特表2015-503012(P2015-503012A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-503012金属加工用流体組成物および圧密化黒鉛鉄の機械加工におけるその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-503012(P2015-503012A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(54)【発明の名称】金属加工用流体組成物および圧密化黒鉛鉄の機械加工におけるその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/00 20060101AFI20141226BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 135/04 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 135/22 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 135/06 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 133/08 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 133/10 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 139/00 20060101ALI20141226BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20141226BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20141226BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20141226BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20141226BHJP
【FI】
   C10M173/00
   C10M105/38
   C10M135/04
   C10M135/22
   C10M135/06
   C10M133/08
   C10M133/10
   C10M139/00 A
   C10M101/02
   C10N20:02
   C10N30:06
   C10N40:22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-546168(P2014-546168)
(86)(22)【出願日】2012年12月10日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月8日
(86)【国際出願番号】US2012068708
(87)【国際公開番号】WO2013086483
(87)【国際公開日】20130613
(31)【優先権主張番号】61/568,979
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514142061
【氏名又は名称】エバンス, ロバート ディー.
(71)【出願人】
【識別番号】514142072
【氏名又は名称】ゾン, クアン
(71)【出願人】
【識別番号】514142083
【氏名又は名称】トーマス, スティーブン アール.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エバンス, ロバート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ゾン, クアン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, スティーブン アール.
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA01Z
4H104BB17C
4H104BB34A
4H104BE04C
4H104BE06C
4H104BG02C
4H104BG04C
4H104BG12C
4H104BJ05C
4H104DA02A
4H104EA02A
4H104EB14
4H104LA03
4H104PA22
4H104QA02
(57)【要約】
水;潤滑剤エステル;および硫黄含有潤滑剤添加剤を含む組成物を付与する工程を含む、鉄の機械加工中に工具摩耗を低減させるための組成物および方法。いくつかの実施形態では、潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せは、約1重量%から約50重量%の量で存在し、ポリオールエステル;グリセロースをベースにしたエステル;ならびに/または、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、および1,2,3−プロパントリオールのC12〜C18脂肪酸エステルのものから選択されるエステルを含んでいてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄機械加工用組成物であって、
(a)水、
(b)硫黄含有潤滑剤添加剤、および
(c)前記鉄機械加工用組成物の約0重量%から約50重量%の量で、任意選択で含有される潤滑剤エステル
を含む鉄機械加工用組成物。
【請求項2】
前記潤滑剤エステルが、前記鉄機械加工用組成物の約0.05重量%から約50重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤エステルが、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、および1,2,3−プロパントリオールのC12〜C18脂肪酸エステルのものから選択されるポリオールエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記潤滑剤エステルが、グリセロールをベースにしたエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記潤滑剤エステルが、C12〜C18飽和および不飽和脂肪酸のグリセロールエステルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記エステルが、植物油および動物脂肪に由来する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エステルが、脂肪酸とグリセロールとの反応を介した合成により生成される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記潤滑剤エステルが、ポリオールとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの初期反応、その後に続くエステル化によって、ポリオキシアルキル化ポリオールエステルが得られるように、生成されたポリオールエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記潤滑剤エステルが、リシノール酸などのヒドロキシル官能化脂肪酸の縮合によって生成されたオリゴマーまたはポリマーエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記潤滑剤エステルが、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール、またはこれらの組合せの、C18脂肪酸エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記潤滑剤エステルが、前記鉄機械加工用組成物の約50重量%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記硫黄含有潤滑剤添加剤が、硫化αオレフィン、二分岐アルキルトリおよびポリスルフィド、硫黄含有カルボン酸、複合硫化エステル、ならびに/またはジアルキルポリスルフィドからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記硫黄含有潤滑剤添加剤が、式:
CH−C(R)(R)−(CH)n−)−S
(式中、R=HまたはCH、R=HまたはCH、n=8〜20、x=1〜2、およびm=2〜7である)
を有するものから選択されるジアルキルポリスルフィドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記硫黄含有潤滑剤添加剤が、約0.5重量%から約7重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
約0重量%から約12重量%の量で、12から22個の間の炭素の飽和および不飽和鎖を含有するものから選択される脂肪酸をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
約3重量%から約15重量%のアミン化合物の混合物をさらに含み、
前記アミン化合物が、式R(R)−N−R(式中、R=H、CH、または−CHCHOH、R=H、CH−(CH(式中、n=0〜22である)、−CHCHOH、または環状C11、およびR=−(CHCHO)−H(式中、m=1〜12である)、CH−(CHO−(式中、x=0〜8である)、または環状C11である)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記アミンが、エタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジシクロヘキシルアミン、ジグリコールアミン、またはこれらの組合せを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
約0重量%から約15重量%のアミン−ホウ酸をさらに含み、
前記アミン−ホウ酸が、アルカノールアミンホウ酸エステル、アミンポリボレート、ホウ酸のアミン塩、およびこれらの組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
約0重量%から約40重量%の鉱油をさらに含み、
前記鉱油がパラフィン油、ナフテン油、またはこれらの混合物を含み、周囲圧力での粘度が摂氏40度で約15cStから約30cStの間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
約4重量%から約10重量%の、非イオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の混合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の流体組成物を、機械加工中に鉄に付与する工程を含む、鉄を機械加工する方法。
【請求項22】
水希釈液の形をとる請求項1に記載の流体組成物を、機械加工中に鉄に付与する工程を含む、鉄を機械加工する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の前記流体組成物が、鉄の機械加工で使用される前に2重量%から50重量%の間の濃度まで水で希釈される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の前記流体組成物が、鉄の機械加工で使用される前に2重量%から15重量%の間の濃度まで水で希釈される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の流体組成物を、機械加工中に鉄に付与する工程を含む、鉄の機械加工中に工具摩耗を低減させる方法。
【請求項26】
鉄の機械加工中に低減される工具摩耗が、2重量%から50重量%の間の濃度まで水で希釈された前記流体組成物の使用によって実現される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
鉄の機械加工中に低減される工具摩耗が、2重量%から15重量%の間の濃度まで水で希釈された前記流体組成物の使用によって実現される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記工具摩耗が、従来の潤滑剤流体に比べて約5%から約90%低減される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記鉄が圧密化黒鉛鉄を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2011年12月9日に出願された米国仮特許出願第61/568,979号からの優先権の利益を主張し、この仮特許出願はその全体が参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
鋳鉄は、多くの工業部品の生産に使用することができる。圧密化黒鉛鉄などの、あるタイプの鋳鉄は、機械加工することが難しくなる可能性があり;工業部品の製作にしばしば必要とされる金属の切断および研削は、難題および困難をもたらす可能性があり、例えば工具の摩耗率が急速になり加速され、それと共に、生産される部品の品質が低下する。
【0003】
より軽くより高い強度の部品を生産するために標準的なねずみ鋳鉄の代わりに圧密化黒鉛鉄を用いようとする、産業界で現在進行中の多くの努力により、これら2種の金属の材料特性および機械加工性に相違を生じさせる構造上および組成上の相違の両方について記述することは有用である。ねずみ鋳鉄は、エンジンブロック、シリンダーヘッド、ならびに様々なその他の自動車部品を生産するのに伝統的に使用されてきた。ねずみ鋳鉄中の黒鉛は、片状構造を有する。相互接続している片状黒鉛が大半を占めることによって、高レベルの不連続性および応力集中作用が母材に生じ、その後、良好な熱伝導率、減衰容量、および良好な機械加工特性など、ねずみ鋳鉄に特徴的な性質が生じる。このようにねずみ鋳鉄は、低い生産コストで容易に機械加工される(長い工具寿命で、より高い金属除去率)。ねずみ鋳鉄とは異なって、圧密化黒鉛鉄は、サンゴの構造に非常に似ている黒鉛構造を有する。そのような黒鉛構造は、より低いレベルの不連続性および応力集中作用を金属内にもたらし、より高い強度と靱性特性ならびにより低い機械加工性をもたらす。
