特表2015-506758(P2015-506758A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シファメド・ホールディングス・エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506758(P2015-506758A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】血管内組織破壊
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20150206BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20150206BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20150206BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20150206BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
   A61M37/00
   A61M25/10
   A61M5/14 510
   A61M5/142
   A61M5/168 504
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-553531(P2014-553531)
(86)(22)【出願日】2013年1月23日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月5日
(86)【国際出願番号】US2013022745
(87)【国際公開番号】WO2013112583
(87)【国際公開日】20130801
(31)【優先権主張番号】61/589,669
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/642,695
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】サラヒエ,アムル
(72)【発明者】
【氏名】ソール,トム
(72)【発明者】
【氏名】キム,エリオット・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,アリ
【テーマコード(参考)】
4C066
4C167
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC09
4C066DD12
4C066FF01
4C066FF02
4C066QQ23
4C066QQ35
4C167AA02
4C167AA09
4C167CC07
4C167CC08
4C167CC26
4C167EE07
4C167GG34
(57)【要約】
患者内の標的組織に対して流体物質を送達するように構成された医療システムおよび医療デバイス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内に流体を送達するためのシステムであって、
患者の外部に位置決めされるように構成され、流体リザーバ内において高圧下に流体物質を維持するように構成された、高圧流体源と、
患者内に位置決めされるように構成された送達デバイスであって、流体送達開口を備える送達デバイスと、
前記患者の外部におよび前記流体リザーバの下流に配設されるように構成された流体制御装置であって、前記流体リザーバから前記流体送達開口へとおよび前記送達デバイスから出るように高圧下で流体を流し得るように構成された、流体制御装置と
を備える、システム。
【請求項2】
前記流体制御装置は、開構成および閉構成を有する弁である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体制御装置は、前記患者の外部に配設されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
管腔壁に対して前記開口を再位置決めするように構成された膨張可能部材をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記流体制御装置は、オフ状態からオン状態へと作動され、次いでオフ状態へと戻されるように構成され、オン/オフ遷移およびオフ/オン遷移が、いずれも約15マイクロ秒未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記流体送達開口は、約0.0254mm〜約0.127mm(約1ミル〜約5ミル)の間の直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記高圧流体源は、前記流体リザーバ内において5171kPa〜34475kPa(750psi〜5000psi)の圧力下に流体物質を維持するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
患者内の標的位置に対して流体を送達するように構成された流体送達デバイスであって、
流体を収容するように構成された流体リザーバを備える流体源と、
前記患者内に位置決めされるように構成され、前記流体源と連通状態になるように構成された、送達デバイスと
を備え、
前記送達デバイスは、流体送達ラインを備え、前記流体送達ラインは、前記流体リザーバと流体連通するように構成された開口を有し、
前記流体ラインは、前記開口が前記膨張可能部材の長手方向軸に対してラジアル方向に外方に向くように、前記膨張可能部材に対して固定される、流体送達デバイス。
【請求項9】
前記膨張可能部材は、膨張可能バルーンである、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記開口は、前記膨張可能部材の長手方向軸に沿って前記膨張可能部材の実質的に中心の位置に配設される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
患者内に流体を送達する方法であって、
流体リザーバ内において高圧下に流体物質を維持するステップと、
前記流体リザーバの下流におよび前記患者の外部に位置決めされた流体制御装置を閉構成から開くことにより、高圧に維持された流体物質を高圧下において前記流体リザーバから前記流体制御装置の下流に配設された流体開口まで流させるステップと、
前記開口から出て前記患者内へと高速で前記流体物質を送達するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
腎動脈内に前記開口を備える送達デバイスを位置決めするステップ
をさらに含み、
送達する前記ステップは、前記流体物質が、前記腎動脈の周囲の神経と相互作用し、前記神経に沿った神経伝達を阻害することにより、高血圧症を軽減するように、前記開口からおよび前記患者内に高速で前記流体物質を送達するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高圧下に流体物質を維持する前記ステップは、5171kPa〜34475kPa(750psi〜5000psi)に流体物質を維持するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
管腔内に開口を備える送達デバイスを位置決めするステップと、前記送達デバイスの長手方向軸からラジアル方向に外方に向くように前記開口を位置決めするステップとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
膨張可能部材を膨張させることにより前記開口を前記管腔壁と係合状態に位置決めするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記膨張可能部材を膨張させる前記ステップにより、前記膨張可能部材に対して固定された流体送達ラインが再構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記流体制御装置を閉じることにより、前記流体開口から送達される前記流体物質の量を制御するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記開口からおよび前記患者内に高速で前記流体物質を送達する前記ステップは、50m/秒〜400m/秒にて前記流体物質を送達するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記流体物質は、約5mL/分〜約40mL/分の間にて前記流体リザーバから流出する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記開口からおよび前記患者内に高速で前記流体を送達する前記ステップは、約50〜500ミリ秒の間の継続時間で流体パルスにおいて前記流体物質を送達するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記流体物質を送達する前記ステップは、約10μL〜約500μLの間の前記流体物質の流体パルスにおいて、前記流体物質を送達するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2012年1月23日に出願された米国特許仮出願第61/589,669号および2012年5月4日に出願された米国特許仮出願第61/642,695号の利益を主張するものである。これらの両出願の開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
