたがって、少なくとも1つの受容チャンバを有するカートリッジに関し、少なくとも1つの受容チャンバは、長手方向に延在し、分配されるべき媒体のためのものであり、また、本発明は、その製造方法、及び多成分カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
工業分野、例えば建造物の建設業では、及び歯科分野では、カートリッジが頻繁に使用され、液体若しくは流動性物質(多くの場合、ペースト状若しくは粘性の物質から高粘性物質まで)を貯蔵し、各用途において必要に応じてそれらを分配する。そのような物質の例には、コーキング材、ケミカル・ダウエル(chemical dowel)用若しくはケミカル・アンカ用の材料、接着剤、糊又は歯科分野の印象材がある。これらのカートリッジは、一般的に、プラスチック製であり、射出成形プロセスで製造される。
【0003】
単一成分システムと、2成分又は多成分システムとは区別され、単一成分システムでは、分配されるべき材料が1成分だけから作られており、2成分又は多成分システムでは、少なくとも2つの異なる成分が、同じカートリッジの別個のチャンバに貯蔵されるか、又は、別個のカートリッジに貯蔵されており、例えば動的又は静的な混合装置によって分配される際に、成分が完全に混合される。この例には、2成分を混合した後にしか固まらない2成分の接着剤又はケミカル・ダウエルがある。2成分システムは、具体的には、塗料工業分野でも使用され、防食用などの機能的な保護層を作り出すのにしばしば使用される。
【0004】
一般的には、カートリッジが1つ又は複数の軸線方向に変位可能に送出するピストンを有し、ピストンの動きによって、材料が1つ又は複数のチャンバから分配される。この目的のため、分配の際に生じる圧力に耐え得るようにするために、チャンバの壁を十分に厚くしなければならないことが分かっている。さらに、カートリッジの壁の厚さは、十分な耐拡散性を示すのに十分な程かなり厚くなければならない。これは、保管に関して特に重要であり、それによって化学物質中への拡散、又は、化学物質からの拡散が防止され、したがってカートリッジの内容物の劣化が可能な限り効果的に防止される。そのようなプラスチック製カートリッジは、一般に、使い捨て用にしか設計されないので、体積的にも質量的にも、かなりの量の廃棄物となり、特に、環境保護の観点からも不利である。
【0005】
環境保護の観点に加え、持続可能性という点についても重要性がますます高くなっている。再生可能な出発原料を使用すること、原料の使用を最低限に抑えること、並びに可能な限り廃棄物を減らすことは、カートリッジそれ自体に関して、及び、カートリッジ内に残留する残留塊の量に関して、重要性がますます高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、持続可能性及び環境保護に関して、特に廃棄物の体積及び量に関して改善されたカートリッジを提供することである。この点において、カートリッジの操作の安全性が高く、保管が良好であることが保証されるべきである。さらに、本発明によって、そのようなカートリッジの製造方法が提供されるべきである。さらに、本発明によって、対応する多成分カートリッジが可能になるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を満たす本発明の主題は、各カテゴリの独立請求項にある機能を特徴とする。
【0008】
したがって、本発明によれば、少なくとも1つの受容チャンバを備えるカートリッジが提供され、少なくとも1つの受容チャンバは、長手方向に延在し、分配されるべき媒体のためのものであり、端面及びカートリッジ壁部を備えており、端面及びカートリッジ壁部は、受容チャンバの境界を定め、一体に射出成形される。端面は、媒体のための出口部を有する。カートリッジ壁部は、受容チャンバの境界を定める内側面に第1の薄膜を有し、第1の薄膜は、カートリッジ壁部全体にわたって延在し、カートリッジ壁部に剥離不能に結合される。
【0009】
