(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-505865(P2015-505865A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(54)【発明の名称】金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、高分子分散剤及び焼結助剤を含んでなる分散系
(51)【国際特許分類】
C08L 59/04 20060101AFI20150130BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20150130BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20150130BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20150130BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20150130BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20150130BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20150130BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20150130BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20150130BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20150130BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20150130BHJP
C08G 65/26 20060101ALI20150130BHJP
B01F 17/42 20060101ALI20150130BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20150130BHJP
【FI】
C08L59/04
H01B13/00 Z
H01B5/14 Z
H01B13/00 503D
H01B13/00 503Z
H01B1/20 A
C09D5/24
C09D7/12
C09D1/00
C09D11/52
C08L71/02
C08K3/22
C08K5/092
C08G65/26
B01F17/42
H05K1/09 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-542896(P2014-542896)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(85)【翻訳文提出日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012075936
(87)【国際公開番号】WO2013092576
(87)【国際公開日】20130627
(31)【優先権主張番号】11194790.9
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/578,251
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】504376795
【氏名又は名称】アグフア−ゲヴエルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】ボレン,デイルク
【テーマコード(参考)】
4D077
4E351
4J002
4J005
4J038
4J039
5G301
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4D077AA01
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4E351BB01
4E351BB31
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4E351GG16
4J002CB001
4J002CH021
4J002DA076
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4J002FD206
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4J002GH02
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4J005BB02
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4J039GA24
5G301DA02
5G301DA03
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5G301DA05
5G301DA06
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5G301DA42
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5G307GA02
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5G307GB02
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5G323AA03
5G323CA05
(57)【要約】
本発明は、焼結助剤として特定のカルボン酸を含んでなる導電性組成物に関する。本発明はさらに、そのような組成物の調製方法に関する。本発明の組成物は、基質に適用される場合に硬化時間の短縮及び/又は硬化温度の低下を可能にする。かくして本発明は該導電性組成物の硬化方法ならびにそのコーティングされた層又はパターンにも関する。本発明は、200℃より低い融点を有する感熱性基質を含む種々の基質上への導電性組成物の適用ならびに硬化時間を実質的に短縮することによる導電性層及び/又はパターンを形成するための方法の迅速化に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、b)(i)ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び(ii)該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤(PD)、c)場合による分散媒を含んでなる分散系ならびに
焼結助剤(SA)
を含んでなり、SAが式HOOC−Xa−COOHに従うジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC1−C3アルキレン基であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
SAが式HOOC−(CH2)b−COOHに従うジカルボン酸であり、式中、bは0、1、2又は3である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SAがシュウ酸又はマロン酸である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
SA対PDの重量比として表わされるSAの濃度が0.6〜1.5である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
PDのポリマー主鎖が:
a)−(CH2−O)n−
b)−(CH2−CH2−O−CH2−O)n−
c)−(CH2−CH2−CH2−O−CH2−O)n−
d)−(CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−O)n−
e)−(CH2−CH2−O)n−
f)−(CH2−CHCH3−O)n−
g)−(CH2−CH2−CH2−O)n−
h)−(CH2−CH2−CH2−CH2−O)n−
i)−(CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−O)n−
j)−(CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−O)n−
[式中、nは14〜500の整数である]
から選ばれる脂肪族ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテルである請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
PDのポリマー主鎖が式I
【化1】
[式中、mは1〜500の整数であり、
oは0〜340の整数であり、
qは0〜250の整数であり、
pは1〜7の整数であり;
m+o+qは14〜500の整数であり、そして
R
2は水素、メチル又は場合により置換されていることができるアルキル基を示す]
