(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-505872(P2015-505872A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20150130BHJP
C08F 291/04 20060101ALI20150130BHJP
C08F 38/00 20060101ALI20150130BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F291/04
C08F38/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-545310(P2014-545310)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2012075018
(87)【国際公開番号】WO2013087596
(87)【国際公開日】20130620
(31)【優先権主張番号】11193036.8
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】アヴァタネオ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】サングイネーティ, アルド
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】マルキオンニ, ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J011PA63
4J011PA66
4J011PA90
4J011PC02
4J011PC08
4J026AA26
4J026AA31
4J026AA64
4J026AB19
4J026AC25
4J026BA50
4J026BB01
4J026DB07
4J026FA09
4J026GA07
4J026GA08
4J100AT13P
4J100AT15P
4J100BA02P
4J100BB01P
4J100BB18P
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100BC45P
4J100BC48P
4J100JA43
(57)【要約】
本発明は、式(I)の1,5−エンジイン化合物の、ポリマー系における硬化剤としての使用に関する。詳細には、本発明は、式(I)の硬化剤、及び架橋するのに好適なフッ素化ポリマー、及び少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物を含む硬化性組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP);
(b)少なくとも1種の式(I)の硬化剤;及び
(c)少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC);
を含む硬化性組成物であって、
式(I)において、各Rは、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基;−SiR
13、−(R
12SiO)
bR
1、−PR
12(式中、各R
1は、互いに等しいか又は異なり、水素、直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキルからなる群から独立に選択される)からなる群から独立に選択され、bは少なくとも1の整数であり;A
1及びA
2は、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;−(R
12SiO)
bR
1(式中、R
1及びbは定義された通りである);単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され;A
1及びA
2は、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたアルキル又は芳香族の環式構造に含まれてよい、硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化剤が式(II):
(式中、各Rは、互いに等しいか又は異なり、先に定義された通りであり、Xは、炭素−炭素結合;任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキレン基;二価(ペル)フルオロポリエーテル基;オルガノポリシロキサン基−(R
12SiO)
b−(式中、R
1及びbは先に定義された通りである);−O−基;−S−基;−SO
2−基;−C(O)−基;任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された縮合した芳香族又は複素芳香族構造から選択される二価橋架け基である)の化合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Xが、炭素−炭素結合;任意選択で置換されたフッ素化C1〜C20アルキレン基;二価(ペル)フルオロポリエーテル基;オルガノポリシロキサン基−(R12SiO)b−(式中、R1及びbは、先に定義された通りである)から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
各Rが、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC1〜C8アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC1〜C3オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;−(R12SiO)bR1(式中、b及びR1が先に定義された通りである);単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基からなる群から独立に選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フッ素化芳香族化合物(FAC)が、5〜132個のsp2混成炭素原子又は合計で5〜120個のsp2混成炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を含む少なくとも1つの芳香族部分を含み、前記芳香族部分が前記sp2混成炭素原子に結合した水素原子を持たず、前記芳香族部分の前記sp2混成炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物が、少なくとも1つの芳香族部分を含むポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマー性フッ素化芳香族化合物が下記式:
(式中、R
F1及びR’
F1は、等しいか又は互いに異なり、エーテル結合又はC−C結合のいずれかによりsp
3混成炭素原子に結合しており、任意選択でその遠位末端基でさらなる非芳香族環式部分の他のsp
3混成炭素原子に結合しているフルオロポリオキシアルキレン鎖であり;W
fは、フッ素原子又はC
1〜C
6ペルフルオロ炭素基である)に対応する、請求項8に記載の組成物。
【請求項8】
フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、少なくとも0.01部の少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、少なくとも0.1部の少なくとも1種の式(I)の硬化剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
フッ素化ポリマー(FP)が半結晶性フッ素化ポリマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
フッ素化ポリマー(FP)がフルオロエラストマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
フルオロエラストマー;フルオロエラストマー100部あたり0.5〜25部の少なくとも1種の式(II)の硬化剤;並びにフルオロエラストマー100部あたり0.5〜25部の、式FAC−I、FAC−II、及びFAC−IIIのものから選択される少なくとも1種のポリマー性フッ素化芳香族化合物を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP);少なくとも1種の式(I)の硬化剤、及び少なくとも1種のフッ素化化合物(FAC)を混合することを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物を製造する方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を加熱することを含む、硬化性組成物を硬化する方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物を与えること、前記組成物を付形すること;前記付形した組成物を硬化して物品を形成すること;及び、任意選択で、前記物品を後硬化することを含む、硬化した物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年12月12日に出願された欧州特許出願EP11193036.8号明細書の優先権を主張し、その全内容を引用により全目的のために本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、1,5−エンジイン硬化剤、架橋するのに好適なフッ素化ポリマー、及びフッ素化芳香族化合物を含む硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーの架橋又は硬化は、長年知られている。架橋又は硬化は、一般的にポリマーに強度及び安定性を与える、ポリマー鎖を共有結合的に橋架けする三次元構造をつくる。ポリマー系の架橋は、典型的には、放射線(例えば、電子線照射)により、又は、例えば、ゴムの加硫における硫黄の添加など、好適な硬化剤の添加により実施される。
【0004】
1,5−エンジイン硬化剤を含む硬化性組成物は、国際公開第2011/076652号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS SPA、2011年6月30日)に記載されており、
(a)少なくとも1種のポリマー(P);及び
(b)少なくとも1種の式(I)の硬化剤
を含む硬化性組成物であって、
式中、式(I)中の各Rは、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I);直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基;−SiR
13、−(R
12SiO)
bR
1、−PR
12(式中、各R
1は、互いに等しいか又は異なり、水素、直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキルからなる群から独立に選択され、bは少なくとも1の整数である)からなる群から独立に選択され;且つ、式中、A
1及びA
2は、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;−(R
12SiO)
bR
1(式中、R
1及びbは定義された通りである);単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され;且つ、A
1及びA
2は、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたアルキル又は芳香族の環式構造中に含まれ得る。ポリマー(P)は、水素化ポリマー及びフッ素化ポリマーから選択できる。式(I)の隣接する炭素原子上にあるエチニル基は、熱をかけると二量化して、1,4−ジラジカルを有する芳香環を形成することが知られている。理論には拘束されないが、1,4−ジラジカルが、Warner et al.,Science,268,(1995),pp.814−816に開示されているものなど、バーグマン環化反応により架橋又は硬化プロセスを促進し得ると考えられている、硬化性組成物を開示している。
【0005】
国際公開第2011/076652号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS SPA、2011年6月30日)に開示されている硬化性組成物は、式(I)の硬化剤のポリマー(P)への分散を向上させることができる添加剤をさらに含み得る。ポリマー(P)がフッ素化ポリマーである場合、好適な分散化添加剤は、(ペル)フルオロポリエーテル鎖を含む化合物であって、前記鎖は芳香族ペンダント基及び/又は芳香族末端基のいずれかを含み、前記芳香族基は任意選択でフッ素化されていると記載されている。
【0006】
出願人は、驚くべきことに、特定のフッ素化された芳香族化合物が、フッ素化ポリマー及び先に定義された式(I)の硬化剤を含む硬化性組成物に加えられる場合、組成物の熱誘起性の硬化が起こる温度が低下し得ることを見出した。さらに、得られる硬化した物品の弾性係数は、国際公開第2011/076652号パンフレットに開示された硬化性組成物から得られる硬化した物品の弾性係数よりも一般的に高い。
【0007】
定義
用語「架橋」は、1つのポリマー鎖を別のポリマー鎖に橋架けする共有結合的な化学結合を意味するように本明細書で使用される。
【0008】
用語「架橋する」又は「硬化する」は、2つ以上のポリマー分子を架橋により化学的に結合する過程を意味するように本明細書で使用される。
【0009】
「硬化剤」は、ポリマー及び/又はポリマー組成物に加えられて、架橋又は硬化を促進する物質であると本明細書で定義される。
【0010】
表現「フッ素化」は、完全又は部分的のいずれかでフッ素化された、すなわち水素原子の全部又は一部のみがフッ素原子により置換された化合物(例えば、化合物、ポリマー、モノマーなど)を意味するように本明細書で使用される。好ましくは、用語「フッ素化された」は、水素原子よりも高い比率でフッ素原子を含む化合物を意味する。より好ましくは、用語は、完全に水素原子を含まない、すなわち、水素原子が全てフッ素原子により置換された化合物を意味する。
【0011】
本発明との関連において、「フッ素化ポリマー」、「硬化剤」、及び/又は「フッ素化芳香族化合物」に言及する際の表現「少なくとも1種の」は、1種又は2種以上のポリマー、及び/又は硬化剤、及び/又は芳香族化合物を指すものとする。好都合には、ポリマー、硬化剤、及び/又は芳香族化合物の混合物を、本発明の目的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、基準組成物、実施例1及び4の本発明の組成物、例5の比較組成物の温度の関数としての貯蔵弾性率G’を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明の一目的は、
