特表2015-501404(P2015-501404A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァルレック オイル アンド ガス フランスの特許一覧 ▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特表2015-501404ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部
<>
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000012
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000013
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000014
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000015
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000016
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000017
  • 特表2015501404-ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-501404(P2015-501404A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】ねじ管状コンポーネント及び得られる接続部
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20141212BHJP
   E21B 17/042 20060101ALI20141212BHJP
【FI】
   F16L15/04 A
   E21B17/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-534963(P2014-534963)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(85)【翻訳文提出日】2014年6月3日
(86)【国際出願番号】EP2012004153
(87)【国際公開番号】WO2013053450
(87)【国際公開日】20130418
(31)【優先権主張番号】11/03140
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】ガール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ピネル,エリエット
(72)【発明者】
【氏名】プティ,ミカエル
【テーマコード(参考)】
2D129
3H013
【Fターム(参考)】
2D129AB01
2D129BA21
2D129EC06
2D129EC28
3H013JA04
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、少なくとも1つのねじ領域(3;4)を含む末端部分(1;2)がある炭化水素坑井の掘削及び/又は作業のための管状要素である。
【解決手段】当該課題は、具体的には、前記末端部分(1;2)が、液状の化合物で充填されたマイクロカプセルを含む熱可塑性又は熱硬化性マトリックス(13)を含む乾燥フィルム(12)により少なくとも部分的にコーティングされている、管状要素により解決される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのねじ領域(3;4)を含む末端部分(1;2)がある炭化水素坑井の掘削及び/又は作業のための管状要素であって、前記末端部分(1;2)が、液状の化合物で充填されたマイクロカプセルを含む熱可塑性又は熱硬化性マトリックス(13)を含む乾燥フィルム(12)により少なくとも部分的にコーティングされている、管状要素。
【請求項2】
前記マイクロカプセルが、動粘度が100℃で2000mm/秒未満の疎水性化合物を最大で85質量%含む、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記マイクロカプセルのサイズが、直径1〜60μm、好ましくは直径2〜10μmの範囲である、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記マイクロカプセルの前記膜が、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂から形成された少なくとも1つの壁、好ましくは二重壁で構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の要素。
【請求項5】
前記マトリックスが、1〜25質量%の範囲のマイクロカプセルを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の要素。
【請求項6】
前記化合物が、25℃で動粘度100〜12500mm/秒の及び分子量10000〜80000g/モルの直鎖状ポリジメチルシロキサン、100℃で動粘度5〜200mm/秒及び分子量1500〜13000g/モルのペルフルオロポリエーテル、粘度指数100以上のポリα−オレフィン又はポリアルキレングリコールタイプの合成油、100℃で動粘度15〜65mm/秒の範囲の、トリメリテートエステル、エステル化α−オレフィン重合体エステル及び二塩基性カルボン酸コポリマータイプと組み合わされた合成エステル(モノ−、ジ−又はトリ−エステル)、アルカリ度100〜500mgKOH/gの、アルキル多硫化物、硫化オレフィン、脂肪酸エステル、硫化合成エステル、硫化天然トリグリセリド、アルキルアリールスルホン酸をベースとするスルホン酸カルシウム、カルシウムカーボネートスルホネート、100℃で動粘度10〜1000mm/秒の、リン酸エステル塩、リン含有エステル、好ましくはアルキルアリールホスフェート又はホスホネート、脂肪族ホスフィット、アミン含有誘導体、例えば、イミダゾール誘導体もしくはトリアゾール誘導体等、の有機塩又は無機塩、ポリブテン、ポリイソブチレン、100℃で動粘度30〜2000mm/秒のアルキルポリメタクリレート、ポリスルフィドシラン又はメルカプトシラン、並びに鉱油中に懸濁された三ホウ酸カリウム、により定義される分類群に包含される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の要素。
