特表2015-507645(P2015-507645A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-507645(P2015-507645A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】フォトスイッチ可能材料の組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 9/02 20060101AFI20150213BHJP
   G03C 1/725 20060101ALI20150213BHJP
   G11B 7/244 20060101ALI20150213BHJP
【FI】
   C09K9/02 B
   G03C1/725 503
   G11B7/24 516
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-545336(P2014-545336)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月11日
(86)【国際出願番号】FR2012052814
(87)【国際公開番号】WO2013083920
(87)【国際公開日】20130613
(31)【優先権主張番号】1161222
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ コルマリー
(72)【発明者】
【氏名】イザベル マルファン
【テーマコード(参考)】
2H123
5D029
【Fターム(参考)】
2H123AA32
2H123BA12
2H123BA13
2H123BC18
2H123EA08
2H123FA25
2H123FA27
5D029JA04
(57)【要約】
結晶状態およびナノ粒子の形態で、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体がマトリックスのナノ孔に挿入されるように、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体から出発して、ゾルゲル法によってシリカマトリックスまたは、特に澱粉もしくは寒天の、生分解性マトリックスを有する、フォトクロミック複合材料の生成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体およびニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体から出発して、以下の一連のステップ:加水分解、容器内に配置すること、縮合、熟成および最終の乾燥を含むエージングが行われ、生成されるキセロゲルの中に、該容器の形によって、該ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、マトリックスのナノ孔に挿入されるように、pH、温度および時間が選択される、フォクロミック複合材料を生成するためのゾルゲル法であって、
組み合わせで、
・シリカマトリックスがマトリックスとして選択されること、および
・以下の式:
[Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y2、または[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Y
(式中、
pyはピリジンを意味し、そしてRuはルテニウムを意味し、
Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
Yは、Cl、Br、BF、PFを含む群から選択され、
R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択され、
シリカマトリックスおよび式[Ru(NO)X(py)]Yまたは[RuCl(NO)(py)](PF・1/2HOのニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体の組み合わせを除外する。)の錯体が、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体として選択されること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
該前駆体が、テトラメトキシオルトシラン−TMOS−、ビニルトリエトキシシラン−VTES−、テトラエトキシオルトシラン−TEOS−、またはアルコキシドM(OR)x(式中、Mは金属であり、そしてRはアルキル基である。)を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該アルコキシドの完全な加水分解が行われ、全てのOR基がOH基で置換されることを特徴とする、請求項1および請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
