特表2015-506746(P2015-506746A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-506746慣性律動による生理的測定エラーの軽減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506746(P2015-506746A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】慣性律動による生理的測定エラーの軽減
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20150206BHJP
【FI】
   A61B5/02 320P
   A61B5/02 322
   A61B5/02 320F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-552207(P2014-552207)
(86)(22)【出願日】2012年12月24日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月18日
(86)【国際出願番号】US2012071594
(87)【国際公開番号】WO2013109390
(87)【国際公開日】20130725
(31)【優先権主張番号】61/586,884
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514169529
【氏名又は名称】ヴァレンセル,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Valencell, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ロメスバーグ, エリック, ダグラス
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA12
4C017AA14
4C017AA20
4C017AB08
4C017AC03
4C017AC20
4C017AC26
4C017BC07
4C017BC11
4C017BC14
4C017BC16
4C017BC28
4C017FF05
(57)【要約】
ここに開示された心拍数モニタは、ステップ数が心拍数に近い時に、1つ以上のフィルタリング技術を使ってステップ数成分を測定された心拍数から除去する。一般には、ステップ数と心拍数との差が決定されて、ステップ数は差の関数に基づいて心拍数からフィルタリングされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップ数センサーと、
前記ステップ数センサーによって提供された第1の波形に基づいてユーザのステップ数を計算するよう構成されたステップ数プロセッサと、
心拍数センサーと、
前記心拍数センサーによって提供された第2の波形に基づいて前記ユーザの第1の心拍数を計算するよう構成された心拍数プロセッサと、
前記ステップ数と前記第1の心拍数との差を計算し、
前記差の関数として第2の心拍数を計算し、
前記第2の心拍数を出力するよう構成されたノイズプロセッサと
を有することを特徴とする心拍数モニタ。
【請求項2】
生理的モニタにより出力されたデータ中のノイズを減少させる方法であって、
前記生理的モニタの中の慣性センサーによって提供された慣性波形に基づいたユーザの慣性律動を計算し、
前記生理的モニタの中の生理的センサーによって提供された生理的波形に基づいた前記ユーザの第1の生理的計量値を計算し、
前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差を計算し、
前記差の関数として第2の生理的計量値を計算し、
前記第2の生理的計量値を出力すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記慣性波形と前記生理的波形との差を計算して修正済み波形を生成することを更に含み、前記第1の生理的計量値を計算することは、前記修正済み波形に基づいて前記第1の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の生理的計量値を計算することは、前記生理的波形に基づいて瞬間生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の生理的計量値を計算することは、前記第1の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にある場合には、前記生理的波形の中の2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することは、前記慣性律動が少なくとも2つの前記支配的な信号の間にはいる場合には、前記生理的波形の中の前記2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の生理的計量値を計算することは、前記支配的な信号の少なくとも1つが前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にある場合には、前記生理的波形の中の2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することは、前記慣性律動が前記支配的な信号の2つの間にはいる場合には、前記2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の生理的計量値を計算することは、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数としてフィルタリング済み生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記生理的計量値を計算することは、
前記第1の生理的計量値を現在のフィルタリング済み生理的計量値と比較し、
前記第1の生理的計量値と前記現在のフィルタリング済み生理的計量値との比較に基づいて、前記現在のフィルタリング済み生理的計量値とレート制限との関数として修正済みフィルタリング済み生理的計量値を計算することにより、前記第1の生理的計量値を修正し、
前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるならば、前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値と前記慣性律動との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算し、
そうでなければ、前記第2の生理的計量値を前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値に等しく設定する
