(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-508745(P2015-508745A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(54)【発明の名称】溶融体の表面上で持続的な異方性結晶成長を実現する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20150224BHJP
C30B 15/06 20060101ALI20150224BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20150224BHJP
【FI】
C30B29/06 503
C30B15/06
C01B33/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-557627(P2014-557627)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月8日
(86)【国際出願番号】US2012069065
(87)【国際公開番号】WO2013122667
(87)【国際公開日】20130822
(31)【優先権主張番号】13/398,874
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エル ケラーマン
(72)【発明者】
【氏名】ダウェイ スン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン エイチ マッキントッシュ
【テーマコード(参考)】
4G072
4G077
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA02
4G072AA20
4G072BB02
4G072BB11
4G072BB20
4G072GG03
4G072MM38
4G072UU01
4G072UU02
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF01
4G077CF03
4G077EA01
4G077EG15
4G077EH07
4G077HA01
4G077PC01
(57)【要約】
溶融体から水平なリボンを成長させる方法が、溶融体の表面上における放射冷却を用いてリボンの先行エッジを形成するステップと、溶融体の表面に沿った第1方向にリボンを引き出すステップと、リボンの先行エッジに隣接した領域内で、溶融体から放射される熱を、溶融体を通ってリボンに流入する熱流量よりも大きい熱除去速度で除去するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融体から水平なリボンを成長させる方法であって、
前記溶融体の表面上における放射冷却を用いて、前記リボンの先行エッジを形成するステップと;
前記リボンを前記溶融体の表面に沿った第1方向に引き出すステップと;
前記リボンの前記先行エッジに隣接した領域内で、前記溶融体から放射される熱を、前記溶融体を通って前記リボンに流入する熱流量よりも大きい熱除去速度で除去するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶融体を通る熱流量を与えるステップをさらに含み、当該熱流量が、前記溶融体の結晶化中の溶質の偏析によって特徴付けられる構造的不安定性レジメの熱流量を上回ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融体を通る熱流量が、0.6W/cm2より大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記先行エッジを形成するステップが、前記溶融体の第1領域内で発生し、前記リボンが、前記第1方向に直交する第2方向に沿った第1の幅を有し、前記方法が、
前記溶融体の前記第1領域と第2領域との間で、前記第1方向に沿って前記リボンを引き出すステップと;
前記第2領域内で放射冷却を用いて、前記リボンを前記第2方向に、前記第1の幅より大きい第2の幅に成長させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融体が、シリコン、シリコンの合金、及びドーピングしたシリコンのうちの1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶融体から第1材料のリボンを形成する方法であって、
前記溶融体中に結晶シードを用意するステップと;
前記溶融体を通る熱流量qy”を与えるステップであって、当該熱流量qy”が、前記溶融体の結晶化中の溶質の偏析によって特徴付けられる構造的不安定性レジメの熱流量を上回るステップと;
前記溶融体の表面に近接した冷温領域の温度Tcを、前記第1材料の溶融温度Tm以下の値に設定して、前記溶融体の表面からの熱流量q”rad-liquidが前記qy”よりも大きくなるようにするステップと;
前記結晶シードを、前記冷温領域から、特定の経路に沿って引き出すステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記q