該アルコキシドがメタノールと混合され、そして混合物が攪拌されることを特徴とする、請求項2および請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該加水分解ステップの開始後に、選択されたフォトクロミック錯体、特に水中の、または水中が可能でない場合、アセトニトリル中のそれ自体の溶液が該前駆体に加えられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
酸性pH(<7)が熟成およびエージングのステップのために選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該熟成ステップが、アセトニトリルの存在下閉じられた雰囲気中約55℃の温度で約1週間、または水の存在下室温で約72時間続くことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該エージングステップが、約55℃の温度で約1週間続くことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マトリックスおよびニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体から出発して、以下のステップ:該生分解性マトリックスの溶解、該フォトクロミック錯体の分散、容器内に配置すること、乾燥すること、が行われ、生成されるマトリックス中において、該容器の形によって、該ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、マトリックスのナノ孔に挿入されるように、温度および時間が選択され、
そして組み合わせで:
特に澱粉のまたは寒天の、生分解性マトリックスがマトリックスとして選択され、そして
以下の式:[Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Yまたは[Ru(NO)X(py)]Y
(式中、
pyはピリジンを意味し、Ruはルテニウムを意味し、
Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
Yは、Cl、Br、BFを含む群から選択され、
R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択される。)の錯体が、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体として選択される、
フォトクロミック複合材料を生成させるための方法。
【請求項10】
操作ステップが周囲環境に近い温和な温度および圧力下で行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
モノリスまたはプレートを生成したいかどうかによって、管または平底皿の形態の容器が使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
生成されるキセロゲルまたは生分解性の複合物が、該容器の形によって決定される形を有し、そして結晶状態およびナノ粒子の形態で、少なくとも実質的に均質に分配されたシリカマトリックスまたは特に澱粉または寒天の該生分解性マトリックスの該ナノ孔に挿入された、該ニトロシル配位子を有する選択されたフォトクロミックルテニウム錯体を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載された方法により生成されたフォトクロミック複合材料。
【請求項13】
モノリスの形態または所望の厚さのプレートの形態であることを特徴とする、請求項12に記載のフォトクロミック複合材料。
【請求項14】
2〜15nmの間の該マトリックスのナノ孔の平均サイズを特徴とする、請求項12および請求項13のいずれか一項に記載のフォトクロミック複合材料。
【請求項15】
その大多数の粒子が2〜4nmの間である、フォトクロミック錯体のナノ結晶を特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のフォトクロミック複合材料。
【請求項16】
その平均サイズが約50nmである該生分解性マトリックス中のナノ結晶を特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のフォトクロミック複合材料。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか一項に記載の少なくとも1種のフォトクロミック複合材料を含む高品質、とりわけ高容量の、光学式記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロシル配位子を有するルテニウムのフォトクロミック錯体とマトリックスとの新規な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術背景は、感光性マイクロ粒子の製造の方法およびそれらを含む水性組成物を記載する文献国際公開第2006/019435号パンフレット、フォトクロミック化合物の合成に関する文献米国特許第5821287号明細書、およびフォトクロミック化合物に関する文献欧州特許出願公開第0592366A号明細書によって具体的に説明される。
【0003】
