(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
を有する非印刷滴へと破断させる滴形成器を準備する。印刷滴体積と非印刷滴体積は互いに異なる。タイミング遅延器は、第1ノズルグループで形成された印刷滴と第2ノズルグループで形成された印刷滴が互いに整列しないよう、第1及び第2ノズルグループの滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングをシフトさせる。帯電器は、体積V
液室に備わる複数個のノズルを介し液ジェットを吐出させるのに十分な圧力下で液を供給するステップであって、当該複数個のノズルがノズルアレイ方向に沿って配置されており、当該複数個のノズルが第1グループ及び第2グループに分かれて配置されており、第1グループのノズルと第2グループのノズルが、第1グループのノズルが第2グループ内隣接ノズル間に位置し第2グループのノズルが第1グループ内隣接ノズル間に位置するよう互い違いに配置されているステップと、
複数個のノズルそれぞれに係る滴形成器を準備するステップと、
入力画像データを供給するステップと、
一連の滴形成波形を各滴形成器に供給することで液ジェットを変調させ、ひいては液ジェットの諸部分を選択的に破断させるステップであって、当該液ジェットの諸部分が、印刷滴体積Vpを有する1個又は複数個の印刷滴と、入力画像データに応じ印刷滴体積とは異なる非印刷滴体積Vnpを有する1個又は複数個の非印刷滴と、を含むストリームに破断されるステップと、
第1グループのノズルで形成された印刷滴と第2グループのノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに整列しないよう、第1グループ又は第2グループのノズルに備わる滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングをシフトさせるタイミング遅延器を、準備するステップと、
第1グループのノズル及び第2グループのノズル双方で形成された液ジェットに係る第1共通帯電電極、並びに第1帯電電極・液ジェット間に一定電位を供給する一定電位源、を有する帯電器を準備するステップと、
を有し、
体積Vpの滴上に印刷滴帯電状態が生じ且つ体積Vnpの滴上に印刷滴帯電状態とは異なる非印刷滴帯電状態が生じるよう、第1共通帯電電極が液ジェットの破断位置付近を基準に配置され、
更に、
偏向器を準備するステップと、
印刷滴帯電状態を有する印刷滴及び非印刷滴帯電状態を有する非印刷滴をその偏向器を用い別々の経路沿いに移動させるステップと、
キャッチャを準備するステップと、
キャッチャを用い非印刷滴を中途捕獲する一方で、印刷滴を引き続き記録媒体に向かう経路沿いに移動させるステップと、
を有する印刷方法。
請求項1記載の印刷方法であって、第3ノズルグループをなすよう上記複数個のノズルが配置されており、第3グループのノズルが第1グループのノズル及び第2グループのノズルと互い違いに配置されており、タイミング遅延器を準備するステップが、第1グループのノズルで形成された印刷滴、第2グループのノズルで形成された印刷滴並びに第3グループのノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿い互いに整列しないよう、第1グループ及び第2グループに対し第3グループの滴形成波形のタイミングをシフトさせるタイミング遅延器を準備するステップを含む印刷方法。
請求項2記載の印刷方法であって、印刷滴が記録媒体に射突し、第1ノズルグループ・第2ノズルグループ間、第2ノズルグループ・第3ノズルグループ間及び第3ノズルグループ・第1ノズルグループ間のタイミングシフトが記録媒体速度に依存しており、記録媒体移送方向に沿って見たとき、記録媒体速度によらず、第1ノズルグループ、第2ノズルグループ及び第3ノズルグループによって生成された印刷滴の位置の間のシフトが固定になる印刷方法。
請求項2記載の印刷方法であって、第1グループ又は第2グループのノズルに備わる滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングをシフトさせるタイミング遅延器を準備するステップが、更に、第1グループのノズルで形成された印刷滴、第2グループのノズルで形成された印刷滴及び第3グループのノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに整列しないよう、第3グループに対するタイミング遅延器を準備するステップを含む印刷方法。
請求項4記載の印刷方法であって、第1グループのノズルと第2グループのノズルの間のタイミング遅延が、第2グループのノズルと第3グループのノズルの間のタイミング遅延に等しい印刷方法。
請求項1記載の印刷方法であって、滴形成器が、各ノズルに係る滴形成トランスデューサを有し、その滴形成トランスデューサが、サーマルデバイス、圧電デバイス、MEMSアクチュエータ、電気流体力学デバイス、誘電泳動変調器、光学デバイス、電歪デバイス及びその組合せのうち一つである印刷方法。
請求項1記載の印刷方法であって、印刷滴が記録媒体に射突し、第1ノズルグループ・第2ノズルグループ間のタイミングシフトがプリントヘッドに対する記録媒体の速度に依存しており、記録媒体移送方向に沿って見たとき、記録媒体速度によらず、第1ノズルグループ及び第2ノズルグループによって生成された印刷滴の位置の間のシフトが固定になる印刷方法。
請求項1記載の印刷方法であって、第2グループの交互に隣り合うノズルが第3グループを形成し、第1グループ又は第2グループのノズルに備わる滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングをシフトさせるタイミング遅延器を準備するステップが、更に、第1グループのノズルで形成された印刷滴、第2グループのノズルで形成された印刷滴及び第3グループのノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに整列しないよう、第3グループに対するタイミング遅延器を準備するステップを含む印刷方法。
請求項11記載の印刷方法であって、第1グループのノズルと第2グループのノズル間のタイミング遅延が、第1グループのノズルと第3グループのノズルとの間のタイミング遅延と同じ大きさである印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、別紙図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態に関し詳細に説明する。
【0019】
以下の説明は、主に、本発明に係る装置を構成し又はそれと密接に関連する諸部材についてのものである。ご理解頂けるように、具体的な説明乃至図示のない諸部材は、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)にとり周知の諸形態を採りうる。以下の説明及び図面では、同様の部材を参照するに当たり、可能な限り同一の参照符号を使用している。
【0020】
本発明の実施形態に関する図示は模式的なものであり、明瞭化のため実寸比からはずれている。いわゆる当業者であれば、それら実施形態の構成要素をどのようなサイズ及び相互関係にすればよいかを容易にご決定頂けよう。
【0021】
本願記載の通り、本発明は、インクジェット印刷システム等で使用されるプリントヘッド又はその構成部材、という形態で実施することができる。使用される液は、インクジェット印刷システムならば対記録媒体印刷用のインクである。しかし、インクジェットプリントヘッドの用途は、液量が正確であること及び高い空間的分解能で堆積可能であることが求められる諸用途(吐出液がインクでないものを含む)へと拡がりつつある。そこで、本願では、「液」及び「インク」の語を、後述のプリントヘッド又はその構成部材により吐出可能な諸素材を包含する意味で使用することにする。
【0022】
CIJ用滴生成器の根本にあるのは、非特許文献1にてひとまず二次元的に解析された非拘束流体ジェット物理学である。レイリー卿による解析の結果によれば、液に圧力Pを加えて孔(ノズル)から流出させると直径d
j,移動速度v
jの液ジェットが生じる。そのジェットの直径d
jは実効ノズル直径d
nとほぼ等しく、速度はリザーバ内圧Pの平方根に比例する。レイリー卿による解析の結果は、その波長λがπd
jより長い(即ちλ≧πd
jである)表面波の働きでそのジェットが諸サイズの滴へと自然に破断することも示している。レイリー卿による解析の結果は、更に、十分に大きな振幅で与えれば特定の表面波長が支配的になり、それによってそのジェットが「励振」されて単一サイズ滴群が生じることも示している。これを踏まえCIJ用滴生成器で使用されている周期的な物理プロセス、いわゆる「攪乱」(perturbation)乃至「励振」(stimulation)には、ある特定の支配的な表面波をジェット上に発生させる働きがある。励振の働きによる破断、即ちジェットからの単一サイズ滴群の生成は、その攪乱の基本周波数に同期する。また、ジェットの破断効率が最大になる周波数、即ち破断までの所要時間が最短の周波数を最適周波数F
optと呼ぶ。最適周波数F
optでの攪乱波長λはほぼ4.5d
jである。攪乱波長λがπd
jに等しい周波数は、その周波数より高い周波数で液ジェットを攪乱しても滴生成へと発展することがないことから、レイリー遮断周波数F
Rと呼ばれている。
【0023】
本願では、レイリー励振の適用で滴の流れを発生させることを、所定体積滴の流れの生成、と呼んでいる。従来型のCIJシステムにて、印刷即ちパターン化層堆積に使用される注目滴が不可避的に単位体積となるのに対し、本発明では、励振信号の操作によって単位体積の所定数倍の滴を生成可能である。そこで、「所定体積の滴の流れ」なる語を以て、互いに同一のサイズの滴へと破断されている流れや、想定に従い様々なサイズの滴へと破断されている流れを包含させることとする。
【0024】
CIJシステムでは、流体流がちぎれ精密な滴配列を生成するに当たり、予め定められている単位体積よりかなり小体積の滴、いわゆる「サテライト」が生じることがある。そうしたサテライトの挙動は全く予想できないし、他の滴と予測可能な形態で融合するとは限らないので、サテライトは印刷乃至パターニング向け滴体積に微変をもたらす原因となる。ただ、本発明の実施に当たり小体積且つ予測不能なサテライトが生じていてもさして邪魔にはならず、また使用する同期的励振信号次第で滴サイズが予め定まってくるという事実が左右されるものでもない。そこで、本発明に関する説明中で使用される語「所定体積」については、予測不能なサテライトが生じたことによる滴体積の目標値からの小ずれを許容するものとものと理解されたい。