参照による組込み
[0002]本明細書に記載される全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるべく具体的かつ個別に示唆された場合と同様に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0003]患者内の標的位置に流体を送達することが可能な医療用流体送達システムが、説明されてきた。いくつかの応用形態においては、流体源が、流体を収容し、この流体は、流体源から、患者内に位置決めされた送達デバイスを経由して患者内へと送達される。ニードルレス応用形態は、開口を有する送達デバイスを備え、流体は、流体源から送達デバイスを経由してこの開口から出て、患者内へと移動し得る。
【0003】
[0004]いくつかの応用形態は、比較的高速にて患者内に流体を送達するために、流路に沿ったある位置において一過性の比較的高い流体圧力を発生させるように試みる。例えば、米国特許第6,964,649号は、組織内に流体を送達するために一過性の高圧を発生させることが可能な流体源について記載している。これらのおよび他の先行の試みの欠陥を、以下でさらに詳細に示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0005]本開示の一態様は、患者内に流体を送達するためのシステムであって、患者の外部に位置決めされるように構成され、流体リザーバ内において高圧下に流体物質を維持するように構成された、高圧流体源と、患者内に位置決めされるように構成された送達デバイスであって、流体送達開口を備える送達デバイスと、患者の外部におよび流体リザーバの下流に配設されるように構成された流体制御装置であって、流体リザーバから流体送達開口へとおよび送達デバイスから出るように高圧下で流体を流し得るように構成された、流体制御装置とを備える、システムである。
【0005】
[0006]いくつかの実施形態においては、流体制御装置は、開構成および閉構成を有する弁である。
【0006】
[0007]いくつかの実施形態においては、流体制御装置は、患者の外部に配設されるように構成される。
【0007】
[0008]いくつかの実施形態においては、この装置は、管腔壁に対して開口を再位置決めするように構成された膨張可能部材をさらに備える。
【0008】
[0009]いくつかの実施形態においては、流体制御装置は、オフ状態からオン状態へと作動され、次いでオフ状態へと戻されるように構成され、オン/オフ遷移およびオフ/オン遷移が、いずれも約15マイクロ秒未満である。
【0009】
[00010]いくつかの実施形態においては、流体送達開口は、約0.0254mm〜約0.127mm(約1ミル〜約5ミル)の間の直径を有する。
【0010】
[00011]いくつかの実施形態においては、高圧流体源は、流体リザーバ内において5171kPa〜34475kPa(750psi〜5000psi)の圧力下に流体物質を維持するように構成される。
【0011】
[00012]本開示の一態様は、患者内の標的位置に対して流体を送達するように構成された流体送達デバイスであって、流体を収容するように構成された流体リザーバを備える流体源と、患者内に位置決めされるように構成され、流体源と連通状態になるように構成された、送達デバイスとを備え、送達デバイスが、流体送達ラインを備え、流体送達ラインが、流体リザーバと流体連通するように構成された開口を有し、流体ラインが、開口が膨張可能部材の長手方向軸に対してラジアル方向に外方に向くように、膨張可能部材に対して固定される、流体送達デバイスである。
【0012】
[00013]いくつかの実施形態においては、膨張可能部材は、膨張可能バルーンである。
【0013】
[00014]いくつかの実施形態においては、この開口は、膨張可能部材の長手方向軸に沿って膨張可能部材の実質的に中心の位置に配設される。
【0014】
[00015]本開示の一態様は、患者内に流体を送達する方法であって、流体リザーバ内において高圧下に流体物質を維持するステップと、流体リザーバの下流におよび患者の外部に位置決めされた流体制御装置を閉構成から開くことにより、高圧に維持された流体物質を高圧下において流体リザーバから流体制御装置の下流に配設された流体開口まで流させるステップと、開口から出て患者内へと高速で流体物質を送達するステップとを含む、方法である。
【0015】
[00016]いくつかの実施形態においては、この方法は、腎動脈内に開口を備える送達デバイスを位置決めするステップをさらに含み、送達するステップは、流体物質が、腎動脈の周囲の神経と相互作用し、神経に沿った神経伝達を阻害することにより、高血圧症を軽減するように、開口からおよび患者内に高速で流体物質を送達するステップを含む。
【0016】
[00017]いくつかの実施形態においては、高圧下に流体物質を維持するステップは、5171kPa〜34475kPa(750psi〜5000psi)に流体物質を維持するステップを含む。
【0017】
[00018]いくつかの実施形態においては、管腔内に開口を備える送達デバイスを位置決めするステップと、送達デバイスの長手方向軸からラジアル方向に外方に向くように開口を位置決めするステップとをさらに含む。この方法は、膨張可能部材を膨張させることにより開口を管腔壁と係合状態に位置決めするステップをさらに含むことが可能である。膨張可能部材を膨張させるステップにより、膨張可能部材に対して固定された流体送達ラインを再構成することが可能である。
【0018】
[00019]いくつかの実施形態においては、この方法は、流体制御装置を閉じることにより、流体開口から送達される流体物質の量を制御するステップをさらに含む。
【0019】
[00020]いくつかの実施形態においては、開口からおよび患者内に高速で流体物質を送達するステップは、50m/秒〜400m/秒にて流体物質を送達するステップを含む。
【0020】
[00021]いくつかの実施形態においては、流体物質は、約5mL/分〜約40mL/分の間にて流体リザーバから流出する。
【0021】
[00022]いくつかの実施形態においては、開口からおよび患者内に高速で流体を送達するステップは、約50〜500ミリ秒の間の継続時間で流体パルスにおいて流体物質を送達するステップを含む。
【0022】
[00023]いくつかの実施形態においては、流体物質を送達するステップは、約10μL〜約500μLの間の流体物質の流体パルスにおいて、流体物質を送達するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】[00024]例示の流体送達システムを示す図である。
図2】[00025]例示の流体送達システムの一部分を示す図である。
図3】[00026]例示の高圧流体源を示す図である。
図4】[00027]図3で説明されるポンプ源用に構成された例示の回路基板流体制御システムを示す図である。
図5】[00028]高圧化にある流体物質を患者内に送達するように構成された高速流体送達システムの例示的な一実施形態を示す図である。
図6】[00029]例示の高圧流体源を示す図である。
図7】例示の高圧流体源を示す図である。
図8】[00030]圧力対時間を示すグラフであり、図6および図7の流体リザーバ13内における流体の圧力を示す。
図9】[00031]例示の高圧流体源が長尺送達デバイスに結合された、流体送達システムの一実施形態を示す図である。
図10】[00032]交互計測流出弁のバリエーションの代替的な実施形態を示す図である。
図11】交互計測流出弁のバリエーションの代替的な実施形態を示す図である。
図12】[00033]自動高圧再充填システムを組み込んだバリエーションを示す図である。
図13】自動高圧再充填システムを組み込んだバリエーションを示す図である。
図14】[00034]例示の送達デバイスの例示の遠位領域を示す図である。
図15】例示の送達デバイスの例示の遠位領域を示す図である。
図16】[00035]図16Aは、カテーテルシャフトに対してラジアル方向にオフセットされた膨張可能部材を示す図である。図16Bは、カテーテルシャフトに対してラジアル方向にオフセットされた膨張可能部材を示す図である。図16Cは、カテーテルシャフトに対してラジアル方向にオフセットされた膨張可能部材を示す図である。
