(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506726(P2015-506726A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】ユニバーサル顕微手術シミュレータ
(51)【国際特許分類】
A61B 19/00 20060101AFI20150206BHJP
G09B 23/28 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
A61B19/00 502
G09B23/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-543595(P2014-543595)
(86)(22)【出願日】2012年11月23日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月22日
(86)【国際出願番号】US2012066447
(87)【国際公開番号】WO2013078449
(87)【国際公開日】20130530
(31)【優先権主張番号】61/563,376
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/563,353
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514129372
【氏名又は名称】サッサーニ、ジョセフ
(71)【出願人】
【識別番号】514129383
【氏名又は名称】ウェブスター、ロジャー
(71)【出願人】
【識別番号】514129394
【氏名又は名称】フィオリル、マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サッサーニ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】フィオリル、マイケル
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA06
(57)【要約】
顕微手術シミュレーション・システムが、人間の眼のモデルの画像の仮想シミュレーションを提供するためのディスプレイと、手術ツールをシミュレートするためのハンドヘルド・ツールとを含む。ハンドヘルド・ツールは、ハンドヘルド・ツールの位置及び向きを示すために処理装置に位置信号を供給するための位置及び向きセンサと、ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素の間の直線距離を示すために処理装置に測定信号を供給するための追跡システムとを備える。ハンドヘルド・ツールの仮想表現がディスプレイ上に提示され、ハンドヘルド・ツールの仮想表現の外観及び位置決めは、ハンドヘルド・デバイスによって処理装置に供給された位置信号と測定信号とに基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレートされた顕微手術を受けるシミュレートされた人間の一部の画像の仮想シミュレーションを提供するためのディスプレイと、
手術ツールをシミュレートするためのハンドヘルド・ツールとを備え、前記ハンドヘルド・ツールが、前記ハンドヘルド・ツールの位置及び向きを示すために処理装置に位置信号を供給するための位置及び向きセンサと、前記ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素の間の直線距離を示すために前記処理装置に測定信号を供給するための追跡システムとを備え、
前記ハンドヘルド・ツールの仮想表現が前記ディスプレイ上に提示され、前記ハンドヘルド・ツールの前記仮想表現の外観及び位置決めが、前記ハンドヘルド・デバイスによって前記処理装置に供給された前記位置信号と前記測定信号とに基づく
顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項2】
前記ハンドヘルド・ツールが、鉗子である請求項1に記載の顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項3】
前記追跡システムが、デジタル・エンコーダである請求項1に記載の顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項4】
前記デジタル・エンコーダが、前記ハンドヘルド・ツールに取り付けられた無接触光センサに基づいて、前記ハンドヘルド・ツールの前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間の直線距離を決定する請求項3に記載の顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項5】
さらに、人間の頭部のモデルを備える請求項1に記載の顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項6】
さらに、カメラと、前記カメラを制御するフット・ペダルとを備える請求項1に記載の顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項7】
シミュレートされた顕微手術を受けるシミュレートされた人間の前記部分が、眼である請求項1に記載の顕微手術シミュレーション・システム。
【請求項8】
手術ツールをシミュレートするためのハンドヘルド・ツールとを備え、前記ハンドヘルド・ツールが、前記ハンドヘルド・ツールの位置及び向きを示すために処理装置に位置信号を供給するための位置及び向きセンサと、前記ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素の間の直線距離を示すために前記処理装置に測定信号を供給するための追跡システムとを備え、
前記ハンドヘルド・ツールの仮想表現がディスプレイ上に提示され、前記ハンドヘルド・ツールの前記仮想表現の外観及び位置決めが、前記ハンドヘルド・デバイスによって前記処理装置に供給された前記位置信号と前記測定信号とに基づく
顕微手術シミュレーション・ツール。
【請求項9】
前記ハンドヘルド・ツールが、鉗子、ピンセット、又は持針器である請求項8に記載の顕微手術シミュレーション・ツール。
【請求項10】
前記追跡システムが、デジタル・エンコーダである請求項8に記載の顕微手術シミュレーション・ツール。
【請求項11】
前記デジタル・エンコーダが、前記ハンドヘルド・ツールに取り付けられた無接触光センサに基づいて、前記ハンドヘルド・ツールの前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間の直線距離を決定する請求項10に記載の顕微手術シミュレーション・ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年11月23日出願の米国仮特許出願第61/563,353号、及び2011年11月23日出願の米国仮特許出願第61/563,376号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、手術シミュレーションのための方法及びツールの改良に関する。より詳細には、本発明は、顕微手術シミュレーション・ツール用の容易なソフトウェア及びハードウェアに関する。
