特表2015-509581(P2015-509581A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-509581(P2015-509581A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】状態表示機能付き試料搬送体
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20150303BHJP
【FI】
   G01N35/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-555765(P2014-555765)
(86)(22)【出願日】2013年2月1日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】US2013024371
(87)【国際公開番号】WO2013116669
(87)【国際公開日】20130808
(31)【優先権主張番号】61/594,498
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ゲルプマン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ポラック、ベンジャミン、サミュエル
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB15
2G058GC02
2G058GC03
2G058GC06
(57)【要約】
【課題】 従来技術では、オペレータによるハンドスキャンや試料と状態シートとの照合に頼ることは、試験環境にヒューマンエラーの要素を持ち込むこととなっていた。従って、IVD環境において試料の状態に関する簡単な視覚情報を提供する方法が必要であった。
【解決手段】 本発明の搬送体は、体外診断環境用の自動化システムに用いられるものであり、内蔵処理装置と道案内能力を含んだ複数のインテリジェント搬送体を有する。オペレータの積荷と搬送体の取り扱いを補助するために、搬送体は、オペレータの可視域表面に、電子的に書き換え可能な表示装置を含む。この表示装置は、LCD、E−ink、又はその他の書き換え可能な表示装置を含み、オペレータへ積荷の状態情報を伝えるために、色、パターン、又は文字を使用する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外診断環境で使用する搬送体であって、
1以上の積荷を受け入れるブラケットと、電子的に書き換え可能な表示装置を有する少なくとも1つの表示面と、を備え、
前記電子的に書き換え可能な表示装置を自動的に更新して、前記積荷に関する状態情報の視覚表示を提供する
搬送体。
【請求項2】
前記状態情報は、中央制御装置によって無線で更新される
請求項1に記載の搬送体。
【請求項3】
前記積荷として1以上の試料容器が含まれ、
前記電子的に書き換え可能な表示装置を自動的に更新して、前記試料容器に関する状態情報の視覚表示を提供する
請求項1に記載の搬送体。
【請求項4】
前記電子的に書き換え可能な表示装置が、双安定表示装置である
請求項1に記載の搬送体。
【請求項5】
前記電子的に書き換え可能な表示装置は、当該搬送体の電気接点に一時的に電力を印加することによって、更新される
請求項1に記載の搬送体。
【請求項6】
前記電子的に書き換え可能な表示装置が、不揮発性表示装置である
請求項1に記載の搬送体。
【請求項7】
前記状態情報は、前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部における色の表示で以て伝達される
請求項1に記載の搬送体。
【請求項8】
前記状態情報は、前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部におけるパターンの表示で以て伝達される
請求項1に記載の搬送体。
【請求項9】
前記パターンが、点滅パターンを含む
請求項8に記載の搬送体。
【請求項10】
前記状態情報は、前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部における文字の表示で以て伝達される
請求項1に記載の搬送体。
【請求項11】
前記文字が、前記積荷の取り扱いに関する指示を含む
請求項10に記載の搬送体。
【請求項12】
前記状態情報は、前記積荷の優先順位を示す
請求項1に記載の搬送体。
【請求項13】
前記状態情報は、前記積荷の中の少なくとも1つの患者試料の識別情報を示す
請求項1に記載の搬送体。
【請求項14】
前記状態情報は、オペレータによる問い合わせに対する応答を示す
請求項1に記載の搬送体。
【請求項15】
前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部が、前記問い合わせに応じて、他の一群の搬送体とは異なった表示となる
請求項14に記載の搬送体。
【請求項16】
前記電子的に書き換え可能な表示装置は、前記状態情報を表示する複数の領域を備える
請求項1に記載の搬送体。
【請求項17】
前記積荷の有無を判断するための1以上のセンサを備える
請求項1に記載の搬送体。
【請求項18】
体外診断環境にて搬送される1以上の積荷の状態情報を表示する方法であって、
前記積荷に関する情報を前記積荷を保持する搬送体と関連付け、
前記積荷に関する状態情報を前記搬送体で受信し、
前記搬送体の電子的に書き換え可能な表示面に前記状態情報を表示する
ことを含む方法。
【請求項19】
前記電子的に書き換え可能な表示を更新して、前記積荷の状態情報の1以上の変化を反映させる
ことを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1以上の変化は、前記積荷に関するエラー状態を含む
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記積荷に関する情報を関連付ける過程は、
前記積荷のバーコードを読み取って該積荷の識別情報を判別し、搬送体群から該当する搬送体を区別し且つその該当する搬送体に前記積荷を入れることをオペレータに知らせるべく、その該当する搬送体の前記表示を変更することを含む
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記積荷に関する情報を関連付ける過程は、
前記搬送体の表示を変更して搬送体群から前記搬送体を区別し且つ前記搬送体に前記積荷を入れることをオペレータに知らせることを含む
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記積荷に関する情報を関連付ける過程は、
バーコード読み取り後に新しい積荷が該当する搬送体にあるかどうかを検出し、その該当する搬送体に新しい積荷が入れられたことを判断することを含む
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記積荷が問い合わせの基準に合致する場合に、その問い合わせの結果を反映させるべく、前記電子的に書き換え可能な表示を更新することをさらに含む
請求項18に記載の方法。
【請求項25】
体外診断環境にて使用される搬送体であって、
状態情報を表示するように構成された、電子的に書き換え可能な表示装置と、その電子的に書き換え可能な表示装置を更新するように構成された処理装置と、表示される前記状態情報を受信するように構成された無線受信装置と、を備え、
前記状態情報が、当該搬送体によって搬送される1以上の積荷の状態に関連する
搬送体。
【請求項26】
前記電子的に書き換え可能な表示装置が、電子インク表示装置である
請求項25に記載搬送体。
【請求項27】
前記表示は、当該搬送体の電気接点に一時的に電力を印加することによって、更新される
請求項25に記載の搬送体。
【請求項28】
前記電子的に書き換え可能な表示装置が、不揮発性表示装置である
請求項25に記載の搬送体。
【請求項29】
前記状態情報は、前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部における色の表示で以て伝達される
請求項25に記載の搬送体。
【請求項30】
前記状態情報は、前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部におけるパターンの表示で以て伝達される
請求項25に記載の搬送体。
【請求項31】
前記パターンが、点滅パターンを含む
請求項30に記載の搬送体。
【請求項32】
前記状態情報は、前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部における文字の表示で以て伝達される
請求項25に記載の搬送体。
【請求項33】
前記文字が、前記積荷の取り扱いに関する指示を含む
請求項32に記載の搬送体。
【請求項34】
前記状態情報は、前記積荷の優先順位を示す
請求項25に記載の搬送体。
【請求項35】
前記状態情報は、前記積荷の中の少なくとも1つの患者試料の識別情報を示す
請求項25に記載の搬送体。
【請求項36】
前記状態情報は、オペレータによる問い合わせに対する応答を示す
請求項25に記載の搬送体。
【請求項37】
前記電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部が、前記問い合わせに応じて、他の一群の搬送体とは異なった表示となる
請求項36に記載の搬送体。
【請求項38】
前記電子的に書き換え可能な表示装置は、前記状態情報を表示する複数の領域を備える
請求項25に記載の搬送体。
【請求項39】
前記積荷の有無を判断するための1以上のセンサを備える
請求項25に記載の搬送体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年2月3日出願の米国仮出願61/594,498(本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、研究所環境における使用を目的とした自動化システムに係り、より具体的には、臨床分析装置において能動搬送デバイスによって体外診断用患者試料を搬送するシステム及び方法に関する。本発明の具体的態様は、限定するのではないが、体外診断環境において液体試料を搬送する搬送体であって、液体試料に関する状態情報を自動的に表示する書き換え可能な電子表示装置を備えた搬送体、に最適である。
【背景技術】
【0003】
体外診断(IVD)は、患者の液体試料について実施する検査に基づいて病気を診断する支援を研究所で行うことを可能にする。体外診断には、患者の体液や膿瘍から取られた液体試料の分析により実施可能である、患者の診断及び治療に関する多様な分析試験及び検査が含まれる。これらの検査は、ほとんどの場合、患者試料を入れる管やバイアルなどの液体容器を備えた自動式の臨床化学分析装置(単に分析装置)で実施される。この分析装置は、バイアルから液体試料を取り出し、その試料を専用の反応キュベットやチューブ(総称して反応容器とする)内で各種試薬と混ぜる。いくつかの現状のシステムにおいては、分析装置にモジュール方式の仕様が採用されている。研究所自動化システムでは、1つの試料処理モジュール(単にモジュール)と他のモジュールとの間で試料を往復させることが可能である。モジュールは、試料ハンドリング(取り扱い)ステーション及び試験ステーション(例えば、ある種の検査に特化可能なユニット、若しくは、試験役務をより大規模の分析装置へ提供可能なユニット)を含めて、1以上のステーションを含み得る。また、免疫測定(IA)及び臨床化学(CC)ステーションを含めることもできる。現状の体外診断自動化軌道システムには、1つの完全独立モジュールから別の非連動モジュールへ試料を搬送するように設計されているシステムを備えたものもある。これにより、違う種類の試験を2つの異なるステーションにおいて特化することが可能となる、又は、試料の処理可能量を増加させるべく2つの余剰ステーションを相互接続することが可能となる。このような研究所自動化システムは、しかしながら、複数ステーションの分析装置におけるボトルネックとなることが多い。相対的に言えば、現状の研究所自動化システムは、試料をステーション間で自立的に移動させる高度の知能性又は自律性に欠ける。
【0004】