【0025】
これから
図1〜
図11を参照して説明する例では、滴帯電、滴偏向、滴捕獲、滴生成及び滴速度変調用の諸部材についてある特定の組合せを念頭に置いている。ご理解頂けるように、本発明の技術的範囲内で、これらの部材は入替可能であるし、それら部材の組合せ方を変えることが可能である。
【0026】
図1に示すCIJ印刷システム10にはインクリザーバ11が備わっており、プリントヘッド12、別称液吐出器は、そこからインクの連続的な押送を受けてインク滴連続流を発生させる。画像源13は本システム10にディジタル画像処理データを送ってくるディジタルデータ源、例えばラスタ画像データ、ページ記述言語で記述されたアウトライン画像データ等の諸形態でディジタル画像データを供給するスキャナ、コンピュータ、ディジタルカメラ等である。画像プロセッサ16は画像源13からの画像データを周期的に受領する。プロセッサ16は、その画像データを処理し内蔵するメモリ内に保存する。通常、プロセッサ16として使用されるのはラスタ画像プロセッサ(RIP)である。励振コントローラ18は、そのプロセッサ16内の画像メモリに格納されている画像データ、いわゆる印刷データを周期的に受け取り、時変性の電気的励振パルスからなるパターンを発生させることで、後述の如くヘッド12上の個々のノズル出口にて滴の流れを発生させる。発生した励振パルスは、適当なタイミング及び適当な周波数にて、個々のノズルに係る励振器(群)に供給される。ヘッド12及び偏向機構14は、互いに協働することで、あるときにはインク滴片を記録媒体19上の画像メモリ内データ相応位置に付着させ(印刷し)、またあるときには偏向させてインクリサイクルユニット15経由で回収する。媒体19はレシーバとも呼ばれ、通常は紙、ポリマその他の多孔質基板を備えている。ユニット15内に入ってきたインクはリザーバ11へと還送される。そのインクを加圧下でヘッド12の背面へと分配するためのインクチャネルとしては、基板(通常はシリコン製)に設けられた室乃至プレナムを使用する。或いは、そうした室をマニホルド片に形成しそのマニホルド片をシリコン基板に装着するようにしてもよい。通常、インクは、その室から、ヘッド12のシリコン基板にエッチングで形成されているスロットや孔を介し、同基板の前面、即ちノズル群や励振器群がある面へと供給される。最適動作に結びつく好適なインク圧は多数の要因、例えばノズルの形状及び熱的特性やインクの熱的特性及び流体力学的特性に依存することとなろう。インク圧を一定に保つには、インク圧安定化器20の制御下でリザーバ11を加圧すればよい。偏向機構14としては、空力偏向方式のものや静電偏向方式のものを使用することができる。
【0027】
DODかCIJかを問わずインクジェットプリンタで周知の問題の一つに、インク滴位置精度にまつわる問題がある。インクジェット印刷の分野で周知の通り、発生した滴乃至滴群に対しては、記録媒体上の画素領域内に付着し、ディジタル画像構成情報に基づく画素等を実現することが望まれる。記録媒体上におけるそれら画素領域の配置形態は一般に正方形乃至長方形による実乃至仮想アレイであり、印刷時にはそうした画素領域内の所要位置に滴を付着させること、例えば各画素領域の中央に付着させること(単純な印刷方式の場合)や画素領域内の複数位置に対し精密に付着させること(中間調印刷の場合)が求められる。滴の配置が不適切な場合や、滴同士の位置関係をうまく制御できず各画素領域で所要配置を達成できない場合、例えば隣接画素領域上で所要位置からの同傾向偏差が反復発生している場合には、偽像が発生することとなろう。そこで、画像プロセッサ16例えばRIPは、印刷に当たり、画像データを画素マッピング型の画像ページデータに変換する。印刷時には、媒体移送コントローラ21による電子制御下、複数個ある移送ローラ22で記録媒体19をプリントヘッド12に対し移動させる。論理コントローラ17、例えばマイクロプロセッサ利用型で周知の如く相応にプログラミングされているそれは、制御信号を供給することで、媒体移送コントローラ21の動作をインク圧安定化器20及び励振コントローラ18に対し協調させる。その励振コントローラ18は滴コントローラを備えており、これは、プロセッサ16内画像メモリ機能部分から得た画像データに従い滴生成パルス、即ち個別のインク滴をヘッド12から媒体19に向け吐出させる駆動信号を発生させる。その画像データには、例えば、生の画像データ、印刷画質改善用の画像処理アルゴリムによって生成された付加的な画像データ、並びに多種多様なソース(例えばヘッド12内個別ノズルに関するステアリング誤差の計測結果)から生成された滴配置補正由来データ(プリントヘッド特性精査及び画像処理の分野でいわゆる当業者にとり周知)が含まれている。従って、プロセッサ16内情報は、印刷に使用されるべきインク滴片の所要付着位置指定、回収・再利用の対象となるべき滴片の特定等、滴吐出用データの総体的な源泉を代表しているといえる。
【0028】
ご理解頂けるように、媒体移送制御機構としては様々なものを使用することができる。例えばページワイズプリントヘッドの場合、プリントヘッド12を固定しておき記録媒体19を動かす構成にするのが都合よい。他方、走査型印刷システムの場合は、プリントヘッドをある軸(いわゆる主走査方向)に沿い動かす一方、記録媒体をそれに直交する軸(いわゆる副走査方向)に沿い動かすことで、相対的なラスタ運動を発生させる構成にするのが都合よい。
【0029】
滴生成パルスは、励振コントローラ18(滴コントローラとも)にて発生した後、信号伝送の分野で周知の通り、通常は電圧パルスの形態をとり導電接続部材経由でプリントヘッド12に供給される。しかし、他種パルス、例えば光パルスをヘッド12に送り個別のノズルで印刷用の滴(印刷滴)及び印刷用でない滴(非印刷滴)を発生させることも、インクジェット印刷分野で周知の通り可能である。生成された印刷滴は空気中を記録媒体方向に飛行した後記録媒体上の相応画素領域に射突し、非印刷滴は後述のキャッチャにより捕獲される。
【0030】
本発明は、それぞれ一定電位を呈する1個又は複数個の共通帯電電極を用いた静電偏向型印刷滴偏向方式に関する。こうした滴選別方式には、破断長変調に基づくもの、破断体積変調に基づくもの、それら2方式の組合せによるもの等がある。
図2A〜
図2Cに、滴体積を一定とし破断長変調を使用する印刷滴選別方式を示す。
図2A〜
図2Cに係る印刷システムのプリントヘッドは、複数個のノズル50がアレイ状に並ぶノズルオリフィス面42を有している。このヘッドを動作させることで、ノズル50のアレイから液ジェット43のアレイを吐出させることができる。また、
図2A〜
図2Cでは、ヘッド12のノズル50から吐出される液ジェットが、液ジェット軸87に沿った経路を辿っている。個々の液ジェット43に対しては滴形成器89が作用する。この生成器89には、滴形成トランスデューサ59や、そのトランスデューサ59に対し励振波形55即ち滴生成波形を供給する励振波形源56が備わっている。トランスデューサ59は励振トランスデューサと通称されるものであり、液ジェットに攪乱を発生させることが可能な各種装置形態、例えばサーマルデバイス、圧電デバイス、MEMSアクチュエータ、電気流体力学デバイス、誘電泳動変調器、光学デバイス、電歪デバイス、その組合せ等の形態をとることができる。
図2A〜
図2Cでは、アレイを構成するノズル50のうち1個にて、ほぼ同一体積の滴35又は36(35/36と表記)が基本滴形成周波数にて発生している。後述の通り、滴35,36のことをそれぞれ印刷滴,非印刷滴と呼ぶ。通常、プリントヘッド12に設けられているノズル50のアレイ全体に係る滴励振トランスデューサの滴励振周波数は、そのヘッド12に備わる全てのノズルについて同じ値である。通常の動作条件下では、個々の滴を印刷することができ、その最大印刷周波数が基本滴形成周波数と等しくなる。また、印刷周期は、単一のノズルから相次いで到来する印刷滴間の最小時間間隔として定義される。各印刷周期ではノズル1個あたり最大で1個の印刷滴を印刷することができ、その印刷周期は基本滴形成周期τ
0に等しくなる。
図2A〜
図2Cでは、ジェット破断位置32にて一定周期で液ジェット43が滴に破断しており、
図2Aではノズルオリフィス面42から位置32までの距離がL、
図2BではL’、
図2CではL”となっている。これは、滴形成トランスデューサ59に印加される励振波形55が互いに異なるためである。いずれにせよ、
図2A〜
図2Cでは、基本周波数で相次いで発生する滴のペア間の距離が、基本的に、液ジェットに対する攪乱の波長λに等しくなる。
【0031】
バイナリプリンタでは、印刷滴又は非印刷滴の群れが入力画像データに従い生成される。印刷に際しては、励振コントローラ18から滴形成用励振波形源56へと通信信号を送ることで印刷滴や非印刷滴の形成を指令し、その波形源56が滴形成器89の滴形成トランスデューサ59に対し励振波形55を供給する。供給される励振波形55は印刷滴形成時と非印刷滴形成時とで異なる。インクジェットノズルからジェットとして吐出される液流から滴を形成する滴形成ダイナミクスは、個別のノズル(オリフィス)50に係る滴形成トランスデューサ59に印加される波形を変化させることで変化させることができる。励振波形55内の他のパルスに対する振幅、デューティ比及びタイミングのうち少なくとも一通りを変化させることで、個別のノズル(オリフィス)の滴形成ダイナミクスを変化させることができる。励振波形55を構成するパルスのエネルギ、持続時間又はその双方を変化させることで、基本周期τ
0にて生成される滴の破断位置32を変化させることができる。通常、パルス波形のエネルギが大きい方が、液ジェット43に対する攪乱が強まり、ひいては破断長が短くなる。
【0032】
図2A〜
図2Cには、帯電電極44及び帯電電圧源51を有する帯電器83も示されている。帯電電極は、ノズルオリフィス面42からその上部までの距離d
eがある固定値になるよう配置されている。帯電器83及び帯電電極44は、そのノズルアレイで形成される全てのジェットにとり共通である。帯電電極44は第1共通帯電電極とも称される。帯電電圧源51は、第1共通帯電電極44・液ジェット43間に一定電位を供給する。帯電電極の前面44
Fは、ジェット軸87からの距離がy