【背景技術】
【0003】
角膜又は鞏膜裂傷をもたらす眼損傷は、様々な民間環境及び軍事環境で生じる。そのような損傷の熟練した閉鎖が、損傷を受けた眼を治癒して機能回復するための要点である。残念ながら、白内障手術技法の変化により、研修訓練中、眼科医は、眼科顕微手術縫合の体験が減っている。さらに、認定外科医の手術スキルを査定する者、及び外科教育プログラムを認証する者は、訓練生の技能の文書化を要求している。
【0004】
バーチャル・リアリティ・シミュレーションは、これらの目的に有用であると考えられている。しかしながら、その課題に適したシミュレータは存在しない。したがって、患者自身に加えて、シミュレーションから利益を得ることがあるのは、眼科、神経外科、血管外科での研修訓練プログラム、並びに病院及び軍部であり、そこでは、手術スキルが最新のものにされる必要があり、技能がテストされる必要があり、また新しい手術処置が学習される必要がある。
【0005】
従来の徒弟制度訓練モデル(平易に言うと、「見て学び、やって学び、教えて学び」)は、長年にわたって、外科教育の標準的な方法である。この教育パラダイムは、現在の外科学習環境に比べて多くのリスク及び欠陥を有する。
1.特に眼科外傷に関する患者フローが予測不能であることによる、構造化されていないカリキュラム;
2.大きな財務的コスト;
3.患者の健康に対する起こり得る脅威を含めた人的コスト;及び
4.研修医の仕事量に対する多くの形態の時間的需要及び規制上の制約により、訓練生の手が空いている時間が限られていることから生じる、管理不能な時間制約。
【0006】
研修医の手術経験は、厄介な手術事象又は不成功の手術結果の割合に相関される。例えば、白内障手術における眼科研修医の教育では、明確な「習熟曲線」が存在する。顕微手術シミュレーションは、その習熟曲線を短縮する、及び場合によっては手術中の合併症の発生率を減少させる有望性がある。そのような顕微手術シミュレーションは、顕微手術技法に大きく依存しているが、角膜若しくは鞏膜裂傷の治療、又は角膜移植など、比較的頻繁には行われない処置に関して特定の価値があるものと予想される。
【0007】
認定外科医の手術スキルを査定する者、及び外科教育プログラムを認証する者は、教育的インフラストラクチャの存在、及び教授法(didactics)又は処置の体験機会を単に示すだけでなく、訓練生の一部に関する技能の文書化を要求している。残念ながら、特に顕微手術におけるそのような実験室適性を査定するための適切なツールは開発されていない。顕微手術実験室評価は、そのような評価のために提案される1つの技法である。
【0008】
ACGME(全ての研修訓練プログラムに関する認証機関)は、その「Program Requirements for Graduate Medical Education in General Surgery」において、外科研修医を訓練するための施設資源が、「シミュレーション及びスキル実験室を含まなければならない。これらの施設は、技能ベースの評価方法を用いたスキルの獲得及び維持に対処しなければならない」と述べている。
【0009】
指摘されているように、眼科において、顕微手術シミュレーションに対する特定の必要性がある。眼科は、眼科外傷に利用可能な手術訓練経験がないため、顕微手術シミュレータの必要性が非常に高い1つの特定の分野である。以下は、顕微手術シミュレータを必要とする眼科での幾つかの特定の分野の列挙である。
1.民間の眼科外傷:米国における眼の穿通損傷(眼内に入る損傷)の発生率は、年間で、100000人当たり3.1人と見積もられている。これらの眼の機能回復のための要点は、早期の最初の専門的な顕微手術治療である。
2.軍事戦闘での眼科外傷:同様に、軍部は、手術シミュレータを特に必要とする。南北戦争から現在まで、戦闘による眼損傷の発生率は徐々に増加している。防護服が致命的な損傷から多くの戦士を救っており、またポリカーボネート製の保護アイウェアがいくらかの眼科外傷を防いでいることがあるが、爆破の際には、戦士は、生き残ったとしても、重度の眼損傷により永久的な障害が残ってしまうことが非常に多い。一時的に安定化させることができる他の形態の損傷とは異なり、眼科損傷は、硝子体切除や網膜再付着手術など後の再構成処置のために眼球が救われるべき場合には、また眼内感染を防止するためには、即時の顕微手術治療を必要とすることが多い。そのような感染(眼内炎)は、多くの他の組織及び器官に対してよりも眼機能に対してはるかに悪影響を及ぼす。眼科外傷トリアージ(ocular trauma triage)及び治療の成功のための基礎は、戦場付近での初期「眼球開放」損傷の迅速且つ専門的な初期治療と、その後の、ウォルター・リード陸軍医療センター(Walter Reed Army Medical Center)やブルック陸軍医療センター(Brooke Army Medical Center)などの医療センターでの、異物除去を含めた最終的な再構成眼科手術である。全ての眼科医が研修訓練中に眼球開放外傷手術をいくらかは経験しているものの、残念ながら、眼科医の多くは、軍に配属される前に、そのような外傷手術を直近には経験していない。これは、米国の軍事環境でさえ眼科実務においてそのような損傷の発生件数が少ないこと、又は、無関係の眼科の下位専門分野で後の研修を受けていることに起因する。したがって、特に眼科外傷に関する顕微手術スキルを最新のものにして高めるための効率的な手段を眼科軍医に提供する必要がある。
3.戦闘以外の軍事における眼科外傷:一次的又は二次的診断の軍事眼科外傷に関する入院の平均年間発生率は、100000人当たり77.1人である。これらの損傷のわずか7%が、兵器類又は戦争に関係し、これらの90%は、戦闘以外の活動によるものである。
4.退役軍人健康管理システム:米国退役軍人省(The Department of Veterans Affairs)が、全国で8700の研修医の職をサポートしている。退役軍人病院(Veterans Administration Hospitals)は、米国の外科教育システムの一部である。さらに、Longo等によって記されているように、「米国退役軍人省の4つのミッションのうち、研究と教育は、退役軍人に、質の高い現況技術臨床ケアを提供するのに重要である」。退役軍人に対するケアの質に対する、学術医療センターと退役軍人病院との提携の利益は、他の者によって引用されている。学術提携を行っている退役軍人病院での患者集団は、より高い危険因子を有し、より複雑な手術処置を受ける可能性が高い。したがって、外科研修医教育の効率及び品質を高める措置は、特に、退役軍人集団に影響を及ぼす見込みがある。
