特表2015-502563(P2015-502563A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-502563(P2015-502563A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】外科訓練のための模擬組織構造
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/34 20060101AFI20141219BHJP
   A61B 19/00 20060101ALI20141219BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20141219BHJP
【FI】
   G09B23/34
   A61B19/00 502
   G09B9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-537279(P2014-537279)
(86)(22)【出願日】2012年10月19日
(85)【翻訳文提出日】2014年4月18日
(86)【国際出願番号】US2012060997
(87)【国際公開番号】WO2013059575
(87)【国際公開日】20130425
(31)【優先権主張番号】61/549,838
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ホーク アダム
(72)【発明者】
【氏名】ブレスリン トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
(72)【発明者】
【氏名】ボラーニョス エドゥアルド
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
外科技法を練習するための模擬組織構造が提供される。具体的には、腫瘍または他の望ましくない組織の除去とそれに続く同一の外科手技の一環としての残存欠損部の縫合とを練習するための、本物のような臓器モデルまたは組織部分が提供される。模擬組織構造は、弾性材料の層の間に配置されかつ模擬の臓器壁または組織部分に取り付けられた人工腫瘍を含む。模擬組織構造は、モジュール式であり、かつ交換可能である。各層のうちの少なくとも1つは、メッシュ補強材を含む。間に間隙を画定している並置された2つの表面を含む欠損部が模擬組織構造内に生成され、被訓練者は、腹腔鏡環境において腫瘍の除去と縫合による間隙の閉鎖とを練習する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科訓練のための模擬組織構造であって、
ベース層と、
前記ベース層の上方に配置されかつ前記ベース層に結合された欠損層であって、少なくとも1つの間隙を画定している少なくとも1つの欠損部を含む欠損層と、
前記欠損層の上方に配置されかつ前記欠損部の少なくとも一部分を覆う模擬腫瘍と、
前記ベース層の上方に配置されかつ前記腫瘍を覆うカバー層と、を備える、模擬組織構造。
【請求項2】
前記欠損層が、前記ベース層から延在する複数の突出部を含む、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項3】
前記欠損層の厚さが一様でない、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項4】
前記欠損層が、複数の欠損部を含む、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項5】
前記欠損層が、2つ以上の並置された小片を含む、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項6】
前記カバー層が、透明かまたは半透明である、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項7】
前記カバー層が、前記腫瘍および欠損層を覆う、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項8】
前記欠損部が、前記少なくとも1つの間隙を間に画定している並置された2つの表面を含む、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項9】
前記ベース層が、管形状である、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項10】
前記ベース層、欠損層、およびカバー層のうちの少なくとも1つが、メッシュ材料を含む、請求項1に記載の模擬組織構造。
【請求項11】
外科訓練のための模擬組織構造であって、
模擬組織部分を含む少なくとも1つの模擬組織モジュールと、
第2の表面とは反対の第1の表面を有しかつそれらの間にある厚さを画定するモジュール支持体であって、前記少なくとも1つの模擬組織モジュールを受容するためのサイズおよび形状となされた少なくとも1つのモジュール受容部分を含むモジュール支持体と、を備え、
前記模擬組織モジュールが、前記少なくとも1つのモジュール受容部分への挿入およびそこからの取り外しが可能であり、かつ、別の模擬組織モジュールと交換可能である、模擬組織構造。
