特表2015-506210(P2015-506210A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506210(P2015-506210A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(54)【発明の名称】口腔インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20150203BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-550642(P2014-550642)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2012005122
(87)【国際公開番号】WO2013102474
(87)【国際公開日】20130711
(31)【優先権主張番号】102012000136.3
(32)【優先日】2012年1月6日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】399011900
【氏名又は名称】ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ヴォルデゲルギス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン バウアー
【テーマコード(参考)】
4C059
【Fターム(参考)】
4C059AA04
(57)【要約】
本発明は、インプラントアダプタ(4)と上部構造体(3)とを有する口腔インプラントに関する。該口腔インプラントにおいて、前記インプラントアダプタ(4)は、歯冠側を少なくとも部分的に湾曲されており、前記上部構造体(3)は、根尖側を少なくとも部分的に湾曲されており、前記上部構造体(3)の根尖側の湾曲部は凸状であり且つ前記インプラントアダプタ(4)の歯冠側の湾曲部は凹状であるか、又は前記上部構造体(3)の根尖側の湾曲部は凹状であり且つ前記インプラントアダプタ(4)の歯冠側の湾曲部は凸状であり、凹状の湾曲は、凸状の湾曲よりも大きくなっており、これにより、口腔インプラントの製作時に、前記上部構造体(3)は、カッティングエッジ(5)を介して前記インプラントアダプタ(4)に結合されるようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントアダプタ(4)と上部構造体(3)とを有する口腔インプラントにおいて、前記インプラントアダプタ(4)は、歯冠側を少なくとも部分的に湾曲されており、前記上部構造体(3)は、根尖側を少なくとも部分的に湾曲されており、前記上部構造体(3)の根尖側の湾曲部は凸状であり且つ前記インプラントアダプタ(4)の歯冠側の湾曲部は凹状であるか、又は前記上部構造体(3)の根尖側の湾曲部は凹状であり且つ前記インプラントアダプタ(4)の歯冠側の湾曲部は凸状であり、凹状の湾曲は、凸状の湾曲よりも大きくなっており、これにより、口腔インプラントの製作時に、前記上部構造体(3)は、カッティングエッジ(5)を介して前記インプラントアダプタ(4)に結合されるようになっていることを特徴とする、口腔インプラント。
【請求項2】
前記凸状の湾曲部は、第1の半径R1を備えて凸状に湾曲されており、前記凹状の湾曲部は、第2の半径R2を備えて凹状に湾曲されており、前記第1の半径R1は、前記第2の半径R2よりも大きい、請求項1記載の口腔インプラント。
【請求項3】
前記凸状の湾曲部は、前記第1の半径R1を備えた凸状の球面であり、前記凹状の湾曲部は、前記第2の半径R2を備えた凹状の球面である、請求項1又は2記載の口腔インプラント。
【請求項4】
前記半径R1及びR2は、1mm〜500mmであり、好適には1.5mm〜300mm、特に好適には5mm〜100mmである、請求項2又は3のいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項5】
