【実施例】
【0088】
実施例1.アデノウイルスベクターの調製
Ad35およびAd26のE1領域へのRSV F遺伝子のクローニング:
A2株の天然RSV融合(F)タンパク質をコードするRSV.F(A2)nat遺伝子(Genbank ACO83301.1)は、ヒト発現のために最適化された遺伝子であり、Geneartにより合成された。コザック配列(5’GCCACC’3)を、ATG開始コドンの直前に含め、2つの停止コドン(5’TGA TAA’3)をRSV.F(A2)natコード配列の末端に付加した。RSV.F(A2)nat遺伝子を、HindIIIおよびXbaI部位を介して、pAdApt35BSUプラスミドおよびpAdApt26プラスミドに挿入した。得られたプラスミドのpAdApt35BSU.RSV.F(A2)natおよびpAdApt26.RSV.F(A2)natを、
図15に示す。Fタンパク質のアミノ酸配列およびそのアミノ酸配列をコードするコドン最適化配列をそれぞれ、配列番号1および2として表1に示す。
【0089】
細胞培養:
PER.C6細胞(Fallaux et al.,1998,Hum Gene Ther 9:1909−1917)を、10mM MgCl
2を添加した、10%ウシ胎児血清(FBS)含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持した。
【0090】
アデノウイルスの生成、感染、および継代:
アデノウイルスはすべて、以前に記載されたように、単一相同組換えによりPER.C6細胞中に生成し、産生させた。(rAd35については:Havenga et al.,2006,J.Gen.Virol.87:2135−2143;rAd26については:Abbink et al.,2007,J.Virol.81:4654−4663)。手短に言えば、PER.C6細胞に、製造業者(Life Technologies)が提供する説明書に従い、リポフェクタミンを使用して、Adベクタープラスミドをトランスフェクトした。RSV.F(A2)nat導入遺伝子発現カセットを担持するAd35ベクターのレスキューについては、pAdApt35BSU.RSV.F(A2)natプラスミドおよびpWE/Ad35.pIX−rITR.dE3.5orf6コスミドを使用し、一方、RSV.F(A2)nat導入遺伝子発現カセットを担持するAd26ベクターについては、pAdApt26.RSV.F(A2)natプラスミドおよびpWE.Ad26.dE3.5orf6コスミドを使用した。細胞を、完全なCPEの1日後に回収し、凍結融解し、3,000rpmで5分間遠心分離し、−20℃で保存した。次に、ウイルスをプラーク精製し、多重ウェル24組織培養プレートの単一ウェル上で培養したPER.C6中で増幅した。さらなる増幅を、T25組織培養フラスコおよびT175組織培養フラスコを使用して培養したPER.C6中で実施した。T175粗溶解物のうちの3〜5mlを使用して、70%コンフルエント層のPER.C6細胞を含有する20×T175三層組織培養フラスコに接種した。ウイルスを、2段階CsCl精製法を使用して精製した。最終的に、ウイルスを一定分量に分割して−85℃に保存した。
【0091】
実施例2.組換えアデノウイルス血清型26および35を使用する、in vivoでのRSV Fに対する免疫の誘導
これは、組換えアデノウイルス血清型(Ad26)および組換えアデノウイルス血清型35(Ad35)がBALB/cマウスにおいてRSVの糖タンパク質F抗原に対する免疫を誘導する能力を検討する実験である。
【0092】
この試験では、5匹マウスの実験群に動物を分配した。完全長のRSV F遺伝子を担持するAd26もしくはAd35(Ad26−RSV.FもしくはAd35−RSV.F)または導入遺伝子を担持しないAd26もしくはAd35(Ad26eもしくはAd35e)の単回投与で動物を免疫処置した。10
10〜10
8ウイルス粒子(vp)の範囲にある、rAdの3つの10倍段階希釈を、筋肉内投与した。対照として、空のベクターAd26eを3匹の動物からなる1群に投与し、空のベクターAd35eを1群に投与した。
【0093】
脾臓中のFタンパク質特異的なIFNγ分泌T細胞の相対数を決定するために、ELISPOTアッセイを使用し、基本的に、Radosevic et al.(Clin Vaccine Immunol.2010;17(11):1687−94)に記載されるように行った。ELISPOTアッセイにおける脾細胞の刺激については、RSV F(A2)タンパク質の全体配列にかかって、11個のアミノ酸がオーバーラップする15アミノ酸長のペプチドからなる2つのペプチドプールを使用した。10
6細胞当たりのスポット形成単位(SFU)の数を算出する。
【0094】
