(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
本発明は、アミロイドの形成を低減し、及び/又はアミロイドタンパク質の脱凝集を促進するための剤及び医薬組成物に関する。組成物はまた、アミロイドを検出するために用いられ得る。本発明者は、ファージg3pがアミロイド線維に直接結合すること、及びファージにより仲介される脱凝集が、この最初の結合工程に依存することを見出した。g3pが糸状ファージにより仲介されるアミロイド結合に関与するという本発明者の認識は、バクテリオファージの治療上の有効性についてのメカニズムを提供し、並びに治療及び診断の新規分類の基礎を提供する。
アミロイドに結合するポリペプチドを含む医薬組成物であって、前記ポリペプチドが、少なくとも1個の遺伝子3タンパク質(g3p)又はそのアミロイド結合フラグメント、及び医薬的に許容される担体を含み、ここで、前記組成物がバクテリオファージを含まない、医薬組成物。
前記ポリペプチド中に存在する少なくとも1個のg3p又はそのアミロイド結合フラグメントのアミノ酸配列が、野生型g3pの対応する部分のアミノ酸配列と同一である、請求項1〜7のいずれか1項記載の医薬組成物。
g3p又はそのアミロイド結合フラグメントのアミノ酸配列が、配列番号:1〜20のいずれか1つの対応する部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は100%同一である、請求項1〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
前記ポリペプチドがg3pのN1及びN2ドメインを含み、N2のヒンジ領域が、ヒンジTmが野生型M13ファージのヒンジTmより低くなるよう、変異誘発され、前記ポリペプチドがM13より高い親和性でアミロイドに結合する、請求項9又は10記載の医薬組成物。
アミロイドに結合する第1のドメインを含む融合タンパク質であって、第1のドメインが、少なくとも1個のg3p又はそのアミロイド結合フラグメント;及び第2のドメインを含む、融合タンパク質。
前記第1のドメイン中に存在する少なくとも1個のg3p又はそのアミロイド結合フラグメントのアミノ酸配列が、野生型g3pの対応する部分のアミノ酸配列と同一である、請求項12〜16のいずれか1項記載の融合タンパク質。
前記融合タンパク質中に存在する少なくとも1個のg3p又はそのアミロイド結合フラグメントが変異体又は変種g3pである、請求項12〜17のいずれか1項記載の融合タンパク質。
前記第1のドメインが、アミロイドに結合する能力を保持し、配列番号:1〜20のいずれか1つのアミノ酸配列の対応する部分で整列させたとき、わずか75、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸相違を含むアミノ酸配列を有するg3pの変異体又は変種、又はそのフラグメントを含む、請求項18記載の融合タンパク質。
前記第1のドメインが、g3pのN1及びN2ドメインフラグメントを含み、N1及びN2ドメインの少なくとも1つが、アミロイドに結合するフラグメントの能力を破壊しない変異を含み、N1及びN2ドメインフラグメントが、配列番号:1〜20のいずれか1つの対応するアミノ酸で整列させたとき、わずか75、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸相違を含むアミノ酸配列を有する、請求項18記載の融合タンパク質。
配列番号:9、配列番号:11、又は配列番号:13に少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項12記載の融合タンパク質。
変異体又は変種g3pのアミノ酸配列が、配列番号:1と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%同一である、請求項27記載の医薬組成物。
必要とする患者において、アミロイドの低減、アミロイド形成の阻害、アミロイド凝集の阻害、又は毒性オリゴマーの形成の除去及び/又は予防において使用するための、請求項1〜11又は26〜29のいずれか1項記載の医薬組成物、又は請求項12〜25のいずれか1項記載の融合タンパク質。
早発型アルツハイマー病、後発型アルツハイマー病、及び発症前アルツハイマー病を含むアルツハイマー病;パーキンソン病;SAAアミロイド症;シスタチンC;遺伝性アイスランド症候群;老衰;多発性骨髄腫;クールー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、スクレイピー、及びウシ海綿状脳症(BSE)を含むプリオン病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);脊髄小脳失調症(SCA1、SCA3、SCA6、又はSCA7);ハンチントン病;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症;球脊髄性筋萎縮症;遺伝性脳アミロイド血管症;家族性アミロイドーシス;前頭側頭葉型認知症;イギリス型/デンマーク型認知症;及び家族性脳症から選択される疾患又は状態の処置において用いるための、請求項1〜11又は26〜29のいずれか1項記載の医薬組成物、又は請求項12〜25のいずれか1項記載の融合タンパク質。
患者が、バイオマーカーがポジトロン放出断層撮影においてイメージング剤として用いられるとき、バイオマーカーフロルベタピルに対して陽性である、請求項30又は31記載の医薬組成物。
プリオン病が、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病、致死性家族性不眠症、及びゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群から選択される、請求項35記載の医薬組成物。
必要とする患者におけるアミロイドの低減方法であって、患者に有効量の請求項1〜11又は26〜29のいずれか1項記載の医薬組成物、又は請求項12〜25のいずれか1項記載の融合タンパク質を投与することを含む、方法。
患者が、バイオマーカーがポジトロン放出断層撮影においてイメージング剤として用いられるとき、バイオマーカーフロルベタピルに対して陽性である、請求項37又は38記載の方法。
プリオンにより仲介される疾患が、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病、致死性家族性不眠症、又はゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群から選択される、請求項42記載の方法。
アミロイドに結合するポリペプチドをコードする核酸であって、ポリペプチドがg3p又はそのアミロイド結合フラグメントを含み、ポリペプチドが配列番号:1に対してg3p又はそのアミロイド結合フラグメント中に1個以上の変異を含み、変異がQ129H、G153D、W181A、F190A、及びF194Aからなる群より非限定的に選択される、核酸。
アミロイドに結合するポリペプチドの製造方法であって、ポリペプチドがg3p又はそのアミロイド結合フラグメントを含み、ポリペプチドが配列番号:1に対してN2中に1個以上の変異を含み、変異がQ129H、G153D、W181A、F190A、及びF194Aからなる群より非限定的に選択され、請求項46記載のベクター中の核酸によりコードされるポリペプチドを発現させ、発現したタンパク質を単離する、を含む方法。
請求項12〜25のいずれか1項記載の融合タンパク質の製造方法であって、請求項51記載のベクター中の核酸によりコードされる融合タンパク質を発現させ、発現した融合タンパク質を単離する、を含む方法。
組成物中のポリペプチド又は融合タンパク質が更に検出可能な標識を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の医薬組成物、又は請求項12〜25のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、g3pのN1及びN2ドメイン、及びヒンジのリボン構造を表す。
【
図2A】
図2A〜2Cは、異なる供給源由来のg3pのアライメントを表す。
図2Aは、共通配列(配列番号:4)を含む、ファージM13(配列番号:1)、Fd(配列番号:2)、及びF1(配列番号:3)由来のg3pのアライメントである。
図2Bは、I2−2とIke(配列番号:7)間の共通配列に沿った、ファージI2−2(配列番号:5)及びIke(配列番号:6)由来のg3pのアライメントを示す。
図2Cは、ファージIf(配列番号:8)由来のg3pのアミノ酸配列を表す。
【
図2B】
図2A〜2Cは、異なる供給源由来のg3pのアライメントを表す。
図2Aは、共通配列(配列番号:4)を含む、ファージM13(配列番号:1)、Fd(配列番号:2)、及びF1(配列番号:3)由来のg3pのアライメントである。
図2Bは、I2−2とIke(配列番号:7)間の共通配列に沿った、ファージI2−2(配列番号:5)及びIke(配列番号:6)由来のg3pのアライメントを示す。
図2Cは、ファージIf(配列番号:8)由来のg3pのアミノ酸配列を表す。
【
図2C】
図2A〜2Cは、異なる供給源由来のg3pのアライメントを表す。
図2Aは、共通配列(配列番号:4)を含む、ファージM13(配列番号:1)、Fd(配列番号:2)、及びF1(配列番号:3)由来のg3pのアライメントである。
図2Bは、I2−2とIke(配列番号:7)間の共通配列に沿った、ファージI2−2(配列番号:5)及びIke(配列番号:6)由来のg3pのアライメントを示す。
図2Cは、ファージIf(配列番号:8)由来のg3pのアミノ酸配列を表す。
【
図3】
図3Aは、ファージ結合の表面プラズモン共鳴(SPR)調査を表す。Aβ原線維への結合を、Aβモノマーへの結合と、バイオセンサーチップを横切って流した10
14ファージ/mLを用いて比較した。
図3Bは、
図3Aに示すSPRデータから計算したK
a、K
d、及びK
Dを示す。
【
図4】
図4A及び4Bは、結合研究を提示する。
図4Aは、増加モル量のfAβ42を用いた2種のファージ用量(10
11/mL及び10
12/mL)についての直接結合アッセイを示す。
図4Bは、結合競合研究であり、M13結合のK
Dを決定する代替方法を提供する。コンストラクト1を用いた。
【
図5】
図5は、アミロイド線維結合競合アッセイにおいて加熱変性(四角−90℃、10分間)対天然の構造(丸)M13(コンストラクト1)を用いた結合競合結果を示す。
【
図6】
図6は、2種の濃度のM13ファージ(コンストラクト1)の存在下又は不存下でインキュベーションしたfAβ42を用いたチオフラビンT(ThT)蛍光アッセイを示す。
【
図7】
図7A及び7Bは、ThT脱凝集アッセイにおいて個々のアッセイパラメーターを変動する作用を示す。
図7Aは、2種の塩濃度(0.15M及び1.5M)の存在下での脱凝集パーセンテージを示す。
図7Bは、2種の温度(4℃及び37℃)で残存するfAβのパーセンテージを示す。コンストラクト1を用いた。
【
図8】
図8A及び8Bは、fAβ42を用いたM13アミロイド結合アッセイを表す。
図8Aにおいて、M13結合は、温度18℃〜58℃、3時間のインキュベーションを用いて報告する。
図8Bは、37℃対50℃でのインキュベーションについての結合速度論を示す。
【
図9】
図9A〜9Cは、ファージとアミロイドの相互作用に対するg3pのタンパク分解性除去の作用を示す。タンパク質分解酵素ArgCを用いて、g3pをM13ファージから取り出した(M13Δg3p)。
図9Aは、天然(ArgC処置ファージと同じだが、タンパク質分解酵素処置なしで処置した)ファージと比較した、M13Δg3pファージを用いたAβ結合競合研究の結果を示す。
図9Bは、天然ファージと比較したM13Δg3pファージの感染性に対するArgC処置の作用を示す。
図9Cは、脱凝集アッセイにおいて、ArgC処置ファージを天然ファージに比較する。
【
図10A】
図10A及び10Bは、g3pのN1−N2フラグメント(本明細書において、組み換え可溶性N1N2(rs−g3p(N1N2);「コンストラクト3」としても言及される)、M13Δg3p(ArgC処置)、及びM13をfAβ42への標識M13結合の競合相手として用いた、結合競合アッセイの結果を示す。
図10Bは、競合アッセイの繰り返しを示す。
【
図10B】
図10A及び10Bは、g3pのN1−N2フラグメント(本明細書において、組み換え可溶性N1N2(rs−g3p(N1N2);「コンストラクト3」としても言及される)、M13Δg3p(ArgC処置)、及びM13をfAβ42への標識M13結合の競合相手として用いた、結合競合アッセイの結果を示す。
図10Bは、競合アッセイの繰り返しを示す。
【
図11】
図11は、ファージfd、IIHY、AAA、及びM13について競合データを示す。ファージfd、AAA、及びIIHYを、50℃、1.5時間で予め活性化し、次に、活性化及び非活性化Fd、AAA、及びIIHYを、37℃、45分間のインキュベーション中にAβへの結合について標識M13と競合する能力について比較した。
【
図12】
図12Aは、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)の模式図を示す。
図12Bは、rs−g3p(N1N2)についてのイオン交換プロファイルを示す。
図12Cは、Sephacryl S−300及びrs−g3p(N1N2)を用いたゲル濾過アッセイの結果を示す。
図12Dは、g3p及びg8p対照を伴った、rs−g3p(N1N2)のウエスタンブロットを示す。M13ファージを、レーン1及び2においてポジティブコントロールとして泳動し、g8pとg3pの両方を検出するポリクローナル抗M13抗体で検出した。精製rs−g3pを、レーン3及び4において泳動し、同じポリクローナル抗M13抗体で検出した。
【
図13】
図13は、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)を用いたSPRデータを示す。rs−g3p(N1N2)は、fAβ42にK
D約160nMで強く結合するが、モノマーと結合しない。
【
図14】
図14は、所定の試料中に存在するアミロイドを測定するために用いたThT蛍光アッセイを示す。10μM Aβ42モノマーを、5種類の濃度のrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)の存在下又は不存下、37℃で3日間インキュベーションした。3日目の終わりに、形成された線維の量を、結合ThT蛍光を定量化することにより測定した。IC
50は約20nMであり、これは、rs−g3p(N1N2)がAβ42線維の形成を強く阻害することを示している。図はまた、結合が用量依存性であることを示す。
【
図15】
図15Aは、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)の存在下又は不存下でのfAβ42のインキュベーションの透過電子ミクロ組織検査(TEM)結果を示す。
図15Bは、37℃で7日間インキュベーションしたAβ42及び2μM rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)を用いたThT蛍光アッセイの結果を示す。rs−g3p(N1N2)はfAβ42の形成を阻害する。
【
図16】
図16は、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)がα−シヌクレイン線維の形成を強く阻害することを示す。25μMα−シヌクレインを、300rpm、4日間、37℃での撹拌により構築した(バー1を参照)。グラフ上の第2のバーは、37℃で3日間振盪したα−シヌクレインモノマー及び1×10
−135量体M13ファージを表す。バー2に示される結果は、5量体M13がα−シヌクレイン線維の構築を阻害することを示す。グラフ上の第3のバーは、α−シヌクレインモノマー及び83nM rsg3pモノマーを表す。バー3に示される結果は、モノマーが、5量体M13よりα−シヌクレイン線維形成の阻害においてほとんど有効でないことを示す。バー4は、時間0でのα−シヌクレインモノマーを示すネガティブコントロールである。バー5において、α−シヌクレイン線維のないg3pモノマーは、g3pがpTAAに結合し、線維への結合から染料を隔離するかどうかを決定するために示される。バー5に示される結果は、g3pがpTAAに結合しないことを示した。
【
図17】
図17は、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)、M13(コンストラクト2)、rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc融合タンパク質(コンストラクト4)、及びIgG4−Fcネガティブコントロールについての競合結合データを示す。
【
図18】
図18は、M13(コンストラクト2;四角形)、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3;三角形)、rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc融合タンパク質(コンストラクト4;上下逆の三角形)、及び組み換えIgG4−Fcネガティブコントロール(菱形)を比較した競合結合データを示す。
【
図19】
図19は、5種類の濃度のAβ42線維+又は−2種の濃度のM13(コンストラクト2)、800nM rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)、及び3種の濃度のrs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc融合タンパク質(コンストラクト4)を比較するフィルタートラップアッセイを示す。
【
図20】
図20は、rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3;「モノマー」)及びストレプトアビジン結合rs−g3p(N1N2)(「SA[g3pN1N2]
n=2−4」;「SA−g3p」;「テトラマー」)についての競合結合データを示す。rs−g3p(N1N2)及びSA−g3pを、37℃での3時間のインキュベーション中のAβへの結合について、標識M13と競合する能力について比較した。
【
図21】
図21は、5種類の濃度のfAβ42+又は−2種の濃度のrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3;「モノマー」)、及び2種の濃度のSA−g3p(「テトラマー」)を比較するフィルタートラップアッセイを示す。
【
図23】
図23は、1つのrs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fcコンストラクト「コンストラクト4」のアミノ酸配列(配列番号:9)を示す。「コンストラクト4」のN1N2領域は、「コンストラクト1」のN1N2領域に由来する(配列番号:10)。
【
図24】
図24は、別のrs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fcコンストラクト「コンストラクト5」のアミノ酸配列(配列番号:11)を示す。「コンストラクト5」のN1N2領域は、「コンストラクト2」のN1N2領域に由来する(配列番号:12)。
【
図25】
図25は、1つのrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fcコンストラクト「コンストラクト6」のアミノ酸配列(配列番号:13)を示す。「コンストラクト6」のN1N2領域は、「コンストラクト2」のN1N2領域に由来する。
【
図26】
図26は、fd(配列番号:14)、f1(配列番号:15)、M13(配列番号:16)、Ike(配列番号:17)、I2−2(配列番号:18)、及びIf1(配列番号:19)由来のN2のアミノ酸配列アライメントを示す。アスタリスク「
*」は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示す。コロン「:」は、Gonnet PAM 250マトリックスにおいて0.5より高い値を示す非常に類似する特性の群間の保存を示す。ピリオド「.」は、Gonnet PAM 250マトリックスにおいて0.5以下の値を示す若干類似する特性の群間の保存を示す。
【
図27A】
図27Aは、コンストラクト5の図を示す。
図27Bは、コンストラクト5のg3p部分のDNA配列(配列番号:23)を示す。
図27Cは、コンストラクト5のg3p部分のアミノ酸配列(配列番号:24)を示す。
【
図27B】
図27Aは、コンストラクト5の図を示す。
図27Bは、コンストラクト5のg3p部分のDNA配列(配列番号:23)を示す。
図27Cは、コンストラクト5のg3p部分のアミノ酸配列(配列番号:24)を示す。
【
図27C】
図27Aは、コンストラクト5の図を示す。
図27Bは、コンストラクト5のg3p部分のDNA配列(配列番号:23)を示す。
図27Cは、コンストラクト5のg3p部分のアミノ酸配列(配列番号:24)を示す。
【
図28】
図28は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、アミロイドβを低減する能力について2つのrs−g3p(N1N2)−IgG融合タンパク質を試験する実験の結果を示す。rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc(コンストラクト5)及びrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の両方が、アルツハイマー病マウスの海馬においてアミロイドβのレベルを有意に低減した。
【
図29】
図29は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、アミロイドβを低減する能力について、2つのrs−g3p(N1N2)−IgG融合タンパク質を試験する実験の結果を示す。rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc(コンストラクト5)及びrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の両方が、アルツハイマー病マウスの大脳皮質においてアミロイドβのレベルを有意に低減することができた。
【
図30】
図30は、Aβ42のrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)でのアセンブリー阻害を示す。
図30Aは、SDSを用いないで作った「天然」アガロースゲルを示す。試料を、SDSを含まず、ボイルしていないTEAバッファー中で泳動した。結果は、コンストラクト6がfAβ42のアセンブリーを阻害できることを示す。
図30Bは、所定の試料中に存在するアミロイドを測定するために用いたThT蛍光アッセイを示す。10μM Aβ42モノマーを、2種類の濃度のrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の存在下又は不存下、37℃で1日間インキュベーションした。1日目の終わりに形成された線維の量を、結合したThT蛍光を定量化することにより測定した。rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)は、Aβ42線維の形成を強力に阻害する。図はまた、コンストラクト6での線維形成の阻害が用量依存であることを示す。
【
図31A】
図31は、Aβ42アセンブリーがrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)により阻害されることを示す代表的円二色性データを表す。円二色性は、評価されるべきAβ線維のα−らせん体及びβ−シート含量を測定する。
図31Aは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42についての楕円率対波長を示す。
図31Bは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42+コンストラクト3についての楕円率対波長を示す。
