(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-507687(P2015-507687A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】高速フレーム溶射用の新しい材料及びそれにより製造された製品
(51)【国際特許分類】
C23C 4/06 20060101AFI20150213BHJP
C23C 4/12 20060101ALI20150213BHJP
B22F 1/00 20060101ALI20150213BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20150213BHJP
【FI】
C23C4/06
C23C4/12
B22F1/00 M
C22C19/05 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-545225(P2014-545225)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(85)【翻訳文提出日】2014年6月4日
(86)【国際出願番号】EP2012074432
(87)【国際公開番号】WO2013083599
(87)【国際公開日】20130613
(31)【優先権主張番号】11191917.1
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】509020295
【氏名又は名称】ホガナス アクチボラグ (パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン、ラース − オーケ
(72)【発明者】
【氏名】オルセリウス、ペテル
【テーマコード(参考)】
4K018
4K031
【Fターム(参考)】
4K018AA08
4K018BA04
4K018BB04
4K018BD09
4K018KA18
4K018KA58
4K031AA01
4K031AA03
4K031AB08
4K031AB09
4K031CB13
4K031CB18
4K031CB22
4K031CB24
4K031CB28
4K031CB29
4K031CB30
4K031DA01
(57)【要約】
本発明者らは、ガラス製造で使用されるプランジャーなどの基材のHVOF溶射に有用な新しい合金を開発した。この合金でコーティングすると、これらの部品は、耐摩耗性が向上し、その結果、長寿命が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVOF溶射法に適した金属粉末であって、重量%で、炭素2.2〜2.85、ケイ素2.1〜2.7、ホウ素1.2〜1.7、鉄1.3〜2.6、クロム5.7〜8.5、タングステン32.4〜33.6、コバルト4.4〜5.2、残部ニッケルからなる金属粉末。
【請求項2】
炭素2.3〜2.7、ケイ素2.15〜2.6、ホウ素1.4〜1.6、鉄1.5〜2.05、クロム7.3〜7.5、タングステン32.4〜33.6、コバルト4.4〜5.2、残部ニッケルからなる、請求項1に記載された金属粉末。
【請求項3】
ふるい分析測定による20〜53μmの粒径を有する、請求項1又は請求項2に記載された金属粉末。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された粉末を使用する、高速フレーム溶射によって表面をコーティングする方法。
【請求項5】
請求項4に記載された方法によって製造された部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ニッケル基自溶合金による熱的表面処理は、ガラス容器産業における工具摩耗への保護に重要な役割を果たしている。製瓶工具は、非常に厳しい条件下で作動し、摩耗、腐食及び急速な熱サイクルにさらされる。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基自溶合金の主な特性は、高温での良好な耐摩耗性及び耐腐食性である。この特性により、ガラス瓶製造産業では、鋳造された鉄部品の表面被覆にニッケル合金を広範に使用できるようになった。粉末肉盛溶接、フレーム溶射、高速フレーム(HVOF)溶射及びPTA溶接を用いる表面硬化法では、新しい金型、プランジャー、バッフル、ネックリング、プレート等の製造並びに修復及び維持のために自溶粉末が使用される。
【0003】
自溶合金に必須の元素は、ケイ素(Si)及びホウ素(B)である。これらの2つの元素は、液相線温度に対する影響が非常に大きい。純ニッケル(Ni)の融点は1455℃である。合金の液相線は、Si及びBの濃度を増大させることによって1000℃未満まで低減させることができる。融解温度範囲は、固相線及び液相線によって規定される(
図2a/
図2b)。自溶合金の融点が低いということは、基材金属との融合なしにコーティングできるので非常に有利である。合金は、通常はクロム(Cr)、鉄(Fe)及び炭素(C)を含有しており、時としてモリブデン(Mo)、タングステン(W)及び銅(Cu)も添加される。Si及びBを溶解したFe酸化物及びNi酸化物などの他の金属酸化物は、ケイ酸塩を形成する能力がある。このことは、Si−Bスラグが溶接フラックスとして作用するので、ニッケル基合金の付着に重要となることがある。これにより、新しい金属表面が酸化から保護され、融解金属との良好なぬれ性が確保される。
