特表2015-507688(P2015-507688A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-507688ワークピースの処理中の電荷中和装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-507688(P2015-507688A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】ワークピースの処理中の電荷中和装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/48 20060101AFI20150213BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20150213BHJP
   H01J 37/32 20060101ALI20150213BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20150213BHJP
【FI】
   C23C14/48 C
   H01L21/265 F
   H01J37/32
   H05H1/46 L
   H05H1/46 A
   H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-545923(P2014-545923)
(86)(22)【出願日】2012年11月19日
(85)【翻訳文提出日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】US2012065813
(87)【国際公開番号】WO2013085705
(87)【国際公開日】20130613
(31)【優先権主張番号】13/313,078
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エフ クルンクジ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジェイ リーヴィット
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ディスターソ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ジェイ ミラー
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA10
4K029DA03
4K029DE02
(57)【要約】
処理システム(10)は、プラズマを提供するプラズマ源(12)及びプラズマからのイオンを受けるように構成されたワークピースホルダ(28)を備える。この処理システムは、プラズマ源とワークピースホルダとの間に電気的に結合され、プラズマ源に供給されるバイアス電圧を、プラズマ源がワークピースに対して正にバイアスされる高電圧状態とプラズマ源がワークピースに対して負にバイアスされる低電圧状態との間で切り替えるように動作し得るパルスバイアス回路をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを提供するプラズマ源、
前記プラズマからイオンを受けるように配置されたワークピースホルダ、及び
前記プラズマ源に電気的に結合されたパルスバイアス回路を備える処理システムであって、
前記パルスバイアス回路は、前記プラズマ源に供給するバイアス電圧を、前記バイアス源を接地に対して正にバイアスする高電圧状態と前記プラズマ源を接地に対して負にバイアスする低電圧状態との間で切り替えるように動作する、
ことを特徴とする処理システム。
【請求項2】
前記プラズマ源と前記ワークピースホルダとの間に配置された抽出プレートを更に備え、前記抽出プレートは前記高電圧状態中にイオンビームを規定するように構成されている、請求項1記載の処理システム。
【請求項3】
前記パルスバイアス回路は、前記バイアス電圧が前記高電圧状態に切り替えられる際に前記プラズマ源へ電流を放電するキャパシタを含む高電圧回路を備える、請求項1記載の処理システム。
【請求項4】
前記高電圧回路は、正電圧を供給する高電圧源及び前記高電圧源を前記プラズマ源に交互に接続及び切断するように動作する高電圧スイッチを備える、請求項3記載の処理システム。
【請求項5】
負電圧を出力する低電圧源、及び
前記低電圧源を前記プラズマ源に交互に接続及び切断するように動作する低電圧スイッチ、
を含む低電圧回路を備える、請求項4記載の処理システム。
【請求項6】
