特表2015-506870(P2015-506870A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-506870車載電気システム、車載電気システムの制御装置、および、装置を備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506870(P2015-506870A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】車載電気システム、車載電気システムの制御装置、および、装置を備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20150206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
   B60R16/02 670B
   H02J7/00 H
   H02J7/00 302B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-552609(P2014-552609)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月22日
(86)【国際出願番号】EP2013050751
(87)【国際公開番号】WO2013107774
(87)【国際公開日】20130725
(31)【優先権主張番号】102012200804.7
(32)【優先日】2012年1月20日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ライヒョウ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ライテラー
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503CC02
5G503DA17
5G503GA01
5G503GB03
(57)【要約】
本願は、車両(100)用の車載電気システム(1)を対象とし、当該車載電気システム(1)は、・動的に変化する第1の電気的負荷(4)と第1のエネルギー蓄積器(3)とを含む第1の車載電気システム分岐(2)、・敏感な第2の電気的負荷(8)を含む第2の車載電気システム分岐(7)、・前記第1の車載電気システム分岐(2)と前記第2の車載電気システム分岐(7)との間に設置される、制御可能な第1のスイッチングデバイス(11)と、を有し、前記第1のスイッチングデバイス(11)は、・前記第1の車載電気システム分岐(2)から前記第2の車載電気システム分岐(7)へ向かう第1の電流方向(201)にのみ一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、・前記第2の車載電気システム分岐(7)から前記第1の車載電気システム分岐(2)に向かう第2の電流方向(202)と、前記第1の電流方向(201)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態をとるように構成されていることを特徴とする、車載電気システム(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用の車載電気システム(1)であって、
・動的に変化する第1の電気的負荷(4)を含む第1の車載電気システム分岐(2)、
・敏感な第2の電気的負荷(8)を含む第2の車載電気システム分岐(7)、ならびに、
・前記第1の車載電気システム分岐(2)と前記第2の車載電気システム分岐(7)との間に設置される、制御可能な第1のスイッチングデバイス(11)
を有し、
前記第1のスイッチングデバイス(11)は、
・前記第1の車載電気システム分岐(2)から前記第2の車載電気システム分岐(7)へ向かう第1の電流方向(201)にのみ一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記第2の車載電気システム分岐(7)から前記第1の車載電気システム分岐(2)に向かう第2の電流方向(202)と、前記第1の電流方向(201)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されていることを特徴とする、車載電気システム(1)。
【請求項2】
前記車載電気システム(1)はさらに、
・前記第1の車載電気システム分岐(2)と前記第2の車載電気システム分岐(7)との間に、前記第1のスイッチングデバイス(11)に並列接続された、DC/DCコンバータ(9)と制御可能な第2のスイッチングデバイス(12)との直列接続体
を有し、
・前記第1の車載電気システム分岐(2)は第1のエネルギー蓄積器(3)を有し、
・前記DC/DCコンバータ(9)は、前記第2の車載電気システム分岐(7)の電流を用いて前記第1の車載電気システム分岐(2)の前記第1のエネルギー蓄積器(3)の充電を行うように構成されており、
・前記第2のスイッチングデバイス(12)は、
前記第2の車載電気システム分岐(7)から前記第1の車載電気システム分岐(2)に向かう第1の電流方向(203)にのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
前記第1の車載電気システム分岐(2)から前記第2の車載電気システム分岐(7)に向かう第2の電流方向(204)と、前記第1の電流方向(203)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている、
請求項1記載の車載電気システム(1)。
【請求項3】
前記車載電気システム(1)はさらに、
・第3の車載電気システム分岐(5)、ならびに、
・前記DC/DCコンバータ(9)と前記第3の車載電気システム分岐(5)との間に設置された、制御可能な第3のスイッチングデバイス(13)
を有し、
前記第3のスイッチングデバイス(13)は、
前記第3の車載電気システム分岐(5)から前記DC/DCコンバータ(9)へ向かう第1の電流方向(205)にのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
前記DC/DCコンバータ(9)から前記第3の車載電気システム分岐(5)へ向かう第2の電流方向(206)と、前記第1の電流方向(205)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている、
請求項2記載の車載電気システム(1)。
【請求項4】
・前記第3の車載電気システム分岐(5)は第3のエネルギー蓄積器(6)を有し、
・前記DC/DCコンバータ(9)はさらに、前記第3の車載電気システム分岐(5)の前記第3のエネルギー蓄積器(6)の電流を用いて、前記第1の車載電気システム分岐(2)の前記第1のエネルギー蓄積器(3)の充電を行い、および/または、その逆の充電を行うように構成されている、
請求項3記載の車載電気システム(1)。
【請求項5】
・前記第1のスイッチングデバイス(11)と前記第2のスイッチングデバイス(12)と前記第3のスイッチングデバイス(13)とのうち少なくとも1つのスイッチングデバイスは、半導体トランジスタとダイオードとを含み、
・前記半導体トランジスタと前記ダイオードとは並列接続されている、
請求項3または4記載の車載電気システム(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスイッチングデバイス(11,12,13)は、ボディダイオードを有するMOSFETスイッチを含む、
請求項5記載の車載電気システム(1)。
【請求項7】
前記第1の電気的負荷(4)は、前記車両(100)の内燃機関を始動するためのスタータである、
請求項1から6までのいずれか1項記載の車載電気システム(1)。
【請求項8】
前記DC/DCコンバータ(9)は、制御可能な双方向直流コンバータである、
請求項2から7までのいずれか1項記載の車載電気システム(1)。
【請求項9】