薄膜によって、非常に効果的な拡散バリヤが実現し、薄膜は、カートリッジ壁部の内側に設けられ、カートリッジ壁部に剥離不能に結合され、それによって、保管性又は必要な最長保管期間について譲歩することなく、今日知られているカートリッジシステムに対して、カートリッジの壁部の厚さを著しく減少させることができるようになる。それどころか、カートリッジの内容物は、より長い保管期間、物質中への拡散若しくは物質からの拡散、又は「脱ガス」から効果的に守られる。一方、壁部の厚さを著しく減少させると、実質的に、必要な原材料がより少なくて済み、さらに廃棄量を著しく減少させることになる。さらに良い特徴は、例えばカートリッジ壁部の材料が受容チャンバ内の媒体に影響され易い場合、薄膜によってそのカートリッジ壁部を保護することができることである。さらに、カートリッジ壁部が薄膜によって媒体から保護され、もはや媒体の影響を受けなくて済むようになるので、カートリッジに安価な材料又はより環境にやさしい材料を使用することができるようになる。具体的には、カートリッジの製造に生体高分子を使用することもできる。分配の際にカートリッジ壁部が機械的歪みに耐えられるように、内容物を分配するときにはカートリッジを再利用可能な支持カートリッジ内に配置するのが好ましい。
【0010】
端面は、受容チャンバに面した表面に第2の薄膜を有し、第2の薄膜は、端面全体にわたって延在し、端面に剥離不能に結合されることが好ましい。これによって、カートリッジの内容物は、さらに、端面を介した拡散プロセスからも保護されるようになる。
【0011】
好ましい一実施例では、ピストンがさらに設けられ、ピストンは、端面から離れた端部から受容チャンバに挿入され、カートリッジ壁部に沿って密閉しながら長手方向に変位可能である。媒体を分配するために受容チャンバ内でピストンを使用することには、概して、カートリッジ内に残る残留物の量がより少なくなり、それによって廃棄量が減少するという利点がある。さらに、受容チャンバが化学媒体を含む場合、化学的性質によって生じる危険が最低限に抑えられる。
【0012】
有利な手法は、ピストンが受容チャンバに面した表面に第3の薄膜を有することである。端面の薄膜と組み合わせられて、カートリッジ内の媒体は、薄膜で完全に取り囲まれる、すなわち薄膜で完全に包まれることになる。
【0013】
好ましい一実施例では、カートリッジ壁部の壁の厚さは、最大でも2mm、好ましくは最大でも1.5mm、特に最大でも0.8mmである。カートリッジ壁部をより薄く設計することができるので、カートリッジの製造に必要な原材料及びカートリッジを空にした後に廃棄する量がより少なくなる。
【0014】
第1の薄膜、第2の薄膜又は第3の薄膜の厚さは、最大でも0.2mmであり、約0.1mmが好ましいことが実際に証明されている。
【0015】
好ましい一実施例では、結合手段がカートリッジに設けられており、結合手段によってカートリッジは第2のカートリッジに結合可能になる。これらの結合手段は、具体的に、ラッチ結合、クリック結合、スナップ・イン結合として設計され得る。2つのカートリッジがそれらの長手方向又は長手方向軸線が互いに平行に延在するように互いに隣り合って並んで結合されるように、結合手段は配置されるのが好ましい。結合手段によって複数のカートリッジを互いに結合できることにより、特に、カートリッジを多成分システムに非常に簡単に使用することができるようになるので、応用領域に関するフレキシビリティが著しく増大することになる。
【0016】
第1の薄膜、第2の薄膜又は第3の薄膜が多層組織として設計される場合、特に有利である。すなわち、これによって、それぞれの用途に対して理想的に薄膜を適合させることができるようになる。受容チャンバ内の媒体に対して最大限に効果を示すことに的を絞ったやり方で、バリヤとして働く薄膜の性質を活用することができる。そのような多層組織は、複合フィルムとして設計されるのが好ましい。多層組織は、さらに金属層を含むこともできる。
【0017】
さらに、本発明によって、カートリッジの受容チャンバを形成する射出成形装置の器具内にコアが設けられ、コアのジャケット表面に薄膜が付けられ、その後で液体プラスチックで外側被覆される、本発明によるカートリッジの製造方法が提供される。この外側被覆によって、簡単に薄膜を部分的に溶解又は可塑化することが可能になり、したがって、後でカートリッジ壁部が冷えてプラスチックが固まると完全に剥離不能な結合になっていく。
【0018】
