(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-510907(P2015-510907A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】β2アドレナリン受容体作動薬としての、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンヘミナパジシル酸塩の新規の多型結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 215/26 20060101AFI20150317BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20150317BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20150317BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20150317BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20150317BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20150317BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20150317BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20150317BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150317BHJP
【FI】
C07D215/26CSP
A61K31/4704
A61K45/00
A61K31/439
A61K9/72
A61K9/14
A61P11/00
A61P11/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-500862(P2015-500862)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2013055488
(87)【国際公開番号】WO2013139712
(87)【国際公開日】20130926
(31)【優先権主張番号】12382101.9
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/622,266
(32)【優先日】2012年4月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ヘンマ・アマト・メストレス
(72)【発明者】
【氏名】エルビラ・バラゲル・アルダヌイ
(72)【発明者】
【氏名】フランセスク・カレラ・カレラ
(72)【発明者】
【氏名】イオランダ・マルチュエタ・エレウ
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・モイェス・バルス
【テーマコード(参考)】
4C031
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C031FA04
4C076AA26
4C076AA30
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076DD67
4C076FF02
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA43
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4C084ZA59
4C084ZC75
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4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA43
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA59
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1-(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩の新規の多型性の結晶形態に関する。本発明はまた、かかる多型性結晶形態を含む医薬組成物、β2アドレナリン受容体活性と関連のある呼吸器疾患を処置するためのその使用方法ならびにかかる多型結晶形態の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)水和物多型または(ii)該水和物多型を乾燥させることにより得られる、β型多型である、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩の結晶多型であって、
該水和物多型が:
a) 13.3、16.1および19.2°2θ (±0.1° 2θ)にピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターン; および/または
b) 75〜120℃ (±5℃)の範囲に第一の吸熱を示し、190℃(±1℃)にて第二の吸熱を開始する示差走査熱量測定(DSC)トレース
を示し、
該β型多型が:
a) 19.1°2θ (±0.1°2θ)にてピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターン; および/または
b) 190℃ (±1℃)で吸熱が開始する、示差走査熱量測定(DSC)トレース
を示す、結晶多型。
【請求項2】
水和物多型である、以下の工程により得られる請求項1記載の結晶多型:
a) ナフタレン-1,5-ジスルホン酸 四水和物のメタノール/酢酸 (1:1)の溶液を、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンのメタノール/酢酸 (1:1)の溶液に添加し、
b) 該反応混合物を還流下で30分間撹拌し、該反応混合物を静置して20〜25℃に冷却した後、室温、好ましくは20〜25℃にて、20時間撹拌し、
c) 単離、濾過し、メタノールで洗浄し、好ましくは真空下にて、50℃で乾燥させる。
【請求項3】
水和物多型であり、X線粉末回折(XRPD)パターンがさらに、9.9、11.5、12.7、14.4、15.2、16.7、19.6、20.2、21.9、22.7、23.1、24.2、25.6、27.0、27.6、28.9、30.5、31.7、33.4および37.0° 2θ (±0.1°2θ)にて一つ以上のピークをさらに持つ、請求項1または2記載の結晶多型。
【請求項4】
水和物多型であり、X線粉末回折(XRPD)パターンがさらに、9.9、11.5、12.7、13.3、14.4、15.2、16.1、16.7、19.2、19.6、20.2、21.9、22.7、23.1、24.2、25.6、27.0、27.6、28.9、30.5、31.7、33.4および37.0°2θ (±0.1°2θ)にてピークを持つ、請求項1〜3のいずれかに記載の結晶多型。
【請求項5】
水和物多型であり:
a)
図5に実質的に一致するX線粉末回折(XRPD) パターン、および/または
b)
図6に実質的に一致するDCSパターン
を提供する、請求項1〜4のいずれかに記載の結晶多型。
【請求項6】
β型多型である、請求項1〜5のいずれかに記載の水和物多型を、105℃にて20時間、好ましくは真空にて乾燥させることにより得られる、請求項1記載の結晶多型。
【請求項7】
β型多型であり、X線粉末回折(XRPD)パターンがさらに、10.0、11.6、12.7、13.5、14.5、16.1、19.7、20.3、22.0、22.8、23.8、24.2、25.8、27.1、27.7、29.2および39.4°2θ (±0.1°2θ)にて一つ以上ピークを持つ、請求項1または6記載の結晶多型。
【請求項8】
β型多型であり、X線粉末回折(XRPD) パターンが、10.0、11.6、12.7、13.5、14.5、16.1、19.1、19.7、20.3、22.0、22.8、23.8、24.2、25.8、27.1、27.7、29.2および39.4°2θ (±0.1 °2θ)にてピークを持つ、請求項1、6または7記載の結晶多型。
【請求項9】
β型多型であり:
a)
図1と実質的に一致するX線粉末回折(XRPD)パターンおよび/または
b)
図2と実質的に一致するDSCパターン
を提供する、請求項1または6〜8のいずれかに記載の結晶多型。
【請求項10】
a) 19.1、19.7および22.8° 2θ (±0.1° 2θ)にピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターン; および/または
b) 190℃(±1℃)にて吸熱が開始する示差走査熱量測定(DSC) トレース
を示す、
5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のβ型結晶多型。
【請求項11】
a) 請求項7〜9のいずれかに記載するX線粉末回折(XRPD) パターン;および/または
b) 請求項9記載の示差走査熱量測定(DSC)トレース
を示す、請求項10記載のβ型結晶多型。
【請求項12】
水和物多型である、純粋な形態で単離されるか、または請求項1および6〜11のいずれかに記載のβ型多型およびα型多型から選択される多型と混合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の結晶多型。
【請求項13】
β型多型である、純粋な形態で単離されるか、または請求項1〜5のいずれかに記載の水和物多型およびα型多型から選択される多型と混合されている、請求項1および6〜11のいずれかに記載の結晶多型。
【請求項14】
治療有効量の請求項1〜13のいずれかに記載の結晶多型と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
吸入による投与用に製剤されている、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
細粒分(FPF)を改善するための添加剤を、0.1重量%より少ない量で含む、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
治療有効量の一つ以上の他の治療剤をさらに含む、請求項14〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記の他の治療剤がコルチコステロイド、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤である、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記の他の治療剤が、以下からなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項17または18記載の医薬組成物:
プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、シペシル酸デキサメタゾン、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RS-85095、CGP-13774、GW-250495、デルタコルチゾン、NO-プレドニゾロン、NO-ブデソニド、ジクロ酢酸エチプレドノール、QAE-397、7ベータ−OH-EPIA、RPR-106541、プロピオン酸デプロドン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21-クロロ-11ベータ−ヒドロキシ-17アルファ−[2-(メチルスルファニル)アセトキシ]-4-プレグネン-3,20-ジオン、des-イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびヒドロコルチゾン プロブテート(probutate)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウムおよびプロピオン酸クロベタゾール。
