(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
本発明は、結合分子コンジュゲートの識別、作製、および操作のための方法、ならびに作製されたコンジュゲートに関する。特に、本発明は、抗体重鎖可変ドメインおよび代替軽鎖から構成されるSurrobodyコンジュゲートに関し、ここで、代替軽鎖および/または抗体重鎖可変ドメインは、治療剤または診断剤と結合している。
所定のアミノ酸位置でSLCポリペプチドのアミノ酸残基と連結された少なくとも1つの薬剤を有する代替軽鎖(SLC)ポリペプチドを含み、ここで、前記アミノ酸残基は、
(i)前記SLCポリペプチド中の前記アミノ酸位置に通常存在しているものであるか、または
(ii)前記SLCポリペプチドのアミノ酸配列中の前記アミノ酸位置に導入されたものである、
結合分子コンジュゲート。
前記VpreBおよびλ5配列のうちの少なくとも一方が、それぞれ、自然VpreBおよびλ5配列の断片または変異体である、請求項21に記載の結合分子コンジュゲート。
前記SLCポリペプチドが、前記第二の異種アミノ酸配列と共有結合によって結合した、VpreB配列のλ5配列への融合体を含む、請求項23に記載の結合分子コンジュゲート。
非共有結合によって結合したVpreB配列およびλ5配列と非共有結合によって結合して三量体複合体を形成している、可変領域を含む抗体重鎖配列をさらに含む、請求項21に記載の結合分子コンジュゲート。
前記二量体または三量体複合体と結合した1つ以上の機能的ヌル結合領域(functionally null binding regions)を有するポリペプチドをさらに含む、請求項26または29に記載の結合分子コンジュゲート。
前記アミノ酸残基が、システイン、リジン、およびパラ−アセチル−フェニルアラニン(pAcF)から成る群より選択される、請求項35に記載の結合分子コンジュゲート。
前記治療剤が、マイタンシノイド、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、およびモノメチルオーリスタチンF(MMAF)から成る群より選択される、請求項38に記載の結合分子。
前記開裂性リンカーが、ペプチジルリンカー、pH感受性リンカーおよび還元性条件下にて開裂性であるリンカーから成る群より選択される、請求項40に記載の結合分子。
前記リンカーが、N−スクシンイミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)(LC−SMCC)、κ−マレイミドウンデカン酸 N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸 N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル[AMAS]、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、N−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、6−マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン−シトルリン(val−cit)、アラニン−フェニルアラニン(ala−phe)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N−スクシンイミジル 4−(2−ピリジルチオ) ペンタノエート(SPP)、マレイミドカプロイル−L−バリン−L−シトルリン−p−アミノベンジルアルコール p−ニトロフェニルカーボネート(MC−val−cit−PAB)、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジル ヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジル ブロモアセテート(SBA)、N−スクシンイミジル 3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、N−スクシンイミジル−5−アセチルチオアセテート(SATA)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)(SPDB)、およびN−スクシンイミジル−オキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)(SMPT)から成る群より選択される、請求項42に記載の結合分子。
所定のアミノ酸位置に、薬剤とのコンジュゲートのための少なくとも1つのアミノ酸残基を有する代替軽鎖(SLC)を含むSurrobodyであって、ここで、前記アミノ酸残基は、
(i)成熟VpreB1配列の16および/または21の位置に;ならびに/または
(ii)成熟λ5配列の60、74、78、79、85、91、110、123、131、133、166、および170から成る群より選択される1つ以上の位置に
位置する、Surrobody。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、結合分子コンジュゲートの識別、作製、および改変のための方法、ならびに作製されたコンジュゲートに関する。特に、本発明は、抗体重鎖可変ドメインおよび代替軽鎖から構成されるSurrobodyコンジュゲートに関し、ここで、代替軽鎖および/または抗体重鎖可変ドメインは、治療剤または診断剤と結合している。本発明はまた、そのような結合分子コンジュゲートを作製するためのポリペプチド鎖、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、および方法にも関する。また、その分子を含有する医薬組成物、およびそれを用いた治療方法または診断方法も提供される。
【0022】
1つの態様では、本発明はまた、共通の構造要素(例:1つ以上のフレームワーク領域)を共有し、前記構造要素を共有するコレクションのサブセット全体にわたって機能性を付加するための足場として作用する結合のための追加の部位(例:システインまたはリジン)を提供するようにその構造要素を処理することができる、ポリペプチドまたはペプチド(例:および抗体重鎖可変ドメイン)のライブラリまたはコレクションも考慮する。このライブラリまたはコレクションは、抗体もしくはSurrobodyのライブラリまたはコレクションであってよい。1つの実施形態では、処理に適する共通の構造要素は、抗体またはSurrobodyのフレームワーク領域の1つ以上に存在していてよい。
【0023】
別の態様では、本発明は、特定のポリペプチドが薬剤と結合し、その他のポリペプチドは薬剤と結合していないSurrobodyコンジュゲートを考慮する。1つの実施形態では、Surrobodyコンジュゲートは、剤と結合していない抗体重鎖可変ドメイン、および剤と結合した代替軽鎖を含む。別の実施形態では、Surrobodyコンジュゲートは、薬剤と結合した抗体重鎖可変ドメイン、および薬剤と結合していない代替軽鎖を含む。1つの他の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、フレームワーク領域(FR1−FR4)の1つ以上において薬剤と結合する。当業者であれば、モノクローナル抗体全体に部位特異的最適化を行うための複数の追加の領域が存在することは理解される。最適化を行うことにより、代替軽鎖の保存的な性質、および合成Surrobodyライブラリコレクションに組み込まれるフレームワークの限定された数に起因して、全種類の分子に対して広範囲の用途が提供される可能性が高い。例えば、以下の技術が適用され得る:薬物コンジュゲート(高い毒性の小分子);放射性核種(キレート化またはプレ標的化(pretargeted));標的化薬物活性化(例:ADEPT)、および免疫リポソームまたは免疫標的化ナノ粒子(標的化)。当業者であれば、本発明に係る結合に適するその他の薬剤を理解するであろう。
【0024】
1つの態様では、本発明は、結合分子コンジュゲートを提供する。1つの実施形態では、結合分子は、抗体またはSurrobody(商標)である。別の実施形態では、結合分子コンジュゲートは、抗体重鎖可変ドメインを含み、ここで、結合分子は、薬剤とコンジュゲートされる。1つの実施形態では、結合分子は、さらに、代替軽鎖(SLC)を含む。1つの実施形態では、重鎖可変ドメインは、薬剤とコンジュゲートされる。別の実施形態では、SLCは、薬剤とコンジュゲートされる。ある実施形態では、結合分子は、治療剤または診断剤とコンジュゲートされる。1つの他の実施形態では、結合分子は、リンカーを介して薬剤とコンジュゲートされる。別の実施形態では、結合分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が、薬剤とコンジュゲートされる。ある実施形態では、アミノ酸残基は、天然のアミノ酸、または非天然のアミノ酸を含む。1つの他の実施形態では、治療剤は、抗癌剤である。別の実施形態では、診断剤は、検出可能標識を含む。
【0025】
<A.定義>
特に断りのない限り、本明細書で用いられる技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994)は、本出願で用いられる用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供する。
【0026】
当業者であれば、本発明の実践に用いられ得る、本明細書で述べるものと類似または同等の多くの方法および物質を認識するであろう。実際、本発明は、記載される方法および物質にまったく限定されるものではない。本発明の目的のために、以下の用語が以下で定義される。
【0027】
本出願全体を通して、単数形の使用は、特に断りのない限り、複数を含む。
【0028】
本出願において、「または」の使用は、特に断りのない限り、「および/または」を含む。
【0029】
さらに、「含む」、「含んでいる」、および「含まれる」の用語は、限定するものではない。
【0030】
本発明に関して、「抗体」(Ab)の用語は、V(D)J遺伝子組換えに由来する古典的組換え重鎖、およびやはりVJ遺伝子組換えに由来する古典的組換え軽鎖からの自然抗体、またはその断片を意味するために用いられる。
【0031】
「結合分子コンジュゲート」の用語は、その最も広い意味において、抗体重鎖可変ドメインを含む結合分子を意味するために用いられ、ここで、結合分子は、薬剤とコンジュゲートしている。1つの実施形態では、結合分子は、さらに、軽鎖配列を含む。別の実施形態では、軽鎖配列は、抗体λまたはκ軽鎖配列である。1つの実施形態では、軽鎖配列は、代替軽鎖配列である。1つの他の実施形態では、代替軽鎖配列は、VpreB配列および/またはλ5配列を含む。さらに別の実施形態では、代替軽鎖配列は、λ5配列に融合したVpreB配列を含む。別の実施形態では、代替軽鎖配列は、Vκ様および/またはJCK配列を含むκ様代替軽鎖(SLC)コンストラクトである。1つの実施形態では、結合分子は、Surrobodyであってよく、この場合、軽鎖配列は、代替軽鎖である。結合分子は、抗体であってよく、この場合、軽鎖配列は、軽鎖可変ドメインである。
【0032】
「代替軽鎖ポリペプチド」または「SLCポリペプチド」の用語は、本明細書にて、VpreBポリペプチド、λ5ポリペプチド、Vκ様ポリペプチド、JCκポリペプチド、およびこれらの変異体を意味するために用いられる。
【0033】
「代替軽鎖配列」または「SLC配列」の用語は、本明細書にて、自然配列もしくは変異体のVpreBポリペプチド、λ5ポリペプチド、Vκ様ポリペプチド、および/またはJCκポリペプチドからのアミノ酸配列を意味するために用いられる。SLC配列は、特に、スプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他のその哺乳類相同体、さらにはそのような自然配列ポリペプチドの1つ以上の変異体を含むアイソフォームからのアミノ酸配列を含む。
【0034】
「VpreB」の用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられ、自然配列または変異体のVpreBポリペプチドのいずれをも意味し、特には、これらに限定されないが、配列番号1のヒトVpreB1、配列番号2および3のマウスVpreB2、配列番号4のヒトVpreB3様配列、配列番号5のヒトVpreB dT、ならびにスプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他のその哺乳類相同体、さらにはそのような自然配列ポリペプチドの変異体を含むアイソフォームを含む。
【0035】
「λ5」の用語は、本明細書にてその最も広い意味で用いられ、自然配列または変異体のλ5ポリペプチドのいずれをも意味し、具体的には、これらに限定されないが、配列番号7のマウスλ5配列、配列番号8のヒトλ5配列、および配列番号9として示されるヒトλ5 dT、配列番号10のヒトVpreB1アミノ酸配列、ならびにスプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他のその哺乳類相同体、さらにはそのような自然配列ポリペプチドの変異体を含むそれらのアイソフォームが挙げられる。
【0036】
「変異体VpreBポリペプチド」および「VpreBポリペプチドの変異体」の用語は、交換可能に用いられ、本明細書にて、アミノ酸修飾の結果として1つ以上のアミノ酸位置で自然配列のVpreBポリペプチドと異なっているポリペプチドとして定義される。本明細書における定義では、「変異体VpreBポリペプチド」は、自然抗体λもしくはκ軽鎖配列、またはその断片と異なる。「変異体VpreBポリペプチド」は、自然配列VpreBポリペプチドと、少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%の配列同一性を保持することが好ましい。別の好ましい実施形態では、「変異体VpreBポリペプチド」は、そのアミノ酸配列において、自然抗体λまたはκ軽鎖配列に対して、95%未満、または90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満の同一性を有する。変異体VpreBポリペプチドとしては、具体的には、これらに限定されないが、VpreB配列のC末端の非Ig様ユニークテール(non-Ig-like unique tail)が部分的または完全に除去されたVpreBポリペプチドが挙げられる。
【0037】
「変異体λ5ポリペプチド」および「λ5ポリペプチドの変異体」の用語は、互換的に用いられ、本明細書にて、アミノ酸修飾の結果として1つ以上のアミノ酸位置で自然配列のλ5ポリペプチドと異なっているポリペプチドとして定義される。本明細書における定義では、「変異体λ5ポリペプチド」は、自然抗体λもしくはκ軽鎖配列、またはその断片と異なる。「変異体λ5ポリペプチド」は、自然配列λ5ポリペプチドと、少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%の配列同一性を保持することが好ましい。別の好ましい実施形態では、「変異体λ5ポリペプチド」は、そのアミノ酸配列において、自然抗体λまたはκ軽鎖配列に対して、95%未満、または90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満の同一性を有する。変異体λ5ポリペプチドとしては、具体的には、これらに限定されないが、λ5配列のN末端のユニークテールが部分的または完全に除去されたλ5ポリペプチドが挙げられる。
【0038】
「変異体Vκ様ポリペプチド」および「Vκ様ポリペプチドの変異体」の用語は、交換可能に用いられ、本明細書にて、アミノ酸修飾の結果として1つ以上のアミノ酸位置で自然配列のVκ様ポリペプチドと異なっているポリペプチドとして定義される。本明細書における定義では、「変異体Vκ様ポリペプチド」は、自然抗体λもしくはκ軽鎖配列、またはその断片と異なる。「変異体Vκ様ポリペプチド」は、自然配列Vκ様ポリペプチドと、少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%の配列同一性を保持することが好ましい。別の好ましい実施形態では、「変異体Vκ様ポリペプチド」は、そのアミノ酸配列において、自然抗体λまたはκ軽鎖配列に対して、95%未満、または90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満の同一性を有する。変異体Vκ様ポリペプチドとしては、具体的には、これらに限定されないが、Vκ様配列のC末端の非Ig様ユニークテールが部分的または完全に除去されたVκ様ポリペプチドが挙げられる。
【0039】
「変異体JCκポリペプチド」および「JCκポリペプチドの変異体」の用語は、交換可能に用いられ、本明細書にて、アミノ酸修飾の結果として1つ以上のアミノ酸位置で自然配列のJCκポリペプチドと異なっているポリペプチドとして定義される。本明細書における定義では、「変異体JCκポリペプチド」は、自然抗体λもしくはκ軽鎖配列、またはその断片と異なる。「変異体JCκポリペプチド」は、自然配列JCκポリペプチドと、少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%の配列同一性を保持することが好ましい。別の好ましい実施形態では、「変異体JCκポリペプチド」は、そのアミノ酸配列において、自然抗体λまたはκ軽鎖配列に対して、95%未満、または90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満の同一性を有する。変異体JCκポリペプチドとしては、具体的には、これらに限定されないが、JCκ配列のN末端のユニークテールが部分的または完全に除去されたJCκポリペプチドが挙げられる。
【0040】
アミノ酸配列同一性パーセントは、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を用いて特定することができる。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードすることができ、またはそれ以外では、メリーランド州、ベセズダの国立衛生研究所から入手可能である。NCBI−BLAST2は、いくつかのサーチパラメータを用いており、ここで、これらのサーチパラメータはすべて、例えば、unmask=yes、strand=all、expected occurrences=10、minimum low complexity length=15/5、multi−pass e−value=0.01、constant for multi−pass=25、dropoff for final gapped alignment=25、およびscoring matrix = BLOSUM62、を含む初期値に設定される。
【0041】
「VpreB配列」の用語は、本明細書にて、上記で定められる「VpreB」の配列またはその断片を意味するために用いられる。
【0042】
「λ5配列」の用語は、本明細書にて、上記で定められる「λ5」の配列またはその断片を意味するために用いられる。
【0043】
「Vκ様配列」の用語は、本明細書にて、上記で定められる「Vκ様」の配列またはその断片を意味するために用いられる。
【0044】
「JCκ配列」の用語は、本明細書にて、上記で定められる「JCκ」の配列またはその断片を意味するために用いられる。
【0045】
「λ様代替軽鎖」の用語は、本明細書で用いられる場合、VpreBおよびλ5タンパク質の非共有結合による結合によって形成される二量体を意味する。
【0046】
「κ様代替軽鎖」の用語は、本明細書で用いられる場合、Vκ様およびJCκタンパク質の非共有結合による結合によって形成される二量体を意味する。
【0047】
本明細書で定められる「λ様代替軽鎖配列」の用語は、上記で定められる「VpreB配列」および/または「λ5配列」を含むいずれのポリペプチド配列をも意味する。本明細書で定められる「λ様代替軽鎖配列」としては、具体的には、これらに限定されないが、配列番号1のヒトVpreB1配列、配列番号2および3のマウスVpreB2配列、および配列番号4のヒトVpreB3配列、配列番号5として示されるヒトVpreB dT、および配列番号6のヒトVpreB1アミノ酸配列、ならびにスプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他の哺乳類種のその相同体、さらにはその断片および変異体を含むそれらの種々のアイソフォーム、が挙げられる。「λ様代替軽鎖配列」の用語には、さらに、これらに限定されないが、配列番号7のマウスλ5配列、配列番号8のヒトλ5配列、配列番号9として示されるヒトλ5 dTail、配列番号10のヒトλ5 dTail配列、ならびにスプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他の哺乳類種のその相同体、さらにはその断片および変異体を含むそれらのアイソフォーム、が含まれる。「λ様代替軽鎖配列」の用語には、さらに、上記で定めるVpreBおよびλ5配列の両方を有する配列が含まれる。
【0048】
本明細書で定められる「κ様代替軽鎖配列」の用語は、上記で定められる「Vκ様配列」および/または「JCκ配列」を含むいずれのポリペプチド配列をも意味する。本明細書で定められる「κ様代替軽鎖配列」としては、具体的には、これらに限定されないが、配列番号12−24のいずれかのヒトVκ様配列、ならびにスプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他の哺乳類種のその相同体、さらにはその断片および変異体を含むそれらの種々のアイソフォーム、が挙げられる。「κ様代替軽鎖配列」の用語には、さらに、これらに限定されないが、配列番号12−24のいずれかのヒトVκ様配列、配列番号25−35いずれかのヒトJCκ配列、ならびにスプライス変異体および翻訳語修飾によって形成される変異体、その他の哺乳類種のその相同体、さらにはその断片および変異体を含むそれらのアイソフォーム、が含まれる。「κ様代替軽鎖配列」の用語には、さらに、上記で定めるVκ様およびJCκ配列の両方を有する配列が含まれる。
【0049】
「代替軽鎖コンストラクト」の用語は、その最も広い意味で用いられ、代替軽鎖配列と結合した異種アミノ酸配列、核酸、およびその他の分子を含むあらゆる追加の異種成分を含み、ここで、「結合」は、以下で定められる。
【0050】
「代替軽鎖コンストラクト」はまた、本明細書にて、「Surrobody(商標)」または「Surrobody」とも称され、これら2つの用語は、交換可能に用いられる。いくつかのSurrobody(商標)γ様代替軽鎖コンストラクトは、Xu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2008, 105(31):10756-61および2008年10月2日公開のPCT公開WO2008/118970に開示されており、これらの全開示事項は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。また、その全開示事項が参照により本明細書に明確に組み込まれる米国特許公開番号2010−0062950およびXu et al., J. Mol. Biol. 2010, 397, 352-360に記載のκ様代替軽鎖コンストラクトも考慮される。加えて、2012年6月28日出願のPCT/US2012/044746に記載のスタック状可変ドメイン(Stacked Variable Domains)を含むSurrobodyの全開示事項が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0051】
本発明のポリペプチドに関して、第一のアミノ酸配列に対する「異種アミノ酸配列」の用語は、第一のアミノ酸配列に対して、自然には第一のアミノ酸配列と結合していない、少なくとも本明細書の代替軽鎖コンストラクト中に存在する形態では結合していないアミノ酸配列を意味するために用いられる。従って、VpreB、λ5、Vκ様、またはJCκに対する「異種アミノ酸配列」は、その自然環境下における自然のVpreB、λ5、Vκ様、またはJCκと結合していないいずれかのアミノ酸配列である。これらとしては、これらに限定されないが、i)アミノ酸配列変異体など、VpreBと一緒になって発達中のB細胞上で代替軽鎖を形成するλ5配列とは異なるλ5配列、例えば切断および/または誘導体化λ5配列;ii)アミノ酸配列変異体など、λ5と一緒になって発達中のB細胞上で代替軽鎖を形成するVpreB配列とは異なるVpreB配列、例えば切断および/または誘導体化VpreB配列、iii)アミノ酸配列変異体など、JCκと一緒になって発達中のB細胞上でκ様代替軽鎖を形成するVκ様配列とは異なるVκ様配列、例えば切断および/または誘導体化Vκ様配列;ならびにiv)アミノ酸配列変異体など、Vκ様と一緒になって発達中のB細胞上でκ様代替軽鎖を形成するJCκ配列とは異なるJCκ配列、例えば切断および/または誘導体化JCκ配列、が挙げられる。
