特表2015-512282(P2015-512282A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2015-512282(P2015-512282A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(54)【発明の名称】靭帯又は腱を修復する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20150331BHJP
   A61F 2/08 20060101ALI20150331BHJP
【FI】
   A61L27/00 Z
   A61F2/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-500942(P2015-500942)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(85)【翻訳文提出日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2013056045
(87)【国際公開番号】WO2013139955
(87)【国際公開日】20130926
(31)【優先権主張番号】61/613,998
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】307002312
【氏名又は名称】ティーアールビー ケメディカ インターナショナル エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マチース,バ−クハード
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB18
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB08
4C081CD081
4C081CD121
4C081CD122
4C081CD29
4C081CE02
4C081DA02
4C081DB03
4C081DC02
4C081DC03
4C097AA21
4C097BB01
4C097CC02
4C097DD11
4C097DD15
4C097EE19
(57)【要約】
本発明は、患者の靭帯及び/又は腱を修復する方法に関する。該方法は、靭帯又は腱にパッチを取り付けるステップを含む。該パッチは可撓性及び生体適合性を有し、支持層及び基質層を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の靭帯又は腱を修復する方法であって、
前記靭帯又は腱にパッチを取り付けるステップ、
を含み、
前記パッチは、可撓性及び生体適合性を有し、
コラーゲンを含む支持層と、
コラーゲン及びヒアルロン酸を含む基質層と、
を備える、
方法。
【請求項2】
前記支持層は、コラーゲンシート層である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持層は、ブタ、ウシ若しくはウマの心膜、又はブタの分層皮膚を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持層は、セル多孔質である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持層は、乾燥したブタの分層皮膚層を有する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基質層は、多孔性のコラーゲン層である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基質層は、コラーゲン繊維基質を含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基質層の前記コラーゲンには、ブタ由来、ウマ由来、ウシ由来又は植物由来のコラーゲンが含まれる、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基質層の前記ヒアルロン酸には、天然の非ヒトヒアルロン酸が含まれる、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基質層の前記天然ヒアルロン酸には、細菌発酵源から得られる天然の非ヒトヒアルロン酸が含まれる、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基質層は、繊維状、粉末状、ゲル状又はクリーム懸濁液状のヒアルロン酸を含む、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基質層は、コラーゲン繊維と前記コラーゲン繊維の空き空間に分散された天然ヒアルロン酸とが散在する、多孔性のコラーゲン性複合パッドである、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基質層は、鎮痛剤と、抗炎症剤と、抗生物質と、靭帯及び/又は腱の再生を促進する作用物質とから選択される1以上の化合物を更に含む、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記靭帯及び/又は腱の再生を促進する作用物質は、増殖因子、ジアセレイン、レイン、キトサンとその誘導体、多血小板血漿(PRP)及びポリ乳酸から成る群から選択される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記パッチは第3の層を更に有し、前記第3の層は、前記支持層と前記第3の層との間に前記基質層が位置するように、前記基質層の上に配置される、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の層は、コラーゲンシート層である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の層は、ブタ、ウシ若しくはウマの心膜、又はブタの分層皮膚を含む、
請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の層は、セル多孔質である、
請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の層は、乾燥したブタの分層皮膚層を有する、
請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記パッチは、0.5〜2mmの厚さを有する、
請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記靭帯又は腱は、上肢及び下肢、肩、肘、手首、手、臀部、膝、足、並びに足首の頭部、頸部、脊椎、胸部、骨盤に接続された靭帯の群と、上肢及び下肢、肩、肘、手、臀部、膝、足、並びに足首の腱の群とから選択される、
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記靭帯は、輪状甲状靱帯、歯周靭帯、毛様体小体、乳房提靱帯、前仙腸靱帯、後仙腸靱帯、仙結節靱帯、仙棘靱帯、下恥骨靭帯、上恥骨靭帯、陰茎提靱帯、掌側橈骨手根靱帯、背側橈骨手根靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯、十字靱帯、前十字靭帯(ACL)、外側側副靱帯(LCL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)及び膝蓋靱帯から成る群から選択され、又は
前記腱は、上肢及び下肢に接続された腱と、胸部、腹部、脊椎、頭部及び頸部の腱と、臀部及び骨盤の領域、膝、足、並びに足首の腱と、四頭筋腱と、膝蓋腱と、前脛骨筋腱及び後脛骨筋腱と、腓骨腱と、アキレス腱と、足及び足指の伸筋腱、屈筋腱、外転筋腱及び内転筋腱と、肩、肘及び手の腱と、回旋筋腱板の腱と、肩甲下筋腱と、三角筋及び胸筋の腱と、上腕二頭筋腱と、上腕三頭筋腱と、手及び手指の伸筋腱、屈筋腱、外転筋腱及び内転筋腱とから成る群から選択される、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者は、靭帯又は腱に障害をもち、前記障害には、前記靭帯又は腱の炎症、自己免疫疾患、感染、緊張、過労、断裂、捻挫、裂離、過剰伸張及び裂傷が含まれる、
請求項1〜22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野に属し、靭帯又は腱を修復する方法に関する。該方法は、靭帯又は腱の修復パッチの使用を含む。
【背景技術】
【0002】
靭帯は特殊化した結合軟部組織であり、異なる器官や組織を結合し、骨と骨とを繋ぐ。骨と骨を繋ぐ場合、靭帯は、骨が自然に動くのに十分な柔軟性をもつことにより、関節を安定させる。また、加えられた力に対する抵抗を抑えるように頑丈であり伸張しない。腱は、筋肉と骨を接続し、張力に耐えることができる。また、腱は移動運動中の力を受動的に調節し、能動的に作用することなく追加的な安定性を与える。腱は、その弾性により、高い効率でエネルギーを蓄積し回収することができる。腱及び靭帯では、コラーゲン繊維の束が、プロテオグリカン成分を含む結合性の基質に埋め込まれている。これらコラーゲン繊維の束が、荷重を負う要素となる。腱ではコラーゲン繊維がほぼ平行な構造に配置されているので、腱は1方向の負荷に耐えることができる。靭帯では、コラーゲン繊維は腱ほど平行に配置されておらず、したがって靭帯は、1方向の主な引張応力に耐えることができる一方、他方向からの圧力にはそれほど耐えられない。
【0003】
毎年何十万もの人が、特に膝、肩及び足首の靭帯を捻挫、裂傷又は断裂し、或いは、特に肩、膝、足及び足首といった上肢及び下肢の腱を負傷する。このような損傷を受けることが多い靭帯のひとつに、膝の前十字靭帯(ACL)がある。ACLは、第1に前脛骨の並進を安定させ、第2に膝の外反又は内反動作を安定させる。ACLは、スポーツによる負傷や交通事故に関連する屈曲−回転−外反力を原因として、断裂又は裂傷を負うことが多い。断裂や裂傷の結果として、可動性が極度に制限され、痛みや不快感が生じ、スポーツや運動に参加できなくなることがある。米国だけでも毎年20万人以上がACLを裂傷又は断裂し、ACLの再建手術とその後のリハビリテーションに約30億ドルもかかっている。
【0004】
ACLは治癒能力が低いということが広く知られている。ACLが重度の裂傷又は断裂を負い関節が不安定になった場合は、外科的な全置換及び再建が必要となる。最も一般的なACLの再建方法は、切れた靭帯を患者自身の組織(自家移植片としても知られる)で置換することである。靭帯を置換する際の他の選択肢には、他の生物由来のドナー組織(同種移植片としても知られる)及び合成移植片がある。しかしながら、これらの治療法には、様々な関連問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願公開第95/2550号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0123805号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0059416号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2007/087353号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0031923号明細書
【特許文献6】米国特許第3,797,047号明細書
【特許文献7】米国特許第4,187,558号明細書
【特許文献8】米国特許第4,483,023号明細書
【特許文献9】米国特許第4,610,688号明細書
【特許文献10】米国特許第4,792,336号明細書
【特許文献11】米国特許第5,061,283号明細書
【特許文献12】米国特許第5,263,984号明細書
【特許文献13】米国特許第6,964,685号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0261736号明細書
【特許文献15】米国特許第5,245,098号明細書
【特許文献16】米国特許第6,737,072号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Carbohydrate Metabolism and its Disorders、Dickens他編、第1巻、Academic Press(1968)
