(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-506885(P2015-506885A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】重量昇降装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20150206BHJP
F03D 11/04 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
B66C23/26 A
B66C23/26 D
F03D11/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-555089(P2014-555089)
(86)(22)【出願日】2012年2月1日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月20日
(86)【国際出願番号】EP2012051635
(87)【国際公開番号】WO2013113377
(87)【国際公開日】20130808
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】511226524
【氏名又は名称】ファウ・エス・エル・インターナツイオナール・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ロランス・ジャン・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ルッセル・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】アルタウス・ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】マイアー・マックス・エルンスト
【テーマコード(参考)】
3F205
3H178
【Fターム(参考)】
3F205AA13
3F205BA10
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(57)【要約】
【課題】
簡易かつ制限のないクレーン装置及び昇降方法を提供すること。
【解決手段】
タワー1の持上げ領域で支持されたクレーン昇降ケーブル3を用いて、タワー1におけるクレーン取付位置へクレーン装置を昇降させるためのクレーン昇降手段と、当該ブームアーム26の端部領域が積荷昇降ケーブル45を支持するためのケーブル支持手段35,31を備えた2つのブームアーム26,27と、ブームアーム26,27を支持するためのブーム支持フレーム42,25と、ブームアーム26,27のいずれか又は両方の前記端部領域において支持され、当該積荷昇降手段31,45が積荷昇降ケーブル45を用いた持上げ領域への積荷の昇降のためのものである、積荷昇降手段31,45とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワー(1)の基部領域(4)から前記タワー(1)の持上げ領域へ積荷(46,50)を昇降させるためのクレーン装置であって、
前記タワー(1)の前記持上げ領域で支持された1つ又は複数のクレーン昇降ケーブル(3)を用いて、前記タワー(1)におけるクレーン取付位置(2)へ当該クレーン装置を昇降させるためのクレーン昇降手段(32,3)と、
前記タワー(1)の前記持上げ領域から外側へずらされて適合され、当該ブームアーム(26)の端部領域が1つ又は複数の積荷昇降ケーブル(45)を支持するためのケーブル支持手段(35,31)を備えた2つのブームアーム(26,27)と、
前記ブームアーム(26,27)が当該クレーン装置の前記クレーン取付位置への昇降中に前記タワー(1)のいずれかの側に配置され得るよう、及び/又は前記積荷(46,50)の昇降中に前記積荷(46,50)のいずれかの側に前記ブームアーム(26,27)が配置され得るよう、前記ブームアーム(26,27)を支持するためのブーム支持フレーム(42,25)と、
前記ブームアーム(26,27)のいずれか又は両方の前記端部領域において支持され、当該積荷昇降手段(31,45)が1つ又は複数の前記積荷昇降ケーブル(45)を用いて前記持上げ領域へ積荷(46,50)を昇降するためのものである、積荷昇降手段(31,45)と
を備えていることを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
前記積荷昇降手段(31)が、前記積荷昇降ケーブル(45)への引張作用を及ぼすために配置された1つ又は複数の第1のストランドジャッキ(31)を備えること、及び/又は前記クレーン昇降手段(32,3)が前記クレーン昇降ケーブル(3)への引張作用を及ぼすために配置された1つ又は複数の第2のストランドジャッキ(32)を備えていることを特徴とする請求項1記載のクレーン装置。
【請求項3】
前記ブーム支持フレーム(42,25)が、引っ込められた状態と配置された状態の間で前記ブーム支持フレーム(42,25)に対して前記ブームアーム(26,27)をずらすためのブームずらし手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のクレーン装置。
【請求項4】
前記ブームアーム(26,27)が当該クレーン装置の昇降中にその引っ込められた状態にある場合に、当該クレーン装置の重心が前記クレーン昇降ケーブル(3)上の1つ又は複数の前記第2のストランドジャッキ(32)の作用点の下方にあるよう、前記ブームアーム(26,27)、前記ブーム支持フレーム(42,25)及び1つ又は複数の前記第2のストランドジャッキ(32)が互いに配置されていることを特徴とする請求項3記載のクレーン装置。
【請求項5】
前記ブーム支持フレーム(42,25)が、前記持上げ領域での前記積荷(46,50)の昇降中及び/又は前記積荷(46,50)の取付中に前記ブームアーム(26)を当該ブーム支持フレーム(42,25)に対して相対的に回動させるためのブームアーム回動手段(22,44)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項6】
前記ブーム支持フレーム(42,25)が少なくとも1つのクロスメンバ(25)によって連結された2つのジブフレーム(42)を備えており、該ジブフレーム(42)及び前記又は各クロスメンバ(25)が、当該クレーン装置が前記タワー(1)のいずれかの側における1つのジブフレーム(20)を有する前記タワー(1)を跨いで組み立てられ得るよう配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項7】
