特表2015-510570(P2015-510570A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2015-510570シール装置及びシール装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-510570(P2015-510570A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(54)【発明の名称】シール装置及びシール装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/32 20060101AFI20150313BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20150313BHJP
【FI】
   F16J15/32 301Z
   F16J15/32 301E
   F16J15/18 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-557020(P2014-557020)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(85)【翻訳文提出日】2014年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2013052850
(87)【国際公開番号】WO2013124192
(87)【国際公開日】20130829
(31)【優先権主張番号】102012202571.5
(32)【優先日】2012年2月20日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】502028681
【氏名又は名称】トレルボルグ シーリング ソリューションズ ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Trelleborg Sealing Solutions Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン ホルガー
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AB11
3J006AE15
3J006AE17
3J006AE45
3J006AE51
3J006CA05
3J043AA11
3J043BA08
3J043CA01
3J043CA02
3J043CA06
3J043CA12
3J043CB14
3J043HA01
(57)【要約】
【課題】封止作用を向上させて摩耗傾向を低くするように、序文に記載したタイプのシール装置を発展させること。
【解決手段】本発明は、運動軸(16)に沿って及び/又は運動軸(16)周りを互いに対して移動可能なように配置される2つの機械構成要素(12,14)と、圧入により2つの機械構成要素(12,14)の一方にあるシール保持構造(20)に保持される少なくとも1つの弾性的に変形可能なシール(22)とを有する、シール装置(10)に関する。シール(22)は、2つの機械構成要素(12,14)のための滑りガイド(40)を形成し、いずれの場合にも、他方の機械構成要素(12,14)に封止当接してシール保持構造(20)から離れて軸方向に延在する、少なくとも1つのシールリップ(30)を有する。シールリップ(30)の自由端部分(32)は、少なくとも1つの弾性的に変形可能なプレテンション要素(38)により一方の機械構成要素(12,14)に支持され、所定の接触圧で自由端部分(32)が他方の機械構成要素(12,14)に当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動軸(16)に沿って及び/又は運動軸(16)周りを互いに対して移動可能に配置される2つの機械構成要素(12,14)と、
圧入により前記2つの機械構成要素(12,14)の一方にあるシール保持構造(20)に保持される少なくとも1つの弾性的に変形可能なシール(22)であって、前記2つの機械構成要素(12,14)のための滑りガイド(40)を形成するシール(22)とを有し、
前記シール(22)は、いずれの場合にも他方の機械構成要素(12,14)に封止当接して前記シール保持構造(20)から軸方向に離れて延在する少なくとも1つのシールリップ(30)を有し、
前記シールリップ(30)の自由端部分(32)が、少なくとも1つの弾性的に変形可能なプレテンション要素(38)により一方の機械構成要素(12,14)に支持されて、所定の接触圧で前記自由端部分(32)が他方の機械構成要素(12,14)に当接する、