eの位置に配置されている。液ジェットは、通常、接地されている滴生成器の液室と接触することによって接地される。帯電電極44に非0電圧を印加すると、その帯電電極と電気的に接地されている液ジェットとの間に電界が発生する。帯電電極と電気的に接地されている液ジェットとの間の容量性結合によって、導電性を有する液ジェットの一端に正味電荷が誘起される。液ジェットの端部が破断して滴が形成される際には、液ジェットの端部にあった正味電荷全てが、新たに形成される滴上に捕獲される。帯電電極前面・液ジェット端部間の距離を変化させると、帯電電極・液ジェット間の容量性結合も変化する。従って、新たに形成される滴上の電荷は、帯電電極と液ジェット43の破断位置32との間の距離を変化させることによって制御することができる。
図2B中にL’で示すように、帯電電極44が液ジェット43の破断位置32に面しているときには、滴上に誘起される電荷が最大になる。
【0033】
図2A中にLで示すように、液ジェット43の破断位置32までの距離が帯電電極44までの距離d
eに比べ短い場合、滴上に誘起される電荷の量は最大値よりかなり少なくなる。同じく、
図2C中にL”で示すように、液ジェット43の破断位置32までの距離が帯電電極44までの距離d
eに比べ長い場合も、滴上に誘起される電荷の量は最大値よりかなり少なくなる。上述のように、複数通りの破断長で滴を発生させるには複数通りの波形が必要になる。実際のプリンタでは、印刷滴波形及び非印刷滴半径と呼ばれる複数種類の半径が必要とされる。
図4A〜
図4Cを参照して後述する通り、弱帯電滴を印刷に使用する一方強帯電滴を偏向させガターに捕獲する構成を採りうる。また、
図5A〜
図5Cを参照して後述する通り、強帯電滴を偏向させ印刷に使用する一方弱帯電滴をガターに捕獲する構成も採りうる。
図2A〜
図2Cで滴の参照符号を35/36としたのは、印刷滴35かそれとも非印刷滴かの区別が、
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Cに示すように、偏向機構及び滴捕獲システムの性質によって変わるからである。実際のバイナリプリンタでは、滴の破断長が二種類だけでよい。プリンタは、破断長L及びL’を発生させる波形を使用することで、或いは破断長L’及びL”を発生させる波形を使用することで、構築することができる。弱帯電滴が印刷に回り強帯電滴が印刷に使用されない構成では、L又はL”で破断した滴が印刷滴35になり、L’で破断した滴が非印刷滴になる。強帯電滴が印刷に回る構成では、L又はL”で破断した滴が非印刷滴36になり、L’で破断した滴が印刷滴になる。
【0034】
実際のプリンタでは、別々のノズルで形成された印刷滴及び非印刷滴の破断長、或いは同一のノズルだが別々のタイミングで形成された印刷滴及び非印刷滴の破断長に、小規模な差異が発生する。この小規模な差異は、ノズル間に存する通常寸法公差の差や、位置及び時刻の変化に伴う液室内圧力及び温度の微動によるものである。ここで、印刷滴の破断長をL
p、非印刷滴の破断長をL
npで表すことにする。また、更なる説明のため、全印刷滴の間の平均破断長を以て印刷滴の公称破断長<Lp>とし、全非印刷滴の間の平均破断長を以て非印刷滴の公称破断長<L
np>とする。上掲のように破断長には小規模な差異が生じるので、印刷滴が破断する破断長L
pについて値域R
p=<L
p>±ΔL
pを定めることができる。この式中のΔL
pは印刷滴の破断長に現れる変化を表しており、一般に液ジェットの波長λよりも小さくなる(好適に制御されたプリンタでは液ジェットの波長λの1/2よりも小さくなりうる)。同様に、各非印刷滴が破断する破断長L
npについても値域R
np=<L
np>±ΔL
npを定めることができる。この式中のΔL
npは非印刷滴の破断長に現れる変化を表しており、一般に液ジェットの波長λよりも小さくなる(好適に制御されたプリンタでは液ジェットの波長λの1/2よりも小さくなりうる)。本発明を好適に実施するためには、印刷滴破断長の値域R
pと非印刷滴破断長の値域R
npを互いに別々にしなければならない。値域R
pは印刷滴最小破断長から印刷滴最大破断長までの範囲であり、値域R
npは非印刷滴最小破断長から非印刷滴最大破断長までの範囲である。各印刷滴の破断長と各非印刷滴の破断長との間には少なくとも液ジェット波長λの違いがあるのが望ましく、より好ましくは少なくとも3λの違いがあるべきである。各印刷滴の破断長と各非印刷滴の破断長との間に少なくとも液ジェット波長λの違いがあるようにするには、ΔL
p=λ及びΔL
np=λの場合、印刷滴の公称破断長<L
p>と非印刷滴の公称破断長<L
np>との間に少なくとも3λの違いがなければならない。各印刷滴の破断長と各非印刷滴の破断長との間に少なくとも液ジェット波長λの違いがあるようにするには、ΔL
p=1/2・λ及びΔL
np=1/2・λの場合、印刷滴の公称破断長<L
p>と非印刷滴の公称破断長<L
np>との間に少なくとも2λの違いがなければならない。
【0035】
図3に、本発明の一実施形態に関し、ノズルアレイを構成する複数個のノズルのうち隣り合っていて2グループに配列されている4個のノズル50と、それに対応するジェット励振器と、を示す。稼働時には、液室に備わる複数個のノズルを介し液ジェットを吐出させるのに十分な圧力下で液が供給される。当該複数個のノズルはノズルアレイ方向に沿って配置されている。当該複数個のノズルは、第1グループのノズルと第2グループのノズルが交互に位置するよう第1グループG1と第2グループG2とに分けて配置されている。即ち、第1グループに属するノズルは第2グループ内隣接ノズル間に位置しており、第2グループに属するノズルは第1グループ内隣接ノズル間に位置している。ノズルアレイの端部に位置するノズルの隣には他のグループに属するノズルがある。基本周波数f
0での滴反復発生に使用される励振トランスデューサ59は、ノズル50を取り巻く抵抗性負荷で構成されたサーマル滴形成トランスデューサとして示されている。励振トランスデューサ59は、励振波形源56から供給される電圧によって駆動される。その励振波形は、上述の通り、印刷滴励振波形セグメント及び非印刷滴励振波形セグメントからなる一連の滴形成波形で構成されている。使用するトランスデューサの種類によっては、液室内の液に作用するよう、ノズル50に液を供給する液室の内部又は近傍にトランスデューサが配置される。或いは、ノズルを通過する液に作用するよう、ノズルの内部又はすぐ脇にトランスデューサが配置される。或いは、ノズル内を通過した液ジェットに作用するよう液ジェットの近傍にトランスデューサが配置される。滴形成波形源は、基本周波数f
0及びそれに対応する基本周期τ
0=1/f
0を有する波形を滴形成トランスデューサに供給する。これは液ジェット波長λでの変調をもたらす。基本周波数f
0は、通常はF
optに近く、常にF
Rより低い。変調が振幅的に成長すると液ジェットの一部が破断して滴が発生する。滴形成器の動作により、基本周波数f
0及び基本周期τ
0=1/f
0にて一連の滴を発生させることができる。
【0036】
本発明の実施に当たっては、互いに隣接しプリントヘッドアレイを構成しているノズル50における隣接印刷滴間の距離を大きくすることで、レシーバ乃至記録媒体上への印刷に際し滴配置誤差をもたらす隣接印刷滴間静電相互作用を抑える。これを実現するため、複数個のノズルが、第1グループのノズルと第2グループのノズルが交互に位置するよう第1グループG1と第2グループG2とに分けて配置される。即ち、第1グループに属するノズルが第2グループ内隣接ノズル間に配置され、第2グループに属するノズルが第1グループ内隣接ノズル間に配置される。第1グループに属するノズルに対する励振波形の開始時点を制御するため、第1グループトリガが印加され、第2グループに属するノズルに対する励振波形の開始時点を制御するため、第1グループに対し時間的に遅延した第2グループトリガが印加される。
図3に、第1グループトリガタイミング遅延器76及び第2グループトリガタイミング遅延器77を有するグループタイミング遅延器78を示す。第1グループトリガタイミング遅延器76は、対応するグループG1に属するノズルそれぞれに対し同時に作用し、そのグループに属するノズルそれぞれに次滴形成用パルストレインを同時にトリガする。第2グループトリガタイミング遅延器77は、対応するグループG2に属するノズルそれぞれに対し同時に作用し、そのグループに属するノズルそれぞれに次滴形成用パルストレインを同時にトリガする。本発明を実施するに当たっては、各グループトリガタイミング遅延器76及び77の遅延量が互いに異なる必要がある。例えば、タイミング遅延器76及び77のうち一方は遅延量が0でよいが、双方とも0にすることはできない。即ち、グループタイミング遅延器78は、第1グループに属するノズルで形成された印刷滴と第2グループに属するノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに並ぶことがないよう、第1グループ及び第2グループのうち一方に属するノズルの滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングをシフトさせる。ノズルのグループ間に相対グループタイミング遅延がある場合、隣り合う一対のノズルから延びる直線上に形成される印刷滴は、異なるタイミングにて液ジェットから破断する。相対グループタイミング遅延は、(トリガタイミング遅延器77の遅延量)−(トリガタイミング遅延器76の遅延量)に等しい。
【0037】
他の実施形態においては、専用のタイミング遅延器を使用する代わりに、第1グループノズルで形成される印刷滴と第2グループノズルで形成される印刷滴がノズルアレイ方向に沿い互いに並ぶことがないよう、第1グループ及び第2グループのうち一方のノズル50に備わる滴形成器56に供給される励振波形55に、タイミング遅延が組み込まれる。更なる実施形態においては、第1グループノズルで形成される印刷滴と第2グループノズルで形成される印刷滴がノズルアレイ方向に沿い互いに並ぶことがないよう、第1グループノズル及び第2グループノズルに係る滴形跡56に供給される入力画像データをシフトさせ、ひいては第1グループ及び第2グループのうち一方のノズル50に備わる滴形成器に供給される滴形成波形55のタイミングをシフトさせることにより、タイミング遅延を実現することができる。
【0038】