【請求項12】
前記モジュール受容部分が、前記第1の表面に開口部を有しかつ前記モジュール支持体内まで延在している空洞を画定する、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項13】
前記モジュール受容部分が、前記第1の表面に第1の開口部を含み、かつ前記モジュール支持体内まで延在し、かつ前記第2の表面において第2の開口部と相互接続し、前記少なくとも1つの模擬組織モジュールが、前記第1および第2の開口部の間に配置されるように構成されている、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項14】
前記模擬組織部分が、少なくとも1つの模擬腫瘍または外科練習ターゲットを含む、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項15】
前記模擬組織モジュールが、前記模擬組織部分を保持するように構成されたフレームを含み、前記フレームおよびモジュール支持体が、前記モジュール支持体のモジュール受容部分において互いに結合するように構成されている、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項16】
前記モジュール支持体が、弾性ポリマーで作られた第1の層、および低密度弾性フォームで作られた第2の層を含み、前記モジュール受容部分が、少なくとも前記第2の層に形成される、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項17】
前記模擬組織モジュールが、第1の弾性層と第2の弾性層との間に位置するシリコーン材料で作られた模擬腫瘍を含み、前記第1および第2の弾性層のうちの少なくとも一方が、シリコーンおよびメッシュ補強材で作られている、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項18】
前記模擬組織モジュールが前記モジュール支持体の前記第1の表面および前記第2の表面からアクセス可能であるように、前記模擬組織モジュールおよび前記モジュール支持体が構成されている、請求項11に記載の模擬組織構造。
【請求項19】
外科訓練のための方法であって、
ベース層とカバー層との間に配置された人工腫瘍を含む模擬組織構造を用意すること、
前記模擬組織構造が少なくとも部分的に使用者の視界から隠されるように、前記模擬組織構造を外科訓練デバイスの模擬体腔内に設置すること、
前記人工腫瘍を前記模擬組織構造から除去すること、
実質的に前記腫瘍の位置に、間に間隙を画定している隣接した2つの表面を含む少なくとも1つ欠損部を生成すること、および、
前記間隙を閉鎖して前記隣接した2つの表面をくっつけることを含む、方法。
【請求項20】
少なくとも1つの欠損部を生成する前記ステップが、前記模擬組織構造内に欠損層を設けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年10月21日に出願され「Simulated tissue structure for surgical training」と題された米国仮特許出願第61/549,838号の優先権と利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は一般に、外科訓練ツールに関し、具体的には、様々な外科の技法および手技を教示しかつ練習するための、臓器または組織を模した解剖学的モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
医学生のみならず、新しい外科技法を学ぶ熟練した医師も、患者に手術を行う権限を与えられるまでに広範囲にわたる訓練を受けなければならない。訓練は、様々なタイプの組織を切開、穿通、クランピング、把持、ステープリング、および縫合するための様々な医学的デバイスを利用して適切な技法を教示しなければならない。被訓練者が遭遇するであろうと考えられる可能性の範囲は広大である。例えば、様々な臓器ならびに患者の解剖学的構造および疾患が提示される。種々の組織層の厚さおよび硬さもまた、身体のある部分とその隣の部分とで、また、ある患者と別の患者とでは、変化するであろう。したがって、その技法および器具に必要とされる技能もまた、変化することになる。さらに、被訓練者は、容易にアクセスすることが可能な広々とした外科手術部位における技法と、腹腔鏡下でアクセスする部位における技法とを練習しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多数の補助教材、訓練器、シミュレータ、およびモデル臓器が、外科訓練の1つまたは複数の態様に使用可能である。しかし、内視鏡的外科手技、腹腔鏡的外科手技、経肛門的外科手技、低侵襲性外科手技、または腫瘍もしくは他の組織構造の除去を含む他の外科手技で遭遇する可能性が高いモデル臓器または模擬組織要素が必要とされている。具体的には、腫瘍または他の望ましくない組織の除去と、それに続く同一の外科手技の一環としての縫合またはステープリングによるターゲット領域の閉鎖とを繰返し可能に練習するための、本物のようなモデル臓器が必要とされている。上記のことから、外科手術中に遭遇するそのような特定の状況を実際のように模倣する外科訓練デバイスを提供することが、本発明の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、外科訓練のための模擬組織構造が提供される。この構造は、ベース層の上方に配置された欠損層を含む。欠損層は、少なくとも1つの間隙を間に画定する2つの向かい合った表面を有する、少なくとも1つの欠損部を含む。模擬腫瘍が、欠損部の少なくとも一部分を覆うようにして、欠損層の上方に配置される。カバー層がベース層の上方に配置されて、腫瘍を覆う。