【非特許文献2】Aspinall著、Polysaccharides、Pergamon Press、Oxford(1970)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外科医たちは、コラーゲン繊維と、生分解性ポリマーと、その複合体を含む靭帯構造物を考えてきた。ACL由来と皮膚由来の繊維芽細胞を播種したACL再建用のコラーゲン足場は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献2には、3次元足場組成物を用いることが記載されており、該組成物は、断裂した前十字靭帯(ACL)を修復するために、コラーゲン等の材料から成る誘導性コアを有する。また、特許文献2には、該組成物を断裂した前十字靭帯に取り付ける方法も記載されている(特許文献3も参照)。特許文献4には、裂傷又は断裂した靭帯を修復するための3次元足場が開示されている。該足場はタンパク質から構成されてよく、また、ヒドロゲルやコラーゲン等の修復材料で前処理されてよい。特許文献5には、裂傷した靭帯を修復するために該靭帯に適用される、コラーゲンゲル及びコラーゲン−Matrigel(登録商標)ゲルの作製が記載されている。このようなコラーゲン基質は、ほとんどが単一成分のものである。
【0008】
多成分の靭帯プロテーゼについて、多くの記載がある(例えば特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10を参照)。特許文献10には、グリコール酸又は乳酸のエステル結合を含む吸収性の成分を含む装置が記載され、該装置の他の部分は非吸収性の成分を含む。該装置は、吸収性の成分を含む複数の繊維を有し、靭帯又は腱の修復において平坦な編み構造として用いることができる。必要な引張強さは、最終的な編み構造のデニールを大きくすることで得られる。特許文献11に開示される複合成分装置は、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエステル/ポリエーテルブロック共重合体とを含み、靭帯修復に用いられる。特許文献12に記載の人工靭帯は、2種類の密度の生体再吸収可能なフィラメントの複合体である。しかしながら、靭帯及び腱を修復する方法の技術分野では、新しい靭帯又は腱を機能的で強いものにするために、移植片組織の細胞の内殖と化生転換を増進するということが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、靭帯又は腱を負傷(例えば関節靭帯を負傷)した場合に靭帯又は腱を修復、再生又は再建する方法を提供する。該方法は、靭帯又は腱が損傷を受けた領域に生体適合性を有する修復パッチを移植するステップを含む。該移植パッチは、細胞の内殖及び新しい組織の形成を支える。
【0010】
本発明は、患者の靭帯又は腱を修復する方法に関する。該方法は、該靭帯又は腱にパッチを取り付けるステップを含む。該パッチは可撓性及び生体適合性を有し、コラーゲンを含む支持層と、コラーゲン及びヒアルロン酸を含む基質層とを備える。
【0011】
本方法の様々な実施形態において、該支持層は、コラーゲンシート層である。
【0012】
本方法の特定の実施形態において、該支持層は、ブタ、ウシ若しくはウマの心膜、又はブタの分層皮膚を含む。
【0013】
本方法の実施形態によっては、該支持層はセル多孔質である。
【0014】
本方法の様々な実施形態において、該支持層は、乾燥したブタの分層皮膚(XENODERM)層を有する。
【0015】
本方法の実施形態によっては、該基質層は、多孔性のコラーゲン層である。
【0016】
本方法の特定の実施形態において、該基質層は、コラーゲン繊維基質を含む。
【0017】
本方法の特定の実施形態において、該基質層の該コラーゲンには、ブタ由来、ウマ由来、ウシ由来又は植物由来のコラーゲンが含まれる。
【0018】
本方法の実施形態によっては、該基質層の該ヒアルロン酸は、天然の非ヒトヒアルロン酸である。
【0019】
本方法の様々な実施形態において、該基質層の該天然ヒアルロン酸には、細菌発酵源から得られる天然の非ヒトヒアルロン酸が含まれる。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、該基質層は、繊維状、粉末状、ゲル状又はクリーム懸濁液状のヒアルロン酸を含む。
【0021】
本方法の更なる実施形態において、該基質層は、コラーゲン繊維と該コラーゲン繊維の空き空間に分散された天然ヒアルロン酸とが散在する、多孔性のコラーゲン性複合パッドである。
【0022】
本方法の実施形態によっては、該基質層は更に、鎮痛剤と、抗炎症剤と、抗生物質と、靭帯又は腱の再生を促進する作用物質とから選択される1以上の化合物を含む。
【0023】
本方法の特定の実施形態において、該靭帯又は腱の再生を促進する作用物質は、増殖因子、ジアセレイン、レイン(Rhein)、キトサンとその誘導体、多血小板血漿(PRP)及びポリ乳酸から成る群から選択される。該増殖因子は、例えば繊維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換増殖因子(TGF−β1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血液、骨形成タンパク質(BMP)、骨誘導因子(OIF)、フィブロネクチン(FN)、内皮細胞増殖因子(ECGF)、セメント質付着抽出物(Cementum Attachment Extract:CAE)、ケタンセリン、ヒト成長ホルモン(HGH)、動物の成長ホルモン、上皮細胞増殖因子(EGF)、ヒトα−トロンビン、インスリン様増殖因子(IGF−1)、血小板由来増殖因子(PDGF、PDGF−AB)、歯周靭帯走化因子(Periodontal Ligament Chemotactic Factor:PDLGF)及びソマトトロピンから成る群から選択されてよい。
【0024】
別の実施形態において、該作用物質は、生細胞(例えば繊維芽細胞や幹細胞)を含む。幹細胞が用いられる場合、特定の実施形態では、ヒト胚性幹細胞は除外される。
【0025】
本方法の更なる実施形態において、該パッチは更に第3の層を有する。該第3の層は、該支持層と該第3の層との間に該基質層が位置するように、該基質層の上に配置される。
【0026】
本方法の実施形態によっては、前記第3の層は、コラーゲンシート層である。
【0027】
本方法の特定の実施形態において、該第3の層は、ブタ、ウシ若しくはウマの心膜、又はブタの分層皮膚を含む。
【0028】
本方法の更なる実施形態において、該第3の層はセル多孔質である。
【0029】
本方法の特定の実施形態において、該第3の層は、乾燥したブタの分層皮膚(XENODERM)層を有する。
【0030】
本方法の実施形態によっては、該パッチは、0.5〜2mmの厚さを有する。
【0031】
本方法の更なる実施形態において、該靭帯又は腱は、上肢及び下肢(肩、肘、手首、手、臀部、膝、足及び足首等)の頭部、頸部、脊椎、胸部、骨盤に接続された靭帯の群と、上肢及び下肢(特に肩、肘、手、臀部、膝、足及び足首)の腱の群とから選択される。
【0032】
本方法の特定の実施形態において、該靭帯は、輪状甲状靱帯、歯周靭帯、毛様体小体、乳房提靱帯、前仙腸靱帯、後仙腸靱帯、仙結節靱帯、仙棘靱帯、下恥骨靭帯、上恥骨靭帯、陰茎提靱帯、掌側橈骨手根靱帯、背側橈骨手根靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯、十字靱帯、前十字靭帯(ACL)、外側側副靱帯(LCL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)及び膝蓋靱帯から成る群から選択される。
【0033】
本方法の様々な実施形態において、該腱は例えば、上肢及び下肢に接続された腱と、胸部、腹部、脊椎、頭部及び頸部の腱と、臀部及び骨盤の領域、膝、足、並びに足首の腱と、四頭筋腱と、膝蓋腱と、前脛骨筋腱及び後脛骨筋腱と、腓骨筋腱と、アキレス腱と、足及び足指の伸筋腱、屈筋腱、外転筋腱及び内転筋腱と、肩、肘及び手の腱と、回旋筋腱板の腱と、肩甲下筋腱と、三角筋及び胸筋の腱と、上腕二頭筋腱と、上腕三頭筋腱と、手及び手指の伸筋腱、屈筋腱、外転筋腱及び内転筋腱とから成る群から選択される。更に別の靭帯及び腱が含まれてよい。
【0034】
本方法の実施形態によっては、患者は靭帯又は腱に障害をもち、該障害には、靭帯又は腱の炎症、自己免疫疾患、感染、緊張、過労、断裂、捻挫、裂離、過剰伸張及び裂傷が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する靭帯又は腱の積層修復パッチ10の断面図である。修復パッチ10は、2つの層すなわち支持層22及び基質層30を有し、積層体12を形成する。図示されるパッチの基質の組成では、コラーゲン及びヒアルロン酸は繊維として配置され、支持層は多孔性(図1A)又は無孔性(図1B)である。
図1B】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する靭帯又は腱の積層修復パッチ10の断面図である。修復パッチ10は、2つの層すなわち支持層22及び基質層30を有し、積層体12を形成する。図示されるパッチの基質の組成では、コラーゲン及びヒアルロン酸は繊維として配置され、支持層は多孔性(図1A)又は無孔性(図1B)である。
図2A】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する、靭帯又は腱の2層又は3層の積層修復パッチの特定の実施形態を示す断面図である。コラーゲン及びヒアルロン酸が繊維として配置されるパッチの基質の組成を示す図である。
図2B】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する、靭帯又は腱の2層又は3層の積層修復パッチの特定の実施形態を示す断面図である。コラーゲンが繊維として配置されヒアルロン酸がクリーム懸濁液又は粘弾性溶液として配置される、パッチの内部基質の組成を示す図である。
図2C】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する、靭帯又は腱の2層又は3層の積層修復パッチの特定の実施形態を示す断面図である。それぞれ力学的安定化機構を有する支持層及び第3の層を示す図である。
図2D】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する、靭帯又は腱の2層又は3層の積層修復パッチの特定の実施形態を示す断面図である。力学的安定化機構を有する支持層を有する実施形態を示す図である。
図2E】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する、靭帯又は腱の2層又は3層の積層修復パッチの特定の実施形態を示す断面図である。支持層がその中に複雑な力学的安定化機構を有する実施形態を示す図である。
図3】本発明の方法における、滅菌可能であり可撓性を有する、靭帯又は腱の積層修復パッチの実施形態を示す断面図である。該修復パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有する。層22は多孔性の支持層であり、ここで層16は、任意に閉塞性又は多孔性である。基質の構成は、図2Eに示すものと同様である。
図4】本発明のパッチ(層A)を移植片に取り付ける手順の一例を示す図である。図中、自家増殖因子により増強された接着剤を移植片とパッチとの間に注入し、円形の糸を用いることにより、パッチは移植片に固定される。パッチは、支持層及び基質層を有する場合、基質層又は支持層が負傷部位に面するように取り付けられてよく、実施形態によっては、基質層が負傷部位に面することが好ましい。更なる実施形態において、パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有する場合、支持層又は第3の層が負傷部位に面するように取り付けられてよい。例示のパッチは、図1A図1B図2A〜2E及び図3に示される。
