(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-501276(P2015-501276A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】MSEフレームワーク型モレキュラーシーブの合成
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20141212BHJP
【FI】
C01B39/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-535857(P2014-535857)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(85)【翻訳文提出日】2014年6月10日
(86)【国際出願番号】US2012059678
(87)【国際公開番号】WO2013055871
(87)【国際公開日】20130418
(31)【優先権主張番号】61/546,335
(32)【優先日】2011年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・クリストファー・ウエストン
(72)【発明者】
【氏名】カール・ジー・ストローマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヒルダ・ビー・ブローマン
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA63
4G073BB44
4G073BD01
4G073BD21
4G073CZ41
4G073FA11
4G073FB01
4G073FB02
4G073FB04
4G073FB11
4G073FB13
4G073FB19
4G073FB24
4G073FB25
4G073FC03
4G073FC18
4G073FC25
4G073FC27
4G073FD01
4G073FD02
4G073FD17
4G073FD20
4G073FD21
4G073GA03
4G073GB03
4G073UA01
(57)【要約】
MSEフレームワーク型を有する結晶性モレキュラーシーブの合成方法は、水源と、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、およびゲルマニウムの少なくとも1つから選択される、4価元素、Yの酸化物源と、任意選択的に3価元素、X源と、アルカリもしくはアルカリ土類金属、M源と、3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウム、3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム、1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、および/または1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)などの、有機ジカチオン、Q源とを含む反応混合物を結晶化させる工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MSEフレームワーク型を有する結晶性モレキュラーシーブの合成方法であって、水源と、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、およびゲルマニウムの少なくとも1つから選択される4価元素、Yの酸化物源と、任意には3価元素、X源と、アルカリ又はアルカリ土類金属、M源と、下記の一般構造:R
1−R
3−R
2を有する有機カチオン、Q源とを含んで成る反応混合物を結晶化させることを含む、方法。
[式中、R
1およびR
2は、同じ又は異なっており、R
1若しくはR
2又はR
1およびR
2の両方が、式
【化1】
のN−アルキルピペリジニウム基である、又は、R
1もしくはR
2またはR
1およびR
2の両方が、式
【化2】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3は、式(CH
2)
n(nは4〜6である)のポリメチレン基である、又は、R
3は、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、
R
4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、たとえばメチル基である。]
【請求項2】
R
1およびR
2が両方とも、式
【化3】
のN−アルキルピペリジニウム基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1が、式
【化4】
のN−アルキルピペリジニウム基であり、
R
2が、式
【化5】
のキヌクリジニウム基であり、および、nが4又は5である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物中のモル比Q/YO2が、約0.01〜約1.0、たとえば約0.05〜約0.7の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物が、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄、およびクロムの少なくとも1つから選択される、3価元素、Xの酸化物源を含んで成る、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物中のモル比YO2/X2O3が、約4〜約200、たとえば約8〜約120の範囲にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、下記のモル組成:
YO2/X2O3 約4〜約200
H2O/YO2 約5〜約200
OH−/YO2 約0.05〜約1
M/YO2 約0.05〜約2
Q/YO2 約0.01〜約1
を有する、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物が、下記のモル組成:
YO2/X2O3 約8〜約120
H2O/YO2 約14〜約50
OH−/YO2 約0.10〜約0.53
M/YO2 約0.15〜約0.9
Q/YO2 約0.05〜約0.7
を有する、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記4価元素、Yがケイ素であり、前記3価元素、Xがアルミニウムである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ又はアルカリ土類金属、Mが、ナトリウムおよびカリウムの少なくとも1つを含んで成る、例えばカリウムである、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物が、MSEフレームワーク型モレキュラーシーブの種結晶を含んで成っていない、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記結晶化が、約100℃〜約200℃の温度で最大約28日までの間、例えば約145℃〜約175℃で約24時間〜約170時間行われる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
Qが、式
【化6】
の3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである、又は
Qが、式
【化7】
の3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである、又は
Qが、式
【化8】
の1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、又は
Qが、式
【化9】
の1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、又は
Qが、式
【化10】
の1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、又は
Qが、式
【化11】
の1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