車両(100)の車載電気システム(1)の制御装置(20)であって、
・動的に変化する第1の電気的負荷(4)を有する第1の車載電気システム分岐(2)に電気的に接続される第1の電流端子(51)、
・敏感な第2の電気的負荷(8)を有する第2の車載電気システム分岐(7)に電気的に接続される第2の電流端子(52)、ならびに、
・前記第1の電流端子(51)と前記第2の電流端子(52)との間に設置された、制御可能な第1のスイッチングデバイス(11)
を有し、
前記第1のスイッチングデバイス(11)は、
前記第1の電流端子(51)から前記第2の電流端子(52)に向かう第1の電流方向(201)にのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
前記第2の電流端子(52)から前記第1の電流端子(51)へ向かう第2の電流方向(202)と、前記第1の電流方向(201)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されていることを特徴とする、制御装置(20)。
【請求項10】
前記制御装置(20)はさらに、
・前記第1の電流端子(51)と前記第2の電流端子(52)との間に、DC/DCコンバータ(9)と、制御可能な第2のスイッチングデバイス(12)との直列接続体
を有し、
前記直列接続体は、前記第1のスイッチングデバイス(11)に並列接続されており、
・前記第2のスイッチングデバイス(12)は、
前記第2の電流端子(52)から前記第1の電流端子(51)へ向かう第1の電流方向(203)にのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
前記第1の電流端子(51)から前記第2の電流端子(52)へ向かう第2の電流方向(204)と、前記第1の電流方向(203)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている、
請求項9記載の制御装置(20)。
【請求項11】
前記制御装置(20)はさらに、
・第3の車載電気システム分岐(5)に電気的に接続される第3の電流端子(53)、ならびに、
・前記DC/DCコンバータ(9)と前記第3の電流端子(53)との間に設置された、制御可能な第3のスイッチングデバイス(13)
を有し、
前記第3のスイッチングデバイス(13)は、
前記第3の電流端子(53)から前記DC/DCコンバータ(9)へ向かう第1の電流方向(205)にのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
前記DC/DCコンバータ(9)から前記第3の電流端子(53)へ向かう第2の電流方向(206)と、前記第1の方向(205)とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている、
請求項9または10記載の制御装置(20)。
【請求項12】
前記DC/DCコンバータ(9)は、制御可能な双方向直流コンバータである、
請求項11記載の制御装置(20)。
【請求項13】
車載電気システム(1)を備えた車両(100)であって、
さらに、前記車載電気システム(1)を制御するために、請求項9から12までのいずれか1項記載の制御装置(20)を備えていることを特徴とする、車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の車載電気システムと、車両の車載電気システムの制御装置と、装置を備えた車両とに関する。
【0002】
DE102010029788A1から、第1の車載電気システム分岐と少なくとも1つの第2の車載電気システム分岐とを有する自動車用車載電気システムが公知である。第1の車載電気システム分岐は、第1の電流端子と第2の電流端子とを有する第1のエネルギー蓄積器を備えており、さらに、前記第1の車載電気システム分岐はジェネレータと少なくとも1つの第1の負荷とを有する。第2の車載電気システム分岐は、第1の電流端子と第2の電流端子とを有する第2のエネルギー蓄積器を備えており、第2の車載電気システム分岐はさらに、前記第2のエネルギー蓄積器の第1の電流端子および/または前記第1のエネルギー蓄積器の第1の電流端子に電気的に結合可能である少なくとも1つの第2の負荷を有する。前記第2の車載電気システム分岐はさらに、第1の電流端子および第2の電流端子を有するエネルギーフローレギュレータを備えており、当該エネルギーフローレギュレータの第2の電流端子は前記第2のエネルギー蓄積器の第1の電流端子に電気的に結合可能であり、当該エネルギーフローレギュレータの第1の電流端子は前記第1のエネルギー蓄積器の第1の電流端子に電気的に結合されている。
【0003】
本願の課題は、車両の車載電気システムにおける電圧安定化を更に改善できる構成を実現することである。
【0004】
前記課題は、独立請求項に記載の発明によって解決される。従属請求項から、本発明の有利な実施形態を導き出すことができる。
【0005】
本願の第1の対象は、車両用の車載電気システムである。前記車載電気システムは第1の車載電気システム分岐を有し、当該第1の車載電気システム分岐は、動的特性を有する第1の電気的負荷を備えている。さらに、前記車載電気システムは第2の車載電気システム分岐を有し、当該第2の車載電気システム分岐は、敏感な第2の電気的負荷を有する。前記車載電気システムはさらに、前記第1の車載電気システム分岐と前記第2の車載電気システム分岐との間に、制御可能な第1のスイッチングデバイスを有し、当該第1のスイッチングデバイスは、
・前記第1の車載電気システム分岐から前記第2の車載電気システム分岐へ、第1の電流方向でのみ一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記第2の車載電気システム分岐から前記第1の車載電気システム分岐への第2の電流方向と、前記第1の電流方向とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている。
【0006】
本願において、動的特性を有する電気的負荷とは、たとえば車両の内燃機関のスタータ等の、動的特性を有する高電流負荷を意味する。このような高電流負荷の特徴は、当該高電流負荷が比較的大量の電気エネルギーを不定期的に消費し、これにより車載電気システムに電圧変動が引き起こされることを特徴とし、また、この電圧変動により、車載電気システムに設置された敏感な電気的負荷がエラー無しで動作できなくなる恐れが出てくることを特徴とする。
【0007】
本願において敏感な電気的負荷とは、車載電気システムにおける電圧変動に比較的影響を受けやすいので車載電気システムの電圧変動から保護しなければならない、たとえばABS(アンチロックブレーキシステム)またはロービーム等の電力負荷を意味する。
【0008】
上述のような敏感な負荷を別個の車載電気システム分岐に設置して動的特性の負荷から分離させ、かつ、必要な場合にのみ第1のスイッチングデバイスの閉成制御により当該敏感な負荷が設置された第2の車載電気システム分岐と当該動的特性の負荷が設置された第1の車載電気システム分岐との電流を流す前記第1のスイッチングデバイスを、敏感な負荷と動的特性の負荷との間に設置することにより、前記敏感な負荷を電流変動から、特に第1の車載電気システム分岐における電圧降下から、一層有効に保護することができる。さらに、第2の車載電気システム分岐において、第1の車載電気システム分岐の定格電圧より高い定格電圧を生成できるという利点も奏される。
【0009】
1つの有利な実施形態では、前記車載電気システムは、前記第1の車載電気システム分岐に設置される第1のエネルギー蓄積器を有し、さらに、当該第1の車載電気システム分岐と前記第2の車載電気システム分岐との間に、DC/DCコンバータと、制御可能な第2のスイッチングデバイスとの直列接続体を有し、当該直列接続体は前記第1のスイッチングデバイスに並列接続されている。この実施形態では、DC/DCコンバータは第1の車載電気システム分岐の第1のエネルギー蓄積器に、前記第2の車載電気システム分岐からの電流を充電し、および/または、その逆方向の充電を行うように構成されている。前記第2のスイッチングデバイスは、
