(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-508732(P2015-508732A)
(43)【公表日】2015年3月23日
    (54)【発明の名称】自動車用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R  21/36        20110101AFI20150224BHJP        
   B60R  21/2338      20110101ALI20150224BHJP        
【FI】
   B60R21/34 100
   B60R21/231 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
      (21)【出願番号】特願2014-559152(P2014-559152)
(86)(22)【出願日】2013年2月21日
    (85)【翻訳文提出日】2014年8月28日
      (86)【国際出願番号】EP2013053452
    
      (87)【国際公開番号】WO2013127689
(87)【国際公開日】20130906
    
      (31)【優先権主張番号】102012203116.2
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】DE
      (31)【優先権主張番号】102012215996.7
(32)【優先日】2012年9月10日
(33)【優先権主張国】DE
      (31)【優先権主張番号】102012222006.2
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
    (81)【指定国】
      AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
    
      
        
          (71)【出願人】
【識別番号】512143350
【氏名又は名称】タカタ  アーゲー
          (74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東  忠重
          (74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東  忠彦
          (74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫  進介
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】シュタインケ  ノーマン
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ルーベ,トーマス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ポストマン,マルコ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】カリスケ,インゴ
              
            
        
      
    【テーマコード(参考)】
      3D054
    【Fターム(参考)】
      3D054AA30
      3D054CC11
      3D054DD13
      3D054DD28
      3D054EE01
      3D054EE19
      3D054EE26
      3D054EE34
    (57)【要約】
  本発明は自動車用エアバッグ装置に関する。本発明によるエアバッグ装置は、自動車(1)の外側にいる人の保護のために、フロントガラス(11)の少なくとも1つのセクション及び/又は自動車(1)の外側の別の部分に沿って展開可能なエアバッグ(22')と、膨らんだエアバッグ(22')の少なくとも1つのセクションを、自動車運転者又は前部自動車座席にいる別の自動車乗員の視界の外へと移動させるデバイス(6)と、を含み、移動させるデバイス(6)は、前記自動車(1)又は前記自動車(1)にしっかりと接続される部品に固定され、かつ前記エアバッグ(22')に結合される少なくとも1つの接続要素(61a',61b')を有し、エアバッグ(22')は、エアバッグ(22')の膨張可能な容積を規定する第1の材料層及び第2の材料層(240,250)を有し、接続要素(61a',61b')の第1のセクション(610a',610b')は、エアバッグ(22')の膨らみ状態に基いて、第1の材料層(240)の外側に沿って延び、接続要素(61a',61b')の第2のセクション(620a',620b')は第2の材料層(250)に固定される。
  さらなる態様において、本発明は、接続要素が、接続要素の第1の端部及び第2の端部によって、自動車、又は自動車にしっかりと接続される部品に固定されるエアバッグ装置に関する。
    
