特表2015-507648(P2015-507648A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-507648複合構造用表面フィルムおよびその作成方法
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  • 特表2015507648-複合構造用表面フィルムおよびその作成方法 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-507648(P2015-507648A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】複合構造用表面フィルムおよびその作成方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20150213BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20150213BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20150213BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150213BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150213BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20150213BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20150213BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20150213BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20150213BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20150213BHJP
【FI】
   C08J5/18CFC
   B32B5/24
   B32B27/38
   C08L63/00 Z
   C08K3/00
   C08K5/17
   C08L81/06
   C08L21/00
   C08J5/24
   C08G59/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-546043(P2014-546043)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(85)【翻訳文提出日】2014年2月19日
(86)【国際出願番号】US2012068058
(87)【国際公開番号】WO2013086063
(87)【国際公開日】20130613
(31)【優先権主張番号】61/569,129
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】594060532
【氏名又は名称】サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サング,ジヤンジー・ジエフリー
(72)【発明者】
【氏名】コーリ,ダリプ・クマル
【テーマコード(参考)】
4F071
4F072
4F100
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
表面フィルムは、エポキシノボラック樹脂、3官能性または4官能性エポキシ樹脂、セラミック微小球、アミン系硬化剤、微粒子無機フィラー;および強化成分を含有する硬化性樹脂組成物から形成される。表面フィルムは、架橋後に高Tおよび高架橋密度を示し、同様に塗料除去剤溶液に対する高い耐性も示す。表面フィルムは繊維−強化樹脂複合材料との同時硬化に好適である。表面フィルムは、場合によって導電性添加剤を含み、落雷保護(LSP)または電磁干渉(EMI)シールドに十分な伝導性を提供することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料除去剤に対して高い耐性を有する表面フィルムであって、前記表面フィルムは≧180℃のガラス転移温度(T)およびASTM D−3363によると7Hまたはそれ以上の鉛筆硬度を有し、
ベンジルアルコール系塗料除去溶液と7日間、20℃〜25℃の範囲内の温度で接触させた後、前記表面フィルムは0.5%未満の流体吸収を示し、鉛筆硬度は2H鉛筆等級を超えて減少せず、そして
前記表面フィルムは:
1より多いエポキシ官能基を有するエポキシノボラック樹脂;
3官能性または4官能性エポキシ樹脂;
セラミック微小球;
潜在性アミン系硬化剤;
微粒子無機フィラー;ならびに
(a)エポキシ樹脂、ビスフェノール、およびエラストマーの反応によって形成される予備反応付加物;(b)ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)のコポリマー;(c)コア−シェルゴム(CSR)粒子;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの強化剤
を含む硬化性樹脂組成物から形成される、表面フィルム。
【請求項2】
−55℃〜71℃で2000×熱サイクル試験に付した後に、0.3亀裂/インチ未満のミクロ亀裂密度を示す、請求項1記載の表面フィルム。
【請求項3】
エポキシノボラック樹脂が以下の構造:
【化1】
(式中、R=H、n=0〜5)を有し、4官能性エポキシ樹脂がテトラグリシジル4,4’−ジアミノジフェニルメタンであり、3官能性エポキシがアミノフェノールのトリグリシジルエーテルである、請求項1または2記載の表面フィルム。
【請求項4】
少なくとも1つの強化剤が、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールA、およびATBNまたはCTBNエラストマーのジグリシジルエーテルの反応によって形成される予備反応付加物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面フィルム。
