(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
反発性ガイダンス分子a(Repulsive Guidance Molecule a)(「RGMa」)に結合する単離された抗体またはこの抗体断片であって、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(c)配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(d)配列番号13のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(e)配列番号17のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(f)配列番号21のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(g)配列番号25のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(h)配列番号29のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(i)配列番号33のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(j)配列番号37のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域;(k)配列番号41のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域;(l)配列番号45のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域;(m)配列番号49のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域;(n)配列番号53のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(o)配列番号57のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(p)配列番号61のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(q)配列番号152のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(r)配列番号95のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(s)配列番号99のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(t)配列番号103のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(u)配列番号107のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(v)配列番号111のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(w)配列番号115のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(x)配列番号119のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(y)配列番号123のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(z)配列番号127のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(aa)配列番号131のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、(bb)配列番号135のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(cc)配列番号67のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(dd)配列番号68のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(ee)配列番号69のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域(ff)配列番号70のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(gg)配列番号71のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(hh)配列番号72のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(ii)配列番号73のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(jj)配列番号1のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号5のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(kk)配列番号9のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号13のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(ll)配列番号17のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号21のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(mm)配列番号25のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号29のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(nn)配列番号33のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号37のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(oo)配列番号41のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン(variably heavy domain)、および配列番号45のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(pp)配列番号49のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号53のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(qq)配列番号57のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン、および配列番号61のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(rr)配列番号152のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、および配列番号95のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(ss)配列番号99のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、および配列番号103のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(tt)配列番号107のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、および配列番号111のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(uu)配列番号115のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、および配列番号119のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(vv)配列番号123のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、および配列番号127のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(ww)配列番号131のアミノ酸配列を含む可変重ドメイン領域、および配列番号135のアミノ酸配列を含む可変軽ドメイン領域、(xx)配列番号2のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(yy)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(zz)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(aaa)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(bbb)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(ccc)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(ddd)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(eee)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(fff)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(ggg)配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(hhh)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖;(iii)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖;(jjj)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(kkk)配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(lll)配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(mmm)配列番号92または153のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号93または154のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号94または155のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(nnn)配列番号96または156のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号97または157のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号98または158のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(ooo)配列番号100のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号101のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号102のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(ppp)配列番号104のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号106のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(qqq)配列番号108のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号109のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号110のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(rrr)配列番号112のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号113のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号114のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(sss)配列番号116のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号117のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号118のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(ttt)配列番号120のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号121のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号122のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(uuu)配列番号124のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号125のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号126のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(vvv)配列番号128のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号129のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号130のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(www)配列番号132のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号133のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号134のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、(xxx)配列番号136のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号137のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号138のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(yyy)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(zzz)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(aaaa)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(bbbb)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(cccc)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(dddd)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(eeee)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(ffff)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(gggg)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(hhhh)配列番号92または153のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号93または154のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号94または155のアミノ酸配列を含むCDR3とを
含む可変重鎖、および配列番号96または156のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号97または157のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号98または158のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(iiii)配列番号100のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号101のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号102のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号104のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号106のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(jjjj)配列番号108のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号109のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号110のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号112のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号113のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号114のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(kkkk)配列番号116のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号117のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号118のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号120のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号121のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号122のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(llll)配列番号124のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号125のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号126のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号128のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号129のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号130のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(mmmm)配列番号132のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号133のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号134のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号136のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号137のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号138のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(nnnn)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(oooo)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(pppp)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(qqqq)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(rrrr)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(ssss)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(tttt)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(uuuu)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(vvvv)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(wwww)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(xxxx)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDRとを含む可変重ドメイン鎖、および配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽ドメイン鎖;(yyyy)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖、(zzzz)配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変重鎖、および配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む可変軽鎖からなる群より選択されるドメインまたは領域を含む、単離された抗体またはこの抗体断片。
ヒト抗体、免疫グロブリン分子、ジスルフィド連結Fv、モノクローナル抗体、親和性成熟、scFv、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、ヒト化抗体、多重特異性抗体、Fab、二重特異性抗体、DVD、Fab’、二特異性抗体、F(ab’)2およびFvからなる群より選択される、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
モノクローナル抗体または抗体断片が、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメインおよびヒトIgA定常ドメインからなる群より選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号25、配列番号33、配列番号41、配列番号49、配列番号57、配列番号91、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号123および配列番号131からなる群より選択される配列を含む可変重領域を含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号5、配列番号13、配列番号21、配列番号29、配列番号37、配列番号45、配列番号53、配列番号61、配列番号95、配列番号103、配列番号111、配列番号119、配列番号127および配列番号135からなる群より選択される配列を含む可変軽領域を含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号6、配列番号7および配列番号8、または配列番号6、配列番号7および配列番号67、配列番号6、配列番号7および配列番号68、または配列番号6、配列番号7および配列番号69、または配列番号6、配列番号7および配列番号70、または配列番号6、配列番号7および配列番号71、または配列番号6、配列番号7および配列番号72、または配列番号6、配列番号7および配列番号73、または配列番号14、配列番号15および配列番号16、または配列番号22、配列番号23および配列番号24、または配列番号30、配列番号31および配列番号32、または配列番号38、配列番号39および配列番号40、または配列番号54、配列番号55および配列番号56、または配列番号62、配列番号63および配列番号64、または配列番号46、配列番号47および配列番号48、配列番号96、配列番号97および配列番号98、配列番号104、配列番号105および配列番号106、配列番号112、配列番号113および配列番号114、配列番号120、配列番号121および配列番号122、配列番号128、配列番号129および配列番号130、配列番号136、配列番号137および配列番号138、ならびに配列番号156および配列番号157および配列番号158の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号2、配列番号3および配列番号4、または配列番号10、配列番号11および配列番号12、または配列番号18、配列番号19および配列番号20、または配列番号26、配列番号27および配列番号28、または配列番号34、配列番号35および配列番号36、または配列番号50、配列番号51および配列番号52、または配列番号58、配列番号59および配列番号60、配列番号42、配列番号43および配列番号44、配列番号92、配列番号93および配列番号94、配列番号100、配列番号101および配列番号102、配列番号108、配列番号109および配列番号110、配列番号116、配列番号117および配列番号118、配列番号124、配列番号125および配列番号126、配列番号132、配列番号133および配列番号134、ならびに配列番号153および配列番号154および配列番号155の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号2、配列番号3および配列番号4の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号6、配列番号7および配列番号8の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号10、配列番号11および配列番号12の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号14、配列番号15および配列番号16の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号18、配列番号19および配列番号20の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号22、配列番号23および配列番号24の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号26、配列番号27および配列番号28の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号30、配列番号31および配列番号32の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号34、配列番号35および配列番号36の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号38、配列番号39および配列番号40の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号50、配列番号51および配列番号52の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号54、配列番号55および配列番号56の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号58、配列番号59および配列番号60の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号62、配列番号63および配列番号64の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号42、配列番号43および配列番号44の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号46、配列番号47および配列番号48の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号92または153、配列番号93または154および配列番号94または155の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号96または156、配列番号97または157および配列番号98または158の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号100、配列番号101および配列番号102の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号104、配列番号105および配列番号106の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号108、配列番号109および配列番号110の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号112、配列番号113および配列番号114の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号116、配列番号117および配列番号118の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号120、配列番号121および配列番号122の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号124、配列番号125および配列番号126の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号128、配列番号129および配列番号130の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
配列番号132、配列番号133および配列番号134の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変重ドメインと、配列番号136、配列番号137および配列番号138の相補性決定領域(CDR)残基を含む可変軽ドメインとを含む、請求項1に記載の単離された抗体または抗体断片。
イメージング剤が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識およびビオチンからなる群より選択される、請求項25に記載の抗体または抗体断片。
放射性標識が、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Hoおよび153Smからなる群より選択される、請求項26に記載の抗体または抗体断片。
神経突起変性に関連する疾患または障害を治療、予防、調節または軽減する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗体を、これを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
神経突起変性障害が、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、ハーラー症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、特発性炎症性脱髄疾患、ビタミンB12欠乏症、橋中央ミエリン溶解、脊髄癆、横断性脊髄炎、デビック病、進行性多病巣性白質脳症、視神経炎、外傷性CNS損傷、虚血性脳卒中、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症および大脳白質委縮症からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
RGMaエピトープPCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(hRGMaの47位から69位)(配列番号79)に結合する、請求項37から43のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明者らは、反発性ガイダンス分子a(「RGMa」)に結合し、神経突起変性に関係する疾患を治療するのに使用することができる新たな抗体を見出している。本明細書で提供されるのは、神経突起変性に関係する疾患に関連する臨床兆候を軽減することができる特異的抗体および非特異的抗体である。
【0045】
1.定義
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定的であることを意図するものではない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「and」および「the」は、文脈上特に明記されない限り、複数形に関する言及を含む。
【0046】
a.約
本明細書で使用される場合、「約」は、表示されている値からおおよそ+/−10%の変動を指し得る。このような変動は、これについて具体的に言及されているか否かにかかわらず、本明細書で提供される任意の所定値に常に含まれると理解するべきである。
【0047】
b.親和性成熟抗体
本明細書では、「親和性成熟抗体」は、1つ以上のCDRに対する1つ以上の改変であって、標的抗原に対する抗体の親和性(即ち、K
D、k
dまたはk
a)を、この改変をもたない親抗体と比較して改善する改変を有する抗体を指すのに使用される。例示的な親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体を生産するための様々な手法が当技術分野において公知であり、バイオディスプレイを使用して調製された結合抗体ライブラリのスクリーニングが挙げられる。例えば、Marks et al,BioTechnology,10:779−783(1992)には、VHおよびVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟が記載されている。Barbas et al,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:3809−3813(1994);Schier et al,Gene,169:147−155(1995);Yelton et al,J.Immunol,155:1994−2004(1995);Jackson et al,J.Immunol,154(7):3310−3319(1995);およびHawkins et al,J.Mol.Biol,226:889−896(1992)には、CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発が記載されている。米国特許第6,914,128号明細書には、活性を増強するアミノ酸残基による選択的変異誘発部位および接触部位または超変異部位における選択的変異が記載されている。
【0048】
c.抗体および複数の抗体
本明細書で使用される場合、「抗体」および「複数の抗体」は、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全または部分的ヒト化)、動物抗体、例えば限定されないが、トリ(例えば、カモまたはガチョウ)、サメ、クジラおよび非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウスなど)または非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジーなど)を含む哺乳動物、組換え抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(「scFv」)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)
