特表2015-509558(P2015-509558A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-509558(P2015-509558A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】陽極および電解槽の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20150303BHJP
   C25C 1/12 20060101ALI20150303BHJP
【FI】
   C25C7/02 302G
   C25C1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-560418(P2014-560418)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月9日
(86)【国際出願番号】FI2013050242
(87)【国際公開番号】WO2013132157
(87)【国際公開日】20130912
(31)【優先権主張番号】20120075
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】FI
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】514160582
【氏名又は名称】オウトテック (フィンランド) オサケ ユキチュア
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC (FINLAND) OY
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】ニエミネン、 ビルレ
(72)【発明者】
【氏名】バーカー、 マイケル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ビルタネン、 ヘンリ
【テーマコード(参考)】
4K058
【Fターム(参考)】
4K058AA13
4K058BA21
4K058BB04
4K058ED01
4K058ED02
(57)【要約】
本発明は、電解液を保持するための槽壁(2)および槽底部(3)と電解液供給手段(6)とを有する電解槽(4)における電解採取工程用陽極(1)に関するものであり、陽極は、陽極を支持するハンガーバー(7)と、陽極へ電流を送る導電ロッド(8)と、少なくとも部分的に導電性の構体を有する陽極体(9)とを備え、陽極体は電解液の浸透が可能であって少なくとも部分的に電気触媒コーティングで被覆され、その場合、陽極(1)に関連して非導電性素子(10、12、14)が配設され、これは、少なくともその一つの側が陽極体(9)の導電性構体で制限され、非導電性素子は電解液面の高さ(11)から距離Aのところに配設され、その場合、非導電性素子は、陽極を槽(4)に取り付ける手段をなす。本発明はさらに、金属の電解採取において使用される電解槽の運転方法にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を保持するための槽壁(2)および槽底部(3)と電解液供給手段(6)とを有する電解槽(4)における電解採取用陽極(1)であって、該陽極を支持するハンガーバー(7)と、該陽極へ電流を送る導電ロッド(8)と、少なくとも部分的に導電性の構体を有し前記電解液が浸透可能であって、少なくとも部分的に電気触媒コーティングで被覆された陽極体(9)とを含む陽極において、該陽極(1)に関連して非導電性素子(10、12、14)が配設され、該非導電性素子は、少なくともその一つの側が前記陽極体(9)の導電性構体に制限され、前記非導電性素子は、前記電解液面の高さ(11)から距離Aのところに配設され、その場合、該非導電性素子は、該陽極を前記電解槽(4)へ取り付ける手段となることを特徴とする電解採取用陽極。
【請求項2】
請求項1に記載の陽極において、前記長さAは0.3〜2メートルの間になるよう配設されていることを特徴とする陽極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の陽極において、該陽極(1)の非導電性素子(10、14)は、前記陽極体(9)の一部を電気触媒コーティングから除外することで形成されていることを特徴とする陽極。
【請求項4】
請求項3に記載の陽極において、前記陽極表面の少なくとも2%は、電気触媒コーティングから除外されていることを特徴とする陽極。
【請求項5】