抗体価を測定するために、ELISAアッセイを使用した。このために、ELISAプレート(Thermo Scientific)を、25μg/mlのRSV Long全体不活化抗原(Virion Serion、カタログ番号BA113VS)でコーティングした。希釈した血清試料をプレートに添加し、RSVに対するIgG抗体を、ビオチン標識抗マウスIgG(DAKO、カタログ番号E0413)を使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(PO)−コンジュゲートストレプトアビジン(SA)による検出を使用して測定した。力価は、50倍希釈ナイーブ血清に由来する1.5×ODシグナルをカットオフとして使用して、一次補間により算出した。マウス血清における、RSV特異的なIgG1およびIgG2a抗体の力価を、PO標識抗マウスIgG1およびPO標識抗マウスIgG2a(Southern Biotechnology Associates、カタログ番号1070−05および1080−05)を使用して測定した。これらの抗体はサブクラスを定量するために使用した。
【0095】
抗体のウイルス中和活性(VNA)は、マイクロ中和アッセイにより測定し、基本的に、Johnson et al.(J Infect Dis. 1999 Jul;180(1):35−40)によって記載されるように行った。RSV感受性VERO細胞を、感染1日前に96ウェル細胞培養プレートに播種した。感染日に、段階希釈した血清および対照を、1200pfuのRSV(LongまたはB1)と混合し、37℃で1時間インキュベートした。続いて、ウイルス/抗体混合物を、VERO細胞単層を含有する96ウェルプレートに移した。3日後に、単層を80%氷冷アセトンで固定し、RSV抗原を抗Fモノクローナル抗体により測定した。中和力価は、ウイルスのみの対照ウェルからのOD450を50%減少させる血清稀釈度(log
2)(IC
50)として表す。
【0096】
初回免疫後2週目および8週目に、動物を屠殺し、細胞性応答および体液性応答を上記に記載するようにモニターした。
【0097】
図1は、Ad26−RSV.F(
図1A)およびAd35−RSV.F(
図1B)のすべての用量が良好な細胞性免疫応答を誘導するのに効果的であり、またこの応答が時間を通して安定であったことを示す。Ad26−RSV.FまたはAd35−RSV.FのいずれかによるT細胞応答に対して、ベクター用量による有意差は観察されなかった。
【0098】
図2は、上記と同じ実験における抗体価を示す。両方のベクターとも、極めて明確な時間および用量依存的なELISA力価の増加を誘導した(
図2)。抗F力価は、2週目から8週目にかけて明らかに増加し、10
10用量の場合には有意であった。8週目には、Ad26−RSV.Fベクター間またはAd35−RSV.Fベクター間の力価に差はなかった。
【0099】
F特異的IgGのサブクラス分布(IgG1対IgG2a)を、Th1対Th2応答のバランスを評価するために測定した。歪んだTh2/Th1応答は、ホルマリン不活化RSVで見られるように、RSV疾患のワクチン増強を発現させる素因を動物に与える。
図3に示すように、Ad26−RSV.FおよびAd35−RSV.Fの両方について、IgG2a/IgG1比は1以上である。これにより、アデノベクターAd26−RSV.FおよびAd35−RSV.Fは、Th2タイプの応答よりもTh1タイプの応答を示すことが強く示される。
【0100】
図4は、抗体価に使用したものと同じ血清のウイルス中和力価(VNA)を示す。Ad26−RSV.FおよびrAd35−RSV.Fによる免疫処置により、中和抗体価が誘導された。VNA力価は、10
10vpを投与されたマウスにおいて、初回免疫後2週目から8週目の間に顕著に増加した。8週目では、10
10vpを投与されたマウスにおいて、Ad26−RSV.FベクターとAd35−RSV.Fベクターとの間に力価の差はなかった。
【0101】
これらの免疫処置実験から、RSV.F導入遺伝子を包含するAd35ベクターおよびAd26ベクターは、RSV.Fに対して強力な細胞性応答および体液性応答を誘導することが明らかである。
【0102】
実施例3.RSV.Fをコードする組換えアデノウイルスベクターを使用する異種初回免疫−追加免疫後のRSV.Fに対する免疫
この試験は、2つの異なる血清型に由来するアデノウイルスベクターに基づく初回免疫−追加免疫レジメンがRSV.Fに対する免疫を誘導する能力を検討するように計画した。
【0103】
この試験には、8匹マウスの実験群に分配されたBALB/cマウスが含まれた。RSV A2に基づく/由来するRSV.F遺伝子の野生型配列を担持する(Ad−RSV.FまたはAd35−RSV.F)か、または導入遺伝子を担持しない(Ad26eまたはAd35e)10
10vpによる筋肉内注射によって、動物を免疫処置した。動物の1群は、ある週にAd26−RSV.Fにより初回免疫し、4週目にAd35RSV.FまたはAd35eにより追加免疫した。動物の別の群は、Ad35−RSV.Fにより初回免疫し、4週目にAd26−RSV.FまたはAd26eにより追加免疫した。動物の対照群は、Ad35eにより初回免疫し、4週目にAd26eにより追加免疫した。初回免疫後6週目および12週目の各時点で、8匹の動物を屠殺し、細胞性応答および体液性応答を、当業者に周知され、上記に記載される免疫学的アッセイによりモニターした。
【0104】
