(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-511635(P2015-511635A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(54)【発明の名称】オルメサルタンメドキソミルとロスバスタチンまたはその塩とを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20150324BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20150324BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20150324BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20150324BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20150324BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20150324BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20150324BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20150324BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20150324BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61P3/06
A61P9/12
A61K31/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-503112(P2015-503112)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(85)【翻訳文提出日】2014年11月25日
(86)【国際出願番号】KR2013002378
(87)【国際公開番号】WO2013147462
(87)【国際公開日】20131003
(31)【優先権主張番号】10-2012-0032903
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヒチョル
(72)【発明者】
【氏名】カン,ポッキ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュンク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA40
4C076AA53
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4C086NA03
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4C086ZC33
(57)【要約】
本発明は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画とロスバスタチンまたはその塩を含む区画とを含み、前記区画が分離した形態で製剤化されている単一剤形を有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物において、オルメサルタン メドキソミルおよびロスバスタチンまたはその塩は、分離した区画を有する複合剤形に製剤化されるため、薬物相互作用から起こる吸収阻害の問題を解決することができる。さらに、特定の崩壊剤を使用することによって、それぞれの薬物の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を得ることが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルメサルタン メドキソミルを含む区画とロスバスタチンまたはその塩を含む区画とを含み、前記区画が分離した形態で製剤化されている単一剤形を有する医薬組成物。
【請求項2】
二層錠剤の形態、基本的に内核と外層とから構成される錠剤の形態、またはペレット含有カプセル剤の形態を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ロスバスタチンまたはその塩を含む層とオルメサルタン メドキソミルを含む層とから基本的に構成される二層錠剤の形態を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ロスバスタチンまたはその塩を含む内核とオルメサルタン メドキソミルを含む外層とから基本的に構成される錠剤の形態を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ロスバスタチンまたはその塩を含むペレットとオルメサルタン メドキソミルを含むペレットとを充填したカプセル剤の形態を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ロスバスタチンまたはその塩を含む区画が、ポビドン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群から選択される1種以上の崩壊剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記崩壊剤が、ロスバスタチンまたはその塩を含む区画の全重量に対して2〜20重量%の範囲の量で存在する請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、および糊化デンプンからなる群から選択される1種以上の崩壊剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画が、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5重量%以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5重量%以上のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15重量%以上のクロスカルメロースナトリウム、10重量%以上のクロスポビドン、5重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウム、または5重量%以上の糊化デンプンを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