従来技術に最も近いとみられる最近の文献国際公開第2010/081977号パンフレットは、フォクロミック複合材料を生成するためのゾルゲル法、そのように生成されたフォトクロミック複合材料、および少なくとも1種のそうしたフォトクロミック複合材料を含む高品質、とりわけ高容量の光学式記憶媒体に関する。
【0004】
文献国際公開第2010/081977号パンフレットに記載されている前駆体およびフォトクロミック錯体から出発するゾルゲル法は、以下のように行われる:
−アルコキシシランが前駆体として選択され、そしてニトロシル配位子を有するルテニウム錯体がフォトクロミック錯体として選択され、そして
−以下の一連のステップ:加水分解、選択された形状の容器中への配置、縮合(または重合もしくはゲル化)、熟成およびエージング(この最後に挙げたステップは最終の乾燥を含む)が行われ、熟成およびエージングのステップのような様式で、生成されるキセロゲルにおいて、その形が容器の形によって決定され、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、少なくとも実質的に均質に分配されたシリカマトリックスのナノ孔中に挿入されるように、pH、温度および時間が選択される。
【0005】
文献国際公開第2010/081977号パンフレットによると、フォトクロミック錯体は、[RuCl(NO)(py)][PF2.1/2HOおよび[RuY(NO)(py)]X(式中、YはCl、BrまたはOHであり、そしてXはBr、Cl、PF、BFを含む群から選択される。)を含む群から選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
文献国際公開第2010/081977号パンフレットから出発して、本発明が基づく問題は、他の組成物を想定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、および第1の形態および第1の態様により、本発明は、前駆体およびニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体から出発して、以下の一連のステップ:加水分解、容器中への配置、縮合、熟成および最終の乾燥を含むエージングが行われ、ここで生成されるキセロゲル中で、容器の形によって、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、マトリックスのナノ孔中に挿入されるように、pH、温度および時間が選択される、フォクロミック複合材料を生成するためのゾルゲル法に関する。
【0008】
本発明により、以下のものを組み合わせる:
・シリカマトリックスがマトリックスとして選択されること、および
・以下の式:
[Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y、または[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Y
(式中、
−pyはピリジンを意味し、そしてRuはルテニウムを意味し、
−Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
−Yは、Cl、Br、BF、PFを含む群から選択され、
−R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択され、
式[Ru(NO)X(py)]Yまたは[RuCl(NO)(py)](PF.1/2HOのシリカマトリックスおよびニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体の組み合わせを除く。)の錯体がニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体として選択されること。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例えば、エクアトリアル(equatorial)配位子は、ビニルピリジン、ピリジンカルボキシアルデヒド、ピコリン、フェニルピリジンのタイプである(この列挙は具体的に説明するものであって、なんら限定するものではない。)。
【0010】
1つの態様により、前駆体は、テトラメトキシオルトシラン−TMOS−、ビニルトリエトキシシラン−VTES−、テトラエトキシオルトシラン−TEOS−、またはアルコキシドM(OR)x(式中、Mは金属であり、そしてRはアルキル基である。)を含む群から選択される。
【0011】
1つの態様により、アルコキシドの完全な加水分解が行われ、全てのOR基がOH基により置換される。
【0012】
1つの態様により、アルコキシドはメタノールと混合され、そして混合物は攪拌される。
【0013】
1つの態様により、加水分解ステップが開始した後で、選択されたフォトクロミック錯体、それ自体の溶液(特に水中または、もし水が可能でない場合、アセトニトリル中)は、前駆体に加えられる。
【0014】
1つの態様により、酸性pH(<7)は、熟成およびエージングのステップのために選択される。
【0015】
態様により、アセトニトリルの存在下で、熟成ステップの期間は、閉じられた雰囲気中約55℃の温度で約1週間であり、または水の存在下で室温下約72時間である。
【0016】
1つの態様により、エージングステップの期間は、約55℃の温度で約1週間である。
【0017】