y”が、前記溶融体の最下部から前記溶融体の表面に至る方向に沿った温度勾配dT/dxを次式のように生じさせ、
【数1】
ここに、Cは前記溶融体中の溶質濃度であり、Dは前記溶融体中の溶質の拡散速度であり、kは偏析係数であり、mは液化曲線の傾きであり、νは成長速度であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1材料が、シリコン、シリコンの合金、及びドーピングしたシリコンのうちの1つであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶シードからの放射率が約0.6であり、前記溶融体からの放射率が約0.2であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記qy”が0.6W/cm2以上であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記Tcを、前記Tmより50℃低いレベル以上に設定するステップと;
前記溶融体の最下部の温度を、前記Tmより1℃〜3℃高い温度に設定するステップと
を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記経路に沿い、前記溶融体の表面に近接し、前記Tm以下である第2の温度Tc2を有する第2冷温領域を用意するステップと;
前記第2冷温領域の幅を単調に広げるステップと
を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記Tc2が前記Tcに等しいことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶融体から水平のリボンを成長させる方法であって、
前記溶融体の表面上における放射冷却を用いて、前記リボンの先行エッジを第1領域内に形成するステップであって、前記リボンが第2方向に沿った第1の幅を有するステップと;
前記リボンを、前記溶融体の表面に沿って、前記第2方向に直交する第1方向に引き出すステップと;
前記リボンの前記先行エッジに隣接する領域内で、前記溶融体から放射される熱を、前記溶融体を通って前記リボンに流入する熱流量よりも大きい熱除去速度で除去するステップと;
前記リボンを、前記第1方向に沿って、前記溶融体の第2領域へ搬送するステップと;
前記第2領域内で放射冷却を用いて、前記リボンを前記第2方向に、前記第1の幅より大きい第2の幅に成長させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記溶融体が、シリコン、シリコンの合金、及びドーピングしたシリコンのうちの1つを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶融体を通る熱流量を与えるステップであって、当該熱流量が、前記溶融体の結晶化中の偏析によって特徴付けられる構造的不安定性レジメの熱流量を上回ることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究または開発に関する陳述
米国政府は、本発明における支払済の許諾を有し、米国エネルギー省によって付与された契約番号DE-EE0000595の契約条件によって提供される適当な条件で他者に許諾を与えることを、限定された状況で特許権者に要求する権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明の好適例は、基板製造の分野に関するものである。より具体的には、本発明は、溶融体の表面上のリボンから熱を除去する方法、システム及び構造に関するものである。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
シリコンウェハーまたはシートは、例えば集積回路または太陽電池産業において用いることができる。再生可能エネルギー源の需要が増加すると共に、太陽電池の需要が増加し続ける。これらの需要が増加するに連れて、コスト/電力比を低下させることが、太陽電池産業の1つの目標になる。太陽電池の大部分は、単結晶シリコンウェハーのようなシリコンウェハー製である。現在、結晶シリコン太陽電池の主なコストはウェハーであり、このウェハー上に太陽電池を作製する。太陽電池の効率、あるいは標準的な照明の下で生成される電力の量は、部分的に、このウェハーの品質によって制限される。品質を低下させずにウェハーを製造するコストを低減することによって、コスト/電力比を低下させて、こうしたクリーンエネルギー技術の利用可能性を広げることができる。
【0004】
最高効率のシリコン太陽電池は、20%より高い効率を有することができる。これらの太陽電池は、エレクトロニクス級の単結晶シリコンウェハーを用いて作製されている。こうしたウェハーは、チョクラルスキー法を用いて成長させた単結晶シリコンの円柱形ブール(原石)から薄片を切り出すことによって作製することができる。これらの薄片は、厚さ200μm未満にすることができる。太陽電池が薄くなるほど、切り出し当たりのシリコン廃棄物の比率が増加する。しかし、インゴット・スライス(塊の薄切り)技術に固有の限界が、より薄型の太陽電池を得る能力の妨げになり得る。
【0005】