(a)少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP);
(b)少なくとも1種の式(I)の硬化剤:
及び
(c)少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)
を含む硬化性組成物を提供することである。
【0014】
式(I)中の各Rは、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I);直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基;−SiR
13、−(R
12SiO)
bR
1、−PR
12(式中、各R
1は、互いに等しいか又は異なり、水素、直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキルからなる群から独立に選択され、bは少なくとも1の整数である)からなる群から独立に選択される。R基は、環式構造に含まれることがある。
【0015】
各R基の性質は本発明にとって特に重要ではない。しかし、R基の大きさは、立体障害により、エチニル基の二量化反応に望ましくなく干渉することがある。一般に、熱処理時にエチニル基の反応からの1,4−ジラジカルの形成を妨げない任意のR基を、式(I)又は(II)の化合物に使うことができる。
【0016】
各R基は、好ましくは、水素;ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I);直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
8アルキル、例えば、−CH
3、−C(CH
3)
3、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
3オキシアルキル、例えば、−OCH
3、−OCF
3;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;−(R
12SiO)
bR
1(式中、b及びR
1は先に定義された通りである);単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基から選択できる。好ましくは、R基は、環式構造中に含まれない。
【0017】
芳香族である場合、各R基は、1〜20個の炭素原子、より好ましくは6〜15個の炭素原子、さらにより好ましくは6〜10個の炭素原子を有するだろう。芳香族である場合、Rは、好ましくは非置換又は置換されたフェニル基、例えば、1つ又は複数のフッ素原子、又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
6アルキル若しくはオキシアルキル基、例えば、−CH
3、−CF
3、−OCH
3、−OCF
3により置換されているフェニルである。さらにより好ましくは、芳香族である場合、Rは非置換のフェニル基である。
【0018】
各R基は、(ペル)フルオロポリエーテル鎖でよい。好適な(ペル)フルオロポリエーテル鎖は、式−R
F−O
z−Tにより表すことができる。式中、Tは、フッ素原子、塩素原子、及び任意選択で1つ又は複数の水素又は塩素原子を含むC
1〜C
3(ペル)フルオロアルキル基から選択され;zは、0又は1に等しく;且つ、R
Fは、以下から選択される二価(ペル)フルオロポリエーテル基である:
− −(CF
2CF
2O)
p(CF
2O)
q−(式中、p及びqは、q/p比が0.2から4であるような整数で、pはゼロではない);
− −(CF
2CF(CF
3)O)
r−(CF
2CF
2O)
s−(CFX
0O)
t−(式中、X
0はフッ素原子又は−CF
3であり;r及びsは、t+sが1〜50であり、t/(r+s)比が0.01〜0.05であり、(r+s)がゼロではないような整数である);
− −(CF(CF
3)CF
2O)
u−R’
fO−(CF(CF
3)CF
2O)
u−(式中、R’
fは、C
1〜C
3二官能性ペルフルオロアルキル基であり;uは、少なくとも1の整数である);
− −(CFX
0O)
t−(CF
2CF(CF
3)O)
r−R’
fO−(CF
2CF(CF
3)O)
r−(CFX
0O)
t−;(式中、R’
f、r、t、及びX
0は上記の通りである);
− −(CF
2(CF
2)
xCF
2O)
v−(式中、vは、少なくとも1の整数であり、xは、1又は2に等しい整数である);
− −(CF
2CF
2CH
2O)
w−R’
fO−(CH
2CF
2CF
2O)
w−(式中、R’
fは上記の通りであり;wは、少なくとも1の整数である)。
【0019】
典型的には、上記式中のp、q、r、s、t、u、v、w、及びxは、(ペル)フルオロポリエーテル基R
Fの数平均分子量が、500〜10,000、好ましくは800〜5000であるように選択される。
【0020】
式(I)において、A
1及びA
2は、互いに等しいか又は異なり、水素;ハロゲン;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20アルキル、好ましくはC
1〜C
10アルキル;直鎖又は分岐鎖の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたC
1〜C
20オキシアルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;−(R
12SiO)
bR
1(式中、R
1及びbは定義された通りである);単環式又は多環式の、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された芳香族又は複素芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され、且つA
1及びA
2は、1,5−エンジイン部分を任意選択で含んでよい。
【0021】
A
1及びA
2は、以下のような、任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化されたアルキル又は芳香族の環式構造に含まれてよい。
【0022】
A
1及びA
2が、アルキル又は、好ましくは芳香族環式構造の一部である場合、前記構造は、炭素原子のいずれにおいても置換されていてよい。
【0023】
A
1及びA
2は、互いに等しいか又は異なり、好ましくは、水素、直鎖又は分岐鎖のフッ素化されたC
1〜C
20アルキル、好ましくはC
1〜C
10アルキル;(ペル)フルオロポリエーテル鎖;−(R
12SiO)
bR
1(式中、b及びR
1は定義された通りである);非置換又は置換されたフェニルからなる群から選択される。より好ましくは、A
1とA
2の少なくとも一方は、先に定義された(ペル)フルオロポリエーテル鎖又は−(R
12SiO)
bR
1である。
【0024】
或いは、A
1及びA
2は、芳香族環式構造、好ましくは、6〜10個の炭素原子を有する芳香族環式構造、より好ましくは、非置換又は置換されたフェニル環の一部である。
【0025】
式(I)の化合物の代表例には、
があるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の一実施形態において、硬化剤は、式(II):