処理に関して好ましい方法は、液体プラスチックを器具に導入する前に、コアの端面に第2の薄膜を付けることである。次いで、この薄膜によって、カートリッジ内で、カートリッジの端面上に配置される第2の薄膜が実現する。カートリッジの製造において、この薄膜は、それが配置されるコアの端面に対して余剰な寸法にされる、すなわち端面の縁から突き出るように寸法設定されるのが好ましい。射出成形のとき、縁から突き出た薄膜の一部は、次いで、液体プラスチックによって曲げられ、それによって薄膜がコアのジャケット表面上に配置されている薄膜と密閉結合されるようになる。
【0019】
本発明によって、さらに、本発明による少なくとも2つのカートリッジを有する多成分カートリッジが提供される。2つのカートリッジは、長手方向に関して互いに隣り合うように並んで配置されるか、又は、一方のカートリッジが他方のカートリッジを取り囲むように、互いに対して、好ましくは同軸に配置される。第1の変形形態では、2つの受容チャンバが互いに隣り合うように配置される、いわゆる並列カートリッジが提案される。第2の変形形態では、2つのカートリッジが、互いに外側カートリッジのカートリッジ壁部が内側カートリッジのカートリッジ壁部を完全に取り囲むように配置される。この点において、内側カートリッジは、外側カートリッジ内にそれらの長手方向軸線が一致するように中心が位置決めされるのが好ましい。したがって同軸カートリッジと言われる。この多成分カートリッジによって、本発明によるカートリッジの応用分野を拡大して2成分システム及び多成分システムを含むようにすることができるようになる。
【0020】
2つのカートリッジは、結合手段によって互いに固定的に結合されるのが好ましく、それによって多成分カートリッジが、貯蔵及び分配可能な1つのユニットを形成するようになる。
【0021】
特に有利な手法では、カートリッジの出口部は、共通の結合部分を形成し、結合部分は、具体的にはクロージャ部分又はミキサを装備する、付属部品と協働するように設計される。例えば、このやり方で、それ自体既知の付属部品を多成分カートリッジとあわせて使用することができる。実用的且つ経済的な理由から互換性があることは有利である。
【0022】
保管の間、分配チャンバの内容物を保護するには、多成分カートリッジがクロージャ部分を有するのが有利である。クロージャ部分は、2つのプラグを有し、2つのプラグは、結合部分と協働するように設計され、出口部内に係合してそれを閉じることができる。
【0023】
2つのカートリッジの受容チャンバの容積は異なってよく、したがって具体的にはカートリッジの受容チャンバに入っている2つの媒体の混合比が1:1とは異なるようにすることができるので、使用領域及び用途に関する多成分カートリッジのフレキシビリティが向上する。
【0024】
装置の態様及び技術的な方法の態様における本発明のさらに有利な手法及び実施例は、従属請求項から明らかにされる。
【0025】
実施例及び図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。概略図は、一部断面図として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるカートリッジの一実施例の縦断面図並びにカートリッジ壁部の拡大詳細図である。
図2】本発明による方法の一実施例を説明する概略図である。
図3】本発明による多成分カートリッジの第1の実施例の斜視図である。
図4】クロージャ部分が挿入されている出口部の図である。
図5】ミキサが上に配置されている出口部の(一部だけが示されている)図である。
図6】本発明による多成分カートリッジの第2の実施例の図である。
図7】本発明による多成分カートリッジの第3の実施例の図である。
図8】本発明によるカートリッジ及び本発明による多成分カートリッジに適した分配装置の図である。
図9】本発明によるカートリッジ及び本発明による多成分カートリッジに適した分配装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、全体が参照番号1で示される本発明によるカートリッジの一実施例の縦断面図である。カートリッジ1は、長手方向に延在する、分配されるべき媒体のための受容チャンバ2を含む。長手方向は、Aで示されるカートリッジ1の長手方向軸線によって定義される。受容チャンバ2は、カートリッジ壁部3及び端面4によって境界が定められる。カートリッジ1の受容チャンバ2の形状は円筒形であり、換言すると、カートリッジ壁部3はシリンダのジャケット表面である。さらに、図1にはカートリッジ壁部3を拡大した詳細図も示されている。