に従う請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
PDのアンカー基が式II、III、IV又はV、
【化2】
[式中、
R
3、R
4、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
12は独立してハロゲン、場合により置換されていることができるチオール、ヒドロキシル、カルボン酸、アルデヒド、エステル、アミド、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、場合により置換されていることができるアルキル、アリール、アラルキル又はアルキレン基を示し;
R
7とR
8は場合により連結して環構造を形成することができ;
R
5、R
6、R
11は独立してハロゲン、場合により置換されていることができるチオール、カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示し;
Xは独立して−N−、−CH−又は−C(CR
13)−を示し、ここでR
13はメチル、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示し、且つここでXは場合によりR
9又はR
10に連結して環構造を形成することができ;
Yは酸素、硫黄又は−NR
14−を示し、ここでR
14はメチル、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示す]
に従う請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
高分子分散剤の数平均分子量が1500〜6000Daである請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1重量%の金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子を含んでなる請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
以下の:
a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、b)(i)ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び(ii)該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤(PD)ならびに(c)分散媒
を含んでなる分散系を与え、そして
a)該分散系に焼結助剤(SA)を加える
段階を含んでなり、ここでSAは式HOOC−Xa−COOHに従うジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC1−C3アルキレン基である請求項1〜9のいずれかに記載の組成物の調製方法。
【請求項11】
段階a)において第1の分散媒を用い、段階a)とb)の間に以下の
蒸発により分散媒を少なくとも部分的に除去し、それにより高粘性のペーストを得、
高粘性のペーストを第2の分散媒中に再分散させ、ここで第1及び第2の分散媒は同じであることができる
段階をさらに含んでなる請求項10に記載の組成物の調製方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を基質上に適用し、そして
該適用された組成物を硬化する
ことにより形成される導電性層又はパターン。
【請求項13】
硬化時間が30分より短く、且つ硬化温度が200℃より低い請求項12に記載の導電性層又はパターンの硬化方法。
【請求項14】
硬化時間が2〜20分で変わる請求項13に記載の導電性層又はパターンの硬化方法。
【請求項15】
硬化温度が130℃〜180℃で変わる請求項13又は14に記載の導電性層又はパターンの硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、導電性分散系及び焼結助剤としての特定のカルボン酸を含んでなり、基質に適用されると硬化時間の短縮及び/又は硬化温度の低下を可能にする組成物に関する。
【0002】
本発明は、そのような組成物の調製方法、そのような組成物から形成されるコーティング層又はパターンならびにこれらのコーティング層又はパターンの硬化方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
金属性ナノ粒子における興味は、与えられる金属のバルク特性と比較される時のそれらの独特の性質の故に、最近の数十年の間に増加してきた。例えば金属ナノ粒子の融点は粒度の減少と共に低下し、印刷エレクトロニクス(printed electronics)、電気化学的、光学的、磁気的及び生化学的用途にとってそれらを興味深いものとしている。
【0004】
例えばインキジェット印刷により高い処理量を以てコーティング又は印刷することができる安定且つ濃度の高い(concentrated)金属性ナノ分散系の調製は、それが低コストにおける電子装置の製造を可能にするので、非常に興味深い。
【0005】
通常、金属性ナノ分散系の調製は水中又は有機溶媒中でポリオール合成法(非特許文献1に開示されているような)により、ポリオール合成法の派生法(derivative)により、あるいは種々の還元剤の存在下における金属性塩のその場還元により行われる。そのような方法は、例えば特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17及び18において開示されている。
【0006】
中でも、通常1重量%より少ない金属性粒子である金属性ナノ分散系の希釈度は重大な欠点である。事実、そのように高度に希釈された金属性ナノ分散系を、その組成に基づいて少なくとも5重量%の金属性ナノ粒子を必要とする導電性コーティング又は印刷流体(printing fluid)の調製に直接用いることはできない。その場合、希釈された金属性ナノ分散系の追加の濃縮段階が、そのようなコーティング又は印刷流体の調製においてそれを用いることができる前に必要である。
【0007】
特許文献19は、水中において最高で35重量%の銀ナノ粒子分散系の調製を開示しているが、方法はまだ追加の精製及び単離段階を必要とし、それはそれらの工業化及びそれらの用途の範囲に非常に影響を与える(impart)。
【0008】
金属性ナノ分散系は、典型的には金属性、金属酸化物、金属前駆体ナノ粒子、高分子分散剤及び場合により分散媒を含む。高分子分散剤は、分散媒中の粒子の分散系の形成及び安定化を助長する物質である。分散された粒子は、分散操作の後に、互いの引力の故に再凝集する傾向を有し得る。分散剤の使用は、この粒子の再凝集の傾向に対抗する。分散剤は、コーティング流体及び印刷インキのために用いられる場合、特に高い必要条件を満たさなければならない。不安定な分散系は不可逆的な相分離に導き、中でも通常は直径がわずか数マイクロメーターであるコーティング又はプリントヘッドの目詰まりを引き起こし得る。さらにシステムの待機期間に、金属性粒子凝集及び関連するコーティング/プリントヘッドの閉塞は避けられるべきである。
【0009】
金属性ナノ粒子分散系の場合、再凝集する、フロキュレーションする、あるいは沈降する(相分離に導く)それらの傾向は、有機顔料(ρ=1.2−2.0g/cm
3)、無機顔料(二酸化チタンの場合、ρ=4.2g/cm
3)又は無機充填剤(硫酸バリウムの場合、ρ=4.4g/cm
3)のような他の有機又は無機粒子と比較される場合のそれらの高い嵩密度(ρ)の故に増強される。例えば銀、銅及び金の室温における嵩密度は、それぞれ10.49、8.94及び19.30g/cm
3である。
【0010】
高分子分散剤は、典型的には分子の一部にいわゆるアンカー基を含有し、それは分散されるべき金属性粒子上に吸着する。高分子分散剤は、分子の空間的に離れた部分に、分散媒(又は液体ビヒクル)及び最終的なコーティングもしくは印刷流体中に存在するすべての成分と適合性のポリマー鎖を有する。典型的な高分子分散剤には種々のトポロジー及び構造(線状、グラフト、多分枝)のホモポリマー又はランダムもしくはブロックコポリマーが含まれる。
【0011】
金属性ナノ粒子分散系は、通常アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリジノン、ビニルブチラール、酢酸ビニル又はビニルアルコールに基づくホモポリマー及びコポリマーから選ばれる高分子分散剤を含む。
【0012】
特許文献5は、親水性セグメント及びポリアルキレンイミン鎖を含んでなる高分子分散剤を含有する分散系から、銀インキを調製する方法を開示している。
【0013】
特許文献20は、金属性導電性インキの安定性を向上させる化合物を記載しており、それは金属性ナノ粒子、高分子分散剤及び溶媒を含み、ここでそれぞれの沸点は150℃より低いことができる。ポリマーはナノ粒子上に頭部基及び尾部基を有することができ、ここで頭部基はアミンのような化合物、カチオン性アルキルアンモニウム基、カルボン酸、スルホン酸及びリン酸基を含むことができる。ジメチルスルホキシド及びオキシ−ビス−エタノールのような他の添加物も分散系中に存在することができる。優れた湿潤性及び接着性を助長するために、BYK−349、BYK−DYNWET800、イソステアリルエチルイミダゾリニウムエトサルフェート及びアルコールのような化合物がいくつかのインキに加えられる。