前記半径R1:R2の比率は2:1未満であり、好適には20:19〜2:1の範囲内であり、特に好適には10:9〜4:3の範囲内であり、極めて特に好適には前記半径R1:R2の比率は7:6である、請求項2、3又は4のいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項6】
前記湾曲された表面は、それぞれ異なる直径を有しており、これにより、製作された口腔インプラントにおいて、より小さな直径を有する表面の外縁部がカッティングエッジ(5)として、より大きな直径を有する表面に食い込むようになっており、好適には、凹状に湾曲された表面の外縁部が、凸状の表面の外縁部よりも小さな直径を有しており、凹状に湾曲された表面の外縁部が、凸状の表面上にカッティングエッジ(5)を形成している、請求項1から5までのいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項7】
凸状の歯冠側の表面を備えた前記インプラントアダプタ(4)は、前記上部構造体(3)よりも軟らかい材料から成っているか、又は凸状の根尖側の表面を備えた前記上部構造体(3)は、前記インプラントアダプタ(4)よりも軟らかい材料から成っている、請求項1から6までのいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項8】
前記インプラントアダプタ(4)及び/又は前記上部構造体(3)は、コバルト・クロム合金、チタン、チタン合金及び/又はセラミックから成っており、特に酸化ジルコニウム−セラミックから成っている、請求項1から7までのいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項9】
当該口腔インプラントは、顎骨内に移植するためのシャフト(1)を有しており、前記インプラントアダプタ(4)は、前記シャフト(1)に載置可能であるか、又は前記シャフト(1)に結合可能であるか、又は前記シャフト(1)に固く結合されているか、又は前記シャフト(1)と一体的に形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項10】
当該口腔インプラントは、前記上部構造体(3)を前記インプラントアダプタ(4)に結合するためのねじ(2)を有しており、該ねじ(2)は、対応ねじ山に螺合するねじ山を有しており、好適には前記対応ねじ山は、雌ねじ山として前記シャフト(1)に配置されており、前記上部構造体(3)とインプラントアダプタ(4)とは、前記ねじ(2)用の貫通案内部を有しており、好適には、少なくとも前記上部構造体(3)の貫通案内部の直径が、前記ねじ山の領域における前記ねじ(2)の直径よりも大きくなっており、且つ前記ねじ(2)のねじ頭(6)の直径よりも小さくなっている、請求項1から9までのいずれか1項記載の口腔インプラント。
【請求項11】
前記上部構造体(3)は、半径R3を備える凸状の歯冠側の球面を有しており、前記ねじ(2)は、前記ねじ頭(6)の下面に同じ半径R3を備える凹状の球面を有しており、これにより、前記ねじ頭(6)の下面と、前記上部構造体(3)の歯冠側の球面との面状接触が、前記インプラントアダプタ(4)に対する前記上部構造体(3)の様々な角度で生ぜしめられるようになっている、請求項10記載の口腔インプラント。
【請求項12】
当該口腔インプラントの製作に際して、前記インプラントアダプタ(4)と上部構造体(3)との間及び/又は前記シャフト(1)と上部構造体(3)との間の角度は、0°〜5°まで、好適には0°〜4°まで、特に好適には0°〜3°まで、極めて特に好適には0°〜2°まで調節可能である、請求項1から11までのいずれか1項記載の口腔インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントアダプタ及び上部構造体を有する口腔インプラントに関する。
【0002】
口腔インプラント及び上部構造体は、歯科学において、引き抜かれた又は抜け落ちた歯を代替するために用いられる。このために口腔インプラントは、顎骨内に挿入される。DE10358680A1から公知の義歯の場合は、シャフトを顎骨内に固定して、シャフトの歯冠側の領域に、上部構造体を接着ボンドによって固定することができる。シャフトと上部構造体とは、ねじによって結合することが一般的である。接着ボンドとしては、例えばセメントが使用される。
