特表2015-509661(P2015-509661A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2015-509661単結晶の金属−半導体接合体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-509661(P2015-509661A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】単結晶の金属−半導体接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20150303BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20150303BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20150303BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150303BHJP
【FI】
   H01L21/28 301S
   H01L21/28 301B
   H01L29/50 M
   H01L21/28 B
   H01L29/78 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-557997(P2014-557997)
(86)(22)【出願日】2013年2月16日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月21日
(86)【国際出願番号】DE2013000087
(87)【国際公開番号】WO2013127378
(87)【国際公開日】20130906
(31)【優先権主張番号】102012003585.3
(32)【優先日】2012年2月27日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ・クィン−タイ
(72)【発明者】
【氏名】クノル・ラルス
(72)【発明者】
【氏名】マントル・ジークフリート
【テーマコード(参考)】
4M104
5F140
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA02
4M104AA03
4M104BB19
4M104BB21
4M104BB39
4M104CC01
4M104DD34
4M104DD37
4M104DD79
4M104DD80
4M104DD81
4M104DD84
4M104HH04
4M104HH15
5F140AA10
5F140AC28
5F140BA01
5F140BA05
5F140BH27
5F140BJ01
5F140BJ06
5F140BK29
5F140BK33
(57)【要約】
単結晶の金属−半導体接合体を半導体の機能層の表面に製造する方法において、最初に、金属を含有する貯蔵層を機能層上に設ける。引き続き、テンパリングにより、金属が機能層と反応する。本発明によれば、貯蔵層は、少なくとも、該機能層の表面から5nmの層の厚さで終端するか、又は、少なくとも、該機能層に直接近接する境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内で移行する層の厚さで終端する。この方法により、金属の機能層中への拡散流れを有利に低減することができる。金属−半導体接合体が単結晶であるか否かは、そのことに直接依存することが判明した。貯蔵層は、金属又は金属の合金からなり、互いに拡散障壁によって分離されるが、機能層に直接隣接して境界する金属からなる層及び金属の合金からなる少なくとも1つの層である、少なくとも2つの層を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初に、金属を含有する貯蔵層を機能層上に設け、そして引き続いて、テンパリングによって金属と該機能層との反応を誘発する、半導体機能層の表面上の単結晶金属半導体接合体の製造方法であって、該貯蔵層が、少なくとも、該機能層の表面から5nmの層の厚さで終端するか、又は少なくとも、該機能層に直接近接する境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内で移行する層の厚さで終端することを特徴とする、上記の方法。
【請求項2】
半導体として半導体合金が選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体合金が、第4主族からの元素だけを含有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
