特表2015-510103(P2015-510103A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-510103医用アイソトープを生成する装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-510103(P2015-510103A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(54)【発明の名称】医用アイソトープを生成する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/08 20060101AFI20150306BHJP
   G21G 1/08 20060101ALI20150306BHJP
【FI】
   G21K5/08 B
   G21G1/08
   G21K5/08 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-545927(P2014-545927)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月5日
(86)【国際出願番号】US2012066214
(87)【国際公開番号】WO2013119299
(87)【国際公開日】20130815
(31)【優先権主張番号】13/373,899
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】390023641
【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】314015608
【氏名又は名称】ピーファー、グレゴリー、リチャード
(71)【出願人】
【識別番号】314015619
【氏名又は名称】ヘルテメス、サッド、アレグザンダー
(71)【出願人】
【識別番号】314015620
【氏名又は名称】ヴァン アベル、エリック、ニコラス
(71)【出願人】
【識別番号】314015642
【氏名又は名称】ラデル、ロス、フランシス
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】ピーファー、グレゴリー、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテメス、サッド、アレグザンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン アベル、エリック、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ラデル、ロス、フランシス
(57)【要約】
医用アイソトープを生成するシステムが、中性子生成装置を囲む環状核分裂性溶液容器を提供する。この環状核分裂性溶液容器は、放出される中性子の良好な捕捉性と、水性原子炉内で改善された安定性を提供する構造を提供する。中性子増倍器および/または中性子減速器は、効率を改良し、前記環状核分裂性溶液容器内の臨界核反応を制御するために使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核物質の水性懸濁液を保持し、軸に沿って延長する中央開口部を規定する内壁を有する環状溶液容器と、
前記環状溶液容器の前記内壁、および前記環状溶液容器の対向する外壁と熱的に連通する第1および第2の冷却ジャケットと、を備える
ことを特徴とする核反応システム。
【請求項2】
前記環状溶液容器は、低濃縮ウランを格納することを特徴とする請求項1に記載の核反応システム。
【請求項3】
前記環状溶液容器は、水と、硝酸ウラニル、硫酸ウラニル、フッ化ウラニルまたはリン酸ウラニルの少なくとも1つとの混合を格納することを特徴とする請求項2に記載の核反応システム。
【請求項4】
前記環状溶液容器に近接するターゲット原料へ荷電粒子を方向付けるよう位置し、前記ターゲット原料から前記環状核反応コンテナに受容される中性子を生成する粒子源をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の核反応システム。
【請求項5】
前記ターゲット原料は、前記中央開口部内に中心配置されるターゲットチャンバ内に格納され、前記軸に沿って粒子を受容することを特徴とする請求項4の記載の核反応システム。
【請求項6】
前記ターゲットチャンバおよび前記内壁の間に位置する中性子増倍原料をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の核反応システム。
【請求項7】
前記中性子増倍原料は、ベリリウム、劣化ウラン、および天然ウランからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の核反応システム。
