特表2015-502430(P2015-502430A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-502430皮膚粘着医療製品用の緩衝粘着剤組成物および該組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-502430(P2015-502430A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】皮膚粘着医療製品用の緩衝粘着剤組成物および該組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20141219BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 107/00 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 183/00 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20141219BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20141219BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20141219BHJP
   A61F 13/02 20060101ALN20141219BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J133/02
   C09J123/26
   C09J107/00
   C09J109/00
   C09J153/00
   C09J133/08
   C09J133/10
   C09J123/00
   C09J183/00
   C09J123/22
   C09J153/02
   A61L15/06
   A61F13/02 310J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-545009(P2014-545009)
(86)(22)【出願日】2013年2月27日
(85)【翻訳文提出日】2014年6月2日
(86)【国際出願番号】US2013027966
(87)【国際公開番号】WO2013130564
(87)【国際公開日】20130906
(31)【優先権主張番号】61/604,663
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/668,178
(32)【優先日】2012年7月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514085182
【氏名又は名称】ホリスター・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Hollister Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135493
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ムラハタ
【テーマコード(参考)】
4C081
4J040
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BA14
4C081BB01
4C081BB04
4C081CA021
4C081CA081
4C081CD32
4C081DA02
4C081DC03
4J040CA011
4J040CA031
4J040DA001
4J040DA022
4J040DA102
4J040DA141
4J040DA161
4J040DF011
4J040DF041
4J040DF051
4J040DM001
4J040DM011
4J040EK001
4J040LA01
4J040LA11
4J040MA14
4J040NA02
(57)【要約】
本発明は、高分子量ポリマー緩衝剤を含有してなる緩衝粘着剤組成物、および、該組成物を組み込んだ創傷被覆材とオストミー皮膚バリヤなどの製品に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH緩衝および流体吸収を提供する高分子量ポリマー緩衝剤からなる皮膚粘着デバイスのための粘着剤組成物。
【請求項2】
上記高分子量ポリマー緩衝剤が部分的中和高分子量ポリマー酸であって、ポリアクリル酸、ポリ(2−アルキルアクリル酸)、アクリル酸と2−アルキルアクリル酸モノマーの共重合体、マレイン酸と2−アルキルアクリル酸とアクリル酸の共重合体、及び、遊離カルボン酸基を含有する側鎖で置換したオレフィン重合体から構成される群から選択され、上記アルキルの炭素鎖長が1から5であり、かつ直鎖または分岐鎖である、請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
上記高分子量ポリマー緩衝剤が部分的中和高分子量ポリアクリル酸である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