ことを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうかに基づいてロックカウントを更新することを更に含み、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、前記ロックカウントとしきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択された前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値をさらに計算することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、前記第1の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるならば、前記第1の生理的計量値と前記慣性律動との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算し、そうでなければ、前記第2の生理的計量値を前記第1の生理的計量値に等しく設定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルタリング済み生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうかに基づいてロックカウントを更新することをさらに含み、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、前記ロックカウントとしきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうか基づいてロックカウントを更新することを更に含み、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、前記ロックカウントとしきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、前記差としきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択したフィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の生理的計量値が初期のフィルタリング済み生理的計量値を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の生理的計量値を計算することは、以前に計算されたフィルタリング済み生理的計量値を検索し、前記初期のフィルタリング済み生理的計量値を前記以前に計算されたフィルタリング済み生理的計量値に等しく設定することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生理的波形に基づいて瞬間生理的計量値を計算することを更に含み、前記第1の生理的計量値を計算することは、前記瞬間生理的計量値の関数として前記初期のフィルタリング済み生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の生理的計量値が、続いてフィルタリングした生理的計量値を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、
前記第1の生理的計量値を前記生理的波形に基づいて計算された瞬間生理的計量値と比較し、
前記瞬間生理的計量値と前記第1の生理的計量値との比較に基づいて、前記瞬間生理的計量値とレート制限との関数として修正済みフィルタリング済み生理的計量値を計算し、
前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるならば、前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値と前記慣性律動との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算し、
そうでなければ、前記第2の生理的計量値を前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値に等しく設定する
ことを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうかに基づいてロックカウントを更新することを更に含み、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することは、前記ロックカウントとしきい値との間の比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記慣性律動はステップ数を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記生理的計量値は心拍数を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項24】
慣性センサーと、
前記慣性センサーによって提供された慣性波形に基づいてユーザの慣性律動を計算するよう構成された慣性プロセッサと、
生理的センサーと、
前記生理的センサーによって提供された生理的波形に基づいて前記ユーザの第1の生理的計量値を計算するよう構成された生理的プロセッサと、
前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差を計算し、
前記差の関数として第2の生理的計量値を計算し、
前記第2の生理的計量値を出力するよう構成されたノイズプロセッサと
を有することを特徴とする生理的モニタ。
【請求項25】
前記生理的プロセッサは更に、前記慣性波形と前記生理的波形との差を計算するよう構成され、前記生理的プロセッサは、前記修正済み波形に基づいて前記第1の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項26】
前記生理的プロセッサは、前記生理的波形に基づいて瞬間生理的計量値を計算することによって前記第1の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項27】
前記生理的プロセッサは、前記第1の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にある場合には、前記生理的波形の中の2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算するようさらに構成されることを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項28】
