特表2015-509483(P2015-509483A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-509483線維症を治療するためのPI3K阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-509483(P2015-509483A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】線維症を治療するためのPI3K阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20150303BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20150303BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150303BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   A61K31/501
   A61P11/00
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-555239(P2014-555239)
(86)(22)【出願日】2013年2月4日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2013052112
(87)【国際公開番号】WO2013117503
(87)【国際公開日】20130815
(31)【優先権主張番号】61/595,293
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/702,854
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】513110104
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ナンバー2、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY NO.2 LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100180932
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】ウースター,リチャード フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ルーキー,ポーリーン テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァランス,パトリック ジョン トンプソン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB01
4C063CC28
4C063DD14
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、特発性肺線維症(IPF)などの線維症の治療において使用するための、化合物またはその製薬上許容される塩に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症の治療において使用するための、式(I)
【化1】
(式中、
Xは-CH-であり且つYは4-ピリダジニルであり;または
Xは-N-であり且つYは4-モルホリニルである)
で表される化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項2】
線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド
【化2】
である化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項3】
遊離塩基としての2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである、請求項2に記載の使用するための化合物。
【請求項4】
線維症がIPFである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用するための化合物。
【請求項5】
線維症の治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド:
【化3】
である化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
【請求項6】
安全かつ有効な量の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド:
【化4】
で表される化合物またはその製薬上許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、線維症を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維症の治療、特に特発性肺線維症(本明細書中、以下IPF)において使用するための、ホスホイノシチド3’OHキナーゼファミリー(本明細書中以下PI3K)(PI3Kα、PI3Kβ、PI3KγおよびPI3Kδを含む)、およびPI3Kの下流シグナル伝達標的であるラパマイシンの哺乳動物標的(本明細書中以下mTOR)の活性または機能の阻害剤である化合物およびその製薬上許容可能な塩に関する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、臓器または組織中で、修復過程または反応過程における過剰な線維結合組織の形成を伴う。このような線維症としては、IPF、肺線維症、間質性肺疾患、非特異的間質性肺炎(NSIP)、通常型間質性肺炎(UIP)、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維化症、進行性塊状線維症(炭坑作業員塵肺症の合併症)、腎性全身性線維症、クローン病、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性硬化症、神経線維腫症、ヘルマンスキー・パドラック(Hermansky-Pudlak)症候群、糖尿病性ネフロパシー、腎線維症、肥大型心筋症(HCM)、高血圧関連ネフロパシー、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)、放射線誘導性線維症、子宮平滑筋腫(子宮筋腫)、アルコール性肝臓疾患、肝臓脂肪症、肝線維症、肝硬変、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、慢性移植臓器拒絶、皮膚の線維症、ケロイド瘢痕、デュピュイトラン拘縮、エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群、栄養障害型表皮水疱症、口腔粘膜下線維症、および線維増殖障害が挙げられる。
【0003】
IPFは、患者の予後が乏しい(典型的な生存時間は5年未満)急性および慢性の呼吸器疾患の混成群の最終段階である。IPFの主要な病変は、過剰増殖性の線維芽細胞および筋線維芽細胞の高密度のコアを覆う反応性で過形成性の上皮細胞からなる線維性病巣であり、これはアポトーシス抵抗性であると考えられ、肺間質中に過剰量の細胞外マトリックスタンパク質を沈着させ、気腔閉塞および呼吸不全を引き起こす。
【0004】
クラスI PI3キナーゼは、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PtdIn(4,5)P2)のホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PtdIn(3,4,5)P3)への変換を触媒し、下流シグナル伝達キナーゼ(最も顕著にはAKT)の、細胞膜への動員およびリン酸化反応を誘導し、細胞増殖、代謝、成長および生存などの必須の細胞機能に関与する多数のシグナル伝達カスケードの活性化をもたらす。
【0005】
クラスI PI3キナーゼファミリーは、p110触媒サブユニットの配列および構造によって区別される4つの別々のアイソフォーム(α、β、γ、δ)を含む。この4つのアイソフォームのうち、αおよびβは普遍的に発現されるが、γおよびδは白血球中で富化される。キナーゼ死亡αアイソフォームおよびβアイソフォームを同種発現しているマウスでは胚性致死性が観察されるが、異種キナーゼ死亡マウスは、代謝異常および血管異常を伴う部分的致死性を示す。発現パターンと一致して、γアイソフォームおよびδアイソフォームの切断は免疫学的異常をもたらす。PI3キナーゼ活性は、SHIPホスファターゼによって負に調節され、PTEN(ホスファターゼ・テンシンホモログ)によるクラスI PI3キナーゼの負の調節の場合に最も顕著であり、様々な腫瘍設定における発癌性が、p110変異(p110α)、過剰発現(p110β、γ、δ)、あるいは調節ホスファターゼの機能性の低下のいずれかから生じる調節不全PI3Kシグナル伝達によって促進されることは十分に確立されている(非特許文献1)。
【0006】
線維芽細胞の生存、増殖およびマトリクス合成は、線維症の病理において中心的な役割を担っており、異常なPI3キナーゼシグナル伝達は、疾患の開始および進行の両方において重要な役割を果たし、これらの線維芽細胞のそれぞれの機能に影響を及ぼし得る。これを裏付けるものとして、PI3キナーゼは肺線維芽細胞中でコラーゲン産生および増殖に関与し(非特許文献2)、さらに、機能的PTEN欠損に起因する調節不全PI3キナーゼシグナル伝達は、IPF患者から単離された初代肺線維芽細胞中で過剰増殖性の表現型を伴う(非特許文献3および4)。さらにPTENが欠損しているマウスは、ブレオマイシン誘導性肺損傷の後、線維症の増加を示す(非特許文献3)。皮膚線維症の経過中、全身性硬化症に罹患している患者から単離された線維芽細胞は、増強されたpAKTシグナル伝達を伴うPTEN発現の減少を示し、他方、PTEN条件付きノックアウトマウスから単離された皮膚線維芽細胞は、コラーゲン1、α-SMA、およびさらに前線維化メディエーターCTGFのPI3K依存性過剰発現を示す(非特許文献5)。ラットモデルでは、肝線維症PTEN発現もダウンレギュレートされており、前線維化表現型を与える(非特許文献6)。TGFβの下流のPI3キナーゼシグナル伝達は、初代ヒト肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化に関与し(非特許文献7)、アポトーシスに対して伝達抵抗性であることが見出されている(非特許文献8)。さらに、IPF肺中では低下する抗線維化メディエーターPGE2は、AKTシグナル伝達経路の阻害によって線維芽細胞アポトーシスを増強する(非特許文献9)。
【0007】
潜在的ウイルス感染は、肺線維症の発症において、遺伝的不安定性および修復機構の機能不全を引き起こすことによって慢性的に、あるいはウイルス誘導性憎悪を誘発することによって急性的に補因子として作用し得ると想定されている(非特許文献10)。PI3K-Aktシグナル伝達の活性化は、急性感染および持続性感染の両方において、特定のウイルス(例えばアデノウイルスおよびインフルエンザA)によって用いられる、ウイルス侵入を容易にし、アポトーシスの速度を遅くし、またはウイルス複製を持続させるための戦略である(非特許文献11)。
【0008】
IPFなどの線維症の治療において有用であり得る、PI3KおよびmTORの活性または機能の阻害剤である化合物を提供する必要性が残されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Vanhaesebroeck, B., J. Guillermet-Guibert, M. Graupera, and B. Bilanges. 2010. The emerging mechanisms of isoform-specific PI3K signalling. Nat.Rev.Mol.Cell Biol. 11:329-341.