・前記第2の車載電気システム分岐から前記第1の車載電気システム分岐へ、第1の電流方向でのみ一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記第1の車載電気システム分岐から前記第2の車載電気システム分岐への第2の電流方向と、前記第1の電流方向とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている。
【0010】
前記DC/DCコンバータと第2のスイッチングデバイスとにより構成される上述の第2の電流経路により、第2の車載電気システム分岐において危険な電圧変動を生じさせることなく、第1の車載電気システム分岐は第2の車載電気システム分岐からの電流により安定化することができる。したがって、上述の実施形態の車載電気システムにより、車両の動作状態が変わっても、第2の車載電気システム分岐における一層改善された電圧安定化を実現することができる。このことにより、特に第2の車載電気システム分岐内部に設置された敏感な電気的負荷の動作を改善することができる。
【0011】
他の1つの有利な実施形態では、前記車載電気システムはさらに第3の車載電気システム分岐を有する。この第3の車載電気システム分岐は、有利には第3のエネルギー蓄積器を有する。前記車載電気システムはさらに、前記DC/DCコンバータと前記第3の車載電気システム分岐との間に、制御可能な第3のスイッチングデバイスを有し、当該第3のスイッチングデバイスは、
・前記第3の車載電気システム分岐から前記DC/DCコンバータへの第1の電流方向でのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記DC/DCコンバータから前記第3の車載電気システム分岐への第2の電流方向と、前記第1の電流方向とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている。
【0012】
第3のエネルギー蓄積器を備えた前記第3の車載電気システム分岐は、第1の車載電気システム分岐の更なる電流源、ないしは、第1の車載電気システム分岐に設置された第1の動的特性負荷の更なる電流源として機能し、必要な場合に、当該第1の車載電気システム分岐における電圧を安定化させる。
【0013】
前記電圧安定化は、特に、DC/DCコンバータと第1,第2,第3のスイッチングデバイスとを設置することにより実現される。このことについては、後に詳述する。上述の実施形態はさらに、車載電気システムの冗長構成の改善、アベイラビリティの向上、および、機能的安全性の向上を実現することもできる。さらに、前記ジェネレータ、前記第1のエネルギー蓄積器および第2のエネルギー蓄積器を、より低い電力クラスで構成することも可能になり、このことは特にコスト面での利点に繋がる。
【0014】
さらに他の有利な実施形態の車載電気システムでは、前記DC/DCコンバータは、第3の車載電気システム分岐の第3のエネルギー蓄積器からの電流を用いて第1の車載電気システム分岐の第1のエネルギー蓄積器の充電を行い、および/または、その逆方向の充電を行うように構成されている。有利には、DC/DCコンバータは同期コンバータである。このような構成により、特に第1の車載電気システム分岐において電圧安定化を実現するため、第1の車載電気システム分岐と第2の車載電気システム分岐と第3の車載電気システム分岐との間でエネルギー伝送を簡単に行うことができる。
【0015】
さらに他の有利な実施形態の車載電気システムでは、前記第1のスイッチングデバイスと第2のスイッチングデバイスと第3のスイッチングデバイスとのうち少なくとも1つが、半導体トランジスタとダイオードとを並列接続したものを含む。有利には、前記少なくとも1つのスイッチングデバイスは、ボディダイオードを有するMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)を含む。
【0016】
他の有利な実施形態の車載電気システムでは、前記第1の負荷は、車両の内燃機関を始動するためのスタータである。
【0017】
さらに他の有利な実施形態の車載電気システムでは、前記DC/DCコンバータは、制御可能な双方向直流コンバータである。
【0018】
前記DC/DCコンバータ、第1のスイッチングデバイス、第2のスイッチングデバイスおよび第3のスイッチングデバイスは、有利には制御装置の構成要素である。その際には、これらの構成要素を制御装置の形態の1つのモジュールで実現することができる。
【0019】
有利には、前記車載電気システムはさらに、前記第1のスイッチングデバイスを駆動制御するように構成された第1の駆動制御ユニットと、前記第2のスイッチングデバイスを駆動制御するように構成された第2の駆動制御ユニットと、前記第3のスイッチングデバイスを駆動制御するように構成された第3の駆動制御ユニットと、前記DC/DCコンバータを駆動制御するように構成された第4の駆動制御ユニットとを有する。その際には、前記第1の駆動制御ユニット、第2の駆動制御ユニット、第3の駆動制御ユニットおよび第4の駆動制御ユニットは、前記制御装置の構成要素である。
【0020】
前記ジェネレータは、第1の車載電気システム分岐または第3の車載電気システム分岐の一部とすることができる。その際には、ジェネレータにより安全な車載電気システム動作を実現するために決定的に重要なのは、ジェネレータが供給できるエネルギーよりも、動的特性負荷が必要とするエネルギーが高くなってしまう、車載電気システムの機能不全を確実に回避するため、ジェネレータを少なくとも1つのエネルギー蓄積器に電気的に接続すること、すなわち、前記第1のエネルギー蓄積器と第2のエネルギー蓄積器とのうち少なくとも1つに電気的に接続することである。このことは、本願の車載電気システムにより確実に実現することができる。このことについては、後に詳細に説明する。
【0021】
第1のエネルギー蓄積器はたとえば、鉛蓄電池またはLiイオン蓄電池である。前記第2のエネルギー蓄積器はたとえば、少なくとも1つのキャパシタと少なくとも1つの蓄電池とから成る群から選択され、前記キャパシタはとりわけ少なくとも1つの電気二重層コンデンサであり、前記蓄電池はとりわけ少なくとも1つのLiイオン蓄電池である。
【0022】
車載電気システムの他の1つの実施形態では、前記第3の車載電気システム分岐はさらに第3の電気的負荷を有し、この第3の電気的負荷は前記第2のエネルギー蓄積器に電気的に結合ないしは導電接続されている。この第3の負荷もまた、第1の車載電気システム分岐において電圧変動が生じた場合に前記第1のスイッチングデバイスと第2のスイッチングデバイスと第3のスイッチングデバイスとによりこの電圧変動から有効に保護される敏感な負荷とすることができる。
【0023】
本願の第2の対象は、車両の車載電気システムの制御装置である。この制御装置は、動的に変化する電気的負荷を有する第1の車載電気システム分岐に電気的に接続される第1の電流端子と、敏感な負荷を有する第2の車載電気システム分岐に電気的に接続される第2の電流端子とを備えている。前記制御装置は、前記第1の電流端子と前記第2の電流端子との間に、制御可能な第1のスイッチングデバイスを有し、当該第1のスイッチングデバイスは、
・前記第1の電流端子から前記第2の電流端子へ、第1の電流方向でのみ一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記第2の電流端子から前記第1の電流端子への第2の電流方向と、前記第1の電流方向とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている。
【0024】
