特表2015-503979(P2015-503979A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-503979(P2015-503979A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(54)【発明の名称】粉末薬剤用吸入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20150109BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-552569(P2014-552569)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月17日
(86)【国際出願番号】EP2013000127
(87)【国際公開番号】WO2013107641
(87)【国際公開日】20130725
(31)【優先権主張番号】12000354.6
(32)【優先日】2012年1月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/590,960
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】ヘルデル、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ルーダネク、ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】メット、インゴー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヨアヒム
(57)【要約】
本発明は、吸入に起因する空気流により患者に摂取される粉末薬剤用の吸入装置であって、少なくとも1つの粉末リザーバと、リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置へ前記計量手段を移動させるための搬送機構と、患者による手動操作のための作動装置として、動作時に単回分の粉末用量が計量されるように前記搬送機構に動作可能に接続され、患者によって押されたときに前記搬送機構に作用する投与キー(5)を有している少なくとも一つの作動装置とを備えている吸入装置に関し、前記搬送機構が、さらに前記計量手段に作用する投与レバー(6)を有し、前記投与キー(5)が患者によって適切に押し下げられた後に前記投与レバー(6)が前記計量手段の吸入位置にロックされ、吸入位置にて前記投与レバー(6)が誘発部材に係合すると共に誘発部材の作動によって解除可能であり、誘発部材が少なくとも1つのカム表面を有し、投与レバー(6)が前記ロックされた吸入位置で接線方向にカム表面に係合するものである。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入に起因する空気流によって患者に摂取される粉末薬剤用の吸入装置であって、少なくとも1つの粉末リザーバと、前記リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置へと前記計量手段を移動させるための搬送機構と、前記患者による手動操作のための作動装置として、動作時に単回分の粉末用量が計量されるように前記搬送機構に動作可能に接続され、前記患者によって押されたときに前記搬送機構に作用する投与キー(5)を有している少なくとも1つの作動装置とを備え、前記搬送機構が、前記計量手段に作用する投与レバー(6)を有し、前記投与キー(5)が使用者によって作動された後に前記投与レバー(6)が前記計量手段の吸入位置にロックされ、前記吸入位置にて前記投与レバー(6)が誘発部材に係合すると共に前記誘発部材の作動によって解除可能であり、前記誘発部材が少なくとも1つのカム表面を有し、前記投与レバー(6)が前記ロックされた吸入位置で接線方向に前記カム表面に係合することを特徴とする吸入装置。
【請求項2】
前記誘発部材が、前記粉末チャネルに連通する空気ダクト(9)内に吸入作動弁を備えていることを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項3】
前記投与レバー(6)が、前記吸入位置で前記カム表面の背後および/または下方に係合する締結フック(23)を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の吸入装置。
【請求項4】
前記締結フック(23)が、前記吸入位置で前記カム表面との線接触を形成する平坦な接触面を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項5】
前記投与レバー(6)の誘発が前記カム表面の回動動作によって達成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項6】
前記吸入作動弁が、吸入時に揺動運動を実行するフラップ(22a)を備え、前記カム表面が前記フラップ(22a)にまたは前記フラップ(22a)の回動シャフト(22b)に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項7】
さらに、少なくとも1つの粉末分散手段を備え、前記計量手段および前記搬送機構が投与区画内に配置され、前記分散手段が粉末放出区画に配置され、前記投与区画が前記粉末放出区画に対して封止されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸入装置。
【請求項8】
弁室(15)を画定する主要な構造的支持部材、ならびに少なくとも2つのシェル(12、13)を含むハウジング用の支持部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の吸入装置。
【請求項9】
前記弁室(15)が、前記投与区画および前記粉末放出区画を画定するように前記ハウジングに対して封止されていることを特徴とする請求項8に記載の吸入装置。
