(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-507190(P2015-507190A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(54)【発明の名称】哺乳類の対象における5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法および5T4陽性がんの診断の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20150206BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20150206BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20150206BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20150206BHJP
G01N 1/30 20060101ALI20150206BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20150206BHJP
【FI】
G01N33/574 D
G01N33/543 575
G01N37/00 101
G01N1/28 J
G01N1/30
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-553836(P2014-553836)
(86)(22)【出願日】2013年1月22日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】IB2013050547
(87)【国際公開番号】WO2013111054
(87)【国際公開日】20130801
(31)【優先権主張番号】61/590,066
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/753,665
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(71)【出願人】
【識別番号】514187280
【氏名又は名称】エピック・サイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー,ハンス−ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マリヌッチ,ディーナ
(72)【発明者】
【氏名】ピリー−シェパード,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,エリック
【テーマコード(参考)】
2G052
4B063
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法を提供する。哺乳類の対象において5T4陽性がんを診断する方法を提供する。その検出または診断の方法は、5T4陽性転移がんまたは早期の5T4陽性がんの存在を示す。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法であって、以下の工程:
該哺乳類の対象からの血液の試料を試験し、ここで該血液の試料は細胞集団を含み;
該血液の試料を支持体上にマウントし;
該血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの発現のレベルを検出し、ここで該第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、
該第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析して該循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける;
を含む、前記方法。
【請求項2】
血液の試料中の循環腫瘍細胞の存在が哺乳類の対象における早期の5T4陽性がんの存在を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液の試料中の循環腫瘍細胞の非存在が哺乳類の対象における無疾患状態または測定不能な疾患状態を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
血液の試料中の循環腫瘍細胞の存在または非存在が5T4陽性がん療法またはがんの回復の間の療法管理の必要を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞集団が混合された細胞集団である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
支持体が平面状の支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
支持体がマイクロ流体デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
支持体が濃縮された細胞の集団を保持するカートリッジである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試料の支持体上へのマウントが生物学的単層を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1のマーカー、第2のマーカー、第3のマーカー、または第4のマーカーが蛍光マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1のマーカーが核の詳細、核の輪郭、核小体の存在もしくは非存在、細胞質の質、または細胞質の量による細胞集団の分析において用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
分析がDAPIを用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに細胞集団を、高い核対細胞質比を有する無傷の細胞、低い核対細胞質比を有する無傷の細胞、早期アポトーシス細胞、または後期アポトーシス細胞を測定すること、ならびに循環腫瘍細胞および循環腫瘍細胞集塊を同定することにより分析することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
第2のマーカーまたは第3のマーカーが細胞特異的マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
細胞特異的マーカーがサイトケラチン、CD45、M30、ケモカイン受容体、CXCR1、CXCR4、CD44、CD24、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、EGFR、またはHuRである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細胞特異的マーカーがサイトケラチンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞特異的マーカーがCD45である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第1のマーカーが形態、大きさ、または核対細胞質比により循環腫瘍細胞を同定するための細胞学的染色剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
細胞学的染色剤がライト・ギムザ染色剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1のマーカーの存在、第2のマーカーの存在、第3のマーカーの存在、または第4のマーカーの存在の検出が、さらに細胞の支持体への付着、該支持体上の細胞集団の走査、および再配置を用いるデジタル顕微鏡検査による該細胞の画像化により該細胞集団を分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の検出が5T4陽性がんを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