【0014】
特許文献21(2010年12月21日に申請)は、金属性ナノ粒子ならびに金属性ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含む高分子分散剤を含んでなる導電性インキを記載しており、ここでポリマー主鎖は300℃より低い温度で95重量%分解を有し、かくしてより低い硬化温度を用いる印刷法で用いることを可能にしている。
【0015】
金属性ナノ分散系は、基質上に金属性パターンをコーティング又は印刷するために用いられる。典型的には、基質上にパターンを適用した後、導電性を誘導/増強するために、硬化段階とも呼ばれる高められた温度における焼結段階が行われる。ナノ分散系の有機成分、例えば高分子分散剤は焼結有効性及びかくして表面の導電率を低下させ得ることが見出された。この理由で、有機成分を分解するために、より高い焼結温度及びより長い焼結時間が多くの場合に必要とされる。
【0016】
上記のもののような典型的な高分子分散剤は、少なくとも350℃の完全分解温度を特徴とする。従って、そのような高分子分散剤を含んでなる流体又はインキを用いてコーティング又は印刷されたパターンは、コーティング又は印刷された層中の有機成分のほとんどが分解することを確実にするために、高められた温度における焼結段階を必要とする。
【0017】
そのような高い焼結温度は、比較的低いガラス転移温度を有するポリエチレンテレフタ
レート(PET)又はポリカーボネートのような通常のポリマー箔と適合性でない。これは、選択をポリイミドのようなより高価なポリマーに制限する。
【0018】
導電性組成物の用途を感熱性基質に拡大するために、硬化段階のために必要な温度がより低く且つ時間がより短く、優れた又は向上した導電率の値を有する導電性組成物を得ることが望ましい。さらに、該組成物の向上した性質を利用する硬化法、すなわち高い処理量のコーティング又は印刷法を開発することも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第2010143591号明細書
【特許文献2】米国特許第2009142482号明細書
【特許文献3】米国特許第20060264518号明細書
【特許文献4】米国特許第20080220155号明細書
【特許文献5】欧州特許出願第2147733号明細書
【特許文献6】欧州特許出願第2139007号明細書
【特許文献7】欧州特許出願第803551号明細書
【特許文献8】欧州特許出願第2012952号明細書
【特許文献9】欧州特許出願第2030706号明細書
【特許文献10】欧州特許出願第1683592号明細書
【特許文献11】欧州特許出願第166617号明細書
【特許文献12】欧州特許出願第2119747号明細書
【特許文献13】欧州特許出願第2087490号明細書
【特許文献14】欧州特許出願第2010314号明細書
【特許文献15】国際公開第2008/151066号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2006/076603号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2009/152388号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2009/157393号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2006/072959号パンフレット
【特許文献20】米国特許第2009/0242854号明細書
【特許文献21】欧州特許出願10196244.7号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Mat.Chem.Phys.114,549−555
【発明の概要】
【0021】
発明の概略
本発明の目的は、基質上に適用される時に、それらの導電率を保持するか又は向上させさえしながら、硬化時間の短縮及び/又は硬化温度の低下を可能にする組成物を提供することである。
【0022】
この目的は、請求項1に記載の分散系及び焼結助剤としてのカルボン酸を提供することにより実現される。
【0023】
本発明の他の目的は、該導電性組成物の調製方法を提供することである。
【0024】
この目的は、請求項11に記載する通り、高分子分散系を与え、該分散系にカルボン酸を加えることによる該組成物の調製方法を提供することにより、実現される。
【0025】
本発明は、基質に適用される導電性層又はパターンも提供する。
【0026】
この目的は、請求項10に記載する通り、本発明の組成物を含んでなるコーティング層又はパターンを提供することにより実現される。
【0027】
本発明のさらなる目的は、基質に適用する場合の本発明の組成物の硬化方法を提供することである。
【0028】
この目的は、請求項13に記載の硬化方法を提供することにより実現される。
【0029】
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の記述又は従属クレイムから明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な記述
1.本発明は、
−a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、b)(i)ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び(ii)該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤(PD)、c)場合による分散媒を含んでなる分散系ならびに
−焼結助剤(SA)
を含んでなり、SAが式HOOC−X
a−COOHに従うジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC
1−C
3アルキレン基であることを特徴とする組成物に関する。
【0031】
金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子
本発明の組成物は、金属性ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子又は金属前駆体ナノ粒子を含んでなる分散系を含む。
【0032】
金属性ナノ粒子は、元素又は合金形態における1種もしくはそれより多い金属を含む。金属は、好ましくは銀、金、銅、ニッケル、コバルト、モリブデン、パラジウム、白金、インジウム、錫、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、アルミニウム及び鉛より成る群から選ばれる。銀、銅、モリブデン、アルミニウム、金又はそれらの組み合わせに基づく金属性ナノ粒子が特に好ましい。
【0033】
他の好ましいナノ粒子は銅インジウムガリウム又は銅インジウムガリウムセレニド(CIGS)に基づく。他の好ましいナノ粒子は、セレニド又はスルフィドに基づき、例えばCdS、CdSe、ZnS、ZnSe、PbS、PbSe、CdTe、CdTeSe又はPbSeを用いることもできる。
【0034】
好ましい金属酸化物ナノ粒子は、酸化インジウム、酸化錫インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ウォルフラム(wolfram)、酸化モリブデン、酸化カドミウム又は酸化亜鉛に基づく。ZnO:Al、SnO
2:F又はSnO
2:Sbのようなドーピングされた金属酸化物ナノ粒子を用いることもできる。酸化ガリウムインジウム銅及び酸化銅を銅インジウムガリウムセレニドナノ粒子のための前駆体として用いることもできる。
【0035】
「前駆体」という用語は、金属酸化物の金属への還元又は銅インジウムガリウムのCIGSへのセレン化のような追加の段階により、それを所望の材料に転換できる可能性を指す。
【0036】
「ナノ粒子」という用語は、分散系調製の最後に100nmより小さい平均粒度を有する分散された粒子を指す。金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子は、分散系調製の最後に100nmより小さい、好ましくは50nmより小さい、より好ましくは20nmより小さい平均粒度を有する。
【0037】
分散系調製段階の前、金属、金属前駆体又は金属酸化物粒子は、典型的には多くの場合に100nmより大きい平均粒度を有する粉末又はフレークとして入手可能である。それらの粒度を次いで、分散系調製の間にナノ粒子範囲に低下させねばならない。
【0038】
高分子分散剤
本発明の分散剤は、分散媒中における立体的な安定性を与える親マトリックス性(matrixophilic)ポリマー主鎖部分及びポリマー主鎖に化学的に結合した、好ましくは共有結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関して親和性を有するアンカー基を含む。アンカー基はナノ粒子の最適安定化を確実にする。