図17】[00036]動脈に関連する典型的な圧力直径プロファイルを示す図である。
図18】[00037]図4のシステムにおいて発生される圧力波形を示す図である。
図19A】[00038]図18に示すものと同様の圧力パルスを示す流体注入で治療された組織の画像を示す図である。
図19B図18に示すものと同様の圧力パルスを示す流体注入で治療された組織の画像を示す図である。
図19C図18に示すものと同様の圧力パルスを示す流体注入で治療された組織の画像を示す図である。
図19D図18に示すものと同様の圧力パルスを示す流体注入で治療された組織の画像を示す図である。
図20】[00039]図20Aは、管腔周囲空間への流体物質のニードルレス注入に有用な一般化された波形を示す図である。図20Bは、管腔周囲空間への流体物質のニードルレス注入に有用な一般化された波形を示す図である。図20Cは、管腔周囲空間への流体物質のニードルレス注入に有用な一般化された波形を示す図である。図20Dは、管腔周囲空間への流体物質のニードルレス注入に有用な一般化された波形を示す図である。
図21】[00040]図21Aは、注入物の暗影を示す蛍光透視画像である。図21Bは、注入物の暗影を示す蛍光透視画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[00041]本明細書における開示は、一般的には医療デバイスに関し、特に患者内の標的位置に流体物質を送達するためのシステムおよび使用方法に関する。いくつかの実施形態においては、本明細書におけるデバイスおよびシステムは、送達デバイスの開口から、この開口に隣接する組織(本明細書においては「中間組織」と呼ばれる場合がある)を経由して、この開口に隣接する組織よりもこの開口からさらに遠くに位置する標的組織(本明細書においては「標的組織」と呼ばれる場合がある)まで、流体物質を送達するために使用される。流体物質にこの標的組織をさらすことにより、標的組織に所望の変化を生じさせる。
【0025】
[00042]いくつかの実施形態においては、標的組織に流体物質を送達しつつ、中間組織に対する損傷を最小限に抑えることが望ましい。中間組織に対する最小限の損傷は、中間組織を貫通する小口径ニードルによって引き起こされる損傷と同程度またはそれ未満のもの、および管腔壁の周囲のまたは管腔壁の遠位の組織の治療のために管腔壁に送達されるRFアブレーションエネルギーの送達により中間組織に対して引き起こされる損傷を大幅に下回るものと、一般的には見なされる。RFエネルギーが、送達されると、管腔壁は、標的組織よりも大きな損傷を被る。なぜならば、RFエネルギー源は、管腔壁に隣接し、管腔壁におけるエネルギー密度は、標的組織におけるエネルギー密度よりも大きいからである。本明細書に記載されるように、流体物質は、中間組織に対する損傷を最小限に抑えつつ、中間組織を穿通または貫通する。損傷を最小限に抑える1つの方法は、開口から高速流体ジェットを送達することによるものである。本明細書において、本開示は、比較的小さな流体開口の間で比較的高い圧力勾配を生じさせることにより高速流体ジェットを生成することに主に焦点を置く。また、この高速流体送達により、流体物質が開口から送達される際に、管腔中への流体物質の漏れが最小限に抑えられる。
【0026】
[00043]1つまたは複数の開口が、体内の任意の管腔内に位置決めされ得るが、本明細書においては、「管腔」は、管状構造体以外の体内の空間を含む。例えば非限定的な例としては、血管の任意の部分、消化管の内部、食道、尿道、および胃が、本明細書における「管腔」である。
【0027】
[00044]いくつかの実施形態においては、中間組織および標的組織は、同一タイプの組織として特徴付けられるが、標的タイプの組織は、中間タイプの組織よりも開口に対してより遠くに位置する。いくつかの実施形態においては、中間組織および標的組織は、異なるタイプの組織である。
【0028】
[00045]中間組織に対する損傷を最小限に抑えることが望ましいものとなり得る1つの例示的な状況は、流体が、動脈壁の管腔を経由して管腔壁の周囲の標的組織に送達される場合である。例えば、本明細書に記載されるように、いくつかの使用においては、流体は、腎動脈管腔を通して高速で送達され、この場合に、標的組織は、腎臓を刺激する神経が位置する内側層および/または外膜層である。いくつかの使用方法においては、神経組織を破壊しつつ、腎動脈管腔壁に対する損傷を最小限に抑えるように、内側層および/または外膜層に対して流体物質を送達することが望ましい。
【0029】
[00046]本明細書におけるシステムは、流体物質を収容するように構成された流体リザーバを備える。また、これらのシステムは、リザーバからおよび開口を出ておよび患者内に、高速で流体物質を送達可能にするように構成された少なくとも1つの開口を備える送達デバイスを備える。開口を出る流体の速度は、変数の中でもとりわけ、開口間における流体物質の圧力勾配に相関する。いくつかの以前のアプローチは、患者の外部に配設された流体リザーバにおいて一過性の高い流体圧力を発生させることにより、患者内における高速流体送達を実現しようと試みてきた。しかし、本明細書における実施形態においては、システムおよび使用方法は、流体リザーバ内において流体を高圧に維持することによって、患者内への高速流体送達を実現する。流体物質は、流体リザーバ内において高圧下に維持されることとなり、流体リザーバの遠位または下流に位置する流体制御装置が、開放されると、それにより、高圧下にある流体物質は、流体リザーバから出て開口に向かい、高速で開口から出て送達される。
【0030】
[00047]図1は、流体物質を高圧下に維持するように構成された高圧流体源104と、高圧流体制御装置と、高圧流体源104と連通し得る流体送達デバイス106とを備える、例示の流体送達システム102のコンセプトを示す。高圧流体源104は、流体物質を収容するように構成された少なくとも1つの流体リザーバを備える。送達デバイス106は、流体リザーバから流体を受けるように構成された少なくとも1つの流体送達ルーメンと、送達デバイス106から患者内に流体物質を送達させ得るように構成された少なくとも1つの開口またはポートとを備える。
【0031】
[00048]図2は、流体物質を収容するように構成された流体リザーバ230と、インライン流体制御装置210と、オプションのバイパス流体制御装置220とを示す、例示の流体送達システムの一部分を示す。流体制御装置210および220は、任意のタイプの適切な弁であることが可能である。流体制御装置210は、送達デバイス流入部201と流体リザーバ230との間に配設される。バイパス流体制御装置220は、流出ラインへと「T字型分岐」し、周囲圧力などの低圧排出箇所へと排出する。空運転時には、流体制御装置210は、閉構成にあり、流体制御装置220は、開構成にある。本明細書においては準備状態とも呼ばれる空運転においては、流体リザーバ230内の流体は、実質的に一定である高圧下に維持される。流体が、高圧下においてリザーバ230から送達されるべき時には、流体制御装置220が、閉じられ、次いで、流体制御装置210が、リザーバから高圧下で流体を送達させるのに必要な期間にわたって開かれる。次いで、流体制御装置210が、閉じられ、流体制御装置220が、開かれる。いくつかの手順では、流体制御装置220は、流体送達システムの圧力を下げるのに十分な長さのみにわたって開かれ得る。このシーケンスにより、送達デバイスへの流入物が、流体制御装置220を通して逃がされ、送達デバイスに対するより迅速な減圧が行われる。上述のように、迅速な減圧は、所望に応じて、管腔内に漏れる流体の量を最小限に抑えるのを助ける。破線矢印は、2つの弁を越える際の流れ方向を示す。管腔内への比較的少量の送達物質漏れが許容されるいくつかの実施形態においては、弁220は、不要となり得る。
【0032】
[00049]図2に示すシステムを使用する1つの例示的な利点は、高圧源が複数回分の用量を中に保持し、弁が高速で動作可能であることにより、このシステムが、再充填を伴わずに複数回の流体送達のために使用し得る点である。
【0033】
[00050]本明細書における実施形態のいずれにおいても、実質的に一定である高圧に維持される流体源は、例えば非限定的な例としては1つまたは複数のばねなどの、空気圧手段、油圧手段、または機械手段などによって、高圧に維持され得る。
【0034】
[00051]図3は、例示の高圧流体源を示す。この流体源は、低圧流体リザーバ340、高圧流体ポンプ330、インライン流体制御装置310、および戻し弁320を備える。空運転時には、バイパス流体制御装置320が、開き、インライン流体制御装置310が、閉じられる。次いで、流体が、空運転時に低圧リザーバ340を通り循環される。注入時には、初めに、流体制御装置320が、流体源を準備するためにシステム内に高圧を発生させる期間にわたって閉じられる。次いで、流体制御装置310が、適切な継続時間にわたって開かれ、これにより、ポンプ流量に合致する流量で流体を送達する。次いで、流体制御装置320が、開かれ、流体制御装置310が、閉じられる。既述の構成のいずれにおいても、送達デバイスに付随する流出抵抗は、帰還路抵抗よりもはるかに高い。したがって、圧力は、バイパス流体制御装置320が開かれると、流出路において急速に低下する。流出路におけるこの急速な圧力低下は、実際に所望される場合には、医療デバイスが位置決めされた管腔内への流体物質の漏れの防止を助ける。