【請求項5】
少なくとも1つの強化剤が予備反応付加物およびPES−PEESコポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面フィルム。
【請求項6】
セラミック微小球がシリカ−アルミナセラミック材料から作られた、1〜50ミクロンの範囲内の粒子サイズを有する中空微小球である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面フィルム。
【請求項7】
エポキシ樹脂およびセラミック微小球が表面フィルム組成物の総重量の60重量%超を構成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面フィルム。
【請求項8】
100mΩ未満の表面抵抗率を有する伝導性表面フィルムを提供するために十分な量で微粒子形態の伝導性材料をさらに含み、前記表面フィルムが落雷保護(LSP)または電磁干渉(EMI)シールドを提供することができる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面フィルムは、ポリエステルマット、ガラスマットまたは伝導性担体から選択される不織担体によって担持されている。
【請求項10】
硬化性樹脂組成物が硬化促進剤としてビス尿素をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面フィルム。
【請求項11】
その上に形成された表面フィルムを有する複合基体を含む複合構造であって、複合構造がマトリックス樹脂および強化繊維を含み、表面フィルムが、≧180℃のガラス転移温度(T)およびASTM D−3363によると7H以上の鉛筆硬度を有し、
ベンジルアルコール系塗料除去溶液と7日間、20〜25℃の範囲内の温度で接触した後、前記表面フィルムが0.50%未満の流体吸収を示し、鉛筆硬度が2H鉛筆等級を超えて減少せず、そして
表面フィルムが:
1より多いエポキシ官能基を有するエポキシのボラック樹脂;
3官能性または4官能性エポキシ樹脂;
セラミック微小球;
アミン系硬化剤;
微粒子無機フィラー;および
(a)エポキシ樹脂、ビスフェノール、およびエラストマーの反応によって形成される予備反応付加物;(b)ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)のコポリマー;(c)コア−シェルゴム(CSR)粒子;ならびにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの強化剤
を含む硬化性樹脂組成物から形成される、複合構造。
【請求項12】
前記複合基体がプリプレグレイアップを含み、プリプレグレイアップが互いに積み重ねられた複数のプリプレグ層から構成され、各層がマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を含み、そして表面フィルムがプリプレグレイアップの外表面上に形成される、請求項11記載の複合構造。
【請求項13】
表面フィルム上に施用された塗料コーティングをさらに含み、表面フィルムの塗料コーティングに対する付着性は、塗装表面が、(a)ASTM D3359にしたがって乾燥条件下で塗膜密着性試験に付された後、または(b)75°Fで7日間脱イオン水中に浸漬し、次いでASTM D3359にしたがって塗膜密着性試験に付した後、実質的に0%の塗料損失を示すようなものである、請求項11または12記載の複合構造。
【請求項14】
塗装表面が、以下の手順:非塗装表面フィルムを1000KJ/mのUVA放射線暴露に付し、続いて乾燥条件下でASTM D3359にしたがった塗膜密着性試験に塗装表面を付すことによって測定すると実質的に0%の塗料損失を示すような表面フィルムの塗料コーティングに対する付着性である、請求項11または12記載の複合構造。
【請求項15】
塗装表面が、以下の手順:非塗装表面フィルムを1000KJ/mのUVA放射線暴露に付し、続いて塗装表面を脱イオン水中に75°F(23.9℃)にて7日間浸漬し、次いでASTM D3359にしたがって塗膜密着性試験に付すことによって測定すると、実質的に0%の塗料損失を示すような表面フィルムの塗料コーティングに対する付着性である、請求項13記載の複合構造。
【請求項16】
複合構造を作成する方法であって:
(a)積み重ね配列で配置された複数のプリプレグ層であって、各プリプレグ層が未硬化または部分的に硬化した樹脂マトリックス樹脂および強化繊維を含むプリプレグ層から構成される、成形可能なプリプレグレイアップを提供し;
(b)1より多いエポキシ官能基を有するエポキシノボラック樹脂;
3官能性または4官能性エポキシ樹脂;
セラミック微小球;
潜在性アミン系硬化剤;
微粒子無機フィラー;ならびに
(a)エポキシ樹脂、ビスフェノール、およびエラストマーの反応によって形成される予備反応付加物;(b)ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)のコポリマー;(c)コア−シェルゴム(CSR)粒子;およびそれらの組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つの強化剤
を含む硬化性樹脂組成物から表面フィルムを形成し;
(c)表面フィルムをプリプレグレイアップと接触させ;そして
(d)表面フィルムおよびプリプレグレイアップを250°F〜350°F(120℃〜175℃)の範囲内の温度で同時硬化させることを含み、
それによって、硬化した表面フィルムが、≧180℃のガラス転移温度(T)およびASTM D−3363により7H以上の鉛筆硬度を有し、
ベンジルアルコール系塗料除去溶液と7日間20℃〜25℃の範囲内の温度で接触させた後、硬化した表面フィルムが0.5%未満の流体吸収を示し、鉛筆硬度が2H鉛筆等級を超えて減少しない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して複合表面フィルムに関する。さらに詳細には、本開示は、繊維強化ポリマーマトリックス複合構造用の表面フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化ポリマーマトリックス複合体(PMC)は、浸食環境に対する耐性、高強度、および/または低重量を必要とする適用において通常用いられる高性能構造材料である。そのような適用の例としては、航空機構成成分(たとえば、テール、翼、胴体、およびプロペラ)、高性能自動車、ボートの船体、および自転車のフレームが挙げられる。