【0039】
ポリマー主鎖は、好ましくは300℃より低い温度で、高分子分散剤の95重量%の熱分解を保証しなければならない。その理由で、ポリマー主鎖はポリアセタール主鎖又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖である。
【0040】
該高分子分散剤は、熱重量分析(Thermal Gravimetric Analysis)(TGA)により測定される場合に、310℃より低い温度で完全な分解、及び300℃より低い、好ましくは290℃より低い、より好ましくは280℃より低い温度で95重量%分解を有する。
【0041】
95重量%分解は、高分子分散剤の95重量%が分解し、コーティング又は印刷された層から蒸発することを意味する。
【0042】
熱分解は1、2又は3段階で起こり得る。主な分解、すなわち高分子分散剤の少なくとも75重量%が分解する分解は、好ましくは100℃〜300℃で、より好ましくは125℃〜250℃で、最も好ましくは150℃〜240℃で起こる。典型的には、誘導的(derivative)重量損失曲線を用い、主な分解が起こる温度を引き出す。そのような誘導的重量損失曲線における最高ピーク、すなわち主な分解は、好ましくは100℃〜300℃で、より好ましくは125℃〜250℃で、最も好ましくは150℃〜240℃で観察される。
【0043】
芳香族ポリエーテルは脂肪族ポリエーテルと比較してより高い熱安定性を有するので、分散剤のポリマー主鎖のポリエーテル断片は、好ましくは芳香族基を含まないか、あるいは少量しか含まない。
【0044】
分散剤のポリマー主鎖の特に好ましいポリエーテル断片は、脂肪族ポリエーテル主鎖である。
【0045】
好ましいポリアセタール主鎖の例は以下の構造を有するか、又はその組み合わせであることができ、環状アセタールモノマー、例えばトリオキサン、ジオキソラン及びジオキセパンの重合又は共重合により製造される。
【0046】
−(CH
2−O)
n−
−(CH
2−CH
2−O−CH
2−O)
n−
−(CH
2−CH
2−CH
2−O−CH
2−O)
n−
−(CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O−CH
2−O)
n−
式中、nは14〜500の整数である。
【0047】
ポリアセタール主鎖中に含むために好ましいポリエーテル断片の例は以下の構造を有する。
【0048】
−(CH
2−CH
2−O)
n−
−(CH
2−CHCH
3−O)
n−
−(CH
2−CH
2−CH
2−O)
n−
−(CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O)
n−
−(CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O)
n−
−(CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O)
n−
式中、nは14〜500の整数である。
【0049】
特に好ましいポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖は、式I
【0051】
[式中、mは1〜500の整数であり、
oは0〜340の整数であり、
qは0〜250の整数であり、
pは1〜7の整数であり;
m+o+qは14〜500の整数であり、
R
2は水素、メチル又は場合により置換されていることができるアルキル基を示す]
により示される。
【0052】
金属性、金属前駆体及び金属酸化物ナノ粒子のためのアンカー基は、低分子量(MW<300)脂肪族アミン又は芳香族アミン、チオエーテル、チオール、ジスルフィド、場合により置換されていることができるアリールもしくはアラルキル基、2−ピロリドン、アミド、エステル、アクリル系誘導体、S−含有ヘテロ芳香族化合物、N−含有ヘテロ芳香族化合物、場合により置換されていることができるチイラン、チオアセタール、オキサチオアセタール、スルタム、チオフェン、ベンゾチオフェン、環状及び脂環式アミン、ラクタム、イミダゾリドン、オキサゾリジノン、ヒダントイン、ウラゾール、2H−アジリン、3−ピロリン、2−ピロリン、1−ピロリン、マレイミド、2−イソオキサゾリン、2−オキサゾリン、2−イミダゾリン、ピラゾリン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、1−置換テトラゾール、5−置換テトラゾール、1,5−ジ置換テトラゾール、場合により置換されていることができるイミダゾール−2−オン、ベンズイミダゾール−2−オン、1,3−オキサゾール、ベンズオキサゾール、イソオキサゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、インドール、オキシインドール、インドリン、カルバゾール、アザインドール、イソインドール、インドリジン、インドリジノン、ピリジン、ジヒドロピリジン、2−ピリドン、ピリミジン、1,3,5−トリアジン、キノリン、テトラヒドロキノリン、1,2−ジヒドロキノリン、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン、1,8−ナフチリジン、キナゾリン、4−キノロン、1,3−イミダゾール、チオアミド、モルホリン誘導体、ピペラジン、トリアザインドリジン又は核酸誘導体、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルあるいはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0053】
好ましくは、アンカー基はS及び/又はN含有ヘテロアリールを含む。
【0054】
より好ましくは、アンカー基は式II、III、IV又はVに従うヘテロアリールの群から選ばれる。
【0056】
式中、
R
3、R
4、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
12は独立してハロゲン、場合により置換されていることができるチオール、ヒドロキシル、カルボン酸、アルデヒド、エステル、アミド、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、場合により置換されていることができるアルキル、アリール、アラルキル又はアルキレン基を示し;
R
7とR
8は場合により連結して環構造を形成することができ;
R
5、R
6、R
11は独立してハロゲン、場合により置換されていることができるチオール、カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示し;
Xは独立して−N−、−CH−又は−C(CR
13)−を示し、ここでR
13はメチル、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示し、且つここでXは場合によりR
9又はR
10に連結して環構造を形成することができ;
Yは酸素、硫黄又は−NR
14−を示し、ここでR
14はメチルあるいは場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示す。
【0057】
特に好ましいアンカー基には2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1−(2−ジメチルアミノ−エチル)−5−メルカプト−テトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール及び1−(2−ジメチルアミノ−エチル)−5−メルカプト−テトラゾールが含まれる。
【0058】
本発明に従う高分子分散剤は、好ましくは以下の方法のいずれかにより製造される:
・アンカー基の存在下における環状アセタール又はオキシランの開環重合、開環共重合又は他の重合もしくは共重合;
・Macromol.Symp.1994,85,167−174に記載されているような、アンカー基分子又はアンカー基部分を保有するいずれかの分子を用いるクエンチング又は誘導体化を含む重合後法(post−polymerization procedures)によるポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル前駆体の後−官能基化(post−functionalization)。
【0059】
上記の第1の方法であるアンカー基の存在下における重合を行う場合、アンカー基をポリマー主鎖の一方の端又は両端に(すなわちテレケリック位置)化学的に結合させることができるか、あるいはポリマー主鎖中に導入することができる。上記の第2の方法である後−官能基化を行う場合、アンカー基は好ましくはポリマー主鎖の一方の端もしくは両端に化学的に結合するであろう。
【0060】
式II〜Vに従うアンカー基は、例えば複素環のN−原子あるいはR
3〜R
12置換基を介してポリマー主鎖に化学的に結合することができる。
【0061】
特に好ましい高分子分散剤は、式II、III、IV又はVあるいはそれらの組み合わせに従う、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含み、それは式Iに従うポリマー主鎖に化学的に結合している。