【非特許文献2】Lu, Y., N. Azad, L. Wang, A. K. Iyer, V. Castranova, B. H. Jiang, and Y. Rojanasakul. 2010. Phosphatidylinositol-3-kinase/akt regulates bleomycin-induced fibroblast proliferation and collagen production. Am.J.Respir.Cell Mol.Biol. 42:432-441.
【非特許文献3】Xia, H., D. Diebold, R. Nho, D. Perlman, J. Kleidon, J. Kahm, S. Avdulov, M. Peterson, J. Nerva, P. Bitterman, et al. 2008. Pathological integrin signaling enhances proliferation of primary lung fibroblasts from patients with idiopathic pulmonary fibrosis. J.Exp.Med. 205:1659-1672.
【非特許文献4】Xia, H., W. Khalil, J. Kahm, J. Jessurun, J. Kleidon, and C. A. Henke. 2010. Pathologic caveolin-1 regulation of PTEN in idiopathic pulmonary fibrosis. Am.J.Pathol. 176:2626-2637.
【非特許文献5】Parapuram, S. K., X. Shi-Wen, C. Elliott, I. D. Welch, H. Jones, M. Baron, C. P. Denton, D. J. Abraham, and A. Leask. 2011. Loss of PTEN Expression by Dermal Fibroblasts Causes Skin Fibrosis. J.Invest Dermatol.
【非特許文献6】Hao, L. S., X. L. Zhang, J. Y. An, J. Karlin, X. P. Tian, Z. N. Dun, S. R. Xie, and S. Chen. 2009. PTEN expression is down-regulated in liver tissues of rats with hepatic fibrosis induced by biliary stenosis. APMIS 117:681-691.
【非特許文献7】Kulkarni, A. A., T. H. Thatcher, K. C. Olsen, S. B. Maggirwar, R. P. Phipps, and P. J. Sime. 2011. PPAR-gamma ligands repress TGFbeta-induced myofibroblast differentiation by targeting the PI3K/Akt pathway: implications for therapy of fibrosis. PLoS.One. 6:e15909.
【非特許文献8】Horowitz, J. C., D. Y. Lee, M. Waghray, V. G. Keshamouni, P. E. Thomas, H. Zhang, Z. Cui, and V. J. Thannickal. 2004. Activation of the pro-survival phosphatidylinositol 3-kinase/AKT pathway by transforming growth factor-beta1 in mesenchymal cells is mediated by p38 MAPK-dependent induction of an autocrine growth factor. J.Biol.Chem. 279:1359-1367.
【非特許文献9】Maher, T. M., I. C. Evans, S. E. Bottoms, P. F. Mercer, A. J. Thorley, A. G. Nicholson, G. J. Laurent, T. D. Tetley, R. C. Chambers, and R. J. McAnulty. 2010. Diminished prostaglandin E2 contributes to the apoptosis paradox in idiopathic pulmonary fibrosis. Am.J.Respir.Crit Care Med. 182:73-82.
【非特許文献10】Naik PK, Moore BB. 2010. Viral infection and aging as cofactors for the development of pulmonary fibrosis. Expert Rev. Respir. Med. 4: 759-71.
【非特許文献11】Ji WT, Liu HJ. 2008. PI3K-Akt signaling and viral infection. Recent Pat. Biotechnol. 2: 218-26.
【発明の概要】
【0010】
本発明は、線維症の治療において使用するための、式(I)
【化1】
【0011】
(式中、
Xは-CH-であり且つYは4-ピリダジニルであり;または
Xは-N-であり且つYは4-モルホリニルである)
で表される化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、TGFβで24時間プライミングし、その後TGFβを除去する実験的レジメンの概略図を示す。
図2図2は、TGFβで24時間プライミングし、その後継続的にTGFβで刺激する実験的レジメンの概略図を示す。
図3図3は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド処理の後にSer473でリン酸化されたAKTのパーセントを示す。非IPF線維芽細胞株(A)およびIPF線維芽細胞株(B)の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドに対する代表的な濃度応答。データは、FBS処理した細胞のみのAKTリン酸化に対して正規化した(100%)。データは、1データポイント当たり、複製ウェル(n=3)の平均+/-標準誤差(SEM)として示される。4パラメーターの非線形回帰を用いて曲線を適合させた。個々の細胞株および継代数は説明文中に記載した。
図4図4は、FBS処理後に、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが線維芽細胞の細胞増殖に与える効果を示す。非IPF細胞株(A)およびIPF細胞株(B)の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドに対する代表的な用量応答。データは、最大FBS応答(%上方漸近線)に対して正規化した。データは、1データポイント当たり、複製ウェル(n= 5または6)の平均+/-SEMとして示される。点線は、各細胞株についての、0.1%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む無血清培地中の細胞の平均シグナルである。4パラメーターの非線形回帰を用いて曲線を適合させた。個々の細胞株および継代数は説明文中に記載した。
図5図5は、TGFβ分化した筋繊維芽細胞の上清中で、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがプロコラーゲン蓄積に与える効果を示す。非IPF線維芽細胞株による、in vitroで2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがTGFβ誘導性プロコラーゲン合成に与える効果:線維芽細胞株0110(A)および0610(B)を、TGFβ(1ng/ml)で24時間インキュベートした。TGFβ含有培地をその後除去し、3nMまたは30nMの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを含む新鮮な培地と置換した。上記の細胞を本化合物でさらに24時間および48時間インキュベートした。データは、3つの複製の平均±S.E.M.として表し、細胞数に対して正規化した。値*p<0.05、**p<0.1および***p<0.001は、TGFβのみで処理した細胞と比較して、示されるデータの統計的有意性(2元配置分散分析(TWO-WAY ANOVA)、ボンフェローニ(Bonferroni)分析)を示す。
図6図6は、TGFβの補充後、TGFβにより分化した筋繊維芽細胞の上清中で、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがプロコラーゲン蓄積に与える効果を示す。2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが、in vitroで非IPF線維芽細胞株によるTGFβ-誘導性プロコラーゲン合成に与える効果:線維芽細胞株0110(A)および0610(B)を、TGFβ(1ng/ml)で24時間インキュベートした。その後TGFβを除去し、TGFβと、3nMまたは30nMの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドとを含む新鮮な培地と置換した。上記の細胞を本化合物でさらに24時間および48時間インキュベートした。データは、3つの複製の平均±S.E.M.として表し、細胞数に対して正規化した。値**p<0.01および***p<0.001は、TGFβのみで処理した細胞と比較して、示されるデータの統計的有意性(2元配置分散分析(TWO-WAY ANOVA)、ボンフェローニ(Bonferroni)分析)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、式(I)
【化2】
【0014】
(式中、
Xは-CH-であり且つYは4-ピリダジニルであり;または
Xは-N-であり且つYは4-モルホリニルである)
で表される化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド:
【化3】
【0016】
