(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-512150(P2015-512150A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(54)【発明の名称】エピタキシャルリフトオフ後のウエハーの再利用のための熱表面処理
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20150327BHJP
C30B 29/40 20060101ALI20150327BHJP
C30B 33/10 20060101ALI20150327BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20150327BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20150327BHJP
H01L 31/0735 20120101ALI20150327BHJP
【FI】
H01L21/20
C30B29/40 502K
C30B33/10
C30B33/02
H01L31/04 460
H01L31/06 430
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-555861(P2014-555861)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月30日
(86)【国際出願番号】US2013025020
(87)【国際公開番号】WO2013119728
(87)【国際公開日】20130815
(31)【優先権主張番号】61/595,916
(32)【優先日】2012年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】506277410
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー,キュサン
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン,ジェラミー
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト,ステファン,アール.
【テーマコード(参考)】
4G077
5F151
5F152
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
成長基板、1以上の保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層および前記1以上の保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および前記成長基板および/または前記保護層の少なくとも1つを熱処理すること;を含む、成長基板の完全性の保存方法が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長基板、1以上の保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層および前記1以上の保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;
エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および
前記成長基板および/または前記保護層の少なくとも1つを熱処理すること、
を含む、成長基板の完全性の保存方法。
【請求項2】
前記成長基板および前記保護層の少なくとも1つが熱処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上の保護層が前記成長基板の上に配置され、前記犠牲層が前記1以上の保護層上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理が、炉加熱、ランプ加熱、レーザー加熱、およびストリップ加熱から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理が、高速熱処理技術を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記高速熱処理技術が、高速熱アニーリングである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記保護層の少なくとも1つをエッチングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理の前に、前記保護層の少なくとも1つをエッチングすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記成長基板は、Ge、Si、GaAs、InP、GaN、AlN、GaSb、InSb、InAs、およびこれらの組み合わせから選択される材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記1以上の保護層は、III−V材料から選択される材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
熱処理される少なくとも1つの保護層は、GaAsを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上の保護層は、III−V材料から選択される材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記成長基板と前記保護層の少なくとも1つとは、同じ材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記成長基板と熱処理される少なくとも1つの保護層とは、同じ材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのエピ層を除去するためのエッチング液は、HFを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記構造は、前記少なくとも1つのエピ層と前記成長基板との間に配置されるバッファ層をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記バッファ層は、前記成長基板と前記1以上の保護層との間に配置される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記成長基板と、前記バッファ層と、前記保護層の少なくとも1つとは、同じ材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記成長基板と、前記バッファ層と、熱処理される少なくとも1つの保護層とは、同じ材料を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