本発明の別の態様によれば、外科訓練のための模擬組織構造が提供される。この模擬組織構造は、模擬組織部分を含む少なくとも1つの模擬組織モジュールを備える。構造は、第2の表面とは反対側の第1の表面を有しかつそれらの間にある厚さを画定する、モジュール支持体を含む。モジュール支持体は、少なくとも1つの模擬組織モジュールを受容してそれと結合するためのサイズおよび形状となされた、少なくとも1つのモジュール受容部分を含む。模擬組織モジュールは、少なくとも1つのモジュール受容部分に挿入可能でありかつそこから取り外し可能であり、また、別の模擬組織モジュールと交換可能である。
本発明の別の態様によれば、外科訓練のための方法が提供される。この方法は、ベース層とカバー層との間に配置された人工腫瘍を備える模擬組織構造を用意するステップを含む。ベース層およびカバー層は、メッシュ補強材を含むことができる弾性ポリマーで作られる。
【0005】
模擬組織構造は、使用者の視界から少なくとも部分的に隠されるように、外科訓練デバイスの模擬体腔内に設置される。使用者は、模擬組織構造が使用者から隠されかつ腹腔鏡または内視鏡を介して体腔内の模擬組織構造のライブ映像を提供するビデオモニタ上で可視化された状態で、模擬体腔に通された器具を用いて模擬組織構造から人工腫瘍を除去する。少なくとも1つの欠損部が、実質的に腫瘍の位置に生成される。欠損部は、間隙を画定する隣接した2つの表面を含む。間隙は、縫合糸、ステープル、接着剤、または他の外科手段などの器具を用いて隣接した2つの表面をくっつけることにより、閉鎖される。間隙を縫合して、隣接した2つの表面をくっつける。一変形形態では、欠損部を生成することには、模擬組織構造内に欠損層を設けることが含まれる。欠損層を設けることには、予め形成された欠損部または間隙を欠損層に設けること、および、欠損層がベース層とカバー層との間に位置するように、また、欠損部の少なくとも一部分が人工腫瘍の下方に配置されるように、欠損層を設置することを含む。別の変形形態では、欠損部を生成することには、ベース層およびカバー層のうちの少なくとも1つを切開することが含まれる。模擬組織構造から人工腫瘍を除去することには、切開によって生成された欠損部を通じて人工腫瘍を除去することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明によるモデル臓器を含む外科訓練デバイスの側面図である。
図2A】本発明による模擬組織構造の側断面図である。
図2B】本発明による、腫瘍が切除された模擬組織構造の側断面図である。
図2C】本発明による、開いた縫い目を含む模擬組織構造の側断面図である。
図2D】本発明による、閉じた縫い目を含む模擬組織構造の側断面図である。
図3A】本発明による、円形の欠損部を有する欠損層の上面図である。
図3B】本発明による、細長い欠損部を有する欠損層の上面図である。
図3C】本発明による、不規則な形の欠損部を有する欠損層の上面図である。
図3D】本発明による、2つの部分からなる欠損部を有する欠損層の上面図である。
図3E】本発明による、複数の部分からなる欠損層の上面図である。
図3F】本発明による、複数の欠損部を有する欠損層の上面図である。
図4】本発明による模擬組織構造の上面図である。
図5】本発明による模擬組織構造の側断面図である。
図6A】本発明によるモジュール式組織構造および支持体の斜視図である。
図6B】本発明によるモジュール式組織構造および支持体の斜視図である。
図7】本発明による、ヒトの子宮を模倣するように構成された模擬組織構造の断面図である。
図8】本発明によるモジュール式組織構造の上面図である。
図9】本発明によるモジュール式組織構造の側面図である。
図10A】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図10B】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図11A】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図11B】本発明による模擬組織構造の斜視図である。
図12】縫合針および本発明による模擬組織構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
