特表2015-505838(P2015-505838A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-505838活性薬剤の送達のための分岐アルキルおよびシクロアルキルを末端とする生分解性脂質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-505838(P2015-505838A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(54)【発明の名称】活性薬剤の送達のための分岐アルキルおよびシクロアルキルを末端とする生分解性脂質
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/12 20060101AFI20150130BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20150130BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20150130BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20150130BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20150130BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20150130BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20150130BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20150130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150130BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20150130BHJP
【FI】
   C07C229/12CSP
   A61K9/14
   A61K31/7088
   A61K31/7105
   A61K31/711
   A61K48/00
   A61K47/28
   A61P37/04
   A61P43/00 105
   A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2014-546118(P2014-546118)
(86)(22)【出願日】2012年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月4日
(86)【国際出願番号】US2012068450
(87)【国際公開番号】WO2013086322
(87)【国際公開日】20130613
(31)【優先権主張番号】61/568,121
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】511112478
【氏名又は名称】アルニラム・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ミチアル・アンセル
(72)【発明者】
【氏名】シンヤオ・ドゥ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB11
4C076DD49A
4C076DD70A
4C076FF31
4C076FF32
4C084AA03
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB211
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB21
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BJ20
4H006BJ30
4H006BT12
4H006BT14
4H006BT22
4H006BU32
(57)【要約】
本発明は、カチオン性脂質の脂質部分(例えば、疎水性鎖)に位置する1個以上の生分解性基を有する式(I)のカチオン性脂質に関する。これらのカチオン性脂質は、活性薬剤(例えば、核酸)を送達するための脂質粒子中に組み込まれ得る。本発明はまた、中性脂質と、凝集を低減できる脂質と、本発明のカチオン性脂質と、任意選択でステロールとを含む脂質粒子に関する。当該脂質粒子は、治療薬剤(例えば、核酸)をさらに含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物またはその塩であって、式中、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば、C〜Cアルキル)であり;
およびRに関しては、
(i)RおよびRは、各々独立して、任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環、もしくはR10であるか;
(ii)RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、任意選択で置換されている複素環式環を形成しているか;または
(iii)RおよびRのうちの一方は、任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、もしくは複素環であり、他方は、(a)隣接する前記窒素原子および(b)前記窒素原子に隣接する(R)基と共に、4員〜10員の複素環式環もしくはヘテロアリール(例えば、6員環)を形成しており;
Rの各存在は、独立して−(CR)−であり;
およびRの各存在は、独立して、水素、OH、アルキル、アルコキシ、−NH、R10、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり;
10の各存在は、独立して、PEG、ならびにポリ(オキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]およびポリ(アミノ酸)をベースとするポリマーから選択され、ここで、
(i)前記PEGまたはポリマーは、直鎖または分岐であり、(ii)前記PEGまたはポリマーは、n個のサブユニットが重合したものであり、(iii)nは、10〜200単位の間の数平均重合度であり、そして(iv)前記式の化合物は、2個以下のR10基を有しており;
Qに向かう破線は存在しないか、または結合であり;
前記Qに向かう破線が存在しない場合は、その時は、Qは存在しないか、もしくは−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R)−、−N(R)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−OC(O)N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−もしくは−C(R)=N−O−C(O)−であり;または
前記Qに向かう破線が結合である場合は、その時は、(i)bは0であり、かつ(ii)Qとそれに隣接する第3級炭素(C)とは5個〜10個の環原子を有する置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式の複素環式基を形成しており;
の各存在は、独立して、水素またはアルキルであり;
XおよびYは、各々独立して、−(CR−であり;
およびRの各存在は、独立して、水素、OH、アルキル、アルコキシ、−NH、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり;
およびMは、各々独立して、生分解性基であり;
aは、1、2、3、4、5または6であり;
bは、0、1、2、または3であり;
cの各存在は、独立して、2〜10であり;そして
およびZは、各々独立して、(i)C〜C10シクロアルキル、(ii)C〜C10シクロアルキル(C〜Cアルキル)、または(iii)
【化2】
(式中、RおよびRの各々は、C〜Cアルキルである)である、
化合物またはその塩。
【請求項2】
およびMが、各々独立して、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R)=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−O−N=C(R)−、−C(O)(NR)−、−N(R)C(O)−、−C(S)(NR)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)N(R)−、−OC(O)O−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびMが、各々独立して、−OC(O)−または−C(O)O−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、各々アルキルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、各々メチルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
aが3であり、かつbが0である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
XおよびYが、各々独立して、−(CH−である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
およびZが、各々独立して、C〜C10シクロアルキルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
およびZが、各々シクロへキシルまたはデカヒドロナフタレニルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
およびZが、各々独立して、式II:
【化3】
(式中、RおよびRは、各々独立して、C〜Cアルキルである)
で表される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
【化4A】
【化4B】
【化4C】
【化4D】
およびそれらの塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
式:
【化5】
を有する化合物またはその塩。
【請求項13】
前記化合物が、薬学的に受容可能な塩の形態である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、カチオン性脂質の形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
中性脂質と、凝集を低減できる脂質と、請求項14に記載のカチオン性脂質とを含む、脂質粒子。
【請求項16】
前記中性脂質がDSPC、DPPC、POPC、DOPE、またはSMから選択され、前記凝集を低減できる脂質がPEG脂質であり、そして前記脂質粒子がステロールをさらに含む、請求項15に記載の脂質粒子。
【請求項17】
前記カチオン性脂質が約20%および約60%のモル百分率で存在し、前記中性脂質が約5%〜約25%のモル百分率で存在し、前記ステロールが約25%〜約55%のモル百分率で存在し、そして前記PEG脂質がPEG−DMA、PEG−DMG、またはそれらの組み合わせでありかつ約0.5%〜約15%のモル百分率で存在する、請求項15または16に記載の脂質粒子。
【請求項18】
活性薬剤をさらに含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の脂質粒子。
【請求項19】
前記活性薬剤が、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アンタゴmir、アプタマー、およびリボザイムから選択される核酸である、請求項18に記載の脂質粒子。
【請求項20】
前記脂質粒子が、約3時間未満のインビボ半減期(t1/2)を有する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の脂質粒子。
【請求項21】
前記脂質粒子が、生分解性基を有さない同様のカチオン性脂質を含有する脂質粒子についてのインビボ半減期(t1/2)の約10%未満のインビボ半減期(t1/2)を有する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の脂質粒子。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の脂質粒子と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項23】
細胞における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、請求項15〜21のいずれか一項に記載の脂質粒子を前記細胞に供給することを含む、方法。
【請求項24】
前記活性薬剤が、核酸であり、siRNAである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体におけるポリペプチドの過剰発現により特徴付けられる疾患または障害を処置する方法であって、前記方法は、請求項22に記載の薬学的組成物を前記被験体に提供することを含み、前記活性薬剤は、siRNA、マイクロRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される核酸であり、かつ前記siRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補体に特異的に結合するポリヌクレオチドを含む、方法。
【請求項26】
被験体におけるポリペプチドの過少発現により特徴付けられる疾患または障害を処置する方法であって、前記方法は、請求項22に記載の薬学的組成物を前記被験体に提供することを含み、前記活性薬剤は、前記ポリペプチドまたはその機能的変異体もしくは断片をコードするプラスミドである、方法。
【請求項27】
被験体における免疫応答を誘導する方法であって、前記方法は、請求項22に記載の薬学的組成物を前記被験体に提供することを含み、前記活性薬剤は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドである、方法。
【請求項28】
前記標的遺伝子が、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、アポB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb−B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL−2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT−1遺伝子、β−カテニン遺伝子、c−MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サーバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、SORT1遺伝子、XBP1遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、癌抑制遺伝子、およびp53癌抑制遺伝子からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的遺伝子が、1つ以上の変異を含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年12月7日に出願された米国仮特許出願第61/568,121号の利益を請求するものであり、この仮特許出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、生分解性脂質に関し、そして活性薬剤(例えば、核酸)の送達のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
治療核酸としては、例えば、スモール干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、免疫刺激性核酸、アンチセンス、アンタゴmir(antagomir)、アンチmir(antimir)、マイクロRNA模倣物、スーパーmir(supermir)、U1アダプター、およびアプタマーが挙げられる。siRNAまたはmiRNAに関しては、これらの核酸は、RNA干渉(RNAi)と呼ばれるプロセスを介して特定のタンパク質の細胞内レベルをダウンレギュレートし得る。RNAiの治療用途は極めて広範である。というのは、siRNAおよびmiRNA構築物は、標的タンパク質に対して指向された任意のヌクレオチド配列を用いて合成され得るからである。現在までに、siRNA構築物は、インビトロおよびインビボの両方のモデルにおいて標的タンパク質を特異的にダウンレギュレートする能力を示している。さらに、siRNA構築物は、現在臨床試験において評価されているところである。
【0004】
しかしながら、siRNAまたはmiRNA構築物が現在直面している2つの問題は、第1に、それらが血漿におけるヌクレアーゼ消化に対して感受性であること、そして第2に、それらが遊離siRNAまたはmiRNAとして全身投与される場合、タンパク質RISCと結合し得るところである細胞内コンパートメントに入るそれらの能力が限られていることである。他の脂質成分(例えば、コレステロールおよびPEG脂質)と共にカチオン性脂質と、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNAおよびmiRNA)とから形成される脂質ナノ粒子が、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを促進するために使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オリゴヌクレオチドの送達のための改善されたカチオン性脂質および脂質ナノ粒子の必要性が存続している。好ましくは、これらの脂質ナノ粒子は、高い薬物:脂質比を提供し、血清中での分解およびクリアランスから核酸を保護し、全身送達に好適であり、かつ核酸の細胞内送達をもたらすものであることが願われる。また、これらの脂質−核酸粒子は、核酸の有効用量での患者処置が患者に対する著しい毒性および/または危険性を伴うことにならないように、十分に許容されるものでありかつ適切な治療指数を提供するものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、核酸−脂質粒子を形成するのに好適なカチオン性脂質に関する。本発明のカチオン性脂質の各々は、1個以上の生分解性基を含む。生分解性基は、カチオン性脂質の脂質部分(例えば、疎水性鎖)に位置する。これらのカチオン性脂質は、活性薬剤(例えば、核酸(例えば、siRNA))を送達するための脂質粒子中に組み込まれ得る。カチオン性脂質中への生分解性基(1個または複数)の組み込みは、標的領域への活性薬剤の送達に続くカチオン性脂質のより迅速な代謝および身体からの除去を結果としてもたらす。その結果、これらのカチオン性脂質は、生分解性基を有さない類似のカチオン性脂質よりも低い毒性を有する。