5T4陽性癌が膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、子宮内膜、腎臓、肺、食道、卵巣、前立腺、膵臓、皮膚、胃、および精巣の癌腫からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を診断する方法であって、以下の工程:
該哺乳類の対象からの血液の試料を試験し、ここで該血液の試料は細胞集団を含み;
該血液の試料を支持体上にマウントし;
該血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の該循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで該第4のマーカーはヒト5T4抗原であり、そして、
該第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析および定量化して該循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける;
を含む、前記方法。
【請求項24】
循環腫瘍細胞上のヒト5T4抗原の定量化を用いてHスコアを生成し、該Hスコアを用いて5T4陽性がん患者集団を選択する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
癌を有することが疑われる哺乳類の対象における5T4陽性がんの処置のための抗体−薬物コンジュゲートの活性または有効性に関するスクリーニングの方法であって、以下の工程:
療法上有効量の抗体−薬物コンジュゲートを該哺乳類の対象に投与し;
該哺乳類の対象からの血液の試料を試験し、ここで該血液の試料は細胞集団を含み;
該血液の試料を支持体上にマウントし;
該血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで該第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、
該第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析して、該抗体−薬物コンジュゲートによる処置後と比較した該抗体−薬物コンジュゲートによる処置前の血液の試料中の循環腫瘍細胞を同定し、特性付け、
ここで処置後の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の5T4陰性循環腫瘍細胞に対する比率における処置前の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の5T4陰性循環腫瘍細胞に対する比率と比較した変化は、5T4陽性循環腫瘍細胞の低減における該抗体−薬物コンジュゲートの有効性を示している可能性がある;
を含む、前記方法。
【請求項26】
該抗体−薬物コンジュゲートが抗5T4−A1−mcMMAFである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法であって、以下の工程:
該哺乳類の対象からの血液の試料を試験し、ここで該血液の試料は細胞集団を含み;
該血液の試料を支持体上にマウントし;
該血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで該第1のマーカーはDAPIであり;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで該第2のマーカーはサイトケラチンであり;
該血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで該第3のマーカーはCD45であり;
該血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで該第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、
該第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析および定量化して該循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける;
を含む、前記方法。
【請求項28】
第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団の分析を利用して5T4陽性がんの処置に関する哺乳類の対象の包含または除外を決定する、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法に、および哺乳類の対象において5T4陽性がんを診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの5T4抗原は数多くのがんのタイプにおいて発現されており、正常な組織には実質的に存在しない。最近、5T4抗原に特異的に結合する高親和性モノクローナル抗体が開発されており、5T4陽性がんの処置における使用のための抗体薬物コンジュゲートを形成するために細胞毒性薬剤が5T4抗体にコンジュゲートされている(米国特許第8,044,178号および第8,309,094号)。従って、5T4発現の評価は5T4陽性がんを有する患者を同定するための有用なアプローチであり得ることになる。1つのアプローチは、がん患者中の循環腫瘍細胞(CTC)上の5T4抗原の検出であろう。
【0003】
循環腫瘍細胞は、上皮由来のがんを有する患者の末梢血中で極めて低い濃度で観察されてきた(Kraeft et al., Clin Cancer Res 10: 3020-3028, 2004)。これらの細胞の数は、試料採取の時点で進行性疾患を有する転移性乳癌患者のコホートに関する転帰と相関することが示されている(Cristofanilli et al., N Engl J Med 351: 781-791, 2004)。この理由のため、それらの特性付けは、これらの細胞がどのように血流を経て解剖学的に遠い部位へと移動して転移性疾患を形成することができるのかを理解するため、生物医学的にかなり興味深い。結果的に、5T4陽性がんと関係するCTCの同定は、患者の同定のための価値ある診断手段を提供することができるであろう。
【0004】
現在、CTCは主に免疫細胞化学的マーカー、例えばEpCamおよびDNA中のA−Tに富む領域に強く結合する蛍光染色剤であるDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を用いた核染色の使用により検出および分析されている。これらのアプローチはCTCの数え上げおよび識別に成功してきたが、それらは診断病理学が依存している標準的な形態学的染色との相関を省略しているため、それらは標準的な細胞病理学的アプローチとは異なる。これはルーチン的な診断手順により得られた他の部位からの腫瘍細胞に対するCTCの比較において困難を生じる。CTCを検出する能力は、がんの診断および個別化された処置ならびに処置の有効性を助ける(aide in)可能性を有するが、CTCの生物学の理解は標準的な細胞病理学的方法を含めることにより向上させることができるであろう。当該技術分野において、従来の診断病理学の染色法および明視野顕微鏡検査によるCTCの詳細な高解像度画像化を利用して、循環5T4陽性癌細胞の標準的な細胞病理学的診断法を作成し、診療所における5T4陽性CTCを用いる診断の採用を進める可能性を与える必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,044,178号
【特許文献2】米国特許第8,309,094号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kraeft et al., Clin Cancer Res 10: 3020-3028, 2004