【請求項8】
前記中性子増倍原料は、実質的に1.5−3.0の中性子増倍に提供されることを特徴とする請求項7に記載の核反応システム。
【請求項9】
前記ターゲットチャンバおよび前記内壁の間に、前記中性子増倍器から同軸上分離して位置する中性子減速原料をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の核反応システム。
【請求項10】
前記環状溶液容器の同心円状外側の反射原料をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の核反応システム。
【請求項11】
核物質の水性懸濁液を保持し、軸に沿って延長する中央開口部を規定する内壁を有する環状溶液容器と、
前記環状溶液容器に近接するターゲット原料へ荷電粒子を方向付けるよう位置し、前記ターゲット原料から前記環状核反応コンテナに受容される中性子を生成する粒子源と、を備え、
前記軸に沿った前記環状溶液容器の高さに対する、前記軸に垂直な前記環状溶液容器の径方向厚みにより規定されるアスペクト比は、実質的に0.1より大きい
ことを特徴とする医用アイソトープ生成装置。
【請求項12】
前記アスペクト比は、0.1から0.3の間であることを特徴とする請求項11に記載の医用アイソトープ生成装置。
【請求項13】
前記アスペクト比は、0.12から0.25の間であることを特徴とする請求項12に記載の医用アイソトープ生成装置。
【請求項14】
前記環状溶液容器は、低濃縮ウランを格納することを特徴とする請求項11に記載の医用アイソトープ生成装置。
【請求項15】
前記ターゲット原料は、前記中央開口部内に中央配置されるターゲットチャンバ内に格納され、前記軸に沿って粒子を受容することを特徴とする請求項11に記載の医用アイソトープ生成装置。
【請求項16】
前記ターゲットチャンバおよび前記内壁の間に位置する中性子増倍原料をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の医用アイソトープ生成装置。
【請求項17】
核物質の水性懸濁液を保持し、軸に沿って延長する中央開口部を規定する内壁を有する環状溶液容器を具備し、
前記核物質は、溶液1リットル当たり低濃縮ウラン10から450グラムの間の濃度を有する低濃縮ウランである
ことを特徴とする医用アイソトープ生成装置。
【請求項18】
前記環状溶液容器に近接するターゲット原料へ荷電粒子を方向付けるよう位置し、前記ターゲット原料から前記環状核反応コンテナに受容される中性子を生成する粒子源をさらに備え、
前記軸に沿った前記環状溶液容器の高さに対する、前記軸に垂直な前記環状溶液容器の径方向厚みにより規定されるアスペクト比は、実質的に0.1より大きい
ことを特徴とする請求項17に記載の医用アイソトープ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府出資研究または開発に関する陳述
本発明は、米国エネルギー省により授与されたDE-NA-00007520の下での政府支援でなされたものである。政府は本発明に所定の権利を有する。
関連出願への相互参照
【背景技術】
【0002】
本発明は、医療目的に有用なアイソトープ、例えばMo-99、I-131、Xe-133、Y-90、Cs-137、I-125等、を生成するシステムに関し、特に、環状水性核分裂性溶液容器(vessel)を用いるシステムに関する。
【0003】
医用アイソトープは核医薬(nuclear medicine)で用いられ、これらは患者に、特定機器で撮像され得る特定臓器または細胞受容体(cellular receptors)に局所化する形式で投与され得る。医用アイソトープはまた、こうした局所化の後、短期イオン化放射線(short-range ionizing radiation)の細胞破壊力を利用して疾病治療に用いられ得る。
【0004】
今日、核医薬に用いられるラジオアイソトープ(放射性同位体)は、高濃縮ウラン(HEU)を用いる原子炉で製造される。米国でのMo-99の製造に使用される原子炉は、米国外にあって高濃縮ウランの輸出を必要とし、こうした国外輸送には核拡散の付随リスクが伴う。
【0005】
核兵器を製造するためには直接使用できない低濃縮ウラン(LEU)を用いて医用アイソトープを生成することが提案されてきた。この目的のためのシステムは、米国特許出願2011/0096887号「医用アイソトープを生産する装置および方法」、および米国特許出願2010/0284502号「高エネルギー陽子または中性子源」に開示されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