【0003】
航空宇宙産業で用いられる従来型複合構造は、典型的には、塗装前に複合構造に特徴的な必要とされる性能を提供するための表面フィルムを含む。これらの表面フィルムを使用して、労力、時間およびコストを軽減しつつ、構造部品の表面品質を改善する。表面フィルムを、通常、構造部品の製造の間にポリマーマトリックス複合材料と同時硬化させる。しかしながら、従来型表面フィルムは、塗料除去目的のためのベンジルアルコール系溶液などの市販の塗料除去溶液に対してあまり耐性がない。それらの塗料除去剤は表面フィルムの膨張および/または水泡形成を引き起こす可能性があり、塗り直し過程をさらに煩雑にする可能性がある。そのため、従来型塗料除去溶液を使用した度重なる塗料除去に耐えることができ、耐用年数にわたって複合構造の塗り直しや耐久性塗膜密着性を可能にし、そして紫外線(UV)放射への暴露に対しても耐えることができる表面フィルムが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は:1より多いエポキシ官能基性を有するエポキシノボラック樹脂;3官能性または4官能性エポキシ樹脂;セラミック微小球;潜在性アミン系硬化剤;流量制御剤としての微粒子無機フィラー;ならびに(a)エポキシ樹脂、ビスフェノール、およびエラストマーの反応によって形成される予備反応付加物;(b)ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)のコポリマー;(c)コア−シェルゴム(CSR)粒子;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの強化剤を含む硬化性組成物から形成される表面フィルムを提供する。硬化すると、結果として得られる熱硬化性表面フィルムは、≧180℃のガラス転移温度(T)、およびASTM D−3363にしたがって測定して7Hより大きい表面鉛筆硬度を有する。
【0005】
本開示はさらに、繊維強化樹脂系複合基体上で形成された表面フィルムを有する複合構造、および複合構造を作成する方法も提供する。表面フィルムは、250°F〜355°F(すなわち120℃〜180℃)の範囲内の温度で樹脂系複合基体と同時硬化する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の特性は、本開示の様々な実施形態を表す添付の図面とあわせて本開示の様々な態様の以下の詳細な説明からさらに容易に明らかになるであろう。
【0007】
図1図1は、本開示の実施形態による成形手段によって形成される表面フィルムを有する複合構造を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
航空宇宙用複合部品で使用するための典型的なエポキシ系表面フィルムは、多くの場合、従来型アルコール系塗料除去剤、たとえばベンジルアルコール系溶液、および紫外線(UV)放射にさらされた場合に影響を受ける。改善された表面フィルムは、これらの問題を克服するように設計された。改善された表面フィルム組成物は、高Tおよび高架橋密度を得るように配合された。高Tおよび高架橋密度の組み合わせは、表面フィルムをアルコール系塗料除去剤溶液、たとえばベンジルアルコール系溶液に対して高度に耐性にすることが判明した。これらの特性を達成するためには、表面フィルム組成物は、ある多官能性樹脂、樹脂マトリックスを強化するためのポリマー強化成分、潜在性アミン系硬化剤、流体バリア成分としてのセラミック微小球、およびレオロジー修飾成分としての微粒子無機フィラーの組み合わせに基づく。多官能性樹脂およびセラミック微小球は、全組成物の50重量%超、好ましくは60重量%超を構成する。表面フィルム組成物の成分の詳細な説明は次のとおりである。
【0009】
多官能性樹脂
表面フィルム組成物は少なくとも2つの多官能性エポキシ樹脂を含み、その一方は、1より多いエポキシ官能基を有するエポキシノボラック樹脂である。第2のエポキシ樹脂は、非ノボラック多官能性エポキシ樹脂、好ましくは4官能性または3官能性エポキシ樹脂(すなわち、1分子あたり3または4個のエポキシ官能基を有するエポキシ樹脂)である。
【0010】
好適なエポキシノボラック樹脂としては、以下の化学構造(構造I):
【化1】
(式中、n=0〜5、R=HまたはCH)を有するフェノール−ホルムアルデヒドノボラックまたはクレゾール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が挙げられる。R=Hの場合、樹脂はフェノールノボラック樹脂である。R=CH)の場合、樹脂はクレゾールノボラック樹脂である。前者はDEN428、DEN431、DEN438、DEN439、およびDEN485としてDow Chemical Coから市販されている。後者は、ECN1235、ECN1273、およびECN1299としてCiba−Geigy Corpから市販されている。使用することができる他の好適なノボラックとしては、Celanese Polymer Specialty Co.から得られるSU−8が挙げられる。好ましい実施形態において、エポキシノボラック樹脂は、25℃で4000〜10,000mPa・sの粘度を有し、190〜210g/eqのエポキシド当量(EEW)を有する。
【0011】
好適な4官能性エポキシ樹脂は、1分子あたり4個のエポキシ官能基および少なくとも1つのグリシジルアミン基を有する4官能性芳香族エポキシ樹脂である。一例として、4官能性芳香族エポキシ樹脂は、以下の一般的化学構造(構造II)、すなわちメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテル:
【化2】