【非特許文献2】Cristofanilli et al., N Engl J Med 351: 781-791, 2004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1態様において、本発明は、以下の工程を含む、5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法を提供する:その対象からの血液の試料を試験し、ここでその血液の試料は細胞集団を含み;その血液の試料を支持体上にマウントし;その血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、その第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析してその循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける。
【0008】
別の態様において、5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞の存在または非存在を検出するための方法は、その哺乳類の対象における早期の5T4陽性癌の存在、無疾患状態、または測定不能な疾患状態を示す。
【0009】
別の態様において、その血液試料中の循環腫瘍細胞の存在または非存在は、5T4陽性がん療法またはがんの回復の間の療法管理の必要を示す。
【0010】
別の態様において、その細胞集団は混合された細胞集団であり、その支持体は濃縮された(enriched)細胞の集団を保持する平面状の支持体、マイクロ流体デバイス、またはカートリッジである。
【0011】
別の態様において、その試験試料のその支持体上へのマウントは生物学的単層を形成する。
【0012】
別の態様において、その細胞集団は核の詳細、核の輪郭、核小体の存在もしくは非存在、細胞質の質、または細胞質の量により分析され、ここで前記の分析はDAPIを用いる。
【0013】
別の態様において、その細胞集団は高い核対細胞質比を有する無傷の細胞、低い核対細胞質比を有する無傷の細胞、早期アポトーシス細胞、または後期アポトーシス細胞を測定すること、および循環腫瘍細胞を同定することにより分析される。
【0014】
別の態様において、その第1のマーカー、第2のマーカー、第3のマーカー、および第4のマーカーは蛍光マーカーである。
【0015】
別の態様において、その第1のマーカーは、形態、大きさ、または核対細胞質比により循環腫瘍細胞を同定するための細胞学的染色剤である。
【0016】
別の態様において、その細胞学的染色剤はDAPIである。
【0017】
別の態様において、その細胞学的染色剤はライト・ギムザ染色剤である。
【0018】
別の態様において、その第2のマーカーまたは第3のマーカーは細胞特異的マーカーである。
【0019】
別の態様において、その細胞特異的マーカーはサイトケラチン、CD45、M30、ケモカイン受容体、CXCR1、CXCR4、CD44、CD24、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、EGFR、またはHuRである。
【0020】
別の態様において、その第1のマーカーの存在、その第2のマーカーの存在、その第3のマーカーの存在、またはその第4のマーカーの存在の検出は、さらに細胞のその支持体への付着、その支持体上の細胞集団の走査、および再配置を用いるデジタル顕微鏡検査によるその細胞の画像化によりその細胞集団を分析することを含む。
【0021】
別の態様において、その血液試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の検出は5T4陽性がんの存在を示し、ここで前記のがんは膀胱、乳房、子宮頸部、結腸直腸、子宮内膜、腎臓、肝臓、肺、食道、卵巣、前立腺、膵臓、皮膚、胃、および精巣の癌腫からなる群から選択される。好ましくは、前記のがんは結腸直腸、乳房、膵臓、および非小細胞肺癌腫からなる群から選択される。
【0022】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性がんを診断する方法を提供する:その対象からの血液の試料を試験し、ここでその血液の試料は細胞集団を含み;その血液の試料を支持体上にマウントし;その血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、その第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析および定量化してその循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける。
【0023】
別の態様において、本発明は、前記の循環腫瘍細胞上のヒト5T4抗原の定量化を用いてHスコアを生成し、前記のHスコアを用いて5T4陽性癌患者集団を選択し、そして前記の循環腫瘍細胞を最適化された5T4 4色アッセイを利用して特性付ける方法を提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、癌を有することが疑われる哺乳類の対象における5T4陽性がんの処置のための抗体−薬物コンジュゲートをスクリーニングする方法を提供する:療法上有効量の抗体−薬物コンジュゲートをがんを有することが疑われる対象に投与し;その薬物候補による処置の前後のその対象からの血液の試料を試験し、ここでその血液の試料は5T4陽性循環腫瘍細胞を含有することが疑われる細胞集団を含み;その血液の試料を支持体上にマウントし;その血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、その第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析して、その抗体−薬物コンジュゲートによる処置後と比較したその抗体−薬物コンジュゲートによる処置前の血液の試料中の循環腫瘍細胞を同定し、ここで処置後の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の5T4陰性循環腫瘍細胞に対する比率における処置前の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の5T4陰性循環腫瘍細胞に対する比率と比較した変化は、5T4陽性循環腫瘍細胞の低減におけるその抗体−薬物コンジュゲートの有効性を示している可能性があり、ここで前記の抗体−薬物コンジュゲート化合物は抗5T4−A1−mcMMAFである。
【0025】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、5T4陽性がんを有することが疑われる哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞を検出するための方法を提供する:その対象からの血液の試料を試験し、ここでその血液の試料は細胞集団を含み;その血液の試料を支持体上にマウントし;その血液の試料中の有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第1のマーカーはDAPIであり;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第2のマーカーはサイトケラチンであり;その血液の試料中の腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第3のマーカーはCD45であり;その血液の試料中の循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカーの存在または非存在を検出し、ここで前記の第4のマーカーはヒト5T4抗原であり;そして、その第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析してその循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1aは、Hスコアの計算において利用される5T4発現の範囲を比較する。