現在のシステムの一例では、コンベヤベルトのような摩擦軌道が、パックとも呼ばれる搬送機構、又は、容器(コンテナ)のラックを、個々に異なるステーション間で行き来させている。試料は、例えばオペレータやロボットアームによってパック中に置かれる試験管などの試料容器(サンプルコンテナ)に入れられて、分析装置のステーション間を軌道に沿って搬送される。この摩擦軌道は、しかしながら、一度に一方向にしか動くことができず、その軌道上の試料はいずれも同速度で同方向に移動する。試料を摩擦軌道から取り出す必要がある場合は、個々のパックを分岐路へと移動させるべく、ゲーティング(ゲート開閉)/スイッチングが使用され得る。このセットアップには、各ゲート及びスイッチにて所定のパックの方向を制御するために単離処理が必須であるという短所がある。例えば、2つのパックが互いに近接して存在していて、その中の1つのみを分岐路へと方向転換させなければならないとすると、1つのパックだけを分岐路へ移動させ且つ正しいパックを確実に摩擦軌道から取り出すことができるようにスイッチを制御するのは困難である。このために、多くの現状のシステムにおいては、軌道上の各決定ポイントで個々のパックを一度解放してスイッチすることができるように、ゲートの所でパックを停止させる必要がある。その結果、何十、何百ものパックが一度に自動化システムの軌道上にあることになり、オペレータによる試料の追跡を困難あるいは不可能にする。
【0005】
分析装置のオペレータは、自身の手で試料を取り扱わなければならないことがよくある。例えば、オペレータは、試料を試料トレイに並べ替え、試料を分析装置へ移動させ、試料を分析装置から取り出し、試料を他の分析装置へ搬送しなければならないことがある。取り扱いにミスがあった場合、オペレータは、目視検査のために試料を自動化システムから取り出す必要がある。現在、オペレータの注意を引くために試料の状態情報を伝達する能動的な方法は無い。代わりに、オペレータは通常、試料に関する状態情報を明らかにするべく、手持ちバーコードリーダや印刷したシートを使用しなければならない。このような状態情報は、既に古くなっていることがよくあり、オペレータにリアルタイムで若しくは一目で情報を伝えることができない。さらに言えば、IVDのオペレータは、複雑な状態情報の理解に必要なトレーニングをされていないことがあり、オペレータによるハンドスキャンや試料と状態シートとの照合に頼ることは、試験環境にヒューマンエラーの要素を持ち込むことになる。従って、IVD環境において試料の状態に関する簡単な視覚情報を提供する方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施態様は、上記の短所及び不利益に向けられ、1以上の試料容器などの積荷に関する情報を、試料を保持するラックや搬送体の1以上の表示面において視覚表示する装置及びシステムを提供することによって、克服する。人が直ぐに分かる情報をラック又は搬送体に表示することによって、オペレータは、数多くの試料を、より容易に管理することができ、試料に関する状態情報などの情報を迅速に判断することができる。この技術は、限定する意図は無いが、体外診断(IVD)環境の自動化システムにおいて使用されるラック及び搬送体に、特に適している。
【0007】
本発明の実施態様は、処理装置又は外部制御装置によって更新されてIVD研究所システムのオペレータに関係のある情報を表示可能である、電子的に書き換え可能な、少なくとも1つの表示面と、1以上の試料を保持する手段と、を有する搬送体及びラックに向けられる。
【0008】
本発明の一態様によれば、体外診断環境で使用する搬送体は、1以上の積荷を受け入れるブラケット(ホルダ)を含む。少なくとも1つの表示面が、電子的に書き換え可能な表示装置を有する。この搬送体は、その電子的に書き換え可能な表示装置を自動的に更新し、積荷に関する状態情報の視覚表示を提供する。積荷は、限定する意図は無いが、液体患者試料を保持するように構成された試料容器である。
【0009】
当態様の他の側面によれば、状態情報は、中央制御装置によって無線で更新される。別の側面によれば、1以上の積荷には1以上の試料容器が含まれ、搬送体は電子的に書き換え可能な表示装置を自動的に更新して、その試料容器に関する状態情報の視覚表示を提供する。
【0010】
本発明の一態様によれば、体外診断環境において使用する搬送体は、状態情報を表示するように構成された電子的に書き換え可能な表示装置と、この電子的に書き換え可能な表示装置を更新するように構成された処理装置と、表示する状態情報を受信するように構成された無線受信装置と、を含む。その状態情報は、当該搬送体によって搬送する1以上の積荷の状態に関連する。
【0011】
当態様の他の側面によれば、電子的に書き換え可能な表示装置は、双安定表示装置である。当態様の他の側面によれば、その表示装置は、搬送体の電気接点へ一時的に電力を印加することによって更新される。当態様の他の側面によれば、その電子的に書き換え可能な表示装置は、不揮発性の表示装置である。少なくともさらに他の一態様の見地において、色、パターン(点滅を含む)、文字(試料の取り扱いに関する情報を含み得る)、あるいはこれらの部分集合又は組み合わせを、電子的に書き換え可能な表示装置の少なくとも一部分に表示することによって、状態情報を伝えることが想定されている。別の側面によれば、状態情報は、1以上の積荷の優先順位、1以上の積荷の中の少なくとも1つの患者試料の識別情報、及び、オペレータの問い合わせ(クエリ)に対する応答のうちの、1つ以上を示す。当態様の更に他の側面によれば、書き換え可能な電子的な表示装置の少なくとも一部分が、問い合わせに応じて、他の一群の搬送体とは異なった表示となることなどにより、応答が伝えられる。
【0012】
当態様の他の側面によれば、書き換え可能な電子的な表示装置は、状態情報を表示する複数の領域を備える。当態様の他の側面によれば、搬送体は、1以上の積荷の有無を判断するための1以上のセンサを含む。
【0013】
本発明の一態様によれば、体外診断環境で搬送される1以上の積荷の状態情報を表示する方法は、1以上の積荷に関する情報を、その積荷を保持する搬送体と関連付け、その積荷に関する状態情報を搬送体で受信し、その搬送体の電子的に書き換え可能な表示面に前記の状態情報を表示する、ことを含む。
【0014】
当態様の他の側面によれば、当該方法は、前記の電子的に書き換え可能な表示を更新して、積荷の状態情報の1以上の変化を反映させることを含む。別の側面によれば、その1以上の変化には、積荷に関するエラー状態が含まれる。別の側面によれば、前記の1以上の積荷に関する情報を関連付ける過程は、積荷のバーコードを読み取ってその積荷の識別情報を判別し、搬送体群から該当する搬送体を区別し、且つ、その搬送体に前記積荷を入れることをオペレータに知らせるべく、前記の搬送体の表示を変更する、ことを含む。別の側面によれば、上記の方法は、バーコード読み取り後に新しい積荷が該当する搬送体にあるかどうかを検出し、その搬送体に新しい積荷が入れられたことを判断することを含む。これらの態様は、積荷に患者試料が含まれる場合に好適である。別の側面によれば、上記方法は、積荷が問い合わせの基準に合致する場合に、その問い合わせの結果を反映させるべく、電子的に書き換え可能な表示を更新することを、さらに含む。本発明に関する上記以外の特徴、利点は、図面を参照して述べる以下の例示的な実施形態の詳細な説明によって明らかとされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上述した態様及びその他の態様は、以下の詳細な説明を添付図面と関連させて読むことによって能く十分に理解される。本発明を例示する目的で、現時点で好ましい実施形態を図中に示してあるが、その特定の開示手段に本発明が限定されないことは勿論である。添付図面は、次の各図を含む。
図1】本書に開示する自動化システムの実施形態を使用して改善可能な臨床分析装置配置例の上面図である。
図2】本書に開示する自動化システムの実施形態で使用可能な軌道配置の概略図である。
図3】本書に開示する実施形態で使用可能なモジュール式軌道構成例の概略図である。
図4A】本書に開示する実施形態で使用可能な搬送体例の斜視図である。
図4B】本書に開示する実施形態で使用可能な軌道構成例の斜視図。
図4C】本書に開示する実施形態で使用可能な自動化システム例の上面図である。
図5】本書に開示する所定の実施形態で使用可能な能動搬送体の内蔵制御システムのシステムブロック図である。
図6A】搬送体において状態情報を表示する電子的に書き換え可能な表示面を例示する概略図である。
図6B】搬送体において状態情報を表示する複数の電子的に書き換え可能な表示面を例示する概略図である。
図7】試料に関する状態情報を表示する電子的に書き換え可能な表示面の複数の状態を例示する概略図である。
図8】アレイに配列された試料に関する状態情報を表示する電子的に書き換え可能な表示面の複数の状態を例示する概略図である。
図9】電子的に書き換え可能な状態表示装置の実施形態の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
−実施形態に関連した用語と概念−
【0017】
分析装置:
臨床化学分析装置、自動式免疫測定分析装置、又はその他の種類の体外診断(IVD)試験分析装置を含む、自動式臨床分析装置(「分析装置」)。一般に、分析装置は、複数の患者試料について一連の自動式IVD試験を実施する。患者試料が分析装置へ(手動又は自動化システムを介して)投入されると、その分析装置は、各試料に対して、1以上の免疫測定、化学試験、又はその他の観察試験を実施することができる。分析装置という用語は、限定の意図は無いが、モジュール式分析システムとして構成される分析装置のことも指し得る。モジュール式分析システムは、自動化軌道などの自動化面によって線状又はその他の配置構成によって相互接続された複数のモジュール(同じ種類のモジュール又は異なる種類のモジュールを含み得る)を組み合わせてなる、統合されており且つ拡張可能なシステムを含む。所定の実施形態において、自動化軌道は、患者試料及びその他の種類の物質をモジュール間で移動させるべく自立搬送体を使用する、統合搬送システムとして構成される。通常、モジュール式分析システムのうちの少なくとも1つのモジュールは、分析モジュールである。モジュールは、患者試料に対する分析タスクの高スループットを得るために特化し又は冗長に設けることもできる。
【0018】
分析モジュール:
分析モジュールは、患者試料に対する免疫測定、化学試験、又はその他の観察試験などのIVD試験を実施するように構成される、モジュール式分析装置の中のモジュールである。通常、分析モジュールは、試料容器から液体試料を取り出し、反応キュベット又はチューブ(総じて反応容器とする)内で試薬に試料を混ぜ合わせる。分析モジュールにおいて実施可能な試験には、限定の意図は無いが、電解質、腎機能や肝機能、代謝、心臓、ミネラル、血液疾患、薬物、免疫測定、又はその他の試験のサブセットも含まれる。所定のシステムにおいて、分析モジュールは、高スループットを得るために特化し又は冗長に設けることができる。前記の分析モジュールの機能は、モジュール式の仕様を利用していない独立した分析装置によっても遂行され得る。
【0019】
搬送体:
搬送体は、試料容器(及びその延長線上で液体試料)又はその他のアイテムを自動化システムにおいて移動させるために使用可能な搬送ユニットである。所定の実施形態において、搬送体は、従来の自動化パック(例えば、管又はアイテムを嵌めるホルダ、自動化軌道のコンベヤベルトから駆動力を受けるための摩擦面、及び、当パックを目的地へ導くことの可能な自動化軌道の壁又はレールによって当パックが案内されるようにする複数の側部、を備えた受動的な装置)のようにシンプルであり得る。所定の実施形態において、搬送体は、処理装置、移動システム、道案内システム、センサなどの能動部品を含み得る。所定の実施形態において、搬送体は、自動化システムのポイント間における搬送体の自己道案内を可能とする内蔵知能を含む。所定の実施形態において、搬送体は、駆動力を提供する内蔵部品を含むが、他の形態においては、駆動力は軌道などの自動化面から提供される。所定の実施形態において、搬送体は、決定のポイント間において一方向(例えば前進と後進)に移動を制限する自動化軌道に沿って移動する。搬送体は、試料管を受け入れて搬送する管ホルダを有するなど、IVD環境の予め決められた積荷に特化されるか、あるいは、自動化システムにおいて異なるアイテムを搬送するために最適化された搭載面を含み得る。搬送体は、1以上のスロット(例えば、搬送体をして1つの又は複数の試料容器を保持せしめ得るようにするもの)を含む構成とすることも可能である。
【0020】
搬送体/トレイ/ラック:
搬送体とトレイとは区別可能であり、トレイは、通例、自動化軌道を走行せず(オペレータに運ばれるなど)、複数の積荷(試料管など)を保持するように構成されるデバイスを表し得る用語である。ラックは、複数の積荷(試料管など)を保持するように構成されるデバイスを表す一般的な用語である。ラックは、(自動化軌道の外で使用する場合は)トレイを表す、あるいは(自動化軌道を走行するように構成される場合は)、複数の積荷を搬送するように構成された搬送体を表す。所定の実施形態において、ラックは、スロットの一次元又は二次元アレイに当てはまる。
【0021】
中央制御装置/中央処理装置:
中央制御装置又は中央処理装置(中央運行計画装置(スケジューラ)とも呼ぶ)は、自動化システムの一部を成すプロセッサであり、搬送体に内蔵された処理装置とは別である。中央制御装置は、搬送体に関する道順、運行予定、及びタスクの管理を容易にする。所定の実施形態において、中央制御装置は、自動化システムのサブシステムとの通信が可能であり、搬送体と無線で通信する。中央制御装置は、走行軌跡(道案内)の情報(指令)を搬送体に送り、その搬送体が何処へ何時向かうべきかの決定も行う。所定の実施形態においては、局所処理装置が、局所待ち列を管理するなど、局所軌道区域における搬送体管理を担う。このような局所処置装置は、局所において中央制御装置に相当する装置として機能する。
【0022】
決定ポイント:
決定ポイントは、各種類の搬送体に対してそれぞれの道案内又は走行軌跡の判断が行われる、自動化軌道上のポイントである。共通の例において、軌道は分岐路を含む。ある搬送体は方向転換すること無く進み、別の搬送体は速度を落として方向転換し得る。決定ポイントは、ある搬送体は止まる一方で他の搬送体は進むという、設備における停止ポイントを含み得る。所定の実施形態において、これから方向転換する搬送体は横向きの力を制限するべく減速される一方、他の方向転換しないか又は減速不要の移動プロファイルをもつ搬送体は進むことのできる、方向転換に先立つ減速ゾーンが、決定ポイントとして機能し得る。決定ポイントで行われる判断は、実施形態に係る、搬送体内蔵の処理装置、軌道区域の局所処理装置、中央処理装置、若しくはそれらの組み合わせによって、実行される。
【0023】
自立搬送体:
所定の実施形態において、搬送体は、自立制御搬送体としての特徴を有する。自立制御搬送体は、走行軌跡を自立制御する搬送体である。所定の実施形態において、自立搬送体は、サイズ、ウエイト、形態因子、及び中身の少なくともいずれかで異なる積荷若しくは積荷の組み合わせを搬送する搬送体が同時に同じ軌道上で運行できるようにする。各自立制御搬送体の走行軌跡は、自動化システムを移動中の搬送体に関する加加速度(ジャーク)の最大値、加速度、方向、及び速度のうちの少なくともいずれか1種類を含めた移動プロファイルによって制限される。この移動プロファイルは、各搬送体ごとに個別に走行軌跡を制限又は規定可能である。所定の実施形態において、移動プロファイルは、少なくとも、自動化システムの異なった区域ごとに(例えば、方向転換中に横方向の力が加わる原因となるカーブに対する直線軌道区域)、異なった搬送体状態ごとに(例えば、空の搬送体は、試料搬送中の搬送体や試薬又は他のアイテムを搬送中の搬送体とは異なる移動プロファイルをもつ)、あるいは異種の搬送体ごとに、違い得る。所定の実施形態においては、搬送体に内蔵の推進力部品を設けて、個々の搬送体ごとに意図された移動プロファイル又は走行軌跡又は目的地情報に応じて、それら個々の搬送体を自立して運行できるようにすることも可能である。
【0024】
インテリジェント搬送体/半自律搬送体:
所定の実施形態において、搬送体は、インテリジェント搬送体としての特徴をもつ。インテリジェント搬送体は、移動、運行経路、又は走行軌跡の決定に関与する内蔵回路を有する搬送体である。インテリジェント搬送体は、ソフトウエア指令を実行してその指令に対応した自動化面に沿って進むデジタルプロセッサ、又は、移動入力に応答する内蔵アナログ回路(例えばライン追跡回路)、を含み得る。指令は、移動プロファイル、交通又は走行軌跡のルールを特徴付ける指令を含む。搬送体の運行経路又は搬送体周囲状況に応じた決定を行う内蔵処理装置を支援する内蔵センサを含んだインテリジェント搬送体も可能である。内蔵処理装置の制御に従って搬送体を移動させるモータ又は磁石などの内蔵部品を含んだインテリジェント搬送体もあり得る。
【0025】
体外診断(IVD):
体外診断(IVD)は、病気、体調、感染症、代謝マーカーを検出したり、あるいは、身体物質/体液の各種成分を数値化することの可能な試験である。このような試験は、患者の身体の外で、研究所、病院、内科医院、又はその他の健康を専門に扱う舞台において実施される。IVD試験は、概して、試験管又はその他の試料容器における、より広く言えば、生体外の管理された環境における検査から診断を実施することを目的とした医療機器を使用する。IVDは、患者の体液試料に対して実施した検査に基づく病気の試験及び診断又は身体物質/体液の各種成分数値化を含む。IVDは、患者の体液又は膿瘍から得られた液体試料の分析によって実施可能とされる患者診断及び治療に関係する各種の分析的試験及び検査を含む。このような検査は、一般的には、患者試料を入れたチューブやバイアルをセットした分析装置で進められる。IVDは、ここに説明するIVD官能性のサブセットにも当てはまる。
【0026】
目印:
搬送体が内蔵センサを含んでいる実施形態においては、軌道面の光学式やその他のマークあるいは軌道面から可視の又は感知可能な場所のマークが目印として機能する。目印は、現在位置、間近の停止位置、決定ポイント、方向転換、加速/減速ポイントなどの地理的情報を、搬送体に伝える。
【0027】
研究所自動化システム:
研究所自動化システムは、自動的に(例えば、オペレータ又はソフトウエアの要求に則して)、試料容器又はその他のアイテムを研究所環境内において行き来させることの可能なシステムを含む。分析装置については、自動化システムは、容器又はその他のアイテムを、分析装置のステーションへ、ステーションから、ステーションの中で、若しくはステーションの間で、自動的に移動させる。限定の意図は無いが、モジュール式試験ステーション(例えば、ある種の検査に特化したユニットや、より大規模の分析装置に対して試験役務を提供するユニット)、試料ハンドリングステーション、貯蔵ステーション、又は作業セルを、このステーションが含むようにしてもよい。
【0028】
モジュール:
モジュールは、モジュール式分析システムにおいて特定のタスク又は機能を実行する。モジュールの例としては、分析試験用の試料を準備する分析前モジュール(例えば、試料試験管頭部のキャップ(蓋)を外すデキャッパー(蓋開け)モジュール)、試料の一部を抜き出して試験又は検査を実施する分析モジュール、分析試験後の貯蔵用試料を準備する分析後モジュール(例えば、試料試験管を再封止するリキャッパー(蓋閉じ)モジュール)、試料ハンドリングモジュールが含まれる。その試料ハンドリングモジュールの機能には、在庫管理を目的として試料コンテナ若しくは試料容器の管理、分類、自動化軌道(統合搬送システムも含まれる)への、若しくは、その自動化軌道からの、試料容器の移動、別の研究所自動化軌道への、若しくは、その自動化軌道からの、試料容器の移動、そして、トレイ、ラック、搬送体、パック、及び貯蔵場所の少なくともいずれかへの、又はいずれかからの、試料容器の移動が含まれる。
【0029】
積荷:
例示する搬送体は、患者試料を搬送するものとして説明するが、その他の妥当な積荷を自動化システムを通して搬送するためにその搬送体を使用するという実施形態も可能である。積荷としては、液体、液体容器、試薬、廃棄物、使い捨てアイテム、部品、あるいはその他の適当な積荷が含まれる。
【0030】
処理装置:
処理装置は、1以上のプロセッサか、又は関連ソフトウエア及び処理回路、あるいはこれら両方を表す。このような処理装置には、好適には各実施形態において詳述する処理機能を実行する、シングルコア若しくはマルチコアプロセッサ、シングル若しくはマルチプロセッサ、組み込みシステム、又は、分散処理アーキテクチャが含まれる。
【0031】
引き出し路・サイドカー・分岐路:
これらの用語は、軌道システムの主要部から外れる軌道区域を表すために使用される。引き出し路又はサイドカーは、主たる交通パターンから所定の搬送体を分岐させるための、弦、併走軌道、又はその他の適切な手段を含む。引き出し路又はサイドカーは、主たる軌道区域の交通を混乱させることなく、物理的行列を容易にしたり、所定の搬送体を停止又は減速させたりできるように構成される。
【0032】
試料:
試料は、患者(人又は動物)から取得した液体又はその他の試料を指し、血液、尿、ヘマトクリット、羊膜液、又は検査や試験を実施するのに適したその他の液体を含め得る。試料は、患者の試料を処理するに際して分析装置を支援するために使用される検定液若しくはその他の液体を示す場合もある。
【0033】
STAT(short turnaround time)試料:
分析装置において非STAT試料に先行して取り扱われるべき試料にSTAT優先権を与えるため、研究所情報システム(LIS)又はオペレータによって割り当てられた優先順位をもつ試料。これを上手く利用することにより、所定の試料を他の試料に先駆けて試験過程に通すことができ、内科医やその他の専門家が迅速に試験結果を受け取ることが可能となる。
【0034】
ステーション:
ステーションは、モジュール内の特定のタスクを実施する一部分を含む。例えば、分析モジュールに提供されるピペットステーションは、統合搬送システム又は研究所自動化システムにおいて搬送体によって搬送される試料容器から試料液をピペットで移すために使用される。モジュールのそれぞれが、モジュールに機能性を追加する1以上のステーションを含み得る。
【0035】
ステーション/モジュール:
ステーションは、特定のタスクを実施する分析装置内の一部分を含む。例えば、キャッパー(蓋閉じ)/デキャッパー(蓋開け)ステーションは、試料容器に対してそのキャップの取り外し交換を行い、試験ステーションは、試料の一部を抜き取って試験若しくは検査を実施し、試料ハンドリングステーションは、試料容器を管理し、自動化軌道への、又は自動化軌道からの、試料容器の移動を管理し、貯蔵場所あるいはトレイへの、又は貯蔵場所あるいはトレイからの、試料容器の移動を管理する。ステーションは、モジュールとすることが可能であり、ステーションを更に大規模な分析装置に追加することができる。各モジュールは、1以上のモジュールからなる分析装置に機能性を追加する1以上のステーションを含み得る。所定の実施形態において、モジュールは、複数のモジュール及びステーションのいずれか一方又は両方を連携せしめる自動化システムの一部を含み得る、又は、自動化システムとは別に設けられ得る。ステーションは、特定のタスクを実行する1つ以上の機器を含み得る(例えば、ピペットは、免疫測定ステーションにおいて使用され、自動化軌道上の試料に対して作用する機器である)。別途に言及する場合を除いて、モジュール及びステーションの概念は、相互に代替可能なものとして言及される。
【0036】
管/試料容器/液体容器:
試料は、搬送体表面を汚染すること無く試料を搬送体で搬送できるように、試験管若しくはその他の適切な容器に入れて搬送される。
【0037】
−実施形態の例示−
【0038】
自動式分析装置(単に分析装置)において搬送中の試料に関する状態情報を確実にあるいは自動的に表示する、改善された装置及び方法が、実施形態に含まれる。具体的に言えば、自動化システム内の搬送体は、自動的に状態情報を表示する書き換え可能な表示面を含んでいる。その情報を電子的に書き換え可能な表示面にて提示することにより、その状態情報がオペレータに素速く表示され、試料が体外診断(IVD)環境内を移動して、試料の状態が変化する都度、リアルタイムで更新される。
【0039】
所定の実施形態においては、液体試料を搬送する搬送体は能動デバイスである。これには電源及びメモリを内蔵した半自律搬送体が含まれる。メモリは、特に、表示すべき試料の現状を含み、そして電源は、書き換え可能な表示面を更新して前記の状態を表示するために使用される。
【0040】
所定の実施形態において、能動搬送体が、従来の方法よりも実質的に速く試料を搬送し、確実な試験計画、自動化システムにおける交通量の低減、及び、分析装置における試験の待ち時間の低減並びに信頼性の高い処理を可能にする。所定の実施形態では、試料搬送体の半自律性を利用して、1回の運転サイクル内でのステーション間の搬送を提供し、試料配置の自動化から性能的ボトルネックを効果的に取り除いて、若しくは大幅に低減して、より柔軟な試料計画の選択肢を可能にする。
【0041】
本発明の実施形態は、少ない待ち時間、及び、より独立した制御によって、試料を各種の分析試験ステーション同士の間若しくはそれらの中において往来させることを可能とする、高効率の研究所自動化システムを提供するシステム及び方法を含む。本発明の実施形態は、自動化システムを移動中の試料が経験する待ち列を減少若しくは無くすことができる。通常、試料は、自動式臨床分析装置(単に分析装置)において、1つの試験ステーションだけでは担えない多くの異種類の試験を受ける必要がある。分析装置の試験ステーションは、特化した試験に適合し得る。例えば、免疫測定は、所定の培養能力を具備していると共に免疫測定に固有の特異試薬を使用する免疫測定ステーションによって実施される。化学分析は、臨床分析装置によって実施され、電解質化学分析は、イオン選択電極(ISE)臨床分析装置によって執り行われる。斯様なモジュール方式の採用によって、分析装置は、試料に対して行う試験の種類のみならず、研究所のニーズを受け入れるのに必要な試験の頻度及び容量についても適合可能となる。追加の免疫測定能力が必要な場合には、研究所は、該当する免疫測定ステーションを追加し、そのシステムにおける免疫測定試験に対するスループット全体を増加させることを選択可能である。