前記生理的プロセッサは、前記慣性律動が支配的な信号の少なくとも2つの間にはいる場合には、前記生理的波形の中の前記2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算するようさらに構成されることを特徴とする請求項27に記載の生理的モニタ。
【請求項29】
前記生理的プロセッサは、前記支配的な信号の少なくとも1つが前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にある場合には、前記生理的波形の中の2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算するようさらに構成されることを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項30】
前記生理的プロセッサは、前記慣性律動が前記支配的な信号の2つの間にはいる場合には、前記2つ以上の支配的な信号の組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することによって、前記組み合わせに基づいて前記第1の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項29に記載の生理的モニタ。
【請求項31】
前記生理的プロセッサは、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数としてフィルタリング済み生理的計量値を計算するよう構成されたフィルタを含むことを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項32】
前記生理的プロセッサはさらに、前記第1の生理的計量値を現在のフィルタリング済み生理的計量値と比較するよう構成され、前記生理的プロセッサは、前記第1の生理的計量値と前記現在のフィルタリング済み生理的計量値との比較に基づいて、現在のフィルタリング済み生理的計量値とレート制限との関数として修正済みフィルタリング済み生理的計量値を計算することによって前記第1の生理的計量値を修正するよう構成されたフィルタを含み、前記ノイズプロセッサは、
前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるならば、前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値と前記慣性律動との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算し、
そうでなければ、前記第2の生理的計量値を前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値に等しく設定する
ことを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項33】
前記ノイズプロセッサはさらに、前記第2の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうかに基づいてロックカウントを更新するよう構成され、前記ノイズプロセッサは、前記ロックカウントとしきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択された前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値をさらに計算することにより、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項32に記載の生理的モニタ。
【請求項34】
前記ノイズプロセッサは、
前記第1の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるならば、前記第1の生理的計量値と前記慣性律動との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算し、
そうでなければ、前記第2の生理的計量値を前記第1の生理的計量値に等しく設定する
ことによって前記慣性律動と前記第1の生理的計量値の差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項35】
前記ノイズプロセッサはさらに、前記フィルタリング済み生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうかに基づいてロックカウントを更新するよう構成され、前記ノイズプロセッサは、前記ロックカウントとしきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することにより、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項34に記載の生理的モニタ。
【請求項36】
前記ノイズプロセッサはさらに、前記第1の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうか基づいてロックカウントを更新するよう構成され、前記ノイズプロセッサは、前記ロックカウントとしきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することにより、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項37】
前記ノイズプロセッサは、前記差としきい値との比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することにより、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項38】
前記第1の生理的計量値が初期のフィルタリング済み生理的計量値を含むことを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項39】
前記生理的プロセッサは、以前に計算されたフィルタリング済み生理的計量値をメモリから検索し、前記初期のフィルタリング済み生理的計量値を前記以前に計算されたフィルタリング済み生理的計量値に等しく設定することにより、前記第1の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項38に記載の生理的モニタ。
【請求項40】
前記生理的プロセッサは、前記生理的波形に基づいて瞬間生理的計量値を計算するよう構成されたスペクトル変換器を含み、生理的プロセッサは、前記瞬間生理的計量値の関数として前記初期のフィルタリング済み生理的計量値を計算することにより、前記第1の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項38に記載の生理的モニタ。
【請求項41】
前記第2の生理的計量値が、続いてフィルタリングした生理的計量値を含むことを特徴とする請求項38に記載の生理的モニタ。
【請求項42】