当該クレーン装置がタワー(1)において上方又は下方へ変位する際に、2つの前記ジブフレーム(20)間の離間距離を変更するための離間調整手段を備えていることを特徴とする請求項6記載のクレーン装置。
【請求項8】
前記ブーム支持フレーム(42,25)及び/又は前記ブームアーム(26,27)のいずれか若しくは両方が、前記又は各積荷昇降手段(31)からの引張を受けない下で、前記若しくは各積荷昇降ケーブル(45)又は前記若しくは各重い昇降ケーブル(45)の一部を保管するための、少なくとも1つの積荷昇降ケーブル巻取手段(24)を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項9】
前記ブーム支持フレーム(42,25)が、第1の回動軸を形成するために前記タワー(1)のクレーン取付点に設けられたタワー回動手段(7)に係合するためのフレーム回動手段(34)を備えており、前記第1の回動軸周りに前記ブーム支持フレーム(42,25)が回動可能であり、当該クレーン装置が、更に前記ブーム支持フレーム(42,25)を前記第1の回動軸周りに回動させるための少なくとも1つの回動アクチュエータ(33)を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項10】
前記又は各第1のストランドジャッキ(31)が前記ブームアーム(26)のいずれかの前記端部領域に固定されていること、及び
前記重い昇降ケーブル(45)が、前記積荷(46)が引き上げることによって上昇され得るか、又は引き下げることによって下降され得るように前記又は各第1のストランドジャッキ(31)の引張作用によって前記ブーム支持フレーム(42,25)に対して相対的に垂直に移動され得るとともに、前記積荷昇降ケーブル(45)が1つ又は複数の前記第1のストランドジャッキ(31)を用いることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項11】
1つ又は複数の第1のストランドジャッキ(31)の1つ又は複数が、前記積荷(31)が前記重い昇降ケーブル(45)の昇降する1つ又は複数の上昇ジャッキによって昇降され得るよう前記積荷(46)に固定可能な上昇ジャッキとして配置されていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項12】
前記積荷(46)の重量を平衡させるための積荷平衡化手段(18,19)を備え、該積荷平衡化手段(18,19)が当該クレーン装置の後背領域と前記タワー(1)の前記基部領域(4)又は下側領域の間の引張力を及ぼすために配置されており、前記後背領域が、前記タワー(1)の、昇降される前記積荷(46)とは反対側での当該クレーン装置の領域であることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【請求項13】
タワー(1)の持上げ領域への積荷(46)の昇降方法であって、
ブーム支持手段(42,25)及び2つのブームアーム(26,27)を備え、該ブームアーム(26,27)の端部において積荷昇降手段(31)を備えた前記ブームアーム(26,27)のいずれか又は両方を備え、更に当該クレーン昇降ステップ中に積荷昇降ケーブル(45)を支持するための積荷昇降ケーブル支持手段(31,35,24)を備えたクレーン装置が前記タワー(1)におけるクレーン取付位置(2)へ上昇され、前記タワー(1)の上方領域(2)で支持されたクレーン昇降ケーブル(3)に作用する前記クレーン装置のクレーン昇降手段(32)を用いて成し遂げられるクレーン昇降ステップと、
前記クレーン装置が前記タワー(1)の前記クレーン取付位置(2)で取り付けられる取付ステップと、
前記ブームアーム(26,27)が前記ブーム支持フレーム(42,25)に対して相対的に引っ込められた状態から配置された状態へ前記ブーム支持フレーム(42,25)に対して相対的に移動されるブームアーム配置ステップと、
前記積荷(46)が前記積荷昇降手段(32)によって昇降される積荷昇降ステップと
を含むことを特徴とする昇降方法。
【請求項14】
前記クレーン昇降ステップ中に前記クレーン昇降ケーブル(45)を支持するためのクレーン昇降ケーブル支持手段を備えるブラケットアセンブリ(2,13,14)が前記タワー(1)の持上げ領域に取り付けられる、クレーン昇降ステップ前に行われるタワー(1)準備ステップを含むことを特徴とする請求項13記載の昇降方法。
【請求項15】
タワー(1)の持上げ領域からの積荷(46)の下降方法であって、
ブーム支持手段(42,25)及び2つのブームアーム(26,27)を備え、該ブームアーム(26,27)の端部において積荷昇降手段(31)を備えた前記ブームアーム(26,27)のいずれか又は両方を備え、更に当該クレーン昇降ステップ中に積荷昇降ケーブル(45)を支持するための積荷昇降ケーブル支持手段(31,35,24)を備えたクレーン装置が前記タワー(1)におけるクレーン取付位置(2)へ上昇され、前記タワー(1)の上方領域(2)で支持されたクレーン昇降ケーブル(3)に作用する前記クレーン装置のクレーン昇降手段(32)を用いて成し遂げられるクレーン昇降ステップと、
前記クレーン装置が前記タワー(1)の前記クレーン取付位置(2)で取り付けられる取付ステップと、
前記ブームアーム(26,27)が前記ブーム支持フレーム(42,25)に対して相対的に引っ込められた状態から配置された状態へ前記ブーム支持フレーム(42,25)に対して相対的に移動されるブームアーム配置ステップと、
前記積荷(46)が前記積荷昇降手段(32)によって下降される積荷下降ステップと
を含むことを特徴とする下降方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重い積荷を高い構造物への持上げの分野に関するものであるが、特に、地上と風力タービンタワーの頂部の間の風力タービン発電機ユニット、ロータ及び/又はブレードの持上げに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
風力タービンの高さは、高くなり続けており、また、このようなタワーに取り付けられるべき発電機ユニットの大きさ及び重量もそれに応じて増大している。150m又は200mのタワー高さは、500又は600トン以上の重量であり得る発電機ユニットに関して考慮され、未来の風力タービンがまだより高いタワー及び/又はまだより重い発電機ユニットを必要とすることが見込まれる。このような高さ及び重量は、従来のクレーンでは達成し得ない。したがって、重い積荷をこのようなタワーの頂部へ持ち上げるのに必要な新たな手法が必要である。