図31Cは、24時間〜48時間に形成された線維量を、結合ThT蛍光を定量化することにより測定する、代表的ThTアッセイを示す。コンストラクト3は、Aβ42線維の形成を強力に阻害する。
図31Dは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのコンストラクト3についての楕円率対波長を示す。総合すると、これらのデータは、Aβ42アセンブリーを阻害するコンストラクト3の能力を確認する。
【
図31B】
図31は、Aβ42アセンブリーがrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)により阻害されることを示す代表的円二色性データを表す。円二色性は、評価されるべきAβ線維のα−らせん体及びβ−シート含量を測定する。
図31Aは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42についての楕円率対波長を示す。
図31Bは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42+コンストラクト3についての楕円率対波長を示す。
図31Cは、24時間〜48時間に形成された線維量を、結合ThT蛍光を定量化することにより測定する、代表的ThTアッセイを示す。コンストラクト3は、Aβ42線維の形成を強力に阻害する。
図31Dは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのコンストラクト3についての楕円率対波長を示す。総合すると、これらのデータは、Aβ42アセンブリーを阻害するコンストラクト3の能力を確認する。
【
図31C】
図31は、Aβ42アセンブリーがrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)により阻害されることを示す代表的円二色性データを表す。円二色性は、評価されるべきAβ線維のα−らせん体及びβ−シート含量を測定する。
図31Aは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42についての楕円率対波長を示す。
図31Bは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42+コンストラクト3についての楕円率対波長を示す。
図31Cは、24時間〜48時間に形成された線維量を、結合ThT蛍光を定量化することにより測定する、代表的ThTアッセイを示す。コンストラクト3は、Aβ42線維の形成を強力に阻害する。
図31Dは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのコンストラクト3についての楕円率対波長を示す。総合すると、これらのデータは、Aβ42アセンブリーを阻害するコンストラクト3の能力を確認する。
【
図31D】
図31は、Aβ42アセンブリーがrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)により阻害されることを示す代表的円二色性データを表す。円二色性は、評価されるべきAβ線維のα−らせん体及びβ−シート含量を測定する。
図31Aは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42についての楕円率対波長を示す。
図31Bは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのAβ42+コンストラクト3についての楕円率対波長を示す。
図31Cは、24時間〜48時間に形成された線維量を、結合ThT蛍光を定量化することにより測定する、代表的ThTアッセイを示す。コンストラクト3は、Aβ42線維の形成を強力に阻害する。
図31Dは、T=0、T=24時間、及びT=48時間でのコンストラクト3についての楕円率対波長を示す。総合すると、これらのデータは、Aβ42アセンブリーを阻害するコンストラクト3の能力を確認する。
【
図32】
図32は、M13(コンストラクト2)及びrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)が、N2a細胞のオリゴマーにより誘導される毒性をブロックすることを示す代表的なデータを示す。例えば、Stine et al. (2003) J. Biol. Chem. 278(13): 11612−11622、及びStine et al. (2011) Erik D. Roberson (ed.) Alzheimer’s Disease and Frontotemporal Dementia, Methods in Molecular Biology, vol. 670: 13−32を参照。処置前48時間の血清飢餓状態により、N2a細胞を分化させた。Aβ42オリゴマー(2μM)を、N2a細胞に添加する前に、コンストラクト2及びコンストラクト6と、37℃で3時間プレインキュベーションした。時間ゼロ(「TO」)複合体はプレインキュベーションしなかった。インキュベーション24時間後、アデニル酸キナーゼ(「AK」)放出をモニターした。培地中へのAK放出は細胞死/溶解を示す。Aβ42オリゴマーをStine et.al., 2011により記載される通り作成した。結果は、M13及びrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fcは、毒性オリゴマーの強力な阻害剤であることを示す。
【
図33】
図33は、6種類の濃度のAβ42線維+又は−1×10
12/ml M13(コンストラクト2);80nm及び800nM rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fcコンストラクト(コンストラクト5);及び80nm及び800nM rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)を比較するフィルタートラップアッセイを示す。Aβ42線維を、コンストラクト2、5、及び6と37℃で3日間インキュベーションし、その後濾過遅延した。フィルターを、フィルターにトラップされたAβ42線維を認識するmAb6E10(1:15000)により調べた。800nMコンストラクト5又はコンストラクト6は、分子モル濃度5×10
14/mlコンストラクト2と同等である。結果は、コンストラクト2、5、及び6がβ−アミロイド線維を強力に脱凝集させることを示す。
【
図34】
図34A及び34Bは、ftauとのプレインキュベーションの3時間後、fAβ42に結合したM13(コンストラクト2)の量を測定するために用いた代表的アッセイを示す。コンストラクト2に結合した、5μM Aβ42モノマーを、4種類の濃度のftauの存在下又は不存下、37℃で3時間インキュベーションした。fAbeta:M13−Alexa488はペレット形成するが、ftau:M13−Alexa488はペレット形成せず、ペレット形成した物質からの蛍光の消失の測定は、ftauがfAbeta結合と競合することを示す。故に、3時間後、形成されたM13−fAβの量を、ペレット形成結合競合反応におけるAlexa488蛍光を定量化することにより測定した。結果は、ftauが、fAβ42結合に対してM13−Alexa488(コンストラクト2)と競合できることを示す。
【
図35】
図35は、ftauに結合するrs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc(コンストラクト4)の能力を試験する1つの代表的SPRアッセイの結果を示す。結果は、コンストラクト4がftauと強力に結合することを示す。
【
図36A】
図36は、ftauを脱凝集させるrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の能力を示す。タウ線維を、40μM タウの微小管結合反復領域(「MTBR」)を50mMスーパーオキシドジスムターゼ(「Sod」)に希釈することにより、調製した。種々の濃度のコンストラクト6及び予め調製したftauを、酢酸バッファー中、pH7.0、37℃、72時間インキュベーションした。ThT蛍光を、5倍を超えるThTの存在下で記録した。
図36Aは、ftauを脱凝集させるコンストラクト6の能力を示す代表的ThTアッセイの結果を示す。
図36Bは、タウを脱凝集させるコンストラクト6の能力を確認する別の代表的な実験を示す。
図36A及び36Bはまた、コンストラクト6によるftauの脱凝集が用量依存性であることを示す。
【
図36B】
図36は、ftauを脱凝集させるrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の能力を示す。タウ線維を、40μM タウの微小管結合反復領域(「MTBR」)を50mMスーパーオキシドジスムターゼ(「Sod」)に希釈することにより、調製した。種々の濃度のコンストラクト6及び予め調製したftauを、酢酸バッファー中、pH7.0、37℃、72時間インキュベーションした。ThT蛍光を、5倍を超えるThTの存在下で記録した。
図36Aは、ftauを脱凝集させるコンストラクト6の能力を示す代表的ThTアッセイの結果を示す。
図36Bは、タウを脱凝集させるコンストラクト6の能力を確認する別の代表的な実験を示す。
図36A及び36Bはまた、コンストラクト6によるftauの脱凝集が用量依存性であることを示す。
【
図37A】
図37は、経時的な、rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)及びrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)によるAβ凝集の阻害を示す代表的な実験を示す。Aβ42をDMSOに溶解し、NaN3を含有するPBSに希釈した。Aβ42を、37℃+又は−種々の濃度のコンストラクト3及びコンストラクト6で凝集した。Aβ42の凝集をThT蛍光により測定した。
図37Aは、試料のSDS PAGEを示す。
図37Bは、1つの代表的な実験の結果を示す。
図37Cは、別の代表的な実験由来の結果を示す。
図37Dは結果を概説する。
【
図37B】
図37は、経時的な、rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)及びrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)によるAβ凝集の阻害を示す代表的な実験を示す。Aβ42をDMSOに溶解し、NaN3を含有するPBSに希釈した。Aβ42を、37℃+又は−種々の濃度のコンストラクト3及びコンストラクト6で凝集した。Aβ42の凝集をThT蛍光により測定した。
図37Aは、試料のSDS PAGEを示す。
図37Bは、1つの代表的な実験の結果を示す。
図37Cは、別の代表的な実験由来の結果を示す。
図37Dは結果を概説する。
【
図37C】
図37は、経時的な、rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)及びrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)によるAβ凝集の阻害を示す代表的な実験を示す。Aβ42をDMSOに溶解し、NaN3を含有するPBSに希釈した。Aβ42を、37℃+又は−種々の濃度のコンストラクト3及びコンストラクト6で凝集した。Aβ42の凝集をThT蛍光により測定した。
図37Aは、試料のSDS PAGEを示す。
図37Bは、1つの代表的な実験の結果を示す。
図37Cは、別の代表的な実験由来の結果を示す。
図37Dは結果を概説する。
【
図37D】
図37は、経時的な、rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)及びrs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)によるAβ凝集の阻害を示す代表的な実験を示す。Aβ42をDMSOに溶解し、NaN3を含有するPBSに希釈した。Aβ42を、37℃+又は−種々の濃度のコンストラクト3及びコンストラクト6で凝集した。Aβ42の凝集をThT蛍光により測定した。
図37Aは、試料のSDS PAGEを示す。
図37Bは、1つの代表的な実験の結果を示す。
図37Cは、別の代表的な実験由来の結果を示す。
図37Dは結果を概説する。
【
図38A】
図38A及び
図38Bは、PrPのPrP−Scへの変換を阻害するrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の能力を示す実験の結果を示す。コンストラクト6及びIgG細胞溶解物を、超遠心分離の対象にし、可溶性(上清)及び不溶性(ペレット)PrP種を分離させた。PrP種を、抗PrPモノクローナル抗体(6D11)で生化学的に視覚化した。IgGの存在下、可溶性及び不溶性分画の両方にPrPを分配する。コンストラクト6の存在下、可溶性PrP中に限定される。データはn=4を表す。
【
図38B】
図38A及び
図38Bは、PrPのPrP−Scへの変換を阻害するrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の能力を示す実験の結果を示す。コンストラクト6及びIgG細胞溶解物を、超遠心分離の対象にし、可溶性(上清)及び不溶性(ペレット)PrP種を分離させた。PrP種を、抗PrPモノクローナル抗体(6D11)で生化学的に視覚化した。IgGの存在下、可溶性及び不溶性分画の両方にPrPを分配する。コンストラクト6の存在下、可溶性PrP中に限定される。データはn=4を表す。
【
図39A】
図39A及び
図39Bは、プリオン病の細胞培養モデルにおける、PrP
Scの蓄積及び凝集を低減するrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の能力を示す実験の結果を示す。
図39Aは、コンストラクト6及びIgGでの処置後、生化学的に溶解された未切断及びPK切断N2a22L
Sc細胞溶解物を示す。PrP
Scレベルの有意な低減を、増加濃度のコンストラクト6で処理した細胞において明確に観察する。PrP
Scレベルの約50%低減を、〜0.08μg/mlコンストラクト6の処置で達成する。10μg/mlコンストラクト6での処理は、PrP
Scを5.725%、p<0.0001まで低減する。PrP
Scレベルの顕著な変化を、1μg/mlマウスIgGで処理したN2A22L
Sc細胞において観察しなかった。
図39Bについて、X線フィルムを続いてデジタル化し、100%であると見なされる同一の継代由来のIgG処理N2a22L
Sc細胞における効果に対して最初に正規化した。次に、PK切断ブロット由来の濃度測定データを、等しくブロッとした未切断の溶解物に対して分析し、パーセント変化PrP
Sc/PrPcとして表した。データはn=4を表す。
【
図39B】
図39A及び
図39Bは、プリオン病の細胞培養モデルにおける、PrP
Scの蓄積及び凝集を低減するrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の能力を示す実験の結果を示す。
図39Aは、コンストラクト6及びIgGでの処置後、生化学的に溶解された未切断及びPK切断N2a22L
Sc細胞溶解物を示す。PrP
Scレベルの有意な低減を、増加濃度のコンストラクト6で処理した細胞において明確に観察する。PrP
Scレベルの約50%低減を、〜0.08μg/mlコンストラクト6の処置で達成する。10μg/mlコンストラクト6での処理は、PrP
Scを5.725%、p<0.0001まで低減する。PrP
Scレベルの顕著な変化を、1μg/mlマウスIgGで処理したN2A22L
Sc細胞において観察しなかった。
図39Bについて、X線フィルムを続いてデジタル化し、100%であると見なされる同一の継代由来のIgG処理N2a22L
Sc細胞における効果に対して最初に正規化した。次に、PK切断ブロット由来の濃度測定データを、等しくブロッとした未切断の溶解物に対して分析し、パーセント変化PrP
Sc/PrPcとして表した。データはn=4を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、アミロイド結合及びアミロイド凝集の脱凝集の仲介における遺伝子3タンパク質(「g3p」、「p3」又は「pIII」としても知られている)の役割の発明者の認識に一部基づく。本発明はまた、アミロイドへの結合に必要なg3pの最小配列の発明者による同定に基づく。
【0019】
従って、ある種の実施態様において、本発明は、g3pに由来する最小共通アミロイド結合配列を含む分子、特にポリペプチドを提供する。これらの実施態様の1つの態様において、分子は可溶性である。これらの実施態様の別の態様において、分子は、アミロイドの凝集(例えば、アミロイドプラーク)を脱凝集させ、及び/又は予防する。これらの実施態様の別の態様において、分子は融合タンパク質である。これらの実施態様のより具体的な態様において、分子は、免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列を更に含む融合タンパク質である。これらの実施態様のなおより具体的な態様において、分子は、免疫グロブリンG(例えば、IgG)又は免疫グロブリンM(例えば、IgM)鎖のアミノ酸配列を更に含む融合タンパク質である。これらの実施態様のなお別の態様において、分子はg3pのN2ドメインを含む。これらの実施態様のより具体的な態様において、分子はg3pのN1−N2ドメインを含む。これらの実施態様のなお別の態様において、分子は全長g3pを含む。なお別の態様において、分子は、前述のいずれかのフラグメント、変異体、又は変種であるポリペプチドである。
【0020】
他の態様において、本発明は、TolAに結合する分子(例えば、TolA阻害分子、特にポリペプチド)であって、最小共通アミロイド結合配列を含む分子を提供する。本発明のTolA結合分子及び/又はTolA阻害剤は、アミロイドに結合し、脱重合し、アミロイドの凝集を予防し、脱凝集させる。TolA結合分子及び/又はTolA阻害分子は融合タンパク質を含む。ある種の実施態様において、TolA結合分子及び/又はTolA阻害分子は、コリシン又はコリシンのアミロイド結合フラグメントである。ある種の実施態様において、コリシンはグループAのコリシンである。例えば、Cascales et al., Microbiol. Mol. Biol. Rev. (2007) 71(1): 158−229を参照。本発明のTolA結合分子及びTolA阻害分子は、疾患(例えば、全身性及び限局性アミロイド病、神経変性タウオパチーを含む神経変性疾患、及び伝達性海綿状脳症(プリオン関連疾患))と関連するアミロイド負荷を低減するための有用な治療である。これらの疾患と関連するアミロイド負荷の蓄積を防ぐためのこれらの組成物の使用、及びアミロイドを検出し、故にかかる疾患を診断するための診断としてのこれらの組成物の使用も包含される。
【0021】
別の実施態様において、本発明は、野生型ファージと比較してg3pを過剰発現し、g3pのアミロイド結合フラグメント、g3pのアミロイド結合変異体又は変種形態、又はg3pを含むアミロイド結合融合タンパク質を発現するよう修飾された糸状バクテリオファージを提供する。
【0022】
本発明は、物質の組成物、及び/又は前述の分子又はバクテリオファージのいずれかの医薬組成物、並びにアミロイドの凝集に結合し、脱凝集させ、予防するためのその使用、及びアミロイド沈着を検出するためのその使用、及びアミロイドにより特徴付けられる疾患及び異常を診断するためのその使用を提供する。
【0023】
定義
用語「g3p」は、単独、又は用語(例えば、「g3p−由来」)において用いられるとき、任意の野生型又は組み換え糸状ファージg3pタンパク質(g3pのフラグメント、変種、及び変異体を含む)に言及する。用語は、任意の具体的な糸状バクテリオファージg3pに限定すると解されるべきではない。例示のため、用語「g3p」は、配列番号:1、及び
図2に示される関連タンパク質を含む。
【0024】
用語「糸状バクテリオファージ」は、野生型糸状バクテリオファージ、及び組み換え糸状バクテリオファージの両方を含む。本出願において、「糸状バクテリオファージ」はまた、「バクテリオファージ」、「ファージ」、又は「M13」として言及され得る。
【0025】
本明細書において用いられる用語「野生型糸状バクテリオファージ」は、天然で見出される糸状ファージ、任意のヌクレオチド又はアミノ酸配列データベースにおいて「野生型」として示された糸状ファージ、市販され、かつ「野生型」として特徴付けられる糸状バクテリオファージ、及び継代を通じて前述のいずれかに関連する非組み換え変異を獲得した糸状バクテリオファージに言及する。
【0026】
用語「ドメイン」は、例えば、ポリペプチド鎖の1つの部分からなる独立して折り畳まれた構造を含む、いくつかの独特の物理的特徴又は役割を有するポリペプチド(タンパク質を含む)の領域を意味する。ドメインは、ポリペプチドの独特の物理的特性である配列を含有し得るか、又はその結合特徴を保持する(すなわち、第2のドメインに結合することができる)、物理的特性のフラグメントを含有し得る。ドメインは別のドメインと関連し得る。言い換えると、第1のドメインは、第2のドメインに天然で結合し得る。例えば、g3pN2ドメインはF−piliを結合し、g3pN1ドメインはTolAを結合する。
【0027】
本明細書において用いられる、用語「アミロイド」、「アミロイド原線維」、及び「アミロイド線維」は、いくつかの異なるタンパク質のいずれかの凝集により形成され、線維軸に垂直に積み重なったβシートの規則正しい配列からなる3次構造の属名である(Sunde et al., J. Mol. Biol. (1997) 273:729−39)。1つの典型的なアミロイドは、アルツハイマー病において形成されたアミロイド−βの凝集体であり、ベータ−アミロイドペプチド「βA」からなり、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(hAPP)から切断された39〜43個のアミノ酸内部フラグメントである。短い形態(例えば、Aβ40)、及び長い形態(例えば、より線維素生成AβアイソフォームであるAβ42)が存在する。他の典型的なアミロイドタンパク質は、誤って折り畳まれたα−シヌクレイン(パーキンソン病と関連する)、ハンチンチン(ハンチントン病と関連する)、タウ(アルツハイマー病と関連する)、及びプリオンタンパク質の異常構造PrP
Scを含む。更なる例が明細書を通じて提供され、当業者に知られている(例えば、Aguzzi (2010), and Eichner and Radford, Mol. Cell (2011) 43:8−18を参照)。従って、タンパク質又はペプチドが特定されない限り、用語「アミロイド」、「アミロイド原線維」、又は「アミロイド線維」の使用は、任意の具体的なタンパク質又は疾患に限定すると解されるべきではない。
【0028】
用語「ベータアミロイドペプチド」は、「β−アミロイドペプチド」、「βAP」、「βA」、及び「Aβ」と同義である。これらの用語の全てが、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(hAPP)に由来するアミロイド形成ペプチドに言及する。
【0029】
ファージ、タンパク質、融合タンパク質、融合タンパク質ドメイン、又は「アミロイド原線維を結合する」か、又は「アミロイド結合している」前述のものの変異体、フラグメント、又は変種は、アミロイド結合アッセイにおいてポジティブなものである。アミロイド結合は、直接的結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴(SPR))を用いてインビトロで検出され得る(この場合、それは一般的にアミロイドと少なくとも10
−8M、10
−9M、10
−10M、又は10
−11MのKdで結合する)。或は、アミロイド結合は、本実施例に記載されるfAβ42結合アッセイを用いて検出され得る。g3pのアミロイド結合フラグメント、変種、及び変異体はまた、任意のタンパク質ミスフォールディング病のトランスジェニックマウスモデルに注射されたとき、アミロイドへの共局在化によっても同定され得る。
【0030】