【0052】
自然環境下にて、VpreBおよびλ5配列は、融合を例とする共有結合によって互いに結合していないので、VpreBまたはλ5に対する「異種アミノ酸配列」はまた、自然配列VpreBまたはλ5を含む対応するVpreBまたはλ5と、融合を例とする共有結合によって結合していないVpreBまたはλ5配列も含む。同様に、自然環境下にて、Vκ様またはJCκ配列は、融合を例とする共有結合によって互いに結合していないので、Vκ様またはJCκに対する「異種アミノ酸配列」は、自然配列Vκ様またはJCκを含む対応するVκ様またはJCκと、融合を例とする共有結合によって結合されるVκ様またはJCκ配列も含む。
【0053】
VpreBまたはVκ様に対する「異種アミノ酸配列」は、追加の機能を提供する配列(例:サイトカイン、または抗体断片アミノ酸配列)、またはそのいずれかの断片もしくは変異体と、融合を例とする共有結合によって結合されるVpreBまたはVκ様配列も含む。自然環境下において、VpreBまたはVκ様、および追加の機能を提供する配列は、融合を例とする共有結合によって互いに結合していないからである。抗体断片アミノ酸配列は、一本鎖可変断片(scFv)であってよい。
【0054】
異種アミノ酸配列はまた、これらに限定されないが、抗体、および重鎖配列、ならびにその断片または変異体を含む抗体配列も含み、例えば、抗体軽鎖および重鎖可変領域配列、ならびに抗体軽鎖および重鎖定常領域配列などである。
【0055】
「コンジュゲート」、「コンジュゲートされた」、および「コンジュゲーション」の用語は、あらゆる形態の共有結合または非共有結合による連結を意味し、これらに限定されないが、直接の遺伝子的または化学的融合、リンカーまたは架橋剤を介してのカップリング、および例えばファンデルワールス力を介して、またはロイシンジッパーを用いることによる非共有結合による結合が挙げられる。本発明において、コンジュゲーションは、特に、Surrobodyまたは抗体などの結合分子の一部であるポリペプチドへの治療剤または診断剤の連結を意味する。
【0056】
「フレキシブルリンカー」の用語は、その化学構造に基づいて、その意図する状況および環境において三次元空間中に固定されることが予測されない任意のリンカーをも意味するために本明細書にて用いられる。
【0057】
「融合」の用語は、異なる起源のアミノ酸配列を、それらのコードヌクレオチド配列のインフレームでの組み合わせにより、1つのポリペプチド鎖へ組み合わせることを意味するために本明細書にて用いられる。「融合」の用語は、その末端へ一方を融合することに加えて、内部融合、すなわち、ポリペプチド鎖内に起源の異なる配列を挿入することも明確に包含する。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」の用語はすべて、共有「ペプチド結合」によって連結されたアミノ酸の一次配列を意味する。一般的に、ペプチドは、数個のアミノ酸、典型的には、約2から約50個のアミノ酸から成り、タンパク質よりも短い。本明細書で定められる「ポリペプチド」の用語は、ペプチドおよびタンパク質を包含する。
【0059】
「自然抗体」は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、(1もしくは複数の)共有ジスルフィド結合によって重鎖と連結しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で様々である。各重鎖および軽鎖はまた、規則的な間隔での鎖内ジスルフィド架橋も有している。各重鎖は、一方の端部に可変ドメイン(V
H)を、それに続いていくつかの定常ドメインを有している。各軽鎖は、一方の端部に可変ドメイン(V
L)を、その他方の端部に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと整列されており、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列されている。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖の可変ドメイン間の接点を形成するものと考えられる、Chothia et al., J. Mol. Biol. 186:651 (1985); Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:4592 (1985)。
【0060】
抗体鎖に関する「可変」の用語は、抗体間で配列が大きく異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性に関与する抗体鎖の部分を意味するために用いられる。そのような可変性は、軽鎖および重鎖可変ドメインのいずれについても、高頻度可変領域と称される3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高く保存される部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのFR(それぞれ、FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含み、これらは主としてβシート構造を取り、3つの高頻度可変領域で連結されている。3つの高頻度可変領域は、連結するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖中の高頻度可変領域は、FRに近接して一緒に保持され、他の鎖からの高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991), pages 647-669を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害における抗体の関与など、様々なエフェクター機能を示す。
【0061】
「高頻度可変領域」の用語は、本明細書にて用いられる場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基を含む(すなわち、軽鎖可変ドメインでは、残基30−36(L1)、46−55(L2)、および86−96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインでは、30−35(H1)、47−58(H2)、および93−101(H3);MacCallum et al,. J Mol Biol. 262(5):732-45 (1996)。
【0062】
「フレームワーク領域」の用語は、より相違性の高いCDR領域の間に存在する、本技術分野で認識されている抗体可変領域の部分を意味する。そのようなフレームワーク領域は、通常、フレームワーク1から4(FR1、FR2、FR3、およびFR4)と称され、CDRが抗原結合表面を形成することができるように、重鎖または軽鎖抗体可変領域中に見られる3つのCDRを三次元空間中に保持するための足場を提供する。
【0063】
抗体は、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、異なる分類に指定することができる。抗体には、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つの主たる分類が存在し、これらのうちのいくつかは、さらにサブ分類(アイソタイプ)に分けることができ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2である。好ましい実施形態では、本発明のイムノアドヘシンの構築に用いられる免疫グロブリン配列は、IgG免疫グロブリン重鎖ドメインからのものである。ヒトイムノアドヘシンの場合、ヒトIgG1およびIgG3免疫グロブリン配列の使用が好ましい。IgG1を用いることの主たる利点は、IgG1イムノアドヘシンが、固定化プロテインA上で効率的に精製可能であることである。しかし、特定のイムノアドヘシン構築のためのIg融合パートナーを選択する場合、その他の構造的および機能的特性を考慮すべきである。例えば、IgG3ヒンジは、より長く、よりフレキシブルであり、それによって、IgG1へ融合した場合は適切にフォールディングまたは機能しない場合のある、より大きい「アドヘシン」ドメインを収容可能である。別の考慮事項は、価数であり得;IgGイムノアドヘシンは、二価のホモ二量体であり、一方、IgAおよびIgMのようなIgサブ分類は、基本的なIgホモ二量体ユニットの、それぞれ、二量体または四量体構造をもたらす。生体内適用のために設計されたVEGF受容体Ig様ドメイン/免疫グロブリンキメラの場合、薬物動態特性およびFc領域によって指定されるエフェクター機能も重要である。IgG1、IgG2、およびIgG4は、すべて21日間の生体内半減期を有するが、それらの補体系活性化における相対的な効力は、異なっている。さらに、種々の免疫グロブリンが、様々な数のアロタイプ系アイソタイプ(allotypic isotypes)を持つ。
【0064】
免疫グロブリンの異なる分類に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと称される。
【0065】
いずれの脊椎動物種からの抗体の「軽鎖」も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と称される2つの明確な分類のうちの1つに指定することができる。本明細書における抗体軽鎖へのいずれの言及も、κおよびλ軽鎖の両方を含む。
【0066】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般的には、その抗原結合または可変ドメインを含む。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)
2、scFv、および(scFv)
2断片が挙げられる。
【0067】
本明細書で用いられる場合、「抗体結合領域」の用語は、抗原と結合する能力を有する免疫グロブリンまたは抗体可変領域の1つ以上の部分を意味する。通常、抗体結合領域は、例えば、抗体軽鎖(VL)(もしくはその可変領域)、抗体重鎖(VH)(もしくはその可変領域)、重鎖Fd領域、Fab、F(ab’)
2、単一ドメイン、もしくは一本鎖抗体(scFv)などの、組み合わされた抗体軽鎖および重鎖(もしくはその可変領域)、または完全長抗体、例えば、IgG(例:IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、もしくはIgM抗体である。
【0068】
「エピトープ」の用語は、本明細書で用いられる場合、単独で、またはより長い配列の一部として、そのような配列に応答して産生される抗体と結合する配列を定める、少なくとも約3から5、好ましくは少なくとも約5から10、または少なくとも約5から15のアミノ酸であり、通常は、約500以下、または約1000以下のアミノ酸である配列を意味する。エピトープは、それが由来する親タンパク質の部分と同一の配列を有するポリペプチドに限定されない。実際、ウィルスゲノムは、常に変化している状態であり、分離株間で比較的高度の変動性を示す。従って、「エピトープ」の用語は、自然配列と同一である配列、ならびに自然配列に対する欠失、置換、および/または挿入などの修飾を包含する。一般的に、そのような修飾は、保存的な性質のものであるが、非保存的修飾も考慮される。この用語は、特に、「ミモトープ」、すなわち、連続的な直鎖状自然配列を識別せず、自然タンパク質中に必ずしも存在するものではないが、機能的に、自然タンパク質上のエピトープを模倣する配列を含む。用語「エピトープ」は、特に、直鎖状および立体的(conformational)エピトープを含む。
【0069】
「アミノ酸」または「アミノ酸残基」の用語は、通常、その本技術分野で認識されている定義を有するアミノ酸を意味し:アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)から成る群より選択されるアミノ酸などであるが、修飾、合成、または希少アミノ酸も、所望により用いられ得る。従って、具体的には、37 CFR 1.822(b)(4)に列挙される修飾および異常アミノ酸がこの定義の範囲内に含まれ、それは、参照により明確に本明細書に組み込まれる。アミノ酸は、種々のサブグループに細分することができる。従って、アミノ酸は、非極性側鎖(例:Ala、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val);負電荷を持つ側鎖(例:Asp、Glu);正電荷を持つ側鎖(例:Arg、His、Lys);または電荷を持たない極性側鎖(例:Asn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、およびTyr)を有するものとして分類することができる。アミノ酸はまた、小アミノ酸(Gly、Ala)、求核性アミノ酸(Ser、His、Thr、Cys)、疎水性アミノ酸(Val、Leu、Ile、Met、Pro)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、Asp、Glu)、アミド(Asp、Glu)、および塩基性アミノ酸(Lys、Arg)として分類することもできる。
【0070】
「スタック状可変ドメイン」または「SVD」の用語は、その最も広い意味において、2つの異なる源からの可変ドメイン配列が互いに結合しているタンデム状配置を意味する。1つの実施形態では、結合は、直接融合によって行われる。別の実施形態では、結合は、例えば短ペプチド配列などのリンカー配列を介する共有結合によって提供される。しかし、2つの異なる源という言及は、可変ドメイン配列が、それらが由来する源から得られる必要があることを意味するものではない。可変ドメイン配列およびタンデム状配置は、組換え法および/または化学合成などのいかなる手段で作製されてもよい。「スタック状可変ドメイン」または「SVD」の用語は、具体的には、各々異なる標的へ特異的に結合する少なくとも1つの「外部結合ドメイン(outer binding domain)」および少なくとも1つの「内部結合ドメイン(inner binding domain)」を有する多重特異性(例:二重特異性、三重特異性など)Surrobodyまたは抗体系ポリペプチドを含む。この用語は、具体的には、二重特異性、三重特異性、およびその他の多重特異性コンストラクトを含み、ここで、可変ドメインは、単一のポリペプチド鎖中(「一本鎖スタック状可変ドメイン」)、または2つ以上のポリペプチド鎖中に存在(「スタックされ」)してよい。従って、この用語は、具体的には、限定はされないが、単量体、二量体、および四量体構造、ならびに一価二重特異性および二価二重特異性構造を含む。スタック状可変ドメインは、2012年6月28日に出願されたPCT/US2012/044746にさらに記載されている(その内容は、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0071】
「ポリヌクレオチド」の用語は、DNA分子、およびRNA分子、ならびにこれらの類似体(例:ヌクレオチド類似体を用いて、または核酸化学を用いて作製されたDNAまたはRNA)などの核酸を意味する。所望に応じて、ポリヌクレオチドは、例えば本技術分野で認識されている核酸化学を用いる合成によって、または例えばポリメラーゼを用いて酵素的に作製されてよく、所望される場合、修飾されてよい。典型的な修飾としては、メチル化、ビオチン化、およびその他の本技術分野で公知の修飾が挙げられる。加えて、核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよく、所望される場合、検出可能部分と連結されていてよい。
【0072】
参照ポリペプチドに対する「変異体」の用語は、自然ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸変異または修飾(すなわち、改変)を持つポリペプチドを意味する。「アミノ酸修飾」によって作製される変異体は、例えば、自然アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または化学的修飾によって作製することができる。
【0073】
「アミノ酸修飾」とは、アミノ酸配列中の所定のアミノ酸配列の変化を意味する。修飾の例としては、アミノ酸置換、挿入、および/または欠失が挙げられる。
【0074】
指定された位置での「アミノ酸修飾」とは、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に近接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を意味する。指定された残基に「近接する」挿入とは、その1から2個の残基以内での挿入を意味する。挿入は、指定された残基に対してN末端方向またはC末端方向であってよい
【0075】
「アミノ酸置換」とは、所定のアミノ酸配列中の少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を、別の異なる「置き換え」アミノ酸残基で置き換えることを意味する。1もしくは複数の置き換え残基は、「天然アミノ酸残基」(すなわち、遺伝子コードによってコードされる)であってよく、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)から成る群より選択されてよい。1つ以上の非天然アミノ酸による置換も、本明細書におけるアミノ酸置換の定義に包含される。
【0076】
「非天然アミノ酸残基」とは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基と共有結合することができる、上記で列挙した天然アミノ酸残基以外の残基を意味する。非天然アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllman et al. Meth. Enzym. 202:301 336 (1991)に記載のものなどのその他のアミノ酸残基類似体が挙げられる。そのような非天然アミノ酸残基を作製するためには、Noren et al.
Science 244:182 (1989)および上記Ellman et al.の手順が用いられ得る。簡潔に述べると、これらの手順は、サプレッサーtRNAの非天然アミノ酸残基による化学的活性化、続いてそのRNAの生体外転写および翻訳を含む。
【0077】
「アミノ酸挿入」とは、少なくとも1つのアミノ酸を所定のアミノ酸配列中に組み込むことを意味する。挿入は、通常は、1もしくは2個のアミノ酸残基の挿入から成るが、本出願では、より大きい「ペプチド挿入」も考慮するものであり、例えば、約3から約5個、またはさらには約10個までのアミノ酸残基の挿入である。挿入される残基は、上記で開示されるように、天然または非天然であってよい。
【0078】
「アミノ酸欠失」とは、所定のアミノ酸配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基の除去を意味する。
【0079】
「変異誘発」の用語は、特に断りのない限り、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を改変するための本技術分野で認識されているいずれの技術をも意味する。好ましい種類の変異誘発としては、エラープローンPCR変異誘発、飽和変異誘発(saturation mutagenesis)、またはその他の部位特異的変異誘発が挙げられる。
【0080】
「部位特異的変異誘発」は、本技術分野にて標準の技術であり、所望される変異に相当する限定的なミスマッチング以外は、変異誘発される一本鎖ファージDNAと相補的である合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われる。簡潔に述べると、この合成オリゴヌクレオチドが、一本鎖ファージDNAと相補的である鎖の合成を指向するためのプライマーとして用いられ、得られた二本鎖DNAは、ファージを支持する宿主細菌(phage-supporting host bacterium)中へ形質転換される。この形質転換された細菌の培養物は、トップアガーに播種され、ファージを持つ単一細胞からのプラーク形成を可能とする。理論的には、新たなプラークの50%が、一本鎖として、変異された形態を有するファージを含有し、50%が、元の配列を有することになる。目的のプラークは、キナーゼ処理した(kinased)合成プライマーとのハイブリダイゼーションを、完全マッチのハイブリダイゼーションが可能であるが、元の鎖とのミスマッチはハイブリダイゼーションを防止するのに充分であるハイブリダイゼーション温度で行うことによって選択される。次に、プローブとハイブリダイズするプラークが選択され、配列決定され、培養され、DNAが回収される。
【0081】
「ベクター」の用語は、細胞中で自己複製を行う能力を有し、遺伝子またはポリヌクレオチドを例とするDNAセグメントを、結合されたセグメントの複製を引き起こすように作動可能に連結することができるrDNA分子を意味するために用いられる。1つ以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を指向する能力を有するベクターは、本明細書にて、「発現ベクター」と称される。「制御配列」の用語は、特定の宿主生物中での作動可能に連結されたコード配列の発現に必要であるDNA配列を意味する。原核生物に適する制御配列は、例えば、プロモーター、所望に応じて、オペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。ベクターは、追加のDNAセグメントをその中に連結することができる円形状二本鎖DNAループを意味する「プラスミド」であってもよい。ベクターは、追加のDNAセグメントを、ウィルスゲノム中に連結することができるファージベクターまたはウィルスベクターであってもよい。適切なベクターは、それが導入された宿主細胞中にて自己複製する能力を有し、例えば、細菌起源の細菌ベクター、または複製およびエピソーム哺乳類ベクターである。ベクターは、宿主細胞ゲノムと一体化されてよく、例えば、宿主細胞への導入時は非エピソーム哺乳類ベクターであり、それが宿主ゲノムと共に複製される。
【0082】
核酸は、それが別の核酸配列との機能的な関係に配置される場合に、「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのためのDNAと操作可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列と作動可能に連結され;または、リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置される場合、コード配列と作動可能に連結される。一般的に、「作動可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が、隣接していることを、および分泌リーダーの場合は、隣接し、読みフェーズ(reading phase)内であることを意味する。しかし、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、都合の良い制限部位での連結によって達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の慣行に従って用いられる。
【0083】
「ファージディスプレイライブラリ」は、ファージコートタンパク質との融合体としてクローン化されたタンパク質配列のコレクションを発現するタンパク質発現ライブラリである。従って、「ファージディスプレイライブラリ」の語句は、本明細書にて、外部(通常は異種)タンパク質を発現するファージ(例:繊維状ファージ)のコレクションを意味する。外部タンパク質は、ファージが接触される他の部分と自由に相互作用(結合)することができる。外部タンパク質を提示する各ファージは、ファージディスプレイライブラリの「メンバー」である。
【0084】
「繊維状ファージ」の用語は、その表面に異種ポリペプチドを提示する能力を有するウィルス粒子を意味し、限定されないが、f1、fd、Pf1、およびM13を含む。繊維状ファージは、テトラサイクリンなどの選択可能標識を含有してよい(例:「fd−tet」)。種々の繊維状ファージディスプレイシステムは、当業者に公知である(例えば、Zacher et al.
Gene 9: 127-140 (1980)、Smith et al.