【請求項7】
前記マイクロカプセル化された化合物が、シリコーンオイル、フッ素化油及び合成エステル油から選択される潤滑油である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の要素。
【請求項8】
前記マトリックスが、1〜15重量%の範囲、好ましくは5〜10重量%の範囲のマイクロカプセル化された潤滑油を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の要素。
【請求項9】
前記マトリックスが、コポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンブチルアクリレート及びオレフィン系樹脂から選択される熱可塑性重合体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の要素。
【請求項10】
前記マトリックスが、ポリ尿素、ポリウレタン及びフルオロウレタンから選択される熱硬化性重合体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の要素。
【請求項11】
前記マトリックスが、アルファーピネンをベースとするテルペン樹脂、ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン及び樹脂酸、グリセリンでエステル化された水素化ロジン及び樹脂酸並びに重合ロジンから選択される粘着付与樹脂を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の要素。
【請求項12】
前記マトリックスが、固体潤滑剤、腐食防止剤、ワックス、可塑剤及び酸化防止剤から選択される1種又は複数種の添加剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の要素。
【請求項13】
前記末端部分の前記コーティングされた部分が、サンドブラスティング、化成処理、電解堆積及び非反応性処理からなる群から選択されるタイプの表面調製を施される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の要素。
【請求項14】
前記ねじ領域(3;4)の全体が、前記乾燥フィルム(12)でコーティングされる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の要素。
【請求項15】
前記末端部分(1;2)が、金属/金属接触を提供するための少なくとも1つの封止面を含み、前記封止面が前記潤滑性乾燥フィルム(12)でコーティングされる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の要素。
【請求項16】
末端部分(1;2)がある少なくとも1つの管状要素を含む、炭化水素坑井の掘削及び/又は作業のための管状接続部であって、前記末端部分(1;2)が、液状の化合物で充填されたマイクロカプセルを含む熱可塑性又は熱硬化性マトリックス(13)を含む乾燥フィルム(12)により少なくとも部分的にコーティングされている、管状接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素坑井の掘削及び/又は作業のために用いられる管状要素、より的確には、当該要素のねじ末端に関する。当該末端は雄型又は雌型であってよく、類似要素の対応する末端と接続することで接続部を形成できる。
【0002】
本発明は、組立により2つの管状要素を共に接続した結果生じるねじ接続部にも関する。
【背景技術】
【0003】
用語「炭化水素坑井の掘削及び作業のための管状要素」は炭化水素坑井の掘削のためのストリング又はメンテナンスのためのライザー(ワークオーバー用ライザーとしても知られる)又は当該坑井での作業のためのライザー、例えばライザー等、又は坑井での作業で用いられるケーシングストリング又はチュービングストリング、を構成するため、同タイプの別要素又はそれ以外への接続が意図される、実質的に管状の、いかなる要素をも意味する。本発明はさらに、ドリルストリング、例えば、ドリルパイプ、重量ドリルパイプ、パイプ接続部のドリルカラー及びその一部、並びにツールジョイントとして知られる重量パイプ等で用いられる要素にも適用しうる。
【0004】
各管状コンポーネントは、類似要素で対応する末端部分と共に組立てられることが意図される雄型ねじ領域又は雌型ねじ領域を備える末端部分を含む。一度接続されると、当該要素は、接続部を構成する。
【0005】
接続部の当該ねじ管状コンポーネントは、使用条件により課せられる締まりばめ及び封止のための要件を満たすため、規定の負荷のもと接続される。さらに、ねじ管状コンポーネントは、特に使用の際、数回の組立−分解サイクルを受ける必要がありうることは留意すべきである。
【0006】
当該ねじ管状コンポーネントの使用条件は、様々なタイプの負荷をもたらし、それにより、当該コンポーネントにおける影響を受けやすい例えば、ねじ領域、接合領域、封止領域等の部分にフィルムを用いなければならない。
【0007】
したがって、組立作業は、一般的に、例えば、ねじ接続部を介して接続される長さ数メートルの管の重量で軸方向に高い負荷がかかった状態で行われ、接続されるねじ要素の軸がわずかにズレても困難になりうる。これにより、ねじ領域及び/又は金属/金属封止面でゴーリングの危険が生じる。当該ねじ領域及び金属/金属封止面は、通常、潤滑剤でコーティングされる。
【0008】
さらに、当該ねじ管状コンポーネントは、多くの場合、有害環境で貯蔵され、組み立てられる。これは、例えば、塩気を含む霧がある沖合、あるいは、砂、粉塵及び/又は他の汚染物質がある陸上等の場合である。したがって、組立(ねじ領域)により又は締まり接触(金属/金属封止面及び隣接部)により協働すべき表面の腐食を防止するフィルムを用いるべきである。
【0009】