請求項1ないし2のいずれかに記載の陽極において、前記非導電性素子は、前記陽極体(9)に取り付けられた少なくとも1つの非導電体(12)で作られていることを特徴とする陽極。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記槽底部にある固定用素子(13)によって前記電解槽(4)に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記槽壁にある固定用素子(13)によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記電解液供給手段(6)にある固定用素子(13)によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、該陽極(1)に隣接する陰極に取り付けられた固定用素子(13)によって前記電解槽内に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の陽極において、前記陽極体(9)の導電性構体は、好ましくはT1、Ni、Pb、ZrもしくはNbのうちの少なくとも1つを含むメッシュ構造に構成されていることを特徴とする陽極。
【請求項11】
請求項1に記載の陽極において、前記電気触媒コーティングは、白金族の金属酸化物もしくは金属酸化物の混合物で構成されていることを特徴とする陽極。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の陽極において、前記非導電性素子(10、12、14)の上部(16)と陽極底面(15)との間の高さBは、0.05〜0.3メートルの間になるよう配設されていることを特徴とする陽極。
【請求項13】
槽壁(2)および槽底部(3)を有する電解槽(4)において電解溶液(5)から金属を陰極表面に電着させる際、金属の電解採取において使用する電解槽の運転方法であって、該電解槽(4)は陽極(1)および陰極が交互に浸される電解液(5)を含み、前記陽極は、該陽極に電流を送る導電ロッドへハンガーバー(7)により支持され、その場合、前記陽極体(9)は、電解液が浸透可能であって少なくとも部分的に導電性の構体と電気触媒コーティングとを有する電解槽の運転方法において、前記陽極は、該陽極(1)に関連して配設された非導電性素子(10、12、14)によって前記電解槽(4)の内部に取り付けられ、前記非導電性素子は、その少なくとも一つの側が前記陽極体の導電性構体で制限され、該非導電性素子は、電解液面の高さ(11)から距離Aのところに配設されていることを特徴とする電解槽の運転方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子(13)によって前記電解槽底部(3)へ取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子によって前記電解槽の壁(2)に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子(13)によって前記電解液供給手段(6)に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子(13)によって該陽極に隣接する陰極に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項18】
請求項13ないし17のいずれかに記載の方法において、前記電解液は、少なくとも2つのマニホールドから前記槽に供給され、その際、他方のマニホールドは前記槽の底部にあることを特徴とする運転方法。
【請求項19】
請求項1ないし12のいずれかに記載の陽極の金属銅Cuの電解採取への使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電解採取に使用する新たな種類の陽極に関するものである。本発明はまた、金属の電解採取に用いる電解槽の運転方法にも関する。
【0002】
電解採取は、電解液に溶融した金属を電流によって陰極上で還元する工程である。電解採取では、金属分を含有する電解溶液を介して電流を陽極に通し、金属分が電気メッキ工程において陰極に堆積するのでこれを抽出する。硫酸塩系電解装置に電流を流すと、陰極の表面に金属が沈殿し、酸と酸素が生成される陽極上で水が分解する。電解採取は、多数の陽極と多数の陰極が交互に配設された電解槽において行われる。電解採取の商業的利用には、単一の電解槽に非常に多くの陽極および陰極を必要とする。電解採取において使用される陽極の種類の1つは鉛系陽極であるが、これは堆積する銅の質に悪影響を与える恐れがある。このような鉛系陽極を使用する1つの大きな欠点は、溶解採取作業中に少量の鉛が陽極の表面から放出され、望ましくない粒子を溶解液中に浮遊させてしまうことである。加えて、鉛スラッジは、槽底部から定期的に、例えば45日ないし90日ごとに取り除く必要があり、この間、電解採取用槽は金属を生産しないことになる。
【0003】