【請求項10】
吸入に起因する空気流によって患者に摂取される粉末薬剤用の吸入装置であって、少なくとも1つの粉末リザーバと、前記リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置へと前記計量手段を移動させるための搬送機構と、前記患者による手動操作のための作動装置として、動作時に単回分の粉末用量が計量されるように前記搬送機構に動作可能に接続され、前記患者によって押されたときに前記搬送機構に作用する投与キー(5)を有している少なくとも1つの作動装置とを備え、さらに、少なくとも1つの粉末分散手段を備え、前記計量手段および前記搬送手段が投与区画内に配置され、前記分散手段が粉末放出区画に配置され、前記投与区画が前記粉末放出区画に対して封止されていることを特徴とする吸入装置。
【請求項11】
さらに、弁室(15)を画定する主要な構造的支持部材、ならびに少なくとも2つのシェル(12、13)を含むハウジング用の支持部を備えていることを特徴とする請求項10に記載の吸入装置。
【請求項12】
前記弁室(15)が、前記投与区画および前記粉末放出区画を画定するように前記ハウジングに対して封止されていることを特徴とする請求項11に記載の吸入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入に起因する空気流によって患者に摂取される粉末薬剤用の吸入装置であって、少なくとも1つの粉末リザーバと、前記リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置に前記計量手段を移動させるための搬送機構と、患者による手動操作のための少なくとも1つの作動装置とを備え、前記作動装置は、動作時に単回分の粉末用量が計量されるように前記搬送機構に動作可能に接続され、前記作動装置が患者によって押されたときに前記搬送機構に作用する投与キーを備えている吸入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した種類の粉末吸入装置は例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
気管支疾患だけでなく、気道を介して薬剤の効果を与えることができる他の疾患の治療分野においても、粉末形態での薬剤を適用することが一般に知られている。もちろん、吸入可能なエアロゾルを提供するための懸濁溶液を微粒化する装置も当該技術分野で知られている。
【0004】
本発明は、好ましくは、粉末医薬品用の吸入器またはカートリッジに設けられた投与カウント手段または投与インデックス手段を有する複数回用量乾燥粉末吸入器の形態で、粉末医薬品を投与するための吸入装置に関するものである。
【0005】
前述したように、この種の吸入器は特許文献1に開示されている。この特許文献1は、多数回用量の粉末医薬品を単一のリザーバ空間から提供するための吸入装置に関し、該吸入装置は、患者によるマウスピースへの吸引力によって誘発される空気流により患者が前記粉末医薬品を摂取することができるものである。
【0006】
複数回用量吸入装置に関して、重要な設計態様は装置の計量精度である。
【0007】
上述した種類の吸入装置の他の重要な設計態様は、装置の使用特性である。
【0008】
吸入装置は、装置が吸入のための準備ができているかどうか、および装置が特定のそして十分な残量の粉末用量を有しているかどうかを使用者が明確に判断できるように設計されなければならない。さらに、装置は、使用者の誤操作に対して十分にフェイルセーフが働き安全でなければならない。例えば、二重投与は、計量技術の適切な設計によっていずれにしても防止されなければならない。
【0009】
特に、特許文献1は、所定数の計量サイクルの後に吸入装置の作動装置および/または搬送機構をロックするロック機構に関するものである。
【0010】
この公知の吸入装置は、患者による手動係合で患者に投与されるべき薬剤用量を繰り返し計量するための作動装置と、患者への投与のために薬剤用量が放出されるように作動装置が患者によって係合される毎に、カウント手段またはインデックス手段を前進させるための前進機構とを備え、カウント手段またはインデックス手段はインデックスを備え、インデックスが吸入装置の検出手段によって検出可能であり、検出手段がロック機構に結合され、ロック機構が、インデックスの検出により所定数の計量サイクルによって遅延された吸入装置の作動装置および/または任意の搬送機構を阻止するものである。作動装置は、吸入装置の阻止状態を示す動作位置とは異なる位置で捕捉される。この構成は、吸入装置を使用している患者の安全性の向上を得ることができるように、単純で安価な信頼性の高い機構によって、多数回用量をリザーバ空間から放出するかまたは概数回用量をリザーバ空間内に残した後に、吸入装置のさらなる使用を阻止することを可能にする。このようにして、患者が、必要な薬剤の不適切な不足を引き起こす空のリザーバ空間から投与しようとするのを防止することができる。その限りにおいて、公知の吸入装置はより高い使用性を提供する。
【0011】
特許文献2は、複数回用量の薬剤粉末を収容するための少なくとも1つの貯蔵室と、投与スライダ通路内の直進運動で充填位置から排出位置へと移動可能である少なくとも1つの投与スライダを含む投与装置とを備える粉末薬剤用の吸入装置を開示しており、該吸入装置はさらに、投与スライダが吸入によって誘発される充填位置から排出位置への自動移動をするための装置と、投与スライダが充填位置に戻る自動移動のための戻し装置とを含むものである。吸入によって誘発される投与スライダの自動移動のための装置は、空気通路内に配置されている回動可能に装着されたばね負荷フラップを備えている。ばね負荷フラップはスラストロッドと協働し、このスラストロッドは、患者による吸入時に空気通路を通る空気流によってフラップがその停止位置から偏向されるときに、吸入によって誘発される投与スライダの自動移動のための装置を解除する。このことは、空気通路の予め定められた最小空気流量を超えることを必要とする。カートリッジの貯蔵室内の薬剤のための包括的な湿気防止のために、特許文献2による吸入装置は、投与スライダが投与キャビティと共に出ることができるように、対応する開口部をその開口端部に有する投与スライダ通路を含み、その場合、接触表面またはシールが開口部の周りに設けられ、投与スライダは、さらに、充填位置から排出位置への移動方向に対してほぼ横方向平面に配置されるシール表面を有する。シール機能は、投与スライダのシール表面の接触表面に配置された弾性シールによって提供され得る。しかし、これらのシール手段は再現可能な誘発力の問題に寄与しない。