である化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド:
【化4】
【0018】
である化合物を提供する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド:
【化5】
【0020】
である化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド:
【化6】
【0022】
である化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0023】
本発明の範囲には、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩の全ての溶媒和物(水和物を含む)、複合体、多形体、プロドラッグおよび放射線標識誘導体の使用が含まれる。
【0024】
式(I)の化合物は、製薬上許容される塩として投与することができる。本明細書中で使用される用語「製薬上許容される塩」は、本化合物の所望の生物学的活性を保持し、最小限の望ましくない毒性作用を示す塩を指す。化合物の製薬上許容される塩は、分子により大きな安定性または溶解性を与えることによって剤形への製剤化を容易にするために使用することができる。これらの製薬上許容される塩は、本化合物の最終単離および精製中にin situで調製してもよく、または精製された本化合物、もしくはその製薬上許容されない塩を、好適な塩基もしくは酸と別々に反応させることによって調製してもよい。好適な塩の概説として、Bergeら, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19を参照されたい。1つの実施形態において、本発明は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの製薬上許容される塩の使用を提供する。他の実施形態において、本発明は、遊離塩基としての、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの使用を提供する。
【0025】
化合物の調製
本発明により使用するための化合物は、標準的な化学を含む様々な方法によって作製することができる。例えば、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドは、WO 2008/144463に記載されるとおりに調製することが可能であり、また2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-モルホリニル)-6-キナゾリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドは、WO 2008/157191に記載されるとおりに調製することができる。
【0026】
使用方法
本発明の治療方法は、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0027】
疾患に関して本明細書中で使用される「治療する」とは、(1) 疾患または該疾患の1つ以上の生物学的徴候を改善すること、(2)(a) 疾患につながる、または疾患に関与する生物学的カスケード中の1つ以上のポイントを妨げるか、または(b) 疾患の1つ以上の生物学的徴候を妨げること、(3) 疾患に伴う1つ以上の症状または作用を軽減すること、または(4) 疾患または該疾患の1つ以上の生物学的徴候の進行を遅らせることを意味する。
【0028】
式(I)の化合物もしくはその製薬上許容される塩、または他の製薬上活性な剤に関して本明細書中で使用される「安全かつ有効な量」とは、健全な医学的判断の範囲内で、(合理的な利益/リスク比で)患者の症状を治療するのには十分であるが、重篤な副作用を回避するためには十分に低い本化合物の量を意味する。化合物の安全かつ有効な量は、選択される特定の化合物(例えば、本化合物の効力、有効性、および半減期を考慮して)、選択される投与経路;治療対象の疾患、治療対象の疾患の重篤度、治療対象の患者の年齢、大きさ、体重および健康状態;治療対象の患者の病歴;治療期間;併用療法の性質;所望の治療効果;および同様の要因によって異なるであろうが、それでもなお、当業者が日常的に決定することができる。
【0029】
本明細書中で使用される「患者」は、ヒト(成人および子供を含む)または他の動物を指す。1つの実施形態において、「患者」はヒトを指す。
【0030】
本化合物またはその製薬上許容される塩は、任意の好適な投与経路、特に経口投与で投与することができる。
【0031】
本発明の化合物は、投与レジメンに従って投与されてよく、ここで投与回数は、所定の期間、様々な時間間隔で投与される。例えば、1日1回、2回、3または4回用量が投与されてもよい。1つの実施形態において、1回用量は、1日に2回投与される(BID)。
【0032】
所望の治療効果が達成されるまで、または所望の治療効果を維持するまで無制限に用量は投与されてもよい。適切な投与レジメン(かかるレジメンが投与される期間を含む)は、治療対象の疾患の重篤度、治療対象の患者の年齢および健康状態;治療対象の患者の病歴;併用療法の性質;所望の治療効果;および当業者の知識および見解の範囲内の同様の要因に依存し得る。このような当業者であれば、適切な投与レジメンが、個々の患者が変更を必要とする場合、その投与レジメンまたは時間経過に対する個々の患者の反応を考慮して調整を必要とし得ることを理解するだろう。
【0033】
経口投与のための典型的な日常用量は、約0.1mg〜約20mg、例えば約0.1mg〜約10mg(例えば0.4mg〜約7mgなど)の範囲であってよい。例えば、患者1人当たり約0.1mg〜約5mg、例えば約0.2mg〜約3.5mg(例えば約0.25mg〜約3mg)の用量を、1日2回(BID)投与することができる。1つの実施形態において、患者1人当たり約0.25mg〜約2.5mgの用量を、1日2回(BID)投与することができる。
【0034】
1つの態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0035】
このような線維症としては、IPF、肺線維症、間質性肺疾患、非特異的間質性肺炎(NSIP、通常型間質性肺炎(UIP)、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維化症、進行性塊状線維症(炭坑作業員塵肺症の合併症)、腎性全身性線維症、クローン病、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性硬化症、神経線維腫症、ヘルマンスキー・パドラック(Hermansky-Pudlak)症候群、糖尿病性ネフロパシー、腎線維症、肥大型心筋症(HCM)、高血圧関連ネフロパシー、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)、放射線誘導性線維症、子宮平滑筋腫(子宮筋腫)、アルコール性肝臓疾患、肝臓脂肪症、肝線維症、肝硬変、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、慢性移植臓器拒絶、皮膚の線維症、ケロイド瘢痕、デュピュイトラン拘縮、エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群、栄養障害型表皮水疱症、口腔粘膜下線維症、および線維増殖障害が挙げられる。1つの実施形態において、線維症としては、IPF、肺線維症、間質性肺疾患、非特異的間質性肺炎(NSIP)、通常型間質性肺炎(UIP)、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維化症、進行性塊状線維症(炭坑作業員塵肺症の合併症)、腎性全身性線維症、クローン病、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性硬化症、神経線維腫症、ヘルマンスキー・パドラック(Hermansky-Pudlak)症候群、糖尿病性ネフロパシー、肥大型心筋症(HCM)、高血圧関連ネフロパシー、放射線誘導性線維症、子宮平滑筋腫(子宮筋腫)、アルコール性肝臓疾患、肝臓脂肪症、肝線維症、肝硬変、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、慢性移植臓器拒絶、皮膚の線維症、ケロイド瘢痕、デュピュイトラン拘縮、エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群、栄養障害型表皮水疱症、口腔粘膜下線維症、または線維増殖障害が挙げられる。他の実施形態において、線維症はIPFである。
【0036】
1つの実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0037】
他の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、線維症を治療する方法を提供する。
【0038】
別の態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0039】
1つの実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物またはその製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0040】
他の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、線維症を治療する方法を提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物を提供する。
【0042】
1つの実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物の使用を提供する。
【0043】
他の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、線維症を治療する方法を提供する。
【0044】
他の態様において、本発明は、IPFの治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0045】
1つの実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、IPFを治療する方法を提供する。
【0047】
別の態様において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