画が、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5〜65重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5〜60重量%のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15〜30重量%のクロスカルメロースナトリウム、10〜40重量%のクロスポビドン、5〜40重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、または5〜60重量%の糊化デンプンを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画が、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して7.5〜65重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画が、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して10〜60重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルメサルタン メドキソミルとロスバスタチンまたはその塩とを含む単一剤形を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧と高脂血症とを併発している臨床例は多数存在するが、これは心臓疾患を進行させる主要な危険因子とみなされており、最終的には心臓に不都合な症状をもたらす。このような臨床例は、共通のメカニズムから生じている可能性がある。したがって、この2つの疾患を治療するための単一剤形の投与を受けることは、患者にとって有利である。高血圧と高脂血症とを治療するための複合剤としては、たとえば、アトルバスタチンとアムロジピンとの複合剤であるカデュエット(登録商標)が、臨床的に使用されている。また、様々な文献により、降圧剤と抗脂質異常症剤との組み合わせが開示されている(WO95/26188、WO97/37688、WO99/11260、WO00/45818、WO04/062729、WO06/040085など)。
【0003】
一方、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤であるロスバスタチンまたはその塩(たとえばカルシウム塩)は、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、およびアテローム性動脈硬化症の治療のために使用されており、クレストール錠(登録商標)という商品名で市販されている。オルメサルタン メドキソミルは、本態性高血圧の治療のために使用され、オルメテック錠(登録商標)という商品名で市販されている。他のスタチン系の薬物とは異なり、ロスバスタチンは主としてCYP2C9およびCYP2C19によって代謝されるが、代謝されるのは10%に過ぎない。したがって、治療効果は、主としてロスバスタチン自体によるものである。オルメサルタン メドキソミルは、生体内吸収の後、急速に代謝されるが、CYP450には代謝されない。したがって、これら2つの薬物が体内に吸収された後、代謝相互作用は発生しないことが期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、有効成分としてロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとを含有する、単一剤形の複合剤を開発するために様々な製剤を設計した。驚くべきことに、本発明者らが見出したところによれば、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとが単一マトリックス製剤の形態で投与されると、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミル(脂溶性薬物の1種)との薬物−薬物相互作用および/または薬物−薬物相互干渉が生じ、その結果、胃腸液へのロスバスタチンカルシウムの生体内放出(すなわち溶出)が遅延され、胃腸管膜への移行が遅延されることによって、ロスバスタチンの吸収が阻害される。すなわち、前記2つの薬物を含有する単一マトリックス製剤を投与した場合、ロスバスタチンのAUCおよびCmaxの90%信頼区間が、生物学的同等性基準である0.8〜1.25の範囲を外れた。
【0005】
さらに、本発明者らは、オルメサルタン メドキソミルとロスバスタチンまたはその塩とを、慣用の製剤化方法に従って、分離した区画を有する複合剤形に製剤化しても、それぞれの薬物の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を得ることは困難であることを見出した。本発明者らは、ロスバスタチンまたはその塩を含む区画が、特定の崩壊剤すなわちセルロース系崩壊剤および/またはポビドン系崩壊剤の特定の量を含む場合、ロスバスタチンまたはその塩の迅速な崩解および高い初期溶出率が達成され、それによってロスバスタチンまたはその塩の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を得ることができることを見出した。特に、驚くべきことに、オルメサルタン メドキソミルの場合、オルメサルタン メドキソミルを含有する単一製剤と生物学的に同等な製剤を得るためには、試験管内比較溶出試験においてより高い溶出率(医薬品の同等性基準としての非同等レベル)を示すようにロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとを含む複合剤の設計を行う必要があることを、本発明者らは見出した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、有効成分としてオルメサルタン メドキソミルとロスバスタチンとを含有する、単一剤形を有する複合剤として、生体内吸収に関与する相互作用が最小化され、かつそれぞれの薬物の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、オルメサルタン メドキソミルを含む区画と、ロスバスタチンまたはその塩を含む区画とを含み、それぞれの区画が分離した形態で製剤化されている単一剤形を有する医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明の医薬組成物は、二層錠剤の形態、基本的に内核と外層とから構成される錠剤の形態、またはペレット含有カプセル剤の形態を有してもよい。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンまたはその塩を含む層とオルメサルタン メドキソミルとを含む層とから基本的に構成される二層錠剤の形態を有する。別の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンまたはその塩を含む内核とオルメサルタン メドキソミルとを含む外層とから基本的に構成される錠剤の形態を有する。さらにまた別の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンまたはその塩を含むペレットとオルメサルタン メドキソミルを含むペレットとを充填したカプセル剤の形態を有する。