図5は、初回免疫処置後6および12週目の細胞性応答を示す。初回免疫後6週目(および追加免疫後2週目)に、T細胞応答に対するAd26−RSV.FおよびAd35−RSV.Fの両方による顕著な追加免疫効果が測定され、T細胞応答の大きさは、初回免疫−追加免疫における、Ad26−RSV.FまたはAd35−RSV.Fによる免疫処置の順序には依存しなかった。初回免疫後12週目(および追加免疫後8週目)に、Ad26−RSV.Fで初回免疫されたマウスは、rAd35−RSV.Fで初回免疫された動物に匹敵して、初回免疫のみおよび初回免疫−追加免疫された動物のいずれにおいても、F特異的T細胞のレベルを高く維持していた。全体として、F特異的リンパ球(SFU)の数は、rAd26−RSV.FまたはrAd35−RSV.F(初回免疫/または初回免疫−追加免疫)のいずれかで免疫処置されたすべての動物において、少なくとも12週間高くかつ安定であった。
【0105】
図6は、アデノウイルスベクターによる初回免疫−追加免疫ワクチン接種後の種々の時点における体液性応答を示す。Ad35.RSV.FおよびAd26.RSV.Fは、同等によく抗原刺激し、B細胞応答に対する、Ad26.RSV.FまたはrAd35.RSV.Fのいずれかによる顕著な追加免疫効果が誘導されることが示された。さらに、異種初回免疫−追加免疫におけるB細胞応答の大きさは、Ad35.RSV.FおよびAd26.RSV.Fによる免疫処置の順序には依存せず、追加免疫後、ELISA力価は12週間安定していた。
【0106】
図7は、初回免疫−追加免疫処置後の種々の時点におけるウイルス中和抗体価を示す。Ad35.RSV.FベクターおよびAd26.RSV.Fベクターは両方とも、ELISA力価について観察されるように、同等によく抗原刺激した。また、異種初回免疫−追加免疫後のVNA力価の増加は、Ad35.RSV.FおよびAd26.RSV.Fによる免疫処置の順序に依存しなかった。VNA力価に対する、Ad26.RSV.FまたはAd35.RSV.Fのいずれかによる追加免疫効果は、いずれの時点でも顕著であり、6週目ですでに最大であった。Ad.RSV.Fによる初回免疫のみを受けた群は、6週目に比較して、12週目でVNA力価が増大していた。アデノウイルスベクター構築物におけるRSV F配列は、RSV A2分離株に由来するものである。本出願に記載する中和アッセイは、RSV亜群Aに属するRSV Long株に基づくものであり、F(A2)により誘導された抗体は、異なるRSV A株亜型を交差中和可能であることが実証される。
【0107】
RSV Fタンパク質はRSV分離株中によく保存されているので、Ad−RSV.Fベクターにより免疫処置された動物に由来する血清が、原型のRSV B株分離株であるRSV B1を交差中和することができるか否かを試験した。
図8に示すように、免疫処置されたマウスの血清は、B1株も交差中和することができた。RSV B1を交差中和する能力は、初回免疫のみの群で使用されたベクターにも、Ad26.RSV.FベクターおよびAd35.RSV.Fベクターによる初回免疫−追加免疫処置の順序にも依存しなかった。
【0108】
まとめると、これらのデータから、初回免疫−追加免疫レジメンでは、Ad26.RSV.FおよびAd35.RSV.Fによる免疫処置を逐次的に行うと、強力な体液性応答および細胞性応答が誘導されること、またこの体液性免疫応答にはRSV AおよびB亜型の両方の分離株を中和する能力が含まれることがわかる。
【0109】
実施例4.コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクターを使用する、RSV感染に対する防御の誘導
この実験は、2つの異なる血清型に由来するアデノウイルスに基づく初回免疫−追加免疫レジメンが、コットンラットにおいて、RSVチャレンジ複製に対する防御を誘導する能力を検討するために行った。コットンラット(Sigmodon hispidus)は、RSVによる上気道および下気道の感染を両方とも受けやすく、マウス系統よりも少なくとも50倍許容性があることが見出されていた(Niewiesk et al,2002,Lab.Anim.36(4):357−72)。さらに、コットンラットは、RSV候補ワクチン、抗ウイルス薬、および抗体の効力および安全性を評価する主要なモデルになっている。コットンラットモデルにおいて作成された前臨床データにより、2つの抗体製剤(RespiGam(登録商標)およびSynagis(登録商標))の開発が、非ヒト霊長類における中間試験を必要とすることなく、臨床試験に進んだ。
【0110】
この試験では、8匹コットンラットの実験群それぞれにコットンラットを登録した。完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する(Ad26.RSV.FまたはAd35.RSV.F)か、または導入遺伝子を担持しない(Ad26eまたはAd35e)アデノウイルスベクターを10
9ウイルス粒子(vp)または10
10vp筋肉内注射することにより、動物を免疫処置した。28日後に、同じベクター(同種初回免疫−追加免疫)または他のアデノウイルス血清型(異種初回免疫−追加免疫)のいずれかによって、同じvp用量で動物を追加免疫し;対照群は、1用量(10
10)のみを適用したこと以外は準じて、Ad−eベクターにより免疫処置した。対照群は6匹の動物からなった。RSVウイルスによる一次感染が、二次チャレンジ複製を防御することが知られているので、RSV A2(10