【請求項20】
前記の他の治療剤が、以下からなる群から選択される抗コリン剤であり、それらは全てそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物の形態であってよく、その薬理学的に適合する酸付加塩の形態であってよい、請求項17または18記載の医薬組成物:
チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、臭化ダロトロピウム、CI-923、NPC-14695、BEA-2108、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特にアクリジニウム塩、より好ましくは臭化アクリジニウム)、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-3-カルボン酸 エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル エステル塩 (DAU-5884)、3-(4-ベンジルピペラジン-1-イル)-1-シクロブチル-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-オン (NPC-14695)、N-[1-(6-アミノピリジン-2-イルメチル)ピペリジン-4-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロ-1(R)-シクロペンチル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトアミド (J-104135)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-[4(S)-メチルヘキシル]ピペリジン-4-イル]-2-フェニル-アセトアミド (J-106366)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-ピペリジニル]-2-フェニルアセトアミド (J-104129)、1-[4-(2-アミノエチル)ピペリジン-1-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロシクロペンタ-1(R)-イル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルエタン-1-オン (Banyu-280634)、N-[N-[2-[N-[1-(シクロヘキシルメチル)ピペリジン-3(R)-イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]-3,3,3-トリフェニルプロピオンアミド (Banyu CPTP)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル酢酸 4-(3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル)-2-ブチニルエステル (Ranbaxy 364057)、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-[2-オキソ-2-(3-チエニル)エチル]ピロリジニウム アイオダイド、N-[1-(3-ヒドロキシベンジル)-1-メチルピペリジニウム-3(S)-イル]-N-[N-[4-(イソプロポキシ-カルボニル)フェニル]カルバモイル]-L-チロシンアミド トリフルオロアセテート、UCB-101333、OrM3(Merck)、7-エンド-(2-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルアセトキシ)-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]-ノナン塩、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-(2-フェニル-エチル)ピロリジニウム アイオダイド、trans-4-[2-[ヒドロキシ-2,2-(ジチエン-2-イル)アセトキシ]-1-メチル-1-(2-フェノキシエチル)ピペリジニウム ブロマイド (Novartis (412682))、7-(2,2-ジフェニルプロピオニルオキシ)-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0*2,4*]ノナン塩、7-ヒドロキシ-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0*2,4*]ノナン 9-メチル-9H-フルオレン-9-カルボン酸エステル塩。
【請求項21】
前記の他の治療剤が、以下からなる群から選択されるPDE4阻害剤である、請求項17または18記載の医薬組成物:
二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト、ティペルカスト、トフィミラスト、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム、塩酸ドロタベリン、リリミラスト、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト、テトミラスト、レバミラスト(revamilast)、ロノミラスト(ronomilast)、(R)-(+)-4-[2-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-フェニルエチル]ピリジン (CDP-840)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル]-2-オキソアセトアミド (GSK-842470)、9-(2-フルオロベンジル)-N6-メチル-2-(トリフルオロメチル)アデニン (NCS-613)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-8-メトキシキノリン-5-カルボキサミド (D-4418)、3-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシベンジル]-6-(エチルアミノ)-8-イソ−プロピル-3H-プリン ヒドロクロリド (V-11294A)、6-[3-(N,N-ジメチルカルバモイル)-フェニル-スルホニル]-4-(3-メトキシフェニルアミノ)-8-メチルキノリン-3-カルボキサミド ヒドロクロリド (GSK-256066)、4-[6,7-ジエトキシ-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン-1-イル]-1-(2-メトキシ-エチル)ピリジン-2(1H)-オン (T-440)、(-)-trans-2-[3'-[3-(N-シクロプロピルカルバモイル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-1-イル]-3-フルオロビフェニル-4-イル]シクロプロパンカルボン酸、MK-0873、CDC-801、GSK-356278、TA-7906、CP-80633、RPL-554、NIK-616、GPD-1116、D4396、UK-500001、BLX-914、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン1-オン、cis [4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール、5(S)-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-3(S)-(3-メチルベンジル)ピペリジン-2-オン (IPL-455903)、ONO-6126 (Eur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst 2557)およびPCT特許出願国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号、国際公開第2005/123692号、および国際公開第2010/069504号に特許請求されている化合物。
【請求項22】
前記の他の治療剤が、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロリウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラストおよびPCT特許出願国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号にて特許請求されている化合物からなる群から選択される、請求項17または18記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1〜13のいずれかに記載の結晶多型と請求項17〜22のいずれかに記載の一つ以上の他の治療剤とを含む、組合せ剤。
【請求項24】
哺乳類における、β2アドレナリン受容体活性と関連のある肺疾患または症状を処置する方法であって、該哺乳類に、請求項14〜22のいずれかに記載の医薬組成物を治療有効量投与することを含む、方法。
【請求項25】
該肺疾患が喘息または慢性閉塞性肺性疾患である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
治療有効量の、請求項17〜22のいずれかに記載の他の治療剤を一つ以上投与することをさらに含む、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
哺乳類における、請求項24または25記載の肺疾患または症状を処置するための医薬の製造における、請求項1〜13のいずれかに記載の結晶多型または請求項14〜22のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
請求項24または25記載の肺疾患または症状を処置するのに用いるための、請求項1〜13のいずれかに記載の結晶多型または請求項14〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1-(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩の新規の多型結晶形態に関する。本発明はまた、該多型結晶形態を含む医薬組成物、それらを用いた、β2アドレナリン受容体に関連する呼吸疾患を処置する方法ならびに該多型結晶形態の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン (化合物I) は、国際公開第2006/122788号に最初に記載された、強力なβ2アドレナリン受容体作動薬である。この化合物は、以下の化学式
【化1】
を有する。
【0003】
結晶性の5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンのナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩 (ヘミナパジシル酸塩)は、国際公開第2008 /095720号に記載された。結晶性の化合物(I)のヘミナパジシル酸塩(以下、α型多型と称する)は、X線粉末回折、DSCパターンおよびTGAパターンにより特定される。この化合物は、化学式
【化2】
を有する。
【0004】