【0003】
特許文献1(Tymon Corporation)には、タワーの頂部へ上昇され得る回動可能なクレーン装置が提案されており、このクレーン装置は、発電機ユニットの持上げのために使用される。従来技術のクレーンは、2つのジブフレームとして構成されつつタワーを跨ぐものであり、タワーの基部におけるウインチによって所定の位置へ持ち上げられ、頂部からいくらか離して、タワーに取り付けられた旋回軸上に取り付けられる。発電機ユニットの持上げは、同様にタワーの基部におけるウインチによってなされる。発電機持上げ装置の機械的な利点を改善するために、記載された単純なプーリ装置の代わりに複滑車を用いることが提案されている。タワー上の発電機ユニットの位置は、ここでも地上におけるケーブル及びウインチによってジブ要素の回動によってなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第97/21621号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来技術の持上げ装置は、比較的複雑であるとともに、発電機を持ち上げるために使用される特に引張のためのウインチの固定のための強固な基礎を必要とする。このような装置は、タワーの臨界的な構造的な設計条件を課し得るタワー構造において大きな一時的な積荷の持上げを与えることが可能である。従来技術の方法も、地上及びタワーにおける人員のチーム並びに/又はタワーと地上の間のコミュニケーションのための信頼性の高いリモートコントロールシステムを必要とする。従来技術によるシステムも、持ち上げられる積荷の重量において大きく制限されている。プーリ又は複滑車装置は、プーリの周囲で湾曲可能で、一方、引張時には強度を失わない比較的フレキシブルなロープによってのみ使用されることができ、この制限は、同様に、従来の持上げシステムの負荷能力を制限することになる。この制限は、持ち上げられるべき主な積荷の重量にのみ当てはまるのではなく、同様にロープ及びプーリを用いてタワーにおいて吊り上げられるクレーン自体にも当てはまる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術の重量昇降装置及び方法の上記の、又は他の欠点を克服するために、本発明は、タワーの基部領域から前記タワーの持上げ領域へ積荷を昇降させるためのクレーン装置であって、
前記タワーの前記持上げ領域で支持された1つ又は複数のクレーン昇降ケーブルを用いて、前記タワーにおけるクレーン取付位置へ当該クレーン装置を昇降させるためのクレーン昇降手段と、
前記タワーの前記持上げ領域から外側へずらされて適合され、当該ブームアームの端部領域が1つ又は複数の積荷昇降ケーブルを支持するためのケーブル支持手段を備えた2つのブームアームと、
前記ブームアームが当該クレーン装置の前記クレーン取付位置への昇降中に前記タワーのいずれかの側に配置され得るよう、及び/又は前記積荷の昇降中に前記積荷のいずれかの側に前記ブームアームが配置され得るよう、前記ブームアームを支持するためのブーム支持フレームと、
前記ブームアームのいずれか又は両方の前記端部領域において支持され、当該積荷昇降手段が1つ又は複数の前記積荷昇降ケーブルを用いた前記持上げ領域への積荷の昇降のためのものである、積荷昇降手段とを備えるクレーン装置を構想する。
【0007】
クレーン昇降手段をクレーン装置自体へ統合することで、クレーンは、例えば地上から操作される長いケーブル及びウインチを必要とすることなく、その取付点へタワーにおいて持ち上げられることが可能となる。積荷昇降手段をクレーン装置のブームアームに設けることで、主な積荷昇降操作が、地上から操作される長いケーブル及びウインチを必要とすることなく、同様に行われ得る。したがって、クレーンは、タワーの基部で組み立てられ得るとともに、それ自体頂部まで自動的に持ち上げられ、地上からの重大な干渉なく取り付けられ、配置され得るとともに、地上からの重大な干渉なく積荷昇降動作が実行され得る。したがって、本発明のクレーン装置は、地上の人員及び装置からより独立して動作することができ、これは、その配置がタワーの高さからほぼ独立してなされることを意味している。
【0008】
本発明のクレーン装置の1つの形態によれば、前記積荷昇降手段が、前記積荷昇降ケーブルへの引張作用を及ぼすために配置された1つ又は複数の第1のストランドジャッキを備えることができ、及び/又は前記クレーン昇降手段が前記クレーン昇降ケーブルへの引張作用を及ぼすために配置された1つ又は複数の第2のストランドジャッキを備えることができる。ストランドジャッキは、そのサイズ及び重量に関して非常に大きな積荷昇降能力を有しており、したがって、その使用により、クレーン装置の全体的な重量が最小に維持され得るか、又はクレーン装置の昇降能力全体が最大化され得る。
【0009】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記ブーム支持フレームが、引っ込められた状態と配置された状態の間で前記ブーム支持フレームに対して前記ブームアームをずらすためのブームずらし手段を備えている。このようにして、クレーン装置の寸法を削減するために、比較的長いブームアームが昇降中に安全に収容されままとなり得る。
【0010】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記ブームアームが当該クレーン装置の昇降中にその引っ込められた状態にある場合に、当該クレーン装置の重心が前記クレーン昇降ケーブル上の1つ又は複数の前記第2のストランドジャッキの作用点の下方にあるよう、前記ブームアーム、前記ブーム支持フレーム及び1つ又は複数の前記ストランドジャッキが互いに配置されている。これにより、クレーン装置がタワーにおいて昇降する際にクレーン装置を安定化させることができる。
【0011】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記ブーム支持フレームが、前記持上げ領域での前記積荷の昇降中及び/又は前記積荷の取付中に前記ブームアームを当該ブーム支持フレームに対して相対的に回動させるためのブームアーム回動手段を備えている。これにより、従来技術によるクレーン装置において必要であったようにクレーン装置延滞の回動の代わりに、ブーム支持フレームに対してブームが相対的に回動されることで、積荷がタワーへ向かって内側へ、又はタワーから外側へ移動しても、クレーン装置のフレームが、タワーの頂部のほぼ静的な位置に安定して維持され得る。