を有し得る。構造II中のアミン基は芳香環構造のパラ位すなわち4,4’位で示されているが、2,1’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’などの他の異性体が可能な選択肢であることも理解されるべきである。好適な4官能性芳香族エポキシ樹脂としては、Huntsman Advanced Materialsによって提供されるAraldite(登録商標)MY9663、MY9634、MY9655、MY−721、MY−720、MY−725として市販されているテトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。3官能性エポキシ樹脂の例としては、たとえばHuntsman Advanced Materialsによって提供されるAraldite(登録商標)MY0510、MY0500、MY0600、MY0610などのアミノフェノールのトリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0012】
好ましい実施形態において、エポキシノボラック樹脂と多官能性エポキシ樹脂(3官能性および/または4官能性)との組み合わせは、表面フィルム組成物の総重量基準で少なくとも30重量%を構成する。ある実施形態において、エポキシノボラック樹脂と多官能性エポキシ樹脂との組み合わせは、表面フィルム組成物の総重量基準で約30%〜約60重量%を構成し、他の実施形態では約40%〜約50重量%を構成する。エポキシノボラック樹脂および多官能性エポキシ樹脂の相対量は異なる可能性があるが、エポキシノボラック樹脂の量が100部の多官能性エポキシ樹脂あたり80〜100部の範囲であるのが好ましい。特定の割合のエポキシノボラック樹脂および多官能性エポキシ樹脂の組み合わせは、所望の高Tおよび硬化による適合した架橋密度に寄与する。
【0013】
ポリマー強化成分
前述の多官能性樹脂の混合物に基づく樹脂マトリックスを強化するために、1以上のポリマー強化剤を表面フィルム組成物に添加する。ポリマー強化剤は、(i)エポキシ樹脂、ビスフェノール、エラストマーポリマーの反応によって形成される予備反応付加物;(ii)ポリエーテルスルホン(PES)とポリエーテルエーテルスルホン(PEES)とのコポリマー;および(iii)コア−シェルゴム粒子;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態において、この群からの2つの強化剤の組み合わせを使用する。強化剤(複数可)の量は、合計して、表面フィルム組成物の総重量基準で約10%〜約20重量%である。
【0014】
予備反応付加物に関して、好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの水素化ジグリシジルエーテルまたはビスフェノールFの水素化ジグリシジルエーテルが挙げられる。1分子あたり少なくとも1つの脂環式基および少なくとも2つのオキシラン環を含有する化合物を含む脂環式エポキシも好適である。具体例としては、以下の構造:
【化3】
によって表される脂環式アルコールのジエポキシド、水素化ビスフェノールA(CVC Thermoset Specialtiesによって提供されるEpalloy(商標)5000、5001)が挙げられる。そのような脂環式エポキシ樹脂の一例は、CVC
Thermoset Specialtiesから入手可能なEPALLOY(登録商標)5000(ビスフェノールAジグリシジルエーテルを水素化することによって調製される脂環式エポキシ)である。予備反応付加物での使用に好適な他の脂環式エポキシドとしては、Momentive Specialty Chemicalsによって提供されるEPONEX脂環式エポキシ樹脂、例えばEPONEX Resin 1510を挙げることができる;
【0015】
予備反応付加物中のビスフェノールは、直線状または脂環式エポキシの鎖延長剤として機能する。好適なビスフェノールとしては、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビスフェノールZ、およびテトラメチルビスフェノールA(TMBP−A)が挙げられる。
【0016】
予備反応付加物を形成するために好適なエラストマーとしては、たとえば、アミン末端ブタジエンアクリロニトリル(ATBN)、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、カルボキシル末端ブタジエン(CTB)、フルオロカーボンエラストマー、シリコーンエラストマー、スチレン−ブタジエンポリマーなどのゴムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。実施形態において、予備反応付加物で用いられるエラストマーはATNBまたはCTBNである。
【0017】
1つの実施形態において、エポキシ樹脂を、トリフェニルホスフィン(TPP)などの触媒の存在下、約300°F(または148.9℃)にてビスフェノール鎖延長剤、およびエラストマーポリマーで前処理して、エポキシ樹脂を連鎖結合させ、高粘度フィルム形成性高分子量エポキシ樹脂予備反応付加物を形成する。予備反応付加物を次いで表面フィルム組成物の残りの成分と混合する。
【0018】
ポリマー強化成分の第2の選択肢は、8,000〜14,000の平均分子量を有するポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)のコポリマーである熱可塑性強化材料である。実施形態において、強化剤はポリ(オキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)であり、これは約200℃のTを有する。
【0019】
ポリマー強化成分の第3の選択肢は、300nm以下の粒子サイズを有するコア−シェルゴム粒子である。コア−シェルゴム(CSR)粒子は、軟質コアが硬質シェルによって取り囲まれているコア−シェル粒子の任意のものであり得る。好ましいCSR粒子は、ポリブタジエンゴムコアまたはブタジエン−アクリロニトリルゴムコアとポリアクリレートシェルとを有するものである。しかしながら、軟質シェルによって取り囲まれた硬質コアを有するCSR粒子も使用することができる。CSR粒子は、液体エポキシ樹脂中に分散された25〜40重量パーセントのCSR粒子として提供される場合がある。ゴムコアとポリアクリレートシェルとを有するCSR粒子は、Kaneka Texas Corp