MSEフレームワーク型を有し、かつ3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウム、1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム、1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、または1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)を含んで成るジカチオンをその細孔構造内に含んで成る結晶性モレキュラーシーブ。
【請求項15】
R
1が、式
【化12】
のN−アルキルピペリジニウム基であり、
R
2が、式
【化13】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3が式(CH
2)
n(nは4〜6である)のポリメチレン基であり、および、R
4が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である、構造R
1−R
3−R
2のジカチオン。
【請求項16】
式(III)の3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオン、又は、式(IV)の3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである、請求項15に記載のジカチオン。
【請求項17】
1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MCM−68などの、MSEフレームワーク型の結晶性モレキュラーシーブの合成に、および有機変換プロセスでのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
MCM−68は、1つの12員環チャネルシステムと2つの10員環チャネルシステムとを含む独特の3次元チャネル構造を有する単結晶相モレキュラーシーブ材料であり、そのチャネル構造において各システムのチャネルは、他のシステムのチャネルに垂直に伸びており、そしてチャネル構造において12環チャネルは一般に真っ直ぐであり、10環チャネルは曲がりくねっている(正弦波形である)。MCM−68のフレームワーク構造は、国際ゼオライト学会の構造委員会(Structure Commission of the International Zeolite Association)によってコードMSEを割り当てられている。
【0003】
MCM−68の組成および特徴的なX線回折パターンは、特許文献1に開示されており、この特許はまた、N,N,N’,N’−テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤の存在下でのこのモレキュラーシーブの合成を記載している。特許文献1の全体内容は、参照により本明細書に援用される。
【0004】
特許文献1は、芳香族アルキル化およびトランスアルキル化反応での触媒としてのMCM−68の使用を例示している。さらに、特許文献2は、MCM−68が主分解触媒か、ゼオライトYなどの、従来の粗孔分解触媒と併せて添加成分かのどちらかである状態で、MCM−68が炭化水素原料の接触分解において活性を示して向上した収率のブチレンおよびイソブテンを生成することを開示している。
【0005】
MCM−68の商業的開発は、その合成のために特許文献1で要求されているN,N,N’,N’−テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウムジカチオン構造指向剤の高い費用によって妨げられており、それ故にMCM−68の合成のための代わりの、それほど高価ではない構造指向剤を見いだすことにこれまでかなりの関心があった。
【0006】
特許文献3で、1,1−ジアルキル−4−シクロヘキシルピペラジン−1−イウムカチオンおよび1,1−ジアルキル−4−アルキルシクロヘキシルピペラジン−1−イウムカチオンがMCM−68の合成で構造指向剤として有効であると述べられている。特許文献3は、MCM−68の合成でのMCM−68種結晶の使用を記載している。
【0007】
本発明によれば、本明細書に記載されるカチオンがMCM−68の合成で構造指向剤として有効であることが今見いだされた。さらに、これらのカチオンが商業的に入手可能な原材料から便利に、かつ、安価に製造され得ることが分かった。さらに、MCM−68がMCM−68種結晶を入れる必要性がなしにこれらのカチオンを使って製造できることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,049,018号明細書
【特許文献2】米国特許第7,198,711号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0318696号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、MSEフレームワーク型の構造を有する結晶性モレキュラーシーブ、好ましくはMCM−68の合成方法であって、水源と、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、およびゲルマニウムの少なくとも1つから選択される、4価元素、Yの酸化物源と、任意選択的に3価元素、X源と、アルカリもしくはアルカリ土類金属、M源と、次の一般構造:R
1−R
3−R
2[式中、R
1およびR
2は、同じもしくは異なるものであり、R
1もしくはR
2またはR
1およびR
2は両方とも、式
【化1】
のN−アルキルピペリジニウム基である
又はR
1もしくはR
2またはR
1およびR
2の両方が、式
【化2】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3は、式(CH
2)
n(ここで、nは4〜6である)のポリメチレン基である、又はR
3は、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、ここで、R
4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である]
を有する有機カチオン、Q源とを含む反応混合物を結晶化させる工程を含む方法にある。
【0010】
有機カチオン、Qの例は、式
【化3】
の3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである。
【0011】
有機カチオン、Qの別の例は、式
【化4】
の3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである。
【0012】
有機カチオン、Qの別の例は、式
【化5】
の1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである。
【0013】
有機カチオン、Qの別の例は、式
【化6】
の1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである。
【0014】
有機カチオン、Qの別の例は、式
【化7】
の1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである。
【0015】
有機カチオン、Qの別の例は、式
【化8】
の1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである。
【0016】
有機ジカチオン源は、本発明の結晶性材料の形成に有害ではない任意の塩、たとえば、ハロゲン化物またはヒドロキシド塩であってもよい。
【0017】
反応混合物中のモル比Q/YO
2は、約0.05〜約0.7などの、約0.01〜約1.0の範囲にあってもよい。
【0018】
反応混合物は、たとえば、反応混合物中のモル比YO
2/X
2O
3が、約8〜約120などの、約4〜約200の範囲内にあるように、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄、およびクロムの少なくとも1つから選択される、3価元素、Xの酸化物源を含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、反応混合物は次のモル組成:
【0020】
【表1】
を有することができる。
【0021】
別の実施形態では、反応混合物は次のモル組成:
【0022】
【表2】
を有することができる。
【0023】
特定の実施形態では、4価元素、Yは、ケイ素を含むまたはケイ素であり、3価元素、Xは、アルミニウムを含むまたはアルミニウムであり、前記アルカリもしくはアルカリ土類金属、Mは、ナトリウムおよび/またはカリウムである。