【0028】
カートリッジ1の端面4は、媒体の出口通路51を含む出口部5を有し、そこを通って媒体が受容チャンバ2から分配され得る。カートリッジ壁部3、及び、出口部5を有する端面4は、一体に射出成形され、換言すると、全体が一般的に一段階射出成形プロセスである単一射出成形プロセスで製造される。したがって、例えば2つの半分のシリンダが後で互いに溶接されるようなカートリッジはこれには当てはまらない。
【0029】
本発明によれば、カートリッジ壁部3は、具体的に図1の詳細図に示されるように、受容チャンバ2の境界を定める内壁に第1の薄膜6を有する。第1の薄膜6は、カートリッジ壁部3全体、すなわち受容チャンバ2の境界を定めるシリンダ・ジャケットの内側全体にわたって延在する。薄膜6は、カートリッジ壁部3に剥離不能に結合され、好ましくは、以下に詳細に説明するように射出成形プロセスのときにカートリッジ壁部3に結合される。
【0030】
本明細書に記載の実施例では、端面4は、受容チャンバ2に面した表面に第2の薄膜7を有する。第2の薄膜7は、端面4全体にわたって延在し、端面4に剥離不能に結合され、好ましくは、第1の薄膜6と同じ方法に従って端面4に結合される。第2の薄膜7は、円盤形状をしており、出口通路51の開口上を通って受容チャンバ2内まで延在する。その結果、出口通路51は、受容チャンバ2に通じるその開口において、第2の薄膜7によって閉じられることになる。
【0031】
カートリッジ1は、さらに、結合手段10を有し、それによってカートリッジ1を第2のカートリッジ1に結合することができる。本明細書に記載の実施例では、結合手段10は、カートリッジ1の端面4において、出口部5に隣接して設けられる。結合手段10は、好ましくは、クリック結合、スナップ・イン結合又はラッチ結合などそれ自体既知の方法で設計される。また、2つのカートリッジ1が並んで配置されるように、換言すると、長手方向軸線Aが互いに隣り合って平行になるように、結合手段10は配置される(例えば図3参照)。代替的に、又はそれに加えて、結合手段は、当然ながら、カートリッジ壁部3に沿って配置されてもよい。
【0032】
カートリッジ1又は受容チャンバ2は、端面4から離れた端部で開口している。ピストン8は、バルブ・ピストン又は自己ブリーディング・ピストン(self−bleeding piston)として設計されるのが好ましく、端面4から離れたカートリッジ1の開口端から受容チャンバ2に挿入され得る。ピストン8は、カートリッジ壁部3に沿って長手方向に密閉しながら変位することができるように設計且つ寸法設定される。このために、ピストン8は、図示されないが、受容チャンバ2に挿入されるとカートリッジ壁部3と接触するようになるシーリング・リップ又はシーリング縁を有するそれ自体既知のやり方で設計され得る。
【0033】
ピストン8は、例えば射出成形プロセスでカートリッジ1とは別に製造し、通常、受容チャンバ2を充填した後で挿入すればよい。
【0034】
有利な手法としては、ピストンが、受容チャンバに面した表面に、すなわち、ピストン8の挿入後に受容チャンバ2の境界を定める表面に、第3の薄膜9を有することである。
【0035】
本発明に従って設けられる薄膜6、並びに、随意的に設けられる第2の薄膜7及び第3の薄膜9は、バリヤ又は拡散バリヤとして働き、それによって物質中への又は物質からの拡散が防止される。物質は、例えば、受容チャンバ2に収容される媒体の化学成分であり、又は、水分若しくは酸素であることもある。したがって、薄膜6、及び、随意的な薄膜7、9によって、媒体が充填されたカートリッジ1を非常に長い間保管できるようになる。第1の薄膜6がバリヤ層又は拡散バリヤとして働くので、カートリッジ壁部3の厚さDを既知のカートリッジよりもはるかに小さく設計することができるようになる。何故なら、従来技術として知られるカートリッジでは、カートリッジが十分な耐拡散性を有するように又は脱ガスしないように壁部の厚さをより厚くしなければならないからである。第1の薄膜6があるので、カートリッジ壁部3の厚さDを最大でも2mm、好ましくは最大でも1.5mm、特に最大でも0.8mmに製造することができる。この点において、下限である0.8mmは、主に、今日知られる射出成形プロセスで実現可能な、プラスチックの射出距離又は射出経路とプラスチック層の厚さの割合がもとになっている。既知のカートリッジに比べてカートリッジ壁部2の厚さDを大幅に減少させることができるので、カートリッジ1の製造に必要な原材料が著しく減り、一般的に使い捨てとして設計されるカートリッジ1の廃棄量を体積だけでなく質量に関しても著しく減少させる効果が生まれる。