oration (Houston, Tex.)から商標名Kane Ace MXで市販されている。コア−シェルゴム粒子を粒子の好適な液体エポキシ樹脂中懸濁液として表面フィルム組成物に添加することが好ましいが、必須ではない。Kane Ace MX411は、25重量%のコア−シェルゴム粒子のMY721エポキシ樹脂中懸濁液であり、好適なコア−シェルゴム粒子源である。DER331樹脂中に分散された25〜37重量%の同じコア−シェルゴム粒子を含有するKane Ace MX120、MX125、またはMX156も、好適なコア−シェルゴム粒子源である。MX257、MX215およびMX451などの他の好適なコア−シェルゴム粒子源も使用することができる。別の市販のコア−シェルゴム粒子源は、Dow Chemical Co.から得られるParaloid(商標)EXL−2691(約200nmの平均粒子サイズを有するメタクリレート−ブタジエン−スチレンCSR粒子)である。
【0020】
セラミック微小球
セラミック微小球を表面フィルム組成物に添加して、フィルムの表面平滑性を改善する。1つの実施形態では、不活性シリカ−アルミナセラミック材料で作られた中空セラミック微小球を使用する。セラミック微小球は、60,000psiを超える破砕強度、約3.7〜4.6の誘電率、1000〜1100℃(または1832〜2012°F)の範囲の軟化点、および0.1ミクロン〜50ミクロン、または1〜50ミクロンの範囲の粒径を有し得る。セラミック微小球はその高い軟化点のために溶媒に対して非吸収性となり、不燃性となり、そして化学薬品に対して高度に耐性となり得る。約0.1〜約20ミクロン、好ましくは約1〜約15ミクロンの直径を有する微小球が特に好適であることが判明している。本発明の表面フィルム組成物での使用に特に好適な市販のセラミック微小球の一例は、Zeelan Industries, Inc.によって商標Zeeospheres(登録商標)、たとえば、G−200、G210およびW−200で販売されている。これらは、厚肉で無臭の淡灰白色中空シリカ−アルミナ球である。好ましい実施形態では、多官能性樹脂とセラミック微小球との組み合わせは、表面フィルム組成物の50重量%超、好ましくは60重量%超を構成する。ある実施形態において、セラミック微小球の量は、表面フィルム組成物の総重量基準で、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25%または少なくとも30重量%である。いくつかの実施形態において、セラミック微小球の量は、20%〜40重量%、または25%〜35重量%の範囲内であり得る。
【0021】
硬化剤
多官能性エポキシド樹脂は、高温(たとえば、150°F(65℃)より高い温度で活性化されるさまざまな潜在性アミン系硬化剤によって硬化させることができる。好適な硬化剤の例としては、ジシアンジアミド(DICY)、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、およびそれらの誘導体が挙げられる。イミダゾールおよびアミン複合体のクラスの化合物も使用することができる。実施形態において、硬化剤はジシアンジアミドである。アミン系硬化剤は、表面フィルム組成物の総重量基準で1〜5重量%の範囲内の量で存在する。
【0022】
硬化促進剤をアミン系硬化剤とあわせて使用して、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との間の硬化反応を促進することができる。好適な硬化促進剤としては、アルキルおよびアリール置換尿素(芳香族または脂環式ジメチル尿素を含む);トルエンジアミンまたはメチレンジアニリンに基づくビス尿素を挙げることができる。ビス尿素の一例は、4,4’−メチレンビス(フェニルジメチル尿素)(CVC ChemicalsからOmicure U−52またはCA152として市販)であり、これはジシアンジアミドの好適な促進剤である。別の例は2,4−トルエンビス(ジメチル尿素)(CVC ChemicalsからOmicure U−24またはCA150として市販)である。硬化促進剤は、0.5%〜3重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0023】
流量制御剤
微粒子形態(たとえば、粉末)の無機フィラーを表面フィルム組成物にレオロジー修飾成分として添加して、樹脂性組成物の流動を制御し、樹脂性組成物中での凝集を防止する。表面フィルム組成物で使用することができる好適な無機フィラーとしては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、アルミナ、およびヒュームドシリカが挙げられる。1つの実施形態では、疎水性ヒュームドシリカ(たとえば、Cab−O−Sil TS−720)を無機フィラーとして使用する。無機フィラーの量は、表面フィルム組成物の総重量基準で1〜5重量%の範囲内であり得る。
【0024】
任意の添加剤
表面フィルム組成物は、硬化または未硬化表面フィルムの機械的、電気的、光学的、難燃性、および/または熱的特性の1以上に影響を及ぼす1以上の任意の添加剤をさらに含み得る。添加剤は、表面フィルムがその上に形成される複合基体のエポキシ樹脂と化学的に反応するか、またはそれらと非反応であり得る材料を含んでもよい。そのような添加剤としては、紫外線(UV)安定剤、顔料/染料、および伝導性材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような添加剤を使用する場合、それらの総量は表面フィルム組成物の総重量基準で5重量%未満である。
【0025】