【0042】
所定の実施形態において、複数の分析装置が同じIVD環境内で使用される。例えば、古い型の分析装置、独立型(スタンドアローン)の分析装置、又は、事実上異なる試験メカニズムを提供する分析装置が、個別の自動化システム上に存在し得る。オペレータは、それらの機器同士の間で、及び、それらの中で、試料のトレイを運ぶ。
【0043】
−搬送体を使用するモジュール式自動化システム−
【0044】
従来技術に係る典型的な構成をもつ分析装置において試料の搬送のために用いられる軌道配置の一例を、図1に示す。この軌道は、軌道システムの設計に際し問題をもたらす、従来技術に係る摩擦軌道を含む。但し、本発明の実施形態のなかには、同様の配置を用いるが、移動のための摩擦軌道の採用を必須とはしないものもある。軌道100は、概略長円形状の軌道であり、試料準備又は分析/試験ステーション110,120,130などの種々のステーション間でパック又はトレイに入れた試料を搬送する。軌道100は、一方向軌道であるか、又は、ある種の例では、線状の双方向軌道である。この例では、各分析装置110,120,130には、それぞれサイドカー112,122,132による搬送が対応するように構成されている。軌道100と各サイドカーとの間の分岐部には、ゲート又はスイッチが配置されていて、軌道100からサイドカーへと試料を方向転換させることが可能である。軌道100の長円という特性は、試料が各分析装置へのアクセスを待つ間、その試料を循環させるために用いられる。例えば、分析装置110がサイドカー112において満杯の列をもっている場合には、分析装置110がサイドカー112内にある待機中の試料のハンドリングを終えてその試料を軌道100の主たる交通の流れの中へと戻すまで、軌道100上の新しい試料を引き出し路112へと転出させることができない。
【0045】
従来技術に係るシステムには、試料探査アーム114,124,134などのハンドリング機構による搬送を各サイドカーが享受するようにしたものもある。このようなロボット式のハンドリングアームは、サイドカー内の試料から探査ニードルを介して試料物質を吸引するか、又は、サイドカーから試料管を取り出して対応する試験ステーションへ移載する。本例のシステムにおいて、利用可能な試験ステーションは、免疫測定ステーション110、低容量化学ステーション120、および、拡張可能な希釈/ISE電解質並びに高容量化学ステーション130を含む。この手法の利点は、軌道100が、その他の点では自立型であるステーションに追加される、区分された研究所自動化システムの一部であること、そして、軌道100及びステーション110,120,130をそれぞれ、アップグレードし、購入し、又は点検することができる、ということである。高容量化学ステーション130などのステーションは、軌道100から独立して運転される、自身の摩擦軌道136を含み得る。摩擦軌道136は、高容量化学ステーション130のサブモジュール間で試料を移動させる双方向摩擦軌道を含む。このタイプのシステムの短所は、各別の摩擦軌道がばらばらに運転されて、全体的な自動制御がさらに複雑になるということである。さらに言えば、摩擦軌道136と摩擦軌道100との間の移送がゆっくりで手間がかかり、特に、これら2つの摩擦軌道間にはダイレクトなルートが無い。軌道間の移動に、ロボットアームによって試料を持ち上げて置き換える作業が必要なシステムもある。
【0046】
従来技術に係る分析装置用研究所自動化システムは、そのほとんどが、個々の分析装置/試験ステーションを、軌道上の試料の包括的な目的地として取り扱う。本発明の所定の実施形態においては、研究所自動化システムは、個々の試験ステーション内に統合され、それら個々の試験ステーションの複雑性を大きく軽減又は排除することができ、各ステーションにおける個別の試料ハンドリングシステムの必要性を減らすことができる。所定の実施形態において、研究所自動化システムをステーションに統合することによって、そのシステムは、個々のステーションを包括的目的として取り扱うよりも試料の進む多経路軌道の一部分として取り扱うことの方が多くなり始める。
【0047】
図2Aは、本発明との使用に適する軌道システムの一実施形態を示す。軌道150は、試料搬送体を時計回り(又は反時計回り)に移動させる長方形/長円形/円形の軌道である。軌道150は、一方通行又は双方向通行である。搬送体は、液体試料、試薬、廃棄物などの、IVD環境に適した積荷を搬送する。患者試料などの液体は、試験管、バイアル、キュベットのような、搬送体によって搬送可能な容器内に入れられる。搬送体、さらに広げて言えば試料などの積荷は、主たる軌道150上を移動可能であり、決定ポイント(例えば164,166)にて方向転換させられる。それら決定ポイントは、機械式ゲート(従来技術におけるような)又はその他の、試料を主たる軌道150からここに説明する160,160A,160B,160Cで示すようなサイドカーへと方向転換させることのできる機構である。一例を挙げると、試料搬送体が主たる通路150を移動し決定ポイント166に到達した場合、継続してその主たる軌道上を区域162へと進ませるか、それともサイドカー160へと方向転換させるかを、決定することができる。試料搬送体を決定ポイント166で方向転換させることを判断するシステム及び方法については、本欄を通して説明する。
【0048】
図2Bは、本発明の所定の実施形態に適する、別の軌道レイアウトを示す。軌道170は、これも試料搬送体が時計回り(又は反時計回り)に移動する、実質的に環状の軌道である。本例の場合、軌道の外側にサイドカーを有するのではなくて、引き出し路180,180A,180Bが軌道の内側の弦となっている。上記同様に、試料搬送体が決定ポイントに到達すると、その搬送体は、主たる通路から例えば通路180である脇道通路へ方向転換させられる。決定ポイント186において、主たる軌道170上の試料は、主たる軌道上を進み続けるか、又は、通路180へ方向転換するかを決められる。一旦、ハンドリング通路180に沿う分析装置ステーションが試料の処理を終えると、その試料は、決定ポイント184に進み、主たる通路170へと戻ることができる。
【0049】
図3は、本発明の所定の実施形態に使用可能な自動化システム軌道のモジュールの手法を示す。本例において、軌道は、個々の分析装置ステーションに統合されており、その軌道は、各研究所ステーションの内部移動又は試料ハンドリングシステムの一部として使用される。従来技術の場合、個々の分析装置/試験ステーション内に複数の異なる種類の移動システムを有するのが普通である。例えば、試料管のパック又はトレイを往来させる摩擦軌道を含むステーションもあれば、試料の一部を吸引又は分配したキュベットや反応容器などの小型容器を入れた回転棚を含むステーションもある。所定の実施形態において、分析装置ステーション自体に軌道システムの一部を統合することによって、各ステーションは、独自の待ち列ロジックを含むことができ、簡素化されて、不必要な内部移動システムを排除することができる。
【0050】
図3を参照しつつ説明すると、軌道200は、分析モジュールに統合されるモジュール部品に分割し得る。この例示の軌道においては、モジュール205,205A,205Bは、お互いに、且つ場合に応じて、他のモジュール軌道部品202,204と連結可能であり、図2Bに示したものと同様の軌道を形成する。例えば、モジュール205Aは、免疫測定モジュール110(図1)と同じ機能を実施し、モジュール205は、低容量化学モジュール120(図1)と同じ機能を実施し、モジュール205Bは、モジュール130(図1)のようにISE電解質試験を実施する。この例の場合、主たる外周軌道は、軌道区域202,204,206,206A,206B,208,208A,208Bによって形成される。分析モジュール205,205A,205Bの中で、内部通路210,210A,210Bが主たる軌道からの引き出し路を形成する。内部通路は、内部待ち列に使用され、各分析モジュールにおいて自立して管理可能であり、処理する試料全体の好適制御を各モジュールで行うことが可能となる。
【0051】
統合軌道200と分析モジュール205,205A,205Bそれぞれのサブの通路210,210A,210Bによる一つの利点は、各分析モジュールの内部ハンドリング機構が、その軌道のサブの通路とより良く調和するべくそれ専用に構成することが可能である、ということである。所定の実施形態において、モジュール205,205A,205Bは、分析装置全体の運転サイクルよりも短い期間内で各試料を処理するように構成可能であり、試料にとって一つの処理後に他のモジュールへと軌道システムに沿って進んでいくための時間を十分に残し、その試料を次の運転サイクルにおいて直ちに他のモジュールにて処理できるようにする。この場合の運転サイクルは、試料検査用モジュールに処理時間を割り当てる運行計画(スケジューリング)アルゴリズムにおいて使用される時間単位である。運転サイクルは、動的又は固定的であり、分析装置内モジュールの同期運転を可能とし、分析装置にある複数のモジュールの中で試料の計画を立てるための確実なタイミングモデルを提供する。運転サイクル時間は、いずれかのモジュールが予想される定常状態条件の下で第1の試料の処理を開始してから次の試料の処理準備ができるまでに必要な時間として選ばれる。例えば、分析装置が3秒ごとに1つの試験を処理でき、且つ1試料に対する予想平均試験が7つあるとすると、運転サイクル時間は21秒になる。当然ながら、個々のモジュールは、1サイクル内での並列処理や多重試料処理などの効率的な技術を実行し、1試料に対する試験数が予想量と異なる場合であってもスループットを最大化することができる。さらには、他の実施形態では、個々のモジュールが異なる運転サイクル時間を有し、これらモジュールが実質的に互いに非同期で作業できることも、当然に理解されるべきことである。仮想の待ち列又は緩衝が、サイクル時間又はその要求値がモジュール間で違うときの試料計画の管理を補助するために使用され得る。
【0052】
ほぼ1回の運転サイクル又はこれ以下の確実な時間フレーム内での分析装置のモジュール間での搬送が可能になれば、従来の軌道システムでは不可能であった多くの性能上の利点が得られる。分析装置の1回のサイクルで試料が分析モジュールによって確実に取り扱われて次の分析モジュールへと搬送されれば、列生成中の交通ハンドリングが格段に簡素化され、スループットがより安定したものとなり、待ち時間が制御されてその低減化が可能となる。基本的に、このような分析装置においては、試料は、列待ちで軌道システム上に無駄に居座ることのないように、軌道システムによって的確に取り扱われて、ムラ無く処理される。さらに言えば、システム内のモジュール数によって、所定の分析モジュールでの待ち例などシステム内の待ち列を、確実に短くし、制限することが可能である。
【0053】
本発明の所定の実施形態においては、軌道システムの確実で迅速な特質によって、物理的ではない仮想の待ち列が可能となる。仮想の待ち列は、物理的な制約によることなく、ソフトウエアにおいて取り扱われる。従来は、待ち例は物理的なものであった。最も簡単な物理的待ち列は、試料ハンドリング作業の部分における事実上の交通渋滞である。ボトルネックによって先入れ先出し(FIFO)の待ち列が生成され、そこでは試料搬送体がライン内で事実上停止し、準備のできた分析装置又は決定ポイントがその列中の次の試料を要求できるように、緩衝域が生成される。従来技術のほとんどの研究所自動化軌道が、FIFO処理列を維持し、付属モジュール(分析装置又は分析前/後装置)による処理待ちの試料に緩衝域を与える。このような緩衝域は、モジュール又はオペレータのリクエストが突発的な要求をもたらしたとしても、軌道が一定のレートで以て試料管を処理できるようにする。FIFO列は、例えば、現試料を処理している間にキュベット又は吸引試薬を用意するなど、次の試料に関する処理前タスクを個々のモジュールが実施できるようにすることによって、そのモジュールのスループットを実質的に向上させることも可能とする。FIFO列の厳密な予測可能性が処理タスクの並列化を可能にするが、モジュールにとっては、リソースを最適化するために試料に対する試験を再発注することによってスループットを向上させる適応的計画の使用が妨げられるということでもある。例えば、ほとんどの免疫測定分析装置の内部でのリソースの衝突は、複雑で、分析装置が最大効率を達成するためには複数試料からの試験を入れ込む必要がある。FIFO列は、このような分析装置のスループットを20%程度下げ得る。FIFO列に伴うもう一つの難題は、優先的試料(例えばSTAT試料)を取り扱えないということである。STAT試料を直ちに処理する必要がある場合、全部のFIFO列を主たる軌道へ戻して解消しなければならず、軌道上の他の全ての試料に遅延が生じ、元のモジュールは待ち列をゆっくり再構築することを強いられる。