国際公開第2010/102831号は、式(I)の化合物のヘミナパジシル酸塩の改善された製造方法を記載する。具体的には、該ヘミナパジシル酸塩は、式(I)の化合物を単離することなく、ワンポット反応にて得られる。8-(ベンジルオキシ)-5-((1R)-2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)-ヘキシル]アミノ}-1-ヒドロキシエチル)キノリン-2(1H)-オンの水素化工程が完了し、触媒を該反応混合物から取り除くと、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸 四水和物のメタノール/酢酸 (2:1)溶液を該反応混合物に添加する。この工程により、以前に国際公開第2008 /095720号に記載された、α型多型が形成される。
【0005】
この化合物は、強力なβ2アドレナリン受容体作動薬として、肺または呼吸障害の処置に用いる場合、有利に、吸入により気道へ直接投与される。乾燥粉末吸入器(DPI)、定量吸入器(MDI)およびネブライザー吸入器を含む、いくつかの種類の医薬吸入デバイスが、吸入による治療剤の投与用に開発されている。
【0006】
乾燥粉末吸入器は、気道に薬学的に有効な薬物を投与するための、よく知られたデバイスである。それらは特に、呼吸疾患、例えば喘息、COPDまたは肺気腫などの処置において有効剤を投与するのに用いる場合に適当である。薬物が標的器官に直接作用するため、より少量の有効成分を使用するべきである。
【0007】
乾燥粉末製剤は、典型的に、薬学的に有効な剤と、過剰の薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む。乾燥粉末吸入器の有効性は、肺中の薬物の沈着の程度に関連し、これは、用いる薬物の製剤およびデバイスに依存する。気道の下部に到達することを可能にするため、薬物は、粉砕した粒子、5μmよりも小さい空気力学的直径を有する粒子で送達されることが必要である。
【0008】
乾燥粉末吸入器からの薬物の微粒子用量(Fine Particle Dose (FPD))は、DPIを1回作動させた後に放出される、効果的に送達可能な粒子サイズ(すなわち、空気力学的直径が5μm以下である)の薬物の量の尺度である。細粒分 (FPF) は、FPDが表す放出量のパーセンテージ(%)である。投与された薬物のうちのより多くが、該薬物が効果的であり得る肺に到達することができ、そのため、薬物の至適用量を達成するのに必要な薬物の量が少なくなるため、FPFは高いことが明らかに望ましい。
【0009】
細粒分(FPF) を改善するためのさらなる物質の使用が、乾燥粉末製剤において広く用いられている。それは、ステアリン酸マグネシウムまたは安息香酸ナトリウムのような、滑剤を含む賦形剤(ラクトース)の製造が記載されている、PCT国際公開第87/05213号において、初めて報告された。
【0010】
国際公開第96/23485号は、細粒分 (FPF)の増加をもたらす、有効成分の小粒子の放出を促進するための、アミノ酸、リン脂質または界面活性剤から選択される添加物質を含む乾燥粉末製剤の製造を記載している。
【0011】
米国特許第6,645,466号は、湿度に関する乾燥粉末製剤の安定性を改善し、それにより、該製剤をより高い相対湿度にて試験した場合に、FPFを維持することを目的として、吸入用の乾燥粉末製剤においてステアリン酸マグネシウムを使用することを記載している。
【0012】
国際公開第2005/041922号は、生理学的に許容される金属リン酸塩、例えば、リン酸水素カルシウムを、ステアリン酸マグネシウムの代わりに、乾燥粉末製剤に使用し、それによりFPFを改善することを記載している。
【0013】
国際公開第2009/061273号は、特定のアスコルビン酸誘導体を含む乾燥粉末製剤を記載している。この添加物質の存在が、FPFを上昇させることにより、優れた性能の吸入が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/122788号
【特許文献2】国際公開第2008 /095720号
【特許文献3】国際公開第2010/102831号
【特許文献4】国際公開第96/23485号
【特許文献5】米国特許第6,645,466号
【特許文献6】国際公開第2005/041922号
【特許文献7】国際公開第2009/061273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
FPFを上昇させるという課題は、特定の添加物質を製剤に添加することにより解決するように見られるが、医薬製剤にさらに成分を添加することは、製造方法に関して複雑さを増加させることは当該分野では周知のことである。例えば、成分混合物について、いくつかの混合の課題、例えば、特に、細かい賦形剤を薬物に添加する場合に、粗担体粒子の表面への接着が低下することによる、凝集、分離または製剤が不均一化などの問題が知られている。さらに、吸入投与用の新しい成分について当局の承認を取得するためには、さらなる開発研究が必要となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、化合物Iのヘミナパジシル酸塩の新規の多型結晶形態は、標準的なα型多型よりも高い細粒分(FPF)を示しながら、結晶性、非吸湿性および安定性を維持している。新規の多型結晶形態の乾燥粉末製剤での吸入投与における優れた性質は、さらなる添加物質を要することなく改善される。
【0017】
本発明は、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1-(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン (化合物I)のヘミナパジシル酸塩の、新規の多型結晶形態およびその製造方法に関する。
【0018】
具体的には、本発明は、化合物(I)のヘミナパジシル酸塩の2つの多型結晶形態、すなわち、無水物形態(以下、β型多型と称する)および半水和物形態(以下、水和物多型と称する)に関する。
【0019】
したがって、本発明は、(i) 水和物多型であるか、または(ii) 該水和物多型を乾燥することにより得られるβ型多型である、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩の結晶多型を提供し、ここで、
該水和物多型は:
a) 13.3、16.1および19.2°2θ(±0.1°2θ)にピークを有するX線粉末回折 (XRPD)パターン; および/または
b) 75〜120℃ (±5℃)の範囲に第一の吸熱を、190℃ (±1℃)にて、第二の吸熱の開始を示す、示差走査熱量測定(DSC) トレースを示し、
β型多型は:
a) 19.1°2θ (±0.1°2θ)にピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターン; および/または
b) 190℃ (±1℃)において、吸熱の開始を示す示差走査熱量測定(DSC) トレースを示す。
【0020】
本発明は、また、本発明の多型塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明はさらに、本発明の多型塩と1つ以上の他の治療剤とを含む組合せ剤ならびにかかる組合せを含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明はまた、哺乳類における、β2アドレナリン受容体活性と関連のある肺疾患または障害、例えば、喘息または慢性閉塞性肺疾患の処置方法であって、該哺乳類に治療有効量の本発明の多型塩を投与することを含む方法を提供する。本発明はさらに本発明の多型塩と一つ以上の他の治療剤との組合せ剤を治療有効量投与することを含む処置方法を提供する。
【0022】
本発明は、さらに、工業規模での生産に適した多型塩の製造方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、医学的治療に使用するための、本明細書中に記載の本発明の多型塩ならびに、哺乳類におけるβ2アドレナリン受容体活性に関連する肺疾患または症状、例えば喘息または慢性閉塞性肺疾患を処置するための製剤または医薬の製造における本発明の多型塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の、β型多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のX線粉末回折 (XRPD) パターンを示す。Y軸は強度 (カウント)を示す。X軸は2θ (°)を示す。
【
図2】本発明の、β型多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のDSCパターンを示す。Y軸はエネルギーを表す (W)。X軸は温度 (℃)を表す。
【
図3】本発明の、β型多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のTGAパターンを示す。Y軸は重量(%)を表す。X軸は温度 (℃)を表す。
【
図4】本発明の、β型多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のFT−IRパターンを示す。Y軸は透過率(%)を示す。X軸は波数(cm
-1)を示す。
【
図5】本発明の、水和物多型の、5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩 ヘミ水和物のX線粉末回折 (XRPD)パターンを表す。Y軸は強度(カウント)を示す。X軸は2θ(°)を表す。
【
図6】本発明の水和物多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩 ヘミ水和物のDSCパターンを示す。Y軸はエネルギー(W)を表す。X軸は温度 (℃)を表す。
【
図7】本発明の水和物多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩 ヘミ水和物のTGAパターンを示す。Y軸は重量を示す(%)。X軸は温度(℃)を示す。
【
図8】本発明の水和物多型の (2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩、ヘミ水和物のFT−IRパターンを示す。Y軸は透過率(%)を示す。X軸は波数(cm
-1)を示す。
【
図9】α型、β型および水和物多型の5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のX線粉末回折 (XRPD)パターンを示す。Y軸は強度 (カウント)を表す。X軸は2θ(°)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の塩、組成物および方法を表す場合、以下の用語は、特にことわらない限り以下の意味を持つ。
【0026】
用語「多型性」は、化合物が、2種以上の異なる結晶種へと結晶化できる能力を指す。 多型は、同一の化学構造を持つが、きわめて異なる物理化学的な性質を持つことがしばしばであり、多型は、鏡像異性系の多型および単一多型を含む。
【0027】
用語「非晶」は、薬物製造工程(結晶化工程、乾燥および粉砕)か、または製剤工程(造粒、加圧)において生じ得る無秩序な固体状態を指す。非晶固体のX線粉末回折パターンは、鋭いピークを全く示さない。
【0028】
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与した場合に、処置の効果を生じるのに十分な量を指す。
【0029】
本明細書で用いる用語「処置」は、ヒト患者における疾患または医学的症状の処置を指し、以下を含む:
(a) 疾患または医学的症状が発症するのを防ぐ、すなわち患者の予防的処置;
(b) 疾患または医学的症状の回復、すなわち、患者における該疾患または医学的症状の退行を引き起こすこと;
(c) 該疾患または医学的症状の抑制、すなわち、患者における該疾患または医学的症状の進行の遅延化; または
(d) 患者における疾患または医学的症状の軽減。