太陽電池用のウェハーを製造する他の方法は、溶融体からシリコンのリボンを垂直に引き出し、そして、引き出したシリコンを冷却してシートの形に固化させることである。この方法の引き出し速度は、約18mm/分未満に制限され得る。シリコンの冷却中及び固化中に除去した潜熱は、垂直なリボンに沿って除去しなければならない。このことは、リボンに沿った温度勾配を生じさせる。この温度勾配は、結晶シリコンリボンにストレスを加えて、品質の悪い多粒シリコンを生じさせ得る。リボンの幅及び厚さも、この温度勾配により制限され得る。
【0006】
溶融体から分離によってシート(またはリボン)を水平に製造することは、インゴットからスライス(薄切り)したシリコンほど高価ではない。こうした水平リボン成長法(HRG:horizontal ribbon growth)における以前の試みは、ヘリウム対流ガス冷却を用いて、リボン引出しに必要な連続面成長を実現していた。これらの以前の試みは、信頼性があり、均一な厚さで急速に引き出される「製造に値する」広幅のリボンを製造する目標を満足していなかった。以上のことを考慮すれば、水平に成長したシリコンシートを溶融体から製造する改良された装置及び方法の必要性が存在することがわかる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この概要は、以下の詳細な説明においてさらに説明する概念の選択を簡略化した形式で導入すべく提供する。この概要は、特許請求の範囲の主題の主要な特徴または本質的特徴を特定することを意図しておらず、特許請求の範囲の主題を特定することの手助けも意図していない。
【0008】
1つの好適例では、溶融体から水平なリボンを製造する方法が、溶融体の表面上における放射冷却を用いてリボンの先行エッジを形成するステップを含む。この方法は、上記先行エッジを、溶融体の表面に沿った第1方向に引き出すステップと、溶融体から放射される熱を、溶融体を通ってリボンに流入する熱の供給速度よりも大きい熱除去速度で除去するステップも含む。
【0009】
他の好適例では、第1材料のリボンを溶融体から形成する方法が、溶融体中に結晶シードを用意するステップを含む。この方法はさらに、溶融体を通る熱流量q
y”を与えるステップであって、熱流量q
y”は、溶融体の結晶化中の溶質の偏析によって特徴付けられる構造的不安定性レジメ(型)の熱流量を上回るステップと、溶融体の表面に近接した冷温プレートの温度T
cを、第1材料の溶融温度T
m以下の値に設定して、溶融体表面からの放射熱流量q
”rad-liquidが、溶融体を通る熱流量q
y”よりも大きくなるようにするステップと、冷温プレートの長軸に直交する経路に沿って結晶シードを引き出すステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】水平なリボンの成長のシナリオを示す図である。
【
図2】異なる熱流量条件についての、シリコン成長挙動の計算値のグラフ表現を提示する図である。
【
図3】本実施形態による、溶融体からシリコンを成長させるための成長レジメをさらに詳細に表すグラフである。
【
図4】結晶シリコンシードをシリコン溶融体の表面領域に配置するシナリオを表す図である。
【
図5】シリコン成長シナリオを概略的に表す図である。
【
図6】本実施形態による、シリコンシードが異方性結晶成長を開始することの概略表現を示す図である。
【
図7】
図7a及び7bは、シリコン溶融体上に冷温プレートを配置した、シリコン成長のシミュレーションを表す図である。
【
図8】
図8a及び8bは、シリコン成長の他のシミュレーションの結果を提示する図である。
【
図9】本実施形態による、シリコンリボン幅を制御する手順の態様を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を示す図面を参照しながら、本発明をより十分に説明する。しかし、本発明は多数の異なる形態で実現することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されるものと解釈すべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細で完全になり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供する。図面全体を通して、同様の番号は同様の要素を参照する。
【0012】
上述した方法に関連する欠如を解決するために、本実施形態は、新規性及び進歩性のある、結晶材料、特に単結晶材料の水平溶融成長のための技術及びシステムを提供する。種々の実施形態では、水平溶融成長によって単結晶シリコンのシートを形成する方法を開示する。しかし、他の実施形態では、本明細書に開示する方法を、例えばゲルマニウム、並びにシリコンの合金の水平溶融成長に適用することができる。
【0013】
開示する方法は、概ね水平方向に引き出すことによって溶融体から抽出した長尺の単結晶シートを形成することに指向したものである。こうした方法は、シリコンまたはシリコン合金の薄い単結晶シートを溶融体の表面領域に沿って引き出す(引き寄せる)水平リボン成長法(HRG)を含む。リボンの長手方向が引き出し方向に整列するような引き伸ばしによって、リボン形状を得ることができる。