更なる実施形態においては、個々のグループが相応のグループタイミング遅延を呈するよう且つ同一グループに属する2個のノズルが互いに隣り合わないよう、複数個のノズルが3個以上のグループに分けて配置される。ノズルのグループを3個形成する場合、第1グループのノズルが第2グループのノズル及び第3グループのノズルと隣り合い、第2グループのノズルが第3グループのノズル及び第1グループのノズルと隣り合い、第3グループのノズルが第2グループのノズル及び第1グループのノズルと隣り合うように、ノズルを配置することができる。ノズルのグループを3個形成する場合、ノズルが1個おきにあるグループのメンバとなり、そのグループに属する2個のノズル間に他の2個のグループが交互に位置するように、ノズルを配置することもできる。
【0039】
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Cに、本発明の実施に当たり使用される連続液吐出システム40の諸例を示す。
図4A〜
図4Cに示したのは本発明の第1実施形態に備わる第1ハードウェア構成であり、記録媒体19上に様々な印刷パターンを発現させる動作をしている。本実施形態では、印刷滴が(ほとんど)偏向されず記録媒体上に印刷される一方、非印刷滴が強く帯電、偏向され捕獲される。
図5A〜
図5Cに示したのは本発明の第2実施形態に備わる第2共通ハードウェアであり、記録媒体19上に様々な印刷パターンを発現させる動作をしている。本実施形態では、非印刷滴が(ほとんど)偏向されず捕獲される一方、印刷滴が強く帯電、偏向され記録媒体上に印刷される。
図4A〜
図4Cのうち、
図4A及び
図5Aに記載の状態では、記録媒体速度を最高とし、発生する全ての滴が印刷される全印刷条件で稼働している。
図4B及び
図5Bに記載の状態では、いずれの滴も印刷されない非印刷条件で稼働している。
図4C及び
図5Cに記載の状態では、一部の滴が印刷され他の滴が印刷されない一般的印刷条件で稼働している。
【0040】
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Cに例示する連続液吐出システム40は、
図1に示した連続インクジェットシステムに係る諸部材を有している。これらの図では、ノズルアレイを構成するノズル50から吐出される液ジェット43の内部経路が、液ジェット軸87と一致している。これらの図では、ノズルアレイが紙面前後方向に延びている。
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Cに示した構成全てに共通する部材としては、プリントヘッド12(ジェッティングモジュール乃至液吐出器とも称する)、滴形成器89、並びに印刷滴35を受け止める記録媒体19がある。帯電器83及び偏向機構14の諸構成も、
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Cに示す連続液吐出システム40に組み込まれている。連続液吐出システム40のプリントヘッド12には、液ジェット43の吐出に使用されるノズル50のアレイと通流する液室24が設けられている。液室24を十分に加圧すると、液ジェット43が、その液室に通ずる複数個のノズル50から吐出される。それら複数個のノズルはノズルアレイ方向に沿って配置されている。それら複数個のノズルは第1グループと第2グループに分けて配置されている。即ち、第1グループに属するノズルと第2グループに属するノズルが、
図3を参照して説明した通り、第1グループノズルが第2グループ内隣接ノズル間に位置し第2グループノズルが第1グループ内隣接ノズル間に位置するよう、互い違いに配置されている。本発明には、複数個のノズルが更に第3ノズルグループをも形成するよう配置される、第3グループノズルが第1グループノズルと第2グループノズルとの間に挟まる、タイミング遅延器として第3グループの滴形成波形のタイミングを第1グループ及び第2グループのそれに対しシフトさせるタイミング遅延器を備える、という実施形態もある。より多くの互い違い配置グループを同じ要領で付加した実施形態もある。
【0041】
各液ジェット43に係る滴形成器89は、ノズル50内を流れる液ジェット43に対し攪乱作用を及ぼす。滴形成器89は、入力画像データに応じた一連の励振波形55を励振トランスデューサ59に供給する励振波形源56を有している。図示例では、ノズル50を取り巻く壁内に励振トランスデューサ59が形成されている。励振トランスデューサ59は、複数個あるノズルそれぞれに、個別に設けることができる。励振トランスデューサ59は、基本周波数f
0にて液ジェット43が周期的に励振されるよう滴形成波形源56によって駆動されている。励振波形55の振幅、持続時間、タイミング及びエネルギパルス個数によって、滴の破断タイミング、破断位置及びサイズを含め、滴がどのようにどこでいつ形成されるかが決まってくる。相連続する滴の破断間時間間隔はそれらの滴のサイズ(体積)を決定づける。
【0042】
連続液吐出システム40の稼働時には、励振コントローラ18(
図1参照)からの印刷乃至画像データが励振波形源56へと送られる。励振波形源56では、ノズル50から流れ込む液ジェットによって、供給されたデータに応じた滴ストリームが発生するよう、時変性電圧パルスのパターンが生成される。励振波形源56から励振トランスデューサ59に供給される滴励振波形55の子細によって、一連の滴の破断長及びそのサイズ(体積)が決まってくる。滴励振波形は、画像プロセッサ16から励振コントローラ18に供給される印刷乃至画像データに応じ変化する。即ち、励振波形源から励振トランスデューサに印加されるエネルギパルスのタイミングは印刷乃至画像データに依存する。本発明の実施に当たっては、少なくとも二種類の励振波形55を使用する必要がある。即ち、値域R
p=<L
p>±ΔL
pを有する破断長にて印刷滴35が発生する励振波形と、値域R
np=<L
np>±ΔL
npを有する破断長にて非印刷滴36が発生する励振波形とを、入力画像データに応じ使用する必要がある。破断長の値域R
p及びR
npは互いに別の範囲である。
【0043】
帯電器83は、帯電電極44,44A及び付加的な第2帯電電極45、並びにそれに対応する帯電電圧源51,51A及び付加的な第2帯電電圧源49を備え、各帯電電圧源から対応する帯電電極へと一定電圧が供給される構成にすることができる。偏向機構14は、一部の滴を偏向させることが可能な諸部材を有している。
図4A〜
図4Cに例示する偏向機構は帯電器83及びキャッチャ47を有しており、
図5A〜
図5Cに例示する偏向機構は偏向電極53及び63を有している。
【0044】
図4Bに示すように液ジェットの片側にあり破断点に面している帯電電極44に電位を印加すると、その帯電電極44によって、滴の破断に先立ちそのジェットの帯電端が吸引されるのに加え、液ジェットからの破断で生じた帯電滴36が吸引される。こうした偏向機構は非特許文献2に記載されている。また、この偏向器14にはキャッチャ47も備わっている。特許文献8(発明者:J. Robertson)記載の通り、導電キャッチャ面の面前を帯電滴が通過すると、その導電キャッチャ面52上に表面電荷が誘起される結果、その帯電滴がキャッチャ面52に吸引されることとなる。
【0045】
キャッチャを使用するのは、滴を媒体上に選択的に付着させるため、また非印刷滴36を中途捕獲してインクリサイクルユニット15に送れるようにするためである。
図4A〜
図4Cに示した第1の構成では、帯電電極44の下方にあり接地されているキャッチャ47によって、非印刷滴経路38を辿ってきた滴が中途捕獲される一方、印刷滴経路37を辿って下降してきた印刷滴35が記録媒体19に接触して印刷される。
図4A〜
図4Cに示した構成では、非印刷滴が強帯電され、偏向され、キャッチャ47によって捕獲され、リサイクルされる一方、印刷滴が弱帯電され、(ほとんど)偏向せずに記録媒体19上に印刷される。
図4Aでは、印刷滴35の破断長(32)がL
pであり帯電電極44・ノズル面間距離d
eよりも短いので、破断時に印刷滴35に転写される電荷は比較的少量である。この印刷滴は、接地されているキャッチャ47によって偏向されず、(ほとんど)曲がりのない経路37を辿り印刷インク滴46として記録媒体19上に順次印刷される。
図4Bでは、非印刷滴36の破断長(32)がL
npであり帯電電極44・ノズル面間距離d
eに近いので、破断時に非印刷滴に転写される電荷が多くなる。この非印刷滴は、接地されているキャッチャ47によって偏向され、経路38を辿り、非印刷滴キャッチャ接触位置26にてキャッチャ面52に射突する結果、順次捕獲される。
図4Cでは、滴のうち幾つかが破断長L
pの印刷滴35であり(ほとんど)曲がりのない経路37を辿る一方、滴のうち幾つかが破断長L
npの非印刷滴36であり大きく曲がった経路38を辿っている。
【0046】
図4A〜
図4Cに示したキャッチャ47によれば、プリントヘッドから再度ジェットとして吐出させることができるよう、印刷に使用されなかったインクを回収(リサイクル)することができる。また、同図に示すプリントヘッド12を好適に動作させるため、キャッチャ47、キャッチャ底板57又はその双方が接地されているので、中途捕獲された滴上の電荷は、キャッチャ面52沿いにインクが流れ落ちインク回収チャネル58(インクの回収口)内に入るまでに散逸していく。キャッチャ47のキャッチャ面52は、
図2に示した液ジェット軸87に対しある角度θをなしている。帯電している滴36は、接地されているキャッチャ47のキャッチャ面52へと吸引される。帯電滴キャッチャ接触位置26にてキャッチャ面52に中途捕獲された非印刷滴36は、インク膜48となってキャッチャ47の表面を下降していく。キャッチャの下部には半径Rの曲面があり、またキャッチャ底板57及びその上方に位置するインク回収チャネル58があるので、インク膜48を形成しているインクをそこで捕獲し回収することができる。印刷時には、キャッチャ面52上への非印刷滴の集積により生じたインク膜に、印刷滴が接近、中途捕獲されないようにする必要がある。通常は、インク回収チャネル58内を真空吸引することで、インク膜48が厚み方向に成長しないようにする。即ち、キャッチャ面52から印刷滴経路37までの最短距離をd
cとすると、インク膜の厚みは、d
c−(滴直径)未満、好ましくはd
c/2未満にする必要がある。
【0047】
帯電電極44に面する位置(
図4B中に破断長L