「脱凝集すること」又は「脱凝集を仲介すること」として記載される本発明の生成物又は組成物のいずれかは、既に形成された凝集体を低減する。脱凝集はフィルタートラップアッセイにより測定され得る(Wanker et al., Methods Enzymol (1999) 309:375−86)。フィルタートラップアッセイは、本明細書に記載され、これを用いて、凝集体が検出され、本発明の組成物により仲介される脱凝集がモニタリングされ得る。脱凝集は、増加濃度の脱凝集化剤の存在下での染色の低下により示される、フィルター上のアミロイド保持の低減として検出される。
【0031】
本明細書で用いられる、「アミロイドを低減する」組成物は、次の1つ又は複数を行う:アミロイド形成を阻害する、アミロイド脱凝集を引き起こす、アミロイドクリアランスを促進する、アミロイド凝集を阻害する、毒性アミロイドオリゴマーの形成をブロックするか及び/又は予防する、及び/又は毒性アミロイドオリゴマーのクリアランスを促進する。
【0032】
「神経細胞のアミロイド損傷からの保護」としての本発明の生成物又は組成物のいずれかは、新たなアミロイドの蓄積を予防し、及び/又は毒性アミロイドオリゴマーの形成を予防する。「神経細胞のアミロイド損傷からの保護」として記載される本発明の生成物又は組成物は、予防的に摂取され得る。生成物又は組成物が神経細胞をアミロイド損傷から保護するかどうかは、本明細書に記載される神経細胞培養物細胞毒性アッセイにより測定され得る。
【0033】
本明細書で用いられる「PrPタンパク質」、「PrP」、及び「プリオン」は、適当な条件下で、タンパク質ミスフォールディング病に関与する凝集体の形成を誘導することができるポリペプチドに言及する。例えば、正常な細胞プリオンタンパク質(PrP
c)は、かかる条件下で、疾患(例えば、ウシ海綿状脳症(BSE)、又は狂牛病、猫海綿状脳症、クールー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、及び致死性家族性不眠症(FFI)(これらに限定されない))に関与する、対応するスクレイピーアイソフォーム(PrP
Sc)に変換される。
【0034】
本明細書でバクテリオファージ、タンパク質、ポリペプチド、又はアミノ酸配列(例えば、g3p変種、又はg3pのアミロイド結合フラグメントの変種)と組み合わせて用いられる、用語「変種」は、参照物質と比較して、少なくとも1個のアミノ酸相違(置換、挿入、又は欠損)を含有する対応する物質に言及する。ある種の実施態様において、「変種」は、参照配列と比較して、高いアミノ酸配列相同性、及び/又は保存的アミノ酸置換、欠損、及び/又は挿入を有する。いくつかの実施態様において、変種は、参照配列と比較して、わずか75、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個のアミノ酸相違を有する。「保存的置換」は、g3pタンパク質又はg3pのアミロイド結合フラグメントの化学的、物理的、及び/又は機能的特性を実質的に変えない、第1のアミノ酸の第2のアミノ酸による置換に言及する(例えば、g3pタンパク質又はアミロイド結合フラグメントは、同一の電荷、構造、極性、疎水性/親水性を保持し、及び/又は機能(例えば、アミロイドを認識し、結合し、及び/又は低減する能力)を保存する)。かかる保存的アミノ酸修飾は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性(例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなど)に基づく。種々の前述の特徴を考慮した典型的な保存的置換は、当業者に周知であり、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;及びバリン、ロイシン、及びイソロイシンを含む。
【0035】
用語「変異体」(例えば、「変異体g3p」又は「変異体アミロイド結合フラグメント」)は、治療上又は診断上の有効性を調節するために、1個又は複数のアミノ酸で変異誘発されているタンパク質に言及する。ある種の実施態様において、変異体は、アミロイドと相互作用することが知られているアミノで置換、欠損、及び/又は挿入を含有する。他の実施態様において、変異体は、野生型g3p又はそのアミロイド結合フラグメント中に存在する保存アミノ酸であるアミノでの置換、欠損、及び/又は挿入を含有する。いくつかの実施態様において、変異体は、参照配列と比較して、わずか75、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個のアミノ酸相違を有する。いくつかの実施態様において、アミノ酸置換は保存的置換である。用語「変種」及び「変異体」は、「変種」が典型的には天然の非組み換え体であり、他方「変異体」は典型的には組換え体であることを除き、本明細書において互換的に用いられる。
【0036】
本明細書において用いられる、用語「高度にストリンジェンシー」は、例えば、DNAの長さに基づき、当業者により容易に決定される条件を含む。一般に、かかる条件は、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2 ed. Vol. 1, pp. 1.101−104, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)において定義され、ニトロセルロースフィルター用プレ洗浄溶液(5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(PH8.0))の使用、50%ホルムアミド、6×SSC、42℃のハイブリダイゼーション条件(又は50%ホルムアミド中、42℃での他の類似のハイブリダイゼーション溶液(例えば、スタークス溶液))、及び約68℃、0.2×SSC、0.1%SDSでの洗浄を含む。当業者は、温度及び洗浄溶液の塩濃度が、要因(例えば、プローブの長さ)に従い必要に応じて調節され得ることを理解するだろう。
【0037】
本明細書において用いられる、用語「中程度にストリンジェンシー」は、例えば、DNAの長さに基づき、当業者により容易に決定され得る条件を含む。基本的な条件は、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. Vol. 1, pp. 1.101−104, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)により説明され、ニトロセルロースフィルター用プレ洗浄溶液(5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0))の使用、50%ホルムアミド、6×SSC、42℃でのハイブリダイゼーション条件(又は50%ホルムアミド中、42℃での他の類似のハイブリダイゼーション溶液(例えば、スタークス溶液))、及び60℃、0.5×SSC、0.1%SDSの洗浄条件を含む。
【0038】
用語「高い配列相同性」は、既知のコンピュータープログラム(例えば、Bestfitプログラム)を用いて測定された、参照配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列相同性を意味する。
【0039】
「融合タンパク質」は、少なくとも2つのポリペプチドドメインを含む天然に存在しないタンパク質である。
【0040】
「g3p融合タンパク質」は、第2のドメインに結合したg3pタンパク質を含む。
【0041】
「N1−N2融合タンパク質」(「N1N2融合タンパク質」とも呼ばれる)は、第2のドメインに結合したg3pタンパク質の、N1及びN2ドメイン(又はいずれかの変異体、フラグメント、又は変種)を含むが、N3/CTドメインを含まない。N1N2融合タンパク質は、ヒンジ領域を含んでも、含まなくてもよい。
【0042】
「N2融合タンパク質」は、第2のドメインに結合したg3pタンパク質の、N2ドメイン(又はN2の変異体、フラグメント、又は変種)を含むが、N1又はN3/CTドメインのいずれかを含まない。N2融合タンパク質は、ヒンジ領域を含んでも、含まなくてもよい。
【0043】
本明細書で用いられる「コンストラクト1」は、野生型M13(Genbankファイル:NC_003287.2、バージョンGI:56718463を参照)からもたされる。コンストラクト1において、野生型M13と比較して、Ser378(AGC)はGly(GGC)に変更され、Ile87(ATT)はAsn(AAC))に変更される。コンストラクト1は、配列番号:10のアミノ酸を含む。
【0044】
「コンストラクト2」は、野生型M13単離物(GenBank JX412914.1)である。コンストラクト2は、配列番号:12のアミノ酸を含む。
【0045】
「コンストラクト3」は、配列番号:20のアミノ酸を含むg3pのN1及びN2ドメインを含む組み換え可溶性g3pフラグメント(rs−g3p(N1N2))である。
【0046】
「コンストラクト4」は、配列番号:9のアミノ酸を含む組み換え可溶性g3pフラグメントIgG4Fc融合タンパク質(rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc)である。「コンストラクト4」のN1N2領域は、「コンストラクト1」のN1N2領域からもたらされる。
【0047】
「コンストラクト5」は、配列番号:11のアミノ酸を含む組み換え可溶性g3pフラグメントIgG4Fc融合タンパク質(rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc)である。「コンストラクト5」のN1N2領域は、「コンストラクト2」のN1N2領域からもたらされる。
【0048】
「コンストラクト6」は、配列番号:13のアミノ酸を含む組み換え可溶性g3pフラグメントIgG1Fc融合タンパク質(rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc)である。「コンストラクト6」のN1N2領域は、「コンストラクト2」のN1N2領域からもたらされる。
【0049】
g3pの供給源
糸状バクテリオファージは、グラム陰性細菌(例えば、エシェリキア・コリ(E. coli))に感染する関連ウイルスの群である。例えば、Rasched and Oberer, Microbiology Reviews (1986) Dec:401−427を参照。糸状バクテリオファージの例は、Ffファミリーのファージ(すなわち、少なくともM13、f1、及びfd)、及びIファミリーのファージ(すなわち、少なくともI22、Ike、If1)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
全ての天然に存在する糸状バクテリオファージは、g3pを、1個のファージ当たり3〜5コピー中に存在する少量のコートタンパク質として含有する。従って、本発明の1つの態様において、単離g3pは、任意の天然に存在する糸状バクテリオファージから得られる。g3pの組み換え形態も産生され得る。組み換えg3pは、任意の天然に存在する糸状バクテリオファージ由来の野生型g3pに対応し得る。従って、組み換え単離g3pも本発明により包含される。
【0051】
ファージM13由来のg3pの1つの例は、配列番号:1に表される。特に明確に特定しない限り、記載される任意のg3p変異は、以下に明確かつ注釈付きの形で配列番号:1に関連して示される。
【化1】
【表1】
配列番号:1は、取り除かれた18個のアミノ酸シグナルペプチドを有するGenBank NP−510891.1であり、従って、アミノ酸番号は成熟型g3pについてである。シグナルペプチドは一般に任意の発現ベクターに含まれ、シグナルペプチドを含む未成熟型g3pは、文脈が特に排除されることを明確にしない限り、本発明の種々の実施態様の範囲内に含まれる。配列番号:1は、ただ参照配列として提供される。それは決して本発明を制限することを意図しない。
【0052】
複数の供給源由来のg3pの配列が知られている。Ffファミリーのバクテリオファージについての典型的なg3pアミノ酸配列は、UniProt受託番号P69169(ファージf1)、P03661(ファージfd)、及びP69168(ファージm13)において見出されるものを含む。Iファミリーのバクテリオファージについての典型的なg3pアミノ酸配列は、P15415(ファージI22)、P03663(ファージIke)、及びO80297(ファージIf1)を含む。いくつかのg3p配列のアライメントは
図2に示される。
【0053】
本発明において有用なG3pはまた、g3pのフラグメント、変異体、及び/又は変異体を含む。変異体又は変種は、全長g3pに関連して、又はg3pのフラグメントに関連して記載され得る。アミロイドに結合する能力を保持する変異体及び/又は変種を含む任意の全長又はフラグメントg3pは、アミロイドを脱凝集させる能力にも関わらず、本発明の範囲内である。かかるg3pを「含む」任意のタンパク質もまた本発明により包含される。同様に、かかるg3pを「含む」、「からなる」、「本質的にからなる」、又は「有する」タンパク質もまた包含される。
【0054】
g3pのアミロイド結合及びアミロイド凝集フラグメント
言及される通り、g3pは、N1−N2複合体を形成するために相互作用する2個のアミノ末端ドメインN1及びN2、及び1個のカルボキシ末端ドメインN3(「CT」とも呼ばれる)を有する。Ffファージなら、N1ドメインは成熟型g3pの残基1〜67を含み、N2ドメインは成熟型g3pの残基87〜217を含む。残基87〜123は、N1とN2の間での会合及び閉合を可能にするヒンジを形成する。時に、ヒンジはN2の一部と考えられ、一方他の例では別個のエレメントとして処理される。N1及びN2はまた、可動性グリシンリッチなリンカー配列により結合される。N1において、Cys7とCys36の間、及びCys46とCys53の間の2つのジスルフィド架橋が存在する。Cys188とCys201の間のN2における単一のジスルフィド架橋が存在する。N3/CTドメインは残基257〜406を含む(Hollinger, 1999; Marvin, 1998)。カルボキシ末端ドメインにおいて、Cys354とCys371の間のジスルフィド架橋が存在する(Marvin, 1998)。g3pにおいてドメイン間ジスルフィド架橋は存在しない。
【0055】
g3pのアミロイド結合フラグメントの非限定的な例は、ヒンジ(例えば、少なくとも配列番号:1の残基87〜217)を有するか、又はヒンジ(例えば、少なくとも配列番号:1の残基124〜217)を有しないN2ドメイン、及び介在性リンカー配列(例えば、配列番号:1の残基68〜86あり又はなしのいずれか)を有するか又は有しない、又はヒンジを有するか又は有しないN1−N2ドメイン(例えば、少なくとも配列番号:1の残基1〜67及び87〜217)を含む。前述の例のいずれかにおいて、N2又はN1N2フラグメントは、野生型糸状バクテリオファージにおいて見出されるN2又はN1N2、又は組み換えN2又はN1N2であり得る。前述の例のいずれかにおいて、N2又はN1N2フラグメントは、野生型糸状バクテリオファージ配列の変異体又は変種であり得る。
【0056】
g3pの有用なアミロイド結合フラグメントは、アミロイドを脱凝集させるフラグメントの能力にも関わらず、アミロイドに結合する能力を保持するN2及びN1N2フラグメントを含むg3pの任意のフラグメントを含む。かかるアミロイド結合フラグメント(又はその変異体又は変種)を「含む」任意のタンパク質は本発明により包含される。同様に、g3pフラグメント又は変種を「含む」、「からなる」、「本質的にからなる」、又は「有する」タンパク質もまた包含される。
【0057】
N2及びN2ポリペプチド変異体及び変種
fd、f1、M13、Ike、I2−2、及びIf1由来のN2の1次構造アライメントは、
図26として示される。fdのアミノ酸は配列番号:14に、f1は配列番号:15に、M13は配列番号:16に、Ikeは配列番号:17に、I2−2は配列番号:18に、If1は配列番号:19に示される。この図及びアライメントをガイドとして用いて、本発明の1つの実施態様は、任意のアミロイド結合フラグメントを含む、N2ポリペプチド、N2ポリペプチド変異体、及びN2ポリペプチド変種を包含する(配列番号:14、15、16、17、18、又は19のアミノ酸を含む)。
【0058】
他の実施態様において、N2ポリペプチドは、配列番号:14、15、16、17、18、又は19のいずれか1つのアミノ酸配列で並べたとき、アミロイドに結合する能力を保持し、わずか75、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個のアミノ酸相違を含むアミノ酸配列を有するN2ポリペプチド変異体又は変種である。
図26において、アスタリスク「
*」は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示す。コロン「:」は、Gonnet PAM 250マトリックスにおいて0.5より高い値を示す非常に類似する特性の群間での保存を示す。ピリオド「.」は、Gonnet PAM 250マトリックスにおいて0.5以下の値を示す若干類似の特性の群間での保存を示す。これらの実施態様のいくつかの態様において、N2ポリペプチド変異体又は変種は、「
*」で示される任意の位置でアミノ酸相違を含まない。より具体的な態様において、N2ポリペプチド変異体又は変種は、
図26において、「
*」で示される任意の位置でアミノ酸相違を含まず、「:」で示される各位置での配列番号:14、15、16、17、18、又は19の少なくとも1つとして同一のアミノ酸を含む。なおより具体的な態様において、N2ポリペプチド変異体又は変種は、
図26において、「
*」で示される任意の位置でアミノ酸相違を含まないが、「:」で示される各位置及び「.」で示される各位置で配列番号:14、15、16、17、18、又は19の少なくとも1つとして同一のアミノ酸を含む。
【0059】
他の実施態様において、N2ポリペプチド変種は、配列番号:14、15、16、17、18、又は19に類似のパーセントアミノ酸を特定することにより記載される(但し、N2ポリペプチド変種がアミロイドに結合する)。これらの実施態様において、N2ポリペプチドは、配列番号:14、15、16、17、18、又は19に示される参照配列のアミノ酸に渡り少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する。
【0060】
他の実施態様において、N2ポリペプチドは、配列番号:1のN2領域に類似のパーセントアミノ酸を特定することにより記載される(但し、N2ポリペプチド変種はアミロイドに結合する)。これらの実施態様において、N2ポリペプチド変種は、配列番号:1のN2領域に渡り、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する。
【0061】
なお他の実施態様において、N2ポリペプチドは2次又は3次構造により記載される。fd−N2及びIf1−N2ドメインは、エシェリキア・コリ中のF−線毛上の同一部位に結合する表面の相同部分を使用することが知られている(例えば、990でのLorenz et al., J Mol Biol. 405:989−1003 (2011))。F−線毛へのN2結合を仲介するアミノ酸残基及び2次及び3次構造はまた、アミロイドへのN2結合も仲介する。従って、N2のF−線毛結合の基準であるアミノ酸残基及び2次及び3次構造はまた、N2−アミロイド結合の基準である。N2−F−線毛結合の領域において2次及び3次構造を維持することを必要とされるアミノ酸を含むN2ポリペプチド変種は、本発明の範囲内である。
【0062】
N1N2及びN1N2ポリペプチド変異体及び変種
fd、f1、及びM13の1次構造アライメントは
図2Aとして、Ike、I2−2、及びIf1は
図2Bとして示される。このアライメントをガイドとして用いて、本発明の1つの実施態様は、
図2の配列に関連して同定される通り、fd、f1、及びM13間、又はI2−2、Ide、及びIf1間で保存されるアミノ酸配列を含む、N1N2ポリペプチド、ポリペプチド変異体、又はポリペプチド変種を包含する。他の実施態様において、N1N2ポリペプチドは、アミロイドに結合する能力を保持し、配列番号:1、2、3、5、又は6のいずれか1つのアミノ酸配列で整列させたとき、わずか75、50、40、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個のアミノ酸相違を含むアミノ酸配列を有するN1N2ポリペプチド変異体又は変種である。
【0063】
他の実施態様において、N1N2ポリペプチド、変異体又は変種は、配列番号:1のN1N2領域に類似のパーセントアミノ酸を特定することにより記載される(但し、N1N2ポリペプチド変種はアミロイドに結合する)。これらの実施態様において、N1N2ポリペプチド変種は、配列番号:1のN1及びN2領域に渡り少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する。
【0064】
融合タンパク質
1つの態様において、本発明は融合タンパク質に関する。融合タンパク質は、g3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、TolA結合分子、又はTolA阻害剤を含む。変異体又は変種g3p、又はg3pフラグメントを含む融合タンパク質は完全に包含される。融合タンパク質は、通常関連しない少なくとも1個の追加のタンパク質又はタンパク質ドメインに結びつき、融合し、共役結合し、結合し、又は関連する。1つの実施態様において、融合タンパク質は、第2のドメインに結合したg3pタンパク質を含むg3p融合タンパク質である。別の実施態様において、融合タンパク質は、第2のドメインに結合したg3pタンパク質のアミロイド結合フラグメントである。別の実施態様において、融合タンパク質はN1N2融合タンパク質であり、g3pタンパク質のN1及びN2ドメインを含むが、CTドメインを含まない。なお別の実施態様において、融合タンパク質はN2融合タンパク質であり、g3pタンパク質のN2ドメインを含むが、N1又はCTドメインを含まない。示される通り、本発明のいくつかの態様は、変異体又は変種g3pタンパク質又はそのアミロイド結合フラグメント、及びアミロイド線維に結合する変異体又は変種N1N2又はN2ドメインに関する。従って、これらの変異体又は変種形態を含む融合タンパク質はまた本発明の一部である。
【0065】
g3p又はアミロイド結合フラグメント、及び融合パートナーポリペプチドは、g3p又はアミロイド結合フラグメントポリペプチドのN末端又はC末端のいずれかに直接又は短いペプチドリンカーを解して結合した融合パートナーポリペプチドを有する連続アミノ酸配列の一部であり得る。かかる場合において、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント、及び融合パートナーポリペプチドは、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント、及び融合パートナーポリペプチドの両方をコードするコード配列からシグナルポリペプチドとして翻訳され得る。