Science 228: 1315-1317 (1985);およびParmley and Smith
Gene 73: 305-318 (1988)を参照)。
【0085】
「パニング」の用語は、標的に対する高い親和性および特異性を有する抗体などの化合物を持つファージを識別および単離するスクリーニングプロセスの複数のラウンドを意味するために用いられる。
【0086】
交換可能に用いられる用語である「リーダー配列」、「シグナルペプチド」、または「分泌リーダー」は、それがその一部であるポリペプチドの細胞内輸送を指向するアミノ酸残基を含む配列を含有する。ポリペプチドは、分泌リーダー、シグナルペプチド、またはリーダー配列を、通常はそのN末端に含有する。これらのポリペプチドはまた、リーダー配列がシグナルエンドペプチダーゼによってポリペプチドの残部から開裂され得る開裂部位も含有し得る。そのような開裂の結果として、成熟ポリペプチドが産生される。開裂は、通常、分泌の過程で、または未変性ポリペプチドが適切な細胞コンパートメントへ指向された後に発生する。
【0087】
「宿主細胞」は、本明細書で述べる分子をコードする核酸および/または核酸を含有するベクターを形質転換するためのレシピエントであり得る、もしくはすでにレシピエントである個々の細胞または細胞培養物を含む。本発明の方法において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞などの真核細胞であってよい。その他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0088】
<B.詳細な記述>
本発明の方法を実施するための技術は、当業者に公知であり、標準的な実験教本に記載されており、例えば、Ausubel et al.,
Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley and Sons (1997);
Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, J. Sambrook and D. W. Russell, eds., Cold Spring Harbor, New York, USA, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001;O’Brian et al.,
Analytical Chemistry of Bacillus Thuringiensis, Hickle and Fitch, eds., Am. Chem. Soc., 1990;
Bacillus thuringiensis: biology, ecology and safety, T.R. Glare and M. O’Callaghan, eds., John Wiley, 2000;
Antibody Phage Display, Methods and Protocols, Humana Press, 2001;および
Antibodies, G. Subramanian, ed., Kluwer Academic, 2004が挙げられる。変異誘発は、例えば、部位特異的変異誘発を用いて実施することができる(Kunkel et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:488-492 (1985))。PCR増幅法は、米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号、ならびに"PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification", H. Erlich, ed., Stockton Press, New York (1989);および
PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds., Academic Press, San Diego, Calif. (1990)を含むいくつかの教本に記載されている。
【0089】
本発明は、治療剤または診断剤であってよい薬剤とコンジュゲートした結合分子を提供する。1つの態様では、結合分子コンジュゲートは、代替軽鎖(SLC)を含む。別の態様では、結合分子コンジュゲートは、抗体またはSurrobodyに基づく。
【0090】
<1.代替軽鎖(SLC)>
Surrobodyコンストラクトは、抗体レパートリーの通常の形成の過程にて産生されるプレB細胞受容体(プレ−BCR)に基づいている。抗体とは異なり、プレ−BCRは三量体であり、2つの代替軽鎖構成成分、VpreBおよびλ5と対形成した抗体重鎖から構成される。VpreBおよびλ5は、いずれも、遺伝子再構成を起こさない遺伝子によってコードされ、V(D)J遺伝子組換えが開始する前の初期プロB細胞中で発現される。プレBCRは、重鎖、ならびに2つの非共有結合で結合したタンパク質:VpreBおよびλ5、から構成されるという点で成熟免疫グロブリンとは構造的に異なっており、すなわち、それらは、抗体における2つに対して、3つの構成成分を有する。さらに、VpreBは、Vλ Igドメインと相同的であり、λ5は、抗体のCλドメインと相同的であるが、各々は、非標準の(noncanonical)ペプチド伸長部を有しており:VpreB1は、そのC末端に追加の21個の残基を有し;λ5は、そのN末端に50個のアミノ酸の伸長を有する。
【0091】
同様に、本明細書で述べるκ様代替軽鎖コンストラクトは、プレB細胞受容体(プレ−BCR)に基づいている。κ様軽鎖は、JCκ融合遺伝子とパートナー形成する生殖系列VκIV遺伝子である。これらの遺伝子の各々において、ペプチド伸長部は、CDR3に類似の部位の周囲の近接部に存在する。これらの2つのタンパク質は、ゲノムレベルでの組換えを起こさないと思われることから、その重鎖との結合は、互いに排他的であり、λ様代替軽鎖について述べられる結合に類似している可能性が高い。
【0092】
Surrobodyの設計および作製に関するさらなる詳細は、Xu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2008, 105(31):10756-61、およびPCT公開WO2008/118970、2008年10月2日公開;WO/2010/006286、2010年1月1日公開;WO/2010/151808、2010年12月29日公開;WO/2011/071957、2011年6月16日公開;およびPCT/US2012/044746、2012年6月28日出願、に報告されている(これらの全開示事項は、その全内容について、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0093】
<(i)λ様代替軽鎖>
本発明は、λ5配列と結合したVpreB配列を有する代替軽鎖を含むSurrobodyコンジュゲートを考慮する。
図1は、コンジュゲーションのプラットフォームとしてのSurrobody(商標)を示し、これは、インバリアント代替軽鎖(SLC)パートナーを、安定したコンジュゲーションのための候補部位として利用するものである。2つのインバリアントタンパク質:ラムダ5(λ5)およびVpreBが代替軽鎖を構成し、Surrobody(商標)は、これらを、すぐにコンジュゲーションを行うことができる内在性「テール」を有する2つの天然タンパク質として(「3ピース)、または2つのタンパク質が一緒に融合して単一のタンパク質となった状態で(「2ピース」)、利用することができる(
図1)。加えて、Surrobodyライブラリは、4つの考え得る組み合わせから成る拘束されたフレームワークを有する合成ライブラリである。保存フレームワーク領域も、安定したコンジュゲーションのための候補部位を提供する。
【0094】
図2は、Surrobodyが、複数の種類およびサイズのタンパク質を特異的部位へ標的化することができる方法を一般的に示す。複数のタンパク質が、高い正確性でSLCの種々の構成成分と結合しており、これらに限定されないが、免疫タンパク質(例:16kDaのIL−2)、二重特異性免疫動員(bispecific immune recruitment)(例:CD3)、中型から大型のタンパク質(例:20kDaのFGF21、25kDaのscFv Abs − インフルエンザウィルス抗体およびVEGF、ならびにFabコンストラクト)、および小型タンパク質(例:約6kDaのGLP−1およびエキセンディン−1などの生物活性タンパク質)が挙げられる。
【0095】
本発明は、Surrobody(商標)構成成分におけるコンジュゲーションの特異的最適化のための追加の領域に関する。そのような最適化は、SLCの保存的性質および合成コレクションから誘導されるフレームワークの限定された数に起因して、種々の適用の可能性を有する。適用の1つの重要な分野は、Surrobody(商標)−薬物コンジュゲートの形成である。
図3Aは、インバリアント2ピースSLCの薬物コンジュゲーションのための部位特異的最適化の例を示す。SLC上に好ましい部位が識別されると(例:SLCコンストラクト中の一連の可能性のあるシステイン、リジン、またはその他の単一もしくは複数の化学置換)、それらを、続いてのSurrobody(商標)に用いることができる(
図3B)。
【0096】
1つの実施形態では、VpreB配列は、自然VpreB1配列、自然VpreB2配列、自然VpreB3配列、ならびにそれらの断片および変異体から成る群より選択される。1つの他の実施形態では、天然VpreB配列は、配列番号1のヒトVpreB1、配列番号2および3のマウスVpreB2、配列番号4のヒトVpreB3、配列番号5のVpreB様ポリペプチド、配列番号6のヒトVpreB dTailポリペプチド、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。他の実施形態では、λ5配列は、配列番号7のマウスλ5、配列番号8のヒトλ5ポリペプチド、もしくは配列番号9のヒトλ5 dTailポリペプチドの全体または一部を含む。
【0097】
ヒトVpreB1(CAG30495)の主たるアイソフォームは、19アミノ酸のリーダー配列を含む145アミノ酸長のポリペプチド(
図4の配列番号1)である。類似のリーダー配列は、他のVpreBポリペプチドにも存在する。ヒト切断型VpreB1配列(自然VpreB1のC末端にある特徴的な「テール」が欠如)も、「VpreB1 dTail配列」と称され、配列番号5として示される。
【0098】
マウスλ5(CAA10962)の主たるアイソフォームは、30アミノ酸のリーダー配列を含む209アミノ酸のポリペプチド(配列番号7)である。ヒトλ5様タンパク質は、213個のアミノ酸を有し(NP_064455;配列番号8)、抗体λ軽鎖定常領域と約84%の配列同一性を示す。類似のリーダー配列は、他のλ5ポリペプチドにも存在する。ヒト切断型λ5配列(自然λ5のN末端にある特徴的な「テール」が欠如)も、「λ5 dTail配列」と称され、配列番号9として示される。
【0099】
1つの他の実施形態では、本発明は、配列番号6として示されるVpreB配列を含むSLCコンストラクトを含有する結合分子コンジュゲートを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号10として示されるλ5配列を含むSLCコンストラクトを提供する。1つの実施形態では、SLCコンストラクトは、配列番号35として示されるポリペプチドを含む。
【0100】
λ様Surrobodyの具体的な例としては、自然配列の断片および変異体を含むVpreB1、VpreB2、またはVpreB3配列などのVpreB配列が、自然配列の断片および変異体を含むλ5配列と結合しているポリペプチドが挙げられる。この種類の代表的な融合は、PCT公開WO2008/118970、2008年10月2日公開;WO/2010/006286、2010年1月14日公開;WO/2010/151808、2010年12月29日公開;PCT/US2012/044746、2012年6月28日出願、に記載されている(これらの全開示事項は、その全内容について、参照により本明細書に組み込まれる)。異種リーダー配列との融合の例は、
図6に示される(配列番号35および36)。直接融合では、通常、VpreB配列(例:VpreB1、VpreB2、またはVpreB3配列)のC末端が、λ5配列のN末端へ融合される。自然VpreB配列の全長を完全長λ5配列へ融合することも可能であるが、通常は、融合は、これら2つのポリペプチドの各々におけるCDR3類似部位にて、またはその周辺で行われる。この実施形態では、融合は、CDR3類似領域のいずれかの側における約10アミノ酸残基内にて、または約10アミノ酸残基内の1つの位置にて行われてよい。好ましい実施形態では、融合は、自然ヒトVpreB1配列(配列番号1)の約アミノ酸残基116−126の間、および自然ヒトλ5配列(配列番号8)の約アミノ酸残基82および93の間で行われる。
【0101】
上述のように、直接融合に加えて、本発明のポリペプチドコンストラクトは、VpreB配列(自然配列の断片および変異体を含む)の、λ5配列(自然配列の断片および変異体を含む)などの異種配列、および/または抗体配列との非共有結合による結合を含む。従って、例えば、完全長VpreB配列が、切断型λ5配列と非共有結合によって結合していてよい。別の選択肢として、切断型VpreB配列が、完全長λ5配列と非共有結合によって結合していてよい。
【0102】
非共有結合で結合したVpreB1およびλ5配列を含み、抗体重鎖と結合した代替軽鎖コンストラクト。この結合は、共有結合および/または非共有結合であってよい。これらの構造としては、例えば、完全長VpreB1およびλ5配列、切断型λ5配列と結合した完全長VpreB1配列(「ラムダ5dT」)、完全長λ5配列と結合した切断型VpreB1配列(「VpreB dT」)、および切断型λ5配列と結合した切断型VpreB1配列(「ショート」)が挙げられ得る。
【0103】
当業者であれば、その他の様々なコンストラクトを、類似の方法で作製し、使用することができることを理解するであろう。例えば、構造は、異なる代替軽鎖配列を各アームに含む、および/または三量体もしくは五量体構造を有する非対称構造であり得る。
【0104】
本明細書におけるすべての代替軽鎖コンストラクト(Surrobody)は、抗体配列と結合されてよい。例えば、1つ以上のVpreB−λ5融合を含むポリペプチドは、ペプチドリンカーによって抗体重鎖可変領域配列と連結され得る。別の実施形態では、VpreB−λ5融合は、抗体重鎖、または可変領域配列を含むその断片と非共有結合によって結合して、二量体複合体を形成する。なお別の実施形態では、VpreBおよびλ5配列は、互いに、および抗体重鎖、または可変領域配列を含むその断片と非共有結合によって結合して、それによって三量体複合体を形成する。
【0105】
1つの実施形態では、本発明は、λ5配列がVpreB配列と非共有結合で結合したSLCコンストラクトを提供する。1つの他の実施形態では、本発明は、前記VpreB配列およびλ5配列の結合体が、抗体重鎖配列と非共有結合で結合したSLCコンストラクトを考慮する。
【0106】
本発明はまた、λ5配列およびVpreB配列が、共有結合リンカーで接続されたSLCコンストラクトも考慮する。1つの実施形態では、本発明は、λ5配列がVpreB配列と非共有結合で結合したSLCコンストラクトを提供する。1つの他の実施形態では、本発明は、前記VpreB配列およびλ5配列の結合体が、抗体重鎖配列と非共有結合で結合したSLCコンストラクトを考慮する。
【0107】
多重特異性Surrobody分子に基づくものを含む本発明の結合分子コンジュゲートは、VpreB/λ5結合体を含有してよい。VpreB/λ5結合体は、融合体であるSLCポリペプチドであってよい。VpreB1(配列番号1)/λ5(配列番号8)結合体での使用に適する代表的な配列としては、これらに限定されないが、VreB1(20−121)、λ5(93−213)、λ5(93−107)、およびλ5(93−108)が挙げられる。
【0108】
<(ii)κ様代替軽鎖>
κ様Surrobodyの具体例としては、自然配列の断片および変異体を含むVκ様配列が、自然配列の断片および変異体を含むJCκ配列と結合しているポリペプチドが挙げられる。この種類の代表的な融合物は、その全開示事項が明確に参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開番号2001−0062950およびXu et al., J. Mol. Biol. 2010, 397, 352-360に説明されている。
【0109】
種々のヘテロ二量体代替κ軽鎖欠失変異体が、代替軽鎖として用いられ得る。「完全長」コンストラクトでは、Vκ様およびJCκ配列の両方が、それぞれ、CおよびN末端伸長部(テール)を保持している。dJ変異体では、JCκのN末端伸長部が欠失している。dVκテール変異体では、Vκ様配列のC末端伸長部は除去されているが、JCκのN末端伸長部は保持されている。「ショートカッパ」変異体では、Vκ様配列のC末端テールおよびJCκ配列のN末端伸長部の両方が保持されている。一本鎖コンストラクトは、完全長配列と欠失変異体のいずれかとの間のいずれの組み合わせで作製されてもよく、例えば、完全長一本鎖、完全長Vκ様およびdJ一本鎖、完全長JCκおよびdVκなどである。
【0110】
本明細書におけるポリペプチドコンストラクトの具体例としては、Vκ様および/またはJCκ配列が、抗体重鎖もしくはその断片と結合したポリペプチドが挙げられる。本発明のκ様代替軽鎖コンストラクトでは、Vκ様ポリペプチドおよび/またはJCκポリペプチドは、それぞれ、類似の抗体配列には存在しないCおよびN末端伸長部を含有してよい。別の選択肢として、伸長部の一部または全体が、本明細書におけるκ様代替軽鎖コンストラクトから除去されてよい。
【0111】
個別に用いられてよい、または完全長抗体重鎖またはその断片などの抗体重鎖配列などの追加の異種配列でさらに誘導体化および/または結合されてよいその他のκ様代替軽鎖コンストラクト。
【0112】
Vκ様ポリペプチドおよび/またはJCκポリペプチドのCならびにN末端伸長部は、本発明のコンストラクト中に存在する必要はないが、そのような付加部分(appendages)の少なくとも1つの少なくとも一部を保持することが有利であり、それは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2010年1月14日公開のWO/2010/006286に記載のように、それらが、直鎖状の伸長部により、または例えば限定された多様性の形態で、スクリーニングループライブラリーの結果として、コンビナトリアル機能多様性(combinatorial functional diversity)を作り出すための独特の機会を提供するからである。加えて、Vκ様ポリペプチドおよび/またはJCκポリペプチドの「テール」部分を、その他のペプチドおよび/またはポリペプチドと融合して、例えば、結合性の向上、さらなる結合特異性、pKの向上、半減期の改善、半減期の短縮、細胞表面アンカリング、細胞転移の向上、ドミナントネガティブ活性などの種々の所望される特性を提供することができる。具体的な機能性テール伸長部については、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2010年12月29日公開のWO/2010/151808でさらに考察されている。
【0113】
所望される場合、本発明のコンストラクトは、例えば、公知の治療抗体を含む抗体のCDR1、CDR2、および/またはCDR3領域からの公知の配列または配列モチーフを、κ様代替軽鎖配列のCDR1、CDR2、および/またはCDR3類似領域へ組み込むか、または付加することによって作製されてよい。このことにより、抗体ではないが、公知の治療抗体に類似するか、またはそれよりも優れた結合特異性および親和性を示す分子を作り出すことが可能となる。
【0114】
Vκ様およびJCκ遺伝子は、独立したタンパク質として機能することができ、および代替軽鎖として機能することができるポリペプチドをコードするため、代替様軽鎖(surrogate-like light chains)を、真の軽鎖から作製することができ、作製された真の代替軽鎖に対してこれまでに提案されたすべての用途に用いることができる。これは、VpreBまたはVκ様遺伝子のいずれかに類似のペプチド伸長部を含有するように、可変軽鎖領域を発現させることで達成することができる。同様に、定常領域は、λ5またはJCκ遺伝子のいずれか、およびそれらのペプチド伸長部に類似するように作製することができる。さらに、キメラ、またはヘテロ二量体パートナーの組み合わせのいずれも、本明細書の範囲内である。
【0115】
1つの他の態様では、本発明は、κ様SCLポリペプチドを有する代替軽鎖(SLC)ドメインを含む多重特異性Surrobody分子を考慮する。1つの実施形態では、κ様SCLポリペプチドは、Vκ様配列および/またはJCκ配列を含む。別の実施形態では、Vκ様配列は、配列番号12−24、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。1つの他の実施形態では、JCκ配列は、配列番号26−39、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。κ様SLCドメインは、JCκ配列と結合したVκ様配列であってよい。結合体は、融合体であってよい。別の実施形態では、融合は、それぞれ、前記Vκ様配列および前記JCκ配列のCDR3類似領域にて、またはその周辺で行われる。1つの実施形態では、本発明は、κ様SLCコンストラクトを考慮し、ここで、前記Vκ様配列および前記JCκ配列は、共有結合リンカーで接続されている。
【0116】
1つの実施形態では、本発明は、κ様SLCコンストラクトを提供し、ここで、前記Vκ様配列は、前記JCκ配列と非共有結合で結合している。1つの実施形態では、本発明は、κ様SLCコンストラクトを提供し、ここで、前記Vκ様配列およびJCκ配列の結合体は、抗体重鎖配列と非共有結合で結合している。
【0117】
<2.多重特異性スタック状可変ドメイン(SVD)結合分子コンジュゲート>
1つの態様では、本明細書に記載の結合した結合分子は、2012年6月28日出願のPCT/US2012/044746(この全開示事項は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のスタック状可変ドメイン(SVD)サログロブリン構造に基づいている。本明細書で述べる治療剤および診断剤を例とする薬剤は、SVD構造の一部である代替軽鎖領域と、本明細書で述べるリンカー戦略(linker strategies)を介して結合され得る。
【0118】
SVDサログロブリン構造は、2つの異なる親Surrobodyからの2つのドメインが、直接または設計されたリンカーを介して、タンデム状に共有結合で連結されるように設計されたヘテロマー結合タンパク質である。具体的には、複合体の第一の構成成分は、第一のSurrobodyの重鎖可変ドメイン(VH)および第二のSurrobodyの代替軽鎖ドメインが一緒に連結されたタンデム状生成物であり、これは、「外側」結合ドメインを作り出すことを意図している。SVD複合体の第二の構成成分は、第一のSurrobodyの代替軽鎖ドメインおよび第二のSurrobodyの重鎖可変ドメイン(VH)が一緒に連結されたタンデム状生成物であり、これは、「内側」結合ドメインを作り出すことを意図している。この第二の構成成分に続いて、両方の特異性への強い結合(avid binding)を可能とするために、定常ドメイン配列(例:CH1)が、および所望される場合は、Fc領域が存在してよい。これら2つの構成成分は、通常は一本鎖ポリペプチドであるが、個々の二量体タンパク質であってよい。本明細書で述べる治療剤および診断剤を例とする薬剤は、本明細書で述べるリンカー戦略によって、少なくとも1つの代替軽鎖ドメインまたは領域へ結合されてよい。
【0119】
別の態様では、結合分子コンジュゲートは、異なる抗体重鎖定常ドメイン領域配列を用いるSVD分子に基づいている。1つの実施形態では、重鎖定常ドメイン配列は、CH1配列、CH2配列、CH3配列、CH1およびCH3配列、CH2およびCH3配列、Fc領域、さらにはそれらのいずれかの機能性活性断片から成る群より選択される配列を含む。
【0120】
別の実施形態では、本発明は、「外側」結合ドメインを作り出すことを意図する第一のSurrobodyの重鎖可変ドメイン(VH)およびそれに連結したその同族代替軽鎖、そしてそれが第二のSurrobodyの代替軽鎖と連結した状態の一本鎖生成物を含むSVDサログロブリン構造に基づく結合分子コンジュゲートに関する。本実施形態では、SVD複合体の第二の構成成分は、第二のSurrobodyの重鎖可変ドメイン(VH)であり、これは、「内側」結合ドメインを作り出すことを意図している。この第二の重鎖に続いて定常ドメイン(CH1)が、所望される場合は、各別個の結合標的の両方との強い結合のためのFc領域が存在してよい。この実施形態では、第一の結合ドメイン特異性は、親サログロブリン(SgG)の自然の結合親和性を回復するために、第二の結合特異性の代替軽鎖と融合した一本鎖コンストラクトとして作り出される。しかし、第二の結合ドメインが、N末端上の融合の存在下にて自然の結合親和性を維持する場合は、類似の効果を有する一本鎖コンストラクトを融合することも可能である。本明細書で述べる治療剤および診断剤を例とする薬剤は、本明細書で述べるリンカー戦略によって、少なくとも1つの代替軽鎖ドメインまたは領域へ結合されてよい。
【0121】
さらに、別個の一本鎖結合ドメインを、代替軽鎖のアミノ末端、および重鎖のアミノ末端の両方へ融合して、三重特異性の強いヘテロマー結合タンパク質を作り出すことも可能である。
【0122】
なお別の実施形態では、中和サログロブリンの重鎖可変(VH)ドメインおよびコンビナトリアルリンカー多様性の組み合わせから構成される一連のSVD−SgG分子が作り出され、相乗的または追加的活性を持つ組み合わせが識別される。有益な組み合わせは、より強力な薬剤へ、ならびに抗体などの生物学的製剤のカクテル混合物よりも一貫した生成物へと作製される可能性を有する。
【0123】
単一の分子を標的とする別の例では、SVD−SgGコンストラクトの4つの結合部位の各々に対して単一の重鎖可変ドメイン(VH)が用いられて、化学量論的により多い量の標的を結合することができるか、または標的化されたタンパク質のより高次のクラスターを生成することができる分子が作り出される。
【0124】
本明細書で述べる多重特異性スタック状可変ドメイン(SVD)結合分子は、異なるポリペプチド構成成分を含有する。本発明は、これらのポリペプチド構成成分の断片、特には機能性断片の使用を考慮する。「断片」の用語は、ポリペプチドまたは本明細書で述べる配列の一部分を意味し、一般的には、標的の結合、および/または別のポリペプチドもしくは配列との結合に関与する領域を少なくとも含んでいる。本明細書で定める「機能性断片」とは、元の(参照)ポリペプチドまたは配列と共通の定性的生物活性を有するポリペプチドまたは配列の一部分である。従って、例えば、代替軽鎖(SLC)ポリペプチドまたは配列の断片は、機能性断片であってよく、これは、SLCポリペプチドまたは配列の定性的生物活性を維持するために要する最小限の配列長を少なくとも含んでいる。例えば、機能性断片は、単独で、もしくは抗体重鎖可変領域配列を例とする別のポリペプチドとの組み合わせで標的と結合する定性的能力、および/または抗体重鎖定常領域を例とする別のポリペプチドと結合する能力を維持し得る。本明細書で述べる治療剤および診断剤を例とする薬剤は、本明細書で述べるリンカー戦略によって、少なくとも1つの代替軽鎖ドメインまたは領域へ結合されてよい。
【0125】
これらのおよびさらなる実施形態は、2012年6月28日に出願されたPCT/US2012/044746の実施例および関連する図面に説明されている(この全開示事項は、その全内容について、参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、薬剤は、(i)二重特異性Surrobody構造(PCT/US2012/044746の
図1A);(ii)多重特異性/二重特異性一本鎖系Surrobody(scSv)構造(PCT/US2012/044746の
図1B−1E);(iii)単量体一価バインダーもしくは二価の強いバインダーのSurrobody構造(PCT/US2012/044746の
図17);(iv)二重特異性単量体SVD Surrobody構造(PCT/US2012/044746の
図18);(v)三重特異性SVD Surrobody構造;または(vi)「クロスコンポーネント(Cross-complement)」SVD Surrobody構造に示されるように、SLC領域またはドメインと結合し得る。1つの実施形態では、本発明は、2012年6月28日に出願されたPCT/US2012/044746(この全開示事項は、その全内容について、参照により本明細書に組み込まれる)の