上記部分的中和高分子量ポリアクリル酸の中和の程度が、約20%から約40%である、請求項3記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1記載の粘着剤組成物であって、天然ゴム、合成ゴム、スチレンブロック共重合体、ポリビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリレート(アクリレートとメタクリレートの両方を含む)、ポリオレフィン、及びシリコーン、から構成される群から選択される感圧粘着剤をさらに含有してなる粘着剤組成物。
【請求項6】
上記感圧粘着剤がポリイソブチレンである請求項5記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1記載の粘着剤組成物であって、更に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有してなる粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1記載の粘着剤組成物であって、更に綿繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維から構成される群から選択される繊維を含有してなる粘着剤組成物。
【請求項9】
可撓性外側層と、
該可撓性外側層の片面に施された高分子量ポリマー緩衝粘着剤と、
を含有してなる、創傷被覆材であって、上記粘着剤はpH緩衝と流体吸収を提供することを特徴とする創傷被覆材。
【請求項10】
上記高分子量ポリマー緩衝剤が、
部分的中和高分子量ポリマー酸であって、ポリアクリル酸、ポリ(2−アルキルアクリル酸)、アクリル酸と2−アルキルアクリル酸モノマーの共重合体、マレイン酸と2−アルキルアクリル酸とアクリル酸の共重合体、及び、遊離カルボン酸基を含有する側鎖で置換したオレフィン重合体から構成される群から選択され、
上記アルキルの炭素鎖長が1から5であり、かつ直鎖または分岐鎖である、
請求項9記載の創傷被覆材。
【請求項11】
上記高分子量ポリマー緩衝剤が部分的中和高分子量ポリアクリル酸であることを特徴とする請求項10記載の創傷被覆材。
【請求項12】
上記部分的中和高分子量ポリアクリル酸の中和の程度が約20%から約40%である、請求項11記載の創傷被覆材。
【請求項13】
pH緩衝と流体吸収を提供する高分子量ポリマー緩衝剤を含有する粘着剤を有するオストミー皮膚バリヤ。
【請求項14】
高分子量ポリマー緩衝剤が、ポリアクリル酸、ポリ(2−アルキルアクリル酸)、アクリル酸と2−アルキルアクリル酸モノマーの共重合体、マレイン酸と2−アルキルアクリル酸とアクリル酸の共重合体、及び、遊離カルボン酸基を含有する側鎖で置換したオレフィン系重合体、から構成される群から選択される、部分的中和高分子量ポリマー酸であり、上記アルキルの炭素鎖長が1から5であり、かつ直鎖または分岐鎖である、請求項13記載のオストミー皮膚バリヤ。
【請求項15】
高分子量ポリマー緩衝剤が部分的中和高分子量ポリアクリル酸である、請求項14記載のオストミー皮膚バリヤ。
【請求項16】
部分的中和ポリアクリル酸の中和の程度が、約20%から約40%である上記請求項15記載のオストミー皮膚バリヤ。
【請求項17】
ただ一工程の混合操作で感圧粘着剤と高分子量ポリマー酸とを混合することより成る、pH緩衝と流体吸収を提供する皮膚粘着デバイスのための緩衝粘着剤組成物を製造する方法。
【請求項18】
上記高分子量ポリマー緩衝剤が、
ポリアクリル酸、ポリ(2−アルキルアクリル酸)、アクリル酸と2−アルキルアクリル酸モノマーの共重合体、マレイン酸と2−アルキルアクリル酸とアクリル酸の共重合体、及び、遊離カルボン酸基を含有する側鎖で置換したオレフィン系重合体、から構成される群から選択される、部分的中和高分子量ポリマー酸であり、上記アルキルの炭素鎖長が1から5であり、かつ直鎖または分岐鎖であり、
感圧粘着剤が天然ゴム、合成ゴム、スチレンブロック共重合体、ポリビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリレート(アクリレートとメタクリレートの両方を含む)、ポリオレフィン、及びシリコーン、から構成される群から選択される請求項17記載の方法。
【請求項19】
上記高分子量ポリマー緩衝剤が、高分子量ポリアクリル酸と高分子量ポリメタクリル酸とポリイソブチレンを含有してなる感圧粘着剤とにより構成される群から選択される請求項18記載の方法。
【請求項20】
さらにスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体をただ一工程の混合操作で高分子量ポリマー緩衝剤および感圧粘着剤と混合する請求項19記載の方法。
【請求項21】
さらにポリプロピレン繊維をただ一工程の混合操作で高分子量ポリマー緩衝剤および感圧粘着剤と混合する請求項20記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年2月29日に出願された米国仮特許出願61 /604,663号、および2012年7月5日に出願された米国仮特許出願61 /668,178号に基づく優先権を主張するものであり、それぞれの米国仮特許出願の開示は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本発明は、オストミーに係る製品、創傷被覆材、および、その他の、ユーザーの皮膚表面に粘着し固定するための医療製品等の医療用被覆剤および皮膚粘着デバイスのための粘着剤組成物の技術分野に関する。本発明は特に、高分子量緩衝剤を含み、液体を吸収して、正常な皮膚のpHレベルを維持することを可能にする粘着剤組成物、および組成物を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの医療用途において、製品は、創傷被覆材又はオストミー皮膚バリヤの場合のように、皮膚に直接粘着される。このような製品は、該製品を所定の位置にて維持するために皮膚にしっかり固定されなければならず、汗、創傷滲出液、体液糞便などのような、該製品の下や近くから出てくるあらゆる流体を吸収しなければならない。