腹部などの患者の胴体を模倣するように構成された外科訓練デバイス10が、図1に示されている。外科訓練デバイス10は、モデル臓器または模擬のもしくは生きた組織20を受容するための、使用者からは実質的に隠された模擬体腔18を提供する。体腔18は、組織シミュレーション領域19を介してアクセスされ、組織シミュレーション領域19は、体腔18内に位置することが分かった組織または臓器20への外科技法を練習するためのデバイスを使用する使用者によって穿通される。体腔18は、組織シミュレーション領域19を通じてアクセス可能であることが示されているが、2011年9月29日に出願されその全体が参照により本明細書に組み込まれる「Portable Laparoscopic Trainer」と題された米国特許出願第13/248,449号で説明されるように、体腔18にアクセスするために、手動支援アクセスデバイスまたは単一サイトポートデバイスが代わりに使用されてもよい。外科訓練デバイス10は、腹腔鏡下のまたは他の低侵襲性外科手技を練習するのに特によく適している。
【0008】
外科訓練デバイス10は、ベース12と、ベース12に離間して接続されベース12との間に内部体腔18を画定する上部カバー14とを含む。少なくとも1つの支柱16が、上部カバー14およびベース12を相互接続しかつそれらを離間する。モデル臓器または模擬組織20が、体腔18内に配置される。図1に示されているモデル臓器20は、テザー22により上部カバー14から吊り下げられかつ少なくとも1つの支柱24に接続されて示されている、部分的な結腸または腸である。少なくとも1つの支柱24は、内部空洞20に面する開孔(図示せず)を有する。
【0009】
モデル結腸20は、近位端および遠位端を有するチューブ26を含む。チューブ26の近位端は、開孔がチューブ26の内腔へのアクセスポートを提供するように、支柱16の開孔に相互接続されている。アクセスポートおよび開孔は、図1ではアクセスデバイス28により閉塞されて示されており、このアクセスデバイス28は、チューブ26の密封された遠位端と相まって、送気ポート30を介して送り込むことができる流体による送気に適したモデル臓器20を提供する。シリコーンなどの軟質材料で作られた随意的なインサート32が、アクセスポートのための本物のようなインターフェースを生成する。チューブ26の遠位端は、体腔18内に延在して、体腔18内で吊り下げられる。模擬臓器20のチューブ26の内部には、支柱24のアクセスポートを介して、または組織シミュレーション領域19もしくは器具挿入ポート34を介してアクセスすることができる。アクセスポートを介して体腔18内または臓器20内に挿入された内視鏡カメラが、図1では閉位置で示されている折り畳み式ビデオ画面36に表示するためのライブ映像を生成する。図1の模擬臓器20は、経肛門的低侵襲性手術に関連する手技を練習するのに適したものであるが、任意の模擬臓器または組織部分を使用することができる。臓器20の具体的な態様の1つは、少なくとも1つの腫瘍または欠損部38が用意されて臓器に結合されるものである。図1に示されるように、腫瘍38は、臓器チューブ26の壁に結合される。
【0010】
ここで図2Aを参照すると、腫瘍38を含む模擬臓器20の一部分の部分側断面図が示されている。模擬臓器または組織20は、ベース層または臓器壁40を含む。臓器壁40は、本物の生きた組織を模倣するように構成されたシリコーンまたは他のポリマーなどの材料から作られて、適切に染色されている。様々な厚さおよび色の1つまたは複数のベース層40を使用して、壁40の全体を構成することができる。一変形形態では、臓器壁40は、剛体であり、ポリマー材料で作られる。ベース層40の上方には、第2の層すなわち欠損層42がある。欠損層42は、ベース層40と同じサイズかまたはベース層40よりも小さいサイズであって、腫瘍38のための隆起したプラットフォームを形成している。欠損層42は、接着剤か、または単一ユニットとしてベース層40と一体的に形成することを含む当業者に知られている他の手段により、ベース層40に結合される。欠損層42は、シリコーンで作られ、また、一変形形態では、ベース層40の背景に溶け込むようにベース層40と同じ色で作られる。欠損層42は、少なくとも1つの欠損部または間隙44を含む。一変形形態では、欠損部44は欠損層42に予め作られた割れ目であり、この欠損部44は、欠損部を閉鎖するために縫合やステープリング等を介した外科的な対応を必要とする断裂、切開、除去、または他の外科手技によって生じる実際の組織における切り口、間隙、または他のボイドを模倣する。そのような状況は、組織内に残存欠損部を残して腫瘍の全体が切除されるのを防ぐために腫瘍38と一緒に周囲の組織も除去される場合の腫瘍38の除去において最もよく起こる。欠損部44は、間隙を間に画定している2つの向かい合った側面または表面を含む。隣接した側面または表面は、ベース層40に対して垂直であることが示されているが、本発明はそのように限定されるものではなく、並置された表面または側面は、任意の形状を有することができ、例えば、曲がっていてもよい。欠損部44は、図3A図3Fに関して論ずるように、任意の形状とすることができる。
【0011】