npで示されている位置)で滴が破断すると、その滴は強く帯電する。電圧源51が帯電電極44に直流正電位を印加する一方液ジェット43が接地されている場合は、各滴36の中に負号で記してあるように、帯電電極のそばで破断した滴36に負電荷が誘起される。これらの図では、帯電電極44に面していない位置L
pにて破断した滴上に電荷記号が付されていないが、ご理解頂けるように、それらの滴上の電荷は、帯電電極44に面する位置L
npで破断した滴上の電荷に比べ少なくなるのが普通である。こうした構成に代え、帯電電極44に直流負電位を印加する一方液ジェット43を接地することで、帯電電極に面する位置で破断する滴上に正電荷が誘起される構成にすることもできる。
【0048】
図4A〜
図4Cには、更に、ノズル面からの距離がd
e2で印刷滴35の破断位置L
pに面する位置にある第2帯電電極45も示されている(省略可)。対応する電圧源49(省略可)から第2帯電電極45へと直流電位を印加することで、印刷滴・非印刷滴間の電荷差を増し、印刷滴経路37・非印刷滴経路38間の分離度を高めることができる。第2帯電電極に印加される電位は、第1帯電電極44に印加される電位と違えておく。第2帯電電極45に印加される電位は、例えば接地電位とする。そうした構成では、第2帯電電極を、一方の破断位置における液ジェットの端部を第1帯電電極で生じる電界から遮蔽するシールドとして、機能させることができる。印刷滴・非印刷滴間の電荷差を第2帯電電極の働きで増大させることにより、印刷滴軌跡・非印刷滴軌跡間の分離度を高めること、ひいてはキャッチャによる非印刷滴の中途捕獲を容易にすることができる。また、
図4A〜
図4Cに示した構成では、第2帯電電極45が第1帯電電極44の上方にあり、またジェットアレイから見て第1帯電電極44と同じ側に位置しているが、これとは異なる構成を使用することもできる。例えば、第2帯電電極を第1帯電電極の上方(ノズルプレートまでの距離が第1帯電電極よりも短い位置)、但しジェットアレイから見て第1帯電電極の逆側に配する構成にしてもよい。或いは、第1帯電電極、第2帯電電極又はその双方に、ジェットアレイから見て第1の側を占める第1部分と、ジェットアレイから見て第2の側を占める第2部分とがあり、それら第1乃至第2帯電電極の第1部分及び第2部分が共通の電位に保持される構成にしてもよい。
【0049】
第2帯電電極を使用し印刷滴・非印刷滴間の電荷差を増したとしても、印刷滴が帯電する可能性がある。印刷滴が帯電していると、記録媒体に向かい空気中を飛行している間に、隣の印刷滴との間に静電相互作用が発生することとなろう。そうした静電相互作用は、印刷時に、記録媒体上での滴配置に誤差を発生させうる。本発明に従いノズルを互い違いのグループに分けて配置し、隣接印刷滴間距離を増すことで、隣接ノズルに発する隣接印刷滴間の気中距離を延ばし、そうした滴配置誤差を抑えることができる。
【0050】
図5A〜
図5Cに、本発明の第2実施形態に関し、液ジェットを通る断面を示す。この実施形態では、(ほとんど)偏向されていない非印刷滴36がキャッチャ37によって収集される一方、偏向されている印刷滴35がキャッチャの脇を通り記録媒体19上に印刷されている。本実施形態では、印刷滴経路37に沿い飛行していく間に印刷滴35が強く帯電されキャッチャ37から逸らされるため、印刷滴35を記録媒体19に接触させ印刷することができる。また、本実施形態では、弱く帯電している非印刷滴36即ち(ほとんど)偏向していない非印刷滴経路38に沿い飛行している滴が、キャッチャ67によって中途捕獲される。
図5Aに記載の状態では記録媒体速度を最高としつつ全印刷条件で一連の滴が生成されており、
図5Bに記載の状態では非印刷条件で一連の滴が生成されており、
図5Cに記載の状態では一部の滴が印刷され一部の滴が印刷されない一般的印刷条件で一連の滴が生成されている。
図5Aに示すように、印刷滴35の破断長はL
pであり、帯電電極44,44A・ノズル面間距離d
eに近いため、その破断時に印刷滴35に転写される電荷が多くなる。
図5Bに示すように、非印刷滴36の破断長はL
npであり、帯電電極44,44A・ノズル面間距離d
eより大きいため、その破断時に非印刷滴36に転写される電荷が少なくなる。
【0051】
図5A〜
図5Cに示した構成では、帯電電極として、帯電電極44の他、液ジェット43から見て逆側に位置する対称な帯電電極44Aが設けられている。液ジェット43は両帯電電極の中央に位置しており、各側帯電電極からの距離がy
eとなっている。帯電電極44及びそれと対称な帯電電極44Aは、別々の導電素材で形成することも、共通の導電素材で形成することもできる。後者の場合、両半部間に機械加工で平行ギャップを設け、それらの間に液ジェット43のアレイが収まるようにすればよい。帯電電極の左半部及び右半部は帯電電圧源51及び51Aによって同一電位にバイアスされる。両者とも通常は同電位に保持されるので、帯電電圧源51Aとしては帯電電圧源51と同じものを使用すればよい。液ジェットから見て帯電電極44の逆側を占めるよう対称な帯電電極44Aを付加し両者を同一電位にバイアスすることで、帯電電極部分44・44A間に、ジェットの中心に対しほぼ左右対称な領域を発生させることができる。その結果、両電極間で液ジェットから破断される滴の電荷が、ジェットの横方向位置の小規模変動に対し非常に不感となる。液ジェットについて電界がほぼ対象であるので、破断間近な滴に対し顕著な横方向偏向力を作用させることなく滴を帯電させることができる。また、この構成では、偏向機構14に、帯電電極44及び44Aの下方に位置する一対の偏向電極53及び63が備わっている。通常、これら2個の偏向電極53及び63は、接地されている液ジェットを挟み逆極性にバイアスされる。
図5A〜
図5C中でそれら2個の電極に印加されている電位の極性は、負帯電している滴が左に偏向するような電界を電極間にもたらすものとなっている。その滴偏向電界の強度は、それら2個の電極同士の間隔とそれらの間に印加される電圧に依存している。この構成では、偏向電極53が正、偏向電極63が負にバイアスされている。従って、負帯電している印刷滴35を正帯電している偏向電極53方向へと吸引させ、印刷滴経路37沿いに下降させることができる。
【0052】
図5A〜
図5Cに示した構成では、非印刷滴経路38沿いに飛行している非印刷滴36を中途捕獲すべく、ナイフエッジ型のキャッチャ67が使用されている。キャッチャ67はキャッチャレッジ30を有しており、対をなす偏向電極53及び63より下方に配置されている。キャッチャ67及びそのレッジ30の向きは、非印刷滴経路38沿いを辿ってきた非帯電非印刷滴36がキャッチャによって中途捕獲される一方、印刷滴経路37を辿ってきた帯電印刷滴35は中途捕獲されないような向きに、設定されている。キャッチャは、キャッチャに射突してくる滴がキャッチャレッジ30の斜面に射突し、衝撃によるスプラッシュが最小になるように配置するのが望ましい。帯電印刷滴35は記録媒体19上に印刷される。
【0053】
滴形成に係る基本周期が与えられている場合、プリントヘッドに対する記録媒体の最高速度即ち最高印刷速度は、基本周波数f
0で励振されたジェットから破断される個々の滴が印刷解像度設定により定まる所望の滴間隔で印刷されうる速度として定義される。例えば、あるプリントヘッドを印刷解像度600×600dpi(1インチ当たり滴数;1インチ=約2.5cm)、基本周波数f
0=400kHzで稼働させた場合、最高印刷速度は3333.33ft/min即ち16.93m/sとなる。全印刷条件は、入力画像データに含まれる全てのイメージ画素が記録媒体19上に印刷される条件として定義される。一般に、全印刷条件で印刷するに当たり相連続する印刷滴間で形成される非印刷滴の個数は記録媒体の速度に依存する。例えば最高記録媒体速度の1/2にて全印刷条件で印刷する場合、基本周波数f
0で生成される滴が1個おきに印刷され、且つ基本周波数f
0で生成される滴が1個おきに非印刷滴となる。最高記録媒体速度の1/4にて全印刷条件で印刷する場合、基本周波数f
0で生成される滴が4個おきに印刷され、且つ基本周波数f
0で生成される滴が3個続いて非印刷滴となる。印刷時には、画像データ画素が印刷滴35をもたらし、その印刷滴35が記録媒体19に到達して印刷インク滴46となる。全印刷条件では、隣り合う印刷インク滴46同士が、記録媒体19上で互いに接触する。
【0054】
図6A〜
図9Bに、液室に通ずる複数個のノズルを介し液ジェットを吐出させるのに十分な圧力で液が加圧されている例を示す。図示されているのは、基本周波数f
0で生成された滴からなるライン群、特に1〜7又は1〜4の符号が付された隣り合うノズルから空気中を飛行した後、偏向されたりキャッチャによって中途捕獲されたりする前のものである。同じノズルに発する滴同士の距離(各図中のλ)は、基本周期τ
0の間に滴が気中を飛行する距離に等しい。どの図でも、隣り合うノズル全てが印刷滴の形成又は非印刷滴の形成を要請されるよう、アレイを構成する全てのノズルによって同一の印刷パターンが印刷される。これは、記録媒体速度に応じ一群の横線乃至べた領域を印刷することに対応している。
図6A〜
図9Bのうち紙面左側にある図(分図記号A)に示す気中印刷パターンが本発明の方法を使用していない反面、紙面右側又は中央にある図(分図記号B、C及びD)に示す気中印刷パターンは本発明の方法を使用しており、相対的なグループ間タイミング遅延がある複数グループの互い違いノズルにノズルが区分されている。
図6A〜
図9Bのうち紙面左側にある図(分図記号A)に示す気中印刷パターンが隣接ノズル励振間タイミングシフトを使用しておらず、ノズルが複数個のグループに区分されていない反面、紙面右側にある図(分図記号B、C及びD)に示す気中印刷パターンは複数グループに分かれた隣接ノズルによって生成されており、別々のグループに属するノズルの励振のトリガ間にはタイミングシフトが存在している。これらの図では、横軸に沿って配置されたノズルのアレイから滴が鉛直に動いている。これらの図では、印刷滴35がハッチング付の円で示される一方、非印刷滴36が黒塗りの円で示されている。
図6A〜
図9Bでは、滴の各列が個別ノズルに発する滴に対応しており、当該列に1〜7又は1〜4の符号が付されている。
【0055】
図6B、
図7B及び