2断片、ジスルフィド結合Fv(「sdFv」)および抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体、二重ドメイン抗体、二重可変ドメイン(DVD)または三重可変ドメイン(TVD)抗体(二重可変ドメイン免疫グロブリンおよびこの作製方法は、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれるWu,C,et al,Nature Biotechnology,25(11):1290−1297(2007)および国際公開第2001/058956号に記載されている。)、ならびに上記のいずれかの機能的に活性なエピトープ結合断片を指す。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、即ち分析物結合部位を含む分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。簡素化のために、分析物に対する抗体は、本明細書では「抗分析物抗体」または単に「分析物抗体」(例えば、抗RGMa抗体またはRGMa抗体)と称されることが多い。
【0049】
d.抗体断片
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、抗原結合部位または可変領域を含むインタクトな抗体の一部を指す。前記一部は、インタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(即ち、抗体のアイソタイプに応じて、CH2、CH3またはCH4)を含まない。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab断片、Fab’断片、Fab’−SH断片、F(ab’)
2断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、一本鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変ドメインのみを含有する一本鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する一本鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域のみを含有する一本鎖ポリペプチドおよび重鎖可変領域の3つのCDRを含有する一本鎖ポリペプチドが挙げられる。
【0050】
e.結合定数
結合定数を本明細書で説明する。本明細書で使用される場合、用語「会合速度定数」、「k
on」または「k
a」は、以下の方程式によって示されているように、標的抗原に対する抗体の結合速度または抗体と抗原との間の複合体形成速度を示す値を指す:
抗体(Ab)+抗原(Ag)→Ab−Ag。
【0051】
本明細書で互換的に使用される場合、用語「解離速度定数」、「k
off」または「k
d」は、以下の方程式によって示されているように、標的抗原からの抗体の解離速度、またはAb−Ag複合体が遊離抗体および抗原に経時的に分離することを示す値を指す:
抗体(Ab)+抗原(Ag)←Ab−Ag。
【0052】
会合および解離速度定数を測定するための方法は、当技術分野において周知である。蛍光ベースの技術を使用することによって、平衡状態にある生理的緩衝液中で試料を調べるための高い感度および能力が得られる。BIAcore(登録商標)(生物分子相互作用分析)アッセイなどの他の実験的アプローチおよび装置を使用することができる(例えば、BIAcore International AB,a GE Healthcare company,Uppsala,Swedenから入手可能な装置)。さらに、Sapidyne Instruments(Boise,Idaho)から入手可能なKinExA(登録商標)(Kinetic Exclusion Assay)アッセイも使用することができる。
【0053】
本明細書で互換的に使用される場合、用語「平衡解離定数」または「K
D」は、解離速度(k
off)を会合速度(k
on)で割ることによって得られた値を指す。会合速度、解離速度および平衡解離定数は、抗原に対する抗体の結合親和性を表すのに使用される。
【0054】
f.結合タンパク質
本明細書では、「結合タンパク質」は、例えば、ポリペプチド、抗原、化合物または他の分子または任意の種類の基質などの結合パートナーに結合して複合体を形成する単量体または多量体タンパク質を指すのに使用される。結合タンパク質は、結合パートナーに特異的に結合する。結合タンパク質としては、抗体および当技術分野において公知のおよび本明細書における下記のこの抗原結合断片およびこの他の種々の形態および誘導体、ならびに抗原分子または抗原分子上の特定の部位(エピトープ)に結合する1つ以上の抗原−結合ドメインを含む他の分子が挙げられる。従って、結合タンパク質としては、限定されないが、抗体、四量体免疫グロブリン、IgG分子、IgG
1分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、親和性成熟抗体、および抗原に結合する能力を保持する任意のこのような抗体の断片が挙げられる。
【0055】
g.二特異性抗体
本明細書では、「二特異性抗体」は、クアドローマ技術によって(Milstein et al,Nature,305(5934):537−540(1983)を参照のこと)、2つの異なるモノクローナル抗体の化学的コンジュゲーションによって(Staerz et al.,Nature,314(6012):628−631(1985)を参照のこと)、または変異をFc領域に導入するノブ・イントゥ・ホール(knob−into−hole)もしくは類似のアプローチによって(Holliger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90(14):6444−6448(1993)を参照のこと)作製され、この結果、複数の異なる免疫グロブリン種が得られる全長抗体を指すのに使用され、このうち1つのみが、機能性二特異性抗体である。二特異性抗体は、この2つの結合アーム(一組のHC/LC)の一方上で1つの抗原(またはエピトープ)に結合し、この第2のアーム(別組のHC/LC)上で異なる抗原(またはエピトープ)に結合する。この定義によれば、二特異性抗体は、2つの別個の抗原結合アーム(特異性およびCDR配列の両方において)を有し、これが結合する各抗原に対して一価である。
【0056】
h.CDR
本明細書では、「CDR」は、抗体可変配列内の「相補性決定領域」を指す。重鎖および軽鎖の可変領域それぞれに3つのCDRがあり、これらは、各可変領域の「CDR1」、「CDR2」および「CDR3」と指定されている。本明細書で使用される場合、用語「CDRセット」は、抗原に結合する単一の可変領域中に存在する3つのCDRの一群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムに従って異なって定義されている。Kabat(Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)and(1991))によって記載されているシステムは、抗体の任意の可変領域に適用可能な一義的な残基ナンバリングシステムを提供するだけではなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、「KabatのCDR」と称され得る。Chothiaおよび共同研究者(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol,196:901−917(1987);およびChothia et al,Nature,342:877−883(1989))は、KabatのCDR内の特定の下位部分が、アミノ酸配列のレベルで大きな多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格立体構造をとることを見出した。これらの下位部分は、「L1」、「L2」および「L3」または「H1」、「H2」および「H3」と指定され、ここで、「L」および「H」は、軽鎖領域および重鎖領域をそれぞれ指定する。これらの領域は、「ChothiaのCDR」と称され得、KabatのCDRと重複する境界を有する。KabatのCDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan,FASEB J.,9:133−139(1995)およびMacCallum,J.Mol.Biol,262(5):732−745(1996)によって記載されている。さらに他のCDR境界定義は、本明細書のシステムの1つに厳密には従わない場合があるが、それでもなおKabatのCDRと重複し、特定の残基または残基群またはCDR全体でさえ抗原結合に有意な影響を与えないという予測または実験的知見を踏まえて、短くなることもあるし、または長くなることもある。本明細書で使用される方法は、これらのシステムのいずれかに従って定義されたCDRを用い得るが、特定の実施形態は、KabatまたはChothiaによって定義されるCDRを使用する。
【0057】
i.成分または複数の成分
「成分」、「複数の成分」または「少なくとも1つの成分」は、一般に、本明細書に記載される方法および当技術分野において公知の他の方法に従って、試験試料、例えば、患者の尿、血清または血漿試料をアッセイするためのキットに含まれ得る捕捉抗体、検出またはコンジュゲート較正用物質、対照、感度パネル、容器、緩衝液、希釈液、塩、酵素、酵素の補助因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、基質(例えば、溶液として)、停止溶液などを指す。アッセイで使用するために、幾つかの成分は溶液性のものでもよいし、または再構成用に凍結乾燥したものでもよい。
【0058】
j.コンセンサスまたはコンセンサス配列
本明細書で使用される場合、「コンセンサス」または「コンセンサス配列」は、特定抗原の複数のサブタイプのアライメント分析に基づいて構築された合成核酸配列または対応するポリペプチド配列を指す。前記配列は、特定抗原の複数のサブタイプまたはセロタイプに対する広範な免疫を誘導するのに使用され得る。融合タンパク質などの合成抗原をコンセンサス配列(またはコンセンサス抗原)に操作することができる。
【0059】
k.対照
本明細書で使用される場合、「対照」は、対象とする分析物、例えば、RGMa(例えば、膜結合RGMa、可溶性RGMa、膜結合RGMaの断片、可溶性RGMaの断片、RGMa(膜結合RGMaまたは可溶性RGMa)の変異体またはこれらの任意の組み合わせ)を含まないことが公知の組成物(「陰性」)、または対象とする分析物、例えば、RGMa(例えば、膜結合RGMa、可溶性RGMa、膜結合RGMaの断片、可溶性RGMaの断片、RGMa(膜結合RGMaまたは可溶性RGMa)の変異体またはこれらの任意の組み合わせ)を含むことが公知の組成物(「陽性対照」)を指す。陽性対照は、既知濃度のRGMaを含み得る。本明細書では、「対照」、「陽性対照」および「較正用物質」は、既知濃度のRGMaを含む組成物を指すのに互換的に使用され得る。「陽性対照」は、アッセイの性能特性を確立するのに使用され得、試薬(例えば、分析物)の完全性の有用な指標である。「正常対照」は、鉄関連疾患または障害がない試料または被験体を指し得る。
【0060】
l.誘導体
本明細書で使用される場合、抗体の「誘導体」は、非改変(genuine)抗体または親抗体と比較して、アミノ酸配列に1つ以上の改変を有する抗体を指し、改変されたドメイン構造を示し得る。誘導体は、ネイティブな抗体に見られる典型的なドメイン構造およびアミノ酸配列を依然としてとることができ、標的(抗原)に特異的に結合することができる。抗体誘導体の典型的な例は、他のポリペプチドにカップリングされた抗体、再配置された抗体ドメイン、または抗体断片である。誘導体はまた、少なくとも1つのさらなる化合物、例えば、共有結合または非共有結合によって連結されているタンパク質ドメインを含み得る。連結は、当技術分野において公知の方法による遺伝子融合に基づくものであり得る。本発明に従って用いられる抗体を含む融合タンパク質中に存在するさらなるドメインは、好ましくは、柔軟なリンカー、有利には、さらなるタンパク質ドメインのC末端と抗体のN末端との間の距離(またはこの逆も同様である。)を結ぶのに十分な長さの複数の親水性ペプチド結合アミノ酸を含むペプチドリンカーによって連結され得る。抗体は、生物学的活性または固体支持体に対する選択的結合に適切なコンフォメーションを有するエフェクター分子、例えば、生物学的に活性な物質(例えば、サイトカインまたは成長ホルモン)、化学薬剤、ペプチド、タンパク質または薬物に連結され得る。
【0061】
m.二重特異性抗体
本明細書では、「二重特異性抗体」は、この2つの結合アーム(一組のHC/LC)のそれぞれにおいて2つの異なる抗原(またはエピトープ)に結合することができる全長抗体を指すのに使用される(国際公開第02/02773号を参照のこと)。従って、二重特異性結合タンパク質は、同一の特異性および同一のCDR配列を有する2つの同一の抗原結合アームを有し、これが結合する各抗原に対して二価である。
【0062】
n.二重可変ドメイン
本明細書では、「二重可変ドメイン」は、結合タンパク質上の2つ以上の抗原結合部位を指すのに使用され、二価(2つの抗原結合部位)、四価(4つの抗原結合部位)または多価結合タンパク質であり得る。DVDは、単一特異性、即ち、1つの抗原(または1つの特異的エピトープ)に結合することができるか、または多重特異性、即ち、2つ以上の抗原(即ち、同じ標的抗原分子の2つ以上のエピトープまたは異なる標的抗原の2つ以上のエピトープ)に結合することができる。好ましいDVD結合タンパク質は、2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含み、「DVD免疫グロブリン」または「DVD−Ig」と称される。従って、このようなDVD−Ig結合タンパク質は、四量体であり、IgG分子を連想させるが、IgG分子よりも多くの抗原結合性の部位を提供する。従って、四量体DVD−Ig分子の半分はそれぞれ、IgG分子の半分の一方を連想させ、重鎖DVDポリペプチドおよび軽鎖DVDポリペプチドを含むが、単一の抗原結合ドメインを提供するIgG分子の一組の重鎖および軽鎖とは異なり、DVD−Igの一組の重鎖および軽鎖は、2つ以上の抗原結合部位を提供する。
【0063】
DVD−Ig結合タンパク質の各抗原結合部位は、ドナー(「親」)モノクローナル抗体に由来し得、従って、抗原結合部位あたりの抗原結合に関与する合計6つのCDRを有する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。従って、2つの異なるエピトープ(即ち、2つの異なる抗原分子の2つの異なるエピトープまたは同じ抗原分子の2つの異なるエピトープ)に結合するDVD−Ig結合タンパク質は、第1の親モノクローナル抗体に由来する抗原結合部位および第2の親モノクローナル抗体の抗原結合部位を含む。
【0064】
DVD−Ig結合分子の設計、発現および特性決定についての説明は、国際公開第2007/024715号、米国特許第7,612,181号明細書、およびWu et al,Nature Biotech.,25:1290−1297(2007)に提供されている。このようなDVD−Ig分子の好ましい例は、構造式VD1−(X1)n−VD2−C−(X2)n(式中、VD1は、第1の重鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の重鎖可変ドメインであり、Cは、重鎖定常ドメインであり、X1は、CH1ではないという条件でリンカーであり、X2は、Fc領域であり、nは、0または1であるが、好ましくは、1である。)を含む重鎖;ならびに構造式VD1−(X1)n−VD2−C−(X2)n(式中、VD1は、第1の軽鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の軽鎖可変ドメインであり、Cは、軽鎖定常ドメインであり、X1は、CH1ではないという条件でリンカーであり、X2は、Fc領域を含まず、nは、0または1であるが、好ましくは、1である。)を含む軽鎖を含む。このようなDVD−Igは、2つのこのような重鎖および2つのこのような軽鎖を含み得、ここで、各鎖は、可変領域の間に介在する定常領域を有さずに、タンデムに連結された可変ドメインを含み、重鎖および軽鎖は会合して、タンデムな機能性抗原結合部位を形成し、一組の重鎖および軽鎖は、別組の重鎖および軽鎖と会合して、4つの機能性抗原結合部位を有する四量体結合タンパク質を形成し得る。別の例では、DVD−Ig分子は、可変ドメインの間に介在する定常領域を有さずに、タンデムに連結された3つの可変ドメイン(VD1、VD2、VD3)をそれぞれ含む重鎖および軽鎖を含み得、ここで、一組の重鎖および軽鎖は、会合して、3つの抗原結合部位を形成し得、一組の重鎖および軽鎖は、別組の重鎖および軽鎖と会合して、6つの抗原結合部位を有する四量体結合タンパク質を形成し得る。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明のDVD−Ig結合タンパク質は、この親モノクローナル抗体が結合する同じ標的分子に結合するだけではなく、1つ以上のこの親モノクローナル抗体の1つ以上の所望の特性も有する。好ましくは、このようなさらなる特性は、1つ以上の親モノクローナル抗体の抗体パラメータである。1つ以上のこの親モノクローナル抗体に由来するDVD−Ig結合タンパク質に影響を与え得る抗体パラメータとしては、限定されないが、抗原特異性、抗原親和性、効力、生物学的機能、エピトープ認識、タンパク質安定性、タンパク質溶解度、生産効率、免疫原性、薬物動態、バイオアベイラビリティ、組織交差反応性およびオルソロガス抗原結合が挙げられる。
【0066】
DVD−Ig結合タンパク質は、RGMaの少なくとも1つのエピトープに結合する。DVD−Ig結合タンパク質の非限定的な例としては、RGMaの1つ以上のエピトープに結合するDVD−Ig結合タンパク質、ヒトRGMaのエピトープおよび別の種(例えば、マウス)のRGMaのエピトープに結合するDVD−Ig結合タンパク質、ならびにヒトRGMaのエピトープおよび別の標的分子(例えば、VEGFR2またはVEGFR1)のエピトープに結合するDVD−Ig結合タンパク質が挙げられる。
【0067】
o.エピトープまたは複数のエピトープ
「エピトープ」もしくは「複数のエピトープ」または「対象とするエピトープ」は、認識される任意の分子上の部位であって、この特異的な結合パートナー上の相補的部位に結合することができる部位を指す。分子および特異的結合パートナーは、特異的結合対の一部である。例えば、エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、ハプテン、炭水化物抗原(例えば、限定されないが、糖脂質、糖タンパク質またはリポ多糖)または多糖上にあり得る。この特異的結合パートナーは、限定されないが、抗体であり得る。
【0068】
p.フレームワークまたはフレームワーク配列
本明細書で使用される場合、「フレームワーク」(FR)または「フレームワーク配列」は、CDRを除いた残りの可変領域配列を指す。CDR配列の正確な定義は、様々なシステムによって決定することができるので(例えば、上記を参照のこと)、フレームワーク配列の意味は、これに対応して様々な解釈がなされる。6つのCDR(軽鎖のCDR−L1、−L2および−L3ならびに重鎖のCDR−H1、−H2および−H3)はまた、軽鎖および重鎖上のフレームワーク領域を各鎖上の4つの小領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)に分け、ここで、CDR1はFR1とFR2との間に位置し、CDR2はFR2とFR3との間に位置し、CDR3はFR3とFR4との間に位置する。他のものによって言及される場合、フレームワーク領域は、特定の小領域をFR1、FR2、FR3またはFR4と指定せずに、単一の天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域内のFRを一体としたもの表す。本明細書で使用される場合は、FRは、4つの小領域のうち1つを表し、複数のFRは、フレームワーク領域を構成する4つの小領域のうち2つ以上を表す。
【0069】
当技術分野において公知の技術を使用して非ヒト抗体をヒト化するために、重鎖および軽鎖「アクセプター」フレームワーク配列(または単に「アクセプター」配列)として使用され得るヒト重鎖および軽鎖FR配列が、当技術分野において公知である。一実施形態では、ヒト重鎖および軽鎖アクセプター配列は、公的に利用可能なデータベース、例えば、V−base(ハイパーテキスト転送プロトコール://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)、または国際ImMunoGeneTics(登録商標)(IMGT(登録商標))情報システム(ハイパーテキスト転送プロトコール://imgt.cines.fr/texts/IMGTrepertoire/LocusGenes/)に列挙されているフレームワーク配列から選択される。
【0070】
q.機能的抗原結合部位
本明細書で使用される場合、「機能的抗原結合部位」は、標的抗原に結合することができる結合タンパク質(例えば、抗体)上の部位を意味し得る。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が由来する親結合タンパク質、例えば、親抗体ほど強くなくてもよいが、抗原に結合する能力は、抗原に結合するタンパク質、例えば、抗体を評価するための様々な公知の方法のいずれか1つを使用して測定可能でなければならない。さらに、本明細書では、多価タンパク質の抗原結合部位それぞれの抗原結合親和性は、定量的に同じである必要はない。
【0071】
r.ヒト抗体
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含み得る。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダム変異誘発および部位特異的変異誘発によって、またはインビボにおける体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含まないものとする。
【0072】
s.ヒト化抗体
本明細書では、「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例えば、マウス)由来の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列を含むが、VHおよび/またはVL配列の少なくとも一部が、より「ヒト様」、即ち、ヒト生殖系列可変配列とより類似するように変更されている抗体を説明するのに使用される。「ヒト化抗体」は、対象とする抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域と、非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)とを含む抗体またはこの変異体、誘導体、類似体もしくは断片である。本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、CDRとの関連では、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリン(即ち、ドナー抗体)のものに対応し、フレームワーク領域の全部または実質的に全部が、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つの、通常2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)
2、FabC、Fv)の実質的に全部を含む。一実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインとを含有する。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を含み得る。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含有する。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメインおよび/またはヒト化重鎖のみを含有する。
【0073】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、ならびに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプから選択され得る。ヒト化抗体は、2つ以上のクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含み得、特定の定常ドメインは、当技術分野において周知の技術を使用して、所望のエフェクター機能を最適化するように選択され得る。
【0074】
ヒト化抗体のフレームワーク領域およびCDRは、親配列と正確に対応する必要はなく、例えば、ドナー抗体CDRまたはコンセンサスフレームワークを少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失によって変異し、この結果、この部位のCDRまたはフレームワーク残基が、ドナー抗体またはコンセンサスフレームワークに対応していなくてもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、このような変異は、大規模なものではない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%は、親のFRおよびCDR配列のものに対応する。本明細書で使用される場合、用語「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。本明細書で使用される場合、用語「コンセンサス免疫グロブリン配列」は、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も高頻度に存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,1987)を参照のこと)。従って、「コンセンサス免疫グロブリン配列」は、「コンセンサスフレームワーク領域」および/または「コンセンサスCDR」を含み得る。免疫グロブリンのファミリーでは、コンセンサス配列中の各位置は、ファミリーにおいて当該位置で最も高頻度に存在するアミノ酸によって占められている。2つのアミノ酸が等頻度に存在する場合には、コンセンサス配列中にいずれかが含まれ得る。
【0075】
t.同一または同一性
本明細書では、2つ以上のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列との関連で使用される場合、「同一」または「同一性」は、当該配列が、指定領域にわたって指定割合の同一残基を有することを意味し得る。2つの配列を最適にアライメントし、指定領域にわたって2つの配列を比較し、両配列で同一残基が存在する位置の数を決定して一致位置の数を得て、一致位置の数を指定領域の位置の総数で割り、この結果に100を乗じて配列同一性の割合を得ることによって、前記割合を計算することができる。2つの配列が異なる長さのものであるか、またはアライメントにより1つ以上の付着末端が生じ、指定の比較領域に単一配列のみが含まれる場合には、単一配列の残基を計算の分母に含めるが、分子には含めない。
【0076】
u.単離されたポリヌクレオチド
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、cDNAまたは合成起源またはこれらの組み合わせ)を意味し得、この起源によって、単離されたポリヌクレオチドは、天然では「単離されたポリヌクレオチド」が共に見られるポリヌクレオチドの全部または一部と会合していないか;天然では連結していないポリヌクレオチドと作動可能に連結されているか;または天然ではより長い配列の一部として存在しないものである。
【0077】
v.標識および検出可能な標識
本明細書で使用される場合、「標識」および「検出可能な標識」は、抗体と分析物との間の反応を検出可能にするために抗体または分析物に結合された部分を指し、このようにして標識された抗体または分析物は、「検出可能に標識された」と称される。標識は、視覚的手段または機器的手段によって検出可能なシグナルを生成し得る。種々の標識としては、シグナル生成物質、例えば、色素原、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性化合物などが挙げられる。標識の代表例としては、光を生成する部分、例えば、アクリジニウム化合物、および蛍光を生成する部分、例えば、フルオレセインが挙げられる。他の標識は、本明細書に記載されている。これに関して、部分これ自体は検出可能ではなくてもよいが、さらに別の部分と反応して検出可能になり得る。用語「検出可能に標識された」の使用は、このような標識を包含するものとする。
【0078】
当技術分野において公知の任意の検出可能な標識が使用され得る。例えば、検出可能な標識は、放射性標識(例えば、
3H、
125I、
35S、
14C、
32Pおよび
33P)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ペルオキシダーゼ、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼなど)、化学発光標識(例えば、アクリジニウムエステル、チオエステルまたはスルホンアミド;ルミノール、イソルミノール、フェナントリジニウムエステルなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン(例えば、5−フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、3’6−カルボキシフルオレセイン、5(6)−カルボキシフルオレセイン、6−ヘキサクロロ−フルオレセイン、6−テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネートなど))、ローダミン、フィコビリタンパク質、R−フィコエリトリン、量子ドット(例えば、硫化亜鉛でキャップされたセレン化カドミウム)、温度測定標識またはイムノポリメラーゼ連鎖反応標識であり得る。標識への導入、標識化手法および標識の検出は、Polak and Van Noorden,Introduction to Immunocytochemistry,2
nded.,Springer Verlag,N.Y.(1997)、およびMolecular Probes,Inc.,Eugene,Oregonによって出版されたハンドブックとカタログの組み合わせであるHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1996)に見られる。蛍光標識は、FPIAで使用され得る(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,593,896号明細書、同第5,573,904号明細書、同第5,496,925号明細書、同第5,359,093号明細書および同第5,352,803号明細書を参照のこと)。アクリジニウム化合物は、均一な化学発光アッセイにおいて、検出可能な標識として使用され得る(例えば、Adamczyk et al,Bioorg.Med.Chem.Lett.16:1324−1328(2006);Adamczyk et al,Bioorg.Med.Chem.Lett.4:2313−2317(2004);Adamczyk et al,Biorg.Med.Chem.Lett.14:3917−3921(2004);およびAdamczyk et al,Org.Lett.5:3779−3782(2003)を参照のこと)。
【0079】
一態様では、アクリジニウム化合物は、アクリジニウム−9−カルボキサミドである。アクリジニウム−9−カルボキサミドを調製するための方法は、Mattingly,J.Biolumin.Chemilumin.6:107−114(1991);Adamczyk et al,J.Org.Chem.63:5636−5639(1998);Adamczyk et al,Tetrahedron 55:10899−10914(1999);Adamczyk et al,Org.Lett.1:779−781(1999);Adamczyk et al.,Bioconjugate Chem.11:714−724(2000);Mattingly et al.,In Luminescence Biotechnology:Instruments and Applications;Dyke,K.V.Ed.;CRC Press:Boca Raton,pp.77−105(2002);Adamczyk et al,Org.Lett.5:3779−3782(2003);ならびに米国特許第5,468,646号明細書、同第5,543,524号明細書および同第5,783,699号明細書(これらはそれぞれ、上記に関するこの教示について全体が参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0080】
アクリジニウム化合物の別の例は、アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルである。式IIのアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルの例は、10−メチル−9−(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホネート(Cayman Chemical,Ann Arbor,MIから入手可能)である。アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルを調製するための方法は、McCapra et al.,Photochem.Photobiol.4:1111−21(1965);Razavi et al,Luminescence 15:245−249(2000);Razavi et al,Luminescence 15:239−244(2000);および米国特許第5,241,070号明細書(これらはそれぞれ、上記に関するこの教示について全体が参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されている。このようなアクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルは、シグナルの強度および/またはシグナルの速度に関して、少なくとも1つのオキシダーゼによる分析物の酸化において生成された過酸化水素の効率的な化学発光指標である。アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルについての化学発光の経過は、迅速に、即ち1秒未満で完了するが、アクリジニウム−9−カルボキサミドの化学発光は、2秒を超えて継続する。しかしながら、アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルは、タンパク質の存在下でこの化学発光特性を喪失する。従って、この使用は、シグナルの生成および検出の間にタンパク質が存在しないことを必要とする。試料中のタンパク質を分離または除去するための方法は当業者に周知であり、限定されないが、限外ろ過、抽出、沈殿、透析、クロマトグラフィーおよび/または消化が挙げられる(例えば、Wells,High Throughput Bioanalytical Sample Preparation.Methods and Automation Strategies,Elsevier(2003)を参照のこと)。試験試料から除去または分離されるタンパク質の量は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%であり得る。アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルおよびこの使用に関するさらなる詳細は、2007年4月9日に出願された米国特許出願第11/697,835号明細書に記載されている。アクリジニウム−9−カルボキシレートアリールエステルは、脱気無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)または水性コール酸ナトリウムなどの任意の適切な溶媒に溶解され得る。
【0081】
w.連結配列および連結ペプチド配列
「連結配列」または「連結ペプチド配列」は、対象とする1つ以上のポリペプチド配列(例えば、全長、断片など)に接続された天然または人工のポリペプチド配列を指す。用語「接続された」は、連結配列と、対象とするポリペプチド配列との結合を指す。このようなポリペプチド配列は、好ましくは、1つ以上のペプチド結合によって結合される。連結配列は、約4から約50アミノ酸の長さを有し得る。好ましくは、連結配列の長さは、約6から約30アミノ酸である。アミノ酸の置換、付加または欠失によって天然の連結配列を改変して、人工の連結配列を作ることができる。例示的な連結配列としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:(i)アミノ酸配列HHHHHH(配列番号148)を有する6XHisタグ(配列番号148)などのヒスチジン(His)タグは、対象とするポリペプチドおよび抗体の単離および精製を容易にするために連結配列として有用である;(ii)Hisタグのようなエンテロキナーゼ切断部位は、対象とするタンパク質および抗体の単離および精製に使用される。多くの場合、エンテロキナーゼ切断部位は、対象とするタンパク質および抗体の単離および精製において、Hisタグと共に使用される。種々のエンテロキナーゼ切断部位が、当技術分野において公知である。エンテロキナーゼ切断部位の例としては、限定されないが、アミノ酸配列DDDDK(配列番号149)およびこの誘導体(例えば、ADDDDK(配列番号150)など)が挙げられる;(iii)一本鎖可変領域断片の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を連結または接続するために、種々の配列を使用することができる。他の連結配列の例は、Bird et al,Science 242:423−426(1988);Huston et al,PNAS USA 85:5879−5883(1988);およびMcCafferty et al,Nature 348:552−554(1990)に見られ得る。さらなる機能、例えば、薬物の結合または固体支持体への結合のために、連結配列を改変することもできる。本開示との関連では、モノクローナル抗体は、例えば、Hisタグ、エンテロキナーゼ切断部位またはこの両方などの連結配列を含有し得る。
【0082】
x.多価結合タンパク質