前記生理的プロセッサはさらに、前記生理的波形に基づいて前記第1の生理的計量値を瞬間生理的計量値と比較するよう構成され、前記生理的プロセッサは、前記瞬間生理的計量値と前記第1の生理的計量値との比較に基づいて、前記瞬間生理的計量値とレート制限との関数として修正済みフィルタリング済み生理的計量値を計算するよう構成されたフィルタを有し、前記ノイズプロセッサは、
前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるならば、前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値と前記慣性律動との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算し、
そうでなければ、前記第2の生理的計量値を前記修正済みフィルタリング済み生理的計量値に等しく設定する
よう構成されることを特徴とする請求項41に記載の生理的モニタ。
【請求項43】
前記ノイズプロセッサはさらに、前記第2の生理的計量値が前記慣性律動に関してクロスオーバウィンドウ内にあるかどうかに基づいてロックカウントを更新するよう構成され、前記ノイズプロセッサは、前記ロックカウントとしきい値との間の比較に対応してフィルタを選択し、選択した前記フィルタの関数として前記第2の生理的計量値を計算することにより、前記慣性律動と前記第1の生理的計量値との差の関数として前記第2の生理的計量値を計算することを特徴とする請求項42に記載の生理的モニタ。
【請求項44】
前記慣性律動はステップ数を含むことを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【請求項45】
前記生理的計量値は心拍数を含むことを特徴とする請求項24に記載の生理的モニタ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
パーソナル健康モニタは、エクササイズ、アスレチック・トレーニング、休息、日常生活活動、物理療法などの間、ユーザが心拍数または他の生理的情報を監視することを可能にすることによって、ユーザに対して彼らの全体的な健康とフィットネスとを監視する能力を提供する。そのような装置は、それらがより小さく、よりポータブルになるにつれて、ますますポピュラーになりつつある。
【0002】
心拍数モニタはパーソナル健康モニタの1つの例を表している。心拍数モニタの普通のタイプは、心臓から筋活動電位を検出するために、表面電極を含む胸ストラップを使う。そのような表面電極が、相対的に雑音がない信号提供するので、表面電極を用いるモニタにより取り出された情報は比較的正確である。しかし、ほとんどのユーザは、胸ストラップモニタが心地悪く、不便であると感じる。
【0003】
別のタイプのモニタは、イヤホンの中に置かれた光電脈波(photoplethysmograph)(PPG)センサーを使う。耳は人の動きや視界を遮断しない、比較的固定されたプラットフォームであるので、モニタに理想的な位置を提供する。耳に接したPPGセンサーは、例えば外耳道および鼓膜(中核体温の測定のため)、筋肉組織(筋肉張力の監視のため)、耳介および耳たぶ(血液ガスレベルの監視のため)、耳の後ろの領域(皮膚の表面温度と電気皮膚反応を測定するため)、および内頚動脈(心肺の機能を測定するため)に対してアクセスできる。耳はまた、関心の対象である、呼吸される環境毒素(揮発性の有機化合物、汚染など)、耳で感じた騒音公害、目に対する照明条件などの体の露出ポイントまたはその近くにある。さらに、外耳道は、音響エネルギーを転送するために自然に設計されているので、心拍、呼吸数、口の動きなどの内部の音を監視するために、耳はよい位置を提供する。
【0004】
PPGセンサーは、最終的に組織から反射され、あるいは組織を通して伝送され、続いて光検出器で検出されて測定される光を投影する赤外線または他の光源を使って、相対的な血流を測定する。例えば、血流量率がより高ければ、光の吸収はより少なくなり、最終的に光検出器に到達する光の強度を増大させる。光検出器によって出力された信号を処理することによって、PPGセンサーを用いたモニタは、血液量パルス(心拍ごとの血液量の相変化)、心拍数、心拍数変動性、および他の生理的情報を測定することができる。
【0005】
PPGセンサーは一般に小さく、他の従来の健康モニタに関連する快適さ、および/または便利さの問題点に直面しないようにパッケージされるであろう。しかし、PPGセンサーはまたノイズに非常に敏感で、そのため正確さの問題により陥りやすい。例えば、ユーザの動き成分、例えばジョギングをする人のステップ数(ステップレート)は心拍数成分と同じくらいまたはそれ以上にしばしば強く、心拍数測定に誤りを生じさせる可能性がある。PPGセンサー出力の潜在的なステップ数成分を識別するために動き基準として加速度計を用いることを開示する米国特許第7,144,375号は、この問題にひとつの解決法を提供する。ステップ数が心拍数に近い場合、'375特許は、ステップ数センサーと心拍数センサーとによってそれぞれ提供されるステップ数と心拍数の波形を、例えばサンプルのウィンドウにわたってスペクトル的に変換し、ステップ数スペクトルと心拍数スペクトルとを生成することを教示する。スペクトルの変換オペレーションが6秒のウィンドウを使うならば、変換オペレーションのために被る平均の遅延時間は3秒である。スペクトルの変換を実行した後に、'375特許は心拍数とステップ数のスペクトルをスペクトル的に減算する。心拍数とステップ数との間に重複部分があるかどうかについて決定する前に、かつ、心拍数に対応するスペクトルのピークを決定する前に、'375特許はさらに、所望の精度を達成するため、様々な統計的解析を実行すべく、スペクトル減算法の出力のうちから上位10個のピークの履歴を保持する。従って、'375特許によって実施された変換後のオペレーションは例えば10秒の望ましくない追加の処理待ち時間を招く。従って、ステップ数が心拍数に近い場合、より少ない遅延で正確な心拍数を提供する代替的解決法の必要性が残されている。
【発明の概要】
【0006】
ここに開示した解決法は、ステップ数が心拍数に近い場合、ひとつ以上のフィルタリング技術を使って、ステップ数成分を測定された心拍数から除去する。一般に、ステップ数と心拍数との差が決定されて、ステップ数は差の関数に基づいて心拍数からフィルタリングされる。
【0007】
代表的な一実施形態において、ステップ数プロセッサは、ステップ数センサーによって提供された波形に基づいてユーザのステップ数を計算し、心拍数プロセッサは心拍数センサーによって提供された波形に基づいてユーザの第1の心拍数を計算する。ノイズプロセッサはそれからステップ数と心拍数との差を計算し、差の関数としてユーザの第2の心拍数を計算し、第2の心拍数を出力する。例えば、ノイズプロセッサは差の関数として、心拍数にフィルタをかけてもよい。
