特表2015-511206(P2015-511206A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-511206(P2015-511206A)
(43)【公表日】2015年4月16日
(54)【発明の名称】ガラス溶融炉のガス循環の制御
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20150320BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20150320BHJP
   F23L 9/00 20060101ALI20150320BHJP
【FI】
   C03B5/235
   F27D7/02 A
   F23L9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-548953(P2014-548953)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月5日
(86)【国際出願番号】US2012071254
(87)【国際公開番号】WO2013096774
(87)【国際公開日】20130627
(31)【優先権主張番号】13/719,380
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/578,425
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】392032409
【氏名又は名称】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚
(72)【発明者】
【氏名】コバヤシ、ウィリアム、トオル
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、チュンルー
【テーマコード(参考)】
3K023
4G014
4K063
【Fターム(参考)】
3K023KA03
3K023KA07
3K023KB04
3K023KB12
3K023KD01
4G014AF00
4K063AA04
4K063AA13
4K063BA06
4K063CA03
4K063CA05
4K063DA06
4K063DA08
4K063DA17
4K063DA28
(57)【要約】
精製ゾーンの領域において、一つの又は対向するガス状流を、ガラス溶融炉中の溶融したガラス製造材料の上方のガス体内に噴射することによって、ガラス溶融物の品質が改善され、そしてクラウン腐食のリスクが低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶融炉を運転する方法であって、炉は、対向側壁、後壁、屋根、及び前壁によって画成されるガラス溶融チャンバを含み、方法は、
(A)該ガラス溶融炉の該側壁中の対向する蓄熱器ポートの二つ以上の対からの燃料及び予熱された酸化剤の燃焼によって溶液の上方の溶融ゾーンに供給される熱によって、溶融したガラス製造材料の溶液を確立するために、該ガラス溶融チャンバの溶融ゾーン中でガラス製造材料を溶融し、ここで、該燃焼によって、該溶融ゾーン中の上記溶液の上方で、燃焼生成物を含むガス体が形成され、
(B)溶融ゾーンからガラス溶融チャンバの精製ゾーン内におよびそれを介してして、そして次いで、該ガラス溶融チャンバの中から外へ該前壁中のポートを介して、該溶融したガラス製造材料の上方の該精製ゾーン中の燃料及び酸化剤を燃焼することなく、溶融したガラス製造材料を通過させ、及び
(C)上記溶融ゾーンから該精製ゾーン内への該燃焼生成物の流れを低減するために十分な運動量を有して、上記精製ゾーンの少なくとも一つの側壁中の少なくとも一つの位置から、上記精製ゾーンの他の側壁に向かう方向に、又は上記前壁中の少なくとも一つの場所から該後壁に向かう方向に、少なくとも一つのガス状流又は霧状の流体流を、溶融したガラス製造材料の上方の上記精製ゾーン内に噴射する、
工程を含む、上記方法。
【請求項2】
更に(D)前記ポートを通して又は前壁中の少なくとも一つの別のガス噴射口を通して前記精製ゾーン内へと、溶融したガラス製造材料の上の前記精製ゾーンに向かってガス流を流すことを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶融したガラス製造材料が、前記精製ゾーンの中から外へコンディショニングゾーン内に流れ出し、冷却空気が該コンディショニングゾーン内に供給され上記コンディショニングゾーン中で該溶融したガラス製造材料を冷却し、該冷却空気の一部が上記コンディショニングゾーンから前記精製ゾーン内に流れ、該冷却空気の一部が前記精製ゾーン内に流れる該ガス流を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記精製ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の酸素濃度が、前記溶融ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の酸素濃度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(C)に従って噴射される前記ガス状流又は前記霧状の流体流が、オキシ燃料燃焼によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(C)に従って噴射される前記ガス状流が空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(C)に従って噴射される前記ガス状流が、21容量パーセントより高い酸素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記精製ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の平均酸素濃度が、2と60容量パーセントの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精製ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の平均酸素濃度が、1〜60容量パーセントだけ増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ガラス溶融炉から生産されるガラス中の、第二鉄に対する第一鉄の比として表される酸化還元比が0.01〜0.20だけ低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