【0012】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記ブーム支持フレームが少なくとも1つのクロスメンバによって連結された2つのジブフレームを備えており、該ジブフレーム及び前記又は各クロスメンバが、当該クレーン装置が前記タワーのいずれかの側における1つのジブフレームを有する前記タワーを跨いで組み立てられ得るよう配置されている。
【0013】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、当該クレーン装置がタワーにおいて上方又は下方へ変位する際に、2つの前記ジブフレーム間の離間距離を変更するための離間調整手段を備えている。
【0014】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記ブーム支持フレーム及び/又は前記ブームアームのいずれか若しくは両方が、前記又は各積荷昇降手段からの引張を受けない下で、前記若しくは各積荷昇降ケーブル又は前記若しくは各重い昇降ケーブルの一部を保管するための、少なくとも1つの積荷昇降ケーブル巻取手段を備えている。
【0015】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記ブーム支持フレームが、第1の回動軸を形成するために前記タワーのクレーン取付点に設けられたタワー回動手段に係合するためのフレーム回動手段を備えており、前記第1の回動軸周りに前記ブーム支持フレームが回動可能であり、当該クレーン装置が、更に前記ブーム支持フレームを前記第1の回動軸周りに回動させるための少なくとも1つの回動アクチュエータを備えている。
【0016】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記又は各第1のストランドジャッキが前記ブームアームのいずれかの前記端部領域に固定されており、前記重い昇降ケーブルが、前記積荷が引き上げることによって上昇され得るか、又は引き下げることによって下降され得るように前記又は各第1のストランドジャッキの引張作用によって前記ブーム支持フレームに対して相対的に垂直に移動され得るとともに、前記積荷昇降ケーブルが1つ又は複数の前記第1のストランドジャッキを用いる。
【0017】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、1つ又は複数の第1のストランドジャッキの1つ又は複数が、前記積荷が前記重い昇降ケーブルの昇降する1つ又は複数の上昇ジャッキによって昇降され得るよう前記積荷に固定可能な上昇ジャッキとして配置されている。
【0018】
本発明のクレーン装置の別の形態によれば、前記積荷の重量を平衡させるための積荷平衡化手段を備え、該積荷平衡化手段が当該クレーン装置の後背領域と前記タワーの前記基部領域又は下側領域の間の引張力を及ぼすために配置されており、前記後背領域が、前記タワーの、昇降される前記積荷とは反対側での当該クレーン装置の領域である。
【0019】
本発明は、タワーの持上げ領域への積荷の昇降方法も構想する。この方法は、
ブーム支持手段及び2つのブームアームを備え、該ブームアームの端部において積荷昇降手段を備えた前記ブームアームのいずれか又は両方を備え、更に当該クレーン昇降ステップ中に積荷昇降ケーブルを支持するための積荷昇降ケーブル支持手段を備えたクレーン装置が前記タワーにおけるクレーン取付位置へ上昇され、前記タワーの上方領域で支持されたクレーン昇降ケーブルに作用する前記クレーン装置のクレーン昇降手段を用いて成し遂げられるクレーン昇降ステップと、
前記クレーン装置が前記タワーの前記クレーン取付位置で取り付けられる取付ステップと、
前記ブームアームが前記ブーム支持フレームに対して相対的に引っ込められた状態から前記ブーム支持フレームに対して相対的に配置された状態へ移動されるブームアーム配置ステップと、
前記積荷が前記積荷昇降手段によって昇降される積荷昇降ステップと
を含んでいる。
【0020】
本発明の方法の別の形態によれば、前記クレーン昇降ステップ中に前記クレーン昇降ケーブルを支持するためのクレーン昇降ケーブル支持手段を備えるブラケットアセンブリが前記タワーの持上げ領域に取り付けられる、クレーン昇降ステップ前に行われるタワー準備ステップを含んでいる。
【0021】
本発明の方法の別の形態によれば、積荷昇降ステップが積荷昇降ケーブルにおいて引っ張るための1つ又は複数の第1のストランドジャッキを用いることを備えることができ、及び/又はクレーン昇降ステップがクレーン昇降ケーブルにおいて引っ張るための1つ又は複数の第2のストランドジャッキを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】風力タービン用のタワー及び本発明の重量昇降方法の準備段階を示す斜視図である。
【
図2a】
図1に図示されたタワーの頂部の詳細な拡大部を示す斜視図である。
【
図2b】
図1に図示されたタワーの基部の詳細な拡大部を示す斜視図である。
【
図3a】準備段階が完了し、クレーン持上げ段階の準備ができた風力タービンタワーの側面図である。
【
図3b】準備段階が完了し、クレーン持上げ段階の準備ができた風力タービンタワーの正面図である。
【
図5】本発明によるクレーン装置がタワーの基部においてどのように運搬され、組み立てられるかを概略的に示す斜視図である。
【
図6】
図5のクレーン装置がその組立状態においてどのようにクレーン持上げ段階のために準備されるかを概略的に示す斜視図である。
【
図7】クレーン取付段階の準備ができたタワー及びクレーン装置を概略的に示す正面図である。
【
図10】クレーン取付段階開始時の
図6のクレーン装置の斜視図である。
【
図11】クレーン取付段階の完了時における
図6及び
図10のタワー及びクレーン装置の斜視図である。
【
図15】タワー頂部におけるクレーン装置の第1の回動動作を示す側面図である。
【
図16】タワー頂部におけるクレーン装置の第1の回動動作を示す斜視図である。
【
図17】クレーン装置のブームアーム配置動作を示す斜視図である。
【
図18】クレーン装置のブームアームの第2の回動動作を示す平面図である。
【
図19】本発明による方法の主な積荷持上げ段階を示す側面図である。
【
図20】本発明による方法の主な積荷持上げ段階を示す側面図である。
【
図21】クレーン装置の拡大された詳細及びタワーの頂部において取り付けられるべき積荷を示す斜視図である。
【
図22】
図21に示されたブームアームの第3の回動動作を示す斜視図である。
【
図23】本発明による方法の更なる積荷持上げ段階を示す側面図である。
【
図24】本発明による方法の更なる積荷持上げ段階を示す側面図である。
【
図25】本発明による方法の更なる積荷持上げ段階を示す側面図である。
【