シール装置(10)。
【請求項2】
前記シール(22)は、径方向及び/又は軸方向の圧入により前記シール保持構造(20)に保持されることを特徴とする請求項1記載のシール装置。
【請求項3】
前記シール(22)は、前記シール保持構造(20)を径方向に覆うことを特徴とする請求項1又は2記載のシール装置。
【請求項4】
前記シールリップ(30)の前記自由端部分(32)は、前記プレテンション要素(38)に移動可能に当接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記シール(22)は、軸方向に互いに離れて延在する2つのシールリップ(30)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項6】
縦に並んだ状態にある前記シールリップ(30)は、同じ方向に向いていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項7】
前記シール(22)は、シールリップ(30)を夫々有する2つのシール要素(22a,22b)を有することを特徴とする請求項5又は6記載のシール装置。
【請求項8】
前記機械構成要素(12,14)の一方が、他方の機械構成要素(12,14)のための剛的な軸受構造(44)を有し、前記軸受構造は、前記2つのシール要素(22a,22b)の間に軸方向に配置されることを特徴とする請求項7記載のシール装置。
【請求項9】
前記軸受構造(44)は、前記軸受構造(44)の軸受面(46)に前記運動軸(16)に対して横方向に配置されるのが好ましい少なくとも1つの凹部(48)を有することを特徴とする請求項8記載のシール装置。
【請求項10】
前記シール(22;22a,22b)は粘塑性材料からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項11】
前記粘塑性材料は、ポリマー材料であり、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項10記載のシール装置。
【請求項12】
前記プレテンション要素(38)は、一方の機械構成要素(12,14)の溝(36)内に配置されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項13】
前記プレテンション要素(38)は、エラストマーからなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項14】
前記シール保持構造(20)は、一方の機械構成要素(12,14)に、好ましくは取り外し可能に固定されるカートリッジ状シールインサート(18)により形成されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項によるシール装置(10)を製造する方法(100)であって、
前記少なくとも1つのプレテンション要素(38)を一方の機械構成要素(12,14)に配置するステップ(110)と、
次いで、一方の機械構成要素(12,14)の前記シール保持構造(20)とともに少なくとも1つのシールブランク(70)を圧縮して前記シール(22)を形成するステップ(120)と
を特徴とする方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動軸に沿って及び/又は運動軸周りを互いに対して移動可能なように配置される2つの機械構成要素と、圧入により2つの機械構成要素の一方にあるシール保持構造に保持される少なくとも1つの弾性的に変形可能なシールとを有し、シールは、2つの機械構成要素のための滑りガイドを形成する、シール装置に関する。シールは、いずれの場合にも他方の機械構成要素に封止当接してシール保持構造から離れて軸方向に延在する、少なくとも1つのシールリップを有する。
【背景技術】
【0002】
例えば独国特許第19513727A1号公報(特許文献1)から知られているそうしたシール装置は、使用中の封止作用が極めて不十分であることがしばしばである。したがって、そうしたシール装置が、汚染度合いが非常に高い環境下で使用される、例えばショックアブソーバ、ハンマードリルなどに使用される場合、適切な方法で滑りガイドを封止してシール装置の過剰な摩耗を防ぐために、しばしば、追加のシール構成要素又はワイピング要素が必要とされる。これには費用がかかり、また工業生産に関する点から観てそれほどの利点がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第19513727A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、封止作用を向上させて摩耗傾向を低くするように、序文に記載したタイプのシール装置を発展させることである。本発明の目的は、さらに、そうしたシール装置を製造する方法を立案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求項1に述べられている特徴を有するシール装置により、本発明によって達成される。製造方法に関する目的は、特許請求項15に述べられている特徴を有する製造方法によって解決される。