半導体合金が、SiGe、GeSn、SiSn、SiGeC、SiC、SiGeSn、SiGeCSn又はSiCSnの群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記貯蔵層が、少なくとも、該機能層の表面から3nmの層の厚さで終端するか、又は少なくとも、該機能層に直近の境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内で移行する層の厚さで終端することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記貯蔵層が、金属、金属の合金又は金属の化合物を含有する少なくとも2つの層を含み、それらの層は拡散障壁を介して互いに分離していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記貯蔵層が多層構造を有しており、それぞれが、
・金属、金属の合金、又は金属の化合物からなる層、及び
・拡散障壁、
を交互に有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
拡散障壁として、アルミニウム、酸化物又は窒化物が選択されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記貯蔵層と、前記半導体機能層との間の境界において少なくとも一つの拡散障壁の材料の一部が拡散しており、そしてそこで、金属−半導体接合体の形成を触媒することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記貯蔵層が、前記機能層に直接近接する金属の層、及び金属の合金の少なくとも1つの層を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
追加の合金元素として、Al、Co、Cr、Pd、Pt、Ti、Wの群から一種又は複数種の金属が選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属−半導体接合体において、化学量論量の金属原子が該半導体の形成単位に採用されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
基板上に定着し、該基板に対してクランプする機能層が選択されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記機能層と反応しなかった前記貯蔵層の一部をテンパリングした後に、化学的選択エッチングによって除去することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の機能層の表面に単結晶の金属−半導体接合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素化合物は、現在の技術によれば、CMOSトランジスタにおいて最も広く用いられている接触材料である。該化合物は、堆積させた金属をシリコン基板と反応させることによって発生する。ケイ素(シリコン)半導体に代えて、第4主族の半導体合金を新規な電子デバイス及び光電子デバイスに用いるべき場合、三元及び四元金属(M)−シリサイド/ゲルマニド(MSiGe、MGeSn、MSiSn、MsiGeC等)を、単純なシリサイドに置き換える。その場合の反応機構は非常に複雑である。島状半導体膜の形成並びにゲルマニウムの分離は、テンパリング工程後に、NiSiGeのケイ素化の際に起こる(J. Segera, S. L. Zhang, D. Mangelinck, and H. H. Radamson, Appl. Phys. Lett. 81, 1978 (2002)(非特許文献1);及びQ. T. Zhao, D. Buca, S. Lenk, R. Loo, M. Caymax, and S. Mantl, Microelectron. Eng. 76, 285 (2004)(非特許文献2)参照)。異なる反応エンタルピーに基づいて、結果として生じるシリサイド/ゲルマニドの層の厚さは一様ではなく、そして、境界面は粗い。図1は、典型的なSiGeMOSFETの断面図を示している。図2は、ソース/ドレイン材料としてのSiGeによって歪んだチャンネルを有するMOSFETの一例を示している。NiSiGe層は、図1及び図2の例において接合材料として用いられる。その場合、金属及び半導体の間の粗な境界面は、図1及び図2のトランジスタの特性を劣化させ、そして、電流の漏れ、高い接触抵抗及び低い熱安定性を招く。
【0003】