1つの有利な実施形態では、前記制御装置は第1の電流端子と第2の電流端子との間にさらに、DC/DCコンバータと、制御可能な第2のスイッチングデバイスとの直列接続体を有し、当該直列接続体は前記第1のスイッチングデバイスに並列接続されている。その際には前記DC/DCコンバータは、第2の電流端子の第2の電圧電位を、第1の電流端子の第1の電圧電位に変換し、および/または、その逆方向の変換を行うように構成されている。前記第2のスイッチングデバイスは、
・前記第2の電流端子から前記第1の電流端子へ、第1の電流方向でのみ一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記第1の電流端子から前記第2の電流端子への第2の電流方向と、前記第1の電流方向とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている。
【0025】
他の有利な実施形態では、前記制御装置はさらに、第3の車載電気システム分岐に電気的に接続される第3の電流端子も備えている。この第3の車載電気システム分岐は、有利には第3のエネルギー蓄積器を有する。前記制御装置はさらに、前記DC/DCコンバータと前記第3の車電流端子との間に、制御可能な第3のスイッチングデバイスを有し、当該第3のスイッチングデバイスは、
・前記第3の電流端子から前記DC/DCコンバータへの第1の電流方向でのみ、一方向に電流を流す第1のスイッチング状態、または、
・前記DC/DCコンバータから前記第3の電流端子への第2の電流方向と、前記第1の電流方向とに、双方向に電流を流す第2のスイッチング状態
をとるように構成されている。
【0026】
本願の第3の対象は、上述の構成の車載電気システムを備えた車両である。有利には、前記車両はさらに、当該車載電気システムを制御する上述の制御装置も備えている。
【0027】
有利には、前記車両はさらに、当該車両の内燃機関を自動および/または手動で遮断ないしは始動するように構成されたスタートストップシステムを含む。
【0028】
本願はさらに、上述の構成の車載電気システムを動作させる方法も対象とする。この方法は以下のステップを有する。車両の動作状態を特定する。さらに、前記第1のスイッチングデバイス、第2のスイッチングデバイス、第3のスイッチングデバイスおよびDC/DCコンバータを駆動制御するための制御信号を、前記車両の特定された動作状態に依存して生成する。
【0029】
ここで車両の動作状態の特定には、たとえば、車両の検出された少なくとも1つのパラメータに基づいて、または、車両の少なくとも1つの構成要素の検出されたパラメータに基づいて前記動作状態を特定すること、および/または、たとえばユーザ要求またはユーザ入力により行われた前記動作状態の設定を含むことができる。
【0030】
本願の車両および方法もまた、本願の車載電気システムについて既に述べた利点を奏する。ここでは繰り返しになるのを避けるため、この利点について再度説明しない。特に、スタートストップシステムを備えた車両の場合には、電圧安定化をさらに改善することが特に重要である。というのも、内燃機関の始動には高い電力消費量が伴うからであり、この高電力消費により、車両車載電気システムにおいて急激な電圧降下が生じてしまうからである。このことは、上述の実施形態の車載電気システムによって有利に回避することができる。
【0031】
特定された動作状態が車両の内燃機関の始動過程である場合、1実施形態では、第1のスイッチングデバイスを開放し、第2のスイッチングデバイスおよび第3のスイッチングデバイスを閉成し、DC/DCコンバータを作動させる。特に、DC/DCコンバータが電圧制御方式で動作するようにこれを制御することができる。
【0032】
特定された前記動作状態が、車両の内燃機関の非作動状態または低エネルギーモードである場合、1つの他の実施形態では、第1のスイッチングデバイスを開放し、第2のスイッチングデバイスを閉成し、第3のスイッチングデバイスを開放し、かつ、第1の車載電気システム分岐から第3の車載電気システム分岐へエネルギーを伝送するように前記DC/DCコンバータを制御する。
【0033】
以下、添付の図面に基づいて本願の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本願の第1の実施形態の車載電気システムのブロック回路図である。
図2】本願の第2の実施形態の車載電気システムのブロック回路図である。
図3図1ないし2に示された車載電気システムの基本回路図である。
図4図1ないし2に示された実施形態の車載電気システムの第1,第2および第3の車載電気システム分岐における電圧‐時間グラフである。
【0035】
図1Aおよび1Bは、本願の第1の実施形態の車載電気システム1を備えた車両100のブロック回路図である。
【0036】
前記車載電気システム1は第1の車載電気システム分岐2を有し、当該車載電気システム分岐2には第1の電気エネルギー蓄積器3と第1の電気的負荷4とが設置されている。前記第1の電気エネルギー蓄積器3はたとえば12V蓄電池であり、前記第1の電気的負荷4は動的特性負荷である。第1の電気エネルギー蓄積器3はたとえば、Liイオン蓄電池または鉛蓄電池とすることができる。図中の実施形態では第1の電気的負荷4は、車両100の、同図に具体的に示されていない内燃機関のスタータとして構成されている。
【0037】
前記車載電気システム1はさらに第2の車載電気システム分岐7も有し、この第2の車載電気システム分岐7には、敏感な第2の負荷8が設置されている。この第2の車載電気システム分岐7にはさらにジェネレータ10も設置されており、このジェネレータ10は、具体的に図示されていない機械的結合部材を介して、たとえばVリブドベルトを介して、車両100の内燃機関に結合されている。
【0038】
前記車載電気システム1はさらに、第3の車載電気システム分岐5も有しており、この第3の車載電気システム分岐5には第3の電気エネルギー蓄積器6が設置されている。第3の電気エネルギー蓄積器6はたとえば12V蓄電池とすることができ、たとえばLiイオン蓄電池の形態の12V蓄電池とすることができる。他の1つの実施形態では、前記第3の電気エネルギー蓄積器6はキャパシタとして、特にいわゆるスーパーキャパシタとして構成されているか、ないしはキャパシタモジュールとして構成されている。図中の実施形態では、第3の車載電気システム分岐5にはさらに、第3の電気的負荷25も設置されている。
【0039】
図中に示された実施形態では、前記第1の車載電気システム分岐2、前記第2の車載電気システム分岐5および前記第3の車載電気システム分岐7の公称電圧は等しく、たとえば12Vまたは14Vである。
【0040】
さらに前記車載電気システム1は、前記第1の車載電気システム分岐2と第2の車載電気システム分岐7と第3の車載電気システム分岐5との間の電流の流れを制御するための制御装置20も有する。この制御装置20は、第1の電流端子51を介して第1の車載電気システム分岐2に電気的に接続されており、第2の電流端子52を介して第2の車載電気システム分岐7に電気的に接続されており、かつ、第3の電流端子53を介して第3の車載電気システム分岐5に電気的に接続されている。
【0041】
制御装置20は、前記第1の電流端子51と第2の電流端子52との間に第1のスイッチングデバイス11を有し、前記第2の電流端子52と第3の電流端子53との間に第2のスイッチングデバイス12および第3のスイッチングデバイス13を有する。図中の実施形態では、第1のスイッチングデバイス11、第2のスイッチングデバイス12および第3のスイッチングデバイス13は、ボディダイオードを有するノーマリーオフ型nチャネルMOSFETスイッチの形態の半導体スイッチとして構成されている。
【0042】
制御装置20はさらに、前記第2,第3のスイッチングデバイス12,13間にある接続端子と前記第1の接続端子51との間にDC/DCコンバータ9も有する。このDC/DCコンバータ9は、双方向直流電圧変換器として構成されており、これは特に、第1の電圧を第2の電圧に、すなわち前記第1の電流端子51の第1の電圧電位Φ1を前記第2の電流端子52の第2の電圧電位Φ2に変換するか、または第3の電圧に、すなわち前記第3の電流端子53の第3の電圧電位Φ3に変換することができ、また、その逆の変換を行うこともできる。こうするためには、図中に示した実施形態では、DC/DCコンバータ9は同期コンバータとして構成されている。