前記プラズマ源により規定される前記高電圧状態は前記ワークピースホルダに対して100V以上正の電位を有する、請求項3記載の処理システム。
【請求項7】
前記パルスバイアス回路は、前記バイアス電圧が前記低電圧状態に切り替えられる際に前記プラズマ源から電流を放電するキャパシタを含む低電圧回路を備える、請求項1記載の処理システム。
【請求項8】
前記プラズマ源により規定される前記低電圧状態は前記ワークピースホルダに対して約2V〜100V負の電位を有する、請求項7記載の処理システム。
【請求項9】
前記高電圧状態及び前記低電圧状態の部分を交互に含む電圧パルス列を出力するように前記パルスバイアス回路に指示するコントローラをさらに備え、前記コントローラは前記電圧パルス列のデューティサイクルを変えるように動作する、請求項1記載の処理システム。
【請求項10】
処理システム内でワークピースを処理する方法であって、
プラズマ源を用いてプラズマを発生させるステップ、
前記プラズマからイオンを受けるためにワークピースホルダを接地するステップ、及び
前記プラズマ源に電圧パルス列を供給するステップを備え、
前記電圧パルス列は、前記バイアス源を接地に対して正にバイアスする高電圧部分及び前記プラズマ源を接地に対して負にバイアスする低電圧部分を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記プラズマ源と前記ワークピースホルダとの間に配置された抽出プレートによりイオンを方向づけ、前記ワークピースホルダに向かってある角度範囲亘って入射するイオンビームを規定するステップを備える、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記バイアス電圧が高電圧状態に切り替えられる際にキャパシタから前記プラズマ源へ電流を放電するステップを備える、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記バイアス電圧が低電圧状態に切り替えられる際に前記プラズマ源からキャパシタへ電流を放電するステップを備える、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記高電圧状態において前記ワークピースホルダに対して100V以上正のプラズマ源電位を設定するステップを備える、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記低電圧状態において前記ワークピースホルダに対して約2V〜100V負のプラズマ源を設定するステップを備える、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記電圧パルス列が前記プラズマ源に供給された後に前記ワークピース上の電荷を監視するステップ、及び
前記高電圧状態の設定電圧、前記低電圧状態の設定電圧、前記高電圧状態の持続時間及び前記低電圧状態の持続時間のうちの1つ以上を前記電荷に応答して変化させることによって第2の電圧パルス列を設定するステップ、
をさらに備える、請求項10記載の方法。
【請求項17】
プラズマ源、
ワークピースを移動させながら前記プラズマ源により供給されるプラズマからイオンを受ける、接地された移動可能なワークピースホルダ、
前記プラズマ源と前記ワークピースホルダとの間に配置され、イオンをある角度範囲に亘って前記ワークピースホルダに向けて方向づけるように構成された抽出プレート、及び
前記プラズマ源及び前記ワークピースホルダに供給するバイアス電圧を、前記バイアス源を接地に対して正にバイアスする高電圧状態と前記プラズマ源を接地に対して負にバイアスする低電圧状態との間で切り替えるように動作するパルスバイアス回路、
を備えるイオン注入システム。
【請求項18】
前記パルスバイアス回路は、
前記バイアス電圧が前記高電圧状態に切り替えられる際に前記プラズマ源へ電流を放電するキャパシタを含む高電圧回路、及び
前記バイアス電圧が前記低電圧状態に切り替えられる際に前記プラズマ源からの電流を放電するキャパシタを含む低電圧回路、
を備える、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記プラズマ源により規定される前記高電圧状態は接地に対して100V以上正の電位を有し、前記プラズマ源により規定される前記低電圧状態は接地に対して約2V〜100V負の電位を有する、請求項18記載のイオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースのイオン処理に関し、より詳しくは、ワークピースのイオン処理中の電荷中和方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピース(基板)のイオンビーム及びプラズマ処理は、イオン注入、表面微細構造化及び表面のエッチングなどの様々な目的のために実行されている。特にイオン注入は基板内に特性変更不純物を導入する標準技術である。所望の不純物材料をプラズマ源内でイオン化し、得られたイオンを加速して所定のエネルギーのイオンビームを形成し、そのイオンビームを基板の表面に差し向ける。ビーム内のエネルギーイオンが基板材料の表面下に侵入し、基板材料の結晶格子内に埋め込まれて所望の伝導率又は材料特性の領域を形成する。