各蓄熱器ポートを出ていく排煙中の酸素濃度を、1〜6容量パーセントの間にするように、各蓄熱器ポートの燃料及び燃焼空気の流量が調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
燃焼のために予熱された酸化剤が、ガラス溶融チャンバの側部中の2〜10対の蓄熱器ポートから前記溶液の上方の溶融ゾーンに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(D)に従って、前記精製ゾーン内に流れる前記ガス流が空気である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
工程(D)に従って、前記精製ゾーン内に流れる前記ガス流が、21容量パーセント〜100容量パーセントの酸素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
工程(D)に従って、前記精製ゾーン内に流れる前記ガス流が、50容量パーセント〜100容量パーセントまでの酸素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記ガラス溶融炉が酸化された平板ガラスを製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(C)に従って前記側壁から噴射される前記ガス状流又は霧状の流体流が、前記精製ゾーンに最近接して位置する蓄熱器ポートから噴射される燃料及び酸化剤の合計運動量の少なくとも25パーセントよりも大きい運動量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(C)に従って前記側壁から噴射される前記ガス状流又は霧状の流体流が、前記精製ゾーンに最近接して位置する蓄熱器ポートから噴射される燃料及び酸化剤の合計運動量よりも大きい運動量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(C)に従って前記前壁から噴射される上記ガス状流又は霧状の流体流が、前記精製ゾーンに最近接して位置する蓄熱器ポートから噴射される燃料及び酸化剤の合計運動量よりも小さい運動量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
溶融したガラス製造材料の上の精製ゾーン内への少なくとも一つのガス状流の前記噴射によって、前記ガラス溶融ゾーンから該精製ゾーン内への前記燃焼生成物の流れが少なくとも10パーセントだけ低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
溶融したガラス製造材料の上の精製ゾーン内への少なくとも一つのガス状流の前記噴射によって、前記ガラス溶融ゾーンから該精製ゾーン内への前記燃焼生成物の流れが少なくとも20パーセントだけ低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
溶融したガラス製造材料の上の精製ゾーン内への少なくとも一つのガス状流の前記噴射によって、前記ガラス溶融ゾーンから該精製ゾーン内への前記燃焼生成物の流れが少なくとも50パーセントだけ低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ガラス溶融炉を運転する方法であって、炉は、対向側壁、後壁、屋根、及び前壁によって画成されるガラス溶融チャンバを含み、
該方法は、
(A)該ガラス溶融炉の該側壁中の対向する蓄熱器ポートの二つ以上の対からの燃料及び予熱された酸化剤の燃焼によって溶液の上方の溶融ゾーンに供給される熱によって、溶融したガラス製造材料の溶液を確立するために、該ガラス溶融チャンバの溶融ゾーン中でガラス製造材料を溶融し、ここで、該燃焼によって、該溶融ゾーン中の上記溶液の上方で、燃焼生成物を含むガス体が形成され、
(B)溶融ゾーンからガラス溶融チャンバの精製ゾーン内におよびそれを介して、そして次いで、該ガラス溶融チャンバの中から外へ該前壁中のポートを介して、該溶融したガラス製造材料の上方の該精製ゾーン中の燃料及び酸化剤を燃焼することなく、溶融したガラス製造材料を通過させ、
(C)21容量パーセント〜100容量パーセントの酸素を含む少なくとも一つのガス状流又は霧状の流体流を溶融したガラス製造材料の上の精製ゾーン内に噴射して、該精製ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の平均酸素濃度を1〜60容量パーセントだけ上昇させ、及び
(D)前記蓄熱器ポートの各々を出ていく排煙中の酸素濃度を、1〜6容量パーセントの間にするように、該蓄熱器ポートの各々の燃料及び燃焼空気の流量を調節する、
工程を含む、上記方法。
【請求項24】