創傷被覆材は、一般的に、治癒を促進するために、いくつかの機能を果たす。これらの機能には、最適な治癒環境の生成と、微生物の活性の低下と、感染からの傷口の保護と、のために、創傷滲出液の吸収およびpHの調節が含まれる。多くのこのような創傷被覆材は自己粘着性であり、典型として着用者の創傷周囲の皮膚に粘着する粘着層を有している。多くの場合、皮膚は創傷被覆材の下に炎症を起こすことが知られる。
【0004】
知られている創傷被覆材は、いくつかの個々の成分を使用することにより、上記の機能を実現する。例として、知られている被覆材は、創傷滲出液を吸収するために、親水コロイド、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ペクチン、またはゼラチンをよく使用する。いくつかの親水コロイドは独立的にpHを調整することも可能であるが、それらが提供することができるpH緩衝の程度は、被覆材の中の有用な親水コロイドの量に制限され、ひいては被覆材の所望の流体処理特性に依存する。その上、親水コロイド単体での緩衝効果は最適ではない。
また、上記のような親水コロイドを含有する粘着剤組成物の製造には、これらの材料の温度感度により、複数の工程が必要である。工程数と成分の数が理想的には1つのみであるが、最小とすることが望ましい。
【0005】
親水コロイドを含む粘着剤組成物は、米国特許の中において、例えば、第5571080、3339546、4192785、4296745、4367732、 4813942、4231369、4551490、4296745、4793337、4738257、4867748、5059169、および7767291にて開示されるように、よく知られ、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。親水コロイドは、一般に親水コロイド皮膚バリヤまたは親水コロイド創傷被覆材として言及されるものに使用される。このような皮膚バリヤおよび創傷被覆材は、通常、液体吸収及び膨潤性不連続相としての粘着剤全体に分散した一つ以上の親水コロイド粒子との連続相としての水不溶性感圧粘着剤を含む。
商業的な皮膚バリヤおよび創傷被覆材の、水不溶性粘着剤相は、一般的には、ポリイソブチレン(PIB)、またはスチレン - イソプレン - スチレン(SIS)のようなブロック共重合体、またはこれらの混合物からなる。表面粘着性は、粘着付与剤成分の添加によって修正してもよい。
【0006】
永久的または一時的なオストミー(オストミー、イレオストミー等)を用いる患者は排出された糞便や尿を含むためのポーチを必要としている。該ポーチは通常、皮膚へポーチを取り付ける粘着剤皮膚バリヤと共に周辺皮膚に取り付けられる。皮膚バリヤは通常三日から五日毎に取り替えられるが、一週間以上、所定位置において維持されることができる。該バリヤの使用の間、糞便材料との長期間の接触により、周囲皮膚が炎症を起こす恐れがある。時間が経つにつれて、炎症が深刻になりうる。
【0007】
いくつかの用途では、オストミー皮膚バリヤは、更なる保護のためにその外周に粘着テープ境界線を有する。上記境界線のための粘着剤は通常アクリル系粘着剤である。本明細書で使用する用語「皮膚バリヤ」は、粘着テープ境界の有無にかかわらず、任意の皮膚バリヤを含むことを意図している。
【0008】
創傷滲出液および糞便材料の両方は、タンパク質分解酵素と脂肪分解酵素を含む。閉鎖湿潤環境に閉じ込められているこれらの酵素は、角質層を劣化させ、観測される炎症の一因となると考えられている。さらに、創傷被覆材やオストミー皮膚バリヤの両方は、通常取り外され、定期的に再適用されるため、その下の皮膚の健全性が損なわれ、通常の皮膚の場合よりも炎症を起こしやすくなる。
正常な皮膚は、一般的には約4.0〜5.5の弱酸性のpHの、皮膚の表面を維持する、いわゆる「酸マントル」を有する。このpH範囲は、有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を遅らせ、一方において皮膚の健全性を維持するために支援する。このpHレベルでは、創傷滲出液や糞便からの、結果的に損傷の原因となるタンパク質分解酵素と脂肪分解酵素の活動は、重度ではない。しかしながら、創傷滲出液およびストーマからの流体は、通常、6.0から8.0の範囲のpHを有する。正常な皮膚のpHを超えるpHのこの増大は、酵素の活性における顕著な増加を引き起こし、したがって、炎症を引き起こす能力の顕著な増加を引き起こす。
【0009】