【0054】
待ち列のもう一つの種類が、ランダムアクセス(RA)列である。回転棚が、分析モジュールにおいて見られる物理的RA列の一例である。回転棚にある1以上の容器中の試料から一部を取り出すことによって、分析モジュールは、分析装置内で何時でも多数の試料のいずれかを選択して処理する。しかし、回転棚は、余分の複雑性、サイズ、及びコストを含めて、多くの短所を持つ。回転棚はさらに、試料をランダムアクセス列に入れたり出したりしなければらならないので、定常状態処理時間を増やす。処理は、回転棚内の位置番号など、実施状況で遅延する。他方、試料に対しランダムアクセスできることは、モジュールにある局所運行計画機構が試料を並列に処理して、計画した順番でサブステップを実施できるようにする。
【0055】
所定の実施形態において、回転棚又はその他のRA列がモジュールから除かれ、自動化システムからのサブの通路(例えば210)がRA又はFIFO列の箇所として使用される。すなわち、試料に関する2つのポイント間の移動時間が、回転棚の該当する時間と同程度の既知の時間に制限される(予測の通り運転サイクルの一部より少ないなどの)場合、軌道200は、所定モジュールに対する列の一部であり得る。例えば、回転棚を使用せずとも、モジュール205は、サブの通路210上の搬送体にある試料を利用することができる。試薬準備などの処理前ステップは、試験する試料の到着に先立って進められる。試験する試料が到着すると、その試料の1以上の部分が検査用のキュベット又はその他の反応容器に吸引される。所定の実施形態においては、このような反応容器がモジュール205において軌道外に収容されており、別の実施形態においては、このような反応容器が簡単に移動できるようにサブの通路210上の搬送体に入れられている。試験する試料が運転サイクルよりも長い時間に亘ってモジュールに留まることを要求される場合、又は、複数の試料が運転サイクルでモジュールによって処理される場合には、サブの通路210は、モジュールに対する待ち列として働くこととなり得る。
【0056】
さらに、現在は他のモジュールに在って、未だ試験されてない試料は、次の運転サイクルの予定に入れられる。次のサイクルの試料は、モジュール205に対する仮想列にあると見なされる。モジュールは、軌道200上の試料に関して予め決めた運転サイクル内に試料が到着するように計画することができる。中央制御装置、又はモジュール自身に備えられた制御装置が、所定サイクルでの試料に関する競合を解決する。試料の到着時刻の事前情報をモジュールに与えることによって、各モジュールは、リソースを用意し、より効率的に内部リソースを割り当てるために、試験又は試験の一部を入れ込むことができる。このようにして、モジュールは、大きな物理的緩衝域を使用することなく、ジャスト・イン・タイムの手法で以て、試料に作業を施すことができる。その効果は、所定モジュールに関する仮想列が、そのモジュール用のサブの通路の物理的容量よりも十分に長くなり、既存の運行計画アルゴリズムを使用可能となるということである。事実上、各モジュールは、あたかも従来技術のモジュールにおける試料回転棚を扱うように、軌道200を扱うことができる。
【0057】
仮想列を利用することによって、所定の実施形態においては、複数のモジュールが複数の列をもつことができ、また、1つの列又は列内の試料を共有することができることは、当然に理解されるべきことである。例えば、ある検査を実施するために2つのモジュールが配備される場合には、その検査に必要な試料は、その検査用の仮想列に割り当てることが可能であり、その仮想列は、その検査を取り扱うことのできる前記の2つのモジュールの間で共有される。この手法によれば、複数のモジュール間の負荷バランスが保たれ、それらの並列処理化が容易になる。反応容器が軌道200上の搬送体に入れられている実施形態においては、1つのモジュールで開始された(例えば、試薬が準備されるか又は試料が試薬に混ぜられる、又は、試薬が準備されてこれに試料が混ぜられる)検査は、別の位置で完了し得る(例えば、反応が別のモジュールで観察される)。所定の実施形態においては事実上、複数のモジュールを試料ハンドリング用のマルチコアプロセッサと見なすことができる。その実施形態の場合、複数のモジュールの運行計画アルゴリズムは、予定の運転サイクル内での試料に関する競合を避けるように協調させるべきである。
【0058】
仮想列を用いることによって、モジュールは、他のモジュールの仮想列にある試料に対して作業を行うことができる。これにより、軌道200に置かれている各試料は、物理的待ち列を通して待つ必要が無く、モジュールが検査をできるだけ迅速に完了できるように処理が行われるので、試料の待ち時間を減らすことができる。その結果、軌道200上の試料搬送体の個数を常時大幅に減らすことができ、安定したスループットを得ることが可能となる。モジュールが列又は試料を共用できるようにすることにより、負荷バランスを、システムのスループットの最大化のために使用することも可能となる。
【0059】
仮想列を用いることによる、さらなる利点は、STAT試料に動的に優先順位を割り振れる、ということである。例えば、STAT試料は、多量に止まっている物理的待ち列の先頭へとSTAT試料を飛び越えさせるための物理的迂回路を使用することなしに、ソフトウエア上で、次の運転サイクルに関する待ち列の先頭へと移動させることができる。例えば、モジュールが、次の運転サイクルにおける検査用に軌道200で分配すべき3つの試料を予測している場合には、試料のモジュール割り当てを担うスケジューラは、単純に1以上の試料をSTAT試料に置き換え、そして軌道200に次の運転サイクルで処理するSTAT試料を分配させればよい。
【0060】
決定ポイント214,216などの決定ポイントが合理化されて各決定ポイントでの待ち列が不要の場合には、物理的待ち列は、サブの通路210,210A,210Bの中のみで済むこととなる。上述したように、この列は、RA列又はFIFO列として扱うことができる。STAT試料が軌道200に入れられたときに、そのSTAT試料は直ちに処理可能なので、サブの通路210,210A,210B内のRA列を解消する必要は無い。FIFO列は、個々に解消し得る。例えば、STAT試料が区域222で軌道200に入れられたとすると、その試料には、外周軌道及び決定ポイント216を通って該当する分析装置205Bへと至る経路が選定される。通路210Bの列に、他の試料(及び、さらに言及すれば、その試料を搬送する試料搬送体)が待機していれば、列中にあるそれらの試料についてだけは、STAT試料の優先順位を守るために排除される必要がある。搬送に1サイクル未満の運転サイクルを要することが予想される場合、通路210Bの列から外された試料は、軌道を回るだけで直ぐに通路210Bにある列のSTAT試料の後へと戻り、STAT試料に起因した中断時間が回避される。
【0061】
玄関通路220,222は、軌道200へ試料を入れるために使用される。例えば、通常優先順位の試料は、入口220から軌道200へと入れられ、STAT優先順位の試料は、入口222から入れられる。これらの入口は、終了した試料の出口としても使用される。あるいは、図示しない他のポートを使用済み試料の排出通路として使用してもよい。入口220は、投入緩衝域としての役割を持ち、軌道200への加入を模索する投入試料に対するFIFO列として働く。一旦、入口220にて列の先頭に達した試料は、軌道へと移動させられる(搬送体へ入れられることによって、又は、入口220に置かれるときに搬送体に入れられることによって)。STAT試料は、入口222に置かれると、直ちに軌道200へと投入される。あるいは、軌道200が過密状態であれば、STAT試料は、次に利用可能な混雑のない運転サイクルにて軌道へと投入される。所定の実施形態では、運転サイクル中の軌道上搬送体数が監視され、その総数が管理可能な個数に制限され、余剰分は入口待ち列に残される。その入口において試料を制限することによって、軌道200は通行フリーとされ、可能な限り最も効率の良い方法で以て常に運転されることとなる。本実施形態の場合、2つのモジュール間の試料搬送時間は、有界値であり(例えば、運転サイクルの一部以下)、計画構築を単純化できる。
【0062】
所定の実施形態において、軌道システム200は、双方向に設計される。これは、試料搬送体が、外周通路及びサブの通路のうちの少なくともいずれか一つを、いずれの方向にも移動可能である、ということを意味する。所定の実施形態において、追加決定ポイント215,217を経由して設定される211Bのような追加サブの通路が、双方向アクセスの実現をサポートする。双方向通路は固有の利点をもつ。例えば、通常優先順位の試料は、常に同じ方向で取り扱われ、STAT試料は、サブの通路において逆方向に取り扱われる。これにより、STAT試料は、基本的にサブの通路の出口から入り、列を解消せずとも、列の先頭に直ぐに配置される。例えば、STAT試料が軌道200の区域204にある場合、その試料は決定ポイント215を経て通路210Bへと入ることができ、通路210Bを進んで直ちに列の先頭へ位置することができる。なお、これらの例の全てにおいて、待ち列は、ほぼサブの通路に限定されると見なせるので、STAT試料が直ちにアクセスする必要のないモジュールにおいては列を解消する必要は無い。後続のサイクルでSTAT試料を受け入れる必要のあるモジュールは、その時点で列を解消すればよく、各分析モジュールの作業を中断することなく、STAT試料に対する適時アクセスが実現される。
【0063】
モジュール式の設計は、別の利点も生む。分析モジュール内の自動化システムが、モジュールに備えられた軌道システムの利益を受けるように構成されていれば、共通軌道を使用する新たな特徴が追加される。例えば、モジュールは、試料ごとに規定された検査を実施するために必要な全試薬を含んだ自身の内部試薬回転棚を有し得る。分析モジュール内にストックされている試薬が減ってきたときに、所定の実施形態において、オペレータは、軌道200上の搬送体に追加の試薬を載せさえすれば、その試薬を補充することができる。軌道200上の試薬が該当するモジュールに到達すると、そのモジュールは、アーム又は供給システムなどの軌道から試薬を取り出す機械的システムを使用して、モジュール用の試薬庫にその試薬を入れる。
【0064】
所定の実施形態において、図3図2A図2Bに示す個々の軌道部分は、互いに自立して運行するか、受動的である。自立搬送体の移動は、試料搬送体を移動させるために摩擦軌道全体が動く局所のものではないコンベヤベルトなど、摩擦系軌道システムを越える利点を生む。このシステムでは、軌道上の他の試料も同じ速度で移動せねばならない。また、ある区域が違う速度で動いた場合、試料を搬送している受動搬送体の間に衝突が発生する。
【0065】
図4Aは、本発明に使用する搬送体250の一例を示す。搬送体250は、別の実施形態では、異なる積荷を保持し得る。1つの積荷を試料管255とすることができ、血液や尿などのような液体試料256が入れられる。その他の積荷としては、管又は試薬カートリッジのラックが含まれ得る。試料搬送体250は、ここに説明する内部電子部品を収容した主たるハウジング260を含む。その主たるハウジング260は、積荷を受容するブラケット(ホルダ)262を支持する。それは、所定の実施形態においては、試料管255を受容して、摩擦嵌合で以て保持するように設計された、浅い穴である。その摩擦嵌合は、所定の実施形態においては、弾力による固定又は作用で以て保持力を生み出す弾性口又はクランプを用いて作られる。所定の実施形態においては、試料ラック及び試薬カートリッジは、ブラケット262に適合するように設計されていて、ブラケット262を多様な種類の積荷に対応した汎用ベースとして機能し得るようにする。
【0066】
ハウジング260は、搬送体250が決定ポイント間の軌道を辿ることができるようにする案内部266によって支持される。案内部266は、例えば、軌道内の1以上のレールを受容するスロットを含み、縦横方向の支持を提供する。所定の実施形態において、案内部は、雨樋形軌道の壁など、軌道内の壁による搬送体250の案内を可能にする。案内部266は、搬送体のハウジング260内のモータによって搬送体(又はパック)250を軌道上で前進又は後進させるための摩擦車輪などのような駆動機構も含み得る。案内部266は、磁石や誘導コイルなどのような、本書を通して記述される実施形態において用いられるのに適した、その他の駆動部品を含み得る。
【0067】
書き換え可能な表示装置268が、搬送体250の上部に設けられる。この表示装置は、LCD配向パネルを含み、搬送体250によってリアルタイムに更新されて、試料256に関する状態情報を表示する。所定の実施形態においては、搬送体は、複数の試料を保持し、その搬送体内の試料の1つ以上に関する状態情報を、書き換え可能な表示装置が表示する。別の実施形態では、搬送体は、1以上の他の積荷を保持し、その搬送体にある1以上の積荷に関する状態情報を、書き換え可能な表示装置が表示する。搬送体250の頂部に電子的に書き換え可能な表示装置を設けることにより、その状態情報がオペレータによって一瞥で確認されるようにすることができる。これにより、オペレータは、グループ内に複数の搬送体250があるときに、探している試料を素速く見つけることが可能となる。書き換え可能な表示装置を搬送体250の上部に配置することにより、オペレータは、たとえ複数の搬送体250が引き出しやラックの中にあったとしても、状態情報を判別することができる。