ここで図3Aを参照すると、円形の欠損部44を有する欠損層42の上面図が示されている。図3Bには、細長、長円、または楕円の形状の欠損部44を含む欠損層42が示されている。図3Cに示されるように、欠損部44は、不規則な形状かまたは任意の形状とすることもできる。欠損層42は、少なくとも1つの欠損部44を間に生成するように並置された2つ以上の隣接した欠損層片42a、42bを欠損層42が含む図3Dに示されるように、複数の部品であってもよい。別の複数の部品からなる欠損層42が図3Eに示されており、図3Eでは、複数の隣接した欠損層片42a、42b、および42cが、それらの間に1つまたは複数の欠損部44を形成する。当然ながら、欠損層42は、図3Fに示されるように複数の欠損部44a、44b、および44cを含んでいてもよい。各欠損部44は、全て同一であってもよいし、図3Fに示されるように異なる形状を有していてもよい。欠損部の形状、厚さ、およびサイズにより、被外科訓練者は様々な難易度の欠損部で縫合を練習することが可能になる。一変形形態では、欠損層42は、厚さが均一ではない。その代わりに、欠損層42の厚さは、欠損部の縫合または閉鎖の難易度を高めるために、欠損部位置48とともに変化する。
【0012】
図2Aに戻り参照すると、欠損層42の上方に腫瘍38が配置されている。腫瘍38は、被訓練者が容易に識別できるように、ベース層40または欠損層42、またはその両方とは異なる色であることが好ましい。腫瘍38は、シリコーンまたは他のポリマー材料で作られ、かつ赤色、黒色、青色、または暗褐色であることが好ましい。一般に、腫瘍38は、ベース層または欠損層40、42よりも暗い色のものであるか、あるいはスコープを通して見たときにそれらと対照をなす色のものである。一変形形態では、腫瘍38は、接着剤かまたは当業者に知られている他の手段により欠損層42に結合される。別の変形形態では、腫瘍38は、欠損層42に結合または付着されるのではなく、欠損層42の上に取り外し可能に配置される。
【0013】
なおも図2Aを参照すると、模擬組織構造20は、腫瘍38の上方に配置されたカバー層46を含む。一変形形態では、カバー層46は、腫瘍38、欠損層42、およびベース層40を覆う。カバー層46は、色が透明かまたは半透明であり、シリコーンなどのポリマー材料で作られていることが好ましい。別の変形形態では、カバー層46は、ベース層40または欠損層42と同じ色である。カバー層46は、少なくともベース層40または欠損層42と同程度の厚さであり、また、一変形形態では欠損層42よりも薄く、別の変形形態ではベース層40よりも薄い。カバー層46は、腫瘍38および欠損層42の全体を覆うサイズとなされ、また、一変形形態では、ベース層40に接触するほどに大きい。別の変形形態では、カバー層46は、腫瘍38全体を覆いかつ欠損層40に接触するサイズとなされる。カバー層46は、接着剤かまたは当業者に知られている他の手段を介して、ベース層40、欠損層42、腫瘍38、または3つの層のうちの任意の1つ以上に結合される。別の変形形態では、カバー層46は、欠損層42よりも小さく、欠損層42だけに結合される。さらに別の変形形態では、カバー層46は、接着剤かまたは当業者に知られている他の手段により、欠損層42およびベース層42の両方に結合される。カバー層46は、任意の形状またはサイズとすることができ、また、人工腫瘍位置のための層状表面の代わりに滑らかな表面を外科医に提供するように構成することができる。一変形形態では、カバー層46、腫瘍38、欠損層42、またはベース層40は、ざらつきのある表面を含む。また、カバー層46は、カバー層46とベース層40との間に挟まれた腫瘍38および欠損層42を保持するのに役立ち、このことは、腫瘍38が欠損層42に接着されていない変形形態において有益である。ベース層40、欠損層42、カバー層46、および腫瘍38の上面平面図が、図4に示されている。一変形形態では、ベース層40、欠損層42、およびカバー層46のうちのいずれか1つまたは複数は、一体化されたメッシュ構造支持体または他のタイプの補強材をシリコーン層が有するようにナイロンもしくはチーズクロスなどの織物材料、ファブリック材料、またはメッシュ材料を覆って成形されたシリコーンで形成される。層38、40、42、46のうちのいずれか1つまたは複数は、シリコーンなどの弾性ポリマーと組み合わせられたファブリックまたはメッシュの補強材を含むことができる。メッシュ支持体は、間隙44を閉鎖するために縫合糸が引っ張られるときに、縫合糸、ステープル、または縫合針が各層のうちの少なくとも1つを特に欠損層42を引き裂くのを防ぐのに役立つ。
【0014】
図2Bでは、腫瘍38、およびカバー層46の一部分が、ベース層40から切除されて示されている。切除は、外科用メスまたは他の腫瘍38を除去するための医療器具などの手術器具を使用する被訓練者によって行われる。図2Bに示されるように、被訓練者は、腫瘍38の周りのカバー層46を切り開き、腫瘍38を分離し、腫瘍38を持ち上げその場所から除去して、下層の欠損部44を露出させる。次いで、図2Cに示されるように、被訓練者は、外科用縫合糸48を使用して、図2Dに示されるように欠損層42のへりまたは縁部をくっつけるように欠損部44を縫合し、それにより、腫瘍38の外科的除去によって生じた間隙または傷の閉鎖を練習する。少なくとも1つの層を切開して開口部を生成し、人工腫瘍を除去し、そして間隙を縫合することは、模擬組織構造が使用者の視界から少なくとも部分的に隠されるように外科訓練デバイスの模擬体腔18内に配置されている間に行われる。
【0015】