【0014】
HRGを開発するに当たっての以前の努力は、放射冷却を用いてシリコンの結晶シートを形成することを含んでいた。なお、1412℃の溶融温度では、固体シリコンの放射率ε
sが液体シリコンの放射率ε
lの約3倍である。このように、液相とは対照的に、熱は固相から優先的に除去され、このことは安定した結晶化に必要な条件を生じさせる。
【0015】
しかし、固体シリコンと液体シリコンとの放射率の差ε
s−ε
lは、溶融した表面の急速な固化を得ることも困難にする。従って、水平溶融成長によって単結晶シリコンシートを形成する実用的な方法は、今まで開発されていなかった。本実施形態では、HRG処理のような、溶融体からの固体シリコンの水平抽出のための、安定した結晶成長及び急速な成長のための条件を共に達成することのできる方法を初めて開示する。
【0016】
特に、本実施形態は、低速で安定したシリコン結晶の等方性成長のための条件と、溶融した表面に沿った高度な異方性成長のための条件との間の遷移にまたがる処理範囲内で処理条件を調整する能力を与え、後者の条件は、結晶シートの持続的な引き出しを行うために必要である。本発明の発明者は、こうした遷移が、(安定した結晶成長に必要な)溶融体内の(溶融体を通る)熱流量と熱除去とのバランスに依存することを認識した。
【0017】
安定した結晶成長は、凝固プロセス中に発生し得る溶質の偏析によって生じるあらゆる構造的不安定性を克服するために、溶融体を通る十分な熱流量を必要とすることが知られている。この条件は、溶融体を通る方向yに沿った所定の熱流量に関連する温度勾配dT/dyを用いて、次式のように表すことができる:
【数1】
ここに、C
0は溶融体中の溶質濃度であり、Dは溶融体中の溶質の拡散速度であり、mは液化曲線(液相線)の傾きであり、kは偏析係数であり、νは成長速度である。例えば、エレクトロニクス級シリコンの代表的なシリコン溶融体については、鉄(Fe)の濃度は、10
-8Fe原子/Si原子のオーダーにすることができる。Si溶融体中のFe溶質については、k=8e−6、D〜1e−7m
2/s、及びm〜1000K/溶解度とすることができる。従って、成長速度ν=6μm/sについては、溶融体中に必要な温度勾配は〜1k/cmであり、これは〜0.6W/cm
2の熱伝導と等価である。もちろん、溶融体中には他の溶質も存在し得る。
【0018】
以下に詳述するように、種々の実施形態では、構造的に安定した結晶成長のための条件が、HRGに適した高度な異方性結晶成長のための条件と同時に発生するプロセスウィンドウ(処理窓)を規定することができる。特に、式(1)に関して簡潔に上述したように、所定の材料系に対して、構造的安定性の処理領域を規定することができる。以下の説明で詳述するように、構造的安定性の処理領域内に、異方性成長の領域をさらに規定することができる。これら2つの領域のオーバラップ部分がプロセスウィンドウを規定し、これを「成長レジメ」と称し、ここでは溶融体からの結晶層の構造的に安定した異方性成長を行うことができる。
【0019】
全文を参照する形で本明細書に含める比較の開示”Apparatus for Achieving Sustained Anisotropic Crystal Growth on the Surface of a Silicon Melt”(代理人明細書1509V2011059、出願)では、本明細書に開示する方法を実現する装置が詳述されている。
【0020】
図面及び関連する以下の説明は、シリコン材料用のシステムに焦点を当てている。しかし、本実施形態は他の材料系、特にシリコンとゲルマニウム、炭素、及び電気的に活性なドーパント元素を含む他の元素との合金のようなシリコン含有材料系に拡張されることは、当業者にとって明らかである。他の材料も使用することができる。
【0021】
図1に、表面104内に形成することのできる固体シリコンリボン102を含む、シリコン溶融体100用の好適な水平リボン成長法を示す。図示するように、リボン102は、冷温プレートの下に形成して引き出すことができる。点線108は、固体リボンの先行エッジを線引きし、先行エッジでは、シリコンリボン102がシリコン溶融体100との境界面を表面104に有する。点線108の右側では、溶融体を通る熱流量q
y”が、シリコン溶融体100から、シリコンリボン102の固体シリコン材料内に導かれる。シリコンリボンの放射率ε
s=〜0.6に基づく、より高レベルの熱流量が、シリコンリボン102から冷温プレート106内に放射される。溶融体を通る熱流量q
y”とシリコンリボン102から放射される熱との差が、シリコンの固化のための潜熱を規定し、放射冷却が、次式に示す伝導熱流量よりも大きいものとすれば、この潜熱は、固体シリコン相の成長の速度V
gに関係付けることができる。
【数2】
ここに、T
hは溶融体の最下部の温度であり、T
mは平衡溶融温度であり、T
cは冷温プレートの温度であり、k
1は液体(溶融体)の伝導率であり、dは溶融体の深さであり、σはステファン−ボルツマン定数であり、ρは固体の密度であり、Lは溶融の潜熱であり、ε
sは固体の放射率であり、ε
cは冷温プレートの放射率である。
【0022】
点線108のすぐ左側には、溶融体を通る同じ値の熱流量q