【0062】
好ましくは、この特に好ましい高分子分散剤は:
a)90〜99.4モル%の、式VI、VII又はVIII
【0064】
[式中、
R
1は、pが1〜7の整数である(CH
2)
p単位を示し、R
2は水素、メチル又は場合により置換されていることができるアルキル基を示す]
により示されるモノマー又はそれらの組み合わせ;
b)0.1〜10モル%の式II、III、IV又はVに従う金属性(metallic)アンカー基又はそれらの組み合わせ;
c)0.1〜0.5モル%の、プロトン酸、ルイス酸及びオキソニウム化合物より成る群から選ばれる重合開始剤あるいはアルコラート及び有機金属性化合物より成る群から選ばれるアニオン性開始剤
の間の反応により製造される。
【0065】
上記で言及したモル%は、供給混合物に基づく。
【0066】
適した重合開始剤は、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、過塩素酸、無水酢酸、三フッ化ホウ素エーテラート、三フッ化ホウ素メチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素メチルtert−ブチルエーテラート、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート、トリエチルオキソニウムヘキサクロロアンチモネート、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、アンチモン塩、例えば塩化アンチモン、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、トリアルキルアルミニウム、金属ハライド、例えば塩化アルミニウム、塩化亜鉛、四塩化チタン、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、アルキルもしくはアリールリチウム、アルキルもしくはアリールナトリウム、アルキルもしくはアリールカリウム、アルキルマグネシウムブロミド、ナフタレンナトリウム、アルミニウムアルコキシド、マグネシウムアルコキシド、ベリリウムアルコキシド又は第二鉄(ferric)アルコキシドである。
【0067】
本発明に従う高分子分散剤は、15000Daより小さい、より好ましくは8000Daより小さい数平均分子量Mnを有する。さらにもっと好ましい態様において、数平均分子量Mnは1500〜6000Daに含まれる。
【0068】
上記の反応が完了したら、遊離のアンカー基、すなわちポリマー主鎖に化学的に結合していないアンカー基は、得られる反応生成物中に存在することができる。そのような反応生成物、すなわち本発明に従う高分子分散剤及び遊離のアンカー基を、遊離のアンカー基の量が多すぎない場合にはそのまま用い、本発明に従うナノ分散系を調製することができる。
【0069】
好ましい態様において、反応生成物中に存在する遊離のアンカー基は10モル%より少ない。
【0070】
分散媒
本発明の金属性ナノ粒子分散系中で用いられる分散媒は不在であるか、又は好ましくは非水性の液体である。非水性の液体は少量の水、好ましくは10重量%より少量、より好ましくは5重量%より少量の水を含むことができる。分散媒は有機溶媒又は有機溶媒の組み合わせから成ることができる。適した有機溶媒にはアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ及び高級脂肪酸エステルが含まれる。適したアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールが含まれる。適した芳香族炭化水素にはトルエン及びキシレンが含まれる。適したケトンにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサ−フルオロアセトンが含まれる。グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを用いることもできる。好ましい態様において、1−メトキシ−2−プロパノール、メタノール、エタノール及びイソプロパノールの使用は特に好ましい。別の好ましい態様において、金属性ナノ粒子分散系は無溶媒であることができ、均一な粘性のペーストである。
【0071】
焼結助剤
ある種のカルボン酸を上記の分散系に加えると、該分散系及び該カルボン酸を含んでなる組成物から形成されるコーティング及び/又はパターンの硬化温度を下げることができ、硬化時間を短縮することができることが観察された。
【0072】
本発明の焼結助剤(SA)は、式HOOC−X
a−COOHを有するジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC
1−C
3アルキレン基、すなわちメチレン、エチレン、n−プロピレン又はi−プロピレン基である。C
1−C
3アルキレン基は直鎖状又は分枝鎖状であることができる。
【0073】
好ましい態様において、SAは式HOOC−(CH
2)
b−COOHを有し、式中、bは0、1、2又は3である。好ましい態様において、ジカルボン酸はシュウ酸(b=0)、マロン酸(b=1)、コハク酸(b=2)又はグルタル酸(b=3)である。最も好ましい態様において、ジカルボン酸はシュウ酸(b=0)である。
【0074】
比較の目的のために、モノカルボン酸、ギ酸及びアスコルビン酸ならびにまたアジピン酸、ジカルボン酸のような他のカルボン酸を試験した。
【0075】
SAは、好ましくは場合による分散媒中で、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも2.5重量%の溶解度を有する。
【0078】
本発明のSAは、好ましくは分散媒中もしくは混合分散媒(dispersion media)中に直接可溶性である。本発明の熱的に開裂可能な薬剤が直接可溶性でない場合、最初にそれらを分散媒又は混合分散媒と適合性である極性有機媒体中に可溶化しなければならない。極性有機溶媒の例はアルコールである。TCAが可溶化された極性有機媒体を、次いで分散媒に加える。
【0079】
ナノ粒子分散系の調製
ナノ粒子分散系は、高分子分散剤及び場合による分散媒の存在下で、単数種もしくは複数種の金属、金属酸化物又は金属前駆体を分散させることにより調製される。分散法は、沈降、混合又は磨砕あるいはそれらの組み合わせを含む。温度、処理時間、エネルギー投入などのような実験条件は、選ばれる方法に依存する。連続、バッチ又は半−バッチ様式で分散過程を行うことができる。
【0080】
混合装置には加圧混練機、開放混練機(open kneader)、遊星形ミキサー、溶解機、高せん断スタンドミキサー及びDalton Universal Mixerが含まれ得る。適した磨砕及び分散装置はボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー及びトリプルローラーである。磨砕媒体として、ガラス、セラミック、金属及びプラスチックのような多種の型の材料を用いることができる。超音波エネルギーを用いて分散系を調製することもできる。
【0081】
「ナノ粒子」という用語は、分散系の調製の最後に100nmより小さい平均粒度を有する分散された粒子を指す。分散系調製段階の前、金属性、金属前駆体又は金属酸化物粒子は、典型的には粉末、フレーク、粒子又は凝集粒子として入手可能である。それらの平均寸法が100nmより大きい場合、分散段階は、粒度がナノ粒子範囲に下がるまで、磨砕又は解凝集の作用を含むダウンサイジング(down−sizing)段階を必然的に含む。単数種もしくは複数種の金属前駆体又は金属酸化物の金属への転換は、ダウンサイジング段階に相伴うことができる。
【0082】
好ましい態様において、本発明のナノ粒子分散系は、液体ビヒクル中の還元剤及び本発明に従う高分子分散剤の存在下での金属前駆体、金属酸化物、金属塩又はそれらの組み合わせの混合下におけるその場還元により調製される。
【0083】
好ましい態様において、分散系は少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子を含んでなる低粘性の液体である。
【0084】
ナノ粒子/高分子分散剤の重量比は、少なくとも1.0、より好ましくは3.0〜9.0である。
【0085】
別の好ましい態様において、分散系は実質的に無溶媒、すなわち溶媒は10重量%より少なく、好ましくは5重量%より少ない。そのような実質的に無溶媒の分散系は、分散媒の蒸発後に高粘性の均一なペーストとして得られる。無溶媒分散系は、好ましくは50〜90重量%の金属、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子を含む。より好ましくは、無溶媒分散系は少なくとも75重量%のナノ粒子を含む。
【0086】
高粘性のペーストを水中、有機溶媒中又はそれらの組み合わせ中に再分散させ、低粘性の分散系を生ずることができ、それを次いで例えば印刷流体として用いることができる。磁気又は機械的撹拌により、あるいは混合により再分散段階を行うことができる。再分散段階に、上記の混合装置を用いることができる。ナノ粒子の寸法は、再分散段階の間に変わらない。再分散させることができる安定な高粘性のペーストを実現することは、保存及び輸送のための利点である。さらに、高粘性のペーストを多様な溶媒中で、水中でさえ再分散させることができ、特定の用途のための最適な溶媒を選ぶ柔軟性を向上させる。