【0004】
黒鉛構造の相違に加え、著しい組成上の相違がねずみ鋳鉄と圧密化黒鉛鉄との間にあり、これはやはり、これら2種の金属の機械加工性の相違に大きく関与するものである。ねずみ鋳鉄中に硫黄が存在することは、この金属の高い機械加工性に関連した極めて重要な要因であると見なされる。
【0005】
これら2つの要因(黒鉛形態および硫黄濃度)により、圧密化黒鉛鉄の機械加工性はかなり低くなり、工具摩耗は、ねずみ鋳鉄の機械加工で経験するよりもかなり大きくなる。先に報告された研究は、ねずみ鋳鉄の場合に同等の機械加工操作で得られる場合に比べ、圧密化黒鉛鉄のミリングおよび穴あけ操作に関する工具寿命は半分になる可能性があり、一方、圧密化黒鉛鉄の穴ぐり操作における工具寿命はちょうど10分の1になるようであることを示す。このように、圧密化黒鉛鉄の、改善されかつより経済的な機械加工が可能になる技術の進歩が必要であることが明らかであった。工具の設計製作、機械加工条件の最適化、圧密化黒鉛鉄の組成、ならびに金属加工用流体の組成の領域における研究開発である。本発明は、一般的なグレードの圧密化黒鉛鉄の機械加工において高められた工具寿命と部品品質とをもたらすことができる、新しい流体組成物と使用方法とについて記述する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明のいくつかの実施形態によれば、鉄機械加工用組成物は、水;潤滑剤エステル;および硫黄含有潤滑剤添加剤を含む。いくつかの実施形態では、潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せは、約1重量%から約50重量%の量で存在し、ポリオールエステル;グリセロースをベースにしたエステル;ならびに/または、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、および1,2,3−プロパントリオールのC12〜C18脂肪酸エステルのものから選択されるエステルを含んでいてもよい。適切なエステルは、ポリオールとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの初期反応、その後に続くエステル化によって、ポリオキシアルキル化ポリオールエステルが得られるように、生成されたものを含んでいてもよい。適切なエステルは、オリゴマーエステルおよびポリマーエステルが得られるように、リシノール酸などのヒドロキシル官能化脂肪酸の縮合によって生成されたものも含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、硫黄含有潤滑剤添加剤は、約0.1重量%から約20重量%の量で存在し、硫化αオレフィン、二分岐アルキルトリおよびポリスルフィド、硫黄含有カルボン酸、複合硫化エステル、ならびに/または、式:CH−C(R)(R)−(CH)n−)−S(式中、R=HまたはCHであり、R=HまたはCHであり、n=8〜20、x=1〜2、およびm=2〜7である)を有するものから選択されるジアルキルポリスルフィドを含んでいてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、鉄機械加工用組成物は、約0重量%から約12重量%の量で、12から22個の間の炭素の飽和および不飽和鎖を含有するような脂肪酸を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、鉄機械加工用組成物は、式R(R)−N−R(式中、R=H、CH、または−CHCHOHであり、R=H、CH−(CH(式中、n=0〜22である)、−CHCHOH、または環状C11であり、およびR=−(CHCHO)−H(式中、m=1〜12である)、CH−(CHO−(式中、x=0〜8である)、または環状C11である)を有するアミン化合物の混合物を、約0重量%から約10重量%含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、鉄機械加工用組成物は、ホウ酸−アミン付加物を約0重量%から約30重量%含み、このホウ酸アミン付加物は、ホウ酸のアミン塩、環状ボロキシンエステルを含むホウ酸−アルカノールアミン(alkonaolamine)エステル、およびポリボレートアミン塩を含む、1つまたは複数の構造の混合物から構成されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、鉄機械加工用組成物は、鉱油を約0重量%から約50重量%含む。適切な鉱油は、純粋なものまたは鉱油の混合物、例えばナフテン油およびパラフィン油であって摂氏40度で約15cStから約30cStの間のものであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、鉄機械加工用組成物は、非イオン性およびアニオン性の乳化剤の混合物を約4重量%から約10重量%含む。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、鉄を機械加工する方法は、本発明の流体組成物(流体濃縮物と呼ぶ)を水希釈液として付与する工程であって、機械加工に使用する前に本発明の組成物を最初に水で希釈して、1%から100%の濃度の流体濃縮物を得る工程を含む。いくつかの実施形態では、そのような付与は、従来の潤滑剤流体に比べて例えば約5%から約90%だけ、鉄の機械加工中に工具摩耗を低減させることができる。いくつかの実施形態では、機械加工された鉄は圧密化黒鉛鉄である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、穴あけ中に測定された軸力を示す図である。
【0015】
図2図2は、穴あけ中に測定されたトルクを示す図である。
【0016】
図3図3は、穴あけ後の工具摩耗を示す図である。
【0017】
図4図4は、様々な機械加工流体による工具摩耗を示す図である。
【0018】
図5図5は、様々な機械加工流体による切断力を示す図である。
【0019】
図6図6は、ドリルに得られた工具摩耗を示す図である。
【0020】
図7図7は、リーマー加工された130個の穴全体を通して測定された、表面仕上げを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の組成物および方法は、金属加工用流体組成物と、鉄などの金属の機械加工でそれを使用するための方法とに関する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、圧密化黒鉛鉄(「CGI」または「バーミキュラー鉄」とも呼ばれる)の機械加工に関する。いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物および付与方法は、圧密化黒鉛鉄などの鉄に関して行われる金属切断および研削プロセスで使用される場合、摩耗を効果的に低減させることによって使用される工具の寿命を著しく延ばすことができ、生産される部品の品質を改善することができる。いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、少なくともエステル潤滑剤を、硫黄含有潤滑剤添加剤と併せて含む。