【0035】
[00052]本明細書に記載されるような流体制御装置は、非限定的な例としては例えばシャトル弁またはポペット弁などの任意のタイプの適切な弁であることが可能である。いくつかの実施形態においては、これらの弁は、制御インターフェースをシステムコントローラに接続することによって作動される。
【0036】
[00053]図4は、腎動脈組織中へのニードルレス注入に関連する特徴を調査するために使用された、図3に説明するポンプ源用に構成された例示の回路基板流体制御システムを示す。このシステムは、送達カテーテルに連結するための流出部401と、流出ポート401における圧力をモニタリングするための圧力変換器405と、インライン流体制御装置410と、バイパス流体制御装置420と、低圧流体リザーバ409と、高圧ポンプ源408と、コントローラインターフェース402と、コントローラとして使用されるパーソナルコンピュータ(図示せず)とから構成される。
【0037】
[00054]図5は、患者内に高圧下で流体物質を送達するように構成された高速流体送達システムの例示の一実施形態を示す。システム500は、システムコントローラ510、送達デバイス520、および送達デバイス制御インターフェース530を備える。システムコントローラは、完全に機械的なシステムであってもよく、または電気機械インターフェースを備えてもよい。システムコントローラ(非無菌)は、再利用可能に設計され得る一方で、送達カテーテル制御インターフェースおよび送達カテーテル(無菌)は、1回の使用後に廃棄されるように設計され得る。いくつかの実施形態においては、システムコントローラ、送達デバイス、および制御インターフェースの各特徴が、単一の使い捨てユニットに統合される。送達デバイス制御インターフェース530は、オプションの膨張可能部材制御インターフェース、流体源、および流体制御ブロックを備える。膨張可能部材は、バルーン、自己膨張構造体、または任意の他の適切な膨張可能部材もしくは変形可能部材の形態であることが可能である。いくつかの実施形態においては、流体源は、本明細書に記載されるような所望の圧力にて適切な流れを送達することが可能なポンプか、または本明細書に記載されるような適切な動作圧力に維持されるリザーバである。送達デバイス520は、血管内送達用または管腔内送達用に一般的には構成される。本明細書においては、送達デバイスは、患者内に位置決めし得る任意のタイプの適切な送達カテーテルまたは他の適切な医療デバイスであることが可能である。カテーテルシャフト521を備える送達デバイスが、図示されており、このカテーテルシャフト521の近位端部は、送達デバイス制御インターフェース530と接続される。送達デバイス520の遠位領域は、膨張可能部材523と、放射線不透過性マーカ524と、高圧送達ルーメン(図示せず)と、ガイドワイヤ上における迅速な交換の助長に関連する特徴とを備える。また、送達デバイスは、膨張可能部材523付近に、患者内に流体を送達するように構成された開口を備える。
【0038】
[00055]図6および図7は、図1の高圧流体源104として使用し得る高圧流体源を示す。この高圧流体源は、動力源615、流体612を中に有する流体リザーバ613、流出制御弁611、および送達デバイス610を備える。また、流体源は、オプションの流体入力616およびオプションの流体充填弁617と、システムの使用に応じて空気を押し出すまたは引き込むための、動力源615および流体リザーバ613の両方のベント618とを備える。動力源615は、出力機構614を備え、これは、いくつかの実施形態においては、ばね、図示する圧縮ガスリザーバ、または出力を生成するための他の適切な機構であることが可能である。出力機構614は、流体リザーバ613内においてピストン620を遠位方向に押すことにより、弁611が閉じられている間に流体リザーバ613内の流体612を高圧下に維持するように構成される。図6は、流体612を送達することが可能な状態の準備構成にあるシステムを示す。流体612は、高圧流体物質注入が可能となるのに十分な圧力にて送達デバイス610の開口に供給を行うのに十分な高さの圧力下に維持される。使用時には、図6に示すようなシステムの準備後に、流体制御装置611が、開かれ、流体が、リザーバ613から開状態の制御装置611を経由し、送達デバイス610を経由して送達デバイスの開口(記号は付与されないが以下において説明する)から出るように送達される。図7は、ピストン620の正面シール619が遠位表面流体リザーバ613上に着座し、それにより送達デバイス610への流体流が遮断された後の、高圧注入の終了時のシステムを示す。次いで、流体制御装置611が、後の流体注入に備えて閉じられ得る。図6および図7の実施形態においては、リザーバは、1回の流体送達用に流体を収容する。この流体送達ステップは、リザーバ612内に収容された流体の全量を1回で送達することを伴う。その後、リザーバは、手動または自動のいずれかにより流体で再充填され得る。図6および図7の実施形態における正面シール619により、システムにおける送達流体量の正確な制御が可能となり、このシステムにおいては、弁611が迅速に開かれることのみが必要となる。これは、送達量の制御を助長するために弁210の開閉の両方がなされなければならない図2のシステムとは対照的である。図6および図7のシステムの例示的な1つの利点は、主として、流体制御機構の複雑さおよびしたがってコストが軽減される点である。
【0039】
[00056]図8は、圧力対時間を示すグラフであり、実線で表される図6および図7の流体リザーバ613内の流体の圧力と、破線で表される流体制御装置611の遠位における流体の圧力とを示す。時期T1は、システムが準備された(図6)後の期間であり、圧力822は、流体リザーバ613内の流体612の流体圧力が高いことを示す。時期821は、高圧流体が送達システム610と連通状態にある期間を示し、圧力824は、この送達フェーズにおいては高い流体圧力である。時期821と時期T1との間には、負の圧力差が存在する。時期T3は、シール619が閉じた後の流体送達後の期間である。時期T3においては、リザーバ613内の流体612の流体圧力は、圧力822へと戻る。
【0040】
[00057]図8の破線は、流体制御装置611の遠位の位置における流体圧力を表す。時期T1においては、システムが準備された後に、この圧力はゼロになる。流体物質が送達される時期821においては、初めに制御装置611が開かれ、流体612が流体リザーバ613から加圧下において放出される。この流体は、流体ラインルーメンを下り開口へと押しやられる。したがって、時期821における流体制御装置611の遠位での圧力は、圧力824へと急激に上昇し、時期T3において示されるように、流体が開口から送達された後には、流体制御装置611の遠位における圧力は、周囲圧力まで急激に低下して戻る。
【0041】
[00058]図8に示すように、流体リザーバ内の流体は、流体送達が開始されると、負の圧力変化を被る。この変化は、動力源615の電気容量を高くすることにより任意に減少させることが可能である。注目すべき点としては、流体が、高圧下に準備されることにより、正の圧力遷移が、流体送達ステップ時に流体源に位置する流体に生じない点である。送達デバイスの開口から送達される流体の速度は、損傷を最小限に抑えつつ組織を穿通し、必要に応じた標的組織の破壊のために十分な量の組織に対して標的組織をさらにさらすために、十分な速度である。
【0042】
[00059]本明細書においては、高圧下に「維持される」流体は、システムが、高圧下において準備状態に維持されることを少なくとも指す。高圧下において準備されると、次いで、流体制御装置は、流体リザーバの遠位において開かれて、高圧下で準備および維持された流体を放出する。これは、流体源にて高圧遷移を発生させるシステムとは異なり、これにより、流体リザーバの下流に位置する制御弁は不要となる。
【0043】