電解採取工程における1つの問題は、槽電圧が比較的高く、エネルギー消費量が増大してしまうことである。従前の陽極の電解採取における高エネルギー消費と低耐食性のため、電解採取の際により良好な陽極材を探す必要があった。混合金属酸化物(MMO)被覆の陽極は、通常はチタニウムもしくはニッケルのバルブ金属基板に導電性混合金属酸化物コーティングを施したものである。寸法安定性陽極すなわちDSA(商標)は周知の種類のMMO被覆陽極である。硫酸塩系電解採取においてMMO被覆陽極を使用した場合、鉛系陽極を使用した場合よりも低い槽電圧で槽を運転することができる。1つの種類の寸法安定性陽極が米国特許第4134806号公報に開示されているが、その概念は、DSA陽極および陰極の電流分布を境界領域におけるDSA陽極の構体を厚くすることによって安定させることである。米国特許出願公開公報US20100276281は、電解採取槽に使用する陽極を開示している。この公報によれば、電極は、少なくとも1本の導電ロッドおよび基板を含むハンガーバーおよび電極体と、このハンガーバーおよび少なくとも1本の導電ロッドを連結する連結部と、連結部を絶縁するシールとを有している。電極は少なくとも1つの陥凹穴を含むハンガーバーを有し、電極体は前記少なくとも1つの陥凹穴へ圧入された少なくとも1本の導電ロッドと、この導電ロッドに接続された基板とを有している。
【0004】
過去の研究開発は、銅の電解採取のプラント面積当たりの生産能力を増して、電解採取工程の費用対効果に直接影響を及ぼすやり方に焦点を絞ってきた。電解プラントおよび電解槽の生産性を増すためには、電解中の電流密度を増して、陰極における銅の堆積率を高くすることが望ましい。陰極側における電流密度は堆積する銅の質で制約を受けるが、これは、陽極上で過電圧が増すと電流密度が大きくなってより多くの不純物が堆積するためである。加えて、電流密度を大きくすると鉛系陽極からの鉛の腐食速度が増すことになり、したがって、より多くの鉛が電解液内を循環し、鉛が陰極に含有される可能性があり、槽の清掃頻度が増して鉛を調整する必要があり、生成速度が低下する。
【0005】
クレーンおよび剥離機を備え、いわゆるタンクハウスに組み込まれた電解プラントおよび陰極処理プラントは投資および運転費用が高いため、精錬電解と抽出/電解採取電解の両方の経済効率を高める試みがかなり前から行われている。これは、電気分解の効率と陰極の運動回数、したがって陰極当たりの銅の堆積量に大きく左右される。タンクハウスの資本支出を少なくする1つの方法は、陰極の長さを増すことによるものであり、したがって電流密度、プラント面積または電解槽の数を増さないでも槽当たりの生産能力が増す。
【0006】
国際公開公報WO 2005/080640は、銅を電気化学的に採取もしくは精錬する工程を開示し、その発明概念は陰極当たりの銅の付着量を増すことにある。そのような工程およびプラントの経済効率を増すためには、同公報によれば、電解作業中に少なくとも1つの陰極を少なくとも1.2メートルを超える長さまで電解液に浸すことを提案している。
【0007】
長大な陰極を使用すると、依然として問題発生の可能性がある。鉛系陽極を巨大な陰極、すなわち長大な陰極とともに使用すると、電解採取中に陽極の反りが発生し、工程に短絡が発生する。とくに槽内の最初と最後の陽極の場合、電流が陽極の片側にしか流れないという問題が発生する可能性があり、これによって陽極の反りもしくはクリープ変形が生じることがある。反りは短絡回路数の増加および電流効率の低下につながる。鉛系陽極を巨大陰極とともに使用すると、槽から鉛系スラッジを除去する槽保守作業をより頻繁に行う必要がある。加えて、電流分布を均一にするためには、各陽極とも、陰極から等間隔に配置することが有利である。このような課題を解決し、もしくは問題を回避するためには、長尺の陰極とともに使用され槽内の正しい位置に配置される剛性構造の新たな種類の陽極を開発する必要があった。
【発明の目的】
【0008】
本発明は、とくに長尺(1.2m以上)の「巨大」陰極とともに陽極を使用する場合の電解採取工程用であって、電解槽内で陽極の位置を安定させる問題を回避する陽極を提供することを目的とする。
【発明の簡単な説明】
【0009】
本発明の陽極および方法は各独立請求項に記載する事項を特徴とする。本発明の好ましい実施例は従属請求項に記載する。
【0010】
本発明は、電解液を保持するための槽壁および底部槽と電解液供給手段とを有する電解槽における電解採取工程用の陽極を提供するものである。陽極は、陽極を支持するハンガーバーと、陽極へ電流を送る導電ロッドと、少なくとも部分的に導電性の構体を有する陽極体とを含み、陽極体は、電解液の浸透可能であって電気触媒コーティングによって少なくとも部分的に被覆され、その場合、陽極に関連して非導電性素子が配設され、非導電性素子は、その一つの側が陽極の導電構体で制限され、非導電性素子は、電解液面の高さから距離Aのところに配設され、その際、非導電性素子は陽極を槽に取り付ける手段となる。本発明に開示する陽極を使用することによって、電解採取工程における多くの問題を回避することができる。本発明の実施例によれば、長さAは0.3〜2メートルの間になるよう配設されるが、これは電極の大きさと工程パラメータとによって決まる。
【0011】
本発明の一実施例によれば、陽極の非導電性素子は、電気触媒コーティングから陽極体の一部を除外して形成される。例えば、陽極表面の少なくとも2%が電気触媒コーティングから除外される。
【0012】