これらのシステムにおいて、イオンは、ガスを保持するターゲットボリューム(target volume)に方向付けられ通過して、中性子を生成する。この中性子は、核分裂性溶液容器中のターゲットボリューム近くの溶液中に保持される母材(parent material)に露出(expose)され得る。ある実施形態において、ターゲットボリュームは、環状で、母材溶液を保持する円筒状の核分裂性溶液容器周囲に位置する。イオンがらせん状に注入されてターゲットボリュームを通過し、母材に向かって内側におよび反射器(リフレクタ)(reflector)に向かって外側に方向付けられた中性子を生成する。
【0007】
中性子過剰母材(neutron rich parent material)(例えばLEUウラン)内に受容された中性子には、増倍(multiplication)が認められ、ここで母材にぶつかる中性子は、連鎖反応で、追加的な中性子過剰原料にぶつかる追加的な中性子を生成する。原子炉内定常電力で、有効中性子増倍率 (keff) は1に等しい。臨界前システムで、keff は、1より小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水性原子炉(aqueous reactors)の課題は、安定的な電力レベルを維持することが困難な可能性があることである。この理由は、核分裂性溶液の温度が上昇し、空隙(void)(放射線分解水の水素と酸素への分解により生じる気泡)が生成されるため、中性子増倍率に強力なフィードバックメカニズムが存在するからである。中性子増倍率(neutron multiplication factor)の急激な減少は、電力低下の結果をもたらし、これは再度中性子増倍率の上昇を引き起こす。特に、原子炉中で定電力を維持しようとする制御システムは、十分に高速に核反応してシステムを適切に制御できない可能性がある。その結果、不安定な電力のシステムとなり、安全性への潜在的な影響をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、医用アイソトープを生成するために使用される核分裂性溶液容器の改良された形状(geometry)を提供する。特に、この核分裂性溶液容器は、母材の水性懸濁液(suspension)を保持する制限された厚みのアニュラス(annulus)である。このアニュラスのアスペクト比を制御することにより、従来の円筒状チャンバに対して改良された核反応安定性が得られ得る。さらに、環状溶液容器の内壁に冷却ジャケットを採用することで、冷却力の強化も可能になる。
【0010】
そして特に、本発明のある実施形態は、核物質の水性懸濁液を保持し、軸に沿って延長する中央開口部を規定する内壁を有する環状溶液容器を有する核反応システムを提供する。第1および第2の冷却ジャケットは、環状溶液容器の内壁および環状溶液容器の対向する外壁と熱的に連通する。
【0011】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の目的は、環状の構造の使用を介して、ボリュームへの熱伝導面積を増加させることで、核反応容器への改良された安定性を提供することにある。
【0012】
環状核反応コンテナは、低濃縮ウランを格納してよい。
【0013】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、高濃縮ウランを取り扱うことに付随するリスクなくして、医用アイソトープを製造する装置を提供することにある。
【0014】
環状溶液容器は、水と、硝酸ウラニル、硫酸ウラニル、フッ化ウラニル、またはリン酸ウラニルの少なくとも1つとの混合を含んでよい。
【0015】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、多様な異なる核分裂性溶液を用い得るシステムを提供することにある。
【0016】
核反応システムは、環状溶液容器に近接するターゲット原料に荷電粒子(charged particles)を方向付けるよう位置付けられた粒子源(particle source)を含み、ターゲット原料から環状核反応コンテナに受容される中性子を生成する。ターゲット原料は、中央開口部内に中心配置されるターゲットチャンバ内に格納され得、軸に沿って粒子を受容する。
【0017】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、核分裂性溶液容器内に完全に格納され得、外部で生成されたイオンによる励起の後、環状核分裂性溶液容器を通過する中性子を容易に製造するターゲットを提供することにある。
【0018】
この医用アイソトープ生成装置は、ターゲットチャンバおよび内壁の間に位置する中性子増倍器(multiplier)および/または減速器(moderator)原料を含んでよい。