【
図1B】
図1bは、非小細胞肺癌(NSCLC)における5T4の低、中、および高発現に関して確立された閾値を示す較正用(calibrating)細胞株を提供する。
【
図2A】
図2aは、最適化された5T4 4色診断アッセイを用いて分析されたNSCLC患者試料からの単一のCTCおよびCTC集塊の両方に関する5T4発現の散布図を示す。
【
図2B】
図2bは、最適化された5T4 4色診断アッセイを用いて分析された17人のNSCLC患者の試料からのデータおよび較正用細胞株を用いて計算されたHスコアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
別途定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で記述される方法および材料と類似した、または均等なあらゆる方法および材料を本発明の試験に関する実施において用いることができるが、好ましい材料および方法は本明細書において記述されている。本発明の記述および特許請求において、以下の用語法が用いられるであろう。
【0028】
5T4は、42kDaのグリコシル化されていないコアを含む72kDaの高度にグリコシル化された膜貫通糖タンパク質である、5T4がん児性抗原を指す(米国特許第5,869,053号を参照)。ヒト5T4は、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、子宮内膜、腎臓、肺、食道、卵巣、前立腺、膵臓、皮膚、胃、および精巣の癌腫が含まれるがそれらに限定されない数多くのがんのタイプにおいて発現されている。がん幹細胞または腫瘍開始細胞とも呼ばれる高度に腫瘍原性の細胞は、高レベルの5T4発現を有することが示されている(国際公開第2010/111659号)。抗5T4抗体には、ヒトの5T4抗原に特異的に結合する抗体が含まれる(米国特許第8,044,178号を参照)。
【0029】
“生物学的単層”は、細胞分離または精製の様々な状態において存在し得る血液試料を指す。例えば、その生物学的単層は、部分的に精製されており、赤血球の溶解が起こった後の単核細胞および他の細胞を含有することができる。
【0030】
“その試料を支持体上にマウントする前に細胞集団を選別する”は、その細胞集団の亜集団をその試料、例えば血液試料から分離することを指す。選別は、選択的細胞溶解および細胞の細画分の遠心分離により行うことができる。選別は、蛍光細胞マーカーおよび蛍光活性化細胞選別を用いて行うこともできる。細胞マーカーに関する細胞選別は、循環腫瘍細胞に関する正の選択として、または非腫瘍細胞を除去する負の選択として行うことができる。
【0031】
その“支持体”は、検出および分析のためにマウントされた細胞を含有する試験試料、例えば血液試料を保持する。1観点において、その支持体は平面状であることができる。さらなる観点において、その支持体はいくらかの湾曲を有することができる。
【0032】
“対象”、“哺乳類の対象”または“患者”は、本発明の方法を適用することができるあらゆる哺乳類の患者または対象を指す。“哺乳類”または“哺乳類の”は、ヒトの患者および非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えばウサギ、ラット、およびマウス、ならびに他の動物を指す。本発明の典型的な態様において、本発明の方法に従う処置に関する対象患者を同定するため、受け入れられたスクリーニング法を用いて標的となる、もしくは疑われる疾患もしくは病気、例えば5T4陽性癌と関係する危険因子を決定し、または対象における既存の疾患もしくは病気の状態を決定する。これらのスクリーニング法には、例えば標的となる、または疑われる疾患または病気と関係し得る危険因子を決定するための一般に行われる精密検査が含まれる。これらの、および他のルーチン的な方法は、臨床家が本発明の方法および配合物を用いる療法を必要とする患者を選択することを可能にする。
【0033】
“血液試料”、“血液標本”、“試験試料”、および“血液の試料”は互換的に用いられており、一般に柔軟なプラスチックのカテーテルを有する鋭く堅い穿刺棘もしくはカニューレによる、または注射器もしくはカテーテルに取り付けられた鋼製の針による静脈穿刺(venipucture)または静脈の経皮穿刺により診断アッセイが含まれる医学的検査における使用のために対象から引き出された、または採取されたある量の血液として定義されている。
【0034】
“がん”、“悪性腫瘍”、“固形腫瘍”または“過剰増殖性障害”は同義語として用いられており、5T4陽性細胞の制御されない異常な増殖、冒された5T4陽性細胞の局所的にまたは血流およびリンパ系を通って体の他の部分へと拡散する(すなわち転移する)能力、ならびにいくつかの特徴的な構造的および/または分子的特徴のいずれかを特徴とするいくつかの疾患のいずれかを指す。
【0035】
“第1のマーカー”、“第2のマーカー”、“第3のマーカー”、および“第4のマーカー”は、循環腫瘍細胞を細胞学的染色剤により、または細胞特異的マーカーにより同定する。その第1のマーカーは、DAPI、ライト・ギムザ染色剤、または当該技術分野で既知の他の細胞学的染色剤が含まれるがそれらに限定されない細胞学的染色剤である。例えば、本明細書に参照によりそのまま援用されるB.F. Atkinson, Atlas of Diagnostic Cytopathology. 第2版, W.B. Saunders Company, Ed., 2003を参照。その第2および第3のマーカーは、サイトケラチン、CD45、M30、ケモカイン受容体、CXCR1、CXCR4、CD44、CD24、血管内皮成長因子のイソ型(VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3)、上皮成長因子受容体(EGFR)、またはmRNA安定性因子HuRに関するマーカーが含まれるがそれらに限定されない細胞特異的マーカーである。第4のマーカーは5T4抗原を指す。
【0036】
これらのマーカーは、造血由来の細胞が含まれる様々な細胞型、上皮細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞上のサイトケラチン類、CD44、ヒアルロン酸を認識する細胞表面受容体、ケモカイン受容体、例えばCXCR1またはCXCR4を同定する。
【0037】
本明細書において用いられる細胞の文脈における“選別”は、例えば蛍光活性化細胞選別機を用いて成し遂げることができるような細胞の物理的選別、ならびに細胞表面マーカーの発現に基づく細胞の分析、例えば選別の非存在下でのFACS分析の両方を指す。
【0038】
“その細胞集団を核の詳細、核の輪郭、核小体の存在もしくは非存在、細胞質の質、または細胞質の量により分析すること”および“その細胞集団を高い核対細胞質比を有する無傷の細胞、低い核対細胞質比を有する無傷の細胞、早期アポトーシス細胞、または後期アポトーシス細胞を測定すること、および循環腫瘍細胞を同定することにより分析すること”は、B. F. Atkinson(同書)において記述されているような技法および分析法を利用して行うことができる。
【0039】
“がん療法またはがんの回復の管理”は、がん進行の病期または特定のがん療法処置の有効性を決定するためのインビボまたはインビトロの診断検査を指す。
【0040】
“循環腫瘍細胞(CTC)”は、汎サイトケラチン(pan cytokeratin)に関して陽性かつCD45に関して陰性である無傷の腫瘍細胞または腫瘍細胞の集塊を指す。CTCには、5T4に関して陽性かつCD45に関して陰性である細胞;汎サイトケラチンおよび5T4の両方に関して陽性かつCD45に関して陰性である細胞;ならびに形態学的に悪性腫瘍細胞と一致している細胞も含まれる。CTCを分類および検出するための方法は以前に報告されている(本明細書に参照により援用される国際公開第2011/028905号、国際公開第2011/050103号、および米国特許出願公開第2009/0317836号)。
