(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-510049(P2015-510049A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(54)【発明の名称】コードのための保護被覆
(51)【国際特許分類】
D07B 1/16 20060101AFI20150306BHJP
B66B 7/06 20060101ALI20150306BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20150306BHJP
【FI】
D07B1/16
B66B7/06 A
D07B1/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-552173(P2014-552173)
(86)(22)【出願日】2012年1月12日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月5日
(86)【国際出願番号】US2012021064
(87)【国際公開番号】WO2013105958
(87)【国際公開日】20130718
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン,ゴパル アール.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ウェイド アール.
【テーマコード(参考)】
3B153
3F305
【Fターム(参考)】
3B153AA45
3B153CC11
3B153CC29
3B153CC51
3B153FF04
3F305BB02
(57)【要約】
ベルトまたはロープを作製するための方法は、複数のコードを提供することと、複数のコードをジャケットと係合させることと、コードおよびジャケットの少なくとも1つに有機物含有材料を提供することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトまたはロープであって、
複数のコードと、
前記コードに係合するジャケットと、を備え、
前記コードおよび前記ジャケットの少なくとも1つは、少なくとも1つの有機物含有材料を含む、
ベルトまたはロープ。
【請求項2】
前記材料は、アルキル末端ホスホン酸である、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項3】
前記有機物含有材料は、3−トリメトキシシリル−メタクリル酸プロピルまたはシラン結合剤に移植される環状シロキサンモノマーのうちの1つである、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項4】
前記有機物含有材料は、有機金属化合物の正に荷電した種および負に荷電した種のそれぞれを含む、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項5】
前記正に荷電した種は、アミン官能性を含有する加水分解性種または高分子電解質のうちの1つであり、前記負に荷電した種は、シランのヒドロキシル誘導体またはカルボキシル誘導体のうちの1つである、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項6】
前記有機物含有材料は、前記ワイヤ上の被覆である、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項7】
前記ジャケットは、織物を含み、前記材料は、前記織物に塗布される、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項8】
ベルトまたはロープを作製するための方法であって、
複数のコードを提供することと、
前記複数のコードをジャケットと係合させることと、
前記コードおよび前記ジャケットの少なくとも1つに有機物含有材料を提供することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記コードを前記係合させることはさらに、
織物を形成するために、複数の織物繊維を前記複数のワイヤとともに織ることと、
前記織物を、前記有機物含有材料およびエラストマーで被覆することと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機物含有材料を前記提供することはさらに、前記係合ステップの前に、前記複数のワイヤの表面を被覆することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記有機物含有材料を前記提供することはさらに、前記係合ステップの後に、前記複数のワイヤの表面を被覆することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記有機物含有材料は、アルキル末端ホスホン酸を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記有機物含有材料は、3−トリメトキシシリル−メタクリル酸プロピルまたはシラン結合剤に移植される環状シロキサンモノマーのうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
空気、温度、光、および相対湿度のうちの少なくとも1つを含む環境で、前記被覆された織物を硬化させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記コードは、金属合金である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記有機物含有材料は、有機金属化合物の正に荷電した種および負に荷電した種のそれぞれを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記正に荷電した種は、アミン官能性を含有する加水分解性種または高分子電解質のうちの1つであり、前記負に荷電した種は、シランのヒドロキシル誘導体またはカルボキシル誘導体のうちの1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