それ故、第IV属の半導体合金に対して原子レベルでフラットな境界面を有するシリサイド及びゲルマニドの製造を可能にし、そして、熱安定性を高めることが非常に重要である。文献、L. J. Jin, K. L. Pey, W. K. Choi, E. A. Fitzgerald, D. A. Antoniadis, A. J. Pitera, M. L. Lee, D. Z. Chi, M. A. Rahman, T. Osipowicz, and C. H. Tung, J. Appl. Phys. 98, 033520 (2005)(非特許文献3);L. J. Jin, K. L. Pey, W. K. Choi, E. A. Fitzgerald, D. A. Antoniadis, A. J. Pitera, M. L. Lee, and C. H. Tung, J. Appl. Phys. 97, 104917 (2005)(非特許文献4)には、Pt又はPdのような元素を添加することによって、Ni−Pt又はNi−Pd合金を製造することが開示されている。Ni(Pt)SiGe又はNi(Pd)SiGeのモフォロジー及び熱安定性は、NiSiGeと比較して改善されている。しかしながら、結果として得られるシリサイド/ゲルマニド層は多結晶性である。
【0004】
エピタキシャルシリサイド及びゲルマニドは、ほぼ完璧な境界面、及び粒界がないことに起因した高い熱安定性により、多結晶の層と比較して有利である。製造において困難であるのは、半導体合金上に第IV主族の元素を慣用的に斜方相で結晶化させることである。文献、B. Zhang, W. Yu, Q.T Zhao, G. Mussler, L. Jin, D. Buca, B. Hollaender, J. M. Hartmann, M. Zhang, X. Wang und S. Mantl, Appl. Phys. Lett. 98, 252101, (2011)(非特許文献5)は、エピタキシャルNi(Al)Si0.7Ge0.3を示しており、これは、緩和SiGe上でのNi/Alのテンパリングによって発生する。ただし、その際に必要な温度は、600℃超であり、そのため、歪みSiGeに適した温度範囲を超えている。高い温度は応力緩和を引き起こし、そして、特に、高いGe含有量のSiGeにおいて望ましくないGe拡散を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Segera, S. L. Zhang, D. Mangelinck, and H. H. Radamson, Appl. Phys. Lett. 81, 1978 (2002)
【非特許文献2】Q. T. Zhao, D. Buca, S. Lenk, R. Loo, M. Caymax, and S. Mantl, Microelectron. Eng. 76, 285 (2004)
【非特許文献3】L. J. Jin, K. L. Pey, W. K. Choi, E. A. Fitzgerald, D. A. Antoniadis, A. J. Pitera, M. L. Lee, D. Z. Chi, M. A. Rahman, T. Osipowicz, and C. H. Tung, J. Appl. Phys. 98, 033520 (2005)
【非特許文献4】L. J. Jin, K. L. Pey, W. K. Choi, E. A. Fitzgerald, D. A. Antoniadis, A. J. Pitera, M. L. Lee, and C. H. Tung, J. Appl. Phys. 97, 104917 (2005)
【非特許文献5】B. Zhang, W. Yu, Q.T Zhao, G. Mussler, L. Jin, D. Buca, B. Hollaender, J. M. Hartmann, M. Zhang, X. Wang und S. Mantl, Appl. Phys. Lett. 98, 252101, (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、半導体機能層上に、低温の場合でも品質的に高い価値を有する単結晶の金属−半導体接合体を製造することが可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に記載の方法によって本発明により解決される。さらに有利な形態は、該独立請求項に関連した従属請求項で与えられる。
【0008】
本発明の範囲内において、半導体機能層の表面において単結晶の金属−半導体接合体を製造する方法が開発された。その場合、最初に、金属を含有する貯蔵層が機能層上に設けられる。引き続き、テンパリングにより、該金属と該機能層との反応を誘発させる。
【0009】
本発明によれば、該貯蔵層は、少なくとも、該機能層の表面から5nmの層の厚さ、好ましくは、3nmの層の厚さで終端するか、又は少なくとも、該機能層に直接近接する境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内を移行する層の厚さで終端する。