成長基板、第1保護層、第2保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層、前記第1保護層および第2保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;
エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および
前記成長基板および/または前記第1保護層および第2保護層の少なくとも1つを熱処理すること、
を含む、成長基板の完全性の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年2月7日に出願された米国仮出願第61/595,916号の利益を主張し、その全体が参照により本願に引用される。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する声明
本発明は、陸軍研究局により授与された授与番号W911NF−08−2−0004の下で米国政府の支援を受けてなされた。本発明において、政府は一定の権利を有する。
【0003】
共同研究契約
本開示の対象は、合同大学法人研究協定の1つ以上の以下の参加者:ミシガン大学およびグローバルフォトニックエナジーコーポレーション(Global Photonic Energy Corporation)を代表して、および/またはこれに関連して、作成された。この協定は、本開示の対象が準備された日およびそれ以前に有効であり、この協定の範囲内で行われた活動の結果として作成された。
【0004】
本開示は、一般的にはエピタキシャルリフトオフの使用を通して、例えばフレキシブルな光起電力デバイスなどの、電子デバイスおよび光電子デバイスを作製する方法に関する。特に、本開示は、後の再利用のために成長基板の完全性を保存することに関する。
【背景技術】
【0005】
光電子デバイスは、電子的に電磁放射線を生成もしくは検出するか、または周囲の電磁放射線より電気を生成する材料の光学的および電子的な特性に依存している。
【0006】
感光性光電子デバイスは電磁放射線を電気へと変換する。太陽電池は、光起電力(PV)デバイスとも呼ばれるが、特に電力を生成するために使用される感光性光電子デバイスの一種である。PVデバイスは、日光以外の光源から電気エネルギーを生成してもよいが、電力を消費する負荷を駆動して、例えば、照明、暖房を与えるために、あるいは、電気回路または計算機、ラジオ、コンピュータもしくは遠隔モニタリングまたは通信機器のようなデバイスに電力を供給するために用いられうる。これらの電力生成の用途はまた、太陽またはその他の光源からの直接照射が得られないときでも動作を続けることができるように、または、PVデバイスの出力を特定の用途の要求とバランスをとるために、多くの場合は、バッテリーまたは他のエネルギー貯蔵デバイスを充電することを含む。本明細書中、「抵抗負荷」の用語は、任意の電力を消費するもしくは貯蔵する回路、デバイス、機器またはシステムを指す。
【0007】
その他のタイプの感光性光電子デバイスは光伝導体セルである。この機能では、信号検出回路がデバイスの抵抗をモニターして、光の吸収による変化を検出する。
【0008】
その他のタイプの感光性光電子デバイスは光検出器である。動作中、光検出器は、光検出器が電磁放射線にさらされたときに発生する電流を測定し、印加バイアス電圧を有してもよい電流検出回路とともに使用される。本明細書中に記載されるような検出回路は、バイアス電圧を光検出器に供給し、電磁放射線に対する光検出器の電子的応答を測定することができる。
【0009】
これらの感光性光電子デバイスの3つの分類は、以下で定義される整流接合が存在するか否かによって、また、デバイスがバイアスまたはバイアス電圧としても知られる外部印加電圧で動作するか否かによって特徴づけられてもよい。光伝導体セルは整流接合を有さず、通常バイアスで動作する。PVデバイスは少なくとも1つの整流接合を有し、バイアスなしで動作する。光検出器は少なくとも1つの整流接合を有し、常にではないが通常はバイアスで動作する。原則として、光起電力セルは回路、装置または機器に電力を供給するが、検出回路を制御するための信号もしくは電流は供給せず、または検出回路からの情報を出力しない。反対に、光検出器または光伝導体は検出回路を制御するための信号もしくは電流を供給し、または検出回路からの情報を出力するが、回路、装置、または機器に電力を供給しない。
【0010】
従来、感光性光電子デバイスは多数の無機半導体、例えば結晶、多結晶およびアモルファスシリコン、ガリウムヒ素、テルル化カドミウムなどより構成されてきた。ここで、用語「半導体」は、電荷キャリアが熱的または電磁的な励起により誘起されたときに電気を通し得る材料を意味する。用語「光伝導性」は、通常は電磁放射エネルギーが吸収され、それにより電荷キャリアの励起エネルギーに変換され、そのためキャリアが材料中の電荷を伝導させる、すなわち輸送するプロセスに関連する。用語「光伝導体」および「光伝導性材料」は、本明細書においては、電磁放射線を吸収して電荷キャリアを生成する特性より選択される半導体材料を表すのに用いられる。
【0011】
PVデバイスは入射太陽光を有益な電力に変換することができる効率により特徴づけられてもよい。結晶シリコンまたはアモルファスシリコンを利用したデバイスは商業的応用を支配しており、23%以上の効率を達成しているものもある。しかしながら、高効率な結晶性デバイス、特に大きい表面積を有するものは、重大な効率を低下させる欠陥なしに大きな結晶を製造することに内在する問題のため、生産することが困難および高価である。一方、高効率なアモルファスシリコンデバイスはまだ安定性の問題に悩まされている。現在の商業的に入手できるアモルファスシリコンセルは4〜8%の安定化された効率を有する。
【0012】
PVデバイスは、光電流および光起電力の最大の積として、標準照射条件下(すなわち、1000W/m
2、AM1.5スペクトル照射の標準試験条件)での最大電力生成で最適化されてもよい。このようなセルの標準照射条件下での電力変換効率は以下の3つのパラメータに依存する:(1)ゼロバイアス下での電流(すなわち短絡回路電流I
sc)、単位はアンペア、(2)開回路状態下での光起電力(すなわち開回路電圧V
oc)、単位はボルト、および(3)曲線因子(FF)。
【0013】
PVデバイスは、負荷に接続され光照射されたときに光生成電流を生成する。無限負荷の下で照射されたとき、PVデバイスはその最大可能電圧(Vopen−curcuit、またはV
OC)を生成する。その電気的接触が短絡している状態で照射されるとき、PVデバイスはその最大可能電流(Ishort−circuitまたはI