【0024】
反応混合物は、たとえば、前記反応混合物中の種結晶/YO
2のモル比が約0.001〜約0.1であるように、MSEフレームワーク型モレキュラーシーブの種結晶を任意選択的に含んでもよい。しかし、そのような種結晶は、MCM−68を製造するために反応混合物中に含められる必要はない。
【0025】
結晶化は、約145℃〜約175℃の温度で約24時間〜約170時間などの、約100℃〜約200℃の温度で最大28日までの間行われてもよい。
【0026】
本明細書で記載される実施形態によって製造されたMSEフレームワーク型を有する結晶性モレキュラーシーブの合成されたままの形態は、上に定義されたようなカチオン、Qをその細孔構造内に含有してもよい。
【0027】
本明細書に記載される方法によって製造されたゼオライトは、有機供給物を、本明細書に記載される結晶性MSEフレームワーク型モレキュラーシーブの焼成形態を含む触媒と接触させる工程を含む有機変換プロセスに使用されてもよい。
【0028】
本発明の態様は、新規組成物を伴うことができる。たとえば、構造R
1−R
3−R
2[式中、R
1は、式
【化9】
のN−アルキルピペリジニウム基であり、
R
2は、式
【化10】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3は、式(CH
2)
n(ここで、nは4〜6である)のポリメチレン基であり、ここで、R
4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である]のジカチオンが提供される。これらのジカチオンの例としては、式(III)の3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンおよび式(IV)の3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンが挙げられる。
【0029】
本発明の態様に従って提供される別の化合物は、式(VIII)の1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例20の方法に従って1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンを構造指向剤として使用して製造されたMCM−68のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
Qカチオンを構造指向剤として使用する、MCM−68などの、MSEフレームワーク型を有する結晶性モレキュラーシーブの合成方法が本明細書に記載される。芳香族アルキル化およびトランスアルキル化反応での、ならびに炭化水素原料の接触分解でのなどの、有機変換反応での触媒としての、得られたMSEフレームワーク型結晶性モレキュラーシーブの焼成形態の使用がまた本明細書に記載される。
【0032】
MCM−68は、1つの12員環チャネルシステムと2つの10員環チャネルシステムとを含む独特の3次元チャネルシステムを有する合成多孔質単結晶相材料であり、そのチャネル構造において各システムのチャネルは、他のシステムのチャネルに垂直に伸びており、そしてそのチャネル構造において12環チャネルは一般に真っ直ぐであり、10環チャネルは一般に曲がりくねっている(正弦波形である)。MCM−68のフレームワーク構造は、国際ゼオライト学会によってコードMSEを割り当てられている。
【0033】
その焼成形態では、MCM−68は、下の表1にリストされるラインで他の公知の合成されたままのおよび/または熱処理された結晶性材料のパターンと区別されるX線回折(XRD)パターンを有する。
【0035】
本明細書ではd−間隔と記載されているが、XRDスペクトルで観察されるピークは、強度の最大値を有し、このピーク最大値は、本明細書にリストされるd−間隔「ライン」に相当する。これらのX線回折データは、Cu−Kα放射線を使用する、そしてGoebelミラーおよびHI−STAR面積検出器を備えたBruker D8 Discover回折システムで収集された。XRDスペクトルは、2つのフレーム、約4°〜約20°2θの第1フレーム、および約20°〜約36°2θの第2フレームで回折パターンを測定することによって記録された。2次元回折パターンは、積分され、Bruker GADDソフトウェアを用いて2θ対強度の1次元プロットに変換された。面間(d−)間隔は、オングストローム単位で計算され、バックグラウンド上の、最強ラインの強度、I
0の百分率として調整される、ラインの相対強度、I/I
0は、Materials Data,Inc.のJadeソフトウェアピーク検索アルゴリズムを使って誘導された。強度は、Lorentzおよび分極効果について補正されなかった。相対強度は、記号VS=非常に強い(80〜100%)、S=強い(60〜80%)、M=中位(40〜60%)、W=弱い(20〜40%)、およびVW=非常に弱い(0〜20%)の観点から示される。シングルラインとしてこれらの試料についてリストされる回折データが、結晶学的変化の差などの、ある種の条件下では、解像または部分解像ラインとして現れる可能性がある複数の重なり合ったラインからなる可能性があることは理解されるべきである。典型的には、結晶学的変化は、構造の相当する変化なしに、単位格子パラメータの微小変化および/または結晶対称の変化を含むことができる。相対強度の変化などの、これらの微小効果は、とりわけ、カチオン含有量の差、フレームワーク組成、細孔充填の本質および程度、結晶サイズおよび形状、好ましい配向、ならびに熱および/または熱水履歴の結果としてさらにまたはあるいは起こり得る。
【0036】
MCM−68の構造は、米国特許第7,198,711号明細書におよびJournal of Physical Chemistry B,110,2045(2006)にさらに考察されている。
【0037】
MCM−68は、モル関係:X
2O
3:(n)YO
2(式中、Xは、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄、およびクロムの少なくとも1つから選択される、好ましくはアルミニウムを少なくとも含む3価元素であり;Yは、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、およびゲルマニウムの少なくとも1つから選択される、好ましくはケイ素を少なくとも含む4価元素であり;nは、約4〜約100,000などの、少なくとも約4であり、典型的には約10〜約1000、たとえば約10〜約100であり得る)を含む化学組成を有する。
【0038】
MCM−68は一般に熱安定性があり、焼成形態では、比較的高い表面積(たとえば、約0.21cc/gの微小孔容積と共に約660m
2/g)およびかなりの炭化水素収着能、たとえば:
【0040】
その活性な水素形態では、MCM−68は、約900〜約2000のアルファ値(Alpha Value)の、比較的高い酸活性を示すことができる。アルファ値は、標準触媒と比較して触媒の接触分解活性のおおよその指標であり、それは、相対速度定数(単位時間当たり触媒の体積当たりのノルマルヘキサン転化速度)を与える。それは、1のアルファ(速度定数=0.016秒
−1)と見なされるシリカ−アルミナ分解触媒の活性をベースにしている。アルファ試験(Alpha Test)は、それぞれが当該記載に関して参照により本明細書に援用される、米国特許第3,354,078号明細書に;ならびにJournal of Catalysis,4,527(1965);6,278(1966);および61,395(1980)に記載されている。本明細書で用いられる試験の実験条件は、Journal of Catalysis,61,395(1980)に詳細に記載されているように、約538℃の一定温度および可変流量を含む。
【0041】
米国特許第6,049,018号明細書に開示されているように、MCM−68は、N,N,N’,N’−テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウムジカチオンを構造指向剤として使用して以前は合成されている。しかし、この構造指向剤の高い費用は、MCM−68の商業的開発を著しく妨げてきた。
【0042】
MCM−68を合成する本方法は、次の一般構造:R
1−R
3−R
2[式中、R
1およびR
2は、同じもしくは異なるものであり、R
1もしくはR
2またはR
1およびR
2は両方とも、式
【化11】
のN−アルキルピペリジニウム基である
