(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506533(P2015-506533A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(54)【発明の名称】加熱可能な灯具カバー
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20150203BHJP
F21V 29/00 20150101ALI20150203BHJP
F21S 2/00 20060101ALI20150203BHJP
F21W 101/10 20060101ALN20150203BHJP
F21W 101/12 20060101ALN20150203BHJP
F21W 101/14 20060101ALN20150203BHJP
F21Y 101/00 20060101ALN20150203BHJP
【FI】
F21S8/10 550
F21V29/00 200
F21V29/00 550
F21S2/00 370
F21S2/00 320
F21S8/10 160
F21W101:10
F21W101:12
F21W101:14
F21Y101:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-547835(P2014-547835)
(86)(22)【出願日】2012年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月19日
(86)【国際出願番号】EP2012074796
(87)【国際公開番号】WO2013092253
(87)【国際公開日】20130627
(31)【優先権主張番号】11194447.6
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローター レスマイスター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュラープ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マークス グルダン
【テーマコード(参考)】
3K014
3K243
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K243AA01
3K243AA08
3K243AA12
3K243AB01
3K243AB02
3K243AC06
3K243BC01
3K243BC12
3K243CC02
(57)【要約】
本発明は、加熱可能な灯具カバー(10)に関する。本発明の構成では、少なくとも:−ポリマのベースボディ(1)と、−第1のバスバー(3)と、第2のバスバー(3)と、前記ポリマのベースボディ(1)の内側(I)に設けられた少なくとも2つの導体路(2)とが設けられていて、各導体路(2)が、前記第1のバスバー(3)と前記第2のバスバー(3)とに電気的に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱可能な灯具カバー(10)において、少なくとも:
ポリマのベースボディ(1)を備え、
第1のバスバー(3)と、第2のバスバー(3)と、前記ポリマのベースボディ(1)の内側(I)に設けられた少なくとも2つの導体路(2)とを備え、
前記各導体路(2)が、前記第1のバスバー(3)と前記第2のバスバー(3)とに電気的に接続されていることを特徴とする、加熱可能な灯具カバー(10)。
【請求項2】
各導体路(2)の少なくとも1区分が、前記ポリマのベースボディ(1)内に埋め込まれている、請求項1記載の灯具カバー(10)。
【請求項3】
前記導体路(2)は、該導体路(2)の厚さの50%〜90%、好適には60%〜75%に相当する深さで、前記ポリマのベースボディ(1)の表面に埋め込まれている、請求項2記載の灯具カバー(10)。
【請求項4】
前記ポリマのベースボディ(1)は、少なくともポリカーボネートおよび/またはポリメチルメタクリレートを含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項5】
前記ポリマのベースボディ(1)の厚さは、2mm〜5mmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項6】
前記導体路(2)は、少なくともタングステン、銅、ニッケル、マンガン、アルミニウム、銀、クロム、鉄および/またはこれらの合金を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項7】