表面組成物に添加することができるUV安定剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン(UV−9)、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(CYASORB(登録商標)UV−1164光吸収剤)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、n−ヘキサデシルエステル(CYASORB(登録商標)UV−2908光安定剤)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX 1010)が挙げられる。Ciba Specialty Chemicalsから得られる液体ヒンダードアミン光安定剤、たとえば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジtertペンチルフェノール(TINUVIN328)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバシン酸メチル(TINUVIN292)。デカン二酸、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニルエステル(TINUVIN123)も好適なUV安定剤として使用することができる。加えて、ナノサイズの酸化亜鉛(n−ZnO)、たとえばNanoSunGuard3015、および酸化チタンナノ粒子(n−TiO2)もUV安定剤として使用することができる。
【0026】
樹脂系に色を加えるために当該技術分野で公知の顔料および/または染料を表面フィルム組成物に添加してもよい。顔料および/または染料の例としては、弁柄、緑色クロム、カーボンブラック、および酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態では、顔料は酸化チタン(白色)顔料である。別の実施形態では、顔料はカーボンブラックである。
【0027】
微粒子形態、たとえば粒子またはフレークの伝導性材料も表面フィルム組成物に添加して、完成表面フィルムに導電性を付与することができる。好適な伝導性材料の例としては、銀、金、ニッケル、銅、アルミニウム、およびそれらの合金などのフレークまたは粒子の形態の金属が挙げられる。炭素系のナノサイズの材料、たとえばカーボンナノチューブ(単層ナノチューブまたは多層ナノチューブ)、炭素ナノ繊維、グラフェン、バッキーペーパーも、樹脂フィルムに導電性を付与するための伝導性構成成分として使用することができる。ナノ繊維は70〜200ナノメートルの直径および約50〜200ミクロンの長さを有し得る。ナノチューブは、約10ナノメートルの外径、約10,000ナノメート
ルの長さ、および約1000のアスペクト比(L/D)を有し得る。
【0028】
表1は本開示による表面フィルム組成物のさまざまな実施形態を示す。全ての百分率(%)は重量百分率である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0029】
1つの実施形態において、表面フィルム組成物は組成物の総重量基準の重量百分率で以下の配合を有する:20%〜25%のエポキシフェノールノボラック樹脂;20%〜25%の4官能性エポキシ樹脂;10%〜15%の予備反応付加物、1%〜3%のPES−PEESコポリマー、25%〜35%のセラミック微小球;1%〜5%の潜在性アミン系硬化剤;0.5%〜3%の硬化促進剤;1%〜3%の無機フィラー;および場合によって0.1〜1%の着色顔料。
【0030】
表面フィルムおよび複合構造の形成
表面フィルム組成物の成分を、成分の混合、加熱、および/または冷却の機能を備えた
合容器に添加することができる。さらに、成分の混合を促進するために、1以上の有機溶媒も必要に応じて混合物に添加することができる。そのような溶媒の例としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。表面フィルムを続いて、通常のフィルム形成過程を使用して表面フィルム組成物から形成する。そのように形成された表面フィルムは、意図される用途に応じて、約0.01〜0.45psf(1平方フィートあたりのポンド)のフィルム重量を有し得る。
【0031】
表面フィルムの取り扱いを容易にするために、表面フィルム組成物を担体上に施用する。担体の非限定的例としては、熱可塑性ポリマー繊維または炭素繊維で作られた繊維シート、金属スクリーンまたはホイル、不織マット、ランダムマット、ニット担体、金属コーティングされた炭素ベールなどを挙げることができる。金属スクリーンまたはホイルの例としては、エキスパンド金網またはホイル、および金属コーティングされたベールを挙げることができる。そのようなスクリーンおよびホイルは、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、およびそれらの合金を含んでもよい。不織マット、織物またはニットバッキングの例としては、炭素マット、ポリマーマット、および金属コーティングされた炭素、ガラス、またはポリマーガラスベールを挙げることができる。不織マット、織物またはニットバッキングを銅、アルミニウム、銀、ニッケル、およびそれらの合金でコーティングすることができる。
【0032】
そのように形成された表面フィルムは、未硬化状態で、使える状態になるまで貯蔵することもできる。たとえば、表面フィルムの硬化を阻害し、その有用な保存可能期間を延長するために、表面フィルムを低温貯蔵で貯蔵してもよい。表面フィルムがその意図される使用前に不必要な表面へ付着するのを防ぐために、表面フィルムの1以上の表面に除去可能な裏紙を施用してもよい。
【0033】
表面フィルムは、150°F(65℃)より高い温度、さらに詳細には250°F〜350°F(または120℃〜175℃)の範囲内の温度にて繊維強化樹脂マトリックス複合基体と同時硬化するように設計される。繊維強化樹脂マトリックス複合基体は、マトリックス樹脂を含浸または注入した強化繊維から構成される。マトリックス樹脂は、1以上の熱硬化性樹脂、たとえばエポキシ樹脂を含み得る。複合基体はプリプレグプライまたはプリプレグレイアップであってよい。プリプレグプライは、たとえばエポキシ樹脂などの樹脂を含浸させた、繊維または一定方向に配列された連続繊維の形態の強化繊維から構成される。一定方向に配列された繊維は、一方向に配列された繊維であっても、または複数方向に配列された繊維であってもよい。プリプレグレイアップは、積層配列で配置された複数のプリプレグ層から構成される。一般的に、未硬化表面フィルムを未硬化または部分的に硬化した状態の繊維強化樹脂マトリックス複合基体上に施用することができ、続いて同時硬化させて、熱硬化性表面フィルムが接着された完全に硬化された複合基体を形成する。
【0034】