【0041】
“Hスコア”は、それぞれのカテゴリー(低、中および高)内のCTCの百分率にそれらのそれぞれのカテゴリー値を掛けて合計する加重スコアであり、0〜300のスコアを生成する。
【0042】
当該技術分野において既知の循環腫瘍細胞を検出するいくつかの方法が存在する。血液試料中の悪性上皮細胞の濃度の低いレベル(おおよそ10
6〜10
7個の総有核細胞中1個)がそれらを検出するのを困難にしている。CTCの検出および数え上げは、以下の方法が含まれるいくつかの方法を用いて試みられてきた:PCR、フローサイトメトリー、画像に基づく免疫学的アプローチ、免疫磁気的技法、マイクロ流体技法、およびマイクロチップ技術。
【0043】
例えば、AdnaTest Breast Cancer(登録商標)システムは逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を利用して循環腫瘍細胞を検出する(AdnaGen AG,ドイツ、ランゲンハーゲン;OncoVista,Inc.,テキサス州サンアントニオ)。その試験は、専売の上皮表面抗原に対する3種類の抗体の1種類でコートされた免疫磁気ビーズの混合物を利用するCTC濃縮手順を有することを特色とする。次いでCTCの数を半定量的RT−PCR法により間接的に決定する。
【0044】
CellSearch System(商標)(Veridex LLC,ニュージャージー州ウォーレン)は、全血中のCTCを検出することを目的に開発された。CellSearch Systemは血液試料を上皮細胞に付着する抗体でコートされた鉄粒子と混合する技法を含む。次いで上皮細胞を、がん細胞を容易に識別および計数することができるように蛍光色素を用いてタグ付けした抗体により白血球から識別する。
【0045】
OncoQuick(商標)(Greiner Bio-One-,Inc.フロリダ州ロングウッド)は、循環腫瘍細胞を検出するために開発された別の試験システムである。このシステムは、密度勾配遠心分離および免疫に基づく技法を組み合わせている強化された密度勾配システムである。
【0046】
患者からの試料中のCTCの数を数え上げる、前記の試料を1個以上の循環腫瘍細胞を選択的に濃縮する(enriches)マイクロ流体装置を通して流すことを含む方法が、本明細書に参照により援用される米国特許出願第2010/0233693号において記述されている。そのマイクロ流体装置は1個以上のCTCを大きさ、親和性、変形能、または形状に基づいて濃縮することができる。
【0047】
マイクロ流路装置を利用してCTCを単離および分析する方法が、米国特許出願第2010/0255479号において記述されている。この方法は、CTCを含有する試料を、そCTCのマイクロ流路装置中でのCTCの捕捉を強化する細胞に特異的に結合する結合パートナーを用いて予め標識する、またはそれと予め混合することによる溶液からの生物学的標的の捕捉を提供する。
【0048】
上記で言及した循環腫瘍細胞を検出する方法のそれぞれは、細胞濃縮工程を必要とする。本発明の際立った特徴は、5T4陽性がんを有する患者の大部分においてかなりの数のCTCを同定する能力を示す、濃縮を含まないアッセイである。
【0049】
本発明の1観点は、概して哺乳類の対象において5T4陽性循環腫瘍細胞(CTC)を検出するための方法または哺乳類の対象において早期の5T4陽性がんを診断する方法に関する。本発明はさらに、5T4陽性がんの処置のために哺乳類の対象において薬物候補化合物をスクリーニングする方法に関する。
【0050】
以下の工程を含む、哺乳類の対象において5T4陽性CTCを検出するための方法を提供する:がんを有することが疑われる哺乳類の対象からCTCを含有することが疑われる混合された細胞集団を含む血液の試料を得て、その血球およびCTCを支持体上にマウントして生物学的単層を形成し、その生物学的単層において有核細胞に選択的に結合する第1のマーカーを検出し、その生物学的単層においてCTCに結合する第2のマーカーを検出し、その生物学的単層においてその混合された細胞集団またはその混合された細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカーを検出し、その生物学的単層において5T4陽性細胞に選択的に結合する第4のマーカーを検出し、その第1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞集団を分析してCTCを同定し;その血液の試料中のCTCの存在は、その哺乳類の対象における5T4陽性がんまたは早期の5T4陽性がんの存在を示す。その血液の試料中のCTCの存在または非存在は、その哺乳類の対象における無疾患状態または測定不能な疾患状態の存在を示し得る。
【0051】
その方法は、がん患者の血液中の5T4陽性CTCを検出するための方法と合わせて、血液試料内の上皮由来細胞を同定するための細胞付着プロトコルを提供する。このプロトコルでは、血液中の生きた白血球(white blood cells)(WBC)、例えば白血球(leukocytes)および他の細胞を、例えば生物学的単層としてスライド上に分離する。白血球には、Tリンパ球;食作用に関わる単球、好酸球、および好中球;ならびに炎症反応に関わる好塩基球が含まれるが、それらに限定されない。
【0052】
その方法はさらに、特別にコートされた接着性スライド上の付着したWBCおよびCTCの蛍光標識を提供する。その細胞を、有核細胞に選択的に結合する第1のマーカー(ここで前記の第1のマーカーはDAPIである)、循環腫瘍細胞に結合する第2のマーカー(ここで前記の第2のマーカーはCTCの本質的な構成要素であるサイトケラチン(CK)である)、腫瘍細胞であることが決定されていない細胞集団または細胞集団の亜集団に結合する第3のマーカー(ここで前記の第3のマーカーはCD45である)、および循環腫瘍細胞に選択的に結合する第4のマーカー(ここで前記の第4のマーカーはヒト5T4抗原である)で蛍光標識する。次いでそのスライドを蛍光の部位に関して走査し、その1、第2、第3、および第4のマーカーにより検出された細胞のパラメーターを比較検討する(weighs)アルゴリズムを利用する高性能計算を用いて分析して循環腫瘍細胞を同定し、特性付ける。
【0053】
その方法はさらに、蛍光顕微鏡検査および細胞付着プロトコルを利用して5T4陽性がん患者中のCTCの蔓延を調べる方法を提供する。その方法の追加の利点は、病理学者が対象とする細胞を病理学的確証および特性付けのために再配置および試験することを可能にする。本発明において、そのプロトコルにはさらに、それぞれの蛍光染色されたスライド上のカバーガラスを取り外すことおよび/または水溶性のマウント媒体を可溶化することならびにその同じ細胞を第2の細胞マーカー、例えば標準的なライト・ギムザ染色を用いて再染色してCTCの形態、大きさ、および不均一性への追加の洞察を提供することが含まれる。高性能計算および細胞付着プロトコルにより位置付けられた既知のCK
+の個々の稀な細胞および稀な細胞集塊を形態学的に評価することができる。CTCの蛍光画像はそれらの検証された同定を助けてきたが、ライト・ギムザ染色はCTCに関する追加の細胞学的情報を提供してきた。本発明のさらなる観点において、その方法を用いて疾患状態、細胞型、または細胞状態のいずれかに特異的である異なる細胞マーカーを評価することができる。
【0054】