【0004】
Ni−Cr−Si−B合金の微細構造は、相対的に延性のあるNiリッチなマトリックスに様々な量の硬質粒子を含むものである。合金化元素の量を増大させると、硬質粒子の数が増大し、結果的に合金の硬さが増大する。硬さが増大するほど、材料の機械加工が困難になる。低濃度のSi、B及びCrを含む軟質合金では、主要な硬質相はNi
3Bである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長寿命の鋳型、プランジャー、バッフル、ネックリング及びプレートを製造することが望ましく、そのために、これを達成することのできる新しい合金を開発する必要がある。
【0006】
ガラス金型産業では、HVOF(高速フレーム)溶射が、細いネックプランジャーをコーティングし、また限られた範囲でプレス及びブロープランジャーをコーティングするために通常使用される。
【0007】
本発明者らは、HVOF(高速フレーム溶射)、すなわちガラス製造に使用するプランジャーなどの基材の処理に有用な新しい合金を開発した。これらの部品をこの合金で処理すると、耐摩耗性が向上し、その結果寿命が長くなる。
【0008】
この合金に含まれる成分は、粉末形態で供給できる。
【0009】
この粉末は、HVOF溶射法を使用して基材に付着される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、炭素2.2〜2.85、ケイ素2.1〜2.7、ホウ素1.2〜1.7、鉄1.3〜2.6、クロム5.7〜8.5、タングステン32.4〜33.6、コバルト4.4〜5.2、残部がニッケルからなる(すべて重量%)HVOF溶射法に使用できるニッケル基粉末を提供することである。
【0011】
他の具体例としては、この粉末は、炭素2.3〜2.7、ケイ素2.15〜2.6、ホウ素1.4〜1.6、鉄1.5〜2.05、クロム7.3〜7.5、タングステン32.4〜33.6、コバルト4.4〜5.2、残部ニッケルからなる(すべて重量%)。
【0012】
一具体例としては、この粉末が2種類の粉末を含み、そのうちの合金1は軟質合金であり、合金2は硬質合金である。ここで、用語「軟質合金」及び「硬質合金」は、一方が他方よりも軟らかい2種類の合金であることを意味する。2種類の異なる合金は、以下の組成を有する。
【0013】
【表1】
【0014】
一具体例としては、この粉末は、ふるい分析測定によれば、12〜58μm、又は15〜53μm、又は20〜53μmの粒径を有する。
【0015】
本発明の他の目的は、ニッケル基粉末によって製造された合金を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、この合金でコーティングされた、好ましくはHVOF(高速フレーム溶射)によってコーティングされた部品を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ガラスプランジャーをコーティングするためのHVOF法は、溶射ガンを使って溶射するステップと、溶融トーチを用いて蒸着物を溶融させるステップの2つのステップからなっている。粉末は、酸素アセチレン又は酸水素ガンに射出によって供給され、基材に高速で噴出される。高温粒子は、衝突により平坦になり、基材と相互連結して、機械的結合を形成する。
【0018】
溶融処理は、密度が高く十分に結合した溶射層コーティングを得るために必要である。コーティングは、その固相線と液相線との間の温度、通常は約1000℃に加熱される。材料は、最適な温度になると、融解粒子と固体粒子の混合状態になる。融解物が粒子間の間隙を満たすので、溶融中に15〜20%の収縮が生じる。
【0019】
ガスの種類及び溶射ガンの等級に応じて、細かい粉末も粗い粉末も使用することができる。市販されている最も一般的なタイプのHVOF溶射装置は、Metco Diamond Jet、Tafa JP5000又はTafa JP8000である。これらは、すべてこの種の作業に優れており、材料を広範に選択でき、1時間当たりの溶射粉末の生産性(kg)が最も高い。
【0020】
粉末の流速は、正確に調節されるべきである。流速が遅すぎると過熱を起こし、流速が速すぎると粒子は十分に加熱されず、どちらの場合も層が気孔又は酸化物を含み、質の低下を招く。プランジャーの最も粗い部分は200〜300℃に予熱されて、次に、粉末のいくつかの層が溶射される。ガンは、通常はロボット設定で使用され、滑らかでむらのない動作で移動すべきであり、静止するとコーティングの過熱を引き起こすので静止すべきではない。層は、その後の溶融中に約20%収縮することを考慮すべきである。溶融後の正常な厚さは0.6〜0.8mmである。
【0021】