【0003】
歯冠側の装置とは、歯冠の方、例えば咬合面の方に配置された装置を意味する。これに対して根尖側の装置は、歯の根尖の方、つまり顎骨の方に向けられている。要するに、口腔インプラントの歯冠側の装置と根尖側の装置とは、互いに逆の方向に配置されている。移植されていない口腔インプラントについて、これらの方向に関する記述は、このような口腔インプラントを患者の顎骨内に適正に挿入した場合に得られる向き、若しくは再現される歯に関係する。
【0004】
患者の状況、例えば顎骨の位置や、顎手術の際の不正確さに関連して、シャフトが義歯に対して理想的に向けられてはいないことが起こり得る。印象の使用、並びに接着剤又はセメントの使用によって、上部構造体若しくは本来の義歯、即ちウェブ、冠、ブリッジ又は支台は、補綴物も含めて、更に位置調整され得る。
【0005】
この場合の欠点は、セメント若しくは接着剤を、患者に適用せねばならないという点にある。口腔内の条件に合わせるために、当該部分を後処置しなければならないことが多くある。このような事後的な位置調整により、口腔インプラントに力が最適には加わらなくなるので、痛み、耐久性の低下及び義歯との別の問題が発生することになってしまう。更に、構造体に変更を加える際、及び/又は接着剤或いはセメントが硬化する際の比較的長い待ち時間を、しばしば考慮しなければならない。
【0006】
つまり本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することにある。特に、患者の口腔内の条件に向きを簡単に合わせることができる、迅速且つ容易に挿入されるべき上部構造体を提供することが望ましい。この口腔インプラントではできるだけ、セメント又は接着剤を使用しないことが望ましい。更に、当該口腔インプラントの構造はなるべく簡単に、且つ待ち時間無しで製作可能であることが望ましい。
【0007】
この課題は、インプラントアダプタが、歯冠側を少なくとも部分的に湾曲されており、上部構造体が、根尖側を少なくとも部分的に湾曲されており、上部構造体の根尖側の湾曲部は凸状であり且つインプラントアダプタの歯冠側の湾曲部は凹状であるか、又は上部構造体の根尖側の湾曲部は凹状であり且つインプラントアダプタの歯冠側の湾曲部は凸状であり、凹状の湾曲は、凸状の湾曲よりも大きくなっており、これにより、口腔インプラントの製作時に、上部構造体はカッティングエッジを介してインプラントアダプタに結合されるようになっていることにより解決される。
【0008】
本発明において口腔インプラントとは、補綴物とシャフトとを備えた完全なインプラントを意味するものではない。つまり、本発明の意味における口腔インプラントは、既に上部構造体とインプラントアダプタとによって実現されたものである。但し付加的に、本発明による口腔インプラントは、シャフト及び/又は義歯を有していてもよい。上部構造体は、本発明ではウェブ、ブリッジ、支台及び移植されるシャフト用の別の構造体を意味するものである。
【0009】
この場合、本発明では、凸状の湾曲部は第1の半径R1を備えて凸状に湾曲されており、凹状の湾曲部は第2の半径R2を備えて凹状に湾曲されており、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも大きいことが想定されていてよい。
【0010】
半径方向の湾曲部は、技術的に容易に製作可能であり且つ所定の接触点若しくは所定の接触線が、カッティングエッジとして生ぜしめられる、という利点を有している。
【0011】
湾曲部は、前記表面の少なくとも一部をカバーしていなければならない。好適には、湾曲された面のうちの一方の縁部は、他方の湾曲された面上に、カッティングエッジを形成している。半径方向の湾曲部は、例えば球面又は円筒面によって形成されてよい。この場合、本発明ではいずれも完全な球面又は円筒面を意味するのではなく、球面又は円筒面の部分領域を意味している。
【0012】
湾曲された表面において、半径R1及びR2は1mm〜500mm、好適には1.5mm〜300mm、特に好適には5mm〜100mmである。
【0013】
これらの半径において、口腔インプラント用に、口腔インプラントのサイズに関連して十分な湾曲が得られると同時に、カッティングエッジを提供するために十分な湾曲が得られる。