【0030】
「β2アドレナリン受容体活性に関連する肺疾患または症状」という語は、β2アドレナリン受容体活性と関連があることが現在認識されているか、または将来明らかになる全ての肺疾患状態および/または症状を含む。該疾患状態は、喘息および慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性気管支炎および肺気腫)を含むが、これらに限定されない。
【0031】
β型多型は、典型的に、本発明の水和物多型を、105℃にて20時間、好ましくは真空中で乾燥させることにより得られる。
【0032】
本発明のβ型多型は、典型的に、13.5、19.7、20.3、22.8、23.8および24.2°2θ (±0.1° 2θ)に1つ以上のさらなるピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。好ましくは、かかるピークは2つ以上観察され、さらに好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ観察される。
【0033】
本発明のβ型多型は、好ましくは、10.0、11.6、12.7、13.5、14.5、16.1、19.7、20.3、22.0、22.8、23.8、24.2、25.8、27.1、27.7、29.2および39.4°2θ (±0.1°2θ)に、1つ以上のさらなるピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。好ましくは、かかるピークは2つ以上観察され、さらに好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ以上、さらに好ましくは5つ以上、さらに好ましくは10以上観察される。かかるピークが全て観察されるのが最も好ましい。
【0034】
したがって、本発明のβ型多型は、10.0、11.6、12.7、13.5、14.5、16.1、19.1、19.7、20.3、22.0、22.8、23.8、24.2、25.8、27.1、27.7、29.2および39.4°2θ (±0.1°2θ)にてピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有することが特に好ましい。
【0035】
本発明のβ型多型は、また、11.6、14.5、16.1、19.1、20.3、22.0、24.2、27.1および29.2°2θ (±0.1°2θ)においてピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有することが特に好ましい。
【0036】
典型的には、β型多型については、19.7°2θ (±0.1°2θ) におけるピークが最も強い。19.7°2θ (±0.1° 2θ) におけるピークが、次に強いピークより少なくとも25%強いことが好ましい。
【0037】
好ましくは、β型多型は、13.5°2θ (±0.1°2θ)にピークを持つ。好ましくは、β型多型は13.6°2θ (±0.1° 2θ)にはピークを持たない。より好ましくは、β型多型は13.5°2θ (±0.1°2θ) にピークを持ち、13.6°2θ (±0.1°2θ)にピークを持たない。
【0038】
本発明のβ型多型は、典型的には、190℃ (±1℃)にて開始する吸熱を示す示差走査熱量測定(DSC)トレースを有する。該吸熱は、急な吸熱である。好ましくは、該吸熱は、190℃ (±0.5℃)、より好ましくは190.2℃ (±0.1℃)にて開始する。典型的に、該吸熱は196℃ (±1℃)にピークを有する。好ましくは、該ピークは196℃ (±0.5℃)、より好ましくは196.3℃ (±0.1℃)である。
【0039】
本発明のβ型多型は典型的に、1650、1185、1031、および764 cm
-1 (±1 cm
-1)に吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有する。
【0040】
本発明のβ型多型は、好ましくは、1451、1273、834および698cm
-1 (±1 cm
-1)に1つ以上のさらなる吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有する。かかるピークは、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上が観察される。該ピークが全て観察されるのが最も好ましい。
【0041】
本発明のβ型多型は、好ましくは、3396、3126、2915、2850、1608、1556、1496、1451、1411、1363、1332、1273、1241、1125、1099、1047、1003、977、937、897、853、834、820、805、794、777、734、698および663 cm
-1 (±1 cm
-1)にて1つ以上のさらなる吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有する。かかるピークは、好ましくは5つ以上、より好ましくは10個以上、より好ましくは15個以上、より好ましくは20個以上、より好ましくは25個以上が観察される。該ピークが全て観察されるのが最も好ましい。
【0042】
したがって、本発明のβ型多型が、3396、3126、2915、2850、1650、1608、1556、1496、1451、1411、1363、1332、1273、1241、1185、1125、1099、1047、1031、1003、977、937、897、853、834、820、805、794、777、764、734、698および663 cm
-1(±1 cm
-1)に吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有することが特に好ましい。
【0043】
より好ましくは、β型多型は:
a)
図1に実質的に一致する、X線粉末回折(XRPD) パターン、および/または
b)
図2に実質的に一致するDSC パターンおよび/または
c)
図4に実質的に一致する赤外スペクトル
を提供する。
【0044】
本発明の水和物多型は半水和物である。
【0045】
本水和物多型は、典型的に:
a) ナフタレン-1,5-ジスルホン酸 四水和物のメタノール/酢酸 (1:1)溶液を、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンのメタノール/酢酸 (1:1)溶液に添加し、
b) 該反応混合物を還流下にて30分間撹拌し、該反応混合物を静置して20〜25℃に冷却した後、室温、好ましくは20〜25℃にて、20時間撹拌し、
c) 単離、濾過し、メタノールで洗浄し、好ましくは真空中で、50℃にて乾燥させる
ことにより得られる。
【0046】
本水和物多型は、典型的に、12.7、19.6、20.2、22.7、23.1、24.2および27.7°2θ (±0.1°2θ)に1つ以上のさらなるピークを持つX線粉末回折 (XRPD)パターンを持つ。該ピークは、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上が観察される。該ピークが全て観察されるのが最も好ましい。
【0047】
該水和物多型は、好ましくは、9.9、11.5、12.7、14.4、15.2、19.6、20.2、21.9、22.7、23.1、24.2、25.6、26.98、27.6、28.9、30.5、31.7、33.4および37.0°2θ (±0.1°2θ)に1つ以上のさらなるピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。かかるピークは、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上、、より好ましくは5つ以上、より好ましくは10個以上、より好ましくは15個以上が観察される。該ピークが全て観察されるのが最も好ましい。
【0048】
したがって、該水和物多型は、9.9、11.5、12.7、13.3、14.4、15.2、16.1、16.7、19.2、19.6、20.2、21.9、22.7、23.1、24.2、25.6、27.0、27.6、28.9、30.5、31.7、33.4および37.0 °2θ (±0.1°2θ)にピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有するのが特に好ましい。
【0049】
該水和物多型が、11.5、13.3、14.4、16.1、16.7、19.2、20.2、21.9、23.1、24.2、25.6、27.0、28.9、30.5、31.7、33.4および37.0°2θ (±0.1°2θ)にピークを持つX線粉末回折(XRPD)パターンを有することも、特に好ましい。
【0050】
典型的に、該水和物多型について、19.6°2θ (±0.1°2θ) におけるピークが最も強い。好ましくは、19.6°2θ (±0.1°2θ) におけるピークは、次に強いピークよりも少なくとも10%強い。
【0051】
好ましくは、該水和物多型は、13.4°2θ (±0.1°2θ)にピークを持つ。好ましくは、該水和物多型は、13.6°2θ (±0.1°2θ)にピークを持たない。より好ましくは、該水和物多型は、13.4°2θ (±0.1° 2θ) にピークを持ち、13.6°2θ (±0.1°2θ)にピークを持たない。
【0052】
該水和物多型は、典型的に、75〜120℃ (±5℃) の範囲で第一の吸熱を示し、190℃ (±1℃)にて第二の吸熱の開始を示す示差走査熱量測定(DSC)トレースを有する。
【0053】
該水和物多型の第一の吸熱は、幅の広い吸熱である。該吸熱は73℃ (±1℃)にて開始するのが好ましい。該第一の吸熱は、好ましくは、95℃ (±1℃)にてピークを持つ。
【0054】
該水和物多型の第二の吸熱は、鋭い吸熱である。該第二の吸熱は、好ましくは190℃ (±0.5℃)、より好ましくは190.4℃ (±0.1℃)にて開始する。典型的には、該吸熱は、196 ℃ (±1℃)にピークを持つ。好ましくは、該ピークは196℃ (±0.5℃)、より好ましくは196.3℃ (±0.1℃)である。
【0055】
本発明の水和物多型は、典型的に、1637、1185、1030および776 cm
-1 (±1 cm
-1)の吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有する。
【0056】
本発明の水和物多型は、好ましくは、1456、1271および819 cm
-1 (±1 cm
-1)にて吸光バンドをさらに1以上持つ赤外スペクトルを有する。好ましくは、かかるスペクトルは2つ以上観察される。該ピークが全て観察されるのがより好ましい。
【0057】
本発明の水和物多型は、より好ましくは、3396、3342、3129、2914、1610、1563、1496、1456、1411、1368、1311、1290、1271、1244、1192、1155、1152、1123、1100、1048、1008、976、936、897、853、819、807、794、735、725、691、685および662 cm
-1 (±1 cm
-1)に1つ以上のさらなる吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有する。該ピークは、好ましくは5つ以上、より好ましくは10個以上、より好ましくは15個以上、より好ましくは20個以上、より好ましくは25個以上観察される。該ピークが全て観察されるのが最も好ましい。
【0058】
したがって、本発明の水和物多型が、3396、3342、3129、2914、1637、1610、1563、1496、1456、1411、1368、1311、1290、1271、1244、1192、1185、1155、1152、1123、1100、1048、1030、1008、976、936、897、853、819、807、794、776、735、725、691、685および662 cm