(式中、式(II)中の各Rは、互いに等しいか又は異なり、先に定義された通りである)により表される式(I)の化合物から選択される。
【0027】
Xは、炭素−炭素結合;任意選択で置換され(例えば、−C(CH
3)
2−)且つ/又は任意選択でフッ素化された(例えば、−(CF
2)
n−、−C(CF
3)
2−)C
1〜C
20アルキレン基;先に定義された通りの二価(ペル)フルオロポリエーテル基R
F;オルガノポリシロキサン基−(R
12SiO)
b−(式中、R
1及びbは先に定義された通りである);−O−基;−S−基;−SO
2−基;−C(O)−基;任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された、縮合した芳香族又は複素芳香族構造から選択される二価の橋架け基である。
【0028】
二価橋架け基Xは、好ましくは、炭素−炭素結合;−C(CH
3)
2−などの任意選択で置換されたC
1〜C
20アルキレン基;任意選択で置換されたC
1〜C
20フッ素化アルキレン基;二価(ペル)フルオロポリエーテル基R
F;オルガノポリシロキサン基−(R
12SiO)
b−;任意選択で置換され且つ/又は任意選択でフッ素化された縮合した芳香族又は複素芳香族構造から選択してよい。より好ましくは、Xは、任意選択で置換されたC
1〜C
20フッ素化アルキレン基又は先に定義された二価(ペル)フルオロポリエーテル基R
Fから選択される。
【0029】
好適なC
1〜C
20フッ素化アルキレン基は、例えば、−C(CF
3)
2−又は式−(CF
2)
n−のものであり、式中、nは、1〜20、例えば、2、3、4、6、8、10、12、14、16、18、20の整数である。
【0030】
式(II)の化合物の代表例には、
があるが、これらに限定されない。
【0031】
式(I)又は(II)の化合物は、Smith,D.W.,Babb,D.A.;J.Am Chem.Soc.120,n.35,(1998)9078−9079又はBasak,A.,Mandal,S.,Bag,S.S.;Chemical Rev.103,(2003)4077−4094に記載の方法など、公知の方法により調製できる。
【0032】
硬化組成物中の式(I)の硬化剤の量は、好都合には、フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも1重量部である。
【0033】
硬化剤の量は、好都合には、フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、最大で25、好ましくは最大で20、より好ましくは最大で15重量部である。
【0034】
好ましい実施形態において、硬化剤は、式II−1の化合物である。
【0035】
本発明の硬化性組成物のフッ素化ポリマー(FP)は、架橋するのに好適な、好ましくはラジカル開始機構で架橋するのに好適な、どのようなフッ素ポリマーでもよい。
【0036】
典型的には、ラジカル経路により架橋され得るポリマーは、ポリマー鎖に組み込まれた官能性モノマー由来の繰り返し単位中に存在する好適な官能基により与えられるか、又は例えば、好適な連鎖移動剤により形成される反応性の末端基により与えられる(例えば、ハロゲン含有硬化部位)いずれかの硬化部位をその骨格中に含む。フッ素化ポリマー(FP)は典型的には、1,5−エンジイン部分を全く含まない。
【0037】
好適なフッ素化ポリマーは、少なくとも1種のフッ素化モノマーから誘導される繰り返し単位を含むものである。好適なフッ素化モノマーの非限定的な例は下記である:
− C
2〜C
8フルオロ−及び/又はペルフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン;
− C
2〜C
8水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びトリフルオロエチレン;
− 式CH
2=CH−R
f0の(ペル)フルオロアルキルエチレン(式中、R
f0は、1つ又は複数のエーテル基を有するC
1〜C
6(ペル)フルオロアルキル又はC
1〜C
6(ペル)フルオロオキシアルキルである);
− クロロ−及び/又はブロモ−及び/又はヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン;
− 式CF
2=CFOR
f1のフルオロアルキルビニルエーテル(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−又はペルフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である);
− 式CH
2=CFOR
f1のヒドロフルオロアルキルビニルエーテル(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−又はペルフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である);
− 式CF
2=CFOX
1のフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル(式中、X
1は、1つ又は複数のエーテル基を有するC
1〜C
12オキシアルキル又はC
1〜C
12(ペル)フルオロオキシアルキル、例えば、ペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである);
− 式CF
2=CFOCF
2OR
f2のフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル(式中、R
f2は、C
1〜C
6フルオロ−若しくはペルフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、又は1つ又は複数のエーテル基を有するC
1〜C
6(ペル)フルオロオキシアルキル、例えば、−C
2F
5−O−CF
3などである);
− 式CF
2=CFOY
0の官能性フルオロ−アルキルビニルエーテル(式中、Y
0は、C
1〜C
12アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル、又はC
1〜C
12オキシアルキル、又はC
1〜C
12(ペル)フルオロオキシアルキルであり、前記Y
0基は1つ又は複数のエーテル基を有し、Y
0は、カルボン酸若しくはスルホン酸基を、その酸、酸ハライド、又は塩の形態で含む);
− 下記式のフルオロジオキソール:
(式中、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6は、等しいか又は互いに異なり、独立に、フッ素原子、任意選択で1つ又は複数の酸素原子を含むC
1〜C
6フルオロ−又はペル(ハロ)フルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である)。
【0038】
フッ素化モノマーの他に、フッ素化ポリマー(FP)は、エチレン及びプロピレンなどの水素化モノマーを含んでよい。
【0039】
フッ素化ポリマーが水素化モノマーから誘導された繰り返し単位を含む場合、フッ素化ポリマー中のフッ素化モノマーから誘導された繰り返し単位の量は、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも97重量%であろう。
【0040】