  【特許請求の範囲】
【請求項1】
  自動車の外側の人の保護のために、フロントガラスの少なくとも1つのセクション及び/又は前記自動車の外側の別の部分に沿って展開可能なエアバッグと、
  膨らんだ前記エアバッグの少なくとも1つのセクションを、自動車運転者又は前部自動車座席にいる別の自動車乗員の視界の外へと移動させるデバイスと、を含み、
  前記移動させるデバイスは、前記自動車又は前記自動車にしっかりと接続される部品に固定され、かつ前記エアバッグに結合される少なくとも1つの接続要素を有し、
  前記エアバッグは、前記エアバッグの膨張可能な容積を規定する第1の材料層及び第2の材料層を有し、
  前記接続要素の第1のセクションは前記エアバッグの膨らみ状態に基いて前記第1の材料層の外側に沿って伸び、前記接続要素の第2のセクションは前記第2の材料層に固定される、
  自動車用エアバッグ装置。
【請求項2】
  前記自動車に取り付けられた前記エアバッグ装置と前記エアバッグの膨らみ状態とに基づいて、前記エアバッグの前記第1の材料層は前記自動車の前記フロントガラス又は前記自動車の前記外側の前記別の部分に面し、前記第2の材料層は前記フロントガラス又は前記自動車の外側の前記別の部分の反対側を向く、
  請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
  前記接続要素の前記第1のセクションは、前記第1の材料層と、前記フロントガラス又は前記自動車の前記外側の前記別の部分との間に伸びる、
  請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
  前記接続要素は、膨らんだ前記エアバッグに基づいて、前記第1の材料層の開口を通って前記エアバッグの内部に入る、
  請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
  前記エアバッグが膨らんだ状態で、前記接続要素の前記第1のセクション及び前記第2のセクションは、互いに対して角度をなして伸びる、
  請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
  前記第2のセクションは前記第2の材料層の内側に固定される、
  請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
  前記接続要素は前記第2の材料層の外側に固定される、
  請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
  前記エアバッグは、その中を前記接続要素の前記第2のセクションが伸びる切り欠き又はチャンネルを有する、
  請求項1乃至3又は5乃至7のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
  前記移動させるデバイスは、前記エアバッグに結合される少なくとも1つの接続要素を有し、前記接続要素は、前記接続要素の第1の端部及び第2の端部によって、前記自動車、又は前記自動車にしっかりと接続される前記部品に固定されるデバイスに置換されている、
  請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動車用エアバッグ装置。
【請求項10】
  前記エアバッグとの結合のために、前記接続要素は、前記エアバッグと接続されかつ/又は固定手段で前記エアバッグに固定される案内デバイスの中を案内される、
  請求項9に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
  前記案内デバイスは少なくとも1つのループを有する、
  請求項10に記載のエアバッグ装置。
【請求項12】
  前記接続要素は、前記エアバッグの膨らみ状態に基づいて、1つの部分によって前記エアバッグの上縁に平行に伸びるように、前記案内デバイスによって案内される、
  請求項10又は11に記載のエアバッグ装置。
【請求項13】
  前記接続要素の前記1つの部分は、前記エアバッグの前記上縁に沿って伸びる、
  請求項12に記載のエアバッグ装置。
【請求項14】
  前記接続要素の前記1つの部分は、前記エアバッグの前記上縁から離れて伸びる、
  請求項12に記載のエアバッグ装置。
【請求項15】
  請求項1乃至14のいずれか一項に記載のエアバッグ装置を備えた車両。
【請求項16】
  前記接続要素は、1つの端部によって、前記自動車、又は前記自動車にしっかりと接続される前記部品に固定される、
  請求項15に記載の車両。
【請求項17】
  前記接続要素は、前記接続要素の第1の端部及び第2の端部によって、前記自動車、又は前記自動車にしっかりと接続される部品に固定される、
  請求項9乃至14のいずれか一項に記載のエアバッグ装置を含む車両。
 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、請求項1乃至9に記載の、自動車の外側の人の保護のために、フロントガラスの少なくとも1つのセクション及び/又は自動車の外側の別の部分に沿って展開可能なエアバッグを含む自動車用エアバッグ装置に関する。
【0002】
  先行技術より、自動車との衝突時に歩行者の保護に特に役立つ、膨らんだ状態において自動車の外側に(特にフロントガラスに沿って)延びるエアバッグを含むエアバッグ装置が知られている。例えば、欧州特許第1,349,752号明細書(B1)に、そのようなエアバッグ装置が記載されている。
【0003】
  本発明の根底にある課題は、できるだけ安全に作動可能な自動車の外側の人の保護のためのエアバッグ装置を作り出すことにある。
【0004】
  この課題は、請求項1に記載の特徴を有するエアバッグ装置及び請求項9によるエアバッグ装置を提供することによって解決される。本発明の発展は従属請求項において示される。
【0005】
  本発明の第1の態様によれば、
−自動車の外側の人の保護のために、フロントガラスの少なくとも1つのセクション及び/又は自動車の外側の別の部分に沿って展開可能なエアバッグと、
−膨らんだエアバッグの少なくとも1つのセクションを自動車運転者又は前部自動車座席にいる別の自動車乗員の視界の外へと移動させるデバイスと、を含み、
−移動させるデバイスは、自動車又は自動車にしっかりと接続される部品に固定され、かつエアバッグに結合される少なくとも1つの接続要素を有し、
−エアバッグは、エアバッグの膨張可能な容積を規定する第1の材料層及び第2の材料層を有し、