【0048】
1つの実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物またはその製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0049】
他の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含んでなる、IPFを治療する方法を提供する。
【0050】
他の態様において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物を提供する。
【0051】
1つの実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドである化合物の使用を提供する。
【0052】
他の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドをそれを必要とする患者に投与することを含んでなる、IPFを治療する方法を提供する。
【0053】
組成物
式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩は、患者に投与する前に医薬組成物に製剤化することができる。
【0054】
従って、1つの態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0055】
1つの実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0056】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0057】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0058】
別の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0059】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0060】
別の態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、0.1mg〜約5mgの式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と、約0.1g〜約2gの1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0061】
1つの実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、0.1mg〜約5mgの式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と、約0.1g〜約2gの1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0062】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、0.1mg〜約5mgの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と、約0.1g〜約2gの1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0063】
別の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、0.1mg〜約5mgの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と、約0.1g〜約2gの1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0064】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、0.1mg〜約5mgの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と、約0.1g〜約2gの1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0065】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、0.1mg〜約5mgの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと、約0.1g〜約2gの1種以上の製薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0066】
他の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含む、線維症の治療のための医薬組成物に関する。
【0067】
1つの実施形態において、本発明は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩を含む、線維症の治療のための医薬組成物に関する。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを含む、線維症の治療のための医薬組成物に関する。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含む、IPFの治療のための医薬組成物に関する。
【0070】
別の実施形態において、本発明は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩を含む、IPFの治療のための医薬組成物に関する。
【0071】
他の実施形態において、本発明は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを含む、IPFの治療のための医薬組成物に関する。
【0072】
本発明により使用するための医薬組成物は、バルク形態で調製してパッケージングされてもよく、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を抽出し、次いで粉末またはシロップなどと共に患者に与えることができる。別法として、本発明により使用するための医薬組成物は、単位剤形で調製してパッケージングしてもよく、各々の物理的不連続単位は、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含有する。単位剤形で調製される場合、本発明により使用するための医薬組成物は、典型的には、例えば、約0.1mg〜約5mg、例えば約0.2mg〜約3.5mg(例えば約0.25mg〜約3mg)の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含み得る。1つの実施形態において、本発明により使用するための医薬組成物は、典型的には、約0.25mgの式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含み得る。他の実施形態において、本発明により使用するための医薬組成物は、典型的には、約0.5mgの式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含有する。
【0073】
本明細書中で使用される「製薬上許容される賦形剤」は、医薬組成物に形態または粘度を与えることに関与する製薬上許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各賦形剤は、患者に投与されたときに式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩の有効性を実質的に減少させるような相互作用、および製薬上許容されない医薬組成物をもたらすような相互作用が回避されるように、混合したときに医薬組成物の他の成分と適合性でなくてはならない。さらに、各賦形剤は当然ながら、例えば、十分に高純度の製薬上許容されるものでなければならない。
【0074】
式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩、および製薬上許容される賦形剤または賦形剤(1種または複数種)は典型的には、所望の投与経路によって患者に投与するために適合された剤形に製剤化される。例えば、剤形としては、経口投与のために適合されたもの(錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、散剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、溶液剤、乳剤、サシェ剤、およびカシェ剤など)が挙げられる。
【0075】
適切な製薬上許容される賦形剤は、選択される特定の剤形によって異なるだろう。さらに、適切な製薬上許容される賦形剤は、それらが組成物中で果たし得る特定の機能で選択してもよい。例えば、特定の製薬上許容される賦形剤は、均一な剤形の生成を容易にするそれらの能力で選択してもよい。特定の製薬上許容される賦形剤は、安定な剤形の製造を容易にするそれらの能力で選択してもよい。特定の製薬上許容される賦形剤は、患者に投与されると、一つの臓器または体の部分から、別の臓器または体の部分への、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩の運搬または輸送を容易にするそれらの能力で選択してもよい。特定の製薬上許容される賦形剤は、患者の薬剤服用順守を高めるそれらの能力で選択してもよい。
【0076】
適切な製薬上許容される賦形剤としては、下記の種類の賦形剤(希釈剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶剤、共溶剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、香味剤、香味マスキング剤、着色剤、固化防止剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、粘度増加剤、抗酸化剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、および緩衝剤)が挙げられる。当業者であれば、特定の製薬上許容される賦形剤が、複数の機能を果たすことがあり、どのくらいの賦形剤が製剤中に存在し、他のどのような賦形剤が製剤中に存在するかによって代替機能を果たすことがあることを理解するであろう。