【0007】
1つの実施形態において、カチオン性脂質は、式:
【化1】
の化合物またはその塩(例えば、その薬学的に受容可能な塩)であり、式中、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば、C〜Cアルキル)であり;
およびRに関しては、
(i)RおよびRは、各々独立して、任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環、もしくはR10であるか;
(ii)RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、任意選択で置換されている複素環式環を形成しているか;または
(iii)RおよびRのうちの一方は、任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、もしくは複素環であり、他方は、(a)隣接する窒素原子および(b)窒素原子に隣接する(R)基と共に、4員〜10員の複素環式環もしくはヘテロアリール(例えば、6員環)を形成しており;
Rの各存在は、独立して、−(CR)−であり;
およびRの各存在は、独立して、水素、OH、アルキル、アルコキシ、−NH、R10、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり(1つの好ましい実施形態において、RおよびRの各存在は、独立して、水素またはC〜Cアルキルである);
10の各存在は、独立して、PEG、ならびにポリ(オキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]およびポリ(アミノ酸)をベースとするポリマーから選択され、ここで、
(i)PEGまたはポリマーは、直鎖または分岐であり、(ii)PEGまたはポリマーは、n個のサブユニットが重合したものであり、(iii)nは、10〜200単位の間の数平均重合度であり、そして(iv)ここで、当該式の化合物は、2個以下のR10基(好ましくは1個以下のR10基)を有しており;
Qに向かう破線は存在しないか、または結合であり;
当該Qに向かう破線が存在しない場合は、その時は、Qは存在しないか、もしくは−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R)−、−N(R)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−OC(O)N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−もしくは−C(R)=N−O−C(O)−であり;または
当該Qに向かう破線が結合である場合は、その時は、(i)bは0であり、かつ(ii)Qとそれに隣接する第3級炭素(C)とは5個〜10個の環原子を有する置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式の複素環式基を形成しており(例えば、複素環式基中のヘテロ原子は、OおよびS、好ましくはOから選択される);
の各存在は、独立して、水素またはアルキルであり;
XおよびYは、各々独立して、−(CR−であり;
およびRの各存在は、独立して、水素、OH、アルキル、アルコキシ、−NH、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり(1つの好ましい実施形態において、RおよびRの各存在は、独立して、HまたはC〜Cアルキルである);
およびMは、各々独立して、生分解性基(例えば、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R)=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−O−N=C(R)−、−C(O)(NR)−、−N(R)C(O)−、−C(S)(NR)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)N(R)−、−OC(O)O−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−)であり;
aは、1、2、3、4、5または6であり;
bは、0、1、2、または3であり;
cの各存在は、独立して、2〜10(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)であり;そして
およびZは、各々独立して、(i)C〜C10シクロアルキル、(ii)C〜C10シクロアルキル(C〜Cアルキル)、または(iii)
【化2】
(式中、RおよびRの各々は、独立して、C〜Cアルキル(例えば、C−アルキル、−CHCH(CH、n−Cアルキル)である)である。
【0008】
1つの実施形態において、(i)RおよびRは、各々独立して、任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、もしくは複素環であるか;または(ii)RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、任意選択で置換されている複素環式環を形成している。
【0009】
1つの実施形態において、RおよびRは、両方ともアルキル(例えば、メチル)である。
【0010】
さらなる実施形態において、aは3である。別の実施形態において、bは0である。
【0011】
さらなる実施形態において、aは3であり、bは0であり、かつRは−CH−である。さらにさらなる実施形態において、aは3であり、bは0であり、Rは−CH−であり、かつQは−C(O)O−である。別の実施形態において、RおよびRはメチルであり、aは3であり、bは0であり、Rは−CH−であり、かつQは−C(O)O−である。
【0012】
別の実施形態において、XおよびYは、各々独立して、−(CH−である。変数cは、例えば4〜10または6〜10であり得る。例えば、XおよびYは、独立して、−(CH−または−(CH−である。1つの実施形態において、XおよびYは、−(CH−である。別の実施形態(rembodiment)において、XおよびYは、−(CH−である。
【0013】
さらなる実施形態において、MおよびMは、各々独立して、−OC(O)−または−C(O)O−である。例えば、1つの実施形態において、MおよびMは、各々−C(O)O−である。
【0014】
なおさらなる実施形態において、ZおよびZは、各々独立して、C〜C10シクロアルキルである。例えば、1つの実施形態において、ZおよびZは、各々シクロへキシルである。別の実施形態において、ZおよびZは、各々デカヒドロナフタレニル(例えば、2−デカヒドロナフタレニル)である。
【0015】
さらなる実施形態において、ZおよびZは、各々独立して、分岐アルキルであり、ここで、この分岐アルキルの各分岐は、2個以上の炭素原子(例えば、4個以上の炭素原子)を含有し、アルキル基は、生分解性基に対してα位の炭素原子において分岐している。
【0016】
例えば、特定の実施形態において、ZおよびZは、各々独立して、式(II):
【化3】
で表され、式中、RおよびRは、各々独立して、C〜Cアルキル(例えば、Cアルキル(例えば、n−ブチル))である。
【0017】
1つの実施形態において、式Iの化合物は、下位式(subformula)(III):
【化4】
のものであり、式中、X、Y、ZおよびZは、式Iについて上で定義したとおりである。
【0018】
別の実施形態において、式(I)中の生分解性基(例えば、−C(O)O−)に対してα位またはβ位である基XまたはY内の炭素原子は、1個もしくは2個のアルキル基(例えば、1個のC〜Cアルキル基(例えば、−CH置換基)、または2個のC〜Cアルキル基(例えば、2個の−CH置換基))で置換され得る、またはスピロ環式基(例えば、C〜Cシクロアルキル(例えば、Cシクロアルキル))を有し得る。例えば、生分解性基に対してα位またはβ位である基XまたはY内の炭素原子は、独立して、
【化5】
(式中、nは4〜6である)から選択され得る。
【0019】
1つの実施形態において、M基またはM基と基XまたはY由来の隣接した可変部分(1つまたは複数)とは、基:
【化6】
(式中、nは4〜6である)を形成している。
【0020】
さらに別の実施形態は、本発明のカチオン性脂質を含む脂質粒子である。1つの実施形態において、脂質粒子は、本明細書に記載されるような式Iのc化合物を含む。別の実施形態において、脂質粒子は、本明細書に記載されるような式IIIの化合物を含む。
【0021】
好ましい実施形態において、脂質粒子は、中性脂質と、凝集を低減できる脂質と、カチオン性脂質と、任意選択でステロール(例えば、コレステロール)とを含む。好適な中性脂質としては、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、POPC、DOPE、およびSMが挙げられるが、これらに限定されない。凝集を低減できる好適な脂質としては、PEG脂質(例えば、PEG−DMA、PEG−DMG、またはそれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
脂質粒子は、活性薬剤(例えば、治療薬剤)をさらに含み得る。活性薬剤は、核酸(例えば、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アンタゴmir、アプタマー、またはリボザイム)であり得る。好ましい実施形態において、核酸はsiRNAである。別の好ましい実施形態において、核酸はmiRNAである。
【0023】
別の実施形態において、脂質粒子は、本発明のカチオン性脂質と、中性脂質と、ステロールとを含む。脂質粒子は、活性薬剤(例えば、核酸(例えば、siRNAまたはmiRNA))をさらに含み得る。
【0024】
本明細書に記載される脂質粒子は、脂質ナノ粒子であり得る。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明の脂質粒子と薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物である。
【0026】
1つの実施形態において、カチオン性脂質は、核酸分子の送達まで無傷のままであり、送達後、疎水性尾部の切断がインビボで起こる。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、核酸分子と本発明のカチオン性脂質とを含む核脂質粒子(nucleic lipid particle)を投与することを含む、核酸分子を送達する方法に関する。1つの実施形態において、カチオン性脂質は、核酸分子の送達まで無傷のままであり、送達後、疎水性尾部の切断がインビボで起こる。
【0028】
さらに別の態様は、細胞における標的遺伝子の発現を、本発明の脂質粒子を細胞に供給することにより調節する方法である。活性薬剤は、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アンタゴmir、アプタマー、およびリボザイムから選択される核酸であり得る。好ましい実施形態において、核酸は、siRNAまたはmiRNAである。
【0029】
さらに別の態様は、被験体におけるポリペプチドの過剰発現により特徴付けられる疾患または障害を、本発明の薬学的組成物を被験体に提供することにより処置する方法であって、活性薬剤が、siRNA、マイクロRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される核酸であり、かつ当該siRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドが、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補体に特異的に結合するポリヌクレオチドを含む、方法である。好ましい実施形態において、核酸は、siRNAまたはmiRNAである。
【0030】
さらに別の態様は、被験体におけるポリペプチドの過少発現により特徴付けられる疾患または障害を、本発明の薬学的組成物を被験体に提供することにより処置する方法であって、活性薬剤が、当該ポリペプチドまたはその機能的変異体もしくは断片をコードするプラスミドである、方法である。
【0031】
さらに別の態様は、被験体における免疫応答を、薬学的組成物を被験体に提供することにより誘導する方法であって、活性薬剤が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドである、方法である。
【0032】
さらに別の態様は、上に記載した組成物または脂質粒子を含むトランスフェクション剤であって、当該組成物または脂質粒子が核酸を含む、トランスフェクション剤である。当該剤は、細胞と接触させると、効率的に核酸をその細胞に送達し得る。さらに別の態様は、上に記載した組成物または脂質粒子を入手または形成し、その組成物または脂質粒子を細胞と接触させることにより、細胞の内部に核酸を送達する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1つの態様において、本発明は、中性脂質と、凝集を低減できる脂質と、カチオン性脂質と、任意選択でステロールとを含む脂質粒子に関する。特定の実施形態において、脂質粒子は、活性薬剤(例えば、治療薬剤)をさらに含む。これらの脂質、それを含む脂質粒子および組成物、ならびに治療薬剤を送達して遺伝子およびタンパク質発現を調節するためのそれらの使用の様々な例示的な実施形態が、以下にさらに詳細に説明される。
【0034】
カチオン性脂質
1つの実施形態において、カチオン性脂質は、式Iの化合物である。別の実施形態において、カチオン性脂質は、式IIIの化合物である。以下の開示内容は、式Iの化合物の種々の実施形態である。
【0035】
1つの実施形態において、MおよびMは、各々独立して、
−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R)=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−O−N=C(R)−、−C(O)(NR)−、−N(R)C(O)−、−C(S)(NR)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)N(R)−、−OC(O)O−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−
である。
【0036】
別の実施形態において、MおよびMは、各々独立して、
−OC(O)−、−C(O)−O−、−C(R)=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−O−N=C(R)−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R)−、−N(R)C(O)−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(S)O−、−OC(S)−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−
である。
【0037】
さらに別の実施形態において、MおよびMは、各々独立して、
−C(O)−O−、−OC(O)−、−C(R)=N−、−C(R)=N−O−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R)−、−C(O)S−、−C(S)O−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−
である。
【0038】
別の実施形態において、MおよびMは、各々−C(O)O−である。
【0039】
1つの実施形態において、RおよびRは、各々独立して、任意選択で置換されているアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環である。1つの実施形態において、Rは、アルキルであり、そしてRは、アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルである。1つの実施形態において、RおよびRは、各々独立して、アルキル(例えば、C〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル、またはイソプロピル))である。1つの実施形態において、RおよびRは、両方ともメチルである。別の実施形態において、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、任意選択で置換されている複素環式環(例えば、N−メチルピペラジニル)を形成している。別の実施形態において、RおよびRのうちの一方は、
【化7】
である(例えば、Rは上記の2つの基のうちの1つであり、Rは水素である)。
【0040】
1つの実施形態において、R’は、水素またはアルキルである。別の実施形態において、R’は、水素またはメチルである。1つの実施形態において、R’は存在しない。1つの実施形態において、R’は、存在しないかまたはメチルである。
【0041】
正電荷を有する原子(例えば、窒素原子)を含有するカチオン性脂質化合物に関して、この化合物はまた、負に荷電した対イオンも含む。対イオンは、任意のアニオン(例えば、有機アニオンまたは無機アニオン)であり得る。アニオンの好適な例としては、トシレート、メタンスルホネート、アセテート、シトレート、マロネート、タータレート、スクシネート、ベンゾエート、アスコルベート、α−ケトグルタレート、α−グリセロホスフェート、ハライド(例えば、クロリド)、スルフェート、ニトレート、バイカーボネート、およびカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、対イオンは、ハライド(例えば、Cl)である。
【0042】