図18の
図10および11に示されるSLCアミノ酸配列の適切ないずれかのアミノ酸残基と結合した薬剤を有するSLCポリペプチドを含む結合分子コンジュゲートを考慮する。
【0126】
<3.機能的ヌル部分>
別の態様では、本発明は、機能的ヌル部分を含む結合分子コンジュゲートを提供する。ペプチドおよびポリペプチド、または結合したペプチド性および非ペプチド性分子などの生物活性部分の薬物動態特性を、機能的ヌル骨格とのコンジュゲーションによって調節することができることが見出された。従って、例えば、迅速に排出されるペプチドおよびポリペプチド、または二次的に結合したペプチド性および非ペプチド性分子の生体内半減期は、例えば機能的ヌル抗体、Surrobody(商標)などのより長い半減期の機能的ヌル骨格、またはAdnectin(商標)(以降「Adnectin」と称する)、Domain Antibody(商標)(以降「Domain Antibody」または「dAB」と称する)、DARPin、anti−calin、Affibody、もしくはこれらの断片などの機能的ヌル結合領域を含むその他の骨格とのコンジュゲーションによって延長することができる。
【0127】
1つの態様では、本発明は、第二の部分と結合した第一の部分を含む結合分子コンジュゲートに関し、ここで、第二の部分は、第一の部分と結合し、第一の部分の少なくとも1つの薬物動態特性を調節する能力を有する1つ以上の機能的ヌル結合領域を含む骨格である。別の態様では、本発明は、融合分子を含む結合分子コンジュゲートに関し、ここで、融合分子は、第一の部分および第二の部分を含み、ここで、前記第二の部分は、第一の部分と融合し、第一の部分の少なくとも1つの薬物動態特性を調節する能力を有する1つ以上の機能的ヌル結合領域を含む。ある実施形態では、第一の部分は、ペプチドまたはポリペプチドである。ペプチドまたはポリペプチドは、生物活性部分であってよい。なお別の実施形態では、生物活性部分、および1つ以上の機能的ヌル結合領域を含む骨格または部分は、互いに融合されている。
【0128】
他の実施形態では、1つ以上の機能的ヌル結合領域を含む骨格または部分は、例えば、抗体、Adnectin、Domain Antibody(Dab)、DARPin、anti−calin、Affibody、およびこれらの断片から成る群より選択され得る。従って、1つ以上の機能的ヌル結合領域を含む骨格または部分は、抗体もしくは抗体断片、またはSurrobodyもしくはその断片であってよい。
【0129】
別の実施形態では、結合分子コンジュゲートを構成する機能的ヌル部分は、抗体に基づいている。そのような抗体は、ヌル抗体ポリペプチドをコードする未変異の「V−J」軽鎖および未変異の「V−D−J」の遺伝子の組み合わせからの生殖系列重鎖および軽鎖から作り出される。ほとんどの結合は、重鎖CDR3領域によって決定されることから、いかなる外来性または非外来性標的との結合の可能性も、D領域を除去すること、またはヌル抗体の作製において設計された最小限のD領域を用いることによってさらに低減することができる。非反応性をさらに強化するために、VおよびJ領域の部分のさらなる改変、または追加の欠失が可能である。機能的ヌルSurrobody、および機能的ヌル結合領域を持つその他の部分を作製するために、類似の戦略を適用することができる。
【0130】
機能的ヌル部分は、その全開示事項が、その全内容について、参照により本明細書に組み込まれる2011年6月16日に公開されたWO/2011/071957にさらに記載されている。
【0131】
<4.SLCを含む結合分子コンジュゲート>
本発明は、薬物もしくはプロドラッグと連結またはコンジュゲートした代替軽鎖またはその断片を含む結合分子コンジュゲートに関する(本明細書にてSurrobodyコンジュゲートとも称される)。適切な薬物またはプロドラッグは本技術分野にて公知である。薬物またはプロドラッグは、細胞傷害剤であってよい。本発明の細胞傷害コンジュゲートに用いられる細胞傷害剤は、細胞死をもたらす、または細胞死を誘発する、またはなんらかの形で細胞生存率を低下させるいかなる化合物であってもよく、例えば、マイタンシノイドおよびマイタンシノイド類似体が挙げられる。その他の適切な細胞傷害剤は、例えば、ベンゾジアゼピン、タキソイド、CC−1065およびCC−1065類似体、デュオカルマイシンおよびデュオカルマイシン類似体、カリケアマイシンなどのエンジイン、オーリスタチンを含むドラスタチンおよびドラスタチン類似体、トマイマイシン(tomaymycin)誘導体、レプトマイシン誘導体、メトトレキサート、シスプラチン、カルボプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、およびモルホリノドキソルビシンである。
【0132】
そのようなコンジュゲートは、薬物またはプロドラッグと代替軽鎖とを連結させるための連結基を用いることで作製することができる。適切な連結基は、本技術分野にて公知であり、例えば、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸解離性基、光解離性基、ペプチダーゼ解離性基、およびエステラーゼ解離性基が挙げられる。
【0133】
薬物またはプロドラッグは、例えば、ジスルフィド結合を介して代替軽鎖(SLC)またはその断片と連結されてよい。リンカー分子または架橋剤は、SLCまたはその断片と反応することができる反応性化学基を含む。代替軽鎖との反応のための反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルであってよい。加えて、リンカー分子は、薬物と反応してジスルフィド結合を形成することができるジチオピリジル基であってよい反応性化学基を含む。リンカー分子としては、例えば、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例えば、Carlsson et al., Biochem. J., 173: 723-737 (1978)、を参照)、N−スクシンイミジル 4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例えば、米国特許第4,563,304号、を参照)、N−スクシンイミジル 4−(2−ピリジルジチオ)−2−スルホブタノエート(スルホ−SPDB)(米国特許出願公開第20090274713号、を参照)、N−スクシンイミジル 4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例えば、CAS登録番号341498−08−6、を参照)、2−イミノチオラン、または無水アセチルコハク酸が挙げられる。例えば、SLCまたはその断片は、架橋性試薬で修飾されてよく、遊離または保護チオール基を含有する得られたSLCまたはその断片は、次に、ジスルフィドまたはチオール含有マイタンシノイドと反応されて、コンジュゲートが生成される。コンジュゲートは、HPLC、サイズ排除、吸着、イオン交換、および親和性捕捉(affinity capture)を含むがこれらに限定されないクロマトグラフィ、透析、またはタンジェンシャルフローろ過によって精製され得る。
【0134】
本発明の別の態様では、代替軽鎖(SLC)またはその断片は、コンジュゲートの効力、溶解性、または有効性を向上させる場合、ジスルフィド結合、およびポリエチレングリコールスペーサーを介して細胞傷害薬と連結される。そのような開裂性親水性リンカーは、WO2009/0134976に記載されている。このリンカー設計の追加の有益性は、所望される高いモノマー比および最小限であるコンジュゲートの凝集である。本態様にて具体的に考察されるのは、SLCまたはその断片のコンジュゲートであり、ジスルフィド結合(−S−S−)を持つポリエチレングリコールスペーサー((CH
2CH
2O)
n=1−14)を介して、2−8の狭い範囲の薬物ロードで連結された薬物は、癌細胞に対して比較的高い効力の生物活性を示し、ならびに高いコンジュゲーション率、および最小限のタンパク質凝集での高いモノマー比という所望される生化学的特性を有すると報告されている。
【0135】
非開裂性リンカーによる結合分子コンジュゲートも作製することができる。そのような架橋剤は、本技術分野にて報告されており(米国特許出願公開第20050169933号を参照)、これに限定されないが、N−スクシンイミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)が挙げられる。ある実施形態では、代替軽鎖(SLC)またはその断片は、文献に記載のように、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スルホ−SMCC、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スルホ−MBS、またはスクシンイミジル−ヨードアセテートなどの架橋性試薬で修飾されて、1−10個の反応性基が導入される(Yoshitake et al, Eur. J. Biochem., 101:395-399 (1979);Hashida et al, J. Applied Biochem., 56-63 (1984);およびLiu et al, Biochem., 18:690-697 (1979))。この修飾SLCまたはその断片は、次に、チオール含有マイタンシノイド誘導体と反応されて、コンジュゲートが生成される。コンジュゲートは、Sephadex G25カラムを通したゲルろ過によって、または透析もしくはタンジェンシャルフローろ過によって精製され得る。この修飾結合分子は、チオール含有マイタンシノイド(1から2モル当量/マレイミド基)で処理され、コンジュゲートは、Sephadex G−25カラムを通したゲルろ過、セラミックヒドロキシアパタイトカラム上でのクロマトグラフィ、透析、もしくはタンジェンシャルフローろ過、またはこれらの方法の組み合わせによって精製される。通常、結合分子あたり平均で1−10のマイタンシノイドが連結される。1つの方法は、SLCまたはその断片を、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)で修飾してマレイミド基を導入し、続いて修飾SLCまたはその断片をチオール含有マイタンシノイドと反応させて、チオエーテル連結コンジュゲートを得る。ここでも、結合分子あたり1から10個の薬物分子を持つコンジュゲートが得られる。
【0136】
本発明の別の態様では、代替軽鎖(SLC)またはその断片は、非開裂性結合を介し、PEGスペーサーの仲介を通して薬物と連結される。薬物とSLCまたはその断片との間のリンカーを形成する親水性PEG鎖を含む適切な架橋性試薬も、本技術分野にて公知であり、または市販されている(例えば、クアンタバイオデザイン(Quanta Biodesign),パウエル,オハイオ州から)。適切なPEG含有架橋剤は、市販のPEG自体から、当業者に公知の標準的な合成化学技術を用いて合成することもできる。薬物を、米国特許出願公開20090274713およびWO2009/0134976に詳細に記載される方法により、二官能性PEG含有架橋剤と反応させて、以下の式、Z−X
1−(−CH
2−CH
2−O−)
n−Y
p−Dの化合物を得ることができ、次にこれをSLCまたはその断片と反応させて、コンジュゲートを得ることができる。
【0137】
別の選択肢として、細胞結合を、二官能性PEG架橋剤によってチオール反応性基(マレイミドまたはハロアセトアミドなど)を導入して修飾してすることができ、これを次に、チオール含有マイタンシノイドで処理して、コンジュゲートを得ることができる。別の方法では、細胞結合を、二官能性PEG架橋剤によってチオール部分を導入して修飾することができ、次にこれを、チオール反応性マイタンシノイド(マレイミドまたはハロアセトアミドを持つマイタンシノイドなど)で処理して、コンジュゲートを得ることができる。
【0138】
本発明は、マイタンシノイドを例とする約2から約8個の薬物分子(「薬物ロード」)が代替軽鎖(SLC)またはその断片と連結されている態様を含み、このコンジュゲートの抗腫瘍効果は、同じSLCまたはその断片と連結された薬物の数がそれよりも少ないまたは多い薬物充填の場合と比較して、非常により効果的である。本明細書で用いられる場合、「薬物ロード」とは、結合分子(例:SLCまたはその断片)と結合することができる薬物分子(例:マイタンシノイド)の数を意味する。1つの態様では、細胞結合剤と結合することができる薬物分子の数は、平均で約2から約8個であり得る(例:1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1)。N
2’−デアセチル−N
2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン(DM1)およびN
2’−デアセチル−N
2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)マイタンシン(DM4)が用いられ得る。
【0139】
代替軽鎖(SLC)またはその断片は、二官能性架橋性試薬をSLCまたはその断片と反応させることによって修飾することができ、それによって、リンカー分子のSLCまたはその断片への共有結合が得られる。本明細書で用いられる場合、「二官能性架橋性試薬」は、SLCまたはその断片を本明細書で述べる薬物などの薬物へ共有結合で連結させるいずれかの化学部分である。別の方法では、連結部分の一部が、薬物によって提供される。この場合、薬物は、SLCまたはその断片を薬物へ結合させるために用いられるより大きいリンカー分子の一部である連結部分を含む。例えば、マイタンシノイド DM1を形成するためには、マイタンシンのC−3ヒドロキシル基における側鎖が、遊離スルフヒドリル基(SH)を有するように修飾される。このマイタンシンのチオール化した形態は、修飾されたSLCまたはその断片と反応させて、コンジュゲートを形成することができる。従って、最終的なリンカーは、2つの構成成分、1つは、架橋性試薬によって提供されるもの、他方は、DM1からの側鎖によって提供されるもの、から組み立てられる。
【0140】
薬物分子はまた、血清アルブミンなどの仲介キャリア分子を通して、代替軽鎖(SLC)またはその断片と連結することもできる。
【0141】
本明細書で用いられる場合、「代替軽鎖またはその断片と連結される」または「SLCまたはその断片と連結される」の表現は、適切な連結基またはその前駆体を介してSLCまたはその断片と結合された少なくとも1つの薬物誘導体を含む結合分子コンジュゲートを意味する。1つの連結基は、SMCCである。
【0142】
ある実施形態では、本発明にて有用である細胞傷害剤は、マイタンシノイドおよびマイタンシノイド類似体である。適切なマイタンシノイドの例としては、マイタンシノールおよびマイタンシノール類似体のエステルが挙げられる。マイタンシノールおよびマイタンシノール類似体のように、微小管形成を阻害する、および哺乳類細胞に対して毒性が高いいずれの薬物をも含まれる。
【0143】
適切なマイタンシノールエステルの例としては、修飾された芳香族環を有するもの、およびその他の位置における修飾を有するものが挙げられる。そのような適切なマイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;同第4,256,746号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,362,663号;同第4,364,866号;同第4,450,254号;同第4,322,348号;同第4,371,533号;同第5,208,020号;同第5,416,064号;同第5,475,092号;同第5,585,499号;同第5,846,545号;同第6,333,410号;同第7,276,497号、および同第7,473,796号に開示されている。
【0144】
ある実施形態では、本発明の結合分子コンジュゲートは、チオール含有マイタンシノイド(DM1)、正式名称N
2’−デアセチル−N
2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン;チオール含有マイタンシノイド N
2’−デアセチル−N
2’(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(例:DM4);または立体障害チオール結合を含有する側鎖を含むマイタンシノイドはN
2’−デアセチル−N
2’(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(DM3と称される)を細胞傷害剤として利用する。
【0145】
米国特許第5,208,020号および同第7,276,497号に教示されるマイタンシノイドの各々も、本発明のコンジュゲートに用いられ得る。これに関して、第5,208,020号および第7,276,697号の全開示事項は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
マイタンシノイド上の多くの位置が、連結部分を化学的に連結するための位置として用いられ得る。例えば、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシで修飾されたC−15位、およびヒドロキシ基を有するC−20位はすべて、有用であることが期待される。ある実施形態では、C−3位が、連結部分を化学的に連結するための位置として作用し、ある特定の実施形態では、マイタンシノールのC−3位が、連結部分を化学的に連結するための位置として用いられる。
【0147】
そのようなポリペプチド−マイタンシノイドコンジュゲートを作製するためのいくつかの記述が、米国特許第6,333,410号、同第6,441,163号、同第6,716,821号、および同第7,368,565号に提供されており、これらの各々は、その全内容について参照により本明細書に組み込まれる。
【0148】
一般的に、代替軽鎖(SLC)またはその断片を水性緩衝液中に含有する溶液が、反応性基を持つジスルフィド部分を有するモル過剰のマイタンシノイドと共にインキュベートされ得る。この反応混合物は、過剰アミン(エタノールアミン、タウリンなど)の添加によって反応停止され得る。次に、マイタンシノイドコンジュゲートは、ゲルろ過によって精製され得る。
【0149】
結合分子あたりの結合したマイタンシノイド分子の数は、252nmおよび280nmにおける吸光度の比を分光測定することによって決定することができる。マイタンシノイド/結合分子の平均数は、例えば、1−10または2−5であり得る。
【0150】
アントラサイクリン化合物、ならびにその誘導体、中間体、および修飾形態も、本発明の結合分子の作製に用いられ得る。例えば、ドキソルビシン、ドキソルビシン誘導体、ドキソルビシン中間体、および修飾ドキソルビシンは、結合分子コンジュゲートに用いられ得る。代表的な化合物は、その全内容が、参照により本明細書に組み込まれるWO2010/009124に記載されている。
【0151】
代替軽鎖(SLC)またはその断片をマイタンシノイドまたはその他の薬物と共に含むコンジュゲートは、様々な不要な細胞株の増殖を抑制する能力について生体外で評価され得る。例えば、NCI−H226、NCI−H292、およびNCI−H322Mなどの細胞株は、これらの化合物の細胞傷害性の評価において容易に用いられ得る。評価される細胞は、コンジュゲートに4から5日間暴露され、細胞の生存画分が公知の方法による直接アッセイで測定され得る。次に、このアッセイの結果から、IC
50値が算出され得る。
【0152】
マイタンシノイドと結合分子との間に非開裂性リンカーを形成する好ましい架橋性試薬は、マレイミド系またはハロアセチル系部分を含む。本発明によると、そのような非開裂性リンカーは、マレイミド系またはハロアセチル系部分に由来するとされる。マレイミド系部分を含む架橋性試薬としては、N−スクシンイミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)、これはSMCCの「長鎖」類似体(LC−SMCC)、κ−マレイミドウンデカン酸 N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸 N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル[AMAS]、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、およびN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が挙げられる。これらの架橋性試薬は、マレイミド系部分に由来する非開裂性リンカーを形成する。
【0153】
ハロアセチル系部分を含む架橋性試薬としては、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジル ヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジル ブロモアセテート(SBA)、およびN−スクシンイミジル 3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。これらの架橋性試薬は、ハロアセチル系部分に由来する非開裂性リンカーを形成する。
【0154】
本発明での使用に適する追加の薬剤およびリンカーは、米国特許出願第20120156217号;米国特許第8198417号;および米国特許出願第20120294853号に提供されており、これらの全開示事項は、その全内容について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
<Surrobody−薬物コンジュゲート化合物>
本発明は、とりわけ、薬物の標的化送達のための結合分子−薬物コンジュゲートを提供する。発明者らは、代替軽鎖(SLC)またはその断片を含む結合分子−薬物コンジュゲートが、強力な細胞傷害活性、血清安定性、薬物結合の高いパーセント、および濃縮後の凝集の低減が挙げられるがこれらに限定されない有利な治療特性を有することを見出した。
【0156】
1つの態様では、コンジュゲートは、少なくとも1つの薬物ユニットと共有結合で連結されたSLCユニットを含む。薬物ユニットの共有結合による連結は、直接であっても、またはリンカーユニット(−L−)を介してであってもよい。ある実施形態では、コンジュゲートは、以下の式を有する:
SLC−(L−D)
p (I)
またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物;式中:
SLCは、代替軽鎖またはその断片のユニットであり、ならびに
(L−D)は、リンカーユニット−薬物ユニット部分であり、ここで:
L−は、リンカーユニットであり、および
Dは、薬物ユニットであり;ならびに
pは、1から約20の整数である。
【0157】
ある実施形態では、pは、1から10、1から9、1から8、1から7、1から6、1から5、1から4、1から3、または1から2の範囲である。ある実施形態では、pは、2から10、2から9、2から8、2から7、2から6、2から5、2から4、または2から3の範囲である。他の実施形態では、pは、1、2、3、4、5、または6である。ある実施形態では、pは、2または4である。
【0158】
ある実施形態では、コンジュゲートは、以下の式を有する:
SLC−(A
a−W
w−Y
y−D)
p (II)
またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物;
式中:
SLCは、代替軽鎖またはその断片のユニットであり、ならびに
−A
a−W
w−Y
y−は、リンカーユニット(LU)であり、ここで:
−A−は、ストレッチャーユニットであり、
aは、0または1であり、
各−W−は、独立して、アミノ酸ユニットであり、
wは、0から12の範囲の整数であり、
−Y−は、自己犠牲(self-immolative)スペーサーユニットであり、
yは、0、1、または2であり;
−Dは、薬物ユニットであり;ならびに
pは、1から約20の整数である。
【0159】
ある実施形態では、aは、0または1であり、wは、0または1であり、およびyは、0、1、または2である。ある実施形態では、aは、0または1であり、wは、0または1であり、およびyは、0または1である。ある実施形態では、pは、1から10、1から9、1から8、1から7、1から6、1から5、1から4、1から3、または1から2の範囲である。ある実施形態では、pは、2から8、2から7、2から6、2から5、2から4、または2から3の範囲である。他の実施形態では、pは、1、2、3、4、5、または6である。ある実施形態では、pは、2または4である。ある実施形態では、wがゼロではない場合、yは、1または2である。ある実施形態では、wが1から12である場合、yは、1または2である。ある実施形態では、wは、2から12であり、yは、1または2である。ある実施形態では、aは、1であり、wおよびyは、0である。
【0160】
薬物ロードは、pで表され、SLCまたはその断片を含む結合分子あたりの薬物分子の平均数である。薬物ロードは、結合分子あたり1から20個の薬物(D)の範囲であり得る。コンジュゲーション反応の調製における結合分子あたりの薬物分子の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、およびHPLCなどの従来の手段によって特性決定され得る。pに関するコンジュゲートの定量的分布についても、特定され得る。いくつかの例では、pが特定の値である均質なコンジュゲートを、他の薬物ロードであるコンジュゲートから分離、精製、および特性決定することが、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成され得る。代表的な実施形態では、pは、2から8である。
【0161】
結合分子−薬物コンジュゲートの作製は、当業者に公知のいかなる技術で行われてもよい。簡潔に述べると、コンジュゲート化合物は、SLCユニットとして代替軽鎖(SLC)またはその断片を有する結合分子、薬物を含み、所望に応じて、薬物と結合分子とを結合するリンカーを含んでよい。薬物および/またはリンカーの結合剤への共有結合のために、いくつかの異なる反応が利用可能である。これは、多くの場合、リジンのアミン基、グルタミン酸およびアスパラギン酸の遊離カルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、ならびに芳香族アミノ酸の種々の部分を含むSLCまたはその断片を例とする結合分子のアミノ酸残基の反応によって達成される。最も一般的に用いられる共有結合の非特異的方法の1つは、化合物のカルボキシ(またはアミノ)基をポリペプチド分子のアミノ(またはカルボキシ)基と連結させるカルボジイミド反応である。加えて、ジアルデヒドまたはイミドエステルなどの二官能性剤が、化合物のアミノ基をポリペプチド分子のアミノ基と連結させるために用いられてきた。シッフ塩基反応も、薬物の結合剤への結合のために利用可能である。この方法は、グリコールまたはヒドロキシ基を含有する薬物の過ヨウ素酸酸化を含み、それによってアルデヒドが形成され、次にこれが、結合分子と反応される。結合は、結合分子のアミノ基とのシッフ塩基の形成を介して発生する。イソチオシアネートも、薬物を結合分子へ共有結合させるためのカップリング剤として用いられ得る。その他の技術は、当業者に公知であり、本発明の範囲内である。
【0162】
ある実施形態では、リンカーの前駆体である中間体が、適切な条件下にて薬物と反応される。ある実施形態では、薬物および/または中間体上の反応性基が用いられる。薬物と中間体との間の反応の生成物、または誘導体化薬物は、続いて、適切な条件下にて、結合分子と反応される。
【0163】
コンジュゲート化合物の特定のユニットの各々について、本明細書にてより詳細に記載される。代表的なリンカーユニット、ストレッチャーユニット、アミノ酸ユニット、自己犠牲スペーサーユニット、および薬物ユニットの合成および構造は、米国特許出願公開第2003−0083263号、同第2005−0238649号、および同第2005−0009751号にも記載されており、これらの各々は、全内容について、あらゆる点で参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
<リンカーユニット>
通常、結合分子−薬物コンジュゲートは、薬物ユニットとSLCユニットとの間にリンカー領域を含む。ある実施形態では、リンカーは、リンカーの開裂による結合分子からの薬物ユニットの放出が細胞内環境中にて行われるように、細胞内条件下にて開裂性である。なお他の実施形態では、リンカーユニットは、開裂性ではなく、薬物は、例えば、結合分子の分解によって放出される。
【0165】