またはR
1もしくはR
2またはR
1およびR
2の両方が、式
【化12】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3は、式(CH
2)
n(ここで、nは4〜6である)のポリメチレン基である、またはR
3は、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、ここで、R
4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である]を有するカチオンを構造指向剤として用いる。
【0043】
好ましいジカチオンには、3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウム、3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム、1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、および1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)が含まれ得る。
【0044】
1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンは、ゼオライトIZM−2の合成を導くために使用されており(たとえば、国際公開第2010/015732号パンフレットおよび米国特許出願公開第2010/0272624号明細書を参照されたい)、そして1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンは、ゼオライトIZM−3の合成を導くために使用されている(たとえば、国際公開第2009/090336号パンフレットを参照されたい)。しかし、多くの他の構造指向剤システムと同様に、合成条件を変えることによって、1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンおよび1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンは、異なるモレキュラーシーブ材料の合成を導くのに有効であり得、純相MCM−68の合成を導くのに特に有効であり得ることが今分かった。
【0045】
本方法では、Qカチオン源と共に、水源と、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、およびゲルマニウムの少なくとも1つから選択される、4価元素、Yの酸化物源と、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄、およびクロムの少なくとも1つから選択される、3価元素、Xの酸化物源と、アルカリもしくはアルカリ土類金属、M源とを含む反応混合物が製造される。一般に、反応混合物の組成は、前記反応混合物中のモル比Q/YO
2が、約0.05〜約0.5などの、約0.01〜約1の範囲にあるようにコントロールすることができる。より具体的には、反応混合物は、酸化物のモル比の観点から、次の範囲:
【0046】
【表5】
内の組成を有することができる。
【0047】
反応混合物は、反応混合物中の種結晶/YO
2の重量比が、約0.01〜約0.08または約0.01〜約0.05などの、約0.001〜約0.3であり得るように、たとえば、MCM−68などの、MSEフレームワーク型モレキュラーシーブの種結晶を任意選択的にまた含んでもよい。しかし、そのような種結晶は必要ではなく、ある種の実施形態では特に除外されてもよい。
【0048】
4価元素、Yはケイ素を含んでもケイ素であってもよく、3価元素、Xはアルミニウムを含んでもアルミニウムであってもよく、アルカリもしくはアルカリ土類金属、Mはナトリウムおよびカリウムの少なくとも1つを含んでもよい。アルカリもしくはアルカリ土類金属、Mがカリウムを含むときには、Na対総金属Mのモル比は、0〜約0.9、たとえば、0〜約0.5であってもよい。
【0049】
上記の反応混合物を製造するために使用することができる好適な酸化ケイ素源には、コロイド状シリカ、沈澱シリカ、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ヒュームドシリカなど、ならびにそれらの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。好適な酸化アルミニウム源には、ベーマイト、ギブサイト、および擬ベーマイト、とりわけギブサイトなどの、水和酸化アルミニウム、ならびに、硝酸アルミニウムなどの、酸素含有アルミニウム塩、ならびにそれらの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。好適なアルカリ金属源には、水酸化ナトリウムおよび/またはカリウムが含まれ得る。
【0050】
好適なジカチオン構造指向剤源には、結晶性材料MCM−68の形成に有害ではないこれらのジカチオンの任意の塩、たとえば、ハロゲン化物(たとえば、ヨージド)および/またはヒドロキシドが含まれ得る。
【0051】
カチオン、Q源に関係なく、反応混合物が調製されてしまったときには、所望のMCM−68を製造するための結晶化は、約145℃〜約175℃の温度で約24時間〜約170時間などの、たとえば、約100℃〜約200℃の温度で、最大28日までの間、たとえば、ポリプロピレン瓶もしくはTeflon(テフロン)(登録商標)で任意選択的に内張りされたステンレススチールオートクレーブなどの、好適な反応器容器中で静的条件下か攪拌条件下かのどちらかで行うことができる。その後、結晶は、液体から分離し、回収することができる。
【0052】
この合成反応の生成物は、MSEフレームワーク型を有し、そしてジカチオン構造指向剤をその細孔構造内に含有する結晶性モレキュラーシーブを有利には含むことができるかまたは結晶性モレキュラーシーブであり得る。得られた合成されたままの材料は、下の表2にリストされるラインを有することなど、他の公知の合成されたままのおよび/または熱処理された結晶性材料のパターンと区別されるX線回折(XRD)パターンを有することができる。
【0054】
再び、これらのX線回折データは、本明細書で上の表1にリストされたものと類似の装置で、そして類似の方法で収集された。
【0055】
ジカチオンをその微細構造内に含有する合成されたままの結晶性モレキュラーシーブは、有機構造指向剤をモレキュラーシーブから実質的に除去し、原料との接触のために開かれている活性触媒部位をモレキュラーシーブの細孔性チャネル内に残すようなやり方で使用前に普通は活性化することができる。この活性化プロセスは、モレキュラーシーブを、酸素含有ガスの存在下に約200℃〜約800℃の温度で適切な期間加熱することによって典型的には成し遂げることができる。
【0056】
所望の程度に、合成されたままの材料の元のナトリウムおよび/またはカリウムカチオンは、金属イオン、水素イオン、水素イオン前駆体、たとえば、アンモニウムイオンなど、およびそれらの混合物を含むことができるが、それらに限定されない、たとえば、他のカチオンとのイオン交換によって、少なくともある程度、当該技術分野でよく知られている技法に従って置き換えることができる。特に好ましい交換カチオンには、存在するとき、ある種の炭化水素変換反応のための触媒活性を調整することができるもの(たとえば、水素、希土類金属、ならびに元素の周期表の族2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、および13の金属が含まれ得る。
【0057】
本方法によって製造される結晶性モレキュラーシーブは、現在の商業的/工業的に重要な多くのものなどの多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒するために使用することができる。単独でのまたは他の結晶性触媒などの1つまたは複数の他の触媒活性物質と組み合わせての、本発明の結晶性材料によって効果的に触媒される化学変換プロセスの例としては、酸活性を持った触媒を必要とするものを挙げることができる。具体的な例としては、
(a)反応条件が、約10℃〜約250℃の温度、約0psig〜約500psig(約3.5MPag)の圧力、約0.5時間
−1〜約100時間
−1の総重量空間速度(WHSV)、および約0.1〜約50の芳香族化合物/オレフィンモル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、気相または液相での、短鎖(C