図26】本発明による方法の更なる積荷持上げ段階を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明を説明する。
【0024】
本発明のクレーン装置及び昇降方法を
図1〜
図26を参照しつつより詳細に説明する。各図は、説明の目的のためのものであり、本発明がどのように実現されるかの一例を単に示すためのものであるということに留意されたい。各図は、保護の範囲を制限するものとみなされるべきではなく、この保護の範囲は、付随する特許請求の範囲において提示されている。異なる図における同一の符号の使用は、同一の特徴についての符号であることを示すものとなっている。
【0025】
上述のとおり、
図1〜
図26は、本発明による方法及び装置の実施例を示すものである。図示された技術は、本質的に5つの主な段階で構成されている:
【0026】
準備段階(
図1〜
図4)、この段階では、比較的軽量なブラケットアセンブリ(2,3トンの重量であり得る)がタワーの頂部に取り付けられる。
【0027】
クレーン組立段階(
図5〜
図6)、この段階では、クレーン装置(持ち上げるべき積荷の重量に応じて二、三十トンの重量であり得る)がタワーの基礎周囲に組み立てられる。
【0028】
クレーン持上げ段階(
図7〜
図14)、この段階では、組み立てられたクレーン装置が、タワーでブラケットアセンブリに取り付けられたケーブルを使用して持ち上げられる。
【0029】
クレーン装置配置段階(
図15〜
図18)、この段階では、クレーン装置の様々な部分が積荷の持ち上げのために配置される。
【0030】
積荷持上げ段階(
図19〜
図26)、この段階では、タワーの頂部に取り付ける発電機ユニット(400トンの重量であり得る)のためにクレーン装置が使用される。さらに、積荷持上げ段階は、例えばタービンブレードの持上げも含み得る。
【0031】
ここで説明される各段階は、積荷及びクレーンをタワーの頂部から下ろすために逆に実行されることとも理解される。したがって、用語「昇降」は、「持上げ」又は「下降」の意味で理解されるべきである。
【0032】
説明された実施は、例としてのみ与えられるものであり、方法及び装置は、他の方法で実施されることも可能である。例えば、技術がタービン発電機をタワーの頂部へ持ち上げるものとして説明されているが、方法は、ある高い構造部における上昇した範囲へある大きな積荷を持ち上げるために使用されることが可能である。このタワーは、典型的には鉄筋コンクリート構造物であり得るか、又は金属若しくは混合材料のような他の材料を備えたものであり得る。
【0033】
用語「ケーブル」は、ここでは、ロープ、ワイヤ、ストランド又はストランドの束のような、強く、延長された要素について使用されており、この要素は、例えば数百トンの重量の風力タービンユニットのような重い積荷の昇降のために使用され得る。
【0034】
準備段階
図1及び
図2aにおける拡大された図示は頂部における取付点51の一群と共に組み立てられたタワーを示している。このような取付点51は、軽量昇降ケーブル9の取付又は支持のために使用され、例えば2,3トン以下の重量である比較的軽量な物品の昇降に適している。例えばタワーの頂部又はタワーの基部に取り付けられたウインチ(不図示)は、各軽量な昇降ケーブルの引き上げ又は引下げによって装置を昇降させるために使用され得る。
【0035】
図1及び
図2bにおける拡大された図示は、軽量な昇降ケーブル9を用いたタワー1で持ち上げられるブラケットアセンブリの要素13,14を示している。ブラケットアセンブリについては、
図4a〜
図4cを参照しつつより詳細に説明する。
【0036】
ブラケットアセンブリ積荷支持要素13は、クレーン昇降ケーブル3に取り付けられて示されている。クレーン昇降ケーブル3は、積荷支持要素がタワー1において持ち上げられる際にリール39から巻き出され得る。
【0037】
図2bには、タワー1の頂部においてブラケットアセンブリを形成するために共に組み立てられ得る2つの積荷支持ブラケット要素13及び結合スプレッダービーム14がどのように軽量昇降ケーブル9から吊り下げられ、タワー1の頂点近傍位置へ引き上げられるのかが示されている。図示された各積荷支持ブラケット要素13は、その本体部13に加えて、クレーン昇降ケーブル3が吊り下げられ、図示の例ではケーブル固定要素11において保持されたアッパークレーン昇降ブラケット部分10で構成されている。
【0038】
図3a及び
図3bには、それぞれ側面図及び正面図において、第1の上昇段階が完了した風力タービンタワー1の例が示されている。
図4a〜
図4cには、
図3a及び
図3bに示されたタワーの側面図、正面図及び平面図が示されている。
【0039】
積荷支持ブラケット要素13は、図示されているように、タワー1の頂部の各側において取り付けられるとともに、互いに、及び例えば高張力のネジ切りされたロッド又は固定された緊張材12,16によってタワーに固定され得る。安定スプレッダービーム14は、強度及びブラケットアセンブリに対する剛性を与えるために各積荷支持ブラケット要素13間で結合され得る。ブラケットアセンブリは、符号2によって示されている。各積荷支持ブラケット要素13は、1つ又はより多く(2つが示されている)のクレーン取付点7を備えている。クレーン装置が所定の位置へ持ち上げられるときには、クレーン装置は、後述のようにこのクレーン取付点7に回転可能に固定される。
【0040】
積荷支持ブラケット要素13は、これらがクレーン装置の重量をクレーン持上げ段階中に支持することができ、かつ、積荷持上げ段階中にクレーンの重量及び積荷の重量を支持することができるように設定されている。この理由のために、積荷支持ブラケット要素13がタワー1の頂部各側に対して適切に固定され、クレーン取付点7によってクレーン及び積荷の重量の垂直方向の力がタワー1の中央部において十分にタワー1へ移されるように位置決めされることが好ましい。
【0041】
符号6によって発電機取付フィッティングが示されており、この発電機取付フィッティングには、後にタービン発電機が取り付けられる。符号5によってケーブルアンカーが示されており、このケーブルアンカーは、後に、メイン積荷持上げ段階中にカウンタバランスケーブルを固定するために用いられる。このケーブルアンカー5は、タワーの基部又は基礎に対して固定されているように示されている。例えば海における風力タービンである、海での取付の場合には、ケーブルアンカー5は、タワー基礎及び海面の上の適当な点において取り付けられることができる。
【0042】
図3bから分かるように、クレーン昇降ケーブル3は、クレーン装置の昇降中に特別な強度及び安定性のためにペアで配置されることが可能である。
図3a、
図3b及び
図4a〜