【0003】
イオンビーム処理の1つの課題は、基板に衝突するイオンは本来電荷を運ぶためワークピースのイオン注入中に生じ得るワークピース上の電荷を消散させる必要があることである。正イオンを含むイオンビームの場合には、イオンビームの暴露後にワークピース上に正電荷が集積し得る。この電荷を消散させるために、ワークピースホルダを接地し、それによってワークピース表面から電荷を流す導電通路与えることができる。しかしながら、ワークピース自体が不良導体又は電気絶縁体である場合には、ワークピース表面上の電荷を大地へ流す導電通路は存在し得ず、よって電荷を消散することはできない。
【0004】
イオンビームの暴露によりワークピース表面上に集積する電荷の中和は、反対極性の荷電種をワークピース上の電荷に与えることによって達成することもできる。正イオンを用いるパルスイオン注入を使用する典型的な既知のイオン注入システム(プラズマ浸漬イオン注入など)では、プラズマをワークピースホルダに近接して生成し、周期的バイアスをプラズマとワークピースホルダとの間にパルス的に加えることができる。「オン」期間中にプラズマとワークピースとの間にバイアスを与えることにより、正イオンがワークピースに引き付けられ、ワークピースホルダの電位がプラズマに対して負になる。同時に、プラズマ中の電子がプラズマに対して負であるワークピースから反発される。注入システムがワークピースをプラズマに対して負電位に設定しない「オフ」期間中に、電子はワークピースに向かってドリフトし得る。しかしながら、これらの「オフ」期間中の電子束はワークピースの表面を中和するには不十分であり、過剰の正電荷が残存し得る。
【0005】
図1aは、「オフ」期間104で中断される一連の「オン」期間102を含む電圧パルス列100を示す。「オン」期間102中に、正の高電圧がプラズマ源に供給されるが、ワークピースは接地されているので、ワークピースはプラズマに対して高い負電位(電圧)に設定される。従って、正イオンはワークピースに、図1aに示す例では約10kVの高エネルギーで、引き付けられる。「オフ」期間104中はプラズマ源のDC電圧は名目上接地電位であり、概してプラズマとワークピースとの間の電圧はほぼ零である。従って、「オフ」期間104中にプラズマから一部分の電子がワークピースへとドリフトし、ワークピースを中和しようとする。
【0006】
図2は電圧パルス列100を生成するために使用し得る回路202を示す。図2に示すように、プラズマ源210はパルスイオンビーム214をワークピースホルダ212に供給するために回路202に結合される。回路202は高電圧源204、及び高電圧源204をプラズマ源210に接続又は切断する高電圧スイッチ206を含む。プラズマがプラズマ源210内で生成されるとき、高電圧スイッチ206を閉じることによって、プラズマ源210を図1aに示す+10kVのような高電位にバイアスすることができる。この高電位はプラズマ源210から正イオン214を抽出し、これらの正イオン214をワークピースホルダに向け加速するよう作用する。高電圧スイッチ206を開き、第2のスイッチ208を閉じると、プラズマ源は接地され、正イオンはもはやワークピース212に引き付けられない。従って、スイッチ206,208の一方のスイッチを開き、他方のスイッチを閉じる設定を交互に繰り返すことによって、パルスイオンビーム214を「オン」期間202中に生成することができる。
【0007】
回路202は一般的に電圧パルス列で示されるような波形を発生するが、実際の電圧波形は「オフ」期間中の電圧が零である所望の波形から相違し得る。例えば、高電圧スイッチ206及び第2スイッチ208は内部インピーダンスを有し、小さな電圧降下を生じる。従って、プラズマ源が第2スイッチ208を介して大地に接続される「オフ」期間中、第2スイッチ208の小さな内部インピーダンスはプラズマ源210の直接接地をもたらさずに、零ボルトより数ボルト上の電位でのフローティングをもたらし得る。「オフ」期間104の拡大図を示す図1Bに示されるように、プラズマ源は実際上内部インピーダンスのために数ボルトまでの正電位を取り得る。「オフ」期間104中、ワークピースホルダの電位はプラズマ源の電位より数ボルト負になるため、ワークピースホルダ212に対して得られるプラズマ源210の正バイアスはワークピースホルダ212への電子の流れを妨げる。従って、これらの「オフ」期間中、ワークピースの負電位に打ち勝つ十分な初期エネルギーを有するプラズマからの電子束はワークピースの表面を中和するほど十分にはなり得ず、過剰な正電荷が残存し得る。