【0036】
第1の薄膜6の第2の効果は、ピストン8とカートリッジ壁部3との間の摩擦が減少することである。受容チャンバ2から媒体を分配するために使用する間に、ピストン8が長手方向軸線Aの方向に動かされ、出口通路51を通して媒体を送出する。この点において、第1の薄膜6があると、カートリッジ壁部3に沿ったピストン9の滑動がより簡単になる。
【0037】
第2の薄膜7及び第3の薄膜9の利点は、カートリッジ1の受容空間2全体がそれらによるバリヤ層又は拡散バリヤで取り囲まれることであり、換言すると、受容チャンバ2内の媒体が、薄膜6、7、9によって完全に取り囲まれる又は包囲されることであり、そのことが特に良好な保管性に関して有利となる。3つの薄膜6、7、9は、それらの厚さD及び成分に関して同じタイプのものとして設計され得る(必ずしもそのように設計される必要はないが)。好ましくは、実用的な理由から、薄膜6、7、9のそれぞれの厚さは、最大でも0.2mmであり、好ましくは約0.1mmである。
【0038】
各薄膜6、7、9は、それぞれの用途に理想的に適合可能である。薄膜6、7、9は、受容チャンバ2内の媒体の成分及びタイプに応じて、理想的な保管性、並びにカートリッジ壁部3及び端面4の理想的な保護を保証するように設計され得る。これによって、さらに、受容チャンバ2内の媒体に影響され易いか、又は、媒体が付着することになるカートリッジ1に、プラスチックを使用することが可能になる。すなわち、受容チャンバ2内の媒体は、フィルム6、7があるのでカートリッジ壁部3又は端面4と接触しなくて済むようになる。これによって、カートリッジの製造に非常に安価な材料又は非常に環境にやさしい材料を使用することができるようになる。したがって、具体的には、カートリッジ1の製造に生体高分子も適している。
【0039】
第1の薄膜6、第2の薄膜7又は第3の薄膜9は、多層組織として設計される、換言すると、例えば複数の薄膜又は互いに重なるように配置される層から形成されるのが特に好ましい手法である。薄膜6、7、9のこれらの異なる層は、異なる特徴を有することができる。分配されるべき媒体に影響されないプラスチック製の保護層(例えば、ポリアミド(PA:polyamide)又はポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate))を、例えば受容チャンバ2に面する側に配置することができる。保護層には、随意的に、水、酸素又は揮発性有機化合物類(VOCs:Volatile organic compounds)などの物質の出入りを防ぐバリヤ層が接合され得る。次いで、例えばリサイクレート(recyclate)から作製されるフィラー層(filler layer)がそれに続くことができる。ポリエチレン(PE:polyethylene)又はポリプロピレン(PP:polypropylene)などのポリオレフィン層又は金属層を設けることもできる。
【0040】
それに加えて、又は別法として、発泡フィルムを層として設けることもできる。
【0041】
本発明によるカートリッジは、射出成形プロセスで製造される。次に、図2を参照して、カートリッジ1の製造に適した方法の一実施例を説明する。一般的に、射出成形には、コア及び液体プラスチックが射出される中空空間を含む器具30が使用される。図2には、1つのそのようなコア31、すなわちカートリッジ1の受容チャンバ2を形成するコアだけが示されている。器具30を閉じるとき、コア31は、図2の矢印Bの記号で示されるように、対応する形状の対部分32内へと動く。このために、コア31若しくは対部分32、又は、その両方を動かすことができる。次いで、器具30を閉じると、カートリッジ壁部3と端面4の鋳型であるコア31と対部分32との間に中空空間ができる。2つの矢印Cで示されるようにこの中空空間に液体プラスチックが射出され、そこで固まる。その後、器具30を開け、カートリッジ1を離型して取り出す。
【0042】
本発明によれば、完成したカートリッジ1内に第1の薄膜6を形成する薄膜は、カートリッジ1の射出成形前にコア31のジャケット表面に付けられる。