【0066】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、免疫グロブリン定常領域を第2のドメインとして含む。対象のタンパク質、又はそのフラグメントに結合した免疫グロブリン定常領域を含む融合タンパク質が記載されている(例えば、米国特許第5,480,981号及び第5,808,029号;Gascoigne et al. 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:2936; Capon et al. 1989, Nature 337:525; Traunecker et al. 1989, Nature 339:68; Zettmeissl et al. 1990, DNA Cell Biol. USA 9:347; Byrn et al. 1990, Nature 344:667; Watson et al. 1990, J. Cell. Biol. 110:2221; Watson et al. 1991, Nature 349:164; Aruffo et al. 1990, Cell 61:1303; Linsley et al. 1991, J. Exp. Med. 173:721; Linsley et al. 1991, J. Exp. Med. 174:561; Stamenkovic et al., 1991, Cell 66:1133; Ashkenazi et al. 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535; Lesslauer et al. 1991, Eur. J. Immunol. 27:2883; Peppel et al. 1991, J. Exp. Med. 174:1483; Bennett et al. 1991, J. Biol. Chem. 266:23060; Kurschner et al. 1992, J. Biol. Chem. 267:9354; Chalupny et al. 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10360; Ridgway and Gorman, 1991, J. Cell. Biol. 115, Abstract No. 1448; Zheng et al. 1995, J. Immun. 154:5590を参照)。これらの分子は、通常、結合した対象分子と関連する生物学的活性、並びにエフェクター機能、又は免疫グロブリン定常領域と関連する他の所望の特徴(例えば、生物学的安定性、細胞分泌)の両方を有する。
【0067】
いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、免疫グロブリン定常領域のFcフラグメントを含む。Fc発現カセットは商業的に購入され得る。Fcフラグメントは、免疫グロブリンのCH2及びCH3ドメイン、及び免疫グロブリンのヒンジ領域からなることができる。Fcフラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のFcフラグメントであり得る。1つの特定の実施態様において、免疫グロブリン定常領域の一部は、IgG1のFcフラグメントである。別の実施態様において、免疫グロブリン定常領域の一部は、IgG4のFcフラグメントである。なお別の実施態様において、免疫グロブリン定常領域の一部は、IgMのFcフラグメントである。
【0068】
従って、1つの実施態様において、組み換え可溶性g3p又はアミロイド結合フラグメントは、標準的分子生物技術を用いて、免疫グロブリンFcドメインに融合される。組み換え可溶性g3p又はアミロイド結合フラグメントは、変異誘発されるか、又は変更され得る。例えば、g3pのアミロイド結合フラグメント(例えば、N1N2ドメイン又はN2ドメイン)は、IgGFc融合発現ベクターにクローン化され得る。典型的なIgGFc融合ベクターは、例えば、InvivoGenから入手可能なpFUSE−Fcベクターの1つを含む。いくつかの実施態様において、得られた2価(例えば、g3p(N1N2)−IgGFc又はg3p(N2)−IgGFc融合タンパク質)は、依然2価であるので、組み換え可溶性g3pより高いアミロイド結合に対する活性を有する。
【0069】
他の実施態様において、融合タンパク質は、g3p、又はg3pのアミロイド結合フラグメントに結合した非Fcタンパク質を含む。
【0070】
他の実施態様において、融合タンパク質は、少なくとも2個のg3pポリペプチド又はそのアミロイド結合フラグメントを含む。他の実施態様において、融合タンパク質は、3個以上のg3pポリペプチド、又はそのアミロイド結合フラグメントを含む。他の実施態様において、融合タンパク質は、5個のg3pポリペプチド、又はそのアミロイド結合フラグメントを含む。かかるダイマー及び多量体融合タンパク質は、1個より多いg3p、又はそのアミロイド結合フラグメントを含むので、より高い親和性相互作用をもたらす。
【0071】
他の実施態様において、融合タンパク質はアルブミンを含む。例えば、Fleerについて米国特許第6,686,179号を参照。
【0072】
全ての例において、融合タンパク質中のg3p又はg3pのアミロイド結合フラグメントは、その変異体及び変種を包含する。
【0073】
一般に、融合タンパク質は、対応する非結合g3p又はそのg3pフラグメントと少なくとも同等に有効に、アミロイドに結合する。適用可能なとき、融合タンパク質は、アミロイドの脱凝集の仲介、アミロイドクリアランスの促進、アミロイドの凝集の阻害、及び/又は毒性オリゴマーの形成の除去又は予防において、少なくとも対応する非結合g3p又はそのフラグメントと同等に有効である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、アミロイドに結合し、アミロイドの脱凝集の仲介、アミロイドクリアランスの促進、アミロイド凝集の阻害、及び/又は毒性オリゴマー形成の除去又は予防において、配列番号:1を含む組み換え可溶性g3pと少なくとも同等に有効である。なお他の実施態様において、融合タンパク質は、アミロイドに結合し、アミロイドの脱凝集の仲介、アミロイドクリアランスの促進、アミロイド凝集の阻害、及び/又は毒性オリゴマーの形成の除去又は予防において、少なくともファージM13と同等に有効である。なお他の実施態様において、融合タンパク質は、アミロイドに結合し、アミロイドの脱凝集の仲介、アミロイドクリアランスの促進、アミロイド凝集の阻害、及び/又は毒性オリゴマーの形成の除去又は予防において、ファージM13より有効である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は、アミロイドに結合し、タンパク質ミスフォールディング病におけるアミロイドの低減において、少なくともファージM13と同等に有効である。なお他の実施態様において、融合タンパク質は、アミロイドに結合し、タンパク質ミスフォールディング病におけるアミロイドの低減において、ファージM13より有効である。なお他の実施態様において、融合タンパク質は、アミロイドに結合し、アミロイド形成の予防において、少なくともファージM13と同等又はより有効である。
【0074】
融合タンパク質は、当該技術分野において周知の技術を用いて合成され得る。例えば、本発明の融合タンパク質は、細胞中で組み換え的に合成され得る(例えば、Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. and Ausubel et al. 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照)。或は、本発明の融合タンパク質は、既知の合成方法(例えば、固相合成)を用いて合成され得る。合成技術は当該技術分野において周知である(例えば、Merrifield, 1973, Chemical Polypeptides, (Katsoyannis and Panayotis eds.) pp. 335−61; Merrifield 1963, J. Am. Chem. Soc. 85:2149; Davis et al. 1985, Biochem. Intl. 10:394; Finn et al. 1976, The Proteins (3d ed.) 2:105; Erikson et al. 1976, The Proteins (3d ed.) 2:257;米国特許第3,941,763号を参照)。或は、最終コンストラクトは、組み換え的に産生された(しかし、非組み換え技術(例えば、ライゲーション化学)を用いて単純に産生され得る)融合タンパク質と同じ機能を本質的に共有し得る。融合タンパク質の成分は、g3p発現及びg3p変異について記載されたのと同じ一般的な方法論を用いて、調製され得る。
【0075】
いくつかの実施態様において、g3p又はアミロイド結合フラグメント(又はその変異体又は変種形態)は、(単独、又は別のタンパク質への融合、又は担体分子の取り込みに加えて)マーカー配列(例えば、融合ポリペプチドの精製を促進するペプチド)に融合され得る。マーカーアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen, Mississauga, Ontario, Canada)において提供されるタグ)(とりわけ、多くが市販されている)であり得る。Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1989) 86:821−824に記載される通り、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の通常の精製のため提供される。精製に有用な別のペプチドタグ、ヘマグルチニン(HA)タグは、インフルエンザHAタンパク質からもたらされるエピトープに対応する(Wilson et al., (1984) Cell 37:767)。
【0076】
g3pを過剰発現するファージ
別の態様において、本発明は、ファージにより発現されるg3pのコピー数を、野生型糸状バクテリオファージにおいて典型的に見出される3〜5コピーより多くまで増大するよう修飾されたバクテリオファージに関する。1つの実施態様において、増大した数のg3pを発現するファージは、天然に存在する変種から選択され得る。別の実施態様において、組み換え技術を用いて、g3pのコピー数が増大される。
【0077】
いくつかの実施態様において、g3p、又はg3pのアミロイド結合フラグメント(その変異体又は変種を含む)をコードする野生型配列を用いて、別のバクテリオファージコートタンパク質をコードする遺伝子の1つが置換され得る。置換されたバクテリオファージ遺伝子に依存して、g3p数は、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、500、1000、又はほぼ3000コピーまで増大され得る(例えば、遺伝子8コード配列を置換するため用いられるか、又は遺伝子8コード配列の末端に融合される遺伝子3コード配列の場合)。
【0078】
追加コピーのg3pを発現するファージを産生するために、g3pコード配列(又はその変異体又は変種形態)は、明細書中の他の箇所で記載される通り、クローン化される。次に、必要ならヘルパーファージと共に、g3pコード配列(又はその変異体又は変種形態)を用いて、別のファージ遺伝子が置換され、発現され得る。
【0079】
或は、いくつかの実施態様において、g3pコード配列(又はその変異体又は変種形態)は、介在性「スペーサー」配列あり又はなしのいずれかで、別のファージ遺伝子のコード配列にインフレームで融合される。別のタンパク質又はペプチドが「融合される」ファージタンパク質の調製方法は、ファージディスプレー技術分野において周知であり、g3p又はそのアミロイド結合フラグメントは、例えば、抗原又は抗体鎖と同じ方法で、「ディスプレー」され得る(E.g. Scott & Smith, Science (1990) 249:386−90; Devlin et al., Science (1990) 249:404−06)。g3pのフラグメントのみの発現が所望されるとき、フラグメント(又はその変異体又は変種形態)のコード配列は、g3p中に存在する天然のSer/Glyリンカー配列の1つがリンカーとして作用するように、他の遺伝子に結合され得る。いくつかの実施態様において、N2又はN1N2ドメイン(又はその変異体又は変種形態)のコード配列のみが、他の遺伝子にインフレームで融合される。
【0080】
変異体G3P及びアミロイド結合フラグメント
別の態様において、本発明は、変異体g3pタンパク質、及びその変異体アミロイド結合フラグメントに関する。融合タンパク質及び変異体g3pタンパク質及びアミロイド結合フラグメントを含むファージもまた、本発明の一部である。変異体g3p及びその変異体アミロイド結合フラグメントは、本出願に記載される医薬組成物の治療上の有効性に寄与する特性のため、産生されるか、又は選択され得る。例えば、g3p又はそのアミロイド結合フラグメントは、組み換え的に変異誘発されるか、又はM13のg3pに関連する以下の特性の1つ以上を有するよう選択される:アミロイド結合の親和性の増大、ヒンジTMの低減、親和性の増大(結合活性が、g3pが1個より多いアミロイド結合部位を含む全ての利用可能なアミロイド結合の和を記載するために用いられる点で、結合活性は親和性と区別される)、アミロイド凝集体を脱凝集させる能力の増大、又はアミロイド原線維の凝集を防ぐ能力の増大。或は、又は加えて、変異体g3p又はその変異体アミロイドフラグメントは、本明細書中の他の箇所に記載される他の有用な特性を取り込み得る。
【0081】
変異体g3pタンパク質は、ファージの変異誘発により、又は組み換え技術(例えば、PCRに基づく部位指定変異誘発又はランダム変異誘発)により産生され得る。
【0082】
いくつかの実施態様において、高い親和性を有する変異体は、M13を変異誘発し、次に、ストリンジェントな洗浄条件で結合したアミロイド親和性カラム上のファージを選択することにより、産生される。結合、洗浄、溶出、及び選択されたファージの拡大の十分な繰り返しにより、アミロイドへの高い親和性結合を有するファージが濃縮される。ファージ集団の増大した親和性が、アミロイドパニングを用いて達成されると、高い親和性を有する個々のクローンが選択され、分析される。この方法で、ファージ変異体は、ランダム変異誘発に従い高い親和性結合に対して選択される。
【0083】
G3p、又はその任意のアミロイド結合フラグメント(例えば、N1N2ドメイン又はN2ドメイン)はまた、組み換え技術を用いて変異誘発され得る。例えば、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント(例えば、N1N2又はN2)を有する、本明細書に記載されるベクターが、PCRに基づく変異誘発ストラテジーを用いて変異誘発され得る。次に、コード化された変異体タンパク質が発現され、変異体のアミロイド結合及び親和性が、記載の通り評価される。
【0084】
g3pの変異体アミロイド結合フラグメントはまた、変異体g3pからもたらされ得る。例えば、g3pを変異誘発すること、及び/又は所望の特性を有する変異体g3pについて選択し、そこから所望のアミロイド結合フラグメントを得ること(例えば、タンパク質分解及び続く精製による)。
【0085】
アミロイド結合の親和性を増大し、結合の温度感受性の変化のため、変異体g3pを生じるファージのスクリーニングを用いて、ファージのg3pの更なる特徴についてファージが同定され得る。特性(例えば、結合の温度感受性)についてのスクリーニングは、温度依存性の方法で行われる結合、洗浄、又は溶出工程の1つ又は複数を含むアミロイド親和性カラムを利用することができる。
【0086】
いくつかの実施態様において、変異体g3p又はg3pアミロイド結合フラグメントは、対応する未変異g3p又はM13由来のg3pフラグメントの結合より、少なくとも3、5、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、又は1000高い親和性でアミロイドに結合する。他の実施態様において、変異体g3p又はg3pアミロイド結合フラグメントは、対応する未変異g3p又はM13由来のアミロイド結合g3pフラグメントの結合との強さの少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%であるアミロイド結合を保持する。いくつかの実施態様において、対応する未変異形態より低いアミロイド結合親和性を示す変異体g3p又はアミロイド結合フラグメントはまた、対応する未変異形態と比較して改良された、別の所望の生物学的(例えば、アミロイドを脱凝集させるより高い能力;アミロイド原線維の凝集を予防するより高い能力)、又は医薬的(例えば、より高い代謝安定性、好ましい薬物動態特性、より高い溶解性)特性も有する。アミロイド結合は、実施例に記載される通り、表面プラズモン共鳴により、又は競合的ELISAにおいて評価され得る。
【0087】
いくつかの実施態様において、g3pの変種及び/又は変異体を、M13g3pへのハイブリダイゼーションを用いてDNAライブラリーをスクリーニングすることにより同定して、高度にストリンジェンシー又は中程度のストリンジェンシーな条件下のいずれかで、M13g3pにハイブリダイゼーションする関連DNAが選択され得る。
【0088】
いくつかの実施態様において、変異体g3pは、少なくとも1個のアミノ酸残基で、成熟型M13g3pタンパク質(配列番号:1)と異なるが、依然アミロイドに結合する、組み換え的に産生されるg3p又はそのアミロイド結合フラグメントである。いくつかの実施態様において、個々の点変異は、成熟型タンパク質の特定の残基でのM13g3pのアミノ酸を用意し、該残基でアミノ酸を置換することにより、特定される。例えば、「F194A」は、成熟型M13配列の位置194のフェニルアラニンがアラニンに変更されていることを意味する。他の実施態様において、変異体g3pは、配列番号:1に類似のパーセントアミノ酸を特定することにより記載される(但し、変異体g3pはアミロイド原線維に結合する)。これらの実施態様において、変異体g3pは、配列番号:1の全長に渡り、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する。これらの実施態様において、g3pの変異体アミロイド結合フラグメントに関して、変異体アミロイド結合フラグメントは、配列番号:1の対応するフラグメントの全長に渡り、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する。
【0089】
実際に、任意の特定のポリペプチドが、少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるかどうかは、通常、既知のコンピュータープログラム(例えば、Bestfitプログラム)を用いて決定され得る。特定の配列が、本発明による参照配列と例えば95%同一であることを決定するためにBestfit又は他の配列アライメントプログラムを用いるとき、パラメーター(もちろん、同一性のパーセンテージはクエリー配列に相同な参照アミノ酸配列の部分の全長に渡り計算される)が設定される。
【0090】
種々の態様のいくつかの実施態様において、変異体g3p及びそのアミロイド結合フラグメントは、Ffファミリー、I−ファミリー、又はFfとI−ファミリーの両方のg3p間で保存されるアミノ酸残基での変異を含まない。他の実施態様において、変異体g3p及びそのアミロイド結合フラグメントは、Ffファミリー、I−ファミリー、又はFfとI−ファミリーの両方のg3p間で保存される1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸残基での最大変異を含む。なお他の実施態様において、変異体g3p及びそのアミロイド結合フラグメントは、Ffファミリー、I−ファミリー、又はFfとI−ファミリーの両方のg3p間で保存されていない0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸残基での最大変異を含む。なお別の実施態様において、変異体g3p及びそのアミロイド結合フラグメントは、I22、Ike、及びIf1の1個又は複数間で保存されていない0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸残基での最大変異を含む。なお他の実施態様において、変異体g3p及びそのアミロイド結合フラグメントは、Ffファミリー、I−ファミリー、又はFfとI−ファミリーの両方のg3p間で保存されていない1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸残基での最大変異を含む。いくつかの実施態様において、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の変異は、N1ドメイン内に位置する。いくつかの実施態様において、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の変異は、N2ドメイン内に位置する。いくつかの実施態様において、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の変異は、N2ドメイン内に位置するが、ヒンジ領域内に位置しない。
【0091】
部位指定変異誘発は、g3p、N1N2、又はN2ドメインの安定性に重要であると知られている残基を標的にし得る。例えば、D94及びT95;E115;N122;L125;E126及びE127;E127及びE128;Q129;Q145;T154及びT156;Q157;T159及びD160;K163及びT164;Y166;及びE196及びD197でのアラニン置換変異は、F−piliへのファージ結合に有意に影響しないことが既に示されている(Deng & Perham, 2002)。従って、これらの位置は変異に寛容であり、これらの位置での変異は、本発明のg3p及びg3pアミロイド結合フラグメントにおいて、アミロイド結合能を増強するか、又はそれに対して中立の作用を有し得る。従って、いくつかの実施態様において、本発明は、D94、T95、E115、N122、L125、E126、E127、E128、Q129、Q145、T154、T156、Q157、T159、D160、K163、T164、Y166、E196、又はD197(配列番号:1に関する)の1つ又は複数で変異誘発されたg3p又はg3pアミロイド結合フラグメントを含む。いくつかの実施態様において、D94、T95、E115、N122、L125、E126、E127、E128、Q129、Q145、T154、T156、Q157、T159、D160、K163、T164、Y166、E196、又はD197の1つ又は複数での変異は、アラニンに対する変異に限らない。
【0092】
F194;F190及びH191;K184、R186、及びD187;R142及びR144でのアラニン置換変異は、F−piliへの結合を低減することが既に知られている(Deng & Perham, 2002)。従って、いくつかの実施態様において、変異は、1つ又は複数の以下の残基:R142、R144、W181、K184、R186、D187、F190、H191、又はF194(配列番号:1に関連した番号)を含まない変異から選択される。しかしながら、R142、R144、W181、K184、R186、D187、F190、H191、又はF194の非アラニン残基での置換は、アミロイド結合を増大し得る。従って、1つの実施態様において、変異は、R142、R144、W181、K184、R186、D187、F190、H191、又はF194の1つ又は複数での非アラニン変異である。1つの実施態様において、変異はF194での非アラニン変異である。別の実施態様において、変異はF190及びH191での非アラニン変異である。別の実施態様において、変異は、K184、R186、及びD187での非アラニン変異である。別の実施態様において、変異はW181での非アラニン変異である。別の実施態様において、変異は、R142及びR144での非アラニン変異である。ある種の実施態様において、変異は、1つ、いくつか、又は全てのT13I、T101I、Q129H、G153D、W181A、F190A、F194A、及びD209Yに限らない。
【0093】
いくつかの実施態様において、変異は、F−piliに結合するg3pの部分であるN2ドメインの表面上に位置する1個又は複数の残基においてである。1つの実施態様において、変異は、N2ドメインの外縁上に位置する1個又は複数の残基においてである。他の実施態様において、変異は、g3pの部分であり、TolAに結合するN1ドメインの表面上に位置する1個又は複数の残基においてである。1つの実施態様において、変異は、N1ドメインの外縁上に位置する1個又は複数の残基においてである。別の実施態様において、変異は、g3p上の1つ又は複数の溶媒によりアクセス可能な残基においてである。なお別の実施態様において、変異(複数を含む)は、Pro213でのcis/trans平衡を50、60、70、80、90、又は95%より高いtransにシフトする。従って、いくつかの実施態様において、g3pは、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも95%transである、Pro213でのcis/trans平衡を有する変異体g3pである。
【0094】
いくつかの実施態様において、g3p変異体又はそのアミロイド結合フラグメントは、構造的に保存された残基での変異を含まない。構造的に保存された残基の例は、可能性のある配列挿入に関わらず、FfとI−ファミリーメンバーの両方においてドメイン構造をもたらす際に関与する残基を含む。