【0022】
エステル潤滑剤
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は1種または複数のエステル潤滑剤を含む。適切なエステル潤滑剤は、ポリオールと、分岐鎖または環状モノ、ジ、およびポリ塩基性アルコールの長鎖(C12〜C22)カルボン酸エステルなどの天然カルボン酸エステルとを含んでいてもよい。適切なエステル潤滑剤は、分岐鎖または環状モノ、ジ、およびポリ塩基性アルコールの長鎖(C12〜C22)カルボン酸エステルなどのアルコキシル化ポリオールエステルであって、カルボン酸エステルの形成前にポリ塩基性アルコールがアルコキシル化されるものも含んでいてもよい。適切なエステルは、オリゴマーエステルおよびポリマーエステルが得られるように、リシノール酸などのヒドロキシル官能化脂肪酸の縮合によって生成されたものも含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、適切なエステル潤滑剤は、長さが12から22個の間の炭素の飽和および不飽和アルキル鎖を有するカルボン酸から選択されるカルボン酸部分を含有するエステルを含み、(1種または複数の)脂肪酸が、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、および1,2,3−プロパントリオールから選択されるがこれらに限定するものではない一または多官能性アルコールと反応して、本発明において有用なエステルを形成する。
【0023】
いくつかの実施形態では、流体組成物は、流体組成物の約1重量%から約50重量%;流体組成物の約2重量%から約40重量%;流体組成物の約3重量%から約35重量%;流体組成物の約4重量%から約30重量%;流体組成物の約5重量%から約25重量%;流体組成物の約6重量%から約20重量%;流体組成物の約6重量%から約15重量%;流体組成物の約7重量%から約10重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約16重量%;流体組成物の約18重量%;流体組成物の約20重量%;流体組成物の約22重量%;流体組成物の約24重量%;流体組成物の約26重量%;流体組成物の約28重量%;流体組成物の約30重量%;流体組成物の約32重量%;流体組成物の約34重量%;流体組成物の約36重量%;流体組成物の約38重量%;流体組成物の約40重量%;流体組成物の約42重量%;流体組成物の約44重量%;流体組成物の約46重量%;流体組成物の約48重量%;および流体組成物の約50重量%の量でエステル潤滑剤を含有する。
【0024】
硫黄含有潤滑剤添加剤
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、1種または複数の硫黄含有潤滑剤添加剤を含む。適切な硫黄含有添加剤は、硫化αオレフィン、二分岐アルキルトリおよびポリスルフィド、硫黄含有カルボン酸、複合硫化エステル、ならびに/またはジアルキルポリスルフィドを含んでいてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、適切な硫黄含有化合物は、式1:
式1:CH−C(R)(R)−(CH)n−)−S
(式中、R=HまたはCH、R=HまたはCH、n=8〜20、x=1〜2、およびm=2〜7である)
に示されるような構造を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、流体組成物は、流体組成物の約0.1重量%から約20重量%;流体組成物の約0.2重量%から約18重量%;流体組成物の約0.3重量%から約16重量%;流体組成物の約0.4重量%から約14重量%;流体組成物の約0.5重量%から約12重量%;流体組成物の約0.6重量%から約10重量%;流体組成物の約0.7重量%から約10重量%;流体組成物の約0.8重量%から約9重量%;流体組成物の約0.9重量%から約8重量%;流体組成物の約1重量%から約7重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.2重量%;流体組成物の約0.4重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約0.6重量%;流体組成物の約0.8重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約3重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約9重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約16重量%;流体組成物の約18重量%;または流体組成物の約20重量%の量で硫黄含有潤滑剤添加剤を含む。
【0027】
金属加工用流体の上記2成分に加え、本発明の組成物は、多くの金属切断潤滑剤流体に一般に使用されるその他の化合物も含有してもよい。そのような化合物およびそのような化合物の濃度について以下に記述する。
【0028】
脂肪酸
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、脂肪酸を含む。適切な脂肪酸には、単一の脂肪酸のタイプとしてまたは2種以上の脂肪酸の組合せとして式に組み込まれた、鎖長に12から22個の間の炭素があるものを含めてもよいが、これらに限定するものではない。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、流体組成物の約0重量%から約30重量%;流体組成物の約0.1重量%から約30重量%;流体組成物の約0.5重量%から約25重量%;流体組成物の約1重量%から約20重量%;流体組成物の約2重量%から約17重量%;流体組成物の約3重量%から約15重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約3重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約9重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約11重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約13重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約15重量%;流体組成物の約17重量%;流体組成物の約20重量%;流体組成物の約22重量%;流体組成物の約25重量%;流体組成物の約27重量%;または流体組成物の約30重量%の量で脂肪酸を含む。
【0030】
アミン