溶射後、付着物は溶融しなければならない。適切なサイズの溶融バーナーが使用される。すなわち小さいプランジャーについては1,000l/分のバーナー能力、及び大きいプランジャーについては最大4,000l/分のバーナー能力が使用される。バーナーが小さすぎると、溶融時間が過度に長くなり、層が酸化する場合がある。大きすぎるバーナーによる溶融では、層が過熱され、気孔又はむらが生じる。プランジャーは、約900℃に加熱されるべきである。次に、火炎をアセチレンガス過剰に、いわゆる「軟らかい火炎」に調節すべきである。溶融は、最上部から約30mm離して開始する。コーティングが鏡のように輝き始めたら、火炎をプランジャー地点に移動し、最初にその部分を溶融させる。開始地点に戻し、プランジャーの溶融を完了する。輝きを正確に見るために、溶接遮光グラスを装着することが推奨される。溶融温度が低すぎると、材料の融解が不十分になる。溶射後、付着物は溶融しなければならない。適切なサイズの溶融バーナーが使用される。すなわち小さいプランジャーについては1,000l/分のバーナー能力、及び大きいプランジャーについては最大4,000l/分のバーナー能力が使用される。バーナーが小さすぎると、溶融時間が過度に長くなり、その結果、層が酸化する場合がある。大きすぎるバーナーによる溶融では、層が過熱され、気孔又はむらが生じる。これにより、付着特性が低下し、気孔率が大きくなってしまう。加熱しすぎると、蒸着物の垂れ、希釈、基材の歪み、及び過度のスラグが生成され蒸着物が軟らかくなりすぎてしまう過度の侵食などの不具合が生じる。直径25mm未満のプランジャーを溶射する場合、ガンに追加のエアキャップを使用すると、より経済的である。これにより、プランジャーの小さい表面積上に粉末流が集中する。したがって、溶射時間が短縮され、溶射効率が増大する。
【0022】
溶融後、プランジャーは、回転させながら約600℃に冷却される。その後は、空気中でゆっくり冷却できる。硬質合金(50〜60HRC)が使用される場合、部材を蛭石などの断熱材料に入れることが推奨される。これにより、ゆっくり冷却するので亀裂が防止される。
【0023】
細いネックプランジャーは、直径25mm未満であり、硬質の高密度コーティングを必要とする。したがって、HVOF法を使用すると、より経済的である。HVOF法は、フレーム溶射よりも集中した火炎を使用し、高速で粉末粒子を吹き付けるので、非常に高密度なコーティングが得られる。HVOFには、フレーム溶射よりも微細な粉末が必要である。最も一般的な解決法は、粒径が20〜53ミクロンの範囲の粉末を用いることである。あるHVOFシステムでは、15〜45ミクロンなどのさらに微細な粉末が必要である。ほとんどのHVOFコーティングは、溶融なしに使用できる。細いネックプランジャーの場合、通常はコーティングの溶融が必要である。
【実施例】
【0024】
「実施例1」
以下の組成を有する3種類の粉末混合物を調製した(残部はニッケル)。
【0025】
【表2】
【0026】
「実施例2」
粉末を、次に摩耗試験(実例3に示すいわゆるピンオンディスク(pin−on−disk)試験)で使用するディスクのコーティングに使用できる。HVOF溶射を使用して、ディスクをコーティングした。
【0027】
HVOF溶射法は、通常は1ステップで実施される。しかしプランジャーについては、2つのステップが実施され、HVOF溶射ガンを用いて溶射し、溶融トーチを用いて溶射物を溶融する。アルゴンガスをキャリアガスとして使用して、粉末フィーダーホッパーから粉末をガンに供給する。
【0028】
市販されている一般的なタイプのHVOF溶射装置、例えばMetco Diamond Jet、Tafa JP5000、Tafa JP8000等が、この実施例で使用できる。
【0029】
粉末のいくつかの層を、ディスク(又は適用できる場合にはプランジャー)上に溶射した。ガンは、滑らかでむらのない動作で移動すべきであり、静止するとコーティングの過熱を引き起こすので静止すべきではない。
【0030】
その後コーティングを、溶融トーチを用いてその固相線と液相線との間の温度である約1000℃に加熱する。適切なサイズの溶融バーナーを使用する。すなわち小さいプランジャーについては1,000l/分のバーナー能力、及び大きいプランジャーについては最大4,000l/分のバーナー能力を使用する。バーナーが小さすぎると、溶融時間が過度に長くなり、層が酸化する場合がある。大きすぎるバーナーによる溶融では、層が過熱され、気孔又はむらが生じる。ディスクは、約900℃に加熱することができる。次に、火炎をアセチレンガス過剰に、いわゆる「軟らかい火炎」に調節することができる。溶融は、最上部から約30mm離して開始する。コーティングが鏡のように輝き始めたら、溶融が開始している。開始地点に戻し、ディスクの溶融を完了する。輝きを正確に見るために、溶接遮光グラスを装着することが推奨される。溶融温度が低すぎると、材料の融解が不十分になる。溶射後、蒸着物が溶融される。適切なサイズの溶融バーナーを使用し、すなわち小さいプランジャーについては1,000l/分のバーナー能力、及び大きいプランジャーについては最大4,000l/分のバーナー能力を使用する。バーナーが小さすぎると、溶融時間が過度に長くなり、層が酸化する場合がある。
【0031】
溶融後、プランジャーを、回転させながら約600℃に冷却する。その後は、静空気中でゆっくり冷却することができる。硬質合金(50〜60HRC)が使用される場合、その小片を蛭石などの断熱材料に入れることが推奨される。これにより、ゆっくり冷却するので亀裂が防止される。
【0032】
「実施例3」
HVOFでコーティングしたディスクを、「ピンオンディスク」摩耗試験にかける。試験は、ASTM標準G65に従い、500℃〜550℃の温度においてボール上で継続的圧力を用いて、2時間かけて実施する。本発明の試料から形成したコーティングは、摩耗係数が参照試料のおよそ3分の1であった。このことは、参照試料と比較して耐摩耗性が高いことを示している。
【国際調査報告】