SC)を生成する。実際に電力の生成に使用されるとき、PVデバイスは有限抵抗負荷に接続されており、電力出力は電流と電圧との積(I×V)で与えられる。PVデバイスで生成される最大総電力は、本質的にI
SC×V
OCの積を超えることができない。負荷の値が最大電力抽出のために最適化されるとき、電流および電圧はそれぞれI
maxおよびV
maxの値を有する。
【0014】
PVデバイスの性能指数は曲線因子(FF)であり、下記で定義される。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、I
SCおよびV
OCは実際の使用では同時には決して得られないので、FFは常に1未満である。それにも関わらず、FFが1に近づくにつれて、デバイスはより小さい直列抵抗または内部抵抗を有することになり、その結果、最適条件下で、負荷にI
SCとV
OCとの積のより大きなパーセンテージを与える。P
incがデバイスの入射電力であるとき、デバイスの電力効率η
Pは以下の式により計算することができる。
【0017】
【数2】
【0018】
半導体の相当の体積を占める内部生成電場を発生させるための通常の方法は、適切に選択された伝導性(特に分子量子エネルギー状態の分布に関して)を有する材料の2つの層を並べることである。これら2つの材料の界面は光起電性接合と呼ばれる。従来の半導体理論では、PV接合を形成するための材料は、n型またはp型になるように作製されうる。ここでn型は多数キャリアの型が電子であることを表す。これは相対的に自由なエネルギー状態にある多数の電子を有する材料として見なされうる。ここでp型は多数キャリアの型がホールであることを表す。このような材料は相対的に自由なエネルギー状態にある多数のホールを有する。バックグラウンド(すなわち光生成しない)の型では、多数キャリア濃度は主に、意図的なまたは意図的ではない、欠陥または不純物によるドーピングに依存する。不純物の型および濃度が、伝導帯の最低エネルギーと価電子帯の最高エネルギーとの間のギャップ内にある、フェルミエネルギー(またはフェルミ準位)の値を決定する。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2と等しくなるエネルギーの値で表される、分子量子エネルギー状態の統計的な占有を特徴づける。伝導帯の最低エネルギーに近いフェルミエネルギーは、電子が主要なキャリアであることを示す。価電子帯の最高エネルギーに近いフェルミエネルギーは、ホールが主要キャリアであることを示す。したがって、フェルミエネルギーは従来の半導体特性を主に特徴づけており、原型的なPV構造は従来はp−n接合であった。
【0019】
用語「整流」は、とりわけ、界面が非対称な伝導特性を有する、すなわち、界面が、好ましくは一方向の電荷の輸送を支持することを示す。整流は、通常は、適当に選択された材料間の接合で生じるビルトイン電場に関連する。
【0020】
内部電場を設けるために、従来の無機半導体PVセルはp−n接合を採用している。高効率PVデバイスは、一般的に高価な単結晶成長基板上に作製される。これらの成長基板としては単結晶ウエハーが挙げられ、これは「エピ層」としても知られる活性層のエピタキシャル成長のために、完全な格子を作り出すことおよび構造上の支持体として使用されうる。元の成長基板を無傷の状態として、これらのエピ層はPVデバイス内に組み込まれてもよい。あるいは、これらのエピ層は除去され、ホスト基板に再結合されてもよい。
【0021】
場合によっては、エピ層を望ましい光学的、機械的、または熱的特性を示すホスト基板に移動することが望ましい。例えば、ガリウムヒ素(GaAs)エピ層はシリコン(Si)基板上に成長させてもよい。しかしながら、得られる材料の電子的品質は特定の電子的応用には不十分である可能性がある。それ故、格子整合したエピ層の高い材料品質を保ちつつ、これらエピ層を他の基板上に組み込めることが望ましい。これはエピタキシャルリフトオフとして知られる方法により達成されうる。エピタキシャルリフトオフプロセスにおいて、エピ層は成長層から「リフトオフ」され、新しいホスト基板と再結合される(例えば、結合されるまたは接着される)。反射裏面コンタクトを有するリフトオフ太陽電池は、従来の基板ベースの太陽電池と比較して、同量の入射光を吸収するために必要な活性領域の厚さが約半分であり、材料の消費およびエピタキシャル層の成長時間が低減される。
【0022】
これらは望ましいエピタキシャル成長特性を提供しうるが、典型的な成長基板は厚く、過度の重量を作り出す可能性があり、結果として得られるデバイスは脆い傾向にあり、嵩高い支持システムを必要とする。エピタキシャルリストオフは、エピ層をこれらの成長基板からより効率的で、軽量で、およびフレキシブルなホスト基板へと移動させるための望ましい方法でありうる。一般的な成長基板の相対的な不足およびそれらが結果として得られるセル構造にもたらす望ましい特性を考えると、後続のエピタキシャル成長において成長基板をリサイクルおよび/または再利用することが望ましい。成長ウエハーを再利用するこれまでの試みは効率を減少させる結果となったか、またはウエハーから上部数ミクロンの材料を除去することによる、ウエハーの研磨による「仕上げ」が必要であった。
【0023】
米国特許出願公開第2010/0047959号はエピタキシャル層を単結晶基板から選択的に除去するための方法を説明している。開示された方法は第1バッファ層、エッチング停止層、第2バッファ層、および剥離層の蒸着を含む。剥離層上に、一連の半導体層が蒸着され、セルを形成する。この方法は次いで、剥離層をエッチングすることを含み、これによって半導体層は基板および結合したバッファ層とエッチング停止層とから剥離される。しかしながら、明細書には再利用のための解放された基板を準備する方法、例えばバッファ層および/またはエッチング停止層を選択的にエッチングして除去すること、は説明されていない。
【0024】
本願出願人は、以前にELOプロセスおよびその後の成長基板の再利用のためのELO後の保護層の選択的エッチング除去の間の、成長基板を保存するための保護層スキームを実証した。特に、エピタキシャル保護層および材料エッチング液の組み合わせを採用することによって、成長基板表面がその後のエピタキシャル層成長のために保存され、これによって、高価な成長基板の消費を減らすことにより製造コストを有意に減少させることができる。本願出願人は、以前に2層保護スキームおよび材料を実証した(例えば、InP−ウエハー/InGaAs/InP)。これらのスキームおよび材料は、米国特許出願公開第2011/0186910号に記載され、このスキームおよび材料の開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。本願出願人はまた、以前に、1層、2層、および少なくとも3層の保護スキームおよび材料を実証した(例えば、GaAs−ウエハー/InGaP/GaAs/InGaP)。これらのスキームおよび材料の開示は、米国特許出願第13/536,267号に記載され、このスキームおよび材料の開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0025】