y”が、シリコン溶融体100全体を通して存在する。しかし、固化が行われていないので、より低いシリコン溶融体の放射率に基づいて、こうした熱のすべてが冷温プレート106に放射され、この放射率は約0.2である。冷温プレート106の下の、点線の左側の領域では、溶融体を通る熱流量q
y”、溶融温度T
m、溶融体の最下部の温度T
h、及び冷温プレートの温度T
cの関係は、次式によって与えられる:
【数3】
ここに、ε
lは液体である溶融体の放射率である。
【0023】
先行エッジ110では、シリコン溶融体100の表面温度が固体シリコンリボン103の温度と同じであり、平衡溶融温度T
mで近似することができるので、点線108の互いに反対側に存在するこれら2つの異なる熱流量条件は、互いに関係付けることができる。
【0024】
図2は、異なる熱流量条件についての、シリコン成長挙動の計算値のグラフ表現を提示する。特に、溶融体を通る熱流量(q
y”)を、溶融体に近接した冷温プレートの温度の関数としてプロットしてある。
図2では、冷温プレート温度T
cを、シリコン溶融体温度と冷温プレート温度との差T
c−T
mとして表している。上述したように、溶融体を通る熱は、表面から冷温プレートへ放射させることができ、冷温プレートは、この放射に対するヒートシンクとして機能することができる。曲線202、204、206は、固体の異なる成長速度V
gについての、溶融体の熱流量と冷温プレート温度との関係を計算値で示す。これらの計算値は、0.6の固体放射率ε
s及び0.2の液体放射率ε
lに基づき、シリコンの溶融温度(1685K、または1412℃)における特性を近似する。特に、成長速度V
gは、異なる冷温プレート温度T
cと共に変化し、式(2)より決定することができる。式(2)より明らかなように、シリコンから放射される熱を除去するに当たり、比較的低い冷温プレート温度の方が、比較的高い冷温プレート温度よりも有効であり、溶融体を通る熱流量の所定値に対して、V
gのより高い値を生じさせる。換言すれば、冷温プレートに近接したシリコンから熱を除去するに当たり、より低温の冷温プレートの方が、より高温の冷温プレートよりも有効である。
【0025】
図2も参照すれば、曲線202、204及び206で示すV
gの値は、垂直方向下向きに、並びに(〜10μm/sの非常に遅い成長速度ではあるが)表面に沿って水平に、結晶成長が共に発生し得る安定した等方性成長レジメに適用可能である。即ち、図示するこうした成長挙動は、固体から熱を除去している際の、固体からの等方性の安定した成長についてのものである。図示するように、溶融体を通る所定の熱流量q
y”に対しては、より低い低温プレート温度、即ちT
c−T
mのより大きい値が、より大きい成長速度V
gを生じさせ、これに対し、所定の冷温プレート温度に対しては、より大きい熱流量が、より小さい成長速度V
gを生じさせる。従って、V
gの値は、溶融体を通る熱流量q
y”と、冷温プレートによって吸収される熱量とのバランスによって決まり、熱流量q
y”が増加すると成長速度を低下させ、T
cが低下すると吸収される熱量が増加し、これにより成長速度V
gを増加させる。
【0026】
図2は実線の曲線208も含み、この曲線は、溶融体の表面上に異方性結晶成長が発生し得る条件を印で示す「持続的表面成長」である。従って、実線の曲線208は、溶融体を通る熱流量q
y”と、リボンに隣接した溶融体の表面が放射冷却によって独りでに凝固するために必要な冷温プレート温度T
cとの間に要求される関係を線引きする。
図1を参照すれば、実線の曲線208によって規定される条件を満足すると、例えば、固体シリコンリボン102を水平方向112に沿って速度V
pで右向きに引き出すか流動させることによって、固体シリコンリボン102をシリコン溶融体100から抽出することができる。シリコンリボンが引き出されるか流動すると共に、溶融体も流動し得る。同時に、先行エッジ110は、冷温プレート106の下の(点線108で示す)固定位置に留まる。
【0027】
図3に、本実施形態による、溶融体からシリコンを成長させるための成長レジメをさらに詳細に表す。
図3のグラフの軸は
図2と同様であるが、異なる成長レジメの態様を強調する追加的特徴を示す。
図3には、3つの異なる点A)、B)、及びC)を示し、これらは異なる成長レジメ220、222、及び224に対応する。点A)では、T
c−T
mが−60℃であり、冷温プレートの温度が、冷温プレート下方の材料の溶融温度を60℃下回ることを意味する。これに加えて、溶融体を通る熱流量q
y”はほぼ4W/cm
2であり、結晶成長が行われない条件をもたらす。なお、曲線206がゼロの成長条件に対応する。従って、溶融体を通る熱流量q
y”と、曲線206上及びその右側にあるT
c−T
mとのあらゆる組合せが、結晶が再溶融して、リボン及びシードを次式によって与えられる速度で薄くするレジメに相当する:
【数4】
ここに、q
”rad-solidは、固体(即ち、結晶シード)からの放射熱流量である。
【0028】
このことをさらに
図4に示し、
図4は、結晶シリコンシード402がシリコン溶融体100の表面領域に配置されたシナリオを表す。この場合、シリコンシード402が、溶融体を通る熱流量q