ここで図5を参照すると、別の変形形態が示されており、この変形形態では、第2のすなわち欠損層42には、予め形成された間隙または欠損部が存在しない。その代わりに、腫瘍38の切除後に、カバー層46、欠損層42、ベース層40、および使用者によって除去されていない任意の残存腫瘍部分のうちの1つまたは複数に、使用者により欠損部が生成される。次いで使用者は、これらの層38、40、42、46のうちのいずれかに生成された欠損部を縫合する練習をする。そのような変形形態の1つでは、欠損層42またはベース層40の一方は、構成から省かれる。別の変形形態では、腫瘍38はベース層40上に配置され、欠損層42は、腫瘍38の上方に位置するように、腫瘍38を覆って設置される。そのような変形形態では、カバー層46は、含まれる場合も含まれない場合もある。カバー層46が含まれる場合、カバー層46は、独立した単一層として欠損層と一緒に一体的に形成されていてもよい。図2図5に関して上述した構成のいずれにおいても、本物の組織を模した作用を提供するために必要であればそれに応じて各層の厚さおよび色を調整して、構造を逆さまにひっくり返すか、または各層を逆向きに設置するか、または上部もしくは底部のどちらの方向からでも使用者が構造に接近できるようにすることができる。
【0016】
ここで図6Aおよび図6Bを参照すると、この説明の変形形態のいずれにおいても、模擬組織構造は、模擬臓器20の全体と一体的に形成されるのではなく、代わりに取り外し可能でかつ交換可能なモジュール50として構成されるように、モジュール式のものにすることができる。1つまたは複数のモジュール50が、モジュール支持体52内に支持または収容される。モジュール支持体52は、第1の表面51、第2の表面53、および支持体52内に形成された1つまたは複数の腫瘍モジュール受容部分54、56、58を含む。腫瘍支持体52は、堅固なものであっても柔軟なものであってもよく、また、ポリマー材料で作ることができる。腫瘍支持体52はまた、弾性材料のシートを含むことができる。モジュール受容部分54、56、58は、それぞれ、相応のサイズおよび形状となされたモジュール50を受容するためのサイズおよび形状となされる。
【0017】
モジュール50およびモジュール受容部分54、56、58は、図6では円形であることが示されているが、腫瘍モジュール50は、モジュール支持体52内に形成された相補的な形状の受容部分とともに、任意の形状とすることができる。支持体52の厚さは、構造に様々な深さの腫瘍モジュール50の位置を提供するように変化することができる。モジュール受容部分54、56、58は、腫瘍モジュール50を置くことができる底部壁を含みうる。あるいは、腫瘍受容部分54、56、58は、腫瘍38を含むモジュール50が表面51、53の開口部間にもしくは表面51、53のどちらかの開口部のうちの1つに結合された状態で、または腫瘍受容部分内に吊り下げられた状態で、第1の表面51および第2の表面53の開口部間に延在する。一変形形態では、単一の腫瘍モジュール50が、1つまたは複数の腫瘍38を含む。モジュール支持体52は、1つまたは複数の腫瘍モジュール50を搭載し、模擬組織構造20は、外科訓練デバイス10、骨組み、または他の胴体モデルの体腔18内に挿入される。模擬組織構造20は、訓練デバイス10のベース12上に設置するか、または訓練デバイス10の体腔18内に吊り下げることができる。模擬組織構造20および/または訓練デバイスは、模擬組織構造20を訓練デバイス10に設置、吊り下げ、または結合するための、クリップ、ファスナ、ワイヤ、マジックテープ式ファスナなどの付着機構を含んで作られる。
【0018】
図6Bを特に参照すると、2つ以上の層を含むモジュール支持体52が示されている。図6Bのモジュール支持体52は、第2の層55に結合された第1の層57を含む。一変形形態では、第1の層57は、弾性材料のシートで作られ、第2の層55は、低密度弾性フォームなどの任意の適切なポリマー材料で作られる。第2の層55は、第1の層57のための支持体として機能する。第2の層55はまた有利には、モジュール50に含まれる腫瘍38が第1の表面51に対してモジュール支持体52の内奥に設置されることを可能にする深さをモジュール支持体52に提供する。モジュール受容部分54、56、58が、第1の層57および第2の層55のうちの1つまたは2つ以上に形成される。第2の層55に形成されたモジュール受容部分54、56、58は、第1の層57にある同一のモジュール受容部分54、56、58が有する形状とは異なる形状を有することができる。一変形形態では、腫瘍モジュール50は、第1の層57または第2の層55のうちの少なくとも一方が使用者が閉鎖を練習することのできる欠損層を構成している状態で、第2の層55内に埋め込まれたまたは埋設された少なくとも1つの模擬腫瘍38を含む。一代替形態としては、第1の層57は、モジュール受容部分を含まず、その代わりに、第1の層57は、第2の層55に形成された腫瘍受容部分内に設置されている腫瘍38にアクセスするための切開を使用者が練習する、カバー層として機能する。そのような変形形態では、第1の層57は、シリコーンなどの弾性材料のシートとすることができ、第2の層55は、低密度弾性フォームの層である。モジュール支持体52は、図6Aおよび図6Bに示されるように平面状であるか、あるいは、ヒトの解剖学的構造、組織、または臓器の一部分を模倣する形状となされる。
【0019】