【0012】
一般に、このような吸入によって誘発される投与スライダの自動移動を達成するために、規定された誘発閾値を有することが望ましい。必要な誘発力のためのある帯域幅、すなわち、患者によって行われるべき吸引のためのある空気流量の変動が、このような吸入装置の可動部品の公差によって不可避であることが当業者には容易に明らかであろう。
【0013】
特許文献3は、二重または繰り返しの投与に対する防止手段を有する粉末薬剤用の吸入装置を開示している。本装置は、粉末リザーバと、リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、該計量手段を、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置へと移動させるための搬送機構と、患者によって押されたときに前記搬送機構に作用する投与キーとを備え、前記搬送機構が、前記計量手段に作用する投与レバーを備え、前記投与キーがユーザによって作動された後に、該投与レバーが前記計量手段の吸入位置にロックされるものである。ロック位置において、投与レバーは、誘発部材として機能するフラップ弁のシャフトのブロック縁部を有する凹部の捕捉フックと係合される。計量レバー/投与レバーと凹部の捕捉フックとの係合は、少しの遅延で吸入によって引き起こされる空気流によりフラップ弁を移動させることによって解除され、その結果、計量レバーが、ばね負荷を受けてその初期位置に引き戻される。凹部内における捕捉フックの位置は、一般に、凹部のブロック縁部に対する捕捉フックの接点の位置を決定する。吸入装置の可動部としての計量レバーとフラップ弁との取付公差に応じて、凹部内の捕捉フックとブロック縁部との間の接点は、ユーザによる吸入とフラップ弁の解放との間に実際には多少の遅延をもたらす異なる位置を有し得る。凹部内の捕捉フックと計量レバーとの間の接点はブロック縁部に非常に近接することが可能であり、その結果、フラップ弁が回動運動を開始した後ほぼ瞬時にフラップ弁の解放が行われる。他方、フラップ弁の回動運動時に、計量レバーが最終的に解放されるまで、ある遅延が存在するように、凹部内の捕捉フックと計量レバーとの間の接点がシャフトのブロック縁部から比較的離れ得る。実際に、このことは、第1の例と同様のより高い誘発力を必要とする。
【0014】
しかしながら、できるだけ再現性があるように、吸入によって誘発される自動計量のための誘発力を維持することが望ましい。例えば、摂取されるべき粉末薬剤が付着性混合物の形態である場合に、粉末配合物から薬剤粒子を放出するために乾燥粉末がより効果的に解凝集されるように、このような規定された誘発閾値は、最終的に、吸入の間より一定の体積流量をもたらす。実際に、投与精度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1616592B9号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/077623A1号
【特許文献3】米国特許第6071498号明細書
【特許文献4】国際公開第03/000325A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、計量サイクルの少なくとも一部が吸入によって誘発されかつ必要な誘発力の帯域幅ができるだけ小さくなる吸入装置を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の目的は、使いやすさに関しておよび起こり得る誤操作に鑑みて、更なる改良が成された上述の種類の吸入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的および他の目的は、請求項1および10に記載の発明に係る吸入装置によって達成される。本発明の有利な実施形態は従属請求項から導き出され得る。
【0019】
本発明の一態様によれば、吸入により誘発される空気流によって患者に摂取される粉末薬剤用の吸入装置であって、少なくとも1つの粉末リザーバと、前記リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置へと前記計量手段を移動させるための搬送機構と、患者による手動操作のための作動装置として、動作時に単回分に粉末用量が計量されるように前記搬送機構に動作可能に接続され、前記搬送機構に作用する投与キーを有している少なくとも1つの作動装置とを備え、前記搬送機構が前記計量手段に作用する投与レバーを有し、前記投与キーが適切に作動された後に前記投与レバーが前記計量手段の吸入位置にロックされ、吸入位置にて前記投与レバーが誘発部材に係合すると共に誘発部材の作動によって解除可能であり、該誘発部材は少なくとも1つのカム表面を有し、投与レバーが前記ロックされた吸入位置で接線方向に前記カム表面に係合する吸入装置が提供される。
【0020】
本発明による吸入装置では、患者が計量された量の粉末を吸入した後にのみ、計量サイクルが完了して搬送機構および/または計量手段がリセットされる。吸入が、誘発部材に前記投与レバーを解除させて計量手段の充填/収容位置へのリセットをもたらす。投与レバーのみが誘発部材の前記カム表面に接線方向で係合するので、投与レバーと誘発部材との間の接触力は構成要素の公差とはほぼ無関係である。
【0021】