y”を受け、この熱流量は、シリコン溶融体100を通ってシリコンシード402内に進む。シリコンシード402は、q
y”より小さい固体からの放射熱流量q
”rad-solidで、冷温プレート(図示せず)に向けて熱を放射する。V
gが0より小さいことが正味の効果であり、シリコンシード402が時間と共にサイズを縮めることを意味する。
【0029】
成長レジメ222内にある点B)を見れば、この点は、
図3及び4に示す点A)と同じ冷温プレート温度T
cに対応する。しかし、溶融体を通る熱流量q
y”は大幅に小さく、これにより、安定した結晶成長が、曲線206及び204によって線引きされる成長速度、即ち、0〜5μm/sの成長速度で生じる。
図5は、点B)における成長シナリオを概略的に示し、ここでも、シリコン溶融体100の表面にあるシリコンシード402に関連して示す。これは、安定した等方性結晶成長が行われる、いわゆる低速成長レジメに相当する。今度は、固体、即ちシリコンシード402からの放射熱流量q
”rad-solidが、シリコン溶融体を通る熱流量q
y”よりも大きく、溶融表面からの熱流量q
”rad-liquidは、シリコン溶融体を通る熱流量q
y”より小さい。
図5は、これらの条件下で成長速度を約3μm/sにすることができ、シリコンシード402から等方性で成長することのできる成長領域404の形成が生じることを示す。しかし、シリコンシード402を例えば1mm/sで引き出せば、シリコンシートが溶融体から引き出される持続的な引き出しは発生せず、等方性の成長速度は図示するように3μm/sにしかならない。
【0030】
ここで
図3の点C)を見ると、この場合、冷温プレート温度T
cは、また点A)及びB)と同じであるが、シリコン溶融体を通る熱流量q
y”は点B)よりも大幅に小さく、即ち1W/cm
2である。これらの条件下で、成長レジメは、実線の曲線208の左側及び下方にあるレジメに相当する。前述したように、実線の曲線208は、持続的な表面成長レジメを線引きし、特に、持続的な表面成長レジメ224の境界を表す。ここで
図6を見ると、点C)によって指定される条件下で、シリコンシード402が右向きに引き出されるシナリオが示されている。これらの条件下で、シリコンシード402からの熱流量q
”rad-solid並びにシリコン溶融体表面からの放射熱流量q
”rad-liquidの各々が、シリコン溶融体を通る熱流量q
y”よりも大きい。
図6にさらに示すように、点C)が曲線204と202の間にあり、これらの曲線は、それぞれ5μm/s及び10μm/sの成長速度に相当するので、等方性の成長速度に相当する成長速度V
gは約6μm/sである。さらに、図示するように、シリコンシード402が右向きに引き出されると、シリコン溶融体100の表面において持続的な異方性結晶成長が行われる。従って、先行エッジ410においてシリコンシート406が形成されて、1mm/sの引き出し速度を与えられる間に、固定位置に留まる。
【0031】
図3には、他の成長レジメ226を示し、これは、式(2)に関して上述した6μm/sの成長速度に基づく構造的不安定性のレジメを表す。従って、線212の左側は、上記0.6W/cm
2に相当し、エレクトロニクス用シリコンに見られる標準的な不純物濃度であるとすれば、6μm/s以上の成長速度が不安定になり得る。
【0032】
図3に示すように、本発明は、HRG形態での、シリコン溶融体からの持続的なリボンの引き出しによる、連続して安定したシリコンシートの異方性成長に必要な条件を初めて特定した。特に、上記必要な条件は、シリコン溶融体を通る熱流量を、シリコンの溶融温度より低く設定される冷温プレート温度とバランスさせた二次元プロセスウィンドウによって規定される。一部の実施形態では、プロセスウィンドウを成長レジメ224として表すことができ、プロセスウィンドウは、一方では構造的不安定性の領域によって、他方では安定した等方性成長の領域によって境界付けられる。
【0033】
図3〜6に提示した分析の妥当性を検証するために、市販の熱伝達ソフトウェア・パッケージを用いて有限要素モデル化を行った。このモデル化は、伝導、対流、及び放射による熱伝達を、液相及び固相の材料の放射率を含めて計算するシミュレーションを含む。
図7a及び7bは、シリコン成長のシミュレーションを表し、ここれは、シリコン溶融体100の表面にシリコンシード702を含むシリコン溶融体100の上方に冷却プレート106が配置されている。シリコン溶融体温度と冷温プレート温度との差T
m−T
cは60℃に設定され、シリコン溶融体の最下部の温度(ΔT
m)は、T
mより5Kだけ上に設定されている。シリコンシード702及びシリコン溶融体100の二次元温度プロファイルを、シリコンシード702を溶融体中に配置した際(0.03秒)の第1瞬時(
図7a)、及び第1瞬時の約70秒後の第2瞬時(
図7b)について示す。シリコンシード702は、1mm/sの速度で水平方向右向きに引き出され、これにより、
図7aに表す瞬時と
図7bに表す瞬時との間に、シリコンシード702の左エッジ706が約70mm右側に移動する。
図7a、7bのシミュレーションの条件下で、シリコンシード702の一部分704が、約0.7mmから約1mmまで厚くなることが観測され、等方性成長を示している。しかし、持続的な引き出しは観測されず、異方性成長のための条件は満足していないことを示している。なお、これらのT