【0014】
更に、特に好適には、凸状の湾曲部は、第1の半径R1を有する凸状の球面であり、凹状の湾曲部は、第2の半径R2を有する凹状の球面である。
【0015】
球面を使用した場合、上部構造体は、角度誤差を1つの方向でのみならず、あらゆる方向で解消することができる。両球面は、互いにあらゆる方向に傾斜可能なので、インプラントアダプタ若しくはインプラントアダプタが配置されたシャフトに対する上部構造体の角度を、その向きに関して任意に調節することができるようになっている。この場合も、球面とは、完全な球ではなく、球面の一部を意味するものである。好適には、前記球面は、同じ半径を有する半球よりも小さい。
【0016】
半径方向の湾曲部を有する口腔インプラントにおいて、半径R1:R2の比率は2:1未満であり、好適には20:19〜2:1の範囲内であり、特に好適には10:9〜4:3の範囲内であり、極めて特に好適には、半径R1:R2の比率は7:6である。
【0017】
これらの曲率半径若しくは球面の半径の比率の場合に、十分なカッティングエッジが得られると同時に、コンパクトで、とりわけ長手方向に低い口腔インプラントの構成形式が得られる。
【0018】
本発明に基づき特に好適には、湾曲された表面がそれぞれ異なる直径を有しており、これにより、製作された口腔インプラントにおいて、より小さな直径を有する表面の外縁部がカッティングエッジとして、より大きな直径を有する表面に食い込むようになっており、この場合好適には、凹状に湾曲された表面の外縁部が、凸状の表面の外縁部よりも小さな直径を有しており、凹状に湾曲された表面の外縁部が、凸状の表面上にカッティングエッジを形成している。
【0019】
これにより、カッティングエッジが接触している湾曲された表面に、好適には全周にわたって食い込むことが保証される。大きなカッティングエッジ領域は、安定した、とりわけより一層密な結合をもたらす。結合部の密封性は、食べ残しやその他の細菌群が封止されていない箇所及び空洞に溜まる可能性があることから、口腔インプラントにとって重要である。
【0020】
更に、凸状の歯冠側の表面を備えたインプラントアダプタは、上部構造体よりも軟らかい材料から成っているか、又は凸状の根尖側の表面を備えた上部構造体は、インプラントアダプタよりも軟らかい材料から成っていることが想定されていてよい。
【0021】
異なる材料硬度もまた、カッティングエッジのより良好な食い込み作用をもたらす。これにより、結合部の安定性及び密封性が改良される。
【0022】
本発明の別の構成では、インプラントアダプタ及び/又は上部構造体は、コバルト・クロム合金、チタン、チタン合金及び/又はセラミックから成っており、特に酸化ジルコニウム−セラミックから成っていることが想定されていてよい。
【0023】
これらの材料は、医療用に使用するために特に適していて、小さな重量で高い安定性を提供するものである。セラミックは、その高い硬度と美的外観とに基づき、好んで使用される。
【0024】
本発明の特に好適な構成では、口腔インプラントが顎骨内に移植するためのシャフトを有しており、この場合、インプラントアダプタは、シャフトに載置可能であるか、又はシャフトに結合可能であるか、又はシャフトに固く結合されているか、又はシャフトと一体的に形成されていることが想定されていてよい。
【0025】
このようなシャフトにより、口腔インプラントは患者に適用するために完全なものになる。シャフトとインプラントアダプタとの固い又は一体的な結合部は、特に安定的である。
【0026】
本発明による口腔インプラントの極めて特に好適な構成は、口腔インプラントが、上部構造体をインプラントアダプタに結合するためのねじを有している場合に得られる。この場合、ねじは、対応ねじ山に螺合するねじ山を有しており、好適には対応ねじ山は、雌ねじ山としてシャフトに配置されており、上部構造体とインプラントアダプタとは、ねじ用の貫通案内部を有しており、この場合好適には、少なくとも上部構造体の貫通案内部の直径が、ねじ山の領域におけるねじの直径よりも大きくなっており、且つねじのねじ頭の直径よりも小さくなっている。
【0027】