前記精製ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の平均酸素濃度が5〜60容量パーセントに上昇する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも一つのガス状流又は霧状の流体流が予熱される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造成分が溶融されて固体ガラスが生産できる溶融ガラス製造材料の溶液(bath)を生み出すガラス溶融炉の運転に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの製造において、ガラス製造材料は、酸素を用いて燃料を燃焼するバーナーから供給される熱によってガラス溶融炉中で溶融される。燃料は、酸素源としての空気を用いて、又は空気のそれよりも高い酸素含有量を含有しているストリーム(stream)を用いて燃焼できる。炉は、炉内を支配する非常に高い温度に耐えることができる材料で製造されなければならない。典型的にはAZS及びシリカ耐火物及び関連材料を含む、しばしば用いられる建設材料は周知である。
【0003】
しかしながら、ガラス溶融炉内の条件は、炉の、特に、ガラス製造材料の上方の屋根(「クラウン(crown)」)の内表面の腐食を引き起こすことが知られている。クラウンとして最も広く使用される材料は、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス炉用のシリカレンガである。ガラス溶融炉中のガラスバッチ材料及び溶融ガラスから発生されるアルカリ蒸気(殆どがNaOH及びKOH)はシリカ耐火性レンガと反応し、そして時間が経てば、クラウンの内表面上にガラス状ケイ酸塩物質を形成する。十分な濃度のアルカリ酸化物(主としてNaO及びKO)がガラス状ケイ酸塩層中に蓄積すると、ガラス状材料は、炉中の溶融したガラス内に直接したたり又はシリカ耐火性表面に沿って、及び炉中の他の耐火性表面の上方に流れる(run)のに十分な流体になることができる、そして溶融したガラス内に落ちる耐火性粒子のいくらかを溶解し又は取り除く(dislodge)ことができる。この腐食は、それがクラウン中の材料の損失に繋がり、それが、最終的にクラウンの費用がかさむ修理又は交換に繋がる故に、そして腐食生成物は、炉中の溶融したガラス材料のプール内に落ちてガラス製品の欠陥を引き起こすことが知られているので望ましくない。
【0004】
本発明は、耐火性材料の腐食を低減すべく、そしてガラスの品質を改善すべく、特に、ガラスの酸化状態を増大させるべく、つまり、第二鉄に対する第一鉄のモル比である酸化還元比を低減すべく、透明な平板ガラス及びガラス食器などの使用のための高い光透過性によって特徴付けられるガラスを生産すべく、炉のガス体(atmosphere)を制御するための方法論を供する。好ましくは、酸化還元比は0.01から0.20だけ低減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの態様は、ガラス溶融炉を運転する(operate)方法であって、炉は、対向側壁、後壁、屋根、及び前壁によって画成されるガラス溶融チャンバを含み、方法は、
(A)該ガラス溶融炉の該側壁中の対向する蓄熱器ポートの二つ以上の対からの燃料及び予熱された酸化剤の燃焼によって溶液の上方の溶融ゾーンに供給される熱によって、溶融したガラス製造材料の溶液を確立(establish)するために、該ガラス溶融チャンバの溶融ゾーン中でガラス製造材料を溶融すること、ここで、該燃焼によって、該溶融ゾーン中の上記溶液の上方で、燃焼生成物を含むガス体(atmosphere)が形成される、
(B)溶融ゾーンからガラス溶融チャンバの精製ゾーン内にそしてそれを通して、そして次いで、該ガラス溶融チャンバの中から外へ該前壁中のポートを通して、該溶融したガラス製造材料の上方の該精製ゾーン中の燃料及び酸化剤を燃焼することなく、溶融したガラス製造材料を通過させること、及び
(C)上記溶融ゾーンから該精製ゾーン内への該燃焼生成物の流れを低減するために十分な運動量を有して、上記精製ゾーンの少なくとも一つの側壁中の少なくとも一つの位置から、上記精製ゾーンの他の側壁に向かう方向に、又は上記前壁中の少なくとも一つの場所から該後壁に向かう方向に、少なくとも一つのガス状流(gaseous flow)又は霧状の流体流を、溶融したガラス製造材料の上方の上記精製ゾーン内に噴射すること、
を含んでなる、上記方法。
【0006】
本発明の別の態様は、ガラス溶融炉を運転する方法であって、炉は、対向側壁、後壁、屋根、及び前壁によって画成されるガラス溶融チャンバを含み、
該方法は、
(A)該ガラス溶融炉の該側壁中の対向する蓄熱器ポートの二つ以上の対からの燃料及び予熱された酸化剤の燃焼によって溶液の上方の溶融ゾーンに供給される熱によって、溶融したガラス製造材料の溶液を確立するために、該ガラス溶融チャンバの溶融ゾーン中でガラス製造材料を溶融すること、ここで、該燃焼によって、該溶融ゾーン中の上記溶液の上方で、燃焼生成物を含むガス体が形成される、
(B)溶融ゾーンからガラス溶融チャンバの精製ゾーン内にそしてそれを通して、そして次いで、該ガラス溶融チャンバの中から外へ該前壁中のポートを通して、該溶融したガラス製造材料の上方の該精製ゾーン中の燃料及び酸化剤を燃焼することなく、溶融したガラス製造材料を通過させること、
(C)21容量パーセント〜100容量パーセントの酸素を含む少なくとも一つのガス状流又は霧状の流体流を溶融したガラス製造材料の上の精製ゾーン内に噴射して、該精製ゾーン中の前記溶液表面近くのガス体中の平均酸素濃度を1〜60容量パーセントだけ上昇させること、及び
(D)前記蓄熱器ポートの各々を出ていく排煙(flue gas)中の酸素濃度を、1〜6容量パーセントの間にするように、該蓄熱器ポートの各々の燃料及び燃焼空気の流量を調節すること、
を含んでなる、上記方法。
【0007】