図7Cに示す例では、複数個のノズルがノズルアレイ方向に沿って配置されている。当該複数個のノズルは、第1グループG1と第2グループG2に分けて配置されている。第1グループのノズル及び第2グループのノズルは、第1グループのノズルが第2グループ内隣接ノズル間に位置し、第2グループのノズルが第1グループ内隣接ノズル間に位置することとなるよう、互い違いに配置されている。第1グループノズルで形成された印刷滴及び第2グループノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに整列しないよう、第1又は第2グループのノズルの滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングをシフトさせるタイミング遅延器も設けられている。
図8B、
図8C、
図8D及び
図9Bに示す例は、上述した
図6B、
図7B及び
図7Cの諸特徴に加え、第3ノズルグループG3を形成するよう配置された複数個のノズルを有している。第3グループG3のノズルは、第1グループG1のノズル及び第2グループG2のノズルと互い違いになるよう配置されている。使用するタイミング遅延器のなかには、第1グループのノズルで形成された印刷滴、第2グループのノズルで形成された印刷滴及び第3グループのノズルで形成された印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに整列しないよう、第1グループ及び第2グループに対し第3グループの滴形成波形のタイミングをシフトさせるタイミング遅延器が含まれる。
図6A及び
図6Bは最高印刷速度で稼働する全滴印刷モードの例であり、どちらの例でも、全ての滴が、同一の体積であり且つ相連続する滴形成間の時間間隔τ
0に対応する周波数f
0で生成されている。この印刷速度では、プリントヘッドに対し記録媒体が1画素分移動するのに要する時間、即ち画素対画素周期乃至印刷周期が、基本滴形成周期τ
0に等しくなる。
図6Aに示す例では、7個の隣り合うノズルで形成され気中を飛行していく一連の滴において、基本周期τ
0で生成された個々の滴ラインが別グループノズル間タイミングシフト無しで印刷される。これは従来技術を構成している。
図6Bに示す例では、同じノズルで形成され気中を飛行していく一連の滴において、基本周期τ
0で生成された個々の滴が、本発明の一実施形態に従い、第1グループG1内ノズルと第2グループG2内ノズルとの間のタイミングシフトを0.5τ
0として印刷される。
図6Aに示した印刷モードでは、符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号3及び4が付された印刷滴、符号4及び5が付された印刷滴、符号5及び6が付された印刷滴、符号6及び7が付された印刷滴が互いに隣り合っていて、それらの間隔がノズル間隔に等しくなっている。
図6Bに示した本発明の実施形態に係る印刷モードでは、2個のグループ間にタイミングシフトがあるため、
図6Aに示した例に比べ気中を飛行する時間が長くなる結果、符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号3及び4が付された印刷滴、符号4及び5が付された印刷滴、符号5及び6が付された印刷滴、符号6及び7が付された印刷滴それぞれの間の間隔がより広くなっている。帯電滴間静電相互作用は滴間間隔に対し逆傾向で変動するので、タイミングシフトを付すると、隣り合う帯電印刷滴に対する滴対滴静電相互作用ひいては隣接印刷滴間静電反発が弱まる。
【0056】
従来型システムでは、隣接帯電印刷滴間静電相互作用によって印刷滴同士が反発し合い互いに離れる方向に動いていく。従って、複数個の隣り合うノズルによって印刷滴を形成しそれら隣り合う印刷滴の片側で非印刷滴を形成した場合に、
図10Aに示すように画像に隙間をもたらすこととなりかねない。
図6Bに示す例では、隣接ノズル間グループタイミング遅延を0.5τ
0としているため、隣接印刷滴間静電反発が顕著に弱くなる結果、隣接ノズルで形成された隣接帯電印刷滴の変位が小さくなる。滴対滴反発が弱まる結果、
図10Bに示すように、印刷滴が記録媒体に射突する際に生じる印刷滴間の隙間がより小さくなる。
図6Bに示す例は最高印刷速度で生成される滴それぞれで印刷することに対応しており、隣接ノズル間グループタイミング遅延が0.5τ
0であることは、ノズルアレイ方向に沿った隣接印刷滴間の印刷周期オフセットが1/2になることに対応している。記録媒体19上に最高印刷速度で印刷した場合、これは、ノズルアレイ方向に沿った隣接印刷画素間の半画素オフセットとして現れる。これは、レシーバ移動方向に沿って見た場合、第1ノズルグループで形成された印刷滴の位置と、第2ノズルグループで形成された印刷滴の位置と、の間に、固定的な半画素オフセットをもたらす。
図10Bではこの半画素オフセットが上辺及び下辺沿いに現れているが、通常の看取条件下では、そうした半画素オフセット乃至スタガは一般にほとんど目に見えない。
【0057】
印刷周期は、最高印刷速度で単一ノズルにより形成される一連の印刷滴間の最小時間間隔として定義されており、基本滴形成周期τ
0に等しい。最高印刷速度未満で印刷する場合、所与印刷速度で単一ノズルにより形成される一連の印刷滴間の最小時間間隔に等しい実効印刷周期を定義するのが有益である。実効印刷周期は、滴形成周期τ
0に、実際の印刷速度に対する最高印刷速度の比率を乗じた値に等しくなる。従って、最高印刷速度の1/2で印刷する場合は実効印刷周期が2τ
0となり、最高印刷速度の1/4で印刷する場合は実効印刷周期が4τ
0になる。隣接ノズル間グループタイミング遅延を使用する場合、プリントヘッド・記録媒体間相対運動の方向に沿った別グループノズル間の印刷画像オフセット画素規模は、実効印刷周期に対するグループタイミング遅延の比率によって与えられる。即ち、最高速度の1/4で印刷する場合、隣接ノズル間で0.5τ
0のグループタイミング遅延を使用すると、印刷画像の隣接カラム間に1/8画素のオフセットが生じることになる。
【0058】
図7A〜
図7Cに、それぞれ、最高印刷速度の1/2で稼働する全印刷モードの例を示す。この印刷速度では、プリントヘッドに対し規則媒体が1画素間隔分移動するのに必要な時間に等しい実効印刷周期が、基本滴形成周期の2倍である2.0τ
0に等しくなる。
図7Aに、4個の隣接ノズルで形成され気中を飛行していく一群の滴、特に基本周期で生成された滴のラインが1本おきに別グループノズル間タイミングシフト無しで印刷される例を示す。これは従来技術を構成している。
図7Bに、同じノズルで形成され気中を飛行していく同じ一群の滴、特に基本周期で生成された滴のラインが1本おきに、本発明の一実施形態に従い第1ノズルグループG1内ノズル・第2ノズルグループG2内ノズル間タイミングシフトを0.5τ
0として印刷される例を示す。
図7Cに、同じノズルで形成され気中を飛行していく同じ一群の滴、特に基本周期で生成された滴のラインが1本おきに、本発明の一実施形態に従い第1ノズルグループG1内ノズル・第2ノズルグループG2内ノズル間タイミングシフトを1.0τ
0として印刷される例を示す。
図7Aに示した従来型印刷モードでは、符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号3及び4が付された印刷滴が互いに隣り合っていて、その距離がノズル間隔に等しくなっている。
図7Bに示した実施形態に係る印刷モードでは、2個のノズルグループ間にタイミングシフトがあるため、符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号3及び4が付された印刷滴が
図7Aでのそれに比べより遠く離れている。そのため隣接帯電印刷滴に対する滴対滴静電相互作用、ひいては隣接印刷滴間静電反発が弱くなっている。
図7Bに示した例では、隣接ノズルに発する隣接印刷滴間の静電相互作用が、ノズルアレイ方向に沿った隣接印刷滴の形成に当たり基本滴形成周期の1/2たる0.5τ
0のグループタイミング遅延シフトを付加することによって抑えられている。このタイミングシフトは印刷周期の1/4に相当する。この速度で記録媒体19上に印刷した場合、ノズルグループ間グループタイミング遅延シフトによって、ノズルアレイ方向に沿って隣接する印刷画素間に1/4画素分のオフセットが発生する。
図7Cに示した例では、隣接印刷滴間の間隔が更に増しており、隣接ノズルに発する隣接印刷滴間の静電相互作用が更に弱まっている。第1グループG1内ノズルでの形成と第2グループG2内ノズルでの形成との間のグループタイミング遅延シフトが、基本滴形成周期1周期に当たるτ
0とされているからである。このタイミングシフトは印刷周期の1/2に相当している。この速度で記録媒体19上に印刷した場合、そのグループタイミング遅延シフトによって、ノズルアレイ方向に沿った隣接印刷画素間に1/2画素分のオフセットが発生する。600dpi以上の解像度で印刷する場合、そうしたオフセットは、通常の看取条件下では目に見えない。
【0059】
図7Bでは第1グループ・第2グループ間のタイミングシフトが0.5τ
0、即ち
図6Bで使用されているタイミングシフトと同一であるが、
図7Bにおける印刷速度は
図6Bにおける最高印刷速度の1/2となっている。これらの図からわかるのは、本発明の実施形態のなかに、印刷速度によらずノズルグループ間グループタイミング遅延シフトが同一のものがあることである。それらの実施形態では、2グループのノズルに発する印刷画像における画素オフセットが印刷速度に応じて変化する。グループ間オフセットは
図7Bの印刷速度では1/4画素オフセットであり、印刷オフセットは
図6Bの印刷速度では1/2画素である。ノズルグループ間タイミングシフトが固定されているこの実施形態では、最も近い隣接印刷滴間の間隔、例えば滴1・滴2ペア間の間隔が、印刷速度によらず一定に保たれる。他方、本発明の他の実施形態では、印刷速度に依存するノズルグループ間グループタイミング遅延を使用するので、別グループのノズルに発する印刷画像における画素オフセットが同一になり印刷速度に依存する。
図7C及び
図6Bに示す例では、ノズルグループ間グループタイミング遅延シフトが印刷速度に応じて変化する。
図6Bに示す最高印刷速度で印刷する場合のグループタイミング遅延は0.5τ
0であり、これは印刷画像に1/2画素分の画素オフセットをもたらす。
図7Cでは印刷速度が最高速度の1/2であり、ノズルグループ間グループタイミング遅延が
図6Bのそれに対し2倍の1.0τ
0であるので、やはり、2ノズルグループ内のノズルによる印刷物における画素オフセットが1/2画素分になる。これら他の実施形態においては、2グループ内ノズル間画素オフセットが印刷速度によらず一定に保たれるよう、グループタイミング遅延が印刷速度に応じて変化する。印刷速度が低下するとタイミングシフトが増大するので、この実施形態では、印刷速度の低下につれ、印刷滴間間隔が増大しひいては滴対滴相互作用が弱まる。