例えば、図7は、ヒトの子宮を模倣する形状となされた支持体52を示している。支持体52は、第2の層55に結合された第1の層57を含む。一変形形態では、第1の層57は、弾性材料のシートなどの任意の適切なポリマー材料で作られ、第2の層55は、低密度弾性フォームなどの任意の適切なポリマー材料で作られる。第2の層55は、第1の層57のための支持体として機能し、また有利には第2の層55により、モジュール50に含まれた腫瘍38をまたは腫瘍38だけを支持体52に結合して実際のように支持体52の内奥に延在させること、および図7に示されるように第1の層57に埋め込むことを含めて様々な位置および配向で支持体52中に分散させることが可能になる。腫瘍またはモジュール受容部分61が、第1の層57および第2の層55のうちの少なくとも1つに形成される。腫瘍受容部分61は、第2の層55に予め形成されたポケットであってもよく、または、第2の層55に切れ目を入れることにより使用者によって形成されてもよい。一変形形態では、腫瘍38は、ヒトの子宮内で一般に見つかる類線維腫を模倣するように構成される。支持体内に配置された腫瘍38によって模される類線維腫の例には、以下のタイプの子宮筋腫、すなわち、有茎性粘膜下筋腫、漿膜下筋腫、粘膜下筋腫、有茎性漿膜下筋腫、および筋層内筋腫のうちの1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。使用者は、アクセスチャネルまたは開口部63を介して、第1の表面51または第2の表面53から模擬腫瘍38を切除するために支持体52に接近することができる。一変形形態では、開口部63は、中空部分59に対する唯一の開口部として機能し、あるいは、支持体52は、平面のC形構造の上方または下方から使用者がアクセスすることができる、ほぼC形で平面の構成を有することができる。
【0020】
一変形形態では、各変形形態のうちのいずれかのモジュール支持体52は、平面ではなく、曲線や他の構造、山や谷、ならびに様々な質感を含んだ環境を備える。変化する環境により、腫瘍部位を隠しうる人為要素および特徴を避けることが使用者に求められる各腫瘍部位への接近において、様々な難易度が使用者に提供される。腫瘍支持体52内のこれらの構造的人為要素は、腫瘍支持体52と一体的に形成してもよく、または、腫瘍モジュール50と同様に構造内のモジュール式組立品にして、解剖学的構造環境モジュールを取り外し可能でかつ交換可能にしてもよい。
【0021】
腫瘍モジュール50は、非腫瘍モジュールと交換可能であり、非腫瘍モジュールは、例えば、モジュール支持体52の上部および下部の表面51、53のうちの1つまたは複数から外方または内方に延在する、シリコーンまたは他の材料で作られた特徴および人為要素もしくは質感を含む。そのような非腫瘍モジュールにおける特徴は、隣接した臓器構造または組織を含む解剖学的構造を模倣するための様々な形状を有することができる。例えば、非腫瘍モジュールは、腸を模倣するために、管形状のシリコーンを含むことができる。非腫瘍モジュールおよび腫瘍モジュール50は、使用者が使用後のモジュールを廃棄して、次いで、廃棄したモジュールを交換するか、モジュール支持体52内の隣接したモジュール50に移るか、または、腫瘍モジュール50を異なる特徴または難易度を有する別の腫瘍モジュール50に付け替えることによって引き続き練習できるようにする、当業者に知られている任意の手段により、モジュール支持体52に取り外し可能に結合される。
【0022】
腫瘍モジュール50の一変形形態が、図8および図9に示されている。腫瘍モジュール50は、支持体62に結合された模擬組織部分60を含む。示されている変形形態では、支持体62は、底部フレーム66に結合された上部フレーム64を含む。上部フレーム64および底部フレーム66のうちの少なくとも一方は、窓を含む。窓68を有する上部フレーム64が図8に示されている。底部フレーム66は、窓を含む場合もあれば含まない場合もある。上部フレーム64および底部フレーム66の両方に窓が設けられる場合、各窓は、少なくとも部分的に位置合わせされる。支持体62は、上部フレーム64と底部フレーム66の間に模擬組織部分60を受容するためのサイズおよび形状となされる。上部フレーム64は、単一の模擬組織部分60または複数の層で形成された模擬組織部分60を取り込むために底部フレーム66に結合可能であり、また一変形形態では、分離可能である。一変形形態では、フレーム64、66は、スペーサ70を使用して互いに離間される。さらに、上部および底部のフレーム64、66のうちの少なくとも一方は、腫瘍モジュール50を腫瘍支持体52(図示せず)に固着するように構成された1つまたは複数の結合機構72を含む。図9では、結合機構72は、腫瘍支持体52に形成された対応する穴に差し込まれてスナップ式係合を提供する延長ペグとして示されている。モジュール50を取り外し可能な形で支持体52に結合するために、摩擦嵌め、またはマジックテープ式材料などの他のファスナもしくは結合手段をモジュール50およびモジュール支持体52に使用することができる。
【0023】