しかしながら、当該グリースは管状コンポーネントから押し出されて環境又は坑井中へ放出されうるため、環境基準に起因して、API(全米石油協会)規格のRP 5A3に準拠するグリースを用いても長期的解決策とはならず、結果として、特殊な清浄化作業が必要な施栓がおこる。
【0010】
長期の耐食性及び耐ゴーリング性が必要な問題を克服し、環境的優位性を満たすために、潤滑性で保護的な、乾燥(すなわち、グリース等のべたべたしない)固体フィルムが開発された。
【0011】
例えば潤滑機能等の機能のために、有機マトリックス中に潤滑油を組み入れた乾燥フィルムが開発されている。
【0012】
特許文献1の場合、当該文献は、適合性が良好なために潤滑油、好ましくは鉱物を含み、並びに摩擦下でフィルムの耐用年数が長くなるように自己修復性又は自己保全性がある、熱可塑性EVA共重合体をベースとする乾燥フィルムに関する。しかしながら、このタイプの溶液は、濃度が高いとフィルムと基材との間の界面の接着が低下し、潤滑油の濃度が10質量%まで制限され、さらに、フィルムの表面に粉塵、砂等が粘着してしまう。
【0013】
他の開発は、せん断下での高摩擦に由来する、流動抵抗性の熱可塑性重合体マトリックス中にシリコーンオイルを直接融合して行われる。当該原理は、肩トルク抵抗に影響を及ぼさず、接触しているねじ領域で肩トルクを低値に維持できるということを意味する。これにより、特に、理想的な組立トルクが決定され、組立の際の接続部の封止が確実になる。しかしながら、当該解決策は、API5A3グリースの場合の参照値の100%以上の肩トルク抵抗値のトルクに対して、初期組立手順の際に肩トルクが低くなることを意味し、組立手順を連続して多数行った後では利点がない。
【0014】
Ni又はCu又はNi−Cuの電気化学堆積でマイクロカプセル化された潤滑油の共堆積に関連する特許出願である特許文献2では別のアプローチも調査されている。当該手段により、補助的潤滑層を用いずに単一の表面処理で耐ゴーリング特性と潤滑特性とを組み合わせうる。しかしながら、電気化学的アプローチでは、均質で再現可能な堆積をねじシステム上に容易に製造できず、かつ、そのコストも無視できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2010/114168号
【特許文献2】国際公開第2010/073120号
【特許文献3】米国特許第4822081号
【特許文献4】米国再発行特許第RE30647号
【特許文献5】米国再発行特許第RE34467号
【特許文献6】国際公開第2006/104251号
【発明の概要】
【0016】
代替手段により、本出願人は、より広範で、さらにはより簡素なプロセスを用いて製造できる配合物をうるために、有機マトリックスを用いる解決策を見出した。
【0017】
特に、本発明は、少なくとも1つのねじ領域を含む末端部分がある炭化水素坑井の掘削及び/又は作業のための管状要素であって、当該末端部分が、液状の化合物で充填されたマイクロカプセルを含む熱可塑性又は熱硬化性マトリックスを含む乾燥フィルム(すなわち、周囲温度で接触しても粘着性ではない)により少なくとも部分的にコーティングされる、管状要素に関する。
【0018】
補足的又は代替的な任意選択の特徴を以下に定義する。
【0019】
当該マイクロカプセルは、100℃で動粘度2000mm/秒未満の疎水性液体化合物を、最大で85質量%まで含みうる。
【0020】
当該マイクロカプセルのサイズは、直径1〜60μm、好ましくは直径2〜10μmであってよい。
【0021】
当該マイクロカプセルの膜は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の少なくとも1つの壁、好ましくは二重壁で構成されうる。
【0022】
当該マトリックスは、1〜25質量%の範囲でマイクロカプセルを含みうる。
【0023】
当該化合物は、25℃で動粘度100〜12500mm/秒の及び分子量10000〜80000g/モルの直鎖状ポリジメチルシロキサン、100℃で動粘度5〜200mm/秒及び分子量1500〜13000g/モルのペルフルオロポリエーテル、粘度指数100以上のポリα−オレフィン又はポリアルキレングリコールタイプの合成油、100℃で動粘度15〜65mm/秒の範囲の、トリメリテートエステル、エステル化α−オレフィン重合体エステル及び二塩基性カルボン酸コポリマータイプと組み合わされた合成エステル(モノ−、ジ−又はトリ−エステル)、アルカリ度100〜500mgKOH/gの、アルキル多硫化物、硫化オレフィン、脂肪酸エステル、硫化合成エステル、硫化天然トリグリセリド、アルキルアリールスルホン酸をベースとするスルホン酸カルシウム、カルシウムカーボネートスルホネート、100℃で動粘度10〜1000mm/秒の、リン酸エステル塩、リン含有エステル、好ましくはアルキルアリールホスフェート又はホスホネート、脂肪族ホスフィット、アミン含有誘導体、例えば、イミダゾール誘導体もしくはトリアゾール誘導体等、の有機塩又は無機塩、ポリブテン、ポリイソブチレン、100℃で動粘度30〜2000mm/秒のアルキルポリメタクリレート、ポリスルフィドシラン又はメルカプトシラン、並びに鉱油中に懸濁された三ホウ酸カリウム、により定義される分類群に包含される分類群に含まれうる。
【0024】
マイクロカプセル化された化合物は、シリコーンオイル、フッ素化油及び合成エステル油から選択される潤滑油でありうる。
【0025】
マトリックスは、マイクロカプセル化された潤滑油を1〜15重量%、好ましくは5%〜10重量%で含みうる。
【0026】
当該マトリックスは、コポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンブチルアクリレート及びオレフィン系樹脂から選択される熱可塑性重合体でありうる。
【0027】
当該マトリックスは、ポリ尿素、ポリウレタン及びフルオロウレタンから選択される熱硬化性重合体でありうる。
【0028】
当該マトリックスは、アルファーピネンをベースとするテルペン樹脂、ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン及び樹脂酸、グリセリンでエステル化された水素化ロジン及び樹脂酸並びに重合ロジンから選択される粘着付与樹脂を含みうる。
【0029】
当該マトリックスは、固体潤滑剤、腐食防止剤、ワックス、可塑剤及び酸化防止剤から選択される1又は複数の添加剤を含みうる。