【0006】
本発明によるシール装置に関する利点には、実質的に、シールリップの向上した封止機能が関与している。シールリップの自由端部分は、プレテンション要素によって一方の機械構成要素に弾性的に支持され、且つ、プレテンション要素により、所定の、すなわち、予め自由に決定することができる接触圧で、他方の機械要素、すなわち、その封止面に押し付けられる。その結果として、高度に汚染された環境下での使用の間でも、例えば、ほこりの粒子及び/又は滑りガイド領域の作動液などの汚染物の侵入が明らかに減少する。さらに、滑りガイド領域内、すなわち2つの機械構成要素の間における封止を目的としたシールギャップ内に配置されている潤滑剤、例えば潤滑油の漏れがより確実に防止される。これは、互いに対して並進運動及び/又は回転運動を行う2つの機械構成要素に適用される。全体的にみると、これによって、シール装置の必要なメンテナンス間隔を長くすることができ、また、シール装置の耐用年数も全体として延ばすことができるようになる。さらに、本発明によるシール装置の場合、シールによって形成される滑りガイドを、特に研磨粒子のほこりなどから保護する追加のシール要素及び/又はワイピング要素は、特別な場合だけでしか必要でないか、若しくはまったく不必要である。これによって、シール装置を構造的に、より簡単且つコンパクトな構造にすることができるようになる。これにより、全体的にみると、経済的利点がもたらされる。
【0007】
シールは、径方向及び/又は軸方向の圧入によって一方の機械構成要素に保持され、且つ、内側シール又は外側シールとして構築され得る。内側シールの場合、シールは、例えばシリンダとして構築される一方の機械構成要素によって少なくとも部分的に周縁的に囲繞される。シールは、外側シールとして構築される場合、周縁側において、例えばピストンである一方の機械構成要素を囲繞する。シール及びシールによって形成される滑りガイドの横断方向の安定性の観点からの需要が多い場合には、この実施の形態が好ましい。これによって、全体として、使用範囲が特に優れたシール装置が実現する。
【0008】
本発明の好ましい開発によれば、シールは、径方向においてシール保持構造を覆い、好ましくはシール保持構造に直接当接する。これによって両方の機械構成要素のための滑りガイドは、簡単な方法でこの領域内に、径方向において剛的に、すなわち曲がらないように構築され得るようになる。これによって、2つの機械構成要素を互いに対して正確に案内又は支持することができる。
【0009】
一方の機械構成要素におけるシールの軸方向の圧入の場合、シールは、この機械構成要素のシール保持構造の保持溝内にクランプ留めされるように配置されるように保持されるのが好ましい。あるいは、又はこれに加えて、シールは、溝側面が隣接するシール材料に、程度は多かれ少なかれ差し込まれることで、シールされる側から離れる方に向いた溝側面によって保持され得る。溝側面が隣接するシール材料に差し込まれない場合、シールは、例えばピン、ねじ及び/又は壁突出部などの補助的な要素により、位置が安定するように適切な位置に保持され得る。
【0010】
全体として、一方の機械構成要素のシール保持構造に対するシールの望ましくない軸方向の移動又は回転は、これによって防止され得る。さらに、シールは、非常に簡単な方法で組み立てられ得る。
【0011】
構造的に最も簡単な場合、本発明によるシールは、その両端の一方が保持溝内にあるように配置される。その結果、本発明によれば、シールの他方の端部はシールリップを形成する。2つの機械構成要素の滑りガイドに必要とされるような滑りガイドの横断方向又は径方向の剛性の程度は、保持溝内におけるシールの(横断方向又は)径方向の支持、及び適切に選択することができるシール材料の弾性率により調節可能である。一方の機械構成要素の保持溝は、さらに、シールを最適な方法で軸方向に支持するために、したがって、万一径方向に負荷が加わってもシールの弾性が過度にならないようにするために、シールギャップまで直接延在する少なくとも1つの溝側面を有することができる。
【0012】