【0095】
いくつかの実施態様において、生じた任意の変異はアミロイド結合を保存する。他の実施態様において、変異はプロリン残基を置換しない。
【0096】
いくつかの実施態様において、生じた任意の変異は、アミロイド結合を保存し、システイン残基を置換しない。いくつかの実施態様において、変異は、全て、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は全4つのg3p内に見られるジスルフィド架橋を保存する。従って、1つの実施態様において、任意の変異は、Cys7とCys36との間、及びCys46とCys53との間のN1における2つのジスルフィド架橋を保存する。別の実施態様において、任意の変異は、Cys7とCys36の間、及びCys46とCys53の間のN1におけるジスルフィド架橋のいずれか(しかし、両方ではない)を保存する。1つの実施態様において、Cys188とCys201の間のジスルフィド架橋は保存される。いくつかの実施態様において、それぞれのジスルフィド架橋Cys7及びCys36、Cys46及びCys53、及びCys188及びCys201は保存される。1つの実施態様において、変異は、Cys354とCys371の間のジスルフィド架橋を保存する。いくつかの実施態様において、変異は、Cys7とCys36の間、Cys46とCys53の間、Cys188とCys201の間、及びCys354とCys371の間のジスルフィド架橋を保存する。
【0097】
いくつかの実施態様において、生じた任意の変異は、アミロイド結合を保存し、N1N2の融点(T
M)を低減する。T
Mは、実施例に記載の方法のいずれかを用いて測定され得る。N1N2のT
Mを低減する変異体は、Aβへの良好な結合を発揮し、Aβアセンブリーをより広範囲に阻害し、脱凝集アッセイにおいてM13のg3pと少なくとも同等に有効であることが予測される。従って、これらの変異体を含むかかる変異体、並びに融合タンパク質及びファージは、1つ又は複数のタンパク質ミスフォールディング病の処置において、それぞれM13中の対応する配列、その融合タンパク質、及びインタクトなM13と少なくとも同等に治療上有効であることが予測される。
【0098】
変異体はまた、ターゲティング配列を含むよう設計され得る。かかるターゲティング配列は、N1N2間又はN2間で可動性リンカー領域及びN2融合タンパク質中の別のドメインに挿入され得る。ターゲティング核局在化配列(NLS)は、ハンチントン病において有益であり得る。エンドソームのターゲティングは、パーキンソン病において有益であり得る。
【0099】
細胞中の特定の領域のターゲティングに加え、ターゲティング配列を用いて、異なる種類のアミロイドが標的にされ得る。核形成配列は、親和性を増大し、変異体タンパク質を特定のアミロイドに向け得る。それ自体の上で沈殿するよう疎水性であるペプチド配列を含む他の変異体が調製され得る。例えば、複数のAVVAI配列を、g3p及びそのアミロイド結合フラグメント(例えば、N2及びN1N2)及び/又はその融合タンパク質に加えて、増強した複数の結合配列を有する化学タンパク質を生じることができる。アミロイドに結合し、g3p、N2、及びN1N2及び/又はその融合タンパク質を含む変異体又は化学タンパク質に取り込まれ得るペプチドのいくつかの例は、Sato, Biochemistry (2006) 45:5503−16に記載されるGxFxGxF(配列番号:21)フレームワークに基づくペプチド阻害剤、及びTjernberg et al., J. Biol. Chem. (1996) 271:8545−48に記載されるKLVFF(配列番号:22)ペプチドである。他のターゲティング部分が知られており、本発明において用いられ得る。例えば、Sciarretta et al., Methods in Enzymology (2006) 413:273−312を参照。
【0100】
アミロイド結合ディスプレービークル及び担体
本発明の別の態様において、N1N2ドメイン及びN2ドメイン、並びに分子、ポリペプチド、及びそれを含む融合タンパク質を含むが、これらに限定されない、g3p及びそのアミロイド結合フラグメント(前述のもののいずれかの変異体及び変種)は、アミロイド結合を保存するが、更なる特性をもたらす分子スキャフォールドをもたらす他の有機又は無機担体と組み合わされ得る。
【0101】
いくつかの実施態様において、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント、又はg3p融合タンパク質、及び担体は、非組み換え手段(例えば、ペプチド結合以外の化学結合)を通して共有結合される。任意の適当な化学クロスリンカーが用いられ得る。他の分子(例えば、担体)にポリペプチドを共有結合する任意の既知の方法も用いられ得る。いくつかの実施態様において、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント、又はg3p融合タンパク質、及び担体は、少なくとも1個のアミノ酸又は化学的部分を含むリンカーを通じて融合され得る。
【0102】
いくつかの実施態様において、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント、又はg3p融合タンパク質、及び担体は、共有結合される。いくつかのかかる実施態様において、それらは、例えば、結合ペアを用いて結合され得る。典型的な結合ペアは、ビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、抗体とその抗原などを含むが、これらに限定されない。
【0103】
担体の例は、ウイルス粒子(ファージを含む(下記を参照))(ここで、ウイルスに由来しないg3pタンパク質又はそのアミロイド結合フラグメントは、ウイルス構造の一部として取り込まれる)、ポリマー(天然、合成、又は混合されたもののいずれか)、ポリマーコート構造(例えば、ビーズ(表面が誘導体化されたビーズを含む))、ポリアミノ酸、核酸、及びリポソームを含むが、これらに限定されない。担体は、g3p又はアミロイド結合フラグメントに直接的又は間接的のいずれかであり得る。担体に依存して、中間の結合を用いて、担体とアミロイド結合ドメインとの間の適当なスペーシングがもたらされ得る。
【0104】
ポリアミノ酸は担体タンパク質であり得る。かかるポリアミノ酸は、血清アルブミン(例えば、HSA)、追加抗体又はその一部(例えば、Fc領域)、フェチュインA、フェチュインB、ロイシンジッパー核因子赤血球誘導体−2(NFE2)、神経網膜ロイシンジッパー、テトラネクチン、又は他のポリアミノ酸(例えば、リジン)から選択され得る。ポリアミノ酸の付着位置は、N末端又はC末端のいずれか、又はその間の他の場所であり、化学リンカー部分によりg3p又はそのアミロイド結合フラグメントに付着され得る。
【0105】
いくつかの実施態様において、担体は、オリゴマー形成ドメインを有する分子を含む。オリゴマー形成は、多原子価、増大した結合強度、及び異なるドメインの組み合わさった機能を含む、タンパク質又はそのフラグメントの機能の1つが結合であるとき、機能的利点を提供する。これらの特性は、天然のタンパク質で見られ、タンパク質操作により誘導され得る。従って、本発明はまた、オリゴマー形成ドメイン(例えば、ダイマー形成ドメイン)を含む、g3p及びアミロイド結合フラグメント(その変異体及び変種を含む)(例えば、N1N2ドメイン及びN2ドメイン)を提供する。適当なオリゴマー形成ドメインは、アルファらせん状コイルドコイルドメインを含むコイルドコイルドメイン;コラーゲンドメイン;コラーゲン様ドメイン、及びダイマー免疫グロブリンドメインを含む。本発明の適当なコイルドコイルポリペプチド融合パートナーは、テトラネクチンコイルドコイルドメイン、軟骨オリゴマーの基質タンパク質のコイルドコイルドメイン;アンジオポエチンコイルドコイルドメイン;及びロイシンジッパードメインを含む。コラーゲン又はコラーゲン様オリゴマー形成ドメインを用いるとき、それらは、例えば、コラーゲンに見られるもの、マンノース結合レクチン、肺界面活性剤タンパク質A及びD、アディポネクチン、フィコリン、コングルチニン、マクロファージスカベンジャー受容体、及びエミリンを含み得る。これらのうちいくつかのドメインが、融合タンパク質として取り込まれ得る一方、多くの実施態様において、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメントに、例えば共有結合を介して非組み換え的に結合される。
【0106】
加えて、本発明は、ポリマーに結合した、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント、又はg3p融合タンパク質を提供する。本発明において用いられるポリマーは、治療上の生成物又は組成物の製造のため、医薬的に許容される。
【0107】
ポリマーは、典型的には、ポリペプチド機能的又は抗原性ドメインに対する作用を考慮しながら、g3p又はそのアミロイド結合フラグメントに付着される。一般に、化学的な誘導体化は、タンパク質を活性化ポリマー分子と反応させるために用いられる任意の適当な条件下で行われ得る。ポリマーを活性化部分に結合させるために用いられ得る活性化基は、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート、アジジリン、オキシラン、及び5−ピリジルを含む。
【0108】
適当な臨床上許容される水可溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリ(β−アミノ酸)(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)及び他のポリアキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)及び他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、又はポリオキシエチル化グルコース、コロン酸、又は他の炭水化物ポリマー、フィコール、又はデキストラン、及びその混合物を含むが、これらに限定されない。
【0109】
本発明のPEG部分は、分岐又は直鎖ポリマーであり得る。実施態様において、本発明は、モノ−又ポリ−(例えば、2〜4)PEG部分を含む化学的に誘導されたポリペプチドを考慮する。ペグ化は、当該技術分野で知られたペグ化反応のいずれかにより行われ得る。ペグ化タンパク質産物の製造方法は、一般的に、当該技術分野において知られている。最適な反応条件は、既知のパラメーター及び所望の結果に依存して、個別の基準に基づき決定される。
【0110】
当業者に利用可能な多数のPEG接着方法が存在する(例えば、欧州特許第0401384号;Malik et al., Exp. Hematol., (1992) 20:1028−1035;Francis, Focus on Growth Factors, 3:4−10 (1992);欧州特許第0154316号;欧州特許第0401384号;国際公開公報第92/16221号;国際公開公報第95/34326号;及びペグ化に関連する本明細書に引用される他の刊行物)。
【0111】
g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメント(並びにその変異体及び変種、及び化合物、ポリペプチド、及び前述のいずれかを含む融合タンパク質)がPEG化されるとき、PEGは、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメントを化学的に誘導体化することにより接着され得る。他の実施態様において、PEG分子による修飾に適したアミノ酸残基は、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメントに組み換え的に導入され得る。
【0112】
ペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して行われ得る。従って、本発明のタンパク質産物はペグ化タンパク質を含み、ここで、PEG基はアシル又はアルキル基を介して接着される。かかる産物は、モノ−ペグ化又はポリ−ペグ化(例えば、2〜6又は2〜5個のPEG基を含有するもの)され得る。適当な活性化PEGエステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にPEGエステル化される。
【0113】
アルキル化によるペグ化は、一般に、PEGの末端アルデヒド誘導体をポリペプチドと還元剤の存在下で反応させることを含む。還元アルキル化反応のため、選択されたポリマー(複数を含む)は、単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。典型的な反応性PEGアルデヒドは、水に安定なポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、又はモノC1−C10アルコキシ又はそのアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5,252,714号を参照)。
【0114】
いくつかの実施態様において、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメントは、ファージの一部として発現され、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメントは、ファージ粒子から単離することにより調製される。しかしながら、一般に、組み換え技術を用いて、g3p、g3pのアミロイド結合フラグメント(その変異体及び変種を含む)が調製される。一般に、得られたタンパク質は、担体と組み合わせる前に単離される。
【0115】
いくつかの実施態様において、ディスプレービークルはファージである。これらの実施態様において、g3pタンパク質、N1N2ドメイン、N2ドメイン、及び他のアミロイド結合フラグメント(前述のもの全ての変異体及び変種を含む)をコードする遺伝子は、バクテリオファージゲノムに取り込まれ、ファージの一部として発現される。例えば、1つの実施態様において、M13ファージのg3pより高いアミロイド結合親和性を有する変異体g3pタンパク質を用いて、M13ファージの野生型g3pが置き換えられる。従って、得られたファージは、野生型M13に関連して改良された結合を有する。しかしながら、記載のg3p又はアミロイド結合フラグメントのいずれかは、ファージに導入され得る。これらの実施態様において、野生型遺伝子3は、本発明のg3pにより全体として置換され得る。或は、増大したコピー数のg3pを有するファージについて考察される通り、組み換え分子は、ファージコートタンパク質(野生型g3pを含む)をコードする遺伝子に融合され、ファージディスプレーライブラリーにおける抗原と抗体鎖に類似する方法で、ファージ上にディスプレーされ得る。任意の糸状バクテリオファージは、M13、fd、f1、I22、Ike、又はIf1を含むが、これらに限定されない、本発明のg3pを発現するように修飾され得る。いくつかの実施態様において、ヘルパーファージは、修飾ファージと結合して用いられ得る。
【0116】
組み換え技術
一般的に、g3pタンパク質又はそのアミロイド結合フラグメント(並びにその変異体及び変種、及び前述のいずれかを含む化合物、ポリペプチド、及び融合タンパク質)をコードするDNAは、通常の組み換えDNA技術(例えば、g3p遺伝子のクローニング、直接的DNA合成、又は例えばM13配列をプローブとして用いて対応するDNAをライブラリーから単離すること)を用いて調製される(例えば、Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. and Ausubel et al. 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照)。
【0117】
組み換え産生のため、g3p又はそのアミロイド結合フラグメントをコードする核酸配列は、挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必要エレメント、又はRNAウイルスベクターの場合、複製及び翻訳に必要なエレメントを含有する適当な発現ベクターに挿入される。コード核酸は、適切なリーディングフレームでベクターに挿入される。
【0118】
従って、本発明は、g3p又はそのアミロイド結合フラグメント(その変異体及び変種を含む)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。g3p又はg3p融合分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。かかるベクターは、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどを含むが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの実施態様において、CHOまたはCHO由来細胞中でのポリペプチドの発現に最適化されたベクターが選択される。典型的なかかるベクターは、例えばRunning Deer et al., Biotechnol. Prog. (2004) 20:880−889に記載される。
【0120】
いくつかの実施態様において、ベクターは、ヒトを含む動物におけるg3p、そのアミロイド結合フラグメント、及び/又はg3p融合分子のインビボ発現のため選択される。いくつかのかかる実施態様において、ポリペプチドの発現は、組織特異的方法で機能するプロモーターの制御下である。
【0121】
発現ベクターは、ポリペプチドを発現する、適当な標的細胞にトランスフェクション又はコトランスフェクションされる。非限定的な典型的トランスフェクションは、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載される。核酸は、当該技術分野において知られた方法により、所望の宿主細胞に一過性又は安定的にトランスフェクションされ得る。様々な宿主−発現ベクター系を用いて、原核生物細胞又は真核生物細胞のいずれかを含む、本明細書に記載のタンパク質が発現され得る。これらは、適当なコード配列を含有する組み換えバクテリオファージDNA又はプラスミドDNA発現ベクターでトランスフォーメーションされた微生物(例えば、細菌(例えば、エシェリキア・コリ);適当なコード配列を含有する組み換え酵母又は真菌発現ベクターでトランスフォーメーションされた酵母又は糸状菌;適当なコード配列を含有する組み換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)でインフェクションされた昆虫細胞系;適当なコード配列を含有する、組み換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス又はタバコモザイクウイルス)でインフェクションされた植物細胞、又は組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)でトランスフォーメーションされた植物細胞;又は哺乳動物の細胞(例えば、CHO、Cos、HeLa細胞)を含む動物細胞系を含むが、これらに限定されない。タンパク質はまた、ウキクサにおいて組み換え的に産生され得る。例えば、米国特許第8,022,270号を参照。
【0122】
トランスフォーメーションに用いられるベクターは、通常、形質転換体を同定するために用いられる選択可能なマーカーを含有する。細菌系において、これは、抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン又はカナマイシン)を含み得る。培養哺乳動物細胞において用いるための選択可能なマーカーは、薬物(例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシン、及びメトトレキサートに対する耐性を確かにする遺伝子を含む。選択可能なマーカーは、増殖可能な選択可能なマーカーであり得る。1つの増殖可能な選択可能なマーカーは、DHFR遺伝子である。別の増殖可能な選択可能なマーカーは、DHFRr cDNA(Simonsen and Levinson, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), (1983) 80:2495)である。選択可能なマーカーは、Thilly(Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, MA)により概説され、選択可能なマーカーの選択は、十分に当業者の範囲内である。
【0123】
発現系の発現エレメントは、その強さ及び特異性において変動する。用いられる宿主/ベクター系に依存して、恒常的及び誘導可能なプロモーターを含む、多数の適当な転写及び翻訳エレメントのいずれかが、発現ベクター中で用いられ得る。例えば、細菌系にクローニングされるとき、誘導可能なプロモーター(例えば、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などが用いられ得る;昆虫細胞系にクローニングされるとき、プロモーター(例えば、バキュロウイルス多面体プロモーター)が用いられ得る;植物細胞系にクローニングされるとき、植物細胞のゲノムからもたらされるプロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニット用プロモーター;クロロフィルa/b結合タンパク質用プロモーター)、又は植物ウイルスからもたらされるプロモーター(例えば、CaMVの35S RNAプロモーター;TMVのコートタンパク質プロモーター)が用いられ得る;哺乳動物細胞系にクローニングされるとき、哺乳動物細胞のゲノムからもたらされるプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスからもたらされるプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)が用いられ得る;複数コピーの発現産物を含有する細胞株を作成するとき、SV40−、BPV−、及びEBV−に基づくベクターが適当な選択可能なマーカーと共に用いられ得る。
【0124】
植物発現ベクターが用いられる場合、本発明の発現産物の直線形態又は非環状形態をコードする配列の発現は、多数のプロモーターのいずれかによりもたらされ得る。例えば、ウイルスプロモーター(例えば、CaMVの35S RNA及び19S RNAプロモーター(Brisson et al., Nature (1984) 310:511−514)、又はTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsu et al., EMBO J. (1987) 6:307−311)が用いられ得るか、或は、植物プロモーター(例えば、RUBISCOの小サブユニット(Coruzzi et al., EMBO J. (1984) 3:1671−1680; Broglie et al., Science (1984) 224:838−843)、又はヒートショックプロモーター(例えば、ダイズhsp17.5−E又はhsp17.3−B(Gurley et al., Mol. Cell. Biol. (1986) 6:559−565)が用いられ得る。これらのコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、指定DNAトランスフォーメーション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを用いて植物細胞に導入され得る。かかる技術の概説のため、例えば、Weissbach & Weissbach 1988, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section VIII, pp. 421−463;及びGrierson & Corey 1988, Plant Molecular Biology, 2d Ed., Blackie, London, Ch. 7−9を参照。
【0125】