言い換えれば、誘発部材は、締結フックがカム表面と線接触するように投与レバーによって外側から周囲に係合または接触される曲線を形成するカム表面を備える。カム表面と投与レバーとの間の接点/接触線の位置は、投与レバーに対する誘発部材の角端部位置(ロック位置)にかかわらず、ほぼ同じであり、すなわち安定したままである。
【0022】
本発明の有利な一態様によれば、誘発部材は、前記粉末チャネルに連通する空気ダクト内に、吸入作動弁を備える。吸入作動弁は、投与レバーが吸入中に患者によって発生された吸引力により開始された弁の作用によって解除可能であるように、前記投与レバーに動作可能に接続される。該吸入作動弁は、例えば、ばねの弾性力により通常は閉位置に保持されるばね負荷フラップの形態であり得る。
【0023】
投与レバーは、吸入位置で前記カム表面の後方および/または下方に係合する締結フックを備え得る。
【0024】
本発明による吸入装置の有利な一実施形態では、締結フックは、吸入位置でカム表面との線接触を形成する平坦な接触面を備える。締結フックのみが接線方向でカム表面に係合するという事実により、吸入装置の部品の公差による接触面の偏位が軸方向にのみ可能であるが、このことは必要な誘発力に影響を与えない。
【0025】
投与レバーの誘発は、誘発部材の僅かな揺動運動のみでほぼ瞬時に投与レバーを解除するようなカム表面の回動動作によって達成される。この設計により、患者によって行われるべき吸引のために必要な空気流量の変動の帯域幅を著しく30L/min未満に維持することができる。
【0026】
有利な一実施形態では、吸入作動弁は、吸入時に揺動運動を実行するフラップを有することができ、前記カム表面はフラップにまたはフラップの回動シャフトに設けられる。フラップは、例えば上述した弁の主要な構成要素である。回動軸はフラップの重心にまたはフラップの重心の近傍に延在し得る。結果的に、カム表面も回動軸の近傍にまたはフラップの重心の近傍に配置され、容易に誘発が達成され得る。
【0027】
本発明のさらに他の態様によれば、吸入に起因する空気流/吸入に起因する空気流れにより患者に摂取される粉末薬剤用の吸入装置であって、少なくとも1つの粉末リザーバと、リザーバからの粉末用量を繰り返し計量するための計量手段と、粉末用量を収容するための充填位置から前記粉末用量を粉末チャネルに放出するための排出位置へと前記計量手段を移動させるための搬送機構と、患者による手動操作のための作動装置として、動作時に単回分の粉末用量が計量されるように前記搬送機構に動作可能に接続され、患者によって押されたときに前記搬送機構に作用する投与キーを有している少なくとも1つの作動装置と、少なくとも1つの粉末分散手段と、を備え、前記計量手段および前記搬送手段が投与区画内に配置され、前記分散手段が粉末放出区画に配置され、前記投与区画が前記粉末放出区画に対して封止されている吸入装置が提供される。
【0028】
本出願の意味において粉末分散手段は、粉末凝集体を粉砕するまたは薬剤粒子を担体材料から放出するための手段である。前記粉末分散手段は、粉末および空気を案内するための手段ならびにサイクロン/空気式分級機を含み得る。
【0029】
前記粉末放出区画に対する吸入装置の投与区画の封止も、誘発のための必要な空気流量の変動を著しく低減する。したがって、この設計は、装置の粉末チャネルおよび/または空気ダクトを迂回して吸入装置を通る空気流を吸引する可能性を回避する。
【0030】
有利な一実施形態では、本発明による吸入装置は、さらに、弁室を画定する主要な構造的支持部材、ならびに少なくとも2つのシェルを含むハウジング用の支持部を備える。
【0031】
好ましい実施形態では、弁室は、前記投与区画および前記粉末放出区画を画定するようにハウジングに対して封止される。
【0032】
封止部は、完全に弁室周りに中断無く延在する弾性リップの形態で設けられ得る。
【0033】
代わりに、投与区画と粉末放出区画との間の封止はラビリンスシールの形態で提供され得る。弁室は、ラビリンスを形成するように、弁室周りに完全に延在しかつハウジングのシェル内の対応するシール溝に係合する剛性シールリブを備えることができる。
【0034】
以下に、本発明を、一例としての添付図面を参照して開示する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】開かれたマウスピースキャップを有する本発明による吸入装置の実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明による吸入装置の分解図である。
図3】本発明の第1の実施形態による吸入装置の部分縦断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態による吸入装置の他の縦断面図である。
図5】本発明による投与キーを示す斜視図である。
図6】投与キーが非作動状態にある吸入装置を示す断面図である。
図7a-7b】図6に対応して投与キーが部分的に押されている状態を示す断面図である。
図8a図6および図7に対応して投与キーが完全に押し下げられている状態を示す断面図である。
図8b】フラップ弁への投与レバーの係合を示す斜視図である。
図9】本発明による吸入装置の投与レバーを示す斜視図である。
図10】本発明による吸入装置の空気ダクトを閉じる吸入作動弁の第1の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図11a図10における吸入作動弁の他の斜視図である。
図11b】第2の好ましい実施形態による吸入作動弁を示す背面斜視図である。
図12】本発明による吸入装置をハウジング無しで示す側面斜視図である。
図13図12の背面図としての拡大詳細図である。
図14a】本発明の第1の好ましい実施形態による吸入装置の投与レバーと吸入動作可能なフラップ弁との間の係合を示す拡大詳細図である。
図14b】第1の好ましい実施形態による投与レバーとフラップ弁との間の係合を示す拡大詳細図である。
図14c】第2の好ましい実施形態による投与レバーとフラップ弁との間の係合を示す拡大詳細図である。
図15】吸入装置の他の縦断面図である。