シールリップの端部部分は、プレテンション要素に移動可能に当接するのが好ましい。これによって、シールリップは、必要に応じて、例えば2つの機械構成要素が互いに相対的に運動する場合、2つの機械構成要素に対する補正運動を実行することができるようになる。これによって、特にシール縁部の領域において、封止機能を失うことなくそれと同時にシールリップの摩耗が減少するように、例えば、シャフトの衝突(shaft impact)又は互いに対して移動可能な機械構成要素の偏心が補正され得るようになる。さらに、これによって、特に、シール装置の組み立て及びメンテナンスが簡単になる。したがって、プレテンション要素は、該当する場合において、新しいプレテンション要素と個別に交換することができる。
【0013】
もちろん、シール及びプレテンション要素は、一体に構築されてもよい。具体的には、プリテンション要素はシール上に形成されてもよい。
【0014】
本発明の特に非常に好ましい開発によれば、シール装置は、2つのシールリップを有する。本発明の一実施の形態によれば、シールリップは、軸方向において互いに離れて延在する。
【0015】
これによって、シールにより形成される滑りガイドは、特に粒子状汚染物の侵入及び/又はシールギャップからの潤滑剤の漏出を防ぐために構造的に非常に簡単な方法で両側を軸方向に保護され得るようになる。このタイプの構造は、使用範囲の拡大及び耐用年数の延長により特徴付けられる。
【0016】
本発明の他の実施の形態によれば、シールリップは、やはりまた、軸方向に平行に配置されてもよい(タンデムシール)。
【0017】
本発明によれば、シールリップは、具体的には形状、寸法、材料及び/又は材料特性の点で、互いに一致することができる。
【0018】
高い機械的負荷が加わるシール装置の場合に特に有利である本発明の一実施の形態は、シールがシールリップを夫々有する2つのシール要素を有するという点で特徴付けられる。したがって、この例では、シールは、2つの構成要素、すなわち2つの部分として構築される。2つのシールは、本発明に従って互いに間隔を置いて配置されるのが好ましい。2つのシール要素は、これらの端部が互いに向き合うように、一方の機械要素における異なる保持溝内に配置され得る。シール保持構造を有する機械構成要素は、この例では、他方の機械構成要素に対する(剛的な)軸受構造を有することができる。軸受構造は、2つのシール要素の間に軸方向に配置される。この例では、シールにより形成される滑りガイドに対する軸受構造は、好ましくは、さらに剛的であり、すなわち径方向に負荷が加わってもさらに曲がりにくくなっている。これによって、2つの機械構成要素の、互いに対する、非常に正確であり且つ同時に頑強な支持又は案内が達成される。したがって、それと同時に、動作中において、シール又は滑りガイドの機械的な負荷が簡単に制限され、このことは、シール装置の耐用年数にとって有利である。さらに、軸受構造は、両側に配置されるシールのシール要素(密閉された構造)により汚染から効果的に保護され、これによって動作中における軸受構造の動作故障が全体として最小限に抑えられ得る。
【0019】
本発明によれば、軸受構造は、2つの機械構成要素の間において2つのシール要素により軸方向に境界が定められるシールギャップに侵入してくる可能性のある汚染物を受容するために、他方の機械構成要素の方を向いた軸受面において、少なくとも1つ、好ましくは複数の凹部を有することができる。1つ又は複数の凹部は、有利には、運動軸に沿った及び/又は運動軸周りの2つの機械構成要素の運動方向に対して横断方向に配置される。これによって、全体として、シール装置、具体的には滑りガイドの動作障害がさらにまた減少され得るようになる。凹部があることで、特に、軸受構造の摩擦抵抗がさらに低くなり得る。
【0020】
本発明の好ましい一実施の形態によれば、シール装置は、粘塑性材料からなる。粘塑性材料は、好ましくは、ポリマー材料であり、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。これによって、一方では、熱的、機械的、又は化学的な影響にまでも耐える、2つの機械構成要素の互いに対する封止と、2つの機械構成要素の滑り軸受部とを達成することが可能になる。
【0021】
本発明によれば、プレテンション要素は、一方の機械構成要素の凹部、例えば溝内に配置されるのが好ましい。これによって、プレテンション要素は、一方の機械構成要素に対する望ましくない位置の変更に対してできるだけ構造的に簡単な方法で固定可能になる。他方では、シール装置の組み立ての際、プリテンション要素を一方の機械構成要素の溝内に単に配置するだけでよいので、これには工業生産の点からみて利点がある。
【0022】