【0077】
当業者は、本発明において使用するための適切な量の好適な製薬上許容される賦形剤を選択することを可能とする当技術分野の知識および技術を有する。さらに、製薬上許容される賦形剤について記載されており、好適な製薬上許容される賦形剤を選択する上で有用であり得る、当業者が利用可能な多数のリソースがある。例としては、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)、The Handbook of Pharmaceutical Additives(Gower Publishing Limited)、およびThe Handbook of Pharmaceutical Excipients(the American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Press)が挙げられる。
【0078】
本発明により使用するための医薬組成物は、当業者に公知の技術および方法を使用して調製される。当技術分野で一般に使用されるこれらの方法のいくつかは、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に記載されている。
【0079】
式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含む医薬組成物は、例えば、周囲温度および大気圧で混合することによって調製し得る。
【0080】
1つの実施形態において、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩は、経口投与のために製剤化される。例えば、本発明により使用するための組成物は、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩および希釈剤または充填剤を含む固体経口剤形(例えば錠剤またはカプセル剤)であってよい。好適な希釈剤および充填剤としては、ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびアルファ化デンプン)、セルロースおよびその誘導体(例えば、微結晶性セルロース)、硫酸カルシウム、ならびにリン酸水素カルシウムが挙げられる。経口固体剤形は、結合剤をさらに含み得る。好適な結合剤としては、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびアルファ化デンプン)、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グアーガム、ポビドン、ならびにセルロースおよびその誘導体(例えば、微結晶性セルロース)が挙げられる。経口固体剤形は、崩壊剤をさらに含み得る。好適な崩壊剤としては、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、アルギン酸、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。経口固体剤形は、滑沢剤をさらに含み得る。好適な滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびタルクが挙げられる。
【0081】
適切な場合には、経口投与用の投与単位製剤は、マイクロカプセル化することができる。組成物はまた、例えば、コーティングにより、またはポリマー、ワックスもしくは同様のものの中に粒子状物質を埋め込むことによって調製して、放出を長引かせまたは持続させることもできる。
【0082】
式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩はまた、標的化可能な薬物担体として可溶性ポリマーとカップリングさせてもよい。このようなポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンが挙げられる。さらに、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩は、薬物の制御放出を達成することにおいて有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーとカップリングさせてもよい。
【0083】
別の態様において、本発明により使用するための組成物は、液体経口剤形である。溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤などの経口液剤は、所与の量が一定量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を含有するように、投与単位形態で調製することができる。シロップ剤は、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を適切に香味付けされた水溶液に溶解することによって調製することができ、一方エリキシル剤は、無毒性アルコール性ビヒクルを使用することによって調製される。懸濁剤は、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩を無毒性ビヒクルに分散させることによって製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤(エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど)、保存剤、香味添加物(例えば、ハッカ油もしくは天然甘味剤またはサッカリンもしくは他の人工甘味剤)などを加えることもできる。
【0084】
本発明によれば、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩は、線維症の治療において、1種以上の他の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0085】
式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と組み合わせて使用するための好適な治療剤としては、抗炎症剤(例えばプレドニゾンなどのコルチコステロイド)、免疫抑制剤(例えばアザチオプリンまたはシクロホスファミド)、抗増殖剤、ピルフェニドン、N-アセチルシステイン、p38MAKキナーゼ阻害剤(例えばロスマピモド、(6-[5-(シクロプロピルカルバモイル)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]-N-(2,2-ジメチルプロピル)ピリジン-3-カルボキシアミド)およびMEKまたは二重MEK1/MEK2阻害剤(例えばセルメチニブ、5-(4-ブロモ-2-クロロフェニルアミノ)-4-フルオロ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシアミド)が挙げられる。
【0086】
従って本発明は、1つの態様において、線維症の治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の他の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0087】
1つの実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを投与することを含んでなる、線維症を治療する方法を提供する。
【0088】
他の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0089】
別の態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の他の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0090】
1つの実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを投与することを含んでなる、線維症を治療する方法を提供する。
【0091】
他の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0092】
別の態様において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の他の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを投与することを含んでなる、線維症を治療する方法を提供する。
【0094】
他の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0095】
別の態様において、本発明は、IPFの治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の他の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを投与することを含んでなる、IPFを治療する方法を提供する。
【0097】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0098】
別の態様において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の他の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを投与することを含んでなる、IPFを治療する方法を提供する。
【0100】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と、1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0101】
他の態様において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の他の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0102】
別の実施形態において、本発明は、安全かつ有効な量の、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを投与することを含んでなる、IPFを治療する方法を提供する。
【0103】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための医薬の製造における、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと1種以上の治療活性剤とを含む組み合わせを提供する。