【0087】
好ましいナノ粒子は、金属性銀、銅又はアルミニウムを含み、特に好ましいナノ粒子は金属性酸化銀を含む。これらの特に好ましいナノ粒子を、例えば高分子分散剤(PD)の存在下における銀前駆体又は塩あるいはそれらの組み合わせの還元剤による還元により調製することができる。特に好ましい銀塩又は銀前駆体は、酸化銀及び酢酸銀である。
【0088】
焼結助剤の製造
焼結助剤(SA)は直接粉末として、又はMOP中の溶液として金属性ナノ粒子分散系(MNPD)に加えられる。
【0089】
組成物
本発明は、(a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤ならびに場合による分散媒を含んでなる分散系ならびに(b)焼結助剤(SA)を含んでなり、SAが式HOOC−X
a−COOHを有するジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC
1−C
3アルキレン基であることを特徴とする組成物に関する。
【0090】
組成物中のジカルボン酸の濃度を、ジカルボン酸対高分子分散剤の重量比(SA/PD)として表わすことができる。1.5 重量:重量より高いSA/PDの存在は、除去することが必要な過剰のSAの故に、与えられる温度におけるより長い硬化時間あるいは与えられる硬化時間におけるより高い温度を必要とすることが観察された。さらに、該条件においてコーティング層の質は劣っている、すなわちそれらはより低い均一性を与え、それはそのコーティング層又はパターンの不安定な、及び/又はより低い導電率の値に導くことも観察された。SA/PDの値が0.6 重量:重量より低い場合、主に硬化条件に負の効果があり、すなわち結合剤の完全な分解のためにより高い温度及び/又はより長い硬化時間が必要である。
【0091】
かくして好ましい態様において、ジカルボン酸対高分子分散剤の重量比(SA/PD)として表わされる導電性組成物中のジカルボン酸の濃度は、0.6〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2で変わる。
【0092】
別の好ましい態様において、ジカルボン酸はシュウ酸又はマロン酸である。最も好ましい態様において、ジカルボン酸はシュウ酸である。
【0093】
本発明の組成物は、以下の:
(a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤ならびに分散媒を含んでなる分散系を与え、そして
(b)分散系に焼結助剤(SA)を加える
段階を含んでなり、SAが式HOOC−X
a−COOHを有するジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC
1−C
3アルキレン基であることを特徴とする方法により、式HOOC−X
a−COOHを有し、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC
1−C
3アルキレン基であるジカルボン酸を、上記の金属性ナノ分散系に加えることにより調製される。
【0094】
ナノ粒子分散系が上記のような高粘性のペーストである態様の場合、焼結助剤SAを好ましくは再分散された高粘性のペーストに加える。溶媒蒸発の前又はそれを再分散させる前に焼結助剤を高粘性のペーストに加えることは、組成物中に存在する高分子分散剤の部分的な分解を引き起こし得る。高粘性のペーストの再分散に用いられる混合法は、分散系の温度を局部的に上昇させ得、かくして温度を最高で40℃に保持するために、好ましくは冷却装置が用いられる。この態様の場合、組成物は好ましくは以下の:
・(a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、(b)ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤ならびに(c)第1の分散媒を含んでなる分散系を与え、
・蒸発により少なくとも部分的に分散媒を除去し、それにより高粘性のペーストを得、
・高粘性のペーストを第2の分散媒中に再分散させ、ここで第1及び第2の分散媒は同じであることができ、そして
・分散系に焼結助剤(SA)を加える
段階を含んでなり、
SAが式HOOC−X
a−COOHを有するジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC
1−C
3アルキレン基であることを特徴とする方法により調製される。
【0095】
本発明に従う組成物をコーティング溶液又は印刷流体として直接用いることができる。しかしながら、そのコーティング又は印刷性を最適化するために、且つそれが用いられる用途に依存して、付加的な溶媒及び/又は添加剤、例えば還元剤、塩、湿潤/均展剤、流動学改変剤(rheology modifiers)又は接着剤もしくは粘着付与剤を、低粘性のナノ粒子分散系又は適した溶媒中に再分散させた後の再分散されたペーストに加えることができる。
【0096】
本発明の金属性組成物から印刷又はコーティングされる薄層又はパターンを、通常の金属性組成物を用いる場合に得られる温度と比較してより低い焼結温度で導電性にすることができる。従って本発明の金属性組成物から形成される導電性薄層又はパターンを、例えばPETのような高温における熱処理に耐えられない柔軟性基質上にコーティング又は印刷することができる。
【0097】
インキジェット法により金属性層又はパターンを実現することができる。噴射温度において測定される印刷流体の粘度は、好ましくは5〜20mPa.s、より好ましくは5〜12mPa.sである。
【0098】
フレキソグラフィー、オフセット、グラビア又はスクリーン印刷のような通常の印刷法により、あるいは噴霧コーティング、ブレードコーティング、スロットダイコーティングのような通常のコーティング法により、金属性層又はパターンを実現することもできる。
【0099】
層又はパターンを基質上に適用した後、焼結段階を行う。この焼結段階の間に、溶媒は蒸発し、有機成分は分解し、金属性粒子が一緒に焼結する。金属性粒子の間に連続して行き渡ったネットワーク(percolating network)が形成されると、層又はパターンは導電性になる。
【0100】
通常の焼結は、熱の適用により行われる。焼結温度及び時間は、もちろん用いられる基質及び導電性組成物あるいは層の組成に依存するが、好ましくは200℃より低く、より好ましくは180℃より低く、最も好ましくは170℃である。しかしながら、熱の適用による通常の焼結の代わりに、あるいはそれに加えて、アルゴンレーザー、マイクロ波照射、UV線あるいは低圧アルゴンプラズマ、フォトン硬化(photonic cure)、プラズマ、電子ビームへの暴露又はパルス電流焼結(pulse electric
current sintering)のような別の焼結法を用いることができる。
【0101】
本発明に従うと、200℃より低い、好ましくは180〜130℃の温度、より好ましくは170℃において本発明の組成物の硬化のための焼結段階を行うことができる。
【0102】
さらに、本発明に従うと、選ばれる温度、基質及び導電性組成物の組成に依存して30分より短時間、好ましくは2〜20分間、より好ましくは3〜10分間で焼結時間を行うことができる。
【0103】
従って本発明は、硬化時間が30分より短時間、好ましくは2〜20分間、より好ましくは3〜10分間であり、且つ硬化温度が200℃より低い、好ましくは180〜130℃の温度、より好ましくは170℃である上記の導電性組成物のための硬化方法も提供する。
【0104】
本発明の組成物は、先行技術の方法より低い硬化温度を用いることを可能にする。結局、例えばPETのような高温における熱処理に耐えられない高分子基質の使用が可能である。硬化時間を実質的に短縮することもでき、先行技術の方法より高い時間当たりの生産量を有する可能性に導く。導電率(conductivity rates)は保持されるか、ある場合には向上さえする。
【0105】
導電性層又はパターンを種々の電子装置又はそのような電子装置の部品、例えば有機光電池(OPV’s)、無機光電池(c−Si、a−Si、CdTe、CIGS)、OLEDディスプレー、OLED照明、無機照明、RFID’s、有機トランジスタ、薄フィルムバッテリー、タッチ−スクリーン、e−ペーパー(e−paper)、LCD’s、プラズマ又は電磁シールドにおいて用いることができる。
【実施例】
【0106】
材料
以下の実施例中で用いられるすべての材料は、他に特定しなければ、ALDRICH CHEMICAL Co.(ベルギー)及びACROS(ベルギー)のような標準的な供給源から容易に入手可能である。すべての材料は、他に特定しなければさらなる精製なし
で用いられた。
・基質としてThermoline PET/V109を用いた。それは120μmの厚さを有する下塗りされたポリエステル基質を指す。
・酸化銀(Ag