本明細書において使用されるように、「ガラス製造材料」は、以下の材料の如何なるもの、及びそれらの混合物を含む:砂(殆どがSiO)、ソーダ灰(殆どがNaCO)、石灰岩(殆どがCaCO及びMgCO)、長石、ホウ砂(水和ホウ酸ナトリウム)、ナトリウム及びカリウムの他の酸化物、水酸化物、及び/又はケイ酸塩並びに上記の如何なるものをも溶融及び固化することによって以前に生産されたガラス(例えば、ガラスのリサイクルされた固体片など)。ガラス製造材料は、芒硝(硫酸ナトリウム、NaSO)及び/又は硝石(硝酸ナトリウム、NaNO、及び/又は硝酸カリウム、KNO)などのバッチ酸化剤などの機能性添加物、及び酸化アンチモン(Sb)などの清澄剤(fining agents)も含み得る。
【0008】
本明細書において使用されるように、「アルカリ種」は、それに制限するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの1200℃より高温での分解によって形成される生成物を含む、ナトリウム、カリウム及び/又はリチウム原子を含有する化学化合物、並びにそれらの混合物を意味する。
【0009】
本明細書において使用されるように、「酸素バーナー(oxy-fuel burner)」は、それを通して燃料、及び空気の酸素含有量より大きい酸素含有量を有する、そして好ましくは、少なくとも50容量パーセントの、そしてより好ましくは、90容量パーセントより大きい酸素含有量を有する酸化剤を供給されるバーナーを意味する。
【0010】
本明細書において使用されるように、「オキシ燃料燃焼(oxy-fuel combustion)」は、空気の酸素含有量より大きい酸素含有量を有する、そして好ましくは、少なくとも50容量パーセントの、そしてより好ましくは、90容量パーセントより大きい酸素含有量を有する酸化剤を用いる燃料の燃焼を意味する。
【0011】
本明細書において使用されるように、「該溶液表面近くのガス体」は、溶液表面から溶液表面の上の一つの足場(foot)に広がるガス状の層を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施することができるガラス溶融炉の平面図である。
図2】本発明無しで運転されるときの、図1の炉中のガス流の図的表示である。
図3】本発明の一つの実施態様を用いて運転されるときの、図1の炉中のガス流の図的表示である。
図4図2によって表されるように、本発明無しで運転されるときの、図1の炉中のガラス溶融表面近くの炉のガス体の(湿容量パーセント単位での(in vol.% wet))酸素濃度プロファイルの図的表示である。
図5図3によって表される、本発明の実施態様を用いて運転されるときの、図1の炉中のガラス溶融表面近くの炉のガス体の(湿容量パーセント単位での(in vol.% wet))酸素濃度プロファイルの図的表示である。
図6】本発明の別の実施態様に従う、図1の炉内へのガスの噴射の代替配置を描いているガラス溶融炉の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初にガラス溶融炉自身に戻ると、図1は、それを用いて本発明が実施できる、蓄熱器を備えた典型的な十字砲火フロートガラス炉100の平面図を示す。本発明はフロートガラス炉に制限されず、例えば、食器ガラス、板ガラス、ディスプレイ用ガラス及び容器ガラスを製造する他のタイプのガラス溶融炉において実施することができる。炉100は、溶融ゾーン11及び精製ゾーン12を含む。溶融ゾーン11及び精製ゾーン12は、後壁21、前壁23、及び側壁22内に取り囲まれる。クラウン又は屋根(描かれていない)は、側壁22、後壁21、及び前壁23につながる。炉100は、後壁21、側壁22、及び前壁23、並びにクラウン又は屋根と一緒に、溶融したガラス製造材料を保持する囲みを形成する底部も有する。
【0014】
コンディショニングゾーン13は、側壁24、前壁25、後壁26、並びに側壁24、前壁25、及び後壁26につながるクラウン又は屋根(描かれていない)、並びに底部及び屋根又はクラウンによって囲まれる。(存在する場合)コンディショニングゾーン13が精製ゾーン12に対して位置して、この分野において既によく知られている方法で、溶融した材料の更なる調整のために、精製ゾーン12から流れている溶融したガラス製造材料を受け取る。ウエストゾーン14は精製ゾーン12及びコンディショニングゾーン13を連結している狭い通路である。
【0015】
底部の特別な形状は、一般的慣習において、底部の少なくとも一部分が平面であり、そして水平又は炉を通した溶融したガラスの流れの方向に傾斜しているかのどちらかであることが好ましいけれども、重要ではない。底部の全て又は一部分は、代わりに、曲げることができる。その壁によって画成されるような炉の特別な形状も、壁が、溶融したガラスの望ましい量を保持し、そして溶融したガラスの上に(クラウンの下に)、その中でガラス製造材料を溶融しそしてそれらを溶融状態に保つことができる燃焼が起こるスペースを供するために十分高い限り、重要ではない。
【0016】
炉100はまた、典型的には後壁21の内面に沿って、又は他のタイプのガラス溶融炉に対しては後壁21近くの側壁22中に、それを通してガラス製造材料が溶融ゾーン11内に供給できる、少なくとも一つの(示されていない)材料投入口を有する。それを通して、(溶融ゾーン11内での)燃料と酸素の燃焼の生成物が、炉の内部から流れ出すことができる、一つ以上の煙道があってもよい。一つ又は複数の煙道は、典型的には、後壁21中、又は一つ以上の側壁中に位置する。
【0017】
炉の底、側面及びクラウンは、それが曝されるであろう温度、つまり、典型的には、1300℃〜1700℃でそのしっかりした構造的完全性(solid structural integrity)を保持できる耐火性材料で作られるべきである。そのような材料は高温装置の建設の分野で広く知られている。その例として、シリカ、溶融アルミナ及びAZSが挙げられる。
【0018】