5.眼科における手術スキルの課題:眼科研修修了医に関する近年の調査から、2/3が、さらなる手術訓練が必要であると感じていることが判明した。眼科は、この専門分野が顕微手術技法に依存しており、また新たな技術が常に入り込んでいるので、外科教育への徒弟制度手法の欠点の影響を非常に受けやすいことがある。さらに、研修医選考プロセス中に技能の開発に必要とされるスキルをテストすることが必要となることがある。そのようなテストは、研修修了医が遭遇する難しい事例の幾つかを避けることがあるが、それにもかかわらず、研修修了医は、研修期間中に手術スキルを獲得するのが難しい(現在、眼科研修プログラムは、「手術を行わない(non−surgical)」眼科医を認定することができない)。眼科教育でのこれらの傾向の影響は、近年、白内障手術のための創傷形成の主流の技法が、縫合なしの「透明角膜」手法に移行していることにより、さらに悪化している。その結果、今日、眼科研修医は、非外傷関連の顕微手術環境で縫合を行うことがはるかに少ない。以前には、角膜−鞏膜接合部(輪部)での顕微手術縫合は、白内障手術中に標準的な処置であった。したがって、研修を修了した今日の眼科医は、角膜又は鞏膜の外傷性創傷を治療することをいずれ要請されたときに、顕微手術縫合技法の経験がはるかに少ない。それにもかかわらず、眼科外傷の治療は、眼科研修医が獲得すべき最も重要なスキルの1つとして列挙されている。
【0010】
したがって、民間環境、軍事環境、及び退役軍人局環境における眼科外傷の改良された手術ケアの必要性に眼科医が対応することができるようにし、眼科外傷の患者のケアの質の向上に寄与するシミュレータ・デバイスの必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ACGME「Program Requirements for Graduate Medical Education in General Surgery」
【0012】
本発明者らは、ユニバーサル顕微手術シミュレータを提供する。このシミュレータは、角膜及び鞏膜の裂傷及び穿通の顕微手術治療における眼科研修医の指導を補助することができ、また、これらの分野での熟練した外科医のスキルを最新のものにする。さらに、同じシステムのユニバーサル機能が、そのシステムを、他の顕微手術処置において眼科研修医を訓練するために使用できるようにし、又は外科の他の下位専門分野(神経外科、血管外科、及び形成外科)での顕微手術医のスキルを訓練する若しくは最新のものにするために修正できるようにする。したがって、本開示を通じて、本発明の様々な実施例は、特許請求の範囲内に明示的に記載されていない限り、眼科手術に限定すべきでないことを理解されたい。
【0013】
顕微手術シミュレータが、認定外科医のための認証外科教育プロセス及び技能評価の一部となると予想される。したがって、本発明者らのシミュレータは、訓練中の研修医のためには、顕微手術の習熟曲線を短縮するための機会を提供し、また、熟練した外科医のためには、顕微手術スキルを高める、又は新たなスキル・セットを学習する機会を与える。さらに、システムはフレキシブルであり、血管外科、神経外科、及び形成外科など他の専門分野での外科医の訓練に適合させることができる。
【0014】
シミュレートされた顕微手術を受けるシミュレートされた人間の一部の画像の仮想シミュレーションを提供するためのディスプレイと、手術ツールをシミュレートするためのハンドヘルド・ツールとを有する顕微手術シミュレーション・システムが本明細書に開示される。ハンドヘルド・ツールは、ハンドヘルド・ツールの位置及び向きを示すために処理装置に位置信号を供給するための位置及び向きセンサを有する。また、ハンドヘルド・ツールは、ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素の間の直線距離を示すために処理装置に測定信号を供給するための追跡システムを有する。
【0015】
ハンドヘルド・ツールの仮想表現がディスプレイ上に提示され、ハンドヘルド・ツールの仮想表現の外観及び位置決めは、ハンドヘルド・デバイスによって処理装置に供給された位置信号と測定信号とに基づく。
【0016】
顕微手術シミュレーション・システムの別の実施例では、ハンドヘルド・ツールは、鉗子である。
【0017】
顕微手術シミュレーション・システムのさらに別の実施例では、追跡システムは、デジタル・エンコーダである。
【0018】
顕微手術シミュレーション・システムのさらに別の実施例では、デジタル・エンコーダは、ハンドヘルド・ツールに取り付けられた無接触光センサに基づいて、ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素との間の直線距離を決定する。
【0019】
顕微手術シミュレーション・システムのさらなる実施例では、システムがさらに、人間の頭部のモデルを備える。
【0020】
顕微手術シミュレーション・システムのさらなる実施例では、システムがさらに、カメラと、カメラを制御するフット・ペダルとを備える。
【0021】
顕微手術シミュレーション・システムのさらなる実施例では、シミュレートされた顕微手術を受けるシミュレートされた人間の部分が、眼である。
【0022】
さらに、手術ツールをシミュレートするためのハンドヘルド・ツールを有する顕微手術シミュレーション・ツールが本明細書に開示される。ハンドヘルド・ツールは、ハンドヘルド・ツールの位置及び向きを示すために処理装置に位置信号を供給するための位置及び向きセンサと、ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素の間の直線距離を示すために処理装置に測定信号を供給するための追跡システムとを有する。
【0023】
ハンドヘルド・ツールの仮想表現がディスプレイ上に提示され、ハンドヘルド・ツールの仮想表現の外観及び位置決めは、ハンドヘルド・デバイスによって処理装置に供給された位置信号と測定信号とに基づく。
【0024】
顕微手術シミュレーション・ツールの別の実施例では、ハンドヘルド・ツールは、鉗子、ピンセット、又は持針器である。
【0025】
顕微手術シミュレーション・ツールのさらに別の実施例では、追跡システムは、デジタル・エンコーダである。
【0026】
顕微手術シミュレーション・ツールのさらに別の実施例では、デジタル・エンコーダは、ハンドヘルド・ツールに取り付けられた無接触光センサに基づいて、ハンドヘルド・ツールの第1の構成要素と第2の構成要素との間の直線距離を決定する。
【0027】
添付図面に、本発明者らのユニバーサル顕微手術シミュレータの幾つかの現在好ましい実施例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】眼科手術プロセス中に顕微手術技法を訓練する際に使用されるシステムの一実施例を示す図である。
【
図2】顕微手術シミュレーション・ツールとしてモデル化された鉗子を示す分解図である。
【
図3】顕微手術シミュレーション・ツールとしてモデル化された鉗子を示す分解図である。
【
図4】顕微手術シミュレーション・ツールとしてモデル化された鉗子を示す分解図である。
【
図5】顕微手術シミュレーション・ツールとしてモデル化された鉗子を示す図である。
【
図6】下瞼で結紮された状態での、所定位置にあるシミュレートされた開瞼器の画像を示す図である。
【
図7】顕微手術シミュレーション・ツールとしてモデル化された鉗子を示す図である。
【