m−T
c及びΔT
mの値は、
図3に規定する領域222に相当し、これにより、この領域が等方性シリコン成長を生じさせることが確認される。
【0034】
図8a及び8bにシミュレーションの結果を提示し、ここでは、ΔT
mを2Kに設定したこと以外は、すべての条件が
図7a及び7bと同じである。ΔT
mを5Kから2Kに低下させることの1つの効果は、シリコン溶融体を通る熱流量q
y”を低減し、これにより、処理条件が今度は
図3の成長レジメ224に相当することである。
図8aには、シリコン溶融体100中に配置した直後のシリコンシード802を示す。
図8bに提示する結果によって確認されるように、101秒後には、薄いシリコンシート806が、シリコン溶融体100の元の左エッジ804の左側に形成される。この薄いシリコンシート806は、異方性結晶成長を示す。図に示す条件下では、薄いシリコンシート806の先行エッジ806が点Pに静止したままであり、これにより、図示する1mm/sでの持続的な(連続した)シリコンシート(リボン)の引き出しが促進される。シリコンシード802が冷温プレート106の右エッジ810を通過した後に、薄いシリコンシート806の定常的な厚さに達する。
【0035】
種々の実施形態では、シリコン溶融体からの放射を受けるために使用する冷温プレートのサイズ、あるいは冷温プレートによって生成される冷温領域のサイズを制御することによって、シリコンリボンの幅を制御することができる。
図9a〜9dは、本実施形態による、シリコンリボン幅を制御する手順の態様を表す。
図9a〜9dには、シリコン溶融体100の表面領域上に配置されたシリコンシード902の図を含む上面図を示す。
図9a〜9dは、シリコンリボンの形成を、T
0からT
6までの種々の瞬時について示す。図示するように、シリコンシード902は、右方向904に引き出される。時系列906は、種々の瞬時におけるシリコンシードの左エッジ908の位置を示すためにも設ける。例えば、
図9aはt
0における状況を示し、ここでは、左エッジ908が冷温領域910の真下に位置し、冷温領域910は上述した冷温プレートとすることができる。その代わりに、冷温領域は、冷温プレートにおいて所望温度T
cに維持された部分とすることができ、冷温プレートの他の部分は、シリコン溶融体100の溶融表面の温度のようなより高温にすることができる。従って、冷温領域910の幅W
2、並びに冷温領域の面積W
2×L
2は、一般に、シリコン溶融体に近接して配置された冷温プレートのそれぞれ幅及び面積よりも小さい。図に示す冷温領域では、冷温領域910の温度とシリコン溶融温度との差、並びにシリコン溶融体100を通る熱流量のような処理条件が、
図3の成長レジメ224内に入るものと考えられ、ここでは、冷温プレート温度に関して上述したように、冷温領域910の温度がT
cである。このようにして、シリコンシード902をシリコン溶融体100に沿って引き出す際に、冷温領域910とシリコン溶融体との温度差が異方性結晶成長を誘発する。
【0036】
T
0では、冷温領域910を、溶融した表面に近接した、シリコンシード902の左エッジ908の上方に設けることができる。時刻t
0後に、シリコンシード902が右向きに引き出されると共に、シリコンリボン912が異方性成長によって形成される。
図9bに、時刻t
1におけるシミュレーションを示し、ここでは、
図9aのシナリオに対して、左エッジ908が右側に引き出されている。シリコンリボン912の幅W
1は、冷温領域910の幅W
2によって決定することができる。シリコン溶融体100における冷温領域910の真下にない部分については、溶融体を通る熱流量が小さく、溶融体の異方性結晶化を生じさせない。図示するように、シリコンリボンの幅W
1は、冷温領域の幅W
2よりも小さくすることができる、というのは、冷温領域910のエッジは、冷温領域910の中心に比べて、シリコン溶融体100から熱を吸収する効果が小さいからである。リボンの狭い幅をある期間だけ維持して、初期のシードからの成長により生じる転位を取り除くことが望ましいことがある。
【0037】
その後に、シリコンリボン912の幅を、幅W
1を超えて増加させて例えば基板用の目標サイズを満足することが望ましいことがある。
図9cに、時刻t
4なる他の瞬時におけるシナリオを示し、ここでは、シリコンリボン912が処理されて、その幅が増加している。時刻t
4では、広幅の冷温領域914が、シリコン溶融体100に近接して導入されている。広幅の冷温領域914は、幅W
2よりも大きい幅W
3を有し、これにより、シリコンリボン912と一体化された広幅のリボン部分916を生成する。広幅の冷温領域914は第2温度T
c2を有して、T
c2とシリコン溶融温度との差、並びにシリコン溶融体100を通る熱流量は、
図3の成長レジメ224内に入るものと考えることができる。換言すれば、T
c2とT
mとの差により、q
”rad-liquidがq
y”より大きくなり、q
y”は、シリコン溶融体100の結晶化中の溶液の偏析によって特徴付けられる構造的不安定性のレジメを上回る値を有する。特に、T
c2はT
c2に等しくすることができる。
【0038】