【0043】
器具30を閉じた後、薄膜6は、部分的に、液体プラスチックで外側被覆される。その際、薄膜6は、液体プラスチックと接触するので、簡単に部分的に溶けるか、又は可塑化する。これによって、カートリッジ壁部3と薄膜6との間に非常に完全で剥離不能な結合が生じる。
【0044】
本明細書に記載の本発明による方法の実施例では、カートリッジ1の好ましい実施例は、その端面4に第2の薄膜7が設けられるように製造される。このために、射出成形前に、完成したカートリッジにおいて第2の薄膜7を形成することになる円盤形状の薄膜をコア31の端面上に配置する。この点において、円盤形状の薄膜は、図2に示されるように、コア31の端面の縁から突き出るような寸法にされるのが好ましい。次いで、器具30を閉じた(矢印C)後、液体プラスチックが射出されると、コア31の端面の縁から突き出た円盤形状の薄膜の一部が、図示のように下方に曲がる。これによって、円盤形状の薄膜7は薄膜6に完全に結合される又はしっかりと押し付けられ、それによって、完成したカートリッジ1において第1の薄膜6と第2の薄膜7との間に密な(随意的には固定的な)結合が出来上がる。
【0045】
当然ながら、薄膜6、7は、プラスチックで外側被覆されるまで、長時間、コア31に付着していることが重要である。この付着は、例えば静電気的に又はコア31の対応する吸込み口から圧力が加えられることによって様々な方法で実現可能である。
【0046】
カートリッジの製造には、一般に、例えば、ポリアミド系(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリオレフィンなど、カートリッジに使用されるそれ自体既知の全てのプラスチックが適している。特に、薄膜6、7を使用するので、本発明によるカートリッジには生体高分子も適する。
【0047】
カートリッジ1は、まず、射出成形プロセスによってピストン8なしで製造し、次にその出口部5を閉じる。図面では底部にある依然として開いている受容チャンバ2の端部から媒体を受容チャンバ2に充填する。その後、第3の薄膜9が随意的に設けられるピストン8を受容チャンバ2に挿入し、次いでチャンバ基部を形成し、チャンバ基部によって受容チャンバ2が密閉される。ピストン8は、しばしば、バルブ・ピストンとして設計され、ピストン8を挿入するとき、媒体とピストンとの間に存在することがある空気を簡単な方法で逃がすことができるようになる。
【0048】
図3は、全体が参照番号100で示されている本発明による多成分カートリッジの第1の実施例の斜視図である。多成分カートリッジは、本発明に従ってそれぞれ設計される少なくとも2つのカートリッジ1を含む。
【0049】
以下では、多成分カートリッジ100がちょうど2つのカートリッジ1を含む2成分カートリッジである場合、実施にあたって特に重要な事柄について例示的な特徴とあわせて言及する。しかし、本発明はそのような場合に限定されるわけではなく、多成分カートリッジは、3つ以上のカートリッジを含むこともできる。
【0050】
多成分カートリッジ100の2つのカートリッジ1は、それらの長手方向軸線A(図1参照)が互いに平行に延在するように互いに隣り合うように並んで配置される。2つのカートリッジ1の1つは、より良く理解できるようにするために、その端面の四分の一とカートリッジ壁部3の四分の一が取り除かれて図示されている。
【0051】
2つのカートリッジ1は、好ましくは、結合手段10によって互いに固定的に結合される。しかし、2つのカートリッジ1を共通の射出成形プロセスで製造し、次いで破壊しない限り解放不可能な要素によって互いに固定的に結合し、それによって2成分カートリッジをカートリッジ壁部及び端面に関して一体にすることもできる。例えば、カートリッジ壁部に沿って、又は端面同士の間に、2つのカートリッジ1を互いに結合するバーが設けられてもよい。さらに、2つのカートリッジ1は、端面4から離れた受容チャンバ2の端部において、共通の基部により互いに結合されてもよい。
【0052】
2つのカートリッジ1のそれぞれに対してピストン8を用意し、各受容チャンバ2を充填した後、ピストン8を受容チャンバ2に挿入する。カートリッジ1の2つの出口部5は、共通の結合部分50を形成するように配置され設計される。共通の結合部分50は、2つの別個の出口部5を有し、付属部品と協働するように設計される。結合部分50と協働するように設計され2つの出口部5を閉じることができるクロージャ部分60が、図3では、付属部品として示されている。