本明細書では、「多価結合タンパク質」は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質(本明細書では、「抗原結合ドメイン」とも称される。)を指すのに使用される。多価結合タンパク質は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般に、天然に存在する抗体ではない。用語「多重特異性結合タンパク質」は、同じ標的分子の2つ以上の異なるエピトープに結合することができる結合タンパク質を含む、2つ以上の関連または非関連標的に結合することができる結合タンパク質を指す。
【0083】
y.所定のカットオフおよび所定のレベル
「所定のカットオフ」および「所定のレベル」は、一般に、種々の臨床パラメータ(例えば、疾患の重症度、進行/非進行/改善など)と既に結びつけられているかまたはこれらに関連付けられている所定のカットオフ/レベルに対してアッセイ結果を比較することによって、診断/予測/治療効果の結果を評価するのに使用されるアッセイカットオフ値を指す。本発明の開示は、例示的な所定のレベルを提供する。しかしながら、カットオフ値は、イムノアッセイの性質(例えば、用いられる抗体など)に応じて変化し得ることが周知である。さらに、この開示に基づいて、他のイムノアッセイについてのイムノアッセイ特異的カットオフ値を得るために、本明細書における開示を他のイムノアッセイに対して適合させることは、十分に当技術分野における通常の技術範囲内である。所定のカットオフ/レベルの厳密な値はアッセイ間で変化し得るのに対して、本明細書に記載されている相関関係は一般に適用可能であるはずである。
【0084】
z.前処理試薬
本明細書に記載される診断アッセイで使用される場合、「前処理試薬」、例えば、溶解、沈殿および/または可溶化試薬は、任意の細胞を溶解し、および/または試験試料中に存在する任意の分析物を可溶化するものである。さらに本明細書に記載されているように、前処理は、すべての試料に必要ではない。とりわけ、分析物(即ち、RGMa(例えば、膜結合RGMa、可溶性RGMa、膜結合RGMaの断片、可溶性RGMaの断片、RGMa(膜結合RGMaまたは可溶性RGMa)の変異体またはこれらの任意の組み合わせ))を可溶化することは、試料中に存在する任意の内在性結合タンパク質からの分析物の放出を伴う。前処理試薬は、均一(分離段階を必要としない)または不均一(分離段階を必要とする。)であり得る。不均一前処理試薬を使用する場合、アッセイの次の段階へ進む前に、沈殿した分析物結合タンパク質が試験試料から除去される。前処理試薬は、(a)1つ以上の溶媒および塩、(b)1つ以上の溶媒、塩および洗浄剤、(c)洗浄剤、(d)洗浄剤および塩、または(e)細胞溶解および/もしくは分析物の可溶化に適切な任意の試薬または試薬の組み合わせを場合により含み得る。
【0085】
aa.品質管理試薬
本明細書に記載されるイムノアッセイおよびキットとの関連では、「品質管理試薬」は、限定されないが、較正用物質、対照および感度パネルを含む。「較正用物質」または「標準」は、通常、分析物、例えば、抗体または分析物の濃度を内挿するための較正(標準)曲線を確立するのに(例えば、1つ以上、例えば複数)使用される。または、所定の正/負のカットオフに近い単一の較正用物質を使用することができる。「感度パネル」を構成するために、複数の較正用物質(即ち、2つ以上の較正用物質または様々な量の較正用物質)を併せて使用することができる。
【0086】
bb.組換え抗体および複数の組換え抗体
「組換え抗体」および「複数の組換え抗体」は、組換え技術によって、1つ以上のモノクローナル抗体の全部または一部をコードする核酸配列を適切な発現ベクター中にクローニングし、続いて、適切な宿主細胞中で抗体を発現させることを含む1つ以上の段階によって調製された抗体を指す。この用語は、限定されないが、組換え的に生産されたモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(完全または部分的にヒト化)、抗体断片から形成された多重特異性または多価構造、二官能性抗体、ヘテロコンジュゲートAb、DVD−Ig(登録商標)および本明細書の(i)に記載される他の抗体を含む。(二重可変ドメイン免疫グロブリンおよびこの作製方法は、Wu,C.,et al.,Nature Biotechnology,25:1290−1297(2007)に記載されている。)本明細書で使用される場合、用語「二官能性抗体」は、ある抗原性部位に対する特異性を有する第1のアームと、異なる抗原性部位に対する特異性を有する第2のアームとを含む抗体を指し、即ち、二官能性抗体は二重特異性を有する。
【0087】
cc.試料、試験試料および患者の試料
「試料」、「試験試料」および「患者の試料」は、本明細書では互換的に使用され得る。尿、血清、血漿、羊水、脳脊髄液、胎盤細胞もしくは組織、内皮細胞、白血球または単球の試料などの試料は、患者から得られた状態のまま直接使用することができ、または本明細書で考察される幾つかの方法もしくは当技術分野において公知の別の方法で試料の特性を改変するために、例えば、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活性化および試薬の追加などによって前処理することができる。
【0088】
dd.一連の較正組成物
「一連の較正組成物」は、既知濃度のCys−CRGMaを含む複数の組成物を指し、これらの組成物はそれぞれ、Cys−CRGMaの濃度が一連の較正組成物における他の組成物と異なる。
【0089】
ee.固相
「固相」は、不溶であるか、または後続反応によって不溶となり得る任意の材料を指す。固相は、捕捉剤を誘引および固定化する固有の能力について選択され得る。または、固相は、これに、捕捉剤を誘引および固定化する能力を有する連結剤を付着することができる。連結剤は、例えば、捕捉剤自体または捕捉剤にコンジュゲートした帯電物質に関して逆帯電した帯電物質を含み得る。一般に、連結剤は、固相上に固定化された(固相に結合した)および結合反応を通じて捕捉剤を固定化する能力を有する任意の(好ましくは特異的な)結合パートナーであり得る。連結剤によって、アッセイの実施の前またはアッセイの実施の間に、捕捉剤が固相材料に間接的に結合することが可能になる。固相は、例えば、プラスチック、誘導体化されたプラスチック、磁性金属もしくは非磁性金属、ガラスまたはケイ素であり得、例えば、試験管、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップおよび当業者に公知の他の構造物が挙げられる。
【0090】
ff.特異的結合
本明細書で使用される場合、「特異的結合」または「特異的に結合すること」は、抗体、タンパク質またはペプチドと、第2の化学種との相互作用を指し得、ここで、相互作用は、化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する;例えば、抗体は、タンパク質一般にではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体が、エピトープ「A」に対して特異的である場合には、標識された「A」および抗体を含有する反応物中のエピトープA(または遊離の、標識されていないA)を含有する分子の存在は、抗体に結合している標識されたAの量を減少させる。
【0091】
gg.特異的結合パートナー
「特異的結合パートナー」は、特異的結合対のメンバーである。特異的結合対は、化学的または物理的手段によって互いに特異的に結合する2つの異なる分子を含む。従って、一般的なイムノアッセイの抗原および抗体の特異的結合対に加えて、他の特異的結合対としては、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)、炭水化物およびレクチン、相補的ヌクレオチ配列、エフェクターおよび受容体分子、補助因子および酵素、酵素および酵素阻害剤などが挙げられ得る。さらに、特異的結合対としては、元の特異的結合メンバーの類似体であるメンバー、例えば、分析物類似体が挙げられ得る。免疫反応特異的結合メンバーとしては、単離されているかまたは組換え的に生産されたかにかかわらず、抗原、抗原断片およびモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む抗体、ならびにこれらの複合体および断片が挙げられる。
【0092】
hh.ストリンジェントな条件
本明細書では、「ストリンジェントな条件」は、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃で、フィルタに結合したDNAにハイブリダイズさせ、続いて、0.2xSSC/0.1%SDS中、約50から65℃で1回以上洗浄することを説明するのに使用される。用語「高ストリンジェントな条件下」は、6xSSC中、約45℃で、フィルタに結合した核酸にハイブリダイズさせ、続いて、0.1xSSC/0.2%SDS中、約68℃で1回以上洗浄すること、または他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下を指す。例えば、Ausubel,F.M.et al,eds.,1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,New York at pages 6.3.1−6.3.6 and 2.10.3を参照のこと。
【0093】
ii.治療する、治療することまたは治療
本明細書では、「治療する」、「治療すること」または「治療」はそれぞれ、このような用語が適用される疾患またはこのような疾患の1つ以上の症候を、回復、軽減またはこの進行を阻害することを説明するのに互換的に使用される。被験体の症状によって、この用語はまた、疾患を予防することを指し、疾患の発症を予防すること、または疾患に関連する症候を予防することを含む。治療は、急性的に実施してもよいし、慢性的に実施してもよい。この用語はまた、疾患に伴う苦痛の前に、疾患またはこのような疾患に関連する症候の重症度を減少させることを指す。苦痛の前の疾患の重症度のこのような予防または減少は、本発明の抗体または医薬組成物を、投与時点では疾患に罹患していない被験体に投与することを指す。「予防すること」はまた、疾患またはこのような疾患に関連する1つ以上の症候の再発の予防を指す。「治療」および「治療的に」は、「治療すること」について上に定義したような治療行為を指す。
【0094】
jj.トレーサー
本明細書で使用される場合、「トレーサー」は、標識にコンジュゲートした分析物または分析物断片、例えば、フルオレセイン部分にコンジュゲートしたCys−CRGMaを指し、ここで、標識にコンジュゲートした分析物は、分析物に特異的な抗体上の部位に対して分析物と有効に競合することができる。
【0095】
kk.変異体
本明細書では、「変異体」は、アミノ酸の挿入、欠失または保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持するペプチドまたはポリペプチドを説明するのに使用される。「生物学的活性」の代表例としては、特異的抗体によって結合される能力、または免疫反応を促進する能力が挙げられる。本明細書では、変異体はまた、少なくとも1つの生物学的活性を保持するアミノ酸配列を有する参照タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質を説明するのに使用される。アミノ酸の保存的置換、即ち、アミノ酸を、同様の特性(例えば、親水性および荷電領域の程度および分布)の異なるアミノ酸と置換することは、当技術分野では、通常、微小変化を含むと認識されている。これらの微小変化は、部分的には、当技術分野において理解されるように、アミノ酸の疎水性親水性指数を考慮することによって同定され得る。Kyte et al.,J.Mol.Biol.157:105−132(1982)。アミノ酸の疎水性親水性指数は、この疎水性および電荷を考慮することに基づいている。同様の疎水性親水性指数のアミノ酸は、置換してもタンパク質機能を依然として保持し得るということが当技術分野において公知である。一態様では、±2の疎水性親水性指数を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性はまた、生物学的機能を保持するタンパク質をもたらす置換を明らかにするのに使用され得る。ペプチドとの関連でアミノ酸の親水性を考慮することによって、抗原性および免疫原性と十分に相関すると報告されている有用な尺度であるこのペプチドの最大局所平均親水性を算出することが可能になる。全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号明細書を参照のこと。当技術分野において理解されるように、同様の親水性値を有するアミノ酸の置換は、生物学的活性、例えば、免疫原性を保持するペプチドをもたらし得る。置換は、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸を用いて実施され得る。アミノ酸の疎水性指数および親水性値は両方とも、アミノ酸の特定の側鎖によって影響を受ける。この知見と一致して、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、大きさおよび他の特性によって明らかにされるように、アミノ酸、特に、これらのアミノ酸の側鎖の相対類似性に依存すると理解される。「変異体」はまた、抗RGMa抗体の抗原反応性断片であって、対応する抗RGMa抗体断片とはアミノ酸配列が異なるが依然として抗原反応性であり、RGMaに対する結合について、対応する抗RGMa抗体断片と競合することができる抗原反応性断片を指すのに使用され得る。「変異体」はまた、タンパク質分解、リン酸化または他の翻訳後修飾などによって異なってプロセシングされるが、この抗原反応性を依然として保持するポリペプチドまたはこの断片を説明するのに使用され得る。
【0096】
ll.ベクター
本明細書では、「ベクター」は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を説明するのに使用される。ベクターの一種は、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがライゲーションされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、これらが導入されている宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノム中に組み込まれることができ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、これらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、最もよく使用される形態のベクターであるので、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に使用され得る。しかしながら、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を使用することができる。これに関して、本開示との関連では、RNA型のベクター(RNAウイルスベクターを含む。)も用途があり得る。
【0097】
本明細書における数値範囲の記載については、これらの間にある各数値を同程度の正確性で明確に意図する。例えば、6から9の範囲の場合、6および9に加えて、7および8という数値を意図し、6.0から7.0の範囲の場合、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0という数値を明確に意図する。
【0098】
2.抗RGMa抗体
神経突起変性疾患および障害を治療する方法に使用するための抗体が本明細書で提供される。本明細書に記載される抗体の幾つかは、RGMaに結合するが、反発性ガイダンス分子c(「RGMc」)との反応性を最小化または排除するのを選択したものである。例えば、表4を参照すると、PRO融合由来モノクローナル抗体AE12−1およびAE12−1変異体(AE12−1F、AE12−1H、AE12−1L、AE12−1V、AE12−1I、AE12−1KおよびAE12−1Y)は、RGMcと交差反応せずに(低検出)RGMa中和活性を示す。RGMaに対して生じる抗体はRGMcと交差反応し得ることが多く、高静脈内用量では、肝細胞における鉄蓄積をもたらし得るので、本明細書に記載される抗体のRGMaに対する特異的結合は治療上有益である。さらに、これらの抗体の高選択性は、広い治療用量域または治療範囲をもたらす。
【0099】
a.RGMa
47アミノ酸の予測N末端シグナルペプチドと、C末端GPI結合シグナルとを有する450アミノ酸のタンパク質として存在し得るヒトRGMaは、神経発達および細胞生存において役割を果たす分泌分子であるネトリンの受容体でもある膜貫通タンパク質ネオゲニンに結合することによって、網膜軸索の誘導を調節すると最初に提案された。網膜軸索の誘導に加えて、RGMaは、成体ラットにおける軸索成長を阻害することが示されている。Yamashita et al.,Current Opinion in Neurobiology(2007)17:1−6を参照のこと。これらの機構と一致して、RGMa発現は脊髄損傷後に増加するが、この間にRGMaを阻害すると軸索成長が増強される。Kitayama et al,PLoS One,(2011)Vol.6(9),pages 1−9;およびHata et al,J.Cell Biol.(2006)173:47−58を参照のこと。RGMa発現はまた、局所的脳虚血または外傷性脳損傷を患っているヒトの病変部位および瘢痕組織でアップレギュレートしている。Yamashita et al.,Current Opinion in Neurobiology(2007)17:1−6;Schwab et al,Arch Neurol(2005)22:2134−2144;およびMuramatsu et al,Nat.Medicine(2011)17:488−94を参照のこと。
【0100】
RGMaは、以下のアミノ酸配列を有し得る:
【0101】
【化1】
RGMaは、配列番号65の断片または変異体であり得る。
【0102】
RGMa断片は、5から425アミノ酸、10から400アミノ酸、50から350アミノ酸、100から300アミノ酸、150から250アミノ酸、200から300アミノ酸または75から150アミノ酸の長さであり得る。断片は、配列番号65の幾つかの連続したアミノ酸を含み得る。
【0103】
RGMa断片は、以下のアミノ酸配列を有し得る:
【0104】
【化2】
配列番号65の47位から168位のアミノ酸に対応する。
【0105】
RGMa断片は、配列番号66の断片であり得る。RGMa断片は、配列番号66の変異体であり得る。RGMa断片は、以下のRGMa配列を有し得る:PCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(配列番号74)。
【0106】
RGMaは、細胞膜結合型および/または可溶型として存在し得る。
【0107】
b.RGMaを認識する抗体
抗体は、RGMa、この断片またはこの変異体に結合する抗体である。抗体は、抗RGMa抗体またはこの変異体もしくは誘導体の断片であり得る。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体または抗体断片、例えば、Fab断片またはこれらの混合物であり得る。抗体断片または誘導体は、F(ab’)
2、FvまたはscFv断片を含み得る。抗体誘導体は、ペプチド模倣によって生産され得る。さらに、一本鎖抗体の生産について記載されている技術を、一本鎖抗体を生産するために適合させることができる。
【0108】
ヒト抗体は、ファージディスプレイ技術、またはヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスに由来し得る。ヒトのインビボ免疫反応の結果としてヒト抗体を作製して単離し得る。例えば、Funaro et al.,BMC Biotechnology,2008(8):85を参照のこと。従って、抗体は、動物のレパートリではなくヒトの産物であり得る。これがヒト起源であることにより、自己抗原に対する反応性のリスクを最小限に抑えることができる。または、ヒト抗RGMa抗体を選択および単離するために、標準的な酵母ディスプレイライブラリおよびディスプレイ技術を使用することができる。例えば、ヒト抗RGMa抗体を選択するために、ナイーブなヒト一本鎖可変断片(scFv)のライブラリを使用することができる。ヒト抗体を発現させるために、トランスジェニック動物を使用することができる。
【0109】
ヒト化抗体は、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子であって、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有する抗体分子であり得る。
【0110】
抗体は、当技術分野において公知のものとは異なる生物学的機能を有する点で、公知の抗体と区別可能である。例えば、本発明の抗体はRGMaを認識して結合するだけではなく、さらなる生物学的機能、例えば、神経突起変性に関連する疾患に関連する臨床兆候を軽減する能力を有することをさらに特徴とする。
【0111】
抗体は、RGMaに特異的に結合し得る。RGMa特異的RGMa抗体は、配列番号1および5;配列番号2から4および6から8;配列番号2から4、6、7および67;配列番号2から4、6、7および68;配列番号2から4、6、7および69;配列番号2から4、6、7および70;配列番号2から4、6、7および71;配列番号2から4、6、7および72;または配列番号2から4、6、7および73を含み得る。抗体は、配列番号65、配列番号66、配列番号74、またはこれらの断片もしくは変異体に結合し得る。抗体は、上記RGMaポリペプチドまたは変異体上に存在するエピトープを認識して特異的に結合し得る。エピトープは、配列番号66、配列番号74またはこれらの変異体であり得る。
【0112】
(1)抗体の結合特性
抗体は、RGMa(配列番号65)、配列番号66、配列番号74、これらの断片またはこれらの変異体に免疫特異的に結合し得、少なくとも1.0x10
−3s
−1、少なくとも1.0x10
−4s
−1、少なくとも1.0x10
−5s
−1、少なくとも1.0x10
−6s
−1のk
off(またはk
d)を有し得るか、または1.0x10
−3s
−1から1.0x10
−6s
−1、1.0x10
−3s
−1から1.0x10
−5s
−1もしくは1.0x10
−3s
−1から1.0x10
−4s
−1の範囲のk
off(またはk
d)を有する。断片は、配列番号66または配列番号74であり得る。
【0113】
抗体は、RGMa(配列番号65)、配列番号66、配列番号74、これらの断片またはこれらの変異体に免疫特異的に結合し得、少なくとも2.4x10
4M
−1s
−1、少なくとも約2.5x10
4M
−1s
−1、少なくとも約3.3x10
4M
−1s
−1、少なくとも約5.0x10
4M
−1s
−1、少なくとも約1.25x10
6M
−1s
−1、少なくとも約1.35x10
6M
−1s
−1、少なくとも約1.0x10
6M
−1s
−1、少なくとも約1.0x10
7M
−1s
−1のk
on(またはk
a)を有するか、または約5.0x10
4M
−1s
−1から約1.0x10
8M
−1s
−1、約3.3x10
4M
−1s
−1から約1.0x10
9M
−1s
−1、約2.5x10
4M
−1s
−1から約1.25x10
6M
−1s
−1、約2.4x10
4M
−1s
−1から約1.35x10
7M
−1s
−1の範囲のk
on(またはk
a)を有する。断片は、配列番号66または配列番号74であり得る。
【0114】
(2)抗体の構造
(a)重鎖および軽鎖のCDR
抗体は、RGMa(配列番号65)、配列番号66、配列番号74、これらの断片またはこれらの変異体に免疫特異的に結合し得、表1に示されている可変重鎖および/または可変軽鎖を含み得る。抗体は、RGMa、この断片またはこの変異体に免疫特異的に結合し得、また表1に示されている重鎖または軽鎖のCDR配列の1つ以上を含み得る。抗体の軽鎖は、カッパ鎖またはラムダ鎖であり得る。例えば、表1を参照のこと。
【0115】
RGMa、この断片またはこの変異体に免疫特異的に結合する抗体をコードする単離された核酸が本明細書で提供される。単離された核酸は、表1に示されている重鎖または軽鎖のCDR配列を含む抗体をコードする核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含み得る。
【0117】
抗体またはこの変異体もしくは誘導体は、配列番号1から64および67から73の1つ以上と95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%を超えて同一である1つ以上のアミノ酸配列を含有し得る。抗体またはこの変異体もしくは誘導体は、配列番号1から64および67から73の1つ以上と95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%を超えて同一である1つ以上の核酸配列によってコードされ得る。ポリペプチドの同一性および相同性は、例えば、報告:Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,726−730(1983)に記載されているアルゴリズムによって決定され得る。本明細書に記載される抗体、この変異体または誘導体は、配列番号3から42の1つ以上の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされ得る。本明細書に記載される抗体、この変異体または誘導体は、配列番号1から64および67から73の1つ以上をコードする1つ以上の核酸の相補体に高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされ得る。
【0118】
抗体は配列番号8を含み得、ここで、配列番号8のCys残基は別のアミノ酸に置換されている。抗体は配列番号1および5、または2から4および6から8を含み得、ここで、配列番号8のCys残基は別のアミノ酸に置換されているか、または配列番号5の91位のCys残基は別のアミノ酸に置換されている。配列番号5の91位のCys残基は、例えば、フェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、バリン、イソロイシン、リシンまたはチロシンで置換され得る。配列番号8のCys残基は、例えば、フェニルアラニン(配列番号67を参照のこと)、ヒスチジン(配列番号68を参照のこと)、ロイシン(配列番号69を参照のこと)、バリン(配列番号70を参照のこと)、イソロイシン(配列番号71を参照のこと)、リシン(配列番号72を参照のこと)またはチロシン(配列番号73を参照のこと)で置換され得る。表2を参照のこと。
【0119】
抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY分子クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。例えば、抗体は、以下の定常領域配列を有するIgG1分子であり得る:
【0121】
配列番号140における上記定常領域は、野生型定常領域配列の234位および235位における2つの(2)変異を含有する。具体的には、これらの変異は、234位および235位のそれぞれにおけるロイシンからアラニンへの変化(これは、「LLAA」変異と称される。)である。これらの変異は、上記では太字下線で示されている。これらの変異の目的は、エフェクター機能を排除することである。
【0122】
または、IgG1分子は、1つ以上の変異を含有する上記定常領域配列(配列番号140)を有し得る。例えば、配列番号140の定常領域配列は、以下の表2Aに示されているように、トレオニンがグルタミンで置換されるアミノ酸250の変異(配列番号141)、メチオニンがロイシンで置換されるアミノ酸428の変異(配列番号142)、またはトレオニンがグルタミンで置換されるアミノ酸250の変異およびメチオニンがロイシンで置換されるアミノ酸428の変異(配列番号143)を含有し得る。
【0123】
または、IgG1分子は、以下の表2Bに示されているように、AE12−1(VH)CDR−H1(配列番号2)、AE12−1(VH)CDR−H2(配列番号3)、AE12−1(VH)CDR−H3(配列番号4)を含む重鎖と、AE12−1(VL)CDR−L1(配列番号6)、AE12−1(VL)CDR−L2(配列番号7)およびAE12−1−V(VL)CDR−L3(配列番号70)を含む軽鎖と、配列番号143の定常配列とを含有し得る(この抗体はAE12−1V−QLと称され、配列番号144の軽鎖配列と、配列番号145の重鎖配列とを有する。)。
【0124】
または、IgG1分子は、以下の表2Bに示されているように、AE12−1(VH)CDR−H1(配列番号2)、AE12−1(VH)CDR−H2(配列番号3)、AE12−1(VH)CDR−H3(配列番号4)を含む重鎖と、AE12−1(VL)CDR−L1(配列番号6)、AE12−1(VL)CDR−L2(配列番号7)およびAE12−1−Y(VL)CDR−L3(配列番号73)を含む軽鎖と、配列番号143の定常配列とを含有し得る(この抗体はAE12−1Y−QLと称され、配列番号146の軽鎖配列と、配列番号147の重鎖配列とを有する。)。
【0128】
抗体または抗体断片は、以下の式:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5(式1−CDR−H1)(式中、Xaa1は、S、D、E、N、GおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、H、Y、L、SおよびQからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、G、D、A、TおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、I、MおよびWからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa5は、S、N、H、A、TおよびQからなる群からのアミノ酸配列である。);
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−(Xaa)n(式2−CDR−H2)(式中、nは、0または1であり、およびXaa1は、W、V、A、G、L、E、SおよびNからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、I、MおよびFからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、S、N、D、FおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、P、Y、G、W、H、AおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、Y、N、D、E、S、K、GおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、S、G、D、TおよびNからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、G、S、I、E、NおよびRからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、N、L、R、S、TおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、T、K、G、N、IおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、N、G、Y、TおよびKからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、Y、F、NおよびHからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa12は、A、T、V、P、LおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa13は、Q、D、PおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa14は、K、S、NおよびLからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa15は、L、F、V、KおよびRからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa16は、Q、K、RおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa17は、グリシンである。);および
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−(Xaa)n(式3−CDR−H3)(式中、nは、0から11であり、およびXaa1は、V、S、E、N、L、D、QおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、G、T、R、Y、L、I、DおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、S、V、D、G、F、Y、P、M、C、LおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、G、L、Y、N、E、K、AおよびFからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、P、S、Y、A、V、G、T、EおよびWからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、Y、V、S、L、D、G、HおよびPからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、Tyr、Asp、Gly、Ser、Phe、LeuおよびCysからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、Tyr、Lys、Asp、AlaおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、Met、Glu、Phe、Leu、Ser、Thr、ProおよびTyrからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、Asp、Gly、Tyr、Ser、Leu、HisおよびPheからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、Val、Tyr、Leu、His、Gly、TrpおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa12は、TyrおよびPheからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa13は、Tyr、GlyおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa14は、Ala、Leu、ProおよびTyrからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa15は、Met、LeuおよびPheからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa16は、AspおよびGlyからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa17は、Val、AspおよびTyrからなる群より選択されるアミノ酸である。)
にそれぞれ対応する3つの相補性決定領域(CDR−H1、H2およびH3)を含む可変重ドメインを含み得る。
【0129】
単離された抗体またはこの抗体断片は、以下の式:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−(Xaa)n(式1−CDR−L1)(式中、nは、0から3であり、およびXaa1は、T、S、R、GおよびQからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、G、LおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、T、D、S、NおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、S、K、G、Q、NおよびEからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、S、L、G、I、DおよびPからなる群からのアミノ酸配列であり;Xaa6は、S、G、N、HおよびIからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、V、D、I、S、GおよびHからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、G、K、A、S、I、N、TおよびDからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、D、Y、A、C、SおよびFからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、S、A、G、L、VおよびNからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、I、C、Y、H、R、NおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa12は、Tyr、Gly、AlaおよびValからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa13は、ValおよびAsnからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa14は、SerおよびHisからなる群より選択されるアミノ酸である。);