1つの実施形態において、各Rは、独立して、−(CR)−であり、式中、RおよびRは、各々独立して、Hまたはアルキル(例えば、C〜Cアルキル)である。例えば、1つの実施形態において、各Rは、独立して、−(CHR)−であり、式中、各Rは、独立して、Hまたはアルキル(例えば、C〜Cアルキル)である。別の実施形態において、各Rは、独立して、−CH−、−C(CH−または−CH(iPr)−(式中、iPrはイソプロピルである)である。別の実施形態において、各Rは、−CH−である。
【0043】
別の実施形態において、Rは、各場合において、水素またはメチルである。例えば、Rは、各場合において、水素であり得る。
【0044】
1つの実施形態において、Qは存在しないか、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R)−、−N(R)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−C(R)=N−O−、−OC(O)N(R)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−または−C(R)=N−O−C(O)−である。1つの実施形態において、Qは、−C(O)O−である。
【0045】
1つの実施形態において、Qに向かう破線は存在せず、bは0であり、かつR’RN−(R)−Q−とそれに隣接する第3級炭素(C)とは以下の基:
【化8】
を形成しており、式中、nは1〜4である(例えば、nは2である)。
【0046】
1つの実施形態において、Qに向かう破線は存在せず、bは0であり、かつR’RN−(R)−Q−とそれに隣接する第3級炭素とは以下の基:
【化9】
を形成しており、式中、nは1〜4であり(例えば、nは2である)、かつR、R、R、a、およびbは式(I)について定義したとおりである。1つの実施形態において、aは3である。
【0047】
1つの実施形態において、Qに向かう破線は存在せず、bは0であり、かつR’RN−(R)−Q−とそれに隣接する第3級炭素とは以下の基:
【化10】
を形成しており、式中、nは1〜4であり(例えば、nは2である)、かつR、R、R、a、およびbは式(I)について定義したとおりである。1つの実施形態において、aは0である。例えば、当該基は:
【化11】
であり得る。
【0048】
1つの実施形態において、bは0である。別の実施形態において、aは2、3または4であり、かつbは0である。例えば、1つの実施形態において、aは3であり、かつbは0である。別の実施形態において、aは3であり、bは0であり、かつQは−C(O)O−である。
【0049】
特定の実施形態において、カチオン性脂質中に存在する生分解性基は、エステル(例えば、−C(O)O−または−OC(O)−)、ジスルフィド(−S−S−)、オキシム(例えば、−C(H)=N−O−または−O−N=C(H)−)、−C(O)−O−、−OC(O)−、−C(R)=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−O−N=C(R)−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R)、−N(R)C(O)−、−C(S)(NR)−、(NR)C(S)−、−N(R)C(O)N(R)−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(S)O−、−OC(S)−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−から選択される。
【0050】
本発明のカチオン性脂質(式Iおよび式IIIの化合物を含む)に好適なコレステロール部分は、式:
【化12】
を有する。
【0051】
さらなる実施形態には、頭部基と、1つ以上の疎水性尾部と、その頭部基と1つ以上の尾部との間のリンカーとを有するカチオン性脂質が含まれる。頭部基としては、アミン;例えば、所望のpKを有するアミンが挙げられ得る。pKは、脂質の構造、特に頭部基の性質;例えば、官能基(例えば、アニオン性官能基、水素結合ドナー官能基、水素結合アクセプター基、疎水性基(例えば、脂肪族基)、親水性基(例えば、ヒドロキシルまたはメトキシ)、またはアリール基)の有無および位置の影響を受け得る。頭部基アミンは、カチオン性アミン;第1級、第2級または第3級アミンであり得;頭部基は、1個のアミン基(モノアミン)、2個のアミン基(ジアミン)、3個のアミン基(トリアミン)、またはオリゴアミンもしくはポリアミンのようにより多くのアミン基を含み得る。頭部基は、アミンほど塩基性の強くない官能基(例えば、イミダゾール基、ピリジン基、またはグアニジニウム基など)を含み得る。頭部基は、双性イオン性であり得る。他の頭部基もまた好適である。
【0052】
1つ以上の疎水性尾部には、2つの疎水性鎖が含まれ得、これらは、同じかまたは異なり得る。尾部は脂肪族であり得、例えば、尾部は、炭素および水素からなり得、飽和または不飽和のいずれかであるが、芳香環は有さない。尾部は、脂肪酸尾部であり得る。いくつかのそのような基としては、オクタニル、ノナニル、デシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、α−リノレイル、ステアリドニル、リノレイル、γ−リノレニル、アラカドニル、およびオレイルが挙げられる。他の疎水性尾部もまた好適である。
【0053】
リンカーとしては、例えば、グリセリドリンカー、非環式グリセリドアナログリンカー、または環式リンカー(スピロリンカー、二環式リンカー、および多環式リンカーを含む)が挙げられ得る。リンカーは、エーテル、エステル、ホスフェート、ホスホネート、ホスホロチオエート、スルホネート、ジスルフィド、アセタール、ケタール、イミン、ヒドラゾン、またはオキシムなどの官能基を含み得る。他のリンカーおよび官能基もまた好適である。
【0054】
1つの実施形態において、カチオン性脂質は、ラセミ混合物である。別の実施形態において、カチオン性脂質は、1つのジアステレオマーに富んでいる(例えば、そうしたカチオン性脂質は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%または少なくとも70%のジアステレオマー過剰率を有する)。さらに別の実施形態において、カチオン性脂質は、1つのエナンチオマーに富んでいる(例えば、そうした脂質は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%または少なくとも70%のエナンチオマー過剰率を有する)。さらに別の実施形態において、カチオン性脂質は、キラル的に純粋(chirally pure)であり、例えば、単一の光学異性体である。さらに別の実施形態において、カチオン性脂質は、1つの光学異性体について富化されている。
【0055】
カチオン性脂質は、1個以上の生分解性基を含む。生分解性基(1個または複数)は、生物環境において(例えば、生物体、器官、組織、細胞、または細胞小器官において)結合破壊反応を受け得る1つ以上の結合を含む。生分解性結合を含む官能基としては、例えば、エステル、ジチオール、およびオキシムが挙げられる。生分解は、被験体に投与されたときの身体からの化合物のクリアランスに影響を及ぼす要因であり得る。生分解は、細胞ベースのアッセイで測定され得、このアッセイでは、カチオン性脂質を含む製剤が細胞に曝露され、様々な時点で試料が採取される。脂質画分が細胞から抽出され、LC−MSにより分離および分析され得る。LC−MSデータから、生分解の速度(例えば、t1/2値など)が測定され得る。
【0056】
例えば、化合物
【化13】
は、各脂肪族鎖中にエステル結合を含み、このエステル結合は、例えば生物環境において、例えばリパーゼまたはエステラーゼに曝露されると、加水分解を受け得る。化合物の構造は、当然のことながら、化合物が生分解を受ける速度に影響を及ぼす。したがって、
【化14】
のような関連化合物は、異なる生分解速度を示すことが予想されるであろう。生分解速度に対するより大きな影響が、加水分解部位における化合物の構造の変化から予想されるであろう。加水分解速度に影響を及ぼし、それによって生分解および被験体の身体からのクリアランスの速度に影響を及ぼし得る1つの改変は、加水分解反応の脱離基が第2級アルコールではなく第1級アルコールを有するようにすることである。
【0057】
例えば、理論に拘束されることを望むものではないが、上に示した化合物1および化合物2は、下記のスキームに示されるように代謝され得る。
【化15】
【0058】
1つの実施形態において、本明細書に記載される実施形態のうちの任意のもののカチオン性脂質は、約3時間未満(例えば、約2.5時間未満、約2時間未満、約1.5時間未満、約1時間未満、約0.5時間未満または約0.25時間未満)のインビボ半減期(t1/2)を(例えば、肝臓、脾臓または血漿において)有する。
【0059】
別の実施形態において、1個または複数の生分解性基を含む本明細書に記載される実施形態のうちの任意のもののカチオン性脂質は、その1個または複数の生分解性(biodegrable)基を有さない同様のカチオン性脂質についてのインビボ半減期(t1/2)の約10%未満(例えば、約7.5%未満、約5%未満、約2.5%未満)のインビボ半減期(t1/2)を(例えば、肝臓、脾臓または血漿において)有する。
【0060】
いくつかのカチオン性脂質は、頭部基と組み合わされた疎水性基として好都合に表され得る。例として、化合物:
【化16】
は、次のように頭部基と疎水性基との組み合わせであると見なされ得る。
【化17】
【0061】
したがって、いくつかの好適な頭部基としては、表1に示されているものが挙げられる。
【0062】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0063】
いくつかの好適な疎水性尾部基としては、表2に示されているものが挙げられる。
【0064】
【表2A】
【表2B】
【0065】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物を調製する方法に関する。好適な例示的な合成方法は、下記のスキーム1およびスキーム2に示されている。下記のスキームにおける可変部分は、上記の式I中の同じ位置にある可変部分と同じである。
【0066】
本発明の(例えば、Mおよび/またはMが−OC(O)−である)化合物は、下記に示されるスキーム1によって調製され得る。
【化18】
【0067】
本発明の(例えば、Mおよび/またはMが−C(O)O−である)化合物を調製する別の方法は、下記のスキーム2に示されている。
【化19】
【0068】
1つの実施形態において、本発明のカチオン性脂質は、以下の化合物、およびその塩(その薬学的に受容可能な塩を含む)から選択される。
【化20A】
【化20B】
【化20C】
【化20D】
【0069】
別の実施形態において、本発明のカチオン性脂質は、以下の化合物、およびその塩(その薬学的に受容可能な塩を含む)から選択される。
【化21A】
【化21B】
【0070】
カチオン性脂質には、代替的な脂肪酸基および示されているものとは別のジアルキルアミノ基(アルキル置換基が異なるもの(例えば、N−エチル−N−メチルアミノ−、およびN−プロピル−N−エチルアミノ−)を含む)を有するものが含まれる。
【0071】
特定の実施形態において、カチオン性脂質は、当該脂質が生理的pH以下のpH(例えば、pH7.4)においては正に荷電し、別のpH、好ましくは生理的pH以上のpHにおいては中性となるように、少なくとも1個のプロトン化可能なまたは脱プロトン化可能な基を有している。このような脂質もまた、カチオン性脂質と称される。当然のことながら、pHの関数としてのプロトンの付加または除去は平衡過程であること、および、荷電脂質または中性脂質への言及は支配的な化学種の性質に言及するものであり、脂質の全てが荷電形態または中性形態で存在することを必要とするものではないことが理解されるであろう。脂質は、1個より多くのプロトン化可能なもしくは脱プロトン化可能な基を有し得るか、または双性イオン性であり得る。
【0072】
特定の実施形態において、プロトン化可能な脂質(すなわち、カチオン性脂質)は、約4〜約11の範囲内のプロトン化可能基のpKを有する。例えば、脂質は、脂質粒子中に組み込まれる場合、約4〜約7、例えば、約5〜約7(例えば、約5.5〜約6.8)のpKを有し得る。このような脂質は、より低いpHの製剤化段階においてはカチオン性であり得るが、粒子は、およそpH7.4の生理的pHにおいては(完全にではないが)大部分が表面中和されるであろう。
【0073】
特定の実施形態において、脂質は、荷電脂質である。本明細書で使用される場合、用語「荷電脂質」は、1つまたは2つの脂質アシル鎖または脂質アルキル鎖と、第4級アミノ頭部基とを有する脂質を包含するが、これらに限定されない。第4級アミンは、永久正電荷を有している。頭部基は、任意選択で、イオン化可能基(例えば、生理的pHにおいてプロトン化され得る第1級、第2級、または第3級アミン)を含み得る。第4級アミンの存在は、イオン化可能基のpKaを、第4級アミンがない(例えば、第4級アミンが第3級アミンに置き換えられている)構造的に類似した化合物におけるそうした基のpKaと比べて変えることができる。
【0074】
本発明に含まれるのは、本明細書に記載されるカチオン性脂質の遊離形態、ならびにその薬学的に受容可能な塩および立体異性体である。カチオン性脂質は、アミンカチオン性脂質のプロトン化塩であり得る。用語「遊離形態」とは、非塩形態のアミンカチオン性脂質をいう。遊離形態は、好適な希塩基水溶液(例えば、希NaOH水、希炭酸カリウム水、希アンモニア水および希重炭酸ナトリウム水)で塩を処理することにより再生され得る。
【0075】
本発明のカチオン性脂質の薬学的に受容可能な塩は、塩基性部分または酸性部分を含有する本発明のカチオン性脂質から、従来の化学的方法によって合成され得る。一般に、塩基性カチオン性脂質の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによるか、または遊離塩基を好適な溶媒もしくは溶媒の種々の組み合わせにおいて化学量論量もしくは過剰量の所望の塩形成無機酸もしくは有機酸と反応させることによるかのいずれかによって調製される。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機塩基または有機塩基との反応によって形成される。
【0076】
したがって、本発明のカチオン性脂質の薬学的に受容可能な塩には、塩基性の本発明のカチオン性脂質を無機酸または有機酸と反応させることによって形成される本発明のカチオン性脂質の無毒性塩が含まれる。例えば、無毒性塩には、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸など)から誘導される塩、および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、およびトリフルオロ酢酸(TFA))から調製される塩が含まれる。
【0077】
本発明のカチオン性脂質が酸性である場合、好適な「薬学的に受容可能な塩」とは、薬学的に受容可能な無毒性塩基(無機塩基および有機塩基を含む)から調製される塩をいう。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、および亜鉛塩が含まれる。1つの実施形態において、塩基は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムから選択される。薬学的に受容可能な有機無毒性塩基から誘導される塩には、第1級、第2級および第3級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂(例えば、アルギニン、ベタインカフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミントリプロピルアミン、およびトロメタミン)の塩が含まれる。
【0078】
本発明のカチオン性脂質は、潜在的に内部塩または双性イオンであり得るということにも気づかれるであろう。というのは、生理的条件下において、化合物中の脱プロトン化された酸性部分(例えば、カルボキシル基)はアニオン性であり得るからであり、その場合、この電子電荷は、プロトン化またはアルキル化された塩基性部分(例えば、第4級窒素原子)のカチオン電荷と内部で均衡した状態であり得るであろう。
【0079】
上に具体的に記載したカチオン性脂質に加えて、生理的pH付近において正味の正電荷を有する1種以上のさらなるカチオン性脂質もまた、本明細書に記載される脂質粒子および組成物中に含まれ得る。そのようなカチオン性脂質としては、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−N−トリエチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパンクロリド塩(「DOTAP.Cl」);3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2−ジレオイル(dileoyl)−sn−3−ホスホエタノールアミン(「DOPE」)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、カチオン性脂質の多くの市販の調製物(例えば、LIPOFECTIN(DOTMAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)、およびLIPOFECTAMINE(DOSPAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)など)が使用され得る。
【0080】
他の脂質成分