本発明の一実施例によれば、非導電性素子は、陽極体に取り付けられた少なくとも1つの非導電体で作られている。
【0013】
本発明の他の実施例によれば、陽極は、槽底部、槽壁、電解液供給手段に配置され、または陽極に隣接する陰極に取り付けられた固定用素子によって電解槽に取り付けられている。
【0014】
本発明によれば、陽極体の導電性構体は、好ましくはTi、Ni、Pb、Ta、ZrもしくはNbのうちの少なくとも1つを含むメッシュ構造から成り、電気触媒コーティングは白金族金属酸化物もしくは金属酸化物の混合物から成る。
【0015】
本発明の他の実施例によれば、非導電性素子の上部と陽極底面との間の高さBは0.05〜0.3mの間になるよう配設されている。
【0016】
本発明はさらに、槽壁および槽底部を有する電解槽において電解溶液から金属を陰極表面に電気的に堆積させる際、金属の電解採取に使用する電解槽の運転方法も説明する。電解槽は陽極と陰極が交互に浸される電解液を含み、陽極は、陽極へ電流を送る導電ロッドへハンガーバーによって支持され、その場合、陽極体は、電解液の浸透可能であって少なくとも一部が導電性の構体と電気触媒コーティングとを有し、陽極は、陽極に関連して配設された非導電性素子によって電解槽内に取り付けられ、非導電性素子は、少なくともその一つの側が陽極体の導電性構体で制限され、非導電性素子は、電解液面の高さから距離Aのところに配設されている。本発明の実施例によれば、陽極は固定用素子によって電解槽の底部に取り付けられている。
【0017】
本方法のさまざまな実施例によれば、陽極は電解槽の壁へ、電解液供給手段へ、もしくは陽極に隣接する陰極へ固定用素子によって取り付けられている。
【0018】
本発明の一実施例によれば、電解液は、少なくとも2つのマニホールドのから電解槽に供給され、その際、他方のマニホールドは槽の底部にある。
【0019】
本発明の一実施例によれば、陽極は金属銅、すなわちCuの電解採取に使用可能である。
【0020】
本発明による陽極の使用には多くの利点がある。陽極は、槽内に容易に取り付けることができ、陽極の反りが回避され、本発明による陽極の使用により槽内の電解液は良好な混合効果が達成される。さらに、陰極上の銅の成長がより均一になる。電解液を槽の中央部に垂直に供給しながら浸透可能陽極を使用すると、良好な電解液の混合を得られ、金属イオンの濃度勾配を回避することができる。陽極の表面の一部だけに電気触媒コーティングを設けることによって、槽内へ陽極をより良好に取り付け、固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の更なる理解を促ために提示し本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施例を図説するものであり、明細書とともに本発明の原理の説明に役立てるものである。
図1】陽極の非導電部が陽極体の一部をなす本発明による陽極を模式的に示す図である。
図2】非導電性素子を陽極に取り付けた陽極の他の実施例を示す図である。
図3a】固定用素子を電解槽の底部に配置した本発明による陽極を模式的に示す図である。
図3b】固定用素子を電解槽の壁に配置した本発明による陽極を模式的に示す図である。
図3c】固定用素子を電解液供給手段に配置した本発明による陽極を模式的に示す図である。
図3d】非導電性素子を陽極に取り付けるとともに固定用素子に取り付けた本発明による陽極を模式的に示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0022】
以下に本発明の実施例を詳細に参照し、その例を添付図面に図説する。
【0023】
図1および図2は銅などの金属の電解採取用陽極1を示し、これは、槽壁3および槽底部4を有して電解液5を保持する電解槽2内にある。陽極は、電流を陽極へ流す導電ロッド8へ陽極を支持するためのハンガーバー7と、電解液の浸透が可能で少なくとも部分的に導電性の構体および電気触媒コーティングを有する陽極体9とを含む。本発明によれば、非導電性素子10、12、14は、陽極1に対して距離Aのところに配設され、そのとき電解液面高さ11からの距離Aは0.3〜2メートルに設定されている。これは使用される陽極の大きさによって決まる。非導電性素子10、12、14は、陽極1を電解槽4内に取り付ける手段となるが、これは長尺の陽極を長尺の陰極とともに使用する場合に重要になる。長尺の陰極を使用する場合、陽極は位置が固定され堅固であって、発生し得る陽極の反りを防止することが大切である。非導電性素子は、工程の必要性に基づいて選択可能な非導電性の適切な材料から成る。非導電性素子は、複数の部品で構成し、もしくは1部品で作ることが可能である。
【0024】