2〜C
6)オレフィンでの芳香族化合物のアルキル化、たとえば、それぞれエチルベンゼンもしくはクメンを製造するためのベンゼンでのエチレンもしくはプロピレンのアルキル化;
(b)反応条件が、約250℃〜約500℃の温度、約0psig〜500psig(約3.5MPag)の圧力、約0.5時間
−1〜約50時間
−1の総WHSV、および約1〜約50の芳香族化合物/オレフィンモル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、気相または液相での、長鎖(C
10〜C
20)オレフィンでの芳香族化合物のアルキル化;
(c)反応条件が、約100℃〜約500℃の温度、約1psig(約7kPag)〜約500psig(約3.5MPag)の圧力、および約1時間
−1〜約10,000時間
−1のWHSVの1つまたは複数を任意選択的に含む、気相または液相での、芳香族化合物のトランスアルキル化、たとえば、それぞれエチルベンゼンおよび/またはクメンを製造するためのポリエチルベンゼンおよび/またはポリイソプロピルベンゼンとベンゼンとのトランスアルキル化;
(d)反応条件が、約200℃〜約760℃の温度、約1気圧(約0psig)〜約60気圧(約5.9MPag)の圧力、約0.1時間
−1〜約20時間
−1のWHSV、および0(添加水素なし)〜約50の水素/炭化水素モル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、アルキル芳香族化合物の不均化、たとえば、キシレンを製造するためのトルエンの不均化;
(e)反応条件が、約200℃〜約760℃の温度、約1気圧(約0psig)〜約60気圧(約5.9MPag)の圧力、約0.1時間
−1〜約20時間
−1のWHSV、および0(添加水素なし)〜約50の水素対炭化水素モル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、アルキル芳香族化合物の脱アルキル化、たとえば、エチルベンゼンの脱エチル化;
(f)反応条件が、約200℃〜約540℃の温度、約100kPaa〜約7MPaaの圧力、約0.1時間
−1〜約50時間
−1のWHSV、および0(添加水素なし)〜約10の水素/炭化水素モル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、キシレンなどの、アルキル芳香族化合物の異性化;
(g)反応条件が、約260℃〜約375℃の温度、約0psig〜約1000psig(約6.9MPag)の圧力、約0.5時間
−1〜約10時間
−1のWHSV、および0(添加水素なし)〜約10の水素/炭化水素モル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、たとえば、アルキル芳香族化合物および軽質ガスを形成するための、パラフィンと芳香族化合物との反応;
(h)反応条件が、約200℃〜約315℃の温度、約100psig(約690kPag)〜約1000psig(約6.9MPag)の圧力、約0.5時間
−1〜約10時間
−1のWHSV、および約0.5〜約10の水素対炭化水素モル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、分岐パラフィンを提供するためのパラフィン異性化;
(i)反応条件が、約−20℃〜約350℃の温度、約0psig〜約700psig(約4.9MPag)の圧力、および約0.02時間
−1〜約10時間
−1の総オレフィンWHSVの1つまたは複数を任意選択的に含む、オレフィンでの、イソブタンなどの、イソ−パラフィンのアルキル化;
(j)反応条件が、約200℃〜約450℃の温度、約0psig〜約1000psig(約6.9MPag)の圧力、約0.2時間
−1〜約10時間
−1のWHSV、および約0.5〜約10の水素/炭化水素モル比の1つまたは複数を任意選択的に含む、パラフィン供給物の脱ロウ;
(k)反応条件が、約300℃〜約700℃の温度、約0.1気圧(約10kPag)〜約30気圧(約3MPag)の圧力、および約0.1時間
−1〜約20時間
−1のWHSVの1つまたは複数を任意選択的に含む、炭化水素の分解;
(l)反応条件が、約250℃〜約750℃の温度、約30kPa〜約300kPaのオレフィン分圧、および約0.5時間
−1〜約500時間
−1のWHSVの1つまたは複数を任意選択的に含む、オレフィンの異性化;ならびに
(m)動力車でのコールド・スタート排出物用の炭化水素トラップ(たとえば、前触媒コンバーター吸着剤)
を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0058】
米国特許第7,198,711号明細書に記載されているように、MCM−68は、約7オングストロームよりも大きい細孔径を有する粗孔モレキュラーシーブなどの、従来の分解触媒と併せて添加成分として使用されてもよい。
【0059】
多くの触媒の場合と同様に、本方法によって製造されたモレキュラーシーブを、有機変換プロセスに用いられる温度および他の条件に耐性がある別の材料と組み合わせることが望ましいことがある。そのような材料には、活性および不活性材料ならびに合成もしくは天然に存在するゼオライト、ならびに粘土、シリカ、および/またはアルミナなどの金属酸化物などの無機材料が含まれ得る。後者は、天然に存在するものであってもおよび/またはシリカと金属酸化物との混合物などのゲル状沈澱物/ゲルの形態にあってもよい。本方法によって製造されたモレキュラーシーブと併せた(すなわち、それと組み合わせられるおよび/または新結晶の合成中に存在する)、活性である、材料の使用は、ある種の有機変換プロセスで触媒の転化性能および/または選択性を変える傾向があり得る。不活性材料は好適なことに、単に希釈剤として機能する、たとえば、反応の速度をコントロールするための余りにも多くの他の手段をたとえば用いることなく、生成物を経済的におよび整然と得ることができるように所与のプロセスでの転化量をコントロールする傾向がある。これらの発明材料は、商業的運転条件下での触媒の破砕強度を向上させるために、天然に存在する粘土、たとえば、ベントナイトおよび/またはカオリン中へ組み込まれてもよい。前記材料(すなわち、粘土、酸化物など)は、触媒のためのバインダーとしてさらにまたはあるいは機能することができる。商業的使用においては、触媒が壊れて粉末様材料になるのを防ぐことが多くの場合望ましいので、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましくあり得る。これらの粘土および/または酸化物バインダーは、触媒の破砕強度を向上させる目的のためのみに普通は用いられている。
【0060】
本方法によって製造されたモレキュラーシーブと複合化することができる天然に存在する粘土には、モンモリロナイトおよびカオリン系統が含まれ得るが、それらに限定されず、それらには、ディキシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)、およびフロリダ(Florida)粘土として一般に知られるサブベントナイトおよびカオリン、および/または、その中の主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、および/またはアナウキサイトであり得るその他が含まれる。そのような粘土は、元々採掘されたままの未加工状態で使用することができるおよび/または初めに焼成、酸処理、および/または化学修飾にかけることができる。本方法によって製造されたモレキュラーシーブと複合化するために有用なバインダーには、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、およびそれらの混合物などの、無機酸化物がさらにまたはあるいは含まれ得る。
【0061】
さらにまたはあるいは、本方法によって製造されたモレキュラーシーブは、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニアなどの多孔質マトリックス材料、および/またはシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、およびシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの三元組成物と複合化することができる。
【0062】