ある実施形態では、リンカーは、細胞内環境中に存在する開裂剤によって開裂可能である(例:リソソーム、またはエンドソーム、またはカベオラ内)。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されない細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素によって開裂されるペプチジルリンカーであってよい。ある実施形態では、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長、または少なくとも3アミノ酸長である。開裂剤は、カテプシンBおよびD、ならびにプラスミンを挙げることができ、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して、標的細胞の内部での活性薬物の放出をもたらすことが知られている(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123、を参照)。最も典型的であるのは、細胞中に存在する酵素によって開裂可能であるペプチジルリンカーである。例えば、癌性組織中で高く発現されるチオール依存性プロテアーゼであるカテプシン−Bによって開裂可能であるペプチジルリンカーが用いられ得る(Phe−LeuまたはGly−Phe−Leu−Glyリンカー(配列番号51))。そのようなリンカーのその他の例は、例えば、その全内容があらゆる点で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,214,345号に記載されている。具体的な実施形態では、細胞内プロテアーゼによって開裂可能であるペプチジルリンカーは、Val−CitリンカーまたはPhe−Lysリンカーである(例えば、val−citリンカーを有するドキソルビシンの合成について記載した米国特許第6,214,345号を参照)。治療剤の細胞内タンパク質分解放出を用いることの1つの利点は、結合されることで治療剤が減弱され、コンジュゲートの血清安定性が通常は高いということである。
【0166】
他の実施形態では、開裂性リンカーは、pH感受性であり、すなわち、特定のpH値での加水分解に感受性を有する。通常、pH感受性リンカーは、酸性条件下にて加水分解可能である。例えば、リソソーム中にて加水分解可能である酸解離性リンカー(例:ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス−アコニット酸アミド、オルソエステル、アセタール、ケタールなど)が用いられ得る(例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123;Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661、を参照)。そのようなリンカーは、血液中の条件などの中性pH条件下にて比較的安定であるが、リソソームのおよそのpHである5.5または5.0よりも低いpHでは不安定である。ある実施形態では、加水分解性リンカーは、チオエーテルリンカーである(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤と結合したチオエーテルなど(例えば、米国特許第5,622,929号を参照)。
【0167】
なお他の実施形態では、リンカーは、還元性条件下にて開裂性である(例:ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーが本技術分野にて公知であり、例えば、SATA(N−スクシンイミジル−5−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)、およびSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)−、SPDB、およびSMPTを用いて形成され得るものが挙げられる(例えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931;Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987、を参照されたい。また、米国特許第4,880,935号も参照されたい)。
【0168】
なお他の具体的な実施形態では、リンカーは、マロネートリンカー(Johnson et al., 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、または3’−N−アミド類似体(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)である。
【0169】
なお他の実施形態では、リンカーユニットは、開裂性ではなく、薬物は、分解によって放出される(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050238649号を参照)。
【0170】
通常、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性を持たない。本明細書で用いられる場合、リンカーに関して「細胞外環境に対して実質的に感受性を持たない」とは、結合分子−薬物コンジュゲートが細胞外環境中(例:血漿中)に存在する場合、結合分子−薬物コンジュゲートのサンプル中のリンカーの約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、さらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下が開裂されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性を持たないかどうかの判定は、例えば、コンジュゲートを血漿と共に所定の時間(例:2、4、8、16、または24時間)にわたってインキュベートし、次に、血漿中に存在する遊離薬物の量を定量することによって行うことができる。
【0171】
本発明の組成物および方法と共に用いることができる様々な代表的リンカーは、WO2004−010957、米国特許出願公開第20060074008号、米国特許出願公開第20050238649号、および米国特許出願公開第20060024317号に記載されている(これらの各々は、その全内容について参照により本明細書に組み込まれる)。
【0172】
「リンカーユニット」(LU)は、薬物ユニットとSLCユニットとを連結して結合分子−薬物コンジュゲートを形成するために用いることができる二官能性化合物である。ある実施形態では、リンカーユニットは、以下の式を有する:
−A
a−W
w−Y
y−
ここで:−A−は、ストレッチャーユニットであり、
aは、0または1であり、
各−W−は、独立して、アミノ酸ユニットであり、
wは、0から12の範囲の整数であり、
−Y−は、自己犠牲スペーサーユニットであり、および
yは、0、1、または2である。
【0173】
ある実施形態では、aは、0または1であり、wは、0または1であり、およびyは、0、1、または2である。ある実施形態では、aは、0または1であり、wは、0または1であり、およびyは、0または1である。ある実施形態では、wが1から12である場合、yは、1または2である。ある実施形態では、wは、2から12であり、yは、1または2である。ある実施形態では、aは、1であり、wおよびyは、0である。
【0174】
<ストレッチャーユニット>
存在する場合、ストレッチャーユニット(A)は、SLCユニットを、アミノ酸ユニット(−W−)と、存在する場合、スペーサーユニット(−Y−)と、存在する場合、薬物ユニット(−D)と連結する能力を有する。自然に、または化学的処理を介して結合分子上に存在してよい有用な官能基としては、これらに限定されないが、スルフヒドリル、アミノ、ヒドロキシル、炭水化物のアノマーヒドロキシル基、およびカルボキシルが挙げられる。適切な官能基は、スルフヒドリルおよびアミノである。1つの例では、スルフヒドリル基は、Surrobody(商標)を例とする結合分子の分子内ジスルフィド結合の還元によって生成され得る。別の実施形態では、スルフヒドリル基は、代替軽鎖(SLC)またはその断片のリジン部分のアミノ基と2−イミノチオラン(トラウト試薬(Traut's reagent))またはその他のスルフヒドリル生成試薬との反応によって生成され得る。ある実施形態では、結合分子は、Surrobody(商標)であり、1つ以上のリジンを持つように操作される。特定の他の実施形態では、Surrobody(商標)は、追加のシステインを例とする追加のスルフヒドリル基を持つように改変される。
【0175】
1つの実施形態では、ストレッチャーユニットは、SLCユニットの硫黄原子と結合を形成する。硫黄原子は、SLCまたはその断片のスルフヒドリル基由来のものであり得る。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20120294853号に示されている。明確に示されていない場合であっても、1から20個の薬物部分がリガンドに連結され得ることは、すべての代表的な実施形態から理解されたい(p=1−20)。ある実施形態では、ストレッチャーユニットは、リガンドユニットの硫黄原子とストレッチャーユニットの硫黄原子との間のジスルフィド結合を介してリガンドユニットと連結されている。なお他の実施形態では、ストレッチャーは、リガンドの一級または二級アミノ基と結合を形成し得る反応性部位を含有する。これらの反応性部位の例としては、これらに限定されないが、スクシンイミドエステル、4 ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアネート、およびイソチオシアネートなどの活性化エステルが挙げられる。[0293]ある実施形態では、ストレッチャーは、リガンド上に存在し得る修飾された炭水化物の(−CHO)基に対して反応性である反応性部位を含有する。例えば、炭水化物は、過ヨウ素酸ナトリウムなどの試薬を用いて緩やかに酸化されてよく、酸化された炭水化物の得られた(−CHO)ユニットが、Kaneko et al., 1991, Bioconjugate Chem. 2:133-41に記載のものなど、ヒドラジド、オキシム、一級もしくは二級アミン、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドなどの官能基を含有するストレッチャーと縮合されてよい。
【0176】
<アミノ酸ユニット>
アミノ酸ユニット(−W−)は、存在する場合、ストレッチャーユニットを、スペーサーユニットが存在する場合は、スペーサーユニットと連結し、ストレッチャーユニットを、スペーサーユニットが存在しない場合は、薬物部分と連結し、ストレッチャーユニットおよびスペーサーユニットが存在しない場合は、リガンドユニットを薬物ユニットと連結する。−W
w−は、例えば、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチド、またはドデカペプチドユニットであってよい。ある実施形態では、アミノ酸ユニットは、癌または腫瘍関連プロテアーゼを含む1つ以上の酵素によって酵素開裂されて薬物ユニット(−D)を遊離させてよく、これは、1つの実施形態では、放出後に生体内でプロトン化され、薬物(D)を提供する。ある実施形態では、アミノ酸ユニットは、天然アミノ酸を含んでよい。他の実施形態では、アミノ酸ユニットは、非天然アミノ酸を含んでよい。有用な−W
w−ユニットは、特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、による酵素開裂に対する選択性について設計、最適化されてよい。1つの実施形態では、−W
w−ユニットは、その開裂が、カテプシンB、C、およびD、またはプラスミンプロテアーゼによって触媒されるユニットである。1つの実施形態では、−Wサブw−は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、またはペンタペプチドである。
【0177】
アミノ酸ユニットの1つの態様では、アミノ酸ユニットは、バリン−シトルリン(vcまたはval−cit)である。別の態様では、アミノ酸ユニットは、フェニルアラニン−リジン(すなわち、fk)である。アミノ酸ユニットのなお別の態様では、アミノ酸ユニットは、N−メチルバリン−シトルリンである。なお別の態様では、アミノ酸ユニットは、5−アミノ吉草酸、ホモフェニルアラニン リジン、テトライソキノリンカルボキシレート リジン、シクロヘキシルアラニン リジン、イソネペコチック酸(isonepecotic acid) リジン、ベータ−アラニン リジン、グリシン セリン バリン グルタミン(配列番号52)、およびイソネペコチック酸である。
【0178】
<スペーサーユニット>
スペーサーユニット(−Y−)は、存在する場合、アミノ酸ユニットが存在する場合は、アミノ酸ユニットを薬物ユニットと連結する。別の選択肢として、スペーサーユニットは、アミノ酸ユニットが存在しない場合は、ストレッチャーユニットを薬物ユニットと連結する。スペーサーユニットはまた、アミノ酸ユニットおよびストレッチャーユニットの両方が存在しない場合は、薬物ユニットをリガンドユニットと連結する。スペーサーユニットには、非自己犠牲型(non self-immolative)または自己犠牲型(self-immolative)の2つの一般的な種類が存在する。非自己犠牲型スペーサーユニットとは、リガンド−薬物コンジュゲートからのアミノ酸ユニットの開裂後、特には酵素開裂後に、スペーサーユニットの一部またはすべてが、薬物部分と結合状態を維持するものである。非自己犠牲型スペーサーユニットの例としては、これらに限定されないが、(グリシン−グリシン)スペーサーユニットおよびグリシンスペーサーユニットが挙げられる。グリシン−グリシンスペーサーユニットまたはグリシンスペーサーユニットを含有するコンジュゲートが、酵素(例:腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼ、またはリンパ球関連プロテアーゼ)を介する酵素開裂を起こす場合、グリシン−グリシン−薬物部分またはグリシン−薬物部分が、L−Aa−Ww−から開裂される。1つの実施形態では、標的細胞内にて独立した加水分解反応が起こり、グリシン−薬物部分の結合が開裂し、薬物が遊離される。
【0179】
ある実施形態では、非自己犠牲型スペーサーユニット(−Y−)は、−Gly−である。ある実施形態では、非自己犠牲型スペーサーユニット(−Y−)は、−Gly−Gly−である。
【0180】
1つの実施形態では、スペーサーユニットが存在しない(y=0)薬物−リンカーコンジュゲート、またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0181】
別の選択肢として、自己犠牲型スペーサーユニットを含有するコンジュゲートが、−Dを放出し得る。本明細書で用いられる場合、「自己犠牲型スペーサー」の用語は、間隔の空いた2つの化学部分を一緒に共有結合で連結して安定な三連分子(tripartite molecule)とする能力を有する二官能性化学部分を意味する。それは、第一の部分とのその結合が開裂されると、第二の化学部分から自発的に分離する。
【0182】
ある実施形態では、−Y
y−は、そのフェニレン部分がQ
mで置換されたp−アミノベンジルアルコール(PAB)ユニットであり、ここで、Qは、−C
1−C
8アルキル、−C
1−C
8アルケニル、−C
1−C
8アルキニル、−O−(C
1−C
8アルキル)、−O−−(C
1−C
8アルケニル)、−O−(C
1−C
8アルキニル)、−ハロゲン、−ニトロ、または−シアノであり;mは、0−4の範囲の整数である。アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、単独であっても、または別の基の一部としてであっても、所望に応じて、本明細書で定めるA1で置換されてよい。
【0183】
ある実施形態では、−Y−は、PAB基のアミノ窒素原子を介して−W
w−と連結され、カーボネート、カルバメート、またはエーテル基を介して−Dと直接結合されたPAB基である。
【0184】
自己犠牲型スペーサーのその他の例としては、これらに限定されないが、PAB基と電子的に類似する芳香族化合物が挙げられ、2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(Hay et al., 1999, Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)およびオルソまたはパラ−アミノベンジルアセタールなどである。アミド結合の加水分解時に環化を起こすスペーサーが用いられてよく、置換および無置換の4−アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al., 1995, Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al., 1972, J. Amer. Chem. Soc. 94:5815)、ならびに2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al., 1990, J. Org. Chem. 55:5867)などである。グリシンのα位で置換されたアミン含有薬物の脱離も(Kingsbury et al., 1984, J. Med. Chem. 27:1447)、自己犠牲型スペーサーの例である。
【0185】
ある実施形態では、−D部分は同じである。なお別の実施形態では、−D部分は異なっている。
【0186】
<薬物ユニット>
薬物部分(D)は、いかなる細胞傷害剤、細胞分裂阻害剤、もしくは免疫調節剤(例:免疫抑制剤)、または薬物であってもよい。Dは、スペーサーユニットと、アミノ酸ユニットと、ストレッチャーユニットと、またはリガンドユニットと結合を形成し得る原子を有する薬物ユニット(部分)である。ある実施形態では、薬物ユニットDは、スペーサーユニットと結合を形成し得る窒素原子を有する。本明細書で用いられる場合、「薬物ユニット」および「薬物部分」の用語は、同義であり、交換可能に用いられる。
【0187】
細胞傷害剤または免疫調節剤の有用なクラスとしては、例えば、抗チューブリン剤、オーリスタチン、DNA副溝バインダー、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例:シス−プラチン、モノ(白金)、ビス(白金)、および三核白金複合体、ならびにカルボプラチンなどの白金複合体)、アントラサイクリン、抗生物質、葉酸代謝拮抗剤、抗代謝剤、化学療法増感剤(chemotherapy sensitizer)、デュオカルマイシン、カンプトテシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノール、プレフォーミング化合物(pre-forming compound)、プリン抗代謝剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが挙げられる。
【0188】
個別の細胞傷害剤または免疫調節剤としては、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カリチアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、デカルバジン、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エストロゲン、5−フルオルデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラミシジンD、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、マイタンシン、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、パリトキシン、プリカマイシン、プロカルビジン、リゾキシン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオTEPA、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16、およびVM−26が挙げられる。
【0189】
ある典型的な実施形態では、適切な細胞傷害剤としては、例えば、DNA副溝バインダー(例:エンジインおよびレキシトロプシン、CBI化合物;米国特許第6,130,237号も参照)、デュオカルマイシン、タキサン(例:パクリタキセルおよびドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、ネトロプシン、エポチロンAおよびB、エストラムスチン、クリプトフィシン(cryptophysins)、セマドチン、マイタンシノイド、ディスコデルモリド、エリュテロビン、ならびにミトキサントロンが挙げられる。
【0190】
ある実施形態では、薬物は、抗チューブリン剤である。抗チューブリン剤の例としては、これらに限定されないが、オーリスタチン、タキサン(例:Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、Taxotere(登録商標)(ドセタキセル))、T67(トゥラリク(Tularik))、およびビンカアルキロイド(vinca alkyloids)(例:ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)が挙げられる。その他の抗チューブリン剤としては、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例:エポチロンAおよびB)、ノコダゾール、コルヒチン、およびコルシミド(colcimid)、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ディスコデルモリド、ならびにエリュテロビンが挙げられる。
【0191】
ある実施形態では、細胞傷害剤は、抗チューブリン剤の別の群であるマイタンシノイドである。例えば、具体的な実施形態では、マイタンシノイドは、マイタンシンまたはDM−1(イムノゲン社(ImmunoGen, Inc.);Chari et al., 1992, Cancer Res. 52:127-131も参照)である。
【0192】
ある実施形態では、薬物は、オーリスタチンE(本技術分野にてドラスタチン−10の誘導体としても知られる)またはその誘導体などのオーリスタチンである。通常、オーリスタチンE誘導体は、例えば、オーリスタチンEとケト酸との間で形成されるエステルである。例えば、オーリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応されて、それぞれ、AEBおよびAEVBを生成し得る。その他の典型的なオーリスタチン誘導体としては、AFP、MMAF、およびMMAEが挙げられる。オーリスタチン誘導体の合成および構造は、米国特許出願公開第2003−0083263号、同第2005−0238649号、および同第2005−0009751号;国際特許出願公開番号WO04/010957、国際特許出願公開番号WO02/088172、ならびに米国特許第6,323,315号;同第6,239,104号;同第6,034,065号;同第5,780,588号;同第5,665,860号;同第5,663,149号;同第5,635,483号;同第5,599,902号;同第5,554,725号;同第5,530,097号;同第5,521,284号;同第5,504,191号;同第5,410,024号;同第5,138,036号;同第5,076,973号;同第4,986,988号;同第4,978,744号;同第4,879,278号;同第4,816,444号;および同第4,486,414号に記載されており、これらの各々は、これらの全内容について参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
オーリスタチンは、微小管動態、ならびに核および細胞分裂に干渉し、抗癌活性を有することが示されている。本発明のオーリスタチンは、チューブリンと結合し、細胞に対して細胞傷害または細胞分裂阻害効果を及ぼし得る。オーリスタチンまたは得られた結合分子−薬物コンジュゲートが、所望される細胞株に対して細胞分裂阻害または細胞傷害効果を及ぼすかどうかを特定するために用いられ得る本技術分野にて公知の種々のアッセイがいくつか存在し、例えば実施例4を参照されたい。
【0194】
化合物がチューブリンと結合するかどうかを特定するための方法は、本技術分野にて公知である。例えば、Muller et al., Anal. Chem. 2006, 78, 4390-4397;Hamel et al., Molecular Pharmacology, 1995 47: 965-976;およびHamel et al., The Journal of Biological Chemistry, 1990 265:28, 17141-17149、を参照されたい。本発明の目的のために、化合物のチューブリンに対する相対的親和性が特定され得る。本発明のいくつかの好ましいオーリスタチンは、MMAEのチューブリンに対する結合親和性よりも10倍低い親和性(より弱い親和性)から、MMAEのチューブリン(tublin)に対する結合親和性よりも10倍、20倍、またはさらには100倍高い親和性(より高い親和性)の範囲の親和性でチューブリンと結合する。または、誘導体化された薬物が、続いて適切な条件下にて結合分子と反応される。
【0195】
結合分子−薬物コンジュゲートの特定のユニットの各々は、本明細書にてより詳細に記載される。代表的なリンカーユニット、ストレッチャーユニット、アミノ酸ユニット、自己犠牲型スペーサーユニット、および薬物ユニットの合成ならびに構造は、米国特許出願公開第2003−0083263号、同第2005−0238649号、および同第2005−0009751号にも記載されており、これらの各々は、その全内容について、あらゆる点で参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
ある実施形態では、薬物は、抗代謝剤である。抗代謝剤は、例えば、プリンアンタゴニスト(例:アゾチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤(例:メトトレキサート)、アシクロビル、ガングシクロビル(gangcyclovir)、ジドブジン、ビダラビン、リババリン(ribavarin)、アジドチミジン、シチジン、アラビノシド、アマンタジン、ジデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、ポスカルネット(poscarnet)、またはトリフルリジンであってよい。
【0197】
他の実施形態では、薬物は、タクロリムス、シクロスポリン、またはラパマイシンである。さらなる実施形態では、薬物は、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、ベキサロテン、ベキサロテン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、クラドリビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシレート、インターフェロンアルファ−2a、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミーソル、メクロレタミン(meclorethamine)またはナイトロジェンマスタード、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ナンドロロンフェンプロピオネート(nandrolone phenpropionate)、オプレルベキン、オキサリプラチン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロネートである。
【0198】
ある実施形態では、薬物部分は、免疫調節剤である。免疫調節剤は、例えば、ガンシクロビル、エタネルセプト、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、またはメトトレキサートであってよい。別の選択肢として、免疫調節剤は、例えば、糖質コルチコイド(例:コルチゾールまたはアルドステロン)、または糖質コルチコイド類似体(例:プレドニゾンまたはデキサメサゾン)であってよい。
【0199】
ある実施形態では、免疫調節剤は、抗炎症剤であり、アリールカルボン酸誘導体、ピラゾール含有誘導体、オキシカム誘導体、およびニコチン酸誘導体などである。抗炎症剤のクラスとしては、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、およびロイコトリエン受容体アンタゴニストが挙げられる。
【0200】