-1 (±1 cm
-1)にて吸光バンドを持つ赤外スペクトルを有することが特に好ましい。
【0059】
最も好ましくは、該水和物多型は:
a)
図5と実質的に一致するX線粉末回折 (XRPD) パターンおよび/または
b)
図6と実質的に一致するDSCパターンおよび/または
c)
図8と実質的に一致する赤外スペクトル
を提供する。
【0060】
典型的には、β型多型は、熱重量分析にて測定して200℃ (±5℃、好ましくは±2℃)にて分解を始める。典型的に、熱重量分析にて測定して、該水和物多型は200℃ (±5℃、好ましくは±2℃)にて分解を始める。分解の始まりは、実施例に記載するように、多型の試料の重量の減少により特定し得る。熱重量分析(TGA) は、任意の適当な装置および技術を用いて行ってよい。典型的には、好ましくは、以下の実施例に記載するように、TGA-SDTA-851 Mettler-Toledoを用いる。
【0061】
X線粉末回折 (XRPD) 分析は、任意の適当な装置および技術を用いて行ってよい。典型的には、XRPD分析は、好ましくは以下の実施例に記載するように、Cu X線源を伴う、Brucker X-ray powder diffractometer, model D2 Phaserにて行う。
【0062】
示差走査熱量測定(DSC) 分析は、任意の適当な装置および技術を用いて行ってよい。典型的には、DSC分析は、好ましくは以下の実施例に記載するように、DSC-821 Mettler-Toledoを用いて行う。
【0063】
赤外スペクトル分析は、任意の適当な装置および技術を用いて行ってよい。典型的には、赤外分析は、好ましくは以下の実施例に記載するように、Nicolet 710 FT-IR spectrometerを用いて行う。
【0064】
本発明は、純粋な形態、または実質的に純粋な形態で単離されたか、または水和物多型とWO 2008/ 095720に記載された公知のα型多型から選択される他の多型と混合したβ型多型を含む。該β型多型は、好ましくは、純粋な形態または実質的に純粋な形態で単離される。したがって、該結晶形態は、好ましくは、β型多型からなるか、または実質的にβ型多型からなる。好ましくは、α型多型は存在しない。
【0065】
本発明はまた、純粋な形態または実質的に純粋な形態で単離されたか、またはβ型多型およびWO 2008/ 095720に記載された公知のα型多型から選択される他の多型の混合した、水和物多型を含む。該水和物多型は、好ましくは、純粋な形態または実質的に純粋な形態で単離される。したがって、該結晶形態は、水和物多型からなるか、または実質的に水和物多型からなる。好ましくは、α型多型は存在しない。
【0066】
誤解を避けるために述べるが、用語「化合物 I」は、遊離塩基形態の 5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンを指し、以下の化学構造:
【化3】
を有する。
【0067】
用語「化合物 (I)のヘミナパジシル酸塩」は、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩を指し、化学構造:
【化4】
を有する。
【0068】
用語「結晶性α型多型」または「α型多型」は、国際公開第2008/095720号および国際公開第2010/102831号にて記載され、特徴づけられた化合物(I)のヘミナパジシル酸塩を指す。
【0069】
本発明は、また、治療有効量の結晶性β型多型の5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン、ヘミナパジシル酸塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を含む。
【0070】
本発明は、また、治療有効量の、結晶性水和物多型の5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン、ヘミナパジシル酸塩 半水和物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を含む。
【0071】
本発明の多型形態は安定であり、そのため、医薬組成物の形成または製造の間、その多型構造を維持する。
【0072】
担体、例えば、単糖、二糖または多糖または糖アルコール、例えばラクトース、マンニトールまたはグルコースを一般的に使用する。好ましくは、本発明において担体として使用するラクトースは、結晶性αラクトース一水和物である。適当な市販のラクトース物質を担体として使用してよい。該ラクトースの例は、DMV Internacional (Respitose GR-001、Respitose SV-001、Respitose SV-003またはその混合物)、Meggle (Capsulac 60、Inhalac 70、Inhalac 120、Inhalac 230、Capsulac 60 INH、Sorbolac 400、またはその混合物)、およびBorculo Domo (Lactohale 100-200、Lactohale 200-300およびLactohale 100-300、またはその混合物)より購入される。
【0073】
他の態様において、使用する担体は、異なる粒子サイズを有する、異なる種類の担体の混合物の形態であってよい。例えば、細かい担体と粗い単体の混合物が該製剤中に存在していてよく、ここで、細かい担体の平均粒子サイズは、粗い単体の平均分子サイズよりも小さい。好ましくは、細かい担体は、1〜50μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは5〜15μmの範囲の平均粒子サイズを有していてよい。粗い単体は、20〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは90〜400μm、最も好ましくは150〜300μmの範囲の平均粒子サイズを有していてよい。細かい担体の、粗い単体に対する含有量は、1%〜10%、好ましくは3%〜6%で変化してよく、例えば、粗い単体の総重量に対して5%であってよい。
【0074】
態様の一において、本発明の製剤に用いるためのラクトース粒子は、90〜160μmのd10、170〜270μmのd50および290〜400μmのd90を有する粗いラクトースと、2〜4μmのd10、7〜10μmのd50および15〜24μmのd90を有する細かいラクトースの混合物である。
【0075】
ラクトース粒子と本発明の有効成分の重量比は、用いる吸入デバイスに依存するが、典型的には、例えば800:1〜40000:1、例えば1600:1〜20000:1、例えば3000〜8000:1である。
【0076】
好ましい態様において、本発明の有効成分は、ラクトースと混合して、粉末製剤の形態で投与され、ここで、有効成分のラクトースに対する重量比は1:20000〜1:1600であり、有効成分粒子は、直径1.5〜5μm、例えば直径が3μmより小さい平均粒子サイズを示し、ラクトース粒子は、d10が90〜160μm、d50が170〜270μmおよびd90が290〜400μmである。該ラクトース粒子は、粒子サイズがd10が2〜4μm、d50が7〜10μmおよびd90が15〜24μmの細かいラクトースと混合してもよい。
【0077】
好ましくは、本発明の医薬組成物は吸入による投与用に製剤される。該医薬組成物が、細粒分(FPF)を改善するための、追加的な物質を含まないことがさらに好ましい。したがって、該医薬組成物は、好ましくはかかる追加的な物質を5重量%より少なく、より好ましくは1重量%より少なく、より好ましくは0.1重量%より少なく、最も好ましくは0.01重量%より少なく含む。したがって、かかる追加的な物質は、最も好ましくは、該医薬組成物に存在しないか、または実質的に存在しない。
【0078】
細粒分(FPF)を改善するための追加的な物質は、当業者にはよく知られている。適当な追加的な物質は、国際公開第87/05213号、国際公開第96/23485号、米国特許第6,645466号、国際公開第2005/041922号および国際公開第2009/061273号に記載されている。したがって、追加的な物質は、典型的には滑剤(例えばステアリン酸マグネシウムまたは安息香酸ナトリウム)、アミノ酸、リン脂質、界面活性剤、金属のリン酸塩(例えばリン酸水素カルシウム)またはアスコルビン酸誘導体である。
【0079】
本発明の一態様において、本医薬組成物は、治療有効量の、一つ以上の他の治療剤をさらに含む。好ましくは、他の治療剤は、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤から選択される。
【0080】
本発明の、結晶性のβ型多型および水和物多型は、上述するように、一つ以上の他の治療剤、特にコルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤からなる群から選択される一つ以上の薬物と組み合わせてもよい。
【0081】
本発明はまた、哺乳類における、β2アドレナリン受容体活性に関連する疾患または症状を処置する方法に関し、該方法は、哺乳類に、本発明で定義する結晶多型を含む医薬組成物を、治療有効量投与することを含む。肺疾患、好ましくは喘息または慢性閉塞性肺疾患である、疾患または症状の処置に該方法は特に関連して適用される。
【0082】
具体的には、肺疾患または症状を処置する方法は、哺乳類に治療有効量の本発明の医薬組成物および治療有効量の一つ以上の他の治療剤、例えばコルチコステロイド、抗コリン剤またはPDE4阻害剤を投与することを含む。
【0083】
本発明はまた、哺乳類における肺疾患または症状の処置用の医薬の製造における、本発明で定義する結晶性β型多型および/または水和物多型の使用に関する。哺乳類は好ましくはヒトである。特に関連する肺疾患または症状は、喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0084】
本発明はまた、肺疾患または症状の処置に用いるための、本発明で定義する結晶性β型多型および/または水和物多型に関する。哺乳類は好ましくはヒトである。特に関連する肺疾患または症状は、喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0085】
一般的な合成手法
本発明の結晶性β型多型および水和物多型は、本明細書中に記載の方法および手法を用いるか、同様の方法および手法を用いて製造し得る。典型的な、または好ましい工程条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のmol比、溶媒、圧力など)が示されている場合、特にことわらない限り、他の工程条件も用い得ることは理解される。最適な反応条件は、用いる特定の試薬または溶媒により変わり得るが、該条件は、当業者により、通常の最適化手法によって決定され得る。
【0086】
本発明の多型結晶形態を製造する方法は、本発明のさらなる態様として提供され、以下の手法により例示される。
【0087】
本発明の結晶性塩は、5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オンおよびナフタレン-1,5-ジスルホン酸 (アームストロングの酸としても知られる) またはその四水和物より合成し得る。ナフタレン-1,5-ジスルホン酸およびその四水和物は市販されており、例えば、Aldrichより購入できる。
【0088】
一般的な試薬、出発物質および溶媒は業者から購入し、そのまま使用した。
【実施例】
【0089】
実施例1
結晶性5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩 半水和物 (結晶性水和物多型)