同じ第1の形態であるが第2の態様により、本発明はフォトクロミック複合材料を生成するための方法に関し、これは、生分解性マトリックスおよびニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体から出発して、以下のステップ:生分解性マトリックスの溶解、フォトクロミック錯体の分散、容器内への配置、乾燥で行われ、(ここで生成されるマトリックス中において、容器の形によって、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、マトリックスのナノ孔中に挿入されるように、温度および時間が選択される)、そしてこれは、組み合わせで:
・(特に澱粉のまたは寒天の)生分解性マトリックスが、マトリックスとして選択されること、および
・以下の式:[Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Yまたは[Ru(NO)X(py)]Y
(式中、
−pyはピリジンを意味し、そしてRuはルテニウムを意味し、
−Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
−Yは、Cl、Br、BFを含む群から選択され、
R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択される)の錯体がニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体として選択されることを有する。
【0018】
これらの両方の態様により、エクアトリアル配位子は、例えば、ビニルピリジン、ピリジンカルボキシアルデヒド、ピコリン、フェニルピリジンタイプ(この列挙は具体的に説明するものであって、なんら限定するものではない。)である。
【0019】
1つの態様により、操作ステップは、周囲環境に近い温和な温度および圧力で行われる。
【0020】
1つの態様により、モノリスまたはプレートを生成することを望むかどうかによって、管または平底皿の形態の容器が使用される。
【0021】
これら両方の態様により、この方法は周囲環境の温度および圧力において行われることができるので、低エネルギーコストを有する。この方法は、水を代わりに使用して有害な溶媒の使用を避けることを可能にするので、環境に最小の有害な効果を有する。
【0022】
これら両方の態様により、最終的にこの方法は再現可能であり、工業的スケールで適用可能である。
【0023】
第2の形態により、本発明は、フォトクロミック複合材料を生成するための方法の2つの形態の1つまたは他の1つにより得られるフォトクロミック複合材料に関する。
【0024】
このフォトクロミック複合材料は、考えられる方法の態様によって、キセロゲルまたは生成される生分解性の複合物が容器の形によって決定される形を有し、そして結晶状態およびナノ粒子の形態で、少なくとも実質的に均質に分配されたシリカマトリックスのまたは(特に澱粉のまたは寒天の)生分解性マトリックスのナノ孔に挿入されたニトロシル配位子を有する選択されたフォトクロミックルテニウム錯体を含む、ようになっている。
【0025】
他の特徴により:
−材料は、モノリスの形態、または所望の厚さのプレートの形態であり;
−シリカマトリックスのナノ孔の平均サイズは2〜15nmであり;
−フォトクロミック錯体のナノ結晶の最も多数の粒子は2〜4nmであり;
−生分解性マトリックス中でナノ結晶の平均サイズは約50nmである。
【0026】
これらのフォトクロミック複合材料は、同時に、制御可能な形およびサイズであり、強く、(大きい貯蔵能力が所望の場合)充分に厚く、かつ透明である。
【0027】
最終的に、方法のために想定される2つの態様によってこの材料を生成することは、ルテニウム錯体の単結晶への既存のスイッチング特性、すなわち、約100%の一定の変換に、負の効果を有さない。
【0028】
第3の形態により、本発明は、ちょうど記載されたような少なくとも1種のフォトクロミック複合材料を含む高容量光学式記憶媒体に関する。
【0029】
そうした媒体は、現在までに提案されたものより遙かに優れた、光学式記憶、とりわけ容量の品質を有する。
【0030】
この光学式記憶媒体の他の特徴によれば:
その光誘起される個体数(photoinduced population)は、フォトクロミック錯体の単結晶の数に近く;
その操作温度は室温に近く;
それは照射後に、完全で、可逆的な色の変化を示し;
その準安定状態は9年超の寿命を有する。
【0031】
本発明は、幾つかの態様の以下の記載を読むことで良好に理解されるであろう。
【0032】
先に記載したように、本発明は3つの形態:
−2つの態様、ゾルゲル法によるものおよび生分解性マトリックスを有するもう一つのものにより想定できるフォトクロミック複合材料を生成する方法
−この方法により得られることを特徴とするこの種のフォトクロミック複合材料、および
少なくとも1種のそうしたフォトクロミック複合材料を含む高品質、とりわけ高容量の、光学式記憶媒体
を有する。
【0033】
想定される方法の第1の態様の場合、すなわち、ゾルゲル法およびシリカマトリックスで、本発明をさらに特に記載する。
【0034】