【0043】
前記第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチのソース側は、第1の車載電気システム分岐2の正極経路に接続されており、かつ、当該MOSFETスイッチのドレイン側は前記第2の車載電気システム分岐7に接続されている。さらに、第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチのドレイン側は第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチのソース側に接続されている。さらに、第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチのドレイン側は、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチのドレイン側とDC/DCコンバータ9とに接続されている。第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチのドレイン側もまた、DC/DCコンバータ9に接続されている。さらに、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチのソース側は第3の車載電気システム分岐5の正極経路に接続されている。このようにして、特に、第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチおよび第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチはDC/DCコンバータ9に接続されている。
【0044】
したがって、第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチのボディダイオードは、第1の車載電気システム分岐2から第2の車載電気システム分岐7へ向かう方向が導通方向となり、その逆が阻止方向となるように配置されている。第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチのボディダイオードは、第2のスイッチングデバイス7からDC/DCコンバータ9へ向かう方向が導通方向となり、その逆が阻止方向となるように配置されている。ここで第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチのボディダイオードは、第3のスイッチングデバイス5からDC/DCコンバータ9へ向かう方向が導通方向となり、その逆が阻止方向となるように配置されている。
【0045】
MOSFETスイッチが開放された状態ひいては阻止状態である場合、第1の電流端子51の第1の電圧電位Φ1と第2の電流端子52の第2の電圧電位Φ2との間の電圧ないしは電位差がスイッチングデバイス11のボディダイオードの順方向電圧より高くなると直ちに、第1の車載電気システム分岐2から第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチのボディダイオードを介して第2の車載電気システム分岐7へ、電流が第1の電流方向201に流れる。第1の電圧電位Φ1と第2の電圧電位Φ2との間の電位差がボディダイオードの順方向電圧より下回ると、順方向201にボディダイオード中に流れる電流が阻止される。
【0046】
第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチが閉成されて導通状態に切り替えられると、第1の車載電気システム分岐2における電圧ないしは第1の電圧電位Φ1が第2の車載電気システム分岐7における電圧の大きさに、ないしは第2の電圧電位Φ2の大きさに上昇するまで、第2の車載電気システム分岐7からこの閉成状態のMOSFETスイッチを通って第1の車載電気システム分岐2へ電流が第2の電流方向202に流れる。このようにして、第2の車載電気システム分岐7に設置されたジェネレータ10により生成された電流が、当該第2の車載電気システム分岐7から第1の車載電気システム分岐2ないしは第1の電気的負荷4へ供給される。
【0047】
このようにして、第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチが開放状態にあるとき、当該第1のスイッチングデバイス11は、電流方向201にのみ一方向に電流を流すスイッチング状態をとり、当該MOSFETスイッチが閉成状態にあるときは、当該第1のスイッチングデバイス11は両電流方向201および202に双方向に電流を流すスイッチング状態をとることができる。
【0048】
第1の電気エネルギー蓄積器3の第1の電流端子14は第1の電気的負荷4の第1の電流端子15に電気的に結合されているか、ないしは導電接続されている。
【0049】
前記ジェネレータ10は第1の電流端子32を介して、前記第2の電気的負荷8の第1の電流端子17に導電接続されている。
【0050】
さらに、第3の電気エネルギー蓄積器6の第1の電流端子16は第3の電気的負荷25の第1の電流端子28に電気的に結合されているか、ないしは導電接続されている。
【0051】
前記DC/DCコンバータ9の第1の電流端子18は制御装置20の第1の電流端子51を介して、第1の電気エネルギー蓄積器3の第1の電流端子14と、第1の電気的負荷4の第1の電流端子15とに電気的に結合されている。
【0052】
第1のエネルギー蓄積器3の第2の電流端子27、および、第3のエネルギー蓄積器6の第2の電流端子30は、基準電位に電気的に結合ないしは導電接続されている。この基準電位は有利には接地電位である。さらに、前記第1の電気的負荷4の第2の電流端子26、第3の電気的負荷25の第2の電流端子29、第2の電気的負荷8の第2の電流端子31、および、ジェネレータ10の第2の電流端子33もまた、前記基準電位に電気的に結合されており、ないしは導電接続されている。
【0053】
第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチが開放状態であるときにも、第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチのボディダイオードにより、制御装置20の第2の電流端子52からDC/DCコンバータ9へ、ないしはDC/DCコンバータ9の第2の電流端子19に向かって、電流方向203に電流を流すことができる。このことにより、第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチが開放状態であり、これにより電流を阻止する状態になっても、DC/DCコンバータ9は第2の車載電気システム分岐7からの電流を用いてMOSFETスイッチのボディダイオードを介して、第1の車載電気システム分岐2の電圧ないしは制御装置20の第1の電流端子51の電圧電位Φ1を、より高い電圧値ないしは電位値に上昇させることができる。
【0054】
したがって、第1のスイッチングデバイス11により構成される電流路が不具合により遮断した場合には、第1,第2の車載電気システム分岐2および7間のDC/DCコンバータ9および第2のスイッチングデバイス12から成る電流路を、前記第1のスイッチングデバイス11により構成される電流路に対して冗長的な、第2のスイッチングデバイス12のスイッチング状態に応じて双方向になる冗長的電流路として用いることが可能になる。このような冗長的電流路によって特に、第2の車載電気システム分岐7から第1の車載電気システム分岐2への電流の流れを保証することができる。
【0055】