プレテンション要素の断面及び材料を適切に選択すれば、他方の機械構成要素に対するシールリップの予張力、すなわち他方の機械構成要素に対するシールリップの接触圧を簡単に調節することができる。もちろん、プリテンション要素の断面形状は、円形、楕円形、又は多角形でさえあってよい。
【0023】
プレテンション要素は、特に、環状に(例えば、Oリングとして)構築されてよく、エラストマー、特に熱可塑性エラストマーからなるのが好ましい。
【0024】
本発明によるシール装置を製造する本発明による方法は、以下のステップを有する。少なくとも1つのプレテンション要素を、一方の機械構成要素、好ましくは一方の機械構成要素の溝内に配置するステップと、次いで、一方の機械構成要素のシール保持構造とともに少なくとも1つのシールブランクを圧縮してシールを形成するステップとを有する。シールブランクは、具体的には、スリーブ状又は環状円板状の構造を有することができる。
【0025】
本発明は、運動軸に沿って及び/又は運動軸周りを互いに対して移動可能なように配置される2つの機械構成要素と、圧入により2つの機械構成要素の一方にあるシール保持構造に保持される少なくとも1つの弾性的に変形可能なシールとを有する、シール装置に関する。シールは、2つの機械構成要素のための滑りガイドを形成し、いずれの場合にも、他方の機械構成要素に封止当接してシール保持構造から離れて軸方向に延在する、少なくとも1つのシールリップを有する。シールリップの自由端部分は、少なくとも1つの弾性的に変形可能なプレテンション要素により一方の機械構成要素に支持され、所定の接触圧で自由端部分が他方の機械構成要素に当接する。
【0026】
本発明の主題の他の利点及び有利な実施の形態は、説明、特許請求の範囲及び図面から明らかになるであろう。上述した特徴及び以下においてより詳細に説明する特徴は、個別に又は任意に組み合せて共に使用可能である。
【0027】
図面において説明される実施の形態を参照して、本発明を以下においてより詳細に説明する。
【0028】
図示され説明される実施の形態は、限定的な列挙であると理解されるべきではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な特徴であると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるシール装置の縦断面図であり、シール装置は、内側シールとして構築されて軸方向の圧入により一方の機械構成要素のシール保持構造に保持されるシールを有し、シールは、シール保持構造を越えて軸方向に突出するシールリップを有し、シールリップは、その自由端部分において、所定の接触圧で他方の機械構成要素に押し付けられるように、弾性のあるプレテンション要素により一方の機械構成要素に支持される。
図2】シール装置の縦断面図であり、シール装置は、2つのシール要素により形成されるシールを有し、2つのシール要素は夫々シールリップを有し、各シール要素は、軸方向の圧入により一方の機械構成要素に配置される。
図3A図3Aはシール装置の縦断面図であり、シール装置は、2つのシール要素により形成されるシールを有し、各シール要素は、径方向の圧入により一機械構成要素に保持されている。
図3B図3Bは切り欠き斜視図であり、構造的に若干の変更が加えられている。
図4】一体型シールを有するシール装置の縦断面図であり、一体型シールは、互いに離れる方に向いた2つのシールリップを有し、径方向の圧入により一方の機械構成要素に保持される。
図5】シール装置の部分的な断面斜視図であり、シール装置は、外側シールとして構築され、径方向の圧入により一機械構成要素の被覆面に配置されるシールを有し、シールは、互いに離れる方に向いたシールリップを両端に有する。
図6】本発明によるシール装置を製造するための個々の方法ステップのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、運動軸16に沿って互いに対して動くことができるように構成される2つの機械構成要素12、14を有するシール装置10が示されている。この例では、一例として、機械構成要素12は、シリンダとして構築され、機械構成要素14は、シリンダ内を前後に動くことができるように構成されるピストンとして構築される。機械構成要素12は、この例では金属であって実質的には剛体材料からなるカートリッジ状シールインサート18を有する。シールインサート18は、シール保持構造20を有する。シール保持構造20は保持溝として構築され、シール保持構造20において、末端の固定部24を有するシール22が軸方向の圧入により保持される。固定部24は、曲げシール部26によって、軸方向28に長手方向に延在するシールリップ30に結合されている。シールリップ30は、機械構成要素12のシール保持構造20から離れて軸方向に延在し、シール保持構造20の域を越えて軸方向に突出している。シールリップ30の自由端部分32は、シール縁34を備える。シールリップ30は、封止されるべき側Aの方に向いている。