【0009】
本発明の医薬組成物において、ロスバスタチンまたはその塩を含む区画は、ポビドン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群から選択される1種以上の崩壊剤を含んでもよい。前記崩壊剤は、ロスバスタチンまたはその塩を含む区画の全重量に対して2〜20重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0010】
本発明の医薬組成物において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、および糊化デンプンからなる群から選択される1種以上の崩壊剤を含んでもよい。一実施形態において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5重量%以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5重量%以上のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15重量%以上のクロスカルメロースナトリウム、10重量%以上のクロスポビドン、5重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウム、または5重量%以上の糊化デンプンを含む。別の一実施形態において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5〜65重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5〜60重量%のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15〜30重量%のクロスカルメロースナトリウム、10〜40重量%のクロスポビドン、5〜40重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、または5〜60重量%の糊化デンプンを含む。さらにまた別の一実施形態において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して7.5〜65重量%、好ましくは10〜60重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らが見出したところによれば、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとが単一マトリックス製剤として投与されると、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとの薬物−薬物相互作用および/または薬物−薬物相互干渉が生じ、その結果、胃腸液へのロスバスタチンカルシウムの生体内放出(すなわち溶出)が遅延され、胃腸管膜への移行が遅延されることによって、ロスバスタチンの吸収が阻害される。本発明の医薬組成物において、オルメサルタン メドキソミルおよびロスバスタチンまたはその塩は、分離した区画を有する複合剤形に製剤化され、それによって、薬物相互作用から起こる吸収阻害の問題を解決することができる。
【0012】
また、特定の崩壊剤、すなわちセルロース系崩壊剤および/またはポビドン系崩壊剤の使用により、ロスバスタチンまたはその塩の迅速な崩解および高い初期溶出率が達成され、ロスバスタチンまたはその塩を含有する単一製剤と同等の崩解パターンおよび溶解パターンを得ることができる。
【0013】
また、本発明者らは、オルメサルタン メドキソミルの場合、オルメサルタン メドキソミルを含有する単一製剤と生物学的に同等な製剤を得るためには、試験管内比較溶出試験においてより高い溶出率(医薬品の同等性基準としての非同等レベル)を示すように、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとを含む複合剤の設計を行う必要があることを見出した。すなわち、本発明の医薬組成物は、オルメサルタン メドキソミルを含有する単一製剤と試験管内溶出率において非同等であるにもかかわらず、生物学的同等性を示す。
【0014】
さらに、本発明によれば、オルメサルタン メドキソミルとロスバスタチンまたはその塩とが、分離した区画を有する剤形に製剤化されることにより、製剤中での薬物相互作用が回避され、優れた安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の二層錠剤(試験製剤)の投与および標準製剤(オルメテック錠)の同時投与による、それぞれの血中濃度プロファイルを示す。
【
図2】実施例1の二層錠剤(試験製剤)の投与および標準製剤(クレストール錠)の同時投与による、それぞれの血中濃度プロファイルを示す。
【
図3】比較例5の単一マトリックス錠剤(試験製剤)の投与および標準製剤(オルメテック錠)の同時投与による、それぞれの血中濃度プロファイルを示す。
【
図4】比較例5の単一マトリックス錠剤(試験製剤)の投与および標準製剤(クレストール錠)の同時投与による、それぞれの血中濃度プロファイルを示す。
【
図5】実施例4−1の二層錠剤(試験製剤)の投与および標準製剤(オルメテック錠)の同時投与による、それぞれの血中濃度プロファイルを示す。
【