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、アミンまたはアミン化合物の混合物を含む。適切なアミンには、式R(R)−N−R(式中、R=H、CH、または−CHCHOHであり、R=H、CH−(CH(式中、n=0〜22である)、−CHCHOH、または環状C11であり、およびR=−(CHCHO)−H(式中、m=1〜12である)、CH−(CHO−(式中、x=0〜8である)、または環状C11である)を有するものを含めてもよいが、これらに限定するものではない。そのようなアミンには、エタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジシクロヘキシルアミン、およびジグリコールアミンが含まれる。
【0031】
ある実施形態では、本発明の流体組成物は、流体組成物の約0重量%から約30重量%;流体組成物の約0.1重量%から約30重量%;流体組成物の約0.5重量%から約25重量%;流体組成物の約1重量%から約20重量%;流体組成物の約2重量%から約17重量%;流体組成物の約3重量%から約15重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約3重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約9重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約11重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約13重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約15重量%;流体組成物の約17重量%;流体組成物の約20重量%;流体組成物の約22重量%;流体組成物の約25重量%;流体組成物の約27重量%;または流体組成物の約30重量%の量でアミンまたはアミンの混合物を含む。
【0032】
アミン−ホウ酸付加物
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、ホウ酸−アミン付加物を含み、ホウ酸アミン付加物は、ホウ酸のアミン塩、環状ボロキシンエステルを含めたホウ酸−アルカノールアミンエステル、ならびにポリボレートアミン塩を含む、1つまたは複数の構造の混合物から構成されてもよい。適切な付加物は、ホウ酸と、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジシクロヘキシルアミン、およびジグリコールアミンから選択されるがこれらに限定されない単一のアミンまたはアミンの混合物との反応によって、化学量論量で反応させまたは僅かに過剰なアミン成分と反応させて、調製することができる。
【0033】
ある実施形態では、本発明の流体組成物は、流体組成物の約0.1重量%から約30重量%;流体組成物の約1重量%から約25重量%;流体組成物の約2重量%から約20重量%;流体組成物の約3重量%から約17重量%;流体組成物の約5重量%から約15重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約3重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約9重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約11重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約13重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約15重量%;流体組成物の約17重量%;流体組成物の約20重量%;流体組成物の約22重量%;流体組成物の約25重量%;流体組成物の約27重量%;または流体組成物の約30重量%の量で、アミンホウ酸付加物を含む。
【0034】
ジカルボン酸のアミン塩
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、短鎖ジカルボン酸のアミン塩を含む。短鎖ジカルボン酸の適切なアミン塩には、アミン二酸塩が、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジシクロヘキシルアミン、およびジグリコールアミンから選択される単一のアミンまたはアミンの混合物であって、4〜12個の間の炭素原子を含有するものから選択される短鎖ジカルボン酸と反応したものから構成されたものが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0035】
本発明の、ある実施形態では、流体組成物は、流体組成物の約0.1重量%から約20重量%;流体組成物の約0.5重量%から約15重量%;流体組成物の約1重量%から約10重量%;流体組成物の約1.5重量%から約9重量%;流体組成物の約2重量%から約8重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約1.5重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約3重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約9重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約16重量%;流体組成物の約18重量%;または流体組成物の約20重量%の量で、短鎖ジカルボン酸の1種または複数のアミン塩を含む。
【0036】
鉱油
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は鉱油を含む。適切な鉱油は、純粋なものまたは鉱油の混合物、例えばナフテン油およびパラフィン油であってもよい。いくつかの実施形態では、適切な鉱油または鉱油のブレンドは、摂氏40度で約5cStから約35cSt;摂氏40度で約10cStから約30cSt;摂氏40度で約15cStから約25cSt;摂氏40度で約5cSt;摂氏40度で約10cSt;摂氏40度で約15cSt;摂氏40度で約20cSt;摂氏40度で約25cSt;摂氏40度で約30cSt;または摂氏40度で約35cStである最終粘度を有していてもよい。
【0037】
ある実施形態では、本発明の流体組成物は、流体組成物の約0重量%から約75重量%;流体組成物の約0.1重量%から約75重量%;流体組成物の約0.1重量%から約70重量%;流体組成物の約0.1重量%から約65重量%;流体組成物の約0.1重量%から約60重量%;流体組成物の約0.1重量%から約55重量%;流体組成物の約1重量%から約50重量%;流体組成物の約2重量%から約45重量%;流体組成物の約5重量%から約40重量%;流体組成物の約10重量%から約35重量%;流体組成物の約15重量%から約30重量%;流体組成物の約20重量%から約25重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約15重量%;流体組成物の約20重量%;流体組成物の約25重量%;流体組成物の約30重量%;流体組成物の約35重量%;流体組成物の約40重量%;流体組成物の約45重量%;流体組成物の約50重量%;流体組成物の約55重量%;流体組成物の約60重量%;流体組成物の約65重量%;流体組成物の約70重量%;または流体組成物の約75重量%の量で、鉱油または鉱油のブレンドを含む。