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−(Xaa)n(式2−CDR−L2)(式中、nは、0から4であり、およびXaa1は、D、Q、G、V、Y、SおよびEからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、V、D、NおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、T、S、Y、NおよびKからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、K、N、D、QおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、R、G、SおよびLからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、P、S、IおよびEからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、S、H、IおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、Asnであり;Xaa9は、Lysであり;およびXaa10は、Glyであり;Xaa11は、Aspである。);および
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−(Xaa)n(式3−CDR−L3)(式中、nは、0から2であり、およびXaa1は、C、Q、H、F、H、L、V、I、K、YおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、S、A、T、QおよびVからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、Y、WおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、A、D、G、S、HおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、G、S、N、P、D、VおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、I、T、S、G、L、FおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、D、T、L、I、PおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、T、G、R、Y、D、N、W、L、FおよびPからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、L、V、G、TおよびHからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、Val、TyrおよびHisからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、LeuまたはValである。)
にそれぞれ対応する3つの相補性決定領域(CDR−L1、L2およびL3)を含む可変軽ドメインを含み得る。
【0130】
抗体または抗体断片は、以下の式:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5(式1−CDR−H1)(式中、Xaa1は、S、D、E、N、GおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、H、Y、L、SおよびQからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、G、D、A、TおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、I、MおよびWからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa5は、S、N、H、A、TおよびQからなる群からのアミノ酸配列である。);
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−(Xaa)n(式2−CDR−H2)(式中、nは、0または1であり、およびXaa1は、Y、V、A、G、L、G、SおよびNからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、I、MおよびFからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、S、N、D、FおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、P、Y、G、W、H、AおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、Y、N、D、E、S、K、GおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、S、G、D、TおよびNからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、G、S、I、E、NおよびRからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、N、L、R、S、TおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、T、K、G、N、IおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、N、G、Y、TおよびKからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、Y、F、NおよびHからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa12は、A、T、V、P、LおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa13は、Q、D、PおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa14は、K、S、NおよびLからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa15は、L、F、V、KおよびRからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa16は、Q、K、RおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa17は、グリシンである。);および
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−(Xaa)n(式3−CDR−H3)(式中、nは、0から11であり、およびXaa1は、V、S、E、N、L、D、QおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、G、T、R、Y、L、I、DおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、S、V、D、G、F、Y、P、M、C、LおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、G、L、Y、N、E、K、AおよびFからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、P、S、Y、A、V、G、T、EおよびWからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、Y、V、S、L、D、G、HおよびPからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、Tyr、Asp、Gly、Ser、Phe、LeuおよびCysからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、Tyr、Lys、Asp、AlaおよびGlnからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、Met、Glu、Phe、Leu、Ser、Thr、ProおよびTyrからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、Asp、Gly、Tyr、Ser、Leu、HisおよびPheからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、Val、Tyr、Leu、His、Gly、TrpおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa12は、TyrおよびPheからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa13は、Tyr、GlyおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa14は、Ala、Leu、ProおよびTyrからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa15は、Met、LeuおよびPheからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa16は、AspおよびGlyからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa17は、Val、AspおよびTyrからなる群より選択されるアミノ酸である。)
にそれぞれ対応する3つの相補性決定領域(CDR−H1、H2およびH3)を含む可変重ドメインを含み;ならびに、
以下の式:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−(Xaa)n(式1−CDR−L1)(式中、nは、0から3であり、およびXaa1は、T、S、R、GおよびQからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、G、LおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、T、D、S、NおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、S、K、G、Q、NおよびEからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、S、L、G、I、DおよびPからなる群からのアミノ酸配列であり;Xaa6は、S、G、N、HおよびIからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、V、D、I、S、GおよびHからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、G、K、A、S、I、N、TおよびDからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、D、Y、A、C、SおよびFからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、S、A、G、L、VおよびNからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、I、C、Y、H、R、NおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa12は、Tyr、Gly、AlaおよびValからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa13は、ValおよびAsnからなる群より選択されるアミノ酸であり;およびXaa14は、SerおよびHisからなる群より選択されるアミノ酸である。);
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−(Xaa)n(式2−CDR−L2)(式中、nは、0から4であり、およびXaa1は、D、Q、G、V、Y、SおよびEからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、V、D、NおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、T、S、Y、NおよびKからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、K、N、D、QおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、R、G、SおよびLからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、P、S、IおよびEからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、S、H、IおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、Asnであり;Xaa9は、Lysであり;およびXaa10は、Glyであり;Xaa11は、Aspである。);および
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−(Xaa)n(式3−CDR−L3)(式中、nは、0から2であり、およびXaa1は、C、Q、H、F、H、L、V、I、K、YおよびAからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa2は、S、A、T、QおよびVからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa3は、Y、WおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa4は、A、D、G、S、HおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa5は、G、S、N、P、D、VおよびTからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa6は、I、T、S、G、L、FおよびYからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa7は、D、T、L、I、PおよびSからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa8は、T、G、R、Y、D、N、W、L、FおよびPからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa9は、L、V、G、TおよびHからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa10は、Val、TyrおよびHisからなる群より選択されるアミノ酸であり;Xaa11は、LeuまたはValである。)
にそれぞれ対応する3つの相補性決定領域(CDR−L1、L2およびL3)を含む可変軽ドメインも含む。
【0131】
式1−CDR−L1では、nが1である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12。
【0132】
式1−CDR−L1では、nが2である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13。
【0133】
式1−CDR−L1では、nが3である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14。
【0134】
式2−CDR−L2では、nが1である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8。
【0135】
式2−CDR−L2では、nが2である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9。
【0136】
式2−CDR−L2では、nが3である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10。
【0137】
式2−CDR−L2では、nが4である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11。
【0138】
式3−CDR−L3では、nが1である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10。
【0139】
式3−CDR−L3では、nが2である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11。
【0140】
式2−CDR−H2では、nが1である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−Xaa17。
【0141】
式3−CDR−H3では、nが1である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7。
【0142】
式3−CDR−H3では、nが2である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8。
【0143】
式3−CDR−H3では、nが3である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9。
【0144】
式3−CDR−H3では、nが4である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10。
【0145】
式3−CDR−H3では、nが5である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11。
【0146】
式3−CDR−H3では、nが6である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12。
【0147】
式3−CDR−H3では、nが7である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13。
【0148】
式3−CDR−H3では、nが8である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14。
【0149】
式3−CDR−H3では、nが9である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15。
【0150】
式3−CDR−H3では、nが10である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16。
【0151】
式3−CDR−H3では、nが11である場合、式は以下のとおりである:
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−Xaa17。
【0152】
c.抗体の調製/生産
抗体は、様々な技術によって調製され得る。一般に、組換え体であり得る抗体の生産を可能にするためには、抗体は、従来の技術による、または抗体遺伝子、重鎖および/または軽鎖を適切な細菌または哺乳動物細胞宿主にトランスフェクトすることによるモノクローナル抗体の作製を含む細胞培養技術によって生産され得る。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するためによく使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれかにおいて、本発明の抗体を発現させることが可能であるが、このような真核細胞(特に、哺乳動物細胞)は、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て分泌する可能性が原核細胞よりも高いので、好ましくは真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞で抗体を発現させる。
【0153】
本発明の組換え抗体を発現させるための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、Kaufman and Sharp,J.Mol.Biol,159:601−621(1982)に記載されているDHFR選択マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220(1980)に記載されているdhfr−CHO細胞を含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合、宿主細胞における抗体の発現、より好ましくは、宿主細胞を成長させる培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって、抗体を生産する。抗体は、標準タンパク質精製法を使用して培養培地から回収され得る。
【0154】
宿主細胞はまた、機能的抗体断片、例えば、Fab断片またはscFv分子を生産するのに使用され得る。上記手順の変法は、本発明の範囲内であることが理解されよう。例えば、本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術はまた、対象とする抗原との結合に必要ではない、軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部または全部を除去するのに使用され得る。このような短縮型DNA分子から発現された分子もまた、本発明の抗体によって包含される。加えて、標準化学的架橋法によって本発明の抗体を第2の抗体に架橋することによって、一方の重鎖および一方の軽鎖が本発明の抗体であり(即ち、ヒトRGMaに結合する)もう一方の重鎖および軽鎖がヒトRGMa以外の抗原に対して特異的である二官能性抗体が生産され得る。
【0155】
本発明の抗体またはこの抗原結合部分を組換え発現するのに好ましい系では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr−CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖および軽鎖遺伝子はそれぞれ、この遺伝子の高レベルの転写を駆動するようにCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに作動可能に連結されている。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターでトランスフェクトされたCHO細胞の選択を可能にするDHFR遺伝子を保持する。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にするように培養され、インタクトな抗体が培養培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するために、標準分子生物学技術が使用される。またさらに、本発明は、本発明の宿主細胞を、本発明の組換え抗体が合成されるまで適切な培養培地中で培養することによって、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。この方法は、培養培地から組換え抗体を単離することをさらに含み得る。
【0156】
モノクローナル抗体を調製するための方法は、所望の特異性を有する抗体を産生することができる不死細胞株の調製を含む。このような細胞株は、免疫感作された動物から得られた脾臓細胞から生産され得る。動物は、RGMaまたはこの断片および/もしくは変異体で免疫感作され得る。例えば、配列番号65、配列番号66、配列番号74、配列番号65、配列番号66もしくは配列番号74の断片、または配列番号65、配列番号66、配列番号74の変異体のいずれかが、動物を免疫感作するのに使用され得る。動物を免疫感作するのに使用されるペプチドは、ヒトFc、例えば、ヒト抗体の断片結晶化可能領域または尾領域をコードするアミノ酸を含み得る。次いで、例えば、骨髄腫細胞融合パートナーと融合することによって、脾臓細胞を不死化し得る。様々な融合技術が用いられ得る。例えば、非イオン性洗剤と共に脾臓細胞および骨髄腫細胞を数分間混ぜ合わせ、次いで、骨髄腫細胞ではなくハイブリッド細胞の成長を支援する選択培地上に低密度でプレートし得る。このような技術の1つは、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン(HAT)選択を使用する。十分な時間、通常は約1から2週間後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一コロニーを選択し、これらの培養上清を、ポリペプチドに対する結合活性について試験する。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが使用され得る。
【0157】
モノクローナル抗体は、成長中のハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。加えて、収率を高めるために、マウスなどの適切な脊椎動物宿主の腹膜腔にハイブリドーマ細胞株を注入するなどの様々な技術が用いられ得る。次いで、モノクローナル抗体を腹水または血液から回収し得る。クロマトグラフィー、ゲルろ過、沈殿および抽出などの従来の技術によって、抗体から混入物質を除去し得る。アフィニティクロマトグラフィーは、抗体精製工程に使用され得る方法の一例である。
【0158】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を選択的に切断して幾つかの断片を生成し、このうちの2つ(F(ab)断片)はそれぞれ、インタクトな抗原結合部位を含む共有ヘテロダイマーを含む。酵素ペプシンはIgG分子を切断して、両抗原結合部位を含むF(ab’)2断片を含む幾つかの断片を提供することができる。
【0159】
Fv断片は、IgMおよび稀にはIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の選択的タンパク質切断によって生成され得る。組換え技術を使用して、Fv断片を生成し得る。Fv断片としては、ネイティブな抗体分子の抗原認識および抗原結合能力の大部分を保持する抗原結合部位を含む非共有結合性VH::VLヘテロダイマーが挙げられる。
【0160】
抗体、抗体断片または誘導体は、重鎖および軽鎖の相補性決定領域(「CDR」)セットを含み得、これらは、CDRを支えてCDR相互の空間関係を規定する重鎖および軽鎖のフレームワーク(「FR」)セットの間にそれぞれ挿入されている。CDRセットは、重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域を含有し得る。これらの領域は、重鎖または軽鎖のN末端から順に、それぞれ「CDR1」、「CDR2」および「CDR3」という名称である。従って、抗原結合部位は、重鎖および軽鎖の各V領域のCDRセットを含む6つのCDRを含み得る。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2またはCDR3)を含むポリペプチドは、「分子認識ユニット」と称され得る。抗原−抗体複合体の結晶学的解析により、CDRのアミノ酸残基は結合抗原と広範な接触を形成し、最も広範な抗原接触は重鎖CDR3とのものであることが実証されている。従って、分子認識ユニットは、抗原結合部位の特異性の主な一因であり得る。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的およびほぼ実質的に関与する。
【0161】
当技術分野において公知の方法を使用して、限定されないが、例えば、Cambridge Antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)、MorphoSys(Martinsreid/Planegg,Del)、Biovation(Aberdeen,Scotland,UK)Biolnvent(Lund,Sweden)などの種々の商業ベンダーから市販されているペプチドまたはタンパク質ライブラリ(例えば、限定されないが、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNA、酵母など、ディスプレイライブラリ)から組換え抗体を選択する方法を含む、必要な特異性の抗体を生産または単離する他の適切な方法を使用することができる。米国特許第4,704,692号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,976,862号明細書を参照のこと。代替法は、当技術分野において公知および/または本明細書に記載されているような、ヒト抗体のレパートリを産生することができるトランスジェニック動物の免疫化に基づくものである(例えば、SCIDマウス、 Nguyen et al.(1997)Microbiol.Immunol.41:901−907;Sandhu et al.(1996)Crit.Rev.Biotechnol.16:95−118;Eren et al.(1998)Immunol.93:154−161)。このような技術としては、限定されないが、リボソーム・ディスプレイ(Hanes et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937−4942;Hanes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130−14135);単一細胞抗体産生技術(例えば、選択的リンパ球抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号明細書、Wen et al.(1987)J.Immunol.17:887−892;Babcook et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848);ゲル・ミクロ小滴およびフローサイトメトリー(Powell et al.(1990)Biotechnol.8:333−337;One Cell Systems,(Cambridge,Mass).;Gray et al.(1995)J.Imm.Meth.182:155−163;Kenny et al.(1995)Bio/Technol.13:787−790);B細胞選択(Steenbakkers et al.(1994)Molec.Biol.Reports 19:125−134(1994))が挙げられる。
【0162】
親和性成熟抗体は、当技術分野において公知の幾つかの手順のいずれか1つによって生産され得る。例えば、Marks et al,BioTechnology,10:779−783(1992)には、VHおよびVLドメインをシャッフルすることによる親和性成熟が記載されている。Barbas et al,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:3809−3813(1994);Schier et al,Gene,169:147−155(1995);Yelton et al,J.Immunol,155:1994−2004(1995);Jackson et al,J.Immunol,154(7):3310−3319(1995);Hawkins et al,J.Mol.Biol,226:889−896(1992)には、CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発が記載されている。米国特許第6,914,128号明細書には、活性を増強するアミノ酸残基による選択的変異誘発部位および接触部位または超変異部位における選択的変異が記載されている。
【0163】
また、本発明の抗体変異体は、このような抗体を乳中に産生するトランスジェニック動物または哺乳動物、例えば、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどを提供するように、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主に送達することを使用して調製され得る。これらの方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,827,690号明細書;同第5,849,992号明細書;同第4,873,316号明細書;同第5,849,992号明細書;同第5,994,616号明細書;同第5,565,362号明細書;および同第5,304,489号明細書に記載されている。
【0164】
また、このような抗体、特定部分または変異体を植物部分中またはこれ由来の培養細胞中に産生するトランスジェニック植物および培養植物細胞(例えば、限定されないが、タバコ、トウモロコシおよびウキクサ)を提供するように本発明のポリヌクレオチドを送達することによって、抗体変異体を調製することができる。例えば、Cramer et al.(1999)Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95−118およびそこで引用されている参考文献には、例えば、誘導性プロモーターを使用した、大量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニック・タバコ葉の生産が記載されている。トランスジェニック・トウモロコシは、他の組換え系で生産されたか、または天然の供与源から精製されたものと同等の生物学的活性をもつ哺乳類タンパク質を、商業的な生産レベルで発現させるのに使用されている。例えば、Hood et al,Adv.Exp.Med.Biol.(1999)464:127−147およびそこで引用されている参考文献を参照のこと。また、抗体変異体は、タバコ種子およびジャガイモ塊茎を含む、一本鎖抗体(scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物種子から大量に生産されている。例えば、Conrad et al.(1998)Plant Mol.Biol.38:101−109およびそこで引用されている参考文献を参照のこと。従って、本発明の抗体はまた、公知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して生産することができる。
【0165】
抗体誘導体は、例えば、外来性配列を追加して、免疫原性を改変するか、または結合、親和性、on速度、off速度、アビディティ、特異性、半減期もしくは任意の他の適切な特徴を減少、増強または改変することによって生産することができる。一般に、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部または全部は維持するが、可変領域および定常領域の非ヒト配列は、ヒトまたは他のアミノ酸で置換する。
【0166】
小さな抗体断片は、2つの抗原結合部位を有するダイアボディであり得、断片は、同じポリペプチド鎖(VH VL)の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。例えば、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号;およびHollinger et al,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448を参照のこと。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合することができないほど短いリンカーを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製する。全体が参照により本明細書に組み込まれるChenらの米国特許第6,632,926号明細書も参照すると、親抗体の超可変領域に挿入された1つ以上のアミノ酸と、抗原に対する親抗体の結合親和性よりも少なくとも約2倍強力な、標的抗原に対する結合親和性とを有する抗体変異体が開示されている。
【0167】
抗体は、直鎖状抗体であり得る。直鎖状抗体を作製するための手順は、当技術分野において公知であり、Zapata et al.(1995)Protein Eng.8(10):1057−1062に記載されている。簡潔には、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対の直列型Fdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖状抗体は、二特異性または単一特異性であり得る。
【0168】
限定されないが、プロテインA精製、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む公知の方法によって、組換え細胞培養物から抗体を回収し、精製することができる。また、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も、精製に使用することができる。
【0169】
抗体を検出可能にまたは治療的に標識することも有用であり得る。抗体をこれらの薬剤にコンジュゲートするための方法は、当技術分野において公知である。例示のみの目的であるが、抗体は、放射性原子、発色団、フルオロフォアなどの検出可能な部分で標識することができる。このような標識された抗体は、インビボまたは単離された試験試料で診断技術に使用することができる。また、抗体は、例えば、化学療法剤または毒素などの医薬品にコンジュゲートすることができる。これらは、サイトカインに、リガンドに、別の抗体に連結することができる。抗体にカップリングして抗腫瘍効果を達成するのに適切な薬剤としては、インターロイキン2(IL−2)および腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホナート、ヘマトポルフィリンおよびフタロシアニンを含む、光感作療法に使用するための光増感剤;ヨウ素−131(131I)、イットリウム90(90Y)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(2l3Bi)、テクネチウム99m(99mTc)、レニウム−186(186Re)およびレニウム−188(188Re)などの放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチンおよびカルボプラチンなどの抗生物質;ジフテリア毒素、プソイドモナス外毒素A、ブドウ球菌腸毒素A、アブリン−A毒素、リシンA(脱グリコシルされたリシンAおよび天然のリシンA)、TGFアルファ毒素、チャイニーズ・コブラ(naja naja atra)由来の細胞毒およびゲロニン(植物性毒素)などの、細菌、植物、ならびに他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)によって産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(saporin)(サポナリア・オフィシナリス(Saponaria officinalis)由来のリボソーム不活性化タンパク質)およびRNaseなどの、植物、細菌、ならびに真菌由来のリボソーム不活性化タンパク質;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(二フッ化プリンヌクレオシド);抗嚢胞性薬(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素、メトトレキセートなどをコードするプラスミド)を含むリポソーム;ならびに他の抗体またはF(ab)などの抗体断片が挙げられる。