図6】実施例4−1の二層錠剤(試験製剤)の投与および標準製剤(クレストール錠)の同時投与による、それぞれの血中濃度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、オルメサルタン メドキソミルとロスバスタチンまたはその塩とを、分離した区画を有する複合剤形に製剤化した医薬組成物を提供する。すなわち、本発明は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画とロスバスタチンまたはその塩を含む区画とを含む単一剤形を有する医薬組成物であって、前記区画が分離した形態に製剤化されている医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明者らが見出したところによれば、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとが単一マトリックス製剤として投与されると、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとの薬物−薬物相互作用および/または薬物−薬物相互干渉が生じ、その結果、胃腸液へのロスバスタチンカルシウムの生体内放出(すなわち溶出)が遅延され、胃腸管膜への移行が遅延されることによって、ロスバスタチンの吸収が阻害される。本発明の医薬組成物において、オルメサルタン メドキソミルおよびロスバスタチンまたはその塩は、分離した区画を有する複合剤形に製剤化され、それによって、薬物相互作用から起こる吸収阻害の問題を解決することができ、また、それぞれの薬物の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を得ることができる。
【0018】
本発明の医薬組成物において、有効成分、すなわちオルメサルタン メドキソミルおよびロスバスタチンまたはその塩は、治療有効量で使用してもよい。たとえば、単位製剤(すなわち単位投与形態)中、オルメサルタン メドキソミルは、約5〜80mg、好ましくは約10〜40mgの量で使用してもよい。また、単位製剤(すなわち単位投与形態)中、ロスバスタチンまたはその塩は、約2〜40mg、好ましくは約5〜20mgの量で使用してもよい。ロスバスタチンの塩は、カルシウム塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、ベシル酸塩、およびカンシル酸塩などの、薬学的に許容される慣用の塩であってもよい。ロスバスタチンカルシウムを本発明で使用することも好ましい。本発明の医薬組成物は、1日1回投与してもよいが、これに限定はされない。
【0019】
本発明の医薬組成物は、分離した区画を有する複合剤形、たとえば二層錠剤の形態、基本的に内核と外層とから構成される錠剤の形態、またはペレット含有カプセル剤の形態を有する。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンまたはその塩を含む層とオルメサルタン メドキソミルを含む層とから基本的に構成される二層錠剤の形態を有する。別の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンまたはその塩を含む内核とオルメサルタン メドキソミルを含む外層(またはシェル)とから基本的に構成される錠剤の形態を有する。さらにまた別の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンまたはその塩を含むペレットとオルメサルタン メドキソミルを含むペレットとを充填したカプセル剤の形態を有する。
【0020】
一方、オルメサルタン メドキソミルとロスバスタチンまたはその塩とを、慣用の製剤化方法に従って、分離した区画を有する複合剤形に製剤化しても、それぞれの薬物の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を得ることは困難であることが、本発明により見出された。ロスバスタチンまたはその塩を含む区画が、特定の崩壊剤、すなわちセルロース系崩壊剤および/またはポビドン系崩壊剤の特定の量を含む場合、ロスバスタチンまたはその塩の迅速な崩解および高い初期溶出率が達成され、それによって、ロスバスタチンまたはその塩の単一製剤と生物学的に同等な複合剤を得られることが、本発明により見出された。前記崩壊剤は、ポビドン(たとえばコリドン(登録商標)など)、クロスポビドン(たとえばポリプラスドン(登録商標)など)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびカルボキシメチルセルロースカルシウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記崩壊剤は、クロスポビドンとクロスカルメロースナトリウムとの混合物、またはクロスカルメロースナトリウムであってもよく、これらであることが好ましい。前記崩壊剤は、ロスバスタチンまたはその塩を含む区画の全重量に対して2〜20重量%、好ましくは3〜15重量%の範囲の量で存在してもよい。これら以外の崩壊剤を使用すると、ロスバスタチンまたはその塩の溶出率が減少したり、かつ/またはその使用量の増加に起因する圧縮工程での圧縮力不足により、得られた製剤(たとえば錠剤)の摩損度が高くなったりする恐れがある。また、他の崩壊剤を使用すると、硬度の不足により、たとえば包装、配送などにおいて望ましくない問題が生じる恐れがある。
【0021】
また、オルメサルタン メドキソミルの場合、オルメサルタン メドキソミルを含有する単一製剤と生物学的に同等な製剤を得るためには、試験管内比較溶出試験においてより高い溶出率(医薬品の同等性基準としての非同等レベル)を示すように、ロスバスタチンとオルメサルタン メドキソミルとを含む複合剤の設計を行う必要があることが、本発明によって見出された。すなわち、本発明の医薬組成物は、オルメサルタン メドキソミルを含有する単一製剤と、試験管内溶出率においては非同等であるにもかかわらず、生物学的同等性を示す。この非同等な試験管内溶出率を得るために、オルメサルタン メドキソミルを含む区画は特定の崩壊剤を含み、該崩壊剤は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、および糊化デンプンからなる群から選択される1種以上であってもよい。一実施形態において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5重量%以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5重量%以上のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15重量%以上のクロスカルメロースナトリウム、10重量%以上のクロスポビドン、5重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウム、または5重量%以上の糊化デンプンを含む。別の一実施形態において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5〜65重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5〜60重量%のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15〜30重量%のクロスカルメロースナトリウム、10〜40重量%のクロスポビドン、5〜40重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、または5〜60重量%の糊化デンプンを含む。さらにまた別の一実施形態において、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して7.5〜65重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは約20±1重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0022】