前記導体路(2)は、15μm〜200μm、好適には25μm〜90μmの厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項8】
前記第1のバスバー(3)および前記第2のバスバー(3)は、少なくともタングステン、銅、ニッケル、マンガン、アルミニウム、銀、クロム、鉄および/またはこれらの合金を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項9】
前記ポリマのベースボディ(1)の外側(II)に保護被覆体(7)が配置されており、該保護被覆体(7)が、少なくともポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンを含有していて、好適には1μm〜50μm、特に好適には2μm〜25μmの厚さを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項10】
前記導体路(2)は、はんだ材料(6)を介して前記第1のバスバー(3)と前記第2のバスバー(3)とに電気的に接続されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項11】
前記各導体路(2)の1範囲が、下側の第1のバスバー(3a)と上側の第1のバスバー(3b)との間に配置されており、前記各導体路(2)の別の範囲が、下側の第2のバスバー(3a)と上側の第2のバスバー(3b)との間に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の灯具カバー(10)。
【請求項12】
加熱可能な灯具カバー(10)を製造する方法において、少なくとも
a)ポリマのベースボディ(1)を用意するステップと、
b)該ポリマのベースボディ(1)の内側(I)に超音波埋込みによって少なくとも2つの導体路(2)を取り付けるステップと、
c)前記各導体路(2)を、第1のバスバー(3)と第2のバスバー(3)とに電気的に接続するステップと、
を実施することを特徴とする、加熱可能な灯具カバー(10)を製造する方法。
【請求項13】
前記ポリマのベースボディ(1)の外側(II)に保護被覆体(7)を被着させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマのベースボディ(1)を、射出成形または熱成形により用意する、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
陸上、空中または水上における交通のための前進運動手段の灯具のためのカバー、特に乗用車、貨物自動車、バス、路面電車、地下鉄、列車および自動二輪車の前照灯、テールランプ、サイドマーカランプおよび/またはクリアランスランプのためのカバーとしての、請求項1から11までのいずれか1項記載の加熱可能な灯具カバー(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な灯具カバー、該灯具カバーを製造する方法および該灯具カバーの使用に関する。
【0002】
車両照明装置の効率は、低い周辺温度のときに、特に冬期において損なわれる恐れがある。車両灯具のカバーの外側には、雪、氷または凝縮した空気湿分が付着する恐れがある。灯具カバーの内側には、同じく空気湿分が凝縮しかつ凍結する恐れがある。これにより、灯具カバーの透明性は減じられ、照明の機能は低下される。道路交通における安全性に不都合な影響が与えられる。
【0003】
車両前照灯には、以前は、ハロゲンランプまたはキセノンランプを装備させることが主流であった。これらのランプは作動時に著しい熱を発生させる。熱は灯具カバーに伝達され、そして灯具カバーの除霜および/または乾燥を生ぜしめる。最近では、車両前照灯に発光ダイオード(LED)を装備させることが主流になりつつある。発光ダイオードは作動時に著しく僅かな熱しか発生させない。それゆえに、湿分や氷を除去するためには、灯具カバーのアクティブな加熱が必要となる。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0232972号明細書には、車両灯具用のカバーを製造する方法が記載されている。この場合、1つの加熱線材と2つの電気的な接続エレメントとが、平板状のプラスチックプレートに被着される。加熱線材の各端部はそれぞれ1つの電気的な接続エレメントと溶接される。引き続き、灯具カバーがプラスチックプレートから熱成形によって成形される。このときに、加熱線材の損傷の危険または加熱線材と電気的な接続エレメントとの間の接続部の損傷の危険が生じる。さらに、熱成形の方法は、灯具カバーの形状に関する設計自由度を制限している。電気的なコンタクティングはさらに故障し易い。すなわち、両接続エレメントの間の導電性の接続部が、たとえば加熱線材の破断により遮断されると、加熱機能は完全に故障する。