ペクチンおよびCMCなどの親水コロイドを混入した従来の皮膚バリヤは、pH緩衝能力が限られていた。水または生理食塩水にさらされたとき、該皮膚バリヤは約4.0から5.5の範囲内の所望のレベルにpHを調整することができる。しかしながら、人工肛門からの排出液や創傷滲出液などの生理的液体は緩衝され、典型的には中性に近いpHレベルに緩衝されることに注意することが重要である。従来の皮膚バリヤがこのような流体に曝されると、生理液に固有の緩衝能力は、皮膚バリヤの弱い緩衝能力を圧倒する。その結果、皮膚バリヤの表面のpHは、皮膚バリヤに挑むことになる流体のpHに近づくまで増加する。したがって、強化されたpH緩衝能力を有する皮膚バリヤを提供することが望ましい。
上記を考慮して、本質的にユーザーの皮膚に炎症を引き起こすことなく、約4.0から約5.5で、創傷被覆材又はストーマ皮膚バリヤ等の製品の下の皮膚のpHを維持するために適切な緩衝剤を含有する粘着剤組成物を有することが望ましい。また、最小限の数の工程で製造された、最少数の成分を使用した組成物を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様において、高分子量ポリマー緩衝粘着剤は、流体吸収およびpH緩衝の能力を有するものとして提供される。
本発明の別の態様において、高分子量ポリマー緩衝粘着剤を調製するための方法が提供される。
本発明の別の態様において、創傷被覆材が、流体吸収およびpH緩衝の能力を有する高分子量ポリマー緩衝剤を含有するように提供される。
本発明の別の態様において、オストミー皮膚バリヤが、流体吸収およびpH緩衝の能力を有する高分子量ポリマー緩衝剤を含有するように提供される。
本発明の別の態様において、皮膚粘着医療デバイスのような、皮膚粘着デバイスを製造するための高分子量ポリマー緩衝剤の使用方法が提供される。
【0011】
本発明の一実施形態は、創傷被覆材であり、該被覆材は、可撓性を有する外側層、およびその片面に高分子量ポリマー緩衝粘着剤を含有する創傷被覆材であり、前記粘着剤は、着用者の皮膚への刺激を最小限にするpH緩衝および流体吸収を提供する。
本発明の別の実施形態は、一方の面に、着用者の皮膚への炎症を最小限にするpH緩衝と流体吸収とを提供する粘着剤組成物である高分子量ポリマー緩衝粘着剤を含有するオストミー皮膚バリヤである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態は、発汗、創傷滲出液及び糞便などの体液を吸収してpHを調整し、酵素活性を低下させる高分子量緩衝剤を含有する組成物からなる粘着剤に関する。
特に、本発明の実施形態は、酸性部位が豊富な高分子量ポリマーを使用するものである。ポリ酸官能基を有するポリマーは、それらのプロトン化および中和された混合物の使用を介して、緩衝剤として機能しうる。実際には、酸性部位の豊富さは、単一のポリマーが部分的に中和されるのを可能にし、各ポリマー鎖は、酸性および塩基性の両方の部位を有するようになり、それにより単一の種類のポリマーからの有効な緩衝剤が形成される。部分的に中和されることが可能であるペンダントカルボキシル基を有する任意の高分子量ポリマーは、本発明における使用に適している。適切なポリマーは、例えば、ポリアクリル酸、および、内部のアルキル鎖の炭素鎖長が1から5である直鎖又は分枝鎖であり得るポリ(2−アルキルアクリル酸)を含む。ポリメタクリル酸は好ましいポリ(2−アルキルアクリル酸)である。その他の適切なポリマーは、アクリル酸および2−アルキルアクリル酸モノマーの任意の共重合体、マレイン酸と上記モノマーとの共重合体、又は、遊離のカルボン酸基を含有する側鎖で置換されたオレフィン系ポリマー、例えば二酸、三酸、若しくは、ポリ酸でエステル化されたポリビニルアルコール(例えばポリビニルアルコールサクシネート)などが挙げられる。
関連技術分野の当業者によって理解されるように、本発明の緩衝粘着剤組成物には、実施例1に記載のリン酸緩衝負荷試験中、試験製品のpHを約6.0未満に維持することができる、部分的に中和可能なペンダントカルボキシル基を有する任意の高分子量ポリマーを採用することができる。
【0013】
特に本発明の実施形態における使用に適したポリマーは、ポリアクリル酸(PAA)及びポリメタクリル酸(PMA)を含む。PAAとPMAは共に例えば、シグマ・アルドリッチ社から入手が可能であり、例えば様々な粉末や溶液等の種類および分子量がある。アクリル酸誘導体のうち、PAAが好ましく、その理由は化合物のグラム当たりのカルボン酸部位の最高密度を有しており、従って化合物のグラム当たりの緩衝の最大範囲を有するからである。本明細書で使用する「高分子量」PAAは、約60,000ダルトンより大きく、数百万ダルトンまでのことを意味する。この用語は、PMAおよび上記の他のポリマーに対しても同様の意味を持つ。
上述したように、これらのポリ酸性ポリマーは、同一の分子上における緩衝系の、酸および塩の成分の両方を提供するために、部分的に中和可能である。中和の一般的な程度は、約20%から約40%であり、より好ましい範囲は、PAAに対しては約25%から約37%であり、他のポリマーに対しても類似する範囲である。これらの範囲の値は、境界値内にある全ての値を含み、特に28%、31%、34%、および36%である。当業者は、特に求められるpH緩衝領域を達成するため、特定のポリマーおよび使用のための適切な中和の程度を容易に決定することができる。PAAの部分的中和は、求められる中和程度が達成されるまで、NaOHなどの、化学量論的に適切な量の強塩基と、適切な場合には水を加えたPAAを混合することにより達成される。他のポリマーも同様に処理してもよい。PAAのような部分的中和ポリ酸は市販されている。