ねじは、上部構造体に対してトルクを直線的な力として伝達することができるので、カッティングエッジによる結合部を形成するために、特に良好に適している。インプラントアダプタの貫通案内部の直径も、ねじ山の領域におけるねじの直径より大きくなっていてよい。
【0028】
この場合、上部構造体は、半径R3を備える凸状の歯冠側の球面を有しており、ねじは、ねじ頭の下面に同じ半径R3を備える凹状の球面を有していることが想定されていてよく、これにより、ねじ頭の下面と、上部構造体の歯冠側の球面との面状接触が、インプラントアダプタに対する上部構造体の様々な角度で生ぜしめられるようになっている。
【0029】
前記手段により、インプラントアダプタに対する上部構造体の傾斜に関係なく、ねじから上部構造体に対して力を全面的に伝達することができるようになっている。
【0030】
最後に、口腔インプラントの製作に際して、インプラントアダプタと上部構造体との間及び/又はシャフトと上部構造体との間の角度は、0°〜5°まで、好適には0°〜4°まで、特に好適には0°〜3°まで、極めて特に好適には0°〜2°まで調節可能であるということが想定されていてもよい。
【0031】
前記角度は、口腔インプラントのコンパクトな構成を可能にするものであり、大抵の角度誤差を解消するためには十分である。
【0032】
本発明は、インプラントアダプタを備えるシャフト若しくはシャフト用のインプラントアダプタの表面の湾曲部と、上部構造体の表面の異なる湾曲部とによって、インプラントアダプタ若しくはシャフトに対する向きが可変の上部構造体が提供される、という驚くべき知見に基づいている。この場合、上部構造体とインプラントアダプタとは、カッティングエッジを介して結合可能である。例えばねじが構成部材を締め付けることによって、上部構造体がインプラントアダプタを介してシャフトに結合されると、より大きく湾曲された表面の外縁部が、湾曲の小さな表面に食い込んで、カッティングエッジを形成する。基本的に、十分な大きさの凹所が湾曲の小さな表面に設けられている場合は、湾曲の小さな表面の凹所の縁部が、大きく湾曲された表面に食い込むことも可能であるが、これは本発明では突起や空洞の発生に基づき、あまり好適ではない。カッティングエッジを形成することにより、上部構造体はある程度の範囲内で、任意の多数の異なる角度でシャフト若しくはインプラントアダプタに固定することができるようになっている。
【0033】
食い込まれる材料は、カッティングエッジの材料よりも軟らかくなければならない。これによりカッティングエッジは、湾曲された表面に良好に食い込むことができ、その結果、固く密な結合部が形成される。密な結合部は、食べ残し又は細菌が、上部構造体とインプラントアダプタとの間に入り込めないようにするために役立つ。また、このために外側のカッティングエッジが、本発明では好適である。
【0034】
球状又は湾曲された表面を有する本発明による構成によって、角度誤差が解消され、且つ本来のインプラント(シャフト)に対する上部構造体の密な着座が保証される。結合部の密封性及び安定性は、異なる曲率若しくは異なる半径と、食い込み作用とによってもたらされる。この場合、(球面座を備えた)ねじ又は別の結合手段の締め付けトルクに基づいて、上部構造体がインプラントアダプタの表面に食い込むようになっている。
【0035】
本発明による口腔インプラントは、インプラントに固定されるシャフトを備えた口腔インプラントシステムと、上部構造体(例えば義歯構成要素)との間の角度誤差を解消する、応力の生じない結合部を、セメント材料を必要とすることなしに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による口腔インプラントの概略横断面図である。
図2図1に示した本発明による口腔インプラントの概略横断面図の一部を拡大して示した図である。
【0037】
以下に、本発明の実施形態を2つの概略図に基づき説明する。但し、これは本発明を限定するものではない。
【0038】
図1には、本発明による口腔インプラントの概略的な横断面図が示されている。この口腔インプラントは根尖側(図1の下側)に、顎内に固定可能なシャフト1を有している。シャフト1は、ねじ2を受容するために、歯冠側に凹所を有している。このためにねじ2は、シャフト1の凹所に設けられた雌ねじ山に螺合する雄ねじ山を有している。ねじ2は更に、このねじ2にトルクを伝達するための六角穴又は別の係合手段を備えたねじ頭6を有している。ねじ軸線Aは、シャフト1の対称軸線であってよい。