−接続要素の第1のセクションはエアバッグの膨らみ状態に基いて第1の材料層の外側に沿って伸び、接続要素の第2のセクションは第2の材料層に固定される、
自動車用エアバッグ装置が提供される。
【0006】
  運転者にあまり妨げられない前方の視界を与えるために、エアバッグを移動させるデバイスを用いて、(その保護機能を果たした後に)衝突の結果展開されたエアバッグを復元力の生成によって運転者の視界から取り除くことができる。
【0007】
  接続要素をストラップ又はケーブルの形で、例えば、その2つの端部が直接自動車に接続される弾性のストラップとして設けることが考えられる。しかしながら、接続要素を実質的に非弾性のケーブルとして形成することも可能であり、エアバッグを移動させる手段が、それによって接続要素の1つの端部が(間接的に)自動車に接続され、かつ接続要素ひいてはエアバッグの引き戻しに役立つ、引き戻し機構を少なくとも含むようにすることも可能である。
【0008】
  例えば、引き戻し機構は、自動車の制御ユニット(電子制御ユニット(ECU))によって作動されアクティブにされる。しかしながら、引き戻し機構が自動制御されるように設計することも可能である。
【0009】
  自動制御設計の場合は、引き戻し機構は、例えば、エアバッグの展開前に接続要素が少なくとも部分的に巻き上げられ、かつ、らせんバネと協働する巻き取りスプールを含むかもしれない。エアバッグの展開中に、エアバッグ内部で高まる圧力によって力が生み出され、この力が接続要素によって巻き取りスプールに伝達され、らせんバネに張力が掛かる。接続要素が巻き取りスプールから解かれる間、らせんバネは巻き上げられる。エアバッグの内部圧力が落ちると、巻き取りスプールに伝達される力は小さくなる。らせんバネは再び解かれ(緩み)、これにより接続要素が巻き取りスプールによって巻き上げられ、エアバッグが自動車運転者の視界から引き戻される。ECU制御の引き戻しデバイスにおいては、例えば、アクチュエーターが設けられ、このアクチュエーターを介して接続要素を移動させることができる。アクチュエーターとしては、例えば、巻き取りスプールを駆動する電気モーター、予め張力を掛けられたばねユニット、又は火花駆動式ピストンシリンダーユニットを設けることができる。
【0010】
  エアバッグが膨らんだ状態において、接続要素は、例えば(あくまで例として)、運転者側のエアバッグの領域に沿って伸びる。言うまでもなく、接続要素が運転者側と乗員側の両方の領域内で伸びるか、又は少なくとも2つの接続要素が設けられて、その内の一方が運転者側の領域に配置され、他方が乗員側に配置されることも考えられる。
【0011】
  エアバッグは特に、複数の膨張可能なチャンバーを有する。これらの膨張可能なチャンバーは、エアバッグが展開した状態では、自動車のフロントガラスに沿って、一方が他方の後ろに(特に、一方が他方の上方に)延びる。例えば、エアバッグは、3つのチャンバーを有する。第2のチャンバーは第1のチャンバーと第3のチャンバーとの間に設けられ、第2のチャンバーは、例えば、第1の区切り要素によって第1のチャンバーから区切られ、第2の区切り要素によって第3のチャンバーから区切られる。両区切り要素は、例えば、互いに略平行に伸びる。3つのチャンバーの配置は、一例として理解されるべきことに注意すべきである。フロントガラスのより少ない部分を覆いたい場合は、2つのチャンバーのみを設けることができる。この場合は、必要な区切り要素は唯一つだけである。さらに、エアバッグ装置は、特に、展開する前にエアバッグが収容され、例えば、自動車のカバー(例えば、エンジンフード、又は自動車の前部領域に設けられるトランクを覆うフード)の下に配置されるモジュールハウジングを含む。
【0012】
  エアバッグ装置の基本的な構成、特に、エアバッグと引き戻し機構の基本的な構成は、2012年1月26日出願の国際特許出願番号PCT/EP2012/051190(国際公開第2012/101198号として公開済)及び同じく2012年1月26日出願の国際特許出願番号PCT/EP2012/051188(国際公開第2012/101196号として公開済)に記載されており、これまでこれらの2つの特許出願に対して明示的に言及がなされた。
【0013】
  特に、接続要素の経路は、エアバッグの縁まで達することはなく、エアバッグの中を通る。特に、このことによって、いわば、(例えば、ストラップ状又はケーブル状の)接続要素の長さを短縮しており、よって、例えば、よりコンパクトな引き戻しデバイスを可能にする(上記参照)。さらに、接続要素を案内する案内デバイスは簡略化できる。例えば、1つの側にだけ伸びる接続要素、又はエアバッグの縁に沿って伸びる接続要素と比べて、接続要素を案内するループの数はより少なくて済み、これにより、特に摩擦損失、ひいては引き戻しデバイスにより加えられるされる復元力を減少させることができる。
【0014】
  エアバッグの(例えば、布地層の形の)2つの材料層は、例えば、(例えば、外周の縫い目によって)互いに接続される別箇の層である。しかしながら、初めにただ1つのブランク(a  single  blank)を使用し、それを2つの層を形成するように折り重ね、2つの材料層を互いに一体的に形成することも考えられる。
【0015】
  エアバッグの第1の材料層は、特に、その中を通って接続要素がエアバッグの内部に入る少なくとも1つの開口を有する。例えば、この開口は、フロントガラス(又は自動車の外側の他の部分)に面する(第1の)材料層に存在する。
【0016】
  例えば、接続要素は、エアバッグの膨らみ状態に基づいて、第1のセクションが、自動車のフロントガラス又は自動車の外側の他の部分と、エアバッグの第1の材料層との間にある状態で伸びる。特に、接続要素は、接続要素が自動車と(直接的又は間接的に)接続される接続点(例えば、引き戻しデバイス)から、エアバッグと、自動車のフロントガラス(又は自動車の外側の他の部分)との間のエアバッグの開口まで伸び、そして開口を通してエアバッグの内部へ入る。
【0017】
  言うまでもなく、接続要素がフロントガラスの反対側を向くエアバッグの側からエアバッグ内部に入るように、第1の材料層がフロントガラスの反対側を向いて伸び、開口がこの材料層に形成されることも考えられる。
【0018】
  接続要素の第2のセクション(特に、第2のセクションの端部)は、例えば、フロントガラスの反対側を向く、例えば、エアバッグの第2の材料層の内側に固定される(例えば、縫い付けられるか又は接着される)。第2の材料層はエアバッグのさらなる開口を有し、そこに、例えば、開口の前に設けられるか又は開口に設けられて、第2のセクションがエアバッグ内部に引き込まれるのを妨げるブロック要素(a  blocking  element)を用いて、第2のセクションを固定することも考えられる。接続要素が、このさらなる開口を通ってエアバッグ内部から出て、エアバッグの外側に固定されることも考えられる。