【0014】
PAAおよび関連のポリマーは、架橋および非架橋、いずれの形態でも存在し、また架橋の程度も任意である。架橋PAAは優れた吸収剤であることが知られている。しかしながら、本発明で使用されるポリマーは架橋であるのは好ましくない。本発明の発明者は、(例えば)架橋PAAが過度の吸収性を有し、本発明の中での使用は過度の膨張と、使用中の製品の破裂の可能性を引き起し得ることを発見した。そのうえ、非架橋PAAおよび関連のポリマーは、本発明の粘着剤組成物が用いられるデバイスの皮膚の上での維持を支援する粘膜付着性を形成する能力から、より好ましい。
上述したように、PAAおよびPMAの高分子量ポリマーは、いずれもが効果的なpH緩衝を提供し、汗や創傷滲出液や糞便などの流体を吸収する。粘着剤マトリクスの中に該ポリマーが分散されたときは、ポリマーは特に、ペクチンやCMCなどの親水コロイドとより似た働きをする。すなわち、該ポリマーは、吸収し、膨潤し、粘性溶液を形成し、この粘性溶液が使用者の皮膚に対して粘膜粘着を提供する。
よく知られているように、適用、および、創傷被覆材または皮膚バリヤに望まれる流体吸収能力に応じて、高分子量ポリマーは単体の親水コロイド成分、または他の実施形態では、他の親水コロイドと組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態においては、高分子量PAAは、上記能力向上のために、ポリイソブチレン、および、スチレンーイソプレンースチレン共重合体もしくはポリマー繊維のいずれか、または両方と結合する。本発明の他の実施形態においては、粘着剤化合物は、高分子量PAA、ポリイソブチレン、スチレン−イソプレン共重合体および綿などの繊維、または、より好ましくはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる。
本発明に係る組成物の粘着剤成分は、繊維材料との強い親和性を伴う、感圧粘着特性を有する任意の物質であってよい。単一の感圧粘着剤、または、二以上の感圧粘着剤の組み合わせであってもよい。本発明において有用な粘着剤には、例えば、天然ゴム、合成ゴム、スチレンブロック共重合体、ポリビニルエーテル、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含むポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン及びシリコーンをベースとするものが含まれる。本発明のために選択される好ましい材料であると考えられる特定の粘着剤は、ポリオレフィン、即ち、ポリイソブチレン(PIB)であるが、同様の特性を有する他の感圧粘着剤も適切である。
粘着剤組成物中の繊維は、当技術分野で知られる任意の繊維材料であってもよいが、互換性のあるものが好ましく、さらに好ましいのは粘着剤成分に対して強い親和性を有するものである。ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンがPIBと高い互換性を有し、容易にその粘着媒体により湿潤されることが見出され、両方とも非極性飽和炭化水素である。
【0016】
粘着剤組成物の製造において、PAAまたはPMAのような高分子量ポリマー緩衝粘着剤と、PIBのような感圧粘着剤は、単一の混合工程で混合する。SISおよび/またはポリプロピレン繊維のような他の物質が追加的に該単一工程において混合されてもよい。該製造の実施形態は、多数の混合工程を避け、これにより時間を節約し、実験器具の使用を最小にすることができる、という強みを有する。製造の、より好ましい実施形態は、所望の量のPAA、PIBおよびSISを単一工程で混合することである。
このようなPIBは、約40,000〜60,000の範囲の分子量の、比較的に高分子量PIBとして在るのが好ましい。例えば、オストミーでの使用のための皮膚バリヤは、通常50重量%から65重量%の範囲内の60,000の分子量PIB、または、40重量%から約55重量%の範囲内の分子量40,000の PIBを含有する。
さらに、例えば32.5重量%の40,000の分子量PIBと32.5重量%の60,000分子量PIB のように、40,000の分子量及び60,000分子量の組み合わせのPIBもまた使用してもよい。
【0017】
粘着剤組成物の約20重量%から約45重量%が、例えばPAAのような、部分的中和高分子量ポリ酸からなることが好ましい。粘着剤組成物の約40重量%から65重量%が、PIB成分から構成されてもよい。粘着剤組成物の約0重量%から約25重量%はSIS成分から構成されてもよい。粘着剤組成物は、部分的中和ポリアクリル酸が約20重量%から約45重量%、PIBが約40重量%から約55重量%、およびSISが約5重量%から約15重量%によりなるのが好ましい。一つの好ましい粘着剤組成物は、部分的中和PAAが約45重量%、PIBが約40重量%、およびSISが約15重量%よりなる。他の好ましい粘着剤組成物は、部分的中和PAAが約30重量%、PIBが約55重量%、およびSISが約15重量%からなる。他の好ましい粘着剤組成物は、PIBが約54重量%、ポリエチレン繊維が約6重量%、および25%中和された高分子量PAAが約40重量%によりなる。他の好ましい粘着剤組成物は、PIBが約51重量%、SISが約20重量%、ポリエチレン繊維が約2重量%、および35%中和された高分子量PAAが約27重量%によりなる。後者の二つの組成物中、PIBは下記のNippon Himol 4Hが好ましい。