【0008】
より広くは、典型的な生理的モニタは、慣性センサー、慣性プロセッサ、生理的センサー、生理的プロセッサ、およびノイズプロセッサを含む。慣性プロセッサは、慣性センサーによって提供された慣性の波形に基づいてユーザの慣性律動を計算する。生理的プロセッサは、生理的センサーによって提供された生理的波形に基づいてユーザの第1の生理的計量値を計算する。ノイズプロセッサは、慣性律動と第1の生理的計量値の差を計算し、差の関数として第2の生理的計量値を計算し、第2の生理的計量値を出力する。
【0009】
ひとつの典型的な方法は、生理的モニタによって出力されたデータの雑音を減らす。その目的のため、この方法は、生理的モニタの中の慣性センサーによって提供された慣性の波形に基づいてユーザの慣性律動を計算し、生理的モニタの中の生理的センサーによって提供された生理的波形に基づいてユーザの第1の生理的計量値を計算することを含む。その後、この方法は、慣性律動と第1の生理的計量値の差を計算し、差の関数として第2の生理的計量値を計算し、第2の生理的計量値を出力する。
【0010】
ここに開示した解決法が、現在のスペクトル的に変換されたデータ(例えば現在のステップ数のスペクトルと心拍数のスペクトル)だけを処理するので、本発明は本質的に'375特許によって被る変換後遅延時間を取り除く。従って、ここに開示される解決法は従来技術と関連する望ましくない遅延時間なしに十分な精度を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】イヤホンの中に置かれた典型的な心拍数モニタを示す図である。
図2】ハウジングの中に置かれた典型的な生理的監視システムの1つのブロック図である。
図3】慣性律動を生理的計量値から削除するための典型的な処理を示す図である。
図4】慣性律動を生理的計量値から削除するための別の典型的な処理を示す図である。
図5図2の生理的プロセッサのための典型的なブロック図である。
図6A】、
図6B】、
図6C】、
図6D】シミュレーションされたステップ数のスペクトルと心拍数のスペクトルの典型的な結果と、結果として生じている差スペクトルと推定心拍数を示す図である。
図7】ここに開示した解決法に従って心拍数を推定するために用いたシミュレーションの典型的な結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここに開示した技術は、生理的センサーによって提供されたデータ、例えば心拍数データを処理する時に達成された結果の精度を高める。図1はイヤホン10中に置かれた典型的な監視システム12を示す。イヤホン10は、遠隔装置、例えば音楽プレーヤー、スマートフォン、携帯端末などに通信可能に結合したワイアレスのまたはワイヤ接続のイヤホンを含んでもよい。監視システム12は、心拍数および/または他の生理的測定基準を監視し、ユーザに、および/または他の処理要素にそのような生理的情報を出力する。ここに開示した監視システム12はイヤホン10の部分であるとして示されるとはいえ、監視システム12は、ユーザの体に固定するどのようなデバイス、例えば耳、指、先端、手足、手首、先端などに固定するデバイスの中にでも置くことができることは理解されるであろう。いくつかの実施形態の中で、デバイスは、システム12をユーザの体の上のどのような要求された位置にでも付属させるようにデザインされたパッチ、例えば包帯をふくむことができる。
【0013】
図2はひとつの典型的な実施形態に従う典型的な監視システム12のブロック図を示す。システム12は、ひとつ以上の生理的センサー20と、ひとつ以上の慣性センサー30、出力インタフェース40、およびメモリ50に結合されたプロセッサ100とを含む。生理的センサー20はユーザの生理的状態に対応して生理的波形を作り出す。慣性センサー30はユーザの動作に対応して慣性の波形を作り出す。典型的な慣性センサーは、加速度計、発光器/検出器のペア、光検出器、CCDカメラ、圧電センサー、熱センサー、あるいは運動情報を捕らえることが可能なあらゆるタイプのセンサーを含むけれども、それに制限されない。典型的な発光器は、1つ以上の発光ダイオード、レーザダイオード、有機発光ダイオード、小型発光体、電磁放射器などを含む。ここに開示したセンサーが、電磁スペクトラムのうちの光の波長に制限されないことは理解されるであろう。いくつかの実施形態の中で、より短いか、より長い波長のために構成された放出器および検出器またはそのいずれかは、電磁スペクトラムの中でより短いか、より長い波長に適応させるために使うことができる。光検出器は、光電検出器、電磁検出器、フォトダイオードなどを含む。プロセッサ100は、メモリ50に保存された情報とともにここに開示した技術を使って生理的波形と慣性波形とを処理し、慣性律動(inertial cadence)を、心拍数および1つ以上の生理的測定基準またはそのいずれかから削除する。出力インタフェース40は決定された生理的計量値を出力する。出力インタフェースが、プロセッサ100によって出力されたデータを遠隔装置に転送するためにトランシーバーを含んでもよいことは理解されるであろう。代わりにまたはさらに、出力インタフェースはユーザインタフェース、例えばディスプレイ、データベース、別のプロセッサ、および/または処理機能要素に出力データを提供してもよい。
【0014】
生理的センサー20は、既知のいかなる生理的センサーを含んでもよいが、代表的な実施形態における生理的センサー20は、検出された光強度に応答して電気的な生理的波形を生成する光電脈波(PPG)センサーを含む。PPGセンサーは、一般に、血管の中への光の光結合に依存している光強度センサーを含む。ここに使われるように、用語「光結合」は、領域に入力している励起光とその領域自身との間の相互作用または通信を指す。例えば、光結合の1つの形は、導光イヤホン10から発生した励起光と耳の血管との間の相互作用であり得る。導光イヤホンは、同時係属の米国特許出願第2010/0217102中で説明され、それはその全体における引用によってここに含まれている。一実施形態において、励起光と血管との間の相互作用は、耳の中の血管からの散乱光の強度が血管内の血流と比例するように、耳領域に入る励起光と耳の中の血管からの散乱とに関係していてもよい。光結合の別の形は、イヤホン10中で発光器によって発生させられた励起光とイヤホン10の導光領域との間の相互作用に起因してもよい。
【0015】