なおも図8および図9を参照すると、模擬組織部分60は、図2図5に関して上述された構成のうちの任意のものとすることができる。第1および第2のフレーム64、66の両方に窓が形成されている場合、モジュール50のどちらの側からでも模擬組織部分60に接近することができる。カバー層として上述された任意の層が、どちらの側または方向から模擬組織部分60に接近するかに応じて、上部層または底部層として機能しうる。例えば、ベース層が、どちらの側または方向から模擬組織部分60に接近するかに応じて、上部層または底部層として機能する場合もある。そのような場合、二方向構成、各層の厚さおよび色が、所望の模擬作用を提供するためにそれに応じて調整されうる。
【0024】
図9の模擬組織部分60は、第1の層74および第2の層76を含む。第1および第2の層74、76は、本物の生きた組織を模倣するように構成されたシリコーンまたは他のポリマーなどのポリマー材料で作られ、また、任意の1種もしくは複数種の適切な色の染料、またはメッシュ、ファブリックあるいは他の補強材を含むことができる。層74、76のそれぞれは、腫瘍受容部分78、80をそれぞれ含む。各腫瘍受容部分78、80は、層74、76に形成された、凹所、くぼみ、半ポケット、または層の厚さが減少した部位である。腫瘍受容部分78、80は、腫瘍38のためのポケットを形成するために、実質的に位置合わせされる。図9の各層74、76は、腫瘍受容部分78、80を含んで示されているが、一変形形態では、第1および第2の層74、76のうちの少なくとも一方に単一の腫瘍受容部分が形成される。腫瘍38が、1つまたは複数の層74、76に形成された1つまたは複数の腫瘍受容部分78、80によって形成されたポケット内に配置される。腫瘍38は、層74、76のどちらかに接着されていてもよく、または、ポケットの内側で自由に動くことができてもよい。図9に示されるように、層に形成された腫瘍受容部分は、欠損部の1つの型であると見なすことができ、また、図9の変形形態は、間に腫瘍を有する2つの欠損層を含んだ模擬組織構造について説明している。使用者が模擬組織部分60に接近するにつれて、ターゲット腫瘍部位が使用者に見えてくる。ターゲット腫瘍38の視覚化は、層のその他の部分と比べて厚さが薄くなっている腫瘍受容部分によって高められ、この薄層化は凹所またはポケットによってもたらされる。次いで、使用者は、層74、76のうちの少なくとも一方を切開して腫瘍の大まかな位置に切り込みを入れて、腫瘍38を除去する。1つまたは複数の層を切開することにより、その後で使用者が縫合または閉鎖の練習をすることができる間隙または十分な欠損部の生成が完了する。別の変形形態では、層74、76には腫瘍受容部分が形成されていない。そのような変形形態では、少なくとも1つの腫瘍が2つの層74、76の間に配置され、腫瘍38が層に小さな膨らみを生成しながら、各層74、76が実質的に一定の厚さを有する。
【0025】
ここで図10A図10B図11A図11B、および図12を参照すると、模擬組織部分86の別の変形形態が示されている。組織部分86は、一体式とするか、または上述のようにモジュール式のものとすることができる。組織部分86は、シリコーンまたは他の弾性ポリマーなどの任意の適切なポリマー材料で作られたベース層88を含み、ベース層88は、縫合糸を通している間または縫合している間の断裂に抵抗するファブリック、メッシュ、ナイロンもしくは他の補強材料などの補強材料または充填剤を含む場合も含まない場合もある。ベース層88は、ベース層88の上に重ねられる欠損層90に結合される。欠損層90は、ベース層88から上方に延在する複数の突出部を含む。欠損層90は、ベース層88と一体的に形成されていてもよく、または、ベース層88に接着される独立した層であってもよい。図10A図11A、および図12で分かるように、欠損層90は、格子がベース層88上に隆起するかまたはベース層88から上方に突出するように、格子形状パターンとして構成される。格子パターンは例示的なものであって、欠損層90が複数の隣接した突出部を含有するように、欠損層90により任意の形状が形成されうる。ベース層90のこれらの突出部は、使用者に縫合針を引っかける位置を提供し、かつ、容易に切除できるように腫瘍38a、38bをベース層88上に隆起させるためのプラットフォームとして機能する。腫瘍38a、38bは、欠損層90に接着されていてもよく、また、一変形形態ではカバー層92が含まれる。図10Aおよび図11Aは、模擬組織部分86の半分解図におけるベース層88、欠損層90、腫瘍38a、38b、およびカバー層92を示しており、カバー層92は他の層の上方に持ち上げられている。図10aの腫瘍38aは、実質的に平面状であり、図10Bではカバー層92に覆われて示されている。図11Aの腫瘍38bは、より大きな高さを有し、かつ実質的に球形であり、また、図11Bは、構造内に隆起した部分または突出部を残してカバー層92によって覆われた球形腫瘍38bを示している。図12は、ベース層88に残存欠損部94を残して除去されている腫瘍38、および欠損部94における間隙と交差している縫合針を示しており、欠損部はカバー層92の下からまたはカバー層92を通じてアクセスされている。
【0026】
特定の実施形態を、その例示的な実施形態を参照しながら詳細に示しかつ説明したが、以下の特許請求の範囲によって定義されるその精神および範囲から逸脱することなしに形態および詳細に様々な変更がなされうることが、当業者には理解されるであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】