【0039】
ねじ2は、上部構造体3をシャフト1に固定するために用いられる。上部構造体3としては、本来の義歯、又は例えば冠、ウェブ、ブリッジ、歯列又は支台のような、別の補綴供給物が製作されてよい。上部構造体3とシャフト1との間で様々な角度を調節して固定できるようにするために、シャフト1と上部構造体3との間には、インプラントアダプタ4が配置されている。インプラントアダプタ4はシャフト1の歯冠側の表面に平らに載置されているか、又はシャフト1と固く結合されていてよい。インプラントアダプタ4とシャフト1とを、単一の構成部材として形成することも可能である。
【0040】
インプラントアダプタ4の歯冠側の表面は、凸状に湾曲していて、上部構造体3用の支持部としての、半径R1を備えた球面を形成している。上部構造体3は、根尖側(図1の下側)に、インプラントアダプタ4の歯冠側の凸状の球面よりも小さな外径と、より小さな曲率半径(球面の半径)R2とを備える、凹状の球面を有している。この状況をよりわかりやすくするために、図1では円によって囲まれた、上部構造体3とインプラントアダプタ4との間の接触領域Bが、図2では拡大されて図示されている。
【0041】
上部構造体3は、ねじ軸線Aに対して様々な角度であらゆる方向に傾斜した状態で、インプラントアダプタ4に固定され得る。インプラントアダプタ4に対する上部構造体3の最大傾斜角度は、図1では2°である。この0°〜2°の角度範囲内で、上部構造体3の根尖側の凹状の表面の外縁部は、全周にわたってインプラントアダプタ4の歯冠側の凸状の表面上に位置していて、そこにカッティングエッジ5を形成している。
【0042】
ねじ2のねじ頭6がねじ込まれて締め付けられる、上部構造体3の歯冠側の表面は、半径R3を有する凸状の球面によって実現される。ねじ頭6の下面は、同じ曲率半径R3を有する凹状の球面である。これにより、ねじ2若しくはねじ頭6の下面は、上部構造体3の上面に面状に締め付けられるようになっている。つまり、ねじ2と、上部構造体3と、インプラントアダプタ4を備えたシャフト1との間の安定した面状の結合が、インプラントアダプタ4に対する上部構造体3の角度に関係なく生ぜしめられる。
【0043】
前記球面は、厳密に言うと本発明全体の意味では球面の1部分である。つまり前記球面は、それぞれ半径R1,R2又はR3を有する球の部分面を形成している。インプラントアダプタ4の歯冠側の表面の曲率半径R1は、例えば70mmである。上部構造体3の根尖側の表面の曲率半径R2は、例えば60mmである。上部構造体3の歯冠側の上面及びねじ頭6の下面の曲率半径R3は、例えば100mmである。
【0044】
ねじ2を締め付けると、上部構造体3のカッティングエッジ5がインプラントアダプタ4の歯冠側の表面内に食い込み、これにより、両構成部材の固く密な結合が可能になる。食い込みを容易にするために、上部構成部材3はインプラントアダプタ4よりも硬い材料から製作されている。例えば、上部構造体3はチタン合金(例えば硬い「グレード5」のチタン合金)から成っていてよく、インプラントアダプタ4は純粋なチタン又はより軟らかなチタン合金(例えばより軟らかな「グレード2」のチタン合金)から成っていてよい。
【0045】
要するに、カッティングエッジ5の位置は、インプラントアダプタ4に対する上部構造体3の角度に関連して形成される。つまり、図示の本発明による口腔インプラントによって、インプラントアダプタ4延いてはシャフト1に対する上部構造体3の様々な角度を実現することができ、このために何らかの接着剤又はセメントを用いる必要はない。
【0046】
上記説明、並びに請求項、図面及び実施形態において開示された本発明の複数の特徴は、個別でも、あらゆる任意の組み合わせにおいても、本発明を種々様々な態様で実現するために重要なものであり得る。
【符号の説明】
【0047】
1 シャフト
2 ねじ
3 上部構造体
4 インプラントアダプタ
5 カッティングエッジ
6 ねじ頭
図1
図2
【国際調査報告】