二層錠剤、基本的に内核と外層とから構成される錠剤、またはペレット含有カプセル剤などの形態にある本発明の医薬組成物は、前記崩壊剤に加えて、薬剤学の分野で慣用的に使用される1種以上の添加剤、たとえば希釈剤(または賦形剤)、結合剤、滑沢剤などをさらに含んでもよい。本発明の医薬組成物はまた、フィルムコーティング剤のような適切なコーティング剤でコーティングされてもよい。
【0023】
前記希釈剤(または賦形剤)としては、乳糖(その水和物を含む)、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、デンプン、微結晶セルロース(たとえばセルフィア(登録商標))、ケイ化微結晶セルロース(たとえばプロソルブ(登録商標))、リン酸水素カルシウム(その水和物を含む)、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、およびこれらの混合物が挙げられる。前記結合剤としては、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ゼラチン、デンプン、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース(たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、およびこれらの混合物が挙げられる。前記滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩(たとえばステアリン酸マグネシウム)、タルク、トウモロコシデンプン、カルナウバロウ、軽質無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、硬化油、酸化チタン、微結晶セルロース、マクロゴール4000または6000、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸水素カルシウム、およびこれらの混合物が挙げられる。前記コーティング剤、たとえばフィルムコーティング剤としては、オパドライ(登録商標)などの慣用の重合体が挙げられる。フィルムコーティング剤は、適切な製剤サイズを提供するために最小量で使用されてもよいが、これに限定はされない。
【0024】
一実施形態において、二層錠剤の形態を有する本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンを含有する顆粒およびオルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒をそれぞれ製造した後、その混合物を二層錠打錠機で圧縮することによって製造してもよい。必要に応じて、得られた二層錠剤を、オパドライなどのフィルムコーティング剤でコーティングしてもよい。前記ロスバスタチンを含有する顆粒およびオルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒は、乾式造粒法または湿式造粒法によって製造してもよい。たとえば、ロスバスタチンを含有する顆粒は、乾式造粒法によって製造してもよい。すなわち、ロスバスタチンカルシウムと、賦形剤(希釈剤)と、崩壊剤と、滑沢剤とを慣用の方法によって混合した後、この混合物をたとえばローラコンパクタ(TF mini,Vector社製)を用いて顆粒化することによって、ロスバスタチンを含有する顆粒を製造してもよい。また、オルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒は、湿式造粒法によって製造してもよい。すなわち、オルメサルタン メドキソミルと、結合剤と、賦形剤(希釈剤)と、崩壊剤とを混合し、この混合物をたとえばハイスピードミキサー(MIC Developer−5,COMASA社製)を用いて顆粒化した後、得られた顆粒を乾燥および篩過することによって、オルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒を製造してもよい。
【0025】
別の一実施形態において、基本的に内核と外層とから構成される錠剤の形態を有する本発明の医薬組成物は、ロスバスタチンを含有する内核を形成し、任意選択によりフィルムコーティング層を形成した後、この内核をオルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒とともに、たとえば打錠機(EKO,Korsch社製)を用いて圧縮することによって製造してもよい。得られた錠剤は、必要に応じてオパドライなどのフィルムコーティング剤でコーティングしてもよい。前記ロスバスタチンを含有する内核は、ロスバスタチンを含有する前記顆粒を、ロータリー式打錠機(Piccola D−8,RIVA社製)を用いて圧縮することによって製造してもよい。得られた内核は、必要に応じてオパドライのようなフィルムコーティング剤でコーティングしてもよい。
【0026】
さらにまた別の一実施形態において、ペレット含有カプセル剤の形態を有する本発明の医薬組成物は、ロスバスタチン含有ペレットおよびオルメサルタン メドキソミル含有ペレットをそれぞれ製造した後、それらの混合物をカプセルに充填することによって製造してもよい。前記ロスバスタチン含有ペレットは、たとえば、流動層造粒機などを用いてビーズ(たとえばノンパレルビーズ)をコーティング溶液でコーティングすることによって製造してもよい。前記コーティング溶液は、ロスバスタチンカルシウムと、賦形剤(希釈剤)と、結合剤と、崩壊剤とを適切な溶媒、たとえば水とメタノールとの混合溶媒に溶解して調製してもよい。前記コーティング溶液は、5〜100mPa・sの粘度を有してもよい。同様に、オルメサルタン メドキソミル含有ペレットも、たとえば、流動層造粒機などを用いてビーズ(たとえばノンパレルビーズ)をコーティング溶液でコーティングすることによって製造してもよく、前記コーティング溶液は、オルメサルタン メドキソミルと、賦形剤(希釈剤)と、結合剤とを適切な溶媒、たとえば水とメタノールとの混合溶媒に溶解して調製してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および実験例により本発明についてさらに詳細に説明する。これらの実施例および実験例は本発明を例示的に説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