図8】現実の患者のモデルと、顕微手術シミュレーションでの人間の顔の仮想表現との間の対応関係を提供するために使用される人間の頭部のモデルを示す図である。
【
図9】3次元画面を使用する手術シミュレーションの2つのレンダリング、すなわち上部レンダリングと底部レンダリングを示す図である。
【
図10】ソフトウェア更新ループのサンプルを示す図である。
【
図12】様々な糸セグメントの操作に関するアルゴリズムを示す図である。
【
図13】本発明の一実施例のシミュレータに関するインターフェース画面の実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ユニバーサル顕微手術シミュレータの好ましい実施例の全体的な全般的説明を本明細書に提供する。
図1に示されるユニバーサル顕微手術シミュレータ・システム1は、仮想顕微手術環境を提供するために使用されることがある複数の構成要素を提供する。
図1に示される好ましい実施例は、眼科手術プロセス中に顕微手術技法を訓練する際に使用されるシステムに関するものである。しかし、本発明は、眼科手術プロセスに限定されず、様々な顕微手術プロセスのための訓練システムとして使用することができる。
図1で見ることができるように、システムは、仮想シミュレーションを提示するための1つ又は複数のディスプレイ2と、物理的基準点として使用すべき人間の頭部及び眼の身体モデル3と、仮想カメラを制御するためのフット・ペダル5と、仮想環境内でモデル化すべきハンドヘルド・ツール7とを含むことがある。フット・ペダル5、ハンドヘルド・ツール7、及び身体モデル3からの入力が、処理装置9又は処理デバイスに提供され、処理装置9は、ディスプレイ2に出力を提供する。ディスプレイ2は、タッチ画面デバイスでも非触知デバイスでもよい。したがって、処理装置9は、ディスプレイ1自体から入力を受信することもある。
【0030】
ユニバーサル顕微手術シミュレータ・システム1は、顕微手術で使用することができるハンドヘルド・ツール、小さなアセンブリ、又はピンセット、鉗子、鋏、若しくは他のツールが使用される任意の作業をユーザがシミュレートすることができるようにする。システムのハードウェアは、一般的なツール本体を使用し、ツール本体に、特定の用途をシミュレートするために先端を取り付けることができる。操作のために摘んだり握ったりする指の動きを必要とする、ピンセット、鉗子、鋏、及び他のハンドヘルド・ツールを模した先端を作製することができる。
【0031】
ユニバーサル顕微手術シミュレータ・システム1のソフトウェア及び/又はハードウェア構成要素は、達成すべき顕微手術作業に関する仮想環境を提供する。ピンセット、鉗子、及び鋏などのハンドヘルド・ツールの使用を対象とする他の作業も達成することができる。眼科顕微手術環境でのハードウェア及びソフトウェアの機能及び使用を表す好ましい実施例を、本明細書で述べる。
【0032】
複数の異なる器具を、手術中、特に縫合プロセス中に外科医が使用することができる。例えば、湾曲鉗子、直線鉗子、及び持針器の任意のもの又は全てを、縫合処置中に使用することができる。湾曲鉗子、直線鉗子、及び持針器は、手術中に結紮するために使用される。したがって、ユニバーサル顕微手術シミュレータは、仮想顕微手術環境でこれらの各ハンドヘルド・ツールをモデル化すること、及び結びをモデル化することが可能である。ユニバーサル顕微手術シミュレータは、ツール交換を、身体的と仮想的との両方ではなく、仮想的に行うことを可能にする。
【0033】
図2〜
図5に示される好ましい実施例では、手術鉗子は、ハンドヘルド・ツール11としてモデル化されている。ハンドヘルド・ツールは、例えば上述した手術ツールなど、任意の望まれる手術ツールをシミュレートするために使用される。このことは、ツールの非仮想の外観が鉗子のようであるとしても当てはまることがある。先端の物理的な外観及び機械的な感触は、カスタマイズ可能な先端を顕微手術ツール本体上に設置することによって容易に変えることができる。
【0034】
一実施例では、ハンドヘルド・ツール11は、ハンドヘルド・ツール11の位置及び向きを示すために処理装置に位置信号を供給するための位置及び向きセンサと、ハンドヘルド・ツール11の第1の構成要素13と第2の構成要素15の間、又は先端間の直線距離を示すために処理装置に測定信号を供給するための追跡システムとを含む。ユニバーサル顕微手術シミュレータが、ソフトウェア要件を実行するコンピュータ及びハンドヘルド・ツールとしてユーザの研究室内で具現化される場合などには、処理装置はローカルに位置されることがある。また、処理装置は、サーバ制御型のシステム内に実装されることもあり、処理機能は、ユニバーサル顕微手術シミュレータの他の構成要素と必ずしも同じではない位置で行われる。いずれにせよ、典型的には(1つ又は複数の)ディスプレイが提供されて、ディスプレイは眼のモデルの画像の仮想シミュレーションを示す。
【0035】
ハンドヘルド・ツール11の仮想表現がディスプレイ上に提示され、ハンドヘルド・ツールの仮想表現の外観及び位置決めは、ハンドヘルド・デバイスによって処理装置に供給された位置信号と測定信号とに基づく。したがって、
図6で見られるように、ハンドヘルド・ツール11は、ハンドヘルド・ツールからの入力に基づいて、眼の仮想モデルに対して、ある空間的な関係で提示される。
【0036】
図3に示されるように、鉗子の先端13、15の取付点は、ツール本体の最下部に形成されることがあり、したがって、ハンドヘルド・ツールは、親指と人差し指との間にフィットし、先端13、15を自然な位置で操作できるようにする。ツールは、
図5及び
図7に示されるようにモノコック設計を形成するように設計及び加工されることがある。好ましいモノコック設計は、センサ、光学系、及び電子機器を埋め込むための、ツール本体内部の妨げのない十分な領域を実現可能にする。この方法を使用して、ツール本体のケース17は、システムの能動電気機械−光学構成要素としても、高精度の能動の耐力構造としても働くことができる。ケース17は、
図2〜
図4に示される内側ハウジング42及び外側ハウジング39、41など、複数の構成要素から形成されることがある。光学系及び電子機器は、ケース17内に埋め込まれることがあり、複数のスリーブ軸受として、及びケーブル支持体としても働く構造を形成する。したがって、デバイス全体が、洗練されたエンコーダ・モジュールとして働くことがある。この機能は、先端角度を測定するために使用される回転光学系が、例えばミリメートル未満の範囲内での偏向に対する感度を有することがあるので、より高い精度を実現可能にする。
【0037】
さらに、ハンドヘルド・ツールのケースは、弾力性の自己潤滑性材料から作製することができる。例えば、ツール本体は、様々なタイプの化学的接触、及び人間ユーザの皮膚からの油分に耐えられるように、Delrin(登録商標)と呼ばれる高強度の自己潤滑性ポリオキシメチレン材料から形成することができる。また、Delrin(登録商標)材料は、自己潤滑特性を有し、したがって、ハンドヘルド・ツールの予防メンテナンスを必要としない。ピン19、ねじ21、及び先端13、15など全ての金属部品は、最大限の耐食性及び耐錆性を提供するためにステンレス鋼から形成されることがある。