4プラーク形成単位(pfu))を鼻腔内に感染させた動物を、チャレンジ複製に対する防御の陽性対照として使用した(Prince.Lab Invest 1999,79:1385−1392)。さらに、ホルマリン不活化RSV(FI−RSV)を、組織病理学的疾患のワクチン増強に対する対照とした。2回目の免疫処置(追加免疫)の3週間後に、コットンラットに、プラーク精製された1×10
5pfuのRSV A2を鼻腔内チャレンジした。対照として、コットンラットの1群では、免疫処置は行わないが、チャレンジウイルスは投与し、別の対照群では、免疫処置もチャレンジも行わなかった。RSVチャレンジウイルスの力価がピークに達する時点である感染後5日目に(Prince.Lab Invest 1999,79:1385−1392)、コットンラットを屠殺し、肺および鼻のRSV力価をウイルスプラーク力価測定により決定した(Prince et al.1978,Am J Pathology 93,711−791)。
【0111】
図9は、肺および鼻において高いRSVウイルス力価、それぞれ5.3+/−0.13 log
10pfu/グラムおよび5.4+/−0.35 log
10pfuが、非免疫処置対照および導入遺伝子のないアデノウイルスベクターを投与された動物で観察されたことを示す。これに対して、Ad26.RSV.Fベクターおよび/またはAd35.RSV.Fベクターによる初回免疫−追加免疫処置を受けた動物からの肺および鼻の組織には、用量にもレジメンにも依存することなく、チャレンジウイルスを検出することができなかった。
【0112】
これらのデータから、Ad35ベースのベクターおよびAd26ベースのベクターが、コットンラットモデルにおいて、RSVチャレンジ複製に対して完全な防御を与えることが明確に実証される。これは驚くべきことである。というのは、RSV FをコードするAd5ベースのアデノウイルスベクターは、筋肉内投与後に動物モデルにおいて完全な防御を誘導することができないことが知られているからである。
【0113】
実験の過程において、血液試料を、免疫処置前(0日目)、追加免疫処置前(28日目)、チャレンジ日(49日目)、および屠殺日(54日目)に採取した。Prince(Prince et al.1978,Am J Pathology 93,711−791)により記載されるように、全身性RSV特異的中和抗体の誘導に関する、プラークアッセイベースの中和アッセイ(VNA)で、血清を試験した。中和力価は、ウイルスのみの対照ウェルからのものと比較して、プラークを50%減少させる血清希釈度(log
2)として表す。
【0114】
図10は、対照動物が28日目および49日目にウイルス中和抗体を有していないこと、一方Ad26.RSV.FベクターまたはAd35.RSV.Fベクターにより動物が初回免疫された後、高いVNA力価が誘導されることを示す。VNA力価の穏やかな増加が追加免疫処置後に観察される。RSV A2ウイルスによる一次感染では、時間につれて徐々に増加するかなり穏やかなVNA力価がもたらされた。
【0115】
Ad26.RSV.FワクチンまたはAd35.RSV.FワクチンがRSV A2によるチャレンジ後に、疾患を悪化させる可能性があるか否かを評価するために、肺の組織病理学的分析を感染後5日目に実施した。肺を摘出し、ホルマリンで潅流し、切片化し、組織学的検査のためにヘマトキシリン‐エオジンで染色した。組織病理学スコアは、Prince(Prince et al.Lab Invest 1999,79:1385−1392)により公開された基準に従って、盲検化して評価し、以下のパラメーター:細気管支周囲炎、血管周囲炎、間質性肺炎、および肺胞炎ついてスコア化した。
図11は、この実験の肺病理のスコアリングを示す。RSVチャレンジの後、FI−RSVで免疫処置された動物は、mockで免疫処置されチャレンジされた動物に比較して、検査したすべての組織病理学的パラメーターに関して、組織病理の亢進を示した。これは以前に公開された研究(Prince et al.Lab Invest 1999,79:1385−1392)に基づくと予測されることであった。Ad26.RSV.FおよびAd35.RSV.Fで免疫処置された動物の組織病理学的スコアは、rAd−eまたはmockで免疫処置された動物と比較して、同様であったが、rAd−RSV.Fで免疫処置された動物の血管周囲炎はわずかに低いように見えた。したがって、Ad26.RSV.FワクチンおよびAd35.RSV.Fワクチンは、FI−RSVワクチンと異なり、疾患の増強をもたらさなかった。
【0116】
すべてのワクチン接種法は、RSVチャレンジ複製に対して完全な防御をもたらし、強力なウイルス中和抗体を誘導し、しかも病理の増強は観察されなかった。
【0117】
実施例5.単回免疫処置後における、種々の投与経路を使用するrAdベクターの防御効果
この試験は、RSV.FをコードするAd26ベクターまたはAd35ベクターにより誘導される防御効果に対する投与経路の影響を検討するものである。ワクチンは、筋肉内または鼻腔内に投与した。
【0118】
導入遺伝子としてRSV Fを担持する(Ad26.RSV.FまたはAd35.RSV.F)か、または導入遺伝子を担持しない(Ad26−eまたはAd35−e)Ad26またはAd35の1×10
9または1×10
10ウイルス粒子(vp)により0日目に単回免疫処置を受けたコットンラットを、49日目に10