図4cには、準備段階の完了時で、クレーン取付段階の準備ができたタワー1が示されている。
【0043】
クレーン組立段階
図5には、本発明によるクレーン装置がどのように搬送され、タワー1の基部で組み立てられるのかが概略的な斜視図において示されている。図示の例では、支持フレーム61を備えた2台のトラックが、クレーン昇降ケーブル3を用いてタワーで持ち上げられるクレーン装置を形成するためにクロスメンバ25によって互いに結合されるジブフレームアセンブリ20を運搬する。クレーン装置の組み立て中のクロスメンバ25を支持する標準のクレーン49が示されている。タワー1は、頂部よりも基部において広い断面を有するテーパ付けされた形状を有するものとして示されている。それゆえ、クロスメンバ25は、タワー1の各側における1つのジブフレーム20を有しつつ、2つのジブフレーム20を互いに結合するのに十分に長く構成されている。クレーン装置がタワーを進むとき、ジブフレーム20及びクロスメンバは、ジブフレーム20が互いに近づくように調整されることができる。
【0044】
各ジブフレーム20は、メインフレーム部分42と、ブームアーム26,27とで構成されている。図示の例では、ブームアーム26,27は、部分的にその長さに沿った回動点28を備えている。後述するように、これにより、ブームアーム26,27が、メインフレーム部分42を通してブームアーム26,27の下部27がメインフレームの対応するブーム保持部分においてその回動点28においてメインフレーム部分における対応する回動点30と一直線となるまで持ち上げられ得る。そして、ピボットピン(不図示)は、ブームアーム26,27の回動点28をメインフレーム部分の回動点30と結合するため、及びブームアーム26,27が風力タービン発電機のような重い積荷を支持する場合でもブームアーム26,27が回動できる積荷支持回動軸を形成するために使用され得る。
【0045】
図6には、まだトラック60及び支持フレーム61によって支持されているジブフレーム20が、タワー1において持ち上げられるクレーン装置を形成するために、クロスメンバと共に組み立てられたジブフレームと共に示されている。この例では、各ジブフレーム20が往復動するクローラジャッキ32を備えて示されており、このクローラジャッキは、ジブフレームがクレーン昇降ケーブル3を自動で上昇するよう動作され得る。交互の昇降サイクルによって動作するクローラジャッキである2つの協働の使用により、クレーン装置のクレーン昇降ケーブルでの連続した持上げ動作が十分に可能となる。また、ジャッキ32をタワーの頂部に設けること、及びクレーン昇降ケーブル3の引張によるクレーンの引き上げも可能である。これに代えて、ジブフレーム20に設けられたウインチを使用することが可能である。しかしながら、ストランドジャッキが好ましい。なぜなら、これらは比較的小さいとともにウインチよりもはるかに大きな持上げ力−重量−比率を提供するものであるためである。あるいは、ウインチをタワーの頂部又はタワーの基部に設けることが可能であり、どの場合でも、プーリの配置がタワーの頂部において必要である。しかしながら、ジャッキ32のクレーン装置上での配置により、昇降がかなり単純化され、クレーン装置は自動的にタワー1を昇降する。
【0046】
この例のクレーン装置は、重い昇降ケーブル45を含み、取り付けられ、及びメイン積荷(例えばタービン発電機ユニット)のその後の昇降のための所定の位置についても自動である。クレーン装置は、積荷をタワーにおいて上昇させるために重い昇降ケーブル45に作用する重い昇降ジャッキ31も含むことができる。この目的のために、図示の例の各ジブフレーム20は、昇降のために使用されていない場合に重い昇降ケーブルを収容するため、又は昇降動作中にケーブルに巻き付けるために巻取リールを備えることが可能である。例示の配置では、積荷の昇降がガイド又はプーリ装置37の周囲を通過する間に引っ張られていない各重い昇降ケーブル45の一部が、リール24へ巻き取られるか又はリールから巻き出されることが可能である。
【0047】
ジャッキ22は、ジブフレーム要素23と対応するブームアーム26の間の引張力をブームピボットケーブル44によって作用させるためにも設けられている。後述するように、これらジャッキ22を、積荷をタワー1から内側へ又は外側へ移動させるためにブームアーム26を回動させるために使用することも可能である。回動可能な結合部分38は、ブームピボットケーブル44をブームアーム26へ結合するために使用され得る。
【0048】
各ジブフレームは、積荷持上げ中に、積荷持上げ中の積荷の重量をカウンタバランスジャッキ19とタワーの基部又はタワー1の下側の点の間で延びるケーブル(不図示)によってつりあわせるために使用され得るジャッキ19も備えている。
【0049】
図6における符号33は、タワー1の頂部での取付中にクレーン装置を回動させるための油圧ピストンのようなアクチュエータを示している。符号34は、クレーン装置がタワーの頂部においてブラケットアセンブリ2に回動可能に結合される回動点を示している。
【0050】
クレーン持上げ段階
図7〜
図10には、組み立てられ、クレーン昇降ケーブル3から吊り下げられ、タワー1において上昇する準備ができたクレーン装置の様々な視点が示されている。示されたクレーン昇降ケーブル3は、固定点39において固定されている。クレーン昇降ケーブル3は、自動上昇ジャッキの下方のクレーン昇降ケーブルの一部も引張下にあるよう、クレーン装置の昇降中に緊張されているのが好ましい。ケーブル上昇ケーブル3の全高が緊張下にあるため、自動上昇動作中におけるクレーン装置の重大な横方向への移動を妨げる重大なガイド及び安定性を与えるものとなっている。例えば異常な強風に対抗する必要がある場合には、タワー1の外表部に設けられたレール又はこれに類するガイド手段によって追加的なガイドが提供される。
【0051】
図7〜
図10には、ジブフレーム20及びクロスメンバ25が共通の分離間隔を有するものとして図示されており、この分離間隔は、タワー構造1に対する適当な隙間を与えるものである。ジブフレーム20は、互いに近接されることができ、クレーン装置としてタワー1において上昇する。
【0052】
図8には、クレーンアセンブリのリア範囲に配置された人員用リフト21が示されている。リフトケージ21は、クレーンの昇降中及び取付段階中並びに次の持上げ段階中に一人又は複数人のクレーン装置操作員を収容するために使用されることができる。ウインチ(不図示)又はこれに類する装置は、操作員の地上からの上昇又は下降のために使用されることが可能である。
【0053】