本発明のタンパク質を産生するために用いられ得る1つの昆虫発現系において、オートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、外来遺伝子が発現させる。ウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。コード配列は、ウイルスの非本質的領域(例えば、多面体遺伝子)にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、多面体プロモーター)の制御下に置かれる。コード配列の十分な挿入は、多面体遺伝子の不活性化、及び非閉鎖組み換えウイルス(すなわち、多面体遺伝子によりコードされるタンパク質コートを欠くウイルス)の産生を導く。次に、これらの組み換えウイルスを用いて、スポドプテラ・フルギペルダ細胞(ここで、挿入遺伝子が発現する)を感染させる(例えば、Smith et al., J. Virol. (1983) 46:584;米国特許第4,215,051号を参照)。この発現系の更なる例は、Ausubel et al., eds. 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscienceにおいて見られ得る。
【0126】
哺乳動物宿主細胞において、多数の、ウイルスに基づく発現系が用いられ得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合において、コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーター及び3分子リーダー配列)にライゲーションされ得る。この融合遺伝子は、インビトロ又はインビボ組み換えによりアデノウイルスゲノムに挿入され得る。ウイルスゲノムの非本質的領域(例えば、領域E1又はE3)における挿入は、生存可能で、感染宿主においてペプチドを発現する能力がある組み換えウイルスを生じる(例えば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1984) 81:3655を参照)。或は、ワクシニア7.5Kプロモーターが用いられ得る(例えば、Mackett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1982) 79:7415; Mackett et al., J. Virol. (1984) 49:857; Panicali et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1982) 79:4927を参照)。他のウイルス発現系は、アデノ随伴ウイルス及びレンチウイルスを含む。
【0127】
DNAコンストラクトを含有する宿主細胞は、適当な成長培地中で成長される。本明細書で用いられる、用語「適当な成長培地」は、細胞の成長に必要な栄養分を含有する培地を意味する。本発明の組み換え的に産生されたタンパク質は、当該技術分野において通常の技術を用いて細胞培地から単離され得る。
【0128】
インビトロアッセイ
いくつかの実施態様において、アミロイドの脱凝集は、チオフラビンT蛍光(ThT)アッセイを用いてモニタリングされ得る。
【0129】
いくつかの実施態様において、脱凝集は、本発明の組成物の存在下又は非存下での界面活性剤可溶化をモニタリングすることにより調べられる。例えば、凝集したα−シヌクレインは、本発明の組成物を用いて処理され得る。凝集したα−シヌクレインを脱凝集する組成物は、未処理の線維と比較して、α−シヌクレイン線維を界面活性剤(例えば、SDS)中でより速く可溶化させる。アミロイド線維の可溶性形態へのこの変換は、標識(例えば、Cy5)α−シヌクレインモノマーの一部を凝集中に取り込むことにより、モニタリングされ得る。
【0130】
いくつかの実施態様において、毒性アミロイドオリゴマーの形成の予防は、神経細胞の細胞培養物の細胞毒性アッセイにより調べられる。このアッセイにおいて、分化したN2a神経芽細胞腫細胞又は同等物は、Aβ42オリゴマーと共培養される。オリゴマーは膜に結合し、膜摂動及び細胞溶解性酵素の培地への漏出を引き起こす。高濃度のオリゴマーとの長期インキュベーションは細胞を殺傷する。オリゴマーは、細胞とインキュベーションする前に、ファージ又はg3pと予め処置されるとき、オリゴマーは少なくともわずかに毒性であり、時に無毒性である。この中和作用は、アデニル酸キナーゼの放出、膜摂動後に神経細胞により放出される1つの典型的な細胞質酵素を測定することにより定量化され得る。
【0131】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、タンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)アッセイにおいて、可溶性プリオンタンパク質のタンパク分解酵素K抵抗性コンフォーマーへの変換を阻害する(Wang et al., Science, (2010) 327:1132−35)。このアッセイにおいて、組み換えPrPは、脂質POPG及びRNAと、本発明の組成物の存在下又は不存下で混合される。次に、物質は、30秒間の超音波処理、続いて29.5分間のインキュベーションの複数(例えば、48)サイクルの対象にされる。次に、反応混合物の分画を用いて、別の基質チューブに播種し、サイクルを繰り返した。それぞれのラウンドを、PrP由来の感染の指標である、タンパク分解酵素K抵抗性物質の存在について調べた。本発明の組成物の存在下でのタンパク分解酵素K抵抗性物質の低減は、組成物がPK抵抗性コンフォーマーの形成を阻害することを示す。
【0132】
上で示される通り、ある種のプリオンタンパク質(例えば、酵母プリオンタンパク質NM)のアミロイド形態はまた、フィルタートラップアッセイにおいても検出され得る。従って、プリオンタンパク質に依存して、いくつかの実施態様において、本発明の組成物のプリオンタンパク質凝集体を脱凝集させ能力は、フィルタートラップアッセイにおいて試験され得る。
【0133】
インビボ機能アッセイ
インビトロアッセイにおいて示され得る、活性(例えば、アミロイドの増大した結合親和性、又はT
Mの低下)に加え、本発明の組成物はまた、いくつかのインビボアッセイの1つにおいて、アミロイドを低減し得る。インビボでのアミロイド低減を測定する1つの方法は、処置前及び後のイメージング剤フロルベタピル(F18−AV−45、Eli Lilly)でのポジトロン放出断層撮影(PET)を用いて、β−アミロイドの数及び/又は分布を比較する。もちろん、更なるバイオマーカーが同定されるなら、それらを用いて、アミロイドの低減を測定し得る。
【0134】
組成物がインビボでアミロイドを低減するかどうかを決定する別の方法は、hAPPマウスモデルを用いる(Rockenstein, J Neurosci Res. (2001) 66(4):573−82)。これらのマウスは、高レベルのβ−アミロイドを若年齢(3〜4ヶ月)で生じる。組成物のアミロイドを低減する能力は、マウスに本発明の組成物を注射し、次に、マウス中のアミロイドレベルを非注射対照と比較することにより、決定され得る。組成物をhAPPマウスの半球のみに注射することも可能であり、これにより同一マウス中の注射半球と非注射半球との間のアミロイドレベルの比較が可能になる。
【0135】
別の例では、本発明の組成物は、米国特許第2011/0142803号、 Hsiao et al., Science (1996) 274:99−102, or Duyckaerts et al., Acta Neuropathol (2008) 115:5−38に記載されるアルツハイマー病(TgAD)のトランスジェニックマウスモデルにおいて試験される。簡単に言うと、野生型、並びにトランスジェニックマウスが検証される。脱凝集剤として作用する本発明の組成物の可能性を評価するために、組成物は、トランスジェニックマウスに頭蓋内注射される(Taconic、APPSWE(2576)、10ヶ月齢)。例えば、ファージを含む組成物について、糸状ファージ溶液(10
14ファージ/ml)2.5μlを、1つの半球に10分かけて注射し(ブレグマ−2.8mm、側面2.5mm、腹部2.5mm)、反対側に、リン酸緩衝食塩水(PBS)を対照として適用した。次に、処置マウスを異なる時間で屠殺し、脳を一晩4%パラホルムアルデヒドにおいて前固定し、ミクロトームを用いて切断した。チオフラビン−S(ThS)染色は、アミロイド負荷を評価するために行われる。切片は、メイヤーヘマトキシリンで染色し、核自動蛍光をクエンチし、その後、洗浄ThS溶液(1%)を3分間適用した。分化を1%酢酸を用いて20分間行い、洗浄後、切片を乾燥させ、抗フェード開始培地で開始させた。アミロイド負荷は、LEICA Qwinプログラムを用いて計算される。或は、アミロイド負荷は、抗アミロイド抗体で評価され得る。
【0136】
糸状ファージを含む放射活性(例えば、I
125)又は蛍光標識組成物の体内分布を測定し、組成物がインビボでアミロイドに結合することが示され得る。例えば、組成物がファージを含むとき、糸状ファージは、放射性又は蛍光標識され得る。BALB/cマウスは2群に分けられる。次に、各マウスに、ファージ(1.25×10
12ファージ)100μlを1時間かけて鼻腔内投与する。第1群のマウスは、4%パラホルムアルデヒドを用いた噴門内投与の1時間後に屠殺される。第2の群は、処置の3時間後に屠殺され、第3の群は24時間後に屠殺される。灌流後、脳並びに抹消器官が取り出され、標識が測定される。或は、非標識組成物又はファージは、同様の方法だが、脳部分をアミロイドを認識する染料と組成物又はファージを認識する染料での共染色を用いて、結合について評価され得る。
【0137】
糸状ファージの鼻腔内投与をまた用いて、本発明により提供される、ファージを含む組成物(例えば、変異体g3pを含むファージ、又はg3pのアミロイド結合フラグメント、又は野生型ファージに関して増大した数のg3pを有するファージ)が完全に評価される。例えば、ファージは、アルツハイマー病のマウスモデルであるSWE/APP2576トランスジェニックマウス(Taconic、10ヶ月齢)に投与される。20マイクロタイターのファージ溶液(5×10
12/ml)は、2週間毎に4〜12ヶ月間適用され、認知機能が評価される。処置期間後、新規対象認知試験を行い、記憶の改善に対するファージ処置の影響が調べられる。1日目、マウスは20分間、2つの新規対象に曝される。翌日、1つの対象は置き換えられ、新たなアイテムを探すマウスの好奇心が調べられる。認知の指標は、各マウスについて、新規対象にかけられた時間を、両方の対象付近でかけられた時間で割ることにより、計算される。従って、0.5より高い値は、昔を認知し、調査のため新規対象周辺でより時間をかけたことの指標である。
【0138】
タンパク質ミスフォールディング病の他のトランスジェニックモデルをまた用いて、本発明の組成物がアミロイドを低減することが示され得る。非限定的な例は、「Dライン」α−シヌクレインマウス(パーキンソン病のモデル、Masliah et al., Science (2000) 287:1265−1269);Tg2576マウス(アルツハイマー病のモデル、Hsiao et al., Science (1996) 274:99−102、及びDuyckaerts et al., Acta Neuropathol (2008) 115:5−38 at 9);種々のパーキンソン病研究用Jax(商標)マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME);及びパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病を含む、JSW Lifescienceから入手可能なマウス及びラットモデルを含む。
【0139】
ファージ(ここで、g3pが付与される)は、これらのアッセイにおいて不活性化されると予測され、一方野生型ファージは、アミロイドに共局在化し、アミロイド負荷を低減し、アミロイド形成を予防し、及び/又は毒性オリゴマーを除去し、認知機能の改善を生じる。従って、本発明により提供される、g3p又はそのアミロイド結合フラグメントは、これらのネガティブ及びポジティブコントロールに対するインビボ活性について試験され得る。
【0140】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、本発明の上述の剤のいずれかを含む医薬的に許容される組成物を提供する(すなわち、(a)g3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種;(b)化合物、ポリペプチド、g3pを含む融合タンパク質、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種;(c)野生型ファージと比較して、増大した数のコピーのg3pを生じる糸状バクテリオファージ;(d)g3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、その変異体又は変種、又はg3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種を含む化合物、ポリペプチド、及び融合タンパク質を生じるアミロイド結合ディスプレービークル;又は(e)g3pの変種、g3pのアミロイド結合フラグメント(ディスプレーされたg3pタンパク質の一部としてではない)、かかる結合フラグメントの変異体又は変種、又は融合タンパク質、又はg3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種を含む他の異種性ポリペプチを生じる修飾糸状ファージ)。
【0141】
「医薬組成物」は、生理的に適当な担体、及び/又は賦形剤と共に、治療上有効量の本明細書に記載される組成物に言及する。医薬組成物は、生物に有意な刺激を引き起こさない。互換的に用いられ得る、語句「生理的に許容される担体」及び「医薬的に許容される担体」は、生物に有意な刺激を引き起こさず、投与される組成物の生物学的活性及び特性を抑制しない担体又は希釈剤に言及する。
【0142】
用語「賦形剤」は、有効成分の投与を更に促進するために医薬組成物に加えられる不活性な物質に言及する。非限定な例は、例えば、食塩水、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、及び例えば、ポリソルベート20を含む、スターチ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び界面活性剤の類いを含む。
【0143】
本発明に従い使用するための医薬組成物は、通常の方法で、有効成分の組成物中への処理を促進し、医薬的に用いられ得る、賦形剤及び助剤を含む1つ又は複数の生理的に許容される担体を用いて、製剤化され得る。適切な製剤化は、選択される投与経路及びデリバリーされる組成物の性質に依存する(例えば、タンパク質対ファージ)。
【0144】
本発明の医薬組成物に適した投与経路は、例えば、経粘膜、特に経鼻デリバリー;筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注射を含む非経腸デリバリー;経口;又は直腸デリバリーを含む。
【0145】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は、全身性の方法よりむしろ局所で投与される(例えば、医薬組成物の患者の脳への直接注射を介して)。いくつかの実施態様において、注射技術は、血管脳関門を回避する任意の技術である(例えば、直接的髄内、くも膜下腔内、又は脳室内注射による)。
【0146】
注射のため、本発明の有効成分は、水溶液、好ましくは、生理的に適合するバッファー(例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、又は生理食塩緩衝液)中に製剤化され得る。経粘膜投与のため、透過されるべき関門に適した浸透性が、製剤化中で用いられる。かかる浸透性は、一般に、当該技術分野において知られている。
【0147】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物は、鼻腔内投与を介して投与される。鼻腔内デリバリーは、ウイルス及び高分子の脳脊髄液(CSF)又はCNSへの直接的移行を可能にすることが報告されている(Mathison et al, 1998; Chou et al, 1997; Draghia et al, 1995)。
【0148】
鼻腔内経路による投与のため、組成物は、通常、適当な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタン、又は二酸化炭素)を用いて、圧縮パック又は噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態でデリバリーされる。圧縮エアロゾルの場合、投与単位は、定量をデリバリーするためのバルブを用意することにより、決定され得る。化合物の粉末混合物、及び適当な粉末基剤(ラクトース又はスターチ)を含有する、ディスペンサーにおいて使用するための例えばゼラチンのカプセル剤及びカートリッジが製剤化され得る。
【0149】
医薬組成物の成分として本明細書に記載される種々のタンパク質はまた、嗅覚受容体神経細胞をデリバリーのポイントとして用いて、脳へデリバリーされ得る。例えば、これらのタンパク質のいずれかをコードする遺伝子を含むアデノウイルスベクターが、嗅覚受容体神経細胞を介してデリバリーされ得る(Draghia et al, 1995)。
【0150】
本明細書に記載される組成物は、例えば、ボーラス注射又は持続点滴による非経腸投与のために製剤化され得る。非経腸投与用の医薬組成物は、水溶性形態の組成物の水溶液を含む。或は、有効成分の懸濁液は、油性又は水ベース注射懸濁液として調製され得る。適当な親油性溶媒又はビークルは、脂肪油(例えば、ゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、エチルオレート、トリグリセリド、又はリポソーム)を含む。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇させる物質(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストラン)を含有し得る。場合により、懸濁液はまた、有効成分の溶解性を増大して、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする、適当な安定剤又は剤(例えば、界面活性剤(例えば、ポリソルベート(Tween20))を含有し得る。タンパク質ベースの剤(例えば、アルブミン)を用いて、M13のデリバリー表面(すなわち、IVバック、カテーテル、針など)への吸着が予防され得る。
【0151】
経口投与のため、組成物は、有効な化合物を、当該技術分野で周知の医薬的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化され得る。
【0152】
製剤は、単位投与形態(例えば、場合により加えられた保存剤と共に、バイアル、アンプル剤中、又はマルチドーズ容器中)で提示され得る。組成物は、油性又は水性ビークル中の懸濁液、溶液、又は乳液であり得、調合剤(例えば、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含有し得る。1回用量形態は、液体又は固体形態であり得る。1回用量形態は、改変することなく患者に直接投与され得るか、又は投与前に希釈されるか、又は再構築され得る。ある種の実施態様において、1回用量形態は、ボーラス形態(例えば、1回注射用量、複数の錠剤、カプセル剤、ピルなどを含む経口用量を含む1回経口用量)で投与され得る。代替の実施態様において、1回用量形態は、例えば、注入により、又は移植ポンプ(例えば、ICVポンプ)を介して経時的に投与され得る。後者の実施態様において、1回用量形態は、示された数の糸状バクテリオファージを予め充填した注入バック又はポンプリザーバーであり得る。或は、注入バック又はポンプリザーバーは、患者に投与される直前に、1回用量の糸状バクテリオファージを注入バック又はポンプリザーバー溶液と混合することにより、調製され得る。
【0153】
本発明の別の態様は、本発明の医薬組成物の調製方法を含む。薬物の製剤化技術は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,」 Mack Publishing Co., Easton, Pa., latest edition(本明細書において、引用により全体として取り込まれる)において見られる。
【0154】
本発明の前後関係における使用に適した医薬組成物は、有効成分が、意図される目的を達成するのに有効な量で含有される組成物を含む。
【0155】
治療上又は診断上有効な量の決定は、特に、本明細書において提供される詳細な開示に照らし、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0156】
投薬量及び間隔は、具体的な脳疾患、異常、又は状態を処置又は診断するのに十分である(最小有効濃度、MEC)、ファージディスプレービークルの脳レベルを提供するために、個々に調節され得る。MECは、各調製について変動するが、インビトロデータから推定され得る。MECを達成するのに必要な投薬量は、個々の特徴に依存する。
【0157】
投薬間隔はまた、MEC値を用いて決定され得る。調製物は、10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の時間、MECより上の脳レベルを維持する、投薬計画を用いて投与されるべきである。
【0158】
処置されるべき状態の重症度及び応答性に依存して、用量は、数日から数週間に渡る処置コースで、又は治癒が引き起こされるか、又は疾患状態の縮小が達成されるまで、1回又は多数の投与であり得る。
【0159】
投与されるべき組成物の量は、当然、処置又は診断される対象、苦痛の重症度、医師の判断などに依存する。
【0160】
本発明の組成物は、所望なら、パック又はディスペンサーデバイス中(例えば、FDA承認キット)で提示され、それは、有効成分を含有する1つ以上の単位用量形態を含有し得る。パックは、例えば、金属又はプラスチックはく(例えば、ブリスターパック)を含む。パック又はディスペンサーデバイスには、投与の指示書が付随され得る。パック又はディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定された形態で、容器と関連した注意として提供され得る(かかる注意は、組成物形態、又はヒト、又は獣医投与の形態の、機関による承認についてである)。かかる注意は、例えば、処方薬用、又は承認された製品挿入物である、米国の食品医薬品局により承認されたラベルであり得る。適合可能な医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、上でさらに詳述されるように、調製され、適当な容器内に入れられ、指定された状態の処置についてラベルされ得る。
【0161】
前述及び後述の記載の両方が、請求の本発明の例示及び説明のみであり、制限でないことは理解されるべきである。
【0162】
治療上の使用
示される通り、糸状バクテリオファージM13、及び関連糸状ファージは、タンパク質ミスフォールディング病の動物モデルにおける有用性を有する。米国特許公報第2011/0142803号(本明細書において引用により全体として取り込まれる)を参照。特に、糸状バクテリオファージが、脳において既に形成されたアミロイドを脱凝集させる能力を有することが発見された。アミロイドの除去は、脳中の誤って折り畳まれた及び/又は凝集タンパク質により特徴付けられる様々な疾患と関連する症状を低減するか、その進行を遅延させるか、又は逆転さえすると予測される。例えば、国際公開公報第2006083795号及び国際公開公報第2010060073号(本明細書において引用により全体として取り込まれる)を参照。
【0163】
更に、M13は、少なくとも4種の異なるアミロイド線維:アミロイド−β1〜42線維(fAβ42)、α−シヌクレイン線維(fαsyn)、酵母プリオンNM線維(fNM)、及びタウ線維(ftau)を脱凝集することが示された。
【0164】