【0030】
末端部分のコーティングされた部分は、サンドブラスティング、化成処理、電解堆積及び非反応性処理からなる群から選択されるタイプの表面調製を施されうる。上記ねじ領域全体を乾燥フィルムでコーティングしてもよい。
【0031】
当該末端部分は、金属/金属接触のための少なくとも1つの封止面を含んでよく、当該封止面は潤滑性乾燥フィルムでコーティングされる。
【0032】
本発明はまた、末端部分がある少なくとも1つの管状要素を含む、炭化水素坑井の掘削及び/又は作業のための管状接続部であって、当該末端部分が液状の化合物で充填されたマイクロカプセルを含む熱可塑性又は熱硬化性マトリックスを含む乾燥フィルムにより少なくとも部分的にコーティングされている、管状接続部に関する。
【0033】
本発明の特徴及び利点は添付図面を参照する下記記載でより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】組立により2つの管状コンポーネントを接続する結果生じる接続部の線図。
図2】2つのねじ管状コンポーネントの組立曲線の線図。
図3】潤滑性乾燥フィルムでコーティングされた基材の線図。
図4】第1試験の配置の線図。
図5】第2試験の配置の線図。
図6】第3試験の配置の線図。
図7】各々潤滑油及びマイクロカプセル化された同じ潤滑油を含む、2つの組成の組立を比較する曲線の線図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示されるねじ接続部は、雄型末端部分1を備える回転軸10がある第1管状コンポーネントと雌型末端部分2を備える回転軸10がある第2管状コンポーネントを含む。当該2つの末端部分1及び2には各々の回転軸10に対して垂直に配置された端子表面があり、かつ、組立で2つのコンポーネントを相互接続するために互いに協働するねじ領域3及び4を備える。当該ねじ領域3及び4は、台形、自己ロック式又は他のねじタイプでありうる。さらに、組立で当該2つのねじコンポーネントを接続させた後で互いに封止締まりが接触することが意図される金属/金属封止面5、6が、各々雄型1及び雌型2のねじ領域3、4付近の末端部分に備わっている。雄型末端部分1は、当該2つのコンポーネントが互いに組み合わされる場合、雌型末端部分2に備わる対応する面8に隣接することになる端子表面7がある。
【0036】
変形例では、端子表面7とそれに対応する表面8との間の隣接部は、例えば、特許文献3、4又は5等に記載されるタイプの、ねじ領域3、4の自己ロック式締まりの協働で置き換えてもよい。
【0037】
図1及び3から分かるように、管状コンポーネントの少なくとも一方の末端部分1又は2は、液状の化合物で充填されたマイクロカプセル9を含む熱可塑性又は熱硬化性マトリックス13を含む乾燥フィルム12で少なくとも部分的にコーティングされている。
【0038】
用語「乾燥フィルム」は、接触しても粘着性ではない固体フィルムを意味する。
【0039】
より的確には、本発明は、摩擦を減らし、かつ、機能特性が改良された乾燥フィルムを提供するための、マトリックスとは異種の物質、特に潤滑油、のマイクロカプセル化又はナノカプセル化に関する。当該潤滑性乾燥フィルムは、マイクロカプセルを組み入れた熱可塑性又は熱硬化性重合体マトリックスからなる。
【0040】
他の活性な主材、例えば:
・温度関数として反応性で高いことが知られている液体又は揮発性防腐剤;
・防食及び極限圧力特性のため関心対象である過塩基性スルホン酸カルシウム;
・極限圧力特性のある硫黄含有油又はエステル化及び硫化された植物油;
・耐摩耗性、耐疲労性及び極限圧力能力のあるポリサルファイドシラン又はメルカプトシラン;
・耐摩耗特性及び摩擦調整特性のあるリン酸塩又はリン酸エステル;
・耐摩擦特性のある鉱油中に懸濁された三ホウ酸カリウム
等、のマイクロカプセル化を用いる熱可塑性又は熱硬化性重合体マトリックスがある乾燥フィルムも、明確に本発明に包含されることも重要である。
【0041】
特に熱可塑性重合体マトリックス中の活性主材のマイクロカプセル化は、混和性及び反応性に関連する制約条件を克服でき、経時的に、例えば、油であれば耐ゴーリング性及び潤滑性、又は腐食防止剤での封止が不具合である場合の耐食性等の効果を長引かせるように接続部の組立又は分解での加圧/せん断下で放出しうることを意味する。
【0042】
本出願人は、特に、摩擦軽減のため潤滑油のマイクロカプセル化に焦点を合わせる。油を用いると主に、自己潤滑性フィルム、特に、膜形成動態が低い熱硬化性フィルム(例えば、エポキシ、ポリウレタン、一成分系又は二成分系)、を形成しうることを意味する。面摩擦の概念は、乾燥フィルムの磨滅による摩耗の際に徐々に利用しうる潤滑剤を含む概念に置換される。油の包含は、期待される自己潤滑メカニズムを崩壊させる恐れがあるため、いかなる場合も基材の接着特性に影響を及ぼしてはならない。
【0043】
したがって、本出願人は、摩擦軽減のため、液体物質、特に油をマイクロカプセル化することを着想した。好ましい潤滑油は、以下のカテゴリ:
・25℃で動粘度100〜12500mm/秒及び分子量10000〜80000g/モルの直鎖状ポリジメチルシロキサン;
・100℃で5〜200mm/秒の動粘度及び分子量1500〜13000g/モルのペルフルオロポリエーテル;
・ポリα−オレフィン又はポリアルキレングリコールタイプの粘度指数が100以上の合成油;
・<酸価0.01mgKOH/gの合成エステル(モノ−、ジ−、又はトリエステル)、特に、トリメリット酸エステル;
・100℃で動粘度15〜65mm/秒のエステル化されたα−オレフィン及びカルボン酸共重合体タイプの重合体エステル;
・鉱油及び植物油
に包含される。
【0044】
説明される極圧及び耐摩耗潤滑油は、好ましくは、以下のカテゴリ:
・アルキルポリスルフィド、主にジ−tert−ヨードデシルペンタスルフィド;
・硫化オレフィン、脂肪酸エステル、硫化合成エステル、又は硫化天然トリグリセリド;
・アルカリ度100〜500mgKOH/gのアルキルアリールスルホン酸をベースとするスルホン酸カルシウム、カルシウムカーボネートスルホネート;
・リン酸又はチオリン酸エステル塩;
・リン含有エステル、好ましくはアルキルアリールホスフェート又はホスホネート;
・脂肪ホスフィット
に包含される。
【0045】