遊離塩基としての5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン13.9gのメタノール304mlおよび酢酸304 mlの溶液に、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸 四水和物 6.0gのメタノール/酢酸 (1:1) 52 mlの溶液をゆっくりと添加した。その後、該混合物を還流温度下にて30分間撹拌した後、ゆっくりと20/25度まで冷却した。該混合物をこの温度にてさらに20時間撹拌した。形成した沈殿を濾過により単離し、メタノールで洗浄して真空下、50℃にて乾燥させた(収量:水和物多型の91%)。
【0090】
実施例2
結晶性 5-(2-{[6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩 (結晶性β型多型)
実施例1のように製造した結晶性水和物を105℃、真空下にて24時間乾燥させ、無水物形態β型(収量:99.8%)を得た。
【0091】
実施例 3
式(I)の化合物の多型塩と担体とを含む医薬吸入組成物
式(I)の化合物の多型塩(α型、β型または水和物)と担体とを含む医薬組成物の製造方法は以下の通りである:
1. 20重量%のラクトースを、担体として、一つの多型(α型、β型または水和物)と混合した。生じた混合物をふるいにかけて再び混合した。
2. 残存している80重量%のラクトースをふるいにかけて、工程1の該混合物に添加した。全混合物を混合し、ふるいにかけて再び混合し、最終吸入粉末混合物を得た。
【0092】
2つの異なる種類のラクトース、例えば上述したような、粗いラクトースと細かいラクトースを用いる場合、これらの種類のラクトースを、本発明の多型塩を添加する前に予めともに混合する。該吸入粉末組成物の微粒子(FPD<5μm)の空気力学的な評価についての試験を、Genuair(登録商標) inhalerと組み合わせて行う。かかる3つの製剤の細粒分を、Current European pharmacopoeia (Ph. Eur. Chapter 2.9.18)およびUSP <601>にしたがって、pre-separator、ステージ-1、-0、およびステージ1〜7 (フィルターステージ)を含む、60 L/分の設定のmodified Anderson Cascade Impactor (ACI)を用いた空気力学的インパクター解析によって、微粒子の空気力学的な評価の原理に基づいて算出した。インパクターの各ステージについての有効成分の含有量は、HPLCを用いて決定する。
【0093】
微粒子量 (FPD<5μm) をPh. Eur. Chapter 2.9.18およびUSP<601>に基づいて、量ごとの二点間の補間により算出する。二点間の線形補間は、5μmの印を含む、相当する効果的なカットオフ直径を有するステージ間にて行う。
【0094】
微粒子量を得るために、データプロットの直線が5μmの印と交差する累積率の値(y-値) を決定する。微粒子量(<5μm、μg)を得るために、累積率に、ステージ -1〜ステージ7 (フィルター)の量ごとの有効成分の質量の合計を掛けなければならない。
FPD [μg] = y
FPD・F/100%
FPD = 用量[μg]あたりの有効成分の、<5μmの微粒子量
y
FPD = 二点間の線形補間により評価される、粒子サイズ5μmにおける、体積の累積率のy-値 [%]。
F = 用量[μg]あたりのステージ-1〜ステージ7 (フィルター) における体積の合計。
【0095】
細粒分 (FPF)は、微細粒子量が表す排出量の%を表し、以下のように算出される:
FPF [%] = (FPD [μg] /総合計 [μg])
*100
総合計 = それぞれのインパクター中の薬剤物質の量 (Adapter-Filter)。
【0096】
FPFの結果は、以下の表1に示す:
【表1】
【0097】
表からわかるように、比較例(α型多型)と比較すると、細粒分は、約17%増加した。FPFのかかる上昇は、追加的な物質を全く加えることなく実現される。この発見により、乾燥粉末の製剤の方法がより単純になり、投与した薬剤のより大部分が肺に到達することが可能になる。このことは、該薬剤の最適な用量を達成するのに必要な薬剤の量が少なくなり、そのため、呼吸器疾患の処置に用いるための、より優れた吸入効能が達成されることが可能になる。
【0098】
特徴付けデータ
以下の特徴付けデータを、β型および水和物の両方の多型結晶形態について作成した(それぞれ実施例1および2)。
【0099】
X線粉末回折 (XRPD)
X線粉末回折 (XRPD)解析を、Cu X線源を備えたBrucker X-ray powder diffractometer, model D2 Phaserにて行った。該方法は、0.01°2θのステップサイズで、Lynxeye detectorを用いて各ステップにおいて0.4秒の回収時間で、5〜40°2θにて実行する。
【0100】
結晶性β型多型
結晶性β型多型のXRPDパターンを
図1に示し、XRPD角および相対強度の概略を表2に示す。相対強度は、S =強い、M = 中程度、W =弱い、VS = 非常に強い、VW = 非常に弱い、によって表す。
【表2】
【0101】
結晶性水和物多型
結晶性水和物多型のXRPDパターンを、
図5に示し、XRPD角および相対強度の概略を、表3に示す。相対強度は、S = 強い、M = 中程度、W =弱い、VS = 非常に強い、VW = 非常に弱い、によって表す。
【表3】
【0102】
図9は、5-(2-(6-(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)-1(R)-ヒドロキシエチル)-8-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン ヘミナパジシル酸塩のα型、β型および水和物の多型の試料のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。図に示されるように、3つの種類の多型は全て明確に特定でき、そのためお互いの間の容易な区別が可能となっている。
【0103】
α型多型のXRPD角および相対強度の概略を表5に示す。相対強度は、S = 強い、M =中程度、W = 弱い、VS = 非常に強い、およびVW = 非常に弱い、によって表す。
【表4】
【0104】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC) 解析は、DSC-821 Mettler-Toledo、シリアル番号5117423874を用いて得た。試料をアルミニウムの皿状の容器に入れ、試料の一番上にアルミニウムの蓋を置き、真鍮の棒で加圧した。試料を25℃にて平衡化し、10℃/分で300℃まで加熱した。機器をインジウムおよび亜鉛の標準物質を用いて較正した。
【0105】
結晶性β型多型
図2は、β型多型のDSCパターンを示す。該試料は、190℃周辺で開始する吸熱を示し、分解より前に変化は何も見られない。このことにより該試料が他の多型のいずれにも変換されないことが示される。
【0106】
結晶形態の水和物多型
図5は、水和物多型のDSCパターンを示す。該試料は、水の損失により、75〜120℃の範囲にて広い吸熱を示す。第二の吸熱は190℃周辺で開始し、これは分解に相当する。
【0107】
熱重量測定
熱重量測定(TGA)分析は、TGA-SDTA-851 Mettler-Toledo、シリアル番号5118408555を用いて得た。試料をタールを塗ったアルミニウムの皿状の容器に入れた後、プラチナのるつぼ上に置いた。試料を、30℃から、10℃/分にて350℃まで加熱した。機器を、インジウムおよびアルミニウムの標準物質を用いて較正した。
【0108】
結晶形態のβ型多型
図3は、β型多型のTGAパターンを示す。該試料は、約200℃における分解の前には、重量の損失を示さない。
【0109】
結晶形態の水和物多型
図6は、水和物多型のTGAパターンを示す。該試料は、脱水により、100℃において、約1.3%の重量損失を示す(水分子の1/2に相当する)。最終的に、該試料は、200℃付近にて分解による重量の損失が始まる。
【0110】
赤外スペクトル
赤外スペクトルは、2 cm
-1にてNicolet 710 FT-IR spectrometerを用いて得た。データは1 cm
-1にてデジタル化した。
【0111】
結晶形態のβ型多型
図4は、β型多型のIRスペクトルを示す。ピークの位置は以下の通りである: 3396、3126、2915、2850、1650、1608、1556、1496、1451、1411、1363、1332、1273、1241、1185、1125、1099、1047、1031、1003、977、937、897、853、834、820、805、794、777、764、734、698および663 cm
-1。
【0112】
結晶形態の水和物多型
図8は、水和物多型のIRスペクトルを示す。ピークの位置は以下の通りである: 3396、3342、3129、2914、1637、1610、1563、1496、1456、1411、1368、1311、1290、1271、1244、1192、1185、1155、1152、1123、1100、1048、1030、1008、976、936、897、853、819、807、794、776、735、725、691、685および662 cm
-1。
【0113】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、純粋な形態または水和物および/またはα型多型と混合した、治療有効量のβ型多型と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0114】
本発明の医薬組成物は、純粋な形態またはβ型および/またはα型多型と混合した、治療有効量の水和物多型と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0115】
本医薬製剤は、有利に単位剤形であっても、薬学の分野でよく知られている任意の方法により製造されてもよい。全ての方法は、有効成分を、担体に結合させる工程を含む。一般的に、製剤は、有効成分を液体担体または固体担体またはその両方を用いて、担体と均一および密接に結合させ、その後、必要であれば該生成物を所望の製剤に成形することにより製造する。
【0116】
吸入により肺に局所送達するための乾燥粉末組成物は、例えば吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジまたは、例えばラミネートしたアルミニウムホイルの、ブリスターであってよい。製剤は一般的に、本発明の多型の吸入のための粉末の混合物および、適当な粉末基剤(担体物質)、例えばラクトースまたはデンプンを含む。ラクトースを使用するのが好ましい。
【0117】
各カプセルまたはカートリッジは、一般的に、それぞれ治療上有効な成分を1μg〜150μg含んでいてよい。あるいは、該有効成分は、賦形剤を用いない状態であってもよい。
【0118】
製剤の包装は、単位用量または複数の用量の送達に適したものであってよい。複数用量送達の場合、製剤は、先に計量しても、使用時に計量してもよい。乾燥粉末吸入器は3つの群に分類される: (a) 単回用量、(b) 複数単位用量および(c) 複数用量のデバイス。
【0119】
第一の種類の吸入器について、単回用量は、製造者によって計量され、ほとんどがゼラチンカプセルである小さい容器に入れられている。カプセルは、別々の箱または容器から取られ、吸入器の置き場所に挿入されなければならない。次に、吸気の流れの一部がカプセルを通って、粉末が同調するかまたは吸入時の遠心力を用いて穿孔を通って粉末がカプセルから放出されるように、該カプセルをピンまたは切刃で開けるかまたは穿孔処理しなければならない。吸入後、空のカプセルを再び吸入器から除かなければならない。殆どの場合、カプセルの挿入および除去のためには、吸入器を分解することが必要であり、これは患者によっては困難で厄介な操作となり得る。
【0120】