【0060】
図8A〜
図8Dに、最高速度の1/2で稼働する全滴印刷モードの例を示す。
図8Aに示す例では、7個の隣接ノズルに発し気中を飛行していく同じ一群の滴において、基本周期でノズルにより生成された滴のラインが1本おきに、別グループ内ノズル間タイミング遅延シフト無しで印刷される。これは従来型のタイミングである。
図8B〜
図8Dに示す本発明の諸実施形態においては、ノズルが3個のノズルグループに分けて配置されており、各ノズルグループが相応且つ別々のグループタイミング遅延を有しており、同一グループのノズル2個が互いに隣り合っていない。
図8B及び
図8Dに示す構成においては、第1グループのノズルが第2グループのノズル及び第3グループのノズルに隣接し、第2グループのノズルが第3グループのノズル及び第1グループのノズルに隣接し、且つ第3グループのノズルが第2グループのノズル及び第1グループのノズルに隣接するよう、ノズルが互い違いに配置されている。
図8Cに示す構成では、ノズルが1個おきにいずれかのグループのメンバとなり、他の2個のグループが当該1個おきのノズルを含むグループ内の2個のノズル間に交互に位置するよう、ノズルが互い違いに配置されている。
【0061】
図8Bに本発明の他の実施形態として示す構成は、
図8Aに示したノズルと同じノズルに発し気中を飛行していく同じ一群の滴を形成する構成であって、ノズルが3個の互い違いなノズルグループに分かれて配置されており、第1グループのノズル、第2グループのノズル及び第3グループのノズルが、第1グループのノズル及び第2グループのノズルが第3グループ内隣接ノズル間に位置し、第2グループのノズル及び第3グループのノズルが第1グループ内隣接ノズル間に位置し、且つ第1グループのノズル及び第3グループのノズルが第2グループ内隣接ノズル間に位置するように互い違いに配置されている構成である。本実施形態では、3個のグループG1、G2及びG3のノズル間で、0.5τ
0及び1.0τ
0のグループタイミング遅延が使用されている。グループG1とその隣のグループG2との間のグループタイミング遅延は0.5τ
0、グループG2とその隣のグループG3との間のグループタイミング遅延は0.5τ
0、グループG3とその隣のグループG1との間のグループタイミング遅延は1.0τ
0である。
図8Aに示した印刷モードでは、符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号3及び4が付された印刷滴、符号4及び5が付された印刷滴、符号5及び6が付された印刷滴、符号6及び7が付された印刷滴が互いに隣り合っており、その間隔がノズル間隔に等しくなっている。
図8Bに示した印刷モード実施形態では、符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号4及び5が付された印刷滴、符号5及び6が付された印刷滴の間でグループタイミング遅延シフトが0.5τ
0であり、
図8Aに示した例に比べ互いの距離が大きくなっている。また、符号3及び4が付された印刷滴、符号6及び7が付された印刷滴の間でグループタイミング遅延シフトが1.0τ
0であり、
図8Aに示した印刷滴のうち符号1及び2が付された印刷滴、符号2及び3が付された印刷滴、符号4及び5が付された印刷滴、符号5及び6が付された気中印刷滴に比べ互いの距離が大きくなっている。これにより、隣接帯電印刷滴に対する電荷対電荷相互作用が弱まる結果、隣接印刷滴間静電反発が生じにくくなる。最高印刷速度の1/2で記録媒体19上に印刷する場合、これは、ノズルアレイ方向に沿って隣接する画素間の1/4画素オフセット及び1/2画素オフセットとして現れる。
【0062】
図8Bに示した実施形態では、0.5τ
0及び1.0τ
0のグループ遅延タイミングシフトによってグループ3・グループ1間に対称ブレークが発生する。ある種の印刷アプリケーションにおいては、位相シフトを均等に分割し対称ブレークを回避することが望まれる。
図8Dに示すノズルグループ配置は
図8Bのそれと同じであるが、3個あるグループG1、G2及びG3のノズル間のグループタイミング遅延が2/3・τ
0である点で異なっている。即ち、グループG1とその隣のグループG2の間のグループタイミング遅延が2/3・τ
0、グループG2とその隣のグループG3の間のグループタイミング遅延が2/3・τ
0、グループG3とその隣のグループG1の間のグループタイミング遅延が2/3・τ
0である。本実施形態では、隣接グループノズル間の位相シフトが均等に分割されるため、
図8Bの実施形態と違い対称ブレークが生じることはない。しかしながら、3画素以上の長さを有する横線を印刷する場合、傾斜線が生じることを防ぐためにデータに周期的画素シフトを導入することが必要になる。
図8Dに示す実施形態においては、符号1及び2が付された隣接気中印刷滴、符号2及び3が付された隣接気中印刷滴、符号3及び4が付された隣接気中印刷滴、符号4及び5が付された隣接気中印刷滴、符号5及び6が付された隣接気中印刷滴、符号6及び7が付された隣接気中印刷滴それぞれの滴が、めいめい、2/3・τ
0の滴間グループタイミング遅延シフトを有している。しかしながら線は右上がりの傾斜を呈する。これを避けるためには、滴4、5及び6についてデータを1画素繰り下げシフトして滴4a、5a及び6aとし、滴7についてデータを2画素繰り下げシフトして滴7bにする必要がある。或いは、記録媒体に対しプリントヘッドを僅かにねじり、記録媒体の動きでアレイ方向ドリフトを補償するようにしてもよい。本実施形態でも隣接印刷滴の相互間隔が
図8Aでのそれより大きくなるので、隣接帯電印刷滴に対する電荷対電荷相互作用が弱まり隣接印刷滴間静電反発が生じにくくなる。最高印刷速度の1/2で記録媒体19上に印刷する場合、これは、ノズルアレイ方向に沿った隣接印刷画素間の1/3画素及び2/3画素オフセットとして現れる。
【0063】
図8Cに、同一ノズルに発し気中を飛行していく同一の一群の滴を形成する本発明の他の実施形態として、ノズルが互い違いのノズルグループ3個に分かれて配置されており、各ノズル群の隣接ノズルが他のグループのうち少なくとも1個を構成する少なくともノズル1個分だけ分離されている実施形態を示す。グループG1内隣接ノズルは、グループG2又はグループG3に属するノズル1個だけ分離されている。グループG2内隣接ノズルは、グループG1のノズル2個分だけまたグループG3のノズル1個分だけ分離されている。同様に、グループG3内隣接ノズルは、グループG1のノズル2個分だけまたグループG2のノズル1個分だけ分離されている(図示せず)。隣接ノズルの各ペアは、同一規模のグループタイミング遅延を有している。図ではグループタイミング遅延が0.5τ
0となっている。グループG1内ノズルからの滴の破断タイミングは、グループG3のノズルからの滴の破断に対し、グループタイミング遅延たる0.5τ
0分だけ遅れている。グループG2内ノズルからの滴の破断タイミングは、グループG1のノズルからの滴の破断に対し0.5τ
0分だけ遅れている。
図8に示した印刷モードでは、符号1〜7が付されている全ての気中印刷滴が、隣接滴間タイミングシフト0.5τ
0を有しており、
図8Aに示した例に比べ互いの距離が大きくなっている。これにより、隣接帯電印刷滴に対する電荷対電荷相互作用が更に弱まる結果、隣接印刷滴間静電反発が生じにくくなる。最高印刷速度の1/2で記録媒体19上に印刷した場合、これは、ノズルアレイ方向に沿った隣接印刷画素間の±1/4画素オフセットとして現れる。
【0064】
図9A及び
図9Bに、最高印刷速度の1/4で稼働する全滴印刷モードの例を示す。この印刷速度では、一連の画素を標的とする印刷滴が3個の非印刷滴によって分離される。
図9Aに示す例では、従来技術に従い7個の隣接ノズルに発する一群の滴を気中に飛行させる際に、別グループ内ノズル間にタイミングシフトを施していない。それに対し、
図9Bに示す例では、本発明の一実施形態に従い同じ7個の隣接ノズルに発する同じ一群の滴を気中に飛行させる際に、3個のグループG1、G2及びG3に分けて配列された隣接ノズルのペア間に1.0τ
0及び2.0τ
0のタイミングシフトが施されている。
図9Aに示す印刷モードでは、符号1及び2が付された気中印刷滴、符号2及び3が付された気中印刷滴、符号3及び4が付された気中印刷滴、符号4及び5が付された気中印刷滴、符号5及び6が付された気中印刷滴、符号6及び7が付された気中印刷滴が互いに隣接しており、それらの間の距離がノズル間隔に等しくなっている。
図9Bに示した印刷モードでは、符号1及び2が付された気中印刷滴、符号2及び3が付された気中印刷滴、符号4及び5が付された気中印刷滴、符号5及び6が付された気中印刷滴の間に1.0τ
0のタイミングシフトがあり、
図9Aに示したそれに比べ互いの距離が大きくなっている。また、符号3及び4が付された気中印刷滴、符号6及び7が付された気中印刷滴の間に2.0τ
0のタイミングシフトがあり、
図9Aに示した滴のうち符号1及び2が付された気中印刷滴、符号2及び3が付された気中印刷滴、符号4及び5が付された気中印刷滴、符号5及び6が付された気中印刷滴に比べ互いの間隔が大きくなっている。これにより、隣接帯電印刷滴に対する電荷対電荷相互作用が更に弱まる結果、隣接印刷滴間の静電反発が生じにくくなる。最高印刷速度の1/4で記録媒体19上に印刷した場合、これは、ノズルアレイ方向に沿って隣接する印刷画素間の1/4画素及び1/2画素オフセットとして現れる。
【0065】
これまでの説明から明らかな通り、2個のノズルグループを有するプリンタは、滴がレシーバに射突したとき、第1ノズルグループにより生成される印刷滴の位置と第2ノズルグループにより生成される印刷滴の位置との間に、レシーバ移動方向に沿いレシーバ速度から独立な固定的画素オフセットが生じるように、構成することができる。上述した通り、
図6Bに示す如く最高印刷速度で印刷する場合、2個のグループに分けて配置された隣接ノズル間のグループタイミング遅延を0.5τ
0とすると、第1ノズルグループ及び第2ノズルグループにより生成される印刷滴の位置間に、レシーバ移動方向に沿い1/2画素の固定オフセットが生じる。また、
図7Cに示す如く最高印刷速度の1/2で印刷する場合、2個のグループに分けて配置された隣接ノズル間のグループタイミング遅延を1.0τ