【0170】
抗体は、組換えまたは合成手段によって配列決定および複製され得る。これらはまた、これらをコードする直線状ヌクレオチド配列にさらに配列決定され得る。従って、本発明は、本発明の抗体の配列をコードするこれらのポリヌクレオチドを単独で、または上記担体、ベクターもしくは宿主細胞と組み合わせて提供する。
【0171】
ハイブリドーマ技術、選択的リンパ球抗体法(SLAM)、トランスジェニック動物、および組換え抗体ライブラリを使用する抗体生産を以下により詳細に説明する。
【0172】
(1)ハイブリドーマ技術を使用する抗RGMaモノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換えおよびファージディスプレイ技術またはこれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野において公知の多種多様な技術を使用して調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野において公知であり、例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,second edition,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1988);Hammerling,et al.,In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,(Elsevier,N.Y.,1981)に教示されるものを含むハイブリドーマ技術を使用して生産され得る。本明細書では、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術によって生産される抗体に限定されないことも留意されたい。用語「モノクローナル抗体」は、任意の真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指すのであって、これが生産される方法を指すのではない。
【0173】
一実施形態では、本発明は、モノクローナル抗体を作製する方法ならびに前記方法によって生産される抗体を提供する。前記方法は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含み得、ここで、好ましくは、ハイブリドーマは、RGMaで免疫感作された動物、例えば、ラットまたはマウスから単離された脾細胞を、骨髄腫細胞と融合すること、次いで、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、融合から得られたハイブリドーマをスクリーニングすることによって作製される。簡潔には、ラットは、RGMa抗原で免疫感作され得る。好ましい実施形態では、RGMa抗原は、免疫反応を刺激するためにアジュバントと共に投与される。このようなアジュバントとしては、完全または不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。このようなアジュバントは、ポリペプチドを局所沈着に隔離することによって、急速な分散からこれを保護し得るか、またはこれらは、マクロファージおよび免疫系の他の成分に対して走化性の因子を分泌するように宿主を刺激する物質を含有し得る。好ましくは、ポリペプチドが投与される場合には、免疫感作スケジュールは、数週間にわたって展開される2回以上のポリペプチドの投与を含むが、単回のポリペプチド投与も使用され得る。
【0174】
RGMa抗原で動物を免疫感作した後、抗体および/または抗体を産生する細胞が動物から得られ得る。抗RGMa抗体を含有する血清は、動物を出血させるかまたは屠殺することによって動物から得られる。血清を動物から得られたまま使用してもよいし、免疫グロブリン画分を血清から得てもよいし、または抗RGMa抗体を血清から精製してもよい。この方法で得られた血清または免疫グロブリンは、ポリクローナルであり、従って、不均一な特性のアレイを有する。
【0175】
免疫反応が検出されたら、例えば、抗原RGMaに対して特異的な抗体がラット血清中で検出されたら、ラット脾臓を回収し、脾細胞を単離する。次いで、周知の技術によって脾細胞を任意の適切な骨髄腫細胞、例えば、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,Va.,US)から入手可能な細胞株SP20由来の細胞に融合する。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によってクローニングする。次いで、当技術分野において公知の方法によって、RGMaに結合することができる抗体を分泌する細胞についてハイブリドーマクローンをアッセイする。一般に、高レベルの抗体を含有する腹水は、陽性ハイブリドーマクローンでラットを免疫感作することによって作製することができる。
【0176】
別の実施形態では、抗体を産生する不死化されたハイブリドーマは、免疫感作された動物から調製され得る。免疫感作後、当技術分野において周知であるように、動物を屠殺し、脾臓B細胞を不死化された骨髄腫細胞と融合する。例えば、前掲のHarlowおよびLaneを参照のこと。好ましい実施形態では、骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞株)。融合し、抗生物質選択した後、RGMaもしくはこの部分またはRGMaを発現する細胞を使用して、ハイブリドーマをスクリーニングする。好ましい実施形態では、初回スクリーニングは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくは、ELISAを使用して実施される。ELISAスクリーニングの例は、国際公開第00/37504号に提供されている。
【0177】
抗RGMa抗体を産生するハイブリドーマを選択し、クローニングし、以下にさらに論じられる、ロバストなハイブリドーマ成長、高抗体産生および所望の抗体特徴を含む所望の特徴についてさらにスクリーニングする。インビボでは同系動物、免疫系を欠く動物、例えば、ヌードマウスで、またはインビトロでは細胞培養でハイブリドーマを培養して増殖し得る。ハイブリドーマを選択、クローニングおよび増殖する方法は、当業者に周知である。
【0178】
好ましい実施形態では、ハイブリドーマは、ラットハイブリドーマである。別の実施形態では、ハイブリドーマは、マウス、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマなどの非ヒト、非ラット種において産生される。さらに別の好ましい実施形態では、ハイブリドーマは、ヒト非分泌性骨髄腫を、抗RGMa抗体を発現するヒト細胞と融合したヒトハイブリドーマである。
【0179】
特定のエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって作製され得る。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)2断片は、パパイン(2つの同一のFab断片を生産するため)またはペプシン(F(ab’)
2断片を生産するため)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって生産され得る。IgG分子のF(ab’)2断片は、軽鎖(可変軽鎖および定常軽鎖領域を含有する。)、重鎖のCH1ドメインおよび親IgG分子のジスルフィド形成ヒンジ領域の両方を含む、より大きな(「親」)IgG分子の2つの抗原結合部位を保持する。従って、F(ab’)2断片は、依然として、親IgG分子のように抗原分子を架橋することができる。
【0180】
(2)SLAMを使用する抗RGMaモノクローナル抗体。
【0181】
本発明の別の態様では、組換え抗体は、米国特許第5,627,052号明細書;国際公開第92/02551号;およびBabcook et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:7843−7848(1996))に記載されている当技術分野では選択的リンパ球抗体法(selected lymphocyte antibody method)(SLAM)と称される手順を使用して、単一の単離されたリンパ球から作製される。この方法では、対象とする抗体を分泌する単細胞、例えば、免疫感作された動物のいずれか1つから得られたリンパ球は、抗原特異的溶血プラークアッセイを使用してスクリーニングされ、これでは、抗原RGMa、RGMaのサブユニットまたはこの断片が、ビオチンなどのリンカーを使用してヒツジ赤血球にカップリングされ、RGMaに対して特異性を有する抗体を分泌する単細胞を同定するのに使用される。対象とする抗体を分泌する細胞を同定した後、重鎖および軽鎖可変領域cDNAが逆転写酵素−PCR(RT−PCR)によって細胞からレスキューされ、次いで、これらの可変領域が、COSまたはCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において、適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)との関連で発現され得る。次いで、インビボで選択されたリンパ球由来の増幅された免疫グロブリン配列でトランスフェクトされた宿主細胞をさらに分析し、例えば、トランスフェクトされた細胞をパニングすることによってインビトロ選択して、RGMaに対する抗体を発現する細胞を単離することができる。増幅された免疫グロブリン配列は、インビトロ親和性成熟法などによってインビトロでさらに操作され得る。例えば、国際公開第97/29131号および同第00/56772号参照のこと。
【0182】
(3)トランスジェニック動物を使用する抗RGMaモノクローナル抗体。
【0183】
本発明の別の実施形態では、RGMa抗原で非ヒト動物を免疫感作することによって、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部または全部を含む抗体が生産される。一実施形態では、非ヒト動物は、XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスであり、これは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きな断片を含み、マウス抗体産生に欠陥のある人為操作されたマウス系統である。例えば、Green et al,Nature Genetics,7:13−21(1994)および米国特許第5,916,771号明細書;同第5,939,598号明細書;同第5,985,615号明細書;同第5,998,209号明細書;同第6,075,181号明細書;同第6,091,001号明細書;同第6,114,598号;および同第6,130,364号明細書を参照のこと。国際公開第91/10741号;同第94/02602号;同第96/34096号;同第96/33735号;同第98/16654号;同第98/24893号;同第98/50433号;同第99/45031号;同第99/53049号;同第00/09560号;および同第00/37504号も参照のこと。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を生成する。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座およびx軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖系列立体配置YAC断片の導入によってヒト抗体レパートリのおよそ80%を含有する。開示が参照により本明細書に組み込まれるMendez et al.,Nature Genetics,15:146−156(1997)、Green and Jakobovits,J.Exp.Med.,188:483−495(1998)を参照のこと。
【0184】
(4)組換え抗体ライブラリを使用する抗RGMaモノクローナル抗体。
【0185】
本発明の抗体を作製するためにインビトロ法も使用され得、ここで、所望のRGMa結合特異性を有する抗体を同定するために、抗体ライブラリがスクリーニングされる。このような組換え抗体ライブラリをスクリーニングする方法は、当技術分野において周知であり、例えば、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,223,409号明細書(Ladnerら);国際公開第92/18619号(Kangら);同第91/17271号(Dowerら);同第92/20791号(Winterら);同第92/15679号(Marklandら);同第93/01288号(Breitlingら);同第92/01047号(McCaffertyら);同第92/09690号(Garrardら);Fuchs et al,Bio/Technology,9:1369−1372(1991);Hay et al,Hum.Antibod.Hybridomas,3:81−85(1992);Huse et al,Science,246:1275−1281(1989);McCafferty et al,Nature,348:552−554(1990);Griffiths et al,EMBO J.,12:725−734(1993);Hawkins et al,J.Mol.Biol,226:889−896(1992);Clackson et al,Nature,352:624−628(1991);Gram et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:3576−3580(1992);Garrard et al,Bio/Technology,9:1373−1377(1991);Hoogenboom et al,Nucl.Acids Res.,19:4133−4137(1991);Barbas et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7978−7982(1991);米国特許出願公開第2003/0186374号明細書;および国際公開第97/29131号に記載されている方法が挙げられる。
【0186】
組換え抗体ライブラリは、RGMaまたはRGMaの部分で免疫感作された被験体に由来し得る。または、組換え抗体ライブラリは、ヒトRGMaで免疫感作されていないヒト被験体由来のヒト抗体ライブラリなどの、ナイーブな被験体、即ち、RGMaで免疫感作されていないものに由来し得る。本発明の抗体は、ヒトRGMaを含むペプチドを用いて組換え抗体ライブラリをスクリーニングし、これによってRGMaを認識する抗体を選択することによって選択される。このようなスクリーニングおよび選択を実施する方法は当技術分野において周知であり、例えば、前述の段落における参考文献に記載されている。RGMaに対して特定の結合親和性を有する本発明の抗体、例えば、特定のK
off速度定数でヒトRGMaから解離するものを選択するために、当技術分野において公知の表面プラズモン共鳴法を使用して、所望のK
off速度定数を有する抗体を選択することができる。hRGMaに対して特定の中和活性を有する本発明の抗体、例えば、特定のIC
50を有するものを選択するために、RGMa活性の阻害を評価するための当技術分野において公知の標準法が使用され得る。
【0187】
一態様では、本発明は、ヒトRGMaに結合する単離された抗体またはこの抗原結合部分に関する。好ましくは、抗体は、中和抗体である。種々の実施形態では、抗体は、組換え抗体またはモノクローナル抗体である。
【0188】
例えば、本発明の抗体はまた、当技術分野において公知の種々のファージディスプレイ法を使用して作製され得る。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインは、これらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面にディスプレイされる。このようなファージは、レパートリまたはコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために利用され得る。対象とする抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識された抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を使用して選択または同定され得る。これらの方法において使用されるファージは、通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換え融合された、Fab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されるfdおよびM13結合ドメインを含む糸状ファージである。本発明の抗体を作製するのに使用され得るファージディスプレイ法の例としては、Brinkmann et al,J.Immunol.Methods,182:41−50(1995);Ames et al,J.Immunol.Methods,184:177−186(1995);Kettleborough et al,Eur.J.Immunol,24:952−958(1994);Persic et al,Gene,187:9−18(1997);Burton et al,Advances in Immunology,57:191−280(1994);国際公開第92/01047号;同第90/02809号;同第91/10737号;同第92/01047号;同第92/18619号;同第93/11236号;同第95/15982号;同第95/20401号;および米国特許第5,698,426号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,750,753号明細書;同第5,821,047号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,427,908号明細書;同第5,516,637号明細書;同第5,780,225号明細書;同第5,658,727号明細書;同第5,733,743号明細書;および同第5,969,108号明細書に開示されているものが挙げられる。
【0189】
上記の参考文献に記載されているように、ファージ選択後、抗体コード領域は、ファージから単離され、ヒト抗体または任意の他の所望の抗原結合断片を含む全抗体を作製するのに使用され、例えば、以下に詳細に記載される哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む任意の所望の宿主において発現され得る。例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)
2断片を組換え生産するための技術も、当技術分野において公知の方法、例えば、国際公開第92/22324号;Mullinax et al,BioTechniques,12(6):864−869(1992);Sawai et al,Am.J.Reprod.Immunol,34:26−34(1995);およびBetter et al,Science,240:1041−1043(1988)に開示されているものを使用して用いられ得る。一本鎖Fvおよび抗体を生産するのに使用され得る技術の例としては、米国特許第4,946,778号明細書および同第5,258,498号明細書;Huston et al,Methods in Enzymology,203:46−88(1991);Shu et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7995−7999(1993);およびSkerra et al,Science,240:1038−1041(1988)に記載されているものが挙げられる。
【0190】
ファージディスプレイによる組換え抗体ライブラリのスクリーニングに代えて、大きなコンビナトリアルライブラリをスクリーニングするための当技術分野において公知の他の方法論が、本発明の抗体の同定に適用され得る。代替発現系の一種は、国際公開第98/31700号(SzostakおよびRoberts)に、ならびにRoberts and Szostak,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12297−12302(1997)に記載されているような、組換え抗体ライブラリをRNA−タンパク質融合物として発現させるものである。この系では、ピューロマイシン、ペプチジルアクセプター抗生物質を3’末端に保持する合成mRNAのインビトロ翻訳によって、mRNAとこれがコードするペプチドまたはタンパク質との間に共有結合融合が作られる。従って、特異的mRNAは、コードされたペプチドまたはタンパク質、例えば、抗体またはこの部分の特性、例えば、抗体またはこの部分の二重特異性抗原との結合に基づいて、複合的なmRNA混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリ)から濃縮され得る。このようなライブラリのスクリーニングから回収される抗体またはこの部分をコードする核酸配列を、上記組換え手段によって(例えば、哺乳動物宿主細胞において)発現させることができ、さらに、最初に選択された配列中に変異が導入されているmRNA−ペプチド融合物のスクリーニングのさらなるラウンドによって、または上記の組換え抗体のインビトロ親和性成熟のための他の方法によってのいずれかで、さらなる親和性成熟に供することができる。この方法論の好ましい例は、PRO融合ディスプレイ技術である。
【0191】
別のアプローチでは、本発明の抗体はまた、当技術分野において公知の酵母ディスプレイ法を使用して作製され得る。酵母ディスプレイ法では、抗体ドメインを酵母細胞壁に繋ぎ止め、これらを酵母の表面上にディスプレイするために遺伝学的方法が使用される。特に、このような酵母は、レパートリまたはコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために利用され得る。本発明の抗体を作製するのに使用され得る酵母ディスプレイ法の例としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,699,658号明細書(Wittrupら)に開示されているものが挙げられる。
【0192】
d.組換えRGMa抗体の生産
本発明の抗体は、当技術分野において公知の幾つかの技術のいずれかによって生産され得る。例えば、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターが、標準技術によって宿主細胞中にトランスフェクトされている宿主細胞からの発現。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するためによく使用される様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれかにおいて、本発明の抗体を発現させることが可能であるが、このような真核細胞(特に、哺乳動物細胞)は、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て分泌する可能性が原核細胞よりも高いので、好ましくは真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞で抗体を発現させる。
【0193】
本発明の組換え抗体を発現させるための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、Kaufman and Sharp,J.Mol.Biol,159:601−621(1982)に記載されているDHFR選択マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220(1980)に記載されているdhfr−CHO細胞を含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合、宿主細胞における抗体の発現、より好ましくは、宿主細胞を成長させる培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって、抗体を生産する。抗体は、標準タンパク質精製法を使用して培養培地から回収され得る。
【0194】
宿主細胞はまた、機能的抗体断片、例えば、Fab断片またはscFv分子を生産するのに使用され得る。上記手順の変法は、本発明の範囲内であることが理解されよう。例えば、本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖のいずれかの機能的断片をコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術はまた、対象とする抗原との結合に必要ではない、軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部または全部を除去するのに使用され得る。このような短縮型DNA分子から発現された分子もまた、本発明の抗体によって包含される。加えて、標準化学的架橋法によって本発明の抗体を第2の抗体に架橋することによって、一方の重鎖および一方の軽鎖が本発明の抗体であり(即ち、ヒトRGMaに結合する)もう一方の重鎖および軽鎖がヒトRGMa以外の抗原に対して特異的である二官能性抗体が生産され得る。
【0195】
抗体またはこの抗原結合部分を組換え発現するのに好ましい系では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr−CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖および軽鎖遺伝子はそれぞれ、この遺伝子の高レベルの転写を駆動するようにCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに作動可能に連結されている。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を使用してベクターでトランスフェクトされたCHO細胞の選択を可能にするDHFR遺伝子を保持する。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にするように培養され、インタクトな抗体が培養培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するために、標準分子生物学技術が使用される。またさらに、本発明は、本発明の宿主細胞を、本発明の組換え抗体が合成されるまで適切な培養培地中で培養することによって、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。この方法は、培養培地から組換え抗体を単離することをさらに含み得る。
【0196】
(a)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、対象とする抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域と、非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)とを含む抗体またはこの変異体、誘導体、類似体もしくは部分であり得る。ヒト化抗体は、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体であって、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有する抗体に由来し得る。
【0197】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、CDRとの関連では、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリン(即ち、ドナー抗体)のものに対応し、フレームワーク領域の全部または実質的に全部が、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つの、通常2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的に全部を含む。一態様では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインとを含有する。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を含み得る。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含有する。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖および/または重鎖のヒト化可変ドメインのみを含有する。
【0198】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、ならびに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプから選択され得る。ヒト化抗体は、2つ以上のクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含み得、特定の定常ドメインは、当技術分野において周知の技術を使用して、所望のエフェクター機能を最適化するように選択され得る。
【0199】
ヒト化抗体のフレームワークおよびCDR領域は、親配列と正確に対応する必要はなく、例えば、ドナー抗体CDRまたはコンセンサスフレームワークを少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失によって変異し、この結果、この部位のCDRまたはフレームワーク残基が、ドナー抗体またはコンセンサスフレームワークに対応していなくてもよい。しかしながら、一実施形態では、このような変異は、大規模なものではない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%は、親のFRおよびCDR配列のものに対応する。本明細書で使用される場合、用語「コンセンサスフレームワーク」は、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。本明細書で使用される場合、用語「コンセンサス免疫グロブリン配列」は、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も高頻度に存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,1987)を参照のこと)。免疫グロブリンのファミリーでは、コンセンサス配列中の各位置は、ファミリーにおいて当該位置で最も高頻度に存在するアミノ酸によって占められている。2つのアミノ酸が等頻度に存在する場合には、コンセンサス配列中にいずれかが含まれ得る。
【0200】
ヒト化抗体は、ヒトレシピエントにおけるこれらの部分の治療適用の継続期間および有効性を制限する齧歯類抗ヒト抗体に対する望ましくない免疫反応を最小化するように設計され得る。ヒト化抗体は、非ヒト起源由来のこれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒト残基は「インポート」残基と称されることが多く、通常可変ドメインに由来している。ヒト化は、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列で置換することによって実施され得る。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインのごく一部が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である。例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,816,567号明細書を参照のこと。ヒト化抗体は、幾つかの超可変領域残基および可能な場合には幾つかのFRが、齧歯類抗体の類似部位由来の残基で置換されたヒト抗体であり得る。本発明の抗体のヒト化または人為操作は、任意の公知の方法、例えば限定されないが、米国特許第5,723,323号明細書;同第5,976,862号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,766,886号明細書;同第5,714,352号明細書;同第6,204,023号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,225,539号明細書;および同第4,816,567号明細書に記載されているものを使用して実施され得る。
【0201】
ヒト化抗体は、RGMaに対する高親和性および他の好ましい生物学的特性を保持し得る。ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列および種々の概念的ヒト化産物を分析する工程によって調製され得る。三次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能である。選択された候補免疫グロブリン配列のあり得る三次元立体構造を例証および表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの観察によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のあり得る役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンのこの抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基は、RGMaに対する親和性の増大などの所望の抗体特徴が達成されるようにレシピエント配列およびインポート配列から選択され、組み合わされ得る。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的におよび最も実質的に関与し得る。
【0202】
ヒト化の代替手段として、ヒト抗体(本明細書では「完全ヒト抗体」とも称される。)が作製され得る。例えば、PRO融合および/または酵母関連技術によって、ライブラリからヒト抗体を単離することが可能である。以下に提供される実施例を参照のこと。トランスジェニック動物(例えば、免疫感作すると、内因性免疫グロブリンを産生せずに、十分なレパートリのヒト抗体を産生することができるマウス)を生産することも可能である。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J
H)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全阻害をもたらす。このような生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移動は、抗原チャレンジによるヒト抗体の産生をもたらすであろう。ヒト化抗体または完全ヒト抗体は、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,770,429号明細書;同第5,833,985号明細書;同第5,837,243号明細書;同第5,922,845号明細書;同第6,017,517号明細書;同第6,096,311号明細書;同第6,111,166号明細書;同第6,270,765号明細書;同第6,303,755号明細書;同第6,365,116号明細書;同第6,410,690号明細書;同第6,682,928号明細書;および同第6,984,720号明細書に記載されている方法に従って調製され得る。
【0203】
3.医薬組成物
抗体は、医薬組成物中の一成分であり得る。医薬組成物はまた、医薬として許容される担体を含有し得る。本発明の抗体を含む医薬組成物は、限定されないが、障害の診断、検出またはモニタリングにおいて;障害またはこの1つ以上の症候の予防、治療、管理または改善において;および/または研究において使用される。特定の実施形態では、組成物は、本発明の1つ以上の抗体を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、本発明の1つ以上の抗体と、標的RGMa活性が有害である障害を治療するための本発明の抗体以外の1つ以上の予防剤または治療剤とを含む。さらなる実施形態では、予防剤または治療剤は、障害またはこの1つ以上の症候の予防、治療、管理または改善に有用であることが公知であるか、またはこれらにおいて使用されていたか、またはこれらにおいて現在使用されている。これらの実施形態に従って、組成物は、担体、希釈液または賦形剤をさらに含み得る。
【0204】
本発明の抗体は、被験体に投与するのに適切な医薬組成物中に組み込まれ得る。通常、医薬組成物は、本発明の抗体および医薬として許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「医薬として許容される担体」としては、生理学的に適合される、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬として許容される担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどならびにこれらの組み合わせの1つ以上が挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。医薬として許容される担体は、抗体の有効期間または有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝液などの微量の補助物質をさらに含み得る。
【0205】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される障害を治療するための少なくとも1つのさらなる治療剤を含む。