また、第1のスイッチングデバイス11と第2のスイッチングデバイス12とにより構成される電流路が不具合により遮断した場合、第1の車載電気システム分岐2と第3の車載電気システム分岐5との間にてDC/DCコンバータ9により構成される電流路も同様に、当該第1のスイッチングデバイス11と第2のスイッチングデバイス12とにより成る電流路に対して冗長的な、双方向の冗長電流路として使用することが可能になる。
【0056】
しかし、電流方向203に対して逆方向の順方向204に電流が流れるのは、第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチが閉成されたときに初めて、ないしは双方向導通状態になったときに初めて可能になる。第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチが閉成状態になり、かつ、第1のスイッチングデバイス11のMOSFETスイッチが同時に開放状態になり、これにより電流を阻止する状態になることで初めて、DC/DCコンバータ9は第1の車載電気システム分岐2からの電流を用いて、第2の車載電気システム分岐7の電圧を、ないしは制御装置20の第2の電流端子52の電圧電位Φ2を、より高い電圧値ないしは電位値に上昇させることができる。
【0057】
このようにして、第2のスイッチングデバイス12のMOSFETスイッチが開放状態にあるとき、当該第2のスイッチングデバイス12は、電流方向203にのみ一方向に電流を流すスイッチング状態をとり、当該MOSFETスイッチが閉成状態にあるときは、当該第2のスイッチングデバイス12は両電流方向203および204に双方向に電流を流すスイッチング状態をとることができる。
【0058】
また、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチが開放状態であり阻止状態にあるときにも同様に、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチのボディダイオードにより、制御装置20の第3の電流端子53からDC/DCコンバータ9へ、ないしはDC/DCコンバータ9の第2の電流端子19に向かって、電流方向205に電流を流すことが可能になる。このことにより、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチが開放状態であり、これにより電流を阻止する状態になっても、DC/DCコンバータ9はこのMOSFETスイッチのボディダイオードを介して、第3の車載電気システム分岐5からの電流を用いて、第1の車載電気システム分岐2の電圧ないしは制御装置20の第1の電流端子51の電圧電位Φ1を、より高い電圧値ないしは電位値に上昇させることができる。
【0059】
しかし、電流方向205とは逆方向である順方向206に電流が流れるのは、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチが閉成されたとき、ないしは導通状態になったときに初めて可能になる。第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチが閉成状態である場合、DC/DCコンバータ9は第1の車載電気システム分岐2からの電流を用いて、第3の車載電気システム分岐5の電圧をより高い電圧値に上昇させ、ないしは、制御装置20の第3の電流端子53の電圧電位Φ3をより高い電位値に上昇させることができる。
【0060】
このようにして、第3のスイッチングデバイス13のMOSFETスイッチが開放状態にあるとき、当該第3のスイッチングデバイス13は、電流方向205にのみ一方向に電流を流すスイッチング状態をとり、当該MOSFETスイッチが閉成状態にあるときは、当該第3のスイッチングデバイス13は両電流方向205および206に双方向に電流を流すスイッチング状態をとることができる。
【0061】
車載電気システム1はさらに、前記第1のスイッチングデバイス11を駆動制御するように構成された第1の駆動制御ユニット21を有する。車載電気システム1はさらに、第2のスイッチングデバイス12を駆動制御する第2の駆動制御ユニット22と、第3のスイッチングデバイス13を駆動制御するように構成された第3の駆動制御ユニット23とを有する。これらの駆動制御ユニット21〜23を用いてスイッチングデバイス11〜13のMOSFETスイッチは開閉制御される。すなわち、上記の各スイッチング状態に切り替えられる。さらに、前記車載電気システム1は、DC/DCコンバータ9を駆動制御するように構成された第4の駆動制御ユニット24も有する。第4の駆動制御ユニット24を用いて、特に、DC/DCコンバータ9を経由して前記車載電気システム分岐2,7,5間にてエネルギー伝送する方向を設定することができる。またこれにより、DC/DCコンバータ9の制御モードも設定することができる。すなわち、DC/DCコンバータ9を電圧制御方式で動作させるか、または電流制御方式で動作させるか、または電力制御方式で動作させるかを決定することができる。
【0062】
図中に示された実施形態では、DC/DCコンバータ9、第1のスイッチングデバイス11、第2のスイッチングデバイス12、第3のスイッチングデバイス13、第1の駆動制御ユニット21、第2の駆動制御ユニット22、第3の駆動制御ユニット23および第4の駆動制御ユニット24は、電力モジュールとして構成された制御装置20の構成要素である。
【0063】
既に説明したように、駆動制御ユニット21〜23はスイッチングデバイス11〜13を制御するように構成されており、駆動制御ユニット24はDC/DCコンバータ9を制御するように構成されている。この構成については、図1Bにて、第1の駆動制御ユニット21と第2の駆動制御ユニット22と第3の駆動制御ユニット23と第4の駆動制御ユニット24とが第1の車載電気システム2の正極経路に電気的に結合された車載電気システム1の構成、ないしは、前記駆動制御ユニットと正極経路とが導電接続された構成を示す。さらに、車両100の現在の動作状態に応じて、第1のスイッチングデバイス11、第2のスイッチングデバイス12、第3のスイッチングデバイス13およびDC/DCコンバータ9を制御するための制御信号を生成するために、駆動制御ユニット21〜24を他の車両構成要素に結合すること、特に車両100の他の制御ユニットに結合することも可能である。また、特に駆動制御ユニット21〜24は、エラー状態を検出するように構成されたエラー診断ユニットを有することも可能である。このエラー診断ユニットにより、対応する車両構成要素がエラー状態にあることが検出された場合には、第1のスイッチングデバイス11、第2のスイッチングデバイス12、第3のスイッチングデバイス13および/またはDC/DCコンバータ9を、車両100の現在の実際の動作状態に依存せずに制御することができる。
【0064】
図1Aおよび1Bに示された車載電気システムトポロジーにより、車載電気システム1の、専用の電気エネルギー蓄積器を備えていない分岐に、ジェネレータ10を配置することができる。すなわち図中の実施形態では、専用の電気エネルギー蓄積器を有さない第2の車載電気システム分岐7に配置することができる。
【0065】
図2Aおよび2Bは、本願の第2の実施形態の車両100の車載電気システム1のブロック回路図である。図1Aおよび1Bと同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付しており、以下、これらの構成要素については詳細な説明は再度行わない。
【0066】
同図中に示した第2の実施形態では、ジェネレータ10は第1の車載電気システム分岐2に設置されている。この実施形態ではジェネレータ10の第1の電流端子32は、第1の電気的負荷4の第1の電流端子15と、第1の電気エネルギー蓄積器3の第1の電流端子14と、DC/DCコンバータ9の第1の電流端子18とに電気的に結合ないしは導電接続されている。
【0067】
図2Bに示されているように、第1の駆動制御ユニット21、第2の駆動制御ユニット22、第3の駆動制御ユニット23および第4の駆動制御ユニット24はここでも、第1の車載電気システム分岐2の正極経路に結合ないしは導電接続されている。