第一の実施形態において、フッ素化ポリマー(FP)は、フルオロエラストマーである。用語「フルオロエラストマー」は、ASTM D 3418−08に従って測定される、5J/g未満、好ましくは4J/g未満、より好ましくは1J/g未満の融解熱により特徴づけられる非晶質ポリマーを意味するように本明細書で使用される。典型的には、フルオロエラストマーは、室温より低い、ほとんどの場合さらには0℃より低いガラス転移温度(Tg)を有する。
【0041】
好適なフルオロエラストマーは、好都合には、フッ化ビニリデンから、及び/又はテトラフルオロエチレンから誘導された繰り返し単位を含む。好ましくは、本発明の硬化性組成物に使用されるフルオロエラストマーは、フッ化ビニリデンから、及び/又はテトラフルオロエチレンから、及び上述の少なくとも1種の他のフッ素化モノマーから誘導される繰り返し単位からなる。特に、好適なフッ素化モノマーは、下記から選択される:
− 式CF
2=CFOR
f1のフルオロアルキルビニルエーテル(式中、R
f1は、C
1〜C
6(ペル)フルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ブロモトリフルオロメチル、ペンタフルオロプロピル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルである);
− 式CF
2=CFOX
0のフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル(式中、X
0は、1つ又は複数のエーテル基を含むC
1〜C
12ペルフルオロオキシアルキル、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである);特に、下記一般式を有する化合物:
CFX
2=CX
2OCF
2OR’’
f
(式中、R’’
fは、C
2〜C
6直鎖又は分岐鎖の(ペル)フルオロアルキル、C
5〜C
6環式(ペル)フルオロアルキル、1〜3個の酸素原子を含むC
2〜C
6直鎖又は分岐鎖の(ペル)フルオロオキシアルキルから選択され、X
2は、水素又はフッ素である)好ましくは下記から選択される:CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
3。
【0042】
フルオロエラストマーは、任意選択で、水素原子、塩素及び/又は臭素及び/又はヨウ素を含むC
3〜C
8フルオロオレフィンから誘導された繰り返し単位、C
2〜C
8非フッ素化オレフィン、好ましくはエチレン及び/又はプロピレンから誘導された繰り返し単位を任意選択で含み得る。
【0043】
好適なフルオロエラストマーの注目すべき例は、例えば、フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロペンと、テトラフルオロエチレンと、ペルフルオロアルキルビニルエーテルのコポリマー;フッ化ビニリデンと、ペルフルオロアルキルビニルエーテルと、任意選択でテトラフルオロエチレンのコポリマー;フッ化ビニリデンと、C
2〜C
8非フッ素化オレフィンと、ヘキサフルオロプロピレン及び/又はペルフルオロアルキルビニルエーテルと、テトラフルオロエチレンのコポリマー;フッ化ビニリデンと、(ペル)フルオロメトキシビニルエーテルと、任意選択でペルフルオロアルキルビニルエーテルと、テトラフルオロエチレンを含むコポリマー;テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルのコポリマーである。
【0044】
第二の実施形態において、フッ素化ポリマー(FP)は、半結晶性フッ素化ポリマーである。用語「半結晶性フッ素化ポリマー」は、ASTM D 3418−08に従って測定される少なくとも5J/gの融解熱により特徴づけられるフッ素化ポリマーを意味するように本明細書で使用される。好適な半結晶性フッ素化ポリマーは、好都合には、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、先に議論された式CF
2=CFOR
f1のフルオロアルキルビニルエーテルから誘導される繰り返し単位を含む。
【0045】
好適な半結晶性コポリマーの注目すべき例は、例えば、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー、フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとクロロトリフルオロエチレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンのターポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)である。
【0046】
フッ素化ポリマーは、ビス−オレフィンから誘導された繰り返し単位を任意選択で含んでよい。好適なビス−オレフィンの非限定的な例は、以下の式のものから選択される:
R
1R
2C=CH−(CF
2)
j−CH=CR
3R
4(式中、jは、2〜10の、好ましくは4〜8の整数であり、R
1、R
2、R
3、R
4は、等しいか又は互いに異なり、水素、フッ素、又はC
1〜C
5アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル基である);
D
2C=CB−O−E−O−CB=CD
2(式中、Dのそれぞれは、等しいか又は互いに異なり、水素、フッ素、塩素から独立に選択され;Bのそれぞれは、等しいか又は互いに異なり、水素、フッ素、塩素、及び−OR
Bから独立に選択され(式中、R
Bは、部分的、実質的、又は完全にフッ素化又は塩素化されていてよい分岐鎖又は直鎖のアルキル基である);Eは、エーテル結合が挿入されていてよい、任意選択でフッ素化され2〜10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくはEは、mが3〜5の整数である−(CF
2)
m−基であり;好ましいビス−オレフィンはF
2C=CF−O−(CF
2)
5−O−CF=CF
2である);
R
6R
7C=CR
5−E−O−CB=CD
2(式中、E、D、及びBは、先の定義と同じ意味を有し;R
5、R
6、R
7は、等しいか又は互いに異なり、水素、フッ素、又はC
1〜C
5アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル基である)。
【0047】
ビス−オレフィンが利用される場合、生じたポリマーは、典型的には、ポリマー中の単位の総量に対して、ビス−オレフィンから誘導された単位を0.01モル%〜5モル%含むだろう。
【0048】
本発明の硬化性組成物に好適なフッ素化ポリマーは、一般的には、フッ素化ポリマーの硬化を可能にする硬化部位を骨格中に含む。
【0049】
フッ素化ポリマーは、硬化部位モノマーから誘導された繰り返し単位を含んでよい。硬化部位モノマーは、部分的でも完全にでもフッ素化されていてよい。好適な硬化部位モノマーは、例えば、末端のシアノ若しくはペルフルオロフェニル基を含むペルフルオロ(ビニルエーテル)モノマー又は、好ましくは、フッ素以外のハロゲンを含むフッ素化モノマーである。そのようなハロゲンは、フッ素化ポリマー鎖に沿って、且つ/又は末端位置に存在し得る。典型的には、ハロゲンは、臭素又はヨウ素である。フッ素化ポリマー鎖に沿った位置にハロゲンを導入するには共重合が好ましい。この経路において、先に議論されたフッ素化モノマーは、好適なフッ素化硬化部位モノマーと組み合わされる。好適なハロ−フルオロオレフィンの例には、クロロトリフルオロエチレン、ブロモジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1、1−ヨード−2,2−ジフルオロエチレン、ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1、4−ヨード−ペルフルオロブテン−1などが挙げられる。