本明細書に記載される脂質粒子および組成物はまた、1種以上の中性脂質を含み得る。中性脂質は、存在する場合、生理的pHにおいて非荷電形態または中性の双性イオン性形態のいずれかで存在する多くの脂質化学種のうちの任意のものであり得る。そのような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、およびセレブロシドが挙げられる。1つの実施形態において、中性脂質成分は、2個のアシル基を有する脂質(例えば、ジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミン)である。1つの実施形態において、中性脂質は、C10〜C20の範囲内の炭素鎖長を有する飽和脂肪酸を含む。別の実施形態において、中性脂質は、C10〜C20の範囲内の炭素鎖長を有するモノ不飽和脂肪酸またはジ不飽和脂肪酸を含む。好適な中性脂質としては、DSPC、DPPC、POPC、DOPE、DSPC、およびSMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書に記載される脂質粒子および組成物(compositosn)はまた、凝集を低減できる1種以上の脂質も含み得る。形成の間の粒子の凝集を低減する脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質(PEG−DMGおよびPEG−DMAなどのPEG脂質)、モノシアロガングリオシドGm1、およびポリアミドオリゴマー(「PAO」)(例えば、(参照によりその全体が援用される米国特許第6,320,017号明細書に記載されている))が挙げられる。好適なPEG脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびPEG修飾ホスファチジン酸、PEG−セラミドコンジュゲート(例えば、PEG−CerC14またはPEG−CerC20)(例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第5,820,873号明細書に記載されているもの)、PEG修飾ジアルキルアミンおよびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミン、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびPEG修飾ジアルキルグリセロール、mPEG(mw2000)−ジアステアロイル(diastearoyl)ホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
当該脂質粒子および組成物は、ステロール(例えば、コレステロール)を含み得る。
【0083】
脂質粒子
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載されるカチオン性脂質のうちの1種以上を含む脂質粒子に関する。1つの実施形態において、脂質粒子は、式I〜VIIの1種以上の化合物を含む。
【0084】
脂質粒子としては、リポソームが挙げられるが、これに限定されない。本明細書で使用される場合、リポソームは、水性内部を取り囲む脂質含有膜を有する構造物である。
【0085】
別の実施形態は、本発明のカチオン性脂質と、非カチオン性脂質(例えば、中性脂質)と、任意選択でPEG−脂質コンジュゲート(例えば、本明細書において述べられる脂質粒子の凝集を低減するための脂質)と、核酸とを含む、核酸−脂質粒子(例えば、SNALP)である。本明細書で使用される場合、用語「SNALP」とは、安定な核酸−脂質粒子をいう。SNALPは、脂質でできた粒子であって、核酸(例えば、干渉RNA)が脂質内に封入されている粒子である。特定の例において、SNALPは、全身適用に有用である。というのは、SNALPは、静脈内(i.v.)注射に続いて延長された循環寿命を示し得、SNALPは、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に分離された部位)にて蓄積し得、そしてSNALPは、この遠位部位において標的遺伝子発現のサイレンシングをもたらし得るからである。核酸は、国際公開第00/03683号パンフレット(この特許文献の開示内容は参照によりその全体が本明細書において援用される)に示されているように、凝集剤(condensing agent)と複合体化され、SNALP内に封入され得る。
【0086】
例えば、脂質粒子は、カチオン性脂質と、融合促進脂質(例えば、DPPC)と、中性脂質と、コレステロールと、PEG修飾脂質とを含み得る。1つの実施形態において、脂質粒子は、カチオン性脂質約20〜70%:融合促進脂質0.1〜50%:中性脂質5〜45%:コレステロール20〜55%:PEG修飾脂質0.5〜15%のモル比にある上記の脂質混合物を含む。
【0087】
脂質粒子の別の実施形態において、カチオン性脂質は、約20%および約60%のモル百分率で存在し、中性脂質は、約5%〜約25%のモル百分率で存在し、ステロールは、約25%〜約55%のモル百分率で存在し、そしてPEG脂質は、PEG−DMA、PEG−DMG、またはそれらの組み合わせでありかつ約0.5%〜約15%のモル百分率で存在する。
【0088】
特定の実施形態において、モル脂質比は、mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGまたはPEG−DMAに関して)およそ40/10/40/10、35/15/40/10または52/13/30/5である。この混合物は、0.1〜50%、0.1〜50%、0.5〜50%、1〜50%、5%〜45%、10%〜40%、または15%〜35%のモル比の融合促進脂質とさらに組み合わされ得る。換言すれば、脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGまたはPEG−DMAの40/10/40/10混合物が50%のモル比の融合促進ペプチドと組み合わされる場合、結果として生じる脂質粒子は、20/5/20/5/50(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGまたはPEG−DMA/融合促進ペプチド)の総モル比を有し得る。別の実施形態において、これらの組成物中の中性脂質DSPCは、POPC、DPPC、DOPEまたはSMと置き換えられる。
【0089】
1つの実施形態において、脂質粒子は、本発明のカチオン性脂質と、中性脂質と、ステロールと、PEG修飾脂質とを含む。1つの実施形態において、脂質粒子は、モルベースで約25%〜約75%(例えば、モルベースで約35〜約65%、約45〜約65%、約60%、約57.5%、約57.1%、約50%または約40%)のカチオン性脂質を含む。1つの実施形態において、脂質粒子は、モルベースで約0%〜約15%(例えば、モルベースで約3〜約12%、約5〜約10%、約15%、約10%、約7.5%、約7.1%または約0%)の中性脂質を含む。1つの実施形態において、中性脂質はDPPCである。1つの実施形態において、中性脂質はDSPCである。1つの実施形態において、製剤は、モルベースで約5%〜約50%(例えば、モルベースで約15〜約45%、約20〜約40%、約48%、約40%、約38.5%、約35%、約34.4%、約31.5%または約31%)のステロールを含む。1つの実施形態において、ステロールはコレステロールである。
【0090】
本明細書に記載される脂質粒子は、1種以上の治療薬剤をさらに含み得る。好ましい実施形態において、脂質粒子は、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)(例えば、siRNAまたはmiRNA)を含む。
【0091】
1つの実施形態において、脂質粒子は、モルベースで約0.1%〜約20%(例えば、モルベースで約0.5%〜約10%、約0.5〜約5%、約10%、約5%、約3.5%、約1.5%、約0.5%、または約0.3%)のPEG修飾脂質を含む。1つの実施形態において、PEG修飾脂質は、PEG−DMGである。1つの実施形態において、PEG修飾脂質は、PEG−c−DMAである。1つの実施形態において、脂質粒子は、モルベースで25〜75%のカチオン性脂質、0.5〜15%の中性脂質、5〜50%のステロール、および0.5〜20%のPEG修飾脂質を含む。
【0092】
1つの実施形態において、脂質粒子は、モルベースで35〜65%のカチオン性脂質、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEG修飾脂質を含む。1つの実施形態において、脂質粒子は、モルベースで45〜65%のカチオン性脂質、5〜10%の中性脂質、25〜40%のステロール、および0.5〜5%のPEG修飾脂質を含む。1つの実施形態において、PEG修飾脂質は、2,000Daの平均分子量のPEG分子を含む。1つの実施形態において、PEG修飾脂質は、PEG−ジスチリルグリセロール(PEG−DSG)である。
【0093】
1つの実施形態において、脂質:siRNAの比は、少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約11:1または少なくとも約33:1である。1つの実施形態において、脂質:siRNA比の比は、約1:1〜約35:1の間、約3:1〜約15:1の間、約4:1〜約15:1の間、または約5:1〜約13:1の間である。1つの実施形態において、脂質:siRNA比の比は、約0.5:1〜約12:1の間である。
【0094】
1つの実施形態において、脂質粒子は、ナノ粒子である。さらなる実施形態において、脂質粒子は、約50nm〜約300nm(例えば、約50nm〜約250nm、例えば、約50nm〜約200nm)の平均直径サイズを有する。
【0095】
1つの実施形態において、本明細書に記載される実施形態のうちの任意のもののカチオン性脂質を含有する脂質粒子は、約3時間未満(例えば、約2.5時間未満、約2時間未満、約1.5時間未満、約1時間未満、約0.5時間未満または約0.25時間未満)のインビボ半減期(t1/2)を(例えば、肝臓、脾臓または血漿において)有する。
【0096】
別の実施形態において、本明細書に記載される実施形態のうちの任意のもののカチオン性脂質を含有する脂質粒子は、その1個または複数の生分解性(biodegrable)基を有さない同様のカチオン性脂質についてのインビボ半減期(t1/2)の約10%未満(例えば、約7.5%未満、約5%未満、約2.5%未満)のインビボ半減期(t1/2)を(例えば、肝臓、脾臓または血漿において)有する。
【0097】
さらなる成分
本明細書に記載される脂質粒子および組成物は、1種以上の抗酸化剤をさらに含み得る。抗酸化剤は、脂質粒子を安定させ、脂質粒子中に存在するカチオン性脂質および/または活性薬剤の劣化を防止、低減および/または阻止する。抗酸化剤は、親水性抗酸化剤、親油性抗酸化剤、金属キレート化剤、一次抗酸化剤、二次抗酸化剤、それらの塩、およびそれらの混合物であり得る。特定の実施形態において、抗酸化剤は、金属キレート化剤(例えば、EDTAまたはその塩)を、単独で、または1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、もしくはそれ以上のさらなる抗酸化剤(例えば、一次抗酸化剤、二次抗酸化剤、または他の金属キレート化剤)と組み合わせて含む。1つの好ましい実施形態において、抗酸化剤は、金属キレート化剤(例えば、EDTAまたはその塩)を1種以上の一次抗酸化剤および/または二次抗酸化剤との混合物として含む。例えば、抗酸化剤は、EDTAまたはその塩と、一次抗酸化剤(例えば、α−トコフェロールまたはその塩)と、二次抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビルまたはその塩)との混合物を含み得る。1つの実施形態において、抗酸化剤は、少なくとも約100mMのシトレートまたはその塩を含む。抗酸化剤の例としては、親水性抗酸化剤、親油性抗酸化剤、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。親水性抗酸化剤の非限定的な例としては、キレート化剤(例えば、金属キレート化剤)(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シトレート、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、cc−リポ酸、サリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン(SIH)、ヘキシルチオエチルアミン塩酸塩(HTA)、デスフェリオキサミン、それらの塩、およびそれらの混合物)が挙げられる。さらなる親水性抗酸化剤には、アスコルビン酸、システイン、グルタチオン、ジヒドロリポ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプトベンズイミダゾールスルホン酸、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、それらの塩、およびそれらの混合物が含まれる。親油性抗酸化剤の非限定的な例としては、ビタミンE異性体(例えば、α−、β−、γ−、およびδ−トコフェロールならびにα−、β−、γ−、およびδ−トコトリエノール);ポリフェノール(例えば、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−fert−ブチル−5−メチルフェノール、および2−tert−ブチル−6−メチルフェノール);ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)(例えば、2−teri−ブチル−4−ヒドロキシアニソールおよび3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール);ブチルヒドロキシトルエン(BHT);tert−ブチルヒドロキノン(TBHQ);パルミチン酸アスコルビル;rc−プロピルガレート;それらの塩;およびそれらの混合物が挙げられる。好適な抗酸化剤およびそのような抗酸化剤を含有する製剤は、参照により本明細書に援用される国際公開第2011/066651号パンフレットに記載されている。
【0098】
別の実施形態において、脂質粒子または組成物は、抗酸化剤EDTA(またはその塩)、抗酸化剤シトレート(またはその塩)、またはEDTA(またはその塩)を、1種以上の一次および/または二次抗酸化剤(例えば、α−トコフェロール(またはその塩)および/またはパルミチン酸アスコルビル(またはその塩))(例えば、それらの混合物)と組み合わせて含有する。
【0099】
1つの実施形態において、抗酸化剤は、脂質粒子中に存在するカチオン性脂質の劣化を防止、阻止または低減するのに十分な量で存在する。例えば、抗酸化剤は、少なくとも約もしくは約0.1mM、0.5mM、1mM、10mM、100mM、500mM、1M、2M、もしくは5M、または約0.1mM〜約1M、約0.1mM〜約500mM、約0.1mM〜約250mM、もしくは約0.1mM〜約100mMの濃度で存在し得る。
【0100】
本明細書に記載される脂質粒子および組成物は、アポリポタンパク質をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、用語「アポリポタンパク質」または「リポタンパク質」とは、当業者に知られているアポリポタンパク質ならびにその変異体および断片、ならびに後述されるアポリポタンパク質アゴニスト、アナログまたはその断片をいう。
【0101】
好ましい実施形態において、活性薬剤は、核酸(例えば、siRNA)である。例えば、活性薬剤は、関心のある産物に関してコードされた核酸(RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンタゴmir、DNA、プラスミド、リボソームRNA(rRNA)、マイクロRNA(miRNA)(例えば、一本鎖の17〜25ヌクレオチド長のmiRNA)、転移RNA(tRNA)、スモール干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)が挙げられるが、これらに限定されない)、抗原、その断片、タンパク質、ペプチド、ワクチン、および小分子、またはそれらの混合物であり得る。1つのより好ましい実施形態において、核酸は、オリゴヌクレオチド(例えば、15〜50ヌクレオチド長(または15〜30もしくは20〜30ヌクレオチド長))である。siRNAは、例えば、16〜30ヌクレオチド長の二重鎖領域を有し得る。別の実施形態において、核酸は、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、デコイオリゴヌクレオチド、スーパーmir、miRNA模倣物、またはmiRNAインヒビターである。スーパーmirとは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはその両方またはその改変物の、一本鎖、二本鎖または部分的に二本鎖のオリゴマーまたはポリマーであって、miRNAと実質的に同一でありかつその標的に対してアンチセンスであるヌクレオチド配列を有するものをいう。miRNA模倣物は、1つ以上のmiRNAの遺伝子サイレンシング能力を模倣するために使用され得る分子のクラスを表す。したがって、用語「マイクロRNA模倣物」とは、RNAi経路に入りかつ遺伝子発現を調節することが可能な合成ノンコーディングRNAをいう(すなわち、このmiRNAは、内因性miRNAの供給源からの精製によっては得られない)。
【0102】
脂質−核酸粒子中に存在する核酸は、任意の形態であり得る。核酸は、例えば、一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドであり得る。二本鎖RNAの非限定的な例としては、siRNAが挙げられる。一本鎖核酸には、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、および三重鎖形成オリゴヌクレオチドが含まれる。本発明の脂質粒子はまた、1つ以上のリガンドにコンジュゲートされている核酸を送達し得る。
【0103】
薬学的組成物
脂質粒子は、特に治療薬剤と関連させる場合、例えば薬学的に受容可能な希釈剤、賦形剤またはキャリア(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝液)をさらに含む、薬学的組成物として製剤化され得る。
【0104】
結果として生じる薬学的調製物は、従来のよく知られている滅菌技術によって滅菌され得る。次いで、水溶液は、使用に向けて包装され得るか、または無菌条件下で濾過されて凍結乾燥され得る。その凍結乾燥された調製物は、投与前に、滅菌水溶液と合わされる。こうした組成物は、生理的条件に近づくように、必要に応じて、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整および緩衝剤ならびに張性調整剤(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウム))を含有し得る。さらに、脂質懸濁液は、貯蔵中のフリーラジカルおよび脂質過酸化による損傷から脂質を保護する脂質保護剤を含み得る。親油性のフリーラジカル抑制剤(例えば、α−トコフェロール)および水溶性の鉄特異的キレート化剤(例えば、フェリオキサミン)が好適である。
【0105】
薬学的製剤中の脂質粒子または脂質−核酸粒子の濃度は、例えば約0.01重量%未満から約0.05〜5重量%または少なくとも約0.05〜5重量%から10〜30重量%ほど多くまで変化し得る。
【0106】
製造方法