【0031】
図1に示されるように、シールリップ30の自由端部分32は、溝36を覆う。溝36は、シールインサート18に配置され、この例では環状であり、溝36においてはプレテンション要素38が配置されている。シール22の自由端部分32は、プレテンション要素38に移動可能に当接し、これによって第1の機械構成要素12に弾性的に支持される。この例において図示される実施の形態では、プレテンョン要素38は、無負荷状態では実質的に円形の横断面を有するが、原理上は、様々な横断面を有することができる。
【0032】
プレテンション要素38が図面に示される荷重状態において溝32から突出し、所定の予張力を与えて、縁34を有するシールリップ30のシール自由端部分30を他方の機械構成要素14に押し付けるような方法で、プレテンション要素38の横断面は溝36の深さに関連して選択される。プレテンション要素38は、市販のエラストマーからなり、該当する場合、添加物を含んでもよい。
【0033】
シール22は粘塑性ポリマー材料から、この例ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる。もちろん、シールのポリマー材料は、該当する場合、図面にはより詳細に示されない添加物又は補強インサートを含むことができる。
【0034】
シール保持構造20に軸方向に隣接するシールリップ部分を有するシール22は、互いに対して動くことができる2つの機械構成要素12、14のための、径方向において剛的である(実質的に曲がらない)滑り軸受部40を形成する。シールリップ30から離れる方向に向く保持溝の溝側面42aは、保持溝の他方の溝側面42bに対してシールリップ30を軸方向に支持するために、機械構成要素14の方向にさらに径方向に突出している。図1に示されるように、溝側面42bは、シールされるべき側Aに向かう方向において溝側面42bと隣接する壁突出部43とともに、シール22の材料に差し込まれる。これによって、シール22は、シール22に働く軸方向の力に対して位置的に安定するように、機械構成要素12の適切な位置に保持されるようになる。壁突出部43は、機械構成要素12の内側周縁方向に分割されるように構築され得る。この例では、シール22は、さらに、回転可能に固定されるように、機械構成要素12に保持される。
【0035】
図2には、上述した実施の形態とは、シールが2つの別個のシール要素22a、22bからなるという点で実質的に異なるシール装置10が示されている。2つのシール要素22a、22bは一端において、軸方向の圧入によって、シールインサート18の別々の保持溝20a内に夫々保持される。あるいは、又はこれに加えて、2つのシール要素22a、22bは、さらに、径方向の圧入によって溝内に保持されてもよい。保持溝20の溝側面42bは、図2に示される実施の形態では、別個のシール要素22a、22bの材料に差し込まれない。シール要素22a、22bは夫々、上述のようにして、プレテンション要素38を介して第1の機械構成要素12に支持されるシールリップ26を有する。2つのシールリップ26は、この例では、互いに離れるように軸方向に延在する。機械構成要素12は、さらに、互いに間隔を置いて配置される2つのシール要素22a、22bの間に配置される軸受構造44を有する。軸受構造44は、機械構成要素14について径方向に高い剛性を有し、機械構成要素14の軸受面46に当接するように、他方の機械構成要素14を支持するのに役立つ。軸受面46は、運動軸に対して横方向に向いた溝状凹部48を有する。溝状凹部48は、特に、シール装置10の動作中にシールギャップ50に侵入した粒子状汚染物を受容するのに役立つ。凹部48によって、さらに、軸受面46の摩擦抵抗が確実に低くなる。
【0036】
図3Aはシール装置10の概略図であり、2つの溝側面42b(図2参照)及び壁突出部43(図3A参照)がシール要素22a、22bの材料に差し込まれているという点で、図2に示されるシール装置とは実質的に異なる。2つのシール要素22a、22bは、保持溝内にクランプ留めされるように保持されるように配置される。軸方向に互いに間隔を置いて配置される2つのシール要素22a、22bの間には軸受構造は配置されない。
【0037】
図3Bは、図3Aに示されるシール装置の機械構成要素12の斜視図であり、2つのシール要素22a、22bと共に、構造的に若干の変更が加えられている。この図面において、機械構成要素12の周縁方向に分割されるように構築されている壁突出部43をはっきりと見ることができる。壁突出部43は、いずれの場合にもシール要素22a、22bによって覆われるので、破線で図示されている。