ゾルゲル法、材料およびこのように生成される光学式記憶媒体は、既に引用し、明確に言及した文献国際公開第2010/081977号パンフレット中に記載されたものから誘導される。さらに、名称「ゾルゲル」によって知られた方法(または反応)の原理は、この文献および文献D.Levy、”Photochromic Sol−Gel materials”、Chem.Mat.、9、1997、2666−2670から当業者によって容易に入手できる。
【0035】
ゾルゲル法は、以下の一連のステップ:
加水分解、
縮合、またはそうでないと指定しなければ、重合またはゲル化、
乾燥、
を含む。
【0036】
本発明によるゾルゲル法において、シリカマトリックスがマトリックスとして選択される(その選択の適性が、文献国際公開第2010/081977号パンフレットにおいて示された)。
【0037】
組み合わせで、以下の式:
・[Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Yまたは[Ru(NO)X(py)]Y
(式中、
−pyはピリジンを意味し、そしてRuはルテニウムを意味し、
−Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
−Yは、Cl、Br、BF、PFを含む群から選択され、
−R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択される)、または、
・式[RuCl(NO)(py)](PF・1/2HO、
を有する錯体が、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体として選択される。
【0038】
アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはn−ブチル等の1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルを含む。
【0039】
アルコール基は、例えば、−OHまたは1つまたは2つ以上の−OH基で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を含む。
【0040】
アルデヒド基は、例えば−COHまたは1つまたは2つ以上の−COH基で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を含む。
【0041】
エステル基は、例えば−COR(式中、Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。)を含む。
【0042】
エーテル基は、例えば−OR(式中、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキルである)を含む。
【0043】
アミン基は、例えば、−NH、−NHRまたは−NR(式中、RおよびRは独立して、1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。)を含む。
【0044】
アミド基は、例えば、−CONH、−CONHRまたは−CONR(式中、RおよびRは独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキルである。)を含む。
【0045】
ハロゲン基は、例えば、塩素、臭素、ヨードもしくはフッ素、または塩素、臭素、ヨードもしくはフッ素等の1種または2種以上のハロゲン原子で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を含む。
【0046】
ピリジンpy、一置換ピリジンpy−R、二置換ピリジンpy−RR’および三置換ピリジンpy−RR’R’’は以下の図の構造によって具体的に説明される:
【0047】
【化1】
【0048】
しかし、当然のことながら、シリカマトリックスと、式[Ru(NO)X(py)]Yまたは[RuCl(NO)(py)](PF・1/2HO(XおよびYは上記で規定されたようであるの)のニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体との組み合わせは、それ自体知られており、本発明の範囲から除かれる。
【0049】
本発明によるゾルゲル法の一態様では、テトラメトキシオルトシラン−TMOS−等のアルコキシシランは前駆体として用いられる。他の可能な態様において、ビニルトリエトキシシラン−VTES−が用いられ、またさらにテトラエトキシオルトシラン−TEOS−、さらに一般的にアルコキシドM(OR)x(式中、Mはアルミニウムまたはチタン等の金属であり、xは4までであることができる整数であり、そしてRは官能当量の(1〜4個の炭素原子を有する)アルキル基である。
【0050】
ゾルゲル法は、選択された前駆体、フォトクロミック錯体およびマトリックスから出発して、加水分解、選択された形状の容器内への配置、縮合(または重合もしくはゲル化)、熟成およびエージング(この最後に挙げたステップは最終の乾燥を含む)の一連のステップにより行われる。
【0051】