カチオン性脂質、それを含有する脂質粒子、ならびにそのカチオン性脂質および/または脂質粒子を含有する薬学的組成物を製造する方法は、例えば、国際公開第2010/054406号パンフレット、同第2010/054401号パンフレット、同第2010/054405号パンフレット、同第2010/054384号パンフレット、同第2010/042877号パンフレット、同第2010/129709号パンフレット、同第2009/086558号パンフレットおよび同第2008/042973号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2004/0142025号明細書、同第2006/0051405号明細書および同第2007/0042031号明細書に記載されており、これらの特許文献の各々は、参照によりその全体が援用される。
【0107】
例えば、1つの実施形態において、有機溶液(例えば、エタノール)中の1種以上の脂質(本明細書に記載される実施形態のうちの任意のもののカチオン性脂質を含む)の溶液が調製される。同様に、緩衝化(例えば、クエン酸塩緩衝液)水溶液中の1種以上の活性(治療)薬剤(例えば、siRNA分子または2種のsiRNA分子の1:1モル混合物など)の溶液が調製される。この2つの溶液が混合され、希釈されて、siRNA脂質粒子のコロイド懸濁液を形成する。1つの実施形態において、siRNA脂質粒子は、約80〜90nmの平均粒径を有する。さらなる実施形態において、分散体は、0.45/2ミクロンフィルターを通して濾過され、濃縮され、接線流濾過(tangential flow filtration)によって透析濾過され得る。
【0108】
定義
本明細書で使用される場合、用語「カチオン性脂質」は、1つまたは2つの脂肪酸鎖または脂肪性脂肪族(fatty aliphatic)鎖と、生理的pHにおいてプロトン化されてカチオン性脂質を形成し得るアミノ酸含有頭部基とを有する脂質を包含する。一部の実施形態において、カチオン性脂質は、「アミノ酸コンジュゲートカチオン性脂質」と称される。
【0109】
当該複合体の投与が疾患または障害に有効な治療レジメンである被験体または患者は、好ましくはヒトであるが、任意の動物(臨床試験またはスクリーニングもしくは活性実験の文脈における実験動物を含む)であり得る。したがって、当業者により容易に理解され得るように、本発明の方法、化合物および組成物は、任意の動物(特に哺乳動物)(ヒト、家庭内動物(例えば、ネコまたはイヌの被験体)、農場動物(例えば、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、およびブタの被験体であるが、これらに限定されない)、野生動物(野生状態のものか動物園にいるものかを問わない)、研究動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、およびネコ、鳥類種(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、および鳴禽類))を包含するが、決してこれらに限定されない)への投与に、すなわち獣医学的医療用途に、特に適している。
【0110】
上記の一般式に記載されている化学基の多くは、特定の順番(例えば、−OC(O)−)で記されている。化学基は、別段の指示がない限り、示されている順番で一般式中に組み込まれることになることが意図されている。例えば、−(R)−(M−(R)−(式中、Mは−C(O)O−であり、そしてkは1である)という形の一般式は、別段の規定がない限り、−(R)−C(O)O−(R)−をいう。化学基が特定の順番で記されている場合、別段の規定がない限り、逆の順番もまた企図されているものと理解されるべきである。例えば、Mが−C(O)NH−と定義される一般式−(R)−(M−(R)−(すなわち、−(R)−C(O)−NH−(R)−)において、別段の規定がない限り、Mが−NHC(O)−である化合物(すなわち、−(R)−NHC(O)−(R)−)もまた企図されている。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「生分解性基」とは、生物環境において(例えば、生物体、器官、組織、細胞、または細胞小器官において)結合破壊反応を受け得る1つ以上の結合を含む基をいう。例えば、生分解性基は、哺乳動物(例えば、ヒト)の身体によって(例えば、加水分解によって)代謝され得る。生分解性結合を含むいくつかの基としては、例えば、エステル、ジチオール、およびオキシムが挙げられるが、これらに限定されない。生分解性基の非限定的な例は、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R)=N−、−N=C(R)−、−C(R)=N−O−、−O−N=C(R)−、−C(O)(NR)−、−N(R)C(O)−、−C(S)(NR)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)N(R)−、−OC(O)O−、−OSi(RO−、−C(O)(CR)C(O)O−、または−OC(O)(CR)C(O)−である。
【0112】
本明細書で使用される場合、「脂肪族」基は、炭素原子が鎖状に結合しており、かつ飽和または不飽和のいずれかである、非芳香族基である。
【0113】
用語「アルキル」および「アルキレン」とは、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素部分をいう。1つの実施形態において、アルキル基は、直鎖の飽和炭化水素である。別段の規定がない限り、「アルキル」または「アルキレン」基は、1個〜24個の炭素原子を含有する。代表的な飽和直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、およびn−へキシルが挙げられる。代表的な飽和分岐アルキル基としては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、およびイソペンチルが挙げられる。
【0114】
用語「アルケニル」とは、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素部分をいう。1つの実施形態において、アルケニル基は、1つ、2つ、または3つの二重結合を含み、それ以外は飽和している。別段の規定がない限り、「アルケニル」基は、2個〜24個の炭素原子を含有する。アルケニル基は、シスおよびトランスの両方の異性体を包含する。代表的な直鎖および分岐のアルケニル基としては、エチレニル、プロピレニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、および2,3−ジメチル−2−ブテニルが挙げられる。
【0115】
用語「アルキニル」とは、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素部分をいう。別段の規定がない限り、「アルキニル」基は、2個〜24個の炭素原子を含有する。代表的な直鎖および分岐のアルキニル基としては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、および3−メチル−1−ブチニルが挙げられる。
【0116】
別段の規定がない限り、用語「アシル」とは、水素、アルキル、部分飽和もしくは完全飽和のシクロアルキル、部分飽和もしくは完全飽和の複素環、アリール、またはヘテロアリールで置換されているカルボニル基をいう。例えば、アシル基には、(C〜C20)アルカノイル(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、カプロイル、およびt−ブチルアセチル)、(C〜C20)シクロアルキルカルボニル(例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、およびシクロへキシルカルボニル)、複素環式カルボニル(例えば、ピロリジニルカルボニル、ピロリド−2−オン−5−カルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピペラジニルカルボニル、およびテトラヒドロフラニルカルボニル)、アロイル(例えば、ベンゾイル)およびヘテロアロイル(例えば、チオフェニル−2−カルボニル、チオフェニル−3−カルボニル、フラニル−2−カルボニル、フラニル−3−カルボニル、1H−ピロイル−2−カルボニル、1H−ピロイル−3−カルボニル、およびベンゾ[b]チオフェニル−2−カルボニル)などの基が含まれる。
【0117】
用語「アリール」とは、芳香族単環式、二環式、または三環式の炭化水素環系をいう。別段の規定がない限り、「アリール」基は、6個〜14個の炭素原子を含有する。アリール部分の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびピレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
用語「シクロアルキル」および「シクロアルキレン」とは、飽和の単環式または二環式の炭化水素部分(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロへキシル)をいう。別段の規定がない限り、「シクロアルキル」または「シクロアルキレン」基は、3個〜10個の炭素原子を含有する。
【0119】
用語「シクロアルキルアルキル」とは、アルキル基に結合したシクロアルキル基であって、そのアルキル基が分子の残部に結合しているものをいう。
【0120】
用語「複素環」(または「複素環式化合物」)とは、非芳香族の5員〜8員の単環式、または7員〜12員の二環式、または11員〜14員の三環式の環系であって、飽和または不飽和のいずれかであり、かつ、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1個〜3個のヘテロ原子(単環式の場合)、1個〜6個のヘテロ原子(二環式の場合)、または1個〜9個のヘテロ原子(三環式の場合)を含有するものをいい、ここで、窒素および硫黄のヘテロ原子は任意選択で酸化されていてもよく、また、窒素ヘテロ原子は任意選択で第4級化されていてもよい。例えば、複素環は、シクロアルコキシ基であり得る。複素環は、複素環中の任意のヘテロ原子または炭素原子を介して分子の残部に結合し得る。複素環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル(tetrahydroprimidinyl)、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、およびテトラヒドロチオピラニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
用語「ヘテロアリール」とは、芳香族の5員〜8員の単環式、7員〜12員の二環式、または11員〜14員の三環式の環系であって、1個〜3個のヘテロ原子(単環式の場合)、1個〜6個のヘテロ原子(二環式の場合)、または1個〜9個のヘテロ原子(三環式の場合)(ここで、ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択される)(例えば、炭素原子および1個〜3個、1個〜6個または1個〜9個(それぞれ、単環式、二環式または三環式の場合)のN、OまたはSのヘテロ原子)を有するものをいう。本明細書に記載されるヘテロアリール基はまた、共通の炭素−炭素結合を有する縮合環を含み得る。
【0122】
用語「置換」とは、別段の指示がない限り、所与の構造中の1つ以上の水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルへの置き換えをいい、その置換基としては、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、オキソ、チオキシ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、複素環式化合物、および脂肪族基が挙げられるが、これらに限定されない。置換基は、さらに置換され得るものと理解される。例示的な置換基としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、および環状アミノ化合物が挙げられる。
【0123】
用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。
【0124】
以下の略語が、本出願において使用され得る。
DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン;DPPC:1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;POPC:1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−ホスファチジルコリン;DOPE:1,2−ジレオイル(dileoyl)−sn−3−ホスホエタノールアミン;PEG−DMGとは、一般に、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロール−メトキシポリエチレングリコール(例えば、PEG2000)をいう;TBDPSCl:tert−ブチルクロロジフェニルシラン;DMAP:ジメチルアミノピリジン;NMO:N−メチルモルホリン−N−オキシド;LiHDMS:リチウムビス(トリメチルシリル)アミド;HMPA:ヘキサメチルホスホルアミド;EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;DCM:ジクロロメタン;TEA:トリエチルアミン;TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド。
【0125】
種々の有機基および保護基を調製する方法は、当該技術分野において知られており、それらの使用および修飾は、一般に当業者の能力の範囲内である(例えば、Green,T.W.et.al.,Protective Groups in Organic Synthesis(1999);Stanley R.Sandler and Wolf Karo,Organic Functional Group Preparations(1989);Greg T.Hermanson,Bioconjugate Techniques(1996);およびLeroy G.Wade,Compendium Of Organic Synthetic Methods(1980)を参照されたい)。簡潔に述べると、保護基は、官能基の望まれない反応性を低減するかまたは排除する任意の基である。保護基は、官能基に付加されて、特定の反応の間それの反応性をマスクし、その後除去されて、元の官能基を現し得る。一部の実施形態において、「アルコール保護基」が使用される。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の望まれない反応性を低下させるかまたは排除する任意の基である。保護基は、当該技術分野において周知の技術を用いて付加および除去され得る。
【0126】
当該化合物は、本明細書に記載される技術または知られている有機合成技術のうちの少なくとも1つによって調製され得る。
【実施例】
【0127】
実施例1
中間体1の合成:
【化22】
DCM(125mL)中の9−ブロモノナン−1−オール(5g、22.4mmol)および2,3−ジヒドロ−2H−ピラン(1.93g、23mmol)の溶液に、PPTS(628mg、2.5mmol、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム)を添加した。この混合物を、室温で3時間撹拌し、次いで濃縮した。残渣をヘキサン中に取り、濾過した。濾液を濃縮し、乾式カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜5%の酢酸エチル)によって精製した。これにより、無色の油状物(6.75g、22.0mmol、98%)を得た。
【0128】
中間体2の合成:
【化23】
10mLの無水エーテル中のマグネシウム(588mg、24.2mmol))およびヨウ素の小結晶に、40mLの無水(anhy)ジエチルエーテル中の中間体1(6.75g、22mmol)の溶液の5mLを添加した。この混合物を、20分間還流させ、次いで中間体1溶液の残りを添加した。混合物を一晩還流させ続けた。混合物を室温まで冷却させ、続いてギ酸エチル(26mmol、2.1mL、1.93g)を10分で滴下した。さらなるエーテル(30mL)を添加した。結果として生じた混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。混合物をエーテルで希釈し、飽和NH4Cl溶液を添加した。水相を、エーテルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮により淡黄色の油状物が得られ、これを、シリカゲル(230〜400メッシュ)上でヘキサン中30%の酢酸エチルを用いて溶出させるカラムクロマトグラフィーによって直ちに清浄化した。これにより、所望の生成物(013−11B)を僅かに黄色の油状物(6.95g)として得た。
【0129】
ホルメート(013−11B、6.96g)およびKOH(13mmol、13mLの水中808mg)を、EtOH(75mL)中で、窒素下において室温で2時間撹拌した。反応が完結すると、15滴の濃HClを反応混合物に添加し、溶媒を蒸発させた。残渣をヘキサン(3×30mL)で洗浄し、濾過した。濾液を濃縮して、僅かに黄色の油状物(5.45g)を得た。油状物を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜15%の酢酸エチル)によって精製した。これにより、所望の生成物を白色固体(013−11C−中間体2、2.86g)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.58(m,2H),3.91−3.85(m,2H),3.75(t,J=6.9Hz,1H),3.72(t,J=6.9Hz,1H),3.59(m,1H),3.53−3.48(m,2H),3.40(t,J=6.6Hz,1H),3.37(t,J=6.6Hz,1H),1.88−1.79(m,2H),1.76−1.69(m,2H),1.63−1.50(m,8H(水ピークとの重複のため推定値)),1.50−1.26(m,32H)。
【0130】
中間体3の合成:
【化24】