【0019】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、イオン衝突メカニズムにより取得可能な過剰中性子エネルギーを追加的中性子に変換することにある。本発明の少なくとも1つの実施形態の他の特徴は、衝突プロセスを介して中性子速度を減速し、そして環状チャンバ内で核反応率をより良好に制御することを提供することにある。
【0020】
この医用アイソトープ生成装置はさらに、環状溶液容器の同心円状外側(concentrically outside)の反射原料を含んでよい。
【0021】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、環状核分裂性溶液容器の外側の、採用される原料の任意の厚みを許容する位置に、反射器(reflector)を配置することを可能とする点にある。
【0022】
軸に沿った環状溶液容器の高さに対する、環状溶液容器の軸に垂直な径方向厚みで規定されるアスペクト比は、実質的に0.1より大きい、または0.1から0.3の間、または0.12および0.25の間であってよい。
【0023】
このため、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、円筒状チャンバまたは他のアスペクト比の環状チャンバに対して、改良を実現する環状チャンバの寸法を提供する点にある。
【0024】
核物質は、溶液1リットル当たり低濃縮ウラン10から450グラムの濃度を有する低濃縮ウランであってよい。
【0025】
このため、本発明の目的は、低濃度の核物質で稼動し得る核反応(reaction)システムを提供する点にある。
【0026】
これらの特定の目的および利点は、特許請求の範囲に含まれるいくつかの実施形態のみに適用され得、従って、本発明の範囲を規定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のある実施形態の部分的断面での斜視図であり、中央円筒型ターゲットチャンバ周囲の環状核分裂性溶液容器アセンブリを含む同心チャンバを示し、中央円筒型ターゲットチャンバは、円筒およびアニュラスの軸に沿ってイオンを受容する図である。
図2】環状核分裂性溶液容器で囲まれる内部中性子増倍器を含む環状核分裂性溶液容器アセンブリの断面図であり、環状核分裂溶液容器は、水冷却ジャケットの側面に位置する図である。
図3】本発明の代替的実施形態の簡略化された立面断面図であり、ここで環状核反応アセンブリは、側部と同様、ターゲットチャンバの頂部および底部をカバーするセクションを含む。
図4】六角形状のアニュラスおよび分離された水性母材を採用する他の代替的な実施形態の上面断面に沿った断面での斜視図である。
図5】分離された中性子増倍器および中性子減速器を用いた本発明の代替的実施形態の上面断面図である。
図6図2の環状核分裂性溶液容器のアスペクト比に対する核反応度変化のプロット図であり、円筒状核分裂性溶液容器に対する環状核分裂性溶液容器の改良された安定性の領域を示す図である。
図7】環状および円筒状核分裂性溶液容器の低濃縮ウラン濃度に対する核反応度変化のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、本発明に係る医用アイソトープ生成装置10は、環状核反応アセンブリ14を囲みこれと同軸の外部環状反射器チャンバ12を含む一連の入れ子状の環状要素を提供し得る。円筒状ターゲットチャンバ16は、環状核反応アセンブリ14に嵌合し、これにより、環状反射器チャンバ12、環状核反応アセンブリ14、およびターゲットチャンバ16の全3つの要素は、共通の中心軸18を共有する。
【0029】
外側の環状反射器チャンバ12は、環状原子炉アセンブリ14より高くてよく、中心軸18に垂直な方向に環状原子炉アセンブリ14の周囲の、および中心軸18に沿った方向に環状原子炉アセンブリ14の上方および下方に、実質的に同じ厚みの反射原料を提供する。本実施形態において、環状原子炉アセンブリ14は、ターゲットチャンバ16と実質的に等しい高さであってよい。
【0030】
ターゲットチャンバ16は、軸18に沿って延長する垂直に方向付けられた円筒状外殻構造であってよく、ターゲットガス20、例えばトリチウム(tritium)で充填される円筒状ボリュームを規定する。ターゲットチャンバ16の円筒状ボリュームは、上方垂直に延長する導管22を介し、外部環状反射器チャンバ12を介して、ターゲットチャンバ16の上方で、外部環状反射器チャンバ12の外側に位置するイオン注入器24に連通する。
【0031】
イオン注入器24は、イオンビーム26、例えばジュウテリウム (D+)を、軸18に垂直に沿って導管22を介してターゲットチャンバ16へと方向付けるよう位置付けられる。軸18に沿ったターゲットチャンバ16の高さ、およびターゲットガス20の圧力は調整され、ターゲットチャンバ16内で、実質的に完全なトリチウムとのイオン衝突が保証される。ある実施形態において、ターゲットガス20は、約10トール(Torr)の圧力を有してよく、軸18に沿ってターゲットチャンバ16内で約1メートルの高さを有する。