【0050】
ブロモ−又はヨード−フルオロビニルエーテルの例には、BrCF
2OCF=CF
2、BrCF
2CF
2OCF=CF
2、BrCF
2CF
2CF
2OCF=CF
2、CF
3CF(Br)CF
2OCF=CF
2、ICF
2OCF=CF
2、ICF
2CF
2OCF=CF
2、ICF
2CF
2CFOCF=CF
2、CF
3CFICF
2OCF=CF
2などがある。さらに、非フッ素化ハロ−オレフィン、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、及び4−ブロモ−1−ブテンを使用できる。フッ素化ポリマー中の硬化部位モノマーの量は、典型的には、0.05〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0051】
硬化部位は、フッ素化ポリマー鎖の末端位置にも起こり得る。末端位置に硬化部位を導入するには、連鎖移動剤又は開始剤が使用される。一般的に、好適な連鎖移動剤は、ポリマー調製の間に反応媒体に導入されるか、又は好適な開始剤から誘導される。
【0052】
有用な連鎖移動剤の例には式R
f7Z
dを有するものがあり、式中、R
f7は、過フッ素化されていてもよい置換又は非置換のC
1〜C
12フルオロアルキル基であり、Zは、Cl、Br、又はIであり、dは1又は2である。具体例には、CF
2Br
2、Br(CF
2)
2Br、Br(CF
2)
4Br、CF
2(Cl)Br、CF
3CF(Br)CF
2Br、CF
2−I
2、I(CF
2)
6I、I(CF
2)
4I、CF
2Cl
2、CF
3CFICF
2Iがある。他の好適な連鎖移動剤は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のヨウ化物及び/又は臭化物である。末端位置中の硬化部位成分の量は、一般的に、0.05〜5モル%、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0053】
フッ素化ポリマー(FP)及び少なくとも1種の式(I)の硬化剤の他に、本発明の硬化性組成物は、少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)をさらに含む。
【0054】
用語「フッ素化芳香族化合物」は、5〜132個のsp
2混成炭素原子又は合計で5〜120個のsp
2混成炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を含む少なくとも1つの芳香族部分を含むフッ素化化合物であって、前記芳香族部分がsp
2混成炭素原子に結合した水素原子を持たず、芳香族部分のsp
2混成炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含むフッ素化化合物を示すように本明細書で使用される。
【0055】
sp
2混成炭素原子に結合したフッ素原子の数は、芳香族部分中のsp
2混成炭素原子の数までになり得る。好ましくは、芳香族部分は、芳香族部分中のsp
2炭素原子に結合した少なくとも2つのフッ素原子、より好ましくは少なくとも3つのフッ素原子を含む。
【0056】
誤解を避けるために記すと、表現「芳香族部分」は、π非局在化電子の数がヒュッケル則を満たす(π電子の数=(4n+2)、nは整数)非局在化共役π系を有する環式構造を意味するように本明細書で使用される。
【0057】
フッ素化芳香族化合物中の少なくとも1つの芳香族部分は、典型的には、5〜60個のsp
2混成炭素原子、又は合計で5〜60個のsp
2混成炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を含む。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つの芳香族部分は、6〜60個のsp
2混成炭素原子、より好ましくは6〜48個のsp
2混成炭素原子、さらにより好ましくは6〜24個のsp
2混成炭素原子を含む。
【0059】
芳香族部分の非限定的な例には、ピロール、チオフェン、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、ナフタレン(naphtalene)、アントラセン、フェナントレン(phenantrene)、フルオレン、ピレン、フェナントロリン、トリフェニレン、キノリン、ベンゾイミダゾールがある。
【0060】
芳香族部分は置換されていてよい。好適な置換基は電子吸引性基である。電子吸引性基の注目すべき例は、ハロゲン(Cl、Br、I);式C
aF
(2a−a’+1)Z
a’のフルオロハロアルキル(式中、Zは、Cl、Br、Iから選択されるハロゲンであり;aは、1〜12の整数であり、a’はゼロ又は(2a+1)以下であるような整数である);ペルフルオロアリール(例えば、ペンタフルオロフェニル);アミノ;ヒドロキシル;ニトロ;シアノ;カルボキシ;エステル;Yが、F、Cl、Br、Iから選択される−SO
2Yである。
【0061】
フッ素化芳香族化合物(FAC)は、1つ又は2つ以上の芳香族部分を含んでよい。フッ素化芳香族化合物が2つ以上の芳香族部分を含む場合、前記芳香族部分は等しくても、互いに異なっていてもよい。
【0062】
フッ素化芳香族化合物(FAC)は、少なくとも1つの芳香族部分のsp
2混成炭素原子に結合していない水素原子ならば、水素原子を含んでよい。好ましくは、フッ素化芳香族化合物(FAC)は完全にフッ素化されている。
【0063】
少なくとも1種の芳香族部分が、6つのsp
2混成炭素原子を有する部分であるベンゼンであるフッ素化芳香族化合物は、本発明の組成物の調製に特に好都合であることが見出された。
【0064】
少なくとも1つの芳香族部分がベンゼンである場合、それは、好ましくは、ベンゼン環中のsp
2混成炭素原子に結合した3つのフッ素原子、より好ましくは4つのフッ素原子、さらにより好ましくは5つのフッ素原子を含む。
【0065】
ベンゼンを芳香族部分として含む好適なフッ素化芳香族化合物の非限定的な例は、ペルフルオロベンゼン;ペルフルオロビフェニル;ペルフルオロトルエン;ペルフルオロ−p−キンクエフェニル;ペルフルオロ−p−セキシフェニル;1,3,5(ペンタフルオロフェニル)−2,4,6フルオロ−ベンゼンである。
【0066】
ベンゼンを芳香族部分として含むフッ素化芳香族化合物の中で、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロビフェニル、又はペルフルオロトルエン、特にペルフルオロビフェニルは、本発明の組成物の調製に好都合であることが見出された。
【0067】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物はポリマーでよく、前記ポリマーは少なくとも1つの芳香族部分を含む。
【0068】
ポリマーである好適なポリマー性フッ素化芳香族化合物の非限定的な例は、例えば、欧州特許出願公開第2100909A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA、2009年9月16日)に記載され、以下の式FAC−IからFAC−IIIに対応するものである:
(式中、R
F1及びR’
F1は、等しいか又は互いに異なり、エーテル結合又はC−C結合によりsp
3混成炭素原子に結合しており、任意選択でその遠位末端基でさらなる非芳香族環式部分の他のsp
3混成炭素原子に結合しているフルオロポリオキシアルキレン鎖であり;W
fは、フッ素原子又はC
1〜C
6ペルフルオロ炭素基、好ましくはフッ素原子である)。
【0069】
フルオロポリオキシアルキレン鎖R
F1及びR’
F1は、好ましくは、式:−(O)
w0−(CFG
1O)
g1(CFG
2CFG
3O)
g2(CF
2CF
2CF
2O)
g3(CF
2CF
2CF
2CF
2O)
g4−Gのものから選択される(式中、w0は、0又は1であり;G
1、G
2、G
3は、等しいか又は互いに異なり、独立に−F、−CF
3であり;g1、g2、g3、及びg4は、等しいか又は互いに異なり、数平均分子量が280〜200000の範囲であるように独立に0以上の整数である;g1、g2、g3、及びg4のうち少なくとも2つがゼロでない場合、異なる繰り返し単位は一般的に鎖に沿って統計的に分布しており;−Gは、−CF
3、−CF
2−CF
3、−CF
2Cl、−CF
2CF
2Cl、−COF、−CF
2、−COF、−CF
2OCOFから選択される基であるか、又は直接若しくはエーテル結合によりフッ素化非芳香族環式部分の他のsp
3混成炭素原子に結合している基である)。
【0070】
典型的には、本発明の硬化性組成物中のフッ素化芳香族化合物の量は、フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.5、さらにより好ましくは少なくとも1部である。硬化性組成物中のフッ素化芳香族化合物(FAC)の量は、一般的に、フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、最大で50、好ましくは最大で35、より好ましくは最大で25、さらにより好ましくは最大で20部である。
【0071】
より多量のフッ素化芳香族化合物を本発明の組成物に加えることができるが、硬化性組成物の硬化効率の向上という点で追加の利点を全く与えないだろう。
【0072】
本発明の組成物中のフッ素化芳香族化合物が、先に定義された式FAC−I、FAC−II、及びFAC−IIIのものから選択されるポリマー性フッ素化芳香族化合物からなる群から選択される場合、好適な量は、フッ素化ポリマー(FP)100部あたり、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも1部であることが見出された。組成物は、一般的に、フッ素化ポリマー100部あたり、最大で35、好ましくは最大で25、より好ましくは最大で20部の式FAC−I、FAC−II、又はFAC−IIIのポリマー性フッ素化芳香族化合物を含む。組成物中の式FAC−I、FAC−II、又はFAC−IIIのフッ素化芳香族化合物と式(I)の硬化剤の重量比は、好都合には、1:2〜4:1、好ましくは1:1.5〜2.5:1である。式FAC−I、FAC−II、又はFAC−IIIのフッ素化芳香族化合物/式(II)の硬化剤の比が1:1〜2:1で満足できる結果が得られた。
【0073】
一実施形態において、硬化性組成物は、
− フッ素化ポリマー(FP);
− フッ素化ポリマー(FP)100部あたり0.1〜25部の少なくとも1種の式(I)の硬化剤;及び
− フッ素化ポリマー(FP)100部あたり0.5〜25部の少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)、好ましくは、式FAC−I、FAC−II、又はFAC−IIIのフッ素化芳香族化合物
を含む。
【0074】
前記実施形態の一態様において、フッ素化ポリマーはフルオロエラストマーである。
【0075】
前記実施形態の好ましい態様において、硬化性組成物は、
− フルオロエラストマー;
− フルオロエラストマー100部あたり0.5〜25部の少なくとも1種の式(II)の硬化剤;並びに
− フルオロエラストマー100部あたり0.5〜25部の、式FAC−I、FAC−II、及びFAC−IIIのものから選択される少なくとも1種のポリマー性フッ素化芳香族化合物
を含む。
【0076】
式(II)の硬化剤は、好ましくは、先に定義された式II−1の化合物である。
【0077】
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP)、少なくとも1種の式(I)又は(II)の硬化剤、及び少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)に加え、補強充填剤、増粘剤、顔料、潤滑剤、酸化防止剤、安定剤、処理助剤などの当分野に公知である追加の成分を含んでよい。
【0078】
本発明の硬化性組成物は、式(I)又は(II)の硬化剤中のエチニル基の二量化反応を促進する触媒を含んでよい。好適な触媒は、後期遷移金属及び後期遷移金属化合物から、好ましくは、Cu、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh金属及びこれらの化合物から選択できる。金属は、例えば、カーボンブラック、グラファイトなどの担体に任意選択で担持されていてよい。触媒の量は、一般的に、硬化性組成物の硬化剤の重量に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%の金属又は金属化合物である。
【0079】
本発明の他の目的は、
(a)少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP);
(b)少なくとも1種の式(I)の硬化剤;及び
(c)少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)
を混合することを含む、硬化性組成物の製造方法である。
【0080】
混合は、ローラータイプのゴム用ロール機、バンバリーミキサー、二軸押出機を含む、ポリマー組成物の調製に有用であると知られている任意の混合装置により実施できる。混合は、フッ素化ポリマー(FP)、硬化剤、及びフッ素化芳香族化合物(FAC)を適切な溶媒に溶解させ、任意選択でそれに続いて沈殿及び/又は乾燥させることにより溶解状態でも達成できる。混合プロセス中の混合物の温度は、典型的には、組成物の硬化温度より低く保たれる。或いは、混合プロセス中の温度は、いわゆる反応混合プロセスにおける硬化プロセスを開始するようなものでよい。
【0081】
本発明のさらなる目的は、少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP)、少なくとも1種の式(I)の硬化剤、及び少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)を含む硬化性組成物から硬化した物品を製造する方法である。前記方法は、典型的には、少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP)、少なくとも1種の式(I)の硬化剤、及び少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)を上述のとおり混合して硬化性組成物を調製すること、並びに前記組成物を硬化することを含む。一般的に、方法は、硬化前に組成物を付形する追加の工程を含む。
【0082】