【0019】
  本発明の別の発展によれば、接続要素の第1のセクション及び第2のセクションは、エアバッグが膨らんだ状態で、互いに対して(例えば、少なくとも略直角の)角度をなして伸びる。
【0020】
  本発明の他の変形例によれば、エアバッグは、その中を通って接続要素の第2のセクションが伸びる切り欠きを有する。このように、接続要素は、第1の材料層の開口を通ってエアバッグに入るのではなく、第1の材料層の外側から第2の材料層へと切り欠きの中を(例えば、エアバッグが延びる主な方向に実質的に垂直に)伸びる。
【0021】
  第2の態様によれば、本発明は自動車用エアバッグ装置に関し、特に、上述したように、
−自動車の外側の人の保護のために、フロントガラスの少なくとも1つのセクション及び/又は自動車の外側の別の部分に沿って展開可能なエアバッグと、
−膨らんだエアバッグの少なくとも1つのセクションを自動車運転者の視界の外へと移動させるデバイスと、を含み、
−移動させるデバイスは、エアバッグに結合される少なくとも1つの接続要素を有し、この接続要素は、その第1の端部及び第2の端部によって、(接続要素の両端部が自動車に取り付けられる部品に固定されるように)(例えば、自動車のカバーの下に配置されるエアバッグ装置のハウジングの形の)自動車にしっかりと接続される部品に固定される、
自動車用エアバッグ装置に関する。
【0022】
  本発明の第2の態様によるエアバッグ装置の発展によれば、エアバッグに結びつけられる接続要素は、エアバッグに存在しかつ/又は固定手段によってエアバッグに固定される案内デバイスの中を通って案内される。例えば、この案内デバイスは、その中を案内される接続要素がそれに対して移動できるように形成される少なくとも1つのループを有する。この少なくとも1つのループは、例えば、エアバッグと接続される別箇の部品である。しかしながら、ループは、例えば、膨張可能な容積を規定するエアバッグの少なくとも1つの材料層の延長として、エアバッグと一体的に形成されることも考えられる。
【0023】
  本発明の1つの態様によれば、接続要素は、少なくともその一部分が、エアバッグの膨らみ状態に基づいて、自動車の横方向と自動車の高さ方向によって画定される平面に少なくとも略平行に及び/又は自動車の長さ方向と自動車の高さ方向によって画定される平面に少なくとも略平行に伸びるように、案内デバイスによって案内される。
【0024】
  接続要素は、接続要素が、膨らんだエアバッグの延びる主面に沿って、特に、エアバッグの自動車に面する側に沿って、少なくとも部分的に伸びるように、案内デバイスによって案内されることも考えられる。しかしながら、少なくとも接続要素の一部分が、エアバッグの自動車と反対を向く側において伸びることも可能である。
【0025】
  例えば、接続要素は、エアバッグの上縁に少なくとも略平行に伸びる部分を有し、ここで、エアバッグの「上」縁は、エアバッグの膨らみ状態で、自動車のカバー(例えば、エンジンフードの形をとる。上記参照。)の反対側を向くエアバッグの縁のことである。この部分は、例えば、少なくとも略自動車の横方向に沿って延びる。エアバッグの上縁に平行に伸びる接続要素のこの部分は、例えば、この上縁に沿って伸びる。すなわち、正確にこの上縁の上を伸びるか、又は上縁からほんのわずかだけ(例えば、最高で5cm)離れて伸びる。しかしながら、接続要素のこの部分がエアバッグの上縁から離れて、例えば、その略中央に(自動車の高さ方向に沿って見て)伸びることも可能である。
【0026】
  第1の態様に関してすでに述べたように、エアバッグは、特に、例えば互いに一体的に接続される2つの合同なエアバッグ層(材料層)を有し、このエアバッグ層はエアバッグの膨張可能な容積を規定する。エアバッグが膨らんでいない平らに広がった状態では、2つのエアバッグ層は、一方が他方の上にあり、エアバッグの外周がエアバッグの「縁」を規定する。特に、2つのエアバッグ層は、その縁に沿って伸びる外周の縫い目によって互いに接続され、エアバッグ層の外周が膨らんだエアバッグの縁をも規定する。
【0027】
  接続要素が、接続要素の第1の端部と接続要素の上縁へ平行に伸びる接続要素の(第2の)部分との間に伸びる第1の部分と、第2の部分と接続要素の第2の端部との間に伸びる第3の部分とを含むことも考えられる。第1の部分及び第3の部分は、特に、第2の部分に対して角度をなしている。
【0028】
  特に、接続要素の第2の部分が、自動車の横方向と自動車の高さ方向によって規定される平面に平行に向く一方、接続要素の第1の部分及び/又は第3の部分は自動車の長さ方向と自動車の高さ方向によって規定される平面に略平行に伸びる。例えば、接続要素の第1の部分及び第3の部分は共に、エアバッグの(特に横部分の)縁から離れて伸びる。従って、接続要素は、エアバッグの横縁のより長い部分に沿って伸びる接続要素の長さよりも短いことがあり得る。さらに、接続要素を案内するループの数は減らすことができるかもしれない。これにより、摩擦損失の発生を最小限に抑え、よって、加えられる復元力を最小限に抑える。これにより、エアバッグを折り畳み、詰め込む際の取り扱いもまた簡略化できる。
【0029】
  第2の部分の案内が、特に、エアバッグの上縁に沿って向く(第2の)ループによって達成される一方、接続要素の第1の部分及び第3の部分の案内はそれぞれ、エアバッグの上縁に対して角度をなして向く第1のループ及び第3のループによって達成される。特に第2のループの長さは、第1のループ及び第3のループの長さよりも長い。
【0030】
  言うまでもなく、本発明の第1の態様に関連して説明した要素は、第2の態様によるエアバッグ装置にも用いることができることに注意すべきである。例えば、引き戻し機構、エアバッグ、及び/又は接続要素は、本発明の第1の態様に関して上述したように形成することができる。一方、本発明の第2の態様に関連して説明した要素もまた、第1の態様によるエアバッグ装置に用いることができる。
【0031】
  本発明はまた、本発明の第1の態様又は第2の態様による独創的なエアバッグ装置を含む車両に関する。例えば、本発明は、接続要素が、1つの端部によって、自動車又は自動車にしっかりと接続される部品に固定される車両に関する。本発明は、特に、接続要素が、第1の端部及び第2の端部によって、自動車又は自動車にしっかりと接続される部品に固定される、本発明の第2の態様によるエアバッグ装置を含む車両に関する。
 