【0206】
種々の送達系が公知であり、本発明の1つ以上の抗体、または本発明の1つ以上の抗体と障害または1つ以上のこの症候を予防、管理、治療または改善するのに有用な予防剤または治療剤との組み合わせを投与するのに使用され得るが、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルにおけるカプセル封入、抗体または抗体断片を発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)を参照のこと)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸構築物などが挙げられる。本発明の予防剤または治療剤を投与する方法としては、限定されないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与および粘膜投与(例えば、鼻腔内および経口経路)が挙げられる。加えて、肺投与は、例えば、吸入器または噴霧器およびエアロゾル化剤を有する製剤の使用によって用いられ得る。例えば、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,019,968号明細書;同第5,985,320号明細書;同第5,985,309号明細書;同第5,934,272号明細書;同第5,874,064号明細書;同第5,855,913号明細書;同第5,290,540号明細書;および同第4,880,078号明細書;および国際公開第92/19244号、同第97/32572号、同第97/44013号、同第98/31346号および同第99/66903号を参照のこと。一実施形態では、本発明の抗体、併用療法または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)肺薬物送達技術(Alkermes,Inc.,Cambridge,Mass.)を使用して投与される。特定の実施形態では、本発明の予防剤または治療剤は、筋肉内投与、静脈内投与、腫瘍内投与、経口投与、鼻腔内投与、肺投与にまたは皮下投与される。予防剤または治療剤は、任意の従来経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜内層を通る吸収によって(例えば、経口粘膜、直腸および腸管粘膜など)投与してもよいし、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与してもよい。投与は、全身でもよいし、または局所でもよい。
【0207】
特定の実施形態では、本発明の抗体を、治療を必要とする領域に局所投与することが望ましい場合がある;これは、例えば、限定されないが、局所注入として、注射によって、またはインプラントによって達成され得、前記インプラントは、サイラスティックメンブラン、ポリマー、繊維性マトリックス(例えば、Tissuel(登録商標))またはコラーゲンマトリックスなどのメンブランおよびマトリックスを含む多孔性または非多孔性材料である。一実施形態では、有効量の本発明の1つ以上の抗体は、障害またはこの症候を予防、治療、管理および/または改善するために被験体の罹患領域に局所投与される。別の実施形態では、有効量の本発明の1つ以上の抗体は、本発明の抗体以外の有効量の1つ以上の治療(例えば、1つ以上の予防剤または治療剤)と組み合わせて、障害またはこの1つ以上の症候を予防、治療、管理および/または改善するために被験体の罹患領域に局所投与される。
【0208】
別の実施形態では、抗体は、制御放出または持続放出系で送達され得る。一実施形態では、制御放出または持続放出を達成するためにポンプが使用され得る(Langer,前掲;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:20;Buchwald et al,1980,Surgery 88:507;Saudek et al,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照のこと)。別の実施形態では、本発明の治療の制御放出または持続放出を達成するためにポリマー材料が使用され得る(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照のこと;Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al,1989,J.Neurosurg.7 1:105);米国特許第5,679,377号明細書;同第5,916,597号明細書;同第5,912,015号明細書;同第5,989,463号明細書;および同第5,128,326号明細書;および国際公開第99/15154号および同第99/20253号も参照のこと。)持続放出製剤において使用されるポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)およびポリオルトエステルが挙げられる。特定の実施形態では、持続放出製剤において使用されるポリマーは、不活性であり、漏出性の不純物を含まず、保存に対して安定であり、無菌であり、生分解性である。さらに別の実施形態は、制御放出または持続放出系は、予防標的または治療標的の近くに配置することができ、従って、全身用量の一部しか必要としない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,前掲,vol.2,pp.115−138(1984)を参照のこと)。
【0209】
制御放出系は、Langerによる総説(1990,Science 249:1527−1533)において論じられている。1つ以上の本発明の抗体を含む持続放出製剤を生産するために当業者に公知の任意の技術が使用され得る。例えば、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,526,938号明細書、国際公開第91/05548号、同第96/20698号、Ning et al,1996,「Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained−Release Gel」,Radiotherapy&Oncology 39:179−189;Song et al,1995,「Antibody Mediated Lung Targeting of Long−Circulating Emulsions」,PDA Journal of Pharmaceutical Science&Technology 50:372−397;Cleek et al,1997,「Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application」,Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853−854;およびLam et al.,1997,「Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery」,Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.24:759−760を参照のこと。
【0210】
本発明の組成物が、抗体をコードする核酸である特定の実施形態では、このコードされる抗体の発現を促進するために、適切な核酸発現ベクターの一部としてこれを構築することおよび細胞内になるようにこれを投与することによって、例えば、レトロウイルスベクターを使用することによって(米国特許第4,980,286号明細書を参照のこと)、または直接注射によって、または微粒子銃を使用することによって(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤を用いてコーティングすることによって、または核に入ることが公知のホメオボックス様ペプチドに結合して投与することによって(例えば、Joliot et al,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868を参照のこと)、核酸はインビボ投与され得る。または、核酸は、相同組換えによる発現のために細胞内に導入され、宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【0211】
本発明の医薬組成物は、この意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、限定されないが、非経口(例えば、静脈内の)、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮(例えば、局所)、経粘膜および直腸投与が挙げられる。特定の実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適している医薬組成物として、常法に従って製剤化される。通常、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤および注射の部位での疼痛を和らげるためリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。
【0212】
本発明の組成物が局所投与される場合には、組成物は、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョンの形態または当業者に周知の他の形態で製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,19th ed.,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.(1995)を参照のこと。噴霧不可能な局所剤形の場合、局所適用に適合する担体または1つ以上の賦形剤を含み、水よりも大きい動粘性係数を有する粘性から半固体または固体形態が、通常使用される。適切な製剤としては、限定されないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏(ointment)、散剤、リニメント剤、軟膏(salves)などが挙げられ、これらは、所望により、例えば、浸透圧などの種々の特性に影響を及ぼすために、滅菌され、または補助剤(例えば、保存料、安定化剤、湿潤剤、緩衝液または塩)と混合される。他の適切な局所剤形としては、固体または液体不活性担体と組み合わせた有効成分が、加圧された揮発性物質(例えば、ガス状噴射剤、例えば、フレオン)との混合物中にまたはスクイーズボトル中にパッケージされている噴霧可能なエアロゾル調製物が挙げられる。所望により、保湿剤または保水剤も、医薬組成物および剤形に追加され得る。このようなさらなる成分の例は、当技術分野において周知である。
【0213】
本発明の方法が組成物の鼻腔内投与を含む場合には、組成物は、エアロゾル形態、スプレー、ミストまたは液滴の形態で製剤化され得る。特に、本発明に従って使用するための予防剤または治療剤は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用して、加圧パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレー調製物の形態で送達され得ることが好都合である。加圧エアロゾルの場合には、投与単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な散剤基剤の散剤ミックスを含有する、吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)において使用するためのカプセル剤およびカートリッジ(例えば、ゼラチンからなる。)が製剤化され得る。
【0214】
本発明の方法が経口投与を含む場合には、組成物は、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ジェルキャップ、溶液、懸濁液などの形態で経口的に製剤化され得る。錠剤またはカプセル剤は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬として許容される賦形剤を用いて、従来の手段によって調製され得る。錠剤は、当技術分野において周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与用の液体調製物は、限定されないが、溶液、シロップ剤または懸濁液の形態をとってもよいし、またはこれらは使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提示してもよい。このような液体調製物は、懸濁液(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアガム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールまたは精留植物油);および保存料(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの医薬として許容される添加剤を用いて、従来の手段によって調製され得る。調製物はまた、必要に応じて、緩衝液塩、香味剤、着色剤および甘味剤も含有し得る。経口投与用の調製物は、予防剤または治療剤の徐放、制御放出または持続放出のために適切に製剤化され得る。
【0215】
本発明の方法は、例えば、エアロゾル化剤を用いて製剤化された組成物の吸入器または噴霧器の使用による肺投与を含み得る。例えば、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,019,968号明細書;同第5,985,320号明細書;同第5,985,309号明細書;同第5,934,272号明細書;同第5,874,064号明細書;同第5,855,913号明細書;同第5,290,540号明細書;および同第4,880,078号明細書;および国際公開第92/19244号、同第97/32572号、同第97/44013号、同第98/31346号および同第99/66903号を参照のこと。特定の実施形態では、本発明の抗体、併用療法および/または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)肺薬剤送達技術(Alkermes,Inc.,Cambridge,Mass.)を使用して投与される。
【0216】
本発明の方法は、注射による(例えば、ボーラス注射または連続注入による)非経口投与用に製剤化された組成物の投与を含み得る。注射用製剤は、保存料を加えた単位剤形で(例えば、アンプルまたは複数回投与容器で)提示され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり得、懸濁液、安定化剤および/または分散剤などの処方剤を含有し得る。または、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、滅菌発熱物質不含水)を用いて構成するための散剤形態であり得る。本発明の方法は、デポー調製物として製剤化された組成物の投与をさらに含み得る。このような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下に、または筋肉内に)によって、または筋肉注射によって投与され得る。従って、例えば、組成物は、適切なポリマー物質または疎水性物質を用いて(例えば、許容されるオイル中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)製剤化され得る。
【0217】
本発明の方法は、中性のまたは塩の形態として製剤化された組成物の投与を包含する。医薬として許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものなどの陰イオンを用いて形成されるもの、ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの陽イオンを用いて形成されるものが挙げられる。
【0218】
一般に、組成物の成分は、別個に、または単位剤形中に一緒に混合されて、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉された容器中の無水凍結乾燥散剤または無水濃縮物として供給される。投与様式が注入である場合には、組成物は、滅菌医薬等級水または生理食塩水を含有する注入ビンを用いて分配され得る。投与様式が注射によるものである場合には、滅菌注射水または生理食塩水のアンプルは、成分が投与に先立って混合され得るように提供され得る。
【0219】
特に、本発明はまた、本発明の抗体または医薬組成物のうち1つ以上が、抗体の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉された容器中にパッケージングされることを提供する。一実施形態では、本発明の抗体または医薬組成物のうち1つ以上が、密閉された容器中の無水滅菌凍結乾燥散剤または無水濃縮物として供給され、(例えば、水または生理食塩水を用いて)被験体に投与するための適切な濃度に再構成され得る。一実施形態では、本発明の抗体または医薬組成物のうち1つ以上は、少なくとも5mg、例えば、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mgまたは少なくとも100mgの単位投与量で密閉された容器中の無水滅菌凍結乾燥散剤として供給される。本発明の凍結乾燥抗体または医薬組成物は、この元の容器中で、2℃から8℃の間で保存されなくてはならず、本発明の抗体または医薬組成物は、再構成された後、1週間以内に、例えば、5日以内に、72時間以内に、48時間以内に、24時間以内に、12時間以内に、6時間以内に、5時間以内に、3時間以内にまたは1時間以内に投与されなくてはならない。代替の実施形態では、本発明の抗体または医薬組成物のうち1つ以上が、抗体の量および濃度を示す密閉された容器中の液体形態で供給される。さらなる実施形態では、投与される組成物の液体形態は、密閉された容器中、少なくとも0.25mg/ml、例えば、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/mlまたは少なくとも100mg/mlで供給される。液体形態は、この元の容器中で、2℃から8℃の間で保存されなくてはならない。
【0220】
本発明の抗体は、非経口投与に適切な医薬組成物中に組み込まれ得る。一態様では、抗体は、0.1から250mg/mlの抗体を含有する注射用溶液として調製される。注射用溶液は、フリントまたはアンバーバイアル、アンプルまたは薬剤充填済みシリンジ中の液体または凍結乾燥剤形のいずれかからなり得る。緩衝液は、pH5.0から7.0(最適には、pH6.0)のL−ヒスチジン(1から50mM)、最適には、5から10mMであり得る。他の適切な緩衝液としては、限定されないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが挙げられる。溶液の毒性を改変するために、塩化ナトリウムが、0から300mM(最適には、液体剤形の場合には150mM)の濃度で使用され得る。凍結乾燥剤形には、凍結保護物質、主に0から10%スクロース(最適には、0.5から1.0%)が含まれ得る。他の適切な凍結保護物質としては、トレハロースおよびラクトースが挙げられる。凍結乾燥剤形には、充填剤、主に、1から10%マンニトール(最適には、2から4%)が含まれ得る。液体および凍結乾燥剤形の両方において、安定化剤、主に、1から50mM L−メチオニン(最適には、5から10mM)が使用され得る。他の適切な充填剤としては、グリシン、アルギニンが挙げられ、0から0.05%ポリソルベート−80(最適には、0.005から0.01%)として含まれ得る。さらなる界面活性剤としては、限定されないが、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が挙げられる。非経口投与用の注射溶液として調製された本発明の抗体を含む医薬組成物は、アジュバントとして有用な薬剤、例えば、抗体の吸収または分散を増加させるのに使用されるものをさらに含み得る。特に有用なアジュバントは、Hylenex(登録商標)(組換えヒトヒアルロニダーゼ)などのヒアルロニダーゼである。ヒアルロニダーゼを注射溶液中に追加することにより、非経口投与、特に皮下投与後におけるヒトのバイオアベイラビリティが改善される。これにより、痛みおよび不快感をほとんど伴わずに、および注射部位反応の発生率を最小にして、注射部位容量をより大きく(即ち、1ml超)することも可能である。(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第04/078140号および米国特許出願公開第2006104968号明細書を参照のこと)
【0221】
本発明の組成物は、種々の形態であり得る。これらとしては、例えば、液体溶液(例えば、注射用溶液および注入用溶液)、分散物または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体および固体剤形が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与様式および治療適用に依存する。組成物は、他の抗体を用いるヒトの受動免疫感作に使用されるものと類似の組成物などの注射用溶液または注入用溶液の形態であり得る。一実施形態では、抗体は、静脈内注入または注射によって投与される。別の実施形態では、抗体は、筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0222】
治療用組成物は、通常、無菌で、製造および保存の条件下で安定でなくてはならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソームまたは高い薬物濃度に適切な他の秩序構造として製剤化され得る。滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中の必要な量で活性化合物(即ち、本発明の結合タンパク質、例えば、抗体)を、必要に応じて上記で列挙された成分のうち1つまたはこれらの組み合わせと共に組み込むこと、続いて、ろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、活性化合物を、基本分散媒および上記で列挙されたもののうち必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌凍結乾燥散剤の場合には、調製方法は、真空乾燥ならびに有効成分および先に滅菌ろ過したこの溶液に由来する任意のさらなる所望の成分の散剤が得られる噴霧乾燥を含む。溶液の適切な流動度は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持され得る。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0223】
本発明の抗体は、当技術分野において公知の様々な方法によって投与され得る。多くの治療適用にとって、投与経路/様式は、皮下注射、静脈内注射または注入であり得る。当業者によって理解されているように、投与経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化するであろう。特定の実施形態では、活性化合物は、化合物を迅速放出から保護する担体、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤と共に調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。このような製剤を調製するための多数の方法が、特許されているか、当業者には一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0224】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、例えば、不活性希釈液または同化食用担体と共に経口投与され得る。抗体(および所望により、他の成分)はまた、ハードシェルゼラチンカプセル剤またはソフトシェルゼラチンカプセル剤中に封入されるか、錠剤に圧縮されるか、または被験体の食事に直接組み込まれ得る。経口治療的投与の場合、抗体は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形態で使用され得る。本発明の抗体を、非経口投与以外によって投与するには、抗体をこの不活化を防ぐ物質でコーティングするか、または抗体をこの不活化を防ぐ物質と共に同時投与する必要があり得る。
【0225】
補足の活性化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。特定の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に記載される障害または疾患を治療するのに有用な1つ以上のさらなる治療剤と共に同時製剤化および/または同時投与される。例えば、本発明の抗RGMa抗体は、他の標的に結合する1つ以上のさらなる抗体(例えば、他の可溶性抗原に結合する抗体または細胞表面分子に結合する抗体)と共に同時製剤化および/または同時投与され得る。さらに、1つ以上の本発明の抗体は、前述の治療剤のうち2つ以上と組み合わせて使用され得る。このような併用療法は、有利には、より低い投与量の投与治療剤を用いるので、種々の単剤療法に関連する潜在的な毒性または合併症を回避し得る。
【0226】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、当技術分野において公知の半減期延長ビヒクルに連結される。このようなビヒクルとしては、限定されないが、Fcドメイン、ポリエチレングリコールおよびデキストランが挙げられる。このようなビヒクルは、例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第09/428,082号明細書および国際公開第99/25044号に記載されている。
【0227】
特定の実施形態では、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列が、遺伝子療法によって、障害またはこの1つ以上の症候を治療、予防、管理または改善するために投与される。遺伝子療法は、発現されたまたは発現可能な核酸を被験体に投与することによって実施される治療を指す。本発明のこの実施形態では、核酸は、予防効果または治療効果を媒介するこれらによってコードされる本発明の抗体を生成する。
【0228】
当技術分野において利用可能な遺伝子療法のための方法のいずれかが、本発明に従って使用され得る。遺伝子療法の方法の一般的な総説については、Goldspiel et al,1993,Clinical Pharmacy 12:488−505;Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87−95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596;Mulligan,Science 260:926−932(1993);およびMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191−217;May,1993,TIBTECH 11(5):155−215を参照のこと。使用され得る組換えDNA技術の当技術分野において周知の方法は、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載されている。遺伝子療法の種々の方法の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0042664号明細書に開示されている。
【0229】
神経突起変性に関連する疾患または症状、例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、ダウン症候群、認知症、パーキンソン病、外傷性中枢神経系損傷、またはRGMaに関連する任意の他の疾患もしくは症状を治療するために、本発明の抗体は単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0230】
本発明の抗体は単独で、または1つ以上のさらなる薬剤、例えば、治療剤(例えば、低分子または生物学的製剤)と組み合わせて使用され得ることを理解するべきであり、前記さらなる薬剤は、意図する目的のために当業者によって選択されるものである。例えば、さらなる治療剤は、免疫抑制剤、または多発性硬化症に関連する1つ以上の症候を治療する薬剤であり得る。さらなる薬物は、βインターフェロンであり得る。Avonex、Betaseron、ExtaviaおよびRebifなどのβインターフェロンは、多発性硬化症の症候が経時的に悪化する速度を遅らせ得る。さらなる薬剤は、ミエリンに対する免疫系の攻撃を遮断し得るグラチラマー(Copaxone)であり得る。さらなる薬剤は、リンパ節内の免疫細胞を捕捉し得るフィンゴリモド(Gilenya)であり得る。さらなる薬剤は、潜在的に有害な免疫細胞が血流から脳および脊髄に移動するのを妨げ得るナタリズマブ(Tysabri)であり得る。さらなる薬物は、免疫抑制薬物であるミトキサントロン(Novantrone)であり得る。
【0231】
さらなる治療剤は、ヒトの脳の認知能力(即ち、思考、学習および記憶)の障害を改善する薬物である「認識促進薬」であり得る。認識促進薬は、神経化学物質(例えば、神経伝達物質、酵素およびホルモン)のアベイラビリティを変化させることによって、酸素供給を改善することによって、神経成長を刺激することによって、または神経損傷を阻害することによって働く。認識促進薬の例としては、アセチルコリンの活性を増大する化合物、例えば、限定されないが、アセチルコリン受容体アゴニスト(例えば、ニコチン性α−7受容体アゴニストもしくはアロステリックモジュレーター、α4β2ニコチン性受容体アゴニストもしくはアロステリックモジュレーター)、アセチルコリンエステラーゼ阻害物質(例えば、ドネペジル、リバスチグミンおよびガランタミン)、ブチリルコリンエステラーゼ阻害物質、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチン)、活性依存性神経保護タンパク質(ADNP)アゴニスト、セロトニン5−HT1A受容体アゴニスト(例えば、キサリプロデン)、5−HT4受容体アゴニスト、5−HT6受容体アンタゴニスト、セロトニン1A受容体アンタゴニスト、ヒスタミンH3受容体アンタゴニスト、カルパイン阻害物質、血管内皮増殖因子(VEGF)タンパク質もしくはアゴニスト、栄養成長因子、抗アポトーシス性化合物、AMPA型グルタメート受容体活性化物質、L型もしくはN型カルシウムチャネルブロッカーもしくはモジュレーター、カリウムチャネルブロッカー、低酸素誘導因子(HIF)活性化物質、HIFプロリル4−ヒドロキシラーゼ阻害物質、抗炎症薬、アミロイドAβペプチドもしくはアミロイドプラークの阻害物質、タウ過剰リン酸化の阻害物質、ホスホジエステラーゼ5阻害物質(例えば、タダラフィル、シルデナフィル)、ホスホジエステラーゼ4阻害物質、モノアミンオキシダーゼ阻害物質、またはこれらの医薬として許容される塩が挙げられる。このような認識促進薬の具体例としては、限定されないが、コリンエステラーゼ阻害物質、例えば、ドネペジル(Aricept(登録商標))、リバスチグミン(Exelon(登録商標))、ガランタミン(Reminyl(登録商標))、N−メチル−D−アスパラギン酸アンタゴニスト、例えばメマンチン(Namenda(登録商標))が挙げられる。本発明の抗体によって治療されている疾患または症状を治療するのに有用であると現在認められているかまたは将来認められる薬剤を含む少なくとも1つの認識促進薬が、本発明の抗体と共に同時投与され得るか、または(任意の順序で)本発明の抗体と共に連続投与され得る。加えて、本明細書に記載される組み合わせは、上記治療に使用した場合に相加効果または相乗効果を有し得ると考えられる。さらなる薬剤はまた、有益な特性を治療用組成物に付与する薬剤、例えば、組成物の粘性に影響を与える薬剤であり得る。
【0232】
組み合わせは、意図される目的にとって有用な組み合わせであるということは理解されなければならない。上記薬剤は例示目的であり、限定的であることを意図するものではない。組み合わせは、抗体および以下の一覧から選択される少なくとも1つのさらなる薬剤を含み得る。組み合わせはまた、形成された組成物が意図される機能を遂行し得るようなものであれば、2つ以上のさらなる薬剤、例えば、2つまたは3つのさらなる薬剤を含み得る。
【0233】
医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の抗体を含み得る。「治療有効量」は、必要な投与量および期間で、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。抗体の治療有効量は、当業者によって決定され得、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに抗体が個体において所望の反応を誘導する能力などの要因に従って変化し得る。治療有効量はまた、治療上有益な作用が、もしあれば抗体の毒性作用または有害作用を上回るものである。「予防有効量」は、必要な投与量および期間で、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。通常、予防用量は、被験体において疾患に先立って、または疾患の初期段階で使用されるので、予防有効量は、治療有効量よりも少ないものとなる。
【0234】
投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療反応または予防反応)を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスが投与される場合も、幾つかの分割用量が経時的に投与される場合も、または治療状況の危急によって、用量が比例的に減少または増加される場合もある。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形で製剤化することは特に有利である。本明細書で使用した場合、単位剤形は、治療するべき哺乳動物被験体のための単位投与量として適切な物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように算出された所定量の活性化合物を含有する。単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴および達成するべき特定の治療効果または予防効果および(b)個体における感受性の治療のための、このような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限によって決定され、これらに直接的に依存する。
【0235】
抗体の治療有効量または予防有効量の例示的な非限定的範囲は、0.1から200mg/kg、例えば、0.1から10mg/kgの用量である。抗体の治療有効量または予防有効量は、1から200mg/kg、10から200mg/kg、20から200mg/kg、50から200mg/kg、75から200mg/kg、100から200mg/kg、150から200mg/kg、50から100mg/kg、5から10mg/kgまたは1から10mg/kgであり得る。投与量の値は、緩和するべき症状の種類および重症度によって変化し得ることに留意するべきである。さらに、抗体の用量は当業者によって決定され得、疾患状態、個体の年齢、性別および体重、ならびに抗体が個体において所望の反応を誘導する能力などの要因に従って変化し得る。用量はまた、治療上有益な効果が、もしあれば抗体の毒性作用または有害作用を上回るものである。任意の特定の被験体について、具体的な投与計画は、個体の要求、および組成物投与の施行者または監督者の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載される投与量範囲は例示的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されている組成物の範囲または実施を限定するものではないことをさらに理解するべきである。
【0236】
4.神経突起変性に関連する疾患を治療、予防、調節または軽減する方法
任意の被験体において、被験体が神経突起変性障害を有するかについての評価が行われ得る。評価は、予防療法、維持療法または緩和療法などの治療法の適切な経過を示し得る。従って、神経突起変性の疾患/障害を治療、予防、調節または軽減する方法が本明細書で提供される。抗体は、これを必要とする被験体に投与され得る。抗体は、治療有効量で投与され得る。
【0237】
一般に、投与される抗体の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な医学的状態および過去の病歴などの要因に応じて変化するであろう。通常、約1pg/kgから10mg/kg(薬剤の量/患者の体重)の範囲内の投与量の抗体成分、免疫コンジュゲートまたは融合タンパク質をレシピエントに提供することが望ましいが、状況に応じてより低い投与量またはより高い投与量も投与され得る。投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療反応または予防反応)を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスが投与される場合も、幾つかの分割用量が経時的に投与される場合も、または治療状況の危急によって、用量が比例的に減少または増加される場合もある。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形で製剤化することは特に有利である。本明細書で使用される場合、単位剤形は、治療するべき哺乳動物被験体のための単位投与量として適切な物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように算出された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴および達成するべき特定の治療効果または予防効果および(b)個体における感受性の治療のための、このような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限によって決定され、これらに直接的に依存する。
【0238】