【0008】
以上を考慮すると、主極性の荷電種を提供するイオンビームシステムなどのシステムにおける電荷の中和を改良するのが有益であることが理解されよう。
【発明の概要】
【0009】
本概要は、以下の実施形態の説明において更に詳しく説明される発明の概念の選択を簡易化した形で導入するために提供される。本概要は請求項に記載の発明の重要な特徴又は本質的な特徴を特定しようとするものでも、請求項に記載の発明の範囲を決定しようとするものでもない。
【0010】
一実施形態は、プラズマ処理システムであり、該システムは、プラズマを提供するプラズマ源、プラズマからのイオンを受けるように構成されたワークピースホルダ、及びプラズマ源及びワークピースホルダ間に供給されるバイアス電圧を、プラズマ源がワークピースに対して正にバイアスされる高電圧状態とプラズマ源がワークピースに対して負にバイアスされる低電圧状態との間で切り替えるように動作するパルスバイアス回路を含む。
【0011】
別の実施形態は、処理システム内でワークピースを処理する方法であり、該方法は、プラズマ源を用いてプラズマを生成するステップ、プラズマ源からのイオンを受けるようにワークピースを準備するステップ、プラズマ源がワークピースに対して正にバイアスされる高電圧状態及びプラズマ源がワークピースに対して負にバイアスされる低電圧状態を含む電圧パルス列をプラズマ源に供給するステップを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】従来の電圧パルス列を示す。
図1b図1aの電圧パルス列の拡大図を示す。
図2図1a,1bの電圧パルス列を生成するために使用し得る回路を示す。
図3】本発明の実施形態に従う処理システムを示すブロック図である。
図4】パルスバイアス回路の一実施形態を示す。
図5】模範的なパルスバイアス回路の1つの動作モードを示す。
図6】模範的なパルスバイアス回路の別の動作モードを示す。
図7】模範的なパルスバイアス回路の複数の動作モードを示す複合図である。
図8a】電圧パルス列の一実施形態を示す。
図8b】電圧パルス列の別の実施形態を示す。
図8c】電圧パルス列の他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシステム及び方法の実施形態がワークピース(基板)のイオン処理と関連して本明細書に記載される。様々な実施形態において、本システムは、例えば、半導体基板、ビットパターン媒体、固体電池又はフラットパネル又はその他の基板に対して使用できる。従って、本発明は以下に記載する特定の実施形態に限定されない。
【0014】
様々な実施形態において、処理システムは、プラズマ源及びワークピースに対してプラズマ源をパルスバイアスするスイッチ回路を含む。スイッチ回路は、様々な実施形態において、ワークピース(基板)にイオンビームと電子の交互のパルスを供給するパルスバイアスを提供する。新規なパルスバイアス回路の構成を提供することによって、正イオンのパルスイオン処理によりイオンに暴露されたワークピースはパルス注入処理のオフ期間中に供給される電子により有効に中和することができる。以下の説明において、明細書及び図面ではワークピースを明確に指し示すことなくワークピースホルダを指し示すことがある。しかしながら、特に指示しない限り、単にワークピースホルダを示す又は記載するシナリオ又は構成にはワークピースが存在することは暗黙の了解である。
【0015】
様々な実施形態において、プラズマベースのイオン注入システムはプラズマを生成するプラズマ源及びプラズマとワークピースとの間のバイアスを制御する別個の回路を用いることができる。本実施形態は、プラズマ浸漬イオン注入システムで使用するのに加えて、固有の一組の特性を有する制御可能なイオンビームを提供するために、プラズマ及びワークピース間に抽出プレートを置く処理システムに使用することができる。
【0016】