図8には、クレーン装置が昇降される際に、1つ又は複数のカウンタバランスケーブルリール17から巻き出される1つ又は複数のカウンタバランスケーブル18も示されている。クレーン装置が一度タワー1の頂部における所定位置へ至ると、カウンタバランスケーブル18は、タワー1の基部4における固定点5に対して固定される(固定点5は、取り付けられたクレーン装置の下方の適当な固定点において設けられることもできる。)。
【0054】
クレーン装置が一度タワーの頂部に到達すれば、このクレーン装置は、更なる重要な装備、ケーブル、ジャッキなどが地上から昇降される必要なく、すでにクレーン装置の取付、ブームアームの配備及び積荷の昇降のために必要な全ての装備で十分に構成されている。
【0055】
図7〜
図10には、各ブームアーム26の下側部分27が昇降中にどのように吊り下がるのかが示されている。ブームアーム26,27は、クレーン装置の重量の重大な比率を表すとともに、図示のようにクレーン装置の昇降中に引っ込められた状態で配置されている。このようにして、各ジブフレーム20の重心及びクレーン装置は、全体として、クレーン装置の上昇ジャッキ32がクレーン昇降ケーブル3を把持する点のかなり下方に配置されることが可能である。この低い重量分配は、クレーン装置が昇降中に大幅により安定的であることを意味している。もちろん、クレーン装置のような大きく、非常に重い構造物が地上150mで揺れ始めることは望ましくない。その低い重心と、クレーン昇降ケーブル3における緊張とにより、このような望ましくない揺れが回避される。カウンタバランスケーブル18は、スイングを回避することで、昇降中にクレーン装置を安定化させるコントロール手段としても使用することができる。
【0056】
図11〜
図14には、ジブフレームがタワー1の頂部でブラケットアセンブリ2に近づく際のクレーン装置(ジブフレーム20)が示されている。クレーン昇降ケーブル3は、またブラケットアセンブリ2と固定要素39の間で引っ張られているとともに、クレーン装置の重量を支えている。カウンタバランス/コントロールケーブル18は、まだリール17から巻き出されているとともに、明示されているようにクレーン装置がクレーン昇降ケーブル3において上昇クローラジャッキ32によって吊り下げられている間クレーン装置を安定化させるために用いられることも可能である。
【0057】
図13から(
図9と比較において)分かるように、ジブフレーム20は、タワー1のテーパを考慮するために互いにずらして示されているとともに、いまやブラケットアセンブリ2の支持ブラケット要素13と一直線なものとして示されている。
図14に示すように、このずれは、各ジブフレーム20の回動手段34を対応するクレーン取付点7と整列するようにするものであり、クレーン装置が配備される間に支持ブラケット13によってクレーン装置の重量が支持されるように回動可能に固定されることが可能である。例えば油圧ピストンであり得る回動アクチュエータ33は、ブラケットアセンブリ2上の回動アクチュエータ点8に取り付けられているとともに、
図15〜
図18を参照しつつ後述するように、ジブフレームに対応するクレーンの回動をその昇降位置へもたらすために用いられる。
【0058】
クレーン配置段階
図15及び
図16には、回動点7においてブラケットアセンブリ2によっていまや支持され、アクチュエータ接続点8において引っ張ることでアクチュエータ33によってその配置位置へ回動されたクレーン装置が示されている。このクレーン装置は、ブームアーム26が配備される間、この位置に固定されることができる。しかしながら、アクチュエータ33は、所定の位置にクレーン装置を保持することが可能である。一度積荷昇降が開始されると、クレーン装置の角ばった位置が昇降される積荷の重量及びカウンタバランス/コントロールケーブル18によって規定されるとともに、アクチュエータ33はこの段階中にクレーン装置の配備位置を維持する必要がない。
【0059】
図15にも、クレーン昇降ケーブルがどのように引っ張られず、かつ、固定点39から外されるのかが示されている。ただし、これらクレーン昇降ケーブルは、このクレーン昇降ケーブルが揺れ、タワーを損傷したり、人員を危険にさらすことがないよう緩く取り付けられたままとすることが可能である。各カウンタバランス/コントロールケーブル18は、そのリール17から解放されているとともに、固定点5に取り付けられている。
【0060】
図17には、各ブームアーム26,27の回動点28が対応するジブフレーム20の回動点30と一直線となり、例えばピボットピンによって回動可能に結合されるように、引っ込められた状態から上方へその対応するジブフレーム20を通してずらされたブームアーム26,27が示されている。ブームアーム26,27のその引っ込められた状態から配備された(伸ばされた)状態への上方へのずれは、例えばジャッキ、ピストン又はウインチによってなされ、これらは、図には示されていない。この段階においては、回動アクチュエータ33は部分的に又は全体的に解放されているとともに、カウンタバランス/コントロールケーブル18は、ブームアーム26の重量に対するジブフレームの角度のある配向を維持するために、例えばカウンタバランス/コントロールジャッキ19によって緊張されることが可能である。
【0061】
一度各ブームアーム26がその配備された状態に至り、回動点30周りに回動可能であれば、ブームアームは、いくつかの回動ケーブル44を解放することで、ピボット引張ジャッキ22を用いてその積荷昇降位置(
図18に示されている)へ下げられることが可能である。ブームアーム26,27の端部範囲に対して回動可能に固定された積荷昇降ジャッキ31は、積荷持上げ段階の開始準備ができた状態で示されている。積荷昇降ケーブル45は、下げられ、積荷昇降ケーブルリール24から巻き出されることができる。リール24は、迅速に積荷昇降ケーブルを下げるためのウインチとして実行され得る。
図18に示された積荷昇降ケーブル45は、昇降されるべき積荷が取り付けられる積荷固定手段54に適合されている。
【0062】
積荷持上げ段階
図19〜
図22には、上述のようにすでに取り付けられたクレーン装置を用いて実行される積荷持上げ動作が示されている。積荷昇降ケーブル45は、例えばリール/ウインチ24を用いてまず下げられ、タービン発電機ユニット46に取り付けられる。
図21及び
図22から分かるように、例えば積荷回転子57に設けられたスプレッダービーム56が積荷56を積荷昇降ケーブル45に取り付けるために用いられ得る。
【0063】
持上げ力は、重い昇降ケーブル45に作用する重い昇降ジャッキ31によって供給される。ジャッキ31は、積荷46の十分一定の昇降運動を提供するために、同一のケーブルにおける交互の又は変動する昇降ストロークと協働する、引張ジャッキの相補的なセット(例えばペア)として実行され得る。昇降中には、ジブフレーム20の角度についての配向は、カウンタバランス/コントロールケーブル18によって維持されることができる。このようにして、積荷46の重量によるタワー1での負荷力がほぼ完全に垂直であり、ほぼタワー1の中心線を通って作用することを確保することが可能である。