実施例1:二層錠剤の製造
表1に示した成分および含量に従って、二層錠剤を製造した。表1の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0029】
<工程1>ロスバスタチンを含有する顆粒の製造
ロスバスタチンカルシウム、乳糖一水和物、プロソルブ、リン酸水素カルシウム二水和物、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、およびステアリン酸マグネシウム(ロスバスタチン層における全使用量の85%)を24メッシュで篩過した後、混合した。この混合物をローラコンパクタ(TF mini,Vector社製)を用いて顆粒化した。得られた顆粒を24メッシュで篩過した後、あらかじめ35メッシュで篩過しておいたステアリン酸マグネシウム(ロスバスタチン層における全使用量の15%)と混合して、ロスバスタチン含有顆粒混合物を製造した。
【0030】
<工程2>オルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒の製造
オルメサルタン メドキソミル、ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖一水和物、微結晶セルロース、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを24メッシュで篩過した後、混合した。この混合物をハイスピードミキサー(MIC Developer−5,COMASA社製)を用いて顆粒化した。得られた乾燥顆粒を24メッシュで篩過した後、あらかじめ35メッシュで篩過しておいたステアリン酸マグネシウムおよびあらかじめ80メッシュで篩過しておいた鉄黄と混合して、オルメサルタン メドキソミル含有顆粒混合物を製造した。
【0031】
<工程3>二層錠剤の製造
工程1で製造したロスバスタチン含有顆粒混合物と工程2で製造したオルメサルタン メドキソミル含有顆粒混合物とを二層錠打錠機(BB−11,RIVA社製)を用いて圧縮して、二層錠剤を得た。パンコーティング機(LDCS,VECTOR社製)を用いて、得られた錠剤をオパドライでフィルムコーティングした。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2:内核と外層とを含有する錠剤の製造
表2に示した成分および含量に従って、内核と外層とを含有する錠剤を製造した。表2の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0034】
<工程1>ロスバスタチンを含有する内核錠剤の製造
ロスバスタチン含有顆粒混合物は、実施例1の工程1と同様の手順で製造した。ロータリー式打錠機(Piccola D−8,RIVA社製)を用いて混合物を圧縮して核を得た後、パンコーティング機(LDCS,VECTOR社製)を用いてこの核をオパドライでフィルムコーティングすることにより、ロスバスタチンを含有する内核錠剤を製造した。
【0035】
<工程2>オルメサルタン メドキソミルを含有する顆粒の製造
オルメサルタン メドキソミル含有顆粒混合物を実施例1の工程2と同様の手順で製造した。
【0036】
<工程3>内核と外層とを含有する錠剤の製造
工程1で製造したロスバスタチン含有内核錠剤および工程2で製造したオルメサルタン メドキソミル含有顆粒混合物を打錠機(EKO,Korsch社製)を用いて圧縮し、内核と外層とを含有する錠剤を得た。パンコーティング機(LDCS,VECTOR社製)を用いてこの錠剤をオパドライでフィルムコーティングした。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例3:ペレット含有カプセル剤の製造
表3に示した成分および含量に従って、ペレット含有カプセル剤を製造した。表3の含量は、1カプセル当たりの含量を示す。
【0039】
<工程1>ロスバスタチン含有ペレットの製造
水とメタノールとの混合溶媒(1:2,重量比)にロスバスタチンカルシウムと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、リン酸水素カルシウム二水和物と、クロスカルメロースナトリウムとを溶解して、約60mPa・sの粘度を有するコーティング溶液を調製した。流動層造粒機を用いて、セルフィア(25〜30メッシュ)を前記コーティング溶液でコーティングし、ペレットを得た。流動層造粒の条件は、以下の通りであった。スプレーエア:2.7bar、排気エア温度:24℃、吸気エア温度:34℃、流量20〜70m
3/時、排気エアフラット28%。
【0040】
<工程2>オルメサルタン メドキソミル含有ペレットの製造
水とメタノールとの混合溶媒(1:2,重量比)にオルメサルタン メドキソミルとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを溶解して、約45mPa・sの粘度を有するコーティング溶液を製造した。流動層造粒機を用いて、セルフィア(25〜30メッシュ)を前記コーティング溶液でコーティングし、ペレットを得た。流動層造粒の条件は、以下の通りであった。スプレーエアー:2.4bar、排気エア温度24℃、吸気エア温度34℃、流量20〜70m
3/時、排気エアフラット34%。
【0041】
<工程3>カプセルへの充填
工程1で製造したロスバスタチン含有ペレットと前記オルメサルタン メドキソミル含有ペレットとを、カプセル充填機(DMF1500,DAESAN PHARMATEC社製)を用いて1号カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0042】
【表3】
【0043】
比較例1〜4:単一マトリックス錠剤の製造
表4に示した成分および含量に従って、崩壊剤を有さない、または崩壊剤としてデンプン、糊化デンプン、もしくはケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビ−ガム)を有する単一マトリックス錠剤を製造した。表4の含量は、1錠当たりの含量を示す。実施例1の工程1および工程2の手順によりそれぞれ製造したロスバスタチン含有顆粒混合物とオルメサルタン メドキソミル含有顆粒混合物とを、ビニール袋またはミキサーを用いて5分間混合し、この混合物を打錠機(EKO,Korsch社製)を用いて圧縮することにより錠剤を得た後、この錠剤をパンコーティング機(LDCS,VECTOR社製)を用いてオパドライでフィルムコーティングすることにより、単一マトリックス錠剤を得た。