アルゴン雰囲気下において、ジクロロメタン(80mL)中の013−11C−中間体2(2.40g、4.96mmol)、4−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(1.67g、10mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(300mg)およびトリエチルアミン(1.67mL、12mmol)を投入した丸底フラスコに、ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC、2.27g、11mmol)を添加した。周囲温度で16時間撹拌してすぐに、白色沈殿物を濾過によって除く。濾液を濃縮乾固した。結果として生じた残渣を、水および酢酸エチル/ヘキサン(約1:3)中に取った。2つの層を分離した。水相を、HClおよび重炭酸ナトリウムでpH8に調整した。次いでこの水相を、ヘキサン(3×50mL)で抽出した。合わせた抽出物を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0〜6%のメタノール)によって精製した。これにより、所望の生成物を無色の油状物(2.70g、4.51mmol、92%)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.58(m,2H),3.91−3.85(m,2H),3.75(t,J=6.9Hz,1H),3.72(t,J=6.9Hz,1H),3.54−3.48(m,2H),3.40(t,J=6.6Hz,1H),3.37(t,J=6.6Hz,1H),2.33(t,J=7.5Hz,2H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),2.23(s,6H),1.89−1.69(m,6H),1.63−1.49(m,16H),1.40−1.26(m,24H)。
【0131】
中間体4の合成:
【化25】
EtOH(80mL)中のXD−013−15−中間体3(2.70g、4.51mmolを含有するフラスコに、室温で、p−トルエンスルホン酸一水和物(4.5mmol、855mg)を添加し、24時間撹拌した。反応を希重炭酸ナトリウム溶液(200mL)でクエンチした後、水層を、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を半飽和ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0〜14%のメタノール)によって精製した。これにより、所望の生成物を僅かに黄色の固体(1.604g、3.73mmo、83%)として得た。
【0132】
化合物1の合成:
【化26】
ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC、851mg、4.12mmol、5.5当量)を、ジクロロメタン(20mL)中のシクロヘキサンカルボン酸(479mg、3.74mmol、5当量)、XD−013−17−中間体4(321mg、0.75mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、60mg)およびトリエチルアミン(4.12mmol、0.57mL)の溶液に添加した。16時間撹拌した後に、この混合物を濃縮し、残渣をヘキサンおよび水中に取った。白色沈殿物を濾別する。無色の濾液を、希炭酸ナトリウムで2回洗浄した。水相を、ヘキサンで1回(70mL)抽出した。合わせた有機相をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(DCM中0〜5%のメタノール)によって精製した。これにより、所望の生成物を僅かに黄色の油状物(264mg、0.41mmol、54%)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様、J=6.2Hz,1H),4.05(t,J=6.7Hz,4H),2.35−2.25(m,6H),2.23(s,6H),1.93−1.87(m,4H),1.84−1.73(m,6H),1.68−1.57(m,6H),1.56−1.39(m,8H),1.36−1.21(m,30H)。
【0133】
化合物2の合成:
【化27】
化合物2(XD−013−20)を、XD−013−18−化合物1について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色の油状物、327mg、0.50mmol、66.7%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.06(t,J=6.6Hz,4H),2.42(六重線様,J=7Hz,2H),2.33(t,J=7.6Hz,2H),2.29(t様,J=7.4Hz,2H),2.23(s,6H),1.80(五重線,J=7.4Hz,2H),1.70−1.48(m,8H(推定値;水ピークと重複)),1.48−1.20(m,36H),1.14(d,J=7Hz,6H),0.90(t,J=6.9Hz,6H)。
【0134】
化合物3の合成:
【化28】
化合物3(XD−013−16)を、化合物1(XD−013−18)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色の油状物、189mg、0.30mmol、78%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.06(t,J=6.6Hz,4H),2.72(五重線,J=8Hz,2H),2.33(t,J=7.6Hz,2H),2.29(t様,J=7.6Hz,2H),2.23(s,6H),1.93−1.48(m,26H),1.36−1.25(m,24H)。
【0135】
化合物4の合成:
【化29】
化合物4(XD−013−41)を、化合物1(XD−013−18)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色の油状物、201mg、0.29mmol、75%)。H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.08(t,J=6.6Hz,4H),2.35−2.24(m,6H),2.22(s,6H),1.79(五重線様,J=7.4Hz,2H),1.66−1.41(m,16H),1.37−1.21(m,32H),0.89(2つの三重線,12H)。
【0136】
化合物5の合成
【化30】
化合物5(XD−013−42)を、化合物1(XD−013−18)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色の油状物、233mg、0.34mmol、88%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.06(t,J=6.8Hz,4H),2.35−2.26(m,8H),2.27(s,6H),1.83−1.72(m,8H),1.67−1.48(m,20H),1.37−1.24(m,24H),1.15−1.06(m,4H)。
【0137】
化合物6の合成:
【化31】
化合物6は、ここで説明される方法によって調製される。
【0138】
中間体5の合成:
【化32】
180mLのエタノール中の10g(45mmol)の8−ブロモオクタン酸の氷塩で冷却した溶液に、9mLの塩化アセチル(127mmol)を、Ar下でゆっくりと添加する。結果として生じた混合物を20分間撹拌した後に、冷却浴を取り除いた。この溶液を、室温で一晩(20時間)放置する。溶媒を、減圧下で除去した。残存している油状物をヘキサン(200mL)に溶解させ、希重炭酸ナトリウムで2回(2×70mL)洗浄した。水相を、ヘキサン(100mL)で抽出した。合わせた有機溶液をブライン(2×70mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、無色の油状物(10.49g、41.8mmol、93%)を得た。
【0139】
中間体6の合成:
【化33】
EtOH(10mL)中のナトリウムエトキシド(1.422g、20.9mmol)の溶液に、ジエチルアセトンジカルボキシレート(4.23g、3.800mL、20.9mmol)を添加した。撹拌溶液を還流温度に加熱し、次いで8−ブロモオクタン酸エチル(XD−013−19、5.24g、20.9mmol)をゆっくりと添加した。撹拌および加熱を2時間継続した。さらなるナトリウムエトキシド溶液(10mLのEtOH中20.9mmol)を還流温度で添加した後に、さらなる20.9mmolの8−ブロモオクタン酸エチルを滴下した。添加が完了した後、この混合物を16時間加熱し撹拌した。減圧下において、エタノールの大部分を除去した。残渣に水(70mL)およびエーテル(250mL)を添加した。飽和NH4Cl溶液を添加して、pH7に調整した。2つの層を分離した。エーテル溶液を、再度、希NH4Cl、ブラインで洗浄した。濃縮により、褐色がかった油状物(11.44g)がもたらされた。この油状物を、濃塩酸(21mL)と氷酢酸(10.5mL)との混合物と共に18時間沸騰させることにより加水分解した。加水分解混合物を減圧下で蒸発乾固させ、固体残渣を水で洗浄し、アセトンから結晶化させた。生成物を十分に乾燥させ、淡色固体(1.74g)として得た。
【0140】
中間体7の合成:
【化34】
DCC(957mg、4.64mmol)を、ジクロロメタン(20mL)中のシクロヘキサノール(696mg、6.96mmol)、中間体6(XD−013−21)(400mg、1.16mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、366mg、3mmol)の溶液に添加した。16時間撹拌した後に、この反応混合物を濾過した。濾液を濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜5%の酢酸エチル)によって精製した。これにより、所望の生成物を白色固体(0.44g、0.87mmol、75%)として得た。
【0141】
中間体8の合成:
【化35】
ジクロロメタン(25mL)中の10%メタノール中の中間体8(XD−013−23)の溶液を5℃に冷却し、続いてNaBH4(1.74mmol、66mg)を添加した。10分間撹拌した後に、冷却浴を取り除き、反応を室温で30分間撹拌した。重炭酸ナトリウム溶液(約30mL)およびジクロロメタン(60mL)で希釈した。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣をカラム(40mLのシリカゲル)上に負荷した。このカラムをヘキサン中の酢酸エチル(4〜15%)で溶出させた。所望の生成物を、白色固体(0.40g、0.78mmol、90%)として得た。
【0142】
化合物6の合成:
【化36】
アルゴン雰囲気下において、ジクロロメタン(20mL)中のXD−013−24−中間体8(400mg、0.78mmol)、4−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(261mg、1.56mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(60mg)およびトリエチルアミン(261μL)を投入した丸底フラスコに、ジシクロへキシルカルボジイミド(354mg、1.72mmol)を添加した。混合物を周囲温度で16時間撹拌した後に、白色沈殿物を濾過によって除く。濾液を濃縮乾固した。結果として生じた残渣を、シリカゲル(230〜400メッシュ、40mL)上でジクロロメタン中のメタノール(0〜5%)を用いて溶出させるカラムクロマトグラフィーによって精製した。これにより、所望の生成物を無色の油状物(330mg、0.53mmol、68%)として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.76(m,2H),2.35−2.25(m,8H),2.22(s,6H),1.87−1.56(m,14H),1.55−1.22(m,36H)。
【0143】
化合物7の合成:
【化37】
化合物7(XD−013−29)を、化合物6(XD−013−25)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(無色の油状物、421mg、0.71mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率61%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:5.19−5.14(m,2H),4.86(五重線様,J=6.2Hz,1H),2.38−2.23(m,14H),1.91−1.79(m,6H),177−1.55(m,16H),1.55−1.46(m,4H),1.35−1.22(m,20H)。
【0144】
化合物8の合成:
【化38】
化合物8(XD−013−33)を、化合物6(XD−013−25)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(無色の油状物、295mg、0.41mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率35%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.91−4.83(m,3H),2.35−2.26(m,8H),2.22(s,6H),1.79(五重線様,J=7.4Hz,2H),1.66−1.59(m,4H(水ピークと重複)),1.56−1.48(m,12H),1.35−1.22(m,36H),0.89(t様,J=6.8Hz,12H)。
【0145】
化合物9の合成:
【化39】
化合物9(XD−013−45)を、化合物6(XD−013−25)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色の油状物、309mg、0.45mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率45%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.06(t,J=6.8Hz,4H),2.35−2.26(m,8H),2.23(s,6H),1.83−1.71(m,8H),1.68−1.57(m,14H(水ピークと重複)),1.55−1.46(m,8H),1.39−(m,22H),1.13−1.03(4H)。
【0146】
化合物10の合成:
【化40】
化合物10(XD−013−58)を、化合物6(XD−013−25)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色の油状物、205mg、0.29mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率31%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.86(m,1H),4.09(t,J=6.6Hz,4H),2.35−2.27(m,8H),2.22(s,6H),1.79(五重線様,J=7.4Hz,2H),1.68−1.56(m,8H),1.50−1.41(m,4H),1.38−1.22(m,24H),1.11−1.06(m,2H),0.95(d,J=6.4Hz,6H),0.90(s,18H)。
【0147】
化合物11の合成:
【化41】
化合物11(XD−013−60)を、化合物6(XD−013−25)について説明したやり方と同様のやり方で調製した(僅かに黄色、175mg、0.25mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率27%)。H NMR(400MHz,CDCl3)δ:5.11−5.03(m,2H),4.87(m,1H),2.35−2.25(m,8H),2.23(s,6H),1.79(五重線様,J=7.4Hz,2H),1.68−1.56(m,8H),1.55−1.45(m,8H),1.34−1.22(m,24H),0.91(d,24H)。
【0148】
化合物12の合成:
【化42】
化合物12(XD−013−63)を、化合物6(XD−013−25)について説明したやり方と同様のやり方で調製した。化合物12は、僅かに黄色の油状物として生成された(197mg、mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率29%)。H NMR(400MHz,CDCl3)δ:5.00−4.92(m,1H),4.87(m,1H),4.79−4.68(m,1H),2.35−2.23(m,8H),2.23(s,6H),1.79(五重線様,J=7.4Hz,2H)。
【0149】
中間体11(5−ヨード吉草酸エチル)の合成:
アセトン(300mL)中の5−ブロモ吉草酸エチル(25g)およびヨウ化ナトリウム(90g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この反応混合物を、水(200mL)で希釈し、ジエチルエーテル(200mL)で抽出した。有機画分を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去して、5−ヨード吉草酸エチル(32g)を得た。
【0150】
中間体12(7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸)の合成:
ナトリウムエトキシド(3.6g)を、無水エタノール(30mL)に溶解させた。ジエチルアセトンジカルボキシレート(12g)を添加し、溶液を加熱して還流させた。5−ヨード吉草酸エチル(16g)をゆっくりと添加し、溶液を1時間還流させた。エタノール(30mL)中のナトリウムエトキシド(3.6g)の溶液を添加し、続いて5−ヨード吉草酸エチル(16g)を添加した。溶液を一晩還流させた。この反応混合物を冷却し、水(200mL)で希釈し、ジエチルエーテル(200mL)で抽出した。有機画分を水で洗浄し、溶媒を除去した。残渣を酢酸(30mL)および濃塩酸(60mL)で処理し、次いで一晩還流させた。溶液を冷却し、水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。溶媒を除去し、残渣をアセトンから再結晶化させて、7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸を白色粉末(5.9g)として得た。
【0151】
化合物13の合成:
【化43】