微粉化結晶性モレキュラーシーブ材料と無機酸化物マトリックスとの相対割合は、結晶含有量が約1重量%〜約90重量%の範囲であり、そしてより通常は、複合材料がビーズまたは押出物の形態で製造されるときには特に、複合材料の約2重量%〜約80重量%の範囲である状態で、幅広く変動する。
【0063】
さらにまたはあるいは、本発明は、以下の実施形態の1つまたは複数を含むことができる。
【0064】
実施形態1.MSEフレームワーク型を有する結晶性モレキュラーシーブの合成方法であって、水源と、ケイ素、スズ、チタン、バナジウム、およびゲルマニウムの少なくとも1つから選択される、4価元素、Yの酸化物源と、任意選択的に3価元素、X源と、アルカリもしくはアルカリ土類金属、M源と、次の一般構造:R
1−R
3−R
2[式中、R
1およびR
2は、同じもしくは異なるものであり、R
1もしくはR
2またはR
1およびR
2は両方とも、式
【化13】
のN−アルキルピペリジニウム基である
またはR
1もしくはR
2またはR
1およびR
2の両方が、式
【化14】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3は、式(CH
2)
n(ここで、nは4〜6である)のポリメチレン基である、またはR
3は、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、ここで、R
4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、たとえばメチル基である]
を有する有機カチオン、Q源とを含む反応混合物を結晶化させる工程を含む方法。
【0065】
実施形態2.R
1およびR
2が両方とも、式
【化15】
のN−アルキルピペリジニウム基である、実施形態1の方法。
【0066】
実施形態3.R
1が、式
【化16】
のN−アルキルピペリジニウム基であり、
R
2が、式
【化17】
のキヌクリジニウム基であり、
かつnが4または5である、実施形態1の方法。
【0067】
実施形態4.前記反応混合物中のモル比Q/YO
2が、約0.01〜約1.0、たとえば約0.05〜約0.7の範囲にある、実施形態1〜3のいずれか一つの方法。
【0068】
実施形態5.前記反応混合物が、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄およびクロムの少なくとも1つから選択される、3価元素、Xの酸化物源を含む、実施形態1〜4のいずれか一つの方法。
【0069】
実施形態6.前記反応混合物中のモル比YO
2/X
2O
3が、約4〜約200、たとえば約8〜約120の範囲にある、実施形態5の方法。
【0070】
実施形態7.反応混合物が次のモル組成:
【0071】
【表7】
を有する、実施形態5または実施形態6の方法。
【0072】
実施形態8.反応混合物が次のモル組成:
【0073】
【表8】
を有する、実施形態5〜7のいずれか一つの方法。
【0074】
実施形態9.前記4価元素、Yがケイ素であり、前記3価元素、Xがアルミニウムである、実施形態1〜8のいずれか一つの方法。
【0075】
実施形態10.前記アルカリもしくはアルカリ土類金属、Mがカリウムである、実施形態1〜9のいずれか一つの方法。
【0076】
実施形態11.前記反応混合物が、MSEフレームワーク型モレキュラーシーブの種結晶を含まない、実施形態1〜10のいずれか一つの方法。
【0077】
実施形態12.結晶化工程が、約100℃〜約200℃の温度で最大約28日までの間、たとえば約145℃〜約175℃、約24時間〜約170時間行われる、実施形態1〜11のいずれか一つの方法。
【0078】
実施形態13.Qが、式
【化18】
の3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである、
またはQが、式
【化19】
の3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである、
またはQが、式
【化20】
の1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、
またはQが、式
【化21】
の1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、
またはQが、式
【化22】
の1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、
またはQが、式
【化23】
の1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオンである、実施形態1〜12のいずれか一つの方法。
【0079】
実施形態14.MSEフレームワーク型を有し、かつ3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウム、1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム、1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)、または1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)を含むジカチオンをその細孔構造内に含有する結晶性モレキュラーシーブ。
【0080】
実施形態15.R
1が、式
【化24】
のN−アルキルピペリジニウム基であり、
R
2が、式
【化25】
のキヌクリジニウム基であり、
R
3が、式(CH
2)
n(ここで、nは4〜6である)のポリメチレン基であり、かつR
4が、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である、構造R
1−R
3−R
2のジカチオン。
【0081】
実施形態16.式(III)の3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンまたは式(IV)の3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムジカチオンである、実施形態15のジカチオン。
【0082】
実施形態17.1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ジカチオン。
【実施例】
【0083】
本発明の本質およびその実施方法をより十分に例示するために、以下の実施例が提示される。
【0084】
実施例1:1−(4−ブロモブチル)−1−メチルピペリジン−1−イウムブロミドの合成
【化26】
無水ジメチルホルムアミド(約500mL)中の1−メチルピペリジン(約24.80g)の溶液を、迅速に攪拌しながら窒素雰囲気下に約24時間にわたって無水ジメチルホルムアミド(約250mL)中の1,4−ジブロモブタン(約269.9g)の溶液にゆっくり加えた。溶液の攪拌をさらなる約48時間続行した。反応混合物を次に、D−フリット(約10〜20ミクロン)を通過させてあらゆる固体1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミド不純物を分離した。無水ジエチルエーテル(約2000mL)を次にこの濾液に加えて生成物を沈殿させ、それを次にD−フリットを使用して濾過し、無水ジエチルエーテル(3×約400mL)でリンスした。乾燥後に生成物(約63.7g、約80%)は1−(4−ブロモブチル)−1−メチルピペリジン−1−イウムブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0085】
実施例2:3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムブロミドの合成
【化27】
ジメチルホルムアミド(約700mL)、1−(4−ブロモブチル)−1−メチルピペリジン−1−イウムブロミド(約65.16g)および3−キヌクリジノール(約27.62g)を組み合わせ、室温(約20〜25℃)で一晩攪拌した。固体生成物を濾過し、次にジエチルエーテル(3×約100mL)で洗浄した。乾燥後に生成物(約81.4g、約89%)は3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0086】
実施例3:3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシドの合成