CTCを検出し、特性付ける能力は、5T4陽性がん患者の診断および個別化された処置を助ける(aide in)可能性を有する。それらの希少性のため、CTCを調べるために特別な方法が必要である。本発明は、癌患者から得られた血液中のCTCの詳細な形態学的特性付けのために標準的な細胞病理学的方法の使用を可能にする流体相生検アプローチを提供し、表面タンパク質に基づく濃縮を用いずにある範囲のCTCの細胞学的特徴の詳細を提供する。全血から回収された有核細胞を接着性スライド上に置き、免疫蛍光標識し、デジタル顕微鏡検査により5T4陽性CTCに関して分析する。これらの技法をルーチン的な染色法と組み合わせることは、光学顕微鏡検査を用いるCTCの同定および評価を可能にする。その細胞を観察するために従来の病理学的方法を用いることで、CTCは全血調製物において高度な患者間および患者内多形性を示し、高い、および低い核対細胞質比の両方を有する無傷のCTCが、アポトーシスの特徴を示すCTCと共に同定される。形態学的観察は、原発および転移性腫瘍部位中に存在する全範囲の細胞が血中を循環しているのが見られる可能性もあることを示唆しており、さらに転移に関わる細胞の亜集団の特性を調べるためにその中での形態学的分類の可能性のある枠組みを提供する。
【0055】
自動化されたデジタル顕微鏡検査。予想される細胞の座標を、完全に自動化された走査型デジタル顕微鏡検査システムである、希少事象画像化システム(REIS)に供給する。REISのハードウェア構成要素および専売の走査ソフトウェアは、他の文献で詳細に記述されている(Krivacic et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 10501-10504, 2004)。
【0056】
測定。検出された蛍光物を、稀な細胞を偽陽性から識別するためにソフトウェアフィルター操作を用いて分析する。その細胞は一般にレーザースポットの分解能(20μm)より小さいため、第1のフィルターは大きさの閾値(20μm)より下である全ての物体を通過させる。第2のフィルターは、異なるチャンネルからの蛍光の強度の間の比率を分析して、免疫蛍光染色の一般的な人為産物である均一な色素の凝集体を排除する。
【0057】
試料は、対象からの血液または血液の一部が含まれるがそれらに限定されない生物学的流体の試料を引き出すことにより生物学的単層として調製することができる。一観点において、その試料は細胞の単層である。その流体試料を、細胞の表面上または内部にあってよい異なる種類の生物学的分子、例えばタンパク質、核酸または他の分子、に選択的に結合する蛍光物質、例えばマーカー色素(それに限定されない)で処理する。選択されたがんの細胞型、胎児細胞、または考慮されるべき他の適切な細胞が含まれる臨床的に興味深いいくつかの異なる細胞型を標識するための適切なマーカーは、当該技術分野で既知である。数多くの他の細胞、例えば数ある中でも脳細胞、肝細胞、ならびに細菌細胞に関するマーカーを開発することができる。その物質は、選択された励起照射、例えば選択された波長またはスペクトルの光による照射、X線照射、電子ビーム照射等に反応して特徴的な出力、例えば蛍光または燐光を放射する。その特徴的な発光は典型的には特徴的な波長またはスペクトル範囲の波長を有する。色素が主なタグ付けプロセスであるが、量子ドットおよびDNAナノ粒子プローブとして知られているマーカーの使用が含まれる他の技法が存在する。
【0058】
本発明の別の観点において、生物学的単層内の稀な細胞、例えば5T4陽性循環腫瘍細胞(CTC)、の位置を得るための方法が提供される。例えば、本明細書に参照により援用される米国出願第2004/0131241号を参照。少なくとも1個の稀な細胞を有し、実質的に直角を形成する位置で配置されたレチクルマークを有するスライドを、第1画像化システムのスライドホルダー中に置く。その画像化システムの第1座標空間を定め、その第1座標空間中のレチクルマークの座標を指定する。第2画像化システムの第2座標空間を定め、その第2座標空間中のレチクルマークの座標を指定する。第1座標空間のレチクルマークの指定された座標を用いて、座標変換パラメーターを計算する。その後、第1座標空間中の少なくとも1個の物体の座標を指定し、その物体の第1座標空間の座標を座標変換パラメーターを用いて第2座標空間中の唯一の座標に変換する。
【0059】
一度その稀な細胞またはCTCの位置を特定したら、それぞれの蛍光染色されたスライド上で生物学的単層上のカバーガラスを取り外すことができ、またはその水溶性マウント媒体を可溶化することができる。同じ細胞を第2の細胞マーカー、例えば標準的なライト・ギムザ染色を用いて再染色してCTCの形態、大きさ、および不均一性への洞察を提供することができる。既知のサイトケラチン陽性(CK
+)の個々の稀な細胞および稀な細胞集塊の位置を突き止め、形態学的に評価することができる。CTCの蛍光画像はそれらの検証された同定を助けてきたが、ライト・ギムザ染色はCTCに関する追加の情報を提供してきた。
【0060】
さらなる観点において、このプロセスを用いて疾患、疾患状態、細胞型、または細胞状態のいずれかに特異的である異なる細胞マーカーを評価することができる。本発明の方法はCTCの特性付けを助けるであろう。それは濃縮なしで5T4陽性癌患者から得られた血液からのCTCの高品質な評価を可能にし、CTCの形態および特徴への洞察を提供する。
【0061】
稀な転移性CTCに関する探索は、多くのCTCがアポトーシス性であり転移を形成することができないことを示唆しており、10,000個中1個の播種性がん細胞しか転移を確立することができないと概算している。従って、これらの稀な細胞の検出、形態学的分類、および分子的特性付けは新規の方向付けられた療法を目標とすることができると考えられ、CTCの臨床的重要性を実証している。
【0062】
がん処置
がん処置の1つの方法は免疫療法であり、ここで5T4抗原に特異的な抗体を適切な薬物、例えば細胞毒性または細胞増殖抑制性薬剤、免疫抑制剤、放射性同位体、毒素等にコンジュゲート化することができる。その抗体薬物コンジュゲート(ADC)を用いて、薬物を患者中の5T4陽性腫瘍細胞またはがん細胞に送達することができる。5T4陽性がんの処置のためのADCは、本明細書に参照により援用される米国特許第8,309,094号において開示されている。ADCSの例は5T4−A1−mcMMAF、5T4−A1−vcMMAE、および5T4−vc−MMADであり、ここで5T4−A1は5T4抗原に特異的に結合するヒト化抗体であり、MMAE、MMAE、およびMMADはオーリスタチン誘導体である。オーリスタチンは、微小管動態ならびに核および細胞分裂を妨げ、抗がん活性を有することが示されている。
【0063】
診断アッセイ
本発明の一態様が
図1aにおいて図説されており、ここでCTC上の5T4抗原の定量化を用いてそれぞれのカテゴリー内のCTCの百分率にそれらのそれぞれのカテゴリー値を掛けて合計することにより‘Hスコア’を生成し、これは0〜300のスコアを生成する。
図1bにおいて示されるように、その採点システムは、5T4発現レベルに基づいて選択されたNSCLC細胞株のパネル(panel)を用いて実施例1において記述される最適化された5T4 4色アッセイにより決定されるような5T4発現を利用する。これらのレベルは標準的な免疫細胞学的(ICC)染色実験により確証された。これらの細胞株は、5T4の高い(MDA−MB−435およびNCI−H226細胞株)、中程度の(NCI−H1975およびMDA−MB−361細胞株)、および低い(NCI−H522およびNCI−H2122細胞株)発現レベルに相当する。これらの株のそれぞれにおける5T4の平均発現レベルを用いて、このアッセイにおける5T4の高、中および低発現に関する閾値を確立した。
【0064】
本発明の別の態様において、実施例1において記述される最適化された5T4 4色診断アッセイを利用して、がん患者を5T4抗原を発現するCTCの存在に関してスクリーニングする。このアッセイは、CTCの数え上げおよび特性付け、ならびにCTCの5T4標的の発現および原発腫瘍における5T4発現の間の相関の決定により、CTC上の5T4抗原発現のレベルを決定するのを助けるであろう。
図2aにおいて示される5T4発現の散布図は、対照細胞株により較正された単一のCTCおよびCTC集塊両方に関する。