図3a、図3b、図3cおよび図3dは、陽極を電解槽4内に取り付けるさまざまな方式を示す。陽極の非導電性素子10、12、14は、陽極1を例えば槽底部3に、壁2へ、もしくは電解液供給手段6に固定用素子13によって取り付ける手段をなし、素子13は非導電性素子に取り付けられる。また、陽極を電解槽(図示しない)内で陰極に隣接して取り付けることもできる。非導電性素子を用いて陽極を陰極に取り付けると、これは、電解工程が機能するように各電極を互いに一定の間隔で並べて分離するのに用いる公知のスペーサとして非導電性素子が働くことを意味している。固定用素子13を陽極の両側に配置する場合に陽極を取り付ける1つの方法を図3bに示す。その場合、固定素子は非導電性素子14に、またその他の側から電解槽の壁2に取り付けられている。図3cに示すように固定用素子13を電解液供給手段6に取り付けることによって、電解槽内にスペースを確保する。
【0025】
長尺の陽極を使用する場合、陽極は剛性で直状であり、隣接の各陰極から均等な間隔に配置することが重要である。本発明によれば、陽極は、支持固定用素子13によって電解槽内に固定することができ、支持固定用素子は、何らかの形状(例えばVネック)で、非導電性素子10、12、14へ取り付けるのに適したものである。電解槽は複数の金属分の電解採取に使用することができる。ここに説明した電解採取槽をさまざまな種類の金属分の抽出用に構成してもよい。図3dは、非導電性素子12が陽極に取り付けられ、さらに固定用素子13に取り付けられた陽極を示す。非導電性素子は陽極の次にある陰極に取り付け、その場合、非導電性素子は、陰極ガイドとして機能し、すなわち陰極の回収中に陰極を正しい位置へ案内して陰極と陽極体との間の何らかの接触を防ぐことができる。
【0026】
本発明によれば、電解液面の高さ11と非導電性素子との間の距離、すなわち長さAは、0.3〜2メートルの間になるようにし、その場合、非導電性素子10、12、14の上部16と陽極底面15との間の高さBは0.05〜0.3メートルの間になる。したがって陽極は、長尺の陰極とともに使用しても十分に浸される。陽極1の非導電性素子10、12、14を形成する1つの方法は、陽極体9から電気触媒コーティングを除外することによるものであり、その際、陽極1の表面の少なくとも2%を電気触媒コーティングがないようにする。表面の一部を導電性電気触媒面でなくしておくと、電流を遮断することができ、陰極底部に端縁堆積物が成長する問題を生ずることなく陽極を槽底部に配することができる。陽極体の導電性構体は、例えば電解液が浸透可能なメッシュ構造に構成され、その場合、陽極メッシュは、好ましくは次の金属、すなわちTi、Ni、Pb、Ta、ZrもしくはNbのうちの1つから成る。触媒コーティングは、白金族の金属酸化物から成ることが好ましい。
【0027】
技術の進歩につれて本発明の基本概念をさまざまに実現可能であることは、当業者に明らかである。したがって、本発明およびその実施例が上述の各例に限定されることはなく、特許請求の範囲内で変化させてもよい。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
【手続補正書】
【提出日】2014年1月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を保持するための槽壁(2)および槽底部(3)と電解液供給手段(6)とを有する電解槽(4)における電解採取用陽極(1)であって、該陽極を支持するハンガーバー(7)と、該陽極へ電流を送る導電ロッド(8)と、少なくとも部分的に導電性の構体を有し前記電解液が浸透可能であって、少なくとも部分的に電気触媒コーティングで被覆された陽極体(9)とを含む陽極において、該陽極(1)に関連して非導電性素子(10、12、14)が配設され、該非導電性素子は、少なくともその一つの側が前記陽極体(9)の導電性構体に制限され、該陽極(1)の非導電性素子(10、14)は、前記陽極体(9)の一部を電気触媒コーティングから除外することで形成され、前記非導電性素子は、前記電解液面の高さ(11)から距離Aのところに配設され、その場合、該非導電性素子は、該陽極を前記電解槽(4)へ取り付ける手段となることを特徴とする電解採取用陽極。
【請求項2】
請求項1に記載の陽極において、前記長さAは0.3〜2メートルの間になるよう配設されていることを特徴とする陽極。
【請求項3】
請求項に記載の陽極において、前記陽極表面の少なくとも2%は、電気触媒コーティングから除外されていることを特徴とする陽極。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載の陽極において、前記非導電性素子は、前記陽極体(9)に取り付けられた少なくとも1つの非導電体(12)で作られていることを特徴とする陽極。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記槽底部にある固定用素子(13)によって前記電解槽(4)に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記槽壁にある固定用素子(13)によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記電解液供給手段(6)にある固定用素子(13)によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載の陽極において、該陽極は、該陽極(1)に隣接する陰極に取り付けられた固定用素子(13)によって前記電解槽内に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載の陽極において、前記陽極体(9)の導電性構体は、好ましくはT1、Ni、Pb、ZrもしくはNbのうちの少なくとも1つを含むメッシュ構造に構成されていることを特徴とする陽極。