保護層除去の間、混入物質、特に大きいサイズの混入物質は、除くことが難しい場合がある。このような混入物質を完全に除去するために、保護層は、下位層にダメージを与えることなく粒子状物質を切り取ることによって混入物質をリフトオフするのに十分な程度に厚いことが求められる。しかしながら、厚い保護層は、材料の消費および成長時間を増加させる。したがって、混入物質の除去、特に大きい混入物質の除去を改善し、研磨または成長基板表面を調製する他の破壊的な方法を必要とすることなく、再利用のための成長基板表面を調製する必要性が残っている。単一の親ウエハーからの多重成長(multiple growth)を行うことができれば、GaAs太陽電池などの高電力変換効率太陽電池の製造コストの劇的な減少が約束される。
【発明の概要】
【0026】
本開示は、少なくとも1つの保護層を少なくとも部分的に分解することによってこれらの必要性に対処する。少なくとも部分的な分解は、成長基板および/または少なくとも1つの保護層を熱処理することで達成されうる。少なくとも1つの保護層を少なくとも部分的に分解することによって、ELOおよび/または保護層除去のプロセスの結果として生成した、酸化ヒ素などの残留物および混入物質ならびに他の大きなスケールの残留物および混入物質が除去される。この成長基板保護層と熱処理による分解との組み合わせによって、その後のエピタキシャル成長のための成長基板の保存が可能になる。
【0027】
したがって、成長基板、1以上の保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層および前記1以上の保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;
エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および
前記成長基板および/または前記保護層の少なくとも1つを熱処理すること;
を含む、成長基板の完全性の保存方法を開示する。
【0028】
いくつかの実施形態において、成長基板の完全性の保存方法は、
成長基板、第1保護層、第2保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層、前記第1保護層および第2保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;
エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および
前記成長基板および/または前記第1保護層および第2保護層の少なくとも1つを熱処理すること、を含む。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、用語「熱処理」は、保護層を少なくとも部分的に分解するために十分な手段および継続時間で熱を供給することを意味する。
【0030】
本開示の上述のおよび他の特徴は、添付の図面とともに、以下の例示的な実施形態の詳細な説明からより容易に明らかになるであろう。便宜的にすべてのデバイスの図は幅に対して高さの次元を誇張して示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本明細書中に記載される本発明の方法を実施するための一般的な構造を表す。ここで前記構造は、成長基板、1以上の保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を含む。
【
図2】
図2は、2層保護スキームに従ってGaAs基板上に成長させたエピタキシャル層構造の例を示す。
【
図3】
図3は、ELOと50μmの厚さのカプトン(登録商標)シートへの冷間圧接接着との組み合わせによる、リフトオフした半分の直径2インチのGaAsエピタキシャル層の像を示す。挿入図はカプトン(登録商標)シート上に作製されたGaAs薄膜太陽電池の像を示す。
【
図4】
図4は、(a)未使用(フレッシュ)のGaAsウエハーの表面(二乗平均平方根粗さRMS=0.62nm)、(b)ELOプロセス後のGaAs保護層の表面(RMS=3.37nm)、(c)熱処理後のGaAs保護層の分解された表面(RMS=5.09nm)、および(d)保護層除去後のGaAsウエハーの表面(RMS=0.71nm)の原子間力顕微鏡写真を示す。
【
図5】
図5は、高速熱アニーリングによる熱処理の(a)前および(b)後の保護層表面の顕微鏡像を示す。
【
図6】
図6は、(a)GaAsエピタキシャル膜のホール効果およびフォトルミネセンス測定結果、ならびに元のウエハーおよび保護層を用いて再利用したウエハーの上に成長させたGaAs太陽電池の1太陽、AM1.5Gの模擬太陽光照射下でのデバイス性能、(b)元のおよび再利用したウエハー上に成長させたエピタキシャルGaAs層の原子分解能断面透過電子顕微鏡像を表す。挿入図は、元のおよび再利用したウエハーの反射高エネルギー電子回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において、用語「層」は、その主要な次元(primary dimension)がX−Yである、すなわちその長さおよび幅に沿っている、構成要素を表す。用語「層」は、必ずしも単一の層または材料のシートに限定されないと理解されるべきである。層は、積層体またはいくつかの材料のシートの組み合わせを含みうる。加えて、他の材料または層との界面を含む、特定の層の表面は不完全であってもよい(このとき、前記表面は、他の材料または層と、相互に染み込んでいる、からんでいる、または巻き込まれているネットワークを示す)と理解されるべきである。同様に、層は不連続でもよく、例えば、X−Y次元に沿った前記層の連続性は乱れていてもよく、または他の層もしくは材料により中断させられていてもよい。
【0033】
本明細書において、用語「ウエハー」および「成長基板」は区別しないで同じものを意味するために使用されうる。
【0034】
本明細書において、用語「III−V材料」は、周期表のIIIA族およびVA族からの元素を含有する化合物結晶を表すために用いられうる。より詳細には、用語「III−V材料」は、本明細書では、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)の族と、ヒ素(As)、リン(P)、窒素(N)、およびアンチモン(Sb)の族との組み合わせの化合物を表すために用いられうる。代表的な材料としては、GaAs、InP、InGaAs、AlAs、AlGaAs、InGaAsP、InGaAsPN、GaN、InGaN、InGaP、GaSb、GaAlSb、InGaTePおよびInSb、およびすべての関連する化合物が挙げられる。用語「IV族」は、周期表のIV列のSiおよびGeなどの半導体を含む。II−VI族は、例えばCdSおよびCdTeなどの、周期表のII族およびVI族に属する半導体を含む。本明細書中に記載された方法は、これらの一般的な半導体の種類のすべてに適用されうることが理解される。
【0035】
本明細書中に記載される化合物は省略形で名前を挙げられてもよいことに留意すべきである。2成分材料はIII:V族の化合物のモル比が約1:1であると見なされる。3成分以上の系(例えばInGaAlAsP)において、III族種(すなわちIn、Ga、およびAl)の合計は約1であり、V族の成分(すなわちAs、およびP)の合計は約1であり、それ故V族に対するIII族の比は約1である。
【0036】
周囲の文章から推測されるように、化合物名(例えば、GaAsに格子整合した格子化合物のためのGaAs、AlInP、GaInP、AlGaAs、GaPSb、AlPSb、およびこれらの組み合わせ、またはInPに格子整合した化合物のためのInP、InGaAs、AlInP、GaInP、InAs、InSb、GaP、AlP、GaSb、AlSb、およびこれらの組み合わせ)は、格子整合または歪みを達成するために必要とされる化学量論比であると見なされる。例えば、InGaPをInPに対して格子整合させるため、組成はIn
0.53Ga
0.47Asである。0≦X≦1の全組成範囲にわたってGaAsに対してほとんど格子整合するので、AlGaAs(すなわちAl
xGa
1−xAs)は興味深い例である。加えて、名前はある程度は転置されてもよい。例えば、AlGaAsおよびGaAlAsは同じ材料である。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「エッチング液選択性」は、他の材料のエッチング速度と比較したときの特定のエッチング液が特定の材料を除去する速度を意味する。XとYとのエッチング液選択性は、特定のエッチング液のYのエッチング速度に対するXのエッチング速度の間の比として定量される。したがって、本明細書中で使用される場合、「高選択性」は、一方の材料が急速にエッチングされるが、他方が非常にゆっくりとエッチングされるかまたは全くエッチングされない場合、例えば10:1または100:1よりも大きい、または、さらには1000:1以上の場合を意味する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「上」は、エピタキシャル成長の方向の位置を意味する。
【0039】
上述したように、成長基板の完全性の保存方法は、
成長基板、1以上の保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層および前記1以上の保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;
エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および
前記成長基板および/または前記保護層の少なくとも1つを熱処理すること、を含みうる。
【0040】
いくつかの実施形態において、成長基板および保護層の少なくとも1つが熱処理される。前記熱処理は、例えば、チューブ炉加熱などの炉加熱、石英ランプ加熱などのランプ加熱、レーザー加熱、およびストリップ加熱から選択されうる。前記熱処理は、不活性ガス中または様々なレベルの真空中で行われうる。いくつかの実施形態において、前記熱処理は、高速熱処理(rapid thermal processing)(RTP)技術から選択されうる。当業者が理解するように、熱処理の温度および継続時間は、存在するガス種、真空のレベル、少なくとも部分的に分解される材料の型、少なくとも部分的に分解される層の厚さ、および所望の分解のレベルなどのパラメータに依存して変動しうる。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記熱処理は、高速熱アニーリング(rapid thermal annealing)(RTA)などのRTP技術から選択される。当業者が理解するように、RTAは、ガスの型、加熱温度、および加熱継続時間などのパラメータが制御された環境中で、例えば、数秒から数分の時間、基板を所望の温度に加熱するために用いられる技術である。これらのパラメータは、例えば、少なくとも部分的に分解される材料の型、少なくとも部分的に分解される層の厚さ、および所望の分解のレベルなどに依存して変動しうる。RTAの間、一度基板が所望の温度に到達すると、少なくとも1分、少なくとも2分、または少なくとも5分、または1分未満、30秒未満、またはさらには5秒未満などの所望の時間、その温度で保持されうる。RTAは、例えば、400℃まで、700℃まで、またはそれより高い温度で行われうる。
【0042】
いくつかの実施形態において、保護層の少なくとも1つは、成長基板を意図的に加熱することなく熱処理される。この実施形態において、熱処理は、パルスレーザー溶融法などのレーザー技術から選択されうる。
【0043】
本発明の方法は、薄い保護層の使用を可能にし、これは材料の消費を低減させ、成長時間を減少させる。一実施形態において、保護層の厚さは、5nmから500nmの範囲、例えば、10〜450、20〜400、30〜350、40〜300、50〜300、50〜250、50〜200、75〜300、75〜250、75〜200、100〜300および100〜200でありうる。
【0044】
いくつかの実施形態において、1以上の保護層は、成長基板上に配置されてもよく、犠牲層は前記1以上の保護層上に配置される。
図1は、本発明の方法を実施するための一般的な構造の例を表す。いくつかの実施形態において、1層保護スキームが用いられうる。他の実施形態において、2層保護スキームが用いられうる。いくつかの実施形態において、3以上の保護層が用いられうる。上述のように、本願出願人は以前に、多様な保護層スキームおよび材料を、米国特許出願公開第2011/0186910号および米国特許出願第13/536,267号(双方がそのスキームおよび材料の開示のために参照により既に本明細書中に組み込まれている)において実証した。本明細書中に記載される本発明の方法は参照された出願に記載されたスキームおよび材料で採用されてもよく、本発明で使用するための保護層スキームおよび材料のすべてが本明細書中で繰り返されるわけではないことが理解されるべきである。
【0045】
成長基板は、単結晶ウエハー材料を含む、任意の数の材料を含みうる。いくつかの実施形態において、成長基板は、特に制限されないが、Ge、Si、GaAs、InP、GaN、AlN、GaSb、InSb、InAs、SiC、CdTe、サファイアおよびこれらの組み合わせを含む材料から選択されうる。いくつかの実施形態において、成長基板はGaAsを含む。いくつかの実施形態において、成長基板はInPを含む。いくつかの実施形態において、成長基板を含む材料はドープされていてもよい。適当なドーパントとしては、特に制限されないが、亜鉛(Zn)、Mg(および他のIIA族化合物)、Zn、Cd、Hg、C、Si、Ge、Sn、O、S、Se、Te、FeおよびCrが挙げられる。例えば、成長基板はZnおよび/またはSでドープされたInPを含んでもよい。
【0046】
前記1以上の保護層は、任意のIII−V材料から選択される材料を含みうる。いくつかの実施形態においては、前記III−V材料は、例えば、GaAs、InAlP、InGaP、AlGaAs、AsSb、GaPSb、AlPSb、InP、InGaAs、InAlAs、InAs、InSb、GaP、AlP、GaSb、AlSb、GaAsSb、AlAsSb、AlGaInP、およびこれらの組み合わせから選択されうる。いくつかの実施形態においては、熱処理される少なくとも1つの保護層は、GaAsを含みうる。
【0047】
前記成長基板および前記保護層の少なくとも1つは、同じ材料を含みうる。いくつかの実施形態において、前記成長基板および熱処理される少なくとも1つの保護層は、同じ材料を含む。一実施形態において、前記同じ材料はGaAsである。本明細書中に記載されるいずれの実施形態においても、他の保護層に比較して、成長基板に最も接近して配置された保護層は、この近くに配置された保護層が成長基板上で即座に止まるエッチング液を用いて除去されうるように、成長基板に対して高いエッチング選択性を有しうる。
【0048】
保護層は、格子整合した化合物、および/または例えば歪み層にとって歪み緩和臨界厚さを考慮したような、歪み層を含んでもよい。一実施形態において、保護層の少なくとも1つは格子整合しており、他の実施形態において、保護層の少なくとも2つは格子整合しており、さらなる実施形態において、保護層の少なくとも3つは格子整合している。さらなる実施形態において、保護層の少なくとも1つは歪んでおり、他の実施形態において、保護層の少なくとも2つは歪んでおり、さらなる実施形態において、保護層の少なくとも3つは歪んでいる。さらなる実施形態において、保護層は、歪が均衡していてもよく、この際、少なくとも1つの保護層が正に歪んでいて、少なくとも1つの保護層が負に歪んでいて、1つの層における歪の影響が部分的にまたは全体に相殺される。また、保護層は少なくとも1つの格子整合した層および少なくとも1つの歪んだ層の組み合わせを含むことができると考えられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、いずれか1つまたは両方の保護層が熱処理されうる、2層保護スキームが用いられうる。他の実施形態において、いずれか1つの保護層、2つの保護層、または3つの保護層全てが熱処理されうる、3層保護スキームが用いられうる。他の実施形態においては、3を超える保護層が用いられ、ここで、任意の1、2、3、4など、または全ての保護層が熱処理されてもよい。本明細書中に記載されるいずれの実施形態においても、熱処理される少なくとも1つの保護層は、熱処理時に、他の保護層に対して成長基板上で最も遠くに配置されうる。いくつかの実施形態において、この保護層は犠牲層に隣接して配置される。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記方法は前記保護層の少なくとも1つをエッチングすることをさらに含む。いくつかの実施形態において、保護層のそれぞれが選択的にエッチングされる。保護層は、少なくとも1つの保護層が熱処理される前または後にエッチングされうる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの保護層は、少なくとも1つの保護層の熱処理の前にエッチングされる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの保護層は、少なくとも1つの保護層の熱処理の後にエッチングされる。いくつかの実施形態において、保護層のそれぞれは、少なくとも1つの保護層の熱処理の後に選択的にエッチングされる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの保護層、例えば他の保護層に対して成長基板上で最も遠くに配置された保護層は、少なくとも1つの保護層の熱処理の前にエッチングされてもよい。いくつかの実施形態において、適当なエッチング液は、HF、H
3PO
4、HCl、H
2SO
4、HNO
3、C
6H
8O
7(クエン酸)、H
2O
2、NH
4OH、H
2Oおよびこれらの組み合わせから独立して選択されうる。
【0051】
1を超える保護層が熱処理される実施形態において、それぞれの熱処理された層は別々に熱処理されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、他の保護層に対して成長基板上で最も遠くに配置された保護層は、任意で熱処理され、次いで、任意の熱処理後にエッチング除去されてもよい。その後、別の保護層、例えば他の層に対して成長基板上で最も遠くに配置された保護層は、前の保護層のエッチングの後、任意で熱処理され、次いで、熱処理後エッチング除去されてもよい。このプロセスは所望により混入物質を除去するために繰り返されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、犠牲層はAlAsを含む。犠牲層は、超格子を含みうる。いくつかの実施形態において、超格子は、InAs/AlAsまたはAlAsSb、AlGaAsなどの合金、または他の主にAl系の合金を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエピ層を除去するためのエッチング液は、HF、H
3PO
4、HCl、H
2SO
4、HNO
3、C
6H
8O
7(クエン酸)、H
2O
2、NH
4OH、H
2Oおよびこれらの組み合わせを含む。一実施形態において、エッチング液はHFを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエピ層を除去するためのエッチング液はHFを含み、熱処理される少なくとも1つの保護層はGaAsを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエピ層は、感光性デバイスに使用するのに適した任意の材料を含みうる。感光性デバイスとしては、特に制限されないが、光検出器、光センサ、光伝導体、化学センサ、生物学的センサ、および太陽電池などのPVデバイスが挙げられる。少なくとも1つのエピ層は、少なくとも1つのIII−V材料から選択されうる。GaAs、InPおよび他のIII−V化合物は、PVデバイスを含む様々な型の光電子デバイスの魅力的な電子材料でありうる。一般に、特定のIII−V化合物は、有益な圧電特性および光電子特性、高い圧電定数、ならびに多様な電子的バンドギャップを有し、ヘテロ構造の作製を可能にする(ヘテロ構造および格子整合した合金が一般的ではない、または入手できないSiに比較して)。いくつかの実施形態において、特定のエピ層の有益な特性は、薄い、軽量のPVデバイスの製造を可能にしうる。いくつかの実施形態において、得られたPVデバイスは、わずか数μm厚さから数百μm厚さの厚さを示す。例示的なデバイスは、最終厚さが、特に制限されないが、約10μmから約150μm、約25μmから約30μm、約10μmから約25μmであり、場合によっては、10μm未満となる。加えて、いくつかのIII−V材料は、三元または四元の、これが誘導される二元化合物と厳密に整合した格子定数を有する(例えば、A
lxG
a1−xAsおよびGaAs)、三元または四元の「整合した合金(matched alloys)」として蒸着され、したがってデバイスの性能を高めるさまざまなヘテロ構造の作製が可能になる。InPの整合した合金としては、InGaAs、InAlAs、InGaAsPおよびInGaAlAsなどの化合物が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエピ層はドープされていてもよい。適当なドーパントとしては、特に制限されないが、ベリリウム(Be)、Mg(および他のIIA族の元素)、Zn、Cd、Hg、C、Si、Ge、Sn、O、S、SeおよびTeが挙げられる。例えば、少なくとも1つのエピ層は、InGaAs/InPまたはInGaAs/InP/InGaAsスタックを含み、各スタック材料はBeなどのドーパントが少量ドープされていてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエピ層はセル構造の一部でありうる。いくつかの実施形態において、セル構造は、いくつかの異なる半導体の複数のエピ層、コンタクト層、基板、および中間層を含む、成長後の十分に発展したセルを示しうる。いくつかの実施形態において、セル構造は、光を電気に変換するために必要な、光学的および電気的に活性な半導体層から構成されるPVセル構造である。いくつかの実施形態において、セル構造は、単純に、活性層などの、PVデバイスに用いるのに適した1以上の材料を含む単一のエピ層などの1以上の成長層を含みうる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエピ層は、ELOの間にPVセルなどのデバイスを保護するために1以上の保護層を含んでもよい。
【0057】
本明細書中に記載される本発明の方法で用いられる構造は、バッファ層をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、バッファ層は、少なくとも1つのエピ層と成長基板との間に配置される。いくつかの実施形態において、バッファ層は、成長基板と1以上の保護層との間に配置される。成長基板、バッファ層、および保護層の少なくとも1つは、同じ材料を含みうる。いくつかの実施形態において、成長基板、バッファ層、および熱処理される少なくとも1つの保護層は、同じ材料を含む。いくつかの実施形態において、前記同じ材料はGaAsを含む。
【0058】
本開示の他の実施形態は、成長基板、第1保護層、第2保護層、犠牲層、および少なくとも1つのエピ層を有する構造を準備すること、この際、前記犠牲層、前記第1保護層および第2保護層は、前記成長基板と前記少なくとも1つのエピ層との間に配置される;
エッチング液を用いて前記犠牲層をエッチングすることにより前記少なくとも1つのエピ層を除去すること;および
前記成長基板および/または前記第1保護層および第2保護層の少なくとも1つを熱処理すること、
を含む、成長基板の完全性の保存方法を対象とする。
【0059】
いくつかの実施形態において、第1保護層は成長基板上に配置され、第2保護層は第1保護層上に配置され、犠牲層は第2保護層上に配置される。
【0060】
成長基板、第1保護層および第2保護層、犠牲層、ならびに少なくとも1つのエピ層は、本明細書中に記載される材料を含みうる。
【0061】
いくつかの実施形態において、第1保護層および第2保護層のいずれか、または両方が熱処理される。いくつかの実施形態において、第1保護層および第2保護層は別々に熱処理される。一実施形態において、第2保護層は熱処理され、GaAsを含む。一実施形態において、第2保護層は熱処理され、GaAsを含み、第1保護層はAlGaInPおよびInGaPから選択される。
【0062】
前記方法は第2保護層のエッチングをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記方法は、第2保護層および第1保護層のそれぞれを選択的にエッチングすることをさらに含みうる。いくつかの実施形態において、第2保護層は、第1保護層の熱処理の前にエッチングされる。いくつかの実施形態において、第2保護層は、第1保護層を任意で熱処理する前に、任意で熱処理され、その後エッチング除去されてもよい。いくつかの実施形態において、適当なエッチング液は、HF、H
3PO
4、HCl、H
2SO
4、HNO
3、C
6H
8O
7(クエン酸)、H
2O
2、NH
4OH、H
2Oおよびこれらの組み合わせから独立して選択されうる。
【0063】
本開示はウエットエッチングを議論しているが、物理的および化学的ドライエッチング技術も層をエッチングするのに用いることができ、したがってウエットエッチングの選択肢に必要なエッチング選択性をなくすことができる。ドライエッチング技術としては、例えば、物理的スパッタエッチングおよび反応性イオンエッチング(RIE)(誘導結合プラズマRIEなど)が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、成長基板および第2保護層は同じ材料を含む。一実施形態において、前記同じ材料はGaAsである。一実施形態において、前記同じ材料はGaAsであり、第1保護層は、AlGaInPおよびInGaPから選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、バッファ層は、少なくとも1つのエピ層と成長基板との間に配置される。いくつかの実施形態において、バッファ層は、成長基板と第1保護層との間に配置される。一実施形態において、成長基板、バッファ層、および第2保護層は、同じ材料を含む。一実施形態において、前記同じ材料はGaAsである。一実施形態において、前記同じ材料はGaAsであり、第2保護層は熱処理される。
【実施例】
【0066】
本発明は、純粋に発明の例示を目的とする以下の非制限的な実施例によりさらに明確にされるであろう。
【0067】
実施例
この実施例では、本発明の成長基板保護プロセスは、2層保護スキームを用いて行われ、単一の親ウエハーからの多重成長が可能になる。
【0068】
図2に示すように、エピタキシャル層構造を、ガスソース分子線エピタキシー(GSMBE)によって、Znドープ(100)p−GaAs基板上に成長させた。成長は、0.2μm厚さのGaAsバッファ層を用いて開始させた。次いで、0.1μmの格子整合したIn
0.49Ga
0.51P保護的エッチング停止層を成長させ、続いて0.1μm厚さのGaAs保護層を成長させた。その後、0.1μm厚さのAlAs犠牲ELO層を成長させた。次いで、逆型GaAs太陽電池活性領域を以下のように成長させた:0.2μm厚さ、5×10
18cm
−3SiドープGaAsコンタクト層;0.025μm厚さ、2×10
18cm
−3Si−ドープIn
0.49Ga
0.51Pウインドウ層;0.15μm厚さ、1×10
18cm
−3Si−ドープn−GaAsエミッタ層;3.5μm厚さ、2×10
17cm
−3Be−ドープp−GaAsベース層;0.075μm厚さ、4×10
17cm
−3Be−ドープIn
0.49Ga
0.51P裏面電界(BSF)層;および0.2μm厚さ、2×10
18cm
−3Be−ドープp−GaAsコンタクト層。
【0069】
成長後、電子ビーム蒸着によって、Ir(150Å)/Au(8000Å)コンタクト層を50μmの厚さのカプトン(登録商標)シート上に蒸着し、Au(600Å)層をGaAsエピタキシャル層上に蒸着した。基板とプラスチックシートとを冷間圧接により接着し、次いでHF:H
2O(1:10)の溶液中に浸漬してELOを行った(すなわち、AlAs犠牲層を選択的にエッチングする)。
図3に、リフトオフしたGaAs太陽電池活性層の写真を示す。薄膜をBCl
3およびArガスでプラズマエッチングすることによって清浄化した。次いで、太陽電池の作製のために、これを1/4のウエハーの試片に切断した。
【0070】
上述のように、ELOプロセスの間に親GaAsウエハー表面を保護するために、保護的エッチング停止層(0.1μm厚さのInGaP)および保護層(0.1μm厚さのGaAs)を成長させることによって、2層保護スキームを形成した。
図4(b)に示すように、希HFにさらされたGaAsは、清浄にエッチング除去することが難しい残留物または表面混入物質を発現させうる。この問題を軽減するために、ELOを完了した後、GaAsウエハーおよび保護層をRTAツールを用いて熱処理することによって、GaAs保護層表面を意図的に分解した。RTAをN
2条件下で行った。温度を30秒間で500℃まで上昇させた。ウエハーを500℃で60秒間保持した。熱処理後、大きなスケールの混入物質の大部分が除去された。
【0071】
図5は、RTA処理の(a)前および(b)後の保護層表面の顕微鏡像を示す。この像は、アニーリングプロセスの間に大きなスケールの混入物質の大部分が除去されたことを示す。分解したGaAs表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を
図4(c)に示す。RTAの後、保護層およびエッチング停止層を、H
3PO
4:H
2O
2:H
2O(3:1:25)およびH
3PO
4:HCl(1:1)をそれぞれ用いたウエットエッチングによって除去した。
図4は、(d)保護層除去後のウエハーの表面粗さ(二乗平均平方根(RMS)粗さが0.71nm)が、(a)未使用の(フレッシュな)ウエハーのもの(RMS粗さが0.62nm)と同程度であり、ほとんど同じ品質を示したことを表す。
【0072】
元のおよび後続のエピタキシャル層の成長品質を比較するために、保護層を有するウエハーを7.5%HF:H
2Oの希釈溶液に48時間さらすことによってELOプロセスをシュミレートした。RTA処理およびエピタキシャル保護層除去の後、基板をGSMBEチャンバに戻し脱気した。次いで、層構造を、参照構造と同じ構造で元の親基板上に成長させた。
図6に示すように、元のウエハーおよび再利用したウエハーの両方の上のGaAsエピタキシャル層のGaAs太陽電池の性能、ホール効果、フォトルミネセンス(PL)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)および反射高エネルギー電子回折(RHEED)測定は、ほぼ同じエピタキシャル膜の電気的および光学的品質を示した。断面STEM像から、未使用および再成長したエピタキシャル膜の両方でほぼ完璧な結晶成長が確認された(
図6(b))。RHEEDパターンもまた、これらのウエハーに同じ表面品質を示した(
図6(b)の挿入図)。さらに、エネルギー分散分光分析(EDS)、およびX線光電子分光分析(XPS)によって研究された表面化学は、元のウエハーと再利用したウエハーとの間に有意な差を示さなかった(図示せず)。元のウエハーおよび再利用したウエハー上に成長させたGaAs p/n接合太陽電池は、模擬AM1.5G照射下で約23%の電力変換効率であり、ほとんど同じ性能を示した。
【0073】
上記実施例以外で、または別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用されている構成要素の量、反応条件、分析測定、およびその他を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語で修飾されることができると理解される。その結果、特にことわりがない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明で得ようとされる所望の特性によって変化してもよい近似値である。最低限でも、および特許請求の範囲に対して均等論の適応を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは有効桁の数字であり、および通常の四捨五入法を踏まえると解釈されるべきである。
【0074】
本開示にて広範にわたって説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、別段の指示がない限り、特定の例で説明された数値はできる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は個別の試験測定に含まれる標準偏差に必然的に起因する一定の誤差を本質的に含む。
【0075】
当業者であれば、本明細書および実施の検討により、本明細書中に記載されているデバイスおよび方法の他の実施形態は明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なされ、記載されたデバイスおよび方法の真の範囲は特許請求の範囲によって示されることを意図する。
【国際調査報告】