【0038】
ハンドヘルド・ツール11には、センサが埋め込まれ、センサは、シミュレーション・プログラムが、実世界でのハンドヘルド・ツールの位置決め、向き、移動、及び状態を把握できるようにする。シミュレータは、仮想世界で移動する器具を正確にシミュレートするために、各器具の位置及び向きを必要とする。6自由度(6−DOF:six degree−of−freedom)追跡センサ25が、ベース・センサと2つの可動センサとの間の磁気パルスに基づいて、6自由度の向きと、相対位置とを与える。6−DOFセンサ25は、モデル化されているハンドヘルド・ツールの向き及び位置を取得するために使用される。
【0039】
センサ・ポケット23が、ハンドヘルド・ツール11の本体内部に加工されて、6−DOFセンサ・システム25を保持する。このセンサ25は、3次元空間(x、y、及びz)でのツール本体の位置と、ツール本体の向き(ピッチ、列、及びヨー)とを監視する。そのようなセンサの実例は、Polhemusによって製造されているPatriotセンサでよい。手術のモデル化は、モデル化されることを意図されるハンドヘルド・ツールのX、Y、及びZ平面に関する正確な位置、及び向き(ピッチ、ロール、及びヨー)を必要とする。6−DOF追跡センサ25の位置及び向きは、現在選択されているハンドヘルド・ツールの仮想モデル27の正確な表現を提供する。ハンドヘルド・ツール11の先端13、15の開閉の度合いは、光学センサの外挿に基づく。さらに、ツールの延在部が近ければ近いほど、ツールの各側に加わる回転は小さくなる。
【0040】
一実施例では、ハンドヘルド・ツール11は、ツール本体内でばね負荷を受けており、先端端部間に8mmの空間を有する鉗子先端を有する。一方の先端15は、回転プラットフォームに取り付けられる。他方の先端13は、ツール本体上の固定点に取り付けられる。ユーザが握って先端を合わせるとき、回転プラットフォーム29に取り付けられた先端が、そのプラットフォームを中心軸の周りで移動させる。これはまた、回転プラットフォーム29に埋め込まれた光ディスク33の回転を引き起こす。光学系を有するプリント回路板(PCB:printed circuit board)35は、ツール本体内部に永久的に固着されることができる。したがって、回転ディスク33は、ツール13、15が押し合わされるときに、固定された回路板35に対して変化する。実例として、回転ディスクは、128本の反射ラインと、128本の黒色ラインとを上に有することがある。光源と2つの光受信機とを備える光学系が、PCB35に位置され、光受信機は、光ディスク上のラインによって、反射及び吸光をデジタルで追跡する。
【0041】
「直交符号化」と呼ばれるプロセスにより、吸光ラインと光反射ラインの各対が、PCB35上に位置された2つの光受信機に4つの別個の信号を生成する。4対のラインが、ツール先端の開閉の16個の異なるレベルを形成する。したがって、ユニバーサル顕微手術シミュレータは、光ディスクからの異なるデジタルフィードバックに基づいて、先端が何ミリメートル開いているかをデジタルで測定することができる。開閉の分解能は、使用される光学系の分解能のみによって制限される。
【0042】
好ましい実施例では、ユニバーサル顕微手術シミュレータは、デジタル・エンコーダからなることがある追跡システムを利用して、ハンドヘルド・ツールの先端間の直線距離を正確に測定することができる。
図2〜
図5に示される好ましい実施例では、一方のツール先端が、可動プラットフォーム29に取り付けられ、他方の先端が、固定プラットフォーム23に取り付けられる。コード・ホイール33、磁石、又は他の回転エンコーダ構成要素が、このプラットフォームに埋め込まれる。可動プラットフォーム29は、加工されていることがあるポケット37内に嵌まり、ポケット37は、可動プラットフォーム29の移動を、使用される特定のハンドヘルド・ツール(例えばピンセット又は鉗子)の先端13、15の設計の開閉限度までに制限する。ばねが、ポケット37と可動プラットフォーム29との間で押し、したがって、ツール先端13、15が解放された後には、可動プラットフォーム29を常に初期位置に戻す。
【0043】
可動プラットフォーム29は、中心回転点を有し、加工されたピン19が、中心回転点を通して挿入される。このピン19は、外側ハウジング39、41内に位置された、加工された穴に嵌まり、外側ハウジング39、41はスリーブ軸受のように働く。アセチルが、その自己潤滑特性のために、ハウジング本体に使用されることがある。これは、設計に不可欠な、メンテナンスが要らない自己潤滑性軸受システムを実現可能にする。
【0044】
一体型エンコーダ追跡モジュールを有するプリント回路板(PCB)35は、ハンドヘルド・ツール11の本体の内部に固着される。操作者による先端摂動中に、可動プラットフォーム29がハンドヘルド・ツール11の本体に対して回転するとき、PCB35に位置されたエンコーダ・モジュールは、光学アブソリュート型又はインクリメンタル型エンコーダに関しては光学特性の変化、又は磁気アブソリュート型又はインクリメンタル型エンコーダに関しては磁束の変化を追跡する。これらの信号は、次いで、オンボード・マイクロコントローラによって処理され、USB、シリアル若しくはパラレル入力、又は赤外線など他の形態の通信機能、又は他の形態のワイヤレス通信機能を介してホスト・コンピュータ・システムに報告される。当然、USBは必須の接続モダリティではなく、他の標準(限定はしないがワイヤレス標準を含む)を使用することもできることを理解されよう。
【0045】
追跡システムは、ハンドヘルド・ツール11の先端13、15の離隔の度合いを査定するために、光センサからなることがある。好ましい実施例では、特に医療シミュレーション用に開発されている無接触光学追跡センサが使用される。追跡システムは、ハンドヘルド・ツール11の位置及び向きを報告するために使用される6−DOFセンサ・システムの電磁信号に干渉することなく、器具先端13、15の開閉の度合いを測定する。また、追跡システムは、磁束の変化に基づいてハンドヘルド・ツール11の離隔の度合いを計算する1つ又は複数のデバイスを含むこともある。しかし、光学系の使用は、電位差計、又は電磁場を放出することがある他のデバイスによって生じることがある誤差をなくす助けとなる。追跡システムの測定部品間の直接的な接触がないので、光学ソリューションはまた、従来の設計とは異なり、ほぼ無限の寿命を提供する。
【0046】
この追跡システムを用いて、ハンドヘルド・ツール11は、ハンドヘルド・ツール11が外科医の手でどのように開閉されているかに関する入力を与える。幾つかの実施例では、ハンドヘルド・ツールから光センサが感知する16以上の外挿があることがある。これらの外挿は、ツールのベース端部間の距離に基づく。この情報は、6−DOFセンサ・システムの向き及び相対位置情報と共に、任意の眼科手術ツールを仮想表現するのに必要な全ての詳細を提供する。
【0047】
全体として、ツールの寿命及び信頼性が高められるように、耐久性材料を選択することができる。耐久性材料は、例えば、Delrin(登録商標)及びステンレス鋼を含む。