図3はイオンを複数の角度でワークピースに供給する処理システムを示すブロック図である。処理システム10は、プラズマ源12、抽出プレート14(又はシースエンジニアリングプレート)、及び処理チャンバ16を含む。ガス源18がプラズマチャンバ16に接続される。プラズマ処理装置10のプラズマ源12又は他のコンポーネントもターボポンプなどのポンプ(図示せず)に接続される。様々な実施形態では、プラズマ源12は、RFプラズマ源、誘導結合プラズマ(ICP)源、間接加熱ドライバ(IHC)、ヘリコン、グロー放電源又は当業者に知られている他のプラズマ源をとすることができる。しかしながら、図3に示す実施形態では、プラズマ源12は、RF発生器20、RF整合回路網22及びアンテナ23を含むRFプラズマ源とすることができる。プラズマ源12は筐体24で包囲し、絶縁体26で筐体24をプラズマチャンバ16から分離する。図に示されるように、ワークピースホルダ28は接地することができる。
【0017】
抽出プレート14は、注入用イオン30をワークピース(基板)40内へ抽出するために使用され、ワークピース40は図に示すように接地することができる。抽出プレート14は冷却することができる。プラズマ源12はバイアスすることができ、イオン30を抽出するために、連続した又はパルス化したバイアスをプラズマ源12に供給する下記のバイアス回路を設けることができる。抽出プレート14はイオン30をワークピース40へと通す少なくとも1つの開口34を有することができる。
【0018】
処理システム10を用いてプラズマから抽出したイオンビームは、同時に、必要に応じ複雑なマスク又はリソグラフィ処理を必要とすることなく、イオン30をある角度範囲に亘ってワークピースに供給するために使用することができる。この広い角度分布のイオンを生成する能力は、3次元特徴部を有するワークピースの処理を促進し、この場合には3次元特徴部に異なる方向から入射するイオンを同時に供給するのが望ましい。さらに、ワークピース40に供給するイオン30の正確な角度分布は処理システム10の特定の一組のイオンビームの光学的条件(パラメータ)に従って設定することができる。イオン30の角度分布に影響を与えるパラメータは、開口34の形状及びサイズ、注入電圧、抽出プレート14とワークピース40との間隔及びプラズマ密度を含む。従って、特定の一組のパラメータはイオン30の特定のイオン角度分布を設定する。
【0019】
処理システム10は、以下に詳述するように、ワークピース40に向けられた荷電粒子のパルスを生成するために、電圧のパルスを供給するパルスバイアス回路42も含む。本発明の実施形態によれば、パルスバイアス回路42はパルスの「オン」期間中にワークピースにパルス化イオンビームを供給するとともに、パルスの「オフ」期間中にワークピース40を中和するよう作用する電子を供給する電圧波形を発生することができる。図3には、以下で詳述するように、パルスバイアス回路42の動作を制御する制御信号を設定し得るコントローラ44も示されている。実施形態では、ワークピースホルダ28を1以上の直交方向48,50,52に沿って移動させるために可動ステージのような機構46を設けることもできる。例えば、抽出プレート14とワークピースホルダ28との間隔を調整するためにワークピースホルダ28の位置が変化されてもよい。ワークピース40の所望の領域の全域をイオンに暴露するためにワークピースホルダ28が方向48及び/又は50に沿って走査されてもよい。
【0020】
図4は、図3に概略的に示すパルスバイアス回路42の一実施形態400を示す。パルスバイアス回路400は、図に示すようにパルスバイアス回路400の動作を制御する制御信号を受信するようにコントローラ44に結合することができる。パルスバイアス回路400の出力402は、プラズマ源12とワークピースホルダ28との間に供給される電圧を制御するためにプラズマ源12に結合される。図4に示すように、ワークピースホルダ28は、ワークピースホルダ28とプラズマ源12との間の電圧差をパルスバイアス回路400により設定される電圧に等しくするために接地することができる。
【0021】
パルスバイアス回路400には高電圧回路404及び低電圧回路406が含まれる。高電圧回路404は、例えば高電圧源408、高電圧スイッチ412及びキャパシタ416を含むことができ、低電圧回路406は低電圧源410、低電圧スイッチ414及びキャパシタ418を含むことができる。
【0022】