【図面の簡単な説明】
【0032】
  図面を参照しながら、例示的実施形態によって、本発明を以下に詳細に説明する。
【
図1】本発明の例示的実施形態によるエアバッグ装置のエアバッグの展開後の上面図を示す。
 
【
図4】本発明のさらなる例示的実施形態によるエアバッグ装置のエアバッグの展開後の上面図を示す。
 
【
図5A】膨らんだエアバッグの引き戻しの手順を示す。
 
【
図5B】膨らんだエアバッグの引き戻しの手順を示す。
 
【
図5C】膨らんだエアバッグの引き戻しの手順を示す。
 
【
図5D】膨らんだエアバッグの引き戻しの手順を示す。
 
【
図6】引き戻しケーブルの第2のセクションの案内方法を示す。
 
【
図8】本発明の別の例示的実施形態によるエアバッグ装置のエアバッグを示す。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0033】
  図1は、自動車1に配置されて自動車1のフロントガラス11の一部を覆うエアバッグ22を展開した後の、本発明によるエアバッグ装置2の上面図を示す。エアバッグ装置2はさらに、自動車1のエンジンフード12の下に配置されるエアバッグモジュールハウジング21を含み、このエアバッグモジュールハウジングからフロントガラス11の方向にエアバッグ22が展開した。エアバッグ22の展開のために、エアバッグ22自身又は別箇のデバイスによって、エンジンフード12のフロントガラス11に面する側を引き起こすことができる。エアバッグ22を膨らませるために、エアバッグ装置2はさらに、エアバッグモジュールハウジング21内に設けられ、エアバッグ22の吹き込み領域221内へ突き出るガス生成器23を含む。エアバッグ22は、フロントガラス11に沿って上下に配置される3つのチャンバ221乃至223を有する。
 
【0034】
  すでに上述したように、ガス生成器23を用いてエアバッグ22を膨らませることは、特に、自動車1のECU3(
図4も参照のこと)の制御信号によって達成され、センサ4によって検出される自動車の状態に関するパラメータは、ECU3によって処理される。目前に迫っているか又はすでに起こり始めている自動車の外側の人との衝突の場合で、求められた又は記憶された閾値又は制限値を超えたときは、ECU3はガス生成器23を作動させる制御信号を生成し、それと同時に、ガス生成器23によって生成されたガスによりエアバッグ22が膨らむ。
 
【0035】
  自動車に衝突する人を保護するエアバッグ22の領域(エアバッグの保護領域、すなわち、特に、フロントガラス11と、エンジンフード12のフロントガラス11に面する部分と、残りの車体前部とに広がるエアバッグの領域)は、例えば、エンジンフードに覆われたエンジンルームの完全に外側に位置する。エアバッグ22の保護領域は、特に、フロントガラス11の下部領域を覆い、そして、例えば、フロントガラス11に隣接する自動車の2つのフロントピラーの領域をも覆う。
 
【0036】
  さらに、エアバッグ装置2は、膨らんだエアバッグを自動車運転者の視界の外へと移動させる(引き戻しデバイス6の形の)デバイスを含む。ここで、引き戻しデバイス6は運転者側に配置され(その代わりとして又はそれに加えて、乗員側に配置されることや、運転者側と乗員側とに設けられることも可能である)、エアバッグ22の展開及び起こり得る人の衝突の後、特に自動車運転者のために、再び前方の視界を与えるだろう。
 
【0037】
  引き戻しデバイス6は、自動制御型であり、かつ/又は自動車のECU3によって作動可能又は起動可能であり得る。引き戻しデバイス6は、引き戻しケーブル61の形の接続要素を有し、引き戻しケーブル61はその第1の端部611によって自動車1の接続領域101にしっかりと接続される。引き戻しケーブル61の第2の端部612は、引き戻しデバイス6の引き戻し機構62によって自動車に固定される。引き戻しケーブル61もまた、第1のループ71と、第2のループ72と、第3のループ73とを有する案内デバイス7によってエアバッグ22に結合される。
 
【0038】
  引き戻し機構62は、例えば、らせんバネと協働する巻き取りスプールを有する。エアバッグ22の展開中、エアバッグ内部で高まる圧力によって力が生み出され、この力が引き戻しケーブル61によって巻き取りスプールに伝達され、らせんバネに張力が掛かる。この過程で、らせんバネが巻き上げられる。エアバッグの内部圧力が落ちると、巻き取りスプールに伝達される力は小さくなる。これと同時に、らせんバネは再び解かれ(緩み)、これにより引き戻しケーブル61が巻き取りスプールに巻き上げられ、エアバッグ22を自動車運転者の視界から引き戻す。引き戻しデバイス6をECU3の信号によって始動するように設計することもまた考えられる。この場合、引き戻し機構62は、例えば、引き戻し動作を実現するアクチュエーターを有する。アクチュエーターとしては、例えば、巻き取りスプールを駆動する電気モーター、火花駆動式ピストンシリンダーユニット、又はあらかじめ張力を掛けられたばねユニットを設けることができる。本エアバッグ装置の基本構造、特に、引き戻し機構の基本構造は、2012年1月26日出願の上記した国際特許出願番号PCT/EP2012/051188(国際公開第2012/101196号)に詳細に記載されており、この国際特許出願は、ここまで本願に含まれる。
 
【0039】
  引き戻しケーブル61は、引き戻し機構62を起点とする第1のセクション613を有する。第1のセクション613は、自動車の高さ方向に基づく中間領域、すなわち、エアバッグ22の中間チャンバー222の領域においてエアバッグ22に固定される第1の(側部)ループ71によって、エアバッグ22の上縁225に対して厳密に垂直にではなく、これに対して斜めに伸びるように案内される。エアバッグ22の上縁225は、実質的に自動車の横方向に沿って向く。
 