適切なシクロオキシゲナーゼ阻害剤としては、メクロフェナム酸、メフェナム酸、カプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、フェンブフェン、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナブメトン、ナプロキセン、スリンダク、テノキシカム、トルメチン、およびアセチルサリチル酸が挙げられる。
【0201】
適切なリポキシゲナーゼ阻害剤としては、酸化還元阻害剤(redox inhibitors)(例:カテコールブタン誘導体、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、マソプロコール、フェニドン(phenidone)、イアノパレン(Ianopalen)、インダゾリノン、ナファザトロム(naphazatrom)、ベンゾフラノール、アルキルヒドロキシルアミン)、および非酸化還元阻害剤(例:ヒドロキシチアゾール、メトキシアルキルチアゾール、ベンゾピランおよびその誘導体、メトキシテトラヒドロピラン、ボスウェル酸およびボスウェル酸のアセチル化誘導体、ならびにシクロアルキルラジカルで置換されたキノリンメトキシフェニル酢酸)、および酸化還元阻害剤の前駆体が挙げられる。
【0202】
その他の適切なリポキシゲナーゼ阻害剤としては、抗酸化剤(例:フェノール、没食子酸プロピル、フラボノイドおよび/またはフラボノイドを含有する天然の基質、フラボンのヒドロキシル化誘導体、フラボノール、ジヒドロケルセチン、ルテオリン、ガランギン、オロボール、カルコンの誘導体、4,2’,4’−トリヒドロキシカルコン、オルソ−アミノフェノール、N−ヒドロキシウレア、ベンゾフラノール、エブセレン、ならびに還元性セレン含有酵素の活性を高める種)、鉄キレート化剤(例:ヒドロキシアミド酸およびその誘導体、N−ヒドロキシウレア、2−ベンジル−1−ナフトール、カテコール、ヒドロキシルアミン、カルノソール トロロックスC、カテコール、ナフトール、スルファサラジン、ジロートン(zyleuton)、5−ヒドロキシアントラニル酸、および4−(オメガ−アリールアルキル)フェニルアルカン酸)、イミダゾール含有化合物(例:ケトコナゾールおよびイトラコナゾール)、フェノチアジン、ならびにベンゾピラン誘導体が挙げられる。
【0203】
なお他の適切なリポキシゲナーゼ阻害剤としては、エイコサノイドの阻害剤(例:オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサヘキサエン酸、およびドコサヘキサエン酸、ならびにこれらのエステル、PGE1(プロスタグランジンE1)、PGA2(プロスタグランジンA2)、ビプロストール、15−モノヒドロキシエイコサテトラエン酸、15−モノヒドロキシ−エイコサトリエン酸、および15−モノヒドロキシエイコサペンタエン酸、ならびにロイコトリエンB5、C5、およびD5)、カルシウム流に干渉する化合物、フェノチアジン、ジフェニルブチルアミン、ベラパミル、フスコシド(fuscoside)、クルクミン、クロロゲン酸、コーヒー酸、5,8,11,14−エイコサテトライン酸(5,8,11,14-eicosatetrayenoic acid)(ETYA)、ヒドロキシフェニルレチナミド、イオナパレン(Ionapalen)、エスクリン、ジエチルカルバマジン、フェナントロリン(phenantroline)、バイカレイン、プロキシクロミル(proxicromil)、チオエーテル、ジアリルスルフィド、およびジ−(1−プロペニル)スルフィドが挙げられる。
【0204】
ロイコトリエン受容体アンタゴニストとしては、カルシトリオール、オンタゾラスト(ontazolast)、Bayer Bay−x−1005、Ciba−Geigy CGS−25019C、エブセレン、Leo Denmark ETH−615、Lilly LY−293111、Ono ONO−4057、Terumo TMK−688、Boehringer Ingleheim BI−RM−270、Lilly LY 213024、Lilly LY 264086、Lilly LY 292728、Ono ONO LB457、Pfizer 105696、Perdue Frederick PF 10042、Rhone−Poulenc Rorer RP 66153、SmithKline Beecham SB−201146、SmithKline Beecham SB−201993、SmithKline Beecham SB−209247、Searle SC−53228、Sumitamo SM 15178、American Home Products WAY 121006、Bayer Bay−o−8276、Warner−Lambert CI−987、Warner−Lambert CI−987BPC−15LY 223982、Lilly LY 233569、Lilly LY−255283、MacroNex MNX−160、Merck and Co. MK−591、Merck and Co. MK−886、Ono ONO−LB−448、Purdue Frederick PF−5901、Rhone−Poulenc Rorer RG 14893、Rhone−Poulenc Rorer RP 66364、Rhone−Poulenc Rorer RP 69698、Shionoogi S−2474、Searle SC−41930、Searle SC−50505、Searle SC−51146、Searle SC−52798、SmithKline Beecham SK&F−104493、Leo Denmark SR−2566、Tanabe T−757、およびTeijin TEI−1338が挙げられる。
【0205】
ある実施形態では、細胞傷害剤または細胞分裂阻害剤は、ドラスタチンである。ある実施形態では、細胞傷害剤または細胞分裂阻害剤は、オーリスタチンのクラスのものである。従って、具体的な実施形態では、細胞傷害剤または細胞分裂阻害剤は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。
【0206】
薬物または結合分子−薬物コンジュゲートが、細胞に対して細胞分裂阻害および/または細胞傷害効果を及ぼすかどうかを特定する方法は公知である。一般的に、結合分子−薬物コンジュゲートの細胞傷害または細胞分裂阻害活性は、結合分子−薬物コンジュゲートの標的タンパク質を発現する哺乳類細胞を細胞培地中にて暴露すること;約6時間から約5日間の時間にわたって細胞を培養すること;および細胞の生存率を測定すること、によって測定され得る。生体外細胞アッセイを用いて、生存率(増殖)、細胞傷害性、およびコンジュゲートのアポトーシス誘発(カスパーゼ活性化)が測定され得る。
【0207】
結合分子−薬物コンジュゲートが、細胞分裂阻害効果を及ぼすかどうかを特定するために、チミジン取り込みアッセイ(thymidine incorporation assay)が用いられてよい。例えば、96ウェルプレートの5000細胞/ウェルの密度で蒔かれた標的抗原発現癌細胞が、72時間にわたって培養され、72時間のうちの最後の8時間に、
3H−チミジンの0.5μCiに暴露され得る。培養物の細胞中への
3H−チミジンの取り込みは、結合分子−薬物コンジュゲートの存在下および非存在下で測定される。
【0208】
細胞傷害性の特定には、ネクローシスまたはアポトーシス(プログラム細胞死)が測定され得る。ネクローシスは、通常、細胞膜の透過性の上昇、細胞の膨潤、および細胞膜の破壊を伴う。アポトーシスは、通常、膜のブレブ形成(blebbing)、細胞質の濃縮、および内在性エンドヌクレアーゼの活性化を特徴とする。癌細胞上でこれらの効果のいずれかが特定されることは、結合分子−薬物コンジュゲートが癌の治療に有用であることを示すものである。
【0209】
細胞生存率は、ニュートラルレッド、トリパンブルー、またはALAMAR(商標)ブルーなどの染料の細胞による取り込みを特定することによって測定され得る(例えば、Page et al., 1993, Intl. J. Oncology 3:473-476、を参照)。そのようなアッセイでは、細胞は、染料を含有する媒体中でインキュベートされ、細胞は洗浄され、染料の細胞による取り込みを反映する残りの染料が、分光光度によって測定される。タンパク質と結合する染料であるスルホローダミンB(SRB)も、細胞傷害性の測定に用いられ得る(Skehan et al., 1990, J. Natl. Cancer Inst. 82:1107-12)。
【0210】
別の選択肢として、MTTなどのテトラゾリウム塩が用いられて、死細胞ではなく生細胞を検出することによる哺乳類細胞の生存および増殖のための定量的比色アッセイが行われる(例えば、Mosmann, 1983, J. Immunol. Methods 65:55-63、を参照)。
【0211】
アポトーシスは、例えばDNA断片化を測定することによって定量され得る。DNA断片化を生体外で定量的に特定するための市販の光度測定法が利用可能である。そのようなアッセイの例は、TUNEL(断片化DNA中の標識ヌクレオチドの取り込みを検出)およびELISAに基づくアッセイを含み、Biochemica, 1999, no. 2, pp. 34-37 (Roche Molecular Biochemicals)、に記載されている。
【0212】
アポトーシスは、細胞における形態的変化を測定することによっても特定され得る。例えば、ネクローシスの場合と同様に、細胞膜一体性の喪失が、特定の染料の取り込みを測定することによって特例され得る(例:例えばアクリジンオレンジまたは臭化エチジウムなどの蛍光染料)。アポトーシス細胞数を測定するための方法は、Duke and Cohen, Current Protocols in Immunology(Coligan et al. eds., 1992, pp. 3.17.1-3.17.16)に報告されている。細胞はまた、DNA染料(例:アクリジンオレンジ、臭化エチジウム、またはヨウ化プロピジウム)で標識されてもよく、クロマチンの内核膜に沿った凝縮および辺縁化(margination)について細胞が観察される。アポトーシスを特定するために測定され得るその他の形態的変化としては、例えば、細胞質凝縮、膜のブレブ形成の増加、および細胞収縮が挙げられる。
【0213】
アポトーシス細胞の存在は、培養物の付着したコンパートメントおよび「浮遊した」コンパートメントの両方で測定され得る。例えば、両方のコンパートメントの回収は、上澄みの取り出し、付着細胞のトリプシン処理、これらの製剤の混合およびこれに続く遠心分離洗浄工程(例:2000rpmで10分間)、ならびにアポトーシスの検出(例:DNA断片化の測定による)によって行われ得る(例えば、Piazza et al., 1995, Cancer Research 55:3110-16、を参照)。
【0214】
結合分子−薬物コンジュゲートの効果は、動物モデルによって試験または確認され得る。数多くの確立された癌の動物モデルが当業者に公知であり、そのうちのいずれも、コンジュゲートの効力の分析に用いられ得る。そのようなモデルの限定されない例は、以降に記載される。さらに、結合分子−薬物コンジュゲートの生体内効力を調べるための小動物モデルが、ヒト腫瘍細胞株を、胸腺欠損ヌードマウスまたはSCIDマウスを例とする適切な免疫不全げっ歯類系統に移植することによって作出され得る。
【0215】
<代替軽鎖(SLC)ユニット>
代替軽鎖(SLC)ユニットは、リンカーユニットの官能基と結合を形成し得る少なくとも1つの官能基を有する。SLCユニット上に、自然に、化学的処理を介して、または改変を介して存在し得る有用な官能基としては、これらに限定されないが、スルフヒドリル(−SH)、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、炭水化物のアノマーヒドロキシル基、およびカルボキシルが挙げられる。ある実施形態では、SLCユニットの官能基は、スルフヒドリル基である。スルフヒドリル基は、通常、システイン残基上の溶媒露出スルフヒドリル基などの溶媒露出スルフヒドリル基である。スルフヒドリル基は、SLCの分子内または分子間ジスルフィド結合を還元することで生成され得る。スルフヒドリル基はまた、2−イミノチオラン(トラウト試薬)または別のスルフヒドリル生成試薬を用いたSLCのリジン部分のアミノ基の反応によっても生成され得る。
【0216】
ある実施形態では、1つ以上のスルフヒドリル基が、アミノ酸置換などにより、SLCユニット中へと導入される。例えば、1つのスルフヒドリル基が、SLCユニット中へ導入され得る。ある実施形態では、スルフヒドリル基は、セリンまたはスレオニンのシステイン残基へのアミノ酸置換によって、および/またはSLCユニットへのシステイン残基の付加によって導入される(改変されたシステイン残基)。ある実施形態では、システイン残基は、内部システイン残基であり、すなわち、SLCのN末端またはC末端に位置するものではない。
【0217】
代表的な実施形態では、システイン残基は、アミノ酸置換または挿入により、代替軽鎖(SLC)またはその断片中へと改変操作され得る。
【0218】
SLCユニットと結合する薬物またはリンカーユニット−薬物ユニットの数を制御するために、1つ以上のシステイン残基が、アミノ酸置換によって除去されてよい。例えば、溶媒露出システイン残基の数は、システイン残基のセリン残基へのアミノ酸置換によって減少され得る。
【0219】
ある実施形態では、SLCユニットは、1、2、3、4、5、6、7、または8個の溶媒露出システイン残基を含有する。ある実施形態では、SLCユニットは、2または4個の溶媒露出システイン残基を含有する。
【0220】
<薬物コンジュゲーションのためのアミノ酸残基>
1つの態様では、Surrobody(商標)ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基は、薬物コンジュゲーションのために選択される。1つの実施形態では、アミノ酸残基は、自然残基、非自然残基、天然残基、および非天然残基から成る群より選択される。別の実施形態では、自然残基は、システインまたはリジンである。他の実施形態では、非自然残基または天然残基は、システインまたはリジンである。1つの他の実施形態では、非天然残基は、パラ−アセチル−フェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチル−フェニルアラニン、O−4−アルキル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、L−ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨード−フェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、およびイソプロピル−L−フェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、およびアミノ−、イソプロピル−、またはO−アルキル含有フェニルアラニン類似体から成る群より選択される。非天然またはコードされるアミノ酸は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20080227205号および同第20100093082号にさらに記載されている。
【0221】
1つの態様では、Surrobody(商標)中のチオール残基は、本技術分野にて公知のいくつかの方法によって導入され得る。1つの実施形態では、それらの方法として以下が挙げられる:a)2−イミノチオランまたはホモシステインチオラクトンなどのチオール生成試薬でのSurrobody(商標)の修飾、またはb)SMCC、SPP、SPDP、SPDB、スルホ−SPDBなどのジスルフィド含有ヘテロ二官能架橋剤での反応、およびそれに続くDTTまたはTCEPによるジスルフィド結合の還元を介する遊離チオールの生成、c)システイン操作抗体(cysteine-engineered antibodies)など、非自然システイン残基を組み込む変異誘発(米国特許出願第2007/0092940 A1号、米国特許出願第2010/0003766 A1号、米国特許第7,723,485 B2号)、またはd)自然ジスルフィド結合の還元(del Rosario, R. B. et al., Cancer Res. Suppl. 1990, 50, 804s-808s)。
【0222】
1つの他の態様では、リジン残基のアミノ基が、Surrobody(商標)への薬物コンジュゲーションのために用いられてよい。
【0223】
別の態様では、本明細書で述べるSurrobody(商標)は、変異誘発を介して導入された非自然システイン残基を含む。1つの実施形態では、代替軽鎖(SLC)は、1つ以上の非自然システイン残基を含む。別の実施形態では、1つ以上の非自然システイン残基は、配列番号1(VpreB1);配列番号4(VpreB3様配列);配列番号5(切断型VpreB1配列);配列番号6(マウスIgκリーダー配列を有するVpreB1);配列番号7(マウスλ5配列);配列番号8(ヒトλ5配列);配列番号9(切断型λ5配列);配列番号10(マウスIgκリーダー配列を有するヒトλ5 dTail配列;配列番号35(ヒトVpreB1−λ5キメラアミノ酸配列);配列番号36(ヒトVpreB1−λ5キメラアミノ酸配列);およびこれらのいずれかの組み合わせから成る群より選択されるアミノ酸配列中に位置する。別の実施形態では、1つ以上の非自然システイン残基は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24から成る群より選択されるヒトVκ様アミノ酸配列中に位置する。1つの他の実施形態では、1つ以上の非自然システイン残基は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、および配列番号34から成る群より選択されるヒトヒトJCκアミノ酸配列中に位置する。
【0224】
図14Aは、そのリーダー配列を持たないヒトVpreB1のアミノ酸配列(配列番号54)、すなわち、成熟VpreB1配列を示す。下線および太字の部分は、システイン残基の導入に適する特定のアミノ酸位置である。1つの実施形態では、非自然システイン残基は、T16およびT21(順に番号付与)から成る群より選択される1つ以上の位置に導入される。
【0225】
図14Bは、そのリーダー配列を持たないヒトλ5のアミノ酸配列(配列番号55)、すなわち、成熟λ5配列を示す。下線および太字の部分は、システイン残基の導入に適する特定のアミノ酸位置である。1つの実施形態では、非自然システイン残基は、V60、K74、S78、V79、S85、A91、V110、V123、Q131、N133、V166、およびV170(順に番号付与)から成る群より選択される1つ以上の位置に導入される。
【0226】
図14Cは、いずれのリーダー配列も持たないVpreB1−λ5融合体のアミノ酸配列(配列番号56)を示す。下線および太字の部分は、システイン残基の導入に適する特定のアミノ酸位置である。1つの実施形態では、システイン残基は、T16およびT21、V107、K121、S125、V126、S132、A138、V157、V170、Q178、N180、V213、およびV217(順に番号付与)から成る群より選択される1つ以上の位置に導入される。
【0227】
図15A−Bは、システイン残基が導入された種々の代替軽鎖のアミノ酸配列を示す(記載の順に、それぞれ、配列番号57−70)。
【0228】
<治療剤および診断剤>
1つの態様では、本発明の結合分子コンジュゲートは、治療剤および診断剤を含む。これらの薬剤は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的物質から作製された抽出物を指す。治療剤は、広範囲の様々な薬物のいずれであってもよく、これらに限定されないが、酵素阻害剤、ホルモン、サイトカイン、成長因子、受容体リガンド、抗体、抗原、クラウンエーテルおよびその他のキレーターを含むイオンを結合する化合物、実質的に相補的である核酸、転写因子を含む核酸結合タンパク質、トキシンなどが挙げられる。適切な薬物としては、エリスロポエチン(EPO)などのサイトカイン、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL−1からIL−17を含む)、インスリン、インスリン様成長因子(IGF−1および−2を含む)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGF−αおよびTGF−βを含む)、ヒト成長ホルモン、トランスフェリン、上皮成長因子(EGF)、低密度リポタンパク質、高密度リポタンパク質、レプチン、VEGF、PDGF、毛様体神経栄養因子、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、カルシトニン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、コトリゾール(cotrisol)、エストラジオール、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体ホルモン(leutinzing hormone)(LH)、プロゲテロン(progeterone)、テストステロン、リシンを含むトキシン、ならびに両方共に明確に参照により組み込まれるPhysician's Desk Reference, Medical Economics Data Production Company, Montvale, N.J., 1998、およびMerck Index, 11th Edition(特に、ページTher−1からTher−29)に概説されるいずれの薬物をも挙げられる。
【0229】
別の実施形態では、治療剤は、癌の治療に用いられる薬物である。適切な癌用の薬物としては、これらに限定されないが、アルキルスルホネート(ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン(piposulfan));アジリジン(ベンゾデパ(benzodepa)、カルボコン、メツレデパ(meturedepa)、ウレデパ(uredepa));エチレンイミンおよびメチルメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチロールメラミン);ナイトロジェンマスタード(クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソウレア(カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテンムスチン(fotenmustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン);ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブラニトール(mitobranitol)、ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン;ドキソルビシン、カルボプラチン、オキサリプラチン、およびシスプラチン(誘導体を含む)などのアルキル化剤を含む抗悪性腫瘍薬が挙げられる。
【0230】
1つの実施形態では、治療剤は、細胞傷害剤であり、これらとしては、限定されないが、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、l−デヒドロテストステロン(l-dehydrotestosterone)、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにこれらの類似体または相同体が挙げられる。
【0231】
ある実施形態では、治療剤は、抗ウィルス薬または抗菌薬であり、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、ククチノマイシン(cuctinomycin)、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン(ductinomycin)、ダウノルビシン、6−ジアゾ−5−オキシン−I−ノリオイシン(6-diazo-5-oxn-I-norieucine)、ドゥクソルビシン(duxorubicin)、エピルビシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガルマイシン(nogalumycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;アミノグリコシド、およびポリエン、およびマクロライド系抗生物質が挙げられる。
【0232】
当業者であれば理解されるように、Physician's Desk Referenceに見出されるものなどのいかなる数の適切な薬物が用いられてもよい。
【0233】
診断剤は、一般的に、検出可能標識を含む。「標識」または「検出可能標識」とは、本明細書で述べる結合分子と結合され、例えば、結合分子と分析物などの特定の結合対のメンバー間の反応を検出可能とする部分を意味する。そのように標識された結合分子は、「検出可能に標識された」と称される。診断剤とコンジュゲーションした結合分子とは、結合分子の識別を提供する標識が組み込まれた結合分子を意味する。実施形態では、標識は、目視または機器の手段によって検出可能であるシグナルを発生させることができる検出可能マーカーであり、例えば、放射標識アミノ酸の組み込み、または標識されたアビジン(例:光学的または比色的方法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合である。ポリペプチドのための標識の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:放射性同位体または放射性核種(例:
3H、
14C、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Ho、または
153Sm);色素原、蛍光標識(例:FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例:西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例:ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ);およびガドリニウムキレートなどの磁性剤。免疫アッセイで一般的に用いられる標識の代表例としては、アクリジニウム化合物を例とする光を発生させる部分、およびフルオレセインを例とする蛍光を発生させる部分が挙げられる。その他の標識は、本明細書に記載される。これに関して、その部分自体は、検出可能に標識されなくてよいが、さらの別の部分との反応後に検出可能となってもよい。「検出可能に標識される」の使用は、後者の種類の検出可能標識化を包含することを意図している。
【0234】
<代替軽鎖コンストラクトの作製>
本発明は、結合分子コンジュゲートの作製に用いることができるSurrobodyまたは代替軽鎖コンストラクトの作製方法を提供する。VpreBおよびλ5ポリペプチドまたはVκ様もしくはJCκポリペプチドを例とする代替軽鎖コンストラクトをコードする核酸は、発達中のB細胞を例とする自然源から単離され得るものであり、および/または合成または半合成方法によって得られ得る。このDNAが識別され、および単離され、またはそうでなければ作製されると、それは、さらなるクローン化または発現のために、複製可能ベクター中に連結され得る。
【0235】
本明細書におけるポリペプチドのコード配列の発現に用いられ得るクローン化および発現ベクターは、本技術分野にて公知であり、市販されている。ベクターの構成成分としては、一般的には、これらに限定されないが、以下の1つ以上が挙げられる:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。本明細書におけるベクター中にて代替軽鎖コンストラクトをコードするDNAをクローン化または発現するための適切な宿主細胞は、原核生物、イースト、または高等真核生物(哺乳類)の細胞であり、哺乳類細胞が好ましい。
【0236】
適切な哺乳類宿主細胞株の例としては、限定されないが、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1細胞株(COS−7、ATCC CRL 1651);増殖のために懸濁培養でサブクローン化したヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞株293(HEK293細胞)、Graham et al, J. Gen Virol.36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびWaヒト肝細胞腫細胞株(Hep G2)が挙げられる。
【0237】