【0053】
図4には、2つの出口部5がある結合部分50が拡大して示されている。図4では、クロージャ部分60は、結合部分50と動作可能に結合した状態にある。クロージャ部分60は、出口通路2つのプラグ61を有し、2つのプラグ61のそれぞれは、出口部の出口通路51内に係合しそれを密閉するように閉じるということを理解することができる。したがって、クロージャ部分60は、プラグ61が出口通路51に挿入されるとはじめて結合部分50と結合するように設計され得る。固定手段(図示せず)は、クロージャ部分60の意図的ではない除去を回避するように設けられ、例えば、それは、クロージャ部分の除去前にそれをねじり取る、回す又は同様の手段によってこじ開ける又は打ち破ることができる破壊点であることが望まれる。固定手段は、さらに、ラッチ結合又はスナップ・イン結合として設計されてもよい。さらに、クロージャ60は、ねじ結合又は差し込み結合によって結合部分50に結合されてもよい。
【0054】
図5には、付属部品すなわちミキサ70が付いた結合部分50又は出口部5が示されている。この点において、付属部品は、2つのカートリッジ1の各受容チャンバ2に入っている2つの媒体を混合するための静的ミキサ70である。静的ミキサ70は、それ自体既知の方法で、ミキサ管72(図5だけにしか示されていない)を含み、ミキサ管72は、内部に混合要素(図示せず)が配置されている。さらに、ミキサ70は、2つの入口部71並びに1つのカップリング部分73を含む。ミキサ70を多成分カートリッジ100上に配置する場合、別個の入口部71のそれぞれが、排出路51の一方内に、又は、排出路51の一方の上に係合し、各入口部71が出口部5のうちの1つとの流れ結合を形成し、それぞれの媒体が各受容チャンバ2から各出口部5を通ってミキサ70に流入するようになる。ミキサ70で2つの媒体が合流し、そこを通過しながら互いに完全に混ざり合う。
【0055】
カップリング部分73によるミキサ70の結合部分50への結合には、それ自体既知のあらゆるタイプの結合(具体的には、ねじ結合又は差し込み結合)が適している。
【0056】
カートリッジ1が端面4に第2の薄膜7を備える場合、媒体を分配する前にそれを穿孔又は切断しなければならない。この目的のために、いくつかの可能な手段が当業者には知られている。変形形態としては、ミキサの入口部71(又は他の付属部品の対応する部分)が、出口部5と協働するそれらの端部に、例えば斜めの端部又はマンドレルを有するように設計され、それによってミキサ70の上に配置すると入口部71によって薄膜7が穿孔又は他のやり方で開けられるようになる。
【0057】
図6には、本発明による多成分カートリッジ100の第2の実施例が示されている。第1の実施例との違いだけを、以下でより詳細に考察することにする。第1の実施例に関する説明は、第2の実施例にも対応して同じ方法で適用することができる。
【0058】
第2の実施例では、多成分カートリッジは2つのカートリッジ1を有し、その受容チャンバ2の容積は異なる。そのような多成分カートリッジ100は、2つの成分が1:1とは異なる体積比で互いに混合される必要がある2成分システムを対象としたものである。図6に示される多成分カートリッジ100は、図面において左側にあるカートリッジ1の容積が右側にあるカートリッジ1よりも十倍大きい。当然ながら、例えば2:1、4:1など他の比率でも実施することができる。
【0059】
図6に示される多成分カートリッジ100では、さらに、別の結合手段80が2つのカートリッジ1の間に設けられる。結合手段80は、本明細書ではカートリッジ1の近接するカートリッジ壁部3の間にそれぞれ延在する複数のバーとして形成される。
【0060】