図5】骨ばった取付具のない靭帯又は腱の移植片を示す追加的な概略図である。本発明のパッチ(層A)(例えば図1A図1B図2A〜2E及び図3に示されるようなパッチ)は、移植片のサイズにほぼ相当する長さ及び幅に切られる。パッチは、自家増殖因子により増強された接着剤を移植片とパッチとの間に注入し、円形の糸を用いることにより、移植片に固定される。
図6A】フィブリン−血栓(59)から損傷した腱又は靭帯(61)と修復パッチの基質(12)とに移動し、繊維芽細胞(62)に分化する前駆細胞(60)を示す図である。腱又は靭帯の修復パッチの側面図である。
図6B】フィブリン−血栓(59)から損傷した腱又は靭帯(61)と修復パッチの基質(12)とに移動し、繊維芽細胞(62)に分化する前駆細胞(60)を示す図である。腱又は靭帯の修復プロセスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
靭帯及び腱の修復の分野において直面する問題のひとつに、靭帯又は腱の負傷部位でどのように靭帯又は腱の組織の再生を促進するのかということがある。
【0037】
本明細書で用いられる「靭帯又は腱の負傷」という表現は、靭帯又は腱に障害を与える慢性又は急性の状態を指す。靭帯又は腱の負傷の例としては、靭帯又は腱の炎症、自己免疫疾患、感染、緊張、過労、断裂、捻挫、裂離、過剰伸張、裂傷がある。
【0038】
本発明の目的は、靭帯又は腱の組織の機能的及び解剖学的回復につながる、靭帯又は腱を修復する方法を提供することである。
【0039】
本明細書で用いられる「靭帯又は腱の修復」という表現は、靭帯又は腱の負傷(靭帯又は腱に障害を与える慢性又は急性の状態)が治癒するか少なくとも軽減されることにより、靭帯又は腱の機能が少なくともある程度回復する、又は完全に回復することを意味する。
【0040】
非コラーゲン性の合成ポリマーのみに基づく既知の吸収性プロテーゼの欠点は、そのようなプロテーゼでは、損傷部位を治癒するというコラーゲン等の生体高分子の有用な特性を発揮できないということである。よく知られているように、繊維芽細胞等の傷を治癒する細胞は、コラーゲン等の特定の生体高分子に対して特別な親和性を有する。このような特性を、コラーゲンの走化性効果という。
【0041】
本発明は、本発明の発明者の驚くべき発見に基づく。すなわち、コラーゲンを含む支持層とコラーゲン及びヒアルロン酸を含む基質層とを備え、可撓性及び生体適合性を有するパッチは、靭帯及び腱の修復に用いられると効果的である。また、そのようなパッチは、軟骨下の血液とMSC又は添加された繊維芽細胞の細胞培養及びフィブリン接着剤と共に、靭帯の修復プロセス又は移植された靭帯移植片構造の人工靭帯への転換を強く促進するというバイオファクトリー(Biofactory)を示し得る。腱修復においてパッチを用いる場合も同様である。
【0042】
よって、本発明は、ヒトの患者等の被検体の靭帯又は腱を修復する方法に関する。該方法は、該被検体の靭帯又は腱に上記パッチを取り付けるステップを含む。
【0043】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、被検体の靭帯を修復する方法に関する。該方法は、該被検体の靭帯に上記パッチを取り付けるステップを含む。
【0044】
さらに、様々な実施形態において、本発明は、被検体の腱を修復する方法に関する。該方法は、該被検体の腱に上記パッチを取り付けるステップを含む。
【0045】
被検体は、ヒトの患者であってよい。
【0046】
請求項に記載の方法は、負傷した靭帯及び腱又は靭帯及び腱の移植片が従来よりも速く再生するように促進できるという点で、効果的である。したがって、請求項に記載の方法は、患者が機能的にも解剖学的にもより早く回復するという点で、有益である。
【0047】
さらに、請求項に記載の方法は、従来技術の方法で行われるような細胞培養が靭帯又は腱を修復する本方法には不要であるという点で、効果的である。しかしながら、実施形態によっては、本方法は、靭帯又は腱の修復を更に促進するために、培養細胞を含む修復パッチを使用するステップを含んでよい。
【0048】
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、負傷部位における線維組織の形成を促進しない。
【0049】
このように、本発明は、靭帯又は腱を修復する方法に関する。該方法は、該靭帯又は腱にパッチを取り付けるステップを含む。ここで、該パッチは可撓性及び生体適合性を有し、コラーゲンを含む支持層と、コラーゲン及びヒアルロン酸を含む基質層とを備える。
【0050】
該パッチは、生体受容性及び生体適合性を有し、容易に使用することができる。該パッチは、比較的短い時間で取り付けることができ、また、必要な付着特性及び粘着特性を有する。パッチは、無毒であり柔軟である。また、パッチは治癒プロセスや新しい靭帯又は腱の組織形成を阻害せず、他の妨げになる組織又は望ましくない組織の形成を促進しない。
【0051】
ヒトでの使用に関して本発明を説明するが、本明細書で説明する本発明の方法は、特定の実施形態において、哺乳類や鳥類等の動物に適用されてよい。様々な実施形態において、靭帯又は腱を修復する本方法は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒト等の、負傷した靭帯又は腱の修復が求められる哺乳類に適用される。しかしながら、この列挙は包括的なものではなく、この修復パッチはいかなる動物にも容易に用いることができる。
【0052】
ある状態に関して「治療すること」、「治療」、「修復」、「修復すること」、「治癒」、「治癒すること」という表現を本明細書で用いる場合、プロトコルを実行することを意味する。該プロトコルには、例えば靭帯又は腱の切断等の負傷のような、本明細書に記載の状態の徴候又は症状を軽減する目的で、1以上の薬剤を被検体(ヒト等)に投与することや、患者に手術(低侵襲手術等)を行うことが含まれてよい。また、上記表現は、例えば再発生を防止することによる、そのような状態の防止も包含する。再発生は、切断又は負傷した靭帯又は腱が適切に治癒せず、関節が不安定で痛みを伴う場合に起こり得る。また、防止には、別の負傷から回復する間に靭帯に生じることがある瘢痕組織及び/又は癒着の形成を阻害することが含まれ得る。また、「治療すること」或いは「治療」という表現が用いられる場合、必ずしも完全に徴候又は症状が軽減される必要はなく、治癒する必要もない。
【0053】
特定の実施形態において、本修復パッチは、天然ポリマー及び/又は合成ポリマーを含む層を有する。様々な実施形態において、支持層及び/又は基質層のコラーゲンには、動物由来又は植物由来のコラーゲンが含まれる。
【0054】
特定の実施形態において、支持層及び/又は基質層のコラーゲンは動物から得られるものであってよく、好ましくは哺乳類(イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒト等)から得られるものであってよい。特定の実施形態において、自家修復パッチが用いられる。この場合、コラーゲンは、靭帯又は腱の修復のために修復パッチを用いて治療される被検体から作製される。このような実施形態では、ヒトの患者から得たコラーゲンを分離して、靭帯又は腱の修復のために後に被検体に移植されるパッチを作製してよい。
【0055】
コラーゲンのソースは、コラーゲン組織であってよい。コラーゲン組織には、哺乳類では皮膚(皮革)、腱、腸、大腿筋膜、心膜及び硬膜が含まれる。コラーゲンを得る方法のひとつとして、小腸の粘膜下層を用いることがある。コラーゲン層は、象牙質及び皮質骨(例えばブタ又はウシの象牙質及び皮質骨)から作製されてよい。
【0056】
例えば、コラーゲンは、I型、II型、III型、IV型、V型、IX型又はX型とすることができる。好ましくは、該コラーゲンはI型である。
【0057】
I型コラーゲンは、ヒトの前十字靭帯の細胞外基質における主な構成要素であり、生物工学的に足場を製造する際のひとつの選択肢となる。コラーゲンは主に繊維状で存在するので、コラーゲンの体積分率、繊維方向及び架橋度を変えることにより、非常に様々な力学特性をもつ材料を設計することが可能である。また、細胞浸潤速度及び足場分解といった生物学的特性は、孔のサイズ、架橋度及び追加的な化合物(グリコサミノグリカン、増殖因子、サイトカイン等)の使用を変えることにより、変更されてよい。特定の実施形態において、本明細書に記載のコラーゲンを含む層は患者自身の皮膚から作製されるので、移植片の抗原性を最小限に抑えることができる。
【0058】
サイトカインは、細胞間シグナル伝達タンパク質の小分子であり、数多くの細胞から分泌される。サイトカインは、タンパク質、ペプチド又は糖タンパク質とすることができる。サイトカインは、その推定される機能、分泌細胞又は作用標的に基づき、リンホカイン、インターロイキン(IL)及びケモカインに分類されている。サイトカインの群には、例えばIL−2、IL−4、インターフェロンγ(IFN−γ)、TGF−β、IL−10、IL−13、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、IL−17及びIL−18が含まれる。
【0059】
様々な実施形態において、該支持層は、コラーゲンシート層である。
【0060】
特定の実施形態において、該支持層は、生体適合性、生分解性、親水性及び/又は非反応性を有し、決められた構造をもつ能力を有するか又は決められた構造をもつことが好ましい。
【0061】
特定の実施形態において、支持コラーゲンシート層は、多孔性であっても無孔性であってもよい。
【0062】
本発明において、「多孔性」とは、層が細胞透過性であり、よって細胞が通り抜けられる孔を有することを意味する。特定の実施形態において、支持層は、直径1μm〜2mmの孔を有する。
【0063】
一方、無孔性の層は、細胞が通り抜けられる孔をもたない。特定の実施形態において、無孔性の層は、細胞は通り抜けられないが分子は通り抜けられる孔を有する。該層を通り抜けられる分子は、水や栄養素(例えばグルコース)等の小分子のみであってもよいし、或いは、タンパク質等のより大きな分子も含んでよい。他の実施形態において、無孔性の層は、完全に非透過性である。特定の実施形態において、支持コラーゲンシート層は、セル多孔質である。
【0064】
様々な実施形態において、支持層は、靭帯又は腱の修復を促進する作用物質で被覆又は浸潤される。該作用物質として、例えばヒアルロン酸、血管新生因子、増殖因子、抗炎症化合物、サイトカイン、コラゲナーゼ阻害剤がある。該作用物質は、直ちに体内に拡散し修復部に直行することができ、且つ/又は徐々に放出されるか、若しくは支持層に常駐することができる。徐々に放出されるか支持層に常駐する場合、該作用物質は、徐放性剤又は遅延放出剤等の制御放出剤として製剤することができる。
【0065】
様々な実施形態において、支持層は、心膜又は分層皮膚を含む。
【0066】
心膜は、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒツジ及びヒトの心膜から成る群から選択されてよい。
【0067】
分層皮膚は、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒツジ及びヒトの分層皮膚から成る群から選択されてよい。
【0068】
様々な実施形態において、支持層は、ブタの心膜又はブタの分層皮膚を含む。実施形態によっては、支持層は、乾燥したブタの分層皮膚を含む。
【0069】
コラーゲン性支持層の孔は天然由来であってもよいし、コラーゲン層の作製後に行われる処理の結果として得られるものであってもよい。例えば、スタンピング、パンチング、ダイカッティング及び/又はブランキングによって、支持層に孔を形成してよい。
【0070】
一実施形態において、支持層は心膜を含む。心膜は本来無孔性であり、すなわち基本的に孔をもたないので、膜に孔を形成する処理を受ける。この処理により、心膜を含むセル多孔質のコラーゲン性の層が得られる。例えば、スタンピング、パンチング、ダイカッティング及び/又はブランキングによって、心膜に孔を形成してよい。特定の実施形態において、支持層は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒツジ及びヒトのセル多孔質の心膜から成る群から選択されるセル多孔質の心膜を含む。ある実施形態において、支持層はセル多孔質のブタの心膜を含む。
【0071】