浸潤を促進するように、空気、温度、または光のうちの少なくとも1つを含む環境で、前記有機物含有材料を乾燥させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
温度および相対湿度を含む環境で、前記有機物含有材料を硬化させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、全般的に、例えばエレベータシステムで使用される、吊り上げ部材および/または吊り下げ部材の分野に関し、より具体的には、有機被覆または有機金属被覆を伴う金属コードを有する吊り上げ部材および/または吊り下げ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、ベルトまたはロープ等の吊り上げおよび/または吊り下げ部材を利用する。ベルトまたはロープは、エレベータかごに動作可能に接続し、1つ以上のシーブ(sheaves)を通じて経路選択して送り、昇降路に沿ってエレベータを推進することができる。一例として、ベルトは、複数のワイヤを有するポリウレタン被覆した鋼製コードを含むことができる。鋼製ワイヤは、しばしば、1つ以上のストランドに配設され、次いで、該ストランドが1つ以上のコードに配設される。特許文献1に開示される織られたベルト等の織られたエレベータベルトは、鋼性ワイヤに基づくコードを織物構造内で保持するために、ポリエステル織物または他の合成織物を利用する。金属コードを伴う吊り上げ部材または吊り下げ部材を有するベルトの改善は、当技術分野で十分に受け入れられるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第1475250号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、ベルトまたはロープは、複数のコードと、コードに係合するジャケットと、を含み、コードの少なくとも1つおよびジャケットは、少なくとも1つの有機物含有材料を含む。
【0005】
本発明の別の態様によれば、ベルトまたはロープを作製するための方法は、複数のコードを提供することと、複数のコードをジャケットと係合させることと、コードおよびジャケットの少なくとも1つに有機物含有材料を提供することと、を含む。
【0006】
本発明の他の態様、特徴、および手法は、添付図面と関連してなされる以下の説明からより明らかになるであろう。
【0007】
発明とみなされる主題は、本明細書の最後の特許請求の範囲において具体的に指摘され、かつ明確に請求される。本発明の上述した、および他の特徴、ならびに利点は、添付図面と関連してなされる以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に従って設計される吊り上げおよび/または吊り下げ部材を利用することができる、例示的なエレベータシステムの選択部分を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による例示的なエレベータベルトの選択部分を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照すると、
図1は、1つ以上の吊り上げおよび/または吊り下げ部材に連結されるエレベータかご12を含む、例示的なトラクションエレベータシステム10の概略図を示す。吊り上げおよび/または吊り下げ部材は、本発明の実施形態によるロープまたはベルト16であり得る。エレベータかご12は、1つ以上のベルト16によって昇降路14の中で動作可能に吊り下げられるか、または支持される。1つ以上のエレベータベルト16は、トラクションシーブ18、および場合により、実質的に類似し得るアイドラシーブ20、22、24等の1つ以上のアイドラシーブと相互作用することによって、エレベータシステム10の種々の構成要素の周囲を経路選択して送られる。1つ以上のベルト16はまた、釣合錘26にも接続され得、該釣合錘は、エレベータシステム10のバランス取り、および動作中のトラクションシーブ18の両側のベルト張力の差を低減させるのを補助するために使用される。1つ以上のエレベータベルト16は、かご12および釣合錘26の重量を支持することができる。同じく示されるように、トラクションシーブ18は、機械28によって駆動される。機械28によるトラクションシーブ18の運動は、1つ以上のエレベータベルト16を(トラクションを通して)駆動し、運動させ、および/または推進して、昇降路14内でのエレベータかご12の所望の運動および配置を達成する。
【0010】
図2は、本発明の実施形態による、織られた織物32を少なくとも部分的に露出させた、織物エレベータベルト16の実施例を示す。具体的には、エレベータベルト16は、複数のコードまたは張力要素30を含み、該張力要素は、全体的に互いに平行に配設され、エレベータベルト16の長さ寸法を確立する長手方向に延在する。一例において、複数のコードまたは張力部材30は、0.15mm〜0.4mmの範囲の直径を有する、複数の鋼製ワイヤから構築することができる。複数の鋼製ワイヤは、ストランドに形成することができ、そして複数のストランドは、コードに形成することができる。他の実施形態において、複数のコードまたは張力部材30は、本発明の範囲から逸脱することなく、例えば、炭素鋼、鉄合金、ニッケル合金、またはアルミニウム合金等の他の金属合金から、または金属ワイヤと非金属繊維との組み合わせから作製することができる。さらに、複数のコードまたは張力部材30は、好適な織物32を形成する織物繊維とともに複数のコードまたは張力部材30を織ることによって、エレベータベルト16に組み立てられる。繊維、または繊維によって形成される織物32は、エレベータシステム10のベルト16の動作中にコードを腐食から保護する少なくとも1つの保護被覆剤を含浸させることができる。別の実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、鋼製ワイヤを伴う複数のコードの代わりに、特に繊維ロープのために設計された1つ以上の被覆で被覆された合成繊維ロープを使用することができる。