上述のように、2成分カートリッジ又は多成分カートリッジ100は、好ましくは、2つの個別のカートリッジ1から構成される、又は両方のカートリッジが一緒に好ましくは1つのユニットとして射出成形される一段階射出成形プロセスで製造される。カートリッジ1を充填する前に出口部5をクロージャ部分60で閉じる。次いで、それぞれの媒体又は成分を端面4から離れた受容チャンバの依然として開いている端部から受容チャンバ2に充填する。その後、第3の薄膜9がそれぞれ随意的に設けられる各ピストン8を受容チャンバ2に挿入し、次いでそれぞれのチャンバ基部を形成し、チャンバ基部によって受容チャンバ2が密閉される。ピストン8は、しばしば、バルブ・ピストンとして設計され、それによって、ピストン8を挿入するとピストン8と媒体との間に存在する空気を逃がすことができるようになる。第1の薄膜6、並びに、随意的に設けられる第2の薄膜7及び第3の薄膜9によってカートリッジの内容物が脱ガスしないようになり、又は、他の拡散を誘起する影響を受けないようになるので、多成分カートリッジ100を充填した後、保管可能になる。
【0061】
図7は、本発明による多成分カートリッジ100の第3の実施例の斜視縦断面図である。第1の実施例及び第2の実施例との違いだけを、以下でより詳細に考察することにする。第1の実施例及び第2の実施例を参照してなされた説明は、第3の実施例にも対応して同じ方法で適用することができる。第3の実施例では、2つのカートリッジ1は、図面における外側カートリッジ1のカートリッジ壁部3が、図面における内側カートリッジ1のカートリッジ壁部3を完全に取り囲むように配置される。この点において、内側カートリッジは、外側カートリッジ内にそれらの長手方向軸線Aが一致するように中心が位置決めされるのが好ましい。これは、2つの受容チャンバ2を通る共通の長手方向軸線Aに垂直な断面において、内側カートリッジ1及び外側カートリッジ1の2つのカートリッジ壁部3が、長手方向軸線Aまわりに同心円を形成することを意味する。そのような多成分カートリッジ100は、一般的に、同軸カートリッジと呼ばれ、当業者にはそれ自体周知であり、したがってさらに説明する必要はないであろう。本発明によれば、2つのカートリッジ1のそれぞれ、すなわち内側カートリッジ1と外側カートリッジ1の両方が、カートリッジ壁部3をそれぞれ有し、カートリッジ壁部3は、各受容チャンバ2の境界を定めるその内側面に、カートリッジ壁部3全体にわたって延在する第1の薄膜6を有する。随意的に、本明細書では、それぞれの第2の薄膜7を各端面4に設けることもできる。図7には、第3の薄膜9が随意的に設けられる2つのピストン8は示されていない。この点において、図面における外側カートリッジ1に属するピストン8は、リング・ピストンとして、それ自体既知のやり方で設計される。同軸カートリッジとして設計される多成分カートリッジ100は、単一射出成形プロセスで製造されるか、2つのカートリッジ1がまず射出成形プロセスで別個に製造され、その後で結合されるかのどちらかで製造され得る。
【0062】
次に、図8図9を参照して、2成分カートリッジ又は多成分カートリッジ100の使用について説明する。一般的には、2成分カートリッジ100を使用するにあたって、それを分配装置(ディスペンサ)200のホルダに挿入する。多成分カートリッジ100は、一般的に、第1の薄膜6によりカートリッジ壁部3が薄く設計されるので、分配のときには支持カートリッジ90を使用するのが好ましく、それによって、分配の際の特に圧力による歪みである機械的な歪みに耐えることができるようになる。支持カートリッジ90は、何回も使用できるように設計され、すなわち必要なときに何回でも再利用することができる。当然ながら、別法として、別個の支持カートリッジによって支持機能を実施するのではなく、むしろ分配装置のホルダ内において支持機能を実施することもできる。
【0063】
図8において参照記号がない矢印で示されるように、まず、多成分カートリッジ100を支持カートリッジ90に挿入し、次いで、支持カートリッジ90と一緒に分配装置200のホルダに挿入する。クロージャ部分60を取り外し、その代わりに、本明細書では差し込み結合を用いる結合部分73によって、結合部分50にミキサ70を固定する(図9)。分配装置200は、アクチベータ220によって前方に動かされるダブル・プランジャ210を含む。次いで、ダブル・プランジャ210によって受容チャンバ2内にある2つのピストン8に力が加わると、それらがカートリッジ1の長手方向軸線Aに沿って移動し、各媒体が各出口部5を通って静的ミキサ70に流れ込む。静的ミキサ70で2つの媒体(成分)が合流し、そこを通過しながら互いに完全に混ざり合う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】