【0040】
  引き戻しケーブル61の第1のセクション613の次には第2のセクション614が続き、第2のセクション614は第2のループ72の中を案内される。第2のループ72が上縁225の1つのセクションに沿って伸びるので、引き戻しケーブル61の第2のセクション614もまたこれに対応してエアバッグのこの上縁部分に沿って伸びる。例えば、引き戻しケーブル61の第2のセクション614は、それによってエアバッグ22の2つの材料層が互いに接続されるエアバッグ22の外周の縫い目224の領域内を伸びることも考えられる。この場合、第2のセクション614は、例えば、少なくとも部分的に外周の縫い目224まで及ぶか、又は外周の縫い目224からほんのわずかな距離だけ離れて伸びる。例えば、引き戻しケーブル61の第2のセクション614は、最高で10cm又は5cm離れてエアバッグ22の上縁部分225に沿って平行に伸びる。
 
【0041】
  第2のセクション614に隣接する引き戻しケーブル61の第3のセクション615は、第2のループ72の端部から、第1のセクション613から見て外側に、自動車1に接続される第1の端部611まで伸びる。第3のセクション615は、中間チャンバー222の領域において、エアバッグ22に接続される第3の(側部)ループ73によって案内され、第3のループ73は、第1のループ71と同様に、第2のループ72よりも際立って短く形成される。第3のループ73は、第3のセクション615が引き戻しケーブル61の第2のセクション614に対して少なくとも略垂直に伸びるように取り付けられる。
 
【0042】
  第1のループ71乃至第3のループ73は、特に、折り返された材料層によって形成され、その自由な側はエアバッグ22に固定される。例えば、第1のループ71及び第3のループ73は、中間チャンバー222を画定するエアバッグ22の材料層の一部分に固定、例えば、縫い付けられる。同様に、第2のループ72は、エアバッグ22の上部チャンバー223を画定する材料層の一部分に固定される。第2のループ72、特にその自由な側が、外周の縫い目224によってエアバッグ22に固定されることも考えられる(
図2参照)。
 
【0043】
  第1のループ71及び第3のループ73の長さと比べると、上部(第2の)ループ72の長さは、引き戻しケーブル61の通る方向、すなわち、エアバッグ22の上縁225に沿ってはるかに長い。第2のループ72のこの長さによって、引き戻しデバイス6の作動後のエアバッグ22の引き戻し中にエアバッグ22内に力を伝達する引き戻しケーブル61の長さ(すなわち、第2のセクション614の長さ)が影響を受ける可能性がある。第2のループ72は連続的なものとして示されている。しかし、連続的なループの代わりに、エアバッグ22の上縁225に沿って前後に配置される複数のループを用いることも考えられる。
 
【0044】
  図2は、
図1のA-A面に沿った断面図を示す。
図2から、エアバッグ22のチャンバー221乃至223は、エアバッグ22の上縁225に対して実質的に平行に(すなわち、実質的に自動車の横方向に沿って)伸びる2つのキャッチストラップ(catch  straps)226,227によって互いに区切られることが理解できる。キャッチストラップ226,227は、縫い目200によって、エアバッグ22に接続される(すなわち、フロントガラス11に面する材料層か、又はフロントガラス11の反対側を向くエアバッグ22の材料層に接続される)。
 
【0045】
  第1のループ71乃至第3のループ73は、接続手段によって(例えば、縫い目によって)エアバッグ22に接続される別箇の部品とすることができる。しかしながら、第1のループ71乃至第3のループ73が、エアバッグ22と一体的に形成されることも考えられる。特に、上部(第2の)ループ72は、エアバッグ22の材料層の1つと共通のブランク(blank)から形成し、ループを例えば、フロントガラス11に面する材料層の一部とすることができる。さらに、第1のループ71乃至第3のループ73は1つの層を有するものとして示されているが、これらのループのうち少なくとも1つは、強度上の理由から、いくつかの層を有するように作ることも可能である。
 
【0046】
  引き戻しデバイス6が作動されると、引き戻しケーブル61の通る方向において互いに反対の位置にある第2の(上部)ループ72の端部721,722は、特に高い負荷にさらされる。これは、特に、引き戻しケーブル61が、例えば、金属ケーブル又はプラスチックケーブルとして小さい断面を有するように作られる場合によく当てはまる。第2のループ72の両端部が引き戻しケーブル61によって凹ませられるのを防ぐために、その長さの少なくとも一部に沿って(かつ、例えば、外周全体に亘って)引き戻しケーブル61の第2のセクション614を囲む第2のループ72内に、補強要素723を設けることができる。
 
【0047】
  これにより、例えば、最高で直径2mmの小さな直径を有する引き戻しケーブルの使用が可能になる。補強要素723は、例えば、薄肉で比較的可撓性のプラスチックのチューブとして形成でき、その中を引き戻しケーブル61が伸びる。補強要素723をさらに設けることによって、引き戻しデバイス6の作動後、引き戻しケーブル61上で絞られてしまう第2のループ72の性質を弱めることができ、かなり大きな力導入領域の維持に役立つ。
 
【0048】
  図3は、
図1の変形形態に関する。本変形形態によれば、引き戻しケーブル61の第2のセクション72はエアバッグ22の上縁225に沿って案内されず、上縁225に平行に、しかし上縁225から離れて伸びる。特に、第2のセクション72は、エアバッグ22の中間チャンバー222の上部部分領域(エアバッグの中間チャンバー222と上部チャンバー223との間の移行領域)内を伸び、第2のセクション614はこの領域に取り付けられたループ72の中を通って案内される。側部ループ71,73は(引き戻しケーブル61を対応する寸法に形成するならば)省くこともできる。しかしながら、例えば、エアバッグ22の下部チャンバー221の領域に配置される側部ループを用いることも考えられる。
 