1つの実施形態において、表面フィルムをレイアップ過程に組み入れて、複合構造を形成する。図1で示されるように、表面フィルム10をまず成形型20の成形面と接触させ、そしてプリプレグ層を表面フィルム10上に順に互いに積み重ねて、プリプレグレイアップ30を形成する。別法として、プリプレグ層を異なる場所で組立て、その後表面フィルム10上に配置してもよい。1以上のコア、例えばフォームまたはハニカム構造を当該技術分野で知られているように、プリプレグレイアップの層間に挿入することができる。アセンブリ全体を次いで加熱し、加圧して、プリプレグレイアップおよび表面フィルムを硬化させて、選択された形状を有する最終複合構造にする。複合構造を成形型から取り出すと、表面フィルムは複合構造の最外層になる。
【0035】
1つの実施形態では、表面フィルムを(コーティングまたはラミネーションによって)1つのプリプレグプライに施用して、自己サーフェーシングプリプレグテープを製造することができる。そのような自己サーフェーシングプリプレグテープは、プリプレグスリットテープを成形面(マンドレル表面など)上に直接分配し、圧縮して、複合部品を形成するための手段を備えた自動テープ貼付(ATL)または自動繊維配置(AFP)システムで使用するために好適である。
【0036】
硬化すると、結果として得られる硬化表面フィルムは、高い架橋密度、≧180℃の高いガラス転移温度(T)、ASTM D−3363によると7H以上の鉛筆硬度を有する熱硬化性フィルムである。これらの特性のために、硬化表面フィルムは従来型塗料除去剤(たとえば、ベンゾールアルコール系塗料除去溶液)、ならびにUV放射およびミクロ亀裂発生に対して高い耐性を示すことが可能になる。ベンジルアルコール系塗料除去溶液と7日間周囲温度(20℃〜25℃)で接触した後、表面フィルムは0.5%未満の流体吸収を示し、鉛筆硬度は2H鉛筆等級を超えて減少しないことが判明した。さらに、硬化表面フィルムは、−55℃〜71℃の2000X熱サイクル試験に付された後、0.3亀裂/in未満のミクロ亀裂密度を示すことが判明した。表面フィルムは、航空宇宙構造物を塗装するために通常用いられる塗料コーティングに対して高い付着性をさらに示す。表面フィルムの塗料コーティングに対する付着性は、塗装表面が1000KJ/mのUVA放射線暴露に付されるか否かにかかわらず、乾燥条件または湿潤条件(75°Fで7日間脱イオン水中に浸漬後)下でASTM D3359にしたがった塗膜密着性試験に付した後に、実質的に0%の塗料損失を示すようなものである。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本開示にしたがって形成された表面フィルムの特定の実施形態を提供する役割をするが、本開示の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【0038】
9個の表面フィルム試料を表2で示される配合物(1〜9)に基づいて調製した。すべての量は重量百分率である。
【表2-1】
【表2-2】
【0039】
表2で開示された成分を混合容器に添加し、高速せん断実験用ミキサーを使用して成分を混合することによって、各表面フィルムを調製した。エポキシ樹脂をまず添加した。組成物のレオロジーおよび固形分を調節するために、必要に応じてMEKを溶媒としてエポキシ樹脂混合物に添加した。その後、強化剤(複数可)(予備反応付加物および/またはPES−PEESコポリマー)をエポキシ樹脂に添加した。ある表面フィルム(配合物4および5)では、伝導性添加剤(銀フレークまたはAg−Cuフレーク)も混合容器に添加した。(いくつかの配合物では)セラミック微小球、ヒュームドシリカ、およびUV安定剤を混合容器にさらに添加した。MEK溶媒を必要に応じて添加して、前記ミックスの粘度を80重量%固形分に制御し、組成物の成分を約50〜70分間、約1000〜3000rpmで混合した。組成物の温度を約160°Fより低く保った。さらなるMEKを必要に応じて添加して、混合物が混合軸を上昇するのを抑制した。
【0040】
混合物をその後約120°F以下まで冷却し、硬化剤(ジシアンジアミド(Dicy)およびビス尿素)を組成物に添加した。組成物を次いでほぼ均質になるまで混合した。混合物の温度は、硬化剤の添加の間、約130°Fより低く維持した。
【0041】
前記組成物から表面フィルムを形成するために、各組成物を濾過し、脱気し、そしてフィルムとして堆積させた。濾過はろ過媒体EP−15を通して実施した。脱気は、組成物の固形分が約80重量%となるように実施した。濾過し、脱気した組成物を次いで約0.020〜0.030psfのフィルム重量を有するフィルムとしてフィルムコーターによってコーティングし、次いで約1重量%未満の揮発性物質が達成されるように乾燥した。選択された不織ポリエステルもしくはガラスランダムマット担体または伝導性担体を軽圧下で圧入して、マットをフィルムに埋め込んだ。
【0042】
表2の配合物から形成された表面フィルムを組み入れることによって、複合パネルを作成した。各パネルについて、表面フィルムをツール上に配置し、続いてプリプレグ層(Cytec Industries Inc.からのCYCOM5276−1、炭素繊維/エポキシ系プリプレグ)のレイアップによって、プリプレグレイアップを形成した。プリプレグレイアップを次いで約350°F間の温度で2時間、80psi下、オートクレーブ条件において硬化させた。
【0043】
表面フィルム評価
硬化表面フィルムのガラス転移温度(Tg)は、変調DSC(TA 2910)または熱的機械的分析器(TMA2940、TA Instruments)のいずれかを使用し、窒素下、10℃/分の傾斜にて30℃〜230℃の温度範囲内で測定した。
【0044】
硬化後、表面フィルムで表面仕上げした複合パネルを表面外観欠陥(ピット、ピンホール)について調べた。次いで、複合パネルをその塗料除去剤耐性、UV暴露の有り無しの両方での乾燥および湿潤塗膜密着性、およびミクロ亀裂耐性について評価した。
【0045】
塗料除去剤耐性試験