5RSV pfuでチャレンジし、54日目に屠殺した。
【0119】
図12は、肺および鼻のチャレンジウイルスを測定した実験結果を示す。免疫処置されなかったか、または導入遺伝子を含まないアデノウイルスで免疫処置されたラットからの肺および鼻に、それぞれ4.9+/−0.22 log
10pfu/グラムおよび5.4+/−0.16 log
10pfuの高いRSVウイルス力価を検出した。これに対して、Ad35RSV.FまたはAd26−RSV.Fのいずれかを投与された動物からの肺および鼻では、投与経路および用量に依存することなく、チャレンジウイルスの複製はなかった。
【0120】
これらのデータから、驚くべきことに、RSV Fタンパク質をコードするAd26ベースのベクターおよびAd35ベースのベクターのそれぞれが、ベクターの投与経路に依存することなく、コットンラットチャレンジ実験において、完全な防御を与えることが実証される。このことは、他の血清型に基づいた、公開されたアデノウイルスベースのRSVワクチンの中で、筋肉内ワクチン接種後に完全な防御が実証されたものはないので、予測されることではなかった。
【0121】
この実験期間中、免疫処置前(0日目)、免疫処置後4週目(28日目)、およびチャレンジ日(49日目)に血液試料を採取した。この血清を、RSV特異的抗体の誘導に関する中和テストで試験した(
図13)。免疫処置前には、ウイルス中和抗体はいずれのコットンラットにも検出されなかった。すべてのアデノウイルスベクター免疫処置法により、投与経路に依存することなく、高いVNA力価が明らかに誘導され、時間を通して安定に存在した。これらのデータから、驚くべきことに、RSV Fタンパク質をコードするAd26ベースのベクターおよびAd35ベースのベクターのそれぞれが、ベクターの投与経路に依存することなく、コットンラット免疫処置実験において、ウイルス中和抗体の高い力価を与えることが実証される。
【0122】
Ad26.RSV.FワクチンまたはAd35.RSV.Fワクチンの単回免疫処置により、RSV A2によるチャレンジ後に、ワクチンが疾患を増強させる可能性があるか否かを評価するために、肺の組織病理学的分析を感染後5日目に実施した(
図14)。上記の初回免疫−追加免疫処置実験で観察されたように、rAd26.RSV.FまたはrAd35.RSV.Fによる単回免疫処置では、rAd−eまたはmockで免疫処置された動物に比較して、rAd26.RSV.FまたはrAd35.RSV.Fで免疫処置された動物に同様の免疫病理学的スコアがもたらされた。明らかに、FI−RSVで初回免疫された動物とは対照的に、疾患の悪化は観察されなかった。rAdベクターで免疫処置された動物の組織病理学的スコアは、mock感染動物と同等であった。
【0123】
結論として、すべての単回投与ワクチン接種法が、RSVチャレンジ複製に対する完全な防御をもたらし、強力なウイルス中和抗体を誘導し、しかも病理の増強を示さなかった。
【0124】
実施例6.RSV Fの断片などの変種を含むベクター、または代替プロモーターを含むベクターが、同様の免疫原性を示す
上記の実施例は、野生型RSV Fを発現するベクターによって行われたものである。他のFの短縮形態または修飾形態をrAd35中に構築し、アデノウイルスベクター中にRSV Fの断片がある実施形態を提供する。これらのFの短縮形態または修飾形態には、細胞質ドメインおよび細胞膜貫通領域が欠損している(すなわち、外部ドメイン断片のみが残存している)RSV−Fの短縮形態、ならびに細胞質ドメインおよび細胞膜貫通領域の短縮と、外部ドメイン中のさらなる内部欠失と、三量体形成ドメインの付加とを含むRSV−Fの断片形態が含まれる。これらのベクターは、完全長のFタンパク質を含むrAd35.RSV.Fを超えて応答を改善することはなかった。
【0125】
加えて、野生型RSV Fの発現を駆動する種々の代替プロモーターを含む他のrAd35ベクターを構築した。
【0126】
RSV.Fの修飾形態およびプロモーター変種の免疫原性をマウスモデルで比較し、野生型Fを発現するAd35.RSV.Fと比較した。これらのF変種またはプロモーター変種を包含するすべてのAd35ベクターは、Ad35.RSV.Fと同じ桁の大きさの応答を示した。
【0127】
実施例7.コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクター免疫処置後の、RSV感染に対する短期間防御
この実験は、コットンラットモデルにおいて、RSV−Fタンパク質を発現するアデノウイルスベクターによる防御が迅速に開始する可能性を判定するものである。この目的のために、完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する(Ad26.RSV.F)か、導入遺伝子を担持しない(Ad26e)アデノウイルスベクターを10
7、10
8、または10
9ウイルス粒子(vp)で単回i.m.注射することにより、0日目または21日目に、コットンラットを免疫処置した。RSVウイルスによる一次感染が、二次的なチャレンジ複製を防御することが知られているので、RSV A2(10
4プラーク形成単位(pfu))を鼻腔内に感染させた動物を、チャレンジ複製に対する防御の陽性対照として使用した(Prince.Lab Invest 1999,79:1385−1392)。免疫処置後49日目、7週目、または4週目に、コットンラットに、プラーク精製された1×10