図16】本発明による吸入装置の粉末カートリッジを示す斜視図である。
図17】吸入装置のハウジングを示す斜視図である。
図18】カウンターリングの歯部上を滑動するカウンタースライドを示す詳細図である。
図19】カートリッジのロックラチェット(ロックレバーは不図示)を示す詳細図である。
図20】ロックレバー、ならびに該ロックレバーと投与キーおよびカウンターリングとの係合を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1図20に示した吸入装置1は、多数回用量の粉末医薬品を粉末カートリッジの形態の容器から提供するための粉末薬剤用の吸入装置である。粉末カートリッジ3は、多数回用量の医薬粉末/粉末薬剤を収容するためのリザーバ2を画定する。説明した実施形態では、1つの粉末カートリッジ3から得ることのできる典型的な回数の用量は30〜60回分用量の範囲であり得る。
【0037】
リザーバ2は、図2からわかるように、蓋4によって密封状態で覆われている。この蓋は、取り外し不能な吸入装置の組み立て状態においてカートリッジ本体3aに固定されている。
【0038】
粉末薬剤は、使用者によって引き起こされる空気流、すなわち吸引力によって患者が摂取することができる。したがって、吸入装置は、さらに、投与レバー6およびロックレバー7を有する搬送機構に接続されている投与キー5の形態で、患者による手動で係合するための作動装置を備えている。投与レバー6は、粉末用量を収容するための充填位置から、前記粉末用量を粉末解凝集させるためのサイクロン16の粉末溝16aに放出する排出位置へ移動可能な計量手段としての投与スライド8に作用する。患者は、粉末溝16aから、その患者によって発生された空気流を介してマウスピース10を通して粉末薬剤を吸入することができる。使用されていない場合、マウスピース10は、マウスピースカバー11によって汚れから保護されている。マウスピースカバー11は吸入装置に確実に固定されており、すなわち取り外し不能である。
【0039】
サイクロン16の粉末溝16aは、従来技術から知られているような分散・微粒化手段として機能するサイクロン16を通る粉末チャネルの一部を形成している。患者が摂取すべき粉末薬剤は付着性混合物の形態であり得る。付着性混合物は、それらの表面で微粉化された薬剤粒子を担持する比較的大きな結晶、一般にα−乳糖・一水和物からなる。分散システムにおいて、乾燥粉末は、薬剤粒子を粉末配合物から放出するために解凝集される。サイクロン16、すなわち分散手段は、一般に、空気循環チャンバ、ならびに円形の空気流パターンが循環チャンバの内部に生成されるように接線方向で循環チャンバに入る複数の空気供給チャネルを備えている。したがって、吸入装置を通る全呼吸流れは、粉末用量を粉末溝を通過させて粉末を循環チャンバ内に引き込むための搬送空気流、接線方向で循環チャンバに入るサイクロン空気流、ならびに最終的に清浄空気のいわゆるシース流を生成するためのバイパス空気流を含む。分散手段用の可能な設計は、例えば、(特許文献5)に開示されている(この開示は本明細書に完全に援用される)。分散手段は以下において幾分簡略化した形態でサイクロンと呼ぶ。粉末溝16aからマウスピース開口部への空気通路もまた、以下において幾分簡略化した形態で粉末チャネルと呼ぶ。しかしながら、「粉末チャネル」という用語は、必ずしも1つの明確に区別される単一粉末チャネルを指すものではなく、むしろ上述したようなチャネルシステムを指すことを理解されたい。
【0040】
図2からわかるように、吸入装置1は、シェル12および13、ならびにスナップ嵌め接続を介して解除不能な形でシェル12および13上に設置されたカバー14を含む3部品ハウジングを備えている。
【0041】
吸入装置1の中心部は、サイクロン16を含む弁室15とカートリッジ本体3aとによって形成されている。
【0042】
患者による吸入装置1の手動操作は投与キー5を介して機能し、この投与キー5が、投与キーばね17の付勢力に抗して患者によって押し下げられ、投与スライド8(図15を参照)に接続されている投与レバー6に作用する。
【0043】
例えば、図15からわかるように、投与スライド8は、カートリッジ本体3a内のリザーバ2の下方に延在する投与スライド通路18内で摺動可能に移動可能である。
【0044】
投与スライド8(計量手段)は、粉末薬剤の計量された用量を収容するための投与キャビティ19が設けられている。
【0045】
以下により詳細に説明するように、カートリッジ本体3aは、粉末薬剤を収容するためのリザーバ2を画定するだけでなく、リザーバ2の下方に延在する投与スライド通路18、ならびにカウントおよびインデックス手段を収容するためのハウジングも画定することに留意されたい。
【0046】
投与スライド8は、図15において、投与キャビティ19がサイクロン16の粉末溝16aと連通する弁室15の開口部20と位置合わせされる排出位置で示されている。投与スライド8は、投与レバー6を介して、投与キャビティ19がカートリッジ本体3a内のリザーバ2の開口部21と位置合わせされる充填位置と、吸入/排出位置との間で移動可能である。充填位置において、投与キャビティ19は計量された量の粉末を収容する。投与キー5の作動時に、投与スライド8は図15に示された位置へと前進され、それによって、開口部20を通して粉末用量を粉末溝16a内に放出する。
【0047】
図15に示されているこの位置において、吸入装置は吸入のための準備ができている。患者がマウスピース10を介して吸引を行う場合、この吸引力が、空気流が空気ダクト9の開口端から弁室15およびサイクロンの粉末溝16aによって画定された粉末チャネル内、マウスピース内へと自由に循環することができるように、空気ダクト9の一端にあるフラップ弁22を強制的に揺動させて開く。フラップ弁22は、開示した実施形態において一体的に形成されたフラップ22aとシャフト22bを含む。
【0048】
第1の実施形態によるフラップ弁22は、図10および図11aにより詳細に示されている。フラップ弁22のシャフト22bは、その端部で回動するように弁室15内に装着されている。