熟成およびエージングのステップのために、生成されるキセロゲル(その形が容器の形によって決定される)において、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、少なくとも実質的に均質に分配されたシリカマトリックスのナノ孔内に挿入されるように、pH、温度および時間が選択される。
【0052】
操作ステップは、周囲環境に近い温和な温度および圧力で行われる。
【0053】
アルコキシドの加水分解のステップにおいて、水の比、pHおよび温度がこの目的のために選択される場合、アルコキシドの加水分解は完了できる。全てのOR基は、次にOH基により置換される。
【0054】
このステップを行うために、アルコキシドはメタノールと混合され、そしてこの混合物は、必要な時間の間、例えば約5分間攪拌される。加水分解は、蒸留水を加えることによって開始される。
【0055】
ある時間、例えば約2分後に、選択されたフォトクロミック錯体、それ自体の溶液は、前駆体に加えられる。
【0056】
攪拌が必要な時間の間、例えば約10分間続けられる。
【0057】
一態様では、この比は、1mlのテトラメトキシオルトシラン(TMOS)および1.2mlのメタノールおよびその量の2倍量、すなわち、2.4mlの蒸留水である。
【0058】
選択されたフォトクロミック錯体は、水中、または例えば[RuCl(NO)(py)](PF・1/2HOの場合、この錯体は水溶性でないので、アセトニトリルの溶液中で使用される。
【0059】
次に、加水分解ステップ後に、溶液中の、選択された前駆体および選択されたフォトクロミック錯体は、(これは生成されるであろうキセロゲルの形、モノリスまたはプレートを決定する)選択された形状の容器中に配置される。
【0060】
例えば、モノリスを形成する溶血(hemolysis)管等の容器および所望の厚さのプレートを形成する平底皿等の容器を使用することができる。
【0061】
縮合(または重合もしくはゲル化)のステップは、水またはアルコールの除去でブリッジング(bridging)酸素の形成となる。このステップの終わりに、ブリッジング酸素原子は三次元のシリカネットワークが形成することを可能にし、これは以下の反応収支により得ることができる:
【化2】
【0062】
縮合ステップはゲルの形成となる。
【0063】
熟成、そして次にエージングのステップにおいて、ゲルは安定化され:すでに始まった重合が継続し、一方ゲル内に位置する溶媒が追い出される。
【0064】
熟成およびエージングのステップでは、最終的に生成されるキセロゲル中において、その形が容器によって決定され、フォトクロミック錯体が、結晶状態およびナノ粒子の形態で、少なくとも実質的に均質に分配されたシリカマトリックスのナノ孔中に挿入されるように、pH、温度および時間が選択される。
【0065】
したがって、一態様では、選択されるpHは、約5〜約5.6である。
【0066】
アセトニトリルを用いたある態様では、熟成ステップは、閉じられた雰囲気中約55℃の温度で約1週間続くことができる。水溶液を用いるある態様では、熟成ステップは、室温で約72時間続くことができる。
【0067】
一態様では、エージングステップは、約55℃の温度で約1週間続くことができる。
【0068】
エージングステップの終わりには乾燥でき、それにより残りの溶媒が除去される。
【0069】
遅い蒸発によって乾燥は、マトリックスのネットワークの収縮を生じ、これはゲルの体積を減少させる(例えば1/5の体積の損失)場合があり、そしてモノリスまたはプレートの形態で、キセロゲルの形成となる。しかし、もし乾燥が溶媒の臨界点を超えて厳しい条件において生じる場合、湿ったゲルの収縮はほとんどなく、そして所望のキセロゲルではなくエーロゲルを得る。
【0070】
もし熟成およびエージングのステップが速すぎる場合、望ましくないクラックまたは割れ目が、生成される材料中に形成される場合がある。
【0071】
水/メタノール混合物(アセトニトリルなしで)が使用される場合、フォトクロミック錯体の濃度が高ければ高い程、ゲルの色はより濃くなる。逆に、水/メタノール/アセトニトリル混合物を使用する場合、フォトクロミック錯体の濃度が30mmolL−1を超える場合、マトリックスは錯体、および結晶で飽和され、そして粉末はキセロゲル中およびキセロゲルの周囲に形成される。
【0072】
本発明によりおよび上記で具体的に説明したように、熟成およびエージングのステップのために、生成されるキセロゲル中で、その形が容器によって決定され、フォトクロミック錯体が結晶状態およびナノ粒子の形態であり、そして(それ自身が少なくとも実質的に均質に分配された)マトリックスのナノ孔中に挿入されるように、pH、温度および時間が選択される。
【0073】
上記に方法について記載してきたように、均質の、透明な、容易に成形され、そして通常条件の温度および圧力で安定なであるフォトクロミック複合材料が得られる。したがって、キセロゲルは、4カ月および7カ月までも後でもなんら劣化を示さないことを見出した。これらの材料は、レーザー放射への優れた耐性、ガラスと類似の機械的強度類似、および良好な溶媒に対する耐性を示す。
【0074】
既に指摘したように、フォトクロミック複合材料は、1〜2cmの長さのモノリスの形態または1〜3cmおよび所望の厚さのプレートの形態で形成できる。
【0075】