【請求項10】
請求項1に記載の陽極において、前記電気触媒コーティングは、白金族の金属酸化物もしくは金属酸化物の混合物で構成されていることを特徴とする陽極。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の陽極において、前記非導電性素子(10、12、14)の上部(16)と陽極底面(15)との間の高さBは、0.05〜0.3メートルの間になるよう配設されていることを特徴とする陽極。
【請求項12】
槽壁(2)および槽底部(3)を有する電解槽(4)において電解溶液(5)から金属を陰極表面に電着させる際、金属の電解採取において使用する電解槽の運転方法であって、該電解槽(4)は陽極(1)および陰極が交互に浸される電解液(5)を含み、前記陽極は、該陽極に電流を送る導電ロッドへハンガーバー(7)により支持され、その場合、前記陽極体(9)は、電解液が浸透可能であって少なくとも部分的に導電性の構体と電気触媒コーティングとを有する電解槽の運転方法において、前記陽極は、該陽極(1)に関連して配設された非導電性素子(10、12、14)によって前記電解槽(4)取り付けられ、前記非導電性素子は、その少なくとも一つの側が前記陽極体の導電性構体で制限され、該非導電性素子は、電解液面の高さ(11)から距離Aのところに配設されていることを特徴とする電解槽の運転方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子(13)によって前記電解槽底部(3)へ取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子によって前記電解槽の壁(2)に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子(13)によって前記電解液供給手段(6)に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子(13)によって該陽極に隣接する陰極に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項17】
請求項13ないし16のいずれかに記載の方法において、前記電解液は、少なくとも2つのマニホールドから前記槽に供給され、その際、他方のマニホールドは前記槽の底部にあることを特徴とする運転方法。
【請求項18】
請求項1ないし11のいずれかに記載の陽極の金属銅Cuの電解採取への使用。
【手続補正書】
【提出日】2014年9月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を保持するための槽壁および槽底部と電解液供給手段とを有する電解槽における電解採取用陽極であって、該陽極を支持するハンガーバーと、該陽極へ電流を送る導電ロッドと、少なくとも部分的に導電性の構体を有し前記電解液が浸透可能であって、少なくとも部分的に電気触媒コーティングで被覆された陽極体とを含む陽極において、該陽極に関連して非導電性素子が配設され、該非導電性素子は、少なくともその一つの側が前記陽極体の導電性構体に制限され、該陽極の非導電性素子は、前記陽極体の一部を電気触媒コーティングから除外することで形成され、前記非導電性素子は、前記電解液面の高さから距離Aのところに配設され、その場合、該非導電性素子は、該陽極を前記電解槽へ取り付ける手段となることを特徴とする電解採取用陽極。
【請求項2】
請求項1に記載の陽極において、前記距離Aは0.3〜2メートルの間になるよう配設されていることを特徴とする陽極。
【請求項3】
請求項1に記載の陽極において、前記陽極表面の少なくとも2%は、電気触媒コーティングから除外されていることを特徴とする陽極。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の陽極において、前記非導電性素子は、前記陽極体に取り付けられた少なくとも1つの非導電体で作られていることを特徴とする陽極。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記槽底部にある固定用素子によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記槽壁にある固定用素子によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、前記電解液供給手段にある固定用素子によって前記電解槽に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれかに記載の陽極において、該陽極は、該陽極に隣接する陰極に取り付けられた固定用素子によって前記電解槽内に取り付けられていることを特徴とする陽極。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の陽極において、前記陽極体の導電性構体は、好ましくはT1、Ni、Pb、ZrもしくはNbのうちの少なくとも1つを含むメッシュ構造に構成されていることを特徴とする陽極。