【0010】
金属が機能層の半導体の材料と反応する領域中へのその金属の拡散流れ(時間単位当たりの質量)が、層の厚さによることが大きいことは知られている。貯蔵層が、特許請求の範囲に記載の厚さで終端する場合、拡散した金属だけが、上記の反応において半導体材料と反応することができる。それ故、該金属は、実質的に例外なく、所望の単結晶の金属−半導体接合体に転化される。それに対して、層がより厚い場合、反応領域中で金属の過剰供給が起こる。このことは、様々な大きさの粒子及び配向の形成を招き、それにより異なる速度で成長する。例えば、機能層が、それが上に設けられる基板に対して歪んでいて、時間単位当たりに反応領域中へ拡散する金属量が多すぎる場合、不本意に歪みが開放される場合がある。
【0011】
その際、金属の拡散流れは、実質的に、貯蔵層の範囲の厚さによって画定され、その範囲は機能層に直接近接した境界を有する。該貯蔵層における所与の位置から機能層への拡散流れは、その位置の金層層からの距離に対して指数関数的に低減する。そのため、機能層へ拡散する金属に関する、該貯蔵層から機能層中への拡散流れの全量に対する貯蔵層の局所的な透過性の影響は、機能層へのみなし受容箇所の距離が増大するにつれて同様に減少する。特許請求の範囲に記載の層の厚さで貯蔵層が終端している場合、金属の量についての限界も同時に設定され、その量は全体的に、金属−半導体接合体の形成に使用することができる。その際に、金属−半導体接合体の品質に関する利点もまた存在することが判明している。金属−半導体接合体のために反応する金属全体が少ない程、テンパリングのときに金属−半導体接合体への反応がより速く完了する。テンパリングが継続する場合には、それにより金属−半導体の層はそれ以上厚くなるのではなく、該層が配置される。平坦な表面よりも高い潜在エネルギーを有することから、とりわけ粗さは平らにならされる。これに加えて、金属がさらに拡散する場合、それは配線プロセスを中断する。金属の拡散流れが減少すると共に、より大きな粒子のこの新たに加わった金属が、層の配線と比較してエネルギー的に優遇される時点に到達することにより、製造された金属−半導体層の品質が悪化する。
【0012】
しかしながら、貯蔵層は、特許請求の範囲に記載した層の厚さで終端する必要がない代わりに、金属が全体的に拡散するような範囲を遷移することができる。その場合、貯蔵層中に、全量がより多量の金属を貯蔵することができ、その際、それによって貯蔵層から金層層中への、許容できない量の時間単位当たりの金属が拡散することはない。
【0013】
このために、本発明の特に有利な実施形態では、貯蔵層は、金属、金属の合金又は金属の化合物からなる少なくとも2つの層を含み、それらの層は、拡散障壁によって互いに隔離されている。拡散障壁中では、金属の原子が、金属の内部よりも、あるいは合金内よりもゆっくりと拡散する。拡散障壁としては、特にアルミニウム、酸化物又は窒化物が適している。極薄(<1nm)の酸化物層又は窒化物層であれば十分である。金属の合金及び化合物は、貯蔵層としてのそれらの効果において品質的にそれぞれ異なっており、合金中の金属は、化合物中におけるよりも弱く結合する傾向がある。そのため、金層層の方向へ合金から金属を拡散させるには、より低い活性エネルギー及び温度が必要である。
【0014】
本発明のさらに好ましい、有利な実施形態において、貯蔵層は多層構造を有しており、それぞれが、
・ 金属、金属の合金、又は金属の化合物からなる層、及び
・ 拡散障壁、
を交互に有する。その際、金属からなる層、金属の層、金属の合金の層又は金属の化合物の層のうちのいずれか一つが、半導体の機能層の表面と隣接しているこが有利である。
【0015】
本発明者等による研究において、唯一の拡散障壁に押し寄せる金属の供給量が大きすぎる場合、金属が障壁を圧倒する可能性がある。そうなると、障壁は最終的にその効力を失い、その結果、貯蔵層の挙動は、従来技術の貯蔵層の挙動に再び近づいてしまうことになる。貯蔵層は多層構造物として形成されている場合、極少量の金属だけが少なくとも2つの拡散障壁のそれぞれによって互いに分離される。それにより、全体として多量の金属を貯蔵層中に収容し、そして適した厚さの金属−半導体接触を実現できると同時に、金属が機能層の半導体材料と反応する領域への拡散流れの制御が維持される。この制御された拡散流れは、形成された金属−半導体接合体の高い品質を保証する。
【0016】
本発明のさらに別の有利な実施形態では、貯蔵層及び半導体の機能層の間の境界面における少なくとも一つの拡散障壁の材料の一部が拡散し、そしてその場で、金属−半導体接合体の形成に触媒作用を及ぼす。この場合、触媒は消費されず、拡散障壁の極小さい割合の材料だけが必要であるため、拡散障壁の機能は保たれたままである。
【0017】