【0068】
図4Bは、搬送体250を使うための軌道構成270の一例を示す。この例においては、主たる軌道272及びサブの通路274,274A(主たる軌道272又はサブの通路274,274A)に沿って、搬送体250Aが試料管を搬送し、搬送体250Bが管のラックを搬送する。通路276は、オペレータが試料を搬送体へ入れるか又は搬送体から試料を取り出すために、使用される。
【0069】
図4Cは、例示の軌道構成270に関しての追加の図である。この例においては、サブの通路274は免疫測定ステーションとして働き、サブの通路274Aは臨床化学ステーションとして働く。入口/出口レーン276は、主たる軌道272に対して試料を出し入れするときの試料緩衝域としてサブの通路277,278を使用する試料ハンドリングステーション280によって、使われる。
【0070】
所定の実施形態において、サンプルハンドラー280は、搬送体250A,250Bに対して、試料又は他の積荷の積み降ろしを行う。これにより、分析装置に対する要求のピーク時に、極めて多くの搬送体が軌道277,278上に待機した状態になることのないようにして、搬送体の個数を、軌道システム270にあるステーションによって現在使用されている積荷をサポートするために必要な量まで、減らすことができる。あるいは、試料トレイ(ここに開示する搬送体ではなく)を入口/出口レーン276においてオペレータが出し入れすることもできる。これにより、システムの全体的なコストを減らすことができ、かつ、必要とされる搬送体の数を、分析装置に対するスループットを超過するピーク要求の予測に基づいて決めるのではなくて、その分析装置のスループットによって決めることができる。
【0071】
−インテリジェント搬送体−
【0072】
本発明の実施形態では、インテリジェント自立搬送体を利用して、摩擦系軌道上の受動パックを越える改善を可能にする。例えば、従来技術に係る軌道システムの短所の一つとして、各決定ポイントにおけるパックの方向決めが、パックを回転させて光学的にバーコードを読み取ることによって軌道で行われる、ということがある。回転と光学読み取りは、相対的に遅い処理である。さらに、この処理は、試料管がオペレータによりパックに入れられたときに、その試料管の識別情報の演繹的な知識をシステムが持つことから、余分となる。本発明の実施形態では、搬送体の停止、回転、光学的読み取りを行うことなく、試料管の中身を同定する(そしてその情報を自動化システムと光学的に通信する)手段を有する搬送体が含まれる。
【0073】
例えば、搬送体は、積荷のバーコードを自動的に読み取る光学読み取り装置を内蔵する。その走査結果は、搬送体が処理能力を内蔵していれば、その搬送体の記憶装置に蓄積される。別の例では、搬送体に試料を入れた時にオペレータが操作する手持ちのバーコード読み取り装置などの外部ソースが、現在の電気通信又は光通信を使用する通信プロトコルなど、無線(RF)信号又はその他既知の手段を介して、積荷のバーコード情報を搬送体に通信する。所定の実施形態において、積荷を持つ搬送体の連携情報は、搬送体の外に蓄積され、搬送体の識別情報は、搬送体によって無線、光、又は近距離通信を通してシステムへと送られて、搬送体及び積荷の経路を選択し追跡できるようする。経路の決定は、積荷の固有バーコードを読み取るのではなくて、搬送体によって、又は、搬送体を同定することによって、行われる。
【0074】
個々の搬送体それぞれに載せて処理能力又は感知能力(あるいは処理能力及び感知能力)を移動させることにより、搬送体は、軌道システムを通る自身の経路選定に能動的且つインテリジェントに関与する。例えば、個々の搬送体が、自律移動能力又は軌道との通信のどちらによる場合であっても互いに自立して移動すれば、実用上の利点が生み出される。
【0075】
搬送体が自立して移動できれば、搬送体は軌道を速く回ることができる。搬送体の移動にとって鍵となる一つの制限は、開管試料をこぼさないようにすることである。その制限要因は一般に、直線における搬送体の速度ではなくて、搬送体が経る、飛散を引き起こすような加速度と加加速度(増速、減速、方向転換)である。従来技術の摩擦系軌道システムの場合、軌道の速度は、軌道全体が動いているので、通例、パックの経験する加速度及び加加速度がしきい値を超えないように制限される。一方、個々の搬送体に応答可能な自立運行区域、又は自立移動能力のある個々の搬送体を有する軌道システムを使用することによって、搬送体の加速度は、従来の軌道の速度よりも速い平均速度を可能としつつも、加速/減速度及び加加速度を制限するように、それぞれに合わせて決められる。搬送体の最高速度を制限しなければ、搬送体は、各軌道区域でそれぞれに適切な範囲で加速され続け、結果、軌道を回る平均速度が実質的により高められる。これにより、搬送体は、分析装置の1マシンサイクル以下で軌道システムを周回するように支援される。このマシンサイクルは、一例として、20秒又は40秒である。
【0076】
同様に、自律搬送体は、それ自体の識別情報と積荷の識別情報とを持っている。従って、搬送体は、個々の決定ポイントにて経路決定処理に対して能動的に関与し得る、又は、支援を行い得る。例えば、決定ポイント(例えば、スイッチ、交差点、乗換点、分岐)に到達すると、搬送体は、自身の識別情報及び積荷の識別情報のいずれか若しくは両方を(又は、搬送体が積荷の識別情報に基づき判断したその目的経路を)、無線又は近距離通を介して、軌道又は何らかの切り換え機構に伝送する。このようにすることにより、搬送体は、バーコード走査のために決定ポイントで停止しなくて済むこととなる。それに代わって、搬送体は、減速することなく進み続けることができ、リアルタイムに経路が選定される。さらに、物理的に決定ポイントに到達する前に、搬送体が行き先を知っている、又は、その識別情報を軌道と通信していれば(軌道が搬送体の行き先を知っていれば)、その搬送体は、方向転換すべき決定ポイントの手前で減速することができる。他方、搬送体が決定ポイントで方向転換する必要がない場合には、その搬送体が決定ポイント又は軌道のカーブ区域で方向転換することがなければ、その搬送体によって搬送されている試料はコーナーリングの力を受けないので、その搬送体は、より高速で進み続けることができる。
【0077】
自律搬送体は、内蔵処理及びセンサ能力を持ち得る。これにより、搬送体は、軌道によって指揮されるのではなくて、軌道上の何処に居て何処へ向かわなければならないのか、自分で判断することができる(なお、中央制御装置から運行経路指令を送って搬送体が実行するという実施形態も可能である)。例えば、軌道内の位置コード又はマーカーを、搬送体が読み取って、自身の現在位置を判別する。絶対位置情報が、軌道面にコード化され、軌道を進む搬送体に基準ポイントを提供する。この位置コード化は、種々の形態をとることが可能である。軌道は、その軌道の現区域を示す光学マーカー(例えば、仮想道路標識など)を用いて符号化することが可能であり、又は、その軌道区域内に具体的な絶対位置の光学コード(例えば、仮想距離マーカーなど)を含めるようにしてもよい。位置情報は、絶対位置マーク間のマーキングで符号化してもよい。これらの例は、同期化情報を提供し、現在の走行軌跡を推測している搬送体を支援する。光学コードスキームは、当業者に既知の適切な形式とし得る。光学コードスキームで使用する上記のマークは、ロータリーエンコーダに見られるような二進位置コード、軌道の所定位置に配置したLEDなどの光学目印、バーコード、QRコード、データマトリックス、反射目印などを含む。全体位置情報は、無線手段を経て搬送体へ送られる。例えば、軌道内のRFIDマーカーが搬送体へ近距離通信を提供し、軌道の所定域に入った搬送体にアラートを出す。所定の実施形態において、軌道に沿うか近くの局所送信器がGPSのような現位置情報を提供し、搬送体の現在位置確認を可能にする。別の実施形態では、ホール効果センサ又はカメラなど、軌道内のセンサが、個々の搬送体の位置を確認して、その情報を搬送体に中継する。
【0078】
同様に、搬送体が相対移動を示すセンサを有し、このセンサの提供するデータが蓄積されることによって位置が判断される。例えば、搬送体は、速度又は加速度を判断するために、ジャイロスコープ、加速度計、又は搬送体が移動するときに斑点パターンを観測する光学センサを持ち、相対位置を推測するために使用する。
【0079】
搬送体が軌道に対する位置と移動を知ることができるので、搬送体は、基本的に、提供された既知の自身の目的地へと自走して行く。その搬送体の運行経路は、各実施形態において種々の方法で提供され得る。所定の実施形態においては、搬送体に試料が積まれると、システムからその搬送体に目的の分析装置ステーションが告げられる。この情報は、搬送体が自律経路選定能力を持つ実施形態の場合、目的地ステーションの簡単な識別情報である。その情報は、搬送体が進んで行く個々の軌道区域及び決定ポイントの具体的通路を同定する経路リストなど、詳細情報であってもよい。運行経路情報は、無線通信、近距離/誘導通信、電気接触通信、又は光通信など、本書に説明する通信手法を介して搬送体へと送られる。
【0080】
例示する実施形態において、オペレータが試料管のバーコードを走査してその試料管を搬送体に入れると、システムは、その搬送体の識別情報を判定して、その試料の識別情報と合致させる。そして、システムは、その試料に関する記録を見つけ出し、分析装置においてその試料に実施すべき試験を確認する。そして、スケジューラが、個々の試験ステーションにおいてどの試験が行われるのかの選択、及び、分析を行う各試験ステーションに試料を何時到着させるべきかの選択も含めて、試料に対して試験リソースの割り当てを行う。そして、システムは、その運行計画(又は運行計画の一部)を搬送体に伝送し、その搬送体に、何処へ行く必要があるのかを、そして場合によっては、何時出発する必要があるのか若しくは何時到着する必要があるのかを、又は、何時出発する必要があり且つ何時到着する必要があるのかを、知らせる。
【0081】
搬送体が軌道に一旦入れられると、その搬送体の経路選定能力及び現在位置取得システムによって、軌道上の何処に居て軌道上の何処へ行くべきかが、その搬送体において判断される。軌道上を進行する搬送体は、各決定ポイントに到達し、場合に応じて、主たる軌道又はサブの通路へと向けられる。各搬送体は互いに自立して運行しているので、搬送体は、各決定ポイントで止まる必要無く且つ待ち列で他の搬送体を待つ必要も無く、極めて迅速に上記運行を実行する。それらの搬送体は迅速に移動するので、軌道の主たる区域における交通量は少なく、軌道内の決定ポイント又はコーナー(例えば、試料に過度の力が掛からないように搬送体が減速する区域)における衝突又は交通渋滞のリスクが減る。
【0082】
駆動力は、種々の形で以て搬送体に供給され得る。所定の実施形態においては、各搬送体に対する自立駆動力供給に軌道が能動的に関与する。一実施形態において、駆動力は、搬送体内の1以上の磁石に対して推進力を加える、軌道内の電磁コイルから供給される。この駆動力を供給するシステムの一例は、MagneMotion, Inc.の軌道システムであってMagneMotion, Inc.が譲受人の米国特許出願公開2010/0236445におけるリニア同期モータ(LSM)の説明によって、その概要が理解され得る。この磁気移動システムを利用する従来のシステムは、ここに説明するような搬送体の持つ知能を欠いた受動搬送体を含むものであった。そして、経路の選択および決定の全ては、中央制御装置によって行われていて、経路選定及び識別確認過程に関与する能動搬送体は全く必要無い。
【0083】
磁気移動を利用する実施形態において、電磁コイル及び磁石は、LSMとして働いて、個々の搬送体を、選択方向へ、速度、加速度、及び加加速度の正確な制御の下、推進する。軌道上の各コイル(又はコイルの局所セット)は、独立して運転され、個々に調整した加速度及び速度で以て個々の搬送体が移動できるように、高度に局所化した駆動力を個々の搬送体に与える。各瞬間で搬送体に専属するコイルは、そのコイルの傍を通過する個々の搬送体の方向、速度、加速度、及び加加速度の、正確な制御を提供するように励起される。
【0084】
所定の実施形態において、軌道は、局所的にカスタマイズ可能な摩擦軌道として機能する個々に関節化可能な多数のローラからなる。軌道の個々の小区域が個別に管理され、搬送体の直ぐ傍のローラが、個別化した速度、加速度、及び加加速度を提供するように制御される。所定の実施形態においては、他の能動軌道構成を使用して、各搬送体に、局所化した個別駆動力を提供する。