0とすると、第1ノズルグループ及び第2ノズルグループにより生成される印刷滴の位置間に、レシーバ移動方向に沿い1/2画素の固定オフセットが生じる。同様に、3個のノズルグループを有するプリンタは、滴がレシーバに射突したとき、第1ノズルグループにより生成される印刷滴の位置、第2ノズルグループにより生成される印刷滴の位置及び第3ノズルグループにより生成される印刷滴の位置の間に、レシーバ移動方向に沿いレシーバ速度から独立な固定的オフセットが生じるように構成することができる。
図8Bに示す如く最高印刷速度の1/2で印刷し、隣接ノズルのペア間のタイミングシフトを0.5τ
0及び1.0τ
0としつつ3個のノズルグループを使用する場合や、
図9Bに示す如く最高印刷速度で印刷し、隣接ノズルのペア間のタイミングシフトを1.0τ
0及び2.0τ
0としつつ3個のノズルグループを使用する場合には、レシーバ移動方向に沿い隣接印刷滴間に1/4画素及び1/2画素の固定オフセットが生じる。印刷速度を1/m倍にしノズルグループ間タイミングシフトをm倍にした場合、別ノズルグループで生成された印刷滴の位置間に、レシーバ移動方向に沿い且つmの値とは独立に固定オフセットが生じる。即ち、隣接ノズル間タイミングシフトは、別のノズルグループに属するノズルで生成された印刷滴の位置間に、レシーバ移動方向に沿い且つレシーバ速度から独立に、固定オフセットが生じるよう、印刷速度で調整することができる。こうした1画素未満のオフセットは、通常のコンテキストで見た場合、目障りなものとはならない。
【0066】
図10A及び
図10Bに、従来技術及び本発明の方法を用い最高印刷速度の1/4及び600×600dpiの印刷濃度で印刷された模擬画像を示す。
図10Aに示した画像は従来技術に従い隣接ノズル間グループタイミング遅延無しで印刷された画像であり、
図10Bに示した画像は本発明の一実施形態に従い2個のノズルグループを用い且つ隣接ノズル間グループタイミング遅延を2τ
0として印刷された画像である。図中の「T」は直立しており、その高さが33画素、幅が27画素、縦方向に延びる幹の太さが5画素である。また、この「T」の上辺は太さが2画素、長さが27画素であり、その両端からは下方に向けて非対称な縁が延びている。
図10A及び
図10Bに示した模擬印刷画像は、帯電粒子ダイナミクスモデルに則り導出されたものである。
図10Aに示すように、隣接ノズルでの印刷滴の破断タイミングをシフトさせない場合、隣接ノズルで印刷される至近の滴間に顕著な静電反発が生じるものと見受けられる。これは、記録媒体移動軸に沿った印刷線を、理想的画像のそれに比べ互いに拡がらせる。「T」の上辺及び下部は理想的画像でのそれに比べ横に拡がり、縦方向に延びる幹は太くなり、その幹を構成する隣接縦線間には隙間が生じる。ローを構成する印刷滴のうち最左端印刷ノズルで印刷された滴と、ローを構成する印刷滴のうち最右端印刷ノズルで印刷された滴の間は、従来技術でしばしば生じる滴対滴相互作用の結果、ギャップによりそのローの他の滴から分離されている。
図10Bは、本発明の一実施形態の使用により実現される画質向上を模擬するものであり、隣接ノズル間グループタイミング遅延が施されている。この図では、従来技術の印刷手法で散見される欠陥、即ち隣接ノズル間にグループタイミング遅延を設けないことによる欠陥の多くが解消されている。
図10Aに示されている拡がり欠陥の大半が、隣接縦線間ギャップの解消に伴い解消されている。この画像データは、期待線と一致する縦軸に沿い隣接画素間に1/2画素オフセットが生じることを表している。通常のサイズで印刷した場合、この1/2画素オフセットは看者にとり見苦しいものにはならない。
【0067】
上掲の実施形態では印刷滴と非印刷滴が略同一の体積を有しているが、本発明は、特許文献6(発明者:T.Yamada)や特許文献7(発明者:B.Barbet)に記載の如く印刷滴の体積と非印刷滴の体積が異なる構成でも実施することができる。異なる体積にて本発明を実施するためには、液室に付随する複数個のノズルを介し液ジェットを吐出させるのに十分な圧力にてプリントヘッドに液を供給する。当該複数個のノズルは、ノズルアレイ方向に沿って且つ第1グループと第2グループに分けて配置する。第1グループのノズルと第2グループのノズルは、第1グループのノズルが第2グループ内隣接ノズル間に位置し第2グループのノズルが第1グループ内隣接ノズル間に位置するよう互い違いに配置する。複数個あるノズルそれぞれに係る滴形成器も設ける。入力画像データを供給し各滴形成器に一群の滴形成波形を供給して液ジェットを変調させることで、その液ジェットの諸部分を、印刷滴体積V
pを有する印刷滴1個又は複数個及び非印刷滴体積V
npを有する非印刷滴1個又は複数個からなるストリームへと破断させる。印刷滴体積及び非印刷滴体積は、入力画像データに応じ互いに異なる値となる。第1グループ及び第2グループのうち一方に属するノズルの滴形成器に供給される滴形成波形のタイミングがシフトするよう、タイミング遅延器を設ける。それにより、第1グループに属するノズルで形成された印刷滴と、第2グループに属するノズルで形成された印刷滴とが、ノズルアレイ方向に沿い互いに整列しないようにする。帯電器として、第1グループのノズル及び第2グループのノズルで形成される液ジェットに係る第1共通帯電電極と、第1帯電電極・液ジェット間に一定電位を印加する一定電位源と、を備えるものを設ける。第1共通帯電電極は、体積V
pの滴上に印刷滴帯電状態が生じ、体積V
npの滴上に印刷滴帯電状態と異なる非印刷滴帯電状態が生じるよう、液ジェット破断位置の近傍を基準にして配置される。印刷滴帯電状態を有する印刷滴及び非印刷滴帯電状態を有する非印刷滴がその偏向器の働きで別々の経路を辿ることとなるよう、偏向器を設ける。非印刷滴を中途捕獲するキャッチャを設け、印刷滴は引き続きレシーバに向かう経路を辿らせる。
【0068】
図11に、本発明の諸実施形態に従い印刷方法を実行するのに必要な諸ステップの概略をフローチャートにより示す。この図の印刷方法はステップ150で始まっている。ステップ150では、液室に付随するノズルのリニアアレイを介し液ジェットを吐出させるのに十分な圧力下で、加圧された液が供給される。ノズルは、隣り合うノズルが別々のグループに属することとなるよう、複数個のノズルグループに分けて配置しておく。ステップ150の次はステップ155である。
【0069】
ステップ155では、各液ジェットに係る滴形成器に滴形成波形を供給することにより液ジェットが変調され、画像データに応じ印刷滴及び非印刷滴の群れに液ジェットの一部が破断される。アレイをなすノズルの滴形成器に対し印加される滴形成波形の種類及びその時間的変化は、画像データ及び既知の印刷時記録媒体速度に基づき決定される。滴形成波形で液ジェットを変調させ、その液ジェットの諸部分を選択的に破断させることで、印刷滴破断長範囲L
pに属するジェット破断長Lを有する1個又は複数個の印刷滴と、非印刷滴破断長範囲L
npに属するジェット破断長L’を有する1個又は複数個の非印刷滴と、を含むストリームが得られる。印刷滴破断長範囲L
p及び非印刷滴破断長範囲L
npは入力画像データに応じ互いに別様に定める。ステップ155の次はステップ160である。
【0070】
ステップ160では、別グループに属するノズルの相対的破断タイミングをタイミング遅延器で調整する。これは、本発明の実施に当たり不可欠なステップである。注記すべきことに、タイミング遅延器は、
図3を参照して説明した通り別グループに対し適用されるタイミング遅延の個別トリガであり得、或いはノズルアレイに供給される波形に固有であり得、或いは入力画像データのシフトで得られうる。ステップ160の次はステップ165である。
【0071】
ステップ165では、液ジェットに係る共通の帯電器が準備される。この共通の帯電器は帯電電極及び帯電電圧源を有する。当該共通帯電器は、印刷滴上に印刷滴帯電状態をもたらし非印刷滴上に印刷滴帯電状態と異なる非印刷滴帯電状態をもたらすよう、液ジェットに面して配置される。ステップ165の次はステップ170である。
【0072】
ステップ170では、印刷滴及び非印刷滴が互いに別様に偏向される。印刷滴が辿る経路と、非印刷滴が辿る経路とを、別々の経路にする手段としては静電偏向器を使用できる。この偏向器は、例えば帯電電極、バイアス電極、キャッチャその他の部材を備える。ステップ170の次はステップ175である。
【0073】
ステップ175では、非印刷滴がキャッチャによって中途捕獲されリサイクルに回る一方、印刷滴はキャッチャによって中途捕獲されず、記録媒体に接触して印刷される。
【0074】
本発明は、例えば、1〜100plの体積を有する印刷滴の生成向けに実施することができる。ノズル直径は例えば5〜50μmの範囲内である。いずれも印刷画像の所要解像度に依存する。ジェット速度は例えば10〜30m/sの範囲内である。基本滴形成周波数は好ましくは50〜1000kHzの範囲内である。
【0075】
本発明によれば、従来の静電偏向方式インクジェットプリンタでそうであったのと異なり、液ジェットのアレイに属する個々の液ジェット毎に別の帯電電極を設けることなく、滴を洗濯機に印刷に回し又は印刷から除外することができる。その代わりに、単一の共通帯電電極が、アレイをなす液ジェットに発する滴の帯電に使用される。これにより、ノズルに対し各帯電電極を厳密に整列させる必要がなくなる。別の液ジェットに係る帯電電極による液ジェット発滴のクロストーク帯電は問題にならない。クロストーク帯電が問題にならないため、従来の滴帯電システムで要請されていたのと異なり、帯電電極・液ジェット間距離を抑える必要がない。共通帯電電極によれば、更に、帯電及び変高効率が高まるため、ジェット・電極間距離を広めにとることができる。例えば、帯電電極・ジェット軸間距離を25〜300μmにすることができる。液ジェット毎に別々の帯電電極を設ける必要がないため、ノズル毎に別々の帯電電極が必要であった従来の静電偏向方式連続インクジェットシステムに比べ、ノズル密度を高めることができる。隣り合うノズルが同じグループに属さないようノズルを複数個のグループに分けて配置すること、並びに諸ノズルグループに供給される滴形成波形のタイミングをタイミング遅延器でシフトさせることによって、別グループに属するノズルからの印刷滴がノズルアレイ方向に沿って互いに整列しないようにし、隣接印刷滴間静電相互作用ひいては滴配置誤差を抑えることができる。ノズルアレイ密度は75〜1200npi(1インチ当たりノズル数)の範囲内とすることができる。