【0038】
乳化剤
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、1種または複数の乳化剤を含む。適切な乳化剤は、当技術分野で一般に公知のものから選択されかつ水をベースにした金属加工用流体で典型的に使用される、非イオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の混合物を含んでもよいが、これらに限定するものではない。いくつかの実施形態では、適切な乳化剤は、アルカリアリールスルホン酸、アルキルスルホン酸、およびアリールスルホン酸のアルカリ金属塩;長さがC12〜C22の間のアルコキシル化長鎖アルコール;ポリオキシエチレン(polyooxyethylene)/ポリオキシプロピレンコポリマー;ならびにエトキシル化アルキルフェノールを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、流体組成物の約0.1重量%から約20重量%;流体組成物の約0.5重量%から約18重量%;流体組成物の約1重量%から約16重量%;流体組成物の約2重量%から約14重量%;流体組成物の約2重量%から約12重量%;流体組成物の約3重量%から約11重量%;流体組成物の約4重量%から約10重量%;流体組成物の約0.1重量%;流体組成物の約0.5重量%;流体組成物の約1重量%;流体組成物の約2重量%;流体組成物の約3重量%;流体組成物の約4重量%;流体組成物の約5重量%;流体組成物の約6重量%;流体組成物の約7重量%;流体組成物の約8重量%;流体組成物の約9重量%;流体組成物の約10重量%;流体組成物の約11重量%;流体組成物の約12重量%;流体組成物の約13重量%;流体組成物の約14重量%;流体組成物の約15重量%;流体組成物の約16重量%;流体組成物の約17重量%;流体組成物の約18重量%;流体組成物の約19重量%;または流体組成物の約20重量%の量で、1種または複数の乳化剤を含む。
【0040】
組成物
本発明により記述されかつ圧密化黒鉛鉄などの鉄の機械加工に使用するのに適切な、金属加工用流体組成物は、下記のものからなる:
a)約5重量%から約40重量%の潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せであって、トリメチロールプロパン(trimethyolpropane)トリオレエート、ペンタエリスリトールテトラドデカノエート、ネオペンチルグリコールジオレエート、およびイソプロピルオレエートなどの合成ポリオール脂肪酸エステル、ならびにポリオールとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの初期反応、その後に続くエステル化によってポリオキシアルキル化ポリオールエステルが得られるように、生成されたものから選択される、潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せ。ならびにオリゴマーエステルおよびポリマーエステルが得られるようにリシノール酸などのヒドロキシル官能化脂肪酸の縮合により生成されたもの。
b)約1重量%から約10重量%の硫黄含有化合物であって、二分岐アルキルポリスルフィド、硫化αオレフィン、ならびに複合硫化脂肪酸および脂肪酸エステルから選択される硫黄含有化合物;
c)約0重量%から約12重量%の脂肪酸であって、単一の脂肪酸としてまたは2種以上の脂肪酸の組合せとして流体に組み込むことができる、鎖長に12から22個の間の炭素があるものから選択される脂肪酸;
d)約3重量%から約15重量%のアミンまたはアミン化合物の混合物であって、式R(R)−N−R(式中、R=H、CH、またはCHCHOHであり、R=H、CH−(CH(式中、n=0〜22である)、−CHCHOH、または環状C11であり、およびR=−(CHCHO)−H(式中、m=1〜12である)、CH−(CHO−(式中、x=0〜8である)、または環状C11である)を有するものから選択されるがこれらに限定されないアミンまたはアミン化合物の混合物。そのようなアミンには、エタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジシクロヘキシルアミン、およびジグリコールアミンが含まれる。
e)約0重量%から約15重量%のホウ酸−アミン付加物であって、ホウ酸アミン付加物が、ホウ酸のアミン塩、環状ボロキシンエステルを含むホウ酸−アルカノールアミンエステル、ならびにポリボレートアミン塩を含む1つまたは複数の構造の混合物から構成されていてもよいもの。
e)約0重量%から約40重量%のパラフィン系またはナフテン系鉱油であって、周囲温度での粘度が約4cStから約28cStの間のパラフィン系またはナフテン系鉱油。
【0041】
そのような流体組成物は、水中に約2重量%から約15重量%の量でブレンドされかつ圧密化黒鉛鉄などの鉄の機械加工で利用された場合、生ずる工具摩耗の率にかなりの低下をもたらすと共に、機械加工された部品の品質に顕著な強化をもたらす。
【0042】
本発明の別の実施形態では、圧密化黒鉛鉄などの鉄の、改善された機械加工に有用な流体は、下記のものを含む:
a)約5重量%から約15重量%の潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せであって、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、および1,2,3−プロパントリオールのC18脂肪酸エステルのものから選択される潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せ;
b)約2重量%から約5重量%のジアルキルポリスルフィドであって、式1(式中、R=CH、R=CH、n=8〜10、およびm=3〜5である)によるものから選択されるジアルキルポリスルフィド;
c)約6重量%から約12重量%の脂肪酸であって、16から22個の間の炭素の飽和および不飽和鎖を含有するものから選択される脂肪酸;
d)約3重量%から約10重量%のアミン化合物の混合物であって、例えば式2:
式2:R(R)−N−R
(式中、R=Hまたは−CHCHOHであり、R=H、または−CHCHOH、または環状C11であり、およびR=または−CHCHOH、または環状C11である)
により記述されるもの;
e)約10重量%から約14重量%のアミン−ホウ酸付加物であって、式3:
式3:B(OHN(CHCHOH)
(式中、n=m=3である)
に示される構造によるアミン−ホウ酸付加物;
f)約30重量%から約40重量%のナフテン系鉱油であって、周囲圧力での粘度が摂氏40度で約15cStから約30cStの間であるナフテン系鉱油;ならびに