本発明のまた別の有利な実施形態では、貯蔵層は、機能層に直接近接した、金属からなる層及び金属の合金からなる少なくとも一つの層を含む。それぞれの金属の合金中では、純粋な金属における場合よりもゆっくりと金属の原子が拡散する。その際、機能層を構築するときの純粋な金属から合金への移行は、貯蔵層の残余の材料とは物理的かつ化学的に著しく異なる拡散障壁を組み込むよりも簡単である。金属−半導体接合体と結合される金属以外の追加の合金元素としては、Al、Co、Cr、Pd、Pt、Ti、Wの群からの一種又は多種の金属が特に好ましい。ケイ素中でゆっくりと拡散して機能層が損傷しないため、これらの金属は、シリコン技術と特に相性が良い。金属の合金は、金属及び拡散障壁としての追加的な合金元素からなる非常に薄い個別層を有する多層構造体の特殊な場合と見なすことができる。
【0018】
本発明の特に有利な実施形態では、金属−半導体接合体中、化学量論量の金属原子が半導体の形成単位、すなわち、例えば、SiNi又はGeSiNiに使用される。この化学量論の場合、金属−半導体接合体は、半導体の2つの形成単位、すなわち、例えば、NiSiの金属原子よりも非常に良好な導電性を示す。それにより、金属−半導体接合体は、電子配線中で半導体デバイスを接合するための接触子よりもはるかに良好である。その場合、この化学量論における接合体は、金属原子当たり、機能層に対して、半導体の2つの形成単位による場合よりも劣った格子適合性を示し、そのため、テンパリングの際に、高すぎる金属の拡散流れをもたらすことが考慮される。ここで、この拡散流れは本発明の方法によって制御可能に引き起こされ、低すぎる格子適合性はもはや欠点ではなくなった。散発的な遷移及び粒界にも拘わらず、本発明の方法によって製造された単結晶の層の構造的並びに電気的特性は、これまでに知られている多結晶の層よりも優れている。
【0019】
半導体の形成単位のための化学量論量の金属原子は、より低い温度でのテンパリングのときに、半導体の2つの形成単位の化学量論量の金属原子としてそれらが用いられる、というさらなる利点をもたらす。その場合には、テンパリング時に機能層の一次構造及び機能が劣化するという危険性が回避される。
【0020】
これは、本発明のさらなる非常に有利な実施形態において、基板上で成長する機能層がその基板に対して固定される点でとりわけ重要である。
【0021】
有利には、半導体合金は、金層層のための半導体材料として選択され、特に、その半導体合金は第4主族からの元素のみを含有し、そして、その場合特に、半導体合金は、SiGe、GeSn、SiSn、SiGeC、SiC、SiGeSn、SiGeCSn又はSiCSnの群からの元素を含む。これらの合金は、電子デバイス及び光電子デバイスにおける使用に特に適している。それ故、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタにおけるソースとドレインとの接触子として単結晶のSiGeは使用されている。その際、シリコンチャンネル中に生じる一軸性の圧縮応力によって正孔移動度が高められる。さらには、SiGeは、そのより高い正孔移動度に起因して、チャンネル中で直接使用することもできる。GeSn及びSiGeSnは、光学素子に使用することができる。しかしながら、これまでの従来技術では、デバイスの科学技術的実現の障壁とは、それらを電気回路にすることであり、そのためにソースとドレインとを電気的に接触させなければならなかった。本発明の方法によれば、シリサイド及びゲルマニドでもって、低い接触抵抗、良好な導電性及び急速で一様な境界面を有する、半導体を製造することを可能にする。
【0022】
有利には、テンパリングした後、機能層と反応しなかった貯蔵層部分を化学的な選択エッチングによって除去することができる。その後、本発明によって製造された金属−半導体接合体は露出されて、電気接触子として使用することができる。
【0023】
テンパリングは、例えば、ラピッド・サーマル・アニール(RTA)、炉アニール、レーザーテンパリング、マイクロ波テンパリング又はフラッシュランプを用いて行うことができる。
【0024】
金属−半導体接合体が形成された後、この上に、金属の機能層としてのさらなる金属を単結晶で成長させることができる。
【0025】
以下では、図面に基づいて本発明の対象をより詳細に説明するが、本発明の対象はそれらによって制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(従来技術)典型的なSiGe−MOSFETトランジスタの断面図。
図2】(従来技術)歪みチャンネルを有するMOSFETを示す図。
図3】極薄の貯蔵層による拡散流れの境界を示す図。
図4】拡散障壁を貯蔵層中に有することによる拡散流れの境界を示す図。