【0018】
本発明の緩衝粘着剤組成物のために選択される物質はいずれも、組成物が少なくとも最小限に吸収性のあることが非常に望ましい。上述した組成物の緩衝能力は、その吸収能力に一部関連する。全く吸収が起こらなかった場合、高分子量ポリマーの緩衝は、創傷滲出液や糞便からの接点がなく、したがって、効果的ではない。低吸収能力を有する組成物が、本発明の範囲内に含まれる場合でも、開示の組成物は、実施例1の試験で測定されるように、少なくとも約0.15グラム/平方センチメートルの吸収能力を持つべきであり、好ましい。より少ない吸収能力しか有さない組成物の緩衝能力は、最適なものではない。
下記の実施例により、製造および本発明の代表的実施形態を述べる。
【0019】
実施例1
試験サンプル:試験サンプルを0.020インチの厚さにバリヤ材料の熱圧縮により調製し、取り外し可能な剥離ライナーと柔軟なバッキングフィルムとの間に積層した。

材料

ポリイソブチレン(PIB)
BASF社製の粘度平均分子量40000のOppanol R B10
BASF社製の粘度平均分子量55000のOppanol R B12
JX日鉱日石エネルギー社製の粘度平均分子量60000のNippon Himol 6H
JX日鉱日石エネルギー社製の粘度平均分子量40000のNippon Himol 4H

スチレン - イソプレン - スチレンブロック共重合体(SIS)
Kraton Polymers製造のKratonTMD-1161P

ポリオレフィン繊維
MiniFIBERS社から供給されるポリエチレンショートスタッフ合成パルプE380F
MiniFIBERS社から供給されたポリプロピレンショートスタッフ合成パルプY600F

ポリアクリル酸水溶液
Lubrizol社製の分子量345000のNoveriteTM K-702 25%水溶液
Dow社製の分子量60000のACUMERTM 1510 25%水溶液
【0020】
部分的中和ポリアクリル酸
水中のポリアクリル酸は水酸化ナトリウム水溶液の追加により所望の程度に中和された。得られた部分的中和ポリアクリル酸溶液を約20時間150℃でアルミニウムトレー中で乾燥させた。該乾燥物は打ち砕かれ、ハンマーミル(Model JT、Homiloid Machine、Fitzpatrick Coporation)の中、粉砕された。異なるバッチのレーザー光散乱粒径分析は、70〜150ミクロンの範囲の平均粒径を示した。
加えて、部分的中和ポリアクリル酸は乾燥粉末形態にて、事前中和として得られる。
Toa Gosei社製のAronvis AH-106X(35%中和されたポリアクリル酸)。

流体吸収とpH
流体吸収はEN13726-1:2002標準の実行後に測定された(Test methods for primary wound dressing − Part 1: Aspects of absorbency, Section 3.3(主要な創傷被覆材のための試験方法−吸収性の一側面 セクション3.3))。水和流体は生理食塩水であった(水中のNaClは0.9%)。吸収された流体の重量は、20mlの生理食塩水へさらした10cm2の表面領域に係るサンプルの中の重量増加により測定された。サンプルはオーブンの中、37℃、相対湿度15%にて一定時間、保存された。表面pH測定は、較正されたpHメーターとフラットpHプローブ(Ross(登録商標)model 8135N)を使用して、流体吸収に続き、サンプルについて行われた。
【0021】
pH緩衝チャレンジ:ストック緩衝溶液(リン酸塩中の100mM、0.9%のNaCl、pH7.4)を調製した。低リン酸濃度の緩衝剤は、0.9%の適切な容量のNaClとストック緩衝剤の希釈により調製された。バリヤの10平方センチメートルの面がチャレンジ用緩衝溶液10mLに曝された。
PIBに基づく製剤のシリーズ、ポリエチレン繊維、および、二つの異なる分子量と二つの異なる中和程度の、部分的中和ポリアクリル酸が調製された。
【0022】
実施例2
組成物は、ブラベンダータイプREE6混合器を用いて、85℃で調製された。所要の量のポリエチレン繊維と部分的中和ポリアクリル酸が事前に混合された。所要の重量のPIBと混合器に加えられ、2分間で毎分36回転にて混合された。毎分36回転にて混合される間、事前に混合された該繊維と粉末が、3分かけて添加された。該混合室は密封され、真空状態が適用され、混合が15分間継続された。任意の試験が行われる前に、真空状態は解放され、混合物が混合器から取り出され、室内条件と平衡化された。下記の表1は、これらの組成物の試験結果とともに示されている成分の、重量パーセンテージとともに、該形式において、調製された組成物を示す。下記の表1および表2において、6時間と24時間の緩衝チャレンジは、0.9%のNaCl溶液中、pH7.4の100mMのリン酸緩衝液を使用した。
【表1】
【0023】
実施例3
二つの異なる分子量のPIB、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、および、部分的中和ポリアクリル酸(25%中和されているNoverite K-702)に基づく二つ目の組成物のシリーズが調製された。