硬化性組成物は、典型的には、例えば、押出により(例えば、フィルム、チューブ、又はホースの形状に)、成形により(例えば、シート又はO−リングの形態に)、又は溶液からのキャスティングにより(例えば、フィルム又はコーティングの形態に)加工及び付形される。次いで、付形された物品は加熱されてポリマー組成物を硬化させ、硬化した物品が形成される。
【0083】
そのため、本発明の他の目的は、
− 少なくとも1種のフッ素化ポリマー(FP);
− 少なくとも1種の式(I)の硬化剤;及び
− 少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)
を含む組成物を加熱することを含む、硬化性組成物を硬化する方法である。
【0084】
硬化は、好都合には、本発明の硬化性組成物を、硬化剤中のエチニル部分の二量化の温度より高温に加熱することにより実施できる。当業者は、特定の硬化剤の硬化温度が、式(I)及び(II)中の置換基R及びA
1及びA
2の性質及び位置並びにフッ素化ポリマー(FP)の性質に依存することがわかるだろう。
【0085】
硬化性組成物の成形及びプレス硬化は、通常、所望の時間で組成物を硬化するのに充分な温度で実施される。
【0086】
驚くべきことに、硬化性組成物中に少なくとも1種のフッ素化芳香族化合物(FAC)が存在すると、フッ素化芳香族化合物(FAC)を全く含まない組成物に比べて低温で硬化が起こるようにできる。好都合には、硬化は、50℃〜300℃の温度、より典型的には80℃〜280℃の温度で起り得る。
【0087】
加熱は、1分〜48時間、典型的には5分〜60分の期間加えることができる。
【0088】
好適な加熱及び硬化手段を備えた従来のプレス、金型、押出機などを使用して、硬化したポリマー物品を得ることができる。
【0089】
最大の耐熱性及び寸法安定性が求められる場合、硬化プロセスは、好都合には、硬化したポリマー物品が、炉、例えば熱風循環炉中で、約1〜48時間の追加の期間、200〜300℃の温度で加熱される後硬化操作を含み得る。
【0090】
本発明のさらなる目的は、本発明の硬化性組成物の硬化により得られる硬化した物品である。硬化した物品は、硬化剤中のエチニル部分の二量化から誘導される架橋を含む。架橋は、典型的には、フッ素化ポリマー(FP)に由来するポリマー鎖の間に三次元ネットワークを形成する。
【0091】
硬化性組成物の文脈内で先に定義された定義及び選択は、硬化性組成物を製造する方法、硬化した物品を製造する方法、硬化性組成物を硬化する方法、並びに前記組成物及び方法から得られる硬化した物品に適用される。
【0092】
本発明は、ここで、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、実施例の目的は単に説明的なものであり、本発明の範囲を限定しない。
【0093】
本明細書に引用により組み込まれた特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にする程度に本明細書と矛盾する場合、本明細書が優先するものとする。
【実施例】
【0094】
原材料
硬化剤:以下でBODAと称する式(II−1)の硬化剤は、Smith,D.W.,Babb,D.A.;J.Am Chem.Soc.120,n.35,(1998)9078−9079に記載の一般的な手順に従って調製した。
【0095】
フッ素化ポリマー(FP):TECNOFLON(登録商標)PFR06HCは、末端位置にヨウ素硬化部位を有する市販の直鎖テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)フルオロエラストマーであり、Solvay Solexis SpAから市販されている。
【0096】
フッ素化芳香族化合物(FAC):以下でPFPE−FACと称する、ポリマー性フッ素化芳香族化合物は、欧州特許出願公開第2100909A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA、2009年9月16日)の実施例3に従って調製した。
【0097】
特性化
貯蔵弾性率の決定(ねじり振り子)
硬化した物品の貯蔵弾性率(G’)の決定(ねじり振り子)は、ISO 6721−10法に従って、ARESレオメーターをねじれ矩形モード(ISO6721−7)で使用し、1.5mm厚さのフィルムから切り出した矩形バー(幅10mm、長さ45mm)を使用して実施した。30〜300℃への2℃/分の加熱勾配(heating ramp)を適用した。振動周波数は1Hzであった。
【0098】
硬化評価の一般的手順(パラレルプレートジオメトリー)
硬化性組成物の硬化効率は、非等温試験を利用して試験した。25mm円板を、ARESレオメーター中で2つの平行な板の間に配置した。円板を150℃に加熱し、5分間平衡化した。次いで、1℃/分の加熱勾配を適用し、貯蔵弾性率(G’)を、1ラジアン/秒の周波数で測定した。300℃の温度に達した後で試験を終わりにした。架橋の形成は、硬化剤を含まない基準試料に対する硬化剤を含む組成物の300℃での貯蔵弾性率の比率から評価した。
【0099】
実施例1〜4及び比較例5〜6
実施例1:100グラムのTECNOFLON(登録商標)PFR06HC、3.0グラムのBODA(ポリマー100部あたり3.0重量部、phr)及び3.0グラムのフッ素化芳香族化合物PFPE−FAC(3.0phr)を、撹拌しながら、40℃で2Kgのヘキサフルオロベンゼンに溶解させた。いったん完全に溶解した後、窒素気流下で12時間120℃で溶液を加熱することにより、溶媒を蒸発させた。均質なポリマー材料が得られた。次いで、混合物を、80℃での圧縮成形により、厚さが約1.5mmのフィルム形状に形成した。フィルムから円板を切り出し、先に報告した一般的硬化手順に従って試験した。
【0100】
実施例2:3.0グラムのBODA(3.0phr)及び6.0グラムのPFPE−FAC(6.0phr)を使用して、実施例1と同じ手順を繰り返した。
【0101】
実施例3:3.0グラムのBODA(3.0phr)及び1.5グラムのPFPE−FAC(1.5phr)を使用して、実施例1と同じ手順を繰り返した。
【0102】
実施例4:6.0グラムのBODA(6.0phr)及び6.0グラムのPFPE−FAC(6.0phr)を使用して、実施例1と同じ手順を繰り返した。
【0103】
比較例5〜6:TECNOFLON(登録商標)PFR06HC中に3グラム(3phr)及び6g(6phr)のPFPE−FACを含む組成物(それぞれ比較例5及び6)を、実施例1の手順に従って調製し試験した。
【0104】
基準:同じフッ素化ポリマーTECNOFLON(登録商標)PFR06HC及びBODA(3phr)を含む基準組成物を実施例1に記載の手順に従って調製し試験した。
【0105】
基準組成物、実施例1及び4の本発明の組成物、並びに例5の比較組成物の温度の関数としての貯蔵弾性率G’を、
図1に報告する。実施例1〜4、比較例5〜6、及び基準組成物の硬化の開始温度の値を表1に報告する。この温度は、貯蔵弾性率の微分dG’(T)/dTがゼロより大きい、より低い温度として決定する。この値は、
図1の曲線の底に対応する温度として特定できる。
【0106】
【0107】
本発明の組成物の硬化が起こる温度は、好都合には、基準組成物の硬化が始まる温度より低い。比較例5及び6は、硬化温度の改善をフッ素化芳香族化合物の存在に帰することはできず、それが意外にも硬化剤とフッ素化芳香族化合物の組み合わせに由来することを示す。
【国際調査報告】