【0049】
  第2のループ72は、例えば、縫い目(
図2の縫い目200)によって、第2のチャンバー222を第3のチャンバー223から区切るキャッチストラップ227と共に、エアバッグ22に接続される。
 
【0050】
  図4は、本発明による(本発明の第1の態様による)エアバッグ装置2のさらなる例示的実施形態に関し、このエアバッグ装置2は、
図1のエアバッグ22以外のエアバッグ22’を有する。エアバッグ22’は、自動車の横方向に見える中間領域231と、膨らんだ状態では、それぞれ自動車1のフロントピラーを超えて延び、フロントガラス11に平行な方向に沿って(フロントピラーの伸びる方向に沿って)中間領域231よりも長く延びる2つの側部領域232、233とを含む。
 
【0051】
  両端部によって自動車1に固定される引き戻しケーブルの代わりに、
図4のエアバッグ装置は、エアバッグ22'の側部領域232、233の近くに配置され、それぞれが2つの引き戻しケーブル61a'、61b'の形の2つの接続要素を有する2つの引き戻しデバイス6a',6b'を含む。引き戻しケーブル61a'、61b'は、それぞれ一方の端部612a',612b'のみによって引き戻しデバイス6'の引き戻し機構62に接続され、従って自動車1に接続される。それぞれの他方の端部611a',611b'はエアバッグ22’に接続される。
図4にそれぞれ示した2つの引き戻しケーブルの配置は、単に一例としてのみ理解すべきことに注意すべきである。引き戻しケーブルを2つ以上、又は1つのみ設けることもまた可能である。
 
【0052】
  引き戻しケーブル61a',61b'はそれぞれ、引き戻し機構62を起点として、フロントガラス11と、エアバッグ22’の第1の材料層240(
図5Aを参照のこと)のフロントガラス11に面する側(エアバッグの下側)との間に伸びる第1のセクション610a’,610b'を有する。第1のセクション610a’,610b'にはそれぞれ第2のセクション620a’,620b'が隣接し、第2のセクション620a’,620b'は、エアバッグ22’の第1の材料層240に形成される開口(貫入穴)8a,8bを通ってエアバッグ内部の中に入り、従って、引き戻しデバイス6a',6b'の作動前は、エアバッグ22’の内部で伸びる(
図5A乃至
図5Dも参照のこと)。
 
【0053】
  第2のセクション620a',620b'の端部はそれぞれ、フロントガラス11の反対側を向くエアバッグ22’の第2の材料層250(
図5A)に固定され、外側の引き戻しケーブル61b'の第2のセクション620b'の他方の端部611b'はそれぞれ、(エアバッグ22'の側部領域232、233内、特に、エアバッグの上縁225の領域内で)エアバッグ22’の側部領域232,233と中間領域231との間の移行領域に設けられる内側の引き戻しケーブル61a'の第2のセクション620a’の他方の端部611a'よりも高い位置に固定される。
 
【0054】
  第2のセクション620a',620b'の他方の端部611a',611b'もまた、例えば、フロントガラス11の反対側を向くエアバッグ22’の第2の材料層250の(エアバッグ22’の膨張可能な内部に面する)内側に固定される。第2のセクション620a',620b'のエアバッグ22’へのの固定は、特に、補強層によって達成される。補強層は、第2の材料層250の第2のセクション620a',620b'の端部の領域に配置される。さらに、開口8a,8bにもまた第1の材料層240に配置される補強層を設けることができる。
 
【0055】
  本実施形態において、膨らんだエアバッグの引き戻しケーブル61a',61b'の第2のセクション620a',620b'は、自動車1のフロントガラス11に対して少なくとも略垂直に伸びる。しかし、これは絶対に必要というわけではない。逆に、構造条件によっては、第2のセクション620a',620b'の別の経路を指定することも可能である。
 
【0056】
  自動車1のフロントガラス11とエンジンフード12との間の移行領域において、引き戻しケーブル61a',61b'の第1のセクション610a’,610b'は案内路80の中を伸びる。これにより、エアバッグ22’の引き戻し中、引き戻し機構62によって、エアバッグの方向に広がる引き戻しケーブル61a',61b'を束ね(まとめ)、一緒に引き込む(例えば、巻き上げる)ことが達成される。さらに、複数の引き戻しケーブルを用いるときは、これらの引き戻しケーブルは、初めから束ねられた形態で部分的に存在することができる。案内路80は、好ましくは、エアバッグ22’に配置され、エアバッグ22’に接続される布地部として設計される。力の最適な導入のために、エアバッグ22’が自動車1に固定される領域に隣接して(例えば、エアバッグ固定ストラップの近くに)案内路80を配置するのが都合が良い。
 
【0057】
  図5A乃至
図5Dは引き戻しデバイス6a',6b'を用いる引き戻し動作の手順を示し、各図においてエアバッグ22'の左側の側部領域232のみを示す。
 
【0058】
  エアバッグ22’の完全な膨張(
図4)の後の開始状態では、第1の(外側の)引き戻しケーブル61b'はピンと張って(張力が掛かって)おり、従って、引き戻しケーブル61b'の第1の部分領域610b'は、引き戻し機構6a'(又は案内路80)からエアバッグ22’の第1の材料層240のフロントガラスに面する側(エアバッグの下側)の開口8bへ、そしてそこから、エアバッグ内部の第2の部分領域620b'と角度をなして、エアバッグ22’の第2の材料層250のフロントガラス11と反対側を向く側(エアバッグの上側)まで、少なくとも略線形に伸びる。第2の(内側)の引き戻しケーブル61a'の長さは、エアバッグが完全に膨らんだ状態で、引き戻しケーブル61a'がピンと張らない状態で存在し、引き戻しケーブル61a'の2つの部分領域610a',620a'が、引き戻し機構6a'(又は案内路80)と開口8a、又は開口8aと第2の材料層250との間で、だらりと(たるんで)伸びるように決められる。
 