本発明の抗体または抗体部分の治療有効量または予防有効量の例示的な非限定的範囲は、0.1から20mg/kg、より好ましくは、0.5から10mg/kgである。投与量の値は、緩和するべき症状の種類および重症度によって変化し得ることに留意するべきである。任意の特定の被験体について、具体的な投与計画は、個体の要求、および組成物投与の施行者または監督者の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載される投与量範囲は例示的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されている組成物の範囲または実施を限定するものではないことをさらに理解するべきである。
【0239】
患者への抗体の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、くも膜下、眼内、硝子体内、局所カテーテルによる灌流、または直接的な病巣内注射であり得る。注射によって治療タンパク質を投与する場合、投与は、持続注入または単回もしくは複数回ボーラスによるものであり得る。静脈内注射は、抗体を循環系に十分に急速分布させるので、有用な投与様式を提供する。抗体は、例えば、不活性希釈液または同化食用担体と共に経口投与され得る。所望により、抗体および他の成分は、ハードシェルゼラチンカプセル剤またはソフトシェルゼラチンカプセル剤中に封入され、錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液(sspensions)、シロップ、ウェーハなどに圧縮され得る。
【0240】
抗RGMa抗体は、タンパク質20ミリグラムから2グラム/用量などの低タンパク質用量で1回または反復して非経口投与され得る。または、抗体は、タンパク質20から1000ミリグラム/用量、またはタンパク質20から500ミリグラム/用量、またはタンパク質20から100ミリグラム/用量の用量で投与され得る。
【0241】
抗体は単独で投与してもよいし、またはこれらをリポソームにコンジュゲートし、医薬として有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができ、これにより、抗体を医薬として許容される担体と混ぜ合わせる。「医薬として許容される担体」は、レシピエント患者が許容し得るものである。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は、医薬として許容される担体の一例である。他の適切な担体は、当業者に周知である。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(1995)を参照のこと。
【0242】
治療目的の場合、抗体は、医薬として許容される担体中の治療有効量で患者に投与される。「治療有効量」は、生理学的に有意なものである。抗体は、この存在が、レシピエント患者の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に有意である。本文脈では、抗体は、この存在が、例えば、CD4
+T細胞からのインターフェロン−γ(INF−γ)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−4および/またはIL−17の分泌の減少をもたらす場合、生理学的に有意であり得る。薬剤は、この存在が、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)における増殖反応および/または炎症促進性サイトカインの発現の減少をもたらす場合、生理学的に有意である。
【0243】
治療適用における抗体の作用持続時間を制御するために、さらなる治療方法が用いられ得る。制御放出調製物は、抗体を複合体化または吸着するためのポリマーを使用することによって調製され得る。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)のマトリックス、およびステアリン酸ダイマーとセバシン酸とのポリ無水物コポリマーのマトリックスが挙げられる。Sherwood et al,Bio/Technology 10:1446(1992)。このようなマトリックスからの抗体の放出速度は、タンパク質の分子量、マトリックス内の抗体の量および分散粒子のサイズに依存する。Saltzman et al,Biophys.J.55:163(1989);Sherwood et al、前掲。他の固体剤形は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th ed.(1995)に記載されている。
【0244】
a.神経突起変性障害/疾患
神経突起障害/疾患は、神経突起損傷およびシナプス機能障害が存在する任意の疾患または障害であり得る。この損傷および機能障害は、十分な髄鞘形成を欠く神経および/または軸索離断に起因し得る。神経突起変性障害または疾患は、例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症および他の運動ニューロン疾患、ハンチントン病、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、ハーラー症候群、特発性炎症性脱髄疾患、ビタミンB12欠乏症、橋中央ミエリン溶解、脊髄癆、横断性脊髄炎、デビック病、進行性多病巣性白質脳症、視神経炎、および神経突起変性に関連する他の網膜症、例えば、緑内障、糖尿病性網膜症および加齢性黄斑変性症、外傷性中枢神経系損傷または大脳白質委縮症であり得る。神経突起変性障害または疾患は、ミエリンと称される脂肪(リポタンパク質)から構成される組織層による十分なラッピングを欠く神経線維に起因し得る。これらの層は、ミエリン鞘を形成する。ミエリン鞘により、電気インパルスは、神経線維に沿って素早く正確に伝導され得る。ミエリン鞘が損傷または喪失すると、神経は、電気インパルスを正常に伝導しない。場合により、ミエリン鞘が損傷または喪失した結果として、神経線維も損傷し得る。
【0245】
年少乳児は、通常、成熟ミエリン鞘を欠く場合がある。この結果として、年少乳児の動きは、ぎくしゃくしており、まとまりがなく、ぎごちないものである。ミエリン鞘が発達するにつれて、動きが、よりスムーズに、より意図的に、よりまとまったものになる。しかしながら、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病およびハーラー症候群などのある特定の疾患を有する子供では、ミエリン鞘は正常に発達しない。
【0246】
成人では、ミエリン鞘は、脳卒中、炎症、免疫障害、代謝障害および栄養失調(例えば、ビタミンB12の欠乏)によって破壊され得る。毒物、薬物(例えば、抗生物質エタンブトール)およびアルコール過剰摂取は、ミエリン鞘を損傷または破壊し得る。鞘がこれ自体を修復および再生することができる場合、正常な神経機能が回復し得る。しかしながら、鞘が重度に損傷した場合、基にある神経線維が死滅し得る。中枢神経系(脳および脊髄)の神経線維はめったに再生しないので、このような損傷は不可逆的である。
【0247】
脱髄を引き起こす幾つかの神経突起変性障害は、主に、中枢神経系に影響を与える。他のものは、主に、体の他の部分の神経に影響を与える。中枢神経系で脱髄を引き起こす原因不明の神経突起変性障害は、原発性脱髄障害と称される。多発性硬化症は、これらの障害の中で最も一般的なものである。
【0248】
(1)多発性硬化症
MSの臨床経過は、4つの主要カテゴリ(またはサブタイプ):再発寛解型(RRMS)、二次進行型(SPMS)、一次進行型(PMS)および進行再発型(PRMS)に分けられ得る。臨床的安定の介在期間を伴って数カ月または数年毎に臨床的再発を有する患者は、RRMSを定義する。10歳代または20歳代では、RRMSは、女性では男性よりも2倍超多い可能性がある。RRMSとは対照的に、SPMSを有する患者は、再発間に進行性悪化を示す。RRMS患者は、時間と共に、神経機能が徐々に低下することを特徴とするSPMSに変わり得る。MS患者の約15%は、晩期発症と、神経機能が疾患発症から間断なく悪化することとを特徴とするPPMSを有する。良性MSは、初期診断後15年超経過した後でも依然として移動可能であり、軽度の障害のみを示すRRMS患者と任意に定義されている(Expanded Disability Status Scale[EDSS])。通常、これらの患者は、初回発作後に進行をほとんど示さないかまたは全く示さず、治療的介入を必要としない;しかしながら、MSの発症から5年までにこのMS型を診断することは不可能である。
【0249】
(2)パーキンソン病
パーキンソン病は西半球全体で広まっており、1817年に医師James Parkinsonによって最初に報告された。パーキンソン病は手足の振戦として最初に検出され得、最終的には3つの他の兆候:(i)「歯車」様の動きおよび「鉛管様」硬直を特徴とする硬直;(ii)運動緩慢または動作緩慢、および(iii)前屈姿勢および歩行障害に関連する姿勢の不安定を含むまでに進行し得る。これらの動作変化は運動機能障害の特徴であるが、加えて、全パーキンソン病患者の40%では精神障害も存在し得る。
【0250】
パーキンソン病は、脳のレボドーパミン欠乏状態によって引き起こされ得る。より具体的には、レボドーパミンは、パーキンソン病患者における運動障害および黒質の脱神経の結果を誘発し得る。これまでに、医療科学は、注射剤型のレボドパが脳に到達して血液脳関門を上手く通過することを可能にする基質を見出していない。現在のドーパミン補充療法は、直接的な補充、または脳内のドーパミン受容体部位における作用の模倣を目的とするものである。レボドパ療法は、最初は幾つかの有益な変化を起こし得るが、これらの変化は時間と共に弱まり、重度の睡眠障害、運動障害および恒常的な吐き気などの他の問題を引き起こし得る。パーキンソン病に対する医学的方法としては、脳組織の外科的破壊、および脳の罹患部位への微小電極の挿入(脳深部電気刺激)が挙げられる。電極の挿入は、可逆的であるという利点を有する。しかしながら、これらの介入は一般に一時的なものであり、パーキンソン病状態の永続的変化を引き起こすものでもないし、疾患の作用を低減するものでもない。
【0251】
パーキンソン病は、過酸化により進展する多因子神経変性障害であり得る。黒質は酸化的損傷に対して感受性であり、このことは、パーキンソン病形成についてのこの理論を裏付けている。酸化的リン酸化の異常は黒質のミトコンドリアを障害し、フリーラジカルの生成を増大させる。
【0252】
(3)活性酸素種(フリーラジカル)による損傷
活性酸素種(ROS)は数種類の組織を攻撃し得、ROSへの慢性的な曝露は種々の生物学的機能を弱め、神経突起変性障害および疾患を含む数種類の深刻な障害のリスクを増加させ得る。ROSはニューロンを攻撃し、細胞死を誘導し得る。例えば、低濃度の過酸化水素によるニューロンの治療は、神経突起ビーズ(neurite beading)と称されることもある有害な神経突起形態変化に影響を与えることによって、神経突起損傷を誘導し得る。神経突起ビーズは、過酸化水素で治療されたニューロンの死滅誘導前の初期神経変性事象の1つであり得る。
【0253】
(4)アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、高齢者における認知症の主な原因である。通常は家族歴を判断しないので、遺伝型ADはめったに存在しないが、ほとんどの患者は散発性ADを有すると分類される。病理学的には、ADはニューロンおよびシナプスの変性、および老人斑および神経原線維濃縮体の数が、同年齢の非認知症個体と比較して増加することを特徴とする。
【0254】
アルツハイマー病に特徴的な老人斑は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の分解産物である凝集β−アミロイドの中核から構成される。神経原線維濃縮体は、微小管に関連するタウと称される過リン酸型タンパク質から構成される不溶性の細胞内糸状構造物である。
【0255】
アルツハイマー病患者の脳組織の死後切片は、アミロイドが、ADに特徴的な老人斑のタンパク質細胞外コアの形態で存在することを示す。これらの老人斑のアミロイドコアは、主にβ−プリーツシート構造の配置をとるβ−アミロイドと称されるタンパク質から構成される。Mori et al.,Journal of Biological Chemistry 267:17082(1992);Kirschner et al,PNAS 83:503(1986)。老人斑は、この疾患の初期のおよび不変の側面である。Mann et al.,J.Neurol.Sci.89:169;Mann,Mech.Ageing Dev.31:213(1985);Terry et al,J.Neuropathol.Exp.Neurol 46:262(1987)。
【0256】
Aβの初期沈着は、臨床症候が顕著になる前に起こり得る。ADの診断に現在推奨されている「最低顕微鏡基準(minimum microscopic criteria)」は、脳において見られる老人斑の数に基づくものである。Khachaturian,Arch.Neurol、前掲(1985)。残念なことに、老人斑を数える評価は、死亡後まで待たなければならない。
【0257】
アミロイドを含む老人斑は、ADおよびダウン症候群、ならびにADを発症する可能性が非常に高い、アポリポタンパク質E4対立遺伝子がホモ接合性の者の脳の選択領域の顕著な特徴である。Corder et al,Science 261:921(1993);Divry,P.,J.Neurol.Psych.27:643−657(1927);Wisniewski et al,in Zimmerman,H.M.(ed.):PROGRESS IN NEUROPATHOLOGY(Grune and Stratton,N.Y.1973)pp.1−26。脳アミロイドは、脳の切片をチオフラビンSまたはコンゴーレッドで染色することによって容易に実証される。Puchtler et al.,J.Histochem.Cytochem.10:35(1962)。コンゴーレッドで染色したアミロイドは二色性を呈することを特徴とし、黄緑色の偏光色を示す。この二色性の結合は、アミロイドタンパク質のβ−プリーツシート構造によるものである。Glenner,G.N.Eng.J.Med.302:1283(1980)。アミロイドの生化学および組織化学についての詳細な議論は、Glenner,N.Eng.J.Med.,302:1333(1980)に見られ得る。
【0258】
(5)外傷性中枢神経系損傷
米国における外傷性脳損傷(TBI)の発生率は、控えめに見積もっても毎年200万人よりも多く、約500,000人が入院している。これらのうち、約70,000人から90,000人の頭傷害生存者は回復不能の障害がある。
【0259】
機械的もしくは化学的外傷、またはニューロンを死の危険性にさらすのに十分な神経障害性変性をニューロンが受けた場合には、被験体の中枢神経系の神経経路は危険にさらされている。多数の神経障害が今日までに同定されており、これらの一部は末梢または中枢神経系におけるニューロンの亜集団または系のみを侵す。ニューロンこれ自体または関連グリア細胞を侵し得る神経障害は、細胞代謝機能不全、感染症、毒性作用物質への曝露、自己免疫不全、栄養失調または虚血に起因し得る。ある場合では、細胞機能不全は、細胞死を直接的に誘導すると考えられている。他の場合では、神経障害は、身体の免疫/炎症系、および最初の神経傷害に対する身体の免疫反応の機構を刺激するのに十分な組織壊死を誘導し得、次いで、ニューロンおよびこれらのニューロンによって規定される経路を破壊する。
【0260】
b.被験体
被験体は哺乳動物であり得、ヒトであり得る。被験体は、神経突起変性障害または疾患を有し得るか、またはこれらを発症するリスクを有し得る。被験体は、神経突起変性障害または疾患の治療を既に受けていてもよい。
【0261】
5.診断方法
被験体が神経突起変性疾患または障害を有するかを決定するための方法が本明細書で提供される。膜結合RGMaレベルを測定し、対照試料におけるRGMaレベルと比較し得る。対照試料は、正常組織由来のものであり得る。対照と比較したRGMaレベルの変化は、被験体が神経突起変性疾患または障害を有することを示し得る。例えば、正常対照と比較したRGMaレベルの増加は、被験体が神経突起変性疾患または障害を有することを示し得る。RGMaレベルは、本明細書に記載される抗体を使用して測定され得る。
【0262】
a.試料
試料は、被験体由来の任意の組織試料であり得る。試料は、被験体由来のタンパク質を含み得る。試料は、血清、血漿または組織生検であり得る。試料は、被験体から得られた状態のまま直接使用することもできるし、または試料の特性を改変するための前処理の後に使用することもできる。前処理としては、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化および/または試薬の追加を挙げることができる。
【0263】
試料を得るために、任意の細胞型、組織または体液が用いられ得る。このような細胞型、組織および液体としては、組織切片、例えば、生検および解剖試料、組織学的目的で採取された凍結切片、血液、血漿、血清、痰、排泄物、涙、粘液、唾液、髪の毛および皮膚を挙げることができる。細胞型および組織としては、リンパ液、腹水(ascetic fluid)、婦人科学的液体、尿、腹腔液、脳脊髄液、腟の洗浄によって採取された液体、または腟のフラッシングによって採取された液体も挙げることができる。組織または細胞型は、動物から細胞を取り出すことによって提供され得るが、予め単離された細胞(例えば、別の者、別の時間および/または別の目的で単離されたもの)を使用することによって達成することもできる。治療歴または転帰歴を有するものなどのアーカイブ組織も使用され得る。タンパク質精製は必要でない場合がある。
【0264】
b.RGMaの検出
体試料中に存在するRGMaの存在または量は、例えば、RGMaに対する本明細書に記載される抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)またはこの断片を使用して、質量分析、イムノアッセイまたは免疫組織化学(例えば、組織生検の切片を用いる。)によって容易に決定され得る。抗RGMa抗体およびこの断片は、上記のように生産され得る。他の検出方法としては、例えば、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,143,576号明細書;同第6,113,855号明細書;同第6,019,944号明細書;同第5,985,579号明細書;同第5,947,124号明細書;同第5,939,272号明細書;同第5,922,615号明細書;同第5,885,527号明細書;同第5,851,776号明細書;同第5,824,799号明細書;同第5,679,526号明細書;同第5,525,524号明細書;および同第5,480,792号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0265】
(1)イムノアッセイ
RGMaおよび/またはこのペプチドは、イムノアッセイを使用して分析され得る。RGMaの存在または量は、本明細書に記載される抗体を使用し、RGMaに対する特異的結合を検出することによって決定され得る。例えば、抗体またはこの断片は、配列番号65を含むポリペプチドまたはこの断片に特異的に結合し得る。抗体またはこの断片は、配列番号66を含むポリペプチドまたはこの断片に特異的に結合し得る。
【0266】
任意のイムノアッセイが用いられ得る。イムノアッセイは、例えば、酵素結合免疫検定法(ELISA)、放射免疫検定法(RIA)、競合阻害アッセイ、例えば、フォワードもしくはリバース競合阻害アッセイ、蛍光偏光アッセイまたは競合結合アッセイであり得る。ELISAは、サンドイッチELISAであり得る。RGMaに対する抗体の特異的な免疫学的結合は、直接標識、例えば、抗体に付加された蛍光または発光タグ、金属および放射性核種によって、または間接標識、例えば、アルカリ性フォスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼによって検出することができる。
【0267】
固定化抗体またはこの断片の使用もイムノアッセイに組み込まれ得る。これらの抗体は、様々な支持体、例えば、磁気またはクロマトグラフマトリックス粒子、アッセイプレート(例えば、マイクロタイターウェル)の表面、幾つかの固体基質材料などの上に固定化することができる。アッセイストリップは、抗体または複数の抗体を固体支持体上のアレイにコーティングすることにより作製することができる。次いで、このストリップを試験生体試料中に浸し、次いで洗浄および検出段階によって迅速に処理して、着色スポットなどの測定可能なシグナルを生成することができる。
【0268】
(a)サンドイッチELISA
サンドイッチELISAは、2つの抗体層(即ち、捕捉抗体および検出抗体)間の抗原の量を測定する。測定するべきRGMaは、抗体に結合することができる少なくとも2つの抗原部位を含有し得る。サンドイッチELISAでは、捕捉抗体および検出抗体として、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかが使用され得る。
【0269】
一般に、少なくとも2つの抗体を用いて、試験試料中のRGMaまたはRGMa断片を分離および定量する。より具体的には、少なくとも2つの抗体が、RGMaまたはRGMa断片のある特定のエピトープに結合して、「サンドイッチ」と称される免疫複合体を形成する。1つ以上の抗体を用いて、試験試料中のRGMaまたはRGMa断片を捕捉することができ(これらの抗体は、「捕捉」抗体または複数の「捕捉」抗体と称されることが多い。)、1つ以上の抗体を用いて、検出可能な(即ち、定量可能な)標識をサンドイッチに結合させる(これらの抗体は、「検出」抗体または複数の「検出」抗体と称されることが多い。)。サンドイッチアッセイでは、エピトープに結合する両抗体を、アッセイにおける任意の他の抗体の各エピトープに対する結合によって減少されないようにできる。換言すれば、RGMaまたはRGMa断片を含むと疑われる試験試料と接触させる1つ以上の第1の抗体が、第2のまたはこれ以降の抗体によって認識されるエピトープの全部または一部に結合して、1つ以上の第2の検出抗体がRGMaまたはRGMa断片に結合する能力を妨害しないように抗体を選択し得る。
【0270】
前記イムノアッセイでは、抗体は、第1の抗体として使用され得る。好ましくは、抗体は、配列番号65、66または74の少なくとも3つの連続するアミノ酸を含むエピトープに免疫特異的に結合する。本発明の抗体に加えて、前記イムノアッセイは、配列番号65、66または74の少なくとも3つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに免疫特異的に結合する第2の抗体を含み得、ここで、第2の抗体が結合する連続する3つのアミノ酸は、第1の抗体が結合する連続する3つのアミノ酸とは異なるものである。
【0271】
好ましい実施形態では、RGMaまたはRGMa断片を含むと疑われる試験試料を、少なくとも1つの第1の捕捉抗体(または抗体)および少なくとも1つの第2の検出抗体と同時にまたは連続して接触させることができる。サンドイッチアッセイ形式では、RGMaまたはRGMa断片を含むと疑われる試験試料を最初に、第1の抗体−RGMa複合体の形成を可能とする条件下で、特定のエピトープに特異的に結合する少なくとも1つの第1の捕捉抗体と接触させる。複数の捕捉抗体を用いる場合、第1の多捕捉抗体−RGMa複合体が形成される。サンドイッチアッセイでは、抗体、好ましくは少なくとも1つの捕捉抗体を、試験試料で予想されるRGMaまたはRGMa断片の最大量の過剰モル量で用いる。例えば、微粒子コーティング緩衝液1mlあたり約5μg/mlから約1mg/mlの抗体を用いることができる。
【0272】
場合により、少なくとも1つの第1の捕捉抗体と試験試料を接触させる前に、前記少なくとも1つの第1の捕捉抗体を、試験試料からの第1の抗体−RGMa複合体の分離を容易にする固体支持体に結合させることができる。限定されないが、ポリマー材料製の固体支持体であって、ウェル、チューブまたはビーズの形態のものを含む当技術分野において公知の固体支持体を使用することができる。この抗体(または複数の抗体)を、吸着によって、化学カップリング薬を用いる共有結合によって、または当技術分野において公知の他の手段によって固体支持体に結合させることができるが、ただし、このような結合は、抗体がRGMaまたはRGMa断片に結合する能力を妨害するものではない。さらに、必要に応じて、抗体上の種々の官能基との反応性を可能とするために、固体支持体を誘導体化することができる。このような誘導体化には、ある特定のカップリング剤、例えば限定されないが、無水マレイン酸、N−ヒドロキシコハク酸イミドおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの使用が必要である。
【0273】
RGMaまたはRGMa断片を含むと疑われる試験試料を少なくとも1つの第1の捕捉抗体と接触させた後、第1の捕捉抗体(または多抗体)−RGMa複合体の形成を可能にするために、試験試料をインキュベートする。このインキュベーションは、約4.5から約10.0のpHで、約2℃から約45℃の温度で、少なくとも約1分間から約18時間、約2から6分間、約3から4分間の期間にわたって行うことができる。
【0274】
第1の/多捕捉抗体−RGMa複合体の形成後、この複合体を少なくとも1つの第2の検出抗体と接触させる(第1の/多抗体−RGMa−第2の抗体複合体の形成を可能とする条件下で)。第1の抗体−RGMa複合体を複数の検出抗体と接触させる場合、第1の/多捕捉抗体−RGMa−多検出抗体複合体が形成される。第1の抗体の場合と同様に、少なくとも第2の(およびこれ以降の)抗体を第1の抗体−RGMa複合体と接触させる場合、第1の/多抗体−RGMa−第2の/多抗体複合体の形成には上記のものと同様の条件下でのインキュベーション期間が必要である。好ましくは、少なくとも1つの第2の抗体は、検出可能な標識を含む。検出可能な標識は、第1の/多抗体−RGMa−第2の/多抗体複合体の形成の前、これと同時にまたはこの後に、少なくとも1つの第2の抗体に結合させることができる。当技術分野において公知の任意の検出可能な標識を用いることができる。
【0275】
(b)フォワード競合阻害
フォワード競合形式では、既知濃度の標識RGMa、RGMa断片またはこのRGMa変異体のアリコートを用いて、RGMa抗体(例えば、本発明の抗体)に対する結合について試験試料中のRGMaまたはRGMa断片と競合させる。
【0276】
フォワード競合アッセイでは、固定化抗体(例えば、本発明の抗体)を、試験試料および標識RGMa、RGMa断片またはこのRGMa変異体と連続してまたは同時に接触させることができる。RGMaペプチド、RGMa断片またはRGMa変異体は、抗RGMa抗体との関連で前述した検出可能な標識を含む任意の検出可能な標識で標識することができる。このアッセイでは、抗体を固体支持体上に固定化することができる。または、抗体を、微粒子などの固体支持体上に固定化した抗体、例えば、抗種抗体にカップリングすることができる。
【0277】
標識RGMaペプチド、RGMa断片またはRGMa変異体、試験試料および抗体を、サンドイッチアッセイ形式に関連して前述したものと同様の条件下でインキュベートする。次いで、2つの異なる種類の抗体−RGMa複合体が生成され得る。具体的には、生成された抗体−RGMa複合体のうちの1つは検出可能な標識を含み、他方の抗体−RGMa複合体は検出可能な標識を含まない。抗体−RGMa複合体は、検出可能な標識の定量の前に残りの試験試料から分離することができるが、必須ではない。抗体−RGMa複合体を残りの試験試料から分離するかにかかわらず、次いで、抗体−RGMa複合体中の検出可能な標識の量を定量する。次いで、抗体−RGMa複合体中の検出可能な標識の量を標準曲線と比較することによって、試験試料中のRGMaまたはRGMa断片の濃度を求めることができる。標準曲線は、既知濃度のRGMaまたはRGMa断片の連続希釈物を用いて、質量分析、重量測定および当技術分野において公知の他の技術によって作成することができる。
【0278】
サンドイッチアッセイ形式に関連して前述した固体支持体などの固体支持体に抗体を結合させ、次いで、残りの試験試料を固体支持体との接触から引き離すことによって、抗体−RGMa複合体を試験試料から分離することができる。
【0279】
(c)リバース競合アッセイ
リバース競合アッセイでは、固定化RGMaペプチド、RGMa断片またはこのRGMa変異体を、試験試料および少なくとも1つの標識抗体と連続してまたは同時に接触させることができる。好ましくは、抗体は、配列番号65または66の少なくとも3つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する。RGMaペプチド、RGMa断片またはRGMa変異体は、サンドイッチアッセイ形式との関連で前述した固体支持体などの固体支持体に結合させることができる。RGMaペプチド断片は、配列番号65または66を含むアミノ酸配列を有し得る。
【0280】
固定化RGMaペプチド、RGMaペプチド断片またはこのRGMa変異体、試験試料および少なくとも1つの標識抗体を、サンドイッチアッセイ形式に関連して前述したものと同様の条件下でインキュベートする。次いで、2つの異なる種類のRGMa−抗体複合体が生成される。具体的には、生成されたRGMa−抗体複合体のうちの一方は固定化され、検出可能な標識を含むが、他方のRGMa−抗体複合体は固定化されず、検出可能な標識を含む。固定化されていないRGMa−抗体複合体および残りの試験試料を、洗浄などの当技術分野において公知の技術によって固定化RGMa−抗体複合体の存在から除去する。固定化されていないRGMa抗体複合体を除去したら、次いで、固定化RGMa−抗体複合体中の検出可能な標識の量を定量する。次いで、RGMa−複合体中の検出可能な標識の量を標準曲線と比較することによって、試験試料中のRGMaまたはRGMa断片の濃度を求めることができる。標準曲線は、既知濃度のRGMaまたはRGMa断片の連続希釈物を用いて、質量分析、重量測定および当技術分野において公知の他の技術によって作成することができる。
【0281】
(d)蛍光偏光
蛍光偏光アッセイでは、抗体またはこの機能活性断片を最初に、RGMaまたはこのRGMa断片を含むと疑われる未標識試験試料と接触させて、未標識RGMa−抗体複合体を形成させ得る。次いで、未標識RGMa−抗体複合体を、蛍光標識RGMa、RGMa断片またはこのRGMa変異体と接触させる。標識RGMa、RGMa断片またはRGMa変異体は、抗体またはこの機能活性断片に対する結合について、試験試料中の任意の未標識RGMaまたはRGMa断片と競合する。形成された標識RGMa−抗体複合体の量を求め、標準曲線を用いることによって試験試料中のRGMaの量を求める。
【0282】
蛍光偏光アッセイで用いられる抗体は、配列番号65または配列番号66または配列番号74の少なくとも3つのアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する。
【0283】
抗体、標識RGMaペプチド、RGMaペプチド断片またはこのRGMa変異体ならびに試験試料および少なくとも1つの標識抗体を、サンドイッチイムノアッセイに関連して前述したものと同様の条件下でインキュベートし得る。
【0284】
または、抗体またはこの機能活性断片を、蛍光標識RGMa、RGMa断片またはこのRGMa変異体、ならびにRGMaまたはこのRGMa断片を含むと疑われる未標識試験試料と同時に接触させて、標識RGMa−抗体複合体および未標識RGMa−抗体複合体の両方を形成させ得る。形成された標識RGMa−抗体複合体の量を求め、標準曲線を用いることによって試験試料中のRGMaの量を求める。
【0285】
または、抗体またはこの機能活性断片を最初に、蛍光標識RGMa、RGMa断片またはこのRGMa変異体と接触させて、標識RGMa−抗体複合体を形成させる。次いで、標識BNP−抗体複合体を、RGMaまたはこのRGMa断片を含むと疑われる未標識試験試料と接触させる。試験試料中の任意の未標識RGMaまたはRGMa断片は、抗体またはこの機能活性断片に対する結合について標識RGMa、RGMa断片またはRGMa変異体と競合する。形成された標識RGMa−抗体複合体の量を求め、標準曲線を用いることによって試験試料中のRGMaの量を求める。このイムノアッセイで用いられる抗体は、配列番号65、66または74の少なくとも3つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する。
【0286】
(e)質量分析
質量分析(MS)のみを用いて、または他の方法と組み合わせて使用することができる。他の方法としては、イムノアッセイ、および特定のポリヌクレオチドを検出するための上記方法が挙げられる。質量分析法を用いて、1つ以上のバイオマーカーの存在および/または量を決定することができる。MS分析は、例えば、直接−スポットMALDI−TOFまたは液体クロマトグラフィーMALDI−TOF質量分析などのマトリックス支援レーザー脱着/イオン化(MALDI)飛行時間(TOF)MS分析法を含み得る。幾つかの実施形態では、MS分析は、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)ESI−MSなどのエレクトロスプレー・イオン化(ESI)MSを含む。質量分析は、市販のスペクトロメーターを用いて行うことができる。生体試料中のバイオマーカーペプチドの存在および量を検出するためにMALDI−TOF MSおよびESI−MSを含むMS分析を利用する方法が使用され得る。ガイダンスについては、例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,925,389号明細書、同第6,989,100号明細書;および同第6,890,763号明細書を参照のこと。
【0287】
c.対照
対照試料を含めることが望ましい場合がある。対照試料は、上記被験体由来の試料と同時に分析され得る。被験体試料から得られた結果を、対照試料から得られた結果と比較し得る。生体試料のアッセイ結果を比較し得る標準曲線が提供され得る。このような標準曲線は、アッセイ単位の、即ち、蛍光標識が使用される場合には蛍光シグナルの強度の関数として、マーカーのレベルを示す。複数のドナーから採取した試料を用いて、正常組織における対照RGMaレベル、および上記特徴の1つ以上を有し得るドナーから採取した組織における「リスクのある」RGMaレベルについて、標準曲線を提供し得る。
【0288】
6.キット
被験体を治療または診断するのに使用され得るキットが本明細書で提供される。キットは、抗体と、抗体を投与するための手段とを含み得る。キットは、キットを使用し、分析、モニタリングまたは治療を行うための説明書をさらに含み得る。
【0289】
キットはまた、バイアルまたはボトルなどの1つ以上の容器を含み得、各容器は、別個の試薬を含有する。キットは、本明細書に記載される分析、モニタリング、治療または方法をどのようにして実施または解釈するかを説明し得る取扱説明書をさらに含み得る。
【0290】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例証される複数の態様を有する。
【実施例】
【0291】
[実施例1]
抗RGMaヒトモノクローナル抗体の生産および単離
PRO融合mRNAディスプレイ技術、プールされたヒト膵臓、扁桃腺、PBMCおよびリンパ節を使用して、RGMa抗原:100nMビオチン標識ヒトまたはラットRGMaに対して、抗体ライブラリを8ラウンドにわたって選択した。PRO融合技術は、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0099103号明細書および同第2010/0105569号明細書に記載されている。選択したsc−Fv断片を完全ヒトIgGに再編成した。RGMaベースのELISAでIgGをスクリーニングした後、ヒトおよびラットRGMaに対する陽性結合体としてAE12−1からAE12−8を同定した。
【0292】
抗体AE12−13、AE12−15、AE12−20、AE12−21、AE12−23およびAE12−24は、標準的な酵母ディスプレイ技術を使用してヒトRGMaに対して選択した大きなナイーブヒトscFv酵母ライブラリから同定された完全ヒト抗RGMa抗体である。このライブラリに対して、100nMビオチン化ヒトRGMaを選択抗原として使用して、2ラウンドの磁気活性化細胞分類(MACS)および4ラウンドの蛍光活性化細胞分類(FACS)を実施した。また、最終ラウンドの分類では、ヒトRGMc−Fc抗原に対して、細胞をネガティブ選択した。選択したsc−Fv断片を完全ヒトIgGに再編成した。ヒトRGMa ELISAでIgGをスクリーニングした後、ヒトRGMaに対する陽性結合体としてAE12−13、−15、−20、−21、−23および−24を同定した。ELISAによって評価したところ、AE12−13、AE12−15およびAE12−23は、ヒトRGMcとも交差反応した。
【0293】
[実施例2]
抗体の特性決定
ヒトRGMa(hRGMa)およびラットRGMaに対する結合、ならびにhRGMcに対する交差反応性を調べるために、8つのPRO融合mAb(AE12−1、AE12−2、AE12−3、AE12−4、AE12−5、AE12−6、AE12−7およびAE12−8)を直接結合ELISAによって試験した。これらのmAbのいずれが、hRGMaに対する結合についてh5F9.23と競合するかを試験するために、hRGMa競合ELISAを用いた。h5F9.23は、ラットハイブリドーマ由来のヒト化抗RGMaリードmAbであり、RGMaのN末端ドメインに結合することが公知である。h5F9.23は、以下の配列を有する:
【0294】
【表5】
【0295】
これらのmAbが、受容体ネオゲニンまたはBMP−2/BMP−4に対するhRGMaの結合を遮断するかを決定するために、ネオゲニンまたはBMP−2/BMP−4競合ELISAを用いた。
【0296】