5pfuのRSV Aを鼻腔内チャレンジした。RSVチャレンジウイルスの力価がピークに達する時点である感染後5日目に(Prince.Lab Invest 1999,79:1385−1392)、コットンラットを屠殺し、肺および鼻のRSV力価をウイルスプラーク力価測定により決定した(Prince et al.1978,Am J Pathology 93,711−791)。
図16Aおよび
図16Bは、肺および鼻において高いRSVウイルス力価、それぞれ4.8+/−0.11 log
10pfu/グラムおよび5.1+/−0.32 log
10pfu/グラムが、導入遺伝子のないアデノウイルスベクターを投与された動物で観察されたことを示す。これに対して、Ad26.RSV.Fベクターによる免疫処置を受けた動物からの肺および鼻では、免疫処置とチャレンジとの間の時間に依存することなく、チャレンジウイルスを検出することができなかった。この実験から、RSV−Fを発現するAd26による、チャレンジウイルス複製に対する防御が迅速に開始されることが明確に示される。免疫処置されたコットンラットから、0日目、28日目、およびチャレンジ日(49日目)に血液試料を採取した。この血清を、RSV特異的抗体の誘導に関する中和テストで試験した(
図17)。アデノウイルスベクターによる免疫処置は、用量依存的なVNA力価を誘導した。
図18は、対照動物が28日目および49日目にウイルス中和抗体を有していないこと、一方、10
7〜10
9Ad26.RSV.F vpによる免疫処置後28日目または49日目に、動物に高いVNA力価が誘導されることを示す。RSV A2ウイルスによる一次感染では、時間につれて徐々に増加するかなり穏やかなVNA力価がもたらされた。この実験から、RSV−Fを発現するAd26による、チャレンジウイルス複製に対する防御が迅速に開始されることが明確に示される。
【0128】
実施例8.コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクター免疫処置後の、RSV亜群Aおよび亜群B感染に対する防御
RSV株は、2つの亜群、すなわちA亜群およびB亜群に分けることができる。この亜群分類は、高度に可変なG糖タンパク質の抗原性の差に基づいている。Fタンパク質の配列は、高度に保存されているが、同様に、同じA亜群およびB亜群に分類することができる。実施例3では、Ad−RSV.Fベクターで免疫処置されたマウスの血清が、in vitroにおいてB1株も交差中和できることが記載された。
図19は、Ad26.RSV−F
A2で免疫処置されたコットンラットに由来するコットンラット血清が、免疫処置後49日目に、RSV−A Long(亜群A)およびBwash(亜群B、ATCC#1540)に対して高いVNA力価を示すことを明確に示す。次いで、亜群AまたはBチャレンジのいずれかに対するin vivo防御を、10
6〜10
8vpの範囲の低用量アデノウイルスを使用して、コットンラットで測定した。この目的のために、コットンラットを、8匹コットンラットの実験群それぞれに分配した。完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する(Ad26.RSV.F)か、または導入遺伝子を担持しない(Ad26e)アデノウイルスベクターを10
6、10
7、または10
8ウイルス粒子(vp)で筋肉内注射することにより、0日目に動物を免疫処置した。49日目に、10^5 pfuのRSV−A2(RSV−A株)またはRSV−B 15/97(RSV−B株)のいずれかで、動物にi.n.チャレンジした。
図20は、肺および鼻において高いRSVウイルス力価が、導入遺伝子を含まないアデノウイルスベクターを投与された動物で観察されたことを示す。これに対して、Ad26.RSV.Fによる免疫処置を受けた動物からの肺および鼻組織には、まったく検出されないかまたは限定的にしかチャレンジウイルスを検出することができなかった。RSV−A2またはRSV−B 15/97のいずれかでチャレンジされた場合の防御に関して、ほんのわずかな差しか観察されなかった。10
8および10
7vp用量を使用した場合、Ad26.RSV.F
A2は、肺チャレンジ複製に対して完全な防御を示し、10
6vpのAd26.RSV.F
A2においては、例外的に限定的な防御突破が見られた。同様の傾向は、鼻チャレンジウイルス複製に対する防御にも見られたが、対照群よりも低いけれども、部分的な防御突破が、10
6および10
7vpのAd26.RSV.F
A2において、すべての動物について観察された(
図21)。実験期間中、血液試料をチャレンジ日(49日目)に採取した。この血清を、RSV特異的抗体の誘導に関する中和テストで試験した(
図22)。この実施例から、10
6〜10
8vpのAd26.RSVの低用量において、アデノウイルスベクターが、RSV A2に対して用量応答的なVNA力価を示すことが実証される。免疫処置前には、ウイルス中和抗体はいずれのコットンラットにも検出されなかった。
【0129】
Ad35.RSV.Fが10
8vpの用量において、鼻チャレンジ実験で一部防御突破を示したので、Ad26.RSV.Fは、Ad35.RSV.Fよりもいくぶん優れていることが判明した。