【0032】
イオン注入器24は、イオン源28を組み込み、このイオン源はある実施形態において、バルブ30を介して例えばマイクロ波放射、イオン衝突イオン化、またはレーザーイオン化によりイオン化されるジュウテリウムを受容する空洞(cavity)である。生成されたイオンビーム26(例えば約50ミリアンペアのレートで)は、軸18に沿ってイオンビームを加速する加速器32を通過する。この加速器は、例えば、300キロボルトのイオン加速を提供する静電加速器であってよい。
【0033】
イオンビーム26はその後、差動ポンプ34によりブリッジされる一連のバッフル(baffle)チャンバ38を通過する。差動ポンプ34は、加速器32中で約50マイクロトール(micro-Torr)の低圧を保つよう動作し、一方ターゲットチャンバ16内ではより高い10トールの圧力を許容する。ある実施形態において、このシステムは、上方バッフルチャンバ38から(加速器32に向かう)それぞれガスを引き込み、下方バッフルチャンバ38へ(ターゲットチャンバ16に向かう)送り込む3つのポンプ36を採用する。バッフルチャンバ38は、軸18に沿った、例えば直径1センチメートル等の比較的小さい開口部を介して連通し、ターゲットチャンバ16中のトリチウムの漏出を低減しつつ、イオンビーム26の通過を許容する。
【0034】
ポンプ36を介したガス流は、冷却水が供給される減速器(moderator)により冷却され得る(不図示)。上方の複数のポンプは、例えば5×10-5トール未満および5−10ミリトールでそれぞれ稼動する複数のターボポンプであってよく、例えば、マサチューセッツ、レキシントンに事業所を有するVarian,Inc.から商業的に入手可能である。下方のポンプは、ルーツ式ブロワ(送風機)であってよく、例えばペンシルバニア、エクスポートに事業所を有するLeybold Vacuum Products Inc.から商業的に入手可能である。冷却トラップ、ゲッタ(getter)トラップおよびパラジウム漏出(leaks)は、大気汚染物質、および/またはポンプガスからの炭化水素汚染物質の除去に使用し得る。
【0035】
イオンビーム26は、ターゲットチャンバ16内のターゲットガス20にぶつかって、ターゲットチャンバ16から径方向および軸方向外側に通過する中性子40を製造し、例えばトリチウムにぶつかるジュウテリウムで、4He および 14.1 MeV中性子が製造される。この核反応は、50ミリアンペアのイオンビーム26で、毎秒約5×1013の中性子を製造することが予測される。
【0036】
イオンビーム26のイオンおよびヘリウムによるターゲットガス20の汚染は、例えばSavanna River National Laboratory(SRNL)により開発された熱サイクル吸収処理(TCAP)のような浄化システム42により低減され得る。
【0037】
代替的実施形態において、イオンは電子により置換され得、ターゲットチャンバは、制動放射変換器(bremsstrahlung converter)、および例えば中性子が製造されるウランのような光核反応原料を含んでよい。
【0038】
図2を参照して、ターゲットチャンバ16からの中性子ビーム40は、環状原子炉アセンブリ14内を通過し得る。この環状原子炉アセンブリ14は、外部の水冷却器(water chiller)、循環器(recycler)から1つまたは複数の導管51を介して供給される循環冷却軽水を受容する、最初1センチメートル厚(径方向)の環状ウォータージャケット44を含む。環状ウォータージャケット44に後続するのは、同軸環状中性子増倍器/減速器46であり、これはある実施形態において、アルミニウムで覆われたベリリウム金属であり、このベリリウム金属は、ターゲットチャンバ16から外側に通過する高速中性子を増倍し、これらの中性子を「冷却(cooling)」することで環状核分裂性溶液容器50(ここで開示される)から内側に移動する高速中性子を減速する。ここで「冷却」とは、中性子増倍器/減速器46の温度上昇と交換に中性子速度を低減する処理である。中性子増倍器/減速器46の過剰熱は、ウォータージャケット48および44により除去され、これで中性子増倍器/減速器46の温度を制御することができ、ターゲットチャンバ16からの十分な中性子の放出が保証され、一方、環状核分裂性溶液容器50から受容される中性子が減速される。代替的に、中性子増倍器/減速器46は、劣化ウランまたは他の同様の原料で構成され得る。中性子増倍器/減速器46は、1.5−3.0の増倍率を提供し、これは例えばその厚みを調整することにより調整され得る。
【0039】