哺乳類細胞中で用いられる場合、発現ベクターの制御機能がウィルス物質によって提供される場合が多い。従って、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウィルス2、レトロウィルス、サイトメガロウィルス、およびサルウィルス40(SV40)のゲノム由来のものであり得る。β−アクチンプロモーターなどのその他のプロモーターは、異種源に由来する。適切なプロモーターの例としては、限定されないが、SV40ウィルスの初期および後期プロモーター(Fiers et al., Nature, 273: 113 (1978))、ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーター(Greenaway et al., Gene, 18: 355-360 (1982))、ならびに所望される遺伝子配列に通常は付随するプロモーターおよび/または制御配列が挙げられるが、但し、そのような制御配列は宿主細胞系と適合性を有する。
【0238】
所望される異種ポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増加される。エンハンサーは、通常は約10から300bpであるDNAのシスエレメントであり、プロモーターに作用してその転写開始活性を促進する。エンハンサーは、配向および位置に比較的非依存的であるが、好ましくは、発現ベクター中に存在するプロモーター配列の上流に位置する。エンハンサーは、例えば真核細胞ウィルスからなど、プロモーターと同一源に由来してよく、例えば、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp 100−270)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウィルスエンハンサーである。
【0239】
哺乳類宿主細胞に用いられる発現ベクターはまた、ポリアデニル化部位も含有し、例えば、SV40(初期および後期)またはHBVなどのウィルスに由来するものなどである。
【0240】
複製起点は、SV40またはその他のウィルス(例:ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源に由来し得るなど、外来性起点を含むようにベクターを構築することによって提供されてよく、または宿主細胞によって提供されてもよい。
【0241】
発現ベクターは、通常、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする選択可能マーカーを含有する。哺乳類細胞のための適切な選択可能マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、およびネオマイシンが挙げられる。
【0242】
適切な哺乳類発現ベクターは、本技術分野にて公知であり、市販されている。従って、例えば、本発明の代替軽鎖コンストラクトは、DNAインサートの構成的発現を促進するためのヒトサイトメガロウィルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーター領域を持つpCI発現ベクター(プロメガ)を用いて、哺乳類宿主細胞中にて作製することができる。ベクターは、pTT5発現ベクターであってもよい(学術研究会議、カナダ)。ベクターは、選択可能マーカーとして、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有してよい。
【0243】
本発明の代替軽鎖コンストラクトは、細菌宿主細胞中で作製することもできる。細菌系に用いられる制御エレメントとしては、プロモーター、所望に応じて含むオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。適切なプロモーターとしては、限定されないが、ガラクトース(gal)、ラクトース(lac)、マルトース、トリプトファン(trp)、β−ラクタマーゼプロモーター、バクテリオファージλ、およびT7プロモーターが挙げられる。加えて、tacプロモーターなどの合成プロモーターが用いられてもよい。細菌系に用いられるプロモーターはまた、一般的に、Fab分子をコードするDNAと作動可能に連結されたシャイン−ダルガーノ(SD)配列も含有する。プラスミドpBR322からの複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適する。
【0244】
抗体代替軽鎖配列を含む複数鎖コンストラクト中の個々の鎖のコード配列は、別々の制御配列の制御下、同じ発現ベクター中に存在してよく、または真核および原核宿主を含む所望される宿主細胞の共トランスフェクションに用いられる別々の発現ベクター中に存在してもよい。従って、ノバゲン(Novagen)から市販されているDuet(商標)ベクターを用いて、複数の遺伝子が共発現され得る。
【0245】
形質転換された宿主細胞は、様々な培地中で培養されてよい。哺乳類宿主細胞の培養のための市販されている培地としては、ハムF10(シグマ)、最少必須培地((MEM)、(シグマ)、RPMI−1640(シグマ)、およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、シグマ)が挙げられる。加えて、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979) and Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980)に記載の培地のいずれも、宿主細胞のための培地として用いてよい。温度、pHなどの培養条件は、選択された宿主細胞での発現にこれまでに用いられているものであり、製造元の説明書に含まれているか、またはそうでなければ、当業者にとって明らかである。
【0246】
哺乳類、細菌(例:大腸菌)、またはその他の宿主細胞の培養に適するさらなる培地は、例えば、上記のSambrook et al.、または上記のAusubel et al.などの標準的な教本にも記載されている。
【0247】
<異種リーダー配列>
本発明は、本明細書で述べる結合分子コンジュゲートの形成に用いられ得る代替軽鎖(SLC)ポリペプチドの組換え発現の効率を高める異種リーダー配列を提供する。1つの態様では、本発明は、代替軽鎖(SLC)ポリペプチドまたはSLCポリペプチドを含有するSLCコンストラクトをコードする単離された核酸分子を提供し、ここで、ポリペプチドの自然分泌リーダー配列は、異種分泌リーダー配列によって置き換えられている。1つの実施形態では、SLCポリペプチドとしては、VpreBポリペプチド、λ5ポリペプチド、またはその断片もしくは変異体が挙げられる。別の実施形態では、VpreBポリペプチドは、自然VpreB1配列、自然VpreB2配列、自然VpreB3配列、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。ある実施形態では、自然VpreB配列は、配列番号1のヒトVpreB1、配列番号2および3のマウスVpreB2、配列番号4のヒトVpreB3、配列番号5のヒトVpreB様ポリペプチド、配列番号6のヒトVpreB dTailポリペプチド、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。1つの他の実施形態では、λ5ポリペプチドは、配列番号7のマウスλ5、配列番号8のヒトλ5ポリペプチド、配列番号9のヒトλ5 dTailポリペプチド、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。別の実施形態では、SLCポリペプチドとしては、Vκ様ポリペプチド、JCκポリペプチド、またはその断片もしくは変異体が挙げられる。1つの他の実施形態では、Vκ様ポリペプチド配列は、配列番号12−24、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。ある実施形態では、JCκポリペプチド配列は、配列番号26−39、ならびにその断片および変異体から成る群より選択される。
【0248】
別の態様では、本発明は、代替軽鎖(SLC)ポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供し、ここで、ポリペプチドの自然分泌リーダー配列は、異種分泌リーダー配列によって置き換えられており、SLCポリペプチドとしては、SLCポリペプチド融合体、またはその断片もしくは変異体が挙げられる。1つの実施形態では、SLC融合体としては、VpreB−λ5ポリペプチド融合体、またはその断片もしくは変異体が挙げられる。別の実施形態では、VpreBポリペプチド配列およびλ5ポリペプチド配列の融合は、それぞれ、VpreB配列およびλ5配列のCDR3類似領域にて、またはその周辺で行われる。1つの他の実施形態では、VpreBポリペプチド配列は、そのカルボキシ末端にて、λ5ポリペプチド配列のアミノ末端と連結される。1つの実施形態では、SLC融合体としては、Vκ様−JCκポリペプチド融合体、またはその断片もしくは変異体が挙げられる。別の実施形態では、Vκ様ポリペプチド配列およびJCκポリペプチド配列の融合は、それぞれ、Vκ様配列およびJCκ配列のCDR3類似領域にて、またはその周辺で行われる。1つの他の実施形態では、Vκ様ポリペプチド配列は、そのカルボキシ末端にて、JCκポリペプチド配列のアミノ末端と融合される。
【0249】
すべての実施形態において、異種分泌リーダー配列は、抗体、サイトカイン、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモン、消化酵素、および細胞外マトリックスの構成成分から成る群より選択される分泌されたポリペプチドのリーダー配列であってよい。1つの実施形態では、サイトカインは、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインシュリン;リラキシン;プロリラキシン(prorelaxin);卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓成長因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−αおよび−β(TNF−αおよび−β);ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−βなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αおよびTGF−βなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子(osteoinductive factors);インターフェロン−α、−β、および−γなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12などのインターロイキン(IL);TNF−αまたはTNF−βなどの腫瘍壊死因子;MIP−1α;MIP−1β;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含むその他のポリペプチド因子から成る群より選択され得る。
【0250】
すべての実施形態において、分泌リーダー配列は、ヒトおよび非ヒト哺乳類アルブミン、トランスフェリン、CD36、成長ホルモン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、エリスロポエチン(EPO)、およびニューブラスチンのリーダー配列から成る群より選択され得る。
【0251】
すべての実施形態において、分泌リーダー配列は、合成配列であってよい。
【0252】
すべての実施形態において、分泌リーダー配列は、自然分泌リーダー配列のコンセンサス配列であってよい。
【0253】
異種リーダー配列として、マウスIgカッパリーダー配列が用いられてよい(METDTLLLWVLLLWVPGSTG−配列番号53)。すべての実施形態において、本発明は、代替軽鎖(SLC)コンストラクトをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0254】
1つの態様において、本発明は、ベクターおよび組換え宿主細胞を提供する。すべての実施形態において、ベクターは、本明細書で述べる核酸分子を含有し得る。すべての実施形態において、組換え宿主細胞は、本明細書で述べる核酸で形質転換され得る。
【0255】
別の態様において、本発明は、組換え宿主細胞中での代替軽鎖(SLC)ポリペプチドまたはSLCコンストラクトの発現のための方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、組換え宿主細胞をSLCポリペプチドまたはSLCコンストラクトをコードする核酸分子で形質転換する工程を含み、ここで、ポリペプチドの自然分泌リーダー配列は、異種分泌リーダー配列で置き換えられている。別の実施形態では、組換え宿主細胞は、真核細胞である。1つの他の実施形態では、組換え宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞である。ある実施形態では、SLCポリペプチドまたはSLCコンストラクトは、VpreBポリペプチド、λ5ポリペプチド、VpreB−λ5ポリペプチド融合体、Vκ様ポリペプチド、JCκポリペプチド、およびVκ様−JCκポリペプチド融合体のうちの1つ以上を含むSLCポリペプチドから成る群より選択される。
【0256】
本発明は、代替軽鎖コンストラクトの作製を、内在性リーダーVpreBリーダー配列および/もしくはλ5リーダー配列、または内在性Vκ様リーダー配列および/もしくはJCκリーダー配列を含む配列からそのようなコンストラクトが作製される場合よりも高い収率で行うための核酸およびポリペプチドコンストラクトを提供する。本発明はまた、代替軽鎖コンストラクトの作製を、VpreBおよび/もしくはλ5の内在性リーダー、またはVκ様および/もしくはJCκの内在性リーダーのコード配列を含むDNA配列から、または、内在性リーダー配列なしでそのようなコンストラクトが作製される場合よりも高い収率で行うためのベクター、宿主細胞、および方法も提供する。より高い収率は、少なくとも1つの内在性分泌リーダー配列を、本発明の異種リーダー配列で置き換えることによって達成される。従って、本発明は、異種リーダー配列を含む代替軽鎖および代替軽鎖コンストラクトを提供する。
【0257】
好ましくは、異種リーダーペプチドによって達成される発現レベルは、発現が本質的に同じ条件下にて実施される場合、相同リーダー配列を用いることで達成される発現レベルよりも、少なくとも約5%高い、少なくとも約10%高い、少なくとも約20%高い、少なくとも約30%高い、少なくとも約40%高い、または少なくとも約50%高い。
【0258】
本発明において、異種リーダー配列は、自然VpreBリーダー配列および/もしくは自然λ5リーダー配列の代わりに、代替軽鎖ポリペプチドのアミノ末端と、または自然Vκ様リーダー配列および/もしくは自然JCκリーダー配列の代わりに、κ様代替軽鎖ポリペプチドのアミノ末端と融合される。発明者らは、代替軽鎖配列(一緒に融合されたか、または非共有結合によって結合されたVpreB/λ5またはVκ様/JCκ配列)および抗体重鎖配列を含む代替軽鎖コンストラクトの作製時に、代替軽鎖の自然リーダー配列とは対照的に、特定の異種リーダー配列が驚くほど良好に機能することを見出した。
【0259】
本発明によると、異種リーダー配列は、抗体軽鎖ならびにヒトおよび非ヒト哺乳類分泌タンパク質のリーダー配列を含む高度に翻訳されるタンパク質からのいかなるリーダー配列であってもよい。分泌タンパク質は、Swiss−Prot、UniProt、TrEMBL、RefSeq、Ensembl、およびCBI−Geneなどの一般に公開されているデータベースに含まれており、そこからそれらの配列を入手可能である。加えて、インターネット上の分泌タンパク質データベースであるSPDも、そのような配列のための情報源であり、http://spd.cbi.pku.edu.cnから利用可能である(Chen et al., Nucleic Acids Res., 2005, 33:D169-D173参照)。そのような分泌タンパク質としては、限定されないが、抗体、サイトカイン、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン、ポリペプチドホルモン、消化酵素、および細胞外マトリックスの構成成分が挙げられる。本発明のコンストラクトでの使用に適するさらなるリーダー配列は、http://proline.bis.nus.edu.sq/spdbからアクセス可能であるSPdbシグナルペプチドデータベースなど一般に利用可能であるシグナルペプチドデータベースに含まれている(Choo et al., BMC Bioinformatics 2005, 6:249参照)。
【0260】
適切な異種リーダー配列の具体例としては、限定されないが、ヒトおよび非ヒト哺乳類アルブミン、トランスフェリン、CD36、成長ホルモン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、エリスロポエチン(EPO)、ニューブラスチンのリーダー配列、その他の分泌ヒトおよび非ヒトタンパク質からのリーダー配列ならびにリーダーペプチドが挙げられる。
【0261】
異種リーダー配列が、i)VpreBおよびλ5代替軽鎖コンストラクトの両方に、またはii)Vκ様およびJCκ代替軽鎖コンストラクトの両方に存在する場合、i)またはii)の各異種リーダー配列は、他方と同一であってよく、または他方と異なっていてもよい。
【0262】
自然タンパク質からのシグナルペプチドに加えて、本発明の異種リーダー配列は、自然に存在するリーダー配列の性能をさらに改善するために設計され得る、および本発明の代替軽鎖コンストラクトの発現に用いられる宿主生物中での最良の性能のために特に適合され得る、合成およびコンセンサスリーダー配列を含む。
【0263】
1つの態様では、本発明は、組換え宿主細胞中での代替軽鎖の発現のための方法を提供する。1つの実施形態では、この方法は、SLCポリペプチドまたはSLC融合ポリペプチドをコードする核酸を提供する工程を含む。別の実施形態では、この方法は、組換え宿主細胞を、SLCポリペプチドまたはSLC融合ポリペプチドをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトする工程を含む。1つの実施形態では、SLC融合ポリペプチドをコードする核酸は、第二のSLC配列と共有結合で接続された第一のSLC配列を含むキメラ分子であり、ここで、第一のSLC配列および/または第二のSLC配列の自然分泌リーダー配列は、異種分泌リーダー配列で置き換えられている。第一のSLC配列は、VpreB配列、Vκ様配列、またはそれらの融合ポリペプチドであってよい。第二のSLC配列は、λ5配列、JCκ配列、またはそれらの融合ポリペプチドであってよい。異種リーダー配列は、その全開示事項が、その全体について参照により本明細書に組み込まれる、2010年12月29日公開のWO/2010/151808にさらに記載されている。
【0264】
1つの実施形態では、VpreB配列は、λ5配列と共有結合で接続されており、ここで、前記VpreB配列および/または前記λ5配列の自然分泌リーダー配列は、異種分泌リーダー配列で置き換えられている。別の実施形態では、VpreB配列は、λ5配列と融合されている。1つの他の実施形態では、VpreB配列は、ペプチドまたはポリペプチドリンカーを介してλ5配列と接続されている。1つの他の実施形態では、Vκ様配列は、JCκ配列と共有結合で接続されており、ここで、前記Vκ様配列および/または前記JCκ配列の自然分泌リーダー配列は、異種分泌リーダー配列で置き換えられている。1つの他の実施形態では、Vκ様配列は、JCκ配列と融合されている。1つの他の実施形態では、Vκ様配列は、ペプチドまたはポリペプチドリンカーを介してJCκ配列と接続されている。
【0265】
他の実施形態では、SLC配列は、抗体重鎖配列と共有結合で接続されている。
【0266】
すべての実施形態において、発現の方法は、代替軽鎖ポリペプチドおよび/または代替軽鎖融合ポリペプチドを含む代替軽鎖ポリペプチドをコードする2つ以上の核酸で宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする工程を含んでよい。
【0267】
すべての実施形態において、この方法は、抗体重鎖をコードする核酸で宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする工程をさらに含んでよい。
【0268】
1つの態様では、本発明は、収率が改善された、代替軽鎖ポリペプチドおよび/または代替軽鎖融合ポリペプチドの発現のための方法を提供する。1つの実施形態では、自然リーダー配列の代わりに異種リーダー配列を利用する本発明の方法は、自然リーダー配列を異種リーダー配列で置き換えない方法よりも高いポリペプチド発現および収率を特徴とする。
【0269】
1つの実施形態では、組換え宿主細胞は、細菌細胞である。別の実施形態では、宿主細胞は、真核細胞である。1つの実施形態では、組換え宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞である。
【0270】
1つの態様では、本発明は、本明細書で述べる核酸を含有する宿主細胞を提供する。1つの実施形態では、本発明は、本明細書で述べる少なくとも1つの核酸で形質転換された組換え宿主細胞を提供する。1つの他の実施形態では、宿主細胞は、非SLC分子を含んでよく、または含んでいなくてもよいSLC融合体をコードする核酸で形質転換される。
【0271】
すべての実施形態において、宿主細胞は、抗体重鎖をコードする核酸でさらに形質転換される。
【0272】
すべての実施形態において、本発明は、本明細書で述べる核酸を含有するベクターを提供する。すべての実施形態において、宿主細胞は、本明細書で述べる核酸を含有する少なくとも1つのベクターで形質転換される。
【0273】
精製は、本技術分野にて公知の方法で行われ得る。好ましい実施形態では、代替軽鎖コンストラクトは、Ni−NTA精製システム(インビトロジェン)を用いて、6×His−タグ(配列番号71)の形態で精製される。
【0274】
κ様SLC分子は、既存の軽鎖V遺伝子および軽鎖定常遺伝子から改変され得る。軽鎖は、遺伝子再構成およびRNAプロセシングの産物である。κ様SLC分子の構成成分は、未再構成軽鎖V遺伝子および再構成軽鎖JC遺伝子からの代替機能を提供することから、残りのすべてのカッパおよびラムダ軽鎖V遺伝子からの類似の翻訳されたタンパク質を改変して、Vκ様分子および残りのカッパJC再構成(4つのJCκ様)およびラムダJC再構成(4「J」×10「コンストラクト」=40のJCλ様)を作製することは実行可能である。これらの改変された分子の1つ1つは、Vκ様およびJCκを用いた分子、さらにはPCT出願公開WO2008/118970、2008年10月2日公開、およびWO/2010/151808、2010年12月29日公開、に含まれるVpreBおよびλ5を有する分子、ならびにこれらの組み合わせおよびキメラと類似の役割を果たし得るものである。
【0275】
本発明のSurrobodyは、当業者に公知の方法によって薬剤とコンジュゲートすることができる。
【0276】
本発明の代替軽鎖は、疾患の予防および/または治療のための分子を構築するために用いることができる。そのような用途において、代替軽鎖を含有する分子は、通常、医薬組成物の形態で用いられる。技術および配合の全般については、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Co. (Easton, Pa. 1990)、に見出され得る。Wang and Hanson "Parenteral Formulations of Proteins and Peptides: Stability and Stabilizers," Journal of Parenteral Science and Technology, Technical Report No. 10, Supp. 42-2S (1988)、も参照されたい。
【0277】
ポリペプチド系医薬組成物は、通常、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で製剤される。許容されるキャリア、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンなどの酸化防止剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズエトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなどのモノサッカリド、ジサッカリド、およびその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体{例:Zn−タンパク質複合体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0278】
分子はまた、コアセルベーション技術により、または界面重合により(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンで作製されるマイクロカプセル中に取り込まれていてもよい。そのような技術は、上記のRemington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0279】
本明細書で開示される代替軽鎖を含有する分子はまた、免疫リポソームとして製剤されてもよい。分子を含有するリポソームは、Epstein et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985);Hwang et al, Proc. Natl Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびに1997年10月23日公開のWO97/38731に記載のものなど、本技術分野にて公知の方法によって作製される。米国特許第5,013,556号には、循環時間が向上されたリポソームが開示されている。
【0280】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)などの脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって作製され得る。リポソームは、定められた細孔サイズのフィルターを通して押出されて、所望される直径を有するリポソームが得られる。本発明の分子の断片のリポソームとの結合は、ジスルフィド交換反応を介して行うことができる(Martin et al. J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)。リポソームには、所望に応じて化学療法剤が含有されてよい。Gabizon et al. J. National Cancer Inst. 81(19)1484 (1989)、を参照されたい。
【0281】
疾患の予防または治療において、分子の適切な用量は、治療されるべき感染症の種類、疾患の重篤度および経過、ならびに抗体が予防または治療目的で投与されるかどうかに応じて異なる。分子は、適切には、1回、または一連の治療にわたって投与される。疾患の種類および重篤度に応じて、例えば1回以上の別々の投与によってであれ、または連続注入によってであれ、約1μg/kgから約15mg/kgの抗体が、患者へ投与される典型的な初期候補用量である。
【0282】
本発明の代替軽鎖を含有する分子は、疾患の治療または予防での使用に適している。1つの実施形態では、本発明は、医薬として用いるための、または疾患の治療のための、代替軽鎖含有分子を提供する。別の実施形態では、本発明は、疾患を治療するための医薬の製造のための代替軽鎖含有分子の使用を提供する。分子は、SLCポリペプチドまたはSLC融合体をコードする核酸であってよい。
【0283】
1つの態様では、本発明は、哺乳類における疾患の治療に有用である方法を提供し、その方法は、代替軽鎖含有分子の治療有効量を、その哺乳類へ投与する工程を含む。治療組成物は、医師の指示に従って、短期間(急性)もしくは慢性投与、または間欠投与されてよい。
【0284】
<SLCポリペプチド含有ライブラリ>
1つの態様では、本発明は、代替軽鎖(SLC)ポリペプチドを含む結合分子のライブラリを提供する。ライブラリは、薬剤とのコンジュゲートに適する結合分子の識別に用いることができる。1つの実施形態では、結合分子は、抗体軽鎖ポリペプチドと結合したSLCポリペプチドを含む。別の実施形態では、結合分子は、抗体可変軽鎖配列と結合したλ5配列を含む。1つの他の実施形態では、λ5配列−抗体可変軽鎖配列は、融合体である。
【0285】
<安定性が改善された定常領域>