吸入粉末のための硬ゼラチンカプセルの使用に関連する他の欠点は、(a) 外気からの湿度の取りこみに対する保護が弱いこと、(b) 該カプセルが先に、断片化するか、または刻み目がつくのを引き起こす、極度の相対湿度に暴露された後の、カプセルの開放または穿孔処理に問題があること、および(c) カプセルの断片を吸入する可能性があること、である。さらに、多数のカプセル吸入器について、圧出が不完全であることが報告されている(例えば、Nielsen et al, 1997)。
【0121】
カプセル吸入器には、国際公開第92/03175号に記載されているように、個々のカプセルがそこから受容チャンバーに移動しうるマガジンを有しており、該チャンバー中で穿孔処理および空にする処理が行われるものがある。また、カプセル吸入器には、用量を排出するために、空気路に沿って運ばれるカプセルチャンバーを有する回転式マガジンを持つものもある(例えば国際公開第91/02558号および独国特許第2242134号)。それらには、ディスクまたはストリップ上で供給される、限られた数の単位用量の、ブリスター吸入器とともに複数単位用量の型の吸入器が含まれる。
【0122】
ブリスター吸入器は、カプセル吸入器よりも医薬の湿度からの保護において優れている。カバーならびにブリスターホイルに穿孔処理をするかまたはカバーホイルを剥ぐことにより、粉末に近づくことができる。ディスクの代わりにブリスターストリップを用いる場合、用量の数は増加し得るが、患者が空のストリップを置きかえるのが不便である。したがって、かかるデバイスは、該ストリップを輸送し、ブリスターポケットを開けるのに用いる技術を含む、組み込まれた用量システムとともに、使い捨てであることがしばしばである。
【0123】
複数用量吸入器は、予め計量した量の粉末製剤を含まない。それらは、比較的大きい容器と、患者が操作しなければならない、用量を計量する仕組みからなる。該容器は、容積測定置換により、大量の粉末から個々に単離される複数の用量を有する。回転可能な膜(例えば欧州特許第0069715号) またはディスク(例えば英国特許第2041763号; 欧州特許第 0424790号; 独国特許第4239402号および欧州特許第0674533号)、回転可能なシリンダー (例えば欧州特許第0166294号; 英国特許第2165159号および国際公開第92/09322号) および回転可能な円錐台形構造 (例えば国際公開第92/00771号)を含む、様々な用量計量用の仕組みが存在し、これらは全て、容器からの粉末で満たさなければならない空洞を有する。他の複数用量デバイスには、該容器から特定の体積の粉末を、送達チャンバーまたは空気路に移すための、局所的なまたは周囲に凹部を持つ測定スライド(例えば米国特許第5201308号および国際公開第97/00703号) または測定プランジャーを持つ (例えば欧州特許第0505321号、国際公開第92/04068号および国際公開第92/04928号)か、または、以下の特許出願:国際公開第97/000703号、国際公開第03/000325号および国際公開第2006/008027号に記載されている、Genuair(登録商標) (以前はNovolizer SD2FLとして知られていた)のような測定スライドを有するものがある。
【0124】
再現可能な用量の計量が、複数用量吸入デバイスの主要な関心事の一つである。
【0125】
用量計量カップまたは空洞の充填は、殆どの場合、重力の影響下にて行われるため、粉末製剤は、優れた、安定性の、流動性を示さなければならない。
【0126】
再充填単回用量吸入器および複数単位用量吸入器については、用量測定の正確さおよび再現性は、製造者が保証し得る。一方、複数用量吸入器は、用量を充填する操作の数は一般的に少ない一方、はるかに高い数の用量を含み得る。
【0127】
複数用量デバイスにおける呼気の流れは、用量計量用の空洞を通って直線であることがしばしばであり、複数用量吸入器の塊状の強固な用量計量システムは、この呼気の流れによって撹拌され得ないため、粉末体積は空洞から単純に同調し、置換の間、解砕は殆ど起こらない。
【0128】
結果として、別々に分解する方法が必要である。しかし、実際は、それらが常に吸入器のデザインの一部であるわけではない。複数用量デバイスには多数の用量が含まれるため、空気路の内壁への粉末の接着および解砕は最小化せねばならず、および/またはこれらの部分の、残りの用量に影響を与えない定期的な清掃が可能でなければならない。複数用量吸入器には、規定の数の用量を取った後に置きかえることのできる使い捨ての薬剤容器を持つものもある(例えば国際公開第97/000703号)。そのような、使い捨ての薬剤容器を有する半永久的な複数用量吸入器については、薬剤の集積を防ぐために必要な条件はよりさらに厳しい。
【0129】
本発明の組成物は、乾燥粉末吸入器への適用ではなく、噴霧ガスを介して行うエアロゾルか、または、所謂アトマイザーを用いて投与でき、これを介して、薬理学的に有効な物質の溶液を、吸入可能な粒子のミストが得られるように、高圧下で噴霧し得る。これらのアトマイザーの有利な点は、噴霧ガスの使用が完全に省略し得ることである。かかるアトマイザーは、例えば、PCT特許出願国際公開第91/14468号および国際公開第97/12687号に記載されているRespimat(登録商標) であり、当該文献の内容は参照される。
【0130】
吸入による投与用の医薬は、粒子サイズが制御されていることが望ましい。気管支系への吸入に最適な粒子サイズは、通常、1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。20μmを超えるサイズの粒子は、小気道に到達させるために吸入する場合は、大きすぎることが一般的である。この粒子サイズを達成するためには、製造する有効成分の粒子は、慣用的な方法、例えば微粒子化によりサイズを低下させてよい。所望の画分を、空気分級またはふるいにかけることにより分離し得る。好ましくは、該粒子は結晶性である。
【0131】
本発明の組成物はまた、乾燥粉末吸入器ではなく、噴霧ガスを介して操作するエアロゾルか、または所謂アトマイザーを用いて投与してよく、それを介して薬理学的に有効な物質の溶液を、吸入可能な粒子のミストが得られるように高圧下で噴霧し得る。かかるアトマイザーは、例えば、国際公開第91/14468号および国際公開第97/12687号に記載されている。
【0132】
多量の微小化粉末を再現性よく得ることは、流動性が低く、極度に凝集する傾向があるため、困難である。乾燥粉末組成物の効率を改善するためには、粒子は吸入器の中では大きく、気道に放出されたときには小さくあるべきである。したがってラクトースまたはグルコースのような賦形剤を通常用いる。賦形剤の粒子サイズは、通常、本発明の、吸入される医薬よりもはるかに大きい。賦形剤がラクトースである場合、典型的に粉砕ラクトース、好ましくは結晶性αラクトース半水和物で存在する。
加圧したエアロゾル組成物は、一般的に、バルブ、特に定量バルブを備えたキャニスターに充填する。キャニスターはさらに、プラスチック素材、例えば、国際公開第96/32150号に記載するように、フッ素樹脂で被覆していてもよい。キャニスターは、頬側送達に用いるアクチュエーター内に取り付ける。
【0133】
本発明の組成物は、呼吸障害の処置に有用であることが知られている一つ以上の他の治療剤、例えばPDE4阻害剤、コルチコステロイドおよび/または抗コリン剤を治療有効量含んでいてよい。
【0134】
治療効果を達成するのに必要なそれぞれの有効物質の量は、当然のことながら、特定の活性、投与経路、処置を行う対象および処置する特定の障害または疾患により変化する。
【0135】
有効成分は1日に、1〜6回、所望の活性を示す程度に投与してよい。好ましくは、有効成分は1日に1回または2回、最も好ましくは1日に1回投与される。
【0136】
β2−作動薬と組合せ得る適当なPDE4阻害剤の例は、二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト、ティペルカスト、トフィミラスト、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム、塩酸ドロタベリン、リリミラスト、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト、テトミラスト、レバミラスト(revamilast)、ロノミラスト(ronomilast)、(R)-(+)-4-[2-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-フェニルエチル]ピリジン (CDP-840)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル]-2-オキソアセトアミド (GSK-842470)、9-(2-フルオロベンジル)-N6-メチル-2-(トリフルオロメチル)アデニン (NCS-613)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-8-メトキシキノリン-5-カルボキサミド (D-4418)、3-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシベンジル]-6-(エチルアミノ)-8-イソ−プロピル-3H-プリン ヒドロクロリド (V-11294A)、6-[3-(N,N-ジメチルカルバモイル)-フェニル-スルホニル]-4-(3-メトキシフェニルアミノ)-8-メチルキノリン-3-カルボキサミド ヒドロクロリド (GSK-256066)、4-[6,7-ジエトキシ-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン-1-イル]-1-(2-メトキシ-エチル)ピリジン-2(1H)-オン (T-440)、(-)-trans-2-[3'-[3-(N-シクロプロピルカルバモイル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-1-イル]-3-フルオロビフェニル-4-イル]シクロプロパンカルボン酸、MK-0873、CDC-801、GSK-356278、TA-7906、CP-80633、RPL-554、NIK-616、GPD-1116、D4396、UK-500001、BLX-914、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン1-オン、cis [4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール、5(S)-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-3(S)-(3-メチルベンジル)ピペリジン-2-オン (IPL-455903)、ONO-6126 (Eur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst 2557)ならびにPCT特許出願、国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号、国際公開第2005/123692号、および国際公開第2010/069504号にて特許請求されている化合物である。
【0137】
β2−作動薬と組合せ得る適当なコルチコステロイドおよび糖質コルチコイドの例は、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、シペシル酸デキサメタゾン、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RS-85095、CGP-13774、GW-250495、デルタコルチゾン、NO-プレドニゾロン、NO-ブデソニド、ジクロ酢酸エチプレドノール、QAE-397、7ベータ-OH-EPIA、RPR-106541、プロピオン酸デプロドン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21-クロロ-11ベータ−ヒドロキシ-17アルファ−[2-(メチルスルファニル)アセトキシ]-4-プレグネン-3,20-ジオン、des-イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびヒドロコルチゾン プロブテート(probutate)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウムおよびプロピオン酸クロベタゾールである。