【0049】
図15からもわかるように、吸入位置においてフラップ弁22は投与レバー6の締結フック23によって係合される。
【0050】
フラップ弁22の背面図が例えば図10に示されている。フラップ22は、3つの脚部22c、22dおよび22eを含む角度の付いた/屈曲した形状を有し、装着位置において、第1の脚部22cはフラップ弁22の閉方向に向かって傾斜し、第2の脚部22dは後方に傾斜し、第3の脚部22eは前方方向におよびフラップ弁22の回転運動に対してほぼ接線方向に延在する。
【0051】
フラップ22aの第1の脚部22cの背面側に、吸入位置で投与レバー6の締結フック23によって係合され得るラッチリブ47が設けられている。投与レバー6の締結フック23には、その前端に傾斜面51を有する鉤状突出部50が設けられている。フラップ弁22は、前記シャフト22bと一体的に形成されたフラップ弁レバー31を有している。フラップ弁レバー31の遠位端には偏向面53が設けられている。投与キー5を作動させ、それに続く作動で投与レバー6を下方に移動させた際に、投与レバー6のフック23と一体的に形成されたラッチ29の対応する偏向面53’が、フラップ弁レバー31の偏向面53と当接する。これによって、フラップ弁レバー31ならびに投与レバーのフックは、両方が僅かに偏向され、すなわちわきへ屈曲され、投与レバー6のフック23をさらに下方に移動させるとそれらの初期位置に跳ね返る。フック23をさらに下方に移動させると、鉤状突出部50の傾斜面51がラッチリブ47の一方の縁部に当接する。これによって、フック23は、その材料弾性によりわきに屈曲し、ラッチリブ47の後方にその端部位置に跳ね返り、これにより、フラップ弁22に係合し、そして吸入によって誘発されるフラップ弁22の揺動運動により解除可能である。
【0052】
特に、フラップ22aの拡大縦断面図を示した図14bからわかるように、フック23の鉤状突出部50はラッチリブ47に係合する。ラッチリブ47は、吸入装置1の吸入準備ができているときに鉤状突出部50に面する湾曲した支持面54を有している。ラッチリブ47とフック23との間の接触力が構成要素の公差とはほとんど無関係であるように、カム表面を規定する支持面54がフック23の鉤状突出部50とラッチリブ47との間の線接触をほとんど提供している。より具体的には、吸入装置の部品の公差による接触表面の偏位は実際には軸方向にのみ可能であるが、このことが必要な誘発力に影響を与えないように、フックの鉤状突出部50の平面は、接線方向にのみ湾曲した支持面54に係合する。この設計により、フラップ弁22の誘発がかなり再現性があるように、求められる誘発力はほんの僅かな変動のみを必要とする。フラップ22aが時計回り方向に移動すると、フック23はほぼ瞬時に解放されることが図15から容易に明らかである。結果として、投与レバーは、投与レバーばね25の力によって駆動されて上方に揺動し得る。この上方への移動により、投与スライド8がその粉末収容位置に戻されることになる。
【0053】
フラップ弁22の別の実施形態が図11bおよび図14cに示されている。フラップ弁22の同じ部分は同じ符号で示している。
【0054】
この実施形態によるフラップ弁22は、それ自体に屈曲がないまたは角度が付いていない比較的シンプルで平坦なフラップ22aを備えている。
【0055】
図14cからわかるように、吸入装置1が吸入の準備ができているとき、締結フック23はフラップ弁22のシャフト22bに係合する。
【0056】
フラップ弁22のシャフト22b(例えば図11b参照)は、シャフト22bのほぼ中央に配置されている切欠き領域24を有しており、その結果、フラップ22aが(図14cおよび図11bにおける時計回り方向に)揺動して開くと、投与レバーばね25の力によって駆動された投与レバー6がその初期位置に戻ることができるように、シャフト22bのほぼ中央でシャフト22bに接線方向で係合している投与レバー6の締結フック23が解放され、これによって、投与スライド8が、リザーバ/粉末カートリッジから粉末用量を収容するための充填位置内に移動して戻る。投与キー5の作動時に、投与レバー6のラッチ29とフラップ弁レバー31とが接触することによって、投与レバー6はフラップ22aを部分的に回動させながら下方に移動される。部分的に回動された後に、フラップ弁22は、一体的に形成されて成形されたばね32の力によって、その開始位置に逆回転して戻る。ラッチ29とフラップ弁レバー31との接触によって引き起こされるフラップ22aの揺動運動は、締結フック23が早期に解除されて上方に移動したときにラッチ29がフラップ弁レバー31の機械的ストッパ30の後方に係合することを可能にする。
【0057】
シャフト22bの切欠き部分24の領域において、シャフト22bは半円形の断面を有し、シャフト22bと締結フック23との間の接触力が構成要素の公差とはほとんど無関係であるように、締結フック23の先端部が、接線方向にのみおよび非常に限られた表面領域(線接触)でのみシャフトの断面の残部に係合する。この設計により、特に、締結フック23の平坦な接触面がシャフト22bの断面の残部の湾曲した表面領域に接触するという事実により、フラップ弁22の誘発がかなり再現性があるように、要求される誘発力はほんの僅かな変動のみを必要とする。投与レバー6が投与レバーばね25の力によって駆動されて上方に揺動し得るように、シャフト22bおよびフラップ22aの僅かな回転/揺動運動のみで締結フック23を自由にし、これによって吸入サイクルを終了する。
【0058】
投与キー5の斜視図を図5に示した。投与キー5は、投与キー5と一体的に形成された舌部材26に当接する投与キーばね17によって、その初期位置/開始位置に保持される。
【0059】
前記投与キー5は、同様に投与キー5と一体的に形成された可撓性アーム/脚部として形成され、かつ図5に示した装着位置で下方に延在するアクチュエータブレード27を有している。図6図8aに示した動作順からわかるように、弁室15には、投与キー5の押下時にアクチュエータブレード27のためのある種のカム表面を形成するはす縁28が設けられている。