【0068】
図1A〜2Bに示された車載電気システムトポロジーは、DEM(デュアルエネルギーマネージメント(英語:「Dual Energy Management」))とも称され、このトポロジーは、DC/DCコンバータ9を制御装置20内部に組み込んでいる。
【0069】
ここで、他の1つの実施形態では、第1の車載電気システム分岐2および/または第3の車載電気システム分岐5を制御装置20の一部とすることができる。すなわち、これらの車載電気システム分岐を制御装置20に組み込むことができ、これによりコンパクトなモジュールを実現することができる。
【0070】
さらに、第1の車載電気システム分岐2、第2の車載電気システム分岐7および/または第3の車載電気システム分岐5は、図1A〜2Bに示された電気的負荷4,8および25の他にも別の電気的負荷を有することができる。すなわち、第1の車載電気システム分岐2、第2の車載電気システム分岐7および第3の車載電気システム分岐5の各車載電気システム分岐が、それぞれ少なくとも1つの電気的負荷を有することもできる。
【0071】
図1A〜2Bに示した実施形態では、上述の車載電気システム構成要素は正極経路に設置されている。他の1つの実施形態では、これらの車載電気システム構成要素を接地経路ないしは負極経路に設置することも可能である。さらに、各車載電気システム分岐を電位分離することも可能である。
【0072】
図3は、図1ないし2Bに示された車載電気システム1の基本回路図である。上記図と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付しており、以下、これらの構成要素については詳細な説明は再度行わない。
【0073】
図3に概略的に示しているように、制御装置20を用いて、第1のエネルギー系統 Esys1 を成す第1の車載電気システム分岐2と、第2のエネルギー系統 Esys2 を成す第2の車載電気システム分岐7と、第3のエネルギー系統 Esys3 を成す第3の車載電気システム分岐5との間で、エネルギー交換を行うことができる。制御装置20はこれら3つのエネルギー系統 Esys1,Esys2 および Esys3 を相互に接続し、この接続により、これら3つの系統間のエネルギー交換を行えるようにする。ここで図3では、第1の車載電気システム分岐2と第2の車載電気システム分岐7と第3の車載電気システム分岐5と制御装置20との間のエネルギー伝送を矢印A,BおよびCにより概略的に示している。
【0074】
一実施形態では、エネルギー系統 Esys1 は1つのエネルギー蓄積器と少なくとも1つの動的特性負荷とから構成される。このエネルギー蓄積器は、たとえば12Vバッテリーである。エネルギー系統 Esys2 は一実施形態では、ジェネレータと、少なくとも1つの敏感な負荷とにより構成される。すなわち、一実施形態ではジェネレータは、独立したエネルギー系統 Esys2 の一部となる。オプションとして、ジェネレータの設置位置をエネルギー系統 Esys1 内とすることも可能である。エネルギー系統 Esys3 は、一実施形態では1つのエネルギー蓄積器から構成され、このエネルギー蓄積器はたとえば12Vバッテリーである。オプションとして、このエネルギー系統に負荷を設置することも可能である。このジェネレータを用いて車載電気システムの安全な動作を実現するためには、このジェネレータを少なくとも1つのエネルギー蓄積器に接続する。というのもそうしないと、車載電気システムの機能不全が生じる危険性が出てくるからである。すなわち、敏感な負荷が必要とするエネルギーが、ジェネレータにより供給可能なエネルギーより高くなってしまうからである。第3のエネルギー系統 Esys3 のエネルギー蓄積器に電気的に接続するためには、図1A〜2Bに示されたスイッチングデバイス12および13を閉成する。また、他の一手段として、第1のスイッチングデバイス11を用いて、第1のエネルギー系統 Esys1 に設置されたエネルギー蓄積器との間に電気的接続部を形成することも可能である。図中に示したトポロジーにより、エネルギー系統 Esys1 の電気エネルギー蓄積器に代わる他の択一的なエネルギー経路を確立することが可能になる。こうするためには、第2のスイッチングデバイス12、および、図1A〜2Bに示したDC/DCコンバータ9との間に電気的接続部を生成し、かつ、第1のスイッチングデバイス11を開放する。
【0075】
第3のスイッチングデバイス13が閉成されている場合、DC/DCコンバータ9は Esys1 と Esys3 との間にエネルギー連絡路を形成し、図1A〜2Bに示された第1のエネルギー蓄積器3と第3のエネルギー蓄積器6との間で充電交換を行えるようにし、またそれとは逆方向に、Esys3 から Esys1 に向かう方向に行うことも可能にする。可能な適用例の1つに、たとえばエンジン始動時に、さらに Esys3 からもエネルギーを追加的に、有利には電流制御によって供給して、Esys1 の高電流負荷を動作させるという例がある。こうするためには、第3のスイッチングデバイス13を閉成して、第1のスイッチングデバイス11および第2のスイッチングデバイス12の双方を開放する。
【0076】
さらに、第2のスイッチングデバイス12が閉成されている場合、DC/DCコンバータ9は Esys1 から Esys2 へのエネルギー連絡路を、またはその逆方向のエネルギー連絡路を形成する。その際には、第1のスイッチングデバイス11および第3のスイッチングデバイス13は開放されている。可能な1つの適用例に、車両のエンジンの遮断時がある。その際には、DC/DCコンバータ9を有利には電圧制御方式で動作させる。Esys2 のジェネレータの代わりにDC/DCコンバータ9が、系統 Esys2 の公称電圧を生成する。これは、図中に示したDEMトポロジーの特に有利な特性である。
【0077】
さらに、スイッチングデバイス12および13が閉成されているときには、DC/DCコンバータ9によって Esys1 からエネルギー系統 Esys2 および Esys3 へエネルギーを伝送することができ、また、エネルギー系統 Esys2 および Esys3 から Esys1 へエネルギー伝送を行うことができる。このとき、第1のスイッチングデバイス11は開放されている。
【0078】
このことにより、DC/DCコンバータ9をより活用することができ、このことにより、冗長性およびアベイラビリティについて新たな可能性が見出され、ひいては動作安全性を実現する新たな手段が見出される。Esys2 に設置された複数の敏感な負荷にかかるシステム電圧は、車両状態に依存したり Esys1 における電圧変動に依存することなく、安定した状態に維持される。さらに、メインスイッチである第1のスイッチングデバイス11の機能と、サブスイッチである第2のスイッチングデバイス12および第3のスイッチングデバイス13の機能とを、可能な限り最大限に利用することができ、このことによっても、冗長性やアベイラビリティについて新たな可能性を見出すことができ、ひいては動作安全性を実現するための新たな手段が見出される。さらに、ジェネレータと第1のエネルギー蓄積器と第2のエネルギー蓄積器と上述の電気的負荷とを用いてシステム調整を行えることにより、コスト上の利点も奏される。したがって、ジェネレータならびに第1のエネルギー蓄積器および第2のエネルギー蓄積器といった構成要素を、より低い電力クラスで構成することができる。
【0079】
図4は、本願の車載電気システムの第1,第2および第3の車載電気システム分岐における電圧‐時間グラフである。図4の上の電圧‐時間グラフは、第1の車載電気システム分岐2の瞬時電圧の時間的推移を概略的に示している。図4の中央の電圧‐時間グラフには、第3の車載電気システム分岐5の瞬時電圧の時間的推移を概略的に示しており、同図下の電圧‐時間グラフには、車載電気システムの第2の車載電気システム分岐7の瞬時電圧の時間的推移を概略的に示している。
【0080】