図5】純粋な金属層及びその上に存在する、金属の合金による層からなる貯蔵層にわたる拡散流れの境界を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図3は、薄い単結晶のシリサイド/ゲルマニド層(SiGe上のNiSiGe)の製造を示す。このために、最初に、5nm未満の厚さの非常に薄い金属層12(例えば、Ni)を、基板10(例えば、シリコン)上に堆積させた、合金の半導体11(例えば、Si1−xGe)上に堆積する(図3a)。これは、熱蒸着法、又は、工業的に好ましい、陰極スパッタリング法(スパッタリング)によって遂行することができる。この例では、クオーツランプ炉(高速熱処理法(RTP))を使用し、そして、いわゆる“スパイクアニール(Spike−Tempern)”を600℃のスパイク温度で行った(すなわち、最大温度の継続時間<1秒)。それに代えて、450℃で数分間の間テンパリングすることもできる。テンパリングの際、金属層12及び機能層11の一部が反応して、単結晶のNiSiGe13になる(図3b)。
【0028】
図4は、様々な金属からなる多層系の貯蔵層からなる、結晶型シリサイド/ゲルマニド層(例えば、SiGe上のNiSiGe)の製造を示す。中間層14、例えば、アルミニウムは、二つの金属層12(例えば、Ni)の間に堆積され、それから機能層11中へ金属が拡散してそこで反応する(図4a)。合金の半導体11上に直接設けられた第一の金属層12(例えば、Si1−xGe)は、5nm未満の厚さを有する。テンパリングの開始時には、最初にNiだけがSi1−xGeと反応し、そして、単結晶のNiSi1−xGe13が発生する(図4b)。Al中間層は拡散障壁であり、機能層11の上のNi層のNiのその機能層11中への拡散を妨げる。さらなるテンパリングの過程において、上方のNi層のNi原子は、Alを介して機能層11の方向へ拡散し、そして、結晶化の核として使用され、最初のNiSi1−xGe層13を成長させる。Alは表面に拡散し、そして選択的湿式化学的に除去することができる。
【0029】
図5は、本発明の方法のさらなる実施形態を示しており、この場合、単結晶のシリサイド/ゲルマニド層は、薄い金属層12及び金属合金からなる層15を含む貯蔵層の使用下で半導体の機能層11上に製造される。合金の半導体11はSi基板10の上の単結晶のSiGeであり、金属層12はニッケルである。金属合金15は同様にニッケルを含有し、そして追加的に、それ以外の、例えば、Al、Co、Cr、Pd、Pt、Ti、Wの群からの金属を含有する(図5a)。実質的には、合金15からのニッケルの拡散は、そのようなそれ以外の金属によって妨げられるため、テンパリングの間、機能層11中へのニッケルの拡散流れは全体として制限されたままであり、SiGe11上に結晶性のNiSiGe13が形成される(図5b)。
図1
図2
図3a)】
図3b)】
図4a)】
図4b)】
図5a)】
図5b)】
【手続補正書】
【提出日】2014年12月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明によれば、該貯蔵層は、最大で該機能層の表面から5nmの層の厚さ、好ましくは、3nmの層の厚さで終端するか、又は該機能層に直接近接する境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内を移行する層の厚さで終端する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
最初に、金属を含有する貯蔵層を機能層上に設け、そして引き続いて、テンパリングによって金属と該機能層との反応を誘発する、半導体機能層の表面上の単結晶金属半導体接合体の製造方法であって、該貯蔵層が、最大で該機能層の表面から5nmの層の厚さで終端するか、又は該機能層に直接近接する境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内で移行する層の厚さで終端することを特徴とする、上記の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記貯蔵層が、最大で該機能層の表面から3nmの層の厚さで終端するか、又は少なくとも、該機能層に直近の境界領域における場合よりもゆっくりと該金属が拡散する領域内で移行する層の厚さで終端することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記貯蔵層と、前記半導体機能層との間の境界上に少なくとも一つの拡散障壁の材料の一部が拡散しており、そしてそこで、金属−半導体接合体の形成を触媒することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
基板上で成長し、該基板に対して歪んでいる機能層が選択されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【国際調査報告】