揮発性腐食防止剤は溶媒含有溶液又は油状溶液であってよく、好ましくは、以下のカテゴリ:
・イミダゾール又はトリアゾール誘導体等のアミン含有誘導体の有機塩又は無機塩
に包含される。
【0046】
以下のカテゴリ:
・100℃で動粘度10〜1000mm/秒の、ポリブテン、ポリイソブチレン;
・100℃で動粘度30〜2000mm/秒のアルキルポリメタクリレート;
・ポリスルフィドシラン又はメルカプトシラン;
・鉱油中に懸濁された三ホウ酸カリウム
の、他の液体物質が含まれてよい。
【0047】
当該マイクロカプセルは、重合体から形成された膜又は壁により構成され、主として液体内容物を含む。液体コンポーネント又は粒子をマイクロカプセル化するための様々な化学的又は物理的な方法が存在する。本発明では、マイクロカプセルは、界面水溶液化学重合法を用いて合成される。このマイクロ乳化法は、カプセル化されるコンポーネントの表面でのモノマーの重縮合反応による急速重合で壁を形成する。
【0048】
より詳細には、多機能性重合体が、マイクロカプセル化される油に溶解される。この溶液は、試薬の有無にかかわらず、アルカリ性pHの水相中に分散される。当該膜又は壁は、モノマー、例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアミド等、好ましくはアミノプラスト、から得られうる。
【0049】
アミノプラストは、硬度と剛性(引張強度は10GPaを超えうる)に優れ、耐磨耗性が非常に高い。
【0050】
好ましいアミノプラストは、膜材料としてメラミン−ホルマリンモノマーを使用する。関連するメラミン−ホルムアルデヒド熱硬化性樹脂は、無視できる水取込み(高い不浸透性の壁)、並びに尿素−ホルムアルデヒド樹脂と比較して、硬度並びに耐熱性及び耐化学薬品性が向上するが、これは、尿素と比べ、メラミンは二価で、環化される補助的な−NH基のためである。
【0051】
当該液体物質は、好ましくは疎水性であり、例えば、フッ化シリコーンオイル等であるが、鉱油又は合成エステルでもある。有利には、当該油の粘度は、100℃で1000mm/秒未満でなければならず、そうでなければ、水相カプセル化は、より高い粘度に限定されるであろう。
【0052】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の壁の数を調節することは、環境要件(例えば、耐熱性等)並びに内容物の放出のための圧力拘束に適合させうることを意味する。
【0053】
本発明で、連続する壁の数は、以下:
・組立領域及びマイクロカプセルの壁の数の関数として広範囲なせん断/加圧負荷への適用;
・機械的混合機を使用する撹拌下、及び噴霧によるせん断下での良好なせん断抵抗性、並びにその結果としての、マイクロカプセルの良好な無欠陥性;
・高融点の熱可塑性重合体マトリックス中に組み入れることができる、マイクロカプセル化された物質の良好な最大耐熱性
を確実にするために、1〜3の範囲である。
【0054】
空気中での熱重量分析により、シリコーンオイルマイクロカプセルの熱分解は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の二重壁があるマイクロカプセルの場合は370℃から生じ、シリコーンオイルの熱酸化は、高温側へ少なくとも80℃移動する。
【0055】
有利には、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の三重壁は、少なくとも300℃(持続的)並びに350℃(局部的)とほぼ同程度の耐熱性がある。マイクロカプセルがより高いヘルツ圧力において破裂できるように、三重壁のマイクロカプセルに260℃で熱後処理を行うことにより、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の機械的抵抗性を高めてもよい。
【0056】
有利には、得られたマイクロカプセルは、球体であり、そのサイズは、2〜60μm、主に2〜10μmである。
【0057】
有利には、動粘度1000mm/秒の直鎖状ポリジメチルシロキサンタイプのシリコーンオイルのマイクロカプセルは、機械的ミキサーを用いた撹拌により、二量体酸をベースとするコポリアミドの熱可塑性重合体マトリックスに組み入れられる。
【0058】
有利には、表面調製処理は、Cu−Sn−Znの三元電解堆積の形態で実施される。
【0059】
潤滑性乾燥フィルム12は、ねじ領域3、4の全て又は一部を覆いうる。
【0060】
潤滑性乾燥フィルム12は、金属/金属封止面5、6の全て又は一部を覆いうる。
【0061】
当該試験は、ある特定の数のパラメータ、特に:
・高ヘルツ負荷下における接触している表面での摩擦トルク(ブリッジマン試験);
・基材の接着力及び摩擦係数(スクラッチ試験);
・砂による耐汚染試験;
・耐摩耗性(pin−on−Vee試験);
・湿気条件での腐食試験
の評価からなる。
【0062】
ブリッジマン試験は、「プレミアム」接続部に特有の組立作業の際の乾燥フィルムのトライボロジー特性を特定できる。より的確には、ToSRとしても知られる肩トルク抵抗値CSBをシミュレートし、特定した。このトルクは、オイル業界で使用されるプレミアム接続部に特有の組立作業中に上昇する。
【0063】
図2の曲線は、行われた回転の数の関数としての組立(又は締付け)トルクを表す。図からわかるように、「プレミアム」接続部の当該組立トルクのプロファイルは、4つの部分に分けられる。
【0064】
第1部分P1では、ねじ管状接続部の第1コンポーネントの雄型ねじ要素(又はピン)の外部ねじは、同じねじ管状接続部の第2コンポーネントにおける対応する雌型ねじ要素(又はボックス)の内部ねじとは、まだ半径方向の締まりはない。
【0065】
第2部分P2では、組立が進むに従い、雄型及び雌型のねじ要素のねじの幾何学的干渉が、半径方向の締まりを生じる(小さいが、組立トルクを増加させる)。
【0066】
第3部分P3では、雄型ねじ要素の末端部分の外周部における封止面が、雌型ねじ要素における対応する封止面と半径方向に締まり、金属/金属封止を生じる。
【0067】
第4部分P4では、雄型ねじ要素の前部末端表面が、雌型ねじ要素の組立隣接部の環状表面との軸隣接状態にある。この第4部分P4は組立の終末期に対応する。
【0068】
第3部分P3の終了時に対応し、かつ第4部分P4の開始時に相当する組立トルクを、肩トルク(CAB)という。