本実施形態によれば、高電圧回路404はプラズマ源12の電圧をワークピースホルダに対して高い正電位になるように設定することができる。図に示すように、高電圧回路404は高電圧(HV)電源408を含み、この電源は約100V以上の正電圧を出力することができ、特に500V〜50kVの正電圧を出力することができる。従って、高電圧源408が高電圧スイッチ412を介してプラズマ源12に接続されると、プラズマ源12は約+100V〜+50kVの電位に達し、プラズマ源12から抽出された正イオンは一価のイオンにつき100eV〜50keVの範囲のエネルギーでワークピースホルダ28に向け加速せしめられる。以下に詳述するように、高電圧回路404は高電圧源408をプラズマ源102に間欠的に電気的に断続するよう動作することができ、それによってプラズマ源12を間欠的に高電圧にパルス駆動し、イオンをワークピースホルダ28に向けてパルスの形で供給することができる。
【0023】
本実施形態によれば、低電圧回路406はプラズマ源12の電圧をワークピースホルダ28に対して小さな負電位に設定することができる。図に示すように、低電圧回路406は低電圧源410を含み、この低電圧源は約−2V以上の負電圧を出力することができ、特に−2V〜−100Vの負電圧を出力することができる。従って、低電圧源410が低電圧スイッチ414を介してプラズマ源12に接続されると、プラズマ源は約−2V〜−100Vの電位に達し、プラズマ源12内のイオンがワークピースホルダ28の方へ加速するのを妨げると同時に、プラズマ源12内の電子を低いエネルギー、即ち約100eV以下のエネルギーで、ワークピースホルダ28に向け加速する。以下に詳述するように、低電圧回路406は低電圧回路をプラズマ源12に間欠的に電気的に断続するよう動作することができ、それによってプラズマ源を小さい負電圧に間欠的にパルス駆動し、電子をワークピースホルダに向けてパルスの形で供給することができる。
【0024】
ここで図5を参照すると、正イオンをワークピースホルダ28に向けて送り出すパルスバイアス回路400の一つの動作モードが示されている。図5に示すシナリオでは、高電圧スイッチ412が閉じ、高電圧源408をプラズマ源12に結合している。図5に示す動作モードでは、低電圧スイッチ414は開で、低電圧源410をプラズマ源12から切り離している。このシナリオでは、プラズマ源12は高電圧源408により供給される正電位(電圧)まで充電することができる。従って、イオン420はワークピースホルダ28に向けて加速される。プラズマ源12の様々な実施形態では、イオン420は、ある角度範囲に亘ってワークピースホルダ28に向けられたイオンを含むビーム、例えばビーム430、を形成することができる。様々な実施形態では、コントローラ44は、イオン420をイオンのパルスとしてワークピースホルダ28に供給するために、高電圧スイッチ412を周期的に開閉するように指示することができる。
【0025】
過剰な正電荷がワークピースホルダ28上に集積するのを防止するために、パルスバイアス回路400は図6に示す第2の動作モードに間欠的に切り替えることができる。図6は、高電圧スイッチが開き、高電圧源408をプラズマ源12から切り離すシナリオを示している。さらに、低電圧スイッチ414が閉じ、低電圧源410をプラズマ源12に接続し、よって上述したように小さな負バイアスをプラズマ源12に供給することができる。このシナリオでは、プラズマ源は低電圧源410により設定された負電圧に達し、電子422をプラズマ源12から加速し、図に示すように接地できるワークピースホルダ28に衝突させることができる。
【0026】
様々な実施形態では、コントローラ44は、電圧(>100V)のパルスと負電圧(−100v〜−2V)のパルスを交互に含むパルス列がプラズマ源12に供給されるように、パルスバイアス回路400を図5に示す構成及び図6に示す構成の間で交互に切り替えるように指示することができる。従って、パルスバイアス回路は、低電圧スイッチ414を開くと同時に高電圧スイッチ412を閉じる動作と、低電圧スイッチ414を閉じると同時に高電圧スイッチ412を開く閉じる動作とを交互に繰り返すことができる。これは、イオン420のパルスと電子422のパルスを交互に含むパルス列を生成することができ、両方の種とも図7に示すようにプラズマ源から加速されてワークピースホルダ28に入射する。
【0027】
図7はイオン420及び電子422の交互のパルスによるワークピース(明確に示されていない)の処理を示す。上述したように、イオン420は、高電圧スイッチ412が閉じ(且つ低電圧スイッチ414が開く)とき加速され、電子422は、高電圧スイッチ412が開き(且つ低電圧スイッチ414が閉じる)とき加速される。従って、イオン420及び電子422の多数のパルスが図7に示されているが、任意の所定の瞬時においてはイオン420又は電子422の1つのパルスのみがワークピースホルダ28に入射することは容易に理解されよう。
【0028】