クラウンの内面、つまり、炉のガス体と接触している表面は、クラウンの建設の元の材料で構成され得て、そしていくつかの場所において代わりに、クラウンの腐食されていない表面のものの上に形成されたスラグの層を含み得る。そのようなスラグ層は、典型的には、ガラス製造材料及び溶融したガラスからの揮発性蒸気及び粉末(dust)の反応のせいで形成され、そして既に使用中の炉中でしばしば見出され得る。典型的には、スラグ層は、シリカ、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、及び酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムのシリカ及び/又はアルカリ酸化物との化合物を含有するような、それらの化合物を含有する。このように、本発明は、その中でクラウンの内面が、表面の水酸化アルカリとの反応によって形成された腐食生成物を含む炉中で、及びその中でクラウンの内面が、表面の水酸化アルカリとの反応によって形成された腐食生成物を含まない炉中で行うことができる。
【0019】
溶融ゾーン11は側壁22中に、対向する蓄熱器ポートの二つ以上の対を含む。「対向する(opposed)」とは、蓄熱器ポートの所与の対において、各側壁22中に、互いに面していて、そして両方が溶融ゾーン11の内部に面している一つのポートがあることを意味する。対向するポートは、好ましくは、本質的に同軸である、つまり、それらは直接、互いに真向かいに面し;各ポートの軸が他の軸と同軸でない、オフセットしているポートが使用できるが、好ましくない。燃焼は、これらのポートが溶融ゾーン11内に開口している場所で又はその近くで噴射された天然ガス又は燃料オイルが、蓄熱器41及び42からの熱い燃焼空気と混合する時に、溶融ゾーン11中で生じ、溶融ゾーン中で炎を形成しそして熱を発生してガラス製造材料を溶融し、そしてガラス製造材料を溶融状態に維持する。蓄熱器ポートは、以下に更に記述される通り、蓄熱器41及び42と連通している。図1は、ポートの各対が互いに面している、そして溶融ゾーンの一つの側上のポートが1L〜6Lの番号が付けられ、そして溶融ゾーンの他の側上のポートが1R〜6Rの番号が付けられる、6対のポートを示す。炉の望ましいガラス溶融能力に依存して、2〜10又は20以上までもの幾つものポート数を用いることができる。各ポートの出口又はその近くに、一つ以上の燃料噴射器(示されていない)が置かれ、炎(示されていない)を形成するべく燃料を噴射し、そして溶融ゾーン11中で熱を発生する。溶融ゾーン11は、後壁21と、前壁23に最も近い蓄熱器(regenerator)ポートの最後の対か、又は燃料噴射器がポート自身よりも前壁23のより近くに位置する場合、前壁23に最も近い蓄熱器ポートの最後の対のための燃料噴射器の何れかの間のゾーンとして画成される。
【0020】
場合によっては、蓄熱器(regenerator)41及び42に結合されない一つ以上の排煙ポート(描かれていない)が、溶融ゾーン11中又は精製ゾーン12中の一つ以上の壁中に置かれ得て、追加の熱回収及び他の目的のために、排煙の一部分を排気する。
【0021】
後壁21とポート1L及び1Rの間の矢印30及び31は、ガラス炉中の生産及び/又はガラス品質を向上させるためにしばしば使用される、オプションの酸素バーナーを表す。
【0022】
精製ゾーン12は、それが溶融したガラス製造材料の上方の追加の燃料及び酸化剤を燃焼するための装置を有しないということを特徴とする。代わりに、精製ゾーン12中の溶融したガラス製造材料は、炉内で複雑な再循環流パターンを経験し、そして徐々に溶融ゾーン11から精製ゾーン12を通って、そして前壁23中のポート28に向かってそしてそれを通って、好ましくは、コンディショニングゾーン13内の方向への正味の流れを有する。溶融したガラスは溶融ゾーン11及び精製ゾーン12中に存在する間、溶解したガスは溶液表面まで上昇して溶液を離れることができ、そして揮発性が少ない材料は、溶液内でより均一に分配されるようになることができる。
【0023】
運転中、ガラス製造材料は溶融ゾーン11内に供給される。溶融ゾーン11における燃焼によって、溶融ゾーンにおいてガラス製造材料を溶融し、そして得られた溶融したガラス製造材料の溶液を溶融状態に維持する熱が供給される。この燃焼は、典型的には空気として、又は場合により50容量パーセントから99容量パーセントまでの酸素を含む酸素富化(oxygen-enriched)空気又はストリームとして供給される酸素と共に、燃料、好ましくは、天然ガス又はオイルを燃焼させることによって行われる。供給されそして燃焼される燃料及び酸素の量は、溶融ゾーン11に供給されるガラス製造材料を溶融するのに十分な熱を供するのに十分でなければならない。
【0024】
燃焼が蓄熱器を用いて溶融ゾーン11中で実施されるとき、燃料(図1において示されていない)が典型的には、炉へのポート出口で又は近くで各ポートの下から又は側部から対向するポートに向かって炉に噴射される。燃焼空気は、(蓄熱器41のような)溶融ゾーン11の同じ側にある蓄熱器中で予熱され、そして溶融ゾーン11内に流れ、噴射された燃料と混合し、そして炎を形成し、一方、非常に熱い燃焼のガス状生成物は、溶融ゾーン11の他の側壁22中のポートを通ってそして他の蓄熱器(この説明においては、蓄熱器42)を通って溶融ゾーン11から取り出される。ストリーム43によって表されるガス状酸化剤(つまり、空気、酸素富化空気、又はより高い純度の酸素)は蓄熱器を通過し、そして酸化剤が溶融ゾーン11において燃料を用いて燃焼される前に、前のサイクルにおいて、その蓄熱器を通して取り出された燃焼の熱いガス状生成物から前に吸収された熱の伝達によって加熱される。蓄熱器41と連通しているポートで又はそれを通して供給される燃料及び酸化剤を用いて溶融ゾーン11中で燃焼が起こっている間、蓄熱器42と連通しているポートを通して取り出された熱いガス状生成物は他の蓄熱器42を加熱する。蓄熱器は典型的には、耐火性レンガ、又は存在する高温での熱を吸収できる他の材料で作られる(場合により、蓄熱器は、熱い燃焼ガスからの熱を吸収するために、耐火性材料のボール又はブロックのような追加の物体も含み得る)。