酸性または塩基性触媒作用のない生成されるマトリックスのナノ孔の平均サイズは、2〜15nmである。これらは均質に分配されている。
【0076】
フォトクロミック錯体は、ナノ結晶の形態である。2〜4nmの粒子が大多数である。
【0077】
含まれるサイズおよび分子間距離を考慮すると、マトリックスの最も小さいナノ孔は、その対イオンを有する1分子または2分子ルテニウムを含むと主張される。
【0078】
試験で得られた複合材料について分析を行った所、粒子がマトリックス中で充分希薄化されており、そしてナノ孔中に位置するナノメータサイズの物体は、実際フォトクロミック錯体からなることが示された。
【0079】
本発明により得られた複合材料のフォトクロミズムを示すことができる。
【実施例】
【0080】
この材料のサンプルを低温保持装置内に入れ、そして次に約100Kの温度で2時間照射した。このサンプルをできるだけ速く取り出した。サンプルの色変化があり、これは橙色−基底状態の色から、緑色−放射線を受けた状態の色に変化した。
【0081】
サンプルを低温保持装置から取り出した際、温度上昇は非常に急速であり、そして緩和がちょうど1分後から始まった。数分後に、サンプルはその橙色に戻った。
【0082】
したがって、生成されたフォトクロミック複合材料は、照射後のそれらの色の完全な、可逆的変化の特徴を有した。約36%の光誘起された個体数の見積もりは、単結晶で観察されたものに近いことを示した。これらのフォトクロミック複合材料は、室温に近い温度において使用できる。準安定状態では、それらの寿命は9年を超える。
【0083】
したがって、これらのフォトクロミック複合材料は、とりわけ容量に関して、高品質の光記録媒体を構成するのに、完全に良好に適している。
【0084】
本発明は、想定される、すなわち、生分解性マトリックスを用いる、方法の第2態様の場合について、さらに特に記載される。
【0085】
この第2の態様による方法を用いて、(特に澱粉(glucan)または寒天(galactan)等のポリサッカロイドの)生分解性マトリックスを使用し、したがって選択した。
【0086】
上記のように、シリカの選択の適性が文献国際公開第2010/081977号パンフレットに示されている場合、(特に澱粉または寒天等のポリサッカロイドの)生分解性マトリックスの使用が、必要なフォトクロミック特性を高めることが見出された。したがって、澱粉または寒天等の生分解性マトリックス中におけるフォトクロミック錯体の変換の度合いは、シリカマトリックスに対して増加している。さらに、生分解性マトリックスは、光学特性、コストおよび環境に関する観点から否定できない利点を与える。
【0087】
この第2の態様により、以下の式:[Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Yまたは[Ru(NO)X(py)]Y
(式中、
−pyはピリジンを意味し、そしてRuはルテニウムを意味し、
−Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
−Yは、Cl、Br、BFを含む群から選択され、
−R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択される。)の錯体をまた、ニトロシル配位子を有するフォトクロミックルテニウム錯体として選択する。
【0088】
上記のように、エクアトリアル配位子は、ビニルピリジン、ピリジンカルボキシアルデヒド、ピコリン、フェニルピリジンタイプ(この列挙は具体的に説明するものであって、なんら限定するものではない。)である。
【0089】
【化3】
【0090】
上記のように、操作ステップは温和な温度および圧力において行うことができ、第1の態様に関連して既に挙げた利点がまた第2の態様に適用される。
【0091】
澱粉の生分解性マトリックスの場合、以下に開示した手順を後に続けることができる。
【0092】
400mg〜600mgのコーンスターチを10mlの蒸留水に徐々に加えた。次にフィルムをさらに弾性にすることを目的とする態様の変形により、0.2mlのグリセロールを加えた。この変形態様は任意選択的である。
【0093】
「透明で」均質の白色溶液が得られるまで、カバーをしたビーカー中で得られた混合物を約100℃の温度まで加熱した。
【0094】
次に加熱を止めた。混合物が一旦約70〜60℃の温度まで冷却されると、以下の式: [Ru(NO)X(py−R)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’)]Y、[Ru(NO)X(py−RR’R’’)]Yまたは[Ru(NO)X(py)]Y
(式中、
−pyはピリジンを意味し、そしてRuはルテニウムを意味し、
−Xは、Cl、Br、OHを含む群から選択され、
−Yは、Cl、Br、BFを含む群から選択され、
− R、R’、R’’は、水素、アルキル基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミン基、アミド基およびハロゲン化した基を含む群から選択される。)のルテニウム錯体をエタノールまたは水に加えた。
【0095】
混合物を次に選択された形状の容器内に配置した。
【0096】
乾燥を室温で約10日間行った。
【国際調査報告】