【0005】
本発明の課題は、加熱構造体の改善された電気的なコンタクティングを有する、加熱可能な灯具カバーを提供することである。本発明の別の課題は、加熱構造体の損傷が回避されるような、加熱可能な灯具カバーを製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明の上記課題は、本発明によれば、独立請求項の形の請求項1に記載の加熱可能な灯具カバーにより解決される。有利な実施態様は、従属請求項の形の請求項2以下に記載されている。
【0007】
本発明による加熱可能な灯具カバーは、少なくとも以下の特徴を有する:
−ポリマのベースボディを備え、
−第1のバスバーと、第2のバスバーと、前記ポリマのベースボディの内側に設けられた少なくとも2つの導体路とを備え、前記各導体路が、前記第1のバスバーと前記第2のバスバーとに電気的に接続されている。
【0008】
「内側」とは、ポリマのベースボディの、加熱可能な灯具カバーと灯具の別のエレメントとの結合の後に光源に向けられるように規定されている表面を意味する。「外側」とは、相応してポリマのベースボディの、加熱可能な灯具カバーと灯具の別のエレメントとの結合の後に光源とは反対の側に向けられるように規定されている表面を意味する。
【0009】
第1のバスバーと第2のバスバーとの間に電位差が印加されると、各導体路を通って電流が流れる。これにより、導体路は加熱され、したがって導体路は灯具カバーのアクティブな加熱を可能にする。
【0010】
第1のバスバーと第2のバスバーとにより、導体路の安定的な電気的なコンタクティングが提供されると有利である。各導体路はこの場合、第1のバスバーと第2のバスバーとに電気的に接続されていて、各導体路にはその他の導体路とは別個に独立して電圧が供給される。したがって、1つの導体路が損傷されても、これによって灯具カバーのアクティブな加熱の完全な故障が生ぜしめられることはない。このことは本発明の大きな利点である。
【0011】
さらに、本発明の上記課題は、本発明によれば、加熱可能な灯具カバーを製造する方法において、少なくとも:
a)ポリマのベースボディを用意するステップと、
b)該ポリマのベースボディの内側に超音波埋込みによって少なくとも2つの導体路を取り付けるステップと、
c)前記各導体路を、第1のバスバーと第2のバスバーとに電気的に接続するステップと、
を実施することを特徴とする、加熱可能な灯具カバーを製造する方法により解決される。
【0012】
ポリマのベースボディは、灯具カバーのために設けられた3次元の、典型的に曲げられた形状を有する。ポリマのベースボディは灯具のその他のエレメントとの結合の前に、さらに変形加工される必要はない。しかし、ポリマのベースボディの曲げの変化を伴わない加工ステップ、たとえば穿孔加工、フライス加工または縁範囲におけるトリミング加工は、本発明の枠内で可能である。
【0013】
灯具カバーのポリマのベースボディは本発明によれば、導体路が被着される前に用意される。したがって、導体路はポリマのベースボディの成形時に負荷されない。特別な利点は、導体路および/または導体路の電気的なコンタクティング部の損傷が回避されることになる。さらに、第1のバスバーと第2のバスバーとにより、それぞれ個々の導体路の安定した電気的なコンタクティングが提供される。
【0014】
ポリマのベースボディは、当業者に周知の適当なプラスチック加工のための方法、たとえば熱成形により製造され得る。本発明の有利な実施態様では、ポリマのベースボディが射出成形により製造される。射出成形は、熱成形に比べてポリマのベースボディの可能な形状に関して、より多くの種類の形状の製造を可能にする。さらに、ポリマのベースボディは、ほぼ廃分なしに製造され得る。なぜならば、ワークをあとから切削加工する必要がないからである。複雑な表面構造を直接にカバーに導入することができる。
【0015】
ポリマのベースボディは、好適には少なくともポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチロール、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)、スチロールアクリルニトリル(SAN)、アクリルエステルスチロールアクリルニトリル(ASA)、アクリルニトリルブタジエンスチロール−ポリカーボネート(ABS/PC)および/またはこれらのコポリマまたは混合物を含有している。
【0016】