【0025】
典型的には10〜30分毎である期間の後、他の蓄熱器(例えば、蓄熱器42)からの燃焼用のガス状酸化剤(例えば、空気)が溶融ゾーン11内に流れるように、そして蓄熱器42と同じ側から噴射される燃料を用いて燃焼が起こるように、そして得られた熱いガス状燃焼生成物が蓄熱器41に連結されるポートを通して取り出されるように、運転が逆転される。溶融ゾーン11中の燃焼におけるこの時点で関与する酸化剤は、蓄熱器42を通過し、そして前のサイクルにおける熱保存蓄熱器42からの熱伝達によって加熱される。別の期間の後、燃焼空気流及び燃料噴射の方向は再び逆転される。図41及び42によって表される蓄熱器は、溶融ゾーン41の各側上の一つの共通チャンバであり得るか、又は各々連通しているが、炉の溶融ゾーン11に連結されている一つのポートを備えた、いくつかの別々の明確なチャンバであり得る。
【0026】
ガラス溶融炉のいくつかのタイプにおいて、ガス(典型的には、空気)のストリーム50は、溶融ゾーン11に向かう方向に、前壁23中のポート28を通って精製ゾーン12内に流れる。このストリーム50は、典型的には、コンディショニングゾーン13中の溶融したガラスの溶液を冷却する空気の一部である。本発明を用いない従来の慣例(practice)では、ストリーム50は精製ゾーン12を通って溶融ゾーン11内に流れる。好ましいとは言え、コンディショニングゾーン13は本発明において必須ではない。コンディショニングゾーン13が用いられるとき、冷却ガスのストリーム52は、コンディショニングゾーン13内に、例えば、四つの矢印によって示されるように壁24中の4つの開口部を通って、供給又は噴射され、そして次に、冷却ガス52の一部分はコンディショニングゾーン13を通って、精製ゾーン12内に、ウエスト(waist)ゾーン14中のポート28を通って、ガス流50として流れる。冷却ガス52の残りは、コンディショニングゾーン13中又はウエストゾーン14中に位置する、排気ポート(示されていない)を通って排気される。
【0027】
ガラス溶融炉の他のタイプにおいては、溶融したガラスのみがポート28を通って流れるように、ポート28が溶融したガラスの下方に沈められるので、ポート28を通って精製ゾーン12内に流れるガスは全くない。炉のこれらのタイプにおいて、いくらかの空気が他の開口部を通って精製ゾーンに入り得る。
【0028】
精製ゾーン12中の矢印32及び33は、少なくとも一つのガス流が本発明に従って噴射される場所を示す。これらの場所は精製ゾーン12中にある。好ましい場所は、前壁23と、前壁23に最も近い蓄熱器ポートの間(又は、そのような燃料噴射ポートが、関連した蓄熱器ポートよりも前壁23により近い場合)前壁23と、前壁23に最も近接している燃料噴射ポートの間)の一方又は両方の側壁中にある。より好ましい位置は、その蓄熱器ポート又は燃料噴射ポートの近くである。噴射器32及び33の対向する対の両方の噴射器からの連続ガス噴射がこの発明の好ましい実施態様を構成する一方、本発明は、一時に一つの噴射器、好ましくは、どんな時でも燃えている(firing)蓄熱器がその中に位置する側壁の反対側の側壁上にある噴射器のみからの周期的な噴射を用いても実施できる。つまり、蓄熱器42が燃焼サイクル(firing cycle)にあるとき、ガスは噴射器32から噴射され、引き続き、蓄熱器41が燃焼サイクルにあるとき、周期的に噴射器33から噴射されるであろう。各噴射器32又は33は、そこに精製ゾーン12中で燃焼する(天然ガスなどの)燃料及び酸素が供給されて、炉内で炎を形成する酸素バーナーであってよい。各噴射器は単一噴射器を含み得て、又はそこから異なるガス又は霧状のオイルが噴射できる、側壁22上に置かれた複数の噴射ノズル又はポートを含み得る。好ましい噴射器は(米国特許第5,924,848号において描かれたそして記載された通り)、一方が他方の上方に垂直に取り付けられた二つの噴射ポートを有する。あるいは、各噴射器32及び33は(燃焼されていない)酸素のみ、空気のみ、酸素富化空気、又は如何なる適切な組成のガス混合物も噴射できる。ガスが、噴射器32及び33などの一つより多くの噴射器から噴射されるとき、どの噴射器からも噴射されるガスは、如何なる他の噴射器からも噴射されるガスと異なる又は同じ組成を有することができる。場合により、パージガス(purge gas)55〜58の一つ以上のストリームは、前壁23及び/又は側壁22中に置かれた開口部を通って精製ゾーン12内に流れる。酸化されたガラスが生産されるとき、好ましくは、酸素、酸素富化空気、又は空気であるこのパージガス流によって、精製ゾーン12中のガス体の酸素濃度が上昇する。
【0029】
図1において描かれたような十字砲火再生(cross-fired regenerative)ガラス溶融炉において、溶融ゾーン11中の炉ガス循環パターンは主に、溶融ゾーン11内に噴射された燃焼酸化剤(空気)及び燃料の運動量によって駆動される。本発明が実施されていないとき、溶融ゾーン中の酸化剤及び燃料の燃焼(及び、ガス状流50又は存在するとすれば精製ゾーン12内に流れる他のガス流の影響)は、蓄熱器ポートの最後の対、つまり、図1におけるポート6L及び6Rと前壁23の間の、溶融ゾーンの領域中をそして溶融ゾーン11から出て精製ゾーン12内に、そして溶融ゾーン11内に戻って循環する、大きな再循環ガス流パターンを確立する効果を有する。蓄熱器41が燃焼サイクルにあるとき、精製ゾーン12中の(図2におけるサークル61として示される)再循環流の方向は反時計回り方向であり、そして他の蓄熱器が代わりに燃焼サイクルにあるとき、そのパターンは反転され、そして再循環流の方向は時計回りになる。精製ゾーン12中に他のガスが全く噴射されないとき、この再循環ガス流パターンにおけるガスの組成は、典型的には1〜3容量パーセントのOを含有するガス状燃焼生成物(つまり、上で記載された通りの蓄熱器ポートを通して取り出されるもの)のそれに非常に近くなる。本明細書において記載された通り、冷却ガス50が精製ゾーン内に流れるとき、精製ゾーン12中のガス体の組成は、精製ゾーン12内に流れる冷却空気及び生成ゾーン内に循環している炉ガスの混合パターンによって決定される。