[00060]図9は、例示の高圧流体源915が長尺送達デバイス960に対して結合されたシステムの一実施形態を示す。この実施形態においては、高圧源は、複数の個別の流体注入に十分な流体量を収容するように構成された流体リザーバと、各注入量を制御することが可能な付随の制御機構とを備える。図示するように、一次動力源915は、空気圧により駆動されるが、例えば油圧またはばねなどにより駆動されてもよい。動力源915は、パイロット弁940に給電するために使用される比較的低圧の流体源930を備える。パイロット弁940は、高圧ピストン945と連動するように構成された弁座941を備える。さらに、高圧ピストン945は、低圧ピストン944に対して結合される。ピストン944および945の表面積は、パイロット弁940により弁座941にてチャンバ内に発生する圧力が、高圧流体源内において発生する圧力よりも大きくなるように、サイズ設定される。パイロット弁の量調節は、量調節部943により容易化される。低圧流体源930内の低圧流体は、調節可能流体抵抗器932および三方弁931を経由して調節可能パイロット弁940の低圧側まで連通される。システムにおける例示的な使用は、以下のとおりである。低圧流体源930によりパイロット弁低圧ピストン944に対して発生する圧力が、高圧流体で発生する圧力より大きな圧力を発生させるのに十分な場合には、パイロット弁は、オフ位置または閉位置にある。
【0044】
[00061]図9は、開構成またはオン構成にある弁940を示す。流体が送達される前に、送達量が、低圧ピストン944表面から幾分かの距離だけ離れた方向に量調節部943を調節することによって規定される。次いで、弁931が、「b」から「a」の方向から、「b」から「c」への方向への流れ向けに瞬間的に再構成されると、低圧流体圧力は、パイロット弁940の低圧側において周囲圧力まで低下する。次いで、パイロット弁ピストンは、弁調節部943に当接し、弁座が開かれるまで、位置をシフトする。このコンテクストにおいて「瞬間的に」が意味するものは、パイロット弁ピストンが完全な開位置にシフトするのに十分な時間である。流れが「b」から「a」の方向である弁931の初期設定構成を再度達成すると、低圧流体は、調節可能流体抵抗器932の弁により規定される流量にてパイロット弁940の低圧側内へと漏れ戻り始める。したがって、パイロット弁940を閉じるための時間の長さは、調節器943の調節により規定される移動長さ(所要量)によって、および流体抵抗器932により規定される充填速度に基づいての両方によって、調節される。したがって、流体の送達量は、パイロット弁が開状態にある期間に対応する領となる。代替的な実施形態においては、2つの制御装置932および943の一方のみが、備えられる。他の実施形態においては、一方が、較正手段として使用され、他方が、ユーザ制御装置として使用される。
【0045】
[00062]図9の実施形態は、圧力変換器(図4の上述の実施形態において示した圧力トランスデューサなど)または速度を推量するための他の手段などの、センサを備えるように変更することが可能である。センサは、例えば弁座941に追加することが可能である。センサは、送達開口間の圧力差または流体の速度を示すフィードバック情報を供給するように構成される。例示的な1つの使用方法は、センサからのフィードバックデータを基準データと比較することにより、圧力が十分な高さであるかどうか、または速度が十分な高さであるかどうかを判定する。いずれのパラメータも十分な高さではない場合には、中間組織に対して損傷が引き起こされる場合があり、これは、中間組織が例えば動脈壁である場合には、不利となり得る。代替的には、いずれのパラメータも、十分な高さではない場合には、流体物質が、十分な高さの圧力または速度で送達されず、したがって標的組織に十分には到達しなかった(すなわち標的組織が流体物質に対して十分にはさらされなかった)と判定され得る。これに該当する場合には、本方法は、1つまたは複数の流体ジェットを送達することと、圧力または速度のいずれかが十分な高さであったか否かを再度判定することとを含むことが可能である。ピーク圧力またはプラトー圧力を基準データと比較することに加えて、またはその代替として、基準からピークまたはプラトーまでの圧力上昇時間を判定し、基準データと比較することが可能である。圧力が、基準からピークまたはプラトーまで十分な速さで上昇しない場合には、中間組織に対する損傷は、最小限には抑えられない場合がある。いくつかの実施形態においては、圧力上昇が、15ミリ秒超の時間にわたり発生するか否かが、およびいくつかの実施形態においては5ミリ秒超の時間にわたり発生するか否かが判定される。この圧力上昇が、基準事案よりも長い時間をかけたものである場合には、例えば流体送達が無効であったことを、または損傷が中間組織に対して生じたことを示すフィードバックが、供給され得る。また、この目的のために、標的組織に隣接するデバイスの展開前に1つまたは2つの試験ショットによりシステムをパージすることも有用である。このパージにより、システム内に空気が捕獲されないことが確保される。システム内に捕獲された空気は、圧縮され、それにより圧力パルスの上昇時間を遅延させ得る。
【0046】
[00063]図10および図11は、交互計測流出弁のバリエーションの代替的な実施形態を示す。図10は、送達デバイス1010に対して固定された弁1045を示す。図10においては、計測調節部1043が、線形変位量「A」が予期される送達量に一致するように、量「A」だけ線形変位される。ピストン1043は、弁1045の内方壁部に対して封止する。流体抵抗器1032は、非常に高い流体抵抗を有し、調節がなされる際に、流体がピストン1043の一方の側から他方の側へと並進し得るようにする。高圧源1013が、ピストン1043の上流側の計測弁1045内に流体を送る。制御弁1011が開かれると、若干の圧力差が、ピストン1043間において発生し、図面において右方向へとピストン1043を駆動して、弁1019において流体を遮断する。流体抵抗器1032は、その抵抗が、流体送達時のピストンの変位に付随する圧力変化において一方の側から他方の側への流体流を制限するのに十分なものとなるように、サイズ設定される。代替的な実施形態においては、外部レジスタ1032は、ピストン1043内に組み込むことが可能である、または、ピストン1043とシリンダ壁部との間の界面の設計に固有のものとすることが可能である。
【0047】
[00064]図11は、図10に示す実施形態と同様の一実施形態を示す。図11に示すデバイスにおいては、弁1111が、開かれると、小さな圧力差が、流体抵抗器1132によりピストン1143間において発生する。図10の実施形態におけるように、流体抵抗器は、ピストンまたはピストン界面およびシリンダ壁部に組み込まれてもよい。弁1111が開かれると、ピストン1143は、距離Aだけ移動し、シリンダの遠位端部に対して封止し、これにより、距離Aとシリンダの面積との積に等しい量の送達が行われる。弁1111が閉じられると、圧力は、ピストン1143の間で均等になり、ばね1119は、ピストン1143をその準備位置へと復帰させる。
【0048】
[00065]図12および図13は、自動高圧再充填システムを組み込んだ図6および図7のシステムの2つのバリエーションを示す。図12においては、高圧送達システム1200は、量制御機構1201が高圧リザーバに組み込まれる点を除けば、図6および図7のシステムと同様である。高圧再充填システム1210が、高圧流体源1212に接続する動力源1211を備え、さらに、この高圧流体源1212は、高圧送達システム入力弁1217およびオプションの充填弁1213に接続する。高圧再充填システム1210は、高圧再充填リザーバ1212が高圧送達システム1200内の圧力を幾分か上回る圧力に維持されるように、構成される。使用時に、量調節機構1201は、適切な量へと調節される。次いで、弁1217が、開かれて、流体が、再充填リザーバから高圧送達リザーバへと通過し得るようになる。次いで、弁座1217が、閉じられ、高圧送達システムが、使用可能状態になる。オプションの弁1213が、再充填リザーバを充填するために使用されてもよい。図12に示すように、動力源1211は、低圧空気圧ドライブであり、駆動圧力は、低圧駆動圧力と、動力源ピストンの表面積/リザーバを再充填する圧力の比との積に等しいものとなる。図13においては、高圧送達システム入力弁1217が、三方弁1302に置き換えられているが、他の同様の構成要素は、同様に符号を付される。
【0049】
[00066]実質的に一定である高圧流体源に対して間接的にまたは直接的に結合される本明細書に記載される送達デバイスは、流体物質が、高速にて流体源からおよび開口から出て送達され得るように構成された、少なくとも1つの開口を有する。
【0050】
[00067]図14および図15は、2つの例示の送達デバイスの2つの例示の遠位領域を示す。図14は、送達用のオーバー・ザ・ワイヤ構成を備える送達デバイス1400の遠位領域を示す。この送達デバイスは、高圧流体送達ライン1405、膨張可能部材1403、ガイドワイヤルーメン(符号なし)、バルーン膨張ルーメン(符号なし)、および放射線不透過性マーカ1404を備えた、カテーテルシャフト1401を備える。膨張可能部材1403は、剛性の長さ20mmおよび直径6mmの円筒状バルーンとして図示されるが、他の構成を有することが可能であり、カテーテルシャフト1401の遠位領域の外方表面に対して固定される。高圧流体ライン1405は、その遠位領域に形成された少なくとも1つの開口を有し、流体ジェット開口(見えないが本デバイスに備えられる)が膨張可能部材1403の長軸からラジアル方向に外方に向く(すなわち開く)ように、膨張可能部材1403に対して固定される。この開口は、流体ライン1405に沿った任意の位置に位置することが可能であるが、この実施形態においては、膨張可能部材1403の長手方向中心に位置決めされる。