ポリマのベースボディは、特に好適にはポリカーボネート(PC)および/またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含有している。このことは、ポリマのベースボディの透明性、加工性、強度、耐候性および化学的な耐性の点で特に有利である。
【0017】
ポリマのベースボディは、好適には2mm〜5mmの厚さを有する。このことは、ポリマのベースボディの強度および加工性の点で特に有利である。ポリマのベースボディの大きさは、幅広く変化することができ、本発明による使用に左右される。
【0018】
ポリマのベースボディは、本発明によれば、少なくとも所定の範囲において透明である。ポリマのベースボディは無色であってよいか、着色されていてよいか、または色調付けられていてよい。ポリマのベースボディは、澄明または混濁していてよい。
【0019】
導体路は、好適には第1のバスバーと第2のバスバーとの間を直線状に延びている。しかし、導体路は、たとえば波状、メアンダ状に、またはジグザグパターンの形で第1のバスバーと第2のバスバーとの間を延びていてもよい。2つの隣接し合った導体路の間隔は、好適には導体路の全長にわたって一定である。しかし、2つの隣接し合った導体路の間隔は、第1のバスバーと第2のバスバーとの間での延在長さにおいて変化することもできる。
【0020】
導体路はそれぞれ任意の方向に、好適には水平方向または垂直方向に延びていてよい。
【0021】
導体路は、本発明によれば、超音波埋込みによってポリマのベースボディに被着される。この場合、ホーンが、好適には多軸式のロボットを用いて、ポリマのベースボディの3次元のジオメトリ(幾何学的形状)に適合されたロボットプログラムを介して、ポリマのベースボディの内側にわたって案内される。ホーンは、超音波発生器により形成された高周波数の機械的な振動(超音波)をポリマのベースボディへ伝達する。このときに熱が発生され、ポリマのベースボディの内側の表面層が溶融開始される。導体路は、初期溶融された表面層内に導入される。このためには、ホーンが加熱線材をホーン先端部で案内し、この場合、加熱線材は線材ロールを介してホーンの近傍で連続的に後供給される。ホーンとして適した工具は、たとえば米国特許出願公開第6023837号明細書に基づき公知である。
【0022】
ポリマのベースボディ内への導体路の侵入深さは、好適には導体路の厚さの50%〜90%、特に好適には60%〜75%である。超音波埋込みを用いた導体路の単純な被着は、導体路とポリマのベースボディとの間の安定した結合の点で特に有利である。
【0023】
2つの隣接し合った導体路の間の間隔は、好適には1mm〜25mm、特に好適には3mm〜15mmである。このことは、灯具カバーの透明性および導体路を介して導入される加熱出力の分配に関して特に有利ある。導体路の長さは、幅広く変化することができ、こうして個別事例における要件に容易に適合され得る。導体路は、たとえば5cm〜50cmの長さを有する。
【0024】
導体路は、少なくとも1種の金属、好適にはタングステン、銅、ニッケル、マンガン、アルミニウム、銀、クロムおよび/または鉄、ならびにこれらの混合物および/または合金を含有している。導体路は、特に好適にはタングステンおよび/または銅を含有している。これによって、特に良好な加熱作用が得られる。導体路の厚さは、好適には15μm〜200μmであり、特に好適には25μm〜90μmである。このことは、灯具カバーの透明性、導入される加熱出力および短絡の回避の点で特に有利である。
【0025】
タングステンを含有し、かつ好適には15μm〜100μm、特に好適には25μm〜50μmの厚さを有する導体路を用いると、特に良好な結果が得られることが判った。特に良好な結果は、同じく、銅を含有しかつ好適には25μm〜200μm、特に好適には60μm〜90μmの厚さを有する導体路を用いても得られる。
【0026】
隣接し合った導体路は、第1のバスバーの、第2のバスバーとは反対の側で、または第2のバスバーの、第1のバスバーとは反対の側で、互いに接続されていてよい。こうして、導体路は唯一本の加熱線材の形でポリマのベースボディに被着され得る。この場合、加熱線材は被着後に、導体路として設けられていてかつループ状に互いに結合されている2つまたは2つよりも多い区分を有する。加熱線材の、導体路として設けられた各区分は、一方の端部の範囲で第1のバスバーに結合され、他方の端部の範囲で第2のバスバーに結合される。バスバーの範囲およびバスバーの間の範囲における加熱線材の各区分は、1つの導体路を形成する。
【0027】
択一的には、隣接し合った導体路が、第1のバスバーの、第2のバスバーとは反対の側でかつ第2のバスバーの、第1のバスバーとは反対の側で、互いに結合されていない。すなわち、導体路は複数の加熱線材の形でポリマのベースボディに被着され、この場合、各加熱線材は一方の端部の範囲で第1のバスバーに結合され、他方の端部の範囲で第2のバスバーに結合される。各加熱線材はバスバーの範囲およびバスバーの間の範囲において、1つの導体路を有する。