【0038】
図4には、シール22が内側シールとして一体に構築されている、シール装置10が示されている。この例では、シール22は、実質的に、径方向の圧入により機械構成要素12の円筒形シール保持構造20に保持される。シール保持構造20は、複数の環状突出部52を有し、これによって、シール保持構造20に圧縮されるシール22は、軸方向に移動できないように機械構成要素12に保持されるようになる。他の実施の形態では、突出部52は、やはりまた、一方の機械構成要素12の内側周縁にわたって、円弧状又は点状に分配されるように配置され得る。シール22は、径方向においてシール保持構造20を完全に覆い、軸方向に延在し互いに離れるように向いた2つのシールリップ30を有する。2つのシールリップ30は夫々、すでに上記で述べたようにして、シール保持構造20を越えて軸方向に突出し、径方向側の溝36を覆う。いずれの場合にも、弾性のあるプレテンション要素38により、2つのシールリップ26の自由端部分32は、やはりまた、所定の予張力(所定の接触圧)で機械構成要素14に弾性的に当接することになる。シール22の長手方向部分は、シール保持構造20を径方向に覆い、シール保持構造20に全表面にわたって当接し、2つの機械構成要素12、14についての径方向に剛的な滑りガイド40を形成する。
【0039】
図5にはシール装置10が示されており、シール装置10は、シール22が、ピストンとして構築される機械構成要素14に、径方向の圧入によって、外側シールのように配置されるという点で図3によるシール装置とは実質的に異なる。ピストンは、例えば、より詳細には図示されない衝撃穿孔機、又はハンマードリルのリベットピストンとして構築され、他方の機械構成要素内に案内され得る。ピストンのシール保持構造20は、ピストンの外側被覆面54により形成され、いずれの場合にも、機械構成要素14の外側被覆面54の溝36によって軸方向に境界が定められる。溝36内には、エラストマーの環状プレテンション要素38が、ピストン上で軸方向に移動できないように配置されている。この実施の形態では、シールは、やはりまた、2つのシールリップ30を有する。2つのシールリップ30は、運動軸16に対して軸方向に延在し、いずれの場合にも、その自由端部分32とともに、プレテンション要素38のうちの1つを介して、所定の接触圧で他方の機械構成要素12に押し付けられる。これによって、上述した本発明の実施の形態と同様に、シールリップ30の最適化されたワイピング及び封止作用が達成される。
【0040】
2つの自由端部分32は、夫々、プレテンション要素38に移動可能に当接し、いずれの場合にも、その自由端の方向に減少する厚さを有する。プレテンション要素38に当接するシールリップ30の接触面56は、この例ではプレテンション要素の外輪郭にしたがって形成され、この例では軸方向に(若干)くぼむように構築される。シールリップ30の自由端部分32は、軸方向において、このようにプレテンション要素38に支持される。
【0041】
ピストンの外側被覆面54により形成されるシール保持構造20は、より詳細には図示されない方法で、シール20が係合される1つ又は複数の凹部を有することができ、これによって、ピストンに対するシールの軸方向の移動又は回転が確実に防止されるようになる。
【0042】
ピストンは、一方の端部(ワイピング側)に、平らな外側部60を有する環状カラー58を有する。環状カラー58と第2の機械構成要素14の間に(例えば、汚染物である)粒子が詰まる危険を防ぐために、環状カラー58は、シール22の最大外径Dに比べて小さい環状カラー直径Dを有する。ピストンは、(例えば、シール装置10のオイル側に向いている)他方の端部に、軸方向に丸みを付けて構築される外側部60を有するセンタリングカラー62を有する。
【0043】
一例として上述したシール装置では、シール22及び関連のプレテンション要素38は、より詳細には説明されない方法で一体に構築されてもよい。さらに、カートリッジ状シールインサート18及びこのシールインサートを有する機械構成要素も一体に構築されてよい。加えて又は別法として、もちろん、上述したシール装置10の2つの機械構成要素12、14は、図示の運動軸16周りで互いに対して運動(回転)することができる。
【0044】
本発明によるシール装置10は、衝撃穿孔機、ハンマードリル、ショックアブソーバ等での使用に特に適している。
【0045】
図6は、本発明によるシール装置を製造する方法の個々のステップを示すブロック図である。方法100は、以下のステップを含む。
【0046】