組成物は、140℃にて、ブラベンダータイプ REE6混合器を使用して調整された。所要の量のSISが混合器に添加され、7分間で毎分36回転にて混合された。所望の量のPIBが追加され、毎分36回転で混合が続けられた。混合器の速さは毎分100回転へと増加され、混合はまた11分続けられた。所望の量の部分的中和ポリアクリル酸(25%の程度の中和)が追加され、混合は4分続けられた。混合室は密閉され、真空状態が適用され、混合は16分続けられた。任意の試験がされる前に、真空状態が解放され、混合物が混合器から取り出され、室内条件と平衡化された。試験は実施例1で行ったのと同様に実行された。下記の表2はこれらの組成物の試験結果とともに示されている成分の、重量パーセンテージとともに、該形式において、調製された組成物を示す。
【表2】
【0024】
実施例4
PIB、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリエチレン繊維、および、部分的中和ポリアクリル酸(35%中和されているAronvis AH-106X)に基づく三つ目の組成物のシリーズが調製された。50%のPIB(Nippon 4H)および50%のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体から成るマスターバッチが、140℃で、ブラベンダータイプREE6混合器を用いて調製された。所要の量のSISが混合器に追加され、7分間で毎分36回転にて混合され続けた。所要の量のPIBが毎分36回転で継続される混合に伴って、追加された。それから混合器の速さは毎分100回転に増加し、混合はさらに11分間続けられた。該マスターバッチは、さらなる使用の前に、混合器から取り出され、室温に冷やされた。
組成物はブラベンダータイプREE6を使用して、85℃にて調製された。所要の量のポリエチレン繊維と部分的中和ポリアクリル酸が事前に調製された。50:50の所要の量の上記のように調製されたマスターバッチは混合器に追加され、毎分36回転にて4分間混合された。所望の量の、追加のPIBがさらに混合器に追加され、毎分36回転で4分間混合された。そして、事前にブレンドされた繊維と粉末は毎分36回転での混合の間、3分の工程にかけて追加された。混合が12分間継続される間に、混合室が密閉され、真空状態が適用された後に、さらに2分間の混合が継続された。任意の試験が行われる前に、真空状態が解放され、混合物は混合器より取り出され、室内条件と平衡化された。試験は実施例1で行ったように実行された。下記の表3はこれらの組成物の試験結果とともに示されている成分の、重量パーセンテージとともに、該形式において、調製された組成物を示す。
【表3】
【0025】
実施例5
PIB、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリプロピレン繊維、および、部分的中和ポリアクリル酸(35%中和されているAronvis AH-106X)に基づく組成物が単一の工程の混合過程において調製された。
該組成物はブラベンダータイプREE6混合器を用いて、140℃にて調製された。所望の量のSISが混合器に追加され、36rpmにて7分間、混合された。所望の量のPIBが追加され、36rpmにて混合された。混合器の速さが100rpmに増加され、混合はさらに11分続けられた。所望の量の部分的中和ポリアクリル酸とポリプロピレン繊維は、事前にブレンドされ、該ブレンドは追加され、混合は4分間続けられた。混合室は密閉され、真空状態が適用され、混合は16分間続けられた。任意の試験が行われる前に、真空状態が解放され、混合物は混合器より取り出され、室内条件と平衡化された。試験は例1に行ったように実行され、結果は下記の表4において示される。
【表4】
【0026】
上記のような高分子量ポリマーは、皮膚への刺激が少なく、強化されたpH緩衝能力及び吸収能力を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、クエン酸のような低分子量の酸は、本発明における緩衝系には不適当であることを発見した。このような低分子量の酸が緩衝剤として許容可能に機能するが、低分子量酸緩衝系は、本明細書で想定するような使用のための使用者の皮膚への許容できない炎症を引き起こす。本発明のものと類似しているが、高分子量ポリマー緩衝液の代わりに、クエン酸/クエン酸塩緩衝液を用いた緩衝粘着剤組成物が、ヒト被験体への粘着被覆材に使用された場合、被験者は被覆材の下に点状潰瘍を生じた。試験結果を以下に示す。このような粘着剤組成物は、医学的使用のためには不適当であると考えられる。この結果は、驚くべき予想外でもあった。クエン酸緩衝系の評価は、以下の実施例6に記載されている。
【0027】
実施例6
1968年に、Lanmanらは、低刺激性化粧品において数日間の反復的暴露により区別する方法を生みだすことを報告した。例えば21日などの短い期間を含む修正を加えて、この方法は、製品の軽度の皮膚の炎症を引き起こす可能性を決定するための標準的な試験として維持されてきた。該方法論は、閉塞の下での21日間の連続の塗布が含まれる。不織布パッド上に塗布した1%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)溶液を、陽性対照として用い、同様にして防腐剤の入ってない0.9%の塩化ナトリウムを陰性対照として用いた。この標準試験は、21日間の連続した塗布を通じ、皮膚に直接塗布される様々なバリヤ組成物の炎症を引き起こす可能性を評価するため用いられた。バリヤ材料は自己粘着性であるため、緩衝材剤を用いて構築されるバリヤ及び緩衝材剤なしで構築されるバリヤの使用はもちろん、無菌生理食塩水で湿らせた不織布パッドを使用して、皮膚からバリヤが孤立させられたとき、観察対象と、直接的塗布による炎症の結果と、を比較することにより、皮膚剥離などの機械的特性と化学的刺激による炎症からの影響と、を部分的に区別することが可能であった。