g)約4重量%から約10重量%の非イオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の混合物であって、当技術分野で一般に公知でありかつ水をベースにした金属加工用流体で典型的に使用されるものから選択される乳化剤の混合物。
【0043】
そのような流体組成物は、約3重量%から約15%の量で水中でブレンドされかつ圧密化黒鉛鉄などの鉄の機械加工で利用された場合、生じる工具摩耗の率に顕著な低下をもたらすと共に、機械加工された部品の品質に顕著な強化をもたらす。以下に記述する機械加工試験の結果は、圧密化黒鉛鉄などの鉄の機械加工に際し、そのような組成物で実現された有用性および進歩を示す。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、水とブレンドされて希釈液を調製してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の流体組成物は、希釈液の約1重量%から約50重量%;希釈液の約2重量%から約25重量%;希釈液の約3重量%から約20重量%;希釈液の約3重量%から約17重量%;希釈液の約4重量%から約15重量%;希釈液の約1重量%;希釈液の約2重量%;希釈液の約3重量%;希釈液の約4重量%;希釈液の約5重量%;希釈液の約6重量%;希釈液の約7重量%;希釈液の約8重量%;希釈液の約9重量%;希釈液の約10重量%;希釈液の約11重量%;希釈液の約12重量%;希釈液の約13重量%;希釈液の約14重量%;希釈液の約15重量%;希釈液の約17重量%;希釈液の約20重量%;希釈液の約25重量%;または希釈液の約30重量%の量で、水中にブレンドされてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、圧密化黒鉛鉄などの鉄を機械加工する最中の、本発明の実施形態による流体組成物の使用は、従来の流体に比べて約5%から約95%;約10%から約90%;約15%から約85%;約20%から約80%;約25%から約75%;約30%から約70%;約35%から約65%;約40%から約60%;約5%;約10%;約15%;約20%;約25%;約30%;約35%;約40%;約45%;約50%;約55%;約60%;約65%;約70%;約75%;約80%;約85%;約90%;または約95%の工具摩耗の低減をもたらす。
【実施例】
【0046】
本発明により記述される好ましい組成物の性能を評価するために、Grade450圧密化黒鉛鉄の穴あけを行った。穴あけは、穴を加工物金属に生成するプロセスであり、そのような場合にはより大量の金属が除去されるが、典型的にはより大きい切断力を必要としかつより過酷な機械的および熱的条件がプロセスに生じる。流体性能の評価は、穴あけ操作中に生じる切断力および工具摩耗の測定によって行われる。
【0047】
(実施例1)
この実施例では、標準的な従来の鉄系(ferrous)機械加工流体を、本発明の実施形態により記述された流体と比べて評価した。
【0048】
圧密化黒鉛鉄の改善された機械加工に有用な流体Aを本発明の実施形態により調製し、これは下記のものを有していた:
a)約5重量%から約10重量%のエステル潤滑剤;
b)約3重量%から約7重量%の硫黄添加剤;
c)8重量%から約16重量%の鉱油;ならびに
d)アミン、ホウ酸、脂肪酸、および乳化剤を有する残分。
流体Aを、濃度8%で試験した。機械加工条件は下記の通りである:
【表1】
【0049】
穴あけ中に測定された軸方向の機械加工力およびトルク(接線力)は、切断ゾーンでの摩擦と金属加工用流体により得られた潤滑性との有用な指標を提示する。穴あけが継続されるときに測定された力の変化は、典型的には工具摩耗および/または刃先への金属接着から生じる、工具の状態の変化または劣化の有用な間接的測定値を提示することができる。図1および2で得られかつプロットされた結果からわかるように、流体A(本発明の実施形態)の使用は、従来の鉄系機械加工流体(流体B)を使用した場合に生じる場合に比べてかなり低い切断力および力の変化で、圧密化黒鉛鉄の機械加工を可能にする。
【0050】
生じる工具摩耗に対する影響を評価する際、従来の鉄系機械加工流体(流体B)での機械加工中に使用されたドリル表面に形成されたフランク摩耗は、本発明で記述される流体組成物(流体A)を使用したときに得られる場合に比べ、工具の刃先のフランク面の摩耗が約69.2%大きくなったことがわかる。したがって、測定された切断力および測定された工具摩耗の両方から、本発明で記述される組成物により提供される利益および有用性は、実施された穴あけ操作で明らかに見られる。
【0051】
(実施例2)
圧密化黒鉛鉄の改善された機械加工に有用な流体Dを本発明の実施形態により調製し、これは下記のものを有していた:
a)約22重量%から約28重量%の潤滑剤エステルであって、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、または1,2,3−プロパントリオールのいずれかのC18脂肪酸エステルから選択される潤滑剤エステル;
b)約2重量%から約5重量%のジアルキルポリスルフィドであって、式1(式中、R=CH、R=CH、n=8〜10、およびm=3〜5である)によるものから選択されるジアルキルポリスルフィド;
c)約3重量%から約6重量%の脂肪酸であって、10から16個の間の炭素の飽和アルキル鎖を、長さが18から22個の間の炭素原子の飽和および不飽和アルキル鎖から構成されたより長い鎖長のカルボン酸と共に含むものから構成された脂肪酸。
d)約3重量%から約8重量%のアミン化合物の混合物であって、式2(式中、R=Hまたは−CHであり、R=−CHCHOHまたは環状C11であり、およびR=−CHCHOHまたは環状C11である)により記述されるものからなるアミン化合物の混合物;
e)約35重量%から約45重量%のナフテン系鉱油であって、周囲圧力での粘度が摂氏40度で約15cStから約30cStの間であるナフテン系鉱油;ならびに
f)約4重量%から約10重量%の非イオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の混合物であって、当技術分野で一般に公知でありかつ水をベースにした金属加工用流体で典型的に使用されるものから選択される乳化剤の混合物。
【0052】
そのような流体組成物は、水中に約4重量%から15重量%の量でかつ圧密化黒鉛鉄などの鉄の機械加工で利用される場合、生じる工具摩耗の率に顕著な低下をもたらし、それと共に機械加工された部品の品質に顕著な強化をもたらす。流体Dは、従来の鉄系機械加工流体組成物をベースにした2種の現在使用されている圧密化黒鉛鉄機械加工流体と共に、穴あけ試験で試験をした。これら2種の流体を流体Cおよび流体Eと称し、共に、本発明で記述される本発明の流体組成物の場合に先駆けた、圧密化黒鉛鉄の機械加工で利用可能な当該分野の技術水準を表す。この試験および比較には流体Aも含まれる。
【0053】