【0048】
また、ユニバーサル顕微手術シミュレータ・システム1は、フット・ペダルに接続された仮想顕微鏡を含むこともあり、仮想顕微鏡は、シミュレーションにおいて患者の眼又は他の手術ターゲットを表示するために使用される。フット・ペダルは、現実の手術環境で使用されることがある。なぜなら、外科医は、顕微鏡を操作するために手が空いていないからである。フット・ペダルからのユーザ入力は、仮想世界内のカメラを操作する。フット・ペダル内のセンサ回路板が、フット・ペダルからの入力を取得する。フット・ペダルは、ズーム、位置、及び焦点など仮想顕微鏡の態様を制御する。
【0049】
好ましい実施例では、フット・ペダルのインターフェースは、ヒューマン・インターフェース・デバイス(HID:Human Interface Device)として知られている、ユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)標準における特殊なクラスである。ソフトウェア更新ループにおいて、フット・ペダルの各ボタンがポーリングされ、ボタンの現在の状態がボタンの以前の状態と一致していない場合には、変更が生じている。変更が生じているとき、カメラ又はシミュレーションを操作するための適切なコードが呼び出される。ズームやフォーカスなど特定のボタン、及びパニング用のジョイスティックが押下され、解放されるまでカメラを操作し続けることができる。フット・ペダルは、USB HIDを有し、デバイスへのインターフェースは、追加のソフトウェア・ドライバを必要としない。なぜなら、現代のオペレーティング・システムは全て、それらの基本操作に組み込まれたHIDを有するからである。
【0050】
カメラ位置及び操作は、フット・ペダルによって与えられる入力に基づく。ジョイスティックの移動は、仮想世界内のX(上下)平面及びY(左右)平面を操作する。ズームイン及びズームアウト・ロッカーの押下が、Z平面(顔に向かう及び顔から離れる)を操作する。ボタンの幾つかは、特殊機能のためにプログラムされることがある。ボタン(好ましくはペダルの右下にある)を使用して、手術準備ができた位置にカメラを自動ズームすることもできる。これは、眼の上にカメラをズームインして位置合わせすることを不要にするので、ユーザにとって時間の節約になる。自動ズーム機能が実装されることもあり、それにより、ユーザは、シミュレーションのより多くの反復を完了することができる。
【0051】
グラフィックスが3次元画面上に3次元で現れるように、追加のビューポート及びカメラの実装が必要であることがある。3次元画面を使用する一実施例では、
図9に示されるように、シミュレーションの2つのレンダリング、すなわち上部レンダリングと底部レンダリングが存在することがある。各レンダリングは、画面のサイズの半分である。上部及び底部ビューはどちらも、フット・ペダルにあるフォーカス・ロッカーによって調節することができるオフセットを有する。視野は、通常のシミュレーション描画よりも広い。より広い視野は、周辺視覚に対処する。視野のオフセット及び変更は、適切な3次元眼鏡を着用したとき、又は適切なディスプレイ画面上に表示されたときに画面から飛び出して見えることがある画像をユーザに提供する。3次元モニタは、上部ビューポートと、底部ビューポートとを重畳する。
【0052】
フォーカス・ボタンは、上側3次元画面及び下側3次元画面内でカメラのオフセットを操作する。
図9に示されるように、3次元画面は、カメラ・オフセットによって上下に描画される。オフセットが、視野の変化と組み合わされるとき、ユーザは、奥行きを感じる。オフセットが多すぎる又は少なすぎるとき、画像は、ぼやけていることがある。このぼやけは、グラフィックス後処理を必要とするガウスぼかし又は他のタイプのぼかし効果を使用する必要性をなくす。グラフィックス後処理は、フレーム・レートの低下を引き起こすことがあり、これは、ユーザ・エクスペリエンスを悪くすることがある。
【0053】
図8に示されるように、ユニバーサル顕微手術シミュレータは、人間の頭及び眼のモデルを含むことがあり、これは、現実の患者のモデルと、顕微手術シミュレーションでの人間の顔の仮想表現との間の対応関係を提供するために使用される。手術中、外科医はしばしば、自分の手を固定する手段として、前頭部など頭部の一部を使用する。頭部は、現実的なモデルを提供するために、ポリマーの耐久性混合物からなることがある。成形される頭部は、付着防止特性を有するポリマーのブレンドから形成することができる。ポリマーの様々な濃度及び厚さが、ヒトの皮膚及び骨構造の感触を生み出すことができる。
【0054】
また、ユニバーサル顕微手術シミュレータは、タッチ画面を含むこともあり、タッチ画面は、ユーザがツールを選択し、受信された入力に基づいて手術処置を修正できるようにする。また、タッチ画面は、外科シミュレーション自体のためのディスプレイとして使用することもでき、又はメイン・ディスプレイに対する追加の周辺デバイスでもよい。さらに、ディスプレイは、3次元シミュレーション機能を提供するタッチ画面又は非タッチ画面デバイスでよい。
【0055】
仮想ツール又はユニバーサル器具は、ユーザ・インターフェースから選択されることがあり、
図6に示されるように顕微手術環境の仮想シミュレーション内に描画される。上述したように、ハンドヘルド・ツールの仮想表現27は、6−DOFセンサ及び追跡システムの位置及び向きに基づいて、シミュレーション内に描画される。各ツールのモデルは、取り付けられたツールの間の距離に基づいて回転され、この距離は、光学システムによって与えられることがあり、又は磁束の変化に基づいて計算されることがある。
図10に示されるように、ソフトウェアの更新ループにおいて、位置、向き、及びツール距離回転が更新される。初期化し、コンテンツをロードした後、シミュレーションの更新ループが、毎秒60回呼び出されることがある。全ての物理的操作、入力、数学的計算、及び人工知能処理が、更新ループ内で行われる。更新ループが終わると、時間があれば、描画ループが、画面にシミュレーションをレンダリングする。
【0056】
システムは、複数の器具を採用することが可能である必要があるので、ハンドヘルド・ツールの構造内に位置された対応する6−DOF追跡センサにどのハンドヘルド・ツールが関連付けられているかを検出する必要がある。各ツールは、その独自の一意の電子シリアル番号(ESN:electronic serial number)でプログラムすることができる。各ツールに関するESNは、割り当てられたESNに基づいてそのツールを識別できるようにする。各ツールに関するESNのプログラミングは、ソフトウェア設計者によって書かれるWindows(登録商標)ベースの診断及びメンテナンスプログラムによって行うことができる。実例として、ESNは、ハンドヘルド・ツールの構造内のUSB送受信機の不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM:Non−Volatile Random Access Memory)にプログラムすることができる。次いで、器具は、再プログラミングされない限り、このシリアル番号を無期限で保持する。シミュレーション・ソフトウェアは、全ての利用可能な器具を検出することを可能にし、シリアル番号に基づいて、各ツールを、6−DOF追跡システムでの特定のセンサ番号に関連付けられるようにする。