【0011】
エレベータベルト16は、ナイロン、ポリエステル、オレフィン、アクリル、およびセルロースに基づく一般的な合成織物、およびアラミドを含む特殊織物等の、少なくとも1つの全体的に耐摩耗性の織物32を含むことができ、該織物は、複数のコードまたは張力部材30とともに織られ、エラストマー34によって全体的に取り囲まれて、ジャケットを形成する。しかし、別の実施形態において、複数のコードまたは張力部材30および織られた織物32は、エラストマー34の中に封入される。一実施形態において、織られた織物32を形成するために使用される材料は、柔軟性であり、ならびに、例えばポリエステル材料等の被覆に対して含浸可能である、合成材料である。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、他の材料が使用され得る。織物32は、緯糸および経糸要素からともに織ることができる。1つの限定的でない例において、複数の緯糸要素36、38、40、42、44、46は、複数の経糸要素48、50、52、54、56および複数のコード30に結合される。1つの配設において、緯糸要素36〜46は、複数のコード30および経糸要素48〜56に対して横方向配設される。この配設において、織られた織物32は、複数のコード30を適所に実質的に保持する。「実質的に保持する」という句は、織られた織物32がコード30に十分に係合し、よって、織られたエレベータベルト16に対する負荷の印加中に、複数のコード30が、織られた織物32から離脱しない、またはそれに対して動かないことを意味する。コード30は、エレベータベルト16の主耐荷重構造であり得る。いくつかの実施例において、織られた織物32は、エレベータかご12(
図1)または釣合錘26の重量のいずれも支持しない。それでも、織られた織物32は、荷重経路の一部を形成することができる。さらに、ジャケット34は、存在する場合、エレベータベルト16のトラクション表面を画定する。1つの配設において、ジャケット34は、織られた織物32を封入するために、例えば押出または金型ホイール過程を使用して、織られた織物32に塗布されるエラストマー被覆等のポリマーであり得る。他の実施例において、ジャケット34は、同じ弾性材料または異なる材料および/もしくは膜を使用した2つ以上の層であり得る。他のジャケット材料は、溶液で塗布することができ、その後に高温での硬化ステップが続く、ラテックスおよびエチレンプロピレンジエンモノマー等の、ゴム系エマルジョンを含む。
【0012】
エレベータベルト16を製造するための例示的な過程では、織物32を織る前に、1つ以上の自己組織化有機または有機金属被覆を、最初に、保護被覆として複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30の表面に塗布することができる。本明細書で使用される「自己組織化(self-assembling)」は、分子間自己組織化を指し、外部源からの誘導または管理を伴わずに、分子が画定された配設を取る過程である。被覆は、複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30の表面に耐腐食性を提供する。過程は、自己組織化有機または有機金属被覆の少なくとも1つの比較的薄い層を塗布することから開始する。本明細書で使用される「比較的薄い」は、約10オングストローム(約1ナノメートル)〜約1ミクロン(約1000ナノメートル)の範囲の被覆層厚さを含み、複数のコードまたは張力部材30の表面に、被覆材料の単一または複数の単層(monolayer)を含み得る。有機または有機金属単層被覆は、化学結合もしくは物理的相互作用のいずれかによって、またはそれらの双方によって、複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30上に容易に吸着されるように、ならびに/または織物32を封入する弾性被覆に適合するように選択される。一実施形態において、利用される有機または有機金属単層被覆は、ドデシル−ホスホン酸、チオフェン−ヘキサン−ホスホン酸等の、アルキル末端ホスホン酸といった化学物質、または類似するタイプの化学物質である。別の例示的な実施形態において、被覆は、例えば3−(トリメトキシシリル)メタクリル酸プロピル、または環状シロキサンモノマーをシラン結合剤に移植(graft)させることによって得られるシロキサン変性ラテックス等の、ラテックス選択シラン結合剤である。一例において、複数のコードまたは張力部材30は、有機または有機金属被覆材料に浸漬され、被覆が薄い場合は、空気中で乾燥させる。別の例において、有機または有機金属被覆材料は、複数のコードまたは張力部材30の表面にスプレー塗装または塗装される。本明細書で使用される「薄い」は、約10オングストローム(約1ナノメートル)〜約1ミクロン(約1000ナノメートル)の範囲の被覆層厚さを含み、複数のコードまたは張力部材30の表面に、被覆材料の単一または複数の単層を含み得る。他の例は、乾燥過程または後硬化(post-curing)過程中に、温度、圧力、光、またはこれらの方法の組み合わせによる、オーブンでの1つまたは複数の被覆材料の乾燥過程または追加的な後硬化過程を迅速化することを含む。
【0013】