【0104】
本発明の1実施形態は、1種または2種の他の治療剤を含む組み合せの使用を提供する。
【0105】
当業者には、適切な場合、治療成分の活性および/または安定性および/または物理的特性(例えば溶解性)を最適化するために、他の治療成分を、塩の形態で、例えばアルカリ金属塩もしくはアミン塩として、または酸付加塩、もしくはプロドラッグとして、またはエステル(例えば低級アルキルエステル)として、または溶媒和物(例えば水和物)として使用し得ることは明らかであろう。また適切な場合、治療成分を光学的に純粋な形態で使用し得ることも明らかであろう。
【0106】
このような組み合せの個別の化合物は、別個の医薬製剤または複合医薬製剤として、連続的にまたは同時に投与することができる。1つの実施形態において、個別化合物は、複合医薬製剤として同時に投与される。既知の治療剤の適切な用量は当業者によって容易に理解されよう。
【0107】
従って本発明は、他の態様において、線維症の治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と別の治療活性剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0108】
1つの実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と別の治療活性剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、線維症の治療において使用するための、
2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと別の治療活性剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩と別の治療活性剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドまたはその製薬上許容される塩と別の治療活性剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0112】
他の実施形態において、本発明は、IPFの治療において使用するための、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドと別の治療活性剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【実施例】
【0113】
生物学的データ
実施例1
AKTのリン酸化は、PI3キナーゼ活性の指標として広く認められており、本発明においては、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがIPF患者から単離された初代ヒト肺線維芽細胞に与える効果、さらにIPF気管支肺胞洗浄(BALF)の患者から単離されたマクロファージに対して与える効果のIC50を得るために用いられている。
【0114】
線維芽細胞を、1ウェル当たり10,000細胞の密度で96ウェルプレートに播種する。24時間の血清飢餓後、線維芽細胞を、様々な濃度の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを含有する無血清緩衝液中で15分間前インキュベートする(1ウェル当たり50μl体積、無血清DMEM中[3x10-12M]〜[3x10-7M]の範囲の阻害剤の1:10希釈を含む)。線維芽細胞は、ウシ胎仔血清(FCS)を10%の最終体積まで添加することによって刺激される。刺激の30分後、上清を素早くデカントし、細胞プレートを氷上に置く。35μlの1X 完全溶解緩衝液を各ウェルに加え、4℃で10分間インキュベートし、さらなる分析の前に-80℃で保存する。氷上で解凍した後、細胞溶解物を、全AKTおよびホスホAKT(Ser473)に対する捕捉抗体で予めコーティングされた電極を含むメソスケールディスカバリー(Meso-Scale Discovery)(MSD)捕捉プレート上に移す。製造者の説明書に従ってアッセイプロトコルを完了し、MSD SECTOR Imager上でプレートを分析する。データは、Ser473位でリン酸化された全AKTの%として読み取られる。これらのまたは類似の条件を用いて、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドは、FCS誘導性AKTリン酸化の阻害について、2.58nM(95%CI 0.83〜8nM)のIC50(IPF肺(n=4)から単離された線維芽細胞、1細胞株当たり実験(n=2)について、幾何平均および95%CIとして表される)を示す。
【0115】
同様の実験において、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドによるAKTリン酸化の阻害は、IPF BALFから単離された細胞中で評価される。手短に言えば、BAL細胞を、0.1%BSA RPMI培地中で、1ウェル当たり5.7x104〜8.3x104細胞の細胞数を与えるまで再懸濁する。BAL細胞を96ウェルプレートに加え、様々な範囲の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド(アッセイ中の最終濃度0.1%DMSOおよび0.1%BSA)を用いてインキュベートする。37℃、5%CO2における25分間のインキュベーション後、このプレートを1600rpmで5分間回転させる。上清をデカントし、プロテアーゼ阻害剤を含む40μlのホスホセーフ(phosphosafe)溶解緩衝液を各ウェルに加える。次いで、このプレートを液体窒素中でスナップ凍結し、さらなる分析の前に-80℃で保存する。氷上で解凍した後、細胞溶解物を、ホスホAkt、全Aktメソスケールディスカバリー(MSD)捕捉プレート上に移し、上記のとおりに処理する。これらのまたは類似の条件を用いて、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドは、AKTリン酸化の阻害について、0.54nM(95%CI 0.28〜1.08nM)のIC50(IPF BALF(n=3)から単離されたマクロファージについての幾何平均および95%CIとして表される)を示す。
【0116】
実施例2
実験の準備およびプロトコル
(a) 初代ヒト細胞単離
初代ヒト線維芽細胞を、移植または生検のために取り出された、急性外傷後の死後に得られた非IPF肺組織およびIPF患者の肺から得られたIPF肺組織に由来する外植片培養によって単離した。外植片を、ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma社、No.P4333)、アンホテリシンB(Sigma社、No.A2942)、L-グルタミン(Gibco社、No.25030)および20%FBS(ウシ胎仔血清、Lonza社、カタログNo.14-801F、ロットNo.1SB003)が補充された、高グルコースおよびピルビン酸ナトリウムを含有するDMEM(PAA laboratories社、カタログNo.E15-011)中で、37℃、100%湿度、10%CO2にて培養した。細胞は、医学的診断に基づいて、非IPF(UCLは0110および0610とマークした)ならびにIPF(UCLは0207、0208、0308、0507および0508とマークした)と呼ばれた。
【0117】
(b) 初代ヒト細胞の培養
ヒト肺初代線維芽細胞株を、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%FBS(完全DMEM)を補充した高グルコースおよびピルビン酸ナトリウムを含有するDMEM中で、37℃、100%湿度、10%CO2にて培養した。細胞を、アッセイ開始の2〜3日前に、アッセイ用の細胞回収時に約70〜80%のコンフルエンスを生じる密度でT175フラスコ(NUNC社、No.159910)に分けた。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco社、No.25300)を用いて細胞を回収し、洗浄して完全DMEM中に再懸濁した。細胞計数は、60μmセンサー(Millipore社、No.PHCC60050)を備えたハンディ型自動セルカウンター(Handheld Automated Cell Counter)(Millipore社、No.PHCC00000)を用いて細胞懸濁液で実施した。
【0118】
(c) pAKTの測定
細胞培養
初代線維芽細胞を、100μLの完全DMEM中1ウェル当たり10,000細胞で、96ウェル平底プレート(Nunc社、No.167008)に播種した。細胞は外ウェルには播種せず、外ウェルは200μLの完全DMEMのみで満たした。細胞を、37℃にて100%湿度、10%CO2で約16〜20時間インキュベートした。細胞上の培地を、FBSを含まないDMEMに取り替え、37℃にて、5%CO2で約24時間インキュベートした。
【0119】
2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを、DMSO(Sigma社、No.D2650)中の10倍連続希釈により、開始濃度の0.3mM(DMSO中でストック濃度30mMを1:10で2回連続希釈して開始濃度とした)から6回連続希釈した。次いで、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを、DMEM中で1:1000にさらに希釈した。細胞から培地を除去し、100μLの希釈化合物を各ウェルに加えた(6ウェルの複製、0.1%DMSOを加えた培地を対照ウェルの両セットに加えた)。プレートを、37℃にて10%CO2で15分間インキュベートした。培地を除去し、同じ希釈系列の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを含む、20%FBSを加えたDMEMと置換した。6つの対照ウェルを、0.1%DMSOを加えたDMEMと置換し(陰性対照)、さらに6つの対照ウェルを、0.1%DMSOと20%FBSを加えたDMEMと置換した(陽性対照)。プレートを37℃、100%湿度、10%CO2で30分間インキュベートした。培地を除去し、プレートを氷上に置いて35μLの氷冷メソスケールディスカバリー(MSD)溶解緩衝液(MSD標準プロトコルにより阻害剤を付加)を各ウェルに加えた。次いで、プレートを-80℃で急速に凍結させた。
【0120】
MSDアッセイ