【0057】
シミュレーションは、ディスプレイ画面上の仮想頭部のビューから始まる。ユーザは、フット・ペダルと対話してカメラを操作し、眼にズームインして焦点を合わせることが可能である。ユーザが眼に十分に近付くと、
図6に示されるように、開瞼器43が、仮想シミュレーション内で眼に配置される。開瞼器43は、瞼を抑え、外科医が処置を行うための追加の空間を提供する。ユーザは、ズームイン、焦点合わせ、及び適切な位置決めが行われると、ツールをピックアップして、手術を開始する。手術中、ユーザは、様々なツールを選択することができ、それらのツールは、
図13に示されるようなユーザ・インターフェースを介して利用可能であり、タッチ画面又は他の選択可能な位置に表示される。次いで、ユーザは、提供される訓練モジュール、例えば縫合などを行うことができる。
【0058】
ユニバーサル顕微手術シミュレータに関するソフトウェアの大半又は全てを、C#プログラミング言語を使用してプログラムすることができる。C#は、オブジェクト指向であり型安全な(type−safe)中〜高水準言語である。C#プログラミング言語は、自動ガーベッジ収集及び例外処理を有し、統一型システム(unified type system)を有する。C#コードのシンタックスは、Java(登録商標)及びC++と同様である。また、C#は、NET Framework及びXNA Frameworkも含む。C#のシンタックス及び機能により、C##は、眼科外傷顕微手術シミュレータ、又は一般に顕微手術シミュレータの作成のための良好な選択肢となった。
【0059】
MicrosoftのXNAソフトウェアパッケージは、グラフィックス、入力、及びファイル管理のための低レベル・コードを書き換える必要をなくすことによって、ゲーム開発者が迅速にゲームを構築できるようにするツール・セットである。プログラマは、MicrosoftのXNA Frameworkを使用して、3次元グラフィックスを備えるロバストであり、スケーラブルであり且つ対話型のソフトウェアを作成することができる。MicrosoftのXNA Game Studioは、MicrosoftのVisual Studioへの統合開発環境(IDE:integrated development environment)拡張である。MicrosoftのVisual Studioは、プログラマがプログラム・コードを迅速に編集及びフォーマットするための幾つかのツールを有する。XNA Game Studioの1つの機能は、XNAコンテンツ・パイプラインである。XNAのコンテンツ・パイプラインは、メディア(例えば3次元モデル)を、プログラム実行前にゲーム準備完了フォーマットにパースする。ゲーム準備完了フォーマットでのメディアは、プログラム実行中の特殊化されたパースを必要とせず、メディアをロードする時間を短縮する。Microsoft XNAは、以下の3つの理由で望ましい。1)グラフィカル機能、2)デバイス入力の受信が容易であること、及び3)既存のNETライブラリを使用できること。
【0060】
教授法は、ユーザが何を完了したか、及び次に何をすべきかに関するフィードバックを表示することによって、ユーザに教示する命令である。教授法は、2Dグラフィックスと3Dグラフィックスの使用を組み合わせる。2Dグラフィックスは、深さバー及びフィードバック・テキストを含む。3Dグラフィックスは、挿入点を含む。深さバーは、望まれる深さと比較した、眼内での針の深さをユーザに示す。本願のプロジェクト外科医Dr.Joseph Sassaniからのフィードバックによれば、研修医が直面する主な問題の1つは、眼損傷を適切に縫合するのに十分遠い位置に針を刺すことができないことであった。フィードバック・テキストが、進行中の手術に関する情報を提供する。深さバーとフィードバックの両方が、ヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD:heads up display)内にある。挿入点は、針を次に配置すべき場所をユーザに示す。挿入点に関するグラフィックは、丸い球である。挿入点を表す球は、眼の前方で、望まれる針挿入位置に配置される。
【0061】
教授法の利益は、シミュレーション・プログラムが、物理計算、衝突検出、及びメッシュ操作のフォーカスを狭めることができることである。計算領域を狭めることは、シミュレーションの性能及び効率を高める。教授法は、手術の針の深さ、及び針を次に配置すべき場所を表示する。
【0062】
さらに、ユニバーサル顕微手術シミュレータは、MUX Engineと呼ばれるソフトウェア・ライブラリ拡張機能を使用することができる。衝突検出に関して、MUX Engineが使用されることがある。MUX Engineは、モデル衝突並びにベクトル及び行列の高度な操作及び計算機能を有し、これらは、Microsoft XNAには含まれていない。MUX Engineは、計算を書き換える必要をなくし、不正確なベクトル又は行列計算の可能性を減らす。
【0063】
MUX Engineは、モデル−モデル衝突、及び光線−モデル衝突をチェックする。光線は、カメラから投射されて、顔及び眼のモデルに対する衝突をチェックする。衝突が生じると、カメラは、(カメラがモデルを通り過ぎる又はモデルをクリップするので)衝突の方向に進むことを許可されない。カメラがモデルをクリップする又はモデルを通り過ぎる場合、ユーザは、シミュレータの不明領域に入る可能性がある。カメラは、顔の周りの領域に束縛され、水平方向では顔の幅、及び垂直方向では顔の高さの2倍を超えて動くことはできない。
【0064】
眼科顕微手術シミュレーション中、仮想の眼が、メッシュ・グリッドをもたらす数学的計算に基づいて表現される。眼のメッシュ・グリッドは、一連のテクスチャ付きの三角形ストリップを組み合わせることによって描画される。眼のメッシュ・グリッドは、仮想シミュレーション内で眼の前方に位置される。典型的には、ユーザは眼のメッシュの最初の層よりも下は見ないので、眼のメッシュ・グリッドの上層のみが描画される。
【0065】
フックの弾性法則を使用して、眼のメッシュの一部をシミュレートすることができる。メッシュは、実世界の力及び反応のシミュレーションを可能にする見えないばねによってつながれた点のグリッドである。眼のメッシュ・グリッドの任意の点に力をかけることができる。糸の運動に基づくメッシュ操作は、力を計算するために、4点系に基づく。針の挿入点、裂傷の出口点、裂傷の入口点、及び針の出口点が、着目点である。力は、これらの4点を通してメッシュに加えられ、眼を表現するメッシュ・グリッド内の点の位置を変える。メッシュ位置の変化は、メッシュの描画に反映される。
【0066】