少なくとも1つのプレテンション要素38を機械構成要素12、14の一方に配置するステップ110と、次いで、一方の機械構成要素12、14のシール保持構造20とともに少なくとも1つのシールブランク70を圧縮してシール22を形成するステップ120を含む。内側シールの形成の場合、シールブランクの圧縮は、具体的には、より詳細には図示されない工具マンドレル(心棒)(tool mandrel)を用いて実行することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2014年4月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動軸(16)に沿って及び/又は運動軸(16)周りを互いに対して移動可能に配置される2つの機械構成要素(12,14)と、
粘塑性材料からなるシールであって、圧入により前記2つの機械構成要素(12、14)の一方にあるシール保持構造(20)に保持される少なくとも1つのシール(22)とを有し、
前記シール(22)は、前記シール保持構造(20)に軸方向に隣接するシールリップ部分を有するか又は前記シール保持構造(20)を径方向に覆うと共に前記シール保持構造(20)に広範囲に隣接する長手方向部分を有し、前記2つの機械構成要素(12,14)のための滑りガイド(40)を形成し、
前記シール(22)は、いずれの場合にも他方の機械構成要素(12,14)に封止当接して前記シール保持構造(20)から軸方向に離れて延在する少なくとも1つのシールリップ(30)を有し、
前記シールリップ(30)の自由端部分(32)が、少なくとも1つの弾性的に変形可能なプレテンション要素(38)により一方の機械構成要素(12,14)に支持されて、所定の接触圧で前記自由端部分(32)が他方の機械構成要素(12,14)に当接する、
シール装置(10)。
【請求項2】
前記シール(22)は、径方向及び/又は軸方向の圧入により前記シール保持構造(20)に保持されることを特徴とする請求項1記載のシール装置。
【請求項3】
前記シールリップ(30)の前記自由端部分(32)は、前記プレテンション要素(38)に移動可能に当接することを特徴とする請求項1又は2記載のシール装置。
【請求項4】
前記シール(22)は、軸方向に互いに離れて延在する2つのシールリップ(30)を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項5】
縦に並んだ状態にある前記シールリップ(30)は、同じ方向に向いていることを特徴とする請求項に記載のシール装置。
【請求項6】
前記シール(22)は、シールリップ(30)を夫々有する2つのシール要素(22a,22b)を有することを特徴とする請求項4又は5記載のシール装置。
【請求項7】
前記機械構成要素(12,14)の一方が、他方の機械構成要素(12,14)のための剛的な軸受構造(44)を有し、前記軸受構造は、前記2つのシール要素(22a,22b)の間に軸方向に配置されることを特徴とする請求項記載のシール装置。
【請求項8】
前記軸受構造(44)は、前記軸受構造(44)の軸受面(46)に前記運動軸(16)に対して横方向に配置されるのが好ましい少なくとも1つの凹部(48)を有することを特徴とする請求項記載のシール装置。
【請求項9】
前記粘塑性材料は、ポリマー材料であり、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項記載のシール装置。
【請求項10】
前記プレテンション要素(38)は、一方の機械構成要素(12,14)の溝(36)内に配置されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項11】
前記プレテンション要素(38)は、エラストマーからなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項12】
前記シール保持構造(20)は、一方の機械構成要素(12,14)に、好ましくは取り外し可能に固定されるカートリッジ状シールインサート(18)により形成されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項によるシール装置(10)を製造する方法(100)であって、
前記少なくとも1つのプレテンション要素(38)を一方の機械構成要素(12,14)に配置するステップ(110)と、
次いで、工具マンドレルを用いて、一方の機械構成要素(12、14)の前記シール保持構造(20)とともに少なくとも1つのスリーブ様又は円板様のシールブランク(70)を圧縮して前記シール(22)を形成するステップ(120)と
を特徴とする、方法(100)。
【国際調査報告】