図2bにおいて示されるように、17人の非小細胞肺癌(NSCLC)患者の試料を最適化された5T4 4色アッセイを用いて処理した。このように、本発明の5T4 4色アッセイを用いてHスコアカテゴリーを決定し、次いでそれをHスコアの計算において用いる。最終的に、そのCTCを発現している5T4標的を同定する診断アッセイは、処置可能な癌患者集団を同定するために、そしてADC、例えば5T4−A1−mcMMAFを用いた処置の間にその癌患者中のCTCを監視する手段として用いられるであろう。
【0065】
本発明のさらなる観点は、HスコアをCTC上の5T4を特性付けるための予備的採点システムとして用いることである。上記で示したように、Hスコアはそれぞれのカテゴリー内のCTCの百分率にそれらのそれぞれのカテゴリー値を掛けて合計する加重スコアであり、0〜300のスコアを生成する。CTCを、
図1aにおいて示されるように、個々の5T4発現に基づいて4つのカテゴリー(0〜3)に分ける。適度に有用なHスコアを計算するために、最低でも10個のCTCが存在しなければならない。
【0066】
患者に関して、Hスコアは2通りで計算されるであろう:(1)伝統的なHスコア(THS)−全ての事象(単一のCTCまたはCTC集塊)の平均5T4強度を単一のデータの点として計数する;(2)クラスター加重(Cluster-Weighted)Hスコア(CWHS)−全てのCTCの平均5T4強度(単一または集塊内)を単一のデータの点として計数する。
【0067】
Hスコアカテゴリーおよびカテゴリーあたりの%CTCに関する値を利用するHスコア計算の1つの例は、以下の通りである:Hスコアカテゴリー0(1.5% CTC);Hスコアカテゴリー1(15.0% CTC);Hスコアカテゴリー2(68% CTC);Hスコアカテゴリー3(15.5% CTC)。Hスコア=(1.5×0)+(15.0×2)+(68.0×2)+(15.5×3)=198。
【0068】
次いでそのHスコアを利用して、ADC、例えば5T4−A1−mcMMAFまたは他の5T4特異的ADCを用いた処置に関する成功の最高の可能性を有するであろう患者集団を選択することができる。
図2bは、本発明の5T4 4色アッセイを利用した17人のNSCLC患者の14人に関するHスコアの計算を提供する。
【0069】
他の態様において、以下の工程を含む、がんを処置するための方法が提供される:最適化された5T4 4色アッセイを用いて5T4陽性CTCを同定することにより5T4陽性癌を有する患者を同定し、前記の患者をHスコアを決定することにより分類し、そしてそれを必要とする患者に有効量の5T4陽性癌に特異的に結合するADCを投与する。さらに、その患者をその療法の間の休止期間において最適化された5T4 4色アッセイを利用して5T4陽性CTCの存在に関して監視する。ADCを用いた処置前の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の数と比較してADCを用いた処置後の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の減少した数を検出することは、その抗体−薬物コンジュゲートのその哺乳類の対象における5T4陽性癌の処置における有効性を示している可能性がある。
【0070】
別の態様において、最適化された5T4 4色アッセイを利用して細胞集団を分析し、抗体−薬物コンジュゲートを用いた処置前の試験試料中の循環腫瘍細胞を抗体−薬物コンジュゲートを用いた処置後と比較して同定し、特性付け、ここで処置後の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の5T4陰性循環腫瘍細胞に対する比率における処置前の血液の試料中の5T4陽性循環腫瘍細胞の5T4陰性循環腫瘍細胞に対する比率と比較した変化は、その抗体−薬物コンジュゲートの5T4陽性循環腫瘍細胞の低減における有効性を示している可能性がある。
【0071】
一部の態様において、がんを処置する方法には、最適化された5T4 4色アッセイを用いて5T4陽性CTCを同定することにより5T4陽性癌を有する患者を同定すること、および前記の患者に有効量の5T4陽性癌に特異的に結合するADCを化学療法剤との組み合わせで投与することが含まれる。その化学療法剤は、それを用いた癌の処置が不応性であることが判明していない化学療法剤である。一部の態様において、その化学療法剤は、それを用いた癌の処置が不応性であることが判明している化学療法剤である。そのADCは、処置、例えばその癌の処置のための外科手術を受けたこともある患者に投与することができる。別の態様において、その追加の処置の方法は放射線療法である。さらに、その患者をその療法の間の休止期間において最適化された5T4 4色アッセイを利用して5T4陽性CTCの存在に関して監視する。
【0072】
検出可能な標識
そのアッセイにおいて用いられる特定の標識または検出可能な基は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能であることができる。標識の個々のタイプは、それが抗体のそのアッセイにおいて用いられる細胞または循環腫瘍細胞上の細胞マーカーへの特異的結合を著しく妨げない限り、本発明の重要な観点ではない。その検出可能な基は検出可能な物理的または化学的特性を有するあらゆる物質であることができる。そのような検出可能な標識はアッセイまたは免疫アッセイの分野において十分に開発されてきており、一般にそのような方法において有用なほとんどあらゆる標識を本発明に適用することができる。従って、標識は分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能なあらゆる組成物である。本発明における有用な標識には、AlexaFlour(登録商標)蛍光色素(Invitrogen)、磁気ビーズ(例えばDynabeads(商標))、蛍光色素(例えばフルオレセインイソチオシアネート、Texas red、ローダミン等)、放射標識、他の画像化剤、例えば(超音波画像化のための)微小気泡、酵素(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般的に用いられる他の酵素)、および熱量測定(calorimetric)標識、例えばコロイド金または着色されたガラスもしくはプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズが含まれる。
【0073】
その標識を、当該技術分野で周知の方法に従ってそのアッセイの望まれる構成要素に直接または間接的に結合させることができる。上記で示したように、必要とされる感度、その化合物とのコンジュゲーションの容易さ、安定性の要求、利用可能な機器、および廃棄の規定(disposal provisions)に依存する標識の選択により、多種多様な標識を用いることができる。
【0074】
非放射性標識はしばしば間接的手段により取り付けられる。一般に、リガンド分子(例えばビオチン)をその分子に共有結合させる。次いでそのリガンドが抗リガンド(例えばストレプトアビジン)分子に結合し、それは本質的に検出可能であるか、またはシグナル系、例えば検出可能な酵素、蛍光化合物、もしくは化学発光化合物に共有結合しているかのいずれかである。いくつかのリガンドおよび抗リガンドを用いることができる。あるリガンドが天然の抗リガンドを有する場合(例えばビオチン、チロキシン、およびコルチゾール)、それは標識された天然存在の抗リガンドと合わせて用いることができる。あるいは、あらゆるハプテン性または抗原性化合物を抗体との組み合わせで用いることができる。
【0075】
その分子は、例えば酵素または蛍光体とのコンジュゲーションにより、シグナル生成化合物に直接コンジュゲートすることもできる。標識として興味深い酵素は、主にヒドロラーゼ類、特にホスファターゼ類、エステラーゼ類およびグリコシダーゼ類、またはオキシドレダクターゼ類、特にペルオキシダーゼ類であろう。蛍光化合物には、AlexaFlour(登録商標)蛍光色素(Invitrogen)、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン等が含まれる。化学発光化合物には、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン類、例えばルミノールが含まれる。用いることができる様々な標識またはシグナル生成系の総説に関して、本明細書に参照により援用される米国特許第4,391,904号を参照。