4種の流体を使用した圧密化黒鉛鉄の穴あけ中に測定された工具摩耗の結果について、図3および4において以下に示す。結果は、流体Aおよび流体Dが、工具摩耗の著しい低減を明らかにもたらし、したがって工具類の有用な持続時間が延びることを実証する。結果は、流体Aおよび流体Dが、約22%から約46%の間の範囲の工具摩耗低減をもたらすことを示し、機械加工操作およびプロセスに関連したコストに関して著しい利益があることを表す。
【0054】
(実施例3)
圧密化黒鉛鉄の改善された機械加工に有用な流体Fを本発明の実施形態により調製し、これは下記のものを有していた:
a)約12重量%から約18重量%の潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せであって、2,2ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−プロパノール、1,1,1,トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、および1,2,3−プロパントリオールのC18脂肪酸エステルのものから選択される潤滑剤エステルまたは潤滑剤エステルの組合せ。
b)2から5%の間のジアルキルポリスルフィドであって、式1(式中、R=CH、R=CH、n=8〜10、およびm=5〜8である)によるものから選択されるジアルキルポリスルフィド;
c)約1重量%から約7重量%の脂肪酸であって、16から22個の間の炭素の飽和および不飽和鎖を含有するものから選択される脂肪酸;
d)約8重量%から約14重量%のアミン化合物の混合物であって、式2(式中、R=Hまたは−CHCHOHであり、R=Hまたは−CHCHOHであり、およびR=−CHCHOHまたは−COHである)により記述されるものからなるアミン化合物の混合物;
e)約5重量%から約9重量%のホウ酸のアミン塩であって、式3:
式3:B(OHN(CHCHOH)
(式中、n=m=3である)
で示される構造によるホウ酸のアミン塩;
f)約40重量%から約55重量%のナフテン系鉱油であって、周囲圧力での粘度が摂氏40度で15〜30cStの間であるナフテン系鉱油;ならびに
g)約4重量%から約15重量%の非イオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の混合物であって、当技術分野で一般に公知でありかつ水をベースにした金属加工用流体で典型的に使用されるものから選択される乳化剤の混合物。
【0055】
そのような流体組成物は、水中に約4重量%から約15重量%の量でブレンドされかつ圧密化黒鉛鉄などの鉄の機械加工で利用された場合、生じる工具摩耗の率に顕著な低下をもたらすと共に、機械加工された部品の品質が顕著な強化をもたらす。
【0056】
流体Fを、濃度8%で、Grade 450 CGIの穴あけおよびリーマー加工において試験した。この流体組成物は、鋳鉄機械加工(CGIを含む)に利用される従来の機械加工流体である流体Gと共に試験をし、その性能と比較した。流体Gは組成が流体Fに類似しているが、硫黄ベースの添加剤を含有していない。
【0057】
CGIと共に、これら2種の流体は、一般的なClass40のねずみ鋳鉄の穴あけおよびリーマー加工においても試験をした。この試験は、本発明で記述される流体組成物の有用性を実証するためだけでなく、ねずみ鋳鉄に比べたCGIの機械加工に関連する固有の困難性も実証するために行った。
【0058】
穴あけ中に測定されたトルク(接線力)は、切断ゾーンにおける摩擦と、金属加工用流体により得られた潤滑性との有用な指標を提示する。穴あけを継続する際に測定されたトルクの変化は、穴あけを継続する際に工具の刃先に生じる変化(摩耗)を反映する。図5に示される結果の検討に際し、標準的なClass40ねずみ鋳鉄に比べて圧密化黒鉛鉄の機械加工に固有のより低い機械加工性とより高度な難題とが明らかに見られる。
【0059】
結果は、本発明の実施形態の流体(流体F)の使用によって、切断力がかなり低減された状態で機械加工プロセスが著しく向上することも実証する。好ましい組成物のこの有効性は、穴あけの後に測定された工具摩耗においても見られる。図6は、使用されるドリルに関して得られた工具摩耗を示す。測定された切断力に見られるようにかつこの切断力に矛盾することなく、ねずみ鋳鉄の機械加工に比べて著しく高い摩耗が圧密化黒鉛鉄の機械加工で生じるが、流体Fの使用によって、工具の刃先の摩耗を効果的に低減させることが可能になる。
【0060】
金属除去が少量の、より低い切断速度で行われるリーマー加工操作は、穴あけの場合に比べてそれほど過酷な操作ではないと見なされるが、それでも本発明の実施形態による流体組成物の使用を経て得られた著しい性能改善が存在すると考えられる。穴あけ後、6本の溝付き固体炭化物リーマーを使用して、穴をリーマー加工した。リーマー加工された130個の穴全体を通して測定された表面仕上げを、図7に示す。従来の鉄系機械加工流体(流体G)の使用により、より粗くリーマー加工された穴の表面が非常に迅速に得られ、流体Fの使用によって、得られたリーマー加工済みの穴の表面粗さに著しい改善が得られることがわかる。
【0061】
(実施例4)
エンジンシリンダーの穴ぐりは、エンジンの生産においてさらに極めて重要な操作の1つであり、比較的高い切断速度で高品質の表面を生成する必要がある。そのような速い切断速度(250〜700m/分)では、多くの現行の高速移送ラインで使用されるものに矛盾することなく、圧密化黒鉛鉄と従来のねずみ鋳鉄との間の機械加工性の差が最も顕著であり得る。先の研究は、インサート摩耗率が、同等な条件下でねずみ鋳鉄の機械加工において得られる場合に比べ、圧密化黒鉛鉄の連続切断において20〜30倍大きくなることを報告している。
【0062】
この実施例では、本発明の実施形態により記述された流体と共に、標準的な従来の鉄系機械加工流体(流体B)について、エンジンシリンダーの穴ぐり中に生じる連続切断条件をシミュレートするのに利用される旋削操作において評価した。圧密化黒鉛鉄の改善された機械加工に有用な流体Aを、本発明の実施形態により調製し、これは下記のものを有していた:
a)約5重量%から約10重量%のエステル潤滑剤;
b)約3重量%から約7重量%の硫黄添加剤;
c)8重量%から約16重量%の鉱油;ならびに
d)アミン、ホウ酸、脂肪酸、および乳化剤を有する残分。
【0063】
流体Aは、9%の濃度で試験した。機械加工条件は下記の通りである:
・ 5°ラジアルおよび5°軸角でのCarbide Grade KC−9120切断インサート
・ 速度=250m/分、f=0.3mm−rev、Ap=.2mm
測定されたパラメーター − インサート摩耗。
【0064】
従来の鉄系機械加工流体(流体B)を使用して、生じる工具摩耗への影響を評価する際、過酷な摩耗および工具の不良に達するまで切断距離10.75Kmにわたり機械加工が続けられた。同一の機械加工条件を使用する、本発明に記述される流体組成物(流体A)の使用では、インサート不良に達するまで切断距離14Kmにわたり機械加工が続けられた。したがって高速切断条件下では、本発明に記述される流体を使用することにより、インサート摩耗に30%の低減が得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】