【0044】
【表4】
【0045】
比較例5:単一マトリックス錠剤の製造
表5に示した成分および含量に従って、単一マトリックス錠剤を製造した。表5の含量は、1錠当たりの含量を示す。実施例1の工程1および工程2と同様の手順に従ってそれぞれ製造した、ロスバスタチン含有顆粒混合物およびオルメサルタン メドキソミル含有顆粒混合物を5分間混合し、得られた混合物を打錠機(EKO,Korsch社製)を用いて圧縮して錠剤を得た後、この錠剤をパンコーティング機(LDCS,VECTOR社製)を用いてオパドライでフィルムコーティングすることにより、単一マトリックス錠剤を得た。
【0046】
【表5】
【0047】
実験例1:ロスバスタチンの比較溶出試験
実施例1〜3および比較例1〜5で製造した製剤について、ロスバスタチンの比較溶出試験を、溶出試験機(VK7025-Vk8000,Vankel社 USA)を用いて下記の条件下で行った。標準製剤としてロスバスタチン20mgを含有するクレストール錠を使用した。
<溶出試験条件>
溶出溶媒:pH6.8の緩衝液(900mL)
温度:37±0.5℃
試験法:韓国薬局方の「溶出試験法2(パドル法)」
(カプセル剤の場合、シンカーを使用)
パドル回転速度:50rpm
<HPLC分析条件>
−検出器:UV分光光度計(波長:249nm)
−カラム:Waters Acquityuplcbeh C18 (2.1×50mm,1.7μm)
−カラム温度:40℃
−移動相:アセトニトリル/緩衝液(34/66、v/v)
−流速:0.3mL/分
−保持時間:2.5〜3分
結果を以下の表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
表6からわかるように、崩壊剤を有さない比較例1の錠剤および崩壊剤としてデンプン、糊化デンプン、もしくはケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビ−ガム)を有する比較例2〜4の錠剤の場合、最初の30分間のロスバスタチンカルシウムの溶出率は、標準製剤と比較して有意に低かった。これに対し、本発明に従って製造した製剤は、標準製剤と極めてよく似た溶解プロファイルを示した。単一マトリックス錠剤(比較例5)および実施例1〜3の製剤の間では、ロスバスタチンカルシウムの溶出率に有意な差は見られなかった。
【0050】
実施例4
表7に示した成分および含量に従って、(フィルムコーティング工程を行わなかったこと以外は)実施例1と同様の手順により、オルメサルタン メドキソミル含有層中に崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む二層錠剤を製造した。表7の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0051】
【表7】
【0052】
実施例5
表8に示した成分および含量に従って、(フィルムコーティング工程を行わなかったこと以外は)実施例1と同様の手順により、オルメサルタン メドキソミル含有層中に崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを含む二層錠剤を製造した。表8の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0053】
【表8】
【0054】
実施例6
表9に示した成分および含量に従って、(フィルムコーティング工程を行わなかったこと以外は)実施例1と同様の手順により、オルメサルタン メドキソミル含有層中に崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを含む二層錠剤を製造した。表9の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0055】
【表9】
【0056】
実施例7
表10に示した成分および含量に従って、(フィルムコーティング工程を行わなかったこと以外は)実施例1と同様の手順により、オルメサルタン メドキソミル含有層中に崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを含む二層錠剤を製造した。表10の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0057】
【表10】
【0058】
実施例8
表11に示した成分および含量に従って、(フィルムコーティング工程を行わなかったこと以外は)実施例1と同様の手順により、オルメサルタン メドキソミル含有層中に崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを含む二層錠剤を製造した。表11の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0059】
【表11】
【0060】
実施例9
表12に示した成分および含量に従って、(フィルムコーティング工程を行わなかったこと以外は)実施例1と同様の手順により、オルメサルタン メドキソミル含有層中に崩壊剤としてカルボキシメチルセルロースカルシウムを含む二層錠剤を製造した。表12の含量は、1錠当たりの含量を示す。
【0061】
【表12】
【0062】
実験例2:オルメサルタン メドキソミルの比較溶出試験
実施例1および4〜9において製造した製剤について、オルメサルタン メドキソミルの比較溶出試験を、溶出液として水を用いたこと以外は実験例1と同様の方法を用いて行った。標準製剤としてオルメサルタン メドキソミル40mgを含有するオルメテック錠を使用した。オルメサルタンの保持時間は3〜3.5分であった。結果を以下の表13に示す。
【0063】
【表13】
【0064】
規定時間(すなわち6時間)における、標準製剤(すなわちオルメテック錠)の水への溶出率が85%未満である場合、当該薬事法の医薬品の同等性基準を満たすためには、2つの要件を満たす必要がある。第1の要件は、6時間における試験製剤の溶出率が標準製剤(すなわちオルメテック錠)の溶出率±15%の間(すなわち36.13〜66.13%)に位置することであり、第2の要件は、5分(6時間での標準製剤の溶出率の約1/2(すなわち25.5%)に到達する時間に最も近い時間)における溶出率が、標準製剤の溶出率±15%の間(すなわち6.30〜36.30%)に位置することである。
【0065】