【0076】
標識を検出する手段は当業者に周知である。従って、例えば、その標識が放射性標識である場合、検出のための手段にはシンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーにおけるような写真フィルムが含まれる。その標識が蛍光標識である場合、それはその蛍光体を適切な波長の光で励起し、結果として生じた蛍光を検出することにより検出することができる。その蛍光は、写真フィルムにより、電子的検出装置、例えば電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管等の使用により視覚的に検出することができる。同様に、酵素標識はその酵素に関する適切な基質を提供し、結果として生じた反応産物を検出することにより検出することができる。最後に、単純な熱量測定(calorimetric)標識は単純にその標識と関係する色を観察することにより検出することができる。
【0077】
他の態様および使用は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0078】
実施例1
最適化された5T4−4色診断アッセイ
最適化された4チャンネルアッセイが5T4陽性CTCの同定のために開発された。そのCTCを4種類の異なる染色剤で染色し、4つの別々のチャンネルで測定した。例えば、CTCを抗CK−AlexaFluor(登録商標)555(赤);抗CD45−AlexaFluor 488(登録商標)(緑);抗5T4-AlexaFluor 660(登録商標)(紫)で染色することができ;そしてその細胞核をDAPIで青に染色する。AlexaFlour(登録商標)蛍光色素(Invitrogen)は多くの色で入手可能であるため、代わりの染色の組み合わせが利用可能である。
【0079】
患者および血液試料の収集
試料を転移がんの患者から抗凝固剤処置した血液のチューブ中に集め、24時間以内に処理した。血液試料は正常な対照からも引き出した。
【0080】
CTCの検出のための血液試料の処理
血液試料を5分間揺り動かした後、白血球(WBC)数をHemocue WBCシステム(HemoCue,スウェーデン)を用いて測定した。そのWBC数に基づいて、ある体積の血液に対して赤血球溶解(塩化アンモニウム溶液)を行った。遠心分離後、有核細胞をPBS中で再懸濁し、カスタムメイドのスライドガラス上に単層として付着させた。そのスライドガラスは標準的な顕微鏡スライドと同じ大きさであるが、生きた細胞の最大限の保持を可能にする専売のコーティングを有する。それぞれのスライドはおおよそ300万個の有核細胞を保持し;従って、スライドあたりに蒔かれた細胞の数は患者のWBC数に依存した。
【0081】
この研究に関する癌患者におけるCTCの検出に関して、4枚のスライドを1つの試験として用いた。それぞれの患者に関して作製された残りのスライドは、将来の実験のために−80℃で保管した。それぞれの患者からの4枚のスライドを解凍し、次いで細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、冷メタノールで透過処理し、非特異的結合部位をヤギ血清でブロッキングした。続いてスライドをモノクローナル抗汎サイトケラチン抗体(Sigma)およびCD45−Alexa蛍光色素(Serotec)と共に37℃で40分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、スライドをヤギ抗マウス抗体−Alexa蛍光色素(Invitrogen)と共に37℃で20分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、次いでスライドを抗5T4抗体−Alexa蛍光色素と共に37℃で20分間インキュベートした。細胞をDAPIで10分間対比染色し、水性マウント媒体を用いてマウントした。
【0082】
画像化および技術的分析
それぞれの患者からの4枚のスライド全てを、速い信頼できる走査のために開発および最適化されたカスタムメイドの蛍光走査顕微鏡を用いて走査した。それぞれのスライドを4色において10倍の倍率で全体を走査し、6900枚を超える画像を生成した。結果として得られた画像を、サイトケラチン強度、CD45強度、5T4強度ならびに核および細胞質の形状および大きさが含まれる数多くの尺度に基づいて可能性の高い候補CTCを同定する分析アルゴリズムに供給した。次いで技術分析者がアルゴリズムが生成した可能性の高い候補を調べ、色素の凝集体のような明らかに細胞ではないヒットを除去した。
【0083】
専門的分析および解釈
全ての可能性の高い候補CTCをウェブに基づく報告を通した分析および解釈のために血液病理学者に提供し、ここで血液病理学者はそれぞれの候補細胞をCTCとして含め、または除外する。細胞は、それらがサイトケラチン陽性、5T4陽性、CD45陰性であり、同定可能なアポトーシス性変化(泡状突起形成(blebbing)、変性した外観)または崩壊した外観のない無傷のDAPI核を含有し、かつ形態的に周囲のWBCと異なっている場合、CTCとして分類された。細胞は、明確に円周状であり(circumferential)、その中に核全体が収容されている細胞質を有しなければならない。細胞質は、アポトーシス性変化、例えば泡状突起形成および不規則な密度または周囲の細胞質境界における軽度の崩壊を示してよいが、その核との関係が問題となるほど崩壊していてはならない。その画像は、個々の蛍光チャンネルを見る機能ならびに合成画像を有するデジタル画像として提供された。それぞれの細胞の画像に、相対的な核の大きさ、蛍光強度、および比較蛍光強度に関する補助的な統計データを用いて注釈を付けた。それぞれのCTC候補は、問題の細胞対バックグラウンドのWBCの細胞形態学的特徴の間の状況から見た(contextual)比較を可能にするため、十分な周囲のWBCと共に視野中に提供された。
【0084】
ライト・ギムザ染色。カバーガラスを蛍光染色したスライドから取り外し、PBS中ですすいだ。次いでそのスライドをライト・ギムザ染色剤(Fisher Scientific,ミシガン州カラマズー)を用いて3分間浸した。1.5mLのリン酸緩衝液pH6.8(Fisher Scientific,ミシガン州カラマズー)をその染色剤で覆われたスライドに添加し、その染色剤および緩衝液を1分間穏やかに揺り動かすことにより一緒に混合した。次いでその混合物をそのスライド上にさらに2分間静置しておいた後、そのスライドを脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させた。
【0085】
本発明の最適化された5T4 4色アッセイのCTCの同定および特性付けのプロセスにおいて利用される工程は、以下の工程である:(1)そのスライドを調製し;(2)そのスライドを保管し;(3)そのスライドを解凍および染色し;(4)そのスライドを走査し;(5)アルゴリズムを実行し;そして、(6)技術分析および報告を行う。
【0086】
そのCTCアッセイは、特に臨床環境を考慮して、ならびに早期の技術革新および将来の自動化に関する必要性により開発された。全ての実験室のプロセスは、最適化され、試験され、検証されてきた厳密な標準的操作手順に従う。データの収集および候補の同定は、病理学者の意思決定およびそれに続くこれらの決定の追跡の両方を可能にする特定のインターフェイスを用いて自動化されてきた。
【0087】
このシステムは、CTCの形態学的分類、分子的特性付けへの新しい研究、ならびにがん患者のポイントオブケアスクリーニング、監視および管理に関する適用を可能にする見込みがある。
【国際調査報告】