別の例示的な実施形態において、有機または有機金属単層被覆は、複数の異なる荷電種として提供され、層毎の過程として当業者に知られている、容易に自動化される、逐次的な過程で堆積させることができる。「層毎の過程」は、正味の永続的な反対電荷を含有する分子群間の相互作用に起因するイオン相互作用を使用する過程であり、自己組織化する構造化被覆をもたらす。一例において、複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30は、全体的に負に荷電した表面になるように処理される。以下のステップでは、具体的には、有機または有機金属単層種の第1の荷電層が、一例において、有機または有機金属単層被覆源の正に荷電した種を含有する液体浴を通過させることによって、複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30上に堆積される。一例において、正に荷電した種は、シラン結合剤のアミン誘導体等のアミン官能性を含有する、加水分解性種または高分子電解質であり得る。その後に、次の負に荷電した有機または有機金属単層種が、負に荷電した種を含有する第2の液体浴において、複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30上に堆積される。一例において、負に荷電した種は、シラン結合剤のヒドロキシル誘導体またはカルボキシル誘導体等の、ヒドロキシ酸またはカルボン酸官能性を含有する、加水分解性種または高分子電解質であり得る。負に荷電した種は、正に荷電した種を引き付けて、硬化した時点で保護被覆を形成する。いくつかの実施形態では、中間の洗浄ステップが使用され得る。別の例において、複数のワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30は、最初に、全体的に正に荷電した表面になるように処理され、その後のステップにおいて、反対の電荷の順序で被覆が堆積される。すなわち、第1の被覆は、負に荷電した種を含有することになる。その後に、一実施形態において、被覆を有するワイヤ、ストランド、および/またはコードもしくは張力部材30は、織物32とともに密に織られる。織物32を複数のコード30と織ることは、複数のコード30の表面を織物32で殆ど覆い、かつ、複数のコード30を織る構成内に係止する。複数のコード30および織物32は、その後に、織物32を全体的に取り囲むまたは封入するために、および/またはエレベータベルト16の所望の摩擦特性もしくはトラクションを画定するために、別の最終弾性被覆で被覆することができる。1つの例は、カルボキシル化ラテックス被覆を織られた織物32に塗布することと、続いて、所定の硬化時間にわたって、制御された温度および相対湿度環境の中でラテックス被覆を乾燥することを含む、硬化させることとを含む。別の実施形態では、熱可塑性ポリウレタンを含むウレタン等の弾性被覆、または有機もしくは有機金属被覆を、最終被覆として使用することができる。
【0014】
エレベータベルト16を製造するための別の例示的な過程において、保護有機または有機金属材料は、織物32だけに塗布され、該織物は、複数のコードまたは張力部材30を織物繊維とともに織ることによって形成される。具体的には、複数のコードまたは張力部材30は、織物繊維とともに密に織られ、約100センチポアズ(約100ミリパスカル秒)〜約700センチポアズ(約700ミリパスカル秒)の範囲の粘度を有する、少なくとも1つの低粘度有機または有機金属単層材料源が、織物32に塗布される。一実施形態において、利用される有機または有機金属単層の原料物質は、ドデシル−ホスホン酸、チオフェン−ヘキサン−ホスホン酸等の、アルキル末端ホスホン酸といった化学物質、または、例えば3−(トリメトキシシリル)メタクリル酸プロピル、または環状シロキサンモノマーをシラン結合剤に移植させることによって得られるシロキサン変性ラテックス等の、ラテックス選択(latex preferring)シラン結合剤である。有機または有機金属単層被覆源は、織られた織物32の完全な浸潤および浸透を可能にするために、適切な時間および温度の下で塗布される。その後に、織物32は、空気中で、またはオーブンの中で乾燥を速めることによって乾燥する。織物32は、その後に、織物32を封入するために、最終弾性被覆で被覆する。熱可塑性ポリウレタンを含むウレタン等のカルボキシル化ラテックス被覆を、最終弾性被覆として使用することができる。カルボキシル化ラテックス被覆は、織物32を封入するために、所定の時間にわたって、制御された温度および相対湿度環境で硬化される。別の実施形態において、自己組織化有機または有機金属被覆は、最終弾性被覆を塗布する前に、織物32に塗布され得る。
【0015】
エレベータベルト16を製造するための別の例示的な過程において、上で説明される1つまたは複数の保護有機または有機金属被覆は、弾性被覆とともに提供され、混合物として織られた織物32に塗布される。具体的には、1つまたは複数の有機または有機金属被覆および弾性被覆の混合物が、一実施形態では、織られた織物32をその混合物の中へ浸漬し、所定の時間および温度で織物32を硬化させることによって、コードまたは張力部材30を備える織物32に塗布される。一実施形態において、利用される有機または有機金属単層被覆源は、ドデシル−ホスホン酸、チオフェン−ヘキサン−ホスホン酸等の、アルキル末端ホスホン酸といった化学物質、または類似するタイプの化学物質、または例えば3−(トリメトキシシリル)メタクリル酸プロピル、または環状シロキサンモノマーをシラン結合剤に移植させることによって得られるシロキサン変性ラテックス等の、ラテックス選択シラン結合剤である。経時的に、有機または有機金属被覆は、コードまたは張力部材30の表面に移動し、それによって、複数のコードまたは張力部材32の表面を被覆し、腐食に対する保護バリアを提供する。別の例示的な実施形態において、有機または有機金属単層被覆は、複数の異なる荷電種として提供される。具体的には、有機または有機金属単層種の第1の荷電層には、混合物中の負に荷電した有機または有機金属単層種が提供される。負に荷電した種は、正に荷電した種を引き付け、複数のコード30の表面に移動して、その表面に吸着される。被覆過程は、弾性被覆との混合物として、1つまたは複数の保護有機または有機金属被覆を塗布することによって、より少ないステップで実現され得ることを認識されたい。