様々な実施形態において、支持層は、乾燥した分層皮膚の層を有する。該分層皮膚は、イヌ由来、ネコ由来、ウマ由来、ウシ由来、ブタ由来、サル由来、類人猿由来、チンパンジー由来、ヒツジ由来及びヒト由来のものから選択されてよい。一実施形態において、支持層は、乾燥したブタの分層皮膚の層(XENODERM)を有する。
【0072】
このように、図1A及び図1Bに示すように、本発明で用いる修復パッチは、移植可能な靭帯又は腱の修復パッチ10であってよい。修復パッチ10は2つの層を備え、該2つの層は生体適合性を有し生理的に吸収可能であり、靭帯又は腱の負傷の場合に、靭帯又は腱の組織の再生をインサイチュ(in situ)で促進する働きをする。この靭帯又は腱の修復パッチ10は、可撓性を有する積層体12であり、負傷部位に移植可能で、靭帯又は腱の組織の再生を促進する働きをする。靭帯又は腱の修復パッチ10の目的は、例えば関節鏡又は切開によって靭帯及び/又は腱を負傷した患者に取り付けられた後に、靭帯又は腱の組織の修復をインサイチュ(in situ)で促進することである。該パッチは支持層(図1Aでは多孔性、図1Bでは無孔性)及び基質層30を有してよく、基質層30は、コラーゲン繊維36、ヒアルロン酸繊維40、ジアセレイン46a及びレイン46bを含む。
【0073】
特定の実施形態において、靭帯又は腱の修復パッチ10は、その成分がコラゲナーゼ等のプロテアーゼと相互作用することにより徐々に生分解され、再吸収され、消失する。このような条件から、靭帯又は腱の修復パッチ10の積層体12は、生体適合性を有し且つ生理的に吸収可能な材料で全体が構成される。よって、靭帯又は腱の修復パッチは、移植後に患者体内に留置されても、移植部位から徐々に消失することができる。
【0074】
一般に、基質層は天然材料で形成されてもよいし、合成材料で形成されてもよい。合成基質の場合は、主に高分子材料で形成される。合成基質では、化学組成と構造的配置を慎重に決めることができるという利点がある。合成基質には、非分解性のものもある。非分解性の基質は、修復に役立つ可能性はあるが、再形成により置換されることがない。したがって、非分解性の基質を用いて靭帯又は腱を完全に再生させることができないことがある。また、擦り切れた小片が発生することに伴う問題があるので、持続的に外来材料を関節に残すことは望ましくない。よって、分解性材料が好ましい。分解性の合成基質を設計して、分解速度を調整することができる。
【0075】
特定の実施形態において、基質層はコラーゲン及びヒアルロン酸を含み、好ましくは圧縮性及び/又は弾力性を有し、例えば滑液と炎症プロセスの分解酵素とによる分解に対してある程度の耐性を有するように作製される。通常の関節動作の一端を担う滑液は、血栓形成を防ぐ性質をもつ。
【0076】
基質層は、形状が維持されるように固体材料であってもよいし、その形状及び/又は大きさを変更できる半固体材料であってよい。基質層は、適宜伸縮できる伸張可能な素材で形成されてよい。特定の実施形態において、基質層は、該基質層が接触するか又は該基質層に添加される血漿や血液等の体液、細胞、タンパク質、ポリマー、液体、ヒドロゲル等の物質を吸収することができる。
【0077】
更なる実施形態において、該基質層は、多孔性のコラーゲン層である。特定の実施形態において、コラーゲン性基質層の孔は、セル多孔質である。
【0078】
特定の実施形態において、該コラーゲン性基質層は、コラーゲン繊維又は高度に架橋されたコラーゲンを含む。
【0079】
特定の実施形態において、該基質層は、コラーゲン繊維基質を含む。
【0080】
基質層のコラーゲンは、動物由来又は植物由来のものから選択されてよい。
【0081】
特定の実施形態において、基質層のコラーゲンは、例えばイヌ由来、ネコ由来、ウマ由来、ウシ由来、ブタ由来、サル由来、類人猿由来、チンパンジー由来、ヒツジ由来、ヒト由来及び植物由来のコラーゲンから成る群から選択される。
【0082】
様々な実施形態において、基質層のコラーゲンは、ブタ由来、ウマ由来、ウシ由来又は植物由来のコラーゲンを含む。
【0083】
特定の実施形態において、コラーゲン性の基質層は、コラーゲン性で生物学的に許容可能なゾルゲル、ゲル、繊維基質、スポンジ、発泡コラーゲン、足場、ハニカム、ヒドロゲル又はポリマーメッシュを含む。
【0084】
様々な実施形態において、基質は、単純なゾルゲル溶液、コロイド懸濁液であり、ある条件下において、液体(ゾル)から固体材料(ゲル)へと変移する。ゾルは、水性コラーゲンの懸濁液であり、熱処理によってゲルへと変移する。
【0085】
様々な実施形態において、基質層はコラーゲンを含む。該コラーゲンは、I型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、VIII型、IX型及び/又はX型のコラーゲンから作製されてよい。特定の実施形態において、基質層は、I型コラーゲン、II型コラーゲン、IV型コラーゲン、プロテオグリカン若しくはグリコサミノグリカン若しくは糖タンパク質を含む細胞収縮性コラーゲン及び/又はゼラチンで形成されてよい。様々な実施形態において、基質層は更に、アガロース、芳香族有機酸のポリマー、フィブロネクチン、ラミニン、生物活性増殖因子、抗炎症化合物、サイトカイン、エラスチン、フィブリン、ポリ乳酸やポリグルコン酸やポリアミノ酸等のポリ酸から成る天然及び/又は合成のポリマー繊維、ポリカプロラクトン、ポリアミノ酸、ポリペプチドゲル、これらの共重合体又はこれらの組み合わせ含む。特定の実施形態において、基質はゲル溶液基質を含み、該ゲル溶液基質は、熱的に可逆的にゲル化する高分子のヒドロゲルであってよい。
【0086】
様々な実施形態において、基質層は、天然又は非天然のポリマーによって被覆される。該被覆はゲル、特にヒドロゲルを含む。該ゲルは、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、架橋アルギン酸カルシウム及びアルギン酸カルシウムと架橋ヒアルロン酸との混合物から成る群から選択される。
【0087】
ヒアルロン酸(ヒアルロナン又はヒアルロネートとも呼ばれる)は、グリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は自然に存在する生体高分子であり、バクテリアからヒト等の高等動物に至るまで生物学的機能をもつ。動物では、細胞外基質において最も重要な構成要素のひとつである。ヒアルロン酸は、細胞の増殖及び移動に大きな関わりをもち、また、一部の悪性腫瘍の進行に関与している可能性もある。ヒアルロナンは、皮膚、軟骨、硝子体液等の体の組織の多くにおいて、自然に含まれている。したがって、ヒアルロン酸は、このような組織を標的とする生物医学的応用に非常に適している。本発明では、どのような分子量のヒアルロン酸でも用いることができ、例えば約100kDa〜数百万Da、好ましくは500kDa〜6000kDaのヒアルロン酸を用いることができる。様々な実施形態において、基質層のヒアルロン酸は、天然ヒアルロン酸を含む。特定の実施形態において、基質層のヒアルロン酸は、例えばイヌ由来、ネコ由来、ウマ由来、ウシ由来、ブタ由来、サル由来、類人猿由来、チンパンジー由来、ヒツジ由来、ヒト由来、植物由来及び微生物由来のヒアルロン酸から成る群から選択される。
【0088】
様々な実施形態において、基質層のヒアルロン酸は、天然の非ヒトヒアルロン酸を含む。
【0089】
特定の実施形態において、基質層の天然ヒアルロン酸は、細菌発酵源から得られる天然の非ヒトヒアルロン酸を含む。
【0090】
ストレプトコッカス・ズーエピデミカス株を用いた細菌によるヒアルロン酸(HA)の生産が初めて記述されたのは1989年であり、発酵により得られるHAが初めて市販された。
【0091】
超高純度ヒアルロン酸ナトリウム(NovozymesによりHyaCareとして販売)は、新規の非病原性菌株である枯草菌の発酵によって作製される。枯草菌の発酵により得られる製品は、一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe:GRAS)。
【0092】
特定の実施形態において、ヒアルロン酸は、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス源又は枯草菌源のものであってよい。
【0093】
様々な実施形態において、基質層は、繊維状、粉末状、溶液状、ゲル状又はクリーム懸濁液状のヒアルロン酸を含む。
【0094】
特定の実施形態において、コラーゲン基質は、ヒアルロン酸の溶液又はゲルに浸漬される。このようにして、該基質にヒアルロン酸が分散される。
【0095】
様々な実施形態において、基質層は、ヒアルロン酸と共重合したコラーゲンを含む。
【0096】
本発明の方法において用いられる修復パッチは、靭帯又は腱の修復に効果的な特定の分子量範囲比でコラーゲン及びHAを含んでよい。特定の実施形態において、HAの分子量が50万〜600万Daである場合、コラーゲンのHAに対する分子量範囲比は、約0.1:99.9〜約50:50である。
【0097】
特定の実施形態において、基質層は、コラーゲン繊維と、該コラーゲン繊維の空き空間に分散された天然ヒアルロン酸とが散在する、セル多孔性のコラーゲン性複合パッドである。
【0098】
実施形態によっては、基質層は、コラーゲン、ヒアルロン酸及びポリ乳酸(例えばポリ−L−乳酸)を含む。例えば、基質層は、コラーゲン繊維と、該コラーゲン繊維の空き空間に分散された天然ヒアルロン酸及びポリ乳酸(例えばポリ−L−乳酸)とが散在する、セル多孔質のコラーゲン性複合パッドであってよい。
【0099】
基質層は更に、タンパク質、凍結乾燥材料その他適切な材料を含んでよい。この場合、タンパク質は、合成であっても、生体吸収性であっても、天然に存在するタンパク質であってもよい。様々な実施形態において、基質層は、例えばフィブリン、エラスチン、フィブロネクチン及びラミニンから成る細胞外基質タンパク質の群から選択されるタンパク質を含む。
【0100】
凍結乾燥材料は、液体、ゲルその他流体が添加されたとき又は該流体に接触したときに膨張することができる材料である。
【0101】
様々な実施形態において、基質層は更に、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロナン組成物及び様々な合成物質を含む。
【0102】
コラーゲン−グリコサミノグリカン(CG)共重合体は、真皮及び末梢神経の再生においてうまく用いられている。靭帯及び腱等の選択された筋骨格組織の再生を促進する移植片として、スポンジ様の繊維性足場として作製される多孔性の天然高分子が研究されている。スポンジ足場等の足場は、腱(異種移植片、同種移植片、自家移植片)、靭帯、皮膚その他天然状態であるか又は細胞の内殖等の生物学的特徴を促進するように処理された状態の結合組織から作製されてもよい。
【0103】
様々な実施形態において、基質層は、コラーゲン−グリコサミノグリカン(CG)共重合体を含む。
【0104】
グリコサミノグリカン(GAG)又はムコ多糖は、ヘキソサミン残基から成る多糖であり、ヘキソサミン残基は、へキスロン酸又はヘキソース部分のいずれかとグリコシド結合し、おおよそ規則的に互い違いになる。GAGは動物由来であり、組織特異的に分布する(例えば非特許文献1を参照)。GAGと反応することにより、コラーゲンは、もう1つの有益な特性、すなわち動物宿主からの免疫反応(異物反応)を引き起こさないという特性を得る。
【0105】
特定の実施形態において、基質は、例えば硫酸基を含むGAG等のGAGを含む。該硫酸基を含むGAGには、例えばヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、デルマタン硫酸及びケラタン硫酸がある。
【0106】
他のGAGも、本明細書に記載の基質を形成するのに適する可能性がある。当業者であれば、日常的な実験を行うだけで、他の適切なGAGを確認することができる。ムコ多糖についての詳細な説明は、非特許文献2を参照。
【0107】
特定の実施形態において、基質は、少なくとも1以上のコラーゲン−GAG共重合体を含む。該共重合体には、例えばヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン6硫酸、コンドロイチン4硫酸、デルマタン硫酸及びケラタン硫酸が含まれる。
【0108】
本発明の特定の態様において、基質層は、スポンジ構造又はスポンジ様構造を有する。
【0109】