2O)は、水酸化ナトリウムのアルカリ性水溶液(33重量%)中の硝酸銀の沈殿、続く濾過及び乾燥により製造された。
・アスコルビン酸、UCB PFIZER MERCKから。
・DMDT、ROBINSON BROTHERS LTDからの2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール。
・DCM、ACROSからのジクロロメタン又は塩化メチレン(CH
2Cl
2)。
・MOP、ACROSからの1−メトキシ−2−プロパノール。
・ALDRICHからのトリフルオロメタンスルホン酸。
・ALDRICHからのn−デカン。
・SA−01は、シュウ酸(エタン二酸、CAS 144−62−7)に関する略語である。
・SA−02は、マロン酸(プロパン二酸、CAS 141 −82−2)に関する略語である。
・SA−03は、コハク酸(ブタン二酸、CAS 110−15−6)に関する略語である。
・SA−04は、グルタル酸(ペンタン二酸、CAS 110−94−1)に関する略語である。
・SA−05は、ギ酸(CAS 64−18−6)に関する略語である。
・SA−06は、アスコルビン酸(CAS 50−81−7)に関する略語である。
・SA−07は、アジピン酸(CAS 124−04−9)に関する略語である。
・焼結助剤であるシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ギ酸及びアスコルビン酸は、到着のまま用いた。
【0107】
測定法
1.導電率
25℃の温度及び30%相対湿度に状態調節された室内で、それぞれ長さが35mmで35mm離れ、線接触を形成することができる銀充填ゴム接触材料で処理され、Teflon
(R)絶縁体により分離された同じ幅の、且つそれらの幅に等しい距離における平行銅電極と、コーティング層を接触させることにより、導電性コーティング層の表面抵抗(SER)を測定した。これは、コーティング層を電極と等しい幅で切り開く(slitted)と、SERの直接の測定を行うことを可能にした。次式:
導電率=100xσ/σ
(Ag)=100/[SER
*h
*σ
(Ag)]x1E5
[式中、
σはS/cmで表わされる層の比導電率であり、
SERはオーム・平方で表わされる層の表面抵抗であり、
hはマイクロメーターで表わされる乾燥層厚さであり、そして
σ
(Ag)は6.3 10
5S/cmに等しい銀の比導電率である]
に従って、バルク銀導電率(bulk silver conductivity)に対するパーセンテージ(%バルク銀(%bulk silver))として表わされる導電率を計算した。
【実施例1】
【0108】
1.1 高分子分散剤PD−01の調製
868gの1,3−ジオキソランを2Lの三口丸底フラスコ中で886gのDCM中に溶解し、窒素雰囲気下に室温で撹拌した。70.4gのDMDT及び10gのn−デカンをフラスコに加えた。10分間の一定の撹拌の後、2.2gのトリフルオロメタンスルホン酸を反応混合物に加え、23℃で24時間撹拌した。6.1gのトリエチルアミンを反
応混合物に加えた。反応混合物の2/3を6リットルの冷n−ヘキサン中に機械的撹拌下で沈殿させた。沈殿する生成物をブフナーロート上で濾過し、真空炉中で23℃において乾燥した。490gの高分子分散剤PD−01を白−黄色がかった粉末として回収した(収率=78%)。
【0109】
溶離剤としてジメチルアセトアミド/0.21重量%LiCl/0.63重量%酢酸及び線状ポリスチレン標準に対してキャリブレーションされた3個の混合−Bカラム(mixed−B column)を用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される高分子分散剤PD−01の数−平均及びz−平均分子量(Mn,Mz)ならびに多分散指数(polydispersity index)(Mw/Mn)は、それぞれ5443、8502及び1.26であった。
【0110】
1.2 高分子分散剤PD−02の調製
250gの1,3−ジオキソランを1Lの三口丸底フラスコ中で225gのDCM中に溶解し、窒素雰囲気下に室温で撹拌した。21.1gのDMDT及び5gのn−デカンをフラスコに加えた。10分間の一定の撹拌の後、1.3gのトリフルオロメタンスルホン酸を反応混合物に加え、23℃で4時間撹拌した。1.8gのトリエチルアミンを反応混合物に加えた。減圧下で溶媒を蒸発させた。236.1gの高分子分散剤PD−02を白−黄色がかった粘性のペーストとして回収した(収率=87.1%)。
【0111】
溶離剤としてジメチルアセトアミド/0.21重量%LiCl/0.63重量%酢酸及び線状ポリスチレン標準に対してキャリブレーションされた3個の混合−Bカラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される高分子分散剤PD−02の数−平均及びz−平均分子量(Mn,Mz)ならびに多分散指数(Mw/Mn)は、それぞれ4853、7601及び1.26であった。
【実施例2】
【0112】
この実施例は、本発明に従う金属性ナノ分散系(MNPD)の調製を例示する。表2は各MNPDの組成を示す。
【0113】
2.1 金属性ナノ分散系MNPD−01の調製
125mLの反応器中において、6gの酸化銀及び1.28gのPD−01を28.72gのMOP中で(灰色の懸濁液)、40℃において15分間撹拌した。自動化シリンジの使用により(流量=0.2mL/分)、反応混合物に1.2mLのギ酸を40℃において加えた。15.7/3.6/80.7 重量:重量のAg/PD−01/MOPの組成を有する35.5gの均一な黒色の分散系が調製された。
【0114】
2.2 金属性ナノ分散系MNPD−02の調製
125mLの反応器中において、6.0gの酸化銀及び1.28gのPD−01を28.72gのMOP中で(灰色の懸濁液)、40℃において15分間撹拌した。自動化シリンジの使用により(流量=0.2mL/分)、反応混合物に0.9mLのギ酸を40℃において加えた。15.7/3.6/80.7 重量:重量のAg/PD−01/MOPの組成を有する35.5gの均一な黒色の分散系が調製された。
【0115】
2.3 金属性ナノ分散系MNPD−03の調製
40℃に温度調節された125mLの反応器中において、5.0gの酸化銀及び1.55gのPD−01を56.0gのMOP中で(灰色の懸濁液)15分間撹拌した。自動化シリンジの使用により(流量=0.2mL/分)、反応混合物に1.63mLのギ酸を40℃において加えた。還元剤の完全な添加の後、反応混合物を40℃で60分間撹拌し、減圧下で溶媒を蒸発させた。終夜激しく撹拌することにより、ペーストをMOP中に再分
散させた。15.0/5.0/80.0 重量:重量のAg/PD−01/MOPの組成を有する31.0gの均一な黒色の分散系が調製された。
【0116】
2.4 金属性ナノ分散系MNPD−04の調製
125mLの反応器中において、6.0gの酸化銀及び1.28gのPD−01を29.02gのMOP中で(灰色の懸濁液)、40℃において15分間撹拌した。自動化シリンジの使用により(流量=0.2mL/分)、反応混合物に0.9mLのギ酸を40℃において加えた。還元剤の完全な添加の後、反応混合物を40℃で120分間撹拌した。15.7/3.6/80.7 重量:重量のAg/PD−01/MOPの組成を有する36.0gの均一な黒色の分散系が調製された。
【0117】
2.5 金属性ナノ分散系MNPD−05の調製
250mLの反応器中において、12.0gの酸化銀及び2.56gのPD−01を57.4gのMOP中で(灰色の懸濁液)、40℃において15分間撹拌した。自動化シリンジの使用により(流量=0.2mL/分)、反応混合物に1.8mLのギ酸を40℃において加えた。反応混合物を40℃においてさらに2時間撹拌した。15.7/3.6/80.7 重量:重量のAg/PD−01/MOPの組成を有する71.1gの均一な黒色の分散系が調製された。
【0118】
2.6 金属性ナノ分散系MNPD−06の調製
40℃に温度調節された2Lの反応器中において、45.0gの酸化銀及び13.97gのPD−02を1062.0gのMOP中で(灰色の懸濁液)15分間撹拌した。自動化シリンジの使用により(流量=150mL/分)、反応混合物に7.32mLのギ酸を40℃において加えた。還元剤の完全な添加の後、反応混合物を40℃で120分間撹拌し、減圧下で溶媒を蒸発させた。使用前に、15.0/5.0/80.0 重量:重量のAg/PD−02/MOPの組成を有する均一な黒色の分散系を調製するために、48時間激しく撹拌することによりペーストをMOP中に再分散させ、超音波処理浴中に10分間置いた。
【0119】
すべてのMNPD’sの調製において還元剤としてギ酸を用いたが、媒体からのその蒸発の故に、最終的な分散系中にそれは存在しない。
【0120】
【表2】
【実施例3】
【0121】
この実施例は、金属性組成物(CI)の調製を例示する。化合物SA−01〜SA−07を金属性ナノ分散系MNPD−01〜MNPD−06に加えることにより、本発明の(INV)及び比較用の(COMP)組成物CIを調製した(表3を参照されたい)。本発