【0130】
実施例9.コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクター免疫処置後の、RSV−A2の高チャレンジ用量に対する防御
この実施例では、1×10
5pfu RSV−A2の標準用量に比較して、5×10
5pfuの高チャレンジ用量に対する防御について判定する。この試験では、8匹コットンラットの実験群それぞれにコットンラットを登録した。完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する(Ad26.RSV.F)か、または導入遺伝子を担持しない(Ad26e)アデノウイルスベクターを、10
7または10
8ウイルス粒子(vp)で単回筋肉内注射することにより、0日目に動物を免疫処置した。RSV A2(10
4プラーク形成単位(pfu))により鼻腔内感染させた動物を、チャレンジ複製に対する防御の陽性対照として使用した。コットンラットを感染後5日目に屠殺し、肺および鼻のRSV力価をウイルスプラーク力価測定により決定した。
図23は、標準チャレンジ用量に比較して、より高いチャレンジ用量により、導入遺伝子を含まないアデノウイルスベクターを投与された動物において、より高い肺ウイルス負荷が誘導されることを示す。10
7または10
8vpのAd26.RSV.Fベクターによる免疫処置を受けた動物では、肺において、高RSVチャレンジ力価および標準RSVチャレンジ力価に対する防御が完全であった。
図24は、10
8vpのAd26.RSV.Fベクターにより免疫処置を受けた動物では、鼻において、高RSVチャレンジ力価および標準RSVチャレンジ力価に対する防御が完全であったが、一方、10
7vpのAd26.RSV.Fベクターにより免疫処置を受けた動物では、高RSVチャレンジ力価および標準RSVチャレンジ力価に対する防御が部分的であったことを示す。
【0131】
実施例10.コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクター免疫処置後の、RSV−A2およびRSV−B15/97に対する長期間防御
この実施例では、コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクター免疫処置後の、RSV−A2およびRSV−B15/97に対する防御の持続性を判定する。この試験では、6匹コットンラットの実験群それぞれにコットンラットを登録した。完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する(Ad26.RSV.F)か、導入遺伝子を担持しない(Ad26eまたはAd35e)アデノウイルスベクターを10
8ウイルス粒子(vp)または10
10vpで筋肉内注射することにより、動物を免疫処置した。28日後に、同じベクター(Ad26.RSV.F)(同種初回免疫−追加免疫)またはAd35.RSV.Fアデノウイルスベクター(異種初回免疫−追加免疫)のいずれかによって、同じvp用量で動物を追加免疫し;対照群は、1用量(10
10)のみを適用したこと以外は準じて、Ad−eベクターにより免疫処置した。一部の群は追加免疫処置を受けなかった。対照群は6匹の動物からなった。RSV A2およびB15/97(10
4プラーク形成単位(pfu))により鼻腔内感染させた動物を、チャレンジ複製に対する防御の陽性対照として使用した。チャレンジは初回免疫処置後210日目に行った。
【0132】
図25は、肺および鼻において高いRSVウイルス力価が、導入遺伝子を含まないアデノウイルスベクターを投与された動物で観察されたことを示す。これに対して、Ad26.RSV.Fおよび/またはAd35.RSV.Fによる免疫処置を受けた動物からの肺組織には、チャレンジウイルスを検出することができなかった。Ad26.RSV.Fおよび/またはAd35.RSV.Fによる免疫処置を受けた動物からの鼻孔組織には、RSV−A2チャレンジウイルスを検出することができなかった。RSV−B15/97によるチャレンジでは、Ad26.RSV.Fで初回免疫され、その後に10
10vpのAd35.RSV.Fで追加免疫された動物を除いて、Ad26.RSV.Fおよび/またはAd35.RSV.Fによる免疫処置を受けた動物の鼻孔組織には、ウイルス複製が限定的に誘導された。
図26は、免疫処置後140日目のウイルス中和抗体力価を示す。10
8および10
10vpの用量により、アデノウイルスベクターで初回免疫処置のみまたは初回免疫−追加免疫処置された場合、免疫処置後少なくとも4.5ヶ月間、VNA力価の用量応答性が持続することが示された。さらに、観察された力価は、一次i.n.免疫処置により生成した中和力価よりも高かった。VNA力価に対する、Ad26.RSV.FまたはAd35.RSV.Fのいずれかによる明確な追加免疫効果が観察された。
【0133】
結論として、この実施例では、Ad26.RSV.FまたはAd35.RSV.Fの単回投与または2回投与による免疫処置後の、VNA力価の長期間持続性、ならびに同種ウイルスチャレンジに対する、肺および鼻における長期間の完全防御と、異種ウイルスチャレンジに対する、肺における長期間の完全防御および鼻における部分防御が示される。