スポンジ足場を成す材料は、親水性であってよい。スポンジ足場は、適宜膨張及び収縮することができる。例えば、スポンジ足場は、修復部位に移植される前又は移植されている間に圧縮されてよい。圧縮されたスポンジ足場は、修復部位内で膨張することができる。スポンジ足場は、修復部位に配置される際には凍結乾燥及び/又は圧縮されて、配置後に膨張してよい。スポンジ足場は、修復部位の血液等の流体に接触した後に膨張してもよいし、修復部位に添加される血液等の流体に接触した後に膨張してもよい。スポンジ足場は、多孔性であってよい。スポンジ足場は、修復部位に移植される前に、液体状、ゲル状又はヒドロゲル状の修復材料に浸漬又は被覆されてよい。スポンジ足場を被覆又は浸漬すると、比較的輪郭がはっきりしない欠陥領域への移植が容易になり、また、特に大きい欠陥領域を埋めることができる。好ましい実施形態では、スポンジ足場はヒドロゲルで処理される。本発明において有用な足場及び修復材料の例は、特許文献13、特許文献3及び特許文献14に記載されており、その全ての記載内容を参照することによりここに援用する。これにより、本願書類に開示される全ての基質被覆材は、スポンジ足場基質に適する被覆材としてここに明示的に開示される。
【0110】
様々な実施形態において、コラーゲンはスポンジ足場を形成する。
【0111】
様々な実施形態において、基質層は更に、天然ポリマー、合成ポリマー、吸収性ポリマー及び非吸収性ポリマーから選択される1以上を含む。
【0112】
吸収性ポリマーの例としては、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)複合体、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゼン、エラスチン、絹、セルロース、でんぷん、キトサン、ゼラチン、アルギン酸、シクロデキストリン、ポリデキストロース、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、ポリエチレングリコールテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート(PEGT−PBT)共重合体(PolyActive(登録商標))、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリエチレンオキシド(ポリオキシエチレン又はPEOとしても知られる)、ポリ酸化プロピレン(ポリオキシプロピレン又はPPOとしても知られる)、ポリアスパラギン酸(PAA)、PEO−PPO−PEO(BASFのPluronic(登録商標))、PEO−PPO−PAA共重合体、PLGA−PEO−PLGA、ポリリン酸エステル、ポリ酸無水物、ポリエステル−無水物、ポリアミノ酸、ポリウレタン−エステル、ポリホスファゼン、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリアミド−エステル、ポリケタール、ポリアセタール、グリコサミノグリカン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸エステル、ポリエチレン−酢酸ビニル、シリコーン、ポリウレタン、ポリプロピレンフマレート、ポリデサミノチロシンカーボネート(polydesaminotyrosine carbonates)、ポリデサミノチロシンアリレート(polydesaminotyrosine arylates)、ポリデサミノチロシンエステルカーボネート(polydesaminotyrosine ester carbonates)、ポリデサミノチロシンエステルアリレート(polydesaminotyrosine ester arylates)、ポリオルト炭酸、ポリカーボネート、これらの共重合体若しくは物理的ブレンド、又はこれらの組み合わせがある。
【0113】
「キトサン」及び「キトサンとその誘導体」という表現は、例えばキトサン、キトサン塩酸塩、カルボキシメチルキトサン、キトサン乳酸塩、キトサン酢酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサンコハク酸塩、N−(2−ヒドロキシ)プロピル−3−トリメチルアンモニウムキトサン塩化物、N−トリメチルキトサン塩化物及びこれらの薬学的に許容可能な塩から成る化合物群に関する。
【0114】
非吸収性ポリマーには、例えば、ポリエチレン、ポリアセタール樹脂(Delrin(登録商標)という名称で市販されている)、シリコーン、ポリウレタン、シリコーンとポリウレタンの共重合体、ポリオレフィン(ポリイソブチレン、ポリイソプレン等)、アクリルアミド(ポリアクリル酸、ポリ(アクリロニトリル−アクリル酸)等)、クロロプレンゴム(Neoprene(登録商標)という名称で市販されている)、ニトリル、アクリレート類(ポリアクリル酸塩、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等)、アクリレート類のN−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、アクリルアミド、ポリウレタン及びポリアクリロニトリルとの共重合体、グルコマンナンゲル、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、加硫ゴム並びにこれらの組み合わせが含まれる。ポリウレタンの例としては、熱可塑性ポリウレタン、脂肪族ポリウレタン、セグメント化ポリウレタン、親水性ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン及びシリコーンポリエーテルウレタンがある。本明細書に記載の加硫ゴムは、例えば特許文献15に記載のように、1−ヘキセン及び5−メチル−1,4−ヘキサジエンから作製される共重合体を用いて、加硫プロセスによって作製されてよい。
【0115】
他の適切な非吸収性材料としては、例えば、低度又は高度に架橋された生体適合性を有するホモポリマー、親水性モノマー(例えば2−ヒドロキシアルキルアクリレート(メタクリレート)、N−ビニルモノマー)とエチレン性不飽和の酸及び塩基との共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリガラクツロン酸、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、スルホン化ポリマー、ビニルエーテルのモノマー又はポリマー、アルギン酸、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン及びポリビニルイミダゾールがある。
【0116】
特定の実施形態において、上述のポリマーは、基質層のコラーゲン及び/又はヒアルロン酸と架橋される。
【0117】
当業者には明らかであるように、生体吸収性ポリマーの架橋度に応じて該ポリマーの分解時間を短縮することができ、よって、基質分解速度を制御することができる。
【0118】
様々な実施形態において、基質層は更に、鎮痛剤と、抗炎症剤と、抗生物質と、靭帯又は腱の再生を促進する作用物質とから選択される1以上の化合物を含む。
【0119】
これらの化合物は、本発明において、例えば小分子、タンパク質、RNA、DNA及びPNAから成る群から選択される。
【0120】
よって基質層は、例えば、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、抗炎症化合物、凝固因子、抗プロテアーゼタンパク質(α1−アンチトリプシン等)、血管新生タンパク質(血管内皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子等)、抗血管新生タンパク質(エンドスタチン、アンギオスタチン等)、血液中に存在する他のタンパク質、骨形成タンパク質(BMP)、骨誘導因子(OIF)、フィブロネクチン(FN)、内皮細胞増殖因子(ECGF)、セメント質付着抽出物(Cementum Attachment Extract:CAE)、ケタンセリン、ヒト成長ホルモン(HGH)、動物成長ホルモン、上皮細胞増殖因子(EGF)、ヒトα−トロンビン、形質転換増殖因子(TGF−β)、インスリン様増殖因子(IGF−1)、血小板由来増殖因子(PDGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF、bFGF等)、歯周靭帯走化因子(Periodontal Ligament Chemotactic Factor:PDLGF)、ソマトトロピン等の治療的なタンパク質を含んでよい。また、治療目的で、フィブリン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞外基質タンパク質を含んでよい。
抗炎症化合物は、所定の部位の炎症反応を軽減又は防止する化学物質である。抗炎症化合物の群には、例えばジアセレイン及びレインが含まれる。
【0121】
ジアセレイン46a及びレイン46b(図1及び図2参照)は、炎症性サイトカインの産生及び活性を阻害する。炎症性サイトカインには、例えばインターロイキン1(IL−1)、IL−6、一酸化窒素(NO)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、ADAMTS(A Disintegrin And Metalloprotainase with Thrombospondin Motifs)、フリーラジカル、マトリクスメタロプロテイナーゼがあり、これらはすべて炎症と靭帯及び腱の破壊とに関連する。また、ジアセレイン46a及びレイン46bはTGF−β等の増殖因子の生成を促進し、同様に、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、アグリカン、コラゲナーゼII等の靭帯及び腱の組織にとって重要な成分の発現を促進する。成長ホルモンもまた、靭帯及び腱の組織の成長を促進するものである。
【0122】
特定の実施形態において、基質層は、例えばアスピリン、パラセタモール、ジクロフェナク、イブプロフェン及び水から成る群から選択される小分子を含む。
【0123】
特定の実施形態において、靭帯又は腱の再生を促進する作用物質は、増殖因子、ジアセレイン、レイン、キトサン、多血小板血漿(PRP)及びポリ乳酸から成る群から選択される。よって、実施形態によっては、基質層は、コラーゲン、ヒアルロン酸及びキトサンを含むか、又はこれらから構成される。
【0124】
様々な実施形態において、パッチに含まれるジアセレイン及び/又はレインの量は、約300ng〜5mgの範囲である。特定の実施形態において、パッチに含まれるジアセレイン及び/又はレインの量は、約300ng〜75μgの範囲である。実施形態によっては、基質層に含まれるジアセレイン及び/又はレインの量は、300ng〜5mg、300ng〜1mg、300ng〜750μg、300ng〜500μg、300ng〜250μg、300ng〜100μg、300ng〜75μg、300ng〜50μg、300ng〜25μg、300ng〜10μg、300ng〜5μg、300ng〜2.5μg及び300ng〜1μgから成る群から選択される範囲である。
【0125】
ジアセレイン及び/又はレインは、粉末状で溶液として基質に添加されてよく、或いはジアセレイン及び/又はレインを含むHAゲル又はHAクリームとして添加されてもよい。
【0126】
線維化、瘢痕又は癒着を阻害するには、アニオン性ポリマーが有用な場合がある。特定の実施形態において、基質層は更にアニオン性ポリマーを含む。アニオン性ポリマーの群には、例えば硫酸デキストラン、ペントサン、キトサンが含まれる。
【0127】
基質層は更に血液を含む。血液という用語は、全血液成分を含む血液、血漿、血清及び血液から分離された成分を包含し、自家由来であっても異種由来であってもよい。特定の実施形態において、修復パッチはまず基質層が血液を含むように血液に浸漬され、それから負傷した靭帯又は腱に取り付けられる。代替の実施形態において、修復パッチはまず負傷した靭帯又は腱に取り付けられ、それから血液が取り付けられたパッチに添加されるか、又は基質層が血液を含むように負傷部位から受け止められる。特に、修復パッチの基質層は血清を含んでよく、該血清は、パッチが負傷した靭帯又は腱に取り付けられる前又は後に、パッチに添加される。
【0128】