プロセッサ100は慣性プロセッサ110、生理的プロセッサ120、およびノイズプロセッサ140を含む。慣性プロセッサ110は、任意の既知の方法を使って慣性律動I(例えばステップ数)を慣性波形から決定する。決定された慣性律動は、慣性律動の1つ以上の倍振動(例えば真の慣性律動の1/2x、3/2x、および2x倍振動)と同様に真の慣性律動を含むことがある。例えば、慣性プロセッサは、スペクトル的に慣性波形を変換し、慣性スペクトルを発生させて、慣性律動を慣性スペクトルの最大のピーク周波数に設定することができる。代わりに他の方法を、慣性律動を決定するために使うことができることは理解されるであろう。ここにさらに議論されるように、生理的プロセッサ120は生理的波形から1つ以上の生理的測定基準H、例えば心拍数を決定する。決定された生理的計量値はまた、1つ以上の生理的測定基準から計算された生理的評価を指すかもしれない。ノイズプロセッサ140は決定された計量値にフィルタをかけて慣性律動を除去し、その結果改善された精度を有する修正済み生理的計量値H^を生成する。
【0016】
簡便さのために、以下では、慣性プロセッサ110によって決定されたステップ数が生理的プロセッサ120によって決定された心拍数に近いときに、1つ以上のフィルタリング技術を使ってステップ数を削除することによって心拍数を決定するノイズプロセッサ140の観点からプロセッサ100を説明する。一般に、ステップ数と心拍数との差が決定されて、その差の関数に基づいてステップ数は心拍数からフィルタリングされる。生理的プロセッサ120、それからプロセッサ100は、代わりにまたはさらに、他の生理的測定基準、例えば呼吸数、心拍変動(HRV)、脈圧、最高血圧、最低血圧、ステップ数、酸素摂取量(VO2)、最大酸素摂取量(最大VO2)、燃焼カロリー、外傷、心拍出量および/または酸素によって占められたヘモグロビン結合部のパーセンテージ(SPO2)を含む血液検体レベル、メソモグロビンのパーセンテージ、カルボニルヘモグロビンのパーセンテージ、および/またはグルコースレベルを決定しても良い。代わりにまたはさらに、プロセッサ100は、1つ以上の生理的評価、例えば換気のしきい値、乳酸塩のしきい値、心肺の状態、神経系の状態、有酸素容量(最大VO2)、および/または全体的な健康またはフィットネスを決定し、フィルタをかけてもよい。さらに、プロセッサ100は、追加的にまたは代わりに、他の慣性律動、例えばリズミカルな頭部の動き、身体の動き(例えば腕の動きやウェイト・リフティングなど)などを心拍数から除去してもよいことは理解されるであろう。
【0017】
図3は、出力心拍数を計算するためにプロセッサ100によって実施されるかもしれない代表的な方法200を示す。プロセッサ100がセンサー20及び30から慣性波形と生理的波形とを受け取った後に(ブロック210)、慣性プロセッサ110はステップ数Iを決定し(ブロック220)、かつ、生理的プロセッサ120は心拍数の第1の推定値Hを決定する(ブロック230)。ノイズプロセッサ140は、ステップ数と心拍数との差の関数として心拍数の修正済み推定値H^を計算し(ブロック240)、その後、出力インタフェース40に修正済み心拍数推定値H^を出力する(ブロック290)。
【0018】
例えば、プロセッサ100はまた、修正済み心拍数推定値H^を、その後の計算に用いることができるように、メモリ50に保存してもよいことは理解されるであろう。
【0019】
図4は、ステップ数と第1の心拍数との差の関数として修正済み心拍数H^を計算するための代表的な方法240を示す。図4の代表的な方法240は複数のレベルを含み、ここでは、第1のレベルがブロック242を含み、第2のレベルが244から248までブロックを含み、第3のレベルがブロック250を含み、第4のレベルがブロック260を含み、第5のレベルがブロック270を含み、第6のレベルが280から284までブロックを含む。しかしここにさらに説明されるように、いくつかの典型的な実施形態がこれらのレベルの1つ以上を実施できること、および、本発明が、図4において示された順序で実施されることを各レベルに要求しないこと、またはそのいずれかは理解されるであろう。
【0020】
第1のレベル(ブロック242と243)はレベルの初期化を含み、そこでは、心拍数プロセッサ120およびノイズプロセッサ140またはそのいずれかを初期化し、かつ/または出力心拍数を決定することに有益な1つ以上の変数を、所定値、メモリに保存した値、および、例えば瞬間心拍数Hinst、フィルタリング済み心拍数Hfilt、ロックカウントClk、第2の(または出力)心拍数Hなどの測定情報に基づいて決定する(ブロック242および243)。例えば、Hinstを決定するために、心拍数プロセッサ120は、心拍数センサー20によって出力された生理的波形をスペクトル的に変換して生理的スペクトルを発生させるスペクトル変換器122(図5)を有する。例えば、スペクトル変換器122はサンプル、例えば6秒のウィンドウにわたって心拍数波形を変換してもよい。そのような変換オペレーションがウィンドウの半分の期間、例えば3秒の遅延時間を招くことは理解されるであろう。最大の振幅を有する生理的スペクトルのスペクトル上のピーク周波数Flを初期の瞬間心拍数Hinstと認定することによって、心拍数プロセッサ120は第1の心拍数を初期化する。ここで、初期の瞬間心拍数は第1の心拍数と一致している(ブロック243)。心拍数プロセッサ120はさらに、次に大きな振幅を持っている生理的スペクトルのスペクトル上のピーク周波数F2を認定してもよい。代わりにまたはさらに、フィルタリング済み心拍数は、例えば、メモリ50から以前に決定されたフィルタリング済み心拍数を検索することによって、またはHfiltを経験的に決定された値、例えば83に設定することによって初期化してもよい。さらに、Clkは、それを0に等しく設定することで初期化してもよく、ここでClkは、例えば、心拍数とステップ数との差が所定のしきい値を満たしている連続するフレームの数を表す。ノイズプロセッサ140はまた初期の第2の(または出力)心拍数Hを決定してもよく、ここで第2の心拍数はノイズプロセッサ140によって最終的に出力された心拍数を表している。場合によっては、プロセッサ140は初期のHを経験的に決定された値、例えば83に設定してもよい。代わりにまたはさらに、ノイズプロセッサ140はプロセス240を通る最初の繰返しの後で以前のフレームからのH^の値にHを初期化してもよい。
【0021】
第2レベル(ブロック244から248)は初期の瞬間心拍数とステップ数との差の関数として瞬間心拍数を決定し、特に、スペクトル減算法の結果が、瞬間心拍数を決定するために通常使用される主要なスペクトルのピークを消し去る場合に、そのシナリオに対応する。より具体的には、第2レベルは、初期の瞬間心拍数がクロスオーバウィンドウ中にあるかどうかを判定することにより慣性プロセッサ110によって提供されたステップ数Iが初期の瞬間心拍数Hinstに近いか判定し(ブロック244)、その判定に基づいて瞬間心拍数を調整する。例えば、ノイズプロセッサ140は、ステップ数Iと初期の瞬間心拍数Hinstとの差がしきい値Tw(例えばTw=8)以下であるかどうかを判定することで、初期のHinstがクロスオーバウィンドウの中にあるかどうかを判定できる。一実施形態において、初期のHinstがクロスオーバウィンドウの中にある場合にだけ、ノイズプロセッサ140は初期のHinstを調整する。ここで、調整は、スペクトル変換器122によって提供された2以上のスペクトルのピークの周波数の加重平均に基づく(ブロック248)。例えば、ノイズプロセッサ140は次式に従って重みwを計算することができる。