【0051】
[00068]例示的な一使用においては、送達デバイスは、流体が送達デバイスの流体送達ライン内に配置されるように、流体で充填される。いくつかの例が周知である送達カテーテルが、患者内の関心領域へと前進される。次いで、ガイドワイヤが、送達カテーテルを通して送達カテーテルの遠位端部まで送られる。代替的には、およびより一般的には、ガイドワイヤが、標的組織に隣接する位置へと送達され、次いで、送達カテーテルが、標的位置付近へとガイドワイヤ上を前進される。次いで、送達デバイス1400が、ガイドワイヤルーメン内に配設されたガイドワイヤ上を前進される。所望の位置に到達すると、送達デバイス1400は、送達カテーテルに対して遠位に移動される。カテーテルシャフト1402が、前進されて、ジェット開口を標的組織に隣接する(および中間組織に直に隣接し係合する)位置に位置決めする。膨張可能部材1403は、カテーテルシャフト1402内の膨張ルーメンを通り前進された流体で膨張される。次いで、流体物質の高速ジェットが、本明細書に記載されるように送達される。
【0052】
[00069]また、3つの放射線不透過性マーカ1404が、送達デバイスの遠位領域に組み込まれる。カテーテル1402上の2つのマーカ1404は、流体ジェット開口の軸方向位置を視覚的に示し、最も遠位に位置するマーカ1404は、開口のラジアル方向配向に関する情報を提供する。
【0053】
[00070]いくつかの実施形態においては、高圧送達ライン、またはルーメンが、バルーン(または他の膨張可能部材)の外方表面と実質的に同一平面に位置する。これらの構成においては、高圧ルーメンは、バルーンの外方表面よりもラジアル方向にさらに遠方へは延在しない。この構成により、バルーンと、バルーンが中に配設され膨張されるルーメン壁部との間のより良好な係合が実現される。これにより、バルーンとルーメン壁部との間のより良好な封止が実現され、それにより、流体がいったん開口から出て送達された場合に、流体がルーメン内へと漏れて戻る可能性が低下する。いくつかの実施形態においては、高圧送達ルーメンは、バルーン構造体に一体化される。これは、バルーンを形成するために利用される押出成形に1つまたは複数のルーメンを組み入れることによって実現することが可能である。これらのルーメンは、バルーン形成プロセス時に維持され、したがって、結果的に得られるバルーン構造体は、1つまたは複数の一体化された高圧送達ルーメンを備えることになる。いくつかの実施形態においては、チャネルが、高圧流体ルーメンに対応するためにバルーン中に形成される。例えば、ほぼ「U字型」断面形状を有するチャネルが、バルーン中に形成され、高圧ルーメンが、このチャネル内に固定される。したがって、高圧ルーメンは、バルーンの外方表面と実質的に同一平面内に位置する。
【0054】
[00071]図15は、図14に示すものと同様の、および迅速交換ガイドワイヤ構成を備える、送達デバイスの遠位領域の代替的な実施形態を示す。ガイドワイヤ1502が、バルーン1503の近位側においてカテーテルシャフトに進入し、送達カテーテル1500の遠位端部側においてシャフトから出るのが図示される。この実施形態における膨張可能部材1503は、ほぼ球状の膨張可能エラストマーバルーンである。高圧送達ライン1505が、図14の実施形態において上述したように、バルーンの表面に対して固定される。
【0055】
[00072]図14および図15に示す設計と同様の代替的な設計においては、バルーンは、高圧ラインがバルーンの膨張時にバルーンの表面中において実質的に直線状の構成を有するように、膨張可能部材シャフトに対してラジアル方向にオフセットされる。図16A図16Cにおける実施形態は、界面圧力が測定され制御され得る精度を強化する。図16A図16Cにおける実施形態は、カテーテルシャフト1601に対してラジアル方向にオフセットされたバルーン1603を備える。高圧流体送達ライン1605は、バルーン1603に対して固定される。また、高圧ライン1605は、放射線不透過性マーカ1604を備える。この実施形態は、ガイドワイヤ1602の経路により示される迅速交換ガイドワイヤインターフェースを備える。バルーン1603は、カテーテルシャフト1601上に担持され、カテーテルシャフト1601は、より大きなトルク伝達能力を助長するように、編紐または他の剛直化要素を組み込んでもよい。カテーテルシャフトの一般的な特徴は、図示しない。図16Bは、送達用に構成された、および膨張前の、図16Aの送達デバイスの断面を示し、送達デバイスは、脈管1600内に位置決めされる。この構成において、バルーン1603は、収縮され折りたたまれる。図16Cは、バルーンが膨張された脈管1600よりも大きな直径を有する、膨張状態にあるバルーンを示す。かかる構成においては、バルーンを膨張させるために必要とされる圧力は、最小限に抑えられ、膨張時にモニタリングされる圧力は、脈管壁の伸張に付随する圧力を示すこととなる。量対圧力を記録することにより、図17の直径圧力曲線を算出することが可能となり、所望の圧力範囲を判定することが可能となる。かかるシステムは、ある特定の絶対圧力を目標とするのではなく、弾性の相対変化をモニタリングすることにより、適切な膨張圧力を特定するために使用することが可能である。
【0056】
[00073]これらのシステムおよびデバイスは、開口に直接隣接する組織よりも開口に対してより遠位に位置する標的組織に対して流体物質を送達するために使用されるように構成される。これらのシステムは、中間組織に対して与えられる損傷を最小限に抑えるために使用することが可能であり、これを実現可能にするための1つの方法は、流体を開口から高速で送達することである。例示的な一使用は、腎動脈内に送達デバイスを位置決めし、開口から高速で流体物質を送達するものである。流体は、壁部を(中間壁組織に対して最小限のダメージで)通過し、腎動脈を囲む神経組織と相互作用し得る位置まで進む。この流体および神経の相互作用は、神経に沿った神経伝達を阻害して、高血圧症を軽減する。高速で送達デバイスから送達される流体物質により高血圧症を軽減する方法は、2011年3月24日に出願された米国特許出願公開第2011/0257622号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。上述のように、および米国特許出願公開第2011/0257622号に示されるように、流体物質は、送達デバイスから出て腎動脈の内腔壁を貫通して送達され、管腔からより遠位に位置する標的神経組織に対してさらされることにより、神経に沿った神経伝達を阻害し、高血圧症を軽減する。本明細書におけるこれらのシステム、デバイス、および方法は、神経組織が流体にさらされ、それと共に腎動脈およびしたがって血管内に漏れ戻る流体の量を最小限に抑えるように、腎動脈を通過する流体の十分な貫通を可能にする。また、本明細書におけるこれらのシステム、デバイス、および方法は、流体の貫通に付随する損傷が管腔進入箇所において最小限に抑えられるような、腎動脈を通過する流体の貫通を可能にする。
【0057】
[00074]その特許文献に以前より記載されているいくつかのシステムにおいては、流体源内の流体圧力は、患者内への流体送達の前後においては比較的低いが、流体送達中および流体送達の直線には、比較的高くなり得る。これらのシステムの例示的な1つの欠点は、初めに流体圧力が過度に低い場合に、流体が標的組織中に十分には送達されない場合がある点である。例えば、腎動脈から腎動脈を囲む神経組織中に流体を送達してそれらの神経に沿った神経伝達を阻害するためのシステムの使用において、標的神経組織が位置する内側層を完全に貫通して流体が送達されることが、所望の成果である場合に、流体の一部のみが、最終的に内側層内に送達される恐れがある。これらのシステムに関するさらなる例示的な1つの欠点は、圧力が、比較的低い圧力へと低下して戻ることにより、圧力が、過剰に急速に低下した場合に、流体が、内側層を完全には貫通しない恐れがある点である。これは、上記に示した理由により望ましくない。流体源内において十分に高い圧力に流体圧力を維持することにより、流体圧力は、比較的低い圧力へは戻らず、実質的に一定の高圧に維持される。したがって、内側層内に十分な深さで貫通しない、およびしたがって神経経路に沿った神経伝達を十分に阻害することができないという問題の可能性が、排除される。
【0058】
[00075]圧力パルスと、それにより急速に上昇および低下する平均速度を有する流体流とを送達することにより、流体は、送達される際に、進入箇所の組織に対する損傷を最小限に抑えつつ管腔を通過して周囲組織まで貫通すると共に、管腔内へと流体が漏れ戻るのを最小限に抑える。