3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムブロミドを、過剰のMTO−DOWEX SBR LCNG(OH)樹脂を使用するカラムイオン交換によってヒドロキシド溶液にその後変換した。蒸留水を、pHが11未満になるまでカラムを通して溶出させ、生じた溶液を所望の濃度、典型的には約20重量%まで濃縮した。濃度は、酸−塩基滴定によっておよび1H NMRによって確認した。
【0087】
実施例4:1−(5−ブロモペンチル)−1−メチルピペリジン−1−イウムブロミドの合成
【化28】
ジメチルホルムアミド(約250mL)中の1−メチルピペリジン(約26.04g)の溶液を、迅速に攪拌しながらジメチルホルムアミド(約50mL)中の1,5−ジブロモペンタン(約226.3g)の溶液にゆっくり加えた。溶液の攪拌を一晩続行した。反応混合物を次に、ジエチルエーテル(約1500mL)に注ぎ込み、黄色オイルを生成した。ジエチルエーテルをデカンテーションし、オイルを、フレッシュのジエチルエーテル(約1500mL)とアセトン(約250mL)との溶液に注ぎ込み、次に一晩攪拌した。生じたワックス状固体を濾過した。乾燥後に生成物(約51.8、約60%)は1−(5−ブロモペンチル)−1−メチルピペリジン−1−イウムブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0088】
実施例5:3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムブロミドの合成
【化29】
ジメチルホルムアミド(約450mL)、1−(5−ブロモペンチル)−1−メチルピペリジン−1−イウムブロミド(約59.84g)および3−キヌクリジノール(約25.03g)を組み合わせ、室温で約5日間攪拌した。固体生成物を濾過し、次にジエチルエーテル(3×約100mL)で洗浄した。乾燥後に生成物(約61.3g、約74%)は3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0089】
実施例6:3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシドの合成
3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムブロミドを、過剰のMTO−DOWEX SBR LCNG(OH)樹脂を使用するカラムイオン交換によってヒドロキシド溶液にその後変換した。蒸留水を、pHが11未満になるまでカラムを通して溶出させ、生じた溶液を所望の濃度、典型的には約20重量%まで濃縮した。濃度は、酸−塩基滴定によっておよび
1H NMRによって確認した。
【0090】
実施例7:1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドの合成
【化30】
1−メチルピペリジン(約75.67g)、1,4−ジブロモブタン(約75g)、およびジメチルホルムアミド(約250mL)を組み合わせ、室温で約24時間攪拌した。固体生成物を濾過し、次にジエチルエーテル(約750mL)で洗浄した。乾燥後に生成物(約115.8g、約81%)は1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0091】
実施例8:1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドの合成
1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドを、過剰のMTO−DOWEX SBR LCNG(OH)樹脂を使用するカラムイオン交換によってヒドロキシド溶液にその後変換した。蒸留水を、pHが11未満になるまでカラムを通して溶出させ、生じた溶液を所望の濃度、典型的には約20重量%まで濃縮した。濃度は、酸−塩基滴定によっておよび
1H NMRによって確認した。
【0092】
実施例9:1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドの合成
【化31】
1−メチルピペリジン(約71.2g)、1,4−ジブロモペンタン(約75g)、およびジメチルホルムアミド(約250mL)を組み合わせ、室温で約24時間攪拌した。固体生成物を濾過し、次にジエチルエーテル(約750mL)で洗浄した。乾燥後に生成物(約108.5g、約78%)は1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0093】
実施例10:1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドの合成
1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドを、過剰のMTO−DOWEX SBR LCNG(OH)樹脂を使用するカラムイオン交換によってヒドロキシド溶液にその後変換した。蒸留水を、pHが11未満になるまでカラムを通して溶出させ、生じた溶液を所望の濃度、典型的には約20重量%まで濃縮した。濃度は、酸−塩基滴定によっておよび
1H NMRによって確認した。
【0094】
実施例11:1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドの合成
【化32】
1−メチルピペリジン(約73.3g)、1,4−ジブロモヘキサン(約82g)、およびジメチルホルムアミド(約250mL)を組み合わせ、室温で約24時間攪拌した。固体生成物を濾過し、次にジエチルエーテル(約750mL)で洗浄した。乾燥後に生成物(約106g、約71%)は1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドであることを
1H NMRによって確認した。
【0095】
実施例12:1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドの合成
1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ブロミドを、過剰のMTO−DOWEX SBR LCNG(OH)樹脂を使用するカラムイオン交換によってヒドロキシド溶液にその後変換した。蒸留水を、pHが11未満になるまでカラムを通して溶出させ、生じた溶液を所望の濃度、典型的には約20重量%まで濃縮した。濃度は、酸−塩基滴定によっておよび
1H NMRによって確認した。
【0096】
実施例13:(3as,6as)−2,5−ジ(ピペリジン−1−イル)オクタヒドロペンタレンの合成
【化33】
無水テトラヒドロフラン(約150mL)、ピペリジン(約5.43g)、および(3as,6as)−テトラヒドロペンタレン−2,5(1H,3H)−ジオン(約5.29g)を組み合わせ、室温(約20〜25℃)で十分に攪拌した。次にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(約21.64g)を加え、混合物を室温で約1日攪拌した。水性水酸化ナトリウム(約25g、約25重量%)を次に加え、溶液を石油エーテル(3×約100mL)で抽出した。有機抽出液を組み合わせ、脱イオン水(2×約150mL)および飽和塩化ナトリウム(2×約150mL)で洗浄した。得られた固体生成物を濾過し、乾燥後に生成物(約5.71g、約32%)は(3as,6as)−2,5−ジ(ピペリジン−1−イル)オクタヒドロペンタレンであることを
1H NMRによって確認した。
【0097】
実施例14:1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヨージドの合成
【化34】
ジメチルホルムアミド(約50mL)および(3as,6as)−2,5−ジ(ピペリジン−1−イル)オクタヒドロペンタレン(約5.69g)を組み合わせ、攪拌した。次にヨードメタン(約6.43g)を加え、混合物を攪拌することなく室温(約20〜25℃)で一晩放置した。固体生成物を濾過し、濾液を、攪拌されるジエチルエーテル(約500mL)にゆっくり加え、固体沈澱物を生成した。乾燥後に合わせた固体生成物(約11.3g、約98%)は1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヨージドであることを
1H NMRによって確認した。
【0098】
実施例15:1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドの合成