w=M1/(M1+M2)、 (1)
ここで、M1が生理的スペクトルの最大のスペクトルのピークの大きさを表し、M2が生理的スペクトルの第2のスペクトルのピーク、例えば次に最も大きなスペクトルのピークの大きさを表している。そして2つのスペクトルのピークの周波数の加重平均を、例えば次式により計算することで、ノイズプロセッサ140は瞬間心拍数を調整する。
inst=wF1+(1−w)F2、 (2)
ここでF1が最大のスペクトルのピーク(かつ初期の瞬間心拍数と一致している)の周波数を表し、F2が第2のスペクトルのピークの周波数を表している。
【0022】
いくつかの実施形態において、第2レベルはまた、ブロック244の条件が充足されている場合に、生理的スペクトルの第2のスペクトルのピークの周波数F2もまたクロスオーバウィンドウの中にあるかどうか、かつ、ステップ数Iが初期のHinstとF2との間にあるかどうかをオプションで決定してもよい(ブロック246)。例えば、ノイズプロセッサ140は、F2とIとの差がしきい値、例えば8以下であるかを判定することによって、F2がクロスオーバウィンドウの中にあるかどうかを判定してもよい。さらに、ノイズプロセッサ140は、sign(Hinst−I)≠sign(F2−I)であるかを判定することによって、IがF2と初期のHinstとの間にあるか判定することができる。とにかく、この例のためには、ブロック244と246の条件が両方とも充足している場合だけに、ノイズプロセッサ140はブロック248のオペレーションを実行する。
【0023】
第3のレベル(ブロック250)はレート制限を使って瞬間心拍数にフィルタをかける。より具体的には、第3のレベルは、現在のフィルタリング済み心拍数Hfilt、第2レベルによって出力された瞬間心拍数Hinst、およびレート制限Δrの関数として修正済みフィルタリング済み心拍数H^filtを計算する。この実施形態のために、心拍数プロセッサ120は図5に例示するようにさらにフィルタ124を含むかもしれない。一般に、HinstをHfilt(それはメモリ50から検索されるか、初期化ブロック242によって提供され得る)と比較した後に、フィルタ124は、比較に基づいてHfilt、Hinst、およびレート制限Δrの関数として修正済みフィルタリング済み心拍数推定H^filtを計算する(ここで、Δrもまたメモリ50から検索してもよい)。1つの典型的な実施形態において、Hinst>Hfiltの場合、フィルタ124は修正済みフィルタ推定値H^filtを次式に従って計算する。
H^filt=Hfilt+min(Δr+,Hinst−Hfilt) (3)
ここでΔr+が増加レート制限を表している。また一方、Hinst<Hfiltの場合、フィルタ124は修正済みフィルタ推定値H^filtを次式に従って計算する。
H^filt=Hfilt+max(Δr-、Hinst−Hfilt) (4)、
ここでΔr-は減少レート制限を表している。ここに使われるように、レート制限は心拍数について変化率の制限を表している。例えば、レート制限は、心拍数が1秒のフレーム期間に経験するかもしれない1分あたりの心拍(BPM)の変化率を表す。そのようなレート制限は、実証的証拠に基づいて決定してもよく、一般には前もって決定される。レート制限がどのような長さのフレーム期間であっても経験した変化率として表現できることは理解されるであろう。そこでは例えばBPM/秒で表すレート制限がフレーム期間(秒)の長さに乗ぜられる。ブロック250の実施のための追加の詳細は、これとともに同時に出願され、「Physiological Metric Estimation Rise and Fall Limiting」という題名を付けられた米国仮出願番号第61/586,874中で見出すことができ、これはその全体においてここに引用によって含まれている。
【0024】
第4のレベル(ブロック260)中で、ノイズプロセッサ140は、クロスオーバの間の盲目性に起因する彷徨を最小化するために、ステップ数に向けてフィルタリング済み心拍数を偏らせている。その目的のために、ノイズプロセッサ140はさらにステップ数とH^filtとの間の差の関数として修正済みフィルタリング済み推定値H^filtを調整する。例えば、ノイズプロセッサ140は、HfiltとIとの差をしきい値と比較すること(例えばabs(I−Hfilt)≦8)によって、ブロック250によって出力した修正済みフィルタリング済み推定値H^filtがクロスオーバウィンドウの中にあるかを判定してもよい。H^filtがクロスオーバウィンドウの中にあるならば、ノイズプロセッサ140はさらに例えばH^filtとIとの差の関数としてH^filtを調整してもよい。たとえばノイズプロセッサ140はさらにH^filtを次式により調整することができる。
H^filt=H^filt+0.5sign(I−H^filt) (5)。
【0025】
第5のレベル(ブロック270)中で、ノイズプロセッサ140は、心拍数がクロスオーバウィンドウ内である連続フレームの数をカウントする。そのために、ブロック260によって出力されたIとHfiltとの差の関数として、ノイズプロセッサはロックカウントClkを更新する。ここでClkは、例えばH^filtとIとの差がしきい値の要件を満たしている連続フレームの数の表している。例えば、Clkが0との等しさのために0と比較される(例えばClk==0)場合、かつabs(Hfilt−I)<6の場合、ノイズプロセッサ140はClk=1を設定してもよい。その一方、Clk>0の場合、かつabs(Hfilt−I)>6の場合、ノイズプロセッサ140はClk=0を設定でき、Clk>0の場合かつabs(Hfilt−I)<6の場合、ノイズプロセッサ140はClkをインクリメントでき、例えばClk=Clk+1を設定できる。
【0026】
第6のレベル(ブロック280から284)中で、ノイズプロセッサ140は、多くの連続フレームのために維持されたクロスオーバの間に起こる瞬間心拍数の振動にフィルタをかける。例えば、ブロック260によって出力されたH^filtは、ロックカウントとしきい値Tcとの間の比較に応じてさらにフィルタリングされ、出力インタフェース40に出力される第2の(または出力)心拍数H^を生成する。例えば、Clk>Tcならば、出力心拍数H^は、以前に決定された(または初期化された)出力心拍数HおよびH^filtの第1の関数として、例えばf1(H,Hfilt)に従って決定されてもよい(ブロック282)。典型的な一実施形態において、第1の関数は次式を含んでもよい。
H^=f1(H,Hfilt)=H+(H^filt−H)/4 (6)、