別の態様では、本発明は、安定性が改善された結合分子を提供する。1つの実施形態では、本明細書で述べる結合分子コンジュゲートは、SLCポリペプチドおよび抗体重鎖定常領域を含む結合分子に基づいており、ここで、結合分子は、特定の重鎖定常領域変異体に基づいて、改善された安定性を有する。別の実施形態では、結合分子は、ヘテロ多量体フォーマットを有するSurrobodyである。1つの他の実施形態では、ヘテロ多量体は、少なくとも1つの抗体重鎖および少なくとも1つのSLCを含む。ある実施形態では、抗体重鎖は、変異定常領域を含む。他の実施形態では、変異定常領域は、変異CH3および/または変異CH2領域である。1つのさらなる実施形態では、変異定常領域は、非変異定常領域と比較して、安定性が改善されたヘテロ多量体の形成を促進する。
【0286】
別の実施形態では、結合分子またはSurrobodyは、F405およびY407の位置にアミノ酸修飾を含む第一のCH3変異領域、ならびにT394の位置にアミノ酸修飾を含む第二のCH3変異領域を有する。1つの実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、Q347の位置にアミノ酸修飾をさらに含み、他方のCH3ドメインポリペプチドは、K360の位置にアミノ酸修飾を含む。1つの他の実施形態では、少なくとも1つのCH3ドメインポリペプチドが、N390およびS400のうちの少なくとも一方にアミノ酸修飾をさらに含む。他の実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、T350Vのアミノ酸修飾をさらに含む。ある実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、L351の位置にアミノ酸修飾をさらに含む。1つの他の実施形態では、第二のCH3ドメインポリペプチドは、T366およびK392の位置の少なくとも一方に、修飾をさらに含む。
【0287】
1つの実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、D399RまたはD399Kのアミノ酸修飾をさらに含み、他方のCH3ドメインポリペプチドは、T411E、T411D、K409E、K409D、K392E、およびK392Dのうちの1つ以上を含む。別の実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、T350Vのアミノ酸修飾をさらに含む。さらなる実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、L351Y、Y405A、およびY407Vから選択される1つ以上のアミノ酸修飾を含み、第二のCH3ドメインポリペプチドは、T366L、T366I、K392L、K392M、およびT394Wから選択される1つ以上のアミノ酸修飾を含む。
【0288】
さらなる実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、L351Y、Y405A、およびY407Vから選択される1つ以上のアミノ酸修飾を含み、第二のCH3ドメインポリペプチドは、T366L、T366I、K392L、K392M、およびT394Wから選択される1つ以上のアミノ酸修飾を含む。1つの他の実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、T350Vのアミノ酸修飾をさらに含む。
【0289】
1つの実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、D399およびY407の位置にアミノ酸修飾を含み、第二のCH3ドメインポリペプチドは、K409およびT411の位置にアミノ酸修飾を含む。別の実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、T350Vのアミノ酸修飾をさらに含む。他の実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、L351の位置にアミノ酸修飾をさらに含み、第二のCH3ドメインポリペプチドは、T366およびK392の位置にアミノ酸修飾をさらに含む。さらなる実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、S400の位置にアミノ酸修飾をさらに含み、第二のCH3ドメインポリペプチドは、N390の位置にアミノ酸修飾をさらに含む。別の実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、L351Y、D399R、D399K、S400K、S400R、Y407A、Y407I、およびY407Vから選択されるアミノ酸修飾を含み;第二のCH3ドメインポリペプチドは、T366V、T366I、T366L、T366M、N390D、N390E、K392L、K392I、K392D、K392E、K409F、K409W、T411D、およびT411Eから選択されるアミノ酸修飾を含む。1つの他の実施形態では、第一のCH3ドメインポリペプチドは、L351Y、D399R、D399K、Y407A、Y407I、およびY407Vから選択されるアミノ酸修飾を含み;第二のCH3ドメインポリペプチドは、T366V、T366I、T366L、T366M、K392L、K392I、K392D、K392E、K409F、K409W、T411D、およびT411Eから選択されるアミノ酸修飾を含む。1つの実施形態では、前記第一および第二のCH3ドメインポリペプチドのうちの一方は、T350Vのアミノ酸修飾をさらに含む。
【0290】
変異定常領域に関するさらなる開示は、全開示事項がその全体について参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20120149876号に見出され得る。
【0291】
<キット>
本発明はまた、疾患の治療、予防、および/または診断に有用である物質を含有するキットならびに製品も提供する。キットは、容器、および容器上に位置されるかまたは容器に付随されていてよいラベルを含む。容器は、ボトル、バイアル、シリンジ、またはその他の適切ないかなる容器であってもよく、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されてよい。容器は、本明細書で述べる代替軽鎖含有分子を有する組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してよい。容器の例としては、静注溶液バッグ(intravenous solution bag)または皮下注射用針で貫通可能であるストッパー付きのバイアルが挙げられる。キットは、希釈剤および緩衝剤を例とする種々の試薬を保持する追加の容器を有していてよい。ラベルは、組成の説明ならびに意図する使用のための取り扱い説明を提供してよい。分子を含有するキットは、例えば、細胞アッセイ、細胞からのポリペプチドの精製または免疫沈降に有用である。例えば、タンパク質の単離および精製の場合、キットは、ビーズ(例:セファロースビーズ)とカップリングした、そのタンパク質と結合する代替軽鎖含有分子を含有することができる。ELISAまたはウェスタンブロットを例とする生体外でのタンパク質の検出および定量のための分子を含有するキットを提供することができる。検出に有用であるそのような分子は、蛍光または放射標識などの標識と共に提供されてよい。
【0292】
キットは、作用を有する薬剤として本明細書で述べる代替軽鎖を含む分子を含有する少なくとも1つの容器を有する。この組成物が疾患の治療に用いられてよいことを示すラベルが提供されてよい。ラベルはまた、治療を必要とする対象への投与に関する取扱い説明も提供してよい。キットはさらに、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液などの薬理学的に許容される緩衝剤を有する追加の容器も含有してよい。最後に、キットはまた、その他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含むその他の適切ないかなる物質をも含有してよい。
【0293】
上記の記載において、本発明は特定の実施形態に関して説明されるが、本発明はそれに限定されない。実際、本明細書で示され、述べられるものに加えて、本発明の種々の変更は、当業者にとって上記の記載から明らかとなるものであり、それは、添付の請求項の範囲内に含まれる。
【0294】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、特に、および個別に、参照により組み込まれると示されている場合と同じ程度にて、これらの全内容について、あらゆる点で参照により本明細書に組み込まれる。
【0295】
本発明のさらなる詳細事項は、以下の限定されない実施例に提供される。
【実施例】
【0296】
<実施例1.治療有用性向上のための代替軽鎖タンパク質コンジュゲート>
抗癌薬の多くは、細胞周期を標的とし、急速に増殖する細胞を殺傷することから、健康な組織と腫瘍組織とを区別しない。この区別が成されないことの結果、治療指数が狭くなり、腫瘍成長に著しい影響を与える薬物の濃度が許容できないものであることから、有効性を制限してしまう重篤な治療関連副作用が引き起こされる。そのような強力な分子を特定の抗体にコンジュゲートさせることは、腫瘍成長に効果的に対処し、および重要なことには、非癌性組織/細胞への接触を限定的なものとするレベルにて、これらの強力な分子を、抗体の選択的性質を介して、腫瘍部位へ良好に送達するものであることが証明されている。
【0297】
そのような抗癌薬と抗体との連結は、いくつかの種類の適合するアミノ酸側鎖の化学により、通常は、リジンアミンおよびシステインスルフヒドリルを介して達成される。適切な細胞傷害剤およびリンカーを選択すること以外に、すべての手法には少なくとも2段階の問題が残っている。第一の問題は、新たな標的化抗体の各々が、その重鎖および軽鎖の性質に関してそれまでのものと大きく異なる場合があり、天然の側鎖化学によって得られる組成が、著しく様々となり得ることに起因している。正味の結果として、新たな抗体のほとんどすべてに対して個々にコンジュゲート形成を行う労力が予期されることになる。二番目としては、重鎖が、ほとんどのコンジュゲート形成の化学の最も可能性の高い標的であること、ならびにそれが、抗体の特異性および安定性を支配的に担っていることから、この鎖の化学的誘導体化は、本質的に、抗体の特異性および安定性に対して有害な影響を有する可能性がより高い。
【0298】
重鎖の結合を回避する能力が非常に望ましく;さらには、重鎖パートナー上のインバリアント部位を標的とする能力があれば、理想的である。Surrobody(商標)の代替軽鎖は、そのような理想的な機会を提供する。代替軽鎖は多様なものではないため、日和見的な天然側鎖の組成は、Surrobody間で変化せずに維持される。その結果、コンジュゲートの化学を代替軽鎖のみに指向させ、それに続く新たなSurrobody(商標)の各々に対して、単一の誘導体化戦略を用いることが可能となる。
【0299】
<実施例2.天然の、および特に導入された代替軽鎖アミノ酸側鎖の誘導体化>
日和見的アミノ酸側鎖の化学、すなわち、リジン由来アミンおよびシステイン由来スルフヒドリルが、基本的な構造的必要性を伴っている可能性が高いことから、新たな部位の導入および天然部位の除去が所望され得る。VpreBの外部面への反応性部位の特定の導入において、標的近位部位から離れることが、コンジュゲーションのために非常に望ましいものであり得る。そのような部位の選択は、公知のプレB細胞受容体構造の構造分析によって推測され得るか、または代替軽鎖コンストラクトのVpreB配列の長さ方向に沿ったシステインおよび/もしくはリジンの系統的置換によって実験的に特定され得る。同様に、代替軽鎖コンストラクトのλ5由来部分の天然の、または系統的に導入された反応性部位を評価することも可能である。
【0300】
<実施例3.非自然アミノ酸を含有するSurrobodyを介する特異的コンジュゲーション>
代替軽鎖内の特定の部位に薬物コンジュゲートを特異的に組み込むことが望ましい場合がある。構造的な、または特異性の観点からの不適合性により、天然のアミノ酸側鎖化学を用いることができない可能性がある。この場合、非自然アミノ酸の特定の化学誘導体化が可能となるように他のいずれのアミノ酸化学とも明確に異なる独特の化学特性を有する非自然アミノ酸を組み込むことが可能であり得る。Surrobodyの最終的な性質に応じて、無細胞タンパク質合成、または大腸菌、イースト、および哺乳類細胞株における再プログラム化生体内系によって非自然アミノ酸を組み込むための既存の数多くの技術から選択することが可能である。
【0301】
<実施例4.治療有用性が向上されたタンパク質トキシンSurrobodyコンジュゲート>
抗増殖効果を発揮する数多くのタンパク質トキシンが存在するが、それが持つ治療指数は、狭いから存在しないまでの範囲である。しかし、抗体とのコンジュゲーションが、抗体特異性によって指向される部位にトキシンの効果を限定するのに有用であることが示された。このプロセスは抗体を用いて成功したものであるものの、ここでも、重鎖パートナーを用いてトキシンを固定された位置に配置することができれば、理想的である。ここでも、そのような目的のために、代替軽鎖のインバリアントな性質を利用することができる。シュードモナスエキソトキシンA(PEA)などのトキシンは、代替軽鎖コンストラクト内のVpreBもしくはラムダ5部分、または終端部に、組換えによって融合することが可能である。類推により、ジフテリアトキシン、リシン、およびその他の細胞トキシンは、代替軽鎖融合体の候補でろう。いずれの場合でも、代替軽鎖/トキシン融合体は、組換え法により、またはトキシンのSurrobodyへの化学的コンジュゲーションにより、作製することが可能である。化学的コンジュゲーションの場合、Surrobodyの誘導体化は、日和見的天然アミノ酸側鎖化学を利用するか、または組換えによって組み込まれた部位に依存するか、またはいずれかもしくは両方の組み合わせを利用することになる。
【0302】
Surrobody−薬物コンジュゲートは、細胞増殖の強力な阻害を提供することが観察された(生体外)。以下について、阻害パーセントの試験を行った:(a)親抗ErbB2 Surrobody;(b)操作された代替軽鎖(SLC)#1(V213C)を用いた抗ErbB2 Surrobody;(c)抗ErbB2 操作SLC#1(V213C)+MMAEコンジュゲート;および(d)操作SLC#2(T21C)+MMAEコンジュゲート(
図9および表4.1)。簡潔に述べると、これらの分子は、生体外にて、SKBR3細胞の成長を阻害する能力について試験した。アッセイは、96ウェル培養ディッシュ中、ウェルあたり5000細胞を播種すること、および細胞播種の3−6時間後に、それらをコントロールSurrobodyおよび薬物コンジュゲートSurrobodyで処理することを含むものとした。6日間の処理後、Cell titer Glo(プロメガ)アッセイによって細胞生存率を評価し、Prism(グラフパッド)ソフトウェアを用いて結果をプロットし、解析した。全体として、結果は、SLCを修飾することで、細胞毒性ペイロードを増加させ、これらの抗増殖Surrobodyの効力および有効性の両方を高めることが可能であることを示している。具体的には、SLC+コンジュゲートは、抗体−薬物コンジュゲートと同等、またはより良好に機能することが観察された(データ示さず)。
【0303】
【表1】
【0304】
いくつかのSurrobody−薬物コンジュゲート(二価、二重特異性、および一価)を、効力、および高受容体発現である細胞株の細胞増殖を阻害するその能力について分析した(
図11A−Bおよび表4.2)。
【0305】
表4.2のコンストラクトはすべて、V213C変異を有する代替軽鎖を含有する。R1(またはEGFR)二価コンジュゲートは、EGFRと結合するSurrobody−コンジュゲートであり、MC−vc−PABリンカーを介してMMAEと結合する。R2/R1(またはErbB2/EGFR)二重特異性コンストラクトは、ErbB2およびEGFRの両方と結合するSurrobody−コンジュゲートであり、MC−vc−PABリンカーを介してMMAEとコンジュゲーションする。R1(またはEGFR)一価コンジュゲートは、1つの機能的ヌル部分および一価EGFR結合部分を有するSurrobody−コンジュゲートであり、MC−vc−PABリンカーを介してMMAEとコンジュゲーションする。R2(またはErbB2)一価コンジュゲートは、1つの機能的ヌル部分および一価ErbB2結合部分を有するSurrobody−コンジュゲートであり、MC−vc−PABリンカーを介してMMAEとコンジュゲーションする。
【0306】
簡潔に述べると、これらの分子は、生体外にて、A431細胞の成長を阻害する能力について試験された。アッセイは、96ウェル培養ディッシュ中、ウェルあたり7500細胞を播種すること、および細胞播種の3−6時間後に、それらをコントロールSurrobodyおよび薬物コンジュゲートSurrobodyで処理することを含むものとした。4日間の処理後、Cell titer Glo(プロメガ)アッセイによって細胞生存率を評価し、Prism(グラフパッド)ソフトウェアを用いて結果をプロットし、解析した。
図11Aは、以下のコンジュゲートコンストラクトを示す:R1二価(2つの同一SLC、およびR1またはEGFRのための二価の重鎖);R2/R1二重特異性(SLC+R2またはErbB2重鎖、およびSLC+R1またはEGFR重鎖);R1またはEGFR一価(SLC+R1またはEGFRのための重鎖、およびヌル部分);ならびにR2一価(SLC+R2またはErbB2のための重鎖、およびヌル部分)。
図11Bは、増殖の阻害パーセントを示す。全体として、結果は、SLCを修飾することで、細胞毒性ペイロードを増加させ、単一特異性および二重特異性Surrobodyの効力および有効性の両方を高めることが可能であることを示している。具体的には、二重特異性SLC+コンジュゲートは、いずれの一価単一特異性抗体−薬物コンジュゲートよりも良好に機能すること、および腫瘍組織と比較して健康な組織への望ましくない標的化が支配的となり得る単一特異性よりも高い殺傷指数(index of killing)を提供する可能性があることが観察され、それは、単一特異性標的化と比較して二重特異性標的化によってのみ達成され得るものであある。二重特異性標的化は、健康な組織上において一方もしくは両方の標的が減少されるか、または存在しない場合と比較して、両方の標的が存在する場合の方が著しく良好に結合を起こすように二重特異性体の親和性を調節することによって、さらに改善され得る。
【0307】
【表2】
【0308】
<実施例5.治療有用性が改善された免疫コンジュゲート>
IL−2などの免疫賦活性サイトカインは、腫瘍細胞殺傷を高めることができるが、全身投与される場合、有害な副作用を有する。従って、腫瘍細胞殺傷を高める一方で、広範な全身的利用可能度は制限するために、IL−2を代替軽鎖と結合することが望ましい。そのような分子を作り出すために、代替軽鎖/IL−2融合体が組換え操作され得る。発明者らは、ラムダ−5のN末端、VpreBのC末端、ならびにVpreB−ラムダ−5融合コンストラクトのN末端ともインフレームでヒトIL−2がクローン化されたそのような分子を作り出した。得られたタンパク質は、ヒトHGFを特異的に認識するSurrobodyからの重鎖と共に共発現された。
【0309】
発明者らは、IL−2融合体の生物活性を特に評価した。簡潔に述べると、IL−2を持つSurrobodyを、HT−2増殖アッセイにおいて生物活性について試験し、コントロールSurrobodyおよび組換えヒトIL−2と比較した。
図1の結果は、活性が、組換え参照標準と同等であることを示している。IL−2は、比較的大きいタンパク質であり、結合される融合体のための部位は重鎖CDRに面する表面に対して近位であり得ることから、発明者らは、IL−2タンパク質が、標的結合(HGF)を妨害するかどうかを見ることを期待した。
図2から分かるように、IL−2を持つSurrobodyは、非常に優れた高い親和性結合特性を維持しており、このことは、融合体のいずれによっても大きな立体障害による問題は生じなかったことを示している。
【0310】
<実施例6.有用性が改善された放射標識Surrobody>
標的化Surrobodyは、診断または治療用放射活性コンジュゲートが代替軽鎖中へ特異的に組み込まれ得るように作製することができる。1つのそのような方法は、ヨウ素系放射性核種を組み込むためのチロシン上のフェノールなど、天然側鎖化学を利用することである。別の選択肢として、チロシンを、代替軽鎖のVpreBまたはラムダ−5ドメインのいずれか全体にわたって系統的に置換して、最適に位置付けられる量の放射性核種を組み込むことも可能である。別の選択肢として、その他の核種を用いてもよく、追加の受け入れ可能部位が導入されてもよい。また、直接結合、または、代替軽鎖のVpreBもしくはラムダ−5ドメインのいずれかに融合された、もしくは組み込まれた二重特異性構成成分を利用するいくつかのキレート法を用いることも可能である。
【0311】
<実施例7.標的化された酵素プロドラッグ活性>
プロドラッグは、酵素によって特異的に活性化され得る。Surrobodyが、サイズの非常に大きいタンパク質融合体の存在下であっても、特異的結合特性を維持することが示されたことから、発明者らは、これを利用して、プロドラッグ活性化酵素をコンジュゲーションし、腫瘍標的化部位での特異的活性化を可能とするものである。例えば、発明者らは、ベータ−ラクタマーゼまたはカルボキシペプチダーゼG2などの酵素プロドラッグ活性化因子を代替軽鎖と融合させる。得られたSurrobodyが投与され、続いて、コンジュゲーションされた酵素によって活性化可能であるプロドラッグが投与されることになる。
【0312】
<実施例8.Surrobody標的化薬物が充填された粒子>
薬物充填リポソームまたはナノ粒子のいずれかを、代替軽鎖中の天然化学を通して特異的に誘導して、その表面における標的化Surrobodyの安定な結合を可能とすることができる。この場合、代替軽鎖上の天然の、または操作された部位に取り込まれ、また薬物充填リポソームまたはナノ粒子と特異的に、および安定に結合もする二官能性剤をコンジュゲーションさせることになる。次に、そのような薬物充填複合体は、投与され、リポソームまたはナノ粒子カーゴを腫瘍部位へ局在化させることになる。
【0313】
<実施例9.二重特異性および単一特異性Surrobody−薬物コンジュゲート>
以下のSurrobody−薬物コンジュゲート(二重特異性および単一特異性)を構築し、コンジュゲーションされた薬物のパーセントを評価した(
図10および表9.1)。R3/ヌルV213Cは、1つの機能的ヌル部位、一価ErbB3結合部位、およびV213C変異を有する代替軽鎖を持つ一価Surrobodyである。R2/ヌルV213Cは、1つの機能的ヌル部位、一価ErbB2結合部位、およびV213C変異を有する代替軽鎖を持つ一価Surrobodyである。R1/ヌルV213Cは、1つの機能的ヌル部位、一価EGFR結合部位、およびV213C変異を有する代替軽鎖を持つ一価Surrobodyである。R2/R3 ヌルV213Cは、1つの機能的ヌル部位、二重特異性ErbB2/ErbB3結合部位(スタック状可変ドメイン)、およびV213C変異を有する代替軽鎖を持つ一価Surrobodyである。R1/R3 ヌルV213Cは、1つの機能的ヌル部位、二重特異性EGFR/ErbB3結合部位(スタック状可変ドメイン)、およびV213C変異を有する代替軽鎖を持つ一価Surrobodyである。R1/R2 ヌルV213Cは、1つの機能的ヌル部位、二重特異性EGFR/ErbB2結合部位(スタック状可変ドメイン)、およびV213C変異を有する代替軽鎖を持つ一価Surrobodyである。
【0314】
一般的に、記載したSurrobodyは、HEK293細胞中で一過的に産生させ、プロテインAクロマトグラフィを用いて精製した。得られたタンパク質を、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)で還元して、不対システインチオールを出現させ、次に元の鎖間および鎖内ジスルフィド結合を再形成させた。次に、タンパク質を、マレイミド化学を通してMMAE(モノメチルオーリスタチン)トキシンとコンジュゲートさせ、続いて、サイズ排除クロマトグラフィに掛けて、未反応のMMAEトキシンを除去した。最後に、得られたタンパク質を、逆相HPLCによって調べた。トキシンコンジュゲート要素は、そのより遅い溶出特性、およびA280吸収で定量したその相対量によって識別した。
【0315】
【表3】
【0316】
結果は、非最適化反応が、Herceptin(商標)コントロールモノクローナル抗体よりも完全にコンジュゲートしたSurrobodyを生成することを示している。本明細書で述べるこのSurrobody−薬物コンストラクトは、抗体の効率を超え得る薬物コンジュゲートを示す。加えて、このコンジュゲート効率は、これに続く開発工程にとって有益である可能性を有する。
【0317】
<実施例10.Surrobody−薬物コンジュゲートの血清安定性>
Surrobody−薬物コンジュゲートを、血清安定性について観察した。ここまでの非最適化結合反応では、ほとんどすべてのSurrobodyが結合し、ほとんどが、2つの細胞傷害性分子を有している。
図12Aは、以下のコンストラクトについての血清コンジュゲート安定性(ビオチン)を示す:ErbB2 SLC(N180C)、ErbB2 SLC(T21C)、およびErbB2 SLC(V213C)。
図12Bは、種々のHerceptin(商標)コンジュゲート(V205C、A114C、およびS296C)の血清安定性を示す。簡潔に述べると、既述のように、特定のタンパク質をHEK293細胞中で一過的に産生させ、プロテインAクロマトグラフィを用いて精製した。得られたタンパク質を、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)で還元して、不対システインチオールを出現させ、次に元の鎖間および鎖内ジスルフィド結合を再形成させた。次に、タンパク質を、マレイミド化学を通してビオチンとコンジュゲーションさせ、続いて、サイズ排除クロマトグラフィに掛けて、未反応のビオチンを除去した。次に、得られた精製ビオチンコンジュゲートSurrobodyを、摂氏37度にて、様々な時間にわたって血清と混合した。血清とのインキュベーションの後、得られたSurrobodyを、ErbB2コーティングしたELISAフォーマットに捕捉させ、次に抗Fc抗体またはストレプトアビジンのいずれかによって検出した。これら2つの結合検出法の相対強度の相違が、部位特異的コンジュゲート安定性を反映している。
【0318】
<実施例11.Surrobody−薬物コンジュゲートの凝集の分析>
代替軽鎖コンストラクト中に導入された新たな部位特異的システインを含有するSurrobodyコンストラクトを作製し、プロテインA精製の後、不対システインチオールを還元し、高タンパク質濃度での非還元性条件下、分子間または分子内モードのいずれかで反応させた。次に、発明者らは、新たに操作されたシステインからそのように遊離のチオールが露出したタンパク質を、以下の濃度での凝集について調べた(表11.1および
図13A−B ‐ 破線=0.5mg/mL;実線=約22mg/mL)。SLC#1「λ5」は、ErbB2と結合し、V213C変異を有する代替軽鎖を含有する二価Surrobody−コンジュゲートであり、これは、MC−vc−PABリンカーを介してMMAEと結合する。SLC#2「VpreB」は、ErbB2と結合し、T21C変異を有する代替軽鎖を含有する二価Surrobody−コンジュゲートであり、これは、MC−vc−PABリンカーを介してMMAEと結合する。
【0319】
【表4】
【0320】
図13A−Bは、正常型SLCおよびSLC#1(「λ5」−Cys)を示す。
図13C−Dは、SLC#2(「VpreB」−Cys)およびHerceptin(商標)V205Cを示す。用いた実験手法:Surrobodyを還元し、スピンカラムで濃縮し、SECによって調べた。>20mg/mLにおいて、4Cで3日間の保存後、遊離チオールを持つものは、10−13%の凝集物を蓄積した。Surrobodyの場合は、希釈によってそれが約5%にまで低下したが、Herceptin(商標)では低下しなかった。
【0321】
図13A−Bは、正常型SLCおよびSLC#1(「λ5」−Cys)を示す。
図13C−Dは、SLC#2(「VpreB」−Cys)およびHerceptin(商標)V205Cを示す。実験分析は、>20mg/mLにおいて、4℃で3日間の保存後に、サイズ排除クロマトグラフィ分析を行うこととした。この実施例では、Surrobodyコンジュゲーションの場合の分析で得られた凝集物含有量は、Herceptin(商標)の場合に見られる含有量よりも低くすることができた