従って、本発明の別の態様は、fAβ42、fαsyn、fNM、又はftauのいずれかに関与する疾患を含むが、これらに限定されない、タンパク質ミスフォールディング病の処置における、本発明の組成物(例えば、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメント(前述のすべての変異体又は変種を含む)、又は上記のいずれかを含むg3p融合タンパク質、ディスプレービークル、又はファージを含むもの)のいずれかの使用に関する。
【0165】
処置の前後関係において、用語「患者」、「対象」、及び「レシピエント」は、互換的に用いられ、ヒト並びに他の動物を含む。いくつかの実施態様において、患者は、タンパク質ミスフォールディング病と関連するバイオマーカーについて陽性であるヒトである。1つの実施態様において、患者は、フロルベタピルを用いたPET画像診断により検出されるβ−アミロイド沈着を示す。
【0166】
用語「処置すること」は、疾患の1つ以上の臨床症状を示す患者において、疾患の進行を低減すること、遅延させること、又は逆転させることを意味する。「処置すること」はまた、疾患の1つ以上の臨床症状を示す患者において疾患の症状を低減すること、遅延させること、又は逆転させることを意味することも意図される。1つの実施態様において、患者は、フロルベタピルを用いたPET画像診断により検出されるβ−アミロイド沈着を示し、β−アミロイド沈着の数が処置により低減される。1つの実施態様において、患者は、本発明のg3p組成物により検出されるβ−アミロイド沈着を示し、β−アミロイド沈着の数は、処置により低減され、又は維持される。別の実施態様において、患者は、PET画像診断により検出されるある種のアミロイド沈着を示し、患者の認知機能は、処置により改善される。認知機能の改善は、McKhann et al., Alzheimer’s & Dementia (2011) May;7(3):263−9の方法及び検査によりアッセイされる。
【0167】
「予防」は、処置と異なり、任意の臨床症状の発症前の組成物の個体への投与に言及する。本発明のg3p及び/又はTolA組成物のいずれかを用いた予防が包含される。予防は、疾患の増大したリスクがあることが知られた個体、又は1種以上の遺伝子マーカーに基づき、疾患を必ず発症する個体において関連し得る。多くの遺伝子マーカーが、種々のタンパク質ミスフォールディング病について同定されている。例えば、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(hAPP)におけるスウェーデン型変異、インディアナ型変異、又はロンドン型変異の1つ以上を有する個体は、早発型アルツハイマー病を発症する増大したリスクにあり、故に予防の候補者である。同様に、ハンチンチン遺伝子においてトリヌクレオチドCAGリピート(特に、36以上のリピート)を有する個体は、最終的に、ハンチントン病を発症し、故に予防の候補者である。
【0168】
いくつかの実施態様において、タンパク質又はフラグメントは、治療として直接用いられる。これらの実施態様において、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメント(前述のいずれかの変異体又は変種を含む)は、医薬組成物又は製剤に直接取り込まれる。他の実施態様において、g3p、N1N2ドメイン、N2ドメイン、又は他のアミロイド結合フラグメント(前述のいずれかの変異体又は変種を含む)は、融合タンパク質又はディスプレービークル(例えば、ファージ)の一部であり、これらの実施態様において、それは、本発明の医薬組成物又は製剤に取り込まれる融合タンパク質又はディスプレービークルである。他の実施態様において、組成物は、アミロイドのレベルの低減又は維持において、野生型M13ファージのg3pより有効である、g3p又はそのアミロイド結合フラグメントを含むファージを含む。いくつかの実施態様において、アミロイドレベルの低減又は維持においてM13より有効であるファージは、5コピーより多いg3pを発現する。
【0169】
用語「タンパク質ミスフォールディング」は、タンパク質(アミロイド形成ペプチド)(例えば、β−アミロイド、血清アミロイドA、システインC、IgGカッパー軽鎖、又はプリオンタンパク質(これらに限定されない))を凝集させることによるアミロイドタンパク質の形成により特徴付けられる疾患に言及する。誤って折り畳まれた及び/又は凝集されたアミロイドタンパク質と関連することが知られている疾患は、早発型アルツハイマー病、後発型アルツハイマー病、及び発症前アルツハイマー病を含むアルツハイマー病、パーキンソン病、SAAアミロイド症、シスタチンC、遺伝性アイスランド症候群、老衰、多発性骨髄腫、クールー病、クロイツフェルト・ヤコブ疾患(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、スクレイピー、及びウシ海綿状脳症(BSE)を含むがこれらに限定されないプリオン病;筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症(SCA1)、(SCA3)、(SCA6)、(SCA7)、ハンチントン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、遺伝性脳アミロイド血管症、家族性アミロイドーシス、前頭側頭葉型認知症、イギリス型/デンマーク型認知症、及び家族性脳症を含む。本発明のg3p組成物を用いて、「タンパク質ミスフォールディング」疾患が処置され得る。
【0170】
これらの誤って折り畳まれた及び/又は凝集されたアミロイドタンパク質疾患の多くは、中枢神経系(CNS)において生じる。CNSにおいて生じる疾患のいくつかの例は、パーキンソン病;アルツハイマー病;以下の臨床的症候群:行動の変体FTD(bvFTD)、進行性非能弁的失語(PNFA)及び語義痴呆(SD)を有する患者を含む前頭側頭型認知症(FTD);前頭側頭葉変性症(FTLD);及びハンチントン病である。本発明のg3p組成物を用いて、中枢神経系(CNS)において生じる、誤って折り畳まれた及び/又は凝集されたアミロイドタンパク質により特徴付けられる疾患が処理され得る。
【0171】
タンパク質のミスフォールディング及び/又は凝集は、CNS外でも生じ得る。アミロイドーシスA(AA)(前駆体タンパク質が血清急性期アポリポタンパク質である、SAA)、及び多発性骨髄腫(前駆体タンパク質免疫グロブリン軽鎖及び/又は重鎖)は、CNS外で生じる2つの広く知られたタンパク質ミスフォールディング及び/又は凝集タンパク質疾患である。他の例は、β
2−ミクログロブリンにより形成されるアミロイドに関与する疾患、トランスサイレチン(家族性アミロイド性多発性神経障害[FAP]、家族性アミロイド性心筋症[FAC]、及び老人性全身性アミロイドーシス[SSA])、(アポ)血清AA、アポリポタンパク質AI、AII、及びAIV、ゲルゾリン(家族性アミロイド性多発性神経障害のフィンランド型)、リゾチーム、フィブリノーゲン、シスタチンC(脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、アイスランド型)、(プロ)カルシトニン、膵島アミロイドポリペプチド(IAPPアミロイドーシス)、心房性ナトリウム利尿因子、プロラクチン、インスリン、ラクタドヘリン、ケラト−エピセリン、ラクトフェリン、歯性エナメル芽細胞関連タンパク質、及びセメノゲリンIを含む。本発明のg3p組成物を用いて、CNS外で生じるタンパク質のミスフォールディング及び/又は凝集に関与する疾患が処置され得る。
【0172】
神経変性疾患はまた、タウ損傷に関与し得る(Reviewed in Lee et al. (2001) Annu. Rev. Neurosci. 24:1121−159)。タウタンパク質は、中枢性及び抹消性神経系神経細胞の両方の軸において発現される微小管関連タンパク質である。神経変性タウオパチー(時に、タウオパチーとして言及される)が包含される。タウオパチーの例は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソニズム−認知症合併症、嗜銀顆粒性認知症、皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、染色体17に結びついたパーキソニズムを伴う前頭側頭型認知症を含む前頭側頭型認知症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、ハラーホルデン・スパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、及び神経原線維変化型認知症(Tangle only dementia)を含む。これらの疾患のいくつかはまた、原線維アミロイドβペプチドの沈着も含む。例えば、アルツハイマー病は、アミロイドβ沈着及びタウ損傷の両方を示す。同様に、プリオンにより介在される疾患(例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病)はまた、タウ損傷を有し得る。従って、疾患が「タウオパチー」であるとの徴候は、疾患を他の神経変性疾患分類又はグループ分けから除外すると解釈されるべきではなく、単に便宜的に提供される。本発明のg3p組成物を用いて、神経変性疾患、並びにタウ損傷に関与する疾患が処置され得る。
【0173】
1つの実施態様において、医薬組成物又は製剤は、患者に有効量の本明細書に記載の医薬組成物又は製剤を投与することを含む、アミロイドの存在と関連する症状を示すか、又はタンパク質ミスフォールディング病と関連するバイオマーカー(例えば、フロルベタピル(AV−45、Eli Lilly))に対して陽性である患者におけるアミロイドの低減方法において使用するためのものである。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0174】
1つの実施態様において、医薬組成物又は製剤は、患者に有効量の本明細書に記載の医薬組成物又は製剤を投与することを含む、アミロイドの存在と関連する症状を示すか、又はタンパク質ミスフォールディング病と関連するバイオマーカー(例えば、フロルベタピル(AV−45、Eli Lilly))に対して陽性である患者においてアミロイドレベルの維持方法において使用するためのものである。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0175】
1つの実施態様において、医薬組成物又は製剤は、アミロイドを有する患者に有効量の本明細書に記載の医薬組成物又は製剤を投与することを含む、患者におけるアミロイドの脱凝集方法において使用するためのものである。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0176】
1つの実施態様において、医薬組成物又は製剤は、必要とする患者の脳に有効量の本明細書に記載の医薬組成物を直接注射し、これにより、脳におけるβ−アミロイド沈着の低減を引き起こすことを含む、脳におけるβ−アミロイド沈着の脱凝集を引き起こす方法において使用するためのものである。
【0177】
1つの実施態様において、医薬組成物又は製剤は、脳におけるアミロイド形成の低減方法において使用するためのものである。脳におけるアミロイド形成の低減は、タンパク質−ミスフォールディング又は神経変性疾患の症状又は重症度を予防、処置、又は低減し得る。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0178】
1つの実施態様において、本発明の医薬組成物又は製剤は、脳におけるアミロイドクリアランスの促進方法において使用するためのものである。アミロイドクリアランスの促進は、タンパク質−ミスフォールディング又は神経変性疾患の症状又は重症度を予防、処置、又は低減し得る。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0179】
1つの実施態様において、本発明の医薬組成物又は製剤は、脳におけるアミロイド凝集の阻害方法において使用するためのものである。脳におけるアミロイド凝集の阻害は、タンパク質−ミスフォールディング又は神経変性疾患の症状又は重症度を予防、処置、又は低減し得る。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0180】
1つの実施態様において、本発明の医薬組成物又は製剤は、脳における毒性アミロイドオリゴマーの排除方法において使用するためのものである。脳における毒性アミロイドオリゴマーの排除は、タンパク質−ミスフォールディング又は神経変性疾患の症状又は重症度を予防、処置、又は低減し得る。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0181】
1つの実施態様において、本発明の医薬組成物又は製剤は、脳における毒性アミロイドオリゴマーの形成の予防方法において使用するためのものである。脳における毒性アミロイドオリゴマーの形成の予防は、タンパク質−ミスフォールディング又は神経変性疾患の症状又は重症度を予防、処置、又は低減し得る。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。
【0182】
1つの実施態様において、本発明の医薬組成物又は製剤は、神経細胞をアミロイド損傷から保護する方法において使用するためのものである。神経細胞のアミロイド損傷からの保護は、タンパク質−ミスフォールディング又は神経変性疾患の症状又は重症度を予防、処置、又は低減し得る。1つの実施態様において、投与経路は、くも膜下腔内注射、直接脳室内注射、実質内注射、又は鼻腔内デリバリーから選択される。1つの実施態様において、神経細胞のアミロイド損傷からの保護において使用するための本発明の医薬組成物又は製剤は、予防的に付与される。
【0183】
いくつかの実施態様において、患者は、タンパク質ミスフォールディング及び/又は凝集疾患と関連するバイオマーカーに対して陽性である。1つの実施態様において、バイオマーカーはフロルベタピル(AV45、Eli Lilly)である。
【0184】
いくつかの実施態様において、患者は、アミロイドの存在と関連する神経変性疾患の症状を示している。種々の実施態様において、アミロイドは、fAβ42、fαsyn、fNM、又はftauのいずれかである。
【0185】
ある種の実施態様において、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、又はハンチントン病である。1つの実施態様において、神経変性疾患はアルツハイマー病である。1つの実施態様において、神経変性疾患はアルツハイマー病であり、患者は、イメージング剤フロルベタピル(AV−45、Eli Lilly)により検出されるβ−アミロイドを示す。
【0186】
いくつかの実施態様において、患者は、プリオンにより仲介される疾患の症状を示している。
【0187】
ある種の実施態様において、プリオンにより仲介される疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ疾、クールー病、致死性家族性不眠症、又はゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病から選択される。
【0188】
いくつかの実施態様において、患者は、アルツハイマー病以外の神経変性タウオパチーの症状を示している。ある種の実施態様において、処置されるべき疾患は、嗜銀顆粒性認知症、皮質基底核変性症、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、染色体17に結びついたパーキソニズムを伴う前頭側頭型認知症を含む前頭側頭型認知症、ハラーホルデン・スパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、及び神経原線維変化型認知症から選択される。
【0189】
診断
本発明の別の態様において、g3p融合タンパク質を含む本明細書に記載のg3p及びTolA組成物は、本明細書に記載の種々の疾患と関連する診断上の適用において用いられる。例えば、本発明の組成物の結合は、インビボ又はインビトロのいずれかでイメージング剤として用いられるとき、記載のタンパク質ミスフォールディング病の1つの診断の一部であり得る。
【0190】
診断剤(本明細書において診断用組成物として言及される)は、包含され、上述の本発明の剤のいずれかを含み得る(すなわち、(a)g3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種;(b)g3pを含む化合物、ポリペプチド及び融合タンパク質、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種;(c)野生型ファージと比較して増大した数のコピーのg3pを生じる糸状バクテリオファージ;(d)g3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、その変異体又は変種、又はg3pを含む化合物、ポリペプチド及び融合タンパク質、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種を生じるアミロイド結合ディスプレービークル;又は(e)g3pの変種、g3pのアミロイド結合フラグメント(ディスプレーされたg3pタンパク質の一部としてではない)、かかる結合フラグメント又は融合タンパク質の変異体又は変種、又はg3p、g3pのアミロイド結合フラグメント、又はその変異体又は変種を含む他の異種性ポリペプチドを生じる修飾糸状ファージ)。診断剤は、検出可能な標識を更に含むか、又はそうでなければインビボで検出され得る。
【0191】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物(例えば、可溶性g3p又はアミロイド結合フラグメント(その変異体及び変種を含む)、又はg3p融合タンパク質を含むもの)は、アミロイドイメージング剤として用いられる。イメージング剤は、アミロイドを検出することができ、アミロイドと関連する疾患を診断することができる。本発明の組成物は、線維の種類に関わらずアミロイドを結合するので、全て単一のイメージング剤を用いて任意のアミロイド凝集体(Aβ、タウ、α−シヌクレインなど)を画像化することができるという点で有利である。現時点で、CNSにおけるタウ又はアルファシヌクレイン凝集体に許容されるイメージング剤/方法は存在しない。β−アミロイドに対するイメージング剤が存在する一方、認知機能と画像結果との相関の改良をもたらし得、及び/又は疾患の悪化対安定性を良好に推測する更なる剤が依然必要である。概説については、Resnick & Sojkova, Alzheimer’s Res Ther. (2011) 3(1):3を参照。
【0192】
本発明の診断用組成物は、β−アミロイドに特異的なイメージング剤(例えば、F18−AV−45、Eli Lilly)と組み合わせてイメージング剤として用いられ得る。現在、非β−アミロイド凝集体に対して既知のイメージング剤は存在しないので、β−アミロイド特異的イメージング剤と一緒の本発明の診断用組成物の使用は、分別検出に基づく非β−アミロイド凝集体の検出となる。従って、1つの実施態様において、本発明の診断用組成物を、β−アミロイドイメージング剤と組み合わせてイメージング剤として用いて、非β−アミロイド凝集体が検出される。
【0193】
別の実施態様において、本発明の診断用組成物をイメージング剤として用いて、脳を含むCNSにおいてβ−アミロイドが検出される。
【0194】
本発明の診断用組成物は、一般に、イメージング剤として用いられたとき、1つ以上の検出可能な標識に結合するアミロイド結合成分を必要とする。種々の標識は、タンパク質標識の標準的技術を用いて、診断用組成物のアミロイド結合成分に結合され得る。標識の例は、蛍光標識、及び放射性標識を含む。用いられ得る広範な放射性標識が存在するが、一般的に、標識は、
18F、
11C、及び
123Iを含むが、これらに限定されない放射性標識から選択される。これら及び他のラジオアイソトープは、周知の化学を用いてタンパク質に結合され得る。1つの実施態様において、標識は、ポジトロン放出断層撮影(PET)を用いて検出される。しかしながら、ラジオアイソトープの検出に適した他の任意の技術をまた用いて、放射性トレーサが検出され得る。
【0195】
本発明の診断用組成物は、治療用組成物について記載されたのと同じ経路を用いて投与され得る。1つの実施態様において、くも膜下腔内投与が、診断用組成物の投与経路として用いられる。別の実施態様において、静脈内投与が、診断用組成物の投与経路として用いられる。
【実施例】
【0196】
実施例
抗凝集剤としての糸状ファージの証明された治療上の有効性は、作用の任意の具体的なメカニズムに付随しないが、メカニズムを理解することは、より高い治療上の有効性を伴ったファージ設計を可能にする。加えて、それは、更なる抗凝集剤を調製するための基礎として作用する。
【0197】
既に示された通り、M13は、少なくとも4種類の異なるアミロイド線維:アミロイド−β1〜42線維(fAβ42)、α−シヌクレイン線維(fαsyn)、酵母プリオンNM線維(fNM)、及びタウ線維(ftau)に結合し、脱凝集させることが示された。これらのアミロイド線維を作り出す4個のタンパク質は、1次アミノ酸配列と関連しないが、全4種が基準のアミロイド折り畳みに誤って折り畳まれる(Eichner & Radford, 2011)。M13のこれらのタンパク質それぞれの脱凝集に結合し、仲介する能力は、M13が構造上のモチーフ(例えば、クロスベータシート構造)又は構造上の特性(例えば、疎水性グローブ)(これら両方が、全アミロイド線維の特徴を定義している)を認識することを示す。
【0198】
しかしながら、アミロイド脱凝集は、全てのファージの一般的な性質ではない。例えば、構造上異なる正二十面体ファージT7は、fAβ42と3日間37℃でインキュベーションされたときでさえ、fAβ42の脱凝集を仲介しない。バクテリオファージT7は、70%を超える共インキュベーションされたアミロイド線維を解離する濃度でさえ、任意の解離活性を示さない。対照的に、M13と比較してg8p中に負に電荷したアミノ酸を有するバクテリオファージfd(それ故、g8pのコピー数を付与されたM13より、2800個のより負の電荷/ファージを示す)は、M13同様、fAβ42に結合し、脱凝集した。アミロイド脱凝集がタバコモザイクウイルス(TMV)、エシェリキア・コリ線維、及びT4のテールチューブ(これら全てがらせん状シリンダー形及び繰り返し単位を有する(米国特許第2011/0182948号を参照))により仲介され得るとの知見に基づき、これらの初期研究は、それがアミロイド線維−解離活性に決定的なファージの形であることを示唆した。
【0199】
しかしながら、以下の実施例は、報告された糸状ファージ及び糸状ファージの抗凝集特性についての代替(しかしながら、相互排他的ではない)メカニズムを記載する。これらの実施例、及びそれらがサポートする作用のメカニズムに基づき、アミロイドの改良された結合を有する修飾ファージは、新規アミロイド結合剤と共に提供される。
【0200】
実施例1:M13ファージはAβ原線維に優先的に結合する
M13のAβ原線維対Aβモノマーへの結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)により示した。
【0201】
M13ファージはAβ原線維に優先的に結合し、Aβモノマーに結合しない。固定化fAβを有するバイオセンサーチップに渡り流した10
14ファージ/mLを用いた表面プラズモン共鳴研究を
図3に報告する。
図3は、M13結合K
Dが約4nMであり、モノクローナル抗体による結合と比較可能であることを示す。この高親和性相互作用は、特異的結合プロセスがファージとアミロイド線維間で生じることを示す。
【0202】
実施例2:M13のAb原線維への結合は用量依存性である
fAβ42へのM13結合も用量依存性である。
図4Aにおいて、2つのファージ用量の増加モル量のfAβ42との結合を比較した。このM13−アミロイド線維結合アッセイにおいて、M13−Alexa488をAβ(fAβ)と2〜3時間混合して、複合体を形成させ、次に、複合体を7500rpmで10分間の遠心分離により沈殿させた。ペレット中の蛍光は、アミロイドへのM13結合に比例した。このアッセイは、ファージのfAβへの結合の定量的測定、及び結合に対する他の剤のファージと競合する能力の評価系を提供する。