【0085】
所定の実施形態において、軌道は、主として受動的に、一次元で搬送体を案内するように、床、壁、レール、又はその他の、搬送体の移動に対する適切な規制を提供する。この実施形態において、駆動力は搬送体自身によって提供される。別の実施形態では、個々の搬送体が、1以上の内蔵モータを有し、車輪を駆動して、軌道と搬送体との間に自己推進摩擦系駆動力を提供する。軌道がコンベヤである従来の摩擦軌道とは異なり、駆動車輪を持つ搬送体は、自立して軌道を進み、個々に加速し減速することができる。これにより、各搬送体は、自身の速度、加速度、及び加加速度を各瞬間で制御し、個々に選定した経路に則して軌道上を進むと同時に、その積荷に掛かる力をコントロールすることができる。所定の実施形態において、永久磁石が軌道内に配置され、搬送体内の電磁石が搬送体を前進させるべく操縦されるようにすることによって、その搬送体が駆動磁力を供給するLSMとして機能することとなる。他の受動軌道構成として、搬送体が浮かんでウォータージェットなどで自律移動する液体軌道、軌道から提供される空気のポケットに搬送体が浮かぶ(例えば、局所化したエアホッケーテーブルのように機能する)低摩擦軌道、又は、個々の搬送体が軌道を進むときに個別化した駆動力を体験できるようなその他の構成なども考えられる。
【0086】
図5は、一例としてのインテリジェント自律搬送体300に関する制御システム及びセンサの、最上位概念的なシステムを図解したものである。搬送体300は、マイクロコントローラ301によって制御され、このマイクロコントローラ301は、道案内(ナビゲーション)、メンテナンス、移動、及び搬送体を運転するために必要なセンサの活動を取り扱うのに十分な能力を有する。従来技術に係る受動搬送体とは異なり、能動搬送体300は内蔵電気部品を含んでいるので、内蔵電源ステーションを有する。このステーションの細部は、本発明の実施形態の違いによって異なる。所定の実施形態においては、電源システム303が搬送体の運行時に充電可能なバッテリーを備え、別の実施形態においては、バッテリーが搬送体の非運行時に取り替え可能か又は手動充電可能である。電源システム303は、バッテリーを維持するために必要な充電回路を含み得る。他の実施形態において、電源システム303は、キャパシタを備えており、それは誘導機構によって軌道自体から得られた電圧によって充電される、又は、地下鉄車両や鉄道模型車両が電力を受けるのと同じような方法の電気的接触機構によって軌道自体から得られた電圧で以て充電される。
【0087】
マイクロコントローラ301は、システムメモリ304と通信する。システムメモリ304は、データ及び指令メモリを含む。メモリ304中の指令メモリは、搬送体の運行に十分なプログラム、アプリケーション、又は指令を含んでいる。このメモリは、センサハンドリングアプリケーションと共に道案内の手順を含み得る。メモリ304中のデータメモリは、現在位置、速度、加速度、積荷内容、案内計画、搬送体、若しくは積荷の識別情報、又は、その他の状態情報についてのデータを含む。搬送体300に内蔵メモリを含むことによって、搬送体は、自身の現状の経過を追うことができ、その情報を用いて、軌道上でインテリジェントに経路選定するか、又は、軌道若しくは他の搬送体へと状態情報を伝送する。
【0088】
マイクロコントローラ301は、移動システム305、センサ312,313,314、通信システム315、状態表示部316、及び、試料センサ317を制御する。これらの周辺装置は、バス310を介して、マイクロコントローラ301によって制御される。バス310は、CANバスなどの標準的バスであり、多数の周辺装置と通信する能力を持つ、又は、個々の周辺装置に対する個々のシングルパスを含む。周辺装置は、それぞれ独自の電源を使用する、又は、共通の電源システム303を使用する。
【0089】
移動システム305は、ここに説明する移動システムの運転に必要な制御ロジックを含む。例えば、移動システム305は、駆動車輪を用いる実施形態においては、モータコントローラを含む。他の実施形態では、移動システム305は、搬送体300に駆動力を供給するために必要な能動軌道システムとの通信に必要なロジックを含む。このような実施形態においては、移動システム305は、マイクロコントローラ301に実行され、軌道との通信に通信システム315を利用するソフトウェアコンポーネントであり得る。移動システム305に制御されるモータ、アクチュエータ、及び電磁石などのデバイスは、これらデバイスが搬送体内蔵である実施形態の場合、電源システム303から電源供給を受ける。LSMが軌道内コイルを励起することによって駆動力を得る形態などのような実施形態では、外部電源も使用可能である。所定の実施形態において、移動システム305は、搬送体内又は搬送体外のデバイスを制御して駆動力を生成する。所定の実施形態において、移動システム305は、軌道内制御装置など、他の制御装置と協働し、軌道内の近いコイルの励起を要求したり、局所ローラの動作を要求したりするなどして、駆動力を調整する。このような実施形態において、移動システム305は、通信システム315と協働して搬送体を移動させる。
【0090】
搬送体300は、1以上のセンサを含むようにすることができる。所定の実施形態において、搬送体300は、衝突検出システム312を含むようにすることができる。衝突検出システム312は、他の搬送体の接近を判断するためのセンサを搬送体の前部又は後部に含むようにしてもよい。衝突検出センサの一例として、赤外線距離計、磁気センサ、マイクロ波センサ、光学検出器が含まれる。多くの従来技術に係るパックは丸いが、搬送体300は前部と後部を有していて、方向性がある。方向性のある形状を持つことにより、搬送体300は、前方衝突検出器と後方衝突検出器を含み得る。
【0091】
所定の実施形態において、衝突検出情報は、通信システム315を経て受信される情報を含むようにすることができる。例えば、所定の実施形態において、軌道の中央制御装置は、軌道上の搬送体の現在位置及び速度を観測して衝突状況を評価し、衝突を避けるために搬送体へ更新した道順を送信する。所定の実施形態において、近くの搬送体は、ピアツーピアで自分の位置を通信可能である。これにより、搬送体は、他の搬送体から受信されるリアルタイムの位置情報に基づいて衝突のリスクを個々に評価することができる。なお、搬送体が他の搬送体の走行軌跡情報を受信する実施形態の場合、あるいは、近くの搬送体の走行軌跡情報を入手可能な一極集中型制御装置の支援で判断が行われる実施形態の場合には、それら搬送体は、方向性を持っている必要は無く、それら搬送体の向きに依存しないセンサ又は受信器を含み得る。
【0092】
搬送体300は、位置デコーダ313も含むようにすることができる。このセンサ313は、ここに説明するようにして、搬送体の位置を推測する。例えば、位置デコーダ313は、カメラ又はその他の光学手段を含み、軌道内の目印を識別するか、又は、軌道内の光学コードを観測する。所定の実施形態において、位置デコーダ313は、搬送体の現在位置、方向、速度、加速度、及び加加速度の少なくともいずれかを判断するのに十分な、慣性センサ、磁気センサ、又はその他のセンサを、含むようにすることもできる。
【0093】
搬送体300は、場合によっては、バーコードリーダ314を含むようにすることも可能である。バーコードリーダ314を備える場合、搬送体300は、試料が搬送体に積まれた時点で、又は、その後の任意の時点で、その積荷のバーコードを読み取る。これにより、各決定ポイントで搬送体を止めて試料管のバーコードをシステムが読み取る必要が無くなる。試料管の識別情報を読み取って記憶することによって、又は、その情報を全体システムに送ることによって、搬送体は、決定ポイントへの到着前に経路を決めることが可能となるので、軌道をより効率的に進むことができる。搬送体に試料が載せられたときにその試料の識別情報をシステムが知るようにした実施形態では、そのシステムが外部バーコードリーダを含み、積荷の識別情報を、通信システム315を介して搬送体の記憶装置及びメモリ304へと伝送する。
【0094】
通信システム315は、搬送体が自動化システム全体と通信するために十分な機能を備える。例えば、通信システム315は、802.15.4、802.11の適切なバージョン、標準又は専有の無線プロトコルなど、既製の通信プロトコルを使用した無線通信用のXBee通信システムを含む。通信システム315は、送信器、アンテナ、そして無線通信プロトコルを実施するロジックを含む。所定の実施形態において、通信システム315は、近距離通信、光通信、又は電気接触部品も含む。搬送体300へ又は搬送体300から通信システムを経て送られる情報は、本願全体を通じて説明される。
【0095】
所定の実施形態において、搬送体は、状態表示モジュール316も含む。状態表示モジュール316は、コントローラと、双安定表示装置(例えばコレステリックLCDパネルやE−inkディスプレイ)などのような書き換え可能な電子的な表示装置とを含む。所定の実施形態において、コントローラは、マイクロコントローラ301が状態表示装置316を容易に更新できるように、メモリのアドレス指定可能領域として扱われる。
【0096】
所定の実施形態において、搬送体は、試料センサ317も含む。試料センサ317は、搬送体の管ブラケット(管ホルダとも称する)に液体容器が有るか無いかを示すために使用される。所定の実施形態において、試料センサ317は、管が有る場合には押し込まれ、管が無い場合には押し込まれない、モーメンタリ機械スイッチである。その情報は、管の状態を判断するために使用され、状態表示部モジュール316による状態情報の表示を支援する。
【0097】
−状態情報の表示−
【0098】
IVD環境における典型的なオペレーションは、試験する液体試料のグループを受け取ることで開始される。各管は、それぞれバーコードを持ち、搬送用のラックに入れられる。オペレータは、手作業で管を仕分けるか、又は、オペレータのために管を仕分けする自動化デバイスを使用する。従来技術において、これらの管は組織化されるが、管のラックを運ぶオペレータは各試料の特徴に関する情報又はそれについて判断する能力を、少ししか持ち得ない。例えば、STAT試料が軌道システムの入口レーンに入れられたとする。それらの試料は、重要と見做されて、その取り扱いにあたっては、オペレータによって試料ハンドリングの優先権が与えられるべきである。しかしながら、どの試料がSTAT試料であるかを一目で知らせる機能がなければ、オペレータにとって、STAT試料を適切に取り扱うことは困難である。更には、自動化軌道に未だ入れられていないラックの試料の全てを同じ分析装置に送る必要があるというわけではない。このことが原因となって、オペレータが複数の機器間で試料のトレイを運び、そして各機器へ入れるべき適切な試料を選別しようとするときに、混乱と処理の遅れとが生じることとなる。
【0099】
1以上の試験ステーションは、分析装置に一旦入れられると、各試料と相互作用する。それらのステーションは、低容量であるという問題、又は全血試料における凝血などの沈殿といった問題が試料に生じているか否かの検出も含めて、試料の現在の特性を判断する。試料の中には、複数の試験ステーションに送って複数の試験を受けさせなければならないものもある。代表的なIVD環境では、各試料が半ダースほどの試験を経る。IVD環境によっては、同じ分析装置又は同じ自動化システムからアクセス可能な分析装置によって全ての試験が行われる、というわけではない。したがって、所定の実施形態において、オペレータは、搬送体又は管を、別の処理のために自動化システムから取り出す必要が出てくることとなる。
【0100】
本発明の実施形態は、これらの課題を、試料に関する状態情報を自動的に表示する電子的に書き換え可能な表示面を含む搬送体を提供することによって、解決する。所定の実施形態において、それらの搬送体は、自動化軌道から取り出され、アレイ又はトレイのなかに置かれて、容易に搬送されるようにすることが可能である。表示情報は、トレイ中でも表示され続け、所定の実施形態においては、トレイにある間も無線方式で以て更新され続ける。所定の実施形態において、それら搬送体は、軌道システム内又は外のトレイ内にある間、状態情報を表示するように構成される。
【0101】
インテリジェント搬送体に書き換え可能な表示面を組み合わることにより、その搬送体は、状態を自動的に更新し且つその状態を維持し表示する手段を有する。例えば、搬送体が自動化システムを通し移動する場合、その搬送体は、制御装置から無線で情報を受信する。この情報は、運行経路情報と共に搬送中の試料に関する状態情報を含む。その状態情報が、搬送体で利用可能な内蔵の電力、メモリ及び制御を使用して、書き換え可能な電子的な表示装置に表示される。
【0102】