メソスケールディスカバリー(MSD)ホスホ(Ser473)/全Akt全細胞溶解液キット(MSD No.K15100D-2)を、150μLの3%ブロッカーA溶液を加えることによって予め1時間ブロッキングした。プレートを300μLの1x MSD洗浄緩衝液(50mM Tris pH7.5、150mM NaCl、0.02% Tween-20)で4回洗浄した。細胞溶解物を入れたプレートを氷上で解凍し、25μLの溶解物を、予め洗浄したAKT二重プレートに移した。プレートを密閉し、200rpmで振盪しながら室温で90分間インキュベートした。
【0121】
AKT二重プレートを吸引し、300μLの1x MSD洗浄緩衝液で4回洗浄した。最終洗浄液を吸引した後、25μLの検出緩衝液(1x検出抗体を含む)を各ウェルに加えた。プレートを密閉し、上記のとおり室温で振盪しながら1時間インキュベートした。
【0122】
次いで、AKT二重プレートを吸引し、300μLの1xMSD洗浄緩衝液で4回洗浄した。最終洗浄液を吸引した後、150μLの1x読み取り緩衝液(二重蒸留水に希釈した4x読み取り緩衝液)を各ウェルに加えた。プレートは、MSD Workbenchソフトウェアを使用して、SECTOR(商標)Imager 6000上で読み取った。
【0123】
(d) 集団細胞増殖の測定
細胞培養
初代線維芽細胞を、100μLの完全DMEM中1ウェル当たり2,500細胞で、96ウェル平底プレートに播種した。細胞は、外ウェルには播種せず、外ウェルは200μLの完全DMEMのみで満たした。細胞は、37℃、100%湿度、10%CO2で約16〜20時間インキュベートした。細胞上の培地を、FBSを含まないDMEMに取り替え、37℃、100%湿度、10%CO2で約24時間インキュベートした。
【0124】
2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを、DMSO中の10倍連続希釈により、開始濃度の30mMから8回希釈した。次いで、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを、10%FBSを加えたDMEM中で1:1000にさらに希釈した。細胞から培地を除去し、1希釈当たり6ウェルに100μLの化合物を加えた。さらに6ウェルに、10%FBSと0.1%DMSOを加えた培地を入れ、6ウェルに0.1%DMSOを加えた培地を入れた。ウェルA2-6は、0.1%DMSOを加えた培地を含み、A7-11は、10%FBSと0.1%DMSOを加えた培地を含んでいた(無細胞対照)。プレートを、37℃、100%湿度、10%CO2で72時間インキュベートした。T0(時間ゼロ)対照プレートは、FBSを含まない培地を含む6ウェルと、10%FBSを加えた培地を含む6ウェル、ならびに前述のものと同じ無細胞対照を有していた。
【0125】
MTSアッセイ
20μLのCellTiter 96(商標)水性非放射性細胞増殖アッセイ(MTS)を読み取るため、全ウェルに試薬(Promega社 No. G5430)を加えた。プレートを、さらに2時間、37℃、100%湿度、10%CO2でインキュベートし、次いでSoftmax Pro v5ソフトウェアを使用して、Versamaxマイクロプレートリーダー上で490nmにて読み取った。製造者の説明書に従って培地対照(無細胞)ウェルから得られた値を引くことにより、FBSの変色について読み取り値を修正した。
【0126】
(e) プロコラーゲン蓄積の測定
細胞培養条件
培養した非IPF細胞株(3.1.2節に記載)を使用して、TGFβ誘導性筋線維芽細胞分化後に、細胞培養上清中のプロコラーゲン蓄積を調べた。
【0127】
細胞を、1mLの完全DMEM中1ウェル当たり100,000細胞で12ウェルプレート(NUNC社、No.150628)に播種し、100%コンフルエンスに到達するまでインキュベートした(4〜5日間)。コンフルエント細胞から培地を除去し、1mLの前インキュベーション培地(4mMのグルタミン、50μg/mLのアスコルビン酸、0.2mMのプロリンおよび0.4%のFBSを含有するDMEM)と置換し、さらに24時間インキュベートした。新鮮な前インキュベーション培地を3ウェルに加え、インキュベーション期間の開始時に培地に含まれるヒドロキシプロリンのバックグラウンドレベル(T0)を決定するための分析用に直ぐに回収した。
【0128】
TGFβは、pAKTのゆっくりとした活性化を誘導し、この活性は、TGFβ添加の24時間後にピークに達する(データ示さず)。このことは、AKTの活性化がTGFβ駆動性筋線維芽細胞分化(通常、18〜24時間で生じる;データ示さず)の後に最大になることを示唆している。分化した筋繊維芽細胞中で、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがPI3K活性化に与える効果を調べるため、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの添加の24時間前に、最初に線維芽細胞をTGFβで分化させた。2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが、TGFβの非存在下でプロコラーゲン産生に与える効果を、さらに24時間または48時間評価した。
【0129】
血清飢餓の24時間後、線維芽細胞をTGFβ1(1ng/mL、24時間)(R&D社、No.101-B1)で刺激して筋線維芽細胞分化を誘導した。その後、TGFβ1を除去するか、または補充し(完全無血清培地変更±TGFβ(1ng/ml)による)、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド(0.1%DMSO中、最終濃度3nMまたは30nM)を加えた。2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの希釈液を、0.03Mのストックから、0.1%DMSO中の連続10倍希釈およびさらなる1000倍希釈によって調製した。分化した筋線維芽細胞の培養液を、37℃、100%湿度、10%CO2でさらに24〜48時間インキュベートした。実験的レジメンの概略図については、図1および図2を参照されたい。
【0130】
細胞回収
各々のインキュベーション時点の最後に細胞上清を回収し、-80℃で凍結させた。細胞層を、250μLの0.25%トリプシン-EDTAで5分間インキュベートすることによって分離し、DMEM中1mL懸濁液を作製した。Sceptre 60μMセンサーを使用して、細胞懸濁液上で細胞計数を行った。
【0131】
この細胞上清を室温で解凍し、4℃にて、67%(v/v)エタノール中でタンパク質を一晩沈殿させた。
【0132】
エタノール不溶性画分中の回収
沈殿したタンパク質をデュラポア(Durapore)ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜フィルター(孔サイズ0.45μm)(HV型、Millipore社、イギリス;No.HVLP02500)上への真空濾過によって回収し、付着しているタンパク質を、1.5mLのエタノール(67%(v/v))で2回洗浄した。付着タンパク質を有するフィルターを、2mLの6M HClを含むパイレックス加水分解管に移した。次いで、エタノール不溶性画分を110℃で16時間加水分解し、約70mgの炭と混合して、デュラポア(Durapore)膜フィルター(孔サイズ0.65μm)(DA型、Millipore社、イギリス; DVPP02500)上で濾過することによってサンプルを脱色した。脱色された加水分解物のアリコート(100μl)を1.5mLの遠心管に移し、speed vac concentrator(Savant社、SPD 131DDA、Thermo Electron Corporation社、ケンブリッジ、イギリス)を用いて蒸発乾固した。
【0133】
サンプルの誘導体化
細胞培養上清中のヒドロキシプロリン蓄積は、プロコラーゲン産生の尺度として用いられる。ヒドロキシプロリンは、プロコラーゲンの一次配列の約12%に相当し、コラーゲン三重へリックスの形成に不可欠である。ヒドロキシプロリンは、任意の他のタンパク質中では有意レベルでは存在しない。細胞培養加水分解物中のヒドロキシプロリンのレベルを、7-クロロ-4-ニトロベンゾ-オキサ-1;3-ジアゾール(NBD-Cl)(Sigma社;No.17239-0050)による誘導体化の後、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量した。
【0134】
ヒドロキシプロリン標準:トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(PHPRO)(Sigma社;No.H5534)の標準サンプルを、-20℃にて10μL(250μM)アリコートで凍結保存する。10μLアリコートを、990μLのMilli-Q水(Milli-Q Plus; Millipore社、イギリス)に希釈し、標準として使用した。カラムにロードしたヒドロキシプロリン(Hyp)標準の最終量は50pmolであった。
【0135】
サンプル:Milli-Q水(100μL)を加水分解物の乾燥アリコートに加え、4℃で一晩再水和させた。100μLの各標準およびサンプルに、100μLの0.4Mテトラホウ酸カリウム緩衝液(HClでpH9.5まで調整)および100μLのNBD-Cl(メタノール中36mM)を加えた。これらを十分にボルテックス混合し、37℃(暗中)で20分間インキュベートした。この反応は、50μLの1.5M HClと150μLのHPLCランニング緩衝液A(150mLのMilli-Q水に溶解させた5.68gの酢酸ナトリウム、および65mLのアセトニトリル、オルトリン酸でpH6.4に修正して250mLとした)の濃縮溶液(3.33X)を加えて、十分にボルテックス混合することによって停止させた。反応混合物を1mlシリンジに引き上げ、HPLC低デッドボリュームフィルター(孔サイズ0.22μm、GV型;No.611-0716 Millipore社、イギリス)を通して濾過してプラスチック製のインサートに入れた。このインサートを茶色のガラス管(Laboratory Sales社、ロシュデール、イギリス)に入れ、キャップで覆って、底を穏やかにはじくことによって気泡を放出させた。次いで、これらのバイアルをHPLC装置中の自動サンプラーに配置し(Beckman Coulter社、イギリス)、サンプルをHPLCカラムに連続的に注入し、表1に記載されるとおりにアセトニトリル勾配で溶出した。