イオン420のパルスと電子422のパルスを交互にすることによって、パルスバイアス回路400と関連して動作する処理システム100のような処理システムは、ワークピースホルダ28の上に置かれたワークピース(図3のワークピース40参照)を、過剰正電荷の集積を防止しながら、イオン420のドーズ量で有効に処理することができる。様々な実施形態では、電子422及び/又はイオン420のパルスの持続時間は数ミリ秒又はそれ以下の程度とすることができ、特に1μs〜10ms程度とすることができる。イオン420によりワークピースホルダ28に集積される正電荷のドーズ量、低電圧源410により設定される負電圧、及び低電圧スイッチ414が閉じたままとされる持続時間などの1以上のファクタに依存して、電子422のパルスはワークピースホルダ上の正電荷の一部分又はすべてをイオン420の各ドーズの間に中和することができ、この点については以下で図8を参照してさらに説明する。
【0029】
高電圧スイッチ412を閉じる「オン」状態と高電圧スイッチ412を開く「オフ」状態との間の有効な切り替えを保証するために、パルスバイアス回路は高電圧回路キャパシタ416及び低電圧回路キャパシタ418も含む。高電圧回路キャパシタ416は電荷を蓄積し、高電圧スイッチ412が閉じたとき高速パルスの形でプラズマ源に放電することができる。このように、プラズマ源12の電圧が急速に増加し、高電圧源408の能力が高められて高電圧源408により設定される実際の電圧をプラズマ源に急速に与えることができる。これは、プラズマ源12のコンポーネントが比較的大きく、その電位を所望の電圧に調整するために相当大きな電荷を必要とする処理システムに特に有利である。
【0030】
他方、低電圧回路キャパシタ418は、低電圧スイッチ414が閉じ、高電圧スイッチ412が開くとき、プラズマ源12の放電を促進することができる。比較的大きな電荷が「オン」期間中にプラズマ源12のコンポーネント上に存在し得るため、低電圧源410により設定される負電圧をタイムリーに効率よく設定するために、プラズマ源12のコンポーネントを急速に放電させることが有利である。
【0031】
「オフ」期間中にプラズマ源が到達する実際の電圧は低電圧源410により設定される電圧と相違し得る。従って、上述したように、内部回路インピーダンスのために、プラズマ源12は公称電圧に対して僅かに正の電位に維持され得る。従って、本実施形態はこれに合わせて低電圧源410をプラズマ源12に実際に望まれるよりも大きな負電圧に設定することができる。例えば、ワークピース40への入射時に電子に約5eVのエネルギーを与えるのが望ましい場合には、低電圧源410は設定電圧とプラズマ源12の到達電圧との間に存在し得る+5Vのオフセットを考慮して−10Vに設定することができる。このようにすると、プラズマ源12の電位は実際に約−5Vに到達し、よってプラズマ源12とワークピースホルダ28の接地電位との間の5Vの電界により負に帯電した電子を加速することができる。
【0032】
様々な実施形態では、パルスバイアス回路400は、ワークピースの処理を最適にするために、いくつかあるファクタのうち、「オン」期間、「オフ」期間及び「オフ」期間中に設定される負電圧を調整することができる。例えば、ワークピースは、第1の「オン」期間、第1の「オフ」期間及び第1の負電圧などの要素を含む第1の電圧パルス列を用いて処理し、その後ワークピースに蓄積された電荷を監視することができる。この電圧パルス列の上記の要素の何れかを監視した蓄積電荷に基づいて調整することができる。図8aはパルスバイアス回路400のようなパルスバイアス回路により出力し得る電圧パルス列802を示す。電圧パルス列802は「オン」部分804を含み、この部分は正バイアスを出力し、プラズマ源に供給する正バイアスに対応する。「オン」部分804の間には「オフ」部分806が散在し、この部分は小さい負電圧バイアスを出力する。本例では、「オン」部分804のデューティサイクルは50%であり、「オン」部分804と「オフ」部分806は等しい持続時間である。上述したように、パルスバイアス回路400はプラズマ源12の充電及び放電を促進するキャパシタを含むため、電圧パルス列802はプラズマ源12上の実際の電圧変化に、必ずしも完全に同じになるわけではないが、大体一致させることができる。従って、プラズマ源12の電圧は、高い正電圧に対応する山部と小さい負電圧に対応する谷部を有する方形波パルスの列を構成する。50%のデューティサイクルの条件では、ワークピースは総処理時間の半分の間イオン処理に曝され、総処理時間の半分の間電子に曝される。所望のイオン処理をもっと急速に終了させるためにはデューティサイクルを大きくするのが望ましいが、ワークピースがイオンに曝される時間の割合が増大すると、ワークピース上に過剰な正電荷が集積することになり得る。従って、いくつかの処理条件の下では、「オン」部分804中に生じる正電荷を「オフ」部分806中に完全に中和することはできなくなる。