【0069】
第4部分P4の終了時に対応する組立トルクを樹脂加工トルク(CP)という。この樹脂加工トルクCPを超えると、雄型組立隣接部(雄型ねじ要素の末端部分)及び/又は雌型組立隣接部(雌型ねじ要素の環状隣接部表面後部に位置される領域)が塑性変形し、それにより、封止面の樹脂加工により封止面間の接触の締め付けに関連する性能が低下しうることが想定される。
【0070】
樹脂加工トルクCPと肩トルクCABとの間の差を肩トルク抵抗値CSB(CSB=CP−CAB)という。ねじ管状接続部は、組立の終了時に最適な締まりばめを受け、これが、例えば張力に関連するだけでなく使用時の偶発的な分解にも関連するようなねじ接続部の最適な機械的強度並びに最適な封止性能を保証する。
【0071】
したがって、ねじ接続部の設計者は、所定のタイプのねじ接続部に対し、最適な組立トルクの値を、このタイプの接続部のすべての接続部に対して、樹脂加工トルクCPよりも低く(隣接部の樹脂加工とその結果として生じる不都合を避けるため)、かつ肩トルクCABよりも高くなるように、設定しなければならない。組立終了時にトルクがCABより低いと、雄型及び雌型要素の正しい相対位置決めが確保できず、その結果、それらの封止面の間での有効な締まりばめの正しい相対位置決めも保証できない。さらに、分解の恐れもある。肩トルクCABの有効値は、雄型及び雌型ねじ及び封止面における直径方向及び軸方向の機械加工の許容範囲に依存するので、同タイプの接続部でも、接続部により変動する。最適の組立トルクは、肩トルクCABより実質的に高くあるべきである。
【0072】
肩トルク抵抗値CSBが高いほど最適化された組立トルクを定めるためのマージンも大きく、並びに、ねじ接続部は操作上の応力に対してより高い抵抗性があるであろう。
【0073】
摩擦試験は、ブリッジマンタイプの装置を用いて実施した。このタイプの装置については、特に、D Kuhlmann−Wilsdorfらによる記事の「Plastic flow between Bridgman anvils under high pressures」,J.Mater.Res.,vol 6,no.12,Dec 1991に記載されている。ブリッジマン装置の略図及び機能例を図5に示す。
【0074】
この装置は、以下:選択された速度で回転できるディスクDQ;好ましくは円錐形で、ディスクDQの第1面に永久的に取付けられている第1アンビルEC1;好ましくは円錐形で、第1面と反対側のディスクDQの第2面に永久的に取付けられている第2アンビルEC2;第1圧力要素EP1及び第2圧力要素EP2、例えば、選択された軸圧力Pを印加できるピストン等;好ましくは円筒形で、第1圧力要素EP1の一方の面に永久的に取付けられている第3アンビルEC3;好ましくは円筒形で、第2圧力要素EP2の一方の面に永久的に取付けられている第4アンビルEC4、を含む。
【0075】
潤滑剤組成物を試験するために、ねじ要素を構成するものと同一の材料の2つの小片を当該組成物でコーティングして、第1試料S1及び第2試料S2を作製する。次に、第1試料S1を、第1アンビルEC1及び第3アンビルEC3の空いている面の間に介挿し、第2試料S2を、第2アンビルEC2及び第4アンビルEC4の空いている面の間に介挿する。次に、ディスクDQを、選択した速度で回転させ、第1圧力要素EP1及び第2圧力要素EP2の各々により、選択された軸圧力P(例えば、1GPaとほぼ同程度)を印加し、各試料S1及びS2が受ける組立トルクを測定する。当該軸圧力、回転速度、及び回転の角度は、組立終了時におけるヘルツ圧力及び隣接面の相対速度をシミュレートするように、ブリッジマンテストにおいて選択される。当該装置を用いて、試料S1及びS2に所定の組立トルクがかかるように、パラメータ(組立トルク、回転速度)のいくつかの異なる組み合わせを固定することができ、それにより、これらの試料S1及びS2が、設定された組立トルクプロファイルに近似しているか否か、特にそれらが、選択された組立トルク対して選択された閾値以上の完全回転の回数に、ゴーリングが生じる前に到達できるか否かをチェックできる。
【0076】
本発明の場合、選択された接触圧力は1GPaまで上がり、回転速度は1rpmまで上がった。当該試料は、炭素鋼から作製し、機械加工し、その後、以下の表に肩トルク抵抗値(ToSR又はCSB)の測定値と共に一覧表示される、様々な乾燥フィルム配合物でコーティングした。
【0077】
図4に図式的に示されるようなスクラッチ試験により、表面へのフィルムの接着力又は接着性又は表面調製を測定できる。この方法は、増加する負荷を受ける球状ビーズでフィルムをせん断及び変形させる工程からなり、当該方法により、2つの主要なトライボロジーパラメータ、すなわち、摩擦係数及びフィルム凝集の消失の出現に対応する臨界負荷、を測定できる。
【0078】
当該実験条件は、Inconel 718から形成された直径5mmの球状圧子及び炭素鋼又はZ20C13から形成された1マイクロメートル未満の粗度Raの金属試料、並びに以下のパラメータ:10N〜310Nへ増加する負荷(15N/秒の負荷増加速度において)、2mm/秒のビーズの変位速度、20秒の期間、及び行路長40mm、を用いる。
【0079】
砂の除染試験は、フィルムの耐熱性、特に、有害環境の汚染物質、特に、組立の際の摩擦に影響を及ぼしうる「熱い」と表される領域における砂、についての付着性を特定する工程からなる。それは、単純で重要な特性である軟化点と関係があり、当該軟化点からは、圧力下において空気を用いても、もはやフィルムを清浄化することはできない。当該実験条件は、リン酸亜鉛処理又はCu−Sn−Zn電解堆積の形態を取りうる表面調製によりおそらく1μm未満の粗度Raがある炭素鋼又はZ20C13から形成された金属試料を使用する。当該試料を、フィルム適用装置を用いてコーティングする。厚さは、30〜40μmの範囲でなければならず、試験条件は、以下:
・最小で60cmのフィルムの所定の表面積への鋳物砂(d=1.36)の層を適用する工程;
通気オーブンにおいて75℃〜93℃の範囲の試験温度に1時間加熱する工程;
・圧力下において空気を用いて試験温度において清浄化する工程;
・残存する砂の量を測定する工程
からなる。
【0080】
合格基準は、最大0.5%の残留砂として定義される。
【0081】