ここでHはブロック242からの初期化された第2の心拍数または、例えばメモリ50から検索できる以前に決定された第2の(または出力)心拍数を表している。その一方Clk≦Tcならば、出力心拍数Hは、以前に決定された(または初期化された)出力心拍数H^とHfiltの第2の関数として、例えばf2(H,Hfilt)に従って決定されてもよい(ブロック284)。典型的な一実施形態において、第2の関数は次式を含んでもよい。
H^=f2(H,Hfilt)=H+(H^filt−H)/2 (7)。
【0027】
図4の6つのレベルのすべてが、出力インタフェース40に出力されるH^を決定するために必要とされているわけではないことは理解されるであろう。例えば、典型的な実施形態では、以下のものを使って出力心拍数を計算することができる。
【0028】
−前記第2のレベル及び第3のレベル。ここで出力心拍数は、図4のブロック250および図5のフィルタ124により出力されたフィルタリング済み心拍数H^filtを含む。
【0029】
−第3のレベル及び第4のレベル。ここで出力心拍数は、図4のブロック260により出力されたフィルタリング済み心拍数H^filtを含み、かつ、入力心拍数が、例えば、図のブロック242からの初期の瞬間心拍数Hinstと、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数Hfiltとを含む。
【0030】
−第4のレベル。ここで出力心拍数は、図4のブロック260により出力されたフィルタリング済み心拍数H^filtを含み、かつ、入力心拍数が、例えば、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数Hfiltを含む。
【0031】
−前記第3のレベル、第4のレベル、第5のレベルおよび第6のレベル。ここで出力心拍数は、図4のブロック282及び284のうちの1つにより出力されたH^を含み、かつ、入力心拍数が、図のブロック242からの初期の瞬間心拍数Hinstと、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数Hfiltとを含む。
【0032】
−前記第4のレベル、第5のレベル及び第6のレベル。ここで出力心拍数は、図4のブロック282及び284のうちの1つにより出力されたHを含み、かつ、入力心拍数が、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数を含む。
【0033】
−前記第5のレベル及び第6のレベル。ここで、出力心拍数は、図4のブロック282及び284のうちのひとつによる出力としてH^を含み、かつ、入力心拍数が、図4のブロック242から取得した初期の第2の心拍数Hと、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数とを含む。
【0034】
−前記第6のレベル。ここで、出力心拍数は、図4のブロック282及び284のうちの1つによる出力としてH^を含み、かつ、入力心拍数が、図4のブロック242から取得した初期の第2の心拍数Hと、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数とを含む。この場合、判定のダイヤモンド型280は、どのようにロックカウントとしきい値とを比較するかを考慮するだけでなく、例えばH^filtとIとの差がしきい値Tw以下であるかを判定することによって、フィルタリング済み心拍数がクロスオーバウィンドウの中にあるかを考慮する。
【0035】
−前記第3のレベル、第5のレベル及び第6のレベル。ここで、出力心拍数は、図4とブロック282及び284のうちの1つによる出力としてH^を含み、かつ、入力心拍数が、図のブロック242からの初期の瞬間心拍数Hinstと、図4のブロック242から取得したかあるいは以前に決定されメモリ50から検索した初期のフィルタリング済み心拍数Hfiltとを含む。
【0036】
ここに明示的に明らかにされなかった他の組み合わせもまた、出力心拍数を生成するために使うことができることは理解されるであろう。
【0037】
図6A図6D及び図7はさらに、測定された心拍数へのステップ数の影響と、ここに開示した解決法がどのようにこの問題に対処するかの両方を説明する。第一に、図6A図6Dは、ステップ数と心拍数とが一緒に起こる際の問題をシミュレーションする。特に図6Aは、加速度計の波形に対応して発生したステップ数のスペクトルを示しており、一方、図6Bは、PPGセンサーによって出力された波形に対応して発生した心拍数スペクトルを示し、そのためステップ数と心拍数の両方の要素を含む。図6Cは、図6Aの加速度計スペクトルを図6Bの心拍数スペクトルから単純に差し引く場合に生成されたスペクトルを示す。図6Cに示すように、ステップ数が心拍数に近いとき(例えば600〜800秒)に、心拍数は減衰する。従って、単純なスペクトルの減算はステップ数要素を除去するが、それはまた、心拍数スペクトルから引き続き得られた心拍数測定値を改悪する。特に、図6Dは、図6Cの差スペクトルのピーク周波数がクロスオーバウィンドウ内における大きな振動エラーをどのように持っているかを示す。
【0038】
図7は、ここに開示した技術(例えば図4の技術)を使って心拍数が推定されている際のシミュレーション結果を示す。図7に示すように、クロスオーバ領域のまわりのエラーがほとんど消えた、より正確な心拍数の推定が得られている。
【0039】
ここに開示した解決法は、既知の従来技術の解決法に関する遅延問題を招くことなく、例えば図7のシミュレーション結果によって示されるように正確な心拍数の推定を提供する。特に、ここに開示した解決法は、望ましくない遅延をもたらしている、初期のクロスオーバを検出するために先取り法でバッファされる複数のスペクトルまたは統計値を必要としないので、ここに開示した解決法は、精度を犠牲にせずに従来技術に関する遅延問題を回避する。
【0040】
本発明がPPGセンサーで説明される一方、センサー20は、生理的波形、例えば脳波図(EEG)波形、および心電図(ECG)波形、無線周波数(RF)波形、電気光学的生理的波形、および、光音響的波形、電気−機械生理的波形、および/または電気核生理的波形を含む電気−光音響的波形を生成することができるどのようなセンサーを含んでもよいことは理解されるであろう。
【0041】
本発明は、もちろん、本発明の本質的特徴から離れることなくここに特に記述された方法以外の他の方法で実行することもできる。本実施形態は、すべての点で制限的なのではなく実例として考慮されるべきであり、添付した特許請求の範囲の意味及び均等範囲内のすべての変更は、その中に包含されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6D
図7
図6A
図6B
図6C
【国際調査報告】