図9cに示すリボン構造918は、次のように形成することができる。
図9cに示すように、シリコンリボン912の先行エッジ920は、
図8a〜8bに関して上述した理由で、冷温領域910の真下の位置P
1に静止したままである。時刻t
2において、リボンが右向きに引き出されると、冷温領域910から引き出しの向きに距離L
1をおいて位置する広幅の冷温領域914が、シリコン溶融体100に近接して導入される。広幅の冷温領域914は可変の幅を有することができ、これにより、時刻t
2には、広幅の冷温領域914が、
図9cに示す冷温領域922を生成するための幅Wt
2しか有しない。図に示す例では、幅W
t2がW
2と同じであり、時刻t
3までの時間にわたって増加する。時刻t
3には、冷温領域の幅がW
t3であり、図に示す例の幅W
3と同等である。冷温領域をW
2からW
3まで単調に広げることにより、結晶が、狭幅のリボンから外向きに成長し(即ち、広がり)、これにより、シードの結晶構造を、リボンの幅全体にわたって維持することができ、転位のない単結晶リボンの成長を可能にすることが重要であると認められる。こうした(t
2とt
3の間の)拡幅プロセスが、不均一な厚さの拡幅されたシートを生じさせることも、認めるべきである。その後に、広幅の冷温領域914の幅W
t3(W
3)を、
図9c中の時刻t
4まで一定に保持する。t
3〜t
4の時間中には、W
t3も一定に保持されるので、リボンの広幅部分916を一定のままにすることができ、リボン構造918が生じる。
【0039】
図9dに、瞬時t
4に後続する瞬時t
6におけるリボン構造918についてのシナリオを示す。
図9dに示す瞬時には、冷温領域910及び広幅の冷温領域914が「ターンオフ」されている。換言すれば、冷温プレートまたは同様のデバイスを、参照番号910b及び914bで示す位置から除去することができる。一部の実施形態では、冷温プレートを除去することができるのに対し、他の実施形態では、冷温プレートの温度を増加させて、冷温プレートがもはや冷温領域910及び914の効果を生じないようにすることができる。これに加えて、
図9dのシナリオでは、継続的な冷温領域924が、シリコン溶融体100に近接して導入され、冷温領域910から引き出しの向きに、L
1より大きい距離L
2をおいている。この例では、継続的な冷温領域W
3が、広幅冷温領域914と同様の幅W
3を有し、これにより、リボンの広幅部分916内に均一な幅W
4を生じさせる。継続的な冷温領域924は第3温度T
c3を有して、T
c2とシリコン溶融温度との差、並びにシリコン溶融体100を通る熱流量は、
図3の成長レジメ224内に入るものと考えることができる。一部の実施形態では、T
c3をT
c及び/またはT
c2に設定することができる。なお、継続的な冷温領域924は、一定の幅及び一定の冷却効果を有して、均一な厚さのリボンを生成する。一部の実施形態では、継続的な冷温領域924が「ターンオン」されるのと同時に、冷温領域910及び広幅の冷温領域914が「ターンオフ」され、このことは、瞬時t
4とt
6の間の瞬時t
5に発生し得る。従って、
図9dのシナリオに示すように、継続的な冷温領域924の左側にあるあらゆる結晶リボン部分を、その後に、冷温領域910、914の除去後に溶融体の表面からこれらの領域内に導入されるより低い熱流量により加熱して、再融解させることができる。このことは、リボンの広幅部分916に新たな先行エッジ926を生じさせる。代案の実施形態では、広幅の冷温領域及び継続的な冷温領域924を単一位置に設け、これにより、一旦、所望の幅W
4に達すると、広幅の/継続的な冷温領域が定位置に留まる。
【0040】
その後に、継続的な冷温領域924を定位置に留め、シリコンを右向きに引き出して、均一な厚さ及び所望の幅W
4を有する連続したシリコンリボンを、所望の長さまたはリボンに達するまで生成する。このリボンは、継続的な冷温領域924の下流で、シリコン溶融体100から分離することができる。この分離後に、リボンに対する追加的な処理が発生し得る。
【0041】
本明細書で説明した方法は、例えば、命令を実行することのできるマシンによって読み取ることのできるコンピュータ可読の記憶媒体上の命令のプログラムを明示的に用いることによって、自動化することができる。汎用コンピュータが、こうしたマシンの一例である。現在技術において周知の適切な記憶媒体の好適なリストは、読出し及び書込み可能なCD、フラッシュメモリ・チップ(例えばサムドライブ)、種々の磁気記憶媒体、等を含む。
【0042】
本発明は、本明細書に記載した特定実施形態の範囲に限定されるべきものでない。実際に、本明細書に記載したものに加えて、本発明の他の種々の実施形態及び変形例が、以上の説明及び添付した図面より、当業者にとって明らかである。従って、こうした他の実施形態及び変形例は、本発明の範囲内に入ることを意図している。さらに、本明細書では、本発明を、特定目的での特定環境における特定の実現に関連して説明してきたが、本発明の有用性はこれらに限定されず、本発明は、任意数の目的で任意数の環境において有益に実現することができることは、当業者の認める所である。従って、本発明の主題は、本明細書に記載した本発明の全幅及び全範囲を考慮して解釈すべきである。
【国際調査報告】