pin−on−Vee試験は、特に、規格ASTM D 2670及びASTM D 3233により、高速で潤滑流体の耐摩耗特性及び極圧特性を評価するために用いられるが、ASTM D 2625の方法を用いて低速で固体潤滑剤を評価するのにも用いられる。
【0082】
当該pin−on−Vee試験は、以下の接続部に関する問題:
・準閉鎖接触の幾何学構造(第3の潤滑剤本体を捕捉するため);
・接続部に一致する圧力−速度範囲(PVダイヤグラム);
・組立−分解シミュレーションのための単一方向試験又は交互モード試験の実施の実現性を克服するように適合される。
【0083】
図6に表されたpin−on−Vee試験の接点の幾何学構造は、Cu−Sn−Zn電解堆積又はMnリン酸塩皮膜処理で処理された炭素鋼又は合金鋼から形成され、試験フィルムでコーティングされたV字の2つのVブロックと、その間に挟設されて回転及び加圧される、マンガンリン酸塩皮膜処理の有無における炭素鋼又は合金鋼から形成されたピンPとからなり、試験条件は、負荷785N、ピン回転速度60rpm、平均接触圧力560MPa及びピン摺動速度20mm/秒である。
【0084】
この試験の目的は、接続部での調査を実施せず、様々な乾燥フィルムの耐ゴーリング性をシミュレート及び評価することである。この試験は、実際の接続部での試験により様々なフィルムの性能を比較するために用いうる。
【0085】
ゴーリング評価基準は、固体潤滑剤のフィルムの負荷能力の測定に関連する規格ASTM D 2625−4を参考に、1130Nmmとほぼ同程度の初期状態と比較してトルクの急増又は負荷785Nに対する0.15とほぼ同程度の摩擦係数に対応して定義される。一般的に、ゴーリングは材料及び構成に関係なく、印加される負荷が減少すると観察される。
【0086】
中程度の湿気の腐食試験は、25℃で密度1.029〜1.036及び25℃でpH6.5〜7.2の50g/L食塩水溶液の35℃の気候室で実施され、平均速度1.5mL/時で回収される中性塩霧試験からなる。無錆無傷の試料は、曝露後にISO規格9227のReOクラスに相当しなければならない。当該方法は、腐食保護フィルム(金属材料上の金属コーティング又は有機物コーティング)の有無における金属材料の比較品質が維持されていることを検証する手段を提供する。耐水性試験は、当該試料に対し、気候室で実施されるDIN規格50017に従う腐食促進試験を行う工程からなる。1日あたり1サイクルを含むこの試験は、35℃、相対湿度90%で8時間の条件で凝結により水蒸気を被着させる工程と、当該試料を乾燥させる工程とからなる。7サイクル後、コーティングにより保護された基材が腐食しているか否かを目視によりチェックする。
【0087】
優れた耐性は、ISO規格4628における分類、すなわち、亜鉛を伴うリン酸塩皮膜処理(8〜20g/mのリン酸塩の堆積)又はNiの中間層がある三元Cu−Sn−Zn合金の電解堆積で処理された炭素鋼プレートにおいて腐食なし、膨れなし、割れなし、剥がれなし、に相当しなければならない。
【0088】
本出願人は、特に、直鎖状ポリジメチルシロキサンタイプのシリコーンオイル、特に、WACKERによりWACKER FLUID AKの商標において、又はBLUESTARによりRHODORSIL FLUIDの商標において販売されるような、様々な分子量グレードを評価した。
【0089】
さらに、本出願人は、特にSOLVAY SOLEXISによりFOMBLINの商標において供給されるペルフルオロポリエーテルオイルと性能を比較した。
【0090】
調査したフィルムは、粘塑性及び耐流動性挙動がある1種又は複数種の熱可塑性有機重合体、例えば、二量体酸又はエチレン−酢酸ビニル共重合体をベースとするコポリアミド樹脂等、粘着付与樹脂、ワックス、固体潤滑剤、及び腐食防止剤を含みうる。
【0091】
当該フィルムは100%固体であるか又は水性分散液である熱硬化性樹脂も含みうる。
【0092】
当該フィルムを、表面処理、例えば、炭素鋼の場合のリン酸塩皮膜処理、又は合金鋼の場合のウッドニッケルの副層を含むCu−Sn−Zn電解堆積等、の有無において、炭素鋼又は軽合金鋼試料に適用した。調査したフィルムの厚さは20〜45μmであった。
【0093】
次に、本研究者は、下記で説明される構成のねじシステムにおける潤滑油放出効果を確認した。当該フィルムに空圧式噴霧法を適用した。得られた乾燥フィルムの厚さは30〜80μmであった。
【0094】
この研究では、本発明者らは、主に、マイクロカプセル中に含有される潤滑油の圧力下での放出が耐久性に及ぼす効果をpin−on−Vee試験(Falex試験から誘導される)を用いて、増加する負荷下での動的接着性及び摩擦抵抗力又は磨耗抵抗力に及ぼす効果を熱可塑性有機重合体をベースとするフィルムにおけるスクラッチ試験を用いて、最後に、肩トルク抵抗値に及ぼす効果を、ブリッジマンToSR試験を用いて測定した。
【0095】
参照オイルは、動粘度1000mm/秒の直鎖状ポリジメチルシロキサンタイプの潤滑油であった。
【0096】
当該参照オイルをメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の二重壁膜中にマイクロカプセル化し、加熱後処理は行わなかった。
【0097】
当該参照オイル又はマイクロカプセル化された参照油を、機械的攪拌機を用いて、酸二量体をベースとする共重合体タイプの熱可塑性有機重合体中に分散させた。フィルムの参照組成を第1表に記載する。
【0098】
【表1】
【0099】
代替の参照組成を表2に記載する。
【0100】
【表2】
【0101】
マイクロカプセルに収容されるシリコーンオイルの質量は、膜を構成するメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の壁の数に依存し、15%〜25重量%の範囲でありうる。
【0102】
より的確には、マイクロカプセルの質量濃度は、参照配合におけるシリコーンオイルの質量濃度に関連する。
【0103】
第2表及び第3表に示した、スクラッチ試験を用いて実施した試験は、油を直接使用する場合と比較して、薄層中に分散されたマイクロカプセル中に収容されるシリコーンオイルの漸進的放出が、重合体マトリックスの凝集を向上させ、接触面に対して非粘着効果を制限することに貢献することを示した。
【0104】