1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヨージドを、過剰のMTO−DOWEX SBR LCNG(OH)樹脂を使用するカラムイオン交換によってヒドロキシド溶液にその後変換した。蒸留水を、pHが11未満になるまでカラムを通して溶出させ、生じた溶液を所望の濃度、典型的には約20重量%まで濃縮した。濃度は、酸−塩基滴定によっておよび
1H NMRによって確認した。
【0099】
実施例16:MCM−68の合成
ゲルを、脱イオン水(約2μL)、水性CAB−O−SPERSE 2017A(約162μL、約17重量%)、水性3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシド(約189μL、約25.1重量%)、水性水酸化カリウム(約42μL、約17.5重量%)、および水性硝酸アルミニウム(約64μL、約15重量%)を混ぜ合わせることによって調製した。出発ゲルは、次のモル比を有した。
【0100】
【表9】
ここで、SDAは、3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム構造指向剤である。混合物を均質になるまで攪拌し、次に混転しながら空気乾燥器中で、約160℃で約7日間自生圧力にて反応させた。生成物を遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、次に粉末X線回折分析にかけた。X線回折パターンは、生成物が純MCM−68ゼオライトであることを示した。
【0101】
実施例17:MCM−68の合成
ゲルを、脱イオン水(約24μL)、UltraSil(商標)(又はウルトラシル)沈澱シリカ(約44mg、約92.7重量%)、水性3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシド(約256μL、約25.1重量%)、水性水酸化カリウム(約56μL、約17.5重量%)、および水性硝酸アルミニウム(約86μL、約15重量%)を混ぜ合わせることによって調製した。出発ゲルは、次のモル比を有した。
【0102】
【表10】
ここで、SDAは、3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム構造指向剤である。混合物を均質になるまで攪拌し、次に混転しながら空気乾燥器中で、約160℃で約10日間自生圧力にて反応させた。生成物を遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、次に粉末X線回折分析にかけた。X線回折パターンは、生成物が純MCM−68ゼオライトであることを示した。
【0103】
実施例18:MCM−68の合成
ゲルを、脱イオン水(約5μL)、水性LUDOX SM−30(約97μL、約30.1重量%)、水性3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシド(約223μL、約25.1重量%)、水性水酸化カリウム(約49μL、約17.5重量%)、および水性硝酸アルミニウム(約75μL、約15重量%)を混ぜ合わせることによって調製した。出発ゲルは、次のモル比を有した。
【0104】
【表11】
ここで、SDAは、3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウム構造指向剤である。混合物を均質になるまで攪拌し、次に混転しながら空気乾燥器中で、約160℃で約10日間自生圧力にて反応させた。生成物を遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、次に粉末X線回折分析にかけた。X線回折パターンは、生成物が純MCM−68ゼオライトであることを示した。
【0105】
実施例19:MCM−68の合成
ゲルを、脱イオン水(約6μL)、水性LUDOX SM−30(約105μL、約30.4重量%)、水性1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシド(約158μL、約20.9重量%)、水性水酸化ナトリウム(約162μL、約10重量%)、および水性硝酸アルミニウム(約20μL、約15重量%)を混ぜ合わせることによって調製した。出発ゲルは、次のモル比を有した。
【0106】
【表12】
ここで、SDAは、1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)構造指向剤である。混合物を均質になるまで攪拌し、次に混転しながら空気乾燥器中で、約160℃で約7日間自生圧力にて反応させた。生成物を遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、次に粉末X線回折分析にかけた。X線回折パターンは、生成物が純MCM−68ゼオライトであることを示した。
【0107】
実施例20:MCM−68の合成
ゲルを、脱イオン水(約5μL)、水性LUDOX SM−30(約70μL、約30.4重量%)、水性1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシド(約255μL、約5.62重量%)、水性水酸化カリウム(約35μL、約17.5重量%)、水性硝酸アルミニウム(約90μL、約1重量%)、および水性塩酸(約19μL、約20重量%)を混ぜ合わせることによって調製した。出発ゲルは、次のモル比を有した。
【0108】
【表13】
ここで、SDAは、1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)構造指向剤である。混合物を均質になるまで攪拌し、次に混転しながら空気乾燥器中で、約200℃で約7日間自生圧力にて反応させた。生成物を遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、次に粉末X線回折分析にかけた。X線回折パターンは、生成物が純MCM−68ゼオライトであることを示した。本実施例で製造されたMCM−68についてのX線回折パターンを
図1に示す。
【0109】
実施例21〜74:さらなるMCM−68合成
一連のゲルを、上の実施例16〜20に類似の方法で、しかし下の表3に示されるモル比を有して調製した。ゲルは、脱イオン水、シリカ源、水性SDAヒドロキシド、水性水酸化ナトリウムもしくはカリウム、水性臭化カリウム、水性硝酸アルミニウム、および水性塩酸を混ぜ合わせることによって調製した。
【0110】
表3では、構造指向剤(SDA)は、本明細書に列挙される式の観点から言及される。式IIIは、3−ヒドロキシ−1−(4−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ブチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシドに相当する。式IVは、3−ヒドロキシ−1−(5−(1−メチルピペリジン−1−イウム−1−イル)ペンチル)キヌクリジン−1−イウムヒドロキシドに相当する。式Vは、1,1’−(ブタン−1,4−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドに相当する。式VIは、1,1’−(ペンタン−1,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドに相当する。式VIIは、1,1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドに相当する。式VIIIは、1,1’−((3as,6as)−オクタヒドロペンタレン−2,5−ジイル)ビス(1−メチルピペリジン−1−イウム)ヒドロキシドに相当する。
【0111】
【表14】
【0112】
【表15】
【0113】
混合物を、均質になるまで攪拌し、次に表4に指定される温度および時間で混転しながら空気乾燥器中で自生圧力にて反応させた。生成物を遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、次に粉末X線回折分析にかけた。X線回折パターンは、表4に明記されるIZA構造コードで示される不純物相を伴ってMCM−68ゼオライトであることを示した。
【0114】
【表16】
【0115】
【表17】
【0116】
本発明は、特定の実施形態を参照することによって記載され、例示されているが、当業者は、本発明が本明細書に必ずしも例示されない変形形態に結びつくことを十分理解するであろう。そのため、それ故、本発明の真の範囲を決定するという目的のためには添付の特許請求の範囲のみが参照されるべきである。
【国際調査報告】