7−オキソトリデカン二酸1,13−ビス(ノナン−5−イル)の合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸(1.01g)、4−ジメチルアミノピリジン(1.43g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.1g)およびノナン−5−オール(1.96g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。溶液を希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、2.85gの生成物を得た。
【0152】
7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ビス(ノナン−5−イル)の合成:ジクロロメタン(20mL)およびメタノール(1mL)中の7−オキソトリデカン二酸1,13−ビス(ノナン−5−イル)(2.85g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(0.60g)で処理した。反応が(TLCによって判断して)完結したときに、溶液を水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜3%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.26gの生成物を得た。
【0153】
7−{[4−(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ}トリデカン二酸1,13−ビス(ノナン−5−イル)の合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ビス(ノナン−5−イル)(1.26g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.98g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.78g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(1.22g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜3%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.04gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ4.87(p;J=6.2Hz;3H);2.3(m;8H);2.22(bs;6H);1.78(p;J=7.2Hz;2H);0.89(t;J=6.8Hz;12H)。
【0154】
化合物14の合成:
【化44】
7−オキソトリデカン二酸1,13−ジシクロへキシルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸(1.02g)、4−ジメチルアミノピリジン(1.46g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.2g)およびシクロヘキサノール(2.40g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.52gの生成物を得た。
【0155】
7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ジシクロへキシルの合成:ジクロロメタン(20mL)およびメタノール(1mL)中の7−オキソトリデカン二酸1,13−ジシクロへキシル(1.52g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(0.70g)で処理した。反応が(TLCによって判断して)完結したときに、溶液を水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜3%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.41gの生成物を得た。
【0156】
7−{[4−(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ}トリデカン二酸1,13−ジシクロへキシルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ジシクロへキシル(1.41g)、4−ジメチルアミノピリジン(1.45g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.91g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(1.67g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜8%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.64gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ4.86(p;J=6.1Hz;1H);4.75(m;2H);2.3(m;8H);2.22(s;6H)。
【0157】
化合物15の合成:
【化45】
7−オキソトリデカン二酸1,13−ジシクロペンチルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸(0.99g)、4−ジメチルアミノピリジン(1.47g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.32g)およびシクロペンタノール(2.00g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.23gの生成物を得た。
【0158】
7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ジシクロペンチルの合成:ジクロロメタン(20mL)およびメタノール(1mL)中の7−オキソトリデカン二酸1,13−ジシクロペンチル(1.23g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(0.6g)で処理した。反応が(TLCによって判断して)完結したときに、溶液を水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜2%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.36gの生成物を得た。
【0159】
7−{[4−(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ}トリデカン二酸1,13−ジシクロペンチルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ジシクロペンチル(1.36g)、4−ジメチルアミノピリジン(1.27g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.05g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(1.62g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜8%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.57gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ5.15(m;2H);4.86(p,J=6.2Hz,1H);2.3(m,8H);2.22(s;6H)。
【0160】
化合物16の合成:
【化46】
7−オキソトリデカン二酸1,13−ジウンデシルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸(0.59g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.75g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.20g)およびウンデカノール(1.17g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.03gの生成物を得た。
【0161】
7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ジウンデシルの合成:ジクロロメタン(20mL)およびTHF(20mL)中の7−オキソトリデカン二酸1,13−ジウンデシル(1.03g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(1g)で処理した。反応が(TLCによって判断して)完結したときに、溶液を水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜2%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.88gの生成物を得た。
【0162】
7−{[4−(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ}トリデカン二酸1,13−ジウンデシルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ジウンデシル(0.88g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.68g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.54g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.82g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜5%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.77gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ4.87(p;J=6.2Hz;1H);4.05(t;J=6.7Hz;4H);2.3(m;8H);2.22(s;6H);1.79(p;J=7.3Hz;1H);0.87(t;J=6.8Hz;6H)
【0163】
化合物17の合成:
【化47】
7−オキソトリデカン二酸1,13−ビス(2E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2−エン−1−イルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−オキソ−トリデカン−1,13−二酸(0.51g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.76g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.60g)およびフィトール(1.77g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、1.7gの生成物を得た。
【0164】
7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ビス(2E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2−エン−1−イルの合成:メタノール(5mL)およびTHF(10mL)中の7−オキソトリデカン二酸1,13−ビス(2E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2−エン−1−イル(1.7g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(1g)で処理した。反応が(TLCによって判断して)完結したときに、溶液を水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜2%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.89gの生成物を得た。
【0165】
7−{[4−ジメチルアミノ)−ブタノイル]オキシ}トリデカン二酸1,13−ビス(2E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2−エン−1−イルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の7−ヒドロキシトリデカン二酸1,13−ビス(2E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2−エン−1−イル(0.89g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.46g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.37g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.63g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜4%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.62gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ4.87(p,J=6.2Hz,3H)
【0166】
化合物18の合成:
【化48】
化合物18(XD−013−66)を、適切な出発物質を用いて、化合物1(XD−013−18)について説明したやり方と同様のやり方で調製した。化合物19は、僅かに黄色の油状物として生成された(238mg、0.35mmol、89%)。H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.06(t,J=6.8Hz,4H),2.39−2.27(m,14H),1.83(五重線,J=7.4Hz,2H),1.66−1.58(m,8H(推定値;水ピークと重複))、1.54−1.48(m,4H),1.37−1.22(40H),0.89(t様,J=6.8Hz,6H)。
【0167】
化合物19の合成:
【化49】
化合物19(XD−013−92)を、化合物1(XD−013−18)について説明したやり方と同様のやり方で調製した。化合物19は、無色の油状物として生成された(208mg、0.29mmol、63%)。H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.87(五重線様,J=6.2Hz,1H),4.08(t,J=6.6Hz,4H),2.38−2.32(m,4H),2.27(s,6H),2.30−2.22(m,2H),1.82(五重線様,J=7.4Hz,2H),1.66−1.41(m,16H),1.37−1.21(m,36H),0.92−0.86(m,12H)。
【0168】
化合物20の合成:
【化50】
化合物20(XD−013−81)を、化合物6(XD−013−25)について記載したやり方と同様のやり方で調製した。化合物20は、僅かに黄色の油状物として生成された(381mg、0.52mmol、XD−013−21−中間体6からの3工程での全収率55%)。H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.91−4.83(m,3H),2.35−2.26(m,8H),2.22(s,6H),1.79(五重線様,J=7.4Hz,2H),1.66−1.59(m,4H),1.56−1.47(m,12H),1.35−1.22(m,40H),0.91−0.86(m,12H)。
【0169】
化合物21の合成:
【化51】
化合物21(XD−016−16)を次のように調製した。
【0170】
中間体13(016−11)の合成:ベンゼン(40mL)中のアルコール016−93C(上に示す)および1−クロロ−4−ブロモブタン(8mmol、0.92mL)の溶液に、NaH(130mg)を添加した。16時間還流させた。さらなるNaH(40mg)を添加し、16時間還流させた。さらなるNaH(90mg)を添加し、3日間還流させた。ベンゼンを除去し、残渣をヘキサン−EtOAc中に取り、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濃縮により、無色の油状物(2g)を得た。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中のEtOAc、0〜25%)によって精製した。これにより、所望の生成物を無色の油状物(0.28g、0.48mmol、塩化物に基づき24%)として得た。未反応の出発物質を、より後の画分に回収した(0.63g、1.30mmol、63%)。
【0171】
中間体14(016−14)の合成:上記の生成物、すなわち中間体13−016−11(0.28g、0.48mmol)を、THF(2M、15mL)中のジメチルアミンの溶液に溶解させた。この溶液に微量のNaIを添加し、混合物を2日間68〜72Cで加熱した。混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン−EtOAc(200mL)中に取り、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣を、同じ反応の先のバッチからの生成物と合わせた。これにより、全部で0.41gの所望の生成物を得た。
【0172】
中間体15(016−15)の合成:EtOH(20mL)中のTHP保護したジ−OH(0.41g、0.7mmol、中間体14−016−14)の溶液に、室温においてp−トルエンスルホン酸水和物(0.7mmol、133mg)を添加し、70〜55Cで1.5時間加熱した。濃縮し、残渣を飽和重炭酸ナトリウム(50mL)および水(50mL)中に取り、この混合物をジエチルエーテル(2×75mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濃縮し、残渣をヘキサン(2×1mL)で洗浄した。これにより、所望の生成物を褐色がかった固体(0.24g)として得た。
【0173】