平均摩擦係数は参照とマイクロカプセルとの間で同等であり、それぞれ、質量濃度の関数として0.09〜0.13未満であった。シリコーンオイルマイクロカプセルの設計は、摩擦を維持又は低減すると共に、開放接点での材料の凝集を強化することに貢献する。潤滑フィルムを破裂させるための最小負荷は、マイクロカプセルを伴うフィルムの場合は60Nであり、すなわち、最小接触圧力は220MPaであった。当該フィルムは、組立の間接触状態がより長く維持された。
【0105】
さらに、カプセルの破裂と油の放出は、まさに負荷をかけた時点から、最小限接触圧力に相当する100mPa、最小限の5Nから生じた。実際に、摩擦係数のプロファイルは、マイクロカプセルの有無にかかわらず、同一であった。
【0106】
当該試験では、潤滑油の効果は二重壁膜でのマイクロカプセル化で保持又は増強された。
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
耐ゴーリング性を評価するために、同じ参照を用いて比較試験を行った。構成は、銅−スズ−亜鉛電解堆積を伴う炭素鋼から形成されたV字ブロックと、機械加工のみされた炭素鋼ピンであった。V字ブロックのみをコーティングした。結果を表5及び表6に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
耐ゴーリング性は、マイクロカプセルの破壊強度に関係なく、マイクロカプセル化されたシリコーンオイルにより、参照と比べてかなり高められた。同濃度では、ゴーリング前の距離は、参照に対して少なくとも25%増加した。さらに、マイクロカプセルの最適濃度は、総配合物質量の12%未満でなければならないことが試験から明らかとなった。pin−on−Vee試験により、接触状態のフィルムのより良好な再凝集を確実にするためにシリコーンオイルのマイクロカプセル化された形態を用いる重要性が確認される。
【0113】
最初の結果を実証するため、本出願人は、炭素鋼連結部を銅−スズ−亜鉛電解堆積で処理し、炭素鋼ピンを亜鉛リン酸塩皮膜処理により処理し、さらに特許文献6に記載のUV硬化性アクリル樹脂でコーティングした構成の、7” 29# L80 VAN TOP−HH PFBS接続部を作製した。
【0114】
非オイル参照の組立トルクは、21000Nmであった。ピン/ボックスシステムを、それぞれの接続/取外し工程の間に、圧縮空気を用いて清浄化した。これらの条件下において、非オイル参照は、ショルダリングがなかった。
【0115】
表7及び表8は、一方の事例はマトリックス中に組み入れられた直鎖状ポリジメチルシロキサンオイル(25℃で1000mm/秒)を含む乾燥フィルムにより、他方の事例は直鎖状ポリジメチルシロキサンオイル(25℃1000mm/秒)の二重壁又は強化された三重壁マイクロカプセルを含む乾燥フィルムによりコーティングされた7” 29# L80 VAN TOP接続における比較組立の様々な結果を示している。
【0116】
【表7】
【0117】
【表8】
【0118】
オイル不含の参照ではショルダリングが無いことを前提とすると、オイルのマイクロカプセル化は、非オイルの参照と比べ、存在する肩トルク値の減少に貢献する。肩トルク値の減少は、マトリックス及び壁の数にかかわらず最小で10%であった。同時に、耐ゴーリング性は最小で2倍であった。
【0119】
有利には、図7から分かるように、肩トルクCAB値及び耐ゴーリング性は、特に、潤滑油の二重壁マイクロカプセル化により改良される。実際に、直鎖状ポリジメチルシロキサン油マイクロカプセルを含む乾燥フィルムの肩トルクCAB2の値は、マトリックス中に単に組み入れられただけの直鎖状ポリジメチルシロキサン油を含む乾燥フィルムの肩トルクCAB1の値よりも著しく低値であったことが分かるであろう。この理由から、直鎖状ポリジメチルシロキサン油マイクロカプセルを含む乾燥フィルムの肩トルク抵抗値CSB2が最適化される。
【0120】
オイルマイクロカプセル化を用いないフィルムと比較して、オイルマイクロカプセル含有するフィルムは、特にピンシステム側により移動することで接触状態を維持する。マイクロカプセル化を用いると凝集能及び再凝塊化能が高まる。ベアリング及びピンシステムの隣接接触領域は、500MPaを超える接触圧力を受けており、当該領域は実質的により良好に保護される。UV硬化性アクリル樹脂は損傷を示さないが、損傷は、参照の場合、オイルの有無に関係なく視認される(破砕、割れ、ひび、剥離)。
【0121】
当該接続部について得られた結果は、組立の間に耐流動性熱可塑性フィルムを接触状態に維持するため、かつ優れた潤滑性及び耐ゴーリング性を確保するための、潤滑油のマイクロカプセル化の利点を裏付ける。
【0122】
摩擦の減少に関する潤滑油放出の効果は、用いた表面が小さすぎた実験室での結果と比べ、当該接続部の組立の場合ではより顕著であった。接続部の場合、閉込めと拡張接触面により、破裂現象と含有するオイルの放出を実証しえた。
【0123】
同時に、本研究者らは、同じ条件下で肩トルク抵抗値を測定した。
【0124】
第9表では、オイルを含有するフィルムでコーティングされた場合の7” 29# L80 VAM TOP接続部と、オイルマイクロカプセル含有フィルムでコーティングされた場合との間の肩トルク抵抗値を比較し、これは、潤滑油のマイクロカプセル化が、API5A3参照グリースで測定された肩トルク抵抗値に影響を及ぼさないことを裏付ける。
【0125】
【表9】
【0126】
したがって、本発明は、以下の利点:
・接触温度に関係なく、初期組立の際の肩トルクに対する優良値による摩擦面の非常に良好な分離;
・様々な組立領域に印加される負荷の関数として、想定される液体潤滑物質の制御された放出による自己潤滑性;
・接触状態での液体潤滑物質の制御された放出と、マトリックス及び基材の間の良好な接着との組み合わせ効果による、ゴーリングの生じない、多くの連続する組立/分解作業を提供する非常に良好な耐久性;
・砂及び粉塵による汚染に対する十分な抵抗性;
・広範囲な温度での液体潤滑物質の無欠陥性;
・APIグリースベースの溶液と比較して、樹脂加工領域の肩トルク抵抗値の維持;
がある、熱可塑性重合体又は熱硬化性重合体中への疎水性液体物質、特に、潤滑油又は極圧油の、調節可能なマイクロカプセル化による潤滑フィルムの製造を提案する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】