【請求項10】
請求項1に記載の陽極において、前記電気触媒コーティングは、白金族の金属酸化物もしくは金属酸化物の混合物で構成されていることを特徴とする陽極。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の陽極において、前記非導電性素子の部と陽極底面との間の高さBは、0.05〜0.3メートルの間になるよう配設されていることを特徴とする陽極。
【請求項12】
壁および槽底部を有する電解槽において電解溶液から金属を陰極表面に電着させる際、金属の電解採取において使用する電解槽の運転方法であって、該電解槽は極および陰極が交互に浸される電解液を含み、前記陽極は、該陽極に電流を送る導電ロッドへハンガーバーにより支持され、その場合、前記陽極体は、電解液が浸透可能であって少なくとも部分的に導電性の構体と電気触媒コーティングとを有する電解槽の運転方法において、前記陽極は、該陽極に関連して配設された非導電性素子によって前記電解槽に取り付けられ、前記非導電性素子は、その少なくとも一つの側が前記陽極体の導電性構体で制限され、該非導電性素子は、電解液面の高さから距離Aのところに配設されていることを特徴とする電解槽の運転方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子によって前記電解槽底部へ取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子によって前記電解槽の壁に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子によって前記電解液供給手段に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法において、前記陽極は、固定用素子によって該陽極に隣接する陰極に取り付けられていることを特徴とする運転方法。
【請求項17】
請求項13ないし16のいずれかに記載の方法において、前記電解液は、少なくとも2つのマニホールドから前記槽に供給され、その際、他方のマニホールドは前記槽の底部にあることを特徴とする運転方法。
【請求項18】
請求項1ないし11のいずれかに記載の陽極の金属銅Cuの電解採取への使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
図1および図2は銅などの金属の電解採取用陽極1を示し、これは、槽壁3および槽底部4を有して電解液5を保持する電解槽2内にある。陽極は、電流を陽極へ流す導電ロッド8へ陽極を支持するためのハンガーバー7と、電解液の浸透が可能で少なくとも部分的に導電性の構体および電気触媒コーティングを有する陽極体9とを含む。本発明によれば、非導電性素子10、12、14は、陽極1に対して距離Aのところに配設され、そのとき電解液面高さ11からの距離Aは0.3〜2メートルに設定されている。これは使用される陽極の大きさによって決まる。非導電性素子10、12、14は、陽極1を電解槽内に取り付ける手段となるが、これは長尺の陽極を長尺の陰極とともに使用する場合に重要になる。長尺の陰極を使用する場合、陽極は位置が固定され堅固であって、発生し得る陽極の反りを防止することが大切である。非導電性素子は、工程の必要性に基づいて選択可能な非導電性の適切な材料から成る。非導電性素子は、複数の部品で構成し、もしくは1部品で作ることが可能である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
図3a、図3b、図3cおよび図3dは、陽極を電解槽内に取り付けるさまざまな方式を示す。陽極の非導電性素子10、12、14は、陽極1を例えば槽底部に、壁へ、もしくは電解液供給手段6に固定用素子13によって取り付ける手段をなし、素子13は非導電性素子に取り付けられる。また、陽極を電解槽(図示しない)内で陰極に隣接して取り付けることもできる。非導電性素子を用いて陽極を陰極に取り付けると、これは、電解工程が機能するように各電極を互いに一定の間隔で並べて分離するのに用いる公知のスペーサとして非導電性素子が働くことを意味している。固定用素子13を陽極の両側に配置する場合に陽極を取り付ける1つの方法を図3bに示す。その場合、固定素子は非導電性素子14に、またその他の側から電解槽の壁2に取り付けられている。図3cに示すように固定用素子13を電解液供給手段6に取り付けることによって、電解槽内にスペースを確保する。
【国際調査報告】