塗料除去剤流体取り込みおよび表面鉛筆硬度変化を、航空宇宙用複合構造塗料除去過程のために使用したベンジルアルコール系塗料除去剤溶液(McGeanから入手可能なCee Bee 2012AまたはHenkelから入手可能なTurco 1270−6)の浸漬時間(室温で168時間まで)にわたって測定することによって、未塗装の表面仕上げされた複合パネル(2”×2”試料サイズ、厚さ0.15mm)の塗料除去剤耐性を測定した。各試験パネルの重量を24時間、48時間および168時間(7日)までの期間で塗料除去剤に浸漬した前後で測定した。試験パネルの塗料除去剤流体取り込み(浸漬時間にわたる重量変化、重量%で表す)を同じ試験間隔で168時間(7日)までの浸漬で測定した。
【0046】
各未塗装試験パネルの表面をベンジルアルコール系塗料除去剤溶液中に168時間まで室温にて浸漬し、次いでASTM D3363にしたがって浸漬時間中の鉛筆硬度変化について試験した。ASTM D3363は、基体上の透明および着色有機コーティングフィルムの表面硬度を測定するための標準的試験方法である。鉛筆硬度スケールは次のとおりである:6B(最も軟質)、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、9H(最も硬質)。試験パネルの鉛筆硬度を、24時間、48時間および168時間(7日)までの期間で塗料除去剤中に浸漬する前後で測定した。24時間の浸漬で2Hレベルを超えて変化する鉛筆硬度は、良好な塗料除去剤耐性を有すると見なされない。
【0047】
UV暴露の有り無しの両方での乾燥および湿潤塗膜密着性
塗装前のUV暴露の有り無しの両方で、表面フィルムで表面処理された塗装された複合パネル(3”×6”の試料サイズ、厚さ0.15mmの形態)の乾燥および湿潤スクライブ塗膜密着性をASTM D3359にしたがって測定した。ASTM D3359は、
フィルムに作られた切れ目上に粘着テープを施用し、除去することによって、基体に対するコーティングフィルムの表面接着を評価するための標準的試験方法(クロスハッチスクライブテープ試験)である。硬化した試験パネルをゼロ(UVなし)、200kJ/mまたは1000kJ/mの紫外線(UV−A)放射にAATCC試験法16、オプション3にしたがって暴露した。UV試験のために使用する装置は、Xeno耐候性試験機、例えばAtlas CI3000 FadeoMeterである。各試験パネル表面を調製し(清浄化、サンディングの有り無しの両方)、航空宇宙用塗装で使用される外部装飾用塗料コーティング(エポキシ塗料プライマー、続いてポリウレタン系トップコート)を施用した。その後、乾燥塗膜密着性試験をASTM D3359にしたがって実施した。湿潤塗膜密着性を実施するために、UV暴露した試験パネルを塗装し、次いで75°Fで7日間脱イオン水中に浸漬した。湿潤塗膜密着性試験を次いでASTM D3359にしたがって実施した。
【0048】
伝導性添加剤を含有する表面フィルムの導電性測定
硬化した表面フィルムを有する試験パネルを切断して、約6×5インチの試験クーポンを形成し、それらの導電性または表面抵抗率(オーム/平方、またはミリオーム/平方)を、四探針AVO(登録商標)Ducter(登録商標)DLRO10X Digital Low Resistivity Ohmmeterを使用して測定した。
【0049】
表3は、表2の配合物1〜9に基づく表面フィルムを有する試験パネルについての表面特性および試験結果を示す。試験パネル番号は表面フィルム配合物番号に対応する。
【表3-1】
【表3-2】
【0050】
配合物8および9に基づく表面フィルムは3官能性または4官能性エポキシ樹脂を含有せず、その結果、浸漬時間にわたって塗料除去剤に対するそれらの耐性は、他の表面フィルムで観察されるものほど良好ではなかった。しかしながら、全ての表面フィルムは良好な塗膜密着性(10+平均0%塗料損失)を示した。
【0051】
ミクロ亀裂耐性試験
塗装され、表面仕上げされた複合試験パネル(4”×6”の試料サイズ、厚さ0.15mmの形態)のミクロ亀裂発生に対する耐性も測定した。塗装された試験パネルを−55℃〜71℃で最大2000×サイクルまでの熱サイクルに供した。熱サイクル後の各試験パネルの表面を顕微鏡下で400×、800×、1200×、1600×および2000×熱サイクルにさらされた後のミクロ亀裂発生率について調べた。亀裂密度(試験パネルサイズの面積で示される表面塗装亀裂の数)を使用して、表面仕上げされた複合試験パネルのミクロ亀裂耐性を測定する。亀裂の最大長さは0.1インチ未満でなければならない。2000×熱サイクル後のミクロ亀裂試験結果を表4で示す。
【表4】
【0052】
配合物6および7に基づく表面フィルムは、他の配合物中にある強化剤を含んでいなかった。その結果、試験パネル6および7のミクロ亀裂耐性は他の試験パネルほど良好ではなかった。
【0053】
「第1」、「第2」などの用語は、本明細書中では、順序、量、または重要性を意味せず、むしろ1つの要素を別のものと区別するために用いられ、「a」および「an」という用語は、本明細書中では量の限定を意味せず、むしろ少なくとも1つの参照される品目が存在することを意味する。量に関して用いられる「およそ」および「約」という修飾語は、表示された値を含み、文脈によって指示される意味を有する(たとえば、特定の量の測定値に伴う誤差を含む)。本明細書中で用いられる「(複数可)」という接尾辞は、単数および複数のそれが修飾する用語を含み、それによって1以上のその用語を含むことが意図される(たとえば、金属(複数可)は1以上の金属を含む)。本明細書中で開示される範囲は、両端を含み、独立して組み合わせることができる(たとえば、「およそ25重量%まで、またはさらに詳細にはおよそ5重量%〜およそ20重量%」の範囲は、端点および範囲のすべての中間の値を含み、たとえば、「1重量%〜10重量%」は、1%、2
%、3%などを含む。
【0054】
さまざまな実施形態を本明細書中で記載するが、当業者らは要素のさまざまな組み合わせ、変異またはそれらにおける改善をなすことができ、それらは本発明の範囲内であることは、明細書から理解されるであろう。さらに、多くの修飾を加えて、基本的範囲から逸脱することなく本発明の教唆に特定の状況または材料を適応させることができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために想定される最良の様式として開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を包含することが意図される。
図1
【国際調査報告】