【0016】
織られたエレベータベルトのコードを被覆するための方法を含む例示的な実施形態の技術的効果および利点は、コードを織物材料とともに織る前に、自己組織化有機または有機金属被覆を複数のコードの表面に塗布することを含む。別の実施形態において、有機または有機金属被覆は、織物材料をコードに織った後に、低粘度塗布として塗布することができる。最終ラテックス被覆は、有機または有機金属被覆が乾燥または硬化した後に塗布される。
【0017】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを説明することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。本発明の説明を、例証および説明の目的で提示してきたが、網羅的なものを意図しておらず、または本発明を開示される形態に限定することを意図しない。本明細書で説明されない数多くの修正物、変形物、代替物、代用物、または均等な配設は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。加えて、本発明の種々の実施形態を説明してきたが、本発明の態様は、説明される実施形態の一部だけしか含み得ないことを理解されたい。故に、本発明は、上の説明によって限定されるものとしてみなされるべきでなく、添付の特許請求の範囲の範囲によってだけ限定される。
【手続補正書】
【提出日】2014年9月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトまたはロープであって、
複数のコードと、
前記コードに係合するジャケットと、を備え、
前記コードおよび前記ジャケットの少なくとも1つは、少なくとも1つの有機物含有材料を含む、
ベルトまたはロープ。
【請求項2】
前記材料は、アルキル末端ホスホン酸である、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項3】
前記有機物含有材料は、3−トリメトキシシリル−メタクリル酸プロピルまたはシラン結合剤に移植される環状シロキサンモノマーのうちの1つである、請求項1または2に記載のベルトまたはロープ。
【請求項4】
前記有機物含有材料は、有機金属化合物の正に荷電した種および負に荷電した種のそれぞれを含む、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項5】
前記正に荷電した種は、アミン官能性を含有する加水分解性種または高分子電解質のうちの1つであり、前記負に荷電した種は、シランのヒドロキシル誘導体またはカルボキシル誘導体のうちの1つである、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項6】
前記有機物含有材料は、前記ワイヤ上の被覆である、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項7】
前記ジャケットは、織物を含み、前記材料は、前記織物に塗布される、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項8】
ベルトまたはロープを作製するための方法であって、
複数のワイヤを含んだ複数のコードを提供することと、
前記複数のコードをジャケットと係合させることと、
前記コードおよび前記ジャケットの少なくとも1つに有機物含有材料を提供することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記コードを前記係合させることはさらに、
織物を形成するために、複数の織物繊維を前記複数のワイヤとともに織ることと、
前記織物を、前記有機物含有材料およびエラストマーで被覆することと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機物含有材料を前記提供することはさらに、前記係合ステップの前に、前記複数のワイヤの表面を被覆することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記有機物含有材料を前記提供することはさらに、前記係合ステップの後に、前記複数のワイヤの表面を被覆することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
空気、温度、光、および相対湿度のうちの少なくとも1つを含む環境で、前記被覆された織物を硬化させることをさらに備えた、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
浸潤を促進するように、空気、温度、または光のうちの少なくとも1つを含む環境で、前記有機物含有材料を乾燥させることをさらに備えた、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記有機物含有材料は、有機金属化合物の正に荷電した種および負に荷電した種のそれぞれを含み、前記正に荷電した種は、アミン官能性を含有する加水分解性種または高分子電解質のうちの1つであり、前記負に荷電した種は、シランのヒドロキシル誘導体またはカルボキシル誘導体のうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記有機物含有材料は、アルキル末端ホスホン酸、3−トリメトキシシリル−メタクリル酸プロピル、またはシラン結合剤に移植される環状シロキサンモノマーのうちの1つを含む、請求項8に記載の方法。
【国際調査報告】