【表1】
【0136】
データ分析
(a) 2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドに対する濃度応答曲線:pAKT応答
pAKT応答の分析のため、SECTOR Imagerから得られた生データを計算し、リン酸化された全AKTの割合を得た。増加logモル濃度の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの存在下の割合値が得られた。各実験において、各化合物濃度(または無化合物対照)の3ウェルの平均とSEMを得た。データは、化合物を含まない20%FCS(%FCS対照)の存在下で得られた最大値の%として表した。各実験について、4パラメーター曲線フィット(Prism)を使用して非線形回帰曲線を適合させ、これを用いてIC50を計算した。
【0137】
(b) 2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドに対する濃度応答曲線:MTSアッセイ
各実験について、最大適合(上方漸近線)値を100%参照応答として使用した。増加logモル濃度の2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの存在下のMTSシグナル(培地バックグラウンド値を引いたもの)を、最大漸近線の%として表した。無化合物/FBS対照値もプロットした。各実験において、各化合物濃度(または無化合物対照)の5つまたは6つの複製の平均とSEMを得た。各細胞株について、4パラメーター曲線フィット(Prism)を使用して非線形回帰曲線を適合させ、これを用いてIC50を計算した。
【0138】
カスパーゼ3/7の活性化と並行して細胞増殖が測定された一部の実験において、無血清培地を10%FBSに変更して化合物を加えたときにT0読み取りを行った。化合物を用いて72時間のインキュベーション後にT0より下回ったMTS値は、細胞死を示すと考えられた。この実験シリーズについて、IC50曲線の作成のため、値はT0に対して100%として正規化される。
【0139】
(c) 2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが筋線維芽細胞上清中のプロコラーゲン蓄積に与える効果
カラムに注入された各100μlサンプル中のヒドロキシプロリン(Hyp)含量の定量は、各実験の開始時と終了時に、各サンプルについて得られたクロマトグラムのピーク面積を、同一条件下で誘導体化されて分離された標準溶液から作成されたクロマトグラムのピーク面積に対して比較することによって測定した。誘導体化されたヒドロキシプロリン標準溶液は、50pmol/Lのヒドロキシプロリンに相当し、キャリブレーションとして使用した。全コラーゲンを、細胞数/mLに対して正規化し、pg/細胞として表し、以下の式から導出した:
全コラーゲン = (サンプルピーク面積/標準ピーク x 50)* x 20** x 8.1967*** x 131.135****/標準細胞数。
【0140】
導出した補正因子:
*= カラム上のヒドロキシプロリンのpmolの計算(50pmol標準に対して正規化した)
**= 1ウェル当たりのヒドロキシプロリンのpmolの補正(全ウェルの1/20(v/v)のヒドロキシプロリンをカラム上に注入した)
*** ヒドロキシプロリンで説明されるコラーゲンの比の補正因子。
【0141】
**** ヒドロキシプロリンの分子量。
【0142】
データは、1処理当たり3ウェルの群において得られる値の平均±SEMを表す。群比較について、2元配置分散分析(2-Way ANOVA)を用いて統計的評価を実施した。0.05未満のp値が有意であるとみなされた。
【0143】
T0値は、インキュベーション期間の開始時に培地中に存在するヒドロキシプロリンを示す。
【0144】
結果
(i) 2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがAKTリン酸化に与える効果
Ser473位におけるAKTリン酸化の阻害(pAKT)を測定することによってPI3K活性の細胞内阻害を測定した。AKTリン酸化の程度は、PI3K活性の間接的尺度である。PI3K活性化の生成物であるPIP3は、AKTの細胞膜への局在化に必要とされ、AKTは細胞膜上において、T308位で3-ホスホイノシチド-依存性キナーゼ-1(PDK1)によってリン酸化され、またS473位でTORC2(ラパマイシン複合体2の標的)によってリン酸化される。
【0145】
メソスケールディスカバリー(MSD)96ウェルプレートアッセイを用いて、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの存在下、20%FBSで30分間刺激した後、AKT(S473)のリン酸化反応を測定した。20%FBSの添加は、試験した全ての細胞株においてAKTリン酸化の増加をもたらした。図3は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドによるインキュベーションの後、AKTリン酸化が濃度依存的様式で減少したことを示す。計算された平均pIC50は、初代ヒト非IPFでは9.1(範囲8.8〜9.4、線維芽細胞株(n=2)、1細胞株当たりの複製継代(n=1)であり(図3(A))、IPF線維芽細胞では8.8(+/- 0.1 SEM、細胞株(n=5)、1細胞株当たりの複製継代(n=4以下)であった(図3(B))。
【0146】
(ii) 2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが細胞集団増殖に与える効果(MTSアッセイ)
細胞増殖の阻害に対する2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの効力を、ミトコンドリア活性を細胞数のサロゲート(surrogate)として定量化するCellTiter 96(商標)水性非放射性細胞増殖アッセイを使用した標準化72時間アッセイによって測定した。
【0147】
10%FBSに対する線維芽細胞の曝露は、72時間を超えて細胞増殖を増加させた。図4(AおよびB)に示されるデータは、初代ヒト肺線維芽細胞の増殖が、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを用いたインキュベーションの後、濃度依存的様式で低下したことを示す。
【0148】
計算された平均pIC50は、初代ヒト非IPFでは7.7(±0.2 SEM、線維芽細胞株(n=2)、1細胞株当たりの複製継代(n=5))(図4(A))であり、IPF線維芽細胞では7.5(+/- 0.1 SEM、細胞株(n=5)、1細胞株当たり複製継代(n=5まで))であった。>30nMの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドの濃度では、10%FBSの存在下における線維芽細胞のMTSシグナルは、無FBS対照を下回るように見えた。このことは、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが比較的高濃度で細胞数の低下をもたらしたことを示唆し、細胞死の可能性を示す。
【0149】
(iii) 2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドがプロコラーゲン合成に与える効果
TGFβ誘導性分化の後に、筋線維芽細胞に分化した初代ヒト肺線維芽細胞において、培養上清中のヒドロキシプロリンの蓄積を測定することによって、プロコラーゲン産生を評価した。
【0150】
2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドは、筋線維芽細胞へのTGFβ(1ng/ml)誘導性分化の後、初代ヒト肺線維芽細胞によって産生されるプロコラーゲンのレベルを有意に低下させた(図5および図6)。この阻害効果は、筋線維芽細胞分化の後にTGFβを培地から除去した場合に最も顕著であった(図5(AおよびB))。これらの実験では、TGFβの除去にも関わらず、48時間までプロコラーゲン蓄積が持続する。プロコラーゲンの蓄積は、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドを用いたインキュベーションに対して感受性であった(3nMおよび30nM、24時間および48時間、線維芽細胞株(n=2))。2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドによるプロコラーゲン蓄積の平均パーセント阻害は、表2(AおよびB)中で、2つの線維芽細胞株についてまとめられる。
【表2】
【0151】
TGFβが化合物と同時にインキュベーション培地に補充された実験では、プロコラーゲン産生の阻害は、それほど顕著ではなかった(図6(AおよびB))。2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドによるプロコラーゲン蓄積の平均パーセント阻害は、表3(AおよびB)中で、2つの線維芽細胞株についてまとめられる。
【表3】
【0152】
考察
2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドは、PIP3の下流標的であるホスホ-AKTのレベルを濃度依存的様式で減少させた。線維芽細胞の増殖は、増加レベルの2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドによっても低下した。これらの結果はいずれも、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが、>300nMの濃度において線維芽細胞増殖を低下させ、線維芽細胞アポトーシスを増加させる能力を有することを示唆する。コラーゲンレベルの分析は、TGFβ刺激によって筋線維芽細胞への分化が駆動されている細胞中で、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが、TGF-β誘導性コラーゲン産生を妨げることを示唆する。
【0153】
まとめると、これらのデータは、2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミドが、IPFの進行、すなわち線維芽細胞増殖およびコラーゲン産生において重要な機構を強く阻害することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】