【0059】
[00076]図18は、圧力変換器405において測定されるような、0.0381mm(1.5ミル)径のジェット開口を使用した場合の図4のシステムにおいて発生する圧力波形を示す。送達量は、約200ミリ秒の期間にわたって約35μLが送達された。圧力変換器405にて測定されるような、上昇圧力1801に付随する圧力遷移は、約5ミリ秒の期間にわたって発生し、圧力解放1802に付随する圧力遷移は、同様の時間フレームにわたり発生した。圧力パルスは、約6206kPa(約900psi)の比較的一定のプラトー圧力を達成する。
【0060】
[00077]いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の流体ジェット開口の直径は、約0.0254mm〜約0.127mm(約1ミル〜約5ミル)の間である。いくつかの実施形態においては、医療デバイスからジェット噴射される流体の速度は、約50〜約400m/秒の間である。いくつかの実施形態においては、一定の高圧源からの流体の流量は、約5〜約40mL/分の間である。いくつかの実施形態においては、流体パルスの期間は、約50〜500ミリ秒の間である。さらに他の実施形態においては、この期間は、数秒である。いくつかの実施形態においては、1パルスあたりに送達される流体量は、約10μL〜約500μLの間である。さらに他の実施形態においては、送達量は、数mLであってもよい。いくつかの実施形態においては、基準圧力と上昇圧力との間の遷移時間、および上昇圧力と基準圧力との間の遷移時間(例えば図18における遷移1801および1802)は、約15ミリ秒未満であり、5ミリ秒未満であってもよく、さらには1ミリ秒未満であってもよい。一般的には、遷移時間がより短いほど、より効率的な貫通と、管腔内へのより少量の流体漏れとがもたらされる。
【0061】
[00078]本明細書においては、高圧は、約5171kPa(約750psi)超の圧力を指し、5171kPa〜34475kPa(750psi〜5000psi)の間の圧力を含む。これらのシステムは、高圧流体源内の流体リザーバ内の流体を約5171kPa〜約34475kPa(約750psi〜約5000psi)の圧力下に維持するように構成される。
【0062】
[00079]図19A図19Dは、図4に示すシステムおよび図14に示す送達カテーテルにより送達された、図18に示すものと同様の圧力パルスを示す流体注入によって治療された組織の様々な画像を示す。図19Aは、注入後に裂けており、進入部損傷が見受けられる、in vitro試験されたブタの腎動脈試料の管腔表面1901を示す。注入物は、青い染料を含んでいた。注入部位は、1902により示され、染料による暗色化により識別される。管腔表面上の視認可能な染色エリアは、ラジアル方向(画像中の垂直方向)に約2mmの長さと、約5mmの幅とを有する。暗色化されたエリア1903は、高圧送達ライン505の位置に対応する。注入物で暗色に染色された室周囲脂肪組織は、1904にて視認可能である。図19Bおよび図19Cは、in vivoブタ研究の際に撮影された蛍光透視画像を示す。バルーンを1903は、バルーンを膨張させるために使用された造影剤により視認可能である。バルーンは、脈管内アプローチにより送達された位置である腎動脈内に示される。この研究においては、注入物は、蛍光透視造影剤および青色染料の両方を含んでいた。図19Bは、注入直前のバルーンおよび周囲組織を示す。図19Cは、注入直後のバルーンおよび周囲組織を示す。注入物は、図19Cでは1905にて視認可能である。図19Dは、別の動物による同一の治療ゾーンの剖検からの写真である。破線内の暗色エリア1906は、染色された損傷ゾーンを、腎動脈上の比損傷ゾーン1907との対照および比較において示す。
【0063】
[00080]図21Aおよび図21Bは、蛍光透視画像であり、70%ETOH/30% Contrast注入物の暗影を示す。ここで、送達パラメータは、図15の構成と同様の構成の送達システムにより8274kPa(1200psi)圧力パルスによって助長された、約80m/秒にて9秒にわたり1.5mLであった。白破線は、注入物暗影2110を強調するために引かれたものである。ガイドワイヤ2101が、ブタの腎動脈を貫通して延在するのが見受けられ、送達カテーテル2100が、これらの図面内の右下に見受けられる。注入開口に隣接して位置する放射線不透過性マーカ2102は、対比陰影内に視認可能である。図21Bは、腎動脈の長軸を中心として注入物が180度超にわたりラジアル方向に拡散しているのを示す、異なる角度からの同一の注入物暗影の図である。膨張可能バルーン2103は、図21Bにおいては視認可能である。
【0064】
[00081]図20A図20Dは、管腔周囲空間内への流体のニードルレス注入に有用な種々の一般化された波形2000を示す。図20Aは、図18に示されるタイプの波形に相当し、上昇遷移と下降遷移との間の領域2003は、比較的平坦となる。例示の特徴には、圧力パルスの開始と、圧力パルスの減衰とに対応する急激な遷移が含まれる。迅速に開始する圧力遷移2001は、十分に範囲限定された最小サイズの損傷をもたらすことにおいて重要であり、注入物は、損傷進入表面の周囲に非常に少ない漏れを伴いつつ、損傷を通して主に送達される。同様に、非常に迅速な最終減衰遷移2002は、損傷進入表面の周囲における流体の漏れを最小限に抑えることにおいて重要となる。低圧漏れがパルスの圧力減衰部分に対して最小限に抑えられることが必要である場合には、高圧送達ライン中の遠位プラグに隣接してジェット開口を形成することが有用である。このようにすることで、捕獲された空気は、実際のジェット噴射前の準備時に容易に押し出される。このステップが実施されない場合には、空気は、ジェットオリフィスの遠位に捕獲され、ジェットサイクルの圧力上昇部分の際に圧縮される恐れがある。圧力減衰時に、この空気は、再膨張し、ジェットオリフィスを通して少量の注入物を押し出すことになる。これは、注入物が非常に毒性またはアブレーション性の高い材料から構成され、非標的組織に対する損傷を最小限に抑えることが必要である場合には、最も重要となる。遷移時間は、少なくとも15ミリ秒未満であるべきであり、好ましくは本明細書に記載される実験において実証されるように5ミリ秒未満であるべきであり、任意には1ミリ秒未満であるべきである。漏れとは別に、急峻な上昇エッジは、良好な貫通を助長する。進入損傷が、いったん形成されると、圧力が、低下し得ると共に、注入物が、十分に範囲限定された穿刺損傷の遠位側において拡散することとなる場合がしばしばある。かかる手順の場合には、注入物に付随する進入部位における組織の損傷が、最小限に抑えられ得る一方で、より多量の注入物が、損傷深さを増大させることなく組織中により深く送達され得る。図20Bおよび図20Cは、かかる損傷を生じさせるうえで有用な2つの圧力波形を示す。図20Bにおいては、ピーク圧力が達成された後に、圧力は、一定勾配で進入損傷を貫通するのに依然として十分である圧力まで漸減し得る。パルスの終了時には、圧力は、本明細書に示す理由により急激に低下する。図20Dは、一定勾配で低下する圧力とは対照的に、初期短期間高圧ピーク2004が損傷形成のために使用され、その後に十分な圧力および期間のより低い圧力プラトーが続くことにより、進入損傷を経由して適切な深さまで必要量の注入物が送達される点を除けば、図20Bと同様である。いくつかの状況においては、組織の深さにおいてより均一に注入物が拡散することが有用である場合があり、この場合には、図20Cのパルスが望ましいものとなり得る。代替的には、注入物の量は、ある特定の位置に複数のパルスを送達することにより、さらに調整することができ、これらのパルスは、本明細書に記載するパルスの様々な組合せおよび/または様々な送達速度から構成され得る。
【0065】
[00082]腎神経アブレーションによる高血圧症の治療を参照すると、(米国特許出願公開第2011/0257622号にその例がより詳細に記載されている)、送達される注入物の量は、単一位置において複数回の注入によりもしくは複数部位において複数回の注入により増加され得るか、または多量が、1つの部位に対して送達され、拡散され得る。1つの部位に複数回の注入により注入物を送達する場合に、注入物の拡散は、造影剤が注入物中に含まれる場合には蛍光透視法によってモニタリングすることができる。注入回数は、蛍光透視法下における注入物の拡散状況を観察し、所望の拡散が行われた時点でこの処置を停止することによって、制御することができる。複数部位での注入時には、図15のデバイスなどのデバイスが、各注入ごとに再配置され得るか、代替的には、図14のデバイスと同様のデバイスが、複数の並行注入システムを組み込んでもよい。後者の場合には、各ラインは、単一の流体源または個別の流体源に対して結合される。また、米国特許出願公開第2011/0257622号に記載されるデバイスは、本明細書に記載されるシステム構成要素のいずれかを用いて、および本明細書の方法のいずれかにしたがって、使用されるように変更することが可能である。