本発明において、血漿には、血液の細胞成分を分離した後に残る血液の一部が含まれる。この分画は、血液体積の約55%に相当する。血漿には、水、タンパク質、糖質、電解質、脂肪及び脂質が含まれる。血漿タンパク質の群には、免疫グロブリン、アルブミン、ホルモン及び凝固因子が含まれる。凝固因子の群には、フィブリノゲン(因子I)、フィブリン(因子Ia)、プロトロンビン(因子II)、トロンビン(因子IIa)、トロンボプラスチン(又は組織因子、TF、因子III)、プロアクセリン(因子V)、プロコンベルチン(因子VII)、抗血友病グロブリンA(因子VIII)、抗血友病グロブリンB(又は因子IX、クリスマス因子)、Stuart−Prower因子(因子X)、血漿トロンボプラスチン前駆物質(又はPTA、因子XI、ローゼンタール因子)、ハーゲマン因子(因子XII)及びフィブリン安定化因子(因子XIII)が含まれる。凝固因子の群には、該凝固因子の不活性変異体及び活性化変異体が含まれる。当業者は、「a」を付加して(例えばIa、IIa、IIIa、VIIa、VIIIa、IXa、Xa、XIa、XIIa、XIIIa)、活性化凝固因子を区別する。
【0129】
血清は血液の液体分画であり、血液凝固の後及び血液の細胞成分を分離した後に残る。基本的に、血清の成分は、血漿の成分から凝固に費やされた凝固因子を除いたものに相当する。
【0130】
様々な実施形態において、パッチは更に第3の層を有する。該第3の層は、支持層と該第3の層との間に基質層が位置するように、該基質層の上に配置される。
【0131】
特定の実施形態において、第3の層は、例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコール酸(PG)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)複合体、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゼン、コラーゲン、エラスチン、絹、セルロース、でんぷん、キトサン、ゼラチン、アルギン酸、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、フィブリン又はこれらの組み合わせを含む。
【0132】
様々な実施形態において、該第3の層は、コラーゲンシート層を有する。
【0133】
コラーゲンシート層のコラーゲンは、例えばイヌ由来、ネコ由来、ウマ由来、ウシ由来、ブタ由来、サル由来、類人猿由来、チンパンジー由来、ヒツジ由来及びヒト由来から成る群から選択されてよい。
【0134】
様々な実施形態において、第3の層は、心膜又は分層皮膚(例えば乾燥したブタの分層皮膚)を含む。
【0135】
心膜は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒツジ及びヒトの心膜から成る群から選択されてよい。
【0136】
分層皮膚は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒツジ及びヒトの分層皮膚から成る群から選択されてよい。
【0137】
様々な実施形態において、第3の層は、ブタ、ウシ、若しくはウマの心膜、又はブタの分層皮膚を含む。
【0138】
コラーゲン性の第3の層は、セル多孔質であってもよいし、無孔性であってもよい。
【0139】
実施形態によっては、コラーゲン性の第3の層は、セル多孔質である。
【0140】
コラーゲン性の第3の層が孔を有する場合、コラーゲン性の第3の層の孔は天然由来であってもよいし、コラーゲン層の作製後に行われる処理の結果として得られるものであってもよい。
【0141】
一実施形態において、第3の層は心膜を含む。心膜は本来無孔性であるので、膜に孔を形成する処理を受ける。この処理により、心膜を含むセル多孔質のコラーゲン性の層が得られる。例えば、スタンピング、パンチング、ダイカッティング及び/又はブランキングによって、心膜に孔を形成してよい。特定の実施形態において、第3の層はセル多孔質の心膜を含む。セル多孔質の心膜は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、類人猿、チンパンジー、ヒツジ及びヒトのセル多孔質の心膜から成る群から選択される。ある実施形態において、第3の層は、ブタのセル多孔質心膜を含む。
【0142】
様々な実施形態において、第3の層は、乾燥した分層皮膚の層を有する。該分層皮膚は、イヌ由来、ネコ由来、ウマ由来、ウシ由来、ブタ由来、サル由来、類人猿由来、チンパンジー由来、ヒツジ由来及びヒト由来のものから選択されてよい。一実施形態において、第3の層は、乾燥したブタの分層皮膚の層(XENODERM)を有する。
【0143】
特定の実施形態において、支持層と第3の層は、同じ材料で形成されるという点で同じものである。つまり、様々な実施形態において、第3の層は、支持層に関して上述したものと同じ材料で形成される。
【0144】
様々な実施形態において、パッチは、支持層及び基質層を有する。様々な更なる実施形態において、パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有する。
【0145】
代替の実施形態において、パッチは、支持層及び基質層を有する。該支持層は心膜を含み、該心膜は無孔性である。ある実施形態において、該心膜はブタの心膜である。
【0146】
代替の実施形態において、パッチは、支持層及び基質層を有する。該支持層は心膜を含み、該心膜はセル多孔質である。ある実施形態において、該心膜はブタの心膜である。
【0147】
特定の実施形態において、パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有する。該支持層及び該第3の層は、無孔性の心膜である。ある実施形態において、該無孔性の心膜は、無孔性のブタの心膜である。
【0148】
特定の実施形態において、パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有する。該支持層及び該第3の層は、セル多孔質の心膜である。ある実施形態において、該セル多孔質の心膜は、セル多孔質のブタの心膜である。
【0149】
代替のモードにおいて、パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有する。該支持層及び該第3の層は、心膜である。該支持層と第3の層のいずれか一方は無孔性であり、他方はセル多孔質である。ある実施形態において、該心膜はブタの心膜である。特定の実施形態において、該パッチは、該無孔性の層が靭帯又は腱の負傷部位に面するように取り付けられる。他の実施形態において、該パッチは、該セル多孔質の層が負傷部位に面するように取り付けられる。
【0150】
特定の状況下では、無孔性の支持層及び/又は第3の層を有するパッチを負傷した靭帯又は腱に取り付けると、更に有効な場合がある。そのようにすると、負傷部位の下や近辺に存在する細胞から分泌される増殖因子がトラップされ、局所的に高濃度になる。よって、負傷部位の細胞増殖が促進され、靭帯又は腱がより早く修復する。更に、靭帯又は腱の修復とは悪影響を及ぼす化合物及び細胞が、負傷部位から排除される。
【0151】
また、パッチが支持層及び基質層を有し、該支持層が無孔性である場合、基質層が負傷部位に面するようにパッチを負傷した靭帯又は腱に取り付けると、有効である。その理由は以下のとおりである。すなわち、遠心分離で得た自家血清分画、PRP又は軟骨下血栓から増殖因子が供給され、該増殖因子は、コラーゲン支持層又は基質層に播種された軟骨下MSC、滑膜MSC又は脂肪MSCと共に、靭帯及び/又は腱の負傷部位において、又は自家移植片、同種移植片若しくは異種移植片の表面において、修復プロセスを促進する。更に、増殖因子や抗炎症化合物等の外因性化合物(パッチが負傷部位に取り付けられる前に基質層に添加されている)は、負傷した靭帯又は腱のみに向けて放出される。このように、外因性化合物が全方向に拡散できる状態に比べ、負傷部位において外因性化合物の濃度が高くなる。これにより、外因性化合物の効果が増大する。
【0152】
パッチが支持層及び基質層を有する場合、熱、化学物質その他適切な積層技術を用いて、該パッチの層を積層することができる。特定の実施形態において、1つ目の層が形成され、それからその上に2つ目の層が形成される。例えば、まず基質層が形成され、それから該基質層の上に支持層が形成される。或いは、まず支持層が形成され、それから該支持層の上に基質層が形成される。
【0153】
パッチが支持層、基質層及び第3の層を有する場合、熱、化学物質その他適切な積層技術を用いて、該パッチの層を積層することができる。特定の実施形態において、1つ目の層が形成され、それからその上に2つ目の層が形成され、1つ目の層と2つ目の層との複合体の上に3つ目の層が形成される。例えば、まず基質層が形成され、それから該基質層の上に支持層が形成される。第3のステップで、第3の層が、該支持層と共に該基質層を挟むように、該基質層上に形成される。或いは、まず支持層又は第3の層が形成され、それから該支持層又は第3の層の上に基質層を形成する。そして、該支持層又は第3の層とは反対側の基質層上に、第3の層又は支持層を形成する。更なる実施形態において、該3つの層は互いに積層され、パッチは1つのステップでラミネートされる。
【0154】
移植可能な積層体の靭帯又は腱の修復パッチは、生体適合性を有する外科装置である。特定の実施形態において、該パッチは生理的に吸収可能である。様々な実施形態において、該パッチは、インサイチュ(in situ)での靭帯又は腱の修復を目的とする。
【0155】
実施形態によっては、該パッチは、特定の実施形態において負傷部位から基質層へ細胞が移動できるように構成される。基質層はコラーゲン性の層であり、負傷部位において自家幹細胞及び他の血液成分を拡散させるための溜まりであってよい。基質層は、軟骨由来、滑膜由来、脂肪由来又は造血細胞由来の自家幹細胞の存在下で靭帯及び/又は腱の修復を促進する化学成分を含んでよい。よって、実施形態によっては、基質層が負傷部位に面するように、パッチが負傷部位に配置される。任意に、基質層は支持層及び/又は第3の層によって閉塞されてよく、その結果、細胞は基質層を通過できない一方、他の小さな化合物(水、気体等)及び小分子は基質層を透過することができる。このように、本発明は、靭帯又は腱の負傷部位を修復するための、インサイチュ(in situ)での治癒及び/又は組織の増殖を促進する方法を提供する。
【0156】
特定の実施形態において、靭帯又は腱の修復パッチ積層体12は、第3の層16(任意に閉塞性又は多孔性)及び多孔性の支持層22を有する(図2A〜2C及び図3を参照)。別の好ましい実施形態では、靭帯又は腱の修復パッチ積層体12は、2つの層すなわち支持層22及び基質層30のみを有する(図2D及び図2Eを参照)。様々な実施形態において、支持層は、負傷部位において靭帯又は腱の表面と面するものである。様々な実施形態において、第3の層は、負傷部位において靭帯又は腱の表面と面するものである。他の実施形態において、2層構造パッチの基質層は、靭帯又は腱の負傷部位に面する(図4及び図5を参照)。3層構造修復パッチのうち第3の層16及び/又は支持層22は、コラーゲンシートで構成されてよい(特許文献16の内容を参照することにより援用する)。申し分のない市販のコラーゲンシートの一例として、XENODERM(登録商標)(mbp GmbH、ドイツ)がある。特定の実施形態において、基質層30は、間葉系幹細胞又は靭帯若しくは腱の幹細胞をトラップするコラーゲン性基質となる。また、基質層30は細胞が増殖する支持体となり、基質層30の他の天然成分の存在下において、細胞が増殖し分化する。
【0157】
様々な実施形態において、基質層30は、非ヒトコラーゲン繊維36と天然ヒアルロン酸繊維40とが散在する、多孔性のコラーゲン性複合パッドである。天然HAは、図2Aに示されるように、天然HA繊維40の形で基質層30に含むことができ、或いは、図2Bに示されるように、コラーゲン繊維36の空き空間に分散したゲル状又はクリーム状の懸濁液42中のHA粉末40aとして含むことができる。
【0158】
特定の実施形態において、基質層30(図2B参照)は、1以上の組織成長ホルモン及び/又は抗炎症化合物46を含む。特定の実施形態において、抗炎症化合物は、ジアセレイン46a及びレイン46bである。また、図2Bに示す実施形態では、懸濁液42が、レイン46b及び/又はジアセレイン46aを含む。様々な実施形態において、基質層30は更に、キトサン組成物及び/又はポリ乳酸組成物を含む。