【0028】
30人分の実験成果を確実にするために十分な数の一般のボランティアの被験者が募集された。各被験者は、すべての試験物質にさらされ、そして、部位は、標準のラテン方格デザインを用いて無作為化された。評価側には、材料の正体が知らされなかった。材料は、21日間連続して、または中止の点数に到達するまで、同じ部位に再塗布された。刺激データは、順位和解析を用いて処理された。ランクの合計は、1から10までの範囲で、より大きな数がより大きい刺激を示す。
刺激性試験において使用される製剤は、以下に記載する。

クエン酸塩バリヤ
オパノールRB12 PIB(BASF社)44.0%
TPCグループTPC1285液体PIB 7.0%
ポリエチレン繊維 3.5%
ペクチン 8.5%
ナトリウム・カーボキシメチル・セルロース17.0%
無水クエン酸一ナトリウム16.0%
クエン酸三ナトリウム二水和物4.0%

PAAバリヤ
オパノールRB12 PIB(BASF社)55.0%
TPCグループTPC1285液体PIB 8.7%
ポリエチレン繊維4.4%
部分的中和PAA 31.9%
【0029】
この標準的な方法論を用いて、20%のクエン酸塩バリヤを含有する組成物(平均のランク9.59)の刺激性は、陽性対照(平均のランク9.27)と同様であった。クエン酸塩を含むバリヤ組成物のみは、SLSにさらされて観察される典型的な、より一般的な刺激とは異なり、点状病変などの焦点糜爛を伴う刺激を引き起こした。
PAA(平均のランク6.70)を用いて処方されたバリヤは、陽性対照とクエン酸塩緩衝液組成物よりも、著しく少ない刺激性であった。PAAバリヤ組成物へさらすことを繰り返すことにより観察されるわずかな炎症は、テープ剥離などの繰り返される機械的外傷のような、より均一な「焼付け」となる。これらのグループの両方が陰性対照(平均のランク2.68)とは異なった。ワセリン中31.8%のPAAである、ワセリン中適用されるPAA緩衝液は、PAAに反復してさらされることによる固有の化学的刺激の欠如を示す、非刺激性であった。この観察は、PAAと配合されたバリヤ組成物に観察される軽い刺激が、繰り返される機械的な損傷に起因するという解釈と整合的である。
【0030】
本発明の実施形態は、創傷被覆材の粘着剤層に含有される高分子量ポリマー緩衝剤の使用を意図する。創傷被覆材は、フィルムのような可撓性の外側層を含むことが望ましい。親水コロイド層は、外層の内側にあるとともに、本発明の高分子量ポリマー緩衝剤組成物、そしてこれに加えて必要に応じて、CMCまたはペクチンなどの追加的親水コロイドを含む。理解されるように、親水コロイド層は、創傷床と直接接触する。
一つの実施形態では、創傷被覆材は、創傷床における被覆成分の潜在的な崩壊を避けるために水和されたとき、非常に高い凝集力を有する粘着剤成分を含む。理解されるように、本発明の緩衝剤組成を組み込んだ非粘着創傷被覆材も可能である。
【0031】
自己粘着性創傷被覆材に適した製剤は、例えば、創傷滲出液を処理するのに便利で、高い流体吸収、および、緩衝能力を伴う、比較的高い含有量のSISによる高い結合力を有する表2の製剤7(40%のPIB、15%のSIS、45%のPAA)である。自己粘着性創傷被覆材の調製中にこの製剤を使用する方法は当業者には明らかである。
本発明の別の実施形態は、オストミー皮膚バリヤに含まれた高分子量緩衝剤組成物の使用を意図するものである。皮膚バリヤは、「1ステップ」もしくは一枚構成として、オストミー用ポーチに永久的に取り付けられてもよいし、二枚構成としてフランジクリップシステムを用いて別々に取り付けられてもよい。
本発明のこの実施形態は、pHの範囲が約4.0から約5.5までの正常な皮膚の近傍の周囲皮膚のpHを維持し、こうして周囲皮膚の炎症の発生を減少させ、又は、取り除く、ものである。
オストミー皮膚バリヤのための有用な例示的な製剤は、ポリエチレン繊維又はSISのいずれかを含むものが挙げられる。例えば、表1の製剤3は、優れたpH制御を有しつつ、望ましい流体処理性を兼ね備えている。オストミー皮膚バリヤの調製にこの製剤を使用する方法は当業者には明らかである。
【0032】
また、本発明には、上述した高分子量ポリマー緩衝組成物の製造方法および使用方法が含まれる。本発明に係る組成物の製造は上述したとおりである。該組成物は、意図するユーザーの皮膚へ、皮膚粘着デバイスを安全に取り付けるために効率的な一定量の組成物を、該デバイスの側面又表面に施すことにより、任意の皮膚粘着デバイスの製造に使用されてもよい。
【0033】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、種々の明らかな変更がなされ得ること、及び、等価物が本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、それらの要素を置換することができることは、当業者には理解されるであろう。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではないことが意図されている。
【国際調査報告】