中性子増倍器/減速器46から放出する中性子は、ウォータージャケット44と同様の第2の環状冷却水ジャケット48を通過し、そして、環状核分裂性溶液容器50に至る。この溶液容器50は、ある実施形態において、ジルカロイ−4(zircaloy-4)からなる壁部を有する。環状核分裂性溶液容器50は、軽水溶液中に、例えば硝酸ウラニルまたは硫酸ウラニルのような母材の溶液52を含む。この溶液52は、通常19.75パーセントの235Uを含み、これは低濃縮ウラン(LEU)である。
【0040】
所望の99Moアイソトープの製造は、追加的中性子(additional neutrons)も製造する溶液52中で、235Uの核分裂により発生する。
【0041】
溶液52は、環状核分裂性溶液容器50から1つまたは複数の導管54を介して抽出され得、ここで、所望のアイソトープは、核分裂性溶液から化学的に抽出され得る。これらのアイソトープは、LEU修正シンチケム(Cintichem)処理を介して浄化され得、所望の医用アイソトープ、特に99Moの源を提供する。核分裂性溶液は、UREX処理を用いて清浄化(cleaned)され得、溶液の有効耐用年限を延長する。アクセス導管54はまた、環状核分裂性溶液容器50の初期充填、後続する排水(drainage)、および洗い流し(flushing)と同様、核反応を制御するため、溶液52の高さの制限を可能にする。アクセス導管54はまた、空間充填、および水、核分裂性溶液、pH制御(硝酸ウラニルを使用した場合)の組成供給(feed makeup)のための窒素導入および除去を可能にする。
【0042】
内部に冷却軽水循環を有する、ウォータージャケット48および44と同様の、他のウォータージャケット56が、環状核分裂性溶液容器50を同心円状に囲んでいる。
【0043】
環状反射器チャンバ12が、環状原子炉アセンブリ14の外側にあり、これは例えば、ある実施形態において例えば1000リットルの体積の重水であってよい反射器原料60で充填されたアルミニウム壁チャンバである。この反射器原料60は、中性子を環状核分裂性溶液容器50に反射し戻すことにより生成効率を向上させ、このため、環状反射器チャンバ12を排水することで核反応制御をも許容し得、そして環状核分裂性溶液容器50への中性子反射を低減する。核反応率の制御はまた、環状核分裂性溶液容器50の溶液52の高さを変更することによっても実現し得る。
【0044】
図2および図6を参照して、稼働中、核分裂性核反応により生成される熱エネルギーは、溶液52を、例えば摂氏20度から摂氏60度に温度上昇させ、そして、水素や酸素の放射線分解、または例えばアンモニアおよび窒素酸化物NOx(硝酸ウラニルを使用した場合)その他核分裂により生成されるクリプトンやキセノンなどの他のガスから形成される空隙(void)の生成を促進し得る。一般的に、これらのガスは、窒素充填(nitrogen fill)により希釈かされ、処理用に取り除かれる。
【0045】
温度上昇と空隙の形成は、チャンバ50内の中性子増倍率 keffを著しく低減し得る。しかしながら、この効果は、同じ体積の円筒状チャンバと比較して、環状核分裂性溶液容器50の環状形状により低減される。
【0046】
図6に概要として示されるように、環状チャンバ50のアスペクト比の関数として算出される核反応度曲線70は、環状ボリューム50のより小さい核反応度変化(グラフ中でゼロにより近い値)を示し、次に、円筒状ボリュームの比較用核反応曲線72は、約0.11を上回るアスペクト比を示す。より小さい核反応度変化は、核反応システムの所望の改良された安定性と同等と見なせる。
【0047】
アスペクト比は、ボリューム50の径方向厚みをボリューム50の高さで除算して得られる。核反応度変化は、中性子増倍率k(例えばΔk)をkで除算して得られる変化である。このため一般的に、ボリューム50が0.1から0.3の間のアスペクト比、および代替的に0.12から0.25の間、または実質的に0.15より大きいアスペクト比を有することが望ましい。
【0048】
図7を参照して、低濃縮ウランの濃度の関数として算出される核反応度曲線は、円筒形チャンバの場合と比較すると、溶液1リットル当たり低濃縮ウラン102−450グラムの範囲内で改良された安定性を示し、この範囲内で許容できる動作濃度が観察される。このデータにより、溶液1リットル当たり低濃縮ウラン10−450グラムの許容動作範囲を示すものと推定できる。
【0049】
図3を参照して、ターゲットチャンバ16の頂部と底部はまた、中性子40を捕捉する効率性の改善のため、中性子増倍器/減速器46および環状チャンバ50の部分により囲まれてよい。これにより、「環状(annular)」との用語は、上部および下部立体基部(solid base)を有するアニュラス(annulus)を含むものと理解されるべきである。
【0050】