明の組成物はシュウ酸(SA−01)、マロン酸(SA−02)、コハク酸(SA−03)又はグルタル酸(SA−04)を含んだが、比較用の組成物は酸を含まないか、アジピン酸(SA−07)、ギ酸(SA−05)又はアスコルビン酸(SA−06)を含んだ。SAの量は組成物中の重量%で、及び高分子分散剤(PD−01又はPD−02)の重量:重量で表わされる。
【0122】
種々の添加剤(SA−01〜SA−07)及び種々の金属性ナノ分散系(MNDP−01〜MNDP−06)を用いて金属性組成物CI−01〜CI−18を調製した。添加剤SAを種々の濃度で、挙げられる(referred)組成物に加えた。
【0123】
【表3】
【実施例4】
【0124】
この実施例は、金属性組成物からのコーティング層の形成を例示する。
【0125】
63μmの厚さを有する下塗りされたポリエステル基質上に、表4で規定される金属性組成物CI−01〜CI06を適用することにより、コーティング層CLを形成した。組成物を20μmの湿潤コーティング厚さで適用し、23℃で10分間乾燥した。170℃で10分間硬化した後の層CL−01〜CL−06及びCL−09の組成及び電気的性質を表4に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
本発明のジカルボン酸を含んでなる導電性組成物からコーティングされる層は、同じ条件下で硬化されると、比較用のカルボン酸を含んでなるものより高い導電率を示す。本発明の組成物のみが硬化温度の有意な低下を許すことが明らかである。
【実施例5】
【0128】
この実施例は、SA−07を用いて金属性組成物CI−06からの、且つ170℃、180℃及び200℃のような通常の硬化温度より低い種々の温度で10分間硬化される比較用のコーティング層の形成を例示する。硬化後の層CL−06、CL−40及びCL−41の組成及び電気的性質を表5に示す。
【0129】
【表5】
【0130】
本発明のジカルボン酸以外の酸を含んでなる金属性組成物からコーティングされる比較用の層は、本発明の好ましい条件で、すなわち200℃かもしくはそれより低い温度で且つ10分間硬化されると、より低い導電率を示すか、又は導電率を示さない。温度が200℃である場合のみに、比較用の層はいくらかの導電率を与えることができ(CL−41を用いて示されるように)、その時でさえ、比較用の組成物の導電率の値は、表4に示される170℃の温度における本発明の組成物からのコーティング層のそれより低く、ここで本発明の組成物の場合の最低の導電率の値はCL−04に属する1.3%バルク銀である。従って、有意な硬化温度の低下及び硬化時間の短縮がある場合に、本発明の組成物のみが導電率を保持するか又は向上させることができることは明らかである。
【実施例6】
【0131】
この実施例は、様々な(variable)濃度のSAを含んでなる金属性組成物を用
いてコーティングされ、170℃の温度及び2〜30分の様々な硬化時間で硬化される層CL−07〜CL−36の組成及び電気的性質を例示する(表6)。
【0132】
【表6-1】
【0133】
【表6-2】
【0134】
表6から、170℃の硬化温度及び2〜30分の硬化時間を用いる場合、本発明の導電性組成物を用いることにより十分な導電率(バルク銀>1%)を有するコーティング層を形成できることが明らかである。
【0135】
さらに、本発明の範囲内の(0.6〜1.42のSA/PD)の種々の濃度のSAsを含んでなる本発明の導電性組成物を用いてコーティングされる層は、170℃の硬化温度及び2〜30分の硬化時間において十分な導電率を示すことも明らかである。
【0136】
しかしながら、SAを含まない比較用の組成物を用いてコーティングされる層、それぞれCL−07〜CL−10及びCL−31は、同じ硬化条件:170℃の温度及び2〜30分の硬化時間において導電率を示さない。
【実施例7】
【0137】
この実施例は、様々な濃度のSAを含んでなる金属性組成物を用い、170℃の温度で10分間硬化されるコーティング層の組成及び電気的性質を例示する(表7)。
【0138】
【表7】
【0139】
表7から、特許請求される濃度範囲(0.6〜1.42のSA/PD)内の本発明の導電性組成物を用いることにより、170℃の硬化温度及び10分の硬化時間において十分な導電率を有するコーティング層を形成できるが、SAを含まない比較用の金属性組成物を用いてコーティングされる層(CL−09及びCL−31)あるいはギ酸(SA−05)又はアスコルビン酸(SA−06)を含んでなり、SA/PD=1.0 重量:重量を用いる比較用の金属性組成物を用いてコーティングされる層、それぞれCL−32及びCL−33は、同じ硬化条件下でほとんど又は全く導電率を示さないことが明らかである。
【実施例8】
【0140】
金属性組成物を用いてコーティングされ、且つ様々な硬化温度における10分間の硬化時間の後の層CL−21及びCL−35〜CL−39の組成及び電気的性質を表8に示す。
【0141】
【表8】
【0142】
表8から、200℃より低い硬化温度を用いる場合、本発明の導電性組成物を用いることにより十分な導電率を有する導電性層を形成できることが明らかである。
【0143】
本発明の導電性組成物を用いてコーティング又は印刷される層は、同じ硬化条件下で、比較用の組成物を用いてコーティング又は印刷される層と比較する場合に、より優れた性能を示す。
【0144】
本発明の組成物の使用は、与えられる温度において有意な硬化時間の短縮を可能にする。
【0145】
本発明の導電性組成物中で用いられる焼結助剤の有利な技術的効果は、示される用量が守られる限り、高分子分散剤の量に無関係であることも明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2014年5月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子、b)(i)ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖及び(ii)該ポリアセタール又はポリアセタール/ポリエーテル主鎖に化学的に結合した、金属性、金属酸化物又は金属前駆体ナノ粒子に関する親和性を有するアンカー基を含んでなり、300℃より低い温度で95重量%分解を有する高分子分散剤(PD)、c)場合による分散媒を含んでなる分散系ならびに
焼結助剤(SA)
を含んでなり、SAが式HOOC−Xa−COOHに従うジカルボン酸であり、式中、aは0又は1であり、Xは場合により置換されていることができるC1−C3アルキレン基であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
SAが式HOOC−(CH2)b−COOHに従うジカルボン酸であり、式中、bは0、1、2又は3である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SA対PDの重量比として表わされるSAの濃度が0.6〜1.5である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
PDのポリマー主鎖が式I
【化1】
[式中、mは1〜500の整数であり、
oは0〜340の整数であり、
qは0〜250の整数であり、
pは1〜7の整数であり;
m+o+qは14〜500の整数であり、そして
R
2は水素、メチル又は場合により置換されていることができるアルキル基を示す]
に従う請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
PDのアンカー基が式II、III、IV又はV、
【化2】
[式中、
R
3、R
4、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
12は独立してハロゲン、場合により置換されていることができるチオール、ヒドロキシル、カルボン酸、アルデヒド、エステル、アミド、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、場合により置換されていることができるアルキル、アリール、アラルキル又はアルキレン基を示し;
R
7とR
8は場合により連結して環構造を形成することができ;
R
5、R
6、R
11は独立してハロゲン、場合により置換されていることができるチオール、カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示し;
Xは独立して−N−、−CH−又は−C(CR
13)−を示し、ここでR
13はメチル、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示し、且つここでXは場合によりR
9又はR
10に連結して環構造を形成することができ;
Yは酸素、硫黄又は−NR
14−を示し、ここでR
14はメチル、場合により置換されていることができるアルキル、アリール又はアラルキル基を示す]
に従う請求項
1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を基質上に適用し、そして
該適用された組成物を硬化する
ことにより形成される導電性層又はパターン。
【請求項7】
硬化時間が30分より短く、且つ硬化温度が200℃より低い請求項6に記載の導電性層又はパターンの硬化方法。
【国際調査報告】