【0028】
各導体路の少なくとも1区分がポリマのベースボディに埋め込まれている。導体路はその全長に沿ってポリマのベースボディに埋め込まれていてよい。このことは、ポリマのベースボディと導体路との間の安定的な結合の点で特に有利である。その場合、第1のバスバーおよび第2のバスバーとの電気的なコンタクティングは、導体路の、ポリマのベースボディとは反対の側で行われる。
【0029】
本発明の有利な実施態様では、導体路の端部における、バスバーとの電気的なコンタクティングのために設けられた範囲が、ポリマのベースボディ内に埋め込まれておらず、このベースボディから持ち上げられ得る。特別な利点は、バスバーとの簡単でかつ安定的な電気的なコンタクティングが可能になることにある。バスバーは、好適にはポリマのベースボディ上に配置されていて、たとえば接着剤または両面接着テープによってこのベースボディ上に位置固定されている。各導体路の一方の端部における、ポリマのベースボディ内に埋め込まれていない範囲が、第1のバスバーの、ポリマのベースボディとは反対の側において、第1のバスバーに被さるように案内されて、この第1のバスバーに結合される。各導体路の他方の端部における、ポリマのベースボディ内に埋め込まれていない範囲は、第2のバスバーの、ポリマのベースボディとは反対の側において、第2のバスバーに被さるように案内されて、この第2のバスバーに結合される。
【0030】
特に有利な実施態様では、下側の第1のバスバーと、下側の第2のバスバーとが、ポリマのベースボディに載置される。各導体路の一方の端部における、ポリマのベースボディ内に埋め込まれていない範囲は、下側の第1のバスバーと上側の第1のバスバーとの間に配置されて、下側の第1のバスバーと上側の第1のバスバーとに結合される。各導体路の他方の端部における、ポリマのベースボディ内に埋め込まれていない範囲は、下側の第2のバスバーと上側の第2のバスバーとの間に配置されて、下側の第2のバスバーと上側の第2のバスバーとに結合される。特別の利点は、導体路の効率良くかつ極めて安定的な電気的なコンタクティングにある。灯具カバーを加熱するためには、下側の第1のバスバーと上側の第1のバスバーとに第1の電位が印加される。下側の第2のバスバーと上側の第2のバスバーとには、第2の電位が印加される。
【0031】
導体路とバスバーとの間の電気的な接続は、好適には導電性の接着剤を用いて、あるいははんだ付けまたは溶接により行われる。
【0032】
バスバーは、好適にはタングステン、銅、ニッケル、マンガン、アルミニウム、銀、クロムおよび/または鉄、ならびにこれらの混合物および/または合金、特に好適にはタングステンおよび/または銅を含有する。バスバーは、好適には10μm〜200μmの厚さ、特に好適には50μm〜100μmの厚さを有する。バスバーはその幅に沿って導体路に接続されているが、このバスバーの幅は、好適には2mm〜100mm、特に好適には5mm〜20mmである。バスバーの長さは、幅広く変化することができ、こうして個別事例の要件に卓越して適合され得る。バスバーの最小長さは、導体路の個数および隣接し合った導体路の間隔から得られる。バスバーの長さは、たとえば5cm〜20cmである。バスバーは外部の電圧供給部に接続されるので、第1のバスバーと第2のバスバーとの間に電位差が印加され得る。
【0033】
美的な理由から、バスバーを用いた導体路の電気的なコンタクティング部は外部から見えないことが望ましい。このためには、たとえばポリマのベースボディが、バスバーの範囲において着色されるか、または黒化され得る。ポリマのベースボディは、たとえば多成分射出成形により製造され得る。この場合、ポリマのベースボディは、バスバーを配置したい範囲において半透明(opak)なコンポーネントを含んでおり、この半透明なコンポーネントは、ポリマのベースボディを通じた電気的なコンタクティング部への視界を遮蔽する。
【0034】
ポリマのベースボディの半透明なコンポーネントは、好適には少なくともポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチロール、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)、スチロールアクリルニトリル(SAN)、アクリルエステルスチロールアクリルニトリル(ASA)、アクリルニトリルブタジエンスチロール−ポリカーボネート(ABS/PC)および/またはこれらのコポリマまたは混合物、特に好適にはポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含有する。