【0060】
図6は、投与キー5が作動されていない開始位置にある吸入装置1の状態を示す断面図である。この状態のアクチュエータブレード27は搬送機構と、すなわち投与レバー6と係合していない。
【0061】
投与キー5が押下げられると、アクチュエータブレード27がその固有の可撓性により、図6に示した第1の位置からアクチュエータブレード27が同時に投与レバー6に係合する図7aの第2の位置に偏向/屈曲するように、アクチュエータブレード27は下方に移動して弁室のはす縁28に係合する。投与キー5およびアクチュエータブレード27のさらなる移動によって、アクチュエータブレード27は投与レバーばね25の付勢力に抗して投与レバー6を下方に押し込む。図8aに示したように、投与キー5が完全に押し下げられると、アクチュエータブレード27はその非偏向および係合解除位置に跳ね返る。この位置において、投与レバー6の締結フック23は、図8aにも示したようにフラップ弁22のラッチリブ47に係合する。この吸入装置/吸入器は、今や吸入準備ができている。
【0062】
最初に、本発明によるフラップ弁22の第1の実施形態を参照して、本発明による吸入装置の二重投与防止機構について以下に説明する。
【0063】
前述したように、投与レバー6の後端の領域(図9の左側)にはラッチ29が設けられている。投与キー5を作動させた結果として投与レバーが下方に移動すると、最初に、ラッチ29の全ての相補的な偏向面53’はフラップ弁レバー31の偏向面53との当接状態を得る。結果として、投与レバー6がさらに下方に移動すると、フラップ弁レバー31はラッチ29を通過しながらわきに屈曲/偏向し、その初期位置へ跳ね返り、この結果、最終的にはフックとラッチリブ47とが係合することになる。
【0064】
再び、投与レバー6の斜視図を示した図9を参照されたい。投与レバー6の後端の領域(図9の左側)には、投与レバー6の戻り運動において前記シャフト22bと一体的に形成されたフラップ弁レバー31の機械的ストッパ30に係合するためのラッチ29が設けられている。
【0065】
投与キー5が、押されてから、早すぎる、すなわち、締結フック23がフラップ弁22のラッチリブ47に係合する前に解放された場合、投与レバー6が上方に移動すると、投与レバー6のラッチ29はフラップ弁レバー31の前記機械的ストッパ30に当接する。したがって、投与レバー6は中間位置でフラップ弁22にロックされる。この中間位置のロックは二重投与防止機構を提供する。この中間位置のロック、すなわち第1のロック位置において、レバーの関係は、投与レバー6を解除するのに必要な力が吸入するだけでは起動できないようなものである。投与レバー6が端部位置でフラップ弁22にロックされていない場合、例えば、投与キー5が全押しされていない場合に、投与レバー6はその初期開始位置に戻らず、すなわち中間位置にロックされる。したがって、追加の粉末用量はリザーバ2から放出されない。投与レバー6および投与スライド8は、吸入によって誘発されるフラップ弁22の作動後にのみ、それらの開始位置へ戻り、これによって投与レバー6の締結フック23を解除する。
【0066】
二重投与防止機構は、図14cによる第2の実施形態のフラップ弁22の構成も備えられる。投与キー5の作動時に、投与レバーのラッチ29とフラップ弁レバー31とが接触することによって、投与レバー6はフラップ22aを部分的に回動させながら下方に移動される。投与レバーを下方に移動させてフラップを部分的に回動させた後、フラップ弁22は、フラップ弁22と一体成形されたばね32の弾性によって、その閉位置へと戻る。投与レバー6が早期に上方に移動すると、投与レバー6のラッチ29はフラップ弁レバー31の機械的ストッパ30に当接する。これにより、投与レバー6は中間位置でフラップ弁22にロックされる。
【0067】
投与レバー6はカム状の作動要素33を有しており、この作動要素33は、各作動時に、カートリッジのカウンターリング35が1カウントずつ低用量側に向かって移動されるように、カートリッジのカウンタースライド34を移動させる。それに応じて、カートリッジの充填状態を示すカートリッジ本体3aの表示窓36でカートリッジの内容物量の程度を見ることができる。カウンターリング35に作用するカウンタースライド34の詳細については、図18から理解することができる。歯部37を有するラチェットリングとして構成されているカウンターリング35はカートリッジ本体3aのカラー内に回転可能に挿入されている。投与レバー6の作動時に、作動要素33がカウンタースライド34を移動させ、該カウンタースライドがカウンターリングの歯部37に係合し、これによって、次の指数が表示窓36に示されるようにカウンターリング35が移動される。カウンターリング35は、例えば、5回分毎の投与ステップ/計量サイクルの用量カウントの視覚的表示を提供する。カウンターリングは例えば13個の数字を表示し、各計量サイクル時に60から0へのカウントダウンを示す。カウンターリング35の各歯部は1つの計量サイクルを表す。
【0068】
図4からもわかるように、カウンタースライド34は、カウンタースライド34と一体的に形成された爪43を持っている。爪43はカウンターリング35の歯部37にしっかりと係合するようにカウンターリング35に向かって付勢されている。歯部37は1つの傾斜側面および1つの垂直方向に延びる側面を有している限りにおいては非対称であり、傾斜側面は、カウンターリング35の回転方向に関して誘導側面に相当する。
【0069】
カウンタースライド34は、カートリッジ本体3aの摺動チャネル44内で前後に移動可能である。投与レバー6のカム状の作動要素33は、摺動チャネル44内に、およびカウンタースライド34の水平方向に延在する部品の凹部45内に延びている。作動要素33のカウンタースライド34との係合により、作動要素33の揺動運動がカウンタースライド34の直線運動に変換される。
【0070】