【0064】
図21にはブームアーム26が
図22に示されているように近傍垂直位置へ向けて後方へ回動される際にタービン発電機が各ブームアーム26間を通過するようどのように積荷回転子57がタービン発電機46を回転させるために使用され得るかが示されており、積荷46は、タワー1上に設けられた取付フィッティング6上に取り付ける準備ができている。
【0065】
ブームアーム26が
図22に示されているように積荷の重量がタワーの中心線を直接越える方向へ向けて回動される場合には、クレーン装置への力を下向きへ回動させ、ジブフレーム20を後ろへ、ジブフレームがタワーを上昇する位置へ向けて回転させようとする計略が存在する。したがって、この動作のこの段階のために、回動アクチュエータ33は、ジブフレーム20の角度のある配向を維持するために力を回動させるこの計略を抑止するために使用され得る。積荷がタワーの中心線を越えて移動する場合には、より大きなアクチュエータ力が必要となる。
【0066】
ここに記載された昇降動作のタイプのために、アクチュエータ33は、クレーン装置の自重の回動力を支持することのみが要求される。これは、タワーの頂部におけるモーメントが最小化され得るとともに、クレーン装置の重量によって及ぼされるモーメントを超過しないことを意味している。
【0067】
本発明のいくつかの実施において、タワー1に積荷が取り付けられ得る点へ後ろへブームアーム26が回動される場合にブームアーム26と積荷46の間の隙間を許容するために、ブームアーム回動点がタワーから更に離れるようにずらされるようにジブフレームが配置され得る場合には、各ブームアーム26間の離間距離は、積荷をブームアーム間を通過させるのに十分ではない。
【0068】
ジャッキ31から吊り下げられた積荷を有するブームアーム26の回動は、回動コントロールケーブル44に作用する引張手段(例えばジャッキ)22によって達成することが可能である。
【0069】
図21及び
図22から、大きな積荷支持引張力がどのように直接積荷昇降ケーブル45を通して積荷昇降ジャッキ31へ、積荷昇降ジャッキ取付点35へ、回動コントロールケーブル取付点38へ、回動コントロールケーブル44を通して回動コントロールジャッキ22へ、ジブフレーム20の結合支柱(符号なし)を直接通してカウンタバランス/コントロールジャッキ19へ、カウンタバランス/コントロールケーブル18を通して固定点5(
図21及び
図22では不図示)へ向けられるのかが分かる。分かるように、この配置により、積荷昇降中に増大する大きな力(例えば数千kN)をケーブルの直線範囲によって支持することが可能である。重大な負荷下にない積荷支持ケーブル(例えば45、44及び18)の一部は、プーリ(37)又はリール(24)の周りを通過されることが可能である。積荷支持ケーブルの直線部分のみが重大な引張力を受けるため、これは、太く、強いケーブルを使用することができることを意味し、そのため、ケーブルの数を多重化する必要なくクレーン装置の積荷昇降能力が大幅に高められ得る。多数のケーブルは、より複雑なジャッキ及びより複雑な引張均一化技術を必要とする。
【0070】
明白なように、各ジブフレーム20は、他のものからほぼ独立し得る力伝達経路を有している。クロスメンバ25は、積荷昇降を除く昇降段階中に全体としてのクレーン装置の一定の剛性を提供するために使用されることができ、各ジブフレーム20は、効果的に分離積荷支持構造であり得る。クロスメンバ25は、2つのジブフレーム20間の相対運動(例えば回動)の一定の量を許容するよう配置され得る。様々なジャッキ19,22及び31並びにケーブル18,44及び45は、ジブフレーム20が互いにほぼ一直線となるよう維持するために適切に調整され得る。しかし、この調整には高い精度は必要ない。
【0071】
図23〜
図26には、第2の、類似した積荷昇降手順が示されており、この手順においては、あらかじめ組み立てられた、3つのタービンブレード50を有するハブが、所定の位置へ持ち上げられるとともに、すでに取り付けられた発電機ユニット(ナセル)46へ取り付けられる。可動クレーン49は、ハブ/ブレードアセンブリ50の下部をこれが地面から離れて持ち上げられるまで支持するために使用され得る。タービンブレードは、個々に昇降され得るとともに、クレーン装置を用いて個々にハブに取り付けられ得る。
【0072】
一度タービン及びブレードが取り付けられれば、説明された手順は逆に実行され得る。ブームアーム26が引っ込められ;クレーン装置が後ろ下方へ回動されてブラケットアセンブリ1から取り外され;クレーン装置がケーブル3において下げられるとともに解体されて現場から除去され;ブラケットアセンブリ2の要素が取り外されるとともに軽量昇降ケーブル9を用いて下げられる。
【0073】
説明された方法及び装置は、タワーの頂部からのブレード及び/又は発電機の昇降にも使用することができる。
【0074】
上述した例示的な方法は、重大な昇降装置又は取付具がタワーの頂部において残される必要がなく、小さく、軽作業用の取付点がタワー上に永続的に維持される必要のあるものの全てである。したがって、このこじんまりした取付点は、上述の重い昇降の種類を「ブートストラップ」するために使用され得る。ブラケットアセンブリ2が所定の位置に一時的に残されることも可能であることに留意されたい。これは、発電機ユニット及びロータ/ブレードが異なる昇降動作、例えば、場合によっては異なる速度のクレーン装置を使用して異なる日に実行される場合には(例えば発電機に対する重作業、ロータに対する中程度の作業)、合理的である。タワーの頂部において重作業昇降装置又は取付具が一時的に残されれば、通常の清掃及びメンテナンスが必要となる。ここで説明されたクレーン装置は、自己完結型であり、比較的容易に持ち運び可能である上、タービン現場から離れた好都合な場所で保全されることが可能である。自己完結型でモジュール式であるため、同じ現場に多数のタービンがある場合に、クレーン装置を1つのタワーから同現場の次のものへ移動させやすい。各ジブフレーム20は、積荷の昇降及び/又はジブフレーム自体のタワーにおける昇降のためのジブフレームによって必要とされる全ての油圧ポンプ、電力発電機、ピストン、ジャッキ及び/又はウインチなどを備えることが可能である。
【0075】
方法は、手順の多くがタワーの頂部にいる人員と地上にいる人員の間の非常に少ないコミュニケーションしか必要としないという追加的な利点を有している。
【国際調査報告】