表13に示したように、6時間における溶出率は、(実施例4−1の製剤を除く)全製剤について66.13%を超えた。したがって、全製剤(実施例4−1の製剤を除く)とも、標準製剤(すなわちオルメテック錠)と薬学的に同等であるとはみなされない。また、5分における溶出率に関して、実施例4−1、5−1、6−1、7−1、8−1、9−1を除く製剤はいずれも、標準製剤(すなわちオルメテック錠)と薬学的に同等であるとはみなされない。
【0066】
実験例3:生物学的同等性試験
実施例4−1の錠剤(比較溶出試験から標準製剤と薬学的に同等であると評価された錠剤)、実施例1の錠剤(比較溶出試験から標準製剤と薬学的に非同等と評価された錠剤)、および比較例5の錠剤に対して薬物動態試験を実施し、標準製剤(すなわちオルメテック錠およびクレストール錠)との生物学的同等性を評価した。健康な男性ボランティアを、各群12名(すなわちn=12)の2群に分けた。第1群のボランティアには実施例1の錠剤を経口投与し、第2群のボランティアにはロスバスタチン20mgを含有するクレストール錠およびオルメサルタン メドキソミル40mgを含有するオルメテック錠を同時経口投与した。また、実施例4−1の錠剤および比較例5の錠剤についても、各群を6名にしたこと以外は、それぞれ同様の投与および同時投与を行った。投与から0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、8、10、12、16、24、48、および72時間後に血液サンプルを採取し、各サンプルにおけるオルメサルタンおよびロスバスタチンの血中濃度をULPC−MS/MS(Waters ACQUITY UPLCTM system)を用いて定量した。定量後、試験製剤の投与および標準製剤の同時投与からそれぞれ得た、ロスバスタチンおよびオルメサルタンのAUC値およびCmax値の統計処理を通じて、製剤間の生物学的同等性を評価した。生物学的同等性評価は、食品医薬品局の生物学的同等性試験指針に従って行った。簡単に言えば、ロスバスタチンおよびオルメサルタンのAUC値およびCmax値を対数変換した後、幾何平均を計算した。この幾何平均から、それぞれの幾何平均比に対する90%信頼区間を計算した。90%信頼区間が0.8〜1.25である場合、2つの製剤は生物学的に同等であるとみなされる。
【0067】
前記薬物動態試験から得られた血中濃度プロファイルを
図1〜6に示す。
図1および2は、それぞれ実施例1(試験製剤)の二層錠剤の投与および標準製剤(
図1:オルメテック錠、
図2:クレストール錠)の同時投与による血中濃度プロファイルを示す。
図3および4は、それぞれ比較例5(試験製剤)の単一マトリックス錠剤の投与および標準製剤(
図3:オルメテック錠、
図4:クレストール錠)の同時投与による血中濃度プロファイルを示す。
図5および6は、それぞれ実施例4−1(試験製剤)の二層錠剤の投与および標準製剤(
図5:オルメテック錠、
図6:クレストール錠)の同時投与による血中濃度プロファイルを示す。
【0068】
前記生物学的同等性評価の結果を表14〜16に示す。表14〜16のT/R比は、試験製剤における評価項目の幾何平均を、標準製剤における評価項目の幾何平均で除して計算した(すなわち、T/R比=試験製剤における評価項目の幾何平均/標準製剤における評価項目の幾何平均)。1より大きいT/R比は、試験製剤の吸収または最高血中濃度が標準製剤よりも高いことを意味する。これに対し、1より小さいT/R比は、試験製剤の吸収または最高血中濃度が標準製剤よりも低いことを意味する。すなわち、T/R比と1との差が大きいほど、生物学的に非同等である確率が高くなる。
【0069】
【表14】
【0070】
【表15】
【0071】
【表16】
【0072】
表14および表15に示したように、比較例5の錠剤の場合、ロスバスタチンカルシウムのAUCおよびCmaxの90%信頼区間は、0.8〜1.25の範囲から外れ、非常に低いT/R比(すなわち、それぞれ0.851および0.840)を示した。実施例1と比較例5との間で、ロスバスタチンカルシウムの溶出率に有意差はないが(実験例1参照)、AUC値およびCmax値が低下していることから、生体内における薬物相互作用によってロスバスタチンの吸収遅延が生じていると考えられる。しかし、実施例1の錠剤の投与により、2つの薬物の吸収に影響を与えることなく、それぞれの標準製剤の同時投与と同じ薬理効果を提供できることが期待される。
【0073】
また、表14および表16に示したように、実施例4−1の錠剤の場合、オルメサルタン メドキソミルのCmaxの90%信頼区間(すなわち0.7319〜0.9654)は、0.8〜1.25の範囲を外れ、非常に低いT/R比(すなわち0.840)を示した。実施例4−1の製剤は、標準製剤(すなわちオルメテック錠)と薬学的に同等であると評価されたが、標準製剤と生物学的に同等ではなかった。これに対し、標準製剤(すなわちオルメテック錠)と薬学的に非同等であると評価される実施例1の製剤は、標準製剤と生物学的に同等であった。したがって、生物学的同等性基準を満たすためには、医薬品の同等性基準を超える溶出率(すなわち、標準製剤(オルメテック錠)の溶出率+15%を超える溶出率)が必要とされることがわかる。すなわち、生物学的同等性基準を満たすために、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5重量%以上、好ましくは10重量%以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5重量%以上のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15重量%以上のクロスカルメロースナトリウム、10重量%以上のクロスポビドン、5重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウム、または5重量%以上の糊化デンプンを含むことが必要とされる。前記崩壊剤の上限値は、たとえば得られる製剤の硬度などを考慮して、適切な範囲に制限してもよい。たとえば、前記オルメサルタン メドキソミルを含む区画は、オルメサルタン メドキソミルを含む区画の全重量に対して、7.5〜65重量%、好ましくは10〜60重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5〜60重量%のカルボキシメチルセルロースカルシウム、15〜30重量%のクロスカルメロースナトリウム、10〜40重量%のクロスポビドン、5〜40重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、または5〜60重量%の糊化デンプンを含んでもよい。
【国際調査報告】