【0035】
ポリマのベースボディの半透明なコンポーネントは、好適には少なくとも1種の着色剤を含有する。着色剤により、コンポーネントの半透明性が達成される。着色剤は無機染料および/または有機染料、および/または無機顔料および/または有機顔料を含有していてよい。着色剤は、多彩または無彩であってよい。適当な着色剤は当業者に知られていて、たとえば英国染料染色学会(British Society of Dyers and Colourists)および米国繊維化学技術・染色技術協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)のカラーインデックスにおいて調べることができる。好適には、黒色顔料が着色剤として使用され、たとえば顔料ブラック(カーボンブラック)、アニリンブラック、ボーンブラック、酸化鉄ブラック、スピネルブラックおよび/または黒鉛が使用される。これにより、黒色の半透明なコンポーネントが達成される。
【0036】
半透明なコンポーネントはさらに無機充填剤または有機充填剤、特に好適にはSiO
2、Al
2O
3、TiO
2、粘土鉱物、ケイ酸塩、ゼオライト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、有機繊維および/またはこれらの混合物を含有していてよい。充填剤は半透明なコンポーネントの安定性を一層高めることができる。さらに、充填剤はポリマの材料の含量を減少させることができ、こうして構成部分の製造コストを減少させることができる。
【0037】
択一的には、バスバーとポリマのベースボディとの間に、着色されたエレメントまたは黒化されたエレメントが配置され得る。択一的には、ポリマのベースボディの表面にカバースクリーン印刷を被着させることができる。
【0038】
本発明の有利な実施態様では、ポリマのベースボディの外側に保護コーティングもしくは保護被覆体が被着され、これにより本発明による灯具カバーを環境影響に対して保護することができる。好適には、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよび/またはポリウレタンを主体とした熱硬化性またはUV硬化性のラッカ系が使用される。保護被覆体は、好適には1μm〜50μm、特に好適には2μm〜25μmの層厚さを有する。特別な利点は、保護被覆体によるポリマのベースボディの、高められた耐引掻き性および耐候性にある。
【0039】
保護被覆体は、着色性の化合物および顔料の他に、UVブロッカ、防腐剤ならびに耐引掻き性を高めるためのコンポーネント、たとえばナノ粒子を含有していてもよい。
【0040】
保護被覆体は、たとえば浸漬法、流し塗り法または噴霧法によりポリマのベースボディの外側に被着され得る。保護被覆体は被着後に好適には熱導入および/またはUV光線導入により硬化させられる。射出成形によるポリマのベースボディの製造時に、保護被覆体は、インモールドコーティング法(In Mould Coating-Verfahren)によってポリマのベースボディの外側に被着させることもできる。
【0041】
保護被覆体として適当な製品は、たとえばモメンティブ社(Firma Momentive)により提供されるAS4000、AS4700、PHC587またはUVHC300である。
【0042】
保護被覆体は、複数の層、好適にはポリマのベースボディに設けられた接着助成層と、この接着助成層に載置されたラッカ層とを有していてもよい。接着助成層は、たとえばアクリレートを含有していてよく、0.4μm〜5μmの層厚さを有していてよい。ラッカ層は、たとえばポリシロキサンを含有していてよく、1μm〜15μmの層厚さを有していてよい。
【0043】
接着助成層は、被着後に、ラッカ層が被着される前に好適には乾燥させられる。
【0044】
保護被覆体は、導体路およびバスバーの取付けの前または後に被着され得る。保護被覆体は、導体路とバスバーとの結合の前または後に被着され得る。
【0045】
加熱可能な灯具カバーは、好適には陸上、空中または水上における交通のための前進運動手段の灯具、特に乗用車、貨物自動車、バス、路面電車、地下鉄、列車および自動二輪車の前照灯、テールランプ、サイドマーカランプおよび/またはクリアランスランプのためのカバーとして使用される。
【0046】
本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。図面は概略的な図面であって、縮尺通りではない。図面は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による加熱可能な灯具カバーの第1の構成の内側を上から見た平面図である。