【0030】
図3は、側壁22上に置かれた酸素バーナーの対向している対を用いて本発明が実施されるときのガス流パターンを描く。霧状の燃料オイル及び酸素は、二つの対向しているジェット(jet)として同時に噴射される。図2において61として描かれたように、精製ゾーン12を隈なく循環しているガスの流れの代わりに、溶融ゾーン11から精製ゾーン12内に循環しているガスの流れは殆どない。溶融ゾーンから精製ゾーン内へのガスの流れは、少なくとも10パーセントだけ、好ましくは、少なくとも20パーセント又は25パーセントだけ、そしてより好ましくは、少なくとも40又は50パーセントだけ低減できる。低減量は、本発明の実施の前後で、精製ゾーン中のガス体の酸素含有量を比較することによって決定することができる。本発明の実施によって、精製ゾーンガス体の酸素含有量が、溶融ゾーンガス体が精製ゾーン内に流れることができなくなり、そして精製ゾーンガス体の(酸素含有量に対する)希釈を引き起こす程度に比例して増加する。
【0031】
本発明を用いないで運転されるとき、図1において描かれたタイプの典型的には600メートリック(metric) tpdフロートガラス炉(主炉において12.2メートル幅×38.2メートル長さ)に対するコンピュータ流体動力学解析を適用することによって、図4において示された通り、ガラス溶融表面近くの炉ガス体(湿容量パーセント単位で)の酸素濃度プロファイルが予測された。壁23中のポート28で約21パーセントのOを有する精製ゾーン12内に、1,719N立法メートル/時間のストリーム50(空気)が流れていたとき、精製ゾーン12中の局所O濃度は、側壁22及び前壁23によって形成されたコーナーにおいて4パーセントにも低減された。オプションのパージガス流55〜58はこの例では噴射されなかった。精製ゾーン12中の低い局所O濃度は、約2パーセントのOを含有する循環している炉ガスとの混合によってもたらされた。壁23中のポート28の近くの小さいエリアを除いて、精製ゾーン12の殆どにおける酸素濃度は10パーセントより低かった。精製ゾーン中の平均酸素濃度は約5パーセントであると推定された。精製ゾーン12中の炉ガス循環パターンは、ポート6及びポート5から溶融ゾーン11内に噴射される燃焼酸化剤(空気)及び燃料の運動量によって主として駆動された。ポート6中で燃えた燃焼酸化剤及び燃料の合計運動量は5.58kgm/sであった。
【0032】
図5は、図3において示された本発明の実施態様で運転されたときの、図1の炉における、ガラス溶融表面近くの炉のガス体の(湿容量パーセント単位での)酸素濃度プロファイルの図的表示である。米国特許第5,601,425号において記載されたタイプの酸素バーナーの対向する対は、ポート6の軸(それはポート6L及び6Rの軸を意味する)から精製ゾーン中の噴射器の軸に対して2.475メートルで側壁22中の噴射器32及び33として置かれた。ポート6の燃焼速度(firing rate)は低減され、それによってポート6の合計運動量が3.4kgm/sに低減された。燃料酸化剤及び燃焼オイル、並びに噴射器32及び33の各々から燃焼した霧状の空気の合計運動量は8.3kgm/sであった。酸化剤プラス霧状の空気に対する燃料オイルの燃焼理論混合比(combustion stoichiometric ratio)は、湿潤基準で2容量パーセント過剰のOを用いて燃焼生成物を生産するように設定された。(ポート6プラス噴射器32)/(噴射器33)の運動量比は、この例において1.4であった。
【0033】
ガラス溶融炉のコンピュータ流体動力学モデルによって、精製ゾーンの側壁22及び前壁23によって形成されたコーナー近くでの最も低い局所的酸素濃度が約10容量パーセントであることが見出された。壁23中のポート28の近くの小さいエリアを除いて、精製ゾーンの殆どにおける酸素濃度は10容量パーセントと16容量パーセントの間である。精製ゾーンにおける平均酸素濃度は約14パーセントであると推定され、それは本発明を用いないで運転されるとき、図1において描かれる条件に対して推定される約5パーセントの平均濃度と比較して驚くべき大きな上昇である。酸素バーナーの燃焼理論混合比は、燃焼生成物において湿潤基準で2パーセント過剰のOを生み出すように設定されたので、酸素バーナーからの燃焼生成物の簡単な混合によって、精製ゾーンにおける平均酸素濃度が低減したのであろう。如何なる特別の理論によって束縛されることなく、これらの観察は、噴射器32及び33からの二つの対向するジェット又は炎のジェット運動量が、ポート6L及び6Rからの炎のそれに対して十分に大きく、従って溶融ゾーン11から精製ゾーン12内へのガス状燃焼生成物の通常の循環パターンを低減し、そして精製ゾーン中のガス体の平均酸素濃度を増大させたという陳述と矛盾が無い。
【0034】
噴射器32及び33からの各ガス流の位置及び運動量は、溶融ゾーン11から精製ゾーン12内へのガス状燃焼生成物の循環が低減されそして、好ましくは、最小化されるように選択される。好ましくは、噴射器33の合計運動量に対するポート6の合計運動量及び噴射器32の合計運動量の和の比は、0.25と3.0の間、より好ましくは、0.5と2.0の間である。
【0035】