図4Bは、M13結合競合のK
Dが、表面プラズモン共鳴を用いて結合について観察したものと同様であることを示す。
【0203】
実施例3:M13のAβ原線維への結合は天然構造を必要とする
M13ファージを90℃で10分間加熱したとき、結合に対して競合するその能力は、本質的に無効になる。
図5は、アミロイド線維競合結合アッセイにおいて加熱処理(四角)対天然構造(丸)M13を用いた結合競合結果を示す。
【0204】
実施例4:温度はM13−アミロイド相互作用と相関する
M13はアミロイド線維を強力に脱凝集する。
図6は、fAβを用いたチオフラビンT(ThT)蛍光アッセイを示す。M13の存在下で、fAβ42は脱凝集する。
【0205】
図7Aは、ThT蛍光中の塩濃度の10倍(0.15〜1.5M)変化が、脱凝集するfAβの存在下でたった2〜3倍の差となることを示す。これは、疎水性相互作用が観察した脱凝集のほとんどに関与することを示す。
【0206】
塩濃度の比較的わずかな作用と対照的に、
図7Bは、4℃から37℃の温度変化が、脱凝集において8〜10倍の差となることを示す。
【0207】
これらの結果は、M13脱凝集が、温度が高いほどより活性であり、アッセイにおける塩の作用と比較的関係しない(疎水性相互作用を示唆する)タンパク質に依存することを示す。ファージg3pはこの説明と合致する。そのN1及びN2ドメインは、「開合して」、N2が細菌のF−線毛に結合する可動性グリシンリッチなリンカーにより結合される。次に、N1は、感染プロセスの一部として、細菌の共受容体への結合のため利用可能である。脱凝集アッセイにおいて温度を上昇させることは、g3pのN2及びN1ドメインを「開合する」と予測される。
【0208】
高温(90℃、10分、
図5を参照)でのM13の不活性化は結合を抑止する一方、M13−アミロイド結合アッセイにおけるインキュベーション温度の上昇は、結合に対してポジティブな作用を有する。
図8Aは、温度を18℃から58℃に上昇させることが、最大約50℃(この温度ポイントで結合が減少し始める)のヒンジアンフォールディングT
Mまで次第に良好な結合となることを示す。この最適な結合温度は、48.1℃である、g3pにおけるN1−N2アンフォールディングの温度(いわゆる、融点、又はT
M)と一致する。50℃対37℃へのインキュベーション温度の上昇もまた、M13のfAβ42へのより急速な結合をもたらす。
図8B。
【0209】
実施例5:g3pはM13−β−アミロイド相互作用に必要である
g3pがM13−β−アミロイド相互作用に必要であるかどうかを直接試験するために、g3pを、Aβ結合に対する再度折り畳まれたファージと比較したArgC(M13Δg3p)及びM13Δg3pファージでのタンパク分解処理によりファージから取り除いた。バチルスのタンパク質分解酵素であるArgCでの処理は、g3pサブユニットをファージから選択的に取り除く。結果を
図9Aに示す。再度折り畳まれたM13は、競合結合アッセイにおいて野生型M13と低減したレベルにも関わらず依然競合する。しかしながら、15倍のM13Δg3pでさえ、仮に野生型M13としても、不十分に競合した。この野生型M13と競合しない能力は、M13Δg3pファージにおける感染性の消失と一致する。
図9B。ArgC処理はまた、脱凝集活性の消失を引き起こした。
図9C。
【0210】
g3pが、感染における役割と同じ方法で結合を仲介するなら、感染に重要であるN1及びN2ドメインは、結合に対してM13と競合する。これを試験するため、組み換え可溶性N1N2(「rs−g3p(N1N2)」;「コンストラクト3」)を調製し、競合アッセイにおいて試験した。
図10A及び10Bに示す通り、M13は、fAβ42への結合に対して標識M13と競合するが、M13Δg3pは競合しない。対照的に、rs−g3p(N1N2)はM13と競合できず、このことは、g3pのN1及びN2ドメインがβ−アミロイド結合に十分であることを示す。同様の結果を、競合アッセイの繰り返しにおいて得た。
図10B。
【0211】
実施例6:g3pヒンジアンフォールディング変異はアミロイド結合を調節する
g3pのN1とN2ドメイン間のヒンジを開合する能力に影響する変異は、これらの変異を生じるファージの、Aβへの結合に対して野生型M13と競合する能力に作用する。Eckert & Schmid, 2007は、この仮説を試験するために用いたいくつかの変種ファージを記載している。変異体「AAA」(「3A」としても知られる)は、線毛結合を損ない、N2ドメインの安定性を低減する。AAAは、g3pにおける以下の変異:W181A、F190A、及びF194Aを有する。IIHYは、変異T13I、T101I、Q129H、及びD209Yを含有し、そしてそれはN2ドメインを安定化し、T
Mを増大する。
【0212】
結合競合を、N1及びN2ドメイン中のM13g3pと同一のアミノ酸配列を有するファージfdについて評価した(
図2);IIHYはM13、及びAAAより高いヒンジTmを有する。ファージfd、AAA、及びIIHYを、50℃1.5時間で予め活性化し、次に活性化及び非活性化Fd、AAA、及びIIHYを、標識M13と競合する能力について比較した。
図11は結果を示す。野生型fdは、加熱により活性化したとき、良好な競合相手であった。対照的に、加熱は、より高いヒンジTmを有するIIHYに対する作用をほとんど有しない。M13と比較して低減したN2ドメイン安定性を有するAAAは、加熱事前処理あり又はなしで良好な競合相手であった。
【0213】
これらのデータは、M13のβ−アミロイドとの相互作用が、M13が細菌に感染するものと同様のメカニズムを介するものであるとの結論を支持する。第1に、これらは、疎水性相互作用がM13−β−アミロイド相互作用に重要であることを示す。第2に、M13結合及び脱凝集活性化の温度依存性は、N1−N2ヒンジアンフォールディングTmを反映する。第3に、g3pの選択的タンパク質分解は、M13−β−アミロイド相互作用を無効にする。
【0214】
実施例7:g3pフラグメントはアミロイドに選択的かつ強力に結合するが、モノマーに結合しない
g3pフラグメントがアミロイドに結合する能力を保持するかどうかを評価するために、N1及びN2を含むg3pフラグメントを調製し、表面プラズモン共鳴(SPR)により、Aβ原線維対Aβモノマーを結合する能力について評価した。結果は、rs−g3p(N1N2)がAβ原線維に優先的に結合し、Aβモノマーに結合しないことを示す。4μM rs−g3p(N1N2)を用いた表面プラズモン共鳴研究を
図13に報告し、そしてそれは、rs−g3p(N1N2)結合のK
Dが約160nMであることを示す。この高い親和性相互作用は、特異的結合プロセスが、rs−g3p(N1N2)とアミロイド線維との間で生じることを示す。
【0215】
更なるコンストラクトをSPRにより評価した。以下の表は結果を概説する。
【表2】
【0216】
実施例8:g3pフラグメントはAβ42線維を強力に脱凝集する
g3pフラグメントがアミロイド線維を脱凝集するかどうかを試験するために、rs−g3p(N1N2)を、予め形成させたfAβ42原線維を脱凝集する能力について、ThT蛍光アッセイにおいて試験した。結果は、rs−g3p(N1N2)がfAβ42を強力に脱凝集することを示す。
図14Aは、rs−g3p(N1N2)がfAβ42を用量に依存した方法で脱凝集するという、この実験の結果を示す。
図14Bは、約20nMであるIC
50を示す。
【0217】
別の実験において、Aβ42を、rs−g3p(N1N2)あり又はなし、濃度2μMで7日間37℃でインキュベーションし、Aβ42線維の強度を透過型電子顕微鏡により評価した。
図15Aは、rs−g3p(N1N2)がAβ42線維を脱凝集するという、この実験の結果を示す。
図15Bは、これらの同一試料に対するThTアッセイの結果を示す。Rs−g3p(N1N2)は、このThTアッセイにおいて予め形成させたAβ42線維を脱凝集した。
【0218】
実施例9:rs−g3p(N1N2)はα−シヌクレイン及びAβアセンブリーを阻害し、rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fcはアセンブリーを阻害し、Aβの凝集を阻害する
g3pが、α−シヌクレイン線維アセンブリーを阻害し得るかどうか、及び原子価(すなわち、g3pのコピー数)が役割を果たすかどうかを決定するために、5量体g3p(5コピーのg3p)及びモノマーg3p(1コピーのg3p)のα−シヌクレイン活性を阻害する能力を試験するアッセイを行った。結果は、g3pがα−シヌクレイン線維アセンブリーを阻害し、5量体g3pがこの活性でモノマーg3pより有効であることを示す。
図16を参照。
【0219】
rs−g3p(N1N2)(コンストラクト3)及びrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)の、Aβ42のアセンブリーを阻害する能力も評価した。
図30及び
図31に示す通り、コンストラクト3及びコンストラクト6は、fAβ42のアセンブリーを用量に依存した方法で阻害する能力がある。
図37に示すとおり、コンストラクト3及びコンストラクト6は、fAβ42凝集を阻害する能力がある。
【0220】
実施例10:rs−g3p(N1N2)−Ig融合タンパク質はAβに結合し、脱凝集する
g3p原子価がアミロイドへのg3p結合の能力において役割を果たすかどうかを評価するために、rs−g3p(N1N2)(「rs−g3p(N1N2)−Ig融合」)について2価であるIg融合タンパク質を作成し、Aβ線維に結合する能力について5価のM13と比較した。
図17に示す通り、rs−g3p(N1N2)−Ig融合は、M13と同様の親和性かつrs−g3p(N1N2)のみより強力にAβに結合し、このことは、g3pの原子価が重要であり得ることを示している。同様の結果を競合アッセイの繰り返しで得た。
図18。
図18において、四角形は、コンストラクト2(M13)を表し;三角形はコンストラクト3(rs−g3p(N1N2))を表し;上下逆の三角形はコンストラクト4(rs−g3p(N1N2)−Ig融合)を表し;菱形はr−IgG4Fcネガティブコントロールを表す。
【0221】
原子価が脱凝集においても役割を果たすかどうかを評価するため、2価rs−g3p(N1N2)−Ig融合(「コンストラクト4」)を、フィルタートラップアッセイにおいて5価のM13と比較した。
図19。結果は、2価rs−g3p(N1N2)−Ig融合と5価M13の両方がβ−アミロイド線維を強力に脱凝集させることを示す。また、原子価が脱凝集の効力に重要であり得ることが示唆され、40nM rs−g3p(N1N2)−Ig融合に類似したレベルで、1.7nM5価M13の凝集体を低減する能力により示される。
図19。
【0222】
同様のアッセイにおいて、1×10
12/ml M13(コンストラクト2);80nm及び800nM rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc(コンストラクト5);及び80nm及び800nM rs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)を、フィルタートラップアッセイにおいてAβ42線維を脱凝集させる能力についてアッセイした。コンストラクト2、5、及び6は、β−アミロイド線維を強力に脱凝集させる。
図33。
【0223】
実施例11:テトラマーストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]タンパク質は、fAβに結合し、脱凝集させる
アミロイドに結合し、脱凝集させるg3pの能力に対する原子価の役割を更に評価するため、g3p(N1N2)に結合したテトラマーストレプトアビジンを、rs−g3p(N1N2)をビオチン−Lys−NTAとNiSO
4の存在下で合わせることにより調製した。MWCO 3KDaメンブレンを用いて、過剰のリガンドを取り除いた。ストレプトアビジンを加え、過剰のrs−g3p(N1N2)−ビオチンをMWCO 100 KDaメンブレンを用いて取り除いた。得られたg3pコンストラクト、ストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]は、4つのrs−g3p(N1N2)部分を有する。ストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]を、結合アッセイにおいて、rs−g3p(N1N2)(「コンストラクト3」)と比較した。
図20。テトラマーストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]は、モノマーrs−g3p(N1N2)より強力にfAβに結合し、これは、原子価が結合の効力に重要であることを更に示す。
図20。しかしながら、モノマーrs−g3p(N1N2)でさえ治療上許容されるレベルでfAβに結合する。
【0224】
原子価が脱凝集においても役割を果たすかどうかを評価するために、モノマーrs−g3p(N1N2)を、フィルタートラップアッセイにおいてテトラマーストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]と比較した。
図21。結果は、モノマーrs−g3p(N1N2)とテトラマーストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]の両方がfAβ線維を強力に脱凝集させることを示す。また、原子価が脱凝集の効力に重要であることが示され、2.5μMモノマーrs−g3p(N1N2)によるAβの低減した脱凝集と比較して、fAβ凝集体最大200ngを無効にする360nMテトラマーストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]の優れた能力により示される。例えば、
図21、列4に比較した列2。
【0225】
ストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]によるAβの脱凝集を、TEMにより評価した。ストレプトアビジン−[ビオチン−g3p(N1N2)]は、インキュベーションの3日後、fAβ42を完全に脱凝集した。
図22。
【0226】
実施例12:N1N2−Ig融合タンパク質はアルツハイマー病のマウスモデルにおいてAβを有意に低減する
アルツハイマー病の研究のための周知のマウスモデル(Hsiao et al., Science (1996) 274:99−102; Duyckaerts et al., Acta Neuropathol (2008) 115:5−38)を用いて、オスTg2576マウスを500日より長く加齢させ、N1N2−Ig融合(7.8μg/注射でのコンストラクト5、及び8.2μg/注射でのコンストラクト6)又はネガティブコントロールとしての食塩水の2種の異なる調製物を海馬に両側性に注射(2μL/注射)し、7日目に屠殺した。脳組織を回収し、薄切し、抗アミロイドベータモノクローナル抗体(82E1; MyBioSourceのカタログ番号MBS490005−IJ10323)を用いて、プラーク負荷定量について染色した。
図28に示す通り、両N1N2−Ig融合タンパク質は、食塩水で処置したマウスと比較して、海馬において測定したプラーク負荷を有意に低減した。
図29に示す通り、両N1N2−Ig融合タンパク質は、食塩水で処置したマウスと比較して、大脳皮質において測定したプラーク負荷を有意に低減した。
【0227】
実施例13:N1N2−Ig融合タンパク質はAβオリゴマーにより誘導される細胞毒性を阻害する
Aβオリゴマーは、神経細胞において、ある種の毒性酵素の放出を引き起こす。酵素をアッセイして、化合物がAβオリゴマーにより誘導される細胞毒性を阻害し得るかどうかを決定することができる。
図32は、M13(コンストラクト2)及びrs−g3p(N1N2)−hIgG1−Fc(コンストラクト6)は、N2a細胞に対するオリゴマーにより誘導される毒性を阻害することを示す代表的なデータを示す。それ故、g3pフラグメントは、Aβオリゴマーにより誘導される細胞毒性の強力な阻害剤である。
【0228】
実施例14:N1N2−Ig融合タンパク質はタウに結合し、脱凝集させる
g3pフラグメントがタウに結合するかどうかを評価するために、N1及びN2を含むg3pフラグメント−Ig融合タンパク質を調製し、表面プラズモン共鳴(SPR)によりftauを結合する能力について評価した。
図35は、rs−g3p(N1N2)−hIgG4−Fc(コンストラクト4)がftauに強力に結合することを示す1つの代表的SPRアッセイの結果を示す。
【0229】
g3pフラグメントがタウを脱凝集させ得るかどうかを試験するために、N1及びN2を含むg3pフラグメント−Ig融合タンパク質を、予め形成したftauを低下させる能力についてThT蛍光アッセイにおいて試験した。結果は、N1N2−Ig融合タンパク質がftauを強力に脱凝集させることを示す。
図36A及び
図36Bを参照。
【0230】
実施例15:N1N2−Ig融合タンパク質はプリオン病の細胞培養モデル(N2a22L
Sc)においてPrP
Sc蓄積、凝集及びPrP
Sc形成を阻害する
プリオン病は、正常の細胞プリオンタンパク質(PrP
c)のタンパク質分解酵素抵抗性病理形態PrP
Scへの変換により特徴付けられる。PrP
Scは、タンパク質分解酵素抵抗性に基づきPrP
cと区別される:タンパク質分解酵素は、PrP
Scを部分的に低減して、分子量19〜21kDaの未グリコシル化形態を有するタンパク質分解酵素抵抗性C末端コアフラグメント(PrPres)を形成した。PrP
Scの阻害、逆転、及び低減は、いくつかの神経変性疾患の処置への価値ある治療上のアプローチを構成する。
【0231】
N1及びN2を含むg3pフラグメント−Ig融合タンパク質(コンストラクト6)が、プリオン疾患のインビトロモデルにおける病理学的プリオン配座異性体(PrP
Sc)の形成と干渉するかどうかを決定するため、及び脱凝集、又はコンストラクト6の存在下又は不存下でのN2a22L
Sc細胞におけるPrPの溶解性の変化を検証するために、細胞を、24時間、1μg/mlコンストラクト6又はIgGの不存下又は存在下で培養し、溶解バッファー中に回収した。総タンパク質100μgを、Beckman Optima TL超遠心機中、TLA100.1ローターにて、4℃で90分間55,000rpmで超遠心した。可溶化ペレット、及び上清試料25μlを、抗体PrP抗体6D11 mAbでのSDS−PAGE及び下流分析の対象にした。増大した界面活性剤不溶性は、PrP
Sc又はPrP変異体によるタンパク質分解酵素K(PK)抵抗性の獲得に先行し、それ故、コンストラクト6のPrP溶解性を変える能力を評価した。コンストラクト6により処理した細胞は、IgGで処理したN2a22L
Sc細胞と比較して、有意に低減した量の凝集/不溶性PrPを示した。
図38A及び
図38Bを参照。
【0232】
図38A及び38Bについて、N2a22L
Sc細胞を、既に記載された(Pankiewicz et al., Eur. J. Neurosci. (2006) 23:2635−2647)通り作成した。簡単に言うと、マウス適応22Lプリオン株に感染した末期のCD−1マウスの脳を、冷リン酸緩衝食塩水及び5%デキストロース中、無菌条件下での超音波処理(10%波長/容量)によりホモジェナイゼーションした。注入のため、脳ホモジェネートを、更に、Opti−MEM中2%まで希釈し、サブコンフルエントの6ウェルプレート(Corning, Acton, MA, USA)に10−cm
2ウェル当たり1mLで加えた。5時間後、通常のMEM1mLを加え、細胞を感染脳ホモジェネートの存在下で更に12時間インキュベーションした。細胞を洗浄し、標準MEM成長培地を加えた。細胞をコンフルエントまで成長させ、1:2希釈に分け、25−cm
2フラスコ(Corning)に移した。1つのフラスコにおいて成長させた細胞を、4日毎に1:2に分けて、継代し、一方別のフラスコで成長した細胞を回収し、ホモジェネートして、PrP
Scのレベルをモニターした。従前の研究に基づき、摂取により誘導したPrP
Scの存在を1代及び2代のみで検出し、4代(P4)細胞を、全ての続く研究に用いた。細胞を、(50mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1mM エチレングリコールテトラ酢酸(EGTA)、1mM Na
3V0
4、1mM NaF、2.5mM Na
4P
2O
7、1mM β−グリセロリン酸、1% NP−40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、0.5mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、1mMロイペプチン、1mM ペプスタチンA、PK切断用1mM PMSF又はなし)からなるホモジェナイゼーションバッファー中、5分間、4℃で溶解し、可溶性物質を10,000g、10分間、4℃での遠心分離により取り除いた。細胞の分画のため、タンパク質100μgを、55,000rpmで90分間遠心し、その後、ペレットを開始容量に再構成させた。20%両ペレット及び上清を分離し、生化学的に特徴付けた。
【0233】
コンストラクト6が、脱凝集又は物理化学的特性を変化させることにより、PrP
Scの増殖を容量依存的に変更するかどうかに取り組むために、N2a22L
Sc細胞を、24時間、増加濃度のコンストラクト6又はIgGの不存下又は存在下で培養し、溶解バッファー中に回収した。PK処理あり又はなしの溶解細胞アリコートを、抗PrP抗体6D11及び6H4mAbでのSDS−PAGE及び下流分析の対象にした。対照IgG及びコンストラクト6由来の生化学的に溶解したPK切断及び未切断溶解物におけるPrP免疫反応性を評価した。処理は、N2a22L
Sc+10μg/ml、3μg/ml、1μg/ml、0.333μg/ml、0.111μg/ml、0.037μg/ml、0.012μg/ml、及び0.004μg/mlコンストラクト6、又はN2a22L
Sc+1μg/ml mIgGを含む。
【0234】
結果は、1μg/ml IgGと比較して、コンストラクト6の存在下でのPrP
Scの有意な用量依存性低減を示し、これは、50%未満のPrP
Scが0.08μg/mlコンストラクト6の存在下で生じることを示す。
図39A及び
図39Bを参照。実験を繰り返し、これらの結果を確認した。
【0235】
PrPのタンパク質分解酵素K(PK)抵抗性配座異性体を評価するために、従前の方法(Perrier et al., J. Neurochem (2004) 84:454−463, Pankiewicz et al., 2006)に従い、溶解細胞アリコートをPK(lμg/μg)1:50希釈、37℃、30分間処理した。インキュベーション後、PMSFを4mmに加えることにより、切断を停止させた。
【0236】
タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて測定した。試料を、試料バッファー(250mM Tris−HCl、pH6.8、10%SDS、5mM β−メルカプトエタノール、50%グリセロール、0.02%クーマシーブルーG250)中に希釈し、5分間煮沸した。処理した試料を、SDS−PAGEにより減圧下で分離した。
【0237】
抗PrPモノクローナル抗体6D11(Sadowski et al., Neurobiol Dis. (2009) 34(2): 267−278を参照)及び6H4(Cordes et al., J Immunol Methods (2008) 337:106−120を参照)、並びに抗アクチンを用いて、試料を特徴付けた。抗原−抗体複合体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(GE Healthcare UK Limited, Buckinghamshire, UK)を用いて検出し、ECLシステム(GE Healthcare UK Limited)を用いて、製造元の指示に従い視覚化した。タンパク質バンドの定量を、フィルム(Image J、NIH)の濃度測定分析により行った
【0238】
まとめると、
図38A及び38B、及び
図39A及び39Bに示す結果は、g3pフラグメントIg融合タンパク質の、インビトロでのPrP
Sc形成を直接阻害する能力を示す。