【
図2】本発明による加熱可能な灯具カバーの別の構成の内側を上から見た平面図である。
【
図3】
図1に示した加熱可能な灯具カバーのA−A′線に沿った断面図である。
【
図4】
図1に示した加熱可能な灯具カバーのB−B′線に沿った断面図である。
【
図5】本発明による加熱可能な灯具カバーのさらに別の構成を示す、B−B′線に沿った断面図である。
【
図6】本発明による加熱可能な灯具カバーのさらに別の構成を示す、B−B′線に沿った断面図である。
【
図7】加熱可能な灯具カバーを製造する本発明による方法のフローチャートである。
【0048】
図1、
図3および
図4には、それぞれ乗用車前照灯用の本発明による灯具カバー10の細部が図示されている。ポリマのベースボディ1はポリカーボネート(PC)を含有していて、4mmの厚さを有する。ポリマのベースボディ1の内側(I)には、20cmの長さを有する6つの加熱線材が導体路2として配置されている。これらの導体路2は互いに平行にかつ水平方向に配置されている。導体路2は銅を含有していて、70μmの厚さを有する。隣接し合う2つの加熱線材の間の間隔は、10mmである。導体路2は超音波埋込みによってその全長にわたって、ポリマのベースボディ1内に埋め込まれている。この場合、侵入深さは約45μmである。
【0049】
各導体路2は2つのバスバー3に電気的に接続されている。導体路2とバスバー3との間の電気的な接続は、導電性の接着剤5を介して行われる。バスバー3は銅を含有していて、50μmの厚さと、6cmの長さと、1cmの幅とを有する。
【0050】
バスバー3は外部の電圧供給部(図示しない)に接続されている。第1のバスバー3と第2のバスバー3との間に電位差が印加されると、各導体路2を通って電流が流れる。このときに発生された熱が、灯具カバー10のアクティブな加熱を可能にする。個々の導体路2の、本発明における互いに独立した別個の電気的なコンタクティングにより、1つの導体路2が破損しても、灯具カバー10における加熱の完全な故障は生ぜしめられないので有利である。
【0051】
図2には、本発明による灯具カバー10の択一的な別の構成が平面図で示されている。ポリマのベースボディ1の内側(I)には、11個の導体路2が配置されている。これらの導体路2は互いに平行にかつ垂直方向に配置されている。導体路2は唯1本の加熱線材の各区分を成しており、この加熱線材は、ループ状に互いに結合された真っ直ぐな区分においてポリマのベースボディ1に被着されている。したがって、隣接し合った導体路2は、それぞれ加熱線材の1つの範囲によって互いに結合されており、この場合、結合は、第2のバスバー3の、第1のバスバー3とは反対の側と、第1のバスバー3の、第2のバスバー3とは反対の側とにおいて交互に行われる。
【0052】
図3には、
図1に示した本発明による加熱可能な灯具カバー10のA−A′線に沿った断面図が示されている。
図3には、ポリマのベースボディ1と、このベースボディ1内に埋め込まれた、水平方向および平行に延びる複数の導体路2と、断面線A−A′の背後に位置するバスバー3と、導電性の接着剤5とが見えている。
【0053】
図4には、
図1に示した本発明による加熱可能な灯具カバー10のB−B′線に沿った断面図が示されている。
図4には、バスバー3が図示されており、これらのバスバー3は垂直方向に延びていて、導電性の接着剤5によってポリマのベースボディ1と導体路2とに接着されている。
【0054】
図5には、本発明による加熱可能な灯具カバー10の択一的な別の構成の、B−B′線に沿った断面図が示されている。電気的なコンタクティング部の両範囲では、導体路2がポリマのベースボディ1内に埋め込まれていない。各導体路2は、ポリマのベースボディ1内に埋め込まれていない一方の範囲において、下側の第1のバスバー3aと、上側の第1のバスバー3bとの間に配置されている。各導体路2は、ポリマのベースボディ1内に埋め込まれていない他方の範囲において、下側の第2のバスバー3aと、上側の第2のバスバー3bとの間に配置されている。導体路2はバスバー3a,3bに、はんだ材料6によって結合されている。はんだ材料6は銀を含有する。下側の第1のバスバー3aおよび下側の第2のバスバー3aは、両面の接着テープ8によってポリマのベースボディ1上に位置固定されている。
【0055】