【0033】
この状態に対処するために、「オフ」部分806中に供給される負電圧を増大させてプラズマ源からより高い電子束を引き出し、それによってワークピース上の正電荷の高速中和を提供することができる。しかしながら、これは、ワークピースが電子デバイスを製造するための半導体基板である場合に、増大した電子エネルギーにより生じ得る損傷とバランスを取らなければならない。
【0034】
図8bはワークピースの中和を増大ずる別の方法を示す。図8bの実施形態では、電圧パルス列812は一連の「オン」部分814の間に「オン」部分814より長い持続時間を有する「オフ」部分806が散在する。この場合には、高電圧パルスのディーティサイクルは図8aのシナリオの場合より低いため、相対的により長い時間を「オフ」部分806中にワークピース上の正電荷を中和する電子のために提供することができ、電子エネルギーを増大させる必要はない。
【0035】
図8cは別の実施形態を示し、本実施形態では、電圧パルス列822は図8aと同じデューティサイクル(50%)を有し、総処理時間に対するイオン処理時間の割合を同一に維持することによって図8aと同一のワークピース処理能力を提供する。しかしながら、電圧パルス列822の周波数は電圧パルス列802の周波数より低いため、電圧パルス列822の「オン」部分824及び「オフ」部分826の持続時間は電圧パルス列802の対応する部分より長い。特に、「オフ」部分806及び826の時間の割合が同じであっても、長い「オフ」部分826は「オフ」部分806より正電荷の中和により効果的である。これは、プラズマ源が高電圧からスイッチイングされた後に所望の負電位に到達するまでに電圧減衰曲線830で示す減衰時間(数百〜数千ナノ秒程度)を要するという事実に起因する。それゆえ、これは、プラズマ源が所望の負電位になって図8aに示す「オフ」部分806中に電子をワークピースに向けて加速する実時間tnegativeを短くする。図8cの場合には、「オフ」部分826に占めるtnegativeの割合が所望の「オフ」部分806に占めるtnegativeの割合に比較して大きくなる(「オフ」部分806の場合には電圧減衰曲線830が全「オフ」部分806のより大きな部分を消費する)。
【0036】
しかしながら、負電圧がプラズマ源に供給される「オフ」部分の持続時間が十分に長い場合には、ワークピース40は電子の過剰暴露により負電荷を生じ、その後電子はもはやプラズマ源から加速されなくなる。従って、電圧パルス列の「オフ」部分の持続時間の最適範囲は、プラズマパワー、ガス圧力及びプラズマ源電圧などの様々な他の動作パラメータに依存して決定することができる。
【0037】
本明細書に記載する方法は、例えば命令を実行し得るマシンにより読み取り可能なコンピュータ可読媒体上に命令のプログラムをタンジブルに具体化することによって自動化することができる。このようなマシンの一例に汎用コンピュータがある。当業者に周知の適切な記憶媒体の非限定的な例として、読み取り可能又は書き込み可能なCD、フラッシュメモリチップ(例えばサムドライブ)、様々な磁気記憶媒体などの装置がある。
【0038】
特に、電圧パルス列をプログラム源に供給するステップは、電子プロセッサ、コンピュータ可読メモリ、及び/又はコンピュータ可読プログラムの組み合わせによって少なくとも部分的に実行することができる。コンピュータメモリは、プラズマシステムの処理と関連するプロセス履歴情報を受信し、表示し、格納し、格納した電圧値により実証可能に構成することができる。
【0039】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態の範囲に限定されない。実際のところ、本明細書の記載に加え、開示された本発明の他の様々な実施形態や変形例が、先述の説明や添付図面から当業者には明らかである。従って、これらの他の実施形態及び変形例は、開示された本発明の範囲に含まれることが意図されている。更に、本発明は、特定の実施状況において、特定の環境において、特定の目的のために、本明細書に記載されてきたが、その有用性は開示の実施形態に限定されず、本発明は様々な環境において様々な目的のために有利に実施可能である。従って、特許請求の範囲の記載は、明細書および図面の開示を最大限に斟酌して解釈すべきことは、言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】