【0134】
実施例11.コットンラットモデルにおける、in vivoでの組換えアデノウイルスベクター免疫処置後の、免疫病理のワクチン増強の非存在
Ad26.RSV.FワクチンがRSV A2によるチャレンジの後に、疾患を悪化させる可能性があるか否かを評価するために、肺の組織病理学的分析を感染後2および6日目に実施した。チャレンジ後2日で、即時応答(肺性好中球の浸潤を含む)がピークに達しているが、リンパ球浸潤などの亜急性変化は感染後6日目にピークに達している(Prince et al.,J Virol,1986,57:721−728)。この試験では、12匹コットンラットの実験群それぞれにコットンラットを登録した。完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する(Ad26.RSV.F)か、導入遺伝子を担持しない(Ad26e)アデノウイルスベクターを10
8ウイルス粒子(vp)または10
10vpで筋肉内注射することにより、動物を免疫処置した。一部の群は、同じベクター(Ad26.RSV.F)(同種初回免疫−追加免疫)により、同じvp用量で28日後に追加免疫し;対照群は、1用量(10
10)のみを適用したこと以外は準じて、Ad−eベクターにより免疫処置した。対照群は12匹の動物からなった。RSV A2(10
4プラーク形成単位(pfu))により鼻腔内感染させた動物を、チャレンジ複製に対する防御の陽性対照として使用した。FI−RSVで免疫処置された動物は、疾患増強の対照として使用した。肺を摘出し、ホルマリンで潅流し、切片化し、組織学的検査のためにヘマトキシリン‐エオジンで染色した。組織病理学スコアは、Prince(Prince et al.Lab Invest 1999,79:1385−1392)により公開された基準に従って、盲検化して評価し、以下のパラメーター:細気管支周囲炎、血管周囲炎、間質性肺炎、および肺胞炎についてスコア化した。この実験の肺病理のスコアリングは、
図27に2日目、
図28に6日目のものを示す。RSVチャレンジ後、FI−RSVで免疫処置された動物では、mockで免疫処置されチャレンジされた動物に比較して、2日目および6日目に、検査したすべての組織病理学パラメーターが上昇していることが示された。これは、以前に公開された試験に基づくと、予測されることであった。Ad26.RSV.Fベクターで免疫処置されたすべての群の組織病理学スコアは、2日目では、mockで免疫処置された動物と同じであり、チャレンジ後6日目では、mockで免疫処置されチャレンジされたものよりも(Ad26.e)、常に低いスコアになった。したがって、Ad26.RSV.Fワクチンは、FI−RSVワクチンと異なり、疾患の増強をもたらさなかった。
【0135】
実施例12.Ad26.RSV.F初回免疫が組換えFタンパク質により追加免疫されると、マウスモデルにおいてTh1に歪んだ応答がもたらされる
この実施例では、Ad26.RSV.F初回免疫に対する免疫応答が、アジュバント組換えRSV Fタンパク質による追加免疫によって増強され得るか否かを検討した。この目的のために、マウスを、7匹マウスの実験群それぞれに分配した。完全長のRSV F(A2)遺伝子を担持する、10
10ウイルス粒子(vp)アデノウイルスベクター(Ad26.RSV.F)またはPBSを筋肉内注射することにより、0日目に動物を免疫処置した。28日目に、同じ用量の同じベクター、またはアジュバントRSV Fタンパク質(完全長;融合後構造:post−F)(2用量:5μgおよび0.5μg)のいずれかで、動物をi.m.追加免疫した。
図29は、Ad26.RSVF
A2で免疫処置され、アジュバントRSV Fで追加免疫されたマウスからの血清が、免疫処置後12週目に、RSV−A Long(亜群A)に対して高いVNA力価を示すことを明確に示す。
図30は、Ad26.RSVF
A2で免疫処置され、アジュバントRSV Fタンパク質で追加免疫されたマウスの血清のIgG2a/IgG1比を示す。高い比は、Th1バランス応答を表し、一方低い比は、Th2に歪んだ応答を示す。明らかに、Ad26.RSV.Fで免疫処置された動物では、Ad26.RSV.FまたはRSV Fタンパク質のいずれかで追加免疫されると、高いIgG2a/IgG1比がもたらされるが、FI−RSVまたはRSV Fタンパク質で免疫処置された対照マウス(アデノウイルスベクターとの関連においてではない)では、低い比が誘導される。チャレンジの際の疾患の増強を回避し、強力なT細胞記憶を誘導するために、RSVワクチンでは、Th1に歪んだ応答が強く所望されるので、Ad26.RSV.F初回免疫を適用する場合、タンパク質免疫処置によるTh2に歪んだ応答を、Th1応答の方に向けることができる。
図31は、Ad26.RSVF
A2で免疫処置され、アジュバントRSV Fタンパク質で追加免疫されたマウスに由来する脾臓の細胞性応答を示す。アジュバントRSV Fタンパク質で追加免疫すると、細胞性応答も同様に強力に亢進されることが明確に観察することができる。
【0136】
表1.配列
配列番号1: RSV融合タンパク質(Genbank ACO83301.1)アミノ酸配列:
【化1】
配列番号2: RSV融合タンパク質をコードする、コドン最適化RSV.F(A2)nat遺伝子
【化2】