前記ガス状燃焼生成物は、著しい濃度のアルカリ蒸気(殆どがNaOH及びKOH)を含有する故に、溶融ゾーン11から精製ゾーン12内へのこれらの生成物の循環の低減によって、精製ゾーンの条件がアルカリ蒸気の揮発を最小化するように設定される限り、精製ゾーン12中のアルカリ蒸気の濃度が低減される。このように、発明は、クラウンの構造体のシリカベースの材料のアルカリ腐食によって引き起こされるガラス欠陥の低減に役立つ。それはまた精製ゾーン中のより高い平均酸素濃度によってガラスの酸化状態を改善し、そして精製ゾーン中の低いO濃度によって引き起こされるガラスの色欠陥を低減する。ガラスがより酸化されるようになり、そして酸化還元比が本発明で低減される故に、発明は、例えば、ソーラーパネル用途用及びガラス食器用に有用な平板ガラス用などの高度に酸化されたガラスの生産に対して有利である。
【0036】
本発明は溶融ゾーン11から精製ゾーン12内への炉ガスの混合を低減し又は最小化し、そして(存在するとき、つまりコンディショニングゾーン13からの)ガス流50(例えば、空気)及び精製ゾーン12内へのオプションのパージガス流55〜58のパージング効果を増大させる。
【0037】
酸素バーナーの対向する対などの二つの連続して流れる噴射器32及び33を使用する代わりに、噴射器32及び33からの流れは、そこから炎がポート6から出ている側の反対側の炉の側にある単一ジェットからの流れで、一度にそれらの一つのみからガスが流れるように変えられることができる。単一ジェットの運動量は、ポート6からの炎の運動量の好ましくは、25〜300パーセント以内、より好ましくは、50〜200パーセント以内である。単一ジェットの角度は、好ましくは、ポート6の燃えている側に向かって、又は前壁23に平行に設定される。
【0038】
発明の好ましい実施態様は、噴射器32及び33が一緒に又は交互に噴射していようがなかろうが、空気、又は21〜100容量パーセントのOを含有している酸化剤を噴射することである。より好ましくは、酸化剤の酸素濃度は33〜100容量パーセントであり、そして最も好ましくは、酸化剤の酸素濃度は85〜100容量パーセントである。噴射器32及び33から噴射されるガス組成、及び/又は噴射器32及び33から噴射される炎の理論混合比(stoichiometric ratios)は、精製ゾーン12における温度及び酸素濃度プロファイルに影響を与えるように、互いに異なっていることができる。燃焼反応によって酸素を消費する燃料を噴射することなく、精製ゾーンにおける平均酸素濃度より高い濃度でOを含有する酸化剤を噴射することにより、精製ゾーンにおける酸素濃度は本発明によって著しく増大される。例えば、平板ガラスを作るガラス炉の精製ゾーンにおける典型的な平均酸素濃度は、湿潤基準で、1〜6容量パーセントのOの範囲にある。発明の好ましい実施態様は、噴射器32及び33が一緒に又は交互に噴射していようがなかろうが、湿潤基準で、2〜60容量パーセントのOを含有するガス体を生み出すべく、精製ゾーンにおける平均酸素濃度を1〜60容量パーセントのOだけ増すために酸化剤を噴射することである。より好ましくは、湿潤基準で、2〜40容量パーセントのOを含有するガス体を生み出すべく、精製ゾーンにおける平均酸素濃度を1〜40容量パーセントのOだけ増すために、空気又は、場合によっては予熱された、21〜100容量パーセントのOを含有する酸化剤が噴射される。最も好ましくは、湿量基準で、3〜20容量パーセントのOを含有するガス体を生み出すべく、精製ゾーンにおける平均酸素濃度を2〜20容量パーセントのOだけ増すために、空気又は、場合によっては予熱された、21〜100容量パーセントのOを含有する酸化剤が噴射される。溶液表面近くのような如何なる所与の領域における平均酸素濃度は、二つ以上の位置で酸素濃度値を測定し、そして測定された値を平均することによって決定される。
【0039】
精製ゾーン12におけるガス体の状態は、溶融ゾーン11から精製ゾーン12への炉ガス循環を増大させない方法で、精製ゾーン12内へ追加のパージガスを場合により噴射することによって更に向上できる。例えば、追加の酸素が、前壁23中に又は前壁23の近くの側壁22中に位置する一つ以上の噴射器55〜58から噴射できる。好ましい実施態様は、噴射器55及び56が一緒に又は交互に噴射してようとなかろうと、溶融ゾーン11からの炉ガス循環を低減するように、適切な運動量で、前壁23からの噴射器55及び56からパージガスを噴射することである。好ましくは、各噴射器55及び56から噴出されるパージガスの合計運動量は、ポート6から噴出される燃料及び空気のそれよりも小さい。パージガスは、好ましくは、空気、又は21〜100容量パーセントのOを含有する酸化剤である。より好ましくは、酸化剤の酸素濃度は33〜100容量パーセントであり、そして最も好ましくは、酸化剤の酸素濃度は85〜100容量パーセントである。噴射器55及び56から噴射されるガスの流量及び組成は、精製ゾーン12における温度及び酸素濃度プロファイルに影響を与えるように、互いに異なっていることができる。
【0040】
オプションのパージガスで又は噴射器32及び33からの酸化剤噴射で本発明を実施するとき、蓄熱器ポートから出ていく排煙中の平均過剰酸素が増大するであろう。予熱無しでの酸化剤、特に空気の噴射によって、炉の加熱負荷が増大する。炉のエネルギー効率を維持する又は改善するために、そしてNOの排出量を最小化するために、各蓄熱器ポートの燃料及び燃焼空気の流量は、好ましくは、各蓄熱器ポートを出ていく排煙中の酸素濃度を最適値に、典型的には約1〜6容量パーセントに、より典型的には約1〜3容量パーセントにするように調節される。精製ゾーン内に噴射される殆どのガスが精製ゾーンに近い蓄熱器ポートから出ていく故に、2〜3の蓄熱器ポートの燃料及び燃焼空気の流量は、好ましくは、各蓄熱器ポートを出ていく排煙中の酸素濃度を最適値にするように調節される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】