ELISAのデータによれば、8つのPRO融合mAbはすべて、ヒトおよびラットRGMaに結合した(表3)。ELISAにおけるRGMc結合については、3つのmAb(AE12−6、−7および−8)はhRGMcに対する結合を示し、AE12−4は高濃度で弱い結合を示し、他の4つのmAb(AE12−1、−2、−3および−5)は、100nMまでの濃度でhRGMcに対する結合を示さなかった。hRGMa競合ELISAでは、AE12−1、AE12−3およびAE12−6は、hRGMaに対する結合についてh5F9.23と競合することができたが、このことは、これら3つのmAbの結合エピトープが、h5F9.23のエピトープの近くであるかまたはこれとオーバーラップすることを示唆している。hRGMa断片を用いたドットブロッティングアッセイにより、AE12−1およびAE12−6はN末端断片に結合し、AE12−2およびAE12−4はC末端断片に結合し、他の4つのAbはいかなる検出可能な結合シグナルも示さなかったことが示された。競合ELISAにおけるネオゲニンに対するhRGMaの結合の遮断については、AE12−5およびAE12−6のみが、h5F9.23と同程度であるかまたはこれよりも優れた遮断活性を示し、AE12−1およびAE12−4は弱い阻害を示し、AE12−2、−3、−7および−8は100nMまでの濃度で阻害を示さなかった。BMP−2/BMP−4競合ELISAでは、AE12−1、AE12−4およびAE12−6のみが、BMP−2/BMP−4に対するhRGMaの結合を遮断した。
【0297】
細胞ベースの結合アッセイにおいて、神経細胞に対するhRGMaの結合を遮断する能力について、PRO融合mAbをさらに試験した。MSDベースの細胞結合アッセイにおいて、細胞をビオチン化hRGMa−Fcと共に室温でインキュベートし、ストレプトアビジン−スルホ−タグによってhRGMaの結合を検出したところ、AE12−1およびAE12−6のみが、h5F9.23と同様に、ヒトSH−SY5Y神経細胞に対するhRGMaの結合を遮断した(表3)。
【0298】
しかしながら、ハイコンテントスクリーニング(HCS)アッセイにおいて、細胞をhRGMa−Fcと共に37℃でインキュベートし、Cy3標識抗Fc AbによってhRGMaの結合を検出し、ハイコンテント蛍光画像分析(high content fluorescent image analysis)で計算したところ、PRO融合抗体の中でAE12−6のみが、SH−SY5Y神経細胞およびラット海馬一次ニューロンの両方に対するRGMaの結合に対して強い阻害を示した(表3、
図13)。
図13にも示されているように、ナイーブヒトscFv酵母ライブラリ由来の抗体であるAE12−15およびAE12−23は、細胞に対するhRGMaの結合を阻害した。
【0299】
Korchynskyiおよびten Dijke(J.Biol.Chem.2002,277:4883)によって記載されている配列に基づいて、オーバーラップオリゴを使用してBMP応答配列(BRE)を構築し、基本的なルシフェラーゼレポーターベクターpGL4.27[luc2P/minP/Hygro](Promega)にクローニングして、BREルシフェラーゼレポーター構築物を作製した。RGMファミリーメンバー(RGMa、RGMbおよびRGMc)は、BMPシグナル伝達の共受容体である。BMPレポータープラスミドおよびRGMaまたはRGMc発現プラスミドで293HEK細胞をコトランスフェクトすることによって、RGMaおよびRGMc BMPレポーターアッセイの両方を確立し、RGMaおよびRGMcに対する中和活性について、mAbをスクリーニングするのに使用した。RGMa BMPレポーターアッセイでは、AE12−1およびAE12−6がRGMa活性を中和したが、このことは、MSDベースの細胞結合アッセイからのデータと一致している(表3)。RGMc BMPレポーターアッセイでは、AE12−6はRGMc活性を中和したのに対して、AE12−1はRGMc活性を中和しなかった。従って、AE12−1は、RGMaに対して特異的な中和mAbである。
【0300】
SH−SY5Y神経細胞を用いたケモタキシスアッセイにおいて、RGMaを中和する能力について、PRO融合mAbをさらに試験した。このアッセイでは、RGMaは反発性分子として作用して、細胞のケモタキシスを阻害する。AE12−1は、hRGMaに対する強い中和活性を示した(表3)。AE12−4およびAE12−6は、いくらかの中和活性を示した。
【0301】
ヒトSH−SY5Y神経細胞を用いた神経突起伸長アッセイにおいて、AE12−1を試験した。このアッセイでは、全長またはN末端断片のいずれかのRGMaが、神経突起の伸長を阻害する。RGMa BMPレポーターアッセイおよびケモタキシスアッセイにおける機能活性と一致して、AE12−1は、全長hRGMaまたはN末端断片のいずれかに対する強い中和活性を示した(表3)。
【0302】
hRGMcならびにヒト、カニクイザル(cyno)およびラットRGMaに対するAE12−1のBIAcore分析により、AE12−1はhRGMcに結合しなかったが、ヒト、カニクイザルおよびラットRGMaに対して同程度の親和性で優れた交差反応性を示したことが実証された。表4を参照のこと。
【0303】
【表6】
【0304】
表3に関して、「
aNeg」は、ドットブロッティングで試験したすべての断片との結合がネガティブであることに対応する。「
bMSD」は、ストレプトアビジン−スルホ−タグと複合体化したビオチン化hRGMa−Fcを使用して、細胞と共に室温(RT)でインキュベートしたことに対応する。「
cHCS」は、Cy3標識抗Fe Abと複合体化したhRGMa−Fcを使用して、細胞と共に37℃でインキュベート(inbation)したことに対応する。「
dAE12−1」は、MSDによってSH−SY5Y細胞に対するビオチン−RGMa−Fcの結合が阻害されたのとは対照的に、細胞に対するRGMa−Fcの結合が劇的に増強したことに対応する。「
e?」は、AE12−7の不確定データに対応する。「AE12−4」−ケモタキシスアッセイにおけるAE12−4の濃度は、中和活性と逆相関している。
【0305】
BMP応答レポーターアッセイでは、RGMaまたはRGMcが、BMPと相互作用することによってBMPシグナル伝達を増強するところ、配列番号1および5を含む抗体(AE12−1)は、RGMa活性を遮断したがRGMc活性を遮断せず、このことは、RGMaに対するこの機能的拮抗作用および結合特異性と一致している。
【0306】
図13および14は、SH−SY5Y細胞およびラット海馬一次ニューロンの生細胞結合アッセイを使用して、神経細胞に対するRGMaの結合に対する特定抗体の中和作用を示すものである。Fcタグ付RGMaおよびCy3標識抗Fc抗体を4℃で60分間複合体化し、続いて、この複合体を遮断抗体と共に室温で10分間インキュベートする。次いで、RGMa−Cy3+抗体複合体をHoechsts33342と共に細胞に37℃で30分間にわたって追加して、細胞に結合させる。次いで、細胞を培養培地で2回洗浄し、PFHで固定する。BD Pathwayで細胞のイメージングを実施し、Defmiens Architectソフトウェアで画像を分析する。
【0307】
上述のように、AE12−6、AE12−15およびAE12−23は、SH−SY5Y細胞および一次ニューロンに対するRGMaの結合を遮断した。
図13を参照のこと。HCSアッセイでは、AE12−1は、SH−SY5Y細胞に対するRGMaの結合を阻害しなかった。
図14を参照のこと。最高濃度のAE12−1は細胞に対するRGMa−Fcの結合を増強したのに対して、より低濃度では、このレベルは対照RGMa結合レベルと同等であった。このことは、MSD(MSDは、ストレプトアビジン−スルホ−タグと複合体化したビオチン化hRGMa−Fcを使用して、細胞と共に室温でインキュベートしたことに対応する。)によって、SH−SY5Y細胞に対するビオチン−RGMa−Fcの結合が阻害されるのとは対照的である。MSDとHCSアッセイとの間の差は、異なるアッセイ条件に起因し得る。
【0308】
図15は、神経突起伸長アッセイにおける、RGMa反発性に対するr5F9(対照)、AE12−1およびAE12−6の中和作用を示す。ポリ−l−リシンでコーティングした96ウェルイメージングプレート上に、1ウェルあたり6500個のラット海馬一次ニューロンをプレートした。抗RGMa抗体と組み合わせて、配列番号65の47位から127位のRGMa断片(配列番号139)で細胞を24時間治療した。細胞を固定し、Milliporeの神経突起伸長キットプロトコールを使用してBIII−チューブリンで染色した。BD Pathwayで画像を取得し、Definiens Architectで分析して、ニューロン1個あたりの神経突起伸長を測定した。
【0309】
[実施例3]
抗体変異体および結合データ
表4は、AE12−1 VL CDR3(配列番号8)のCys残基を置換することによって、改善されたhRGMa親和性を有する変異体を作製することができることを示す。配列番号67から73を参照のこと。例えば、表4を参照すると、抗体クローンAE12−1−Yは少なくとも10倍増加したhRGMa親和性を示し、AE12−1−Fは5倍増加したhRGMa親和性を示した。他のものは、親のAE12−1と同程度の親和性を示した。すべての変異体が、MSDベースの細胞結合アッセイでは、SH−SY5Y細胞に対するhRGMaの結合を遮断し、BMPレポーターアッセイではRGMa活性を中和したがRGMc活性を中和せず、予備処方研究では高い熱安定性および優れた溶解性を示した。
【0310】
【表7】
【0311】
[実施例4]
神経突起伸長
図1、2および15に示されているように、AE12−1は、SH−SY5Y細胞およびラット海馬一次ニューロンで示されているように全長hRGMaおよびhRGMa断片を完全に中和した。ここに示されているように、このhRGMa断片は、配列番号65のアミノ酸47から127に対応する:
【0312】
【化4】
【0313】
AE12−1およびAE12−1変異体の作用を評価するために、さらなる神経突起伸長実験を実施した。これらの抗体は、配列番号1および5または2から4および6から8を含み、配列番号8のCys残基が別のアミノ酸に置換されているか、または配列番号5の91位のCys残基が別のアミノ酸に置換されている(即ち、AE12−1−F、AE12−1−H、AE12−1−L、AE12−1−V、AE12−1−I、AE12−1−KおよびAE12−1−Y)。FL hRGMaで治療したSH−SY5Y細胞の神経突起伸長に対する前記抗体による阻害(24時間のインキュベート)が示されている
図9から12を参照のこと。
【0314】
[実施例5]
インビボ研究
図3および4に示されているように、AE12−1は、病変部周囲(0から500μm)の網膜神経節細胞軸索の反発性成長を増強した(n=ラット3から5匹/群)。
図3を参照のこと。抗体AE12−1は、病変からさらに離れた領域(500から1000μm)への網膜神経節細胞軸索の反発性成長も増強した(n=ラット3から5匹/群)。
【0315】
[実施例6]
ラット視神経挫滅実験
AE12−1は、ラット視神経挫滅実験で活性であった。
図8を参照のこと。雄性ウィスターラットの眼の2から4mm後ろに、片側視神経挫滅損傷を施した。ラットを6週間経過観察し(8群、n=6)、抗体を10mg/kg、1mg/kgまたは0.1mg/kgのいずれかで週1回静脈内投与した。hIgG1対照を10mg/kgで週1回静脈内投与した(n=ラット6匹)。AE12−1治療ラットでは、再生線維は視神経挫滅損傷を越えて成長することができたのに対して、対照抗体hIgG1治療ラットでは、再生線維は、損傷を克服することができなかったため損傷部に蓄積した。
図8を参照のこと。
【0316】
[実施例7]
モノクローナル抗体AE12−1を用いたヒトRGMa(hRGMa)のエピトープマッピング
モノクローナル抗体AE12−1について、エピトープマッピング研究を行った。データにより、AE12−1に対するエピトープは、RGMaのN末端領域に位置することが示唆された。幾つかのhRGMa構築物を用いて、AE12−1に対するエピトープを決定しようと試みた。これらの構築物には、以下のものが含まれていた:
組換え生産したpelB−M−[RGMA(47−168)]−6His(配列番号148として開示されている「6His」)(エシェリキア・コリ(E.coli))。抗原は、ChemTag#16211、S100緩衝液、pH8、25mM Tris、100mM NaCl、1mM DTT、10%(v/v)グリセロール中、0.41mg/mLである。この第1の抗原構築物の配列は、
【0317】
【化5】
である。
【0318】
組換え生産した[IgK−リーダー]−AttBl−[hRGMA(47−422)]−AttB2−MYC−6His(配列番号148として開示されている「6His」)、PBS中0.85mg/ml。この第2の抗原構築物の配列は、
【0319】
【化6】
である。
【0320】
組換え生産した[IgK−リーダー]−AttBl−[hRGMA(47−168)]−Xa−[hIgG L Fc(257−481)](哺乳動物構築物)、PBS中1.18mg/mL。この第3の抗原構築物の配列は、
【0321】
【化7】
である。
【0322】
使用した抗原はすべて、RGMa(47−168)のアミノ酸配列を含有しており、配列位置を特定するのに使用したナンバリングは、親タンパク質のナンバリングに対応する。hRGMa(47−168)の配列は、
【0323】
【化8】
である。
【0324】
エピトープを切り出すのに使用した緩衝液は、以下のとおりであった:
緩衝液A:100mM NaHCO
3、500mM NaCl、pH8;
緩衝液B:100mM NaHCO
3、100mM NaCl、pH8;
緩衝液C:100mM NaOAc、500mM NaCl、pH4;および
緩衝液D:100mM Tris−HCl、500mM NaCl、pH8。
【0325】
モノクローナル抗体を以下のように固定化した。20ミリグラムのCNBr活性化Sepharoseビーズ(GE Healthcare,Uppsala Sweden)を計量して35μmフリットのコンパクト反応カラム(USB Corp.,Cleveland,OH)に入れ、200μlの1mM HClで3回洗浄し、続いて200μlの緩衝液Aで3回洗浄した。
【0326】
10,000 MWCO Slide−A−Lyzer mini透析機器(Pierce,Rockford,IL)を使用して、約5から6nmolのAE12−1mAb溶液をPBSに対して約40分間透析して、Sepharoseに対する抗体の結合を妨げるヒスチジン緩衝液を除去した。透析したmAb溶液を活性化樹脂に追加し、ロテータ(Mix−All Laboratory Tube Mixer,Torrey Pines Scientific,San Marcos,CA)上、室温で4時間混合した。結合後、樹脂通過画分を収集し、樹脂を200μlの緩衝液Aで3回洗浄した。樹脂を200μlの緩衝液Dに懸濁し、室温で1時間回転させて、樹脂内の過剰結合部位をブロッキングした。緩衝液D溶液を流し出し、樹脂を200μlの緩衝液Cおよび緩衝液Dで交互に合計で各3回洗浄した(低/高pH洗浄)。樹脂を200μlの緩衝液Bで3回洗浄して、抗原にカップリングすることができる状態にした。
【0327】
固定化AE12−1モノクローナル抗体をhRGMaにカップリングした。コンパクト反応カラム(CRC)の35μmフリットを200μlの緩衝液Bで3回洗浄することによって、CRCを抗原カップリング用に調製した。抗体が結合した樹脂を穏やかに混合して樹脂を均一に再懸濁し、調製した各CRCに50μlの樹脂を入れた。樹脂を200μlの緩衝液Bで3回洗浄した。総容量を少なくとも200μlとするのに十分な緩衝液Bを用いて、約1.5nmolのhRGMa抗原を樹脂に追加した。抗原カップリングの前に、3500MWCO Slide−A−Lyzer mini透析機器を使用して、エシェリキア・コリ(E.coli)が産生した抗原をPBS緩衝液に対して約30分間透析して、抗原緩衝液からDTTを除去した。ロテータ上で、抗原/樹脂混合物を室温で4時間混合した。通過画分(FT)を収集し、樹脂を200μlの緩衝液Bで3回洗浄した。
【0328】
トリプシンおよびエンドプロテアーゼAsp−Nを使用して、エピトープを切り出した。固定化抗体/抗原複合体を含有する樹脂を200μlの緩衝液Bに懸濁した。20μgのトリプシン(Promega,Madison,WI)を含むバイアルを100μlの再懸濁緩衝液(50mM HOAc)に0.2μg/μlの濃度で溶解し、2μgバイアルのエンドプロテアーゼAsp−N(Roche)を50μlの水に溶解した(0.04μg/μl)。酵素:抗原を1:100の比(w/w)にして、抗原の切断を実施した。反応は、回転させながら室温で4から6時間進行させた。
【0329】
消化後、FTを収集し、樹脂を200μlの緩衝液Bで2回洗浄し(洗浄1および2)、200μlの緩衝液Aで洗浄し(洗浄3)、次いで200μlの緩衝液Bで洗浄した(洗浄4)(各洗浄液は別個に収集)。200μlアリコートの2%ギ酸を3つ用いて、抗体に結合した抗原ペプチドを樹脂から溶離し、各溶離液を別個に収集した(溶離1、2および3)。エピトープ領域を決定するために、質量分析(LC−MS/MS)によって溶離1画分を分析した。
【0330】
Agilent 6510 QTOF MSに接続したChip Cube(40nL濃縮カラム、75μm×43mm分析カラム、C8 ZORBAXチップ)を備えるAgilent(Santa Clara,CA)1100キャピラリーHPLCローディングポンプおよび1200nano−HPLC勾配ポンプを使用して、LC−ESI−MS/MS(陽イオン)によって、消化後に収集した溶離1画分を分析した。最大7μlの注入量を使用し、特定のMSシグナル基準を満たす上位3つのイオンについて、MS/MSを実施した。
【0331】
エピトープ切り出し画分(溶離1)の初回MS分析により、大きなペプチド種の存在が示されたが、おそらくはジスルフィド結合ペプチドの存在により、予想タンパク質分解ペプチドとマッチしなかった。ジスルフィド結合を還元するために、希釈NaOHを使用して、10μlアリコートを約pH8にpH調整し、MSによる再分析前に、5mMジチオスレイトール(DTT)中、37℃で30分間還元した。幾つかの画分では、還元を達成するのに変性を要したが、この場合、DTTの追加前に、アリコートを等容量の8M塩酸グアニジン、100mM Tris(pH8)で希釈した。
【0332】
種々のhRGMa構築物にカップリングしたAE12−1mAbの酵素消化物の溶離1画分すべてをLC−ESI−MS/MS分析することにより、分子量範囲が8.5から12kDaである幾つかの大きなペプチド種の存在が示された。大きな種の質量および断片化は、ペプチドを同定するのに十分ではなかった。エピトープペプチドを同定するためには、ジスルフィド結合の還元が必要であった。すべての場合において、ペプチドのMSシグナル強度は還元後に有意に減少し、変性剤の存在下で還元しない限り検出不可能な場合もあった。
【0333】
DTTで溶離1画分を還元した後、LC−MS/MSによってこの画分を再分析した。エシェリキア・コリ(E.coli)が産生したhRGMaを使用した切り出し実験では、イオンクロマトグラムで観察されたピークのほとんどが単一荷電種であり、多くは、ポリマーまたは他の添加物関連のものであった。使用したhRGMa構築物関連のものとして、2つのペプチドを同定した。
図5を参照のこと。第1は、モノアイソトピック分子量が2420.2Daのペプチドであった。このペプチドの分子量、およびMS/MSスペクトルで観察されたわずかな断片の質量(示さず)は、配列PCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(hRGMa47−69)(配列番号79)と一致するが、アサインメントは酵素特異性と矛盾していた。モノアイソトピック分子量が2551.2Daの第2のエピトープペプチド候補は、配列MPCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(配列番号80)と一致したわずか2から3つの同定可能なMS/MS断片を示した。酵素特異性は、一致していなかった;しかしながら、出発抗原の分子量は配列全体の計算質量とマッチしなかったので、抗原はN末端の不均一性を有する可能性があり、これが、明らかに矛盾した酵素特異性の原因であろう。
【0334】
第2の抗原構築物を使用したところ、DTT還元後のMSスペクトルではペプチドを観察することができなかった。変性条件下における還元後のMS分析により、単一荷電バックグラウンドイオンの中のペプチドが明らかになった。変性および還元したE1画分において、抗原由来の4つのペプチドを同定した。第1の抗原関連ペプチドは、2763.3Daのモノアイソトピック分子量を有しており、MS/MS断片化と同様に、配列KAGSPCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(配列番号81)(4つのさらなるN末端残基を有するhRGMa47−69)と一致した。このペプチドに関連するスペクトルを
図6に示す。同じスペクトルにおける非常に低強度のペプチドシグナル(分子量(MW)2878.4Da;m/z720.84で+4、
図6ではアスタリスクでマークされている。)は、配列KAGSPCKILKCNSEFWSATSGSHAPPASD(配列番号82)と一致した。
図7に示されている分子量(MW)2635.2のペプチドは、配列AGSPCKILKCNSEFWSATSGSHAPPAS(配列番号90)と一致した。
図7ではアスタリスクでマークされているm/z688.82(最も多い同位体、+4荷電状態)のさらなるペプチドは、分子量(MW)2635.2のペプチドと共に共溶出した。この低強度の成分で得られた限定的なMS/MSデータは、配列AGSPCKILKCNSEFWSATSGSHAPPASD(配列番号83)(分子量(MW)2750.3Da)と一致した。
【0335】
AE12−1を用いてエピトープを確認しようとして、第3のhRGMa構築物を使用した。DTTを還元した溶離1画分では、非常にわずかな還元が観察されたが、他の抗原構築物からの結果と一致して、hRGMa抗原関連のものとして1つのペプチドを同定した。このペプチドはm/z691.60(+4荷電状態)で観察され、モノアイソトピック分子量は2762.4Daである。このペプチドについて得られた限定的なMS/MSデータ(示さず)は、配列がTKLPCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(配列番号84)であることを示唆している。MSスペクトルで観察された他のペプチドであって、hRGMa(47−168)の領域に関連するものと決定することができたペプチドには、DSPEICHYEK(配列番号85);GDLAYHSAVHGIE(配列番号86);DLAYHSAVHGIE(配列番号87);およびDDTPEFCAALR(配列番号88)が含まれていた。
【0336】
AE12−1に結合したhRGMaのエピトープ切り出し実験からの溶離1画分(トリプシン/Asp−N消化)では、3つの抗原構築物から、ペプチドhRGMa(47−69)を同定した。AE12−1を用いてhRGMaエピトープとして同定したペプチドは、PCKILKCNSEFWSATSGSHAPAS(hRGMa47−69)(配列番号79)である。
【0337】
[実施例8]
毒性研究
肝細胞における鉄蓄積、および脾臓における鉄の減少は、RGMc中和に起因し得るので、本明細書に記載されるRGMa選択的モノクローナル抗体のトキシコキネティクスおよび忍容性を研究した。研究では、RGMa選択的モノクローナル抗体をスプラーグドーリーラットに投与すると、肝細胞における鉄蓄積、および脾臓における鉄の枯渇が起こらないと予想される。
【0338】
[実施例9]
RGMa選択的モノクローナル抗体AE12−1およびAE12−1Yは、ヒト化モノクローナル抗体5F9と同様に、視神経損傷ラットモデルにおいて、挫滅損傷した視神経軸索の再生を誘導する
視神経挫滅(「視神経損傷」とも称される。)モデルは、視神経線維の再生を刺激し、網膜神経節細胞の大規模な細胞死を軽減する種々の物質を試験するための動物モデルを提供する。
【0339】
Charles River(D)Laboratories(Germany)から入手した成体の雄性ウィスターラットで実験を行った。餌および水を自由に利用することができる12:12時間明暗周期の単一ケージで、動物を維持する。視神経挫滅は常に、内容が参照により本明細書に組み込まれるP.Monnier et al.,J.Neurosci.,31:10494−10505(2011)に記載されている最低限の前方手術によって左眼のみに施し、ヒトの前方視力手術法に従う。手術前および手術中に、セボフルラン(Abbott GmbH Co.&KG,Delkenheim,Germany)を使用して吸入麻酔によって実験動物を麻酔し、四肢に締め付け金具および粘着テープを使用することによって手術台上に固定する。動物を加温パッド上に載せることによって、体温の低下を防止する。ラット視神経の前方挫滅手術では、靱帯および結合組織から左眼を慎重に分離する。最初の段階として、眼の外周コーナにおける隣接組織に、顕微手術による切れ込み(2から3mm)を施す。次の段階として、鉗子1丁を使用して眼筋および涙腺を当該部位に移動させ、これをスペアリングすることによって、視神経を曝露させる。さらなる段階として、マイクロ剪刀を使用することによって髄膜を縦方向に切開して、視神経を曝露させた。この結果、眼がより大きく移動可能になり、眼を外旋させて左視神経に接触することができる。一定の最大圧力を10から20秒間提供するために、鉗子セット1丁を使用して、眼の約1から3mm後ろにおいて、視神経を損傷する。眼への血管供給を損傷しないように特に注意する。
【0340】
低侵襲手術の後、体温を制御するために、動物が動き始めるまで、保温器上に置いたクリーンケージ内のペーパータオル上に動物を置く。細菌感染および強膜の乾燥を防ぐために、抗生物質(Gentamytrex,Dr.Mann Pharma)を含有する軟膏を眼に塗布する。
【0341】
手術直後の術後疼痛治療のために、カルプロフェン(Rimadyl、5mg/kg)を腹腔内適用し、その後は3日間にわたって1日2回腹腔内適用する。すべての動物が生存し、麻酔および手術から回復したことを確認するために、手術直後の数時間およびその後2から4日間にわたって、動物を観察および調節管理する。
【0342】
上記の修正前方視神経挫滅法は、後眼部からの標準的な視神経挫滅法と比較して大きな利点を有する。具体的には、本明細書に記載される手法では、縫合を必要とする大きな開放創が生じず、非常に小さな創傷の感染リスクが有意に減少する。加えて、挫滅に必要な時間がより少ない結果として(上記前方方法は、当技術分野において公知の後方方法よりも約3倍速い。)、動物の苦痛が軽減され、従ってストレスが軽減される。また、動物が苦しめられる痛みの程度が有意に軽減し、動物はより多い割合ではるかに早く回復する。
【0343】
抗体の全身投与
抗体の全身送達については、ヒト化RGMaおよびRGMc−遮断5F9抗体(h5F9)(n=動物8匹)(ヒト化抗体5F9は、内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0028340号明細書に記載されている。)、本明細書に記載されるRGMa選択的ヒト抗体AE12−1、および同様に本明細書に記載される近縁のRGMa mAb AE12−1Y、およびヒト同位体対照抗体(hIgG)(n=動物8匹)を用いて、雄性ウィスターラットを全身静脈内(iv)治療した。10mg/kgの投与抗体をラットに週1回静脈内注射し、視神経挫滅直後に注射を開始した。すべてのラットに5回注射し、挫滅損傷の6週間後に動物を安楽死させた。実験は盲検化されており、組織の単離、加工、切片の調製および定量分析は、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれるP.Monnier et al.,J.Neurosci.,31:10494−10505(2011)およびKoeberle et al,Neuroscience,169:495−504(2010)に記載されているように行った。ラット視神経の合成画像を作成し、挫滅部位を特定し、500μmにわたって挫滅部位を越えて伸長しているGAP−43陽性線維を計数した。
図16に示されているように、3つのRGMa抗体−h5F9、AE12−1およびAE12−1Yはすべて、hIgGで治療した対照動物とは対照的に、挫滅部位を越えて有意な再生成長を誘導した。
【0344】
[実施例10]
RGMa選択的モノクローナル抗体AE12−1およびAE12−1Yは、ヒト化抗体5F9と同様に、変性から網膜神経線維束(RNLF)を保護する
RNLF変性の保護を観察するために、新たなラボラトリーアッセイ法を使用した。この方法は、視神経挫滅を有するラットであって、抗体5F9、AE12−1、AE2−1Yおよび対照抗体ヒトIgGで全身治療したラットの眼の成体ラット網膜を移植および分析することに基づいている。この方法は、P.Monnier et al,J.Neurosci.,31:10494−10505(2011)およびKoeberle et al,Neuroscience,169:495−504(2010).P.Monnier et al,J.Neurosci.,31:10494−10505(2011)およびKoeberle et al,Neuroscience,169:495−504(2010)によって記載されている方法を改変したものである。10mg/kgの投与抗体を、Charles River Laboratories(Germany)から入手した成体雄性ウィスターラットに週1回静脈内注射し、視神経挫滅直後に注射を開始した。すべてのラットに5回注射し、挫滅損傷の6週間後に動物を安楽死させた。
【0345】
網膜の調製および免疫蛍光染色:
セボフルラン(8%;Abbott GmbH Co.&KG,Delkenheim,Germany)で動物を深麻酔し、この直後に胸郭を切開することによって屠殺し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液を左心室に通して灌流した。結合組織を調整して眼を解剖し、網膜の調製を行うまで4%PFA中に入れた。
【0346】
ハンクス平衡塩類溶液(HBSS、マグネシウムおよびカルシウムフリー;Invitrogen,#14170070)中で、網膜の調製を実施した。ピンセットによって眼を結合組織に固定し、角膜周辺の強膜に丸い切れ込みを作った。網膜の半球に4地点で切れ込みを入れ、切開し、グレーニトロセルロース膜(Sartorius,#13006−50−N)上に広げた。必要な場合は、網膜を載せた膜を5から10秒間空気乾燥した。その後、免疫蛍光染色を実施するまで、膜上の網膜を+4℃の10%中性リン酸緩衝ホルムアルデヒド溶液(pH7.3;Fisher Scientific,#F/1520/21)に入れた。染色は、下記プロトコールに従って実施する。
【0347】
網膜調製物をTBSで洗浄し、続いて、5%BSA、1%TritonX−100のTBS溶液で30分間にわたってブロッキングおよび透過処理し、次いで、TBSで再度洗浄した。一次抗体、即ち、モノクローナルAb TUJ−1(マウス抗βIIIチューブリンAb、AbCam,#abl4545;1:500希釈、TBS中、5%BSA)を暗所、室温で1時間追加し、続いてTBS、0.1%Tween20で洗浄した。次に、二次抗体、即ち、ロバ抗マウスCy3(Jackson ImmunoResearch(Dianova)715−165−151、1:1000希釈)およびビスベンズイミド(50μg/ml 1:100希釈、TBS中、5%BSA)を暗所、室温で1時間追加し、続いてTBS、0.1%Tween20で洗浄し、続いて脱塩H
2Oで洗浄した。次いで、調製物をFluoromountGでマウントし、暗所に+4℃で保存した。
【0348】
眼の網膜神経線維束(RNFL)に対するRGMa抗体の保護効果の定量分析
Axiovisionソフトウェアを使用して、各網膜の無作為に選択した画像(n=12)を選択し、各画像について神経線維数を決定した。これらの実験では、各群:h5F9 MAb群、hIgG対照MAb群ならびにAE12.1およびAE12−1Y MAb群について、視神経を挫滅した5から8つの網膜を使用した。GraphPad prismプログラムを使用して、データ分析および統計分析を実施した。
【0349】
結果を
図17に示す。具体的には、本発明のRGMa抗体で全身治療した動物の網膜では、神経線維束の数が、hIgG対照抗体で治療した動物と比較して有意に多いことが観察される。
【0350】
[実施例11]
RGMa抗体は、限局性脊髄実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおいて、機能回復を促進する
Kerschensteinerら(Am.J.Pathol.164:1455−69,2004)は、大きな炎症性病変が脊髄、脳および視神経で無作為に広がらないが、脊髄または他の脳領域のいずれかでこれを選択的に誘発することができる限局性局所EAEモデルを開発した。この限局性または標的化EAEモデルを使用して、MS脊髄病変によく似た大きな炎症性病変を脊髄後索で誘発して、皮質脊髄路を侵す。このモデルでは、ミエリンタンパク質MOGでラットを最初に免疫感作する。免疫感作の2から3週間後、MOG抗体の力価を測定し、免疫反応が陽性の動物にサイトカイン混合物(250ngのTNFα、150UのIFNg)を胸部レベル8(thoracical level 8)(T8)に局所注射した。サイトカイン注射後1週間以内に、ラットは後肢の運動障害を発症し、尾の麻痺および歩行障害は、EAEスコア2.5に達した。サイトカイン注射の4週間後、このスコアは、EAEスコア1に改善した(Kerschensteiner et al.,Am.J.Pathol.164:1455−69,2004)。
【0351】
生理食塩水に溶解し、次いで75μlの不完全フロインドアジュバント(IFA,Sigma,#F5506)で乳化したMOG(75μg、1−125aa、BlueSky Biotech,Worcester,MA)75μlを雌性ルイスラットに皮下注射した。MOG抗体の試料を分析するために、注射の直前およびその後7から8日毎に、動物から血液試料を採取した。
【0352】
MOG免疫感作の2または3週間後、免疫感作したラットから血液を採取し、MOG特異的抗体を検出するために、ELISAを実施した。免疫感作すると、免疫感作したラットの90%超において、MOG抗体が誘導される。しかしながら、この系統では、MOG抗体の誘導は、いかなる疾患症候ももたらさなかった。2つの炎症性サイトカイン(TNFα、IFNg)を胸部レベル8(T8)の胸部脊髄に局所注射した後、ルイスラットは運動障害のみを発症した。
【0353】
サイトカイン注射のために、セボフルラン(8%;Abbott GmbH Co.&KG,Delkenheim,Germany)でラットを吸入麻酔し、標準的な手順によって椎弓切除を実施した。具体的には、ラットの背中の皮膚を剃毛し、70%エタノールで消毒し、次いで剃毛領域をプロジンで拭き、メスを用いておおよそT3−4からT11−12までに2から3cmの切れ込みを作った。ファイン剪刀を用いて表面脂肪を筋肉から分離し、脊椎に沿って正中線付近で片側から筋肉を切断した。T8とT9との間のギャップを位置決定し、T8を隣接組織から除いた。マイクロドリルを使用して直径約1から2mmの丸い穴をT8に作り、小チップ鉗子(small tipped forceps)を使用して、骨膜および骨断片を除去した。次に、マイクロ剪刀を用いて硬膜を除去し、ルアーチップ(LT)付10μlハミルトンシリンジに接続した非常に薄いガラスキャピラリーであって、鉱油(Sigma Aldrich)を充填したガラスキャピラリーを用いて、定位注射を行った。
【0354】
自動注射器を使用して、3μlのサイトカイン混合物を含むPBSまたはPBSのみを微量のエバンスブルーと共にキャピラリーに充填した。Kerschensteinerら(2004)によって報告されているように、4倍高用量のTNFα(1000ng)および同用量のIFNγ(150U)を使用した。ビヒクルまたは対照治療ラットでは、4倍高用量は、回復過程を有意に延長させた。
【0355】
次の段階では、ガラスキャピラリーを深さ0.7mmまで挿入し、自動注射器を使用して5分間にわたって、2μlのサイトカイン混合物を(T8)の脊髄中央に注射した。リドカインを適用し、傷口を縫合した後、ラットを鎮痛薬Rimadylで治療した(手術直後、およびさらに3から4日間にわたって毎日)。次いで、クリーンケージ(clean page)内のペーパータオル上にラットを置き、これらが覚醒するまで保温した。
【0356】
ラットは、サイトカイン注射後1週間以内に最初の症候を発症した。サイトカイン適用後7日目または8日目に、抗体治療を開始した。hIgG対照抗体および幾つかの異なるRGMa抗体(即ち、AE12−1、AE12−1Yおよびヒト化5F9.23(米国特許出願公開第2010/0028340号明細書に記載されているh5f9.23))を使用し、ラットを静脈内経路により週1回治療した。EAEのスコア化を毎日行って、スコアを記録した。実験を行う者は、異なる治療群について盲検化されていた。サイトカイン投与の27から29日後に、動物を屠殺し、脊髄を単離し、以下のタンパク質:GAP−43(再生マーカー)、CD68(活性化小膠細胞およびマクロファージの炎症マーカー)およびMPB(ミエリン塩基性タンパク質、再ミエリン化または保存ミエリン管(preserved myelin tracts)のマーカー)の発現について分析した。これらのマーカー領域を測定し、分析し、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ有意性検定を使用して統計的に評価した。
図18に示されているように、3つのRGMa抗体はすべて、脊髄tEAEモデルにおいて機能回復を促進した。
【0357】
脊髄tEAEモデルでは、RGMa抗体はすべて、よく似た再生および神経保護刺激活性を示した。RGMa選択的抗体AE12−1およびAE12−1Yは、RGMaおよびRGMcの両方を中和するh5F9.23と比較して同様の活性を示した。RGMcの中和は、有効性に必要であるとは思われない。従って、限局性脊髄EAEモデルにおける3つのRGMa mAbすべての作用機序をより良く理解するために、抗体治療ラットの脊髄の幾つかの連続切片において、幾つかのマーカーを評価したところ、AE12−1Y、AE12−1およびh5F9.23は、再生領域(GAP−43)、再ミエリン化領域(ミエリン塩基性タンパク質(MBP))を増加させ、脊髄病変部位周辺の炎症性CD68(CD68陽性)領域を減少させた(
図19を参照のこと)。
【0358】
この脊髄tEAEモデルにおけるこの抗体の活性用量を決定するために、RGMa選択的抗体AE12−1Y−QLを試験した。具体的には、4つの異なる抗体用量(即ち、0.01、0.1、1、10mg/k)をラットに週1回全身静脈内(IV)投与した。AE12−1Y−QLは、0.1、1および10mg/kgで有意な活性を示した(
図20)。しかしながら、0.01mg/kgの用量は、有効性を示さなかった。