【0066】
[00083]図17は、動脈に対応する典型的な圧力著系プロファイルを示す。脈管の管腔表面における損傷の最小限への抑制および注入物送達深さの制御が望ましい場合には、医療デバイスのジェット開口と管腔壁との間の界面における適切な圧力が重要となる。界面圧力がより高いほど、管腔損傷はより小さくなり、貫通深さの制御はより高いものになる。しかし、界面圧力が過剰に上昇すると、脈管は損傷を被り得る。したがって、界面圧力脈管拡張間でバランスがとられなければならない。典型的な脈管は、初期拡張時には低い弾性を示し、剛直化し始め、次いではるかに高い弾性を示す。脈管が高弾性領域へとさらに拡張されると、組織は損傷を被ることになる。領域1702は、脈管に対する損傷が、最小限に抑えられ得ると共に、界面圧力が、管腔壁の平滑な穿孔をもたらすのに十分な高さとなる、界面圧力の標的領域を示す。
【0067】
[00084]図14および図15に示す実施形態においては、高圧送達ライン1405および1505が、0.3556mm(14ミル)の外形および0.3048mm(12ミル)の内径のポリイミドチューブを有する。小さすぎるためこれらの図では見ることができない送達開口は、0.0381mm(1.5ミル)である。送達ラインの全長は、約81.3cm(約32インチ)である。
【0068】
[00085]次に、図5および図6の実施形態と同様に遠位端部付近に出口開口を有する長尺流体パイプを備える流体送達システムに関する予期される流体動的挙動を説明する。この説明は、流体送達ラインが約0.3048mm(約12ミル)の内径を有し、送達開口が約0.0127〜約0.127mm(約0.5〜約5ミル)の範囲であるかより具体的には約0.0508mm(約2ミル)である場合に、特に該当する。かかるシステムについて、流体速度は、以下の方程式によって説明される。
【0069】
[00086]v(P,Beta,ρ)=C*(1−Beta^4))^.5*((2*P)/ρ)
[00087]ここで、Pは、出口開口間における圧力差であり、Betaは、送達チューブ内径/開口直径の直径非であり、ρは、送達流体の密度でありCは、流出係数である。収集された実験データは、約0.5〜約0.8の範囲のCの値を示し、約0.65の値が、上記に挙げた構成の典型であった。かかるシステムより収集された実験データは、約1.1gm/mLの密度を有する送達流体を使用して、8274kPa(1200psi)にて0.0508mm(2ミル)直径の出口開口を通して9秒で1.5mLが送達されることを示した。平均_速度=量_送達される/(継続時間*面積_開口)の関数を使用すると、これは、82m/秒の平均送達速度を意味する。上述の関数関係および0.65のCを使用すると、平均流体速度は、出口弁にて測定した場合に、8274kPa(1200psi)にて約78m/秒となる。平均流量での81.3cm(32インチ)の長さおよび0.3048mm(12ミル)の直径の送達チューブにおける予期される圧力損失を所与とした場合に、これは、出口開口間における約7826kPa(約1135psi)の圧力差を意味する。COカートリッジは、一定圧力源内の一定圧力を維持するための手段を提供する。なぜならば、COカートリッジ内の内圧は、カートリッジ内にガスおよび液体の混合物が留まる限り、所与の温度にて比較的一定に維持されるからである。したがって、圧力は、カートリッジの温度を調節することによって調節され得る。以下の表は、液相および蒸気相の両方のCOを含むCOカートリッジについての温度に対する内圧を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
[00088]本明細書の方法、システム、およびデバイスのいずれかを利用して管腔周辺の神経組織の治療のためなどの送達され得る例示の流体物質は、米国特許出願公開第2011/0257622号、米国特許出願公開第2011/0104061号、および米国特許出願公開第2011/0104060号において見ることができ、これらの完全な開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
[00089]いくつかの実施形態においては、本明細書において、システムは、標的組織をアブレーションするために使用し得る。組織の局所的アブレーションを実施する場合には、特定の組織または組織機能を具体的に標的とするために、および隣接組織に対して与えられる影響を最小限に抑えるために、選択されたアブレーション物質を使用することが、しばしば有利となる。いずれの例においても、アブレーション物質の滞留時間は、毛細血管症およびリンパ系による接種を含む正常な身体機能によりそれが除去される速度によって決定されることになる。十分に標的設定されたアブレーション物質を使用する場合には、正常な除去プロセスに関連する組織に対してはほとんど影響を有さなくなる結果としばしばなる。かかる例においては、身体は、可能な限り効率的かつ迅速にアブレーション物質を除去する。かかる状況においては、療法的に標的設定されたアブレーション物質を除去する身体能力を遅滞させ、それによりその滞留時間を増大させそれにより所与の送達量および送達濃度についてのその効果の大きさを増大させるために、何らかの非特定アブレーション物質を、あるいは毛細血管摂取および/またはリンパ摂取を遅滞させるように具体的に標的設定されたアブレーション物質を、アブレーション物質カクテルに対して追加することが、非常に有利となる。
【0073】
[00090]グアネチジン、レセルピン、テトロドトキシン、ボツリヌス毒素、または他のアブレーション物質などの、神経機能に標的設定されたアブレーション物質の使用は、腎神経のアブレーションにおいてなど、高血圧症の治療において特に有意である。これらのアブレーション物質は、毛細血管摂取に対する幾分かの影響を有し得るが、リンパ摂取に対してはほとんどまたは全く影響を有するべきではない。
【0074】
[00091]近年では、エタノール(ETOH)などの一般的なアブレーション物質との組合せにおいて注入された造影剤の滞留時間が、生理食塩水との組合せにおいて注入された同一の造影剤の滞留時間に比べて著しい増加がみられることが、蛍光透視法下において判明した。これらの実験において、30体積%のUltravist300(造影剤)と、70体積%のETOHかまたは70体積%の生理食塩水のいずれかとを含むカクテルを、蛍光透視法的な尺度としての造影剤の減少に関して経時的に観察した。その観察結果は、造影剤は、ETOHと共に注入された場合には、生理食塩水と共に注入された場合に比べて、周囲組織内により長い期間にわたり観察されるというものであった。一般的なアブレーション物質は、正視力円錐に比べて、造影剤の滞留時間を増加させた。
【0075】
[00092]本開示の一態様は、一般的なアブレーション物質(例えば、エタノール、氷酢酸等々)と神経機能に標的設定されたアブレーション物質とのカクテルを送達することにより、高血圧症の治療方法(例えば非限定的な例ではあるが、参照により本明細書に組み込まれる出願内にあるような、腎動脈内からの)である。標的設定されるアブレーション物質は、本明細書に上げたもののいずれかであることが可能である。一実施形態においては、カクテルは、一般的なアブレーション物質としてのエタノールと、標的設定されたアブレーション物質としてのグアネチジンとを含む。一般的なアブレーション物質は、グアネチジンの滞留時間を増大させ、腎神経のより良好なアブレーションを実現させる。
【0076】
[00093]本開示の一態様は、比較的少量の一般的なアブレーション物質の送達と、その前または後の標的設定されたアブレーション物質の送達とを逐次的に行うことによる、高血圧症の治療方法である。一般的なアブレーション物質および標的設定されたアブレーション物質は、本明細書に記載されるもののいずれか、または任意の他の適切なアブレーション物質であることが可能である。一般的なアブレーション物質の量は、神経のアブレーションのために典型的に送達される量よりも少量となるが、標的設定されたアブレーション物質を一掃する身体能力を阻害することにより標的設定されたアブレーション物質の滞留時間を増大させるには十分な量である。
【0077】
[00094]本開示の一態様は、神経機能に標的設定されたアブレーション物質と、治療的に標的設定されたアブレーション物質を除去する身体能力を遅滞させるために毛細血管摂取および/またはリンパ摂取を阻害するように具体的に標的設定されたアブレーション物質とのカクテルを送達することによる、高血圧症の治療方法である。この態様においては、先述の態様よりもさらに少量ではあるが、一般的なアブレーション物質がやはりカクテルに追加され得る。
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図5
図8
図17
図18
【国際調査報告】