図4を参照して、さらに、環状チャンバ50は、円筒状アニュラスである必要はなく、他の環状形状、例えば六角形などの多角形断面を提供する内縁および外縁を有する多角形アニュラス80を採用してもよいことが理解される。さらに、環状核分裂性溶液容器50内の溶液52は、均一的に分布する必要はなく、例えば、分離された反応物質カラム84内に格納されてよく、例えば、蛇行路(serpentine path)で環状核分裂性溶液容器50の水槽を通過してもよい。こうした反応物質カラムは、さらに熱抵抗の低減を提供し、空隙の効果を和らげることができる。
【0051】
図5を参照して、図2の中性子増倍器/減速器46は、望ましくは2つのコンポーネントに分かれてもよく、その第1は、例えば上記のベリリウム等からなり、ともに上記したように、ウォータージャケット48の同軸上内側に、およびウォータージャケット44の同軸上外側に位置する中性子減速器92である。本実施形態において、分離された中性子増倍器90は、同軸上ウォータージャケット44内部に位置してもよく、例えば、中性子増倍器90を同軸上囲むウォータージャケット44、および中性子増倍器90の同軸上内部にありターゲットチャンバ16を囲むウォータージャケット94からなり、およびこれら双方と接触することにより冷却される。この機能の分離により、中性子減速器92および中性子増倍器90の独立した温度制御が、これらのコンポーネントを異なる材料(必要に応じて)で製造し、およびこれらが果たす特定の役割に合わせてこれらの厚みを調整する場合と同様に、可能となる。
【0052】
ウォータージャケット44および94の温度は、温度プローブ96および98により観測されてよく、ウォータージャケット44および94用(出口バルブ不図示)にそれぞれ、吸入バルブ102および104を制御するフィードバック制御システム100に供給されてよい。バルブ102および104は、ウォータージャケット44および94内の冷却水循環を制御してよく、これにより、中性子減速器92の温度、およびその核反応減速の効果を制御することができる。フィードバック制御装置100は、他の手段により通常の核反応率の観測に基づいて、ウォータージャケット44および94の温度を所定値、または動的値に制御してよい。さらに、フィードバック制御装置100は、例えば溶液52の高さの制御等の他の制御変数を管理して、核反応率を減速してよい。
【0053】
一般的に、医用アイソトープ生成装置10はさらに、標準的技法に基づき、コンクリートおよび水で遮蔽される。他のアイソトープ、例えば131I、 133Xe、および 111Inはまた、同様の構造により製造されてよい。
【0054】
ここでのある用語は、参照のみの目的で使用されるものであり、このため、限定を意図するものではない。例えば、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「上方(above)」、および「下方(below)」等の用語は、参照された図面中での方向に言及するものである。例えば、「前方(front)」、「後方(back)」、「後部(rear)」、「底部(bottom)」および「側部(side)」等の用語は、一貫しながら任意である参照のフレーム内でコンポーネントの部分の方向を記述するものであり、論議されているコンポーネントを記述するテキストおよび関連する図面への参照により明確となる。こうした用語は、上記で特に言及された用語、その派生語、および同趣旨の用語を含み得る。同様に、用語「第1(first)」、「第2(second)」および構造を参照する他のこうした数値用語は、文脈により明確に示されない限り、順序または順番を示唆するものではない。
【0055】
本開示および例示的実施形態の要素または特徴を案内するに当たり、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1または複数のそうした要素または特徴を意味することを意図する。用語「具備する(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包含的(inclusive)であり、特に注記されたものの他に追加的な要素または特徴があってもよいことを意味することを意図する。さらに、ここで説明される方法ステップ、プロセス、及び動作(operation)は、特にその実行順序が特定されない限り、議論されまたは例示された特定の順序で実行されなければならないと解釈されるべきでないことが理解されるであろう。また、追加的または代替的ステップが用いられてよいことも理解されるであろう。
【0056】
本発明は、特に、ここに含まれる実施形態および図面に限定されるものではなく、以下のクレームの範囲内にある実施形態の部分および異なる実施形態の要素の組み合わせを含む、これらの実施形態の変形を含むものと理解されるべきである。ここで説明された全ての刊行物、特許および非特許文献を含む、は、その全体が参照により本開示に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】