化合物21(016−16)の合成:アルゴン雰囲気下において、ジクロロメタン(15mL)中のアルコール016−15(0.24g、0.58mmol)、2−エチルヘキサン酸(500mg、3.46mmol、6当量)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(200mg)およびトリエチルアミン(0.487mL、3.5mmol)を投入した丸底フラスコに、ジシクロへキシルカルボジイミド(774mg、3.75mmol)を添加した。この混合物を周囲温度で20時間撹拌後、混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン/EtOAt(100mL)中に取った。沈殿物を濾過によって除く。濾液を希塩化アンモニウム溶液で洗浄し、濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(DCM中のメタノール、0〜10%)によって精製した。これにより、所望の生成物を僅かに黄色の油状物(150mg)として得た。
H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.08(t,J=6.8Hz,4H),3.42(t様,6.2Hz,2H),3.18(五重線様,5.5Hz,1H),2.51−2.44(m,2H),2.36(s,6H),2.29−2.22(m,2H),1.85(br.水(低磁場(low field)へのシフトは、アミノ基と水との間の相互作用によるものであり得る)),1.67−1.55(m,12H),1.55−1.41(m,8H),1.39−1.21(m,32H),0.89(2組の三重線,12H)。
【0174】
化合物22の合成:
【化52】
化合物22を次のように調製した。
【0175】
中間体16の合成(13−オキソ−ペンタコサン−1,25−二酸(SMA−11−100)):ナトリウムエトキシド(1.56g)を、無水エタノール(30mL)に溶解させた。ジエチルアセトンジカルボキシレート(4.5g)を添加し、溶液を加熱して還流させた。11−ブロモドデカン酸エチル(6.8g)をゆっくりと添加し、溶液を1時間還流させた。ナトリウムエトキシド(1.53g)を添加し、続いて11−ブロモドデカン酸エチル(18g)を添加した。溶液を一晩還流させた。この反応混合物を冷却し、水で希釈し、希塩酸で酸性化し、塩化メチレンで抽出した。有機画分を水で洗浄し、溶媒を除去した。粗生成物を、メタノール/塩化メチレンを溶離剤として用いてシリカゲルカラム(80g)を下方に通過させて、未反応の出発物質を回収した。生成物を含有する残渣を、酢酸(10mL)および濃塩酸(20mL)で処理し、次いで一晩還流させた。この溶液を冷却し、水で希釈し、濾過した。収集した沈殿物をアセトンから再結晶化させて、13−オキソ−ペンタコサン−1,25−二酸を白色粉末(2.9g)として得た。
【0176】
13−オキソ−ペンタコサン二酸1,25−ビス(ヘキシル)の合成:ジクロロメタン(20mL)中の中間体16(13−オキソ−ペンタコサン−1,25−二酸)(1.00g)、4−ジメチルアミノピリジン(1.12g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.99g)およびノナン−5−オール(1.40g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を、希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.82gの生成物を得た。
【0177】
13−ヒドロキシ−ペンタコサン二酸1,25−ビス(ヘキシル)の合成:テトラヒドロフラン(23mL)およびメタノール(10mL)中の13−オキソ−ペンタコサン二酸1,25−ビス(ヘキシル)(0.82g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウム(0.63g)で処理した。反応を15分間撹拌し、次いで水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.59gの生成物を得た。
【0178】
13−{[4−(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ}ペンタコサン二酸1,25−ジヘキシルの合成:ジクロロメタン(20mL)中の13−ヒドロキシ−ペンタコサン二酸1,25−ビス(ヘキシル)(0.59g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.46g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.36g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.64g)の溶液を、室温で1時間撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜4%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.57gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ4.87(p;J=6.2Hz;3H);4.06(t;J=6.7Hz;4H);2.25−2.36)(m;8H);2.3(m;8H);2.22(s;6H);1.79(p;J=7.4Hz;2H);0.90(t;J=6.8Hz;6H)。
【0179】
化合物23の合成:
【化53】
13−オキソペンタコサン二酸1,25−ビス(2,6−ジメチルヘプタン−4−イル)の合成:ジクロロメタン(20mL)中の中間体16(13−オキソ−ペンタコサン−1,25−二酸)(1.01g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.86g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.95g)および2,6−ジメチルヘプタン−4−オール(1.92g)の溶液を、室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.40gの生成物を得た。
【0180】
13−ヒドロキシペンタコサン二酸1,25−ビス(2,6−ジメチルヘプタン−4−イル)の合成:テトラヒドロフラン(10mL)およびメタノール(10mL)中の13−オキソペンタコサン二酸1,25−ビス(2,6−ジメチルヘプタン−4−イル)(0.40g)の溶液を、水素化ホウ素ナトリウムで処理した。反応を30分間撹拌し、次いで水で希釈し、酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.40gの生成物を得た。
【0181】
13−{[4−(ジメチルアミノ)ブタノイル]オキシ}−ペンタコサン二酸1,25−ビス(2,6−ジメチルヘプタン−4−イル)の合成:ジクロロメタン(20mL)中の13−ヒドロキシペンタコサン二酸1,25−ビス(2,6−ジメチルヘプタン−4−イル)(0.49g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.45g)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.28g)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.32g)の溶液を、室温で2時間撹拌した。この溶液を希塩酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。残渣を、0〜8%メタノール/ジクロロメタンを溶離剤として用いてシリカゲル(20g)カラムを下方に通過させて、0.48gの生成物を得た。H NMR(CDCl):δ5.07(m,J=4.3Hz;2H);4.87(p;J=6.4Hz;1H);4.15(t;J=6.4Hz;8H);2.32(t;J=7.5Hz;2H);2.27(q;J=7.6Hz;6H);2.22(s;6H);1.79(p;J=7.5Hz;2H);0.90(d;J=6.6Hz;24H)。
【0182】
実施例2:カチオン性脂質由来のリポソームを用いたFVIIインビボ評価
C57BL/6マウス(Charles River Labs,MA)は、尾静脈注射によって、0.01mL/gの体積で、生理食塩水か、または所望の製剤中のsiRNAかのいずれかを受ける。投与後の様々な時点において、動物をイソフルオラン(isofluorane)吸入によって麻酔し、血液を眼窩後出血によって血清分離器管中に採取する。第VII因子タンパク質の血清レベルを、発色アッセイ(Coaset Factor VII、DiaPharma Group,OH、またはBiophen FVII、Aniara Corporation,OH)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、各試料について測定する。標準曲線を、生理食塩水で処理した動物から採取した血清を用いて生成する。肝臓mRNAレベルが評価される実験においては、投与後の様々な時点において、動物を犠牲にし、肝臓を取り出し、液体窒素中で急冷凍する。冷凍した肝組織を、粉砕して粉末にする。組織溶解物を調製し、第VII因子およびアポBの肝臓mRNAレベルを分岐DNAアッセイ(QuantiGene Assay、Panomics,CA)を用いて測定する。
【0183】
実施例3:インビボ齧歯類第VII因子サイレンシングモデルを用いた種々のカチオン性脂質を含有する脂質粒子製剤の有効性の測定
凝固カスケードにおける重要なタンパク質である第VII因子(FVII)は、肝臓(肝細胞)において合成され、血漿中に分泌される。血漿中FVIIレベルは、単純なプレートベースの比色アッセイによって測定され得る。そういうものであるから、FVIIは、肝細胞由来タンパク質のsiRNA媒介性ダウンレギュレーションを測定するため、ならびに核酸脂質粒子およびsiRNA(例えば、表19に示すsiRNA)の血漿濃度および組織分布をモニタリングするための、好都合なモデルである。
【0184】
【表3】
【0185】
本明細書に記載されるカチオン性脂質を用いて、国際公開第2010/088537号パンフレット(参照によりその全体が援用される)に記載されているように、インライン混合法を用いてAD−1661二重鎖を含有するリポソームを製剤化する。脂質粒子を、以下のモル比:50%のカチオン性脂質/10%のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/38.5%のコレステロール/1.5%のPEG−DMG(平均PEG分子量が2000の1−(モノメトキシ−ポリエチレングリコール)−2,3−ジミリストイルグリセロール)を用いて製剤化する。
【0186】
C57BL/6マウス(Charles River Labs,MA)は、尾静脈注射によって、生理食塩水かまたは製剤化されたsiRNAかのいずれかを受ける。投与後の様々な時点において、血清試料を、眼窩後出血によって採取する。第VII因子タンパク質の血清レベルを、発色アッセイ(Biophen FVII、Aniara Corporation,OH)を用いて、各試料について測定する。第VII因子の肝臓mRNAレベルを測定するために、動物を犠牲にし、肝臓を取り出し、液体窒素中で急冷凍する。冷凍組織から組織溶解物を調製し、第VII因子の肝臓mRNAレベルを分岐DNAアッセイ(QuantiGene Assay、Panomics,CA)を用いて定量化する。
【0187】
FVII活性を、C57BL/6マウスにおける静脈内(ボーラス)注射から48時間後に、FVII siRNAで処理した動物において評価する。FVIIを、血清または組織中のタンパク質レベルを測定するための市販のキットを用いて、製造業者の指示に従って、マイクロプレートスケールで測定する。FVII減少を、非処理のコントロールマウスと比較して求め、その結果を%残留FVIIとして表す。2つの用量レベル(0.05mg/kgおよび0.005mg/kgのFVII siRNA)を、各新規リポソーム組成物のスクリーニング(screen)において使用する。
【0188】
実施例4:事前に形成された小胞を用いたsiRNA製剤
粒子を含有するカチオン性脂質を、事前形成小胞法を用いて作製する。カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG−脂質を、それぞれ40/10/40/10のモル比でエタノールに可溶化する。脂質混合物を、水性緩衝液(50mMクエン酸塩、pH4)に、それぞれ30%(vol/vol)および6.1mg/mLの最終エタノールおよび脂質濃度になるように、混合しながら添加し、押出前に2分間、室温で平衡させる。水和した脂質を、Nicomp分析により測定して70〜90nmの小胞直径が得られるまで、Lipex Extruder(Northern Lipids、Vancouver,BC)を用いて22℃にて、2枚積重ねた80nm細孔径のフィルター(Nuclepore)に通して押出す。これには、一般に、1〜3回の通過を要する。小さな小胞を形成しない一部のカチオン性脂質混合物については、より低いpHの緩衝液(50mMクエン酸塩、pH3)を用いてその脂質混合物を水和させてDSPC頭部基上のホスフェート基をプロトン化することが、安定な70〜90nm小胞を形成するのを助ける。
【0189】
FVII siRNA(30%のエタノールを含有する50mMクエン酸塩のpH4水溶液に可溶化した)を、事前に35℃に平衡させた小胞に、混合しながら約5mL/分の速度で添加する。0.06(wt/wt)の最終の標的siRNA/脂質比が達成された後、この混合物を、35℃にてさらに30分間インキュベートして、FVII siRNAの小胞の再組織化および封入を可能にする。次いで、エタノールを除去し、外部緩衝液を、透析または接線流透析濾過のいずれかによって、PBS(155mM NaCl、3mM Na2HPO4、1mM KH2PO4、pH7.5)と置き換える。最終の封入siRNA対脂質比を、サイズ排除スピンカラムまたはイオン交換スピンカラムを用いて非封入siRNAを除去した後に測定する。
【0190】
実施例5:脂質製剤の有効性のインビボ測定
試験製剤を、以下のインライン混合法を用いて調製した。
【0191】
インライン混合法の一般プロトコル
一方は脂質を含有しそして他方はsiRNAを含有する、それぞれ異なった別個の原液を調製する。脂質A、DSPC、コレステロールおよびPEG脂質を含有する脂質原液(stock)を、90%エタノールに可溶化させることにより調製する。残りの10%は、低pHクエン酸塩緩衝液である。脂質原液の濃度は、4mg/mLである。このクエン酸塩緩衝液のpHは、使用される融合性脂質(fusogenic lipid)の種類によってpH3〜5の間で変化し得る。siRNAもまた、4mg/mLの濃度でクエン酸塩緩衝液に可溶化させる。小規模用に、5mLの各原液を調製する。
【0192】
siRNAと合わせる前に、原液が完全に透明になり、脂質が完全に可溶化されていなければならない。したがって、原液は、脂質を完全に可溶化するために加熱され得る。このプロセスにおいて使用されるsiRNAは、非修飾オリゴヌクレオチドであっても修飾されていてもよく、また、コレステロールなどの親油性部分とコンジュゲートされていてもよい。
【0193】
個々の原液を、各溶液をT字形接合部にポンプで送ることにより合わせる。デュアルヘッドWatson−Marlowポンプを用いて、2つの流れの開始および停止を同時に制御する。線流速を高めるために、1.6mmポリプロピレン管をさらに小さくして、0.8mm管にする。このポリプロピレンライン(ID=0.8mm)を、T字形接合部の両側に取り付ける。ポリプロピレンTは、1.6mmの直線状縁部を、結果として生じる4.1mmの容積に対して有している。ポリプロピレンラインの大きな末端(1.6mm)の各々を、可溶化された脂質原液または可溶化されたsiRNAのいずれかを含有する試験管に入れる。T字形接合部の後に、合わされた流れが排出するところである単一の管を設置する。この管は、次いで、2倍体積のPBSを含む容器内に延びている。PBSは、高速で撹拌されている。ポンプについての流速は、300rpmまたは110niL/分という設定である。エタノールを除去し、透析によってPBSと交換する。次いで、この脂質製剤を、適切な作用濃度まで、遠心分離または透析濾過を用いて濃縮する。
【0194】
試験製剤を、最初に、雌の7〜9週齢の15〜25gの雌C57B1/6マウスにおいて、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kgおよび5.0mg/kgで、1処置群当たり3匹のマウスとして、それらの製剤のFVIIノックダウンについて評価する。全ての研究が、リン酸緩衝化生理的食塩水(PBS、コントロール群)または基準製剤のいずれかを受けた動物を含む。製剤を、試験の直前にPBSで適切な濃度まで希釈する。マウスを秤量し、適切な投薬量を計算する(10μl/g体重)。試験および基準製剤ならびにPBS(コントロール動物用)を、外側尾静脈によって静脈内投与する。24時間後にケタミン/キシラジンの腹腔内注射で動物に麻酔をかけ、500〜700μlの血液を、心臓穿孔によって血清分離器管(BD Microtainer)内に採取する。血液を15℃にて10分間2,000×gで遠心分離し、血清を採取し、分析まで−70℃で保存する。血清試料を37℃で30分間解凍し、PBSで希釈し、96ウェルアッセイプレート中にアリコートする。第VII因子レベルを、発色アッセイ(Biophen FVIIキット、Hyphen BioMed)を用いて製造業者の指示に従って評価し、吸収を、405nm波長のフィルターを備えたマイクロプレートリーダーで測定する。血漿FVIIレベルを定量化し、ED50(コントロール動物と比較して血漿FVIIレベルにおいて50%の減少を結果としてもたらす用量)を、コントロール動物からのプール血清試料から生成した標準曲線を用いて計算する。高レベルのFVIIノックダウン(ED50<<0.1mg/kg)を示す関心のある製剤を、独立した研究において、より低い用量範囲で再試験して効力を確認し、ED50レベルを確立する。
【0195】
以下の表は、本明細書に記載されるカチオン性脂質の一部についてのED50値を示す。
【0196】
【表4A】
【表4B】
【0197】
これらの変更および他の変更が、上記の詳細な説明に鑑みて、実施形態に加えられ得る。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に全ての可能な実施形態を包含するものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
【国際調査報告】