結紮用の糸を正確且つ効率的にシミュレートすることは、眼科顕微手術シミュレーションの核心である。糸は、糸のセグメント間のラインをレンダリングすることによって描画される。各セグメントは、1点を有し、場合によっては、つながった隣接セグメントを有する。隣接するセグメント間でラインがレンダリングされる。シミュレータは、基本的には、セグメント間の「点をつなぐ(connects the dots)」。眼科縫合手術で使用される主要な結びは、本結びである。ユニバーサル顕微手術シミュレータは、ユーザが適切な本結びをしているか、それとも縦結びなど別の結びを不適切に適用しているかを判断することが可能である。縦結びは、滑りやすく、本結びよりも安定でなく、重大な合併症を引き起こす可能性がある。
図11は、例示的な外科結びの図示であり、結びの複雑さが示されている。
【0067】
複雑な結びの可能性により、フックの弾性法則に基づくソフトウェア・コードが、ユニバーサル顕微手術シミュレータと共に使用されることがある。コードが、フックの法則に基づく場合、シミュレーション糸は、現実的な弾性を有する。糸は、200個の円筒形セグメントを組み合わせることによってシミュレートすることができる。糸のセグメントの操作に関するアルゴリズムが
図12に示されている。
【0068】
ユーザ・インターフェースの主な目的は、ユーザが、自分が望むものを正確に容易に選択して、プログラムからの迅速な応答を受信できるようにすることである。ユニバーサル顕微手術シミュレータのタッチ画面ユーザ・インターフェースのレイアウトの実例が
図13に提供される。このインターフェースは、ポインティング・デバイス、例えばマウスを使用して実装することもできる。
図13に見られるように、タッチ画面の中心に、進行中の現行シミュレーションのビュー47がある。タッチ画面ビューの左下及び右下に、ツール選択ガイド45がある。様々なツールが、ピクチャ及び/又はテキストによって表示されることがある。タッチ画面実施例では、アクティブなツール画像は、ツールの画像、テキスト、又は枠縁の領域にタッチすることによって強調表示することができ、枠縁、画像、及びテキストは、中心に向かってわずかに移動される。色及び/又は位置の変化が、どのツールが現在選択されているかを示すこともある。
【0069】
図13にも示されるように、インターフェース画面の下には、複数のユーティリティ・ボタンがある。「i」によって表現される情報ボタン49は、ユーザに、シミュレーション・ソフトウェア自体に関する情報、及び進行中の現行シミュレーションの基本情報を与える。リセット・ボタン51は、ユーティリティ・ボタンの中央にあり、円形のシンボルによって表現される。リセット・ボタンは、シミュレーション全体をリセットする。リセットにより、ユーザはシミュレーションを再スタートすることができるようになる。終了ボタン53は、「X」によって表現される。終了ボタンは、シミュレーションをシャットダウンし、そのシミュレーションに関わる全てのリソースを消去する。
【0070】
さらに、ユニバーサル顕微手術シミュレータの同様又は同一の機能を実施するソフトウェア・コンポーネント及び任意のハードウェア・コンポーネントが、ローカル・コンピュータ・デバイス又はコンピュータ・ネットワーク上に実装されることがある。ホスト・システムが仮想シミュレーションの全ての態様を実装することがあるが、クライアント・ベースのシステムでは、ユニバーサル顕微手術シミュレータの仮想シミュレーションによってモデル化される物理的ツールのユーザは、ホスト・システムから離れた位置にいることがある。例えば、クライアント・デバイスは、通信ネットワークを介してホスト・システムと通信することがある。通信ネットワークはインターネットでよいが、有線又は無線チャネルを使用する、ローカル計算デバイスとホスト・システムとの間での電子的な情報交換を可能にするのに適した任意のパブリック又はプライベート通信ネットワークを利用することができることを理解されよう。
【0071】
また、本開示の実施例は、任意のコンピュータ使用可能媒体に記憶されたソフトウェアを備えるコンピュータ・プログラム製品を対象とすることもある。そのようなソフトウェアは、1つ又は複数のデータ処理デバイスで実行されるとき、本明細書で述べたようにデータ処理デバイスを動作させる。本開示の実施例は、任意のコンピュータ使用可能又は可読媒体を採用する。コンピュータ使用可能媒体の実例は、限定はしないが、主記憶デバイス(例えば、任意のタイプのランダムアクセスメモリ)、二次記憶デバイス(例えば、ハード・ドライブ、フロッピー(登録商標)・ディスク、CD ROM、ZIPディスク、テープ、磁気記憶デバイス、及び光記憶デバイス、MEMS、ナノテクノロジ記憶デバイスなど)、及び通信媒体(例えば、有線及び無線通信ネットワーク、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワーク、イントラネットなど)を含む。
【0072】
したがって、本開示の1つ又は複数の実施例は、プログラムがコンピュータ上で実行されるときには、本明細書に記載する任意の方法又は特許請求の範囲のステップの1つ又は全てを実施するように適合されたコンピュータ・プログラム・コードを備えるコンピュータ・プログラムを含むことができ、また、そのようなプログラムを、コンピュータ可読媒体上で具現化することができることを理解されたい。さらに、本開示の1つ又は複数の実施例は、本明細書に記載する方法又は特許請求の範囲の1つ又は複数のステップをコンピュータに実施させるように適合されたコードを備えるコンピュータと、本明細書で図示及び説明した1つ又は複数の装置要素又は機能とを含むことができる。
【0073】
当業者には理解されるように、且つ上述したように、本明細書で論じた方法及びシステムの1つ又は複数の態様の一部又は全ては、具現化されたコンピュータ可読コード媒体を有するコンピュータ可読媒体をそれ自体備える製造物品として配布されることがある。
【0074】
本発明の実施例を、指定の機能及びそれらの関係の実施を例示する機能構成ブロックによって上述してきた。これらの機能構成ブロックの境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義してきた。指定の機能及びそれらの関係が適切に実施される限り、代替の境界を定義することもできる。
【0075】
特定の実施例の上記の説明は、当業者が、必要以上の実験を行わずに、当技術分野における知識を適用することによって、本発明の全般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施例を様々な用途のために容易に修正及び/又は適合することができるように、本発明の全般的な特性を完全に表す。したがって、そのような適応形態又は変形形態は、本明細書に提示される教示及び手引きに基づいて、開示される実施例の均等形態の意味及び範囲内にあるものと意図される。本明細書での語句又は用語は、説明の目的のものであり、限定ではなく、したがって、本明細書の用語又は語句は、教示及び手引きに鑑みて当業者によって解釈されるべきであることを理解されたい。
【0076】
本発明を、特定の実施例を参照して本明細書に例示及び説明してきたが、本発明は、示される詳細に限定されるものとは意図されていない。そうではなく、請求項の均等物の範囲内で、本発明から逸脱することなく、様々な修正を細部に施すことができる。
【国際調査報告】