【0159】
本発明の方法の様々な実施形態において、修復パッチ10外部のソースに由来する自家間葉系幹細胞60が、多孔性の支持層22を通ってパッチ10に拡散し、基質層30に拡散し、そこで基質層30の繊維成分(コラーゲン繊維36及び/又はHA繊維40a)に支持される(例えば図2A〜2E、図3図6A及び図6B)ように、修復パッチは構成される。様々な実施形態において、基質繊維40及び40aは、幹細胞が成長して靭帯又は腱の細胞に分化するための支持体として設けられてよい。ジアセレイン等の外生因子46は、炎症に寄与する炎症性要因(例えばIL−1等のサイトカイン、TNF−α、フリーラジカル)を下方制御する。特定の実施形態において、基質層には1以上の成長ホルモンが存在する。このような1以上の成長ホルモンにより、靭帯及び/又は腱の組織の産生が促進され得る。
【0160】
様々な実施形態において、修復パッチは、支持層、基質層及び第3の層を有してよい。支持層は、有孔の分層皮膚の層(例えばブタの分層皮膚の層)(XENODERM)を有し、第3の層は、無孔の分層皮膚の層(例えばブタの分層皮膚層)(XENODERM)を有する。或いは、支持層と第3の層の両方が、有孔の分層皮膚層(ブタの分層皮膚の層)(XENODERM)を有する。特定の実施形態において、支持層及び第3の層は、分層皮膚の層から成る。実施形態によっては、基質層は、コラーゲン、ヒアルロン酸及びポリ乳酸(例えばポリ−L−乳酸)を含んでよい。例えば基質層は、コラーゲン繊維と、該コラーゲン繊維の空き空間に分散された天然ヒアルロン酸及びポリ乳酸(例えばポリ−L−乳酸)とが散在する、セル多孔質のコラーゲン性複合パッドであってよい。実施形態によっては、基質層は更に、本明細書に開示されるような化合物(増殖因子、キトサン、レイン、ジアセレイン等)を含んでよい。
【0161】
一般に、本発明の修復パッチは腱及び靭帯の修復を促進し、靭帯及び腱の自家移植片の融合を強化し支持する。特定の実施形態において、基質層は、繊維芽細胞、腱細胞、それらの前駆体、間葉系細胞、靭帯又は腱の細胞及び他の由来の幹細胞等の細胞を、治療部位に外生的に添加し、接着し、取り込み、埋め込み、又は播種するための支持構造として用いられる。本発明によれば、これらの細胞を添加して、靭帯若しくは腱の負傷部位又は靭帯及び/若しくは腱の移植片部位において、修復プロセスを促進する刺激を増大又は提供する。本発明で用いられるのに適する細胞は、自家細胞又は異種細胞(同種細胞若しくは異種細胞、細胞株及び/又は原核細胞)のいずれかである。通常、基質層又はコラーゲン性足場に外生的に添加される細胞は、市販のものとして入手されるか、又は本技術分野において既知の方法を用いてインビトロ(in vitro)で培養された靭帯又は腱から分離される。
【0162】
一実施形態において、本方法は、前駆細胞、成熟繊維芽細胞、靭帯又は腱の細胞その他細胞を、コラーゲン性足場の基質層又は支持層及び/若しくは第3の層に接着させ、取り込ませ、埋め込み、又は播種することにより、本発明の装置にインビトロ(in vitro)且つエクスビボ(ex vivo)で添加するステップを含む。培養細胞は、手術前、手術中又は手術後に、それ自体が基質層に添加されるか、或いは支持層及び/又は第3の層に接着される。外生的に添加される細胞は、新しい靭帯又は新しい腱に相応するタンパク質及び基質成分の産生を誘導してもよいし、それらを産生してもよいし、或いは負傷していない靭帯又は腱から負傷部位に体内の細胞が移動するのを誘導してもよい。
【0163】
様々な実施形態において、パッチの厚さは、0.1〜10mm、0.5〜2mm、0.5〜1mm又は0.75〜1.25mmである。
【0164】
パッチは、積層された支持層及び基質層を有する場合、該基質層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に配置されてよい。代替のモードでは、パッチは、該支持層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に配置されてよい。この記載により、負傷した腱に対する適用についても、同じ適用モードを開示する。
【0165】
パッチは、積層された支持層、基質層及び第3の層を有する場合、該第3の層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に取り付けられてよい。代替のモードでは、パッチは、該支持層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に取り付けられてよい。この記載により、負傷した腱に対する適用についても、同じ適用モードを開示する。
【0166】
特定の実施形態において、パッチは、セル多孔質のコラーゲン性の支持層及び基質層を有する。パッチは、支持層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に取り付けられてよい。代替の実施形態では、パッチは、セル多孔質のコラーゲン性の支持層及び基質層を有する。パッチは、基質層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に取り付けられてよい。更なる実施形態において、パッチは、セル多孔質のコラーゲン性の第3の層と、セル多孔質のコラーゲン性の支持層と、基質層とを有する。パッチは、第3の層又は支持層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に取り付けられてよい。更なる実施形態において、パッチは、セル多孔質のコラーゲン性の第3の層と、無孔性のコラーゲン性の支持層と、基質層とを有する。パッチは、第3の層又は支持層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に取り付けられてよい。更なる実施形態において、パッチは、無孔性のコラーゲン性の第3の層と、無孔性のコラーゲン性の支持層と、基質層とを有する。パッチは、第3の層又は支持層が負傷した靭帯に面するように、該靭帯に配置されてよい。これらのパッチの適用形態は、負傷した腱への適用にも同様に適している。
【0167】
特定の実施形態において、支持層は、本明細書に開示されるように、グリコサミノグリカン(GAG)又はムコ多糖により被覆される。実施形態によっては、支持層は、本明細書に開示されるように、ヒアルロン酸により被覆される。
【0168】
更なる実施形態において、パッチが第3の層を有する場合、該第3の層は、本明細書に開示されるようにグリコサミノグリカン(GAG)又はムコ多糖により被覆される。様々な実施形態において、第3の層は、本明細書に開示されるように、ヒアルロン酸により被覆される。
【0169】
特定の実施形態において、パッチは、完全な生体吸収性を有するように設計される。したがって、移植後、パッチは自然に徐々に分解される。当業者であれば、靭帯又は腱の治癒中又は靭帯又は腱の治癒が完了した後に分解されるように、パッチを設計することが可能である。
【0170】
様々な実施形態において、パッチは非生分解性であり、靭帯又は腱が修復された後に除去される必要がある。
【0171】
本発明の方法は、靭帯及び/又は腱の修復に適する。
【0172】
様々な実施形態において、靭帯は、例えば上肢及び下肢、頭部、並びに頸部に接続される(例えば肩、肘、手首、手、臀部、膝、足、足首及び脊椎の)靭帯から成る群から選択される。
【0173】
特定の実施形態において、靭帯は例えば、輪状甲状靱帯、歯周靭帯、毛様体小体、乳房提靱帯、前仙腸靱帯、後仙腸靱帯、仙結節靱帯、仙棘靱帯、下恥骨靭帯、上恥骨靭帯、陰茎提靱帯、掌側橈骨手根靱帯、背側橈骨手根靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、十字靱帯、前十字靭帯(ACL)、外側側副靱帯(LCL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)及び膝蓋靱帯から成る群から選択される。
【0174】
様々な実施形態において、腱は例えば、上肢及び下肢に接続される腱(肘、手、膝、足、足首等の腱)と、肩、臀部及び脊椎の腱と、胸部及び腹部の腱とから成る群から選択される。
【0175】
特定の実施形態において、腱は例えば、アキレス腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、長趾伸筋腱、長腓骨筋腱、前脛骨筋腱及び後脛骨筋腱、肩甲下筋腱、回旋筋腱板の腱、四頭筋腱並びに膝蓋腱から成る群から選択される。手及び足に存在する全ての腱が包含され得る。本発明の方法は、患者に適用されてよい。該患者は、靭帯及び/又は腱に障害をもち、該障害には、例えば靭帯及び/又腱の炎症、自己免疫疾患、感染、緊張、過労、断裂、捻挫、裂離、過剰伸張及び裂傷が含まれる。
【0176】
特定の実施形態において、負傷した靭帯及び/又は腱に修復パッチが取り付けられる前に、該負傷部位はパッチの受け入れに向けて準備される。
【0177】
特定の実施形態において、修復パッチは、自家の間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)をトラップし、増殖因子を負傷部位に放出するために、負傷した靭帯又は腱への取付けの前又は後に血液に浸漬される。この多能性MSCは、コラーゲンパッチの存在下において繊維芽細胞に分化し、その後成熟した靭帯又は腱の細胞に分化して、靭帯又は腱の負傷部位を修復し、又は靭帯又は腱の移植片組織を転換する。
【0178】
負傷部位の準備後、更なる手順が実行されてよい。
【0179】
特定の実施形態において、負傷した靭帯又は腱に修復パッチを固定するために、パッチは、外科縫合糸を用いて該靭帯又は腱に固定されてよい。特定の実施形態において、パッチは、縫合糸を用いてパッチを負傷した靭帯又は腱に縫合及び/又は結束し、且つ/又は負傷した靭帯又は腱の固定部位に接着剤を付加することにより、負傷した靭帯又は腱に固定される。
【0180】
縫合糸は、例えばジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(特に濃縮PTFE(Condensed PTFE:cPTFE)又は拡張PTFE(Extended PTFE:ePTFE))、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、カプロラクトン、ポリグリコール酸、コラーゲンポリエステル及びアクリルポリマー(例えばアクリル酸又はメタクリル酸のエステル)から選択される材料から構成されてよい。特に適切なポリマーは、例えばポリプロピレン(PP)とポリグレカプロンとの混合ポリマー、ポリ(p−ジオキサノン)のポリマー、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)(特に圧縮PP(Condensed PP:cPP))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、テレフタル酸ポリエチレン、ポリエーテルケトン(PEK)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0181】
外科縫合糸は、生体適合性を有してよい。
【0182】
様々な実施形態において、修復パッチは、該パッチを靭帯又は腱に縫い付けることにより、負傷した靭帯又は腱に固定される。通常、生体吸収性の外科縫合糸を用いて、パッチを固定する。外科縫合糸は、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、カプロラクトン、ポリグリコール酸及びコラーゲンから形成されてよい。
【0183】
特定の実施形態において、修復パッチは、増殖因子、抗炎症化合物及び/又は抗体を含み、該増殖因子、抗炎症化合物及び/又は抗体は、組換え体由来及び/又は自家血液等の血液から分離されるものであってよい。したがって、実施形態によっては、パッチは例えばTGF−β1等の、本明細書に記載される1以上の増殖因子を含む。
【0184】
特定の実施形態において、負傷した靭帯又は腱に修復パッチを固定するために、パッチは、接着剤及び/又は外科縫合糸を用いた接合及び/又は外科縫合糸を用いた結束により、靭帯又は腱に固定されてよい。
【0185】
接着剤及び/又は外科縫合は、生体適合性を有してよい。
【0186】