その書き換え可能な状態表示装置として、搬送体の上面が含まれ得る。表示装置は、コレステリックLCDやE−inkディスプレイなどの能動双安定表示装置であり得る。別の実施形態では、LED、電気蛍光装置、AMOLED、あるいは携帯又は移動デバイスで使用される他の種類の表示装置が含まれる。これらの表示装置は、LCD等であれば揮発性であり、E−inkディスプレイ等であれば不揮発性である。不揮発性表示装置を用いた場合、その表示装置は、更新後の状態情報を給電せずとも表示し続けられる。双安定であることは、少しの供給電力又は給電無しで表示状態を維持する不揮発性表示装置として機能し得るということである。
【0103】
所定の実施形態において、双安定表示装置は、パックのような受動搬送体で使用される。この実施形態の場合、外部電界をパック表面に印加することで状態情報が反映され、電界で書き換えられるまで表示され続ける。表示装置への電界印加は、予め決められたパターンで以て状態を伝達するための電界を放射する平面によって行われるようにすることが可能である。この電界及びその生起パターンの直近に入った表示装置は、あたかも電子的にスタンプされたかのように更新される。別の実施形態において、表示装置は、分離された上下電極のいずれか又は両方によってそれぞれ駆動される画素又は他のパターン要素を、その装置内に含んでいる。一時的に電気接触する、というようにして、その電極に一時的に給電することにより、表示装置は短時間接触で更新され、その接触が断たれた後も状態情報が維持される。このように、本発明の実施形態は、ここに説明する能動搬送体に加えて受動デバイスでの使用にも適していることが分かる。
【0104】
図6Aは、書き換え可能な表示装置400を例示している。書き換え可能な表示装置400は、搬送体の上部として示されており、その他の構成は省略されている。書き換え可能な表示装置400は、試料管を受け入れるために使用する中空域410と書き換え可能な表示面420とを含む。書き換え可能な表示面420は、LCDパネル、E−inkパネル、又はその他の適切な電子的に書き換え可能な表示面であり得る。所定の実施形態において、この書き換え可能な表示装置は、書き換え可能な表示面420の一部分であり得る。
【0105】
図6Bに示すように、複数の搬送体が、例えばオペレータによる容易な取り扱いのためのトレイに入れられたときなど、アレイ430に並べられる。例えば、分類器により又はオペレータにより試料が仕分けられた後、試料を収容している搬送体はアレイ430に入れられて、アレイ430中の各試料の状態に関する情報が、各搬送体の書き換え可能な表示装置の表示面に表示される。
【0106】
情報は、使用されている表示面の能力に従って種々の方法で、書き換え可能な表示面から伝えられる。第一に、状態情報を伝達するために色が使用可能である。例えば、試料の処理が終わったこと又は試料が品質試験を通ったことは、緑色で示される。試料が次の試験を待っているときは、黄色で示す。異物が検出された、次の試験に送るには試料の容量が少なすぎる、などのような、試料にエラーがあるときは、赤色で示す。STAT試料については、標準優先度の試料と並んでいても容易に識別できるように、青色などの独自色とすることができる。
【0107】
第二に、情報を伝達するためにパターンを使用することができる。例えば、菱形、三角形、四角形、円形などの形状、ロゴ、質感、又は容易に区別可能なその他のシンボルが、状態に関する情報をオペレータに示すべく表示面に表示される。表示パターンは、点滅パターンなど、時間的に変化させてもよいし、あるいは、エラーなどの試料の重要性を色で指摘することもできる。第三に、次の目的地や試料の識別情報などのような具体的な情報をオペレータに示すために、搬送体の表示面に文字を表示することができる。その文字は、人間によって読み取られ得るものなのであるから、オペレータがそれぞれのバーコードを走査する必要無しに自分の探している試料を見つけ出すのに役立ち得る。
【0108】
図7は、搬送体の書き換え可能な表示面で状態情報を表示するために使用可能な視覚パターンを例示する。表示面441は、ブランク表示を示し、管が無いか確認されていないことを表す。表示面442は、主たる領域を含んでおり、この主たる領域の色又は濃淡が管の存在を表すと共に、その表示面の小領域が、管の優先順位(例えば標準)を表すブランクになっている。パターン444は、試料が待機していることを表す別の表示面を例示する。このようなパターンとしては、無地の暗くした又は色をつけた表示面、菱形パターン、又は試料が待機中であることを表す文字が含まれる。濃淡は、表示面の一部(例えば画素又は領域)を部分的に点灯/消灯することによって、又は、その一部のパルス幅変調によって達成されるデジタルグレースケール値を使用して、生成することができる。
【0109】
表示面446は、主たる領域を含んでおり、この主たる領域の色又は濃淡が管の存在を表すと共に、表示面の小領域が、管の優先順位(例えばSTAT)を表す無地又は赤色になっている。表示面447は、STAT試料を表示する別の実施形態を示しており、試料を同定する文字域の使用を含んでいる。表示面448は、特定の分析装置又は試験ステーションへ移るべく待機中の試料であることを表す表示面の実施形態を例示している。これには、試料の識別情報を表示する文字域と、試料の予定された目的地を同定する文字域あるいはオペレータに対する次の指示とが含まれる。指示を使用することにより、オペレータは、最小限のトレーニングで、又はトレーニング無しで、試料に何をすべきか容易に判断することが可能となる。
【0110】
表示面449は、エラー表示の実施形態を例示する。主たる領域が、エラーの色(例えば赤)又はパターン(例えばストライプ、ブランク等)を表示し、その一方で、第1の文字域が、試料の識別情報を表示し、かつ、第2の文字域が、試料の容量が少ないことなどのような、エラーの種類を表示する(例えば「試料不足」)。
【0111】
複数の実施形態においては、試料の識別情報を含む文字域を有するようにすることができる。この識別情報は、試料のバーコードにおける固有識別子であるか、又は、IVD環境でのみ使用されるID、試料の種類、患者名、若しくは記録識別子を含む、その他の識別指標かであるようにすることができる。
【0112】
図8は、複数の試料の状態を表示する搬送体のアレイを例示する。この例において、搬送体452,454,456は処理済み試料を表す。主たる領域が、試料の処理済み状態を表す緑色又は白色などの第1の色又はパターンを含んでいる。第1文字域は、各試料の識別情報を示し、第2文字域は、試料の処理済み状態を示している。搬送体462,464,466は、これら試料の試験が未処理であることを表す。主たる領域が、未処理状態を表す灰色又は黄色などの第1の色又はパターンを含んでいる。第1文字域は、各試料の識別情報を示し、第2文字域は、オペレータへの指示又は自動化システムがその試料の試験を終えるために実行する次のステップを示している。搬送体472,474,476は、エラーをもつ試料の存在を表す。主たる領域が、試料のエラー状態を表す赤色又は黒色などの第1の色又はパターンを含んでいる。一方、第1文字域は、試料の識別情報(既知であれば)を示し、第2文字域は、特定のエラーの種類を示している。例えば、搬送体472は、識別情報をつきとめることのできないバーコードエラーが試料にあることを表す。搬送体474は、試料の容量が次の試験に不十分であることを表す。搬送体476は、試料に凝血があることを表す。
【0113】
図9は、書き換え可能な表示装置の基本操作500のフローチャートを示す。ステップ502において、システムは、試料管などの1以上の積荷に関する情報を読み取り、その情報を搬送体と結びつける。このステップには、例えば、自動又は手動でバーコードを走査して試料管の識別情報を判別することが含まれる。さらに、搬送体の内蔵センサを使用して管の有無及びバーコード読み取り後の搬送体における新しい管の有無を検出し、搬送体に新しい管が入れられたことを判断することが含まれる。所定の実施形態において、ステップ502は、システムレベルで実行され、管の状態情報は、自動化システムの中央処理装置によって維持される。ステップ504において、状態が搬送体へ通信される。この通信は、所定の実施形態において、無線通信によって行われる。
【0114】
ステップ506において、搬送体は、中央処理装置から状態情報を受信し、その情報を内蔵メモリに記憶する。ステップ508において、搬送体は、書き換え可能な表示パネルを更新して、現在の状態を表す。搬送体が、自動化システムを通し試料を移動させることで、試験ステーションが試料と相互作用して、状態が変化する。ステップ512において、自動化システムが、試料を評価し、状態が変わったか否か判断する。これは、例えば試料ピペットが試料に作用して試料の容量と品質を検出するときに行われる。この情報は、試料の状態(例えばエラー)を判断するために使用可能である。更には、試験ステーションが試料の試験を完了すると、その試料の状態(次の試験、未処理/処理済みなど)が変化する。ステップ504において、更新された状態が、搬送体へと無線送信される。
【0115】
ステップ516において、搬送体は、無線送受信器を通じて自動化システムから新しい状態を受信する。ステップ518において、搬送体は、その状態が表示中の状態と異なるか否かを判断する。違わなければ、搬送体は、試料状態の更なる更新を待つ。状態が変化し且つ表示が更新されるべきである場合には、搬送体は、ステップ508にて表示を更新する。
【0116】
所定の実施形態において、オペレータは、試験対象の管のラックを受け取る。これらの管は未だ搬送体に入れられていない。オペレータがそれぞれのバーコードを走査することにより、識別情報と、その他の、例えば試料の試験予定のような情報とが、自動化システムにおいて取得される。そして、その自動化システムの中央処理装置は、管を特定の搬送体に割り当てる。そして、この関連付けを特定の搬送体に通信し、割り当てられた搬送体を点滅させるか点灯させる。これにより、どの搬送体に管が割り当てられたかをオペレータが判断することが可能となり、正しい搬送体に管が入れられることとなる。
【0117】
所定の実施形態において、オペレータが管を走査した後に、中央処理装置が、付近の搬送体に問い合わせを行い、管の走査後に短時間で新しい管を受け入れられる搬送体を特定する。この方法の場合、中央運行計画装置は、オペレータが管を入れた搬送体を自動的に同定することができる。搬送体を同定した後、中央処理装置は、識別情報などの管/試料に関する状態情報を、該当する搬送体に通信する。これは、試料に対する確実な流通管理を保証するために使用可能である。
【0118】
所定の実施形態において、搬送体内の試料がオペレータによって規定された基準を満たすか否かを示すためにも、状態表示を使用することが可能である。例えば、オペレータが、ある患者に関する試料を判別したいとする。このオペレータは、搬送体との間で状態情報を交信する中央制御装置に問い合わせを送る。その制御装置は、この問い合わせを、IVD環境にある試料の状態情報データベースに照会し、その問い合わせに適合する試料を判別する。そのデータベースは、中央制御装置によって維持されている。その問い合わせに応じて、中央制御装置は、該当する搬送体群の状態情報を更新し、これにより、該当する搬送体群において積荷が一時的に表示される。例えば、中央制御装置は、問い合わせられた患者の試料の全ての搬送体に指示を無線で送信し、その表示を点滅させることによって、その問い合わせに該当する試料をオペレータが一目で理解できるようにする。
【0119】
搬送体が操縦能力を持ち、次の内部スイッチの支援無しで決定ポイントの方向転換が可能である実施形態においては、その搬送体は、自身の操縦機構と連動して、接近する決定ポイントにて、適切な通路へとその向きを定めることができる。決定ポイントでの方向転換後(又は方向転換せず進んだ後)、搬送体は、ステップ504へと戻り、自身の次の走行軌跡を判断する。
【0120】
本発明の実施形態は、既存の分析装置及び自動化システムに組み込むことが可能である。搬送体は、考え得る分析装置又は設備での使用に適したレイアウト及び物理的構造を含めて、種々の形状及びサイズに構成することが可能である。例えば、所定の実施形態において、搬送体は、自動化軌道を巡って複数の試料を搬送可能なように複数のスロットを含み得る。一実施形態では、例えば、1以上の搬送ラックに多数のスロットを持つ搬送体の管保持部分の物理的レイアウトを含み得る。各ラックは、複数のスロット(例えば5以上のスロット)を含み、各スロットが管(例えば試料管)を保持するように構成することが可能である。
【0121】
実施形態を例示して本発明を説明してきたが、本発明は、それらに限定されない。当業者であれば、多種多様な変更と修正を本発明の好適な実施形態に対して行えること、及び、そのような変更および修正を本発明の思想から逸脱することなく行えることは、自明である。従って、添付の複数の請求項は、そのような等価のバリエーションの全てが本発明の思想及び範囲として含まれるように意図されている。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
【国際調査報告】