【0059】
  引き戻し機構6a'が作動すると、引き戻し機構6a'によって(例えば、引き戻しケーブル61a',61b'を巻き上げることによって)加えられた力は、初めは、すでに張力を掛けられた第1の引き戻しケーブル61b'のみによって、特に、第2の材料層250へ伝達される。第2の材料層250は、第1の引き戻しケーブル61b'の第2の部分領域620b’を短くすることによって、第1の引き戻しケーブル61b'によって第1の材料層240の方向に引っ張られる。第1の引き戻しケーブル61b'(第2の部分620b')は、第1の材料層240内の開口8bの中を通って、第2の材料層250が第1の材料層240上に寄り掛かるまで引っ張られる。2つの材料層240,250は、特に、引き戻しケーブル61b'の他方の端部611b'が第2の材料層250に固定される領域、又は開口8bの領域において互いに接触し、その結果、第2の部分領域620b’の長さはゼロになる。この状態が
図5Bに示される。第1の材料層240の貫入穴(開口8b)を引き戻しケーブル61b'に対して(ケーブル61b'上に)移動させることが考えられる。
 
【0060】
  上述した第1の引き戻しケーブル61b'の巻き上げによって、フロントピラーを覆うエアバッグ22’の側部領域232の上部領域が初めに引き戻され、同時に第2の引き戻しケーブル61a'もまたピンと張る(張力が掛かる)まで巻き上げられ、第2の引き戻しケーブル61a'の2つの部分領域610a',620a'は少なくとも略線形的に伸びる。2つの引き戻しケーブル61a',61b'の長さをどのように設計するかによって、第1の引き戻しケーブル61b'を巻き上げることで達成された第2の材料層250と第1の材料層240との接触の前、接触と同時に、又は接触の後に、ピンと張る状態が達成される。さらに2つの引き戻しケーブルを巻き上げる(短くする)間に、2つの材料層240,250は、開口8aの領域においても互いに接触する(
図5C)。巻上が進むにつれて、部分的に平らに縮小されたエアバッグは、今度は、フロントピラーの間の領域においてもエンジンフードの方向に引っ張られる。
 
【0061】
  図5Dは、巻き上げ動作の終了後のエアバッグ22'の状態を示す。引き戻しケーブル61a',61b'はほぼ完全に巻き上げられる。エアバッグ22’は一番下の位置にあり、自動車乗員の視界には障害物がない。
 
【0062】
  図6乃至
図8は、第1の材料層240と第2の材料層250との間、すなわち、エアバッグの内部での引き戻しケーブル61の案内方法についての異なる変形例を示す。
 
【0063】
  図6は、
図5Aのエアバッグを示す。すなわち、
図5のエアバッグの外側の引き戻しケーブル61b'の領域の部分分解図である。引き戻しケーブル61b'の経路についての本変形例の詳細な説明に関してもまた、前述の説明、特に
図4乃至
図5A-5Dについての説明を借用することができる。特に、第1の引き戻しケーブル61b'の第2のセクション620b'の他方の端部611b'は、第2の材料層250、すなわち、フロントガラス11の反対側を向く材料層に固定される。
 
【0064】
  さらに、必要であれば、適切な手段(例えば、シリコーン層)によって開口8bを塞ぐこともできることに注意すべきである。これは、この開口を通じてのガスの流出(すなわち、漏れ損失)を防ぐのに役立つ可能性がある。
 
【0065】
  図7は、上述した漏れ損失を防ぐことができる変形形態を示す。本変形形態においては、第1の材料層240と第2の材料層250との間にチャンネル300が伸び、このチャンネル300の内部はエアバッグの内部に対して仕切られて(密閉されて)おり、チャンネル300はエアバッグ22’の内部で引き戻しケーブルを案内するのに役立つ。ここでは、エアバッグ22’の内部は、もはや開口8bによって周囲と接続されない。チャンネル300は、例えば、(特に、可撓性の)中空要素によって形成される。
 
【0066】
  図8に示す変形例によれば、引き戻しケーブル61b'は、エアバッグ22’の切れ込み(indentation)400の形の切り欠きの中を伸び、切れ込み400は側部(側縁)から始まり、エアバッグ22’の中へ伸びる。このように、引き戻しケーブル61b'は、第1の材料層240と第2の材料層250の間を伸びるが、エアバッグの膨張可能な容積の中を通らず、その結果、漏れ損失が防止される。切れ込み400の2つの対向する部分を互いに接続する(例えば、布地層の形の)橋渡し要素によって、切れ込み400が広がるのを妨ぐことができる。
 
【0067】
  切れ込み400は、切れ込みの領域においては、膨らんだエアバッグ22’の延びが自動車の横方向に沿って、切れ込みの上方及び下方のエアバッグの領域におけるよりも短くなるように、例えば、(例えば、左側の側部領域232又は右側の側部領域233の)1つの側部に形成される。
 
【0068】
  言うまでもなく、上述した例示的実施形態の要素は、互いに組み合わせて用いることもできることに注意すべきである。例えば、
図6乃至
図8に示した変形例は、
図4に示した例示的実施形態とともに利用することもできる。
 
 
 
【国際調査報告】