ポリマのベースボディ1は、多成分射出成形により製造されている。ポリマのベースボディ1は、4mmの厚さを有する透明なコンポーネント11を有する。透明なコンポーネント11の範囲には、2mmの厚さを有する半透明なコンポーネント12が被着されている。透明なコンポーネント11はポリカーボネート(PC)を含有する。半透明なコンポーネント12は、無機充填剤入りのポリカーボネート(PC)−ポリエチレンテレフタレート(PET)混合物を含有する。半透明なコンポーネント12を射出成形するための原料は、テイジンケミカル社(Firma Teijin Chemicals Ltd.)により提供されている(Panlite Y-0346 Colour No. TG6654)。半透明なコンポーネント12上には、バスバー3aが配置されている。これにより、ポリマのベースボディ1を通じた、バスバー3を用いた導体路2の電気的なコンタクティング部への視界が遮られるので有利である。
【0056】
ポリマのベースボディ1の外側(II)には、保護被覆体7が被着されている。保護被覆体7は、ポリシロキサン(Momentive PHC587)を主体とした熱硬化性のラッカを含有していて、15μmの層厚さを有する。保護被覆体7により、ポリマのベースボディ1は環境からの影響、たとえば天候および機械的な作用に対して保護されるので有利である。
【0057】
図6には、本発明による加熱可能な灯具カバー10の択一的な別の構成が、B−B′線に沿った断面図で示されている。導体路2の電気的なコンタクティング部の範囲では、半透明なコンポーネント12が、ポリマのベースボディ1の内側(I)からポリマのベースボディ1の外側(II)にまで延びている。ポリマのベースボディ1を通じた、バスバー3を用いた導体路2の電気的なコンタクティング部への視界が遮られるので有利である。
【0058】
図7には、加熱可能な灯具カバー10を製造する本発明による方法の1実施形態のフローチャートが示されている。第1のステップにおいて、ポリマのベースボディ1が射出成形法で製造される。ポリマのベースボディ1はポリカーボネートを含有している。ポリマのベースボディ1は4mmの厚さと、灯具カバー10のために規定された3次元の曲げられた形状とを有する。引き続き、加熱線材が導体路2として、ポリマのベースボディ1の内側(I)に超音波埋込みによって被着される。導体路2は銅を含有していて、70μmの厚さを有する。導体路2はその全長に沿ってポリマのベースボディ1内に埋め込まれ、この場合、ポリマのベースボディ1内への導体路2の侵入深さは約45μmである。引き続き、第1のバスバー3と第2のバスバー3とが各導体路2に、導電性の接着剤5によって結合される。
【0059】
択一的な別の有利な形態では、導体路2の端部に位置する、バスバー3との電気的なコンタクティングのために設けられた範囲が、ポリマのベースボディ1内に埋め込まれない。導体路2の被着後に、下側の第1のバスバー3aと下側の第2のバスバー3aとが、両面の接着テープ8によってポリマのベースボディ1上に配置される。各導体路2の一方の端部に位置する、ポリマのベースボディ1内に埋め込まれていない範囲は、下側の第1のバスバー3aに被さるように案内される。各導体路2の他方の端部に位置する、ポリマのベースボディ1内に埋め込まれていない範囲は、下側の第2のバスバー3aに被さるように案内される。下側の第1のバスバー3aと下側の第2のバスバー3aとに、はんだ材料6が配置される。引き続き、下側の第1のバスバー3aの上方に上側の第1のバスバー3bが配置され、下側の第2のバスバー3aの上方に上側の第2のバスバー3bが配置される。下側の第1のバスバー3aおよび上側の第1のバスバー3bならびに下側の第2のバスバー3aおよび上側の第2のバスバー3bは、エネルギ投入により導体路2とはんだ付けされる。
【0060】
本発明による方法においては、導体路2が被着される前に、ポリマのベースボディ1が提供される。これにより、公知先行技術とは異なり、導体路2は導体路2の被着後の変形加工ステップによって負荷されない。製作されたテスト試料のいずれにおいても、導体路2、バスバー3または導体路2とバスバー3との間の結合部の損傷は確認されなかった。
【0061】
本発明における導体路2は、短い時間で灯具カバー10からの凝縮した空気湿分や氷の除去を可能にする。公知先行技術とは異なる、バスバー3を用いた各導体路2の電気的なコンタクティングにより、個々の導体路2を意図的に損傷させた場合でも、加熱作用の完全な故障は生ぜしめられなかった。
【0062】
この結果は当業者にとっては予期せぬものであり、意想外であった。
【符号の説明】
【0063】
(1) ポリマのベースボディ
(2) 導体路
(3) バスバー
(3a) 下側のバスバー
(3b) 上側のバスバー
(5) 導電性の接着剤
(6) はんだ材料
(7) 保護被覆体
(8) 両面接着テープ
(10) 加熱可能な灯具カバー
(11) 1の透明なコンポーネント
(12) 1の半透明なコンポーネント
(I) ポリマのベースボディ1の内側
(II) ポリマのベースボディ1の外側
A−A′ 断面線
B−B′ 断面線
【国際調査報告】