ここで、中央の電圧‐時間グラフ中の実線は、図1A〜2Bにて示された第3の電気エネルギー蓄積器6が電気二重層コンデンサまたはLiイオン蓄電池である場合に生じる電圧の推移を概略的に示すものである。破線は、第3のエネルギー蓄積器6が鉛蓄電池である場合に生じる、上記電圧推移からの偏差を概略的に示している。
【0081】
時点が異なると、車載電気システム1を設置した車両100がおかれる状態も異なっており、時点tと時点tとの間、車両100は、当該車両100の内燃機関が運転中である動作状態Iaにあり、時点tとtとの間は、内燃機関が遮断されている動作状態 II にある。さらに、時点tとtとの間、車両100は、内燃機関を始動させる動作状態 III にあり、時点tとtとの間は、内燃機関が運転中である動作状態Ibになっている。時点tとtとの間に、車両100は再び、エンジンを遮断する動作状態 II に戻り、時点t以降、車両100は、低電力モード(LPM)とも称される低エネルギーモードないしは低消費モードである動作状態 IV になる。たとえば、車両100は動作状態 IV にあるときには施錠され、車両100の盗難警報システムおよび/またはパーキングライトが作動する。
【0082】
動作状態Iaにある場合、第1の車載電気システム分岐2、第2の車載電気システム分岐7および第3の車載電気システム分岐5の各車載電気システム分岐は、それぞれ公称電圧レベルになっており、たとえば14Vになっている。この動作状態Iaでは、図1A〜2Bに示された第1のスイッチングデバイス11は閉成され、第2のスイッチングデバイス12および第3のスイッチングデバイス13は開放され、図1A〜2Bに示されたDC/DCコンバータ9も作動されていない。
【0083】
図1A〜2Bに示された第1の電気エネルギー蓄積器3が鉛蓄電池である場合、動作状態 II になると、内燃機関の遮断時に生じるいわゆる分極現象に起因して、第1の車載電気システム分岐2の電圧はたとえば12Vのレベルまで下降する。この動作状態では、第3のエネルギー蓄積器6も鉛蓄電池である場合、第3の車載電気システム分岐5の電圧も降下し、第3のエネルギー蓄積器6が電気二重層コンデンサまたはLiイオン蓄電池である場合、第3の車載電気システム分岐5の電圧は一定のままである。第2の車載電気システム分岐7の電圧は、有利には一定のままである。こうするためには、第1のスイッチングデバイス11は開放されて第2のスイッチングデバイス12は閉成され、第3のスイッチングデバイス13は開放され、DC/DCコンバータ9は、第1の車載電気システム分岐2から第2の車載電気システム分岐7へエネルギーが伝送されるように制御ないしは作動される。
【0084】
動作状態 III では、最初は内燃機関のスタータ4の作動により、第1の車載電気システム分岐2の電圧が下降し続け、その後わずかに上昇する。第3の車載電気システム分岐5の電圧は、動作状態 II の場合よりも比較的一定であり、第2の車載電気システム分岐7の電圧は一定のままで居続ける。この動作状態では、第1のスイッチングデバイス11は開放され、第2のスイッチングデバイス12および第3のスイッチングデバイス13は閉成される。DC/DCコンバータ9が電圧制御方式で動作するようにこれを制御する。
【0085】
動作状態Ibになると、第1の車載電気システム分岐2、第2の車載電気システム分岐7および第3の車載電気システム分岐5は公称電圧レベルに戻る。その際には、第1のスイッチングデバイス11は閉成され、第2のスイッチングデバイス12は開放され、第3のスイッチングデバイス13は閉成されている。DC/DCコンバータ9が電流制御方式で動作するようにこれを制御する。この動作状態では、第3の電気エネルギー蓄積器6に充電が行われる。
【0086】
時点tとtとの間の動作状態 II は、時点tとtとの間の動作状態と同じである。ここでは、スイッチングデバイス11,12,13のスイッチング状態およびDC/DCコンバータ9の動作状態は、時点tとtとの間におけるスイッチング状態および動作状態と同じになるように設定される。
【0087】
動作状態 IV では、第1の車載電気システム分岐2、第2の車載電気システム分岐7および第3の車載電気システム分岐5の各電圧は、動作状態 II の場合より一定に維持される。この動作状態では、第1のスイッチングデバイス11は開放され、第2のスイッチングデバイス12は閉成され、第3のスイッチングデバイス13は開放される。DC/DCコンバータ9は、第2の車載電気システム分岐7へエネルギーが伝送されるように制御される。よって、スイッチング状態およびDC/DCコンバータ9の動作モードは、動作状態 II の場合のスイッチング状態および動作モードと同じである。
【0088】
表1に、上述の各動作状態における、第1のスイッチングデバイス11、第2のスイッチングデバイス12および第3のスイッチングデバイス13のスイッチング状態、ならびに、DC/DCコンバータ9の動作状態を再度示す。
【0089】
【0090】
上述のDEMトポロジーを用いることにより、「エンジンオン」、「エンジンオフ」、「エンジン始動(Cranking)」および「Low Power Mode」(LPM)の走行状態において、系統 Esys2 において公称電圧状態を永続的に実現することができる。上述のDEMトポロジーにより、車載電気システムの安定化の他に、拡張した冗長制御動作を実現することもできる。その際には、ジェネレータが第2の車載電気システム分岐7に設置されている場合にはジェネレータが第2の車載電気システム分岐7の電圧を調整し、または、DC/DCコンバータ9が第2の車載電気システム分岐7の電圧を調整する。このことにより、Esys2 内にて敏感な負荷を動作させることができる。図4に示されているように、車両状態が異なっても、第2の車載電気システム分岐7の電圧は一定の電圧レベルに維持される。特に低電力モードでは、そのような動作が顕著である。
【0091】
これら2つの重複した電流路を介して、すなわち、第1のスイッチングデバイス11により成る第1の電流路、ならびに、DC/DCコンバータ9および第2のスイッチングデバイス12により成る第2の電流路を介して、第2の車載電気システム分岐7の電流を用いて第1のエネルギー蓄積器3に充電を行うことができる。これら2つの重複した電流路により、必要な場合には第1のエネルギー蓄積器3が第2の車載電気システム分岐7へ電流を供給することができる。さらに、他の2つの重複した電流路を介して、すなわち、第1,第2および第3のスイッチングデバイス11,12,13により成る第3の電流路、ならびに、DC/DCコンバータ9および第3のスイッチングデバイス13により成る第4の電流路を介して、第3の車載電気システム分岐5の電流を用いて第1のエネルギー蓄積器3の充電を行うこともできる。これら2つの重複した電流路により、必要な場合には第1のエネルギー蓄積器3が第3の車載電気システム分岐5に電流を供給することもできる。
【0092】
これら2つの重複した電流路を介して、すなわち第3の電流路と第4の電流路とを介して、第1の車載電気システム分岐2の電流を用いて第3のエネルギー蓄積器6の充電を行うことができる。これら2つの重複した電流路により、必要な場合には第3のエネルギー蓄積器6が第1の車載電気システム分岐2に電流を供給することもできる。さらに、他の重複した2つの電流路を介して、すなわち、第2および第3のスイッチングデバイス12,13により成る第5の電流路、ならびに、DC/DCコンバータ9および第1,第3のスイッチングデバイス11,13により成る第6の電流路を介して、第2の車載電気システム分岐7の電流を用いて第3のエネルギー蓄積器6の充電を行うこともできる。これら2つの重複した電流路により、必要な場合には第3のエネルギー蓄積器5が第2の車載電気システム分岐7に電流を供給することもできる。
【0093】
3つのスイッチングデバイス11,12および13のMOSFETスイッチを適切に制御することにより、車両がスリープ状態、作動状態または始動状態にあっても、第2の車載電気システム分岐7の動作電圧を一定にすることができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】