【0138】
β2−作動薬と組合せ得る適当なM3拮抗薬 (抗コリン薬) の例は、チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、臭化ダロトロピウム、CI-923、NPC-14695、BEA-2108、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特にアクリジニウム塩、より好ましくは臭化アクリジニウム)、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-3-カルボン酸 エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルエステル塩 (DAU-5884)、3-(4-ベンジルピペラジン-1-イル)-1-シクロブチル-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-オン (NPC-14695)、N-[1-(6-アミノピリジン-2-イルメチル)ピペリジン-4-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロ-1(R)-シクロペンチル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトアミド (J-104135)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-[4(S)-メチルヘキシル]ピペリジン-4-イル]-2-フェニル-アセトアミド (J-106366)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-N-[1-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-ピペリジニル]-2-フェニルアセトアミド (J-104129)、1-[4-(2-アミノエチル)ピペリジン-1-イル]-2(R)-[3,3-ジフルオロシクロペンタ-1(R)-イル]-2-ヒドロキシ-2-フェニルエタン-1-オン (Banyu-280634)、N-[N-[2-[N-[1-(シクロヘキシルメチル)ピペリジン-3(R)-イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]-3,3,3-トリフェニルプロピオンアミド (Banyu CPTP)、2(R)-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニル酢酸 4-(3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル)-2-ブチニル エステル (Ranbaxy 364057)、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-[2-オキソ-2-(3-チエニル)エチル]ピロリジニウム アイオダイド、N-[1-(3-ヒドロキシベンジル)-1-メチルピペリジニウム-3(S)-イル]-N-[N-[4-(イソプロポキシ-カルボニル)フェニル]カルバモイル]-L-チロシンアミド トリフルオロアセテート、UCB-101333、OrM3 (Merck)、7-エンド-(2-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルアセトキシ)-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]-ノナン塩、3(R)-[4,4-ビス(4-フルオロフェニル)-2-オキソイミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-(2-フェニル-エチル)ピロリジニウム アイオダイド、trans-4-[2-[ヒドロキシ-2,2-(ジチエン-2-イル)アセトキシ]-1-メチル-1-(2-フェノキシエチル)ピペリジニウム ブロマイド(Novartis (412682))、7-(2,2-ジフェニルプロピオニルオキシ)-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0
*2,4
*]ノナン塩、7-ヒドロキシ-7,9,9-トリメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.0
*2,4
*]ノナン 9-メチル-9H-フルオレン-9-カルボン酸エステル塩であり、これらはすべて、場合により、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物の形態であってよく、その薬理学的に適合する酸付加塩の形態であってよい。塩の中では、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩およびメタンスルホン酸塩が好ましい。
【0139】
特に好ましい本発明の医薬組成物は、上で定義する多型性の結晶形態と、治療有効量の、以下からなる群から選択される一つ以上の追加的な治療剤とを含む: フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特に アクリジニウム塩、好ましくは臭化アクリジニウム)、1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラストならびにPCT特許出願である国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号に特許請求されている化合物。
【0140】
したがって、本発明の局面の一において、本組成物はコルチコステロイドと結晶性β型多型および/または水和物多型とを含む。特に、好ましいコルチコステロイドはフロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるものである。
【0141】
本発明の他の局面において、本組成物は抗コリン剤と結晶性β型多型および/または水和物多型とを含む。特に好ましい抗コリン剤は、チオトロピウム塩、グリコピロニウム 塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]-オクタン塩および1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]-オクタン塩からなる群から選択されるものである。本組成物はさらに、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるコルチコステロイドをさらに含んでいてよい。
【0142】
本発明のさらに他の局面において、本組成物は、PDE4阻害剤と結晶性β型多型および/または水和物多型とを含む。特に好ましいPDE4阻害剤は、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラストおよびPCT特許出願、国際公開第03/097613号、国際公開第2004/058729号、国際公開第2005/049581号、国際公開第2005/123693号および国際公開第2005/123692号にて特許請求されている化合物からなる群から選択されるものである。本組成物は、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるコルチコステロイドをさらに含んでいてよい。本組成物は、本発明の塩と該PDE4阻害剤に加え、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2] オクタン塩および1-(2-フェニルエチル)-3-(9H-キサンテン-9-イルカルボニルオキシ)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2] オクタン塩からなる群から選択される抗コリン剤をさらに含んでいてよい。
【0143】
本発明の特に好ましい態様において、本組成物は、結晶性β型多型および/または水和物多型と、治療有効量の3-[2-ヒドロキシ-2,2-ビス(2-チエニル)アセトキシ]-1-(3-フェノキシプロピル)-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩とを含む。また、本組成物はさらに、コルチコステロイドおよび/またはPDE4阻害剤を含んでいてよい。
【0144】
本発明の他の特に好ましい態様において、本組成物は、結晶性β型多型および/または水和物多型と治療有効量のフロ酸モメタゾンとを含む。また、本組成物はさらに、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤を含んでいてよい。
【0145】
本発明のさらに他の態様において、本組成物は結晶性のβ型多型および/または水和物多型、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤を含む。
【0146】
本発明の結晶多型の塩および本発明の組合せ剤は、気管支拡張剤の使用が有益な効果を示すことが期待される呼吸器疾患、例えば喘息、急性または慢性の気管支炎、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置に用い得る。
【0147】
本組合せ剤における有効な結晶性多型の塩、すなわち、本発明のβ2作動薬とPDE4阻害剤、コルチコステロイドまたは糖質コルチコイドおよび/または抗コリン剤は、同一の医薬組成物中でともに投与されても、同一または異なる経路による、別々の、同時の、併用または連続的な投与を意図した異なる組成物で投与してもよい。
【0148】
全ての有効剤を同時または非常に近いタイミングで投与することが期待される。あるいは、一つか二つの有効剤を午前中に、残りを同じ日に後で摂取してもよい。また、他の場合においては、一つまたは二つの有効剤を一日に二回、その他を一日に一回摂取してよく、これは一日に二回のうちの一回と同時であっても別々であってもよい。好ましくは、少なくとも二つ、より好ましくは全ての有効物質は同時に投与される。好ましくは、少なくとも二つ、より好ましくは全ての有効物質は、混合物として投与される。
【0149】
本発明の有効物質は、好ましくは、吸入器、特に乾燥粉末吸入器を用いて吸入用の組成物の形態で投与されるが; 局所、非経口または経口適用の他の任意の形態が可能である。ここで、吸入組成物の適用が、とくに閉塞性肺疾患の治療または喘息の処置のための好ましい適用態様である。
【0150】
本発明の有効な塩の製剤のために適したさらなる担体は、Remington: The ScienceおよびPractice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia, Pa., 2000に記載されている。以下の例は、本発明の代表的な医薬組成物を例示するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
製剤例1 (吸入用ゼラチンカートリッジ)
【表5】
【0152】
製剤例2 (DPIによる吸入用製剤)
【表6】
【0153】
製剤例3 (DPIによる吸入用製剤)
【表7】
【0154】
製剤例4 (DPIによる吸入用製剤)
【表8】
【0155】
製剤例5 (DPIによる吸入用製剤)
【表9】
【0156】
製剤例6 (MDI用の製剤)
【表10】
【国際調査報告】