投与キー5が押し下げられると、作動要素33が図4の左側に向かって回動されるように投与レバーが回動される。同時に、投与レバーの下部先端46(図9および図12参照)が投与スライド8を排出/吸入位置に押す。これによって、カウンタースライド34が反対方向に移動される。カウンタースライド34がこの移動を実行している間に、爪43はカウンターリングのそれぞれの歯部37の垂直な側面に係合し、カウンターリングを1つのカウント/ステップ分だけ移動させる。投与レバー6の解除後に、カウンタースライド34はその開始位置へ逆方向に移動して戻される。爪43の弾性により、爪はそれぞれの歯部の傾斜側面にわたって滑動することが可能であり、これによって歯部の背後に弾かれて戻る。図19からわかるように、カウンター機構は、カウンターリングの歯部37に係合するロックラチェット38を備えている。歯部37の幾何学的形状によって、これもまた弾性部材であるロックラチェット38がカウンターリング35の反時計回りの回転を阻止する。
【0071】
図12からわかるように、吸入装置1は、投与キー5と投与レバー6との間の弁室15に回動可能に装着されたロックレバー7を備えている。ロックレバー7はブロックアーム39およびばね脚部40を有している。粉末カートリッジ3の組立時に、ロックレバー7が下方に押し込まれ、これによって、ブロックアーム39およびばね脚部40が後方に移動される。この位置において、投与キー5は、図12に示したようにばね脚部40の付勢力に抗して自由に下方に移動することができる。
【0072】
投与キー5はまた、図15に示したように投与キーばね17の付勢力に抗して自由に移動可能である。
【0073】
カウンターリング35は、ロックレバー7の舌部42に係合可能であるノッチ41を備えている。
【0074】
所定回数の用量が送出された後に、投与キー5によって作動されたばね脚部40の作用により引き起こされた回動運動によってロックレバー7がカウンターリングのノッチに係合するように、ノッチがカウンターリング35に配置されている。ロックレバー7が上方に移動すると、ロックレバー7のブロックアーム39は前方に(マウスピース10に向かって)押し出され、投与キー5が最後の吸入後の最も低い位置で阻止されたままであるように、最も低い位置にある投与キー5に係合する。これで空の装置の次の作動を実行することができない。
【0075】
図5および図20からわかるように、投与キー5は、ばね脚部40の疲労を回避するために、押し下げ状態にある間にのみばね脚部40に作用する作動リブ55を有している。したがって、ばね脚部40は、投与キー5が下方に押されているかまたは下方に保持されている場合にのみ、付勢される。
【0076】
カウンターリングの形態のインデックス手段の他に、装置は、装置の吸入準備ができているかどうかを示す他の吸入制御窓48を備えている。該吸入制御窓は、例えば、装置の吸入準備ができている場合には緑色のフラグを表示する。これは、吸入装置1の作動状態において、投与レバー6の緑色のタブ49が吸入制御窓48の赤色のフラグを覆うためである。吸入位置から開始位置への装置のリセットは、吸入時の空気流によって吸入中に行われる。詳細に前述したように、フラップ弁22が偏向され、このようにして投与レバー6を解除する。
【0077】
空気ダクト9の気密性を確保するために、弁室15の周りに延在する1つ以上のシールリブによって、シェル12および13が弁室15に対して封止され得る。シールリブは、弁室15と共射出成形された熱可塑性エラストマーの形態であってもよい。代わりに、シールリブ52は、吸入装置の組み立て中にシール溝内に装着される弾性リングとして設計されてもよい。
【0078】
本発明による吸入装置の特に好ましい実施形態では、シェル12および13は、弁室15の周りに完全に延在するラビリンスシールによって弁室に対して封止され、その結果、サイクロン16および粉末溝16aを含む弁室15が吸入装置の投与区画に対して効果的に密封される。ラビリンスシールは、弁室15の周りに完全に延在されかつ吸入装置1の組み立て状態においてシェル12および13の対応するシール溝に係合するシールリブ52によって提供される。このシールは、できるだけ再現可能であるようにフラップ弁22のための誘発力を維持するのを補助する。必要な誘発力のための帯域幅は、通常、患者によって行われるべき吸引のために30L/minの空気流量の変動に対応する。シェル12、13に対する吸入装置1の弁室のシールは、フラップ弁22を誘発するために必要な空気流量のこの変動を著しく低減する。したがって、この設計は、粉末チャネルおよび/または空気ダクト9を迂回して吸入装置を通る空気流を吸引する可能性を回避する。
【符号の説明】
【0079】
1 吸入装置
2 リザーバ
3 カートリッジ
3a カートリッジ本体
4 蓋
5 投与キー
6 投与レバー
7 ロックレバー
8 投与スライド
9 空気ダクト
10 マウスピース
11 マウスピースキャップ
12、13 シェル
14 カバー
15 弁室
16 サイクロン
16a 粉末溝
17 投与キーばね
18 投与スライド通路
19 投与キャビティ
20 開口部
21 開口部
22 フラップ弁
22a フラップ
22b フラップ弁のシャフト
22c フラップ弁の第1の脚部
22d フラップ弁の第2の脚部
22e フラップ弁の第3の脚部
23 締結フック
24 切欠き部分
25 投与レバーばね
26 舌部材
27 アクチュエータブレード
28 はす縁
29 ラッチ
30 機械的ストッパ
31 フラップ弁レバー
32 フラップ弁のばね
33 作動要素
34 カウンタースライド
35 カウンターリング
36 表示窓
37 歯部
38 ロックラチェット
39 ブロックアーム
40 ばね脚部
41 ノッチ
42 舌部
43 爪
44 摺動チャネル
45 凹部
46 投与レバーの先端
47 ラッチリブ
48 吸入制御窓
49 タブ
50 鉤状突出部
51 傾斜面
52 シールリブ
53 偏向面
53’ 偏向面
54 支持面
55 作動リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】