接着剤は、例えばゼラチン、アルギン酸、アガロース、でんぷん、フィブリン、コラーゲン、ラミニン、エラスチン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及び/又はグリコサミノグリカン(ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸等)、カゼイン、デキストラン、カルメロース、ペクチン、カラギーナン及びキサンタンから成る群から選択されてよい。
【0187】
例えば、本システムの方法は、フィブリン接着剤又はフィブリン接着剤組成物を準備し負傷部位へ塗布するステップを含んでよい。フィブリン接着剤又はフィブリン接着剤組成物は、体液と混ざり合って、体液とフィブリン接着剤との混合体を形成してよい。
【0188】
様々な実施形態において、本発明の方法は、修復パッチの取付け及び/又はフィブリン接着剤等の接着剤のパッチへの塗布の前及び/又は後に、フィブリン接着剤等の接着剤を負傷した靭帯又は腱に塗布するステップを含んでよい。特定の実施形態において、パッチが支持層及び基質層を有する場合、パッチが負傷した靭帯又は腱に取り付けられる前及び/又は後に、フィブリン接着剤等の接着剤は支持層及び/又は基質層に塗布されてよい。様々な実施形態において、パッチが支持層、基質層及び第3の層を有する場合、パッチが負傷した靭帯及び/又は腱に取り付けられる前及び/又は後に、フィブリン接着剤等の接着剤は支持層及び/又は第3の層に塗布されてよい。
【0189】
特定の実施形態において、接着剤は、フィブリン又はフィブリン組成物である。フィブリン組成物は、フィブリンと追加的な成分とを含んでよい。追加的な成分は、増殖因子、抗炎症化合物及び/又は抗体であってよい。特定の実施形態において、追加的な成分(増殖因子、抗炎症化合物、抗体等)は、組換え体及び/又は血液から分離されるものである。したがって、実施形態によっては、フィブリン接着剤組成物の成分のうち少なくとも1つは、血液又は血清(すなわち、遠心分離により回収され、TGF−β1等の1以上の増殖因子を含む血清)から分離される。様々な実施形態において、フィブリン接着剤組成物は、自家血液から分離される少なくとも1つの自家増殖因子を含む。よって、フィブリン接着剤組成物は、靭帯及び/又は腱の負傷部位とパッチとの接触部分において幹細胞の分化を促進することができる。
【0190】
特定の実施形態において、フィブリン接着剤等の接着剤が負傷部位に塗布され、負傷部位の接着剤上に、可撓の積層体修復パッチが配置される。また、修復パッチを負傷部位に配置した後にフィブリン接着剤等の接着剤を適宜塗布して、修復パッチを負傷部位に更に密着させてもよい。例えば、接着剤が被覆された負傷部位に到達するように、接着剤を注入してよい。また、パッチを更に外科縫合糸で固定してよい。このステップが完了すれば外科的段階は終了であり、靭帯又は腱の修復パッチはインサイチュ(in situ)で治癒を継続する。
【0191】
特定の実施形態において、パッチはインサイチュ(in situ)で靭帯又は腱に取り付けられる。よって、特定の実施形態において、パッチは関節鏡処置等の内視鏡処置で、靭帯又は腱に取り付けられてよい。
【0192】
或いは、靭帯又は腱の移植片が患者から採取され、それからパッチが上述のように取り付けられ、その後移植片が準備された処置部位に導入される。
【0193】
本明細書に記載の靭帯及び/又は腱の修復パッチは、本明細書に開示される。
【0194】
本明細書に記載の靭帯及び/又は腱の修復パッチは、負傷した靭帯及び/又は腱の治療に用いられるものとして本明細書に開示される。
【0195】
靭帯の修復に関連して本明細書に記載される手順及び装置はすべて、腱の修復に関する手順及び装置として本明細書に開示される。逆の場合も同様である。
【0196】

例1 修復パッチの作製
コラーゲンシート22(XENODERM、ブタのI型コラーゲンとIII型コラーゲン)を支持層22として用いた。コラーゲンシート22は、せん断応力及び引張応力に抵抗する力学的性質を有し、約6週間で再吸収できるものであった。コラーゲンシート22を特定の形状にし、ジアセレイン溶液又はジアセレイン粉末のいずれかを添加したコラーゲン−HA懸濁液を、凍結乾燥及び滅菌後のパッチにおいて乾燥重量0.3〜75μgとなるように充填した。結果として、靭帯/腱の負傷部位上に配置される支持層を有する2層構造のコラーゲン−パッドが得られた。製造から滅菌までの間に、パッドを機械プレスにかけ、厚さを0.5〜2mmとした。凍結乾燥された最終産物におけるHA濃度は、約0.1〜2%の範囲であった。該HAは、発酵由来の天然HA、すなわち化学修飾されていないHAであった。
【0197】
例2 心膜の作製
1.ウシ由来原料の回収
ウシの心嚢(心膜)を出発材料として用いた。食肉処理場にて公認獣医による従来の食肉検査が行われた後、該ウシの心嚢から付着した器官部分を分離し、肉眼で脂肪及び結合組織を除去した。このようにして、約30cm×15cmサイズのシート状片を複数得た。各片の重量は約1kgであった。このように準備されたウシの心膜を、氷を入れた保冷バッグで食肉処理場から製造所まで移送し、回収された原料の量に応じて、製造所にてすぐに、更に加工されるまで−20℃で保存した。
【0198】
2.湿式化学処理
まず、未加工の心膜片をそれぞれ精製水で洗浄して(通常は流水に浸漬して)、付着した血液及び水溶性タンパク質部分を除去した。浸漬後、脂肪組織及び基底膜の肉眼で見える残留物をすべて除去した。その後、室温にて2%水酸化ナトリウム溶液で処理した。心膜片(5,000g)を、苛性アルカリ溶液槽(37.5L)内に計16時間置いた。苛性アルカリ溶液槽から取り出した後、脱塩水で約10分間洗浄した。この洗浄プロセスを、洗浄流出水のpHが8より低くなるまで繰り返し、約1時間後にpHが8より低くなった。少しでも基底膜と脂肪が確認できた場合は、このプロセス段階でそれらを除去した。かなり膨張した心膜片を37.5Lの10%生理食塩水に移して、更なるステップに備えて、適宜膨張状態を調節した(一部脱膨張)。室温にてNaCl処理を行い、続いて脱塩水での洗浄プロセスを行った。余計な重金属イオンと石灰含有物を心膜材料から除去するために、該材料を、弱アルカリ性に調節され100mLあたり0.3gの濃度であるEDTA溶液37.5Lで処理した。続いて、該材料を上記の処理ステップと同様に脱塩水で洗浄して、余分な錯化剤を除去すると同時にpHを8.5に調節した。続いて、37.5Lの酢酸緩衝液(pH4.8であり、100mLあたりの組成は、100mL中0.01モルの酢酸ナトリウム+3HOの溶液59体積部と、100mL中0.01モルの酢酸41体積部であった)で1回処理した。酢酸緩衝液により、心膜組織に残った全ての残留物を中和し、後の漂白処理に向けて弱酸性の中間体を作成することができた。残りのバッファ物質は、上記と同様に脱塩水で洗浄して除去した。
【0199】
3.酸化漂白
湿式化学処理に続いて酸化漂白作業を行い、心膜片を37.5Lの1.5%過酸化水素水で1時間処理した。漂白プロセスは、先行のプロセスと同様に室温で行った。このようにすると、精製作業の効率を確保しながら、コラーゲン組織の劣化を回避することができる。
【0200】
4.洗浄
次に、余分な試薬を除去するために、従来の方法に従って、脱塩水で材料を洗浄した。
【0201】
5.脱脂
洗浄したウシの心膜片を、該ウシの心膜組織を完全に被覆する量のアセトンの中に配置した。8時間の間に、溶媒を3回交換した。次に、このように脱水されたウシの心膜片をソックスレー装置に移し、アセトンで約8時間抽出を行った。抽出後、心膜片を風乾し、搬送容器内にて脱塩水で水和した。
【0202】
6.凍結乾燥
自動制御の凍結乾燥機において乾燥を行った。詳細には、凍結乾燥は、温度を+1℃まで下げ、温度を−40℃まで下げ、真空状態にし、トレイを+40℃まで熱し、完全真空で乾燥を行うというプロセスで進行した。
【0203】
7.滅菌
線量2.5mradの放射線滅菌により、滅菌を行った。
【0204】
例3 可撓性及び生体適合性を有する修復パッチ上での繊維芽細胞の培養
本発明の修復パッチ上で繊維芽細胞を培養する間の細胞生存率を判定するために、ヒト皮膚繊維芽細胞のWS1細胞株を用いた。この細胞株を、標準条件(37℃、5%CO)下において、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium:DMEM)及び10%ウシ胎仔血清(Fetal Calf Serum:FCS)で培養した。
【0205】
繊維芽細胞を本発明の修復パッチ及び対照材料に移し、最大5週間の期間、標準条件(37℃、5%CO)下においてDMEMで培養した。細胞増殖率を測定するために、WST−1分析を用いた。この分析は、細胞性酵素の活性を測定する比色分析である。該細胞性酵素は、テトラゾリウム色素すなわちWST−1を非水溶性のホルマザンに還元し、ホルマザンが紫色を呈する。また、培養液サンプルをELISAで分析して、I型プロコラーゲン濃度を測定した。細胞生存率は、蛍光顕微鏡を用いて生細胞死細胞染色を行うことにより、週1度分析した。
【0206】
本発明の修復パッチのインビトロ(in vitro)試験のために、修復パッチの表面に繊維芽細胞を播種した。標準培養条件下で14日間、無血清培地で細胞をインキュベートした。3日後、7日後及び14日後に、細胞生存率とI型コラーゲンのデノボ合成速度とを測定した。第2のコラーゲンパッチと細胞培養皿で培養した単層とを、対照群として用いた。
【0207】
結果から、本発明の修復パッチは細胞定着に適することが明らかとなった。インキュベーション中、繊維芽細胞はパッチ上で生存し、I型プロコラーゲンを合成することができた。繊維芽細胞の生細胞死細胞染色の結果、大部分の細胞がパッチ上で生存したことが分かった。更に、表面の過剰成長を、特に本発明の修復パッチにおいて測定することができた。参照用の単層と比較すると、本発明の修復パッチで増殖した繊維芽細胞は、インキュベーション開始の14日後には代謝活性の増大を示し、また、I型プロコラーゲン濃度が上昇した。
【0208】
多くの具体例を上述したが、それらは本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の様々な好ましい実施形態を例示するものであると解釈されるべきである。当業者には自明であるように、他にも多くの変形が可能である。よって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲とその均等物とによって決定されるものであり、実施形態によって決定されるものではない。本明細書において引用した文献はすべて、参照することによりその全体が援用される。本明細書に例として記載した本発明の実施形態は、本明細書に具体的に記載されていない任意の要素(限定)を欠く場合にも、適切に実施され得る。よって、例えば「備える」、「有する」、「含む」等の表現は、拡張的に解釈されるものであり、限定を意図するものではない。また、本明細書で用いられる用語及び表現は、説明のための用語として用いられており、限定を意図するものではない。また、そのような用語及び表現を用いることには、図示及び記載された特徴又はその一部の均等物を除外するという意図はなく、当然ながら、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲において様々な変更が可能である。よって、本発明は好ましい実施形態と任意の特徴とによって具体的に開示されたが、当然ながら、そのように実施される本発明に対する本明細書に記載の変更及び変形が当業者によって用いられてもよく、そのような変更及び変形は本発明の範囲に包含される。本明細書では、本発明を大まか且つ一般的に説明している。包括的な開示内容に包含されるより狭い技術事項もまた、それぞれ本発明の一部を形成する。本明細書では本発明を一般に記載しており、任意の主題を属から除外する条件又は否定的限定も、除外される要素が具体的に本明細書に記載されているかに関係なく記載されている。また、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群として記載される場合、当業者には明らかであるように、本発明は、該マーカッシュ群の個々の要素